(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008522
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】脱水汚泥の焼却方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20230112BHJP
C02F 11/06 20060101ALI20230112BHJP
C02F 11/121 20190101ALI20230112BHJP
F23G 7/00 20060101ALI20230112BHJP
F23C 10/04 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
F23G5/50 E
C02F11/06 A ZAB
C02F11/121
F23G7/00 104Z
F23C10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112153
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河岸 正泰
(72)【発明者】
【氏名】長沢 英和
【テーマコード(参考)】
3K062
3K064
3K161
4D059
【Fターム(参考)】
3K062AA12
3K062AB01
3K062AC02
3K062BA02
3K062CA01
3K062CB01
3K062DA01
3K062DA07
3K062DA12
3K062DA32
3K062DA35
3K062DB30
3K064AB03
3K064AC06
3K064AC12
3K064AC13
3K064AD08
3K064BA07
3K064BB01
3K161AA23
3K161CA01
3K161DA52
3K161EA31
3K161FA32
3K161FA35
3K161FA46
3K161FA60
3K161HA25
3K161HB03
3K161HB13
4D059AA03
4D059AA07
4D059BB01
4D059BB13
4D059BE26
4D059BF15
4D059EA01
4D059EA02
4D059EA06
4D059EA08
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】適性な流動焼却炉の運転を可能とする。
【解決手段】動焼却炉1内に脱水汚泥を投入し、焼却を図る汚泥の焼却方法において、前記焼却炉1内に投入する投入水分情報と、脱水汚泥の温度情報と、前記焼却炉内の砂量情報とを含む情報に基づいて、経時的に、前記流動焼却炉内における砂量の調整操作を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動焼却炉内に脱水汚泥を投入し、焼却を図る汚泥の焼却方法において、
前記焼却炉内に投入する投入水分情報と、前記脱水汚泥の温度情報と、前記焼却炉内の砂量情報とを含む情報に基づいて、
経時的に、前記流動焼却炉内における砂量の調整操作を行う、
ことを特徴とする流動焼却炉における脱水汚泥の焼却方法。
【請求項2】
前記投入水分情報は、流動焼却炉内への経時的な脱水汚泥の投入量と、当該脱水汚泥の含水率とに基づいて得るものである請求項1又は2記載の流動焼却炉における脱水汚泥の焼却方法。
【請求項3】
前記経時的な操作は、段階的な操作である請求項1又は2記載の流動焼却炉における脱水汚泥の焼却方法。
【請求項4】
前記脱水汚泥の含水率は、前記脱水汚泥を得るスクリュープレス式脱水機のトルクに基づいて得る請求項2記載の流動焼却炉における脱水汚泥の焼却方法。
【請求項5】
前記脱水汚泥の含水率は、前記脱水汚泥を得る脱水機から前記流動焼却炉に至る前記脱水汚泥の供給経路に設けた含水率計による情報に基づいて得る請求項2記載の流動焼却炉における脱水汚泥の焼却方法。
【請求項6】
前記脱水汚泥の含水率は、前記脱水汚泥を得るスクリュープレス式脱水機の脱水条件情報と前記脱水汚泥の含水率との関係性を機械学習された学習済みモデルを用いて得るものである請求項2記載の流動焼却炉における脱水汚泥の焼却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動焼却炉による脱水汚泥の焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流動焼却炉は、下水汚泥のほか、都市ごみ、食品工場での廃棄物、産業廃棄物の焼却に使用されている。
また、投入する焼却物の水分などの変動に対応可能である点で、下水汚泥を脱水した後に焼却する態様に適している。
【0003】
特許文献1には、循環流動層焼却炉の運転方法において、炉頂と炉床との圧力差が所定範囲内になるように制御して、砂循環量を一定に保つ循環流動層焼却炉の運転方法が開示されている。
特許文献2には、被燃焼物の水分量に応じて、炉に供給する空気量を可変制御することが開示されている。
【0004】
特許文献1のものは、あくまで循環流動層焼却炉であるほか、焼却炉へ供給される脱水汚泥の温度はほぼ一定であることが前提であるため、焼却炉の運転には、脱水汚泥の水分量や脱水汚泥の温度などの変動に対する考慮がなされていない。
【0005】
特許文献2のものも、あくまで循環流動層焼却炉であるほか、砂量との関係については考慮がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-122305号公報
【特許文献2】特開2001-227731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、適性な流動焼却炉の運転が可能な脱水汚泥の焼却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は次の態様を含む。
流動焼却炉内に脱水汚泥を投入し、焼却を図る汚泥の焼却方法において、
前記焼却炉内に投入する投入水分情報と、脱水汚泥の温度情報と、前記焼却炉内の砂量情報とを含む情報に基づいて、
経時的に、前記流動焼却炉内における砂量の調整操作を行う、
ことを特徴とする流動焼却炉における脱水汚泥の焼却方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、適性な流動焼却炉の運転が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】流動焼却炉及びその付帯設備例の概要図である。
【
図3】制御例における投入汚泥含水率と砂量との相関例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態例を説明する。この実施の形態は例示であって、本発明の外縁を規定するものではない。
【0012】
図1は流動焼却炉及びその付帯設備例の概要図であり、流動焼却炉(気泡流動層炉)1及び脱水機2を備えている。
脱水機2は前設備からの汚泥を受けて、脱水処理し、処理した脱水汚泥は供給路3を通して流動焼却炉1に供給される。
【0013】
流動焼却炉1では、脱水汚泥を受けながら、炉内底部に設けた流動空気吹き込み手段4を介して、流動空気が吹き込まれるために、脱水汚泥が流動媒体としての砂とともに吹き上げられ、燃焼熱を受けて焼却がなされる。
燃焼(焼却)排ガスは炉頂部から排出され、図示しない、排ガス処理設備に送られる。
【0014】
排ガス処理設備として、公知の種々の形態ものを使用できる。例えば、予熱器(熱交換器)を通した後に、除塵装置に導き、必要により適宜の処理を行った後に清浄化空気を大気に放出する形態を採用することができる。
また、例えば特許第4831309号を代表例で示されているように、過給器を設け、その過給器の排気を前記予熱器に通し、前記排ガスのもっている熱と熱交換させ昇温させた後に、流動空気吹き込み手段4の流動空気として利用する形態なども採用できる。
過給器を設けることで流動焼却炉1での自燃が可能であり、また、使用エネルギーが格段と低下することが実証されている。
【0015】
流動焼却炉1の炉底部には、砂の切り出し設備5が設けている。砂の切り出し設備5は切り出し弁5a、スクリュー移送部5b、篩分け部5cなどを含む。
砂の切り出し設備5から、必要時において、砂抜出し指令を受け、砂供給の指令を受けて所定量の砂がコンベア6を介して一時貯留器7に返送される。
一時貯留器7では、砂供給の指令を受けて所定量の砂を供給弁7aを介して流動焼却炉1内に供給する。
【0016】
流動空気吹き込み手段4は、吹き込みブロア8からの空気が流動空気ヘッダ4aを介して吹き込まれる。また、必要により、補助燃料を使用する熱風炉9からの加熱空気を受けて、流動空気吹き込み手段4に吹き込むことができる。
【0017】
実施の形態では、脱水汚泥の含水率検出手段11、流動焼却炉1内への脱水汚泥の汚泥投入量検出手段12、脱水汚泥温度の温度検出手段13が設けられる。
これらの検出手段からの信号は、演算処理器20に取り込まれる。演算処理器20への検出信号は、自動的に取り込むほか、作業員による手入力による取り込みでもよい。
【0018】
脱水汚泥の含水率検出手段11としては公知のものを使用できる。例えば、脱水機2がスクリュープレス式脱水機の場合、特許第6696020号における
図1の符号50cで示される駆動モータと同様に、スクリューを回転駆動させる駆動モータMのトルクを検出するトルク検出器からの信号を取り込む形態を選択することができる。この場合、検出したトルクより脱水汚泥の含水率を予測する。その他、駆動トルクを検出信号とする例としては、特許第6489444号、特開2019-107628号などがある。
他方、特開2003-177105号などのマイクロ波透過型水分計による検出信号を使用する形態でもよい。
【0019】
なお、脱水汚泥の含水率の予測は、脱水汚泥の含水率を出力可能なモデルを用いて、脱水汚泥の含水率を予測する。例えば、学習済みモデルを用いて脱水汚泥の含水率を予測する。当該学習済みモデルは、脱水条件情報と脱水汚泥の含水率との関係性を機械学習された学習済みモデルである。即ち、当該学習済みモデルは、入力データとして脱水条件情報が入力されると、出力データとして脱水汚泥の含水率を出力可能である。
ここで、脱水条件情報は、脱水機2における脱水の条件を示す情報である。脱水条件情報は、例えば、脱水機2が汚泥を脱水する際にスクリューを回転駆動させる駆動モータのトルク、脱水汚泥の汚泥温度、汚泥の汚泥性状などを示す情報である。脱水条件情報は、少なくとも脱水機2が汚泥を脱水する際にスクリューを回転駆動させる駆動モータのトルクおよび脱水汚泥の汚泥温度を少なくとも含むものとする。
【0020】
脱水汚泥の含水率の予測に用いる学習済みモデルには、任意の機械学習の手法が適用されてよい。任意の機械学習の手法とは、例えば、線形回帰、サポートベクターマシン回帰、ガウス過程回帰、決定木、ニューラルネットワークなどである。
なお、脱水汚泥の含水率を出力可能なモデルは、機械学習された学習済みモデルに限定されない。例えば、脱水汚泥の含水率を出力可能なモデルは、回帰モデル、回帰演算式、分類モデルなどであってもよい。
【0021】
流動焼却炉1内への脱水汚泥の汚泥投入量検出手段12としては公知のものを使用できる。例えば、供給路3を通る、又は流動焼却炉1内へのフィーダーによる脱水汚泥の時間当たりの供給量を検出信号とすることができる。
【0022】
脱水汚泥温度の温度検出手段13としては公知のものを使用できる。この例として、汚泥を加温することにより、脱水汚泥の含水率を調整することができ変動を抑制できることを、出願人が特許第6696020号において明らかにした。
しかるに脱水汚泥温度の温度検出手段13としては、当該特許と同様に、制御する熱媒量に基づくほか、特許第6696020号における
図1の加熱部50A4内の熱媒の温度を、空間50A2に設けた温度センサ(図示されていない)からの検出信号に基づくことができる。
また、脱水機2から排出された脱水汚泥の温度を検出する場合、例えば、サーモ温度計などの非接触式温度計を脱水汚泥温度の温度検出手段13とすることができる。
他方、特開2020-157261号のように、蒸気を吹き込んで加温脱水する場合には、例えばその蒸気の温度を脱水汚泥温度の温度検出手段13とすることができる。
【0023】
ところで、流動焼却炉における砂保有量は、炉に投入される処理物の水分量によって決定される(砂層水分負荷×投入水分量)。例えば高含水汚泥を投入する場合は砂量を多く必要とし、砂量が少なく投入水分量が設計水分負荷を超える場合は、砂層部の温度維持が困難となり、運転継続が難しくなる。
【0024】
一方で、流動焼却炉に脱水汚泥を投入するに先立ち、汚泥を加熱・加温等の前処理を行うことにより、特に焼却廃熱を利用した汚泥の加温処理は、低含水率の脱水汚泥を経済的に得ることができる。
【0025】
本発明者は、かかる加温処理により得られた低含水率の脱水汚泥は流動焼却炉内での分散性が良く、炉投入後に短時間で拡散・乾燥・熱分解・燃焼が進むことを確認した。
かかる加温処理により得られた低含水率の脱水汚泥の焼却に際し、砂量が多いと攪拌性が乏しくなり、砂層温度が下がる傾向となる。
このように炉に投入する汚泥性状によって最適な砂量があるところ、従来は、汚泥性状が短時間で大幅に変わる場合を見越して、代表汚泥性状をもとに決定した砂量で運転し、汚泥性状が代表性状を大きく逸脱した場合は、砂層温度低下を防止するために補助燃料を投入する等の措置を採っていた。
【0026】
仮に低含水率で分散性が高い汚泥を投入した場合は、補助燃料の投入によって砂層温度は維持できるが、上部のフリーボード部が熱量過多になり、クリンカーの発生や後段機器への熱影響等のリスクが生じるおそれがある。
また、補助燃料の投入によって、その燃料コストが高まる要因となっていた。
【0027】
本発明に係る実施の形態においては、焼却炉内に投入する投入水分情報と、脱水汚泥の温度情報と、焼却炉内の砂量情報とを含む情報に基づいて、経時的に、前記流動焼却炉内における砂量の調整操作を行う。
【0028】
焼却炉内の砂量情報としては、例えば、
図1の流動空気吹き込み手段4の流動空気ヘッダ4aの指示圧力計15Aと、炉頂部に設けた炉内圧力計15Bとの差圧(以下差圧をΔPで表す)で代用することができる。
【0029】
焼却炉内への投入水分(投入水分情報)は、汚泥投入量×汚泥含水率である。
しかるに、投入水分情報と、脱水汚泥の温度情報と、焼却炉内の砂量情報とを連続的に変化させると制御的に安定しないとともに、熱ロスに繋がるため、2~3段階のステップ制御(階的な操作)するのが望ましい。
【0030】
例えば
図3に示すように、投入水分情報(=汚泥投入量×汚泥含水率)として、汚泥含水率を3段階に設定し、汚泥温度を無加温のものと加温との2段階で設定したうえで、焼却炉内の砂量を調整する。
この例では、差圧指示計14からの現差圧が目標差圧ΔPとなるように、演算処理器20による制御信号により、砂の切り出し設備5による砂抜き出し、または一時貯留器7から供給弁7aを介しての供給を自動的に行う。
【0031】
(実施例)
次いで、上記実施の形態における操作例(運転例)を、
図2及び
図3とともに示す。
この実施例は、高含水率汚泥から加熱・加温脱水汚泥(高分散性、低含水率)に移行する場合を例として示すものである。
【0032】
(1)含水率78~82%程度の高含水率脱水汚泥を焼却炉に投入する。脱水機のトルクを確認し、脱水汚泥含水率を予測し投入水分量を演算する。砂層ΔPのSV値が20kPaでは結果として砂量が少ないため、砂層ΔPのSV値をSV1=25kPaに書き換える。
砂層ΔPのSV1=25kPaに対し、PV=20kPaのため、砂供給を開始する。PV=25kPaにより砂供給を停止する。その結果、砂量増加に伴って砂層温度が上昇し、補助燃料投入量が最適化する。
【0033】
(2)上記(1)汚泥性状から、加熱脱水を行い、徐々に低含水率化を図る。その結果、含水率75%、汚泥温度45℃の脱水汚泥となった。
この際、上記同様に投入水分量を演算すると、砂量が十分に多いため、砂層ΔPのSV値をSV2=20kPaに書き換えた。
同SV2に対してPV=25kPaのため、砂抜き出し開始した。PV=20kPaにより砂抜き出し停止した。砂量減少により攪拌性が増し、砂層温度が上昇し、補助燃料投入量を最適化できた。
【0034】
(3)上記(2)の汚泥性状から、さらに汚泥の加熱が進み、含水率70%、汚泥温度60℃の脱水汚泥となる。この際、上記同様に水分投入量を演算し、結果砂量が十分に多く、高分散性かつ低含水率の汚泥特性から、砂層温度が下がり、フリーボード温度が上昇した。砂層ΔPのSV値をSV3=15kPaに書き換え。同SV3に対してPV=20kPaのため、砂抜き出し開始。PV=15kPaにより砂抜き出し停止。砂量減少により攪拌性が増し、砂層温度が上昇し、補助燃料投入を停止し、自燃運転を行った。
【0035】
汚泥性状毎に砂量を最適化することで以下利点がもたらされる。
・砂層温度維持のための補助燃料投入量を最低限にすることができる。
・砂層部での燃焼割合を適正にすることで、フリーボード部の異常温度上昇を抑制でき、クリンカー防止やNOx低減に貢献できる。
・流動ブロワによって燃焼空気を押し込む気泡流動炉等の形式の場合、砂量の最適化によって砂層ΔPを必要最低限にでき、ブロワの消費電力低減に貢献できる。
・過給機によって燃焼空気を押し込む過給式流動炉等の形式の場合、過給機の運転に余裕ができ、低負荷域での自立運転が容易になる。
【符号の説明】
【0036】
1…流動焼却炉、2…脱水機、4…流動空気吹き込み手段、4a…流動空気ヘッダ、5…砂の切り出し設備、7…一時貯留器、7a…供給弁、11…含水率検出手段、12…汚泥投入量検出手段、13…脱水汚泥温度の温度検出手段、15A…指示圧力計、15B…炉内圧力計、20…演算処理器。