(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085213
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】検査対象ガスの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるためのコンピュータで実行される方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/22 20060101AFI20230613BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
G01N1/22 J
G01N27/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022181125
(22)【出願日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】10 2021 213 970.1
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル フィッシャー
【テーマコード(参考)】
2G052
2G060
【Fターム(参考)】
2G052AA01
2G052AA34
2G052AB13
2G052AB23
2G052AB25
2G052AD02
2G052AD22
2G052AD42
2G052EA02
2G052EA03
2G052GA23
2G060AA01
2G060AB26
2G060AE19
2G060HC06
2G060KA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、検査対象ガスの少なくとも1つの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるためのコンピュータで実行される方法および装置に関する。
【解決手段】方法は、以下のステップを含む。ガスの1つまたは複数の匂い物質と少なくとも1つの第1匂いセンサとの相互作用に基づいて、第1電気的匂い信号を取得するステップ。少なくとも1つの所定の匂いグループをガスから濾過するステップと、濾過されたガスを取得するステップと、であって、この匂いグループは、少なくとも1つの濾過されるべき匂い物質を含むステップ。濾過されたガスの1つまたは複数の匂い物質と、第1匂いセンサおよび/または少なくとも1つの第2匂いセンサとの相互作用に基づいて、第2電気的匂い信号を取得するステップ。第1および第2電気的匂い信号の匂い信号差を決定するステップ。匂い信号差を匂いグループに割り当てるステップ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象ガス(210)の匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるためのコンピュータで実行される方法(300)であって、
前記検査対象ガス(210)の1つまたは複数の匂い物質と少なくとも1つの第1匂いセンサ(110)との相互作用に基づいて、第1電気的匂い信号を取得するステップ(310)と、
少なくとも1つの所定の匂いグループを前記検査対象ガス(210)から濾過するステップ(320)と、濾過されたガス(220)を取得するステップと、であって、前記匂いグループは、少なくとも1つの濾過されるべき匂い物質を含むステップと、
前記濾過されたガス(220)の1つまたは複数の匂い物質と、前記第1匂いセンサ(110)および/または少なくとも1つの第2匂いセンサ(130)との相互作用に基づいて、第2電気的匂い信号を取得するステップ(330)と、
前記第1および第2電気的匂い信号の匂い信号差を決定するステップ(340)と、
前記匂い信号差を前記匂いグループに割り当てるステップ(350)と、を含む、方法(300)。
【請求項2】
請求項1に記載の方法(300)であって、匂いデータベースに少なくとも1つの匂いデータベースエントリを提供するステップであって、前記匂いデータベースエントリは、少なくとも前記匂いグループを特徴付けるステップと、
前記匂いデータベースエントリが前記匂いグループおよび割り当てられた前記匂い信号差を特徴付けるように、前記匂いグループおよび割り当てられた前記匂い信号差に基づいて、前記匂いデータベースエントリを処理するステップと、を更に含む、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、さらに、
前記匂いデータベースエントリは、更に、匂い、および/または前記匂いグループの分類を特徴付け、
前記分類は、体調を変化させる作用、ならびに/または意識および/もしくは知覚を変化させる作用を有する、疾患、健康に有害な物質、有毒物質、腐敗を示す物質、火災を示す物質、前記匂いグループの向精神性物質および/または薬剤物質を示す、方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の方法(300)であって、
前記濾過するステップ(320)は、前記匂いグループを濾過するために、吸着フィルタ、特定サイズのフィルタ、および触媒フィルタのうちの少なくとも1つを含み、および/または、
前記濾過するステップ(320)は、前記匂いグループを濾過するために、電界、機械的および/または物理的な分離および/または化学的な変換を用いて濾過するステップを含む、方法(300)。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の方法(300)であって、
前記第1匂い信号、前記第2匂い信号、前記匂い信号差、前記匂いデータベースエントリおよび/または割り当てられた前記匂いグループに基づいて、前記検査対象ガス(210)中の前記匂いグループの濃度を決定するステップを更に含む、方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の方法(300)であって、
前記匂いグループが向精神性物質および/または薬剤物質として分類される場合、および/または前記匂いグループの前記濃度が所定の濃度閾値を超える場合、警告信号を発するステップを更に含む、方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の方法(300)によって得られる、匂いデータベース。
【請求項8】
検査対象ガス(210)の少なくとも1つの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるためのコンピュータプログラム製品であって、プログラムがプロセッサ(150)によって実行されるときに、前記プロセッサ(150)に、請求項1~6の何れか一項に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項9】
検査対象ガス(210)の少なくとも1つの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるための装置(100)であって、前記装置(100)は、
少なくとも1つの第1匂いセンサ(110)と、少なくとも1つのフィルタ(120)と、を含み、前記第1匂いセンサ(110)は、前記検査対象ガス(210)の1つまたは複数の匂い物質と前記第1匂いセンサ(110)との相互作用に基づいて、第1電気的匂い信号を取得するように構成され、
前記フィルタ(120)は、前記検査対象ガス(210)から少なくとも1つの所定の匂いグループを濾過し、濾過されたガス(220)を取得するように構成され、前記匂いグループは、少なくとも1つの濾過されるべき匂い物質を含み、
前記第1匂いセンサ(110)および/または少なくとも1つの第2匂いセンサ(130)は、前記濾過されたガス(220)の1つまたは複数の匂い物質と前記第1および/または第2匂いセンサ(110、130)との相互作用に基づいて、第2電気的匂い信号を取得するように構成され、前記装置(100)は、メモリ(140)と、プロセッサ(150)と、を更に備え、
前記プロセッサ(150)は、
前記第1および第2電気的匂い信号の匂い信号差を決定し、
前記匂い信号差を前記匂いグループに割り当てるように構成されている、装置(100)。
【請求項10】
請求項9に記載の装置(100)であって、
前記メモリ(140)は、匂いデータベースに少なくとも1つの匂いデータベースエントリを提供するように更に構成され、前記匂いデータベースエントリは、少なくとも前記匂いグループを特徴付け、
前記プロセッサ(150)は、前記匂いデータベースエントリが前記匂いグループおよび割り当てられた前記匂い信号差を特徴付けるように、前記匂いグループおよび割り当てられた前記匂い信号差に基づいて、前記匂いデータベースエントリを処理するように更に構成されている、装置(100)。
【請求項11】
請求項9または10に記載の装置(100)であって、
前記匂いデータベースエントリは、更に、匂い、および/または前記匂いグループの分類を特徴付け、
前記分類は、少なくとも1つの、疾患、健康に有害な物質、有毒物質、腐敗を示す物質、火災を示す物質、前記匂いグループの向精神性物質および/または薬剤物質を示し、これらは、体調を変化させる作用ならびに/または意識および/もしくは知覚を変化させる作用を有する、装置(100)。
【請求項12】
請求項9~11の何れか一項に記載の装置(100)であって、
前記フィルタ(120)は、吸着フィルタ、特定サイズのフィルタ、および/または触媒フィルタであり、および/または、
前記フィルタ(120)は、前記匂いグループを濾過するために、電界、機械的および/または物理的な分離および/または科学的変換を用いて、濾過するように構成されている、装置(100)。
【請求項13】
請求項9~12の何れか一項に記載の装置(100)であって、
前記プロセッサ(150)は、
前記第1匂い信号、前記第2匂い信号、前記匂い信号差、および/または割り当てられた前記匂いグループに基づいて、前記検査対象ガス(210)中の前記匂いグループの濃度を決定するように更に構成されている、装置(100)。
【請求項14】
請求項9~13の何れか一項に記載の装置(100)であって、
前記匂いグループが向精神性物質および/または薬剤物質として分類される場合、および/または前記匂いグループの濃度が所定の濃度閾値を超える場合、前記プロセッサ(150)は、警告信号を発するように更に構成されている、装置(100)。
【請求項15】
請求項9~14の何れか一項に記載の装置(100)を含む、車両。
【請求項16】
請求項15に記載の車両であって、
前記プロセッサ(150)は、
前記車両の運転者を決定し、
前記運転者に呼気サンプルを提供するよう要求するように更に構成され、
前記第1匂いセンサ(110)は、前記呼気サンプル(210)の1つまたは複数の匂い物質と前記第1匂いセンサ(110)との相互作用に基づいて、第1電気的呼気サンプル信号を取得するように構成され、
前記フィルタ(120)は、前記呼気サンプル(210)から少なくとも1つの安全性匂いグループを濾過し、濾過された呼気サンプル(220)を取得するように構成され、前記安全性匂いグループは、疾患を示す物質、向精神性物質、および/または薬剤物質のうちの少なくとも1つを含み、
前記第1匂いセンサ(110)および/または前記第2匂いセンサ(130)は、前記濾過された呼気サンプル(220)の1つまたは複数の匂い物質と前記第1および/または第2匂いセンサ(110、130)との相互作用に基づいて、第2電気的呼気サンプル信号を取得するように構成され、
前記プロセッサ(150)は、
前記第1および第2電気的呼気サンプル信号の呼気サンプル信号差を決定し、
呼気サンプル信号差が存在する場合、前記呼気サンプル信号差を前記安全性匂いグループに割り当て、
安全性設定の満たし度合に基づいて、前記車両での走行を一時的に阻止するイモビライザ信号を発するように、更に構成され、
前記呼気サンプル信号差が前記安全性匂いグループに割り当てられたときに、前記安全性設定が満たされる、および/または、
前記呼気サンプル中の前記安全性匂いグループの濃度が前記所定の濃度閾値を超えるときに、前記安全性設定が満たされる、車両。
【請求項17】
請求項15または16に記載の車両であって、
前記第1匂いセンサ(110)は、前記運転者および/または前記車両の周囲空気(210)の1つまたは複数の匂い物質と前記第1匂いセンサ(110)との相互作用に基づいて、第1電気的周囲空気信号を取得するように構成され、
前記フィルタ(120)は、前記周囲空気(210)から少なくとも1つの有毒な匂いグループを濾過し、濾過された周囲空気(220)を取得するように構成され、前記有毒な匂いグループは、少なくとも1つの、有毒物質、健康に有害な物質、腐敗を示す物質、および/または少なくとも1つの火災を示す物質を含み、
前記第1匂いセンサ(110)および/または前記第2匂いセンサ(130)は、前記濾過された周囲空気(220)の1つまたは複数の匂い物質と、前記第1および/または第2匂いセンサ(110、130)との相互作用に基づいて、第2電気的周囲空気信号を取得するように構成され、
前記プロセッサ(150)は、
前記第1および第2電気的周囲空気信号の周囲空気信号差を決定し、
周囲空気信号差が存在する場合、前記周囲空気差を前記有毒な匂いグループに割り当て、
毒性安全性設定の満たし度合に基づいて、前記運転者に対して危険を示す警告信号を発するように、更に構成され、
前記毒性安全性設定は、前記周囲空気中の前記有毒な匂いグループの濃度が所定の濃度閾値を超えるときに満たされる、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるためのコンピュータで実行される方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1つまたは複数の化学的(匂い)物質が匂いセンサの匂いセルに作用することで、匂いを、匂いセンサを用いて匂い情報(感覚情報)として認識することができる。匂い情報を認識するために、同じ種類の複数個の匂いセンサを、センサアレイに配置して使用することができる。化学物質とセンサアレイとの間の相互作用によって、電子信号を測定し、人工知能を使用してそれを評価することができる。
【0003】
匂いセンサの表面は、匂いの化学的匂い物質と匂いセンサの表面との間に相互作用が起こるようにコーティングされている。この場合、極めて特定のガス、または極めて特定の匂い物質のみが表面と相互作用するように表面を処理することは、これまで不可能であった。これに対応して、更なる類似のガスまたは匂い物質と表面との相互作用が、共に測定される。いわゆるクロスカップリングが起こる。その結果、測定された信号を特定の匂い物質に一意に割り当てることが、不可能である。さらに、同じ種類の匂いセンサの表面には、電気的信号のガスまたは匂い物質への正確な割り当てに同様に影響を及ぼす偏差もある。これは、匂いセンサが、特定の物質だけでなく、例えば人の息のような混合ガスにもさらされる場合に、特に重要である。
【0004】
匂いセンサを用いた電気的信号の測定が困難であることに加え、1つの匂いが複数の匂い物質によって発生する可能性があるということで、更に困難が増している。同じ匂い、または類似の匂いを生成する、部分的に類似する匂い物質から極めて類似する匂い物質まで、複数の匂い物質が与えられる可能性がある。これらの匂い物質の電気的信号は、異なる可能性がある。
【0005】
EP3379240A1は、匂いセンサを記載する。この匂いセンサは、2つのセンサ素子を備える。各々のセンサ素子は、空気中に含まれる1つまたは複数の匂い物質を吸着する物質吸着膜を備える。さらに、センサ素子は、物質の吸着後の物質吸着膜の電気的特性を測定するための電気信号変換部を含む。物質吸着膜は、導電性高分子を含む基本骨格と、導電性高分子の基本骨格を変性させるドーパントと、を備える。センサ素子には、各々、基本骨格とドーパントの割合が異なる物質吸着膜が設けられている。
【0006】
EP3187852A1は、匂い識別システムを記載する。この匂い識別システムは、気体サンプルの匂い要因に含まれる匂い原因物質と相互作用する少なくとも2つ以上のセンサを含む作用アレイ部を含む。さらに、このシステムは、作用アレイ部で匂い要因と相互作用することによって取得したデータを処理するセンサデータ処理部と、匂い要因の情報および匂い要因の相互作用パターン情報をあらかじめ格納している匂い要因情報格納部と、センサデータ処理部で処理されたパターンと匂い要因情報格納部の情報とを参照し、相互作用パターンに基づいて匂い要因を識別するパターン識別部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP3379240A1
【特許文献2】EP3187852A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、上述の欠点の1つまたは複数を解決する、検査対象ガスの少なくとも1つの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるためのコンピュータで実行される方法および装置を提供することである。特に、本発明の課題は、特定のガスまたは少なくとも1つの所定の匂いグループの存在を、決定することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、第1態様によれば、検査対象ガスの少なくとも1つの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるためのコンピュータで実行される方法によって解決される。方法は、ガスの1つまたは複数の匂い物質と少なくとも1つの第1匂いセンサとの相互作用に基づいて、第1電気的匂い信号を取得するステップを含む。少なくとも1つの所定の匂いグループを検査対象ガスから濾過し、濾過されたガスを取得する。この匂いグループは、少なくとも1つの濾過されるべき匂い物質を含む。方法は、濾過されたガスの1つまたは複数の匂い物質と、第1匂いセンサおよび/または少なくとも1つの第2匂いセンサとの相互作用に基づいて、第2電気的匂い信号を取得するステップを更に含む。第1および第2電気的匂い信号の匂い信号差を決定し、この匂い信号差を匂いグループに割り当てる。
【0010】
提案される方法によれば、匂いグループを濾過し、匂い信号差をこの匂いグループに割り当てる。匂いグループを濾過する際に、1つまたは複数の所定の匂い物質および類似の挙動をする匂い物質を、検査対象ガスから濾過することができる。その結果、匂い信号差をこの匂いグループに割り当てることができる。提案される方法を用いて、ろ過されるべき匂い物質だけでなく、濾過されるべき匂い物質に類似の匂い物質も、濾過することができる。これらは、複数の物質および/または物質組成物を有する可能性がある。結果として生じる匂い信号差は、濾過された匂い物質および類似の匂い物質を表すことができる。したがって、先行技術によっては可能性のある、不正確さが改善される。その結果、匂いグループをより良好に識別することができる。したがって、極めて特定の匂い物質のみが相互作用できるように匂いセンサの表面を処理することが、必ずしも必要でない。さらに、この極めて特定の匂い物質のみを有さないガスも、使用することができる。
【0011】
第1電気的匂い信号は、少なくとも1つの第1匂いセンサを用いて取得することができる。および/または、第2電気的匂い信号は、第1および/または少なくとも1つの第2匂いセンサを用いて取得することができる。
【0012】
この濾過は、Royal Societe of Chemistryによって2020年11月12日に公開された、Jan van den Broek, Ines c. Weber, Andreas T. GuntnerおよびSotiris E. Pratsinisによる「フィルタによって可能にされる高度に選択的なガス感知(Highly selective gas sensing enabled by filters)」による方法またはフィルタを用いて行うことができる。
【0013】
匂い信号差は、第1および第2匂い信号の減算とすることができる。代替的または追加的に、匂い信号差は、第1匂い信号の第2匂い信号との比較とすることができる。特に、匂い信号差は、両方の匂い信号のn次元分析または減算とすることができる。匂い信号は、二次元信号の形態、例えば周波数および振幅とすることができる。その結果、匂い信号または匂い信号差の二次元分析が可能である。匂い信号の更なる情報を利用可能である。その結果、三次元以上の分析を可能にすることができる。
【0014】
匂いグループは、2つ以上の匂い物質を含むことができる。匂い物質は、気体および/または液体の形態であり得る。さらに、匂い物質は、1つまたは複数の物質、物質組成物および/または分子もしくは分子組成物を有することができる。
【0015】
方法は、匂いデータベースに少なくとも1つの匂いデータベースエントリを提供するステップであって、この匂いデータベースエントリは、少なくとも匂いグループを特徴付けるステップを更に含むことができる。さらに、方法は、匂いデータベースエントリが匂いグループおよび割り当てられた匂い信号差を特徴付けるように匂いグループおよび割り当てられた匂い信号差に基づいて、匂いデータベースエントリを処理するステップを含むことができる。
【0016】
匂いデータベースエントリは、更に、匂い、および/または匂いグループの分類を特徴付けることができる。この分類は、少なくとも1つの、疾患、健康に有害な物質、有毒(毒性)物質、腐敗を示す物質、火災を示す物質、匂いグループの向精神性物質および/または薬剤物質を示す。これらは、体調を変化させる作用、ならびに/または意識および/もしくは知覚を変化させる作用を有する。そのような向精神性物質または薬剤物質は、全ての一般的な向精神性薬物、アルコール、大麻および他の違法物質を含むことができる。疾患は、人間の息中の匂い物質の変化をもたらす可能性がある。その結果、所定の匂い物質および/またはこれらの匂い物質の濃度が、疾患の存在を示すことができる。さらに、疾患は、特定の細菌およびウイルスを介して伝播される。これらは、所定の物質を有し、匂いセンサの表面と相互作用することができる、または濾過され得る。腐敗を示す物質は、例えば、果物、野菜、肉および魚などの食品において、微生物による物質の分解により生じ、特に食品の発酵を特徴付けるガスまたは物質を含む。火災を示す物質は、粉塵粒子(光沢のある煤、フライアッシュ、未燃物)および液滴(水、油蒸気、酸蒸気、液体燃焼残留物)からの微細に分散された形態の、燃焼によって発生するエアロゾルを示す、またはこれらを含むことができる。健康に有害な物質は、気道の液膜に溶解し、それによって化学的炎症(眼の涙から毒性肺水腫まで)を引き起こす物質、ヘモグロビン(CO)による酸素搬送またはミトコンドリアによるO2の細胞利用を抑制し、全身呼吸毒として作用するガス、および十分な濃度で酸素分圧を低下させることによって低酸素症を引き起こす窒素ガスなどの物質であり得る。さらに、健康に有害な物質には、麻酔効果を有する二酸化炭素(CO2)も含まれ得る。専門用語では、毒性物「Toxikum」とも称される有毒物質(毒物)は、特定の低用量から生体に入ることによって、生命体、ここでは特に人間に、その代謝過程を通して害を及ぼす可能性がある物質である。活性物質への曝露量が増加するにつれて、中毒による健康被害が発生する可能性が高まる。
【0017】
濾過するステップは、匂いグループを濾過するために、吸着フィルタ、特定サイズのフィルタ、および触媒フィルタのうちの少なくとも1つを含むことができる。代替的または追加的に、濾過するステップは、匂いグループを濾過するために、電界、機械的および/または物理的な分離および/または化学的な変換および/または周波数を用いて濾過するステップを含むことができる。さらに、濾過するステップは、ガスまたはガスの個々の成分、例えば匂いグループの匂い物質を加速させるステップと、成分を偏向させるステップと、を含むことができる。
【0018】
例えば、特定サイズのフィルタを用いて、所定のサイズ以下の匂い物質のみが対応するフィルタを通過できるように匂い物質を濾過することができる。吸着フィルタを用いて、匂い物質の所定の分子および/または分子組成物を、対応するフィルタの表面に結合させることができ、それによってガスから濾過することができる。
【0019】
匂いデータベースエントリは、フィルタ情報を含むことができる。フィルタ情報は、匂いグループの濾過を特徴付ける。
【0020】
方法は、第1匂い信号、第2匂い信号、匂い信号差、匂いデータベースエントリおよび/または割り当てられた匂いグループに基づいて、検査対象ガス中の匂いグループの濃度を決定するステップを更に含むことができる。
【0021】
方法は、匂いグループが向精神性物質および/または薬剤物質として分類される場合、および/または匂いグループの濃度が所定の濃度閾値を超える場合、警告信号を発するステップを更に含むことができる。
【0022】
匂い信号差を決定するステップ、匂いデータベースエントリを処理するステップ、濃度を決定するステップ、および警告信号を発するステップは、匂いアルゴリズム(Geruchsalgorithmus)を用いて実行することができる。匂いアルゴリズムは、機械学習アルゴリズムであってもよいし、それを含んでもよい。
【0023】
課題は、第2態様によれば、第1態様による方法によって得られる匂いデータベースによって解決される。
【0024】
課題は、第3態様によれば、ガスの少なくとも1つの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるためのコンピュータプログラム製品によって解決される。このコンピュータプログラム製品は、プログラムがプロセッサによって実行されるときに、プロセッサに第1態様による方法を実行させる命令を含む。
【0025】
課題は、第4態様によれば、検査対象ガスの少なくとも1つの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるための装置によって解決される。装置は、少なくとも1つの第1匂いセンサと、少なくとも1つのフィルタと、を含む。第1匂いセンサは、検査対象ガスの1つまたは複数の匂い物質と第1匂いセンサとの相互作用に基づいて、第1電気的匂い信号を取得するように構成されている。フィルタは、検査対象ガスから少なくとも1つの所定の匂いグループを濾過し、濾過されたガスを取得するように構成されている。匂いグループは、少なくとも1つの濾過されるべき匂い物質を含む。装置の第1匂いセンサおよび/または少なくとも1つの第2匂いセンサは、濾過されたガスの1つまたは複数の匂い物質と第1および/または第2匂いセンサとの相互作用に基づいて、第2電気的匂い信号を取得するように構成されている。装置は、メモリと、プロセッサと、を更に備える。プロセッサは、第1および第2電気的匂い信号の匂い信号差を決定し、匂い信号差を匂いグループに割り当てるように構成されている。
【0026】
第4態様による装置および第1態様による方法は、建物、容器、コンテナ、部屋、または以下に説明するように車両内に設けることができる。建物内では、提案される装置または提案される方法を用いて、安全性に関連する匂いを検出することができる。これによって、例えば、安全性に関連する匂いが検出される、および/または安全性に関連する匂いの濃度が空気中の所定の濃度を超える場合、警告信号/警報をトリガすることができる。コンテナは、例えば、長距離にわたって果実を輸送できるようにするために、果実を輸送するために使用される。輸送中、果実はコンテナ内に密閉される。原則として、外部からの目視検査は不可能である。カビおよび微生物による物質の分解によって、果実の傷みまたは腐敗を示すガスまたは匂いが、発生する可能性がある。装置は、コンテナの内部に設けることが可能であり、コンテナの外部に存在する受信ユニットに、対応する信号を送信することができる。このようにして、果実を連続的にコントロールすることができる。
【0027】
メモリは、匂いデータベースに少なくとも1つの匂いデータベースエントリを提供するように更に構成することができる。匂いデータベースエントリは、少なくとも匂いグループを特徴付ける。プロセッサは、匂いデータベースエントリが匂いグループおよび割り当てられた匂い信号差を特徴付けるように、匂いグループおよび割り当てられた匂い信号差に基づいて、匂いデータベースエントリを処理するように更に構成することができる。
【0028】
匂いデータベースエントリは、更に、匂い、および/または匂いグループの分類を特徴付けることができる。この分類は、疾患、匂いグループの向精神性物質および/または薬剤物質を示す。これらは、体調を変化させる作用ならびに/または意識および/もしくは知覚を変化させる作用を有する。
【0029】
フィルタは、吸着フィルタ、特定サイズのフィルタ、および/または触媒フィルタとすることができる。代替的または追加的に、フィルタは、匂いグループを濾過するために、電界、機械的および/または物理的な分離および/または化学的変換を用いて、および/または匂いグループを濾過するために、周波数を用いて、濾過するように構成することができる。代替的または追加的に、フィルタは、ガスまたはガスの個々の成分、例えば匂い物質を加速させて、成分を偏向させることによって濾過するように構成することができる。
【0030】
プロセッサは、第1匂い信号、第2匂い信号、匂い信号差、および/または割り当てられた匂いグループに基づいて、検査対象ガス中の匂いグループの濃度を決定するように更に構成することができる。
【0031】
さらに、匂いグループが向精神性物質および/または薬剤物質として分類される場合、および/または匂いグループの濃度が所定の濃度閾値を超える場合、プロセッサは、警告信号を発するように構成することができる。
【0032】
装置は、さらに、特に第1匂いセンサ、第2匂いセンサ、フィルタ、および/またはプロセッサからデータを送信および/または受信するように構成されたトランシーバを含むことができる。代替的または追加的に、トランシーバは、特に無線ネットワークを用いて、外部ユニットとの間でデータを受信および/または送信するように構成することができる。このようなデータは、匂いデータベースおよび/またはフィルタ情報を特徴付けることができる。
【0033】
課題は、第5態様によれば、第4態様による装置を含む車両によって解決される。
【0034】
プロセッサは、車両の運転者を決定し、運転者に呼気サンプルを提供するよう要求するように更に構成することができる。第1匂いセンサは、呼気サンプルの1つまたは複数の匂い物質と第1匂いセンサとの相互作用に基づいて、第1電気的呼気サンプル信号を取得するように構成することができる。さらに、フィルタは、呼気サンプルから少なくとも1つの安全性匂いグループを濾過するように構成することができる。この安全性匂いグループは、疾患を示す物質、向精神性物質、および/または薬剤物質のうちの少なくとも1つを含む。第1匂いセンサおよび/または第2匂いセンサは、濾過された呼気サンプルの1つまたは複数の匂い物質と第1および/または第2匂いセンサとの相互作用に基づいて、第2電気的呼気サンプル信号を取得するように構成することができる。プロセッサは、第1および第2電気的呼気サンプル信号の呼気サンプル信号差を決定し、呼気サンプル信号差が存在する場合、呼気サンプル信号差を安全性匂いグループに割り当てるように更に構成することができる。呼気サンプル信号差が、差を有するとき、または所定の閾値を超えるときに、呼気サンプル信号差の存在を決定することができる。所定の閾値は、呼気サンプル信号差の存在を決定する匂い信号の測定において、ノイズおよび/またはエラーが抑制されるように選択することができる。これに対応して、ノイズ及び/エラーに起因する誤診断を防止することができる。プロセッサは、安全性設定の満たし度合に基づいて、車両での走行を一時的に阻止するイモビライザ信号を発するように更に構成することができる。安全性設定は、呼気サンプル信号差が安全性匂いグループに割り当てられたときに満たされる。代替的または追加的に、呼気サンプル中の安全性匂いグループの濃度が所定の濃度閾値を超えるときに、安全性設定が満たされる。安全性匂いグループの濃度は、第1呼気サンプル信号、第2呼気サンプル信号、呼気サンプル信号差、および/または割り当てられた安全性匂いグループに基づいて、呼気サンプルにおいて決定することができる。
【0035】
これに対応して、車両での走行を開始する前に、客観的な基準に従って運転者をコントロールすることができる。これによって、運転者および更なる道路利用者の安全性を高めることができる。さらに、運転者の主観は、例えばアルコールレベルを推定する場合のように、時として誤った推定となる可能性がある。この装置を用いて、運転者に対してコントロールの可能性が与えられる。
【0036】
第1匂いセンサは、運転者および/または車両の周囲空気の1つまたは複数の匂い物質と第1匂いセンサとの相互作用に基づいて、第1電気的周囲空気信号を取得するように構成することができる。周囲空気は、車室内および/または車室外の空気、特に車室外の空気とすることができる。フィルタは、周囲空気から少なくとも1つの有毒な匂いグループを濾過し、濾過された周囲空気を取得するように構成することができる。有毒な匂いグループは、少なくとも1つの、有毒物質、健康に有害な物質、腐敗を示す物質、および/または少なくとも1つの火災を示す物質を含む。有毒物質は、車両からの排気ガス、または少なくとも1つの他の車両からの排気ガスとすることができる、さもなければ人間にとって有毒な物質とすることができる。第1匂いセンサおよび/または第2匂いセンサは、濾過された周囲空気の1つまたは複数の匂い物質と、第1および/または第2匂いセンサとの相互作用に基づいて、第2電気的周囲空気信号を取得するように構成することができる。プロセッサは、第1および第2電気的周囲空気信号の周囲空気信号差を決定し、周囲空気信号差が存在する場合、周囲空気差を有毒な匂いグループに割り当て、毒性安全性設定の満たし度合に基づいて、運転者に対して危険を示す警告信号を発するように、更に構成することができる。毒性安全性設定は、周囲空気信号差が有毒な匂いグループに割り当てられたときに満たされる、および/または毒性安全性設定は、周囲空気中の有毒な匂いグループの濃度が所定の濃度閾値を超えるときに満たされる。周囲空気信号差の存在は、呼気サンプル信号差と同様に、周囲空気信号差が、差を有するとき、または所定の閾値を超えるときに、決定することができる。これによって、運転者の周囲を、有毒な匂いグループに関して検査することができる。例えば、運転者は、窓が開いた状態の車両で、トンネル内で交通渋滞に陥る可能性がある。複数の車両の排気ガスが、周囲空気中で所定の濃度を超えると、車両は、運転者に排気ガスに対して注意を促し、運転者に窓を閉じさせることができる。車両内又はその近傍で火災が発生した場合、提案される装置を用いて、運転者にこれを周知させることができる。
【0037】
方法および装置に関してなされた実施事項および特徴は、同様に車両の特徴としても構成することができる。さらに、方法に関してなされた実施事項および特徴は、装置の特徴として構成することができる。
【0038】
好適な実施形態は、添付の図を参照し、例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】検査対象ガスの少なくとも1つの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるための装置の概略図である。
【
図2】第1および第2匂い信号を取得するステップの概略図である。
【
図3】検査対象ガスの少なくとも1つの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるための概略的な方法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図において、同一の要素は、または実質的に機能的に同一または類似の要素は、同一の参照記号によって示される。
【0041】
図1は、検査対象ガスの少なくとも1つの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるための装置100を示す。装置100は、第1匂いセンサ110と、フィルタ120と、第2匂いセンサ130と、メモリ140と、プロセッサ150と、トランシーバ160と、を含む。装置100の複数のユニットは、信号技術的に相互に結合されている。
【0042】
第1および第2匂いセンサ110、130は、ガスの1つまたは複数の匂い物質の相互作用に基づいて、第1および第2電気的匂い信号を生成するように構成されている。この目的のために、匂いセンサ110、130は各々、匂い物質を構成する物質および/または物質組成物が表面と相互作用するように、例えば分子レベルで表面と結合するように処理された表面を備える。電気的匂い信号は、匂いセンサ110、130の各々の表面との相互作用によって、変化する。電気的匂い信号は、表面が匂い物質と相互作用しない第1状態と、匂い物質が表面と相互作用する第2状態と、を示すことができる。加えて、電気的匂い信号を、時間経過の形態で記録することができる。
【0043】
フィルタ120は、ガスから所定の匂いグループを濾別し、濾過されたガスを取得するように構成されている。この匂いグループは、少なくとも1つの濾過されるべき匂い物質を含む。例えば、フィルタは、所定の最小孔径を有するフィルタ膜を備えることができる。ガスは、異なるガス成分または匂い物質を有する可能性がある。これらは異なるサイズを有する。ガスがフィルタ120によって濾過されると、フィルタ膜の孔径よりも大きいサイズを有する匂い物質が、フィルタ膜を用いてガスから濾過される。これに対応して、濾過されたガスは、ガスよりも匂い物質が少ない。メモリ140には、少なくとも1つの匂いデータベースエントリを有する匂いデータベースが格納されている。この匂いデータベースエントリは、少なくとも1つの匂いグループを特徴付ける。特徴付けられた匂いグループは、少なくとも1つの濾過された匂いグループに対応する。さらに、匂いデータベースは、フィルタの設定を表す、ここでは例えばフィルタ膜の孔径を表すフィルタ情報を特徴付けることができる。
【0044】
トランシーバ160は、装置100の多様なユニットからデータを受信するように構成されている。さらに、トランシーバ160は、外部ユニットとデータを送信および/または受信するように構成されている。
図2に示されるように、第1匂いセンサ110は、検査対象ガス210の1つまたは複数の匂い物質と第1匂いセンサ110との相互作用、特に第1匂いセンサ110の処理された表面との相互作用に基づいて、第1電気的匂い信号を生成する。
【0045】
さらに、検査対象ガス210は、少なくとも1つの所定の匂いグループ210がガス210から濾別されるようにフィルタ120を用いて濾過される。この所定の匂いグループは、少なくとも1つの所定の匂い物質を含む。フィルタ120を用いて、濾過されたガス220が取得される。この濾過されたガス220は、第2匂いセンサ130に導かれる。代替的または追加的に、濾過されたガス220を、第1匂いセンサ110に導くことができる。
【0046】
第2電気的匂い信号は、濾過されたガス220と第2匂いセンサ130との相互作用によって生成される。第1および第2匂い信号は、プロセッサ150に更に導かれる。
【0047】
プロセッサ150は、第1および第2匂い信号の匂い信号差を決定するように構成されている。これは、特に、匂いアルゴリズムを用いて、ここでは機械学習アルゴリズムを用いて行うことができる。匂い信号差は、第1匂い信号から第2匂い信号を減算することによって取得される。そして、匂い信号差を、濾過された匂いグループに割り当てることができる。メモリ140において、濾過された匂いグループに関する匂いデータベースエントリは、匂い信号差によって補足される、および/または変更される。
【0048】
装置100は、以下に説明するように、車両において、または車両のために使用することができる。更なる可能な用途は、建物、部屋、容器の内部、屋外、およびコンテナなどの運搬装置内部である。
【0049】
更なる態様によれば、車両が装置100を含む。車両は、トラック、自動車、バス、スクーター、自動二輪車、船舶、航空機、または特に少なくとも部分的に自律走行する車両であり得る。車両運転者が自らの判断と客観的基準とに従って車両を操縦できる場合にのみ、車両は車両運転者によって操縦されるべきである。客観的基準には、特にアルコールレベルが含まれる。これは、所定の閾値未満であるべきである/閾値未満の必要がある。更なる客観的基準は、体調を変化させる作用、ならびに/または意識および/もしくは知覚を変化させる作用を有する向精神性物質および/または薬剤物質を摂取している場合は、車両が運転されてはならないことである。これらの客観的基準は、更なるガイドラインおよび法的要件に従うことができる。その結果、車両運転者がそのような物質を有していないこと、または車両運転者のアルコールレベルが閾値以下であることが、車両において懸念される場合がある。
【0050】
更なる態様によれば、車両運転者の安全性、可能性のある更なる乗客および他の道路利用者の安全性をも高めるために、車両は、装置100を備える。
【0051】
プロセッサ150は、車両の運転者を決定し、運転者に呼気サンプル210を提供するよう要求するように構成されている。呼気サンプル210は、この目的のために設けられたマウスピースを介して採取することができる。その結果、吸入された呼気サンプル210は、第1および第2匂いセンサ110、130の方向に導かれる。代替的または追加的に、空気を車両内部から吸引し、匂いセンサ110、130に導くことができる。吸引された空気は、少なくとも部分的に運転者の呼気サンプルを含むことができる。第1匂いセンサ110は、呼気サンプル210の1つまたは複数の匂い物質と第1匂いセンサ110との相互作用に基づいて、第1電気的呼気サンプル信号を取得するように構成されている。さらに、フィルタ120を用いて、少なくとも1つの安全性匂いグループが呼気サンプル210から濾過される。この安全性匂いグループは、疾患を示す、向精神性物質および/または薬剤物質を含有する安全性匂い物質として分類される、少なくとも1つの匂い物質である。フィルタ120を用いて、濾過された呼気サンプル220が取得される。第2匂いセンサ130は、濾過された呼気サンプル220の1つまたは複数の匂い物質と第2匂いセンサ130との相互作用に基づいて、第2電気的呼気サンプル信号を取得するように構成されている。プロセッサ150は、第1および第2電気的呼気サンプル信号の呼気サンプル信号差を決定する。プロセッサ150が、呼気サンプル信号差があると判定した場合、呼気サンプル信号差は、安全性匂いグループに割り当てられる。呼気サンプル信号差が、差を有するとき、または所定の閾値を超えるときに、呼気サンプル信号差の存在を決定することができる。所定の閾値は、呼気サンプル信号差の存在を決定する匂い信号の測定において、ノイズおよび/またはエラーが抑制されるように選択することができる。これに対応して、ノイズおよび/またはエラーに起因する誤診断を防止することができる。その結果、対応して分類された匂い物質が呼気サンプル中に存在する。この匂い物質は、車両運転者の運転能力に影響を与える可能性がある。プロセッサ150は、安全性設定の満たし度合に基づいて、車両での走行を一時的に阻止するイモビライザ信号を発する。安全性設定は、呼気サンプル信号差が安全性匂いグループに割り当てられたときに満たされる。追加的または代替的に、安全性設定は、呼気サンプル210中の安全性匂いグループの濃度が所定の濃度閾値を超えるときに満たされる。例えば、呼気サンプル210中のアルコールの濃度が所定の濃度閾値を超える場合である。これに対応して、客観的基準にしたがって運転に適さない車両運転者による車両の走行を阻止することができ、それによって安全性を高めることができる。
【0052】
図3は、検査対象ガス210の少なくとも1つの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるための方法300を概略的に示す。方法300は、検査対象ガス210の1つまたは複数の匂い物質と少なくとも1つの第1匂いセンサ110との相互作用に基づいて、第1電気的匂い信号を取得するステップ310を含む。方法300は、フィルタ120を用いて、少なくとも1つの所定の匂いグループを検査対象ガス210から濾過するステップ320と、濾過されたガス220を取得するステップと、を更に含む。この匂いグループは、少なくとも1つの濾過されるべき匂い物質を含む。第2電気的匂い信号は、濾過されたガス220の1つまたは複数の匂い物質と、第1匂いセンサ110および/または少なくとも1つの第2匂いセンサ130との相互作用に基づいて、ステップ330において取得する。さらに、方法は、第1および第2電気的匂い信号の匂い信号差を決定するステップ340と、匂い信号差を匂いグループに割り当てるステップ350と、を含む。
【符号の説明】
【0053】
100 検査対象ガスの少なくとも1つの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるための装置
110 第1匂いセンサ
120 フィルタ
130 第2匂いセンサ
140 メモリ
150 プロセッサ
160 トランシーバ
210 ガス
220 濾過されたガス
300 検査対象ガスの少なくとも1つの匂い物質を電気的匂い信号に割り当てるための方法
310 第1電気的匂い信号を取得するステップ
320 少なくとも1つの所定の匂いグループを検査対象ガスから濾過するステップ
330 第2電気的匂い信号を取得するステップ
340 第1および第2電気的匂い信号の匂い信号差を決定するステップ
350 匂い信号差を匂いグループに割り当てるステップ
【外国語明細書】