(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085142
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】シングルフェーサー、段ボールの製造装置および線状部材資材
(51)【国際特許分類】
B31F 1/28 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
B31F1/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199656
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】508132470
【氏名又は名称】株式会社サム技研
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健策
【テーマコード(参考)】
3E078
【Fターム(参考)】
3E078AA20
3E078BB02
3E078BC01
3E078CC06
3E078CC12
3E078CC38X
3E078CC42
3E078CC59X
(57)【要約】
【課題】段ボールのリサイクル性を損なうことなく、オンサイトでの段ボールの製造を可能にする技術を提供する。
【解決手段】片面段ボールPCGを製造するシングルフェーサー10は、中芯紙PINの搬送経路における上流側に配置された上流側段ロール110と、上流側段ロール110よりも下流側に配置された下流側段ロール120と、下流側段ロール120の外周面に沿って搬送される中芯紙PINと、ライナー紙PLNとを、下流側段ロール120に向けて押圧する押圧部300と、中芯紙PINが段繰される段繰領域と中芯紙PINとライナー紙PLNとが押圧される押圧領域との間の中間位置から押圧領域までにわたって、中芯紙PINの外周側に配置された線状の線状部材410と、を有している。この線状部材410は、下流方向への移動が規制されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中芯紙とライナー紙とから片面段ボールを製造するシングルフェーサーであって、
前記中芯紙の搬送経路における上流側に配置された上流側段ロールと、
前記上流側段ロールよりも前記搬送経路における下流側に配置された下流側段ロールと、
前記下流側段ロールの外周面に沿って搬送される前記中芯紙と、前記ライナー紙と、を接着するため、前記中芯紙と前記ライナー紙とを、前記下流側段ロールに向けて押圧する押圧部と、
前記上流側段ロールと前記下流側段ロールとが対向し、前記中芯紙が段繰される段繰領域と、前記押圧部により前記中芯紙と前記ライナー紙とが押圧される押圧領域と、の間の中間位置から前記押圧領域までにわたって、前記下流側段ロールの外周面に沿って搬送される前記中芯紙の外周側に配置された線状の線状部材と、
を備え、
前記線状部材は、前記搬送経路における下流方向への移動が規制されている、
シングルフェーサー。
【請求項2】
請求項1に記載のシングルフェーサーであって、さらに、
前記上流側段ロールの軸方向に垂直な板状のガイド板を備え、
前記ガイド板は、前記段繰領域から前記中間位置までの少なくとも一部において、前記中芯紙を前記下流側段ロールの外周面に沿うように誘導するガイド面を有する、
シングルフェーサー。
【請求項3】
請求項2に記載のシングルフェーサーであって、
前記上流側段ロールには、外周側から軸方向に向かう溝が形成されており、
前記ガイド板は、前記溝の内部に延びるように形成されている、
シングルフェーサー。
【請求項4】
前記線状部材は、前記搬送方向における下流方向への移動が規制されるように、前記ガイド板に取り付けられている、請求項2または3に記載のシングルフェーサー。
【請求項5】
請求項4に記載のシングルフェーサーであって、
前記線状部材は、前記線状部材を含む線材の一端が線材取付棒に巻き付けられており、
前記ガイド板には、前記線材取付棒を収容して前記線状部材を取り付けるための切込が形成されている、
シングルフェーサー。
【請求項6】
請求項1に記載のシングルフェーサーであって、
前記上流側段ロールには、外周側から軸方向に向かう溝が形成されており、
前記線状部材は、前記中芯紙が前記上流側段ロールと接する位置よりも前記搬送方向における上流側において固定されており、前記溝に巻き付けられた状態で、前記下流側段ロールの外周面に沿って搬送される前記中芯紙の外周側に配置されている、
シングルフェーサー。
【請求項7】
段ボールの製造装置であって、
請求項1ないし6のいずれかに記載のシングルフェーサーと、
前記シングルフェーサーに前記中芯紙および前記ライナー紙をそれぞれ供給する中芯紙給紙機構およびライナー紙給紙機構と、
を備え、
前記中芯紙給紙機構および前記ライナー紙給紙機構は、それぞれ、蛇腹状に折りたたまれた中芯紙およびライナー紙を載置する用紙台を有している、
段ボールの製造装置。
【請求項8】
前記中芯紙給紙機構の前記用紙台および前記ライナー紙給紙機構の前記用紙台は、上下に並べて配置されている、請求項7に記載の段ボール製造装置。
【請求項9】
線状部材資材であって、
請求項1ないし6のいずれかに記載のシングルフェーサーに、所定の間隔で配列するように取り付けられる複数の前記線状部材と、
前記複数の線状部材の下流側端部において、前記所定の間隔で配列した前記複数の線状部材に剥離可能に接着された一体化用紙と、
を備え、
前記複数の線状部材は、前記複数の線状部材の上流側端部において、前記所定の間隔配列するように構成されている、
線状部材資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールを製造するためのシングルフェーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
段ボールは、製造コストが低く、また、リサイクルが容易であるため、包装資材や隙間充填材等の梱包資材として広汎に使用されている。段ボールの製造にあたっては、まず、片面が平坦な片面段ボールが製造されるが、片面段ボールは、通常、上流側と下流側との2つの段ロールによって素材となる中芯紙に凹凸を形成(段繰加工)した後、下流側の段ロールに巻き付けられた中芯紙にライナー紙を貼り付けることにより製造される。
【0003】
このように片面段ボールを製造するシングルフェーサーでは、段繰加工された中芯紙の下流側の段ロールからの浮き上がりを抑制し、段繰加工された中芯紙をライナー紙が貼り付けられる位置まで安定的に搬送することが要求される。そのため、下流側の段ロールの径を十分に大きくとるとともに、当該段ロールの内方を減圧して外周面に設けられた空気穴を通して中芯紙を吸着することが行われてきた。
【0004】
しかしながら、下流側の段ロールの径を大きくすると、シングルフェーサーが必然的に大きくなる。さらに、中芯紙を吸着する手段により中芯紙の浮き上がりを抑制する場合、減圧用のポンプとして大型のものを使用する必要があり、ポンプが発生する騒音が大きくなるため、シングルフェーサーの設置場所が限定される。そのため、従来、段ボールの使用者には、大規模な工場設備により製造された段ボールが供給されてきたが、このように、段ボールの形態で輸送を行うと、段ボール自体が多大な容量を占めるため、輸送コストが高くなる。
【0005】
一方、下流側の段ロールに中芯紙を吸着することなく、段繰加工された中芯紙をライナー紙が貼り付けられる位置まで安定的に搬送することを可能とする技術が提案されている。例えば、特許文献1には、下段ロールの局面に沿って、所定の間隔に配置された糸を波形に成型された中芯原紙の糊付面側を適当な張力を付加した状態で走行させ、当該中芯原紙を成型部分から貼合部分まで案内させる段ボール製造機が記載されている。
【0006】
特許文献1に記載された段ボール製造機によれば、下流側の段ロールに中芯紙を吸着することなく、段繰加工された中芯紙をライナー紙が貼り付けられる位置まで安定的に搬送することが可能となり、また、必ずしも下流側の段ロールの径を大きくする必要はなくなる。そのため、使用者側において、平坦な中芯紙とライナー紙から段ボールを製造すること(オンサイトでの段ボールの製造)が可能となり、輸送にかかるコストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された段ボール製造機では、製造された段ボールに案内用の糸が残存するため、段ボールのリサイクル性が低下する。
【0009】
本発明の目的は、上記問題点を解消し、段ボールのリサイクル性を損なうことなく、オンサイトでの段ボールの製造を可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の内、請求項1に記載の発明は、中芯紙とライナー紙とから片面段ボールを製造するシングルフェーサーであって、前記中芯紙の搬送経路における上流側に配置された上流側段ロールと、前記上流側段ロールよりも前記搬送経路における下流側に配置された下流側段ロールと、前記下流側段ロールの外周面に沿って搬送される前記中芯紙と、前記ライナー紙と、を接着するため、前記中芯紙と前記ライナー紙とを、前記下流側段ロールに向けて押圧する押圧部と、前記上流側段ロールと前記下流側段ロールとが対向し、前記中芯紙が段繰される段繰領域と、前記押圧部により前記中芯紙と前記ライナー紙とが押圧される押圧領域と、の間の中間位置から前記押圧領域までにわたって、前記下流側段ロールの外周面に沿って搬送される前記中芯紙の外周側に配置された線状の線状部材と、を備え、前記線状部材は、前記搬送経路における下流方向への移動が規制されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、さらに、前記上流側段ロールの軸方向に垂直な板状のガイド板を備え、前記ガイド板は、前記段繰領域から前記中間位置までの少なくとも一部において、前記中芯紙を前記下流側段ロールの外周面に沿うように誘導するガイド面を有することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記上流側段ロールには、外周側から軸方向に向かう溝が形成されており、前記ガイド板は、前記溝の内部に延びるように形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、前記線状部材は、前記搬送方向における下流方向への移動が規制されるように、前記ガイド板に取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記線状部材は、前記線状部材を含む線材の一端が線材取付棒に巻き付けられており、前記ガイド板には、前記線材取付棒を収容して前記線状部材を取り付けるための切込が形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記上流側段ロールには、外周側から軸方向に向かう溝が形成されており、前記線状部材は、前記中芯紙が前記上流側段ロールと接する位置よりも前記搬送方向における上流側において固定されており、前記溝に巻き付けられた状態で、前記下流側段ロールの外周面に沿って搬送される前記中芯紙の外周側に配置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の内、請求項7に記載の発明は、段ボールの製造装置であって、請求項1ないし6のいずれかに記載のシングルフェーサーと、前記シングルフェーサーに前記中芯紙および前記ライナー紙をそれぞれ供給する中芯紙給紙機構およびライナー紙給紙機構と、を備え、前記中芯紙給紙機構および前記ライナー紙給紙機構は、それぞれ、蛇腹状に折りたたまれた中芯紙およびライナー紙を載置する用紙台を有していることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記中芯紙給紙機構の前記用紙台および前記ライナー紙給紙機構の前記用紙台は、上下に並べて配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の内、請求項9に記載の発明は、線状部材資材であって、請求項1ないし6のいずれかに記載のシングルフェーサーに、所定の間隔で配列するように取り付けられる複数の前記線状部材と、前記複数の線状部材の下流側端部において、前記所定の間隔で配列した前記複数の線状部材に剥離可能に接着された一体化用紙と、を備え、前記複数の線状部材は、前記複数の線状部材の上流側端部において、前記所定の間隔配列するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係るシングルフェーサーによれば、下流方向に引かれた線状部材が、段繰領域と押圧領域との中間位置から押圧領域までにわたって、下流側段ロールの外周面に沿って搬送される中芯紙の外周側に押しつけられるので、段繰加工された中芯紙がライナー紙が貼り付けられる位置まで安定的に搬送される。そのため、当該シングルフェーサーを用いることにより、オンサイトでの段ボールの製造が可能となる。そして、線状部材は、下流方向への移動が規制されているので、製造された段ボールに線状部材が残存しないため、製造された段ボールのリサイクル性が低下することを抑制することができる。
【0020】
請求項2に係るシングルフェーサーによれば、段繰領域から中間位置までの少なくとも一部において、段繰された中芯紙を下流側段ロールの外周面に沿うように誘導することができるので、より安定的に段繰加工された中芯紙の搬送を行うことができる。
【0021】
請求項3に係るシングルフェーサーによれば、段繰領域から段繰された中芯紙を下流側段ロールの外周面に沿うように誘導することができるので、さらに安定的に段繰加工された中芯紙の搬送を行うことができる。
【0022】
請求項4に係るシングルフェーサーによれば、線状部材をガイド板に取り付けることにより、段繰領域から段繰された中芯紙を下流側段ロールの外周面に沿うように誘導することがより容易となるので、段繰加工された中芯紙の搬送をさらに安定化させるのがより容易となる。
【0023】
請求項5に係るシングルフェーサーによれば、線状部材の末端部が摩耗して短くなった場合に、線材取付棒に巻き付けられた線状部材を繰り出すことにより、線状部材の長さを維持することができるので、シングルフェーサーの保守間隔を、より長くすることができる。
【0024】
請求項6に係るシングルフェーサーによれば、段繰領域から段繰された中芯紙を下流側段ロールの外周面に沿うように誘導することがより容易となるので、段繰加工された中芯紙の搬送をさらに安定化させるのがより容易となる。
【0025】
請求項7に係る段ボールの製造装置によれば、慣性モーメントにより中芯紙およびライナー紙の引出の開始や停止が遅れることが抑制されるので、片面段ボールの製造の開始および停止を随時行うことが容易となるため、使用量に合わせた片面段ボールの製造がより容易となる。
【0026】
請求項8に係る段ボールの製造装置によれば、段ボール製造装置が占有する床面積をより小さくすることができるので、段ボール製造装置をより柔軟に配置することが可能となる。
【0027】
請求項9に係る線状部材資材によれば、複数の線状部品をシングルフェーサーに取り付ける際に、線状部材を下流側段ロールの外周側に沿わせるとともに、線状部材の末端部を押圧領域まで到達させることがより容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態としてのシングルフェーサーの概略構成を示す概略構成図である。
【
図2】第2実施形態としてのシングルフェーサーの概略構成を示す概略構成図である。
【
図3】第3実施形態としてのシングルフェーサーの概略構成を示す概略構成図である。
【
図4】第3実施形態のシングルフェーサーにおける上流側段ロール周辺の構成を示す説明図である。
【
図5】第4実施形態のシングルフェーサーにおける上流側段ロール周辺の構成を示す説明図である。
【
図6】第5実施形態としてのシングルフェーサーの概略構成を示す概略構成図である。
【
図7】線状部品の取付補助手段を示す説明図である。
【
図8】第1実施形態のシングルフェーサーを用いた段ボール製造装置の概略構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に例示した説明図に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0030】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態としてのシングルフェーサー10の概略構成を示す概略構成図である。詳細については後述するが、シングルフェーサー10とは、素材となる中芯紙PINに凹凸を形成する段繰加工を施して、段繰加工が施された中芯紙PINの片面に平坦なライナー紙PLNを貼り付けて、片面段ボールPCGを製造するための装置である。
【0031】
図1に示すように、シングルフェーサー10は、中芯紙PINに段繰加工を施す段繰部100と、段繰加工が施された中芯紙PINに接着剤を塗布する接着剤塗布部200と、接着剤が塗布された中芯紙PINにライナー紙PLNを押圧して貼り付ける押圧部300とを有している。
【0032】
段繰部100は、中芯紙PINの搬送経路における上流側(以下、単に「上流側」とも謂い、当該搬送経路における下流側を単に「下流側」とも謂う)に配置され、外周面に凹凸が形成された上流側段ロール110と、下流側に配置され、外周面に上流側段ロール110と同様な凹凸が形成された下流側段ロール120とを有している。段繰部100は、また、段繰加工が施された中芯紙PINを下流側段ロール120の外周面に沿って誘導するガイド面135が設けられたガイド板130を有している。
【0033】
上流側段ロール110と下流側段ロール120とのそれぞれのロール軸111,121は、上流側段ロール110と下流側段ロール120とが互いに押圧するように、あるいは、段繰加工に適した間隔を維持するように、図示しない軸受部を介して固定される。そして、上流側段ロールと110と下流側段ロール120とは、歯車等の図示しない回転伝達手段を介して連動して回転する。なお、第1実施形態のシングルフェーサー10では、ガイド板130に上流側段ロール110のロール軸111が通される軸受部131を設けている。これにより、ガイド板130は、上流側段ロール110のロール軸111を支点軸として揺動可能となっている。そして、上流側段ロール110のロール軸111に対して固定されたブラケット142に調整ネジ141を取り付け、当該調整ネジ141を用いてガイド板130を揺動移動させることにより、段繰加工直後の中芯紙PINが下流側段ロール120の表面から浮き上がらないように、下流側段ロール120の表面とガイド板130のガイド面135との間隔が調整される。
【0034】
また、
図1に示すように、ガイド板130には、線状部品400を取り付けるための取付ピン132が設けられている。なお、ガイド板130に取り付けられた線状部品400の具体的な構成や機能等については、後述する。
【0035】
中芯紙PINの段繰加工は、2つの段ロール110,120を矢印に示すように回転させることによって進行する。具体的には、上流側段ロール110を回転させると、中芯紙PINは、下流側に搬送される。そして、中芯紙PINは、2つの段ロール110,120が対向する位置において2つの段ロール110,120に挟み込まれる。これにより、中芯紙PINには、段繰加工がなされ、中芯紙PIN自体に凹凸が形成される。
【0036】
このように段繰加工が施された中芯紙PINは、下流側段ロール120の外周面に巻き付けられることにより、上流側段ロール110の回転に伴って回転する下流側段ロール120により下流側に搬送され、下流側段ロール120と押圧部300との間に到達する。
【0037】
接着剤塗布部200は、塗工ロール210と、ドクターロール220と、ドクターブレード230と、接着剤ADHを収容する収容容器240とを有している。なお、
図1においては、図示の便宜上、収容容器240については、紙面と平行な面における断面を示している。
【0038】
接着剤塗布部200は、収容容器240に設けられた支点軸241を中心に全体が揺動し得るように構成されている。これにより、接着剤塗布部200は、その塗工ロール210が下流側段ロール120の外周面に巻き付けられた中芯紙PINに接触するように、揺動状態が適宜調整される。
【0039】
このように塗工ロール210が中芯紙PINに接触した状態において、下流側段ロール120が回転すると、その回転に伴って塗工ロール210が回転する。そして、下方に位置する塗工ロール210の外周面には、収容容器240に収容された接着剤ADHが付着する。
【0040】
塗工ロール210の外周面に付着した接着剤ADHは、その厚さがドクターロール220により均一化される。そのため、塗工ロール210と接触する中芯紙PINには、均一な量の接着剤ADHが塗布される。一方、ドクターロール220に残存する接着剤ADHは、ドクターブレード230により除去される。これにより、ドクターロール220は、より確実に、塗工ロール210の外周面上の接着剤ADHの厚さを均一化することができる。
【0041】
接着剤ADHとしては、一般的には、公知の澱粉系接着剤が使用される。この場合、塗布された接着剤ADHを硬化させるため、少なくとも下流側段ロール120が加熱される。なお、下流側段ロール120の加熱は、下流側段ロール120に熱源としての蒸気ヒーターや電気ヒーターを組み込むことにより行われる。そして、下流側段ロール120が接着剤ADHの効果に適した温度(120~180℃)に維持されることにより、中芯紙PINとライナー紙PLNとは、互いに押圧されて接着される押圧領域(後述する)において速やかに接着される。また、接着剤ADHとしては、澱粉系接着剤のほか、種々のバインダーを水や有機溶剤に溶融した液性接着剤や、熱可塑性のバインダーを融解したホットメルト接着剤等を使用することができる。なお、接着剤ADHとしてホットメルト接着剤を使用する場合、中芯紙PINとライナー紙PLNとが押圧領域で速やかに接着されるように、下流側段ロール120は、冷却され、あるいは、適切な温度となるように温度制御される。
【0042】
押圧部300は、可撓性を有する押圧ベルト310と、押圧ベルト310を保持する2つのロール321,322とを有している。2つのロール321,322は、下流側段ロール120に従動し、あるいは、図示しない駆動機構を介して回転するように構成されており、押圧ベルト310は、2つのロール321,322が回転することにより、移動可動となっている。
【0043】
そして、
図1に示すように、これら2つのロール321,322を下流側段ロール120に近接させる。これにより、段繰加工が施され、外周面に接着剤ADHが塗布された中芯紙PINと、中芯紙PINの外周面側に導入されたライナー紙PLNとは、下流側段ロール120と、押圧ベルト310とで挟み込まれる。このように、接着剤ADHが塗布された中芯紙PINと、ライナー紙PLNとが挟み込まれることにより、段繰加工が施された中芯紙PINと、ライナー紙PLNとが接着され、片面段ボールPCGが形成される。
【0044】
ガイド板130に取り付けられる線状部品400は、線状部材410と、ループ部420と、カシメ部430とを有している。この線状部品400のループ部420は、線状部材410となる線材の一端にループ部420となる輪を形成し、輪を形成した線材の端部と、線材自体とを、カシメ部430を構成するカシメ部材で固定することにより形成される。一方、線状部材410のカシメ部430と反対側の端部(以下、線状部材410の「末端部」と謂う)は、中芯紙PINとライナー紙PLNとが、下流側段ロール120と押圧ベルト310とで挟み込まれ、押圧される領域(押圧領域)まで伸びている。
【0045】
この押圧領域において、線状部品400の線状部材410の末端部は、中芯紙PINの搬送の際に下流方向に移動する下流側段ロール120と押圧ベルト310とに挟まれているので、線状部品400は、その線状部材410の末端部において下流側に引かれる。
【0046】
一方、
図1に示すように、線状部材410は、ループ部420がガイド板130に設けられた取付ピン132に取り付けられ、中芯紙PINの搬送方向に対する移動が規制されている。そのため、線状部材410は、中芯紙PINの搬送に伴って下流側に引かれることにより、下流側段ロール120の外周側に押しつけられる。
【0047】
このように、線状部材410が、下流側段ロール120の外周側に押しつけられることにより、段繰加工が施された中芯紙PINが下流側段ロール120から浮き上がることが抑制される。そのため、中芯紙PINを下流側段ロール120に吸着する手段を用いることなく、中芯紙PINを押圧領域まで安定的に搬送し、押圧領域において、中芯紙PINとライナー紙PLNとを適切に接着し、良好な片面段ボールPCGを製造することができる。
【0048】
なお、線状部品400を形成するための線材としては、ピアノ線やステンレス線等の丸鋼線や、丸鋼線を扁平に成型した扁平鋼線、あるいは、薄い金属板を放電加工等を用いて線状に切断した線状の薄板(平鋼線)を用いることができる。
【0049】
線状部材410の末端部は、使用時間の経過に伴い摩耗するため、丸鋼線の直径や扁平鋼線あるいは平鋼線の厚み(以下、「線径等」と謂う)は、太くするのが望ましい。一方、線材の線径等を過度に太くすると、中芯紙PINとライナー紙PLNとの接着が適切に行われない可能性がある。そのため、線材の線径等は、0.2mm~0.5mmとするのが好ましい。
【0050】
また、線材としては、アラミド繊維や炭素繊維等の強度の高い繊維の単線や撚糸を用いることも可能である。この場合、ループ部は、線材を結ぶことにより形成される。但し、使用時間の経過に伴う線状部材末端部の摩耗を抑制するため、線材としては、丸鋼線、扁平鋼線あるいは平鋼線等を使用するのが好ましい。
【0051】
なお、
図1に示すように、押圧領域において、中芯紙PINとライナー紙PLNとは、下流側段ロール120と、可撓性を有する押圧ベルト310との間に挟み込まれる。そのため、線状部品400の線状部材410が存在している部分については、中芯紙PINとライナー紙PLNとが接着されていない状態となるものの、その周囲において、中芯紙PINとライナー紙PLNとは、良好に接着される。
【0052】
このように、第1実施形態では、段繰加工された中芯紙PINを下流側段ロール120に吸着する手段を用いることなく、中芯紙PINを押圧領域まで安定的に搬送し、押圧領域において、中芯紙PINとライナー紙PLNとを適切に接着し、良好な片面段ボールPCGを製造することができる。
【0053】
従来、このように、段繰加工された中芯紙を安定的に搬送するためには、下流側段ロールの外周面に空気穴を設け、下流側段ロールにおける内方を減圧して、当該空気穴を介して吸着することが行われてきた。このように減圧して吸着する場合、減圧のためのポンプを設けられるが、ポンプを作動させることにより騒音が大きくなる。そのため、減圧して吸着するシングルフェーサーは、その設置場所が限定され、段ボールの使用者がその場で段ボールを製造する、オンサイトの段ボール製造が困難であり、ポンプの作動に伴う騒音を払拭しあるいは著しく低減する技術の開発が要望されていた。
【0054】
これに対し、第1実施形態によれば、段繰加工された中芯紙PINを下流側段ロール120に吸着する手段を用いることなく、段繰加工された中芯紙PINを押圧領域まで安定的に搬送することができるので、ポンプの作動に伴う騒音を払拭することができる。
【0055】
また、中芯紙PINを下流側段ロール120に吸着する構成を取ることも可能である。この場合、中芯紙PINの幅方向中央部については、中芯紙PINを下流側段ロール120に吸着して浮き上がりを抑制するとともに、幅方向両端部周辺については、線状部材410により浮き上がりを抑制するように構成することもできる。このようにすれば、中芯紙PINの搬送に蛇行が生じ、中芯紙PINが下流側段ロール120に形成された空気穴から逸脱しても、中芯紙PIN全体が下流側段ロール120から浮き上がることを抑制することができる。そして、このようにシングルフェーサー100を構成することにより、減圧のためのポンプとしてより小型のものを使用することができるので、ポンプの作動に伴う騒音を著しく低減することができる。
【0056】
このように、第1実施形態のシングルフェーサー10によれば、ポンプの作動に伴う騒音を払拭しあるいは著しく低減することができるので、オンサイトの段ボール製造が容易となる。そして、オンサイトで段ボールを製造することにより、既製の段ボールを輸送するために大きな輸送容積を確保する必要がなくなるため、輸送に要するコストを低減することができる。
【0057】
さらに、第1実施形態のシングルフェーサー10によって製造された段ボールPCGには、線状部材410等の介在物が残存しないため、第1実施形態によれば、段ボールPCGのリサイクル性が低下することを抑制することができる。
【0058】
[第2実施形態]
図2は、第2実施形態としてのシングルフェーサー10aの概略構成を示す概略構成図である。第2実施形態としてのシングルフェーサー10aは、上流側段ロール110の取付構造が異なっている点と、それに伴い、ガイド板130aの構成が変更されている点と、押圧部300aの構成が異なっている点とで、第1実施形態と異なっている。他の点は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と共通する内容については、その説明を省略する。
【0059】
また、第2実施形態では、シングルフェーサー10aの構成を構成する要素において、第1実施形態のシングルフェーサー10と異なっており、かつ、第1実施形態のシングルフェーサー10と対応する要素については、第1実施形態で示した符号の末尾にアルファベットを付加している。このように、本明細書においては、符号の数字が共通する要素に対応関係があるので、それらの要素については、主として相違点について説明する。
【0060】
第2実施形態のシングルフェーサー10aでは、ガイド板130aは、2本の固定ネジ143により、図示しないフレームに取り付けられる。上流側段ロール110とガイド板130aとの位置関係、および、下流側段ロール120とガイド板130aとの位置関係は、固定ネジ143によりガイド板130aをフレームに固定する際に、適宜調整される。これにより、下流側段ロール120の表面と、ガイド板130aのガイド面135aとは、適宜の間隔を隔てて対向する。
【0061】
また、第2実施形態では、
図2に示すように、固定ネジ143によりガイド板130aを固定しているので、ガイド板130aをはじめとする部品交換時のメンテナンス性をより良好にすることができる。
【0062】
第2実施形態のシングルフェーサー10aにおいて、押圧部300aは、単一の押圧ロール330aで構成される。押圧ロール330aとしては、外周面が弾性部材で覆われたものを使用することができる。外周面が弾性部材で覆われた押圧ロール330aを用いることにより、線状部材410が存在している部分の周囲において、中芯紙PINとライナー紙PLNとは、良好に接着される。
【0063】
但し、押圧ロール330aとしては、必ずしも、外周面が弾性部材で覆われたものを使用する必要がない。この場合、線状部品400を構成する線材の太さを十分に細くし、段繰加工された中芯紙PINに塗布される接着剤ADHの量を適宜調整することにより、線状部材410が存在している部分を含め、中芯紙PINとライナー紙PLNとの全面を接着することができる。また、線状部材410が存在している部分の周囲において、中芯紙PINとライナー紙PLNとが確実に接着されるように、線状部材410の位置に対応して押圧ロール330aに溝を設けることも可能である。
【0064】
図2に示すように、第2実施形態のシングルフェーサー10aにおいても、線状部品400の線状部材410は、中芯紙PINの搬送に伴って下流側に引かれ、下流側段ロール120の外周側に押しつけられる。そのため、中芯紙PINを下流側段ロール120に吸着する手段を必要に応じて省略しつつ、中芯紙PINを押圧領域まで安定的に搬送し、押圧領域において、中芯紙PINとライナー紙PLNとを適切に接着し、良好な片面段ボールPCGを製造することができる。
【0065】
このように、第2実施形態によっても、段繰加工された中芯紙PINを下流側段ロール120に吸着する手段を省略し、あるいは、吸着に使用するポンプを小型化した状態においても、中芯紙PINを押圧領域まで安定的に搬送し、押圧領域において、中芯紙PINとライナー紙PLNとを適切に接着し、良好な片面段ボールPCGを製造することができる。そのため、オンサイトの段ボール製造が可能となるため、輸送に要するコストを低減することができる。
【0066】
[第3実施形態]
図3は、第3実施形態としてのシングルフェーサー10bの概略構成を示す概略構成図であり、
図4は、第3実施形態のシングルフェーサー10bにおける上流側段ロール110b周辺の構成を示す説明図である。
図4(a)は、シングルフェーサー10bを構成する上流側段ロール110bと、ガイド板130bと、線状部品400との配置を示し、
図4(b)は、ガイド板130bの形状を示している。
【0067】
図3および
図4に示すように、第3実施形態としてのシングルフェーサー10bは、上流側段ロール110bに溝119bが形成されている点と、ガイド板130bが上方に延びるように形状が変更されている点とで、第2実施形態と異なっている。また、軸方向において、上流側段ロール110bの長さが長くなっている。また、図示しないが、上流側段ロール110bの軸方向の長さの伸長に合わせて、下流側段ロール120b、塗工ロール210b、ドクターロール220bおよび押圧ロール330bの軸方向の長さや、接着剤塗布部200bの紙面に垂直な方向の長さが長くなっている。他の点は、第2実施形態と同様であるので、第2実施形態と共通する内容については、その説明を省略する。
【0068】
図3および
図4(a)に示すように、第3実施形態のシングルフェーサー10bでは、上流側段ロール110bに溝119bを設けている。そして、ガイド板130bは、上流側段ロール110bに形成された溝119bに対向する位置に配置される。これにより、
図3および
図4(b)に示すように、ガイド板130bの形状を上方に延びるように変更し、ガイド板130bが有するガイド面135bの長さを、第2実施形態のシングルフェーサー10aにおけるガイド板130aよりも長くすることができる。
【0069】
このように第3実施形態では、ガイド面135bの長さを第2実施形態よりも長くすることができるので、より適切に、段繰加工が施された中芯紙PINを下流側段ロール120の外周面に沿って誘導することができる。一方、第2実施形態では、上流側段ロール110への溝119bの形成が省略できるので、上流側段ロール110、および、上流側段ロール110を使用するシングルフェーサー10aの構成をより簡略化することができる。
【0070】
また、第3実施形態では、
図4(a)に示すように、上流側段ロール110bに複数の溝119bを形成し、当該複数の溝119bと対向する位置に配置されたガイド板130bのそれぞれに、線状部品400を取り付けている。そのため、上流側段ロール110bの軸方向の長さを長くし、中芯紙PINbの幅を広くしても、中芯紙PINbを押圧領域まで安定的に搬送し、押圧領域において、中芯紙PINbと幅の広いライナー紙PLNbとを適切に接着し、より良好に、幅の広い片面段ボールPCGbを製造することができる。
【0071】
[第4実施形態]
図5は、第4実施形態のシングルフェーサーにおける上流側段ロール110b周辺の構成を示す説明図である。
図5(a)は、第4実施形態のシングルフェーサーを構成する上流側段ロール110bと、2種のガイド板130c,510cと、線状部品400cとの配置を示し、
図5(b)および
図5(c)は、2種のガイド板130c,510cの形状を示している。
【0072】
図5に示すように、第4実施形態では、ガイド板130c,510cの形状が変更されている点と、線状部品400cの本数およびガイド板510cへの取付態様とが異なっている点で、第3実施形態と異なっている。他の点は、第3実施形態と同様であるので、第3実施形態と共通する内容については、その説明を省略する。
【0073】
図5(b)に示すように、ガイド板130cは、取付ピン132が設けられていない他は、第3実施形態のガイド板130bと同様に構成されている。一方、
図5(c)に示すガイド板510cは、外形はガイド板130cと同様であるが、切込519cが形成されている点で、ガイド板130cと異なっている。
【0074】
図5(a)に示すように、線状部品400cの一端が巻き付けられた線材取付棒520cは、ガイド板510cに形成された切込519cに嵌め込まれる。なお、切込519cは、線状部品400cの線状部材410cが下流側に引かれた状態で、線材取付棒520cが脱落しないような形状に形成されている。
【0075】
第4実施形態においても、線材取付棒520cに一端が巻き付けられた線状部品400cは、その線状部材410cが中芯紙PINb(
図3)の搬送に伴って下流側に引かれ、下流側段ロール120bの外周側に押しつけられる。そのため、中芯紙PINbを下流側段ロール120bに吸着する手段を用いることなく、中芯紙PINbを押圧領域まで安定的に搬送し、押圧領域において、中芯紙PINbとライナー紙PLNbとを適切に接着し、良好な片面段ボールPCGbを製造することができる。
【0076】
なお、第4実施形態では、上流側段ロール110bの軸方向の両端付近のみにおいて、切込519cが形成されたガイド板510cを用い、4本の線状部品400cを使用している。これは、中芯紙PINbの幅方向の両端部に線状部品400cを重点的に作用させているものであり、必要に応じて、中芯紙PINbの幅方向の中央部において、中芯紙PINbを下流側段ロール120bに吸着するように構成することも可能である。一方、他のガイド板130cを切込519cが形成されたガイド板510cに置き換えて、線状部品400cの本数を増やすことも可能である。この場合、中芯紙PINbを下流側段ロール102bに吸着する手段を省略することもできる。
【0077】
このように、第4実施形態では、線材取付棒520cに線状部品400cの一端が巻き付けている。そのため、線状部材410cの末端部が摩耗して短くなった場合、線材取付棒520cに巻き付けられた線状部材410cを繰り出すことにより、線状部材410cの長さを維持することができる。そのため、シングルフェーサーの保守間隔を、より長期間とすることができる。
【0078】
[第5実施形態]
図6は、第5実施形態としてのシングルフェーサー10dの概略構成を示す概略構成図である。第5実施形態のシングルフェーサー10dは、線状部品400dの配設態様および取付方法が異なっている点と、線状部品400dの配設態様の変更に伴って、上流側段ロール110dの形状が変更されている点と、ガイド板が省略されている点と、押圧部300dの設置場所が異なっている点とで、第2実施形態のシングルフェーサー10bと異なっている。なお、
図6では、図示の便宜上、接着剤塗布部の図示を省略している。
【0079】
第5実施形態では、第4実施形態と同様に、線状部品400dは、その一端が線材取付棒520dに巻き付けられる。そして、線材取付棒520dは、中芯紙PINが上流側段ロール110dと接する位置よりも上流側に固定される。そして、線材取付棒520dから延びる線状部品400dの線状部材410dは、上流側段ロール110dに形成された溝118dに巻き付けられた後、そのため、線状部材410は、中芯紙PINの搬送に伴って下流側に引かれることにより、下流側段ロール120の外周側に押しつけられ、押圧領域に到達する。
【0080】
このように、第5実施形態においても、線材取付棒520dに一端が巻き付けられた線状部品400dは、その線状部材410dが中芯紙PINの搬送に伴って下流側に引かれ、下流側段ロール120の外周側に押しつけられる。そのため、中芯紙PINを下流側段ロール120に吸着する手段を用いることなく、中芯紙PINを押圧領域まで安定的に搬送し、押圧領域において、中芯紙PINとライナー紙PLNとを適切に接着し、良好な片面段ボールPCGを製造することができる。
【0081】
なお、第5実施形態では、線状部材410dは、中芯紙PINが上流側段ロール110dと下流側段ロール120とにより挟み込まれる位置の近傍から、下流側段ロール120の外周側に押しつけられる。そのため、ガイド板を省略しても、段繰加工が施された中芯紙PINは、下流側段ロール120の外周面に沿って誘導される。
【0082】
[線状部品の取付補助手段]
上記第3および第4実施形態のシングルフェーサー10bでは、
図4(a)および
図5(a)に示すように、複数の線状部品400,400cが使用される。また、第1、第2および第5実施形態においても、特に図示しないが、少なくとも上流側段ロール110,110dの軸方向の両端付近に1本ずつ線状部品400,400dが配置される。
【0083】
このように複数の線状部品をシングルフェーサーに取り付ける場合、個々の線状部品の線状部材を下流側段ロールの外周側に沿わせるように導き、線状部材の末端部を押圧領域まで延ばすことは、必ずしも容易でない。そこで、複数の線状部品をシングルフェーサーに取り付ける際に、線状部品の線状部材を下流側段ロールの外周側に沿わせるとともに、線状部材の末端部を押圧領域まで到達させることをより容易とする手段(線状部品の取付補助手段)を準備するのが好ましい。
【0084】
図7は、線状部品400,400cの取付補助手段を示す説明図である。
図7(a)は、第3実施形態のシングルフェーサー10b(
図3)における線状部品の取付補助手段を示し、
図7(b)は、第4実施形態のシングルフェーサーにおける線状部品の取付補助手段を示している。なお、
図7(a)および
図7(b)に示す、線状部品400,400cと、後述する線状部品の取付補助手段とは、それぞれ全体で線状部材410,410cを含む資材であるので、「線状部材資材」とも呼ぶことができる。
【0085】
図7(a)の例では、複数の線状部品400の線状部材410が、ループ部420およびカシメ部430の近傍の上流側と、下流側の末端部とにおいて、それぞれ一体化用紙611,612に剥離可能な状態で接着されている。この線状部材410の一体化用紙611,612への接着部分において、線状部品400(線状部材410)は、そのループ部420が取り付けられるガイド板130b(
図3)の配置間隔と同一の間隔で配置される。
【0086】
このように、線状部材410の上流側が一体化用紙611に接着されることにより、複数のガイド板130bの取付ピン132bに、複数のループ部420を一括して取り付けることができる。そして、線状部材410の下流側に接着された一体化用紙612を押圧領域まで導くことにより、複数の線状部材410を下流側段ロール120の外周側に沿わせるように導き、それらの末端部を押圧領域まで延ばすことができる。
【0087】
このように、上流側と下流側とのそれぞれにおいて、複数の線状部材410を一体化用紙611,612に接着することにより、複数の線状部品400は、適切にシングルフェーサー10bに取り付けられる。複数の線状部品400のシングルフェーサー10b(
図3)への取付の後、上流側の一体化用紙611は、必要に応じて除去される。
【0088】
一方、下流側の一体化用紙612は、押圧領域において、下流側段ロール120bと押圧ロール330bとにより押圧された中芯紙PINbとライナー紙PLNbとに挟み込まれる。そして、下流側段ロール120bと押圧ロール330bとが回転して、中芯紙PINbとライナー紙PLNbとが下流側に搬送されることにより、線状部材410の下流側に接着された一体化用紙612が線状部材410から離脱し、
図3に示すように、線状部品400が適切に配置された状態となる。
【0089】
図7(b)の例では、2本の線状部品400cの一端が線材取付棒520cに巻き付けられるとともに、線状部品400cの線状部材410cが、下流側の末端部において、一体化用紙612cに剥離可能な状態で接着されている。なお、線状部品400cの線材取付棒520cへの巻付部分および一体化用紙612cへの接着部分において、線状部品400c(線状部材410c)は、
図5(a)に示す使用状態と同一の間隔で配置される。
【0090】
図5に示す第4実施形態では、線状部品400cの一端が巻き付けられた線材取付棒520cをガイド板510cの切込519cに嵌め込むことにより、線状部品400cの取付が行われる。そのため、線状部品400cの一端を線材取付棒520cに巻き付けた
図7(b)の例では、上流側の一体化用紙が省略される。そして、下流側の一体化用紙612cは、
図7(a)の例で説明した通り、中芯紙PINbとライナー紙PLNbとが下流側に搬送されることにより、線状部材410cから離脱する。
【0091】
なお、上述の通り、シングルフェーサー10,10a,10dでは、通常、複数の線状部品400,400d(線状部材410,410d)が使用されるが、単一の線状部品400,400d(線状部材410,410d)を使用することも可能である。
【0092】
[段ボール製造装置]
図8は、第1実施形態のシングルフェーサー10を用いた段ボール製造装置1の概略構成を示す概略構成図である。
図8に示す段ボール製造装置1は、シングルフェーサー10、中芯紙給紙機構20、ライナー紙給紙機構30、搬送機構40および切断機構50を有している。
【0093】
中芯紙給紙機構20は、蛇腹状に折りたたまれた中芯紙PINが載置される用紙台21と、中芯紙PINの搬送方向を変更して、用紙台21から引き出される中芯紙PINをシングルフェーサー10に適正に供給する2つの転向ロール22,23とを有している。
【0094】
ライナー紙給紙機構30は、中芯紙給紙機構20と同様に、蛇腹状に折りたたまれたライナー紙PLNが載置される用紙台31と、ライナー紙PLNの搬送方向を変更して、用紙台31から引き出されるライナー紙PLNをシングルフェーサー10に適正に供給する転向ロール32とを有している。
【0095】
図8の例では、中芯紙給紙機構20の用紙台21と、ライナー紙給紙機構30の用紙台31とは、上下に並べて配置されている。そのため、中芯紙給紙機構20では、2本の転向ロール22,23を用いて、搬送される中芯紙PINが、中芯紙給紙機構20の上方に配置されたライナー紙給紙機構30、および、ライナー紙給紙機構30の用紙台31上に載置されたライナー紙PLNと接触しないようにしている。
【0096】
なお、
図8の例では、ライナー紙給紙機構30の用紙台31を、中芯紙給紙機構20の用紙台21の上方に配置しているが、ライナー紙給紙機構の用紙台と、中芯紙給紙機構の用紙台との上下を入れ替えることも可能である。この場合、中芯紙給紙機構の用紙台および中芯紙と、ライナー紙とが接触しないように、ライナー紙給紙機構には、少なくとも2つの転向ロールを設けられる。
【0097】
また、中芯紙給紙機構の用紙台と、ライナー紙給紙機構の用紙台との位置関係は、種々変更することも可能である。例えば、2つの用紙台を上下方向からずらして配置し、あるいは、水平方向に並べて配置することも可能である。これらの場合においても、転向ロールを適宜配置することにより、中芯紙とライナー紙の接触を回避することができる。
【0098】
但し、
図8の例に示すように、中芯紙給紙機構の用紙台とライナー紙給紙機構の用紙台とを上下に並べて配置することにより、段ボール製造装置1が占有する床面積をより小さくすることができる。そのため、段ボール製造装置1をより柔軟に配置することが可能となる。
【0099】
シングルフェーサー10は、中芯紙給紙機構20から供給された中芯紙PINと、ライナー紙給紙機構30から供給されたライナー紙PLNとから、上述の通り、片面段ボールPCGを形成する。形成された片面段ボールPCGは、2つのロール41,42を有する搬送機構40により、切断機構50に送られる。
【0100】
切断機構50は、下刃51と上刃52とを有するシャーリング装置であり、下刃51を上方に移動させ、上刃52を下方に移動させることにより、切断機構50に送られてきた片面段ボールPCGを切断する。そして、搬送機構40からの片面段ボールPCGの搬送量に応じて、適宜切断を行うことにより、搬送方向の長さが揃った板状の片面段ボール(図示しない)が得られる。このようにして得られた片面段ボールは、図示しない段ボール載置機構に順次積層される。
【0101】
このように、
図8に示す段ボール製造装置1では、片面段ボールPCGの素材となる中芯紙PINとライナー紙PLNとは、いずれも、蛇腹状に折りたたまれた状態で用紙台21,31上に載置される。このように用紙台21,31上に載置された中芯紙PINおよびライナー紙PLNは、その外形が略直方体状となるため、ロール状の中芯紙やライナー紙を使用するよりも空間効率が高くなり、段ボール製造装置1を小型化することがより容易となる。
【0102】
さらに、段ボール製造装置1では、中芯紙PINとライナー紙PLNとを蛇腹状に折りたたまれた状態としているため、慣性モーメントにより中芯紙PINおよびライナー紙PLNの引出の開始や停止が遅れることが抑制される。そのため、中芯紙PINとライナー紙PLNとを蛇腹状に折りたたむことにより、片面段ボールPCGの製造の開始および停止を随時行うことが容易となるため、使用量に合わせた片面段ボールPCGの製造がより容易となる。
【0103】
なお、
図8の例では、段ボール製造装置1に、第1実施形態のシングルフェーサー10を用いているが、第1実施形態のシングルフェーサー10に換えて、第2ないし第5実施形態のシングルフェーサー10a,10b,10dを用いることも可能である。この場合、中芯紙給紙機構20、ライナー紙給紙機構30、搬送機構40および切断機構50の形状や構成は、使用されるシングルフェーサー10a,10b,10dに合わせて、適宜変更される。
【0104】
[変形例]
なお、本発明は上記各実施形態等に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば以下のような変形も可能である。
【0105】
上記各実施形態では、接着剤塗布部200,200bに設けられた塗工ロール210,210bを用いて、段繰加工が施された中芯紙PIN,PINbに接着剤ADHを塗布しているが、塗工ロールを用いることなく接着剤を塗布することも可能である。例えば、接着剤塗布部に設けられた噴霧装置を用いて、段繰加工が施された中芯紙に接着剤を塗布することも可能である。さらに、ホットメルト接着剤等を使用する場合には、接着剤塗布部を省略し、予め、素材となる平坦な中芯紙にホットメルト接着剤を塗布するようにすることもできる。
【0106】
[変形例2]
上記各実施形態では、線状部品400,400c,400dは、ガイド板130,130a,130bに設けられた取付ピン132,132a,132b、ガイド板130cの切込519cに嵌め込まれた線材取付棒520c、あるいは、中芯紙PINが上流側段ロール110dと接する位置よりも上流側に固定された線材取付棒520dに取り付けられているが、線状部品あるいは線状部材の取付態様や取付位置は種々変更可能である。
【0107】
但し、段繰領域から押圧領域までの全体にわたって、線状部材が段繰された中芯紙の外周側に配置されるようにすることがより容易となり、段繰加工された中芯紙の搬送をさらに安定化させるのがより容易となる点で、線状部品あるいは線状部材は、上記各実施形態のように取り付けるのが好ましい。
【0108】
さらに、塗工ロールを用いて段繰加工された中芯紙に接着剤を塗布する場合には、塗工ロールに引かれることよって下流側段ロールから中芯紙が浮き上がることを抑制するため、線状部材は、塗工ロールよりも上流の位置から、下流側段ロールの外周面に沿って搬送される中芯紙の外周側に配置されるように取り付けるのが好ましい。
【0109】
[変形例3]
上記各実施形態では、本発明を片面段ボールPCG,PCGbの製造に適用しているが、本発明は、片面段ボールに限らず、両面段ボールの製造に適用することも可能である。一般的に、両面段ボールは、定尺板状の片面段ボールに、ライナー紙を接着することで製造されるので、上記各実施形態等のシングルフェーサー10,10a,10b,10dや、段ボール製造装置1をそのまま使用して、両面段ボールを製造することができる。
【符号の説明】
【0110】
1・・段ボール製造装置、10,10a,10b,10d・・シングルフェーサー、20・・中芯紙給紙機構、21・・用紙台、22,23・・転向ロール、30・・ライナー紙給紙機構、31・・用紙台、32・・転向ロール、40・・搬送機構、41,42・・ロール、50・・切断機構、51・・下刃、52・・上刃、100・・段繰部、110,110b,110d・・上流側段ロール、111,111b・・ロール軸、118d・・溝、119b・・溝、120,120b・・下流側段ロール、121・・ロール軸、130,130a,130b,130c・・ガイド板、131・・軸受部、132,132b・・取付ピン、135,135a,135b・・ガイド面、141・・調整ネジ、142・・ブラケット、143・・固定ネジ、200,200b・・接着剤塗布部、210,210b・・塗工ロール、220,220b・・ドクターロール、230,230b・・ドクターブレード、240,240b・・収容容器、241,241b・・支点軸、300,300a,300d・・押圧部、310・・押圧ベルト、321,322・・ロール、330a,330b・・押圧ロール、400,400c,400d・・線状部品、410,410c,410d・・線状部材、420・・ループ部、430・・カシメ部、510c・・ガイド板、519c・・切込、520c,520d・・線材取付棒、611・・一体化用紙、612,612c・・一体化用紙、ADH・・接着剤、PCG,PCGb・・片面段ボール、PIN,PINb・・中芯紙、PLN,PLNb・・ライナー紙