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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085154
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】乗員見守りシステム
(51)【国際特許分類】
   B60N 5/00 20060101AFI20230613BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230613BHJP
   B60R 11/04 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B60N5/00
A61B5/11
B60R11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199690
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳山 雄生
(72)【発明者】
【氏名】田岡 巧
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍司
(72)【発明者】
【氏名】河村 知史
【テーマコード(参考)】
3B088
3D020
4C038
【Fターム(参考)】
3B088QA02
3D020BA20
3D020BB02
3D020BC05
3D020BD05
4C038VA04
4C038VB02
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】コスト面を考慮しつつ、乗合型車両に乗車した乗員の安全性を向上させ得る技術を提供すること。
【解決手段】
乗合型車両90に乗車している乗員99を見守る乗員見守りシステム1であって、
前記乗員99の乗員情報を取得する検知要素2と、
前記乗員情報を基に、前記乗員99の状態評価を行う制御要素3と、
前記乗合型車両90に搭載され、入力ボタン50への入力に連動して乗員99の降車サインを表示するとともに、前記制御要素3の前記状態評価の結果に応じた状態評価サインを前記乗員99に向けて表示する、意思表示要素5と、を具備する、乗員見守りシステム1。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗合型車両に乗車している乗員を見守る乗員見守りシステムであって、
前記乗員の乗員情報を取得する検知要素と、
前記乗員情報を基に、前記乗員の状態評価を行う制御要素と、
前記乗合型車両に搭載され、入力ボタンへの入力に連動して乗員の降車サインを表示するとともに、前記制御要素の前記状態評価の結果に応じた状態評価サインを前記乗員に向けて表示する、意思表示要素と、を具備する、乗員見守りシステム。
【請求項2】
乗合型車両に乗車している乗員を見守る乗員見守りシステムであって、
前記乗員の乗員情報を取得する検知要素と、
前記乗員情報を基に、前記乗員の状態評価を行う制御要素と、を具備し、
前記制御要素は、前記乗合型車両に搭載され入力ボタンへの入力に連動して乗員の降車サインを表示する意思表示要素に、前記状態評価の結果に応じた状態評価サインを前記乗員に向けて表示させる、乗員見守りシステム。
【請求項3】
前記意思表示要素は、前記入力ボタンと、前記降車サイン及び前記状態評価サインを表示するための表示部と、を具備する、請求項1に記載の乗員見守りシステム。
【請求項4】
前記意思表示要素は、前記乗合型車両に搭載され前記乗員が着座する座席毎に設けられている、請求項1又は請求項3に記載の乗員見守りシステム。
【請求項5】
前記制御要素は、さらに、前記乗員が保持する携帯端末に向けて、前記状態評価サインを表示させるための評価信号を無線送信する、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の乗員見守りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバス等の乗合型車両に搭載される乗員見守りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
バス等の乗合型車両に乗車する乗員は、様々な姿勢をとり得る。このうち起立している乗員や、座席から立ち上がろうとしている乗員、座席に着座しようとしている乗員等は、着座している乗員に比べて、重心が高く不安定であるために、乗合型車両の走行状態等によっては当該乗員が転倒する虞がある。
【0003】
乗合型車両の乗員を転倒等の危険から保護するために、客室を監視し乗員を見守るための乗員見守りシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、バスなどの車両において、車室内における乗員の状況を監視することにより車室内事故を防止可能な車内事故防止システムが紹介されている。当該車内事故防止システムは、車室内に設置された全方位カメラと、当該全方位カメラの撮影内容に基づいて設定された観察領域における危険性を判断する危険性判断部と、当該危険性判断部の判断結果に応じて警報を通知する警報通知部とを備える。このうち警報通知部は、車両の発進時には上記の警報を画像によって通知すると共に、車両の走行中には警報を音声によって通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-107817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1には、警報通知部45として、画像警報装置5や音声警報装置6が例示されている。画像警報装置5としてはディスプレイ装置が例示され、音声警報装置6としてはスピーカーが例示されている。また、特許文献1には、当該画像警報装置5や音声警報装置6の設置について、運転席24の右側に一つ設置する態様が例示されている(〔0025〕~〔0029〕段落等参照)。
【0007】
ところで、運転席の側方に上記した画像警報装置5や音声警報装置6等の警報通知部45を配置する場合、当該警報通知部45が起立している乗員の蔭になる場合がある。この場合には、座席に着座している乗員から警報通知部45が視認し難くなる場合がある問題がある。
また、特許文献1に紹介されているように警報通知部45を一つだけ設置する場合には、どの乗員に対する警報なのかを判別し難く、警報を通知したことが該当する乗員に認識されない事態も予想される。
【0008】
個々の乗員に対して別々の警報通知部を設けることも考えられるが、この場合には、数多くの警報通知部を設置する必要があり、コスト面を考慮すると現実的ではない。
したがって、特許文献1に紹介されている技術によっても、乗合型車両に乗車した乗員の安全を十分に確保できるとは言い難い事情があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、コスト面を考慮しつつ乗合型車両に乗車した乗員の安全性を向上させ得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の第1態様の乗員見守りシステムは、
乗合型車両に乗車している乗員を見守る乗員見守りシステムであって、
前記乗員の乗員情報を取得する検知要素と、
前記乗員情報を基に、前記乗員の状態評価を行う制御要素と、
前記乗合型車両に搭載され、入力ボタンへの入力に連動して乗員の降車サインを表示するとともに、前記制御要素の前記状態評価の結果に応じた状態評価サインを前記乗員に向けて表示する、意思表示要素と、を具備する、乗員見守りシステムである。
【0011】
また、上記課題を解決する本発明の第2態様の乗員見守りシステムは、
乗合型車両に乗車している乗員を見守る乗員見守りシステムであって、
前記乗員の乗員情報を取得する検知要素と、
前記乗員情報を基に、前記乗員の状態評価を行う制御要素と、を具備し、
前記制御要素は、前記乗合型車両に搭載され入力ボタンへの入力に連動して乗員の降車サインを表示する意思表示要素に、前記状態評価の結果に応じた状態評価サインを前記乗員に向けて表示させる、乗員見守りシステムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の乗員見守りシステムによると、コスト面を考慮しつつ乗合型車両に乗車した乗員の安全性を向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の乗員見守りシステム及び当該乗員見守りシステムが搭載されている乗合型車両を模式的に説明する説明図である。
図2】実施例1の乗員見守りシステムにおける意思表示要素を模式的に表す説明図である。
図3】実施例1の乗員見守りシステムにおける意思表示要素を模式的に表す説明図である。
図4】実施例1の乗員見守りシステムにおける意思表示要素を模式的に表す説明図である。
図5】実施例1の乗員見守りシステムを模式的に説明する説明図である。
図6】実施例2の乗員見守りシステムを模式的に説明する説明図である。
図7】実施例3の乗員見守りシステムを模式的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例等に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0015】
本発明の乗員見守りシステムは、乗合型車両に乗車している乗員を見守る乗員見守りシステムである。
本発明の第1態様の乗員見守りシステムは、
前記乗員の乗員情報を取得する検知要素と、
前記乗員情報を基に、前記乗員の状態評価を行う制御要素と、
前記乗合型車両に搭載され、入力ボタンへの入力に連動して乗員の降車サインを表示するとともに、前記制御要素の前記状態評価の結果に応じた状態評価サインを前記乗員に向けて表示する、意思表示要素と、を具備する。
【0016】
当該第1態様の乗員見守りシステムでは、検知要素で取得した乗員情報を基に、制御要素で乗員の状態評価を行う。状態評価の結果として、例えば、乗員が危険な状態である場合に危険判定をしても良いし、乗員が危険な状態でない場合に安全判定をしても良い。意思表示要素は、当該状態評価の結果に応じた状態評価サインを表示する。例えば状態評価の結果としての危険判定を受け、危険な状態にある乗員に向けて危険サインを表示しても良い。または、状態評価の結果としての安全判定を受け、安全な状態にある乗員に向けて安全サインを表示しても良い。
【0017】
上記の状態評価サインを表示する表示要素は、乗員による入力ボタンへの入力に連動して乗員の降車サインを表示する意思表示要素であるため、個々の乗員から視認し易い。これにより、本発明の第1態様の乗員見守りシステムによると、危険な状態や安全な状態にある乗員本人に、判別しやすい状態で直接その旨を通知することができる。または、本発明の第1態様の乗員見守りシステムによると、危険な状態や安全な状態になった各々の乗員に対して、当該各々の乗員に対応する位置にある意思表示要素で状態評価サインを表示することができる。これにより、本発明の第1態様の乗員見守りシステムによると、乗合型車両に乗車した乗員の安全性を向上させることが可能である。
【0018】
第1態様の乗員見守りシステムは、一般的な乗合型車両に当然に搭載される降車ボタン装置等の意思表示要素に、状態評価サインを表示するものともいい得る。このため第1態様の乗員見守りシステムは、コスト面を考慮した簡易な装置により、対象となる乗員に危険を十分に伝達し得る乗員見守りシステムということが可能である。
【0019】
また、上記課題を解決する本発明の第2態様の乗員見守りシステムは、
乗合型車両に乗車している乗員を見守る乗員見守りシステムであって、
前記乗員の乗員情報を取得する検知要素と、
前記乗員情報を基に、前記乗員の状態評価を行う制御要素と、を具備し、
前記制御要素は、前記乗合型車両に搭載され入力ボタンへの入力に連動して乗員の降車サインを表示する意思表示要素に、前記状態評価の結果に応じた状態評価サインを前記乗員に向けて表示させる、乗員見守りシステムである。
【0020】
本発明の第2態様の乗員見守りシステムは、上記した第1態様の乗員見守りシステムにおける意思表示要素以外の要素で構成されたものである。
したがって、当該第2態様の乗員見守りシステムによっても、第1態様の乗員見守りシステムと同様に、危険な状態や安全な状態にある乗員本人に、判別しやすい状態で直接その旨を通知することができ、乗合型車両に乗車した乗員の安全性を向上させることが可能である。また当該第2態様の乗員見守りシステムは、上記した第1態様の乗員見守りシステムと同様に、コスト面を考慮した簡易な装置により、対象となる乗員に危険を十分に伝達することが可能である。
【0021】
ここで、既述したように、本発明の第2態様の乗員見守りシステムは、上記した第1態様の乗員見守りシステムにおける意思表示要素以外の要素で構成されたものである。したがって、以下、第1態様の乗員見守りシステムと第2態様の乗員見守りシステムとに共通する事項については纏めて説明する。以下、第1態様の乗員見守りシステムと第2態様の乗員見守りシステムとを総称して、単に、本発明の乗員見守りシステムという場合がある。
【0022】
以下、本発明の乗員見守りシステムをその構成要素毎に説明する。
【0023】
本発明の乗員見守りシステムは、既述したように乗合型車両に乗車している乗員の状態評価を行い、かつ、当該状態評価の結果に応じて、乗員に対して状態評価サインを表示することで危険や安全等を通知するものである。
乗合型車両とは、例えばバスや電車等の複数の乗員が乗り降りするものを意味し、路線バス等の不特定多数の乗員が利用する所謂公共交通機関であっても良いし、マイクロバス等の特定の乗員が利用するものであっても良い。
【0024】
乗合型車両は、乗員が車両進行方向を向いて着座する縦並び型の座席を具備しても良い。または、乗員が車両進行方向と交差する方向を向いて着座する横並び型の座席を具備しても良い。さらには、当該縦並び型の座席と横並び型の座席との両方を具備しても良い。
【0025】
本発明の乗員見守りシステムにおける検知要素は、乗員の乗員情報を取得するものである。当該検知要素は、上記した乗員の状態評価を行うための材料として利用し得る乗員情報を取得するものであれば良く、当該乗員情報の種類は特に限定しない。検知要素は、例えば、乗員情報として乗員の画像情報を取得するカメラであても良いし、乗員情報として乗員における特定部位の位置情報を取得する距離センサであっても良いし、乗員情報として座席に作用する荷重を検知する荷重センサであっても良いし、乗員情報として床に作用する荷重を検知する床センサであっても良い。その他、超音波センサ、赤外線センサ、圧力センサ、接触センサ、3D距離画像センサ等も検知要素として好適である。本発明の乗員見守りシステムは、検知要素としてこれらを単独で用いても良いし、これらの複数を併用しても良い。
【0026】
検知要素は、どのようなタイミングで乗員情報を取得しても良く、例えば、乗員が乗合型車両に乗車した段階で当該乗員の乗員情報を取得しても良いし、乗員が座席に着座した段階で当該乗員の乗員情報を取得しても良い。
【0027】
検知要素は、様々な角度から乗員情報を取得するのが好ましく、例えば天井や客室を区画する壁部等、客室内の様々な位置に設けるのが好ましい。
【0028】
ここで、検知要素は、乗員の頭部位置hを含む乗員情報を取得するものであるのが好適である。乗員の頭部位置hの変化を基にすれば、後述する制御要素により、座席に着座している乗員が起立しようとしている状態にあると判定したり、また、座席に着座している乗員や起立している乗員が安定していない状態、つまり急に危険な動作を行う可能性のある状態であると判定したりすることが可能である。
【0029】
頭部位置hを含む乗員情報を取得し得る検知要素としては、上記したカメラや距離センサを好適に採用し得る。
【0030】
本発明の乗員見守りシステムにおける制御要素は、検知要素が取得した乗員情報を基に、乗員の状態評価を行い、当該状態評価の結果である危険判定や安全判定等を行う。制御要素は検知要素及び意思表示要素に無線又は有線で接続され、状態評価の結果に応じて、意思表示要素に評価信号を送信して状態評価サインを表示させる。
制御要素による状態評価は、既知の判定機序に基づき行えば良く、本発明の乗員見守りシステムにおいては特に限定しないが、上記したような乗員の頭部位置hの変化量を基に行うのが好適である。
【0031】
具体的には、座席に着座した乗員の頭部位置hを監視し、当該頭部位置hが予め定めた安全領域から外れる場合に、乗員が起立する予兆として危険判定することが可能である。また、当該頭部位置hが予め定めた安全領域内にある場合に、乗員が安定した状態にあるとして安全判定することが可能である。さらには、危険判定と安全判定との間の判定、例えば注意判定等を行うことも可能である。
また、座席に着座した乗員や起立した乗員の前後方向における頭部位置hの変化量を監視し、当該変化量が予め定めた閾値を超える場合に乗員が安定した状態にないとして、危険判定することが可能である。同様に頭部位置hの変化量を監視し、当該変化量が予め定めた閾値内に収まる場合に乗員が安定した状態にあるとして、安全判定することも可能である。この場合にも、危険判定と安全判定との間の判定として、注意判定等を行うことも可能である。
【0032】
上記の安全領域や閾値は、年齢、性別、乗員の状態等を含む乗員の種別や、乗員や座席の位置等に応じて適宜適切に設定すれば良い。
【0033】
なお、本発明の乗員見守りシステムにおける制御要素は、乗員情報としての乗員の画像情報を基に、当該乗員の姿勢やその変化を評価する骨格診断により、乗員の状態評価及び各種の判定を行っても良い。その他の方法で乗員の状態評価及び各種の判定を行っても良い。
【0034】
なお、制御要素は、乗合型車両に搭載されても良いし、乗合型車両の外部に配置されても良い。制御要素が乗合型車両の外部に配置される場合には、当該制御要素が乗合型車両に搭載された検知要素と無線的にデータの授受を行えば良い。制御要素が乗合型車両に搭載される場合、制御要素は乗員見守りシステム専用のCPUやメモリ等を有するコンピュータ等であっても良いし、例えば乗合型車両のECU等、他のシステムの一部と兼用されても良い。
【0035】
本発明の第1態様の乗員見守りシステムは、さらに、意思表示要素を具備する。
当該意思表示要素は、乗合型車両に搭載され、入力ボタンへの入力に連動して乗員の降車サインを表示する所謂降車ボタンとしての機能と、制御要素の危険判定や安全判定等、状態評価の結果を受けて、乗員に向けた状態評価サインを表示する乗員向け通知部としての機能とを有する。第1態様の乗員見守りシステムにおける制御要素は、当該意思表示要素に状態評価サインを表示させる制御を行うともいい得る。
【0036】
意思表示要素の入力ボタンは押しボタン型のものであっても良いし、タッチパネル式のものであっても良い。
【0037】
意思表示要素は、降車サイン及び状態評価サインを表示すなわち視覚的に通知する。意思表示要素が降車サイン及び状態評価サインを表示する方法は特に限定されず、その意味が乗員に理解できれば良い。
例えば、意思表示要素が表示する降車サイン及び状態評価サインは、テキスト、図形、静止画、動画、ライトの点灯を用いるのが好適であり、これらのうちの一種のみを用いても良いし複数種を併用しても良い。
【0038】
第1態様の乗員見守りシステムにおける意思表示要素は、入力ボタンに加えて、降車サイン及び状態評価サインを表示する表示部を具備するといい得る。表示部の表示様式は特に限定しない。当該表示様式の具体例として、光源と、当該光源の表側に配置された窓部とを有し、当該窓部の形状に応じた降車サインや状態評価サインを表示する透光型のものを挙げることができる。または、当該具体例として、液晶やLED等を用いて降車サインや状態評価サインを表示するディスプレイ型のものを挙げることもできる。さらには、当該具体例として、降車サインや状態評価サインをスクリーンに投影する投影型のものを挙げることもできる。
第1態様の乗員見守りシステムにおける表示要素は、その表示様式として、上記のものに代表される種々の表示様式のうち、一種または複数を用いれば良い。
なお、意思表示要素は、降車サインや状態評価サインを表示することに加えて、音声により乗員に危険を通知しても良い。
【0039】
さらに、本発明の乗員見守りシステムにおける制御要素は、既述した状態評価の結果に応じた状態評価サインを、上記の意思表示要素に加えて、乗員が保持する携帯端末にも表示すべく、当該携帯端末に向けて評価信号を送信しても良い。特に状態評価の結果が危険判定であった場合には、乗員に当該結果を迅速に伝える必要がある。したがってこの場合には特に、制御要素は乗員の携帯端末に危険サインを表示するための危険信号を送信するのが好適である。
【0040】
この場合、携帯端末に向けた評価信号は、如何なる装置から発しても良いが、個々の乗員に適宜適切な評価信号を発するためには、個々の乗員の近くにある意思表示要素から発するのが好適である。この場合、意思表示要素は、乗員の携帯端末に向けて近距離無線通信を行うのが実用的である。
【0041】
以下、具体例を挙げて本発明の乗員見守りシステムを説明する。
【0042】
(実施例1)
実施例1の乗員見守りシステムは、乗合型車両の一種である路線バスに搭載されるものである。
実施例1の乗員見守りシステム及び当該乗員見守りシステムが搭載されている乗合型車両を模式的に説明する説明図を図1に示す。実施例1の乗員見守りシステムにおける意思表示要素を模式的に表す説明図を図2図4に示す。実施例1の乗員見守りシステムを模式的に説明する説明図を図5に示す。
以下、実施例1において上、下、左、右、前、後は、図1に示す上、下、左、右、前、後を意味するものとする。
【0043】
図1に示すように、実施例1の乗員見守りシステム1が搭載された乗合型車両90は、その客室91に縦並び型の複数の座席92を有し、各座席92に着座した乗員99は同じ方向(前方)を向く。
【0044】
実施例1の乗員見守りシステム1は、検知要素2、制御要素3及び複数の意思表示要素5を具備する。検知要素2は制御要素3に無線接続され、制御要素3は意思表示要素5に無線接続されている。また制御要素3は乗合型車両90のECU(図略)に接続され、ECUから乗合型車両90の運転情報を取得する。検知要素2は複数のカメラを有する。
【0045】
なお、カメラは赤外線カメラの一種であるTOF(Time Of Flight)カメラである。TOFカメラ20は、乗員情報として動画および距離情報を取得する。距離情報は、具体的には、画像情報に含まれる乗員99の頭部位置hと予め定めた基準位置(例えば座席92の座面、床、天井等)との距離である。当該TOFカメラ20は、カメラとして機能しかつ距離センサとしても機能するといい得る。
【0046】
各TOFカメラ20には個別のIDが割り当てられている。各TOFカメラ20は、客室91内における異なる領域を撮像するとともに、当該領域にいる一人又は複数人の乗員99の頭部位置hに関する位置情報を取得することが可能である。実施例1の乗員見守りシステム1では、乗員99の頭部を画角内に収めるべく、TOFカメラ20は主として客室91の天井に配置されている。
【0047】
各意思表示要素5は、客室91の壁部94に設置されている。より具体的には、各意思表示要素5は、各座席92につき一つずつ設けられ、各座席92に着座している乗員99から手の届き易い位置かつ視認し易い位置に配置されている。各意思表示要素5は、各々対応する座席92毎に専用のものといい得る。
【0048】
制御要素3は、制御部、信号保持回路及びリセット操作部を有する。制御部は、検知要素2の取得した乗員情報を乗員情報信号として受信するとともに、信号保持回路に照明制御信号を伝送する。照明保持回路は後述する意思表示要素5のスイッチ及び第2光源に接続されている。
【0049】
各意思表示要素5は、同じ形状である。具体的には、意思表示要素5は、図2に示すように、入力ボタン50及び表示部55を有する。入力ボタン50は押しボタンであり、表示部55は、後述する降車サイン及び危険サインを各々表示するための2つの表示領域を有する。
【0050】
入力ボタン50は、意思表示要素5の表面に露出するボタン部50b(図2参照)と、当該ボタン部50bの裏側に配置されているスイッチ50s(図5参照)とを有する。ボタン部50bを物理的に押圧操作することで、スイッチ50sがオンされる。これにより、入力ボタン50への入力がなされる。スイッチ50sには既述した制御要素3の信号保持回路及びリセット操作部が接続されている。したがって、リセット操作部からの照明保持解除信号が伝送されるまでの間、信号保持回路により、スイッチ50sがオンされた状態が維持される。
スイッチ50sには第1光源51が接続されている。スイッチ50sがオンされると、第1光源51が電源からの給電を受けて点灯する。
【0051】
ここで、表示部55は、降車サイン及び危険サインに対応した2つの窓部を有する表示板と、当該表示板の裏側に配置されている二つの光源とを具備する。一方の光源である第1光源51(図5参照)は、降車サインを表示するための第1窓部51w(図2参照)に対応した位置に配置され、他方の光源である第2光源52(図5参照)は、危険サインを表示するための第2窓部52w(図2参照)に対応した位置に配置されている。第1光源51及び第2光源52は制御要素3に接続されている。
【0052】
表示部55における2つの表示領域の一方は、入力ボタン50への入力に連動して乗員99の降車サインを表示する、降車サイン領域56である。具体的には、乗員99が当該入力ボタン50を押すことで当該入力ボタン50への入力を行うと、スイッチ50sがオンされ、第1光源51が点灯して、該当する意思表示要素5の表側には、降車サイン領域56に相当する位置に、第1窓部51wに対応した光のサインが表示される。実施例1の乗員見守りシステム1では、図3に示すように、降車サイン領域56には降車サインとして「停車します」の文字が点灯する。
【0053】
バス停に停車した後等の所定のタイミングで、制御要素3のリセット操作部(図5参照)がオンされると、当該リセット操作部からスイッチ50sに照明保持解除信号が伝送されて、当該スイッチ50sがオフされ、第1光源51が消灯して、降車サインが非表示になる(図2)。
【0054】
上記した2つの表示領域の他方は、後述する制御要素3の状態評価の結果が危険判定である場合に、乗員99に向けて危険サインを表示する、危険サイン領域57(図2参照)である。制御要素3が危険判定を行うと、第2光源52(図5参照)が点灯して、該当する意思表示要素5の表側には、危険サイン領域57(図2参照)に相当する位置に、第1窓部51wに対応した光のサインが表示される。実施例1の乗員見守りシステム1では、図4に示すように、危険サイン領域57には危険サインとして「発車まで座ってお待ち下さい」の文字が点灯する。
【0055】
以下制御要素3による状態評価及び危険判定について説明する。
【0056】
実施例1の乗員見守りシステム1における制御要素3は、先ず、走行/停車判定を行う。具体的には、制御要素3は、ECUからの運転情報に基づき、乗合型車両90が停車しているか否かを判断する。そして乗合型車両90が停車している場合には、制御要素3は、乗員99の状態評価を開始する。
【0057】
具体的には、このとき制御要素3は、先ず、検知要素2であるTOFカメラ20が取得した画像情報を基に乗員99の頭部位置hを設定する。実施例1の乗員見守りシステム1においては、当該頭部位置hを、乗員99の頭部の中心である三次元座標で表す。そして制御要素3は、座席92に着座している乗員99毎に、当該頭部位置hを基にした三次元的な安全領域を設定し、頭部位置hを連続的に監視するとともに当該頭部位置hと安全領域とを比較して、頭部位置hが安全領域外に出た場合に、危険判定を行う。
【0058】
制御要素3は、危険判定を行った場合に、図5に示す制御部から信号保持回路に照明制御信号を伝送する。これにより、第2光源52は電源からの給電を受けて点灯する。第2光源52が点灯すると、既述したように、危険サイン領域57には危険サインとして「発車まで座ってお待ち下さい」の文字が点灯する。
【0059】
乗員99が着座したことが検知された場合や所定時間が経過した後等の所定のタイミングで、リセット操作部がオンされると、当該リセット操作部から照明保持解除信号が伝送され、電源からの第2光源52への給電が停止して、第2光源52が消灯する。これにより危険サインが非表示になる(図2)。
【0060】
実施例1の乗員見守りシステム1によると、危険判定に基づく危険サインを、乗合型車両90に通常設置され降車サインを表示する意思表示要素5に表示する。意思表示要素5は個々の乗員99が降車サインを表示するための入力を容易に行い得るように、個々の乗員99の近くに配置され、個々の乗員99から視認し易い。これにより、実施例1の乗員見守りシステム1によると、危険な状態にある乗員99本人に、判別しやすい状態で直接その旨を通知することができ、乗合型車両90に乗車した乗員99の安全性を向上させることが可能である。
また、意思表示要素5は乗合型車両90に通常設置されるものであるために、危険サインを表示するための表示要素を別途準備する必要が無い。このため実施例1の乗員見守りシステム1はコスト面でも非常に優れている。
【0061】
(実施例2)
実施例2の乗員見守りシステムは、制御要素、検知要素及び意思表示要素の接続において実施例1の乗員見守りシステムと相違し、その余においては実施例1の乗員見守りシステムと概略同じものである。したがって、実施例2においては、実施例1との相違点を中心に説明する。
実施例2の乗員見守りシステムを模式的に説明する説明図を図6に示す。
【0062】
図5に示すように実施例1の乗員見守りシステムにおいては1つのリセット操作部を第1光源51及び第2光源52に接続しているが、図6に示すように、実施例2の乗員見守りシステムにおいては第1光源51用のリセット操作部と第2光源52用のリセット操作部とを個別に設けている。実施例1の乗員見守りシステムでは第1光源51及び第2光源52を同時消灯するところ、実施例2の乗員見守りシステムでは第1光源51及び第2光源52を個別に消灯し得る。
【0063】
また、実施例2の乗員見守りシステムでは、第1光源用51のリセット操作部は制御要素3に含まれず、当該リセット操作部は制御要素3とは別に設けた信号保持回路を介して第1光源51に接続されている。当該信号保持回路はスイッチ50sにも接続されている。換言すると、実施例2の乗員見守りシステムでは、第1光源51の制御するための第2の制御要素を、制御要素3とは別に設けている。
【0064】
これにより、実施例2の乗員見守りシステムによると、第2光源52を点灯及び消灯するための制御要素3を、スイッチ50s、第1光源51及びこれらを動作させるための回路を含む既存の降車ボタン装置に対して容易に後付けすることが可能である。
【0065】
実施例2の乗員見守りシステムでは、信号保持回路は第1光源51に接続されているが、信号保持回路は第1光源51と第2光源52との2系統に分かれて接続されてもよい。更には、信号保持回路の中に別系統の信号切替回路を含めてもよいし、信号保持回路とは別に第2光源52用の信号切替回路を設けても良い。
参考までに、第2光源52の点灯により表示される危険サインは、乗員99が安全な状態になればいつ解除されても良く、換言すると当該危険サインはリセット操作に因らず解除しても良い。このため第2光源52に信号保持回路が必要でない場合もある。
【0066】
(実施例3)
実施例3の乗員見守りシステムは、検知要素と意思表示要素との組み合わせにおいて実施例1の乗員見守りシステムと相違し、その余においては実施例1の乗員見守りシステムと概略同じものである。したがって、実施例3においては、実施例1との相違点を中心に説明する。
実施例3の乗員見守りシステムを模式的に説明する説明図を図7に示す。
【0067】
図7に示すように、実施例3の乗員見守りシステムでは、客室91に取り付けられた複数の意思表示要素5を、その意思表示要素5の近くにある座席92毎に、複数のグループGに分けている。
各グループGには、さらに、各々対応する検知要素2(TOFカメラ20)が含まれる。
各グループGに属する意思表示要素5及び検知要素2は、各々グループ毎に独立して制御要素3に接続され、同じグループGに属する各意思表示要素5の第1光源51及び第2光源52は、各々同期して点灯及び消灯する。
【0068】
したがって、実施例3の乗員見守りシステムでは、危険サインや降車サインを対象となる乗員99だけでなく、その周囲の乗員99にも表示する。
このような実施例3の乗員見守りシステムでは、個別の乗員99に危険サイン等を通知できなくなるかわりに、ある乗員99が危険な状態にあることを周囲の乗員99が気づき易くなることで、当該危険な状態にある乗員99の安全性が向上する利点がある。
また、多数の第2光源52や第1光源51を各々個別に制御要素3に接続する場合に比べて、配線コストを削減できる利点もある。
【0069】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0070】
1:乗員見守りシステム
2:検知要素
3:制御要素
5:意思表示要素
50:入力ボタン
55:表示部
90:乗合型車両
92:座席
99:乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7