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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008523
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】携帯型培養用試験装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20230112BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230112BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20230112BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/34 D
C12M1/12
C12M1/42
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112155
(22)【出願日】2021-07-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】521296948
【氏名又は名称】李 明
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 明
(72)【発明者】
【氏名】張 洪鐸
(72)【発明者】
【氏名】許 永偉
(72)【発明者】
【氏名】戴 思慧
(72)【発明者】
【氏名】周 中瑞
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA07
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC01
4B029DF10
4B029DG10
4B029FA01
4B029GA01
(57)【要約】
【課題】高精度の温度調整が可能であり、かつ、生殖細胞の非活性化処理を行うとともに生殖細胞分布の均一化を図ることができる携帯型培養用試験装置を提供する。
【解決手段】携帯型培養用試験装置1は、培養皿8を載置可能な載置部7と、載置部7を振動させる振動部9と、載置部7の温度を調整する調温機構10と、載置部7に載置された培養皿8に紫外線を照射する紫外線ランプ4と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養皿を載置可能な載置部と、
前記載置部を振動させる振動部と、
前記載置部の温度を調整する調温機構と、
前記載置部に載置された前記培養皿に紫外線を照射する紫外線照射部と、を備える、
携帯型培養用試験装置。
【請求項2】
前記載置部の上方に設けられ前記載置部に載置された前記培養皿を撮像する撮像部をさらに備える、
請求項1に記載の携帯型培養用試験装置。
【請求項3】
前記紫外線照射部を前記載置部の上方に位置するように昇降させる昇降機構をさらに備える、
請求項2に記載の携帯型培養用試験装置。
【請求項4】
ケースと、
前記ケースを作業室と前記作業室の下方に位置する制御室とに仕切るためのものであって、前記培養皿が貫通可能な貫通孔が形成される仕切板と、をさらに備え、
前記作業室には、前記紫外線照射部及び前記昇降機構が収容され、
前記制御室には、前記載置部、前記振動部及び前記調温機構が収容される、
請求項3に記載の携帯型培養用試験装置。
【請求項5】
前記昇降機構は、前記ケースの天板に設けられる駆動部を有する、
前記調温機構は、前記仕切板の下方に設けられる、
請求項4に記載の携帯型培養用試験装置。
【請求項6】
前記昇降機構は、一端が前記駆動部に連結されるとともに他端が前記仕切板に支持されるリードスクリューをさらに有する、
請求項5に記載の携帯型培養用試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型培養用試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
魚類生殖細胞の発育を促すため、所定の低温環境において採集された生殖細胞に対して非活性化処理及び分布の均一化処理を即座に行う必要がある。従来、室外でこれらの処理を行うため、シェーカー、紫外線灯、保冷剤及び遮光板等の設備を携帯しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの複数の設備を携帯することは不便であり、かつ、生殖細胞の非活性化処理及び分布の均一化処理を同時に行うことは困難である。くわえて、保冷剤による温度調整の精度が低い。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、高精度の温度調整が可能であり、かつ、生殖細胞の非活性化処理を行うとともに生殖細胞分布の均一化を図ることができる携帯型培養用試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様によれば、培養皿を載置可能な載置部と、前記載置部を振動させる振動部と、前記載置部の温度を調整する調温機構と、前記載置部に載置された前記培養皿に紫外線を照射する紫外線照射部と、を備える携帯型培養用試験装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
この態様によれば、高精度の温度調整が可能であり、かつ、生殖細胞の非活性化処理を行うとともに生殖細胞分布の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る携帯型培養用試験装置を示す概略構成図である。
図2】昇降機構の要部を示す斜視図である。
図3】伝熱板の底面図である。
図4】スイッチ部の概略構成図である。
図5】生殖細胞の培養試験の各ステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態(以下、本実施形態という)について説明する。
【0009】
(携帯型培養用試験装置)
まず、図1から図4を参照しながら本実施形態に係る携帯型培養用試験装置1について詳細に説明する。
【0010】
図1は、携帯型培養用試験装置1を示す概略構成図である。図2は、昇降機構5の要部を示す斜視図である。図3は、伝熱板7の底面図である。図4は、スイッチ部14の概略構成図である。図面において、携帯型培養用試験装置1の左右方向(幅方向)、前後方向(奥行方向)及び上下方向(鉛直方向)を、それぞれX軸に沿う方向、Y軸に沿う方向及びZ軸に沿う方向とする。以下、説明の便宜上、携帯型培養用試験装置1の左右方向(幅方向)、前後方向(奥行方向)及び上下方向(鉛直方向)を単に左右方向(幅方向)、前後方向(奥行方向)及び上下方向(鉛直方向)と称する。
【0011】
携帯型培養用試験装置1は、生殖細胞(具体的には、魚類生殖細胞)の培養試験を行うための装置である。図1に示すように、携帯型培養用試験装置1は、ケース2、仕切板3、紫外線照射部としての紫外線ランプ4、昇降機構5、撮像部としてのカメラ6、載置部としての伝熱板7、培養皿8、振動部9(図3参照)、調温機構10、電源部としてのバッテリ11、リレー12、温度表示部13及び操作部としてのスイッチ部14を備える。
【0012】
ケース2は、各部品を収容するための収容部である。ケース2は、正面に開口211が形成されるフロントオープンボックス型のケース本体21と、ケース本体21とヒンジ接続され開口211に対し開閉することが可能な扉22と、を有する。
【0013】
紫外線が紫外線ランプ4から人体へ照射されることを防止する観点から、ケース本体21及び扉22は、紫外線を遮断することが可能な材質や色彩(例えば、黒色)から構成されることが好ましい。また、紫外線照射の防止及び携帯型培養用試験装置1全体の軽量化の両立を図る観点から、ケース本体21及び扉22は、黒アクリルから構成されることが好ましい。
【0014】
ケース本体21とケース本体21の開口211を封止する扉22とによって取り囲まれた空間は、各部品を収容するための収容空間23である。収容空間23は、水平に設けられる仕切板3により作業室231と制御室232とに分割される。なお、開口211は、制御室232に形成されておらず、作業室231の正面のみに形成される。
【0015】
作業室231は、仕切板3よりも上方に位置する空間であり、紫外線ランプ4、昇降機構5の一部及びカメラ6を収容する。制御室232は、仕切板3よりも下方に位置する空間であり、伝熱板7、振動部9、調温機構10、バッテリ11及びリレー12を収容する。これにより、昇降機構5による紫外線ランプ4の昇降を伝熱板7、振動部9及び調温機構10の設置によって妨げることを回避することができる。
【0016】
制御室232の外壁であって、ケース本体21の正板及び背板の少なくとも一方には、複数の散熱用孔24が形成される(図1参照)。そして、作業室231に収容される紫外線ランプ4からの紫外線は、作業室231と制御室232とを仕切るための仕切板3によって遮断されるため、紫外線が制御室232に入り込むことを防止することができる。この結果、制御室232の外壁に散熱用孔24を形成した場合であっても、紫外線が当該散熱用孔24を通じて外部へ漏れることを回避することができる。
【0017】
なお、上下方向における作業室231の寸法は、上下方向における制御室232の寸法よりも大きい。これにより、上下方向におけるケース本体21全体の寸法を大きくすることなく、昇降機構5の可動領域を大きくすることができる。
【0018】
図2に示すように、仕切板3の中央には、培養皿8が貫通可能な円形の貫通孔31が形成される。また、仕切板3の隅部には、作業室231に収容された部品(例えば、紫外線ランプ4、昇降機構5及びカメラ6等)と制御室232に収容された部品(例えば、リレー12及びスイッチ部14等)とを電気的に接続するためのケーブル(図示しない)が貫通可能な開口32が形成される。
【0019】
紫外線ランプ4は、下方に位置する伝熱板7に載置された培養皿8に対して紫外線を照射する。これにより、培養皿8内の生殖細胞の非活性化処理が行われる。
【0020】
昇降機構5は、紫外線ランプ4を昇降させる。これにより、培養皿8に対する紫外線の照射強度を調整することができる。具体的には、昇降機構5は、紫外線ランプ4を上昇させることにより、紫外線ランプ4が培養皿8から離間し、培養皿8に対する紫外線の照射を弱めることができる。一方、昇降機構5は、紫外線ランプ4を下降させることにより、紫外線ランプ4が培養皿8に近接し、培養皿8に対する紫外線の照射を強めることができる。
【0021】
図1及び図2に示すように、昇降機構5は、駆動部としてのモータ51、リードスクリュー52、一対のガイドポール53及びキャリッジ54を有する。
【0022】
モータ51は、リードスクリュー52を駆動する。モータ51は、ケース本体21の天板の上面に設けられる。これにより、モータ51がケース本体21の天板の下面に設けられた場合に比べ、ケース本体21の天板の下面に設けられるカメラ6の設置自由度を向上させることができるとともに、モータ51の作動時に発生する熱を外部へ放出しやすくなる。また、モータ51は、ケース本体21の天板に設けられるため、モータ51を制御室232に設ける必要がなく、制御室232に収容される伝熱板7、振動部9、調温機構10、バッテリ11及びリレー12の設置自由度を向上させることができる。
【0023】
リードスクリュー52は、鉛直方向に沿って延在するように設けられる。また、リードスクリュー52は、一端(上端)がモータ51の駆動軸に連結されるとともに他端(下端)が仕切板3に支持される。これにより、リードスクリュー52の他端が仕切板3に支持されるため、紫外線ランプ4の昇降領域を大きくしつつリードスクリュー52の長さを短くすることができる。
【0024】
一対のガイドポール53は、キャリッジ54をガイドして昇降させる。一対のガイドポール53は、鉛直方向に沿って延在するようにケース本体21の天板と仕切板3との間に設けられる。本実施形態では、一対のガイドポール53は、一端(上端)がケース本体21の天板に支持されるとともに、他端(下端)が仕切板3に支持されているが、これに限定されるものではなく、例えば、支持材等を介してケース本体21の背板に支持されてもよい。
【0025】
リードスクリュー52の他端(下端)及び一対のガイドポール53の他端(下端)は、貫通孔31とケース本体21の背板との間に位置する(図2参照)。
【0026】
キャリッジ54は、キャリッジ本体541と、スクリューナット542、一対のスライダ543及びランプ支持板544を有する。キャリッジ本体541には、スクリューナット542、一対のスライダ543及びランプ支持板544が連結される。
【0027】
スクリューナット542は、リードスクリュー52と螺合する。一対のスライダ543は、それぞれ一対のガイドポール53と係合して、それぞれ一対のガイドポール53によりガイドされる。紫外線ランプ4は、ランプ支持板544によりキャリッジ54と一体形成される。これにより、モータ51がリードスクリュー52を駆動することで、リードスクリュー52と螺合するキャリッジ54を紫外線ランプ4とともに昇降させることができる。
【0028】
カメラ6は、伝熱板7に載置された培養皿8を撮像する。カメラ6は、レンズ61を下方に向くように伝熱板7の上方に設けられる。また、カメラ6は、ノートパソコン等の端末(図示しない)と接続され、撮像した培養皿8内の映像を端末に表示させることができる。これにより、培養皿8内の生殖細胞の様子をカメラ6及び端末によりリアルタイムに観察することができる。
【0029】
具体的には、カメラ6は、ケース本体21の天板に設けられる。そして、カメラ6の真下には、仕切板3の貫通孔31が形成される。これにより、カメラ6は、貫通孔31を貫通して伝熱板7に載置された培養皿8を容易に撮像することができる。
【0030】
さらに、カメラ6は、平面視にて紫外線ランプ4、リードスクリュー52、ガイドポール53及びキャリッジ54と干渉しないように設けられる。カメラ6は、リードスクリュー52、紫外線ランプ4及びキャリッジ54の妨害を受けることなく、培養皿8を撮像することができる。
【0031】
伝熱板7は、培養皿8を載置するためのものである。伝熱板7は、仕切板3の貫通孔31の位置と対応するように仕切板3の下方に設けられる。すなわち、伝熱板7は、培養皿8が貫通孔31を貫通して載置されるように設けられる。そして、良好な熱伝導を図る観点から伝熱板7は、アルミ等の材質から構成されることが好ましい。伝熱板7の上面の面積は、仕切板3の上面の面積よりも小さい。本実施形態では、伝熱板7は、支持材(図示しない)を介してケース本体21の底板に支持されているが、これに限定されるものではなく、例えば、他の支持材等を介して仕切板3に支持されてもよい。
【0032】
図3に示すように、伝熱板7の底面の中央には、調温機構10を構成する半導体冷却チップ101(図1参照)を取り付けるための凹部71が形成される。伝熱板7の縁には、調温機構10を構成する温度センサ102を挿入させて取り付けるためのセンサ挿入溝72が形成される。伝熱板7の四隅には、振動部9を挿入させて取り付けるための振動部挿入溝73が形成される。
【0033】
振動部9は、伝熱板7を振動させる。これにより、伝熱板7に載置された培養皿8内の生殖細胞の分布の均一化処理を行うことができる。
【0034】
調温機構10は、伝熱板7の温度を調整するためのものである。調温機構10は、半導体冷却チップ101、温度センサ102、ファン103及び温度制御部104を有する。
【0035】
半導体冷却チップ101は、伝熱板7を冷却するものであり、冷却面が伝熱板7の凹部71の底面と接するように凹部71に取り付けられる。温度センサ102は、伝熱板7の温度(すなわち、培養皿8の温度)を検出するものであり、伝熱板7のセンサ挿入溝72に挿入して取り付けられる。
【0036】
ファン103は、制御室232内の熱を散熱用孔24を通じて外部に放出するためのものである。ファン103は、正面がケース本体21の正板と対向するとともに伝熱板7の真下に位置するようにケース本体21の底板に設けられる。
【0037】
温度制御部104は、ケース本体21の底板に設けられる。温度制御部104は、温度センサ102が検出した伝熱板7の温度(すなわち、培養皿8の温度)に基づいて半導体冷却チップ101及びファン103の駆動要否を制御する。また、温度制御部104は、CPUから構成されるコントローラである。
【0038】
具体的には、温度センサ102が検出した伝熱板7の温度(すなわち、培養皿8の温度)があらかじめ設定された所定の温度よりも高い場合は、温度制御部104は、半導体冷却チップ101及びファン103を駆動する。一方、温度センサ102が検出した伝熱板7の温度(すなわち、培養皿8の温度)があらかじめ設定された所定の温度以下である場合は、温度制御部104は、半導体冷却チップ101及びファン103を駆動しない。これにより、培養皿8内の生殖細胞を常に適温環境に維持することができる。
【0039】
バッテリ11は、電力をリレー12を通じて紫外線ランプ4、昇降機構5、カメラ6、調温機構10、温度表示部13及びスイッチ部14へ供給するためのものである。バッテリ11は、充電可能に形成される。これにより、コンセントがない室外でも、携帯型培養用試験装置1を動作させることができる。また、バッテリ11は、リレー12と隣り合うようにケース本体21の底板に設けられる。なお、温度制御部104とリレー12との間には、ファン103が配置される。
【0040】
本実施形態では、携帯型培養用試験装置1の電力は、充電可能なバッテリ11から供給されているが、これに限定されるものではなく、例えば、ノートパソコンや外部電源等から供給されてもよい。この場合、バッテリ11を省略することができる。
【0041】
温度表示部13は、温度センサ102が検出した伝熱板7の温度(すなわち、培養皿8の温度)を表示する。これにより、ユーザは、温度表示部13に表示される伝熱板7の温度(すなわち、培養皿8の温度)を観察することができる。温度表示部13は、制御室232の外壁であって、ケース本体21の側板(具体的には、左側板)の外面に設けられる。
【0042】
スイッチ部14は、温度表示部13と隣り合うように、制御室232の外壁であって、ケース本体21の側板(具体的には、左側板)の外面に設けられる。具体的には、図4に示すように、スイッチ部14は、パワースイッチ141、外線ランプスイッチ142、昇降位置調整用スイッチ143、振動部スイッチ144及び温度設定スイッチ145を有する。
【0043】
パワースイッチ141は、携帯型培養用試験装置1全体のオン又はオフを切り替えるためのスイッチである。紫外線ランプスイッチ142は、紫外線ランプ4のオン又はオフを切り替えるためのスイッチである。昇降位置調整用スイッチ143は、紫外線ランプ4の昇降位置を調整するためのスイッチであり、上昇スイッチ143a及び下降スイッチ143bから構成される。振動部スイッチ144は、振動部9のオン又はオフを切り替えるためのスイッチである。温度設定スイッチ145は、所定の温度を設定するためのスイッチである。
【0044】
(生殖細胞の培養試験)
次に、図5を参照しながら携帯型培養用試験装置1を用いて行う生殖細胞の培養試験について詳細に説明する。
【0045】
図5は、生殖細胞の培養試験の各ステップを示すフローチャートである。
【0046】
そして、パワースイッチ141がオフからオンに切り替えられると、携帯型培養用試験装置1を用いて行う生殖細胞の培養試験が開始する。
【0047】
図5に示すように、まず、ステップS1において、ユーザは、温度設定スイッチ145を操作することにより所定の温度を設定し、昇降位置調整用スイッチ143を操作することにより紫外線ランプ4の昇降位置を調整し、ステップS2に進む。
【0048】
次に、ステップS2において、温度センサ102は、伝熱板7の温度(すなわち、培養皿8の温度)を検出し、検出した伝熱板7の温度(すなわち、培養皿8の温度)を温度制御部104に出力し、ステップS3に進む。
【0049】
次に、ステップS3において、温度制御部104は、温度センサ102が検出した伝熱板7の温度(すなわち、培養皿8の温度)が所定の温度に達しているか否かを判定する。温度センサ102が検出した伝熱板7の温度(すなわち、培養皿8の温度)が所定の温度に達している場合(Yesの場合)は、ステップS4に進む。一方、温度センサ102が検出した伝熱板7の温度(すなわち、培養皿8の温度)が所定の温度に達していない場合(Noの場合)は、ステップS5に進む。
【0050】
次に、ステップS4において、温度制御部104は、ステップS3でのYesの判定結果に基づいて、半導体冷却チップ101及びファン103を駆動しないように制御し、ステップS6に進む。具体的には、ステップS4において、温度制御部104は、ステップS3でのYesの判定結果に基づいて、非駆動信号を生成する。そして、温度制御部104は、生成した非駆動信号を半導体冷却チップ101及びファン103に出力する。これにより、半導体冷却チップ101及びファン103が駆動されず、伝熱板7及び培養皿8が冷却されない。
【0051】
一方、ステップS5において、温度制御部104は、ステップS3でのNoの判定結果に基づいて、半導体冷却チップ101及びファン103を駆動するように制御し、ステップS2に戻る。具体的には、ステップS5において、温度制御部104は、ステップS3でのNoの判定結果に基づいて、駆動信号を生成する。そして、温度制御部104は、生成した駆動信号を半導体冷却チップ101及びファン103に出力する。これにより、半導体冷却チップ101及びファン103が駆動されることで、伝熱板7及び培養皿8が冷却される。
【0052】
次にステップS6において、ユーザは、伝熱板7に載置され半導体冷却チップ101及びファン103により冷却された培養皿8を携帯型培養用試験装置1から取り出し、生殖細胞を培養皿8に投入し、生殖細胞が投入された培養皿8を伝熱板7に載置し、ステップS7に進む。
【0053】
次に、ステップS7において、ユーザは、スイッチ部14の紫外線ランプスイッチ142及び振動部スイッチ144をオフからオンに切り替えることにより、紫外線を紫外線ランプ4により培養皿8に照射しつつ培養皿8を振動部9により振動させ、培養皿8内の生殖細胞に対して分散の均一化及び非活性化の処理を開始させ、ステップS8に進む。
【0054】
次に、ステップS8において、ユーザは、カメラ6を端末に接続させた状態において、カメラ6及び端末を通じて培養皿8内の生殖細胞の様子を観察しながら培養皿8内の生殖細胞に対して分散の均一化及び非活性化の処理を行い、ステップS9に進む。
【0055】
次に、ステップS9において、ユーザは、生殖細胞の分散の均一化程度及び非活性化程度が所定の目標に達したことを観察したとき、パワースイッチ141をオンからオフに切り替えて、培養皿8内の生殖細胞を所定の容器に移す。これにより、生殖細胞の培養試験が終了する。
【0056】
(作用効果)
次に、本実施形態の主な作用効果について説明する。
【0057】
本実施形態に係る携帯型培養用試験装置1は、培養皿8を載置可能な伝熱板7と、伝熱板7を振動させる振動部9と、伝熱板7の温度を調整する調温機構10と、伝熱板7に載置された培養皿8に紫外線を照射する紫外線ランプ4と、を備える。
【0058】
これによれば、調温機構10は、伝熱板7の温度を調整することで、伝熱板7に載置された培養皿8内の生殖細胞の温度を精度よく調整することができる。また、振動部9は、伝熱板7を振動させることで、伝熱板7に載置された培養皿8内の生殖細胞分布の均一化処理を行うことができる。さらに、紫外線ランプ4は、伝熱板7に載置された培養皿8に紫外線を照射することで、生殖細胞の非活性化処理を行うことができる。この結果、高精度の温度調整が可能であり、かつ、生殖細胞の非活性化処理を行うとともに生殖細胞分布の均一化を図ることができる。
【0059】
本実施形態では、携帯型培養用試験装置1は、伝熱板7の上方に設けられ伝熱板7に載置された培養皿8を撮像するカメラ6をさらに備える。
【0060】
これによれば、培養皿8内の生殖細胞の様子を観察しながら、生殖細胞の非活性化処理及び分布の均一化処理を行うことができる。
【0061】
本実施形態では、携帯型培養用試験装置1は、紫外線ランプ4を伝熱板7の上方に位置するように昇降させる昇降機構5をさらに備える。
【0062】
これによれば、培養皿8内の生殖細胞に対する紫外線の照射強度を調整することができる。
【0063】
本実施形態では、携帯型培養用試験装置1は、ケース2と、ケース2を作業室231と作業室231の下方に位置する制御室232とに仕切るためのものであって、培養皿8が貫通可能な貫通孔31が形成される仕切板3と、をさらに備え、作業室231には、紫外線ランプ4及び昇降機構5が収容され、制御室232には、伝熱板7、振動部9及び調温機構10が収容される。
【0064】
これによれば、紫外線ランプ4及び昇降機構5が作業室231に収容されるとともに、伝熱板7、振動部9及び調温機構10が制御室232に収容されるため、昇降機構5による紫外線ランプ4の昇降を伝熱板7、振動部9及び調温機構10の設置によって妨げることを回避することができる。また、作業室231に収容される紫外線ランプ4からの紫外線は、仕切板3によって遮断されるため、紫外線が制御室232に入り込むことを防止することができる。
【0065】
本実施形態では、昇降機構5は、紫外線ランプ4の上方に設けられるモータ51を有し、調温機構10は、仕切板3の下方に設けられる。
【0066】
これによれば、モータ51を仕切板3の下方ではなく、ケース2の天板に設けるため、仕切板3の下方に設けられる調温機構10の設置自由度を向上させることができる。
【0067】
本実施形態では、昇降機構5は、一端がモータ51に連結されるとともに他端が仕切板3に支持されるリードスクリュー52をさらに有する。
【0068】
これによれば、リードスクリュー52の他端が仕切板3に支持されるため、紫外線ランプ4の昇降領域を大きくしつつリードスクリュー52の長さを短くすることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0070】
1 携帯型培養用試験装置
2 ケース
3 仕切板
4 紫外線ランプ(紫外線照射部)
5 昇降機構
6 カメラ(撮像部)
7 伝熱板(載置部)
8 培養皿
9 振動部
10 調温機構
31 貫通孔
51 モータ(駆動部)
52 リードスクリュー
図1
図2
図3
図4
図5