(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085184
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】熱電変換素子及び熱電変換素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 10/17 20230101AFI20230613BHJP
H10N 10/01 20230101ALI20230613BHJP
【FI】
H01L35/32 A
H01L35/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114259
(22)【出願日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2021199323
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】世古 暢哉
(57)【要約】
【課題】微細化が容易な熱電変換素子及び熱電変換素子の製造方法を提供する。
【解決手段】熱電変換素子100は、基板10と、基板10の第1主面12の上に形成された熱電変換層30と、熱電変換層30を覆う絶縁層40と、絶縁層40の上に形成され、絶縁層40の第1コンタクトホール42を介して、熱電変換層30の第1主面32に接続する第1電極50と、絶縁層40の上に形成され、絶縁層40の第2コンタクトホール44を介して、熱電変換層30の第1主面32に接続する第2電極60とを備える。第1電極50の少なくとも一部は、第2電極60を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料から形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面の上に形成された熱電変換層と、
前記熱電変換層を覆う絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成され、前記絶縁層の第1コンタクトホールを介して、前記熱電変換層の主面に接続する第1電極と、
前記絶縁層の上に形成され、前記絶縁層の第2コンタクトホールを介して、前記熱電変換層の前記主面に接続する第2電極と、を備え、
前記第1電極の少なくとも一部は、前記第2電極を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料から形成されている、
熱電変換素子。
【請求項2】
前記第1電極は、第1層と第2層とを有し、
前記第1層は、前記熱電変換層の前記主面に接続し、
前記第2層は、前記第1層が前記第2層から露出しない状態で、前記第1層を覆い、
前記第2層と前記第2電極は、前記第1層を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する、同じ材料から形成されている、
請求項1に記載の熱電変換素子。
【請求項3】
前記第1層は、前記第1コンタクトホールの開口を、前記熱電変換層が前記絶縁層から露出しない状態で覆い、
前記第2電極は、前記第2コンタクトホールの開口を、前記熱電変換層が前記絶縁層から露出しない状態で覆う、
請求項2に記載の熱電変換素子。
【請求項4】
前記第1層は、第1基部と前記第1基部から延びる複数の第1櫛歯部とを有し、
前記第2電極は、第2基部と前記第2基部から延びる複数の第2櫛歯部とを有し、
前記第1櫛歯部と前記第2櫛歯部は、前記熱電変換層の前記主面において、交互に、対向して配置されている、
請求項2に記載の熱電変換素子。
【請求項5】
前記第1電極の全体は、前記第2電極を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料から形成されている、
請求項1に記載の熱電変換素子。
【請求項6】
前記第1電極は、前記第1コンタクトホールの開口を、前記熱電変換層が前記絶縁層から露出しない状態で覆い、
前記第2電極は、前記第2コンタクトホールの開口を、前記熱電変換層が前記絶縁層から露出しない状態で覆う、
請求項5に記載の熱電変換素子。
【請求項7】
前記第1電極は、第1基部と前記第1基部から延びる複数の第1櫛歯部とを有し、
前記第2電極は、第2基部と前記第2基部から延びる複数の第2櫛歯部とを有し、
前記第1櫛歯部と前記第2櫛歯部は、前記熱電変換層の前記主面において、交互に、対向して配置されている、
請求項5に記載の熱電変換素子。
【請求項8】
基板の上に、熱電変換層を形成する工程と、
前記熱電変換層の上に、絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層に、前記熱電変換層の主面を露出する第1コンタクトホールを形成する工程と、
前記絶縁層の上に、前記第1コンタクトホールを介して前記熱電変換層の前記主面に接続する、第1電極を形成する工程と、
前記第1電極が形成された前記絶縁層に、前記熱電変換層の前記主面を露出する第2コンタクトホールを形成する工程と、
前記絶縁層の上に、前記第2コンタクトホールを介して前記熱電変換層の前記主面に接続する第2電極を、前記第1電極の少なくとも一部を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料から形成する工程と、を含む、
熱電変換素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1電極を形成する工程は、前記第1電極の第1層を形成する工程を含み、
前記第2電極を形成する工程は、前記第2電極を形成する材料と同じ材料から前記第1電極の前記第1層を覆う前記第1電極の第2層を、前記第1層が前記第2層から露出しない状態で形成する工程を含む、
請求項8に記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項10】
前記第1電極は、前記第1コンタクトホールの開口を、前記熱電変換層が前記絶縁層から露出しない状態で覆い、
前記第2電極は、前記第2コンタクトホールの開口を、前記熱電変換層が前記絶縁層から露出しない状態で覆う、
請求項8に記載の熱電変換素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱電変換素子及び熱電変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度差によって、2つの電極間で熱起電力を発生させる熱電変換素子が知られている。例えば、特許文献1は、薄膜状の熱電変換材料層と、熱電変換材料層の一方の主面に設けられた第1電極と、熱電変換材料層の一方の主面の面内方向で第1電極と異なる箇所に設けられた第2電極と、を備える熱電変換素子を開示している。特許文献1では、第1電極を構成する材料の仕事関数と第2電極を構成する材料の仕事関数が、異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の熱電変換素子では、第1電極と第2電極との間隔を狭めることにより、短絡電流を増加させることができるので、熱電変換素子の微細化が望まれる。一方、特許文献1の熱電変換素子を、フォトリソグラフィとエッチングにより微細化する場合、幾つかの問題が生じる虞がある。例えば、熱電変換材料層の一方の主面に第1電極を形成する場合、熱電変換材料層を構成する材料と第1電極を構成する材料が異なり、異なる電極電位を有する熱電変換材料層と第1電極が導通状態であるので、エッチング液中において、電池が熱電変換材料層と第1電極との間で形成される。その結果、熱電変換材料層と第1電極との電位差(電極電位の差)によって、電流が熱電変換材料層と第1電極との間に流れて、熱電変換材料層の溶解、第1電極を構成する材料の異常な溶解等が生じる虞がある。また、第1電極が形成された熱電変換材料層の一方の主面に第2電極を形成する場合も同様に、エッチング液中において、電流が電池作用によって熱電変換材料層と第1電極と第2電極との間に流れて、熱電変換材料層と第1電極の溶解、第2電極を構成する材料の異常な溶解等が生じる虞がある。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、微細化が容易な熱電変換素子及び熱電変換素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1観点に係る熱電変換素子は、
基板と、
前記基板の主面の上に形成された熱電変換層と、
前記熱電変換層を覆う絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成され、前記絶縁層の第1コンタクトホールを介して、前記熱電変換層の主面に接続する第1電極と、
前記絶縁層の上に形成され、前記絶縁層の第2コンタクトホールを介して、前記熱電変換層の前記主面に接続する第2電極と、を備え、
前記第1電極の少なくとも一部は、前記第2電極を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料から形成されている。
なお、前記第1電極は、第1層と第2層とを有し、
前記第1層は、前記熱電変換層の前記主面に接続し、
前記第2層は、前記第1層が前記第2層から露出しない状態で、前記第1層を覆い、
前記第2層と前記第2電極は、前記第1層を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する、同じ材料から形成されてもよい。
【0007】
第2観点に係る熱電変換素子の製造方法は、
基板の上に、熱電変換層を形成する工程と、
前記熱電変換層の上に、絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層に、前記熱電変換層の主面を露出する第1コンタクトホールを形成する工程と、
前記絶縁層の上に、前記第1コンタクトホールを介して前記熱電変換層の前記主面に接続する、第1電極を形成する工程と、
前記第1電極が形成された前記絶縁層に、前記熱電変換層の前記主面を露出する第2コンタクトホールを形成する工程と、
前記絶縁層の上に、前記第2コンタクトホールを介して前記熱電変換層の前記主面に接続する第2電極を、前記第1電極の少なくとも一部を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料から形成する工程と、を含む。
なお、前記第1電極を形成する工程は、前記第1電極の第1層を形成する工程を含み、
前記第2電極を形成する工程は、前記第2電極を形成する材料と同じ材料から前記第1電極の前記第1層を覆う前記第1電極の第2層を、前記第1層が前記第2層から露出しない状態で形成する工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、第1層をエッチングにより形成する場合に、熱電変換層がエッチング液に曝されない。また、第2層と第2電極とをエッチングにより形成する場合に、熱電変換層と第1層がエッチング液に曝されない。これらにより、エッチング液を介した熱電変換層と第1層との間の電池作用とエッチング液を介した熱電変換層と第1層と第2電極との間の電池作用が、生じない。したがって、第1層をエッチングにより形成する場合と第2層と第2電極とをエッチングにより形成する場合に、電池作用によって生じる熱電変換層と第1層と第2層と第2電極の過剰な溶解を抑えて、熱電変換素子を容易に微細化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る熱電変換素子を示す上面図である。
【
図2】
図1に示す熱電変換素子をA-A線で矢視した断面図である。
【
図3】実施形態1に係る熱電変換素子の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態1に係る下地層を示す断面図である。
【
図5】実施形態1に係る熱電変換層を示す上面図である。
【
図6】実施形態1に係る絶縁層と熱電変換層とを示す上面図である。
【
図7】
図6に示す絶縁層と熱電変換層をB-B線で矢視した断面図である。
【
図8】実施形態1に係る第1コンタクトホールを示す上面図である。
【
図9】
図8に示す第1コンタクトホールをC-C線で矢視した断面図である。
【
図10】実施形態1に係る第1電極の第1層を示す上面図である。
【
図11】
図10に示す第1電極の第1層をD-D線で矢視した断面図である。
【
図12】実施形態1に係る第1電極の第1層の形成を説明するための模式図である。
【
図13】実施形態1に係る第2コンタクトホールを示す上面図である。
【
図14】
図13に示す第2コンタクトホールをE-E線で矢視した断面図である。
【
図15】実施形態1に係る第2電極と第1電極の第2層とを示す上面図である。
【
図16】
図15に示す第2電極と第1電極の第2層とをF-F線で矢視した断面図である。
【
図17】実施形態1に係る第2電極と第1電極の第2層の形成を説明するための模式図である。
【
図18】実施形態2に係る熱電変換素子を示す上面図である。
【
図19】
図18に示す熱電変換素子をG-G線で矢視した断面図である。
【
図20】実施形態2に係る熱電変換素子の製造方法を示すフローチャートである。
【
図21】実施形態2に係る第1電極の形成を説明するための模式図である。
【
図22】実施形態2に係る第1電極を示す上面図である。
【
図23】
図22に示す第1電極をH-H線で矢視した断面図である。
【
図24】実施形態2に係る第1電極を覆うフォトレジストを示す模式図である。
【
図25】実施形態2に係る第2電極を覆うフォトレジストを示す模式図である。
【
図26】実施形態2に係る第2電極の形成を説明するための模式図である。
【
図27】実施形態2に係る第1電極と第2電極が形成された後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る熱電変換素子について、図面を参照して説明する。
【0011】
<実施形態1>
図1~
図17を参照して、実施形態1に係る熱電変換素子100を説明する。熱電変換素子100は、
図1と
図2に示すように、基板10と、下地層20と、熱電変換層30と、絶縁層40と、第1電極50と、第2電極60と、保護層70とを備える。第1電極50は、第1層52と第2層56とを有する。第1層52は、熱電変換層30の第1主面32に接続し、第2層56は、第1層52を第2層56から露出しない状態に覆う。第2電極60は熱電変換層30の第1主面32に接続する。第2層56と第2電極60は、第1層52を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する、同じ材料から形成されている。なお、
図1では、理解を容易にするために、下地層20と絶縁層40とを省略している。また、以下の上面図では、下地層20を省略している場合がある。
【0012】
熱電変換素子100は、熱電変換層30の厚さ方向の温度差によって、熱起電力を生じる。すなわち、熱電変換素子100は熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。熱電変換素子100は、例えば、熱流束を検出するセンサとして利用される。なお、理解を容易にするため、本明細書では、
図1における熱電変換素子100の右方向(紙面の右方向)を+X方向、上方向(紙面の上方向)を+Y方向、+X方向と+Y方向に垂直な方向(紙面の手前方向)を+Z方向(厚さ方向)として説明する。
【0013】
熱電変換素子100の基板10は、例えば、平板状のガラス基板である。基板10は、厚さ方向(+Z方向)の熱抵抗を小さくするために、熱伝導率が高い材料から形成されることが好ましい。
【0014】
熱電変換素子100の下地層20は、基板10の第1主面12の上に設けられる。実施形態1では、下地層20は、第1主面12の全面に設けられている。下地層20は、例えば、酸化シリコン(SiOx)から形成される。
【0015】
熱電変換素子100の熱電変換層30は、下地層20の上に、矩形状に設けられる。熱電変換層30は、n型又はp型の熱電変換材料から形成される。n型の熱電変換材料としては、アルミニウム(Al)を添加された酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(InGaZnO)等が挙げられる。また、p型の熱電変換材料としては、例えば、銀(Ag)を添加されたマグネシウムシリサイド(Mg2Si)が挙げられる。実施形態1では、熱電変換層30は、酸化インジウムガリウム亜鉛から形成される。
【0016】
熱電変換素子100の絶縁層40は、熱電変換層30と下地層20とを覆う。絶縁層40は、
図1に示すように、第1電極50(第1層52)と熱電変換層30とを接続するために、櫛歯状の第1コンタクトホール42を形成されている。また、絶縁層40は、第2電極60と熱電変換層30とを接続するために、櫛歯状の第2コンタクトホール44を形成されている。絶縁層40は、例えば、酸化シリコン(SiO
x)から形成される。
【0017】
熱電変換素子100の第1電極50は、絶縁層40の上に形成され、絶縁層40の第1コンタクトホール42を介して、熱電変換層30の第1主面32(基板10と反対側の主面)に接続する。第1電極50は、第1層52と第2層56とを有する。
【0018】
第1電極50の第1層52は、絶縁層40の第1コンタクトホール42を介して、熱電変換層30の第1主面32に接続している。第1層52は、第1コンタクトホール42の底で絶縁層40から露出した熱電変換層30が第1層52から露出しない状態に、第1コンタクトホール42の開口を覆っている。
【0019】
第1層52は、
図1に示すように、Y方向に延びる第1基部52aと第1基部52aから+X方向に延びる複数の第1櫛歯部52bとを有し、櫛歯状に形成される。第1櫛歯部52bと後述する第2電極60の第2櫛歯部60bは、熱電変換層30の第1主面32において、交互に、対向して配置される。第1層52は、例えば、小さな仕事関数を有するチタン(Ti)から形成される。
【0020】
実施形態1では、絶縁層40が熱電変換層30を覆い、絶縁層40の上に形成される第1電極50の第1層52が絶縁層40の第1コンタクトホール42を介して接続するので、エッチングにより第1層52を形成する場合に、熱電変換層30が絶縁層40から露出せずエッチング液に曝されない。これにより、第1層52とエッチング液と熱電変換層30による電池が、形成されない。その結果、熱電変換素子100では、第1層52と熱電変換層30に、電池作用によって生じるダメージ(例えば、過剰な溶解)を与えず、第1層52をエッチングにより形成できる。
【0021】
第1電極50の第2層56は、
図2に示すように、第1層52を第2層56から露出しない状態で覆い、第2電極60を形成する材料と同じ材料から第2電極60と共に形成される。したがって、エッチングにより第2層56を形成する場合に、第1層52はエッチング液に曝されない。これにより、第2層56とエッチング液と第1層52による電池が、形成されない。その結果、第1層52と第2層56に、電池作用によって生じるダメージを与えず、第2電極60をエッチングにより形成できる。第2層56と第2電極60を形成する材料については、後述する。
【0022】
熱電変換素子100の第2電極60は、絶縁層40の上に形成され、絶縁層40の第2コンタクトホール44を介して、熱電変換層30の第1主面32に接続する。第2電極60と第1電極50(第1層52)は接続せず、第2電極60は、第1主面32の第1電極50が接続している箇所と異なる箇所で、第1主面32に接続している。第2電極60は、第2コンタクトホール44の底で絶縁層40から露出した熱電変換層30が第2電極60から露出しない状態に、第2コンタクトホール44の開口を覆っている。
【0023】
第2電極60は、
図1に示すように、Y方向に延びる第2基部60aと第2基部60aから-X方向に延びる複数の第2櫛歯部60bとを有し、櫛歯状に形成される。第2櫛歯部60bと第1電極50の第1層52の第1櫛歯部52bは、熱電変換層30の第1主面32において、交互に、対向して配置される。
【0024】
第2電極60と第1電極50の第2層56は、第1電極50の第1層52を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する、同じ材料から共に形成される。例えば、第2電極60と第1電極50の第2層56は、大きな仕事関数を有する銅(Cu)から形成される。
【0025】
実施形態1では、絶縁層40が熱電変換層30を覆い、絶縁層40の上に形成される第2電極60が絶縁層40の第2コンタクトホール44を介して接続するので、エッチングにより第2電極60を形成する場合に、熱電変換層30はエッチング液に曝されない。また、第1電極50の第1層52は、第2電極60と共に形成される第2層56に覆われるので、エッチングにより第2電極60(第2層56)を形成する場合に、第1層52はエッチング液に曝されない。これらにより、第2電極60とエッチング液と熱電変換層30による電池と、第2電極60とエッチング液と第1層による電池は、形成されない。その結果、熱電変換素子100では、熱電変換層30と第1層52と第2電極60に、電池作用によって生じるダメージを与えず、第2電極60をエッチングにより形成できる。
【0026】
熱電変換素子100では、形成される材料の仕事関数が異なる、第1電極50の第1層52と第2電極60が熱電変換層30の第1主面32に接続し、熱電変換層30の厚さ方向(Z方向)の温度差によって、熱起電力が生じる。熱電変換素子100では、エッチングにより第1電極50の第1層52を形成しても熱電変換層30と第1層52にダメージを与えず、エッチングにより第1電極50の第2層56と第2電極60とを形成しても熱電変換層30と第1層52と第2層56と第2電極60にダメージを与えない。したがって、フォトリソグラフィとエッチングにより、熱電変換素子100を容易に微細化できる。
【0027】
熱電変換素子100の保護層70は、第1電極50、第2電極60等を保護する。保護層70は、例えば、感光性ポリイミドから形成される。なお、保護層70には、第1電極50と第2電極60を外部の装置に接続するための端子開口75が設けられている。
【0028】
次に、
図3~
図17を参照して、実施形態1における熱電変換素子100の製造方法を説明する。
図3は、実施形態1における熱電変換素子100の製造方法を示すフローチャートである。熱電変換素子100の製造方法は、基板10の第1主面12の上に下地層20を形成する工程(ステップS10)と、下地層20の上(基板10の第1主面12の上)に熱電変換層30を形成する工程(ステップS20)と、熱電変換層30の上に絶縁層40を形成する工程(ステップS30)と、絶縁層40に第1コンタクトホール42を形成する工程(ステップS40)と、絶縁層40の上に第1コンタクトホール42を介して熱電変換層30の第1主面32に接続する第1電極50の第1層52を形成する工程(ステップS50)と、を含む。熱電変換素子100の製造方法は、更に、第1電極50の第1層52が形成された絶縁層40に第2コンタクトホール44を形成する工程(ステップS60)と、絶縁層40の上に第2コンタクトホール44を介して熱電変換層30の第1主面32に接続する第2電極60を、第1電極50の第1層52を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料から形成すると共に、第2電極60を形成する材料と同じ材料から第1電極50の第1層52を覆う第1電極50の第2層56を、第1層52が第2層56から露出しない状態で形成する工程(ステップS70)と、保護層70を形成する工程(ステップS80)と、を含む。
【0029】
ステップS10では、まず、基板10を準備する。次に、
図4に示すように、基板10の第1主面12に下地層20を形成する。下地層20は、例えば、第1主面12の全面にスパッタ法により酸化シリコンから形成される。
【0030】
ステップS20では、
図5に示すように、下地層20の上に矩形状の熱電変換層30を形成する。具体的には、まず、下地層20の全面にスパッタにより酸化インジウムガリウム亜鉛から熱電変換膜を形成する。次に、フォトリソグラフィとエッチングにより、熱電変換膜から熱電変換層30を形成する。
【0031】
ステップS30では、
図6と
図7に示すように、熱電変換層30の上と下地層20の上に絶縁層40を形成する。具体的には、下地層20と熱電変換層30の全面に、CVD(Chemical Vapar Deposition)により酸化シリコンから絶縁層40を形成する。ここでは、熱電変換層30は、絶縁層40によって、絶縁層40から露出しない状態で覆われている。
【0032】
ステップS40では、フォトリソグラフィとエッチングにより、絶縁層40に第1コンタクトホール42を形成する。実施形態1では、
図8と
図9に示すように、第1コンタクトホール42を、第1電極50の第1層52の形状に整合するように、櫛歯状に形成する。これにより、熱電変換層30の第1主面32が、絶縁層40から櫛歯状に露出する。
【0033】
ステップS50では、
図10と
図11に示すように、絶縁層40の上に第1電極50の第1層52を形成する。第1層52は、第1コンタクトホール42を介して熱電変換層30の第1主面32に接続する。また、第1層52は、第1コンタクトホール42の底で絶縁層40から露出した熱電変換層30が第1層52から露出しない状態に、第1コンタクトホール42の開口を覆う。
【0034】
具体的には、まず、絶縁層40の上に、スパッタにより第1コンタクトホール42を埋めて、チタン薄膜を成膜する。次に、フォトリソグラフィとエッチングにより、チタン薄膜から第1層52を櫛歯状に形成する。実施形態1では、チタン薄膜をエッチングする時に、
図12に示すように、熱電変換層30が絶縁層40と第1層52(チタン薄膜)に覆われ、さらに、チタン薄膜の第1電極50の第1層52となる箇所はフォトレジストで覆われているので、絶縁層40とチタン薄膜はエッチング液に曝され、熱電変換層30はエッチング液に曝されずに、第1層52を形成できる。
【0035】
ステップS60では、フォトリソグラフィとエッチングにより、絶縁層40に第2コンタクトホール44を形成する。実施形態1では、
図13と
図14に示すように、第2コンタクトホール44を、第2電極60の形状に整合するように、櫛歯状に形成する。これにより、熱電変換層30の第1主面32が、絶縁層40から櫛歯状に露出する。
【0036】
ステップS70では、
図15と
図16に示すように、絶縁層40の上に、第2電極60を形成すると共に第1電極50の第2層56を形成する。第2電極60は、第2コンタクトホール44を介して熱電変換層30の第1主面32に接続する。第2電極60は、第2コンタクトホール44の底で絶縁層40から露出した熱電変換層30が第2電極60から露出しない状態に、第2コンタクトホール44の開口を覆う。また、第1電極50の第2層56は、第1電極50の第1層52を、第1層52が第2層56から露出しない状態で覆う。第2電極60と第2層56は、第1電極50の第1層52を形成する材料(チタン)の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料(銅)から形成される。
【0037】
具体的には、まず、絶縁層40と第1層52の上に、スパッタにより第2コンタクトホール44を埋めて、銅薄膜を成膜する。次に、フォトリソグラフィとエッチングにより、銅薄膜から第2電極60と第2層56のそれぞれを櫛歯状に形成する。実施形態1では、銅薄膜をエッチングする時に、
図17に示すように、熱電変換層30が絶縁層40と第1層52と第2電極60(銅薄膜)に覆われ、第1層52が第2層56(銅薄膜)に覆われており、さらに、銅薄膜の第2電極60と第1電極50の第2層56となる箇所はフォトレジストで覆われているので、絶縁層40と銅薄膜はエッチング液に曝され、熱電変換層30と第1層52はエッチング液に曝されずに、第2電極60を形成できる。
【0038】
ステップS80では、例えば、感光性ポリイミドから保護層70を形成する。具体的には、感光性ポリイミドを塗布し、塗布された感光性ポリイミドを露光し現像する。そして、現像された感光性ポリイミドを焼成して保護層70を形成する。以上により、熱電変換素子100を製造できる。
【0039】
以上のように、実施形態1の熱電変換素子100では、エッチングにより、熱電変換層30と第1電極50の第1層52にダメージを与えずに第1電極50の第1層52を形成でき、熱電変換層30と第1層52と第2層56と第2電極60にダメージを与えずに第1電極50の第2層56と第2電極60とを形成できる。したがって、熱電変換素子100を、フォトリソグラフィとエッチングにより、容易に微細化できる。さらに、櫛歯状の第1電極50(第1層52)と第2電極60を微細化することにより、第1電極50と第2電極60との間隔を狭め、第1電極50と第2電極60の周囲長を長くして、熱電変換素子100の短絡電流を大きくできる。
【0040】
熱電変換素子100の特性は、第1電極50と第2電極60の仕事関数によって大きく左右される。すなわち、仕事関数に基づく、第1電極50の第1層52を形成する材料と、第1電極50の第2層56と第2電極60とを形成する材料の選択が、熱電変換素子100の特性に大きく影響する。一方、従来の熱電変換素子(例えば、特許第6513476号公報に記載の熱電変換素子)では、フォトリソグラフィとエッチングにより熱電変換素子を製造する場合に、仕事関数と共に、エッチングにおける電池作用も考慮して、電極を形成する材料を選択しなければならない。実施形態1では、第1電極50の第1層52と、第1電極50の第2層56と第2電極60とを形成する場合に、それぞれを形成する材料(チタン又は銅)の一方のみが露出してエッチングされるので、エッチングにおける電池作用を考慮せずに、第1電極50の第1層52を形成する材料と、第1電極50の第2層56と第2電極60とを形成する材料とを仕事関数に基づいて選択できる。すなわち、第1電極50の第1層52を形成する材料と、第1電極50の第2層56と第2電極とを形成する材料を選択する自由度が高くなり、熱電変換素子100の特性を容易に向上させることができる。
【0041】
実施形態1では、第1電極50の第1層52の材料としてチタンを、第1電極50の第2層56と第2電極60の材料として銅を用いる構成で説明したが、材料を入れ替えて、第1電極50の第1層52の材料として銅を、第1電極50の第2層56と第2電極60の材料としてチタンを用いる構成としても、同じ手順で熱電変換素子100を製造できる。
【0042】
<実施形態2>
熱電変換素子100は、第2層56を含まない第1電極50を備えてもよい。言い換えると、熱電変換素子100が備える第1電極50の全体は、第1層52における材料を用いることにより形成されてもよい。
【0043】
実施形態2において、熱電変換素子100は、
図18と
図19に示すように、基板10と、下地層20と、熱電変換層30と、絶縁層40と、第1電極50と、第2電極60と、保護層70とを備える。この構成において、第1電極50以外の要素は、実施形態1と共通であればよい。
図18において、+X方向、+Y方向、+Z方向は、実施形態1の
図1と同様に設定されている。
【0044】
実施形態2において、第2層56を含まない第1電極50は、絶縁層40の第1コンタクトホール42を介して、熱電変換層30の第1主面32に接続する。第1電極50は、第1コンタクトホール42の底で絶縁層40から露出した熱電変換層30が第1電極50から露出しない状態に、第1コンタクトホール42の開口を覆っている。
【0045】
実施形態2において、
図18に示された第1電極50は、Y方向に延びる第1基部50aと、第1基部50aから+X方向に延びる複数の第1櫛歯部50bとを有し、櫛歯状に形成される。第1櫛歯部50bと第2電極60の第2櫛歯部60bは、熱電変換層30の第1主面32において、交互に、対向して配置される。第1電極50の全体は、実施形態1における第1層52と同様に、例えば、小さな仕事関数を有するチタン(Ti)から形成される。
【0046】
実施形態2において、絶縁層40が熱電変換層30を覆い、絶縁層40の上に形成される第1電極50が絶縁層40の第1コンタクトホール42を介して接続するので、エッチングにより第1電極50を形成する場合に、熱電変換層30が絶縁層40から露出せずエッチング液に曝されない。これにより第1電極50とエッチング液と熱電変換層30による電池が、形成されない。その結果、熱電変換素子100では、第1電極50と熱電変換層30に、電池作用によって生じるダメージ(例えば、過剰な溶解)を与えず、第1電極50をエッチングにより形成できる。
【0047】
実施形態2において、エッチングにより第2電極60を形成する場合に、第1電極50がフォトレジストから露出しない状態で覆われ、第1電極50はエッチング液に曝されない。これにより、第2電極60とエッチング液と第1電極50による電池は、形成されない。その結果、熱電変換素子100では、第1電極50と第2電極60に、電池作用によって生じるダメージを与えず、第2電極60をエッチングにより形成できる。例えば、第2電極60は、大きな仕事関数を有する銅(Cu)から形成される。
【0048】
実施形態2において、熱電変換素子100は、熱電変換層30の第1主面に接続される第1電極50と第2電極60とを含む。第1電極50と第2電極60は、互いに形成される材料の仕事関数が異なる。熱電変換素子100は、熱電変換層30の厚さ方向(Z方向)の温度差によって、熱起電力が生じる。熱電変換素子100では、エッチングにより第1電極50を形成しても熱電変換層30と第1電極50にダメージを与えず、エッチングにより第2電極60を形成しても熱電変換層30と第1電極50と第2電極60にダメージを与えない。したがって、フォトリソグラフィとエッチングにより、熱電変換素子100を容易に微細化できる。
【0049】
次に、
図20~
図25を参照して、実施形態2における熱電変換素子100の製造方法を説明する。
図20は、実施形態2における熱電変換素子100の製造方法を示すフローチャートである。実施形態2において、ステップS10~S40、S60、S80の工程は、実施形態1と同様であればよい。
【0050】
図20に示された製造方法は、ステップS40に続いて、絶縁層40の上に第1コンタクトホール42を介して熱電変換層30の第1主面32に接続する第1電極50を形成する工程(ステップS50A)を含む。ステップS50Aの工程は、実施形態1におけるステップS50の工程と同様にチタン薄膜を成膜する手順を含む。ステップS50Aの工程において、チタン薄膜をエッチングするときに、実施形態1におけるステップS50の工程とは異なる箇所がフォトレジストで覆われる。
図21は、ステップS50Aにおいてフォトレジストで覆われた第1電極50を示す。
図22と
図23は、ステップS50Aにおいて絶縁層40の上に形成された第1電極50を示す。第1電極50は、第1コンタクトホール42を介して熱電変換層30の第1主面32に接続する。また、第1電極50は、第1コンタクトホール42の底で絶縁層40から露出した熱電変換層30が第1電極50から露出しない状態に、第1コンタクトホール42の開口を覆う。
【0051】
図20に示された製造方法は、ステップS60に続いて、絶縁層40の上に第2コンタクトホール44を介して熱電変換層30の第1主面32に接続する第2電極60を、形成する工程(ステップS70A)を含む。第2電極60を形成するために、第1電極50を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料が用いられる。ステップS70Aの工程は、絶縁層40の上に、スパッタにより第2コンタクトホール44を埋めて、銅薄膜を成膜する手順を含む。この手順において、第1電極50は、銅薄膜が成膜される前に、フォトレジストによって露出しない状態で覆われる。
図24は、フォトレジストで覆われた第1電極50を示す。第1電極50を覆うフォトレジストは、第2コンタクトホール44を形成するときに使用されたフォトレジストを残存させてもよいし、第2電極60の形成に対応して新たに配置されてもよい。銅薄膜の成膜に続いて、
図25に示すように、第2電極60となる箇所がフォトレジストで覆われる。その後、
図26に示されたエッチングにより、銅薄膜から第2電極60を櫛歯状に形成する。例えば、エッチング液として、リン酸、硝酸、酢酸を含んだ混合液を用いることができる。この場合に、第1電極50はフォトレジストに覆われているので、第2電極60とのエッチング選択性に配慮する必要がない。熱電変換層30は絶縁層40と第1電極50と第2電極60に覆われ、第1電極50と第2電極60となる箇所はフォトレジストで覆われているので、絶縁層40と銅薄膜はエッチング液に曝され、熱電変換層30と第1電極50はエッチング液に曝されずに、第2電極60を形成できる。
図27は、絶縁層40の上に形成された第1電極50と第2電極60などを示す。
【0052】
実施形態2において、熱電変換素子100は、熱電変換層30と第1電極50にエッチングのダメージを与えることなく、第1電極50が形成可能である。加えて、熱電変換素子100は、熱電変換層30と第1電極50と第2電極60にエッチングのダメージを与えることなく、第2電極60が形成可能である。したがって、熱電変換素子100を、フォトリソグラフィとエッチングにより、容易に微細化できる。さらに、櫛歯状の第1電極50と第2電極60を微細化することにより、第1電極50と第2電極60との間隔を狭め、第1電極50と第2電極60の周囲長を長くして、熱電変換素子100の短絡電流を大きくできる。
【0053】
実施形態2において、第1電極50と第2電極60を形成する場合に、それぞれを形成する材料(チタン又は銅)の一方のみが露出してエッチングされるので、エッチングにおける電池作用を考慮せずに、第1電極50を形成する材料と、第2電極を形成する材料とが、仕事関数に基づいて選択可能である。すなわち、第1電極50を形成する材料と、第2電極60を形成する材料とを、選択する自由度が高くなり、熱電変換素子100の特性を容易に向上させることができる。
【0054】
実施形態2において、第1電極50の材料としてチタンを、第2電極60の材料として銅を用いるものとして説明したが、材料を入れ替えて、第1電極50の材料として銅を、第2電極の材料としてチタンを用いる構成としても、同じ手順で熱電変換素子100を製造できる。
【0055】
第1電極50と第2電極60は、選択エッチングにより形成されてもよい。エッチングによる第2電極60の加工時に第1電極50の材料に対して十分な選択比が確保できる電極材料の組合せ、およびエッチャントの選択が可能であれば、
図24に示されたフォトレジストを使用しなくても
図18および
図19における構造の熱電変換素子100を製造することができる。第1例として、チタンを材料とする第1電極50が形成されるときに、三塩化ホウ素(BCl
3)、塩素(Cl
2)を含んだ混合ガスを用いたドライエッチングが行われてもよい。その後、銅を材料とする第2電極60が形成されるときに、硫酸、過酸化水素を含んだ混合液を用いたウェットエッチングが行われてもよい。第2電極60を形成するために、リン酸、硝酸、酢酸を含んだ混合液を用いたウェットエッチングが行われてもよい。第2例として、銅を材料とする第1電極50が形成されるときに、硫酸(H
2SO
4)、過酸化水素(H
2O
2)を含んだ混合液を用いたウェットエッチングが行われてもよい。その後、チタンを材料とする第2電極60が形成されるときに、酸性フッ化アンモニウム水溶液を用いたウェットエッチングが行われてもよい。この例では、絶縁層40として、酸化シリコン(SiO
x)に代えて、シリコンナイトライド(SiN)を材料として用いてもよい。
【0056】
熱電変換素子100は、実施形態1における第1電極50を含むことにより、材料の仕事関数が第1電極50の一部と第2電極60とで異なるようにしてもよい。あるいは、熱電変換素子100は、実施形態2における第1電極50を含むことにより、材料の仕事関数が第1電極50の全体と第2電極60とで異なるようにしてもよい。したがって、熱電変換素子100は、第2電極60を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料を用いて、少なくとも一部が形成された第1電極50を含む。
【0057】
<変形例>
以上、実施形態を説明したが、本開示は、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0058】
例えば、基板10はガラス基板に限られない。基板10は、絶縁性を有するフィルム(例えば、ポリイミドフィルム)から形成されてもよい。
【0059】
また、実施形態の熱電変換素子100は下地層20を備えているが、熱電変換素子100は下地層20を備えなくともよい。熱電変換層30は、基板10の第1主面12の上に、直接、形成されてもよい。さらに、熱電変換素子100は保護層70を備えなくともよい。
【0060】
実施形態1では、第1電極50の第1層52を小さな仕事関数を有する材料から形成し、第1電極50の第2層56と第2電極60を大きな仕事関数を有する材料から形成している。熱電変換素子100では、第1電極50の第1層52を形成する材料の仕事関数と、第1電極50の第2層56と第2電極60とを形成する材料の仕事関数が、異なっていればよい。実施形態2において、熱電変換素子100は、第1電極の全体を形成する材料の仕事関数と、第2電極60を形成する材料の仕事関数が、異なっていればよい。
【0061】
実施形態1において、第1電極50の第1層52と、第1電極50の第2層56と第2電極60を形成する材料は、小さな仕事関数を有する材料としてセシウム(Cs)、アルミニウム(Al)等、大きな仕事関数を有する材料としてニッケル(Ni)であってもよい。実施形態2において、第1電極50と第2電極60を形成する材料に関しても、同様である。
【0062】
第1電極50(第2層56)と第2電極60の保護層70の端子開口75から露出する面には、保護メッキが施されてもよい。
【0063】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本開示は特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10 基板、12 第1主面、20 下地層、30 熱電変換層、32 第1主面、40 絶縁層、42 第1コンタクトホール、44 第2コンタクトホール、50 第1電極、50a 第1基部、50b 第1櫛歯部、52 第1層、52a 第1基部、52b 第1櫛歯部、56 第2層、60 第2電極、60a 第2基部、60b 第2櫛歯部、70 保護層、75 端子開口、100 熱電変換素子