(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085235
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】大気圧服の制御システム、および大気圧服の制御システムの組み立て方法
(51)【国際特許分類】
G05B 9/02 20060101AFI20230613BHJP
B64G 6/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
G05B9/02 E
B64G6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195307
(22)【出願日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】63/287,323
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500107762
【氏名又は名称】ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ダレン ウッドマン
(72)【発明者】
【氏名】アンダース ウォーカー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ジョン クイン
(72)【発明者】
【氏名】ドン ペダーセン
【テーマコード(参考)】
5H209
【Fターム(参考)】
5H209AA20
5H209BB02
5H209BB03
5H209GG04
5H209HH02
5H209HH14
5H209SS01
5H209SS06
5H209SS09
(57)【要約】
【課題】 大気圧服の制御システムを提供する。
【解決手段】 大気圧服内の制御システムは、ブロードキャスト型のコントローラエリアネットワーク(CAN)バスと、CANバスに接続された複数のモータコントローラとを含む。複数のモータコントローラのそれぞれは、同じソフトウェア設計を有し、割り当てられたハードウェアアドレスに基づいて異なる制御動作を実行する。制御システムはまた、大気圧服内の1つ以上のパラメータ値を感知して、1つ以上のパラメータ値をCANバス上に提供する1つ以上のセンサを含む。主コントローラは、CANバスを介して複数のモータコントローラと通信して、大気圧服の着用者に通信を提供し、またはCANバス外の大気圧服の外側に通信を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧服の制御システムであって、前記制御システムは、
ブロードキャスト型のコントローラエリアネットワーク(CAN)バスと、
前記CANバスに接続された複数のモータコントローラであって、前記複数のモータコントローラのそれぞれは、同じソフトウェア設計を有し、割り当てられたハードウェアアドレスに基づいて異なる制御動作を実行するように構成された、前記複数のモータコントローラと、
前記大気圧服内の1つ以上のパラメータ値を感知して、前記1つ以上のパラメータ値を前記CANバス上に提供するように構成された1つ以上のセンサと、
前記CANバスを介して前記複数のモータコントローラと通信して、前記大気圧服の着用者に通信を提供し、または前記CANバス外の前記大気圧服の外側に通信を提供するように構成された主コントローラと、
を備える、前記制御システム。
【請求項2】
前記主コントローラは、前記複数のモータコントローラのそれぞれを監督し、前記複数のモータコントローラのそれぞれにコマンドを出して、前記1つ以上のセンサのうちの1つ以上からの前記1つ以上のパラメータ値のうちの1つ以上に基づいて前記制御動作を実施させるように構成される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記主コントローラは、前記複数のモータコントローラのうちの1つのモータコントローラから前記コマンドに応じた確認を受信しなかったことに基づいて、または前記1つ以上のパラメータ値の後続パラメータ値に基づいて、前記複数のモータコントローラのうちの前記1つのモータコントローラの障害を検出するように構成される、請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記主コントローラは、前記複数のモータコントローラのうちの前記1つのモータコントローラの前記障害を検出したことに基づいて、警告を発するように構成される、請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記複数のモータコントローラは、前記主コントローラから健全性信号を定期的に受信するように構成される、請求項2に記載の制御システム。
【請求項6】
前記複数のモータコントローラは、前記健全性信号を受信しなかったことに基づいて、前記主コントローラの障害を検出し、前記主コントローラの前記障害を検出したことに応じて、前記1つ以上のセンサのうちの前記1つ以上からの前記1つ以上のパラメータ値のうちの前記1つ以上に単独で基づいて、前記制御動作を実施するように構成される、請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記複数のモータコントローラは、前記CANバスの障害を検出するように構成される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項8】
前記複数のモータコントローラは、前記複数のモータコントローラのそれぞれのモータコントローラの前記制御動作がいずれのセンサからのいずれのパラメータ値にも依存しないセンサフリーモードで、独立して動作するように構成される、請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
前記1つ以上のセンサのうちの1つのセンサの障害に応じて、前記1つ以上のセンサのうちの前記1つのセンサからの前記1つ以上のパラメータ値のうちの1つ以上に基づいて前記制御動作を実施する前記複数のモータコントローラのうちの1つのモータコントローラは、前記制御動作が前記1つ以上のパラメータ値のうちの前記1つ以上に依存しないセンサフリーモードで動作するように構成される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項10】
前記1つ以上のセンサのうち前記障害がある前記1つのセンサからの前記1つ以上のパラメータ値に依存せずに前記制御動作を実施する、前記複数のモータコントローラのうちの他のモータコントローラは、通常動作を継続するように構成される、請求項9に記載の制御システム。
【請求項11】
前記大気圧服は、宇宙環境で使用される船外活動ユニット(EMU)であり、前記制御システムは、前記EMUの主要な生命維持システムを制御する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項12】
大気圧服の制御システムの組み立て方法であって、
ブロードキャスト型のコントローラエリアネットワーク(CAN)バスを配置することと、
前記CANバスに複数のモータコントローラを接続することであって、前記複数のモータコントローラのそれぞれは、同じソフトウェア設計を有し、割り当てられたハードウェアアドレスに基づいて異なる制御動作を実行するように構成された、前記接続することと、
前記大気圧服内の1つ以上のパラメータ値を感知して、前記1つ以上のパラメータ値を前記CANバス上に提供するように、1つ以上のセンサを構成することと、
前記CANバスを介して前記複数のモータコントローラと通信して、前記大気圧服の着用者に通信を提供し、または前記CANバス外の前記大気圧服の外側に通信を提供するように、主コントローラを構成することと、
を含む、前記方法。
【請求項13】
前記主コントローラを前記構成することは、前記主コントローラが、前記複数のモータコントローラのそれぞれを監督し、前記複数のモータコントローラのそれぞれにコマンドを出して、前記1つ以上のセンサのうちの1つ以上からの前記1つ以上のパラメータ値のうちの1つ以上に基づいて前記制御動作を実施させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記主コントローラを前記構成することは、前記主コントローラが、前記複数のモータコントローラのうちの1つのモータコントローラから前記コマンドに応じた確認を受信しなかったことに基づいて、または前記1つ以上のパラメータ値の後続パラメータ値に基づいて、前記複数のモータコントローラのうちの前記1つのモータコントローラの障害を検出することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記主コントローラを前記構成することは、前記主コントローラが、前記複数のモータコントローラのうちの前記1つのモータコントローラの前記障害を検出したことに基づいて、警告を発することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記主コントローラから健全性信号を定期的に受信するように、前記複数のモータコントローラのそれぞれを構成することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のモータコントローラを前記構成することは、前記複数のモータコントローラが、前記健全性信号を受信しなかったことに基づいて、前記主コントローラの障害を特定し、前記主コントローラの前記障害を特定したことに応じて、前記1つ以上のセンサのうちの前記1つ以上からの前記1つ以上のパラメータ値のうちの前記1つ以上に単独で基づいて、前記制御動作を実施することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のモータコントローラを前記構成することは、前記複数のモータコントローラが、前記CANバスの障害を特定することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のモータコントローラを前記構成することは、前記複数のモータコントローラのそれぞれのモータコントローラの前記制御動作がいずれのセンサからのいずれのパラメータ値にも依存しないセンサフリーモードで、前記複数のモータコントローラが独立して動作することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上のセンサのうちの1つのセンサの障害に応じて、前記1つ以上のセンサのうちの前記1つのセンサからの前記1つ以上のパラメータ値のうちの1つ以上に基づいて前記制御動作を実施する前記複数のモータコントローラのうちの1つのモータコントローラは、前記制御動作が前記1つ以上のパラメータ値のうちの前記1つ以上に依存しないセンサフリーモードで動作し、ならびに、前記1つ以上のセンサのうち前記障害がある前記1つのセンサからの前記1つ以上のパラメータ値に依存せずに前記制御動作を実施する前記複数のモータコントローラのうちの他のモータコントローラは、通常動作を継続するように、前記複数のモータコントローラを構成する、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月8日に出願された米国仮出願第63/287,323号の利益を主張し、その開示内容は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
例示的な実施形態は、大気圧服の技術に関し、具体的には、大気圧服の制御システムアーキテクチャに関する。
【背景技術】
【0003】
いくつかの環境及び用途では、衝撃に対する保護だけでなく、生存可能環境を維持するためにも、大気圧服は使用される。例えば、宇宙での用途では、酸素タンクから供給を受けるヘルメット及び全身スーツを含む船外活動ユニット(EMU)が、宇宙飛行士が生存できる環境を維持する。EMU内の環境を維持するために、センサベースの制御が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、大気圧服を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的な一実施形態では、大気圧服内の制御システムは、ブロードキャスト型のコントローラエリアネットワーク(CAN)バスと、CANバスに接続された複数のモータコントローラとを含む。複数のモータコントローラのそれぞれは、同じソフトウェア設計を有し、割り当てられたハードウェアアドレスに基づいて異なる制御動作を実行する。制御システムはまた、大気圧服内の1つ以上のパラメータ値を感知して、1つ以上のパラメータ値をCANバス上に提供する1つ以上のセンサを含む。主コントローラは、CANバスを介して複数のモータコントローラと通信して、大気圧服の着用者に通信を提供し、またはCANバス外の大気圧服の外側に通信を提供する。
【0006】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、主コントローラは、複数のモータコントローラのそれぞれを監督し、複数のモータコントローラのそれぞれにコマンドを出して、1つ以上のセンサのうちの1つ以上からの1つ以上のパラメータ値のうちの1つ以上に基づいて制御動作を実施させる。
【0007】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、主コントローラは、複数のモータコントローラのうちの1つのモータコントローラからコマンドに応じた確認を受信しなかったことに基づいて、または1つ以上のパラメータ値の後続パラメータ値に基づいて、複数のモータコントローラのうちの1つのモータコントローラの障害を検出する。
【0008】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、主コントローラは、複数のモータコントローラのうちの1つのモータコントローラの障害を検出したことに基づいて、警告を発する。
【0009】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、複数のモータコントローラは、主コントローラから定期的に健全性信号を受信する。
【0010】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、複数のモータコントローラは、健全性信号を受信しなかったことに基づいて、主コントローラの障害を検出し、主コントローラの障害を検出したことに応じて、1つ以上のセンサのうちの1つ以上からの1つ以上のパラメータ値のうちの1つ以上に単独で基づいて、制御動作を実施する。
【0011】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、複数のモータコントローラは、CANバスの障害を検出する。
【0012】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、複数のモータコントローラは、複数のモータコントローラのそれぞれのモータコントローラの制御動作がいずれのセンサからのいずれのパラメータ値にも依存しないセンサフリーモードで、独立して動作する。
【0013】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、1つ以上のセンサのうちの1つのセンサの障害に応じて、1つ以上のセンサのうちの1つのセンサからの1つ以上のパラメータ値のうちの1つ以上に基づいて制御動作を実施する複数のモータコントローラのうちの1つのモータコントローラは、制御動作が1つ以上のパラメータ値のうちの1つ以上に依存しないセンサフリーモードで動作する。
【0014】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、1つ以上のセンサのうち障害がある1つのセンサからの1つ以上のパラメータ値に依存せずに制御動作を実施する、複数のモータコントローラのうちの他のモータコントローラは、通常動作を継続する。
【0015】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、大気圧服は、宇宙環境で使用される船外活動ユニット(EMU)であり、制御システムは、EMUの主要な生命維持システムを制御する。
【0016】
別の例示的な一実施形態では、大気圧服内の制御システムを組み立てる方法は、ブロードキャスト型のコントローラエリアネットワーク(CAN)バスを配置することと、CANバスに複数のモータコントローラを接続することと、を含む。複数のモータコントローラのそれぞれは、同じソフトウェア設計を有し、割り当てられたハードウェアアドレスに基づいて異なる制御動作を実行する。方法はまた、大気圧服内の1つ以上のパラメータ値を感知して、1つ以上のパラメータ値をCANバス上に提供する1つ以上のセンサを配置することを含む。主コントローラは、CANバスを介して複数のモータコントローラと通信して、大気圧服の着用者に通信を提供し、またはCANバス外の大気圧服の外側に通信を提供する。
【0017】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、主コントローラを構成することは、主コントローラが、複数のモータコントローラのそれぞれを監督し、複数のモータコントローラのそれぞれにコマンドを出して、1つ以上のセンサのうちの1つ以上からの1つ以上のパラメータ値のうちの1つ以上に基づいて制御動作を実施させることを含む。
【0018】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、主コントローラを構成することは、主コントローラが、複数のモータコントローラのうちの1つのモータコントローラからコマンドに応じた確認を受信しなかったことに基づいて、または1つ以上のパラメータ値の後続パラメータ値に基づいて、複数のモータコントローラのうちの1つのモータコントローラの障害を検出することを含む。
【0019】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、主コントローラを構成することは、主コントローラが、複数のモータコントローラのうちの1つのモータコントローラの障害を検出したことに基づいて、警告を発することを含む。
【0020】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、方法はまた、主コントローラから定期的に健全性信号を受信するように、複数のモータコントローラのそれぞれを構成することを含む。
【0021】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、複数のモータコントローラを構成することは、複数のモータコントローラが、健全性信号を受信しなかったことに基づいて、主コントローラの障害を特定し、主コントローラの障害を特定したことに応じて、1つ以上のセンサのうちの1つ以上からの1つ以上のパラメータ値のうちの1つ以上に単独で基づいて、制御動作を実施することを含む。
【0022】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、複数のモータコントローラを構成することは、複数のモータコントローラが、CANバスの障害を特定することを含む。
【0023】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、複数のモータコントローラを構成することは、複数のモータコントローラのそれぞれのモータコントローラの制御動作がいずれのセンサからのいずれのパラメータ値にも依存しないセンサフリーモードで、複数のモータコントローラが独立して動作することを含む。
【0024】
本明細書で説明される特徴のうちの1つ以上に加えて、1つ以上のセンサのうちの1つのセンサの障害に応じて、1つ以上のセンサのうちの1つのセンサからの1つ以上のパラメータ値のうちの1つ以上に基づいて制御動作を実施する複数のモータコントローラのうちの1つのモータコントローラは、制御動作が1つ以上のパラメータ値のうちの1つ以上に依存しないセンサフリーモードで動作し、ならびに、1つ以上のセンサのうち障害がある1つのセンサからの1つ以上のパラメータ値に依存せずに制御動作を実施する複数のモータコントローラのうちの他のモータコントローラは、通常動作を継続するように、複数のモータコントローラは構成される。
【0025】
下記の説明は、決して限定と見なされるべきではない。添付図面に関して、同様の要素には同様の番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】1つ以上の実施形態による、制御システムアーキテクチャを含む大気圧服を示す。
【
図2】1つ以上の実施形態による、アーキテクチャを有する、大気圧服の例示的制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
開示される装置及び方法の1つ以上の実施形態の詳細説明が、限定ではなく例示として、図を参照しながら本明細書に提示される。
【0028】
前述のように、大気圧服は、様々な用途において着用者の生存可能環境を維持する。例示的な宇宙での用途では、大気圧服はEMUであり得る。また記載されたように、環境を維持するために、センサベースの制御が使用される。ミッション持続時間及びセーフハーバー(例えば宇宙船)からの距離が増大すると、大気圧服内の生存可能環境を長期間にわたり確実に維持する能力が、ますます重要となる。ミッションが長期化すると、1つ以上のデバイスの欠陥が発生する可能性が高くなるため、堅牢なフォールトトレラントアーキテクチャが必要になる。
【0029】
本明細書で詳述されるシステム及び方法の実施形態は、大気圧服の制御システムアーキテクチャに関する。説明目的で論述される制御システムは、生命維持システムに関する。アーキテクチャは、モータコントローラの集合、主コントローラ、及びセンサを含み、これらは、コントローラエリアネットワーク(CAN)バスを介して通信する。CANバスは、既知のブロードキャスト型のシリアル通信バスである(すなわちバス上のすべてのノードが、バス上のすべての通信を受信する)。モータコントローラのそれぞれは、同一であり得(すなわち同じハードウェア及びソフトウェアであり得)、それぞれのモータコントローラの機能は、ハードウェアアドレスにより定義される。よって、モータコントローラは、必要に応じて再利用してもよく、ソフトウェアの開発及び認定がより容易になる。さらに、宇宙環境で必要とされる耐放射線強化構成要素と、予備のモータコントローラとを入手することが、非常に簡易化される。各モータコントローラ及び主コントローラからの通信、ならびにすべてのセンサからのデータは、CANバスの使用に基づいて例外なく利用可能である(すなわちいずれのモータコントローラまたは主コントローラからもアクセス可能である)。これにより、主コントローラによる監督、及びモータコントローラのそれぞれによる主コントローラの健全性監視が容易になる。さらに、CANバスにより、ノード(例えばセンサ、モータコントローラ)の追加が容易になる。
【0030】
図1は、1つ以上の実施形態による、制御システムアーキテクチャを含む大気圧服100を示す。
図1に示される例示的な大気圧服100は、EMU105である。説明目的で、EMU及び宇宙での用途が具体的に論じられるが、1つ以上の実施形態によるコントローラシステムアーキテクチャの用途には、水中環境(例えば大気圧潜水服)、地上環境(例えば化学防護服または汚染防護服)、高高度環境(例えば飛行服)、及び地表下環境も含まれ得る。一般に、ヘルメットを含んで生存可能環境を維持するいずれの服も、大気圧服と称される。
【0031】
EMU105は、ヘルメット110を含み、ヘルメット110は、オプションでヘルメット内ディスプレイ115を有することが示される。EMU105の一部として取り付けられるシステムには、主生命維持装置(PLSS)120と、表示及び制御モジュール(DCM)130とが含まれる。これらのシステム120、130は、EMU105の構成要素とともに、宇宙で船外活動を行う着用者のための生存可能環境を作り出す。
図2を参照して詳細に説明されるように、制御システムアーキテクチャは、1つ以上の実施形態によると、EMU105内の環境を維持するようにPLSS120及びDCM130の動作を制御する、構成要素の構造及びビヘイビアを定義する。
【0032】
図2は、1つ以上の実施形態による、アーキテクチャを有する、大気圧服100の例示的制御システム200の概略図である。制御システム200は、説明目的で使用されるが、1つ以上の実施形態によるアーキテクチャを使用して組み立てられ得るすべての制御システム200を限定することを意図するものではない。代替の実施形態によれば、アーキテクチャにより定義される構造及びビヘイビアにより、他の制御システム200が生じ得る。構造は、同一の設計を有し得るが異なる機能にインスタンス化された複数のモータコントローラ210と、主コントローラ230と、センサ220とを含み、これらはCANバス215を介して通信する。主コントローラ230は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)であり得る。詳細に説明されるように、この構造により、2つのフォールトトレラントビヘイビア、及び多数の運用シナリオが容易になる。さらに、アーキテクチャにより、モータコントローラ210のソフトウェア更新及びFPGAベースの主コントローラ230のコード更新を介して、再プログラミング及び更新の簡潔化が促進される。
【0033】
図2に示される例示的な制御システム200は、様々なPLSS120機能の態様(すなわち異なるPLSSサブシステム)を制御する6つのモータコントローラ210a~210f(概して210と称される)を含む。前述のように、モータコントローラ210a~210fは、同じソフトウェア設計を含み得るが、それぞれが異なる機能を果たし得る(すなわち異なるサブシステムで異なる制御動作を実施し得る)。機能は、ハードウェアアドレス指定識別子により定義され、ハードウェアアドレス指定識別子は、セットアップ中に確立され、船外ミッションの合間に変更され得る。すなわち、例えば、ある船外ミッション中に、モータコントローラ210a(すなわち所与の物理デバイス)が果たした機能(すなわち実施した制御動作)は、例えば次の船外ミッションでは、予備のモータコントローラ210、またはモータコントローラ210eの再利用など、別のモータコントローラが果たしてもよい。説明目的で、モータコントローラ(MC)210a~210fのそれぞれに割り当てられた例示的な制御動作が、表1に要約される。
【0034】
【0035】
前述のように、例示的なモータコントローラ210は、代替の構成を限定しない。例えば、1つ以上の制御動作は、2つ以上のモータコントローラ210による制御に、さらに細分化され得る。追加の実施例として、制御動作のうちの1つ以上のために、冗長モータコントローラ210が含まれ得る。
【0036】
制御動作のうちの1つ以上は、1つ以上のセンサ220からのデータに基づき得る。例えば、モータコントローラ210aは、二酸化炭素センサ220からの二酸化炭素(CO
2)測定値を使用し得る。
図2に示される他のセンサは、圧力及び温度(PT)センサ220、差圧(dP)センサ220、及び圧力(P)センサ220を含む。例えば、圧力及び温度(PT)センサ220のうちの1つ以上は、大気圧服100の着用者の圧力及び温度を取得して、生体計測を提供し得、一方、1つ以上の他の圧力及び温度(PT)センサ220は、大気圧服100内の空気の圧力及び温度を取得し得る。センサ220のすべてからのデータは、CANバス215を介して、モータコントローラ210のいずれか、及び主コントローラ230により、利用可能である。デバイスのそれぞれに電力を供給するために、電力バスがCANバス215と並列に配置され得る。
【0037】
センサ220からのデータに加えて、他のデバイスからの情報も、CANバス215を介して利用可能であり得る。例えば、PLSSバッテリの健全性を監視するバッテリ管理システム(BMS)は、CANバス215を介して情報を提供し得る。大気圧服100の着用者への通信、または着用者からの通信も、CANバス215を介して送信され得る。着用者は、DCM130のパネル上のノブを制御して入力を提供し得、一方、着用者へのメッセージ(例えば警告)は、DCM130のディスプレイ上に提供され得る。入出力(I/O)インターフェースが示されており、これは、シャーシ内に一緒にパッケージ化され得るデバイスによるCANバス215を介した通信を促進する。これらのデバイスは、主コントローラ230、無線周波数(RF)カード、情報処理インターフェースカード、及び電力管理及び分配(PMAD)デバイスを含む。
【0038】
アーキテクチャにより定義された構造により、いくつかの異なるシナリオでの動作が可能となる。例えば、障害のないシナリオには、主コントローラ230がモータコントローラ210の動作を監視する役割を担うことが含まれ得る。このシナリオによれば、主コントローラ230は、すべてのセンサ220からのデータを監視し得、一方で、各モータコントローラ210は、CANバス215を介してすべてのセンサ220からのデータを利用可能であるが、関連する1つ以上のセンサ220からのデータを監視する。次に、主コントローラ230は、必要に応じて、制御動作を実施するように、モータコントローラ210のそれぞれにコマンドを提供し得る。
【0039】
例えば、モータコントローラ210aは、CO2レベルのみを監視し得る。RCAシステムにより現在使用されているアミン層が飽和したことをCO2レベルが示す時(例えばCO2レベルが閾値を超える時)、主コントローラ230は、アミン層の切り替えを開始するように、CANバス215を介してモータコントローラ210aにコマンドを送信し得る。これに応じて、モータコントローラ210aは、切り替えプロセスを作動させ、また主コントローラ230に確認を提供し得る。主コントローラ230は、確認に基づいて、状態または他の情報を、大気圧服100の着用者に(例えばDCMディスプレイを介して)、または監視ステーションもしくは宇宙船に(例えばRFカードを介して)、提供し得る。
【0040】
アーキテクチャに基づいて、健全性監視、及び故障予測、及び故障軽減が促進され得る。例示的な実施形態によれば、通常動作モードの一環として、主コントローラ230はまた、各使用期間中(例えば各船外活動中)のパフォーマンスデータを記憶し得る。例えば、主コントローラ230は、パフォーマンス(例えばモータコントローラ210、センサ220のパフォーマンス)を示す高忠実度データを格納するための不揮発性メモリデバイスを含み得る。データは、例えば、予知健全性監視を実行するミッションの合間に分析され得る。すなわち、データはベースラインデータと比較され、モータコントローラ210またはセンサ220の故障が特定または予測され得る。
【0041】
1つの例示的な障害シナリオには、主コントローラ230の故障が含まれる。主コントローラ230は、モータコントローラ210のすべてにより利用可能なCANバス215(例えば周期信号)を介して、健全性表示を提供し得る。CANバス215は故障していないが(例えばセンサ220からのデータはCANバス215上で依然として利用可能である)が、主コントローラ230からの健全性表示が利用不可能であると、モータコントローラ210が特定した場合、モータコントローラ210は、主コントローラ230が故障したと判定し得る。この場合、モータコントローラ210のそれぞれは、監督されずに、それぞれの対応する制御動作を進め得る。よって、例えば、モータコントローラ210aは、主コントローラ230からのコマンドなしで、閾値を超えるCO2レベルに基づいて、RCAのアミン層の切り替え動作を開始し得る。
【0042】
代替または追加の(すなわち2つの障害の)シナリオには、CANバス215の故障が含まれる。モータコントローラ210のそれぞれは、CANバス215上のあらゆる通信(例えばセンサデータ、コマンド)の欠如に基づいて、CANバス215が故障したと判定し得る。この場合、主コントローラ230からのコマンドに加えて、センサ220からのデータも利用不可能となる。モータコントローラ210のそれぞれは、データに依存しないデータフリーモードで動作し得る。例えば、モータコントローラ210aは、センサ220により提供されるCO2レベルに基づいてではなく、周期的に(例えば3分ごとに)RCAシステムのアミン層の切り替えを開始し得る。
【0043】
1つ以上の実施形態によるアーキテクチャにより促進されるさらに別のシナリオによると、センサ220の故障により、モータコントローラ210のうちの1つ以上は、データフリーモードで動作し得る。すなわち、主コントローラ230及びCANバス215が正常に動作している間でも、センサ220のうちの1つ以上が、CANバス215を介してデータを提供することを停止する場合がある。この場合、影響を受けるモータコントローラ210のみが、データに依存しないデータフリーモードで動作する必要がある。影響を受けるモータコントローラ210は、データフリーモードで動作を開始するように、主コントローラ230により指示され得る。例えば、差圧(dP)を提供するセンサ220のみが故障した場合、CO2センサ220からのデータに基づいてRCAシステムを制御するモータコントローラ210aは、依然として通常モードで動作し得る。
【0044】
例示的な実施形態によれば、主コントローラ230は、モータコントローラ210のうちの1つ以上の障害を検出し得る。障害は、例えば、モータコントローラ210がコマンドに応じた確認を提供しなかったことに基づいて、検出され得る。この場合、主コントローラ230は、DCM130のディスプレイを介して、大気圧服100の着用者に警告を提供し得る。主コントローラ230は、付加的または代替的に、監視センタまたは宇宙船または宇宙居住船に、RFカードを介して警告を送信し得る。故障したモータコントローラ210により制御動作が実行されていることに基づいて、主コントローラ230からの警告は、大気圧服100の着用者が宇宙船または宇宙居住環境にすぐに戻らなければならないことを示し得る。
【0045】
明示的に論述されたシナリオは単なる例示であり、アーキテクチャにより他のシナリオも可能である。例えば、主コントローラ230は、モータコントローラ210のそれぞれに冗長性を提供し得、故障したモータコントローラ210の機能を引き継ぎ得る。RCAシステムのアミン層の切り替えを開始するように、主コントローラ230がモータコントローラ210aにコマンドを出す例示的な事例では、モータコントローラ210aからの確認がない場合、または確認に続いて、センサ220がその後示すCO2レベルが見込み通り減少しない場合、モータコントローラ210aが故障したことが示され得る。この場合、主コントローラ230は、モータコントローラ210aに割り当てられた制御動作を実行し得る。
【0046】
主コントローラ230の冗長機能の事例では、CANバス215の障害に基づいて、主コントローラ230または各モータコントローラ210のどちらがデータフリーモードで動作するか指定が行われ、主コントローラ230とモータコントローラ210のそれぞれとの両方が、システムのそれぞれに対してデータフリー制御の実行を試みることが防止され得る。アーキテクチャにより、すべてのデバイス(例えばすべてのモータコントローラ210、主コントローラ230)がCANバス215上のすべての通信にアクセスすることが促進されることから、多数の方法のフォールトトレランスまたは冗長性が確立され得る。すなわち、ブロードキャスト型のバス(例えばCANバス)上で複数のモータコントローラ210、主コントローラ230、及びセンサ220により定義されるアーキテクチャは、デバイスのうちの1つ以上の障害に耐える堅牢で柔軟なソリューションを提供する。
【0047】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示を限定する意図はない。本明細書で使用される単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形も含むことが意図される。用語「備える/含む(comprises)」及び/または「備えている/含んでいる(comprising)」は、本明細書で使用される時、述べられる特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/またはそれらのグループの存在もしくは追加を除外しないことが、さらに理解されよう。
【0048】
本開示は1つ以上の例示的な実施形態を参照して説明されているが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更が加えられてもよく、本開示の要素は均等物で置き換えられてもよいことが、当業者には理解されよう。さらに、特定の状況または材料を本開示の教示に適応させるために、本開示の本質的範囲から逸脱することなく、多くの修正が加えられてもよい。よって、本開示は、本開示を実行するために想到される最適の形態として開示される特定の実施形態に限定されるのではなく、本開示は、特許請求の範囲に入る全ての実施形態を含むことが意図される。