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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085211
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20230613BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230613BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230613BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/00 302C
H02J7/00 B
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180264
(22)【出願日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2021199379
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】坂柳 佑治
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 裕也
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CC04
5G503DA04
5G503DA07
5G503EA05
5G503GD04
5G503GD06
5H030AA09
5H030AS20
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】組電池において発生する循環電流を簡易、かつ、安定的に抑制する電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置1は、第1の電池11と、第1の電池11と並列に接続され、第1の電池11よりも劣化度の高い第2の電池12と、第1の電池11に入出力される電流が第2の電池12に設定される使用不可電流範囲を超える大きさになるまで第2の電池12に電流が入出力されることを防止する循環電流防止部13と、を有する。循環電流防止部13は、充放電制御部21、総電流測定部22、分岐電流測定部23、スイッチ24を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電池と、
前記第1の電池と並列に接続され、前記第1の電池よりも劣化度の高い第2の電池と、
前記第1の電池に入出力される電流が前記第2の電池に設定される使用不可電流範囲を超える大きさになるまで前記第2の電池に電流が入出力されることを防止する循環電流防止部と、
を有する電源装置。
【請求項2】
前記循環電流防止部は、
前記第1の電池及び前記第2の電池に入出力される電流の総電流値を検出する総電流測定部と、
前記第2の電池に入出力される電流の大きさを示す分岐電流値を計測する分岐電流測定部と
前記分岐電流測定部が設けられる分岐電源線上において前記分岐電流測定部に対して直列になるように設けられるスイッチと、
前記総電流値が前記使用不可電流範囲を超えた場合に前記スイッチを導通状態とし、前記分岐電流値が前記総電流値と同じ電流の流れの方向を示す場合に前記スイッチが導通した状態を維持する充放電制御部と、
を有する請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記充放電制御部は、前記第1の電池の出力電圧が前記第2の電池の開回路電圧を超える放電電流値以下となる前記総電流値を下限値とし、前記第2の電池の出力電圧が前記第1の電池の開回路電圧を超える充電電流値以下となる前記総電流値を上限値として、前記使用不可電流範囲を設定し、前記総電流値が前記使用不可電流範囲を超えた場合に前記スイッチを導通状態に制御する請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記第1の電池の開回路電圧は、前記第1の電池を前記電源装置に組み込む前に測定された値であり、
前記第2の電池の開回路電圧は、前記スイッチが遮断状態の時に前記充放電制御部により測定された値であり、
前記充放電制御部は、
前記スイッチが遮断状態のとき計測される充放電電流に対する前記第1の電池の出力電圧の傾きから算出される前記第1の電池の内部抵抗値で、前記第2の電池の開回路電圧と前記第1の電池の開回路電圧との差分を除した値を前記下限値に設定し、
前記スイッチが導通状態のとき計測される充放電電流に対する前記第2の電池の出力電圧の傾きから算出される前記第2の電池の内部抵抗値で、前記第1の電池の開回路電圧と前記第2の電池の開回路電圧との差分を除した値を前記上限値に設定する請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第1の電池と前記第2の電池とに対して共通して設けられる共通電源線をさらに有し、
前記循環電流防止部は、
前記第2の電池にカソードが接続され、アノードが前記共通電源線に接続される第1のダイオードと、
前記共通電源線にカソードが接続され、アノードが前記第2の電池に接続される第2のダイオードと、
有する請求項1に記載の電源装置。
【請求項6】
前記第2の電池は、互いに並列に接続される複数の電池が含まれる請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項7】
第1の電池と、
前記第1の電池と並列に接続され、前記第1の電池よりも劣化度の高い第2の電池と、
前記第1の電池及び前記第2の電池に入出力される電流の総電流値を検出する総電流測定部と、
前記第2の電池に入出力される電流となる分岐電流値を計測する分岐電流測定部と
前記分岐電流測定部と、前記第2の電池との間に設けられるスイッチと、
前記総電流値が予め設定した使用不可電流範囲を超えた場合に前記スイッチを導通状態とし、前記分岐電流値が前記総電流値と同じ電流の流れの方向を示す場合に前記スイッチが導通した状態を維持する充放電制御部と、
を有する電源装置。
【請求項8】
第1の電池と、
前記第1の電池と並列に接続され、前記第1の電池よりも劣化度の高い第2の電池と、
前記第1の電池と前記第2の電池とに対して共通して設けられる共通配線と、
前記第2の電池にカソードが接続され、アノードが前記共通配線に接続される第1のダイオードと、
前記共通配線にカソードが接続され、アノードが前記第2の電池に接続される第2のダイオードと、
を有する電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数の電池が並列接続される電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の電池を直列及び並列に組み合わせて組電池とすることで、組電池の出力電力や蓄電容量を増加させる技術がある。このような組電池において、劣化度の異なる電池を並列に接続した場合、並列接続した電池の間に循環電流が発生する。循環電流は、並列接続した電池の間で流れる充放電電流である。そこで、この循環電流の発生を防止する技術が特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の電源装置は、並列に接続している各々の電池モジュールに、電流検出回路とスイッチを直列を接続しており、電流検出回路の出力を制御回路で演算して、スイッチを制御する。制御回路は、流れる電流の方向が正常な方向と逆となり、あるいは電流のアンバランスが設定値よりも大きくなる電池モジュールに接続しているスイッチをオフに切り換えて電流を遮断する。
【0004】
特許文献2に記載の循環電流防止装置は、二次電池へ流れる電流を測定する電流測定部と、充電用スイッチング素子と、放電用スイッチング素子とから構成され、電流の方向を判定して、排他的に充電用と放電用のスイッチング素子を導通させるように制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-185228号公報
【特許文献2】特開2014-060878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、新品電池とリユース電池等の劣化度合いに大きな差がある電池を並列接続する場合、電池に直列に接続されるスイッチのオンオフ制御が難しい問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、組電池において発生する循環電流を簡易、かつ、安定的に抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる電源装置の一態様は、第1の電池と、前記第1の電池と並列に接続され、前記第1の電池よりも劣化度の高い第2の電池と、前記第1の電池に入出力される電流が前記第2の電池に設定される使用不可電流範囲を超える大きさになるまで前記第2の電池に電流が入出力されることを防止する循環電流防止部と、を有する。
【0009】
本発明にかかる電源装置の別の態様は、第1の電池と、前記第1の電池と並列に接続され、前記第1の電池よりも劣化度の高い第2の電池と、前記第1の電池及び前記第2の電池に入出力される電流の総電流値を検出する総電流測定部と、前記第2の電池に入出力される電流となる分岐電流値を計測する分岐電流測定部と前記分岐電流測定部と、前記第2の電池との間に設けられるスイッチと、前記総電流値が予め設定した使用不可電流範囲を超えた場合に前記スイッチを導通状態とし、前記分岐電流値が前記総電流値と同じ電流の流れの方向を示す場合に前記スイッチが導通した状態を維持する充放電制御部と、を有する。
【0010】
本発明にかかる電源装置の別の態様は、第1の電池と、前記第1の電池と並列に接続され、前記第1の電池よりも劣化度の高い第2の電池と、前記第1の電池と前記第2の電池とに対して共通して設けられる共通配線と、前記第2の電池にカソードが接続され、アノードが前記共通配線に接続される第1のダイオードと、前記共通配線にカソードが接続され、アノードが前記第2の電池に接続される第2のダイオードと、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電源装置によれば、組電池において発生する循環電流を簡易、かつ、安定的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1にかかる電源装置のブロック図である。
図2】実施の形態1にかかる電源装置の使用不可電流範囲を説明する図である。
図3】実施の形態1にかかる循環電流防止部を含む電源装置の動作を説明するフローチャートである。
図4】実施の形態2にかかる電源装置のブロック図である。
図5】実施の形態2にかかる電源装置において充放電電流が流れていない状態で循環電流が流れないことを説明する図である。
図6】実施の形態2にかかる電源装置において充電電流が与えられている状態で電流の流れを説明する図である。
図7】実施の形態3にかかる電源装置のブロック図である。
図8】実施の形態4にかかる電源装置のブロック図である。
図9】実施の形態5にかかる電源装置のブロック図である。
図10】実施の形態5にかかる電源装置の使用不可電流範囲を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0014】
また、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0015】
実施の形態1
図1に実施の形態1にかかる電源装置1のブロック図を示す。図1に示すように、実施の形態1にかかる電源装置1は、第1の電池(例えば、電池11)、第2の電池(例えば、電池12)、循環電流防止部13を有する。なお、図1では、並列接続される電池として、2つの電池を示したが電池の並列数は、2以上であれば何個でも良い。
【0016】
電池11、12は、電池11、12への充放電電流を伝達する共通電源線Wcに対して並列に接続される。また、以下の説明では、共通電源線Wcから分岐して電池11に接続される配線を分岐電源線Wb1、共通電源線Wcから分岐して電池12に接続される配線を分岐電源線Wb2と称す。電池11は、劣化していない電池、或いは、劣化度が小さな電池である。一方、電池12は、電池11と同等の劣化度、或いは、電池11よりも劣化度の進んだ電池であるものとする。ここで、電池の劣化度が進むと、電池のOCV(Open Circuit Voltage)が低く、かつ、内部抵抗が高くなる特徴を有する。
【0017】
循環電流防止部13は、電池11に入出力される電流が電池12に設定される使用不可電流範囲を超える大きさになるまで電池12に電流が入出力されることを防止する。実施の形態1では、循環電流防止部13は、充放電制御部21、総電流測定部22、分岐電流測定部23、スイッチ24を有する。
【0018】
総電流測定部22は、共通電源線Wc上に設けられ、電池11、12に入出力される電流の総電流値を検出する。分岐電流測定部23は、分岐電源線Wb2上に設けられ、電池12に入出力される電流の大きさを示す分岐電流値を計測する。スイッチ24は、分岐電流測定部23が設けられる分岐電源線Wb2上において分岐電流測定部23に対して直列になるように設けられる。充放電制御部21は、総電流測定部22が計測した総電流値が使用不可電流範囲を超えた場合にスイッチ24を導通状態とし、分岐電流値が総電流値と同じ電流の流れの方向を示す場合にスイッチ24が導通した状態を維持する。言い換えると、充放電制御部21は、総電流測定部22が計測した総電流値が使用不可電流範囲内である期間はスイッチ24を遮断状態で維持する。また充放電制御部21は、総電流測定部22が計測した総電流値が使用不可電流範囲を超えた場合にスイッチ24を導通状態とするが、分岐電流値が総電流値と逆方向の電流の流れの方向を示す場合にはスイッチ24を導通した状態から遮断状態に切り替える。
【0019】
ここで、使用不可電流範囲について説明する。そこで、図2に実施の形態1にかかる電源装置の使用不可電流範囲を説明する図を示す。図2に示すように、実施の形態1では、劣化が進んでない電池11に対しては、最大放電電流(100%の充放電電流)から最大充電電流(-100%の充放電電流)まで全ての電流範囲が使用範囲となる。つまり、電池11については、充放電電流が遮断されることはない。一方、劣化が進んだ電池12については、最大放電電流の10%よりも少なく、かつ、最大放電電流の10%よりも少ない充放電電流となる範囲を、電池12の使用を不可とする使用不可電流範囲とする。そして、充放電制御部21は、総電流測定部22が計測する総電流が使用不可電流範囲にある期間はスイッチ24を遮断状態とする。
【0020】
なお、使用不可電流範囲の大きさは、製品の仕様、劣化した電池の劣化度等によって図2に示す以外の範囲を設定することが可能である。
【0021】
続いて、循環電流防止部13の動作について詳細に説明する。そこで、図3に実施の形態1にかかる循環電流防止部13を含む電源装置1の動作を説明するフローチャートを示す。図3に示すように、循環電流防止部13は、バッテリ制御を開始すると、まず、スイッチ24をオフ状態にする(ステップS1)。続いて、総電流測定部22により計測された総電流値を充放電制御部21が取得する(ステップS2)。そして、充放電制御部21は、共通電源線Wcに流れる電流が充電方向であるか、放電方向であるかを判断する(ステップS3)。
【0022】
そして、ステップS3において、共通電源線Wcに流れる電流が放電方向であると判断された場合、充放電制御部21は、電池12のSOC(以下、充電率(State Of Charge)と称す)が下限値以上であるか否かを判断する(ステップS4)。このステップS4で電池12のSOCが下限値を下回っていた場合、充放電制御部21は、電池12を使用不可としてステップS2の総電流計測を行う(ステップS4のNOの枝)。一方、ステップS4で電池12のSOCが下限値以上であると判断された場合(ステップS4のYESの枝)、電池12を放電モードに設定する(ステップS5)。
【0023】
続いて、充放電制御部21は、総電流測定部22で計測された総電流値が電池12の使用範囲内(使用不可電流範囲外)であるか否かを判断する(ステップS6)。このステップS6において、総電流値が使用範囲から外れていた場合(つまり、使用不可電流範囲内である場合)、充放電制御部21は、処理をステップS2に戻して総電流測定部22による総電流値の計測を継続する。一方、ステップS6で総電流値が使用範囲内であると判断された場合(つまり、使用不可電流範囲外である場合)、充放電制御部21は、スイッチ24をオフ状態からオン状態に切り替える(ステップS7)。そして、充放電制御部21は、スイッチ24をオンした状態で分岐電流測定部23により電池12に流れる分岐電流値を計測する(ステップS8)。
【0024】
その後、充放電制御部21は、分岐電流値が示す電流の方向が、総電流値が示す電流の方向と一致しているのか否かを判断する(ステップS9)。そして、ステップS9において、分岐電流値が示す電流の方向が総電流値とは逆の充電方向である場合(ステップS9の充電の枝)、充放電制御部21は、ステップS1に処理を戻してスイッチ24をオン状態からオフ状態に切り替える。一方、ステップS9において、分岐電流値が示す電流の方向が総電流値と同じ放電方向である場合(ステップS9の放電の枝)、充放電制御部21は、電池12を放電する電源として利用する(ステップS10)。そして、電池12のSOCが下限値を下回るまでの期間、充放電制御部21は、総電流値の計測(ステップS2)からの処理を繰り返し実施する(ステップS11のNOの枝)。また、電池12のSOCが下限値を下回った場合、充放電制御部21は、処理をステップS1に戻してスイッチ24をオン状態からオフ状態に切り替える(ステップS11のYESの枝)する。
【0025】
また、ステップS3において、共通電源線Wcに流れる電流が充電方向であると判断された場合、充放電制御部21は、電池12のSOCが上限値以下であるか否かを判断する(ステップS12)。このステップS12で電池12のSOCが上限値を上回っていた場合、充放電制御部21は、スイッチ24のオフ状態を維持して電池12が充電されないようにしながら、ステップS2の総電流計測を行う(ステップS12のNOの枝)。一方、ステップS12で電池12のSOCが上限値以下であると判断された場合(ステップS12のYESの枝)、電池12を充電モードに設定する(ステップS13)。
【0026】
続いて、充放電制御部21は、総電流測定部22で計測された総電流値が電池12の使用範囲内(使用不可電流範囲外)であるか否かを判断する(ステップS14)。このステップS14において、総電流値が使用範囲から外れていた場合(つまり、使用不可電流範囲内である場合)、充放電制御部21は、処理をステップS2に戻して総電流測定部22による総電流値の計測を継続する。一方、ステップS14で総電流値が使用範囲内であると判断された場合(つまり、使用不可電流範囲外である場合)、充放電制御部21は、スイッチ24をオフ状態からオン状態に切り替える(ステップS15)。そして、充放電制御部21は、スイッチ24をオンした状態で分岐電流測定部23により電池12に流れる分岐電流値を計測する(ステップS16)。
【0027】
その後、充放電制御部21は、分岐電流値が示す電流の方向が、総電流値が示す電流の方向と一致しているのか否かを判断する(ステップS17)。そして、ステップS17において、分岐電流値が示す電流の方向が総電流値とは逆の放電方向である場合(ステップS17の放電の枝)、充放電制御部21は、ステップS1に処理を戻してスイッチ24をオン状態からオフ状態に切り替える。一方、ステップS17において、分岐電流値が示す電流の方向が総電流値と同じ充電方向である場合(ステップS17の充電の枝)、充放電制御部21は、電池12を充電する電源として利用する(ステップS18)。そして、電池12のSOCが上限値を上回るまでの期間、充放電制御部21は、総電流値の計測(ステップS2)からの処理を繰り返し実施する(ステップS19のNOの枝)。また、電池12のSOCが上限値を上回った場合、充放電制御部21は、処理をステップS1に戻してスイッチ24をオン状態からオフ状態に切り替える(ステップS19のYESの枝)。
【0028】
二次電池では、劣化が進むとOCVが低く、内部抵抗が高くなる特性があり、この特性に起因して、劣化度の異なる二次電池を並列接続すると循環電流が発生する。しかしながら、並列接続される二次電池への充放電電流がある程度大きい状態では、並列接続される二次電池の間の電流配分が均等からズレるのみで、循環電流は発生しない。
【0029】
上記説明より、実施の形態1にかかる電源装置1では、循環電流防止部13により共通電源線Wcに流れる総電流値が電池12に対して設定される使用不可電流範囲外になるまで大きくならなければ、劣化した電池である電池12に対する電流の入出力を遮断する。これにより、実施の形態1にかかる電源装置1では、総電流値が小さい期間は電池12への充放電が停止されるため、循環電流の発生を防止することができる。
【0030】
また、実施の形態1にかかる電源装置1では、分岐電源線Wb1、Wb2に流れる電流をそれぞれ計測せず、総電流と、電池12に流れる電流との方向の比較により循環電流の発生を検出するため、循環電流の発生判断の誤りを防止することができる。
【0031】
また、実施の形態1にかかる電源装置1では、総電流値の大きさと、総電流値と分岐電流値との方向の違いに基づき電池12への充放電電流の許可と遮断とを切り替える。これにより、実施の形態1にかかる電源装置1では、スイッチのオンオフ切り替えが頻繁に発生することがない。つまり、実施の形態1にかかる電源装置1は、簡易なスイッチ制御でスイッチを制御しながら、スイッチ制御の安定性を向上させることができる。
【0032】
実施の形態2
実施の形態2では、循環電流防止部13の別の形態となる循環電流防止部33について説明する。そこで、図4に循環電流防止部33を含む実施の形態2にかかる電源装置2のブロック図を示す。
【0033】
図4に示すように、電源装置2では、充放電制御部21、総電流測定部22、分岐電流測定部23、スイッチ24は設けられておらず、分岐電源線Wb2上に循環電流防止部33が設けられる。そして、循環電流防止部33は、第1のダイオード(例えば、ダイオードD1)、第2のダイオード(例えば、ダイオードD2)を有する。ダイオードD1は、電池12にカソードが接続され、アノードが共通電源線Wcに接続される。ダイオードD2は、共通電源線Wcにカソードが接続され、アノードが電池12に接続される。また、ダイオードD1、D2は、それぞれ順方向バイアス電圧VFとして0.7V程度の電圧を有するものとする。この順方向バイアス電圧VFにより、ダイオードD1、D2は、アノードとカソードとの間の電圧差が順方向バイアス電圧VF以下の期間は遮断状態を維持する特徴を有する。また、循環電流防止部33では、ダイオードD1、D2が互いに逆方向に電流を流すように接続されることから、充放電のいずれの方向についても、電池11と電池12との電圧差が順方向バイアス電圧VF以上にならなければ電流を流さない。
【0034】
続いて、実施の形態2にかかる電源装置2の動作について説明する。図5及び図6を用いた以下の説明では、電池11としてOCVである電圧Vb11が50.5Vを有し、内部抵抗Ri11が0.1Ωの電池を備え、電池12としてOCVである電圧Vb12が50.0Vを有し、内部抵抗Ri12が0.15Ωの電池を備える例を説明する。
【0035】
まず、図5に実施の形態2にかかる電源装置2において充放電電流が流れていない状態で循環電流が流れないことを説明する図を示す。図5に示すように、電流が流れていない場合、電池11の出力電圧は、ほぼ電圧Vb11と同じであるため50.5V程度となり、電池12の出力電圧は、ほぼ電圧Vb12と同じであるため50.0V程度となり、電池11と電池12の出力電圧差は0.5Vと、ダイオードD1、D2の順方向バイアス電圧VFよりも小さいため電池11から電池12への循環電流は発生しない。
【0036】
続いて、図6に実施の形態2にかかる電源装置2において充電電流が与えられている状態で電流の流れを説明する図を示す。図6に示すように、実施の形態2にかかる電源装置2では、共通電源線Wcが小さい期間(図6の充電電流ICが1Aの期間)においては、電池11に1Aの分岐電流ICb1が流れ、電池11の出力電圧は、Vb11の50.5Vに内部抵抗Ri11に流れる1Aの分岐電流により生じる電圧=0.1Vを加算した50.6Vとなる。そのため、電池11の出力電圧は、電池12に対応して設けられる循環電流防止部33を導通させるために必要な50.7Vを越えない。そのため、図6の右側に示す充電電流ICが1A程度となる期間は、充電電流ICは全て電池11に流れ、かつ、電池11から電池12への循環電流も発生しない。
【0037】
一方、充電電流ICが2A以上になると電池11の出力電圧が50.7Vを越えるため、充電電流ICが2A以上で循環電流防止部33が導通する状態となる。循環電流防止部33が導通した場合、充電電流ICは、分岐電流ICb1、ICb2として電池11と電池12の両方に流れる。図6の右図では、充電電流ICが12A程度になった場合を示した。この場合、電池11の出力電圧は、Vb11の50.5Vに内部抵抗Ri11に流れる8Aの分岐電流ICb1により生じる電圧=0.8Vを加算した51.3Vとなる。また、電池12の出力電圧は、Vb12の50.0Vに内部抵抗Ri12に流れる4Aの分岐電流ICb2により生じる電圧=0.6Vを加算した50.6Vとなる。そして、電池12の出力電圧と順方向バイアス電圧VFとを加算した電圧は、51.3Vとなる。つまり、実施の形態2にかかる電源装置2では、分岐電源線Wb1、Wb2の分岐点での電圧が同じになるように充電電流ICが電池11、電池12に分配される。
【0038】
上記説明より、実施の形態2にかかる電源装置2では、スイッチ制御によらずに電池11と電池12との間に流れる循環電流を防止する。また、実施の形態2においては、電池12に流れる電流が遮断される使用不可電流範囲は、電池11の内部抵抗Ri11の大きさと電池11のOCVである電圧Vb11の大きさとにより決定される。図6に示す例では、使用不可電流範囲は、充電電流と放電電流に対して2A以下となる範囲となる。
【0039】
また、実施の形態2にかかる電源装置2では、循環電流防止部33がスイッチに寄らない循環電流の発生防止構成となるため、スイッチ制御の複雑さがなく、また、安定した循環電流の防止を行う事ができる。
【0040】
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態1にかかる電源装置1の別の例となる電源装置3について説明する。なお、実施の形態3の説明では、実施の形態1で説明した構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0041】
図7に実施の形態3にかかる電源装置3のブロック図を示す。図7に示すように、実施の形態3にかかるでは、第2の電池となる電池が複数個設けられる。図7では、複数の第2の電池として電池121~12nのn個の電池を示した。
【0042】
また、図7に示すように、実施の形態3にかかる循環電流防止部13aは、第2の電池の個数に対応して、分岐電流測定部231~23n及びスイッチ241~24nを有する。分岐電流測定部231~23n及びスイッチ241~24nは、それぞれ、第2の電池の分岐電源線に1つずつ設けられるものである。
【0043】
このように、複数の第2の電池が設けられる場合、充放電制御部21aは、使用不可電流範囲として、複数の第2の電池が組み込まれることでいずれの第2の電池からも循環電流が発生しないと考えられる範囲を設定する。第2の電池の劣化度を一定の範囲内に納めることで、この使用不可電流範囲の設定は容易になる。なお、実施の形態3では、使用不可電流範囲は、第2の電池の個数が増えた場合には個数nに応じて大きくする必要がある。
【0044】
実施の形態2にかかる電源装置3の動作は、図3に示した実施の形態1にかかる電源装置の動作の電池12を、電池121~電池12nと読み替えることで実施可能である。
【0045】
このように、劣化度が第1の電池以下となる第2の電池が複数備えられる場合においても、複数の第2の電池のいずれにも循環電流が発生しない使用不可電流範囲を設定することで、実施の形態2にかかる電源装置3においても循環電流の発生を抑制することができる。
【0046】
また、複数の第2の電池に対して共通の使用不可電流範囲を設定することで電池121~12nの制御を個別に行う必要がないため、実施の形態2にかかる電源装置3では、装置の構成の簡易化と制御の単純化を実現することができる。
【0047】
実施の形態4
実施の形態4では、実施の形態2にかかる電源装置2の別の例となる電源装置4について説明する。なお、実施の形態4の説明では、実施の形態1、2で説明した構成要素については実施の形態1、2と同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
図8に実施の形態4にかかる電源装置4のブロック図を示す。図8に示すように、実施の形態4にかかるでは、第2の電池となる電池が複数個設けられる。図8では、複数の第2の電池として電池121~12nのn個の電池を示した。
【0049】
また、図8に示すように、実施の形態4にかかる電源装置4では、電池121~12nのそれぞれに対して循環電流防止部331~33nを設けた。循環電流防止部331~33nそれぞれ、第2の電池の分岐電源線に1つずつ設けられるものである。そして、循環電流防止部331~33nの構成は、図4で示した循環電流防止部33と同じである。
【0050】
実施の形態4にかかる電源装置4では、複数の第2の電池のそれぞれに循環電流防止部33と同じ構成を有する循環電流防止部331~33nを設けることで、実施の形態2と同様に共通電源線に流れる電流範囲が一定の大きさ以上になるまで第2の電池を共通電源線Wcから切り離すため循環電流の発生を防止することができる。
【0051】
実施の形態5
実施の形態5では、実施の形態1で説明した使用不可電流範囲の決定方法の別の形態について説明する。なお、実施の形態5の説明では、実施の形態1で説明した構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
図9に実施の形態5にかかる電源装置5のブロック図を示す。図9に示すように、実施の形態5にかかる電源装置5は、実施の形態1にかかる電源装置1の循環電流防止部13に代えて循環電流防止装置13bを有する。循環電流防止装置13bは、循環電流防止部13の充放電制御部21を充放電制御部21bに置き換えたものである。
【0053】
充放電制御部21bは、充放電制御部21と同様に、総電流測定部22が測定した総電流値が使用不可電流範囲を超えた場合にスイッチ24を導通状態とし、分岐電流測定部23が測定した分岐電流値が総電流値と同じ電流の流れの方向を示す場合にスイッチ24が導通した状態を維持する。ここで、充放電制御部21bは、充放電制御部21とは使用不可電流範囲の決定方法が異なる。
【0054】
具体的には、充放電制御部21bは、第1の電池(例えば、電池11)と、第2の電池(例えば、電池12)から出力電圧を取得する機能が充放電制御部21に対して追加される。そして、充放電制御部21bは、取得した各電池の出力電圧に基づき電池11と電池12との間で循環電流が発生しないと判断される範囲を使用不可電流範囲として決定する。ここで、実施の形態5にかかる使用不可電流範囲の決定方法について具体的に説明する。
【0055】
そこで、図10に実施の形態5にかかる電源装置5の使用不可電流範囲を説明する図を示す。図10に示すように、電池11と電池12は、それぞれ出力電圧が充放電電流に対して一定の傾きを持って変化する。この出力電圧の変化は、電池11の出力電圧Vo1に関しては(1)式、電池12の出力電圧Vo2に関しては(2)式で表わすことができる。
Vo1=Rin1×I1+Voc1・・・(1)
Vo2=Rin2×I2+Voc2・・・(2)
ここで、(1)式におけるRin1は電池11の内部抵抗、I1は電池11の充放電電流、Voc1は電池11の開回路電圧である。また、(2)式におけるRin2は電池12の内部抵抗、I2は電池12の充放電電流、Voc2は電池12の開回路電圧である。
【0056】
上記(1)式及び(2)式から電池11の内部抵抗Rin1と、電池12の内部抵抗Rin2は、それぞれ電池11と電池12の充放電時に取得される出力電圧と、電池11、12の開回路電圧がわかれば算出することができることがわかる。
【0057】
そこで、充放電制御部21bは、電池11の開回路電圧Voc1については、電池11を電源装置5に組み込む前に測定した開回路電圧Voc1を記憶する。そして、充放電制御部21bは、スイッチ24を遮断状態としたときの総電流値に対する電池11の出力電圧の変化傾きから内部抵抗Rin1を算出する。
【0058】
また、充放電制御部21bは、電池12の開回路電圧Voc2をスイッチ24が遮断状態の時に測定する電池電圧から取得する。そして、充放電制御部21bは、スイッチ24を接続状態としたときの分岐電流値に対する電池12の出力電圧の変化傾きから内部抵抗Rin2を算出する。
【0059】
そして、充放電制御部は、使用不可電流範囲の下限値となる放電電流値Idischgと、使用不可電流範囲の上限値となる充電電流値Ichgと、を(3)式及び(4)式を用いて算出する。
Idischg=(Voc2-Voc1)/Rin1・・・(3)
Ichg=(Voc1-Voc2)/Rin2・・・(4)
【0060】
ここで、図9に示す例では、電池12は電池11に比べて劣化が進んだ電池であり、開回路電圧Voc2が電池11の開回路電圧Voc1よりも低くなっている。また、図9に示す例では、電池性能の劣化に伴い、電池12の電圧変化の傾きが電池11よりも大きくなっている。このような場合、充電電流が充電電流値Ichg以下になる範囲では、電池11の開回路電圧Voc1が電池12の出力電圧よりも高くなるため電池11から電池12に向かって流れる循環電流が発生する。また、放電電流が放電電流値Idischg以下になる範囲では、電池12の開回路電圧Voc2が電池11の出力電圧よりも低くなるため電池11から電池12に向かって流れる循環電流が発生する。つまり、放電電流Idischgを下限値とし、充電電流Ichgを上限値とする使用不可電流範囲内に総電流値がある場合、循環電流が発生する。しかしながら、充放電制御部21bは、この使用不可電流範囲においてスイッチ24を遮断状態に制御することでこの循環電流の発生を抑止する。
【0061】
なお、図9に示すように、実施の形態5にかかる電源装置5においても電池11については全ての充放電電流の範囲に対して利用可能である。
【0062】
上記説明より、実施の形態5にかかる電源装置5では、電源装置5に組み込まれる電池の特性から使用不可電流範囲を設定する。これにより、実施の形態1にかかる電源装置1よりも電池性能を有効に利用しながら、循環電流の発生を抑止することができる。
【0063】
また、実施の形態5にかかる電源装置5では、利用しながら電池11と電池12の出力電圧の変化傾きや、開回路電圧を取得することができる。これにより、実施の形態5にかかる電源装置5では、運用中に使用不可電流範囲を電池の状態に合わせて更新することができるため、電池の劣化度に合わせて最も効率が良いと考えられる効率で電池を利用することができる。なお、実施の形態5にかかる電源装置5では、総電流測定部22による測定結果が総電流値が0を示す場合に電池11の開回路電圧Voc1を更新することも可能である。
【0064】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1~5 電源装置
11、12 電池
13、33、13a、13b、331~33n 循環電流防止部
21、21a、21b 充放電制御部
22 総電流測定部
23、231~23n 分岐電流測定部
24、241~24n スイッチ
D1、D2 ダイオード
D2 ダイオード
Wc 共通電源線
Wb1、Wb2 分岐電源線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10