(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085246
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】可変免疫グロブリンドメインのグリコシル化
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230613BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230613BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230613BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230613BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230613BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230613BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230613BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230613BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230613BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230613BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230613BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/00
C12P21/02 C
A61K48/00
A61P35/00
A61K47/68
A61K39/395 Y
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023012556
(22)【出願日】2023-01-31
(62)【分割の表示】P 2019561778の分割
【原出願日】2018-05-09
(31)【優先権主張番号】17170661.7
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514185600
【氏名又は名称】ブイアイビー ブイゼットダブリュ
【氏名又は名称原語表記】VIB VZW
【住所又は居所原語表記】Rijvisschestraat 120, B-9052 Gent, Belgium
(71)【出願人】
【識別番号】514185611
【氏名又は名称】ユニベルシテイト ゲント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT GENT
【住所又は居所原語表記】Sint-Pietersnieuwstraat 25, B-9000 Gent, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】カルヴェルト,ニコ
(72)【発明者】
【氏名】ローケンズ,ブラム
(72)【発明者】
【氏名】ファン シーエ,ルス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ブレーダム,ワンダー
(72)【発明者】
【氏名】ネリンクス,ウィム
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064BJ12
4B064CA02
4B064CA05
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4H045AA11
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4H045DA75
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4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】
本発明は、改変グリコシル化受容部位をもつ免疫グロブリン可変ドメインを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を提供する。
【解決課題】
具体的に言うと、本発明は、選択されたグリカンで修飾された免疫グロブリン可変ドメインタンパク質、およびその特定のグリカン抱合体を提供する。また本明細書に提供されるのには、グリコシル化された免疫グロブリン可変ドメインおよびそのグリカン抱合体の産生のための方法もある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリン可変ドメイン(IVD)を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、IVDが、4つのフレームワーク領域(FR)および3つの相補性決定領域(CDR)を、以下の式(1):FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4(1)に従って含むアミノ酸配列を含み、ここで該IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸範囲83~88から選択されるアミノ酸に、および/または、アミノ酸範囲27~40から選択されるアミノ酸に存在するグリコシル化受容部位を有する、前記IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列。
【請求項2】
該IVDが、免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)である、請求項1に記載のIVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列。
【請求項3】
該IVDのグリコシル化受容部位が、N-グリコシル化され得るアスパラギン残基である、請求項1または2に記載のIVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列。
【請求項4】
IVDが、NXT、NXS、NXCまたはNXVモチーフ(前記モチーフ中Xは、いずれのアミノ酸でもあり得る)を、NXT/NXS/NXC/NXVモチーフのアスパラギン残基が、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸範囲83~88から選択されるアミノ酸におよび/またはアミノ酸範囲27~40から選択されるアミノ酸に存在するように、含有する、請求項3に記載のIVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列。
【請求項5】
IVDが、IVD中、(AHoナンバリング規則に従って)位置14および/または48などに、追加のグリコシル化受容部位を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のIVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のヌクレオチド配列を含む、発現ベクター。
【請求項7】
請求項6に記載の発現ベクターを含む、細胞。
【請求項8】
細胞が、哺乳動物の細胞もしくは植物細胞などの高等真核細胞、糸状菌細胞もしくは酵母細胞などの下等真核細胞、または原核細胞である、請求項7に記載の細胞。
【請求項9】
細胞が、糖鎖改変細胞である、請求項7または8に記載の細胞。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載のヌクレオチド配列にコードされるIVDを含む、ポリペプチド。
【請求項11】
グリコシル化されており、かつ1以上のグリカンを含む、請求項10に記載のIVDを含むポリペプチドであって、前記グリカンが、末端のGlcNAc、GalNAc、ガラクトース、シアル酸、グルコース、グルコサミン、ガラクトサミン、バシロサミン、マンノースもしくはマンノース-6-P糖、またはGalNAz、GlcNAzおよびアジド-シアル酸などの化学修飾単糖類を有する、前記IVDを含むポリペプチド。
【請求項12】
該ポリペプチドのグリコシル化が、GlcNAc、LacNAc、シアリル-LacNAc、Man5GlcNAc2、Man8GlcNAc2、Man9GlcNAc2、高(hyper-)マンノシル化グリカン、マンノース-6-リン酸グリカン、複合グリカン、ハイブリッドグリカン、およびGlcNAz、GlcNAc-GalNAz、アジド-シアル酸-LacNAcなどの化学修飾グリカンからなる群から選択される1以上のグリカンからなる、請求項10に記載のIVDを含むポリペプチド。
【請求項13】
グリカン特異的抱合のための、請求項10~12のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項14】
請求項10~12のいずれか一項に記載のポリペプチド、および被抱合成分を含む、IVD抱合体。
【請求項15】
該被抱合成分が、N連結型グリカンへ接続されている、請求項14に記載のIVD抱合体。
【請求項16】
被抱合成分が、半減期延長成分、治療剤、検出ユニットまたは標的化成分を含む、請求項14または15に記載の抱合体。
【請求項17】
請求項10~12のいずれか一項に記載のポリペプチドを産生する方法であって、該方法が、請求項6に記載の発現ベクターを好適な細胞に導入すること、該ポリペプチドを発現すること、およびこれを単離することを含む、前記方法。
【請求項18】
請求項14~16のいずれか一項に記載のIVD抱合体を産生する方法であって、該方法が、請求項6に記載の発現ベクターを好適な細胞に導入すること、請求項10~12のいずれか一項に記載のポリペプチドを発現すること、および被抱合成分をポリペプチドへ連結することを含む、前記方法。
【請求項19】
循環半減期をモジュレートするための、糖タンパク質安定性を増大させるための、選択的標的化のための、免疫原性をモジュレートするための、抗体の事前結合を防止するための、もしくは検出目的のための、請求項10~12のいずれか一項に記載のIVDを含むポリペプチドの、または請求項14~16のいずれか一項に記載のIVD抱合体の使用。
【請求項20】
請求項10~12のいずれか一項に記載のポリペプチド、または請求項14もしくは16に記載のIVD抱合体を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本願は、グリコシル化工学の分野に、より具体的には、免疫グロブリンドメインおよびグリコシル化されたその誘導体に関する。とりわけ、本発明は、改変グリコシル化受容部位をもつ免疫グロブリン可変ドメインを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を提供する。結果的に、本発明は、選択されたグリカンで修飾された免疫グロブリン可変ドメインタンパク質、およびその特定のグリカン抱合体を提供する。また本明細書に提供されるのには、グリコシル化された免疫グロブリン可変ドメインおよびそのグリカン抱合体の産生のための方法もある。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
組み換え抗体技術の分野は、主にこれらのヒトへの治療的な使用に対する関心のため、この20年の間に急速に進展した。特定のヒト抗体の、ディスプレー技術による選択能、ならびに分子進化によるそれらの親和性、安定性、および発現レベルの改善能はさらに、この分野を押し上げた。全抗体は、重鎖および軽鎖からなる複合分子である。単離された抗体の重鎖および軽鎖は抗原結合特異性を保持し得るが、それらの親和性および可溶性はしばしば、低減している。
【0003】
しかしながら、重(VH)鎖および軽(VL)鎖の対をなすN末可変ドメインは、抗原結合には充分である。かかる抗体フラグメントは、一価抗体フラグメント(Fab)として、または単鎖Fv(scFv)として産生され得るが、これらのVHおよびVLドメインは、ポリペプチドリンカーによって結び合わされている。ラクダ科の動物が、軽鎖がない機能的抗体を産生するという偶然の発見(Hamers-Casterman et al (1993) Nature 363:446-448)は、この分野において新しい考え方を形成した。なぜなら、その後に、それらの単一N末ドメイン(VHH、またNanobody(登録商標)とも称される)が、ドメインの対形成(pairing)を要さずに抗原に結合することが示されたからである。これら重鎖のみの抗体はまた、CH1ドメインも欠いている。CH1ドメインは、従来の抗体において、軽鎖に結び付き、その程度は低いが(to a lesser degree)VHドメインと相互作用する。
【0004】
後に、かかる単一ドメイン抗体はまた、具体的な軟骨魚においても同定された(Greenberg et al (1995) Nature 374:168-173)。これはしばしば、VHHと一緒に、免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体(ISVD)と指定される。ISVDは、これらの小さなサイズ、高い安定性、遺伝子融合による改変の容易さ、および微生物中の良好な産生レベルのおかげで、興味深い治療実現性を提起する。Nanobodies(登録商標)が真核細胞中に産生されたとき、これらの約10分の1は、グリコシル化されている(Functional Glycomics, June 11, 2009を参照)。しかしながら、グリコシル化は一般に、ISVDの産生では避けられるものであり、ゆえにグリコシル化受容部位は、グリカンの存在が不均一性を導入し得るから突然変異させられているが、しかしこれはまた、折り畳みおよび抗原認識に干渉し得るものでもある。またISVDの小さいサイズは、それらが患者へ投与されたとき循環(circulation)から急速にクリアランスされることから、治療的な不利な点でもある。
【0005】
他方、ISVDの小さいサイズは、ISVDを半減期延長(half-life extension)分子へカップリングするか、または特定の薬物(例として、抗体-薬物抱合体の形成)もしくはトレーサーへカップリングするための好機を与える。様々なカップリング方法は、当該技術分野において記載されており(例として、とくにモノクローナル抗体の改変の分野において適用されており)、これらの技術は、アシル化もしくはアルキル化の夫々による一級アミン基(リシン残基およびN末端)を介するかまたはシステインを介する抱合に注目している。しかしながら、抱合の部位制御は一般に低く、完全な均一性は滅多に得られない。モノクローナル抗体のグリカン特異的な抱合は、Synaffix BV(例えば、WO2014065661、WO2015057065、およびWO2015057064を参照)によって記載されるとおり、より高い(more)均一性を与えるが、しかしこのストラテジーは、グリカンが、さらなる化学的カップリングに好適であるという前に、in vitroで調製されなければならないという事実に悩まされている。
【0006】
ISVDにおいて、これらISVDの結合機能も折り畳み機能も妨害しないグリカン構造で修飾され得る特定の部位を同定することが所望されるであろう。このことは、好適な産生系において産生されるとき、効率的なグリコシル化に繋がり、かつ均一で、化学的カップリングにすぐに使えるグルカン構造をもたらすであろう。先行技術において、ISVDのグリカンでの修飾は、既存の抗VH自己抗体への結合を防止するのに有用であることが示された(例えば、WO2016150845を参照)。しかしながら、グリコシル化部位の導入のための特定の設計ストラテジーは何ら使用されておらず、その位置も無作為に選ばれたものであって、主にISVDのむきだしのC末領域に注目したものであった。結果として、ISVDの特定の特性に対するグリカンの存在の影響、ならびにグリコシル化の効率は、目下予測不能であり、個々の基準に対して評価されなければならない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の概要
本願の重要な目的は、免疫グロブリン可変ドメイン(IVD)を含むポリペプチドを提供することであり、ここでIVDは、合理的な設計アプローチを介して同定された特異的選択領域中に存在するグリコシル化受容部位を有する。IVD中の特定の領域でのこれら特定のグリコシル化受容部位の存在は、それらのリガンドとのIVDの結合親和性を妨害せずに、かつIVDの折り畳みに干渉せずに、効率的なグリコシル化を可能にさせる。本明細書にさらに解説されるとおりの様々な成分でさらに修飾され得る特定の位置にて均一な形態のグリカンを含む好適な宿主細胞中組み換えで産生され得る。
【0008】
よって、第1の側面に従うと、以下:IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が提供されるが、ここでIVDは、4つのフレームワーク領域(FR)および3つの相補性決定領域(CDR)を、以下の式(1):FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4(1)に従って含むアミノ酸配列;またはいずれのその好適なフラグメントを含み、ここでIVDは、(AHoナンバリング規則(convention)に従って)IVDのアミノ酸83~88のいずれかおよび/またはアミノ酸27~40のいずれかに存在するグリコシル化受容部位を有する。具体的な側面において、該IVDは、免疫グロブリン単一可変ドメインである。
【0009】
IVDのグリコシル化受容部位は、N-グリコシル化され得るアスパラギン残基であり得る。具体的に、該IVDのグリコシル化受容部位は、NXT、NXS、NXC、またはNXVモチーフ(式中Xは、プロリン(P)を除くいずれのアミノ酸でもあり得る)を、NXT/NXS/NXC/NXVモチーフのアスパラギン残基は、(AHoナンバリング規則に従って)IVDの位置83~88のいずれかおよび/または位置27~40のいずれかにて存在するように、含有する。特定の態様において、IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)位置14および/または48など、IVD中に追加のグリコシル化受容部位を有する。
【0010】
別の側面において、本発明のヌクレオチド配列にコードされるIVDを含むポリペプチドが、提供される。
他の側面に従うと、該ヌクレオチド配列を含む発現ベクター、および発現ベクターを含む細胞が、提供される。
【0011】
組み換え細胞は、具体的な態様に従うと、哺乳動物の細胞もしくは植物細胞などの高等真核細胞、糸状菌細胞もしくは酵母細胞などの下等真核細胞、またはある条件において原核細胞でもある。具体的に関連性があるのは(Of particular relevance)、糖鎖改変(glycol-engineered)細胞、具体的に糖鎖改変下等真核細胞である。
【0012】
より具体的には、本発明に従う高等真核細胞は、脊椎動物細胞、とりわけ哺乳動物の細胞である。例は、これらに限定されないが、CHO細胞またはHEK293細胞(例として、HEK293S細胞)を包含する。
これらの細胞を使用すると、合理的に選ばれた特定の部位にてグリカンで修飾されたIVDが、産生され得る。糖鎖改変細胞は、具体的に所望されるグリカンおよび/または均一なグリカンで修飾されたIVDの産生に好ましいところ、具体的に有利である。この均一なグリコシル化プロファイルは、その特性が十分な予測可能である産物が得られるところ、非常に望ましい。
【0013】
その上、上に記載の細胞は、その細胞中、抱合にとって好ましいGlcNAcグリカン、LacNAcグリカン、またはシアリル-LacNAcグリカンで直接修飾されたIVDの産生に有用である。その上、これらの細胞の採用は、均一なグリコシル化プロファイルをもつIVDに繋がる。よって、従来のアプローチを超える具体的な利益は、得られた産物が高度に均一であることから獲得される。これは、さらなる修飾のための開始点としてGlcNAc残基、Gal残基、またはSia残基を提供する不均一なグリカンのin vitroでの酵素処置を典型的に要する従来のアプローチとは対照的である。高いコストの外に、in vitroでの酵素処置には、不完全な処理、ひいては不均一な産物というリスクがあり得る。別の従来のアプローチは、不均一にグリコシル化されたタンパク質の直接処理に基づくものであって、結果的に、得られる産物は、重ねて(again)、均一性を欠いている。
【0014】
特定の態様に従うと、本発明に従うポリペプチドは、グリコシル化されたIVDを含む。グリコシル化は、特定の態様に従うと、1以上のグリカンを、1以上のグリカンに存在する末端のGlcNAc、GalNAc、ガラクトース、シアル酸、グルコース、グルコサミン、ガラクトサミン、バシロサミン、マンノースもしくはマンノース-6-P糖(sugar)、またはGalNAz、GlcNAz、もしくはアジド-シアル酸などの化学修飾単糖類(chemically modified monosaccharide)とともに含み得る。
【0015】
他の特定の態様に従うと、グリコシル化は、GlcNAc、LacNAc(=GlcNAc-Gal)、シアリル-LacNAc、Man5GlcNAc2、Man8GlcNAc2、Man9GlcNAc2、複合グリカン、ハイブリッドグリカンおよびGlcNAz、GlcNAc-GalNAz、およびLacNAc-アジド-シアル酸(炭水化物の命名法についてはAlan D. McNaught (1996) Pure & Appl. Chem. Vol. 68, No 10, 1919-2008を参照)からなるリストから選択される1以上のグリカンからなる。上に記載のグリカンで、ある位置にて修飾されたIVDは具体的に、グリカン特異的な抱合に有用である。とくに、GlcNAc、LacNAc、またはシアリル-LacNAcからなるグリコシル化プロファイルは、部位特異的な抱合に有利である。
【0016】
特定の態様において、本発明に従うポリペプチド、およびグリカンへ抱合された被抱合成分を含むIVD抱合体が、提供される。合理的に選ばれた位置にてグリカンで修飾されたIVDは、グリカンをベースとした抱合にとって理想的な開始点である。IVD上に存在するグリカンへの成分の連結は、例えば、IVD抱合体の産生を可能にするが、ここでIVDおよび被抱合成分の比率は明確に定義されている(well-defined)。
【0017】
とりわけ効率的な抱合を可能にする、均一なグリカンで修飾されたIVDは、さらにいっそう有利である。抱合は、化学的(例として、グリカン構成要素の過ヨウ素酸酸化、およびこれに続く、当該技術分野において知られている方法(オキシムライゲーション、ヒドラゾンライゲーションなど)を介する抱合または還元的アミノ化を介する抱合を使用する)、あるいは酵素的(例として、ガラクトースを酸化するためのガラクトースオキシダーゼ、およびこれに続く、オキシムライゲーション、ヒドラゾンライゲーションを介する抱合または還元的アミノ化を介する抱合を使用する)のいずれかで実施され得る。代わりに、タグ付けされたグリカン残基は組み込まれることで、これに続く抱合反応(例として、突然変異体ガラクトシルトランスフェラーゼ、およびこれに続く、クリック化学を介する抱合反応を使用する、グリカン鎖中のGalNAzの組み込み)を可能にさせてもよい。
【0018】
被抱合成分は、半減期延長成分、治療剤、検出ユニット、または標的化成分を含み得る。グリカン抱合の方法論を介する薬物、トレーサー等への抱合のための生体直交型の柄(bio-orthogonal handle)として、本発明に従うIVD上のグリカンを使用する有利な条件(opportunities)は、本明細書に記載の例に限定されない。
【0019】
また本願において提供されるのには、本明細書に記載のとおりのIVDを含むポリペプチドおよびIVD-抱合体を産生する方法もある。具体的に、好適な細胞中、本発明に従うIVDを含むポリペプチドを産生するための方法が提供されるが、以下のステップ:
- 好適な細胞を提供すること
- 該細胞において、本発明に従うポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入すること
- 好適な条件においてIVDを含むポリペプチドを発現させること;および
- IVDを含むポリペプチドを単離すること
を含む。該方法はさらに、被抱合成分をポリペプチドへ連結することというステップを含み得る。
【0020】
本発明はまた、IVDを含むポリペプチドまたはその抱合体を含む組成物にも関する。好ましくは、該組成物は、医薬組成物である。さらにいっそう好ましくは、該組成物はさらに、少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体、希釈剤、賦形剤、またはアジュバントを含み、および任意に、1つ以上の本発明のポリペプチドを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図の簡単な記載
【
図1】
図1:代表的なISVDの3次構造(左)および2次構造のトポロジー(右)、ここでナノボディー(PDBエントリーid:3K74からの鎖B)。数個の仮想領域が、N連結型グリコシル化シークオン導入(右パネル中、9個の領域が黒色で描かれる)について決定された。
【
図2】
図2:参照ナノボディーPDB id:3K74(図中のナンバリングは、aHoナンバリングスキームを指す;代わりの(Kabat)ナンバリングについては
図9を参照)において、N連結型グリコシル化シークオンの導入のために選択された10個の特定の部位(Xで示される)。
【0022】
【
図3】
図3:ナノボディーGBPの、ナノボディー3K74とのアミノ酸アライメント
【
図4】
図4:GBPナノボディーにおけるN連結型グリコシル化のサイン(signatures)導入のために選択された特定の部位が描かれている(図中のナンバリングは、aHoナンバリングスキームを指す;代わりの(Kabat)ナンバリングについては
図9または11を参照)。N-グリコシル化効率が、His特異的ウェスタンブロットデータまたは質量分析データに基づき見積もられた。
【
図5】
図5:Pichia pastoris野生型(WT)株、GlycoSwitchM5(GSM5)株、およびGlycoDelete(GD)株において発現された、ナノボディーGBPおよびGBP-R86Nバリアントのクマシーおよび抗HISウェスタンブロット(AHoナンバリング)。
【0023】
【
図6】
図6:Pichia pastoris野生型(WT)およびGlycoSwitchM5(GSM5)において発現された、GBPのN-糖鎖タグ(glycotag)バリアントの、クマシーおよび抗HISウェスタンブロット(または同等の専門用語であるHis6特異的ウェスタンブロット)分析。試料は、モックで処置された(mock-treated)か、またはN-グリカンを除去するためにPNGaseFで消化されたかのいずれかであった。
【
図7】
図7:Pichia GlycoSwitchM5(GSM5)において発現された、GBPの9つの「糖鎖バリアント(glycovariants)」のクマシーおよび抗HIS WB分析。試料は、モックで処置されたか、またはN-グリカンを除去するためにPNGaseFで消化されたかのいずれかであった。白色の四角形は、N(8アミノ酸)末端のまたはC(22アミノ酸)末端の糖鎖タグアミノ酸配列の付加に起因する分子量の増大を示す。
【0024】
【
図8】
図8:Pichia pastoris GlycoDelete(GD)株において産生されたナノボディーGBP-R86NのESI-QTOF MS分析。N-グリコシル化バリアントは、13699Daにて検出される一方、非グリコシル化された画分は、13496Daにて検出される。
【
図9】
図9:ナノボディーNb 41、F-VHH-4、およびF-VHH-L66と、ナノボディーGBPおよび3K74との配列アライメント
【
図10】
図10:Pichia pastoris野生型(WT)、GlycoSwitchM5(GSM5)、およびGlycoDelete(GD)において発現された、Nb41およびNb41-K86Nバリアントのクマシーおよび抗HIS WB分析。試料は、モックで処置されたか、またはN-グリカンを除去するためにPNGaseFで消化されたかのいずれかであった。
【0025】
【
図11】
図11:ナノボディーGBPグリコシル化部位の概観。
【
図12】
図12:GBP糖鎖バリアントの融解曲線。Pichia pastoris GlycoSwitchM5(GSM5)(Man5GlcNAc2グリカン)において産生され、IMACおよびSECを介して精製され、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、上段)またはHEPES緩衝生理食塩水(HBS、下段)のいずれかにおいて溶離されたナノボディー。qPCR機においてSYPRO Orange染料を使用するサーマルシフト(Thermal shift)アッセイ。
【
図13】
図13:GBP N-グリコシル化バリアント(GBP-P48N-K50Tを除く)は、非修飾GBP-WTと同様の特徴をもつそれらの抗原GFPに結合する。ナノボディーは、Pichia pastoris GlycoSwitchM5(GSM5、Man5GlcNAc2グリカン)において産生され、IMACおよびSECを介して精製され、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはHEPES緩衝生理食塩水(HBS)のいずれかにおいて溶離された。バイオレイヤー干渉法(Biolayer interferometry)(BLI)が、ストレプトアビジンチップ上に固定化された100nM ビオチン化アビタグ(Avitag)-GFPで実施された。2倍段階希釈のGBP糖鎖バリアント(8~0.125nM)に対する親和性が、96ウェル形式で25℃にて測定された。親和性パラメータの概要は上に示されて、ForteBio Data Analysis 9.0(エラーバーはSEMを示す)によって算出された。
【0026】
【
図14】
図14:RSV特異的VHHであるF-VHH-L66についての中和アッセイ。F-VHH-L66は、野生型(wt)Pichia pastorisと、GlycoSwitchM5(GSM5)株およびGlycodelete(GD)株との両方において産生された。
【
図15】
図15:ナノボディーGBPと、領域27~40(上段)および領域83~88(下段)の糖鎖バリアントとの部分配列アライメント。
【0027】
【
図16】
図16:N-グリカンは、ナノボディーGBP中の2つの選択された領域のうち、事実上いずれの位置でも導入され得るが、しかし部位占有率は可変である。GBP糖鎖バリアントは、Pichia pastoris GlycoSwitchM5(GSM5)において発現された。すべての組み換えバリアントの上清が回収されて、PNGaseFで処置またはモックで処置され、14~20%勾配SDS-PAGE上のN-グリコシル化の存在についてアッセイされ、Bio-Rad TGX染色フリー(stain-free)検出(上段)およびHisタグ特異的ウェスタンブロット分析(下段)がこれに続いた。野生型GBPの上清試料、選択された各領域における糖鎖バリアント(領域27~40におけるGBP-P30A-V31N-R33T、および領域83~88におけるGBP-D84N-A85T)、ならびに人工の挿入物(GBP-33-39-longinsert)を含有する糖鎖バリアントが、無傷のタンパク質の(intact protein)質量分析によって分析された(下段右)。後者3つの質量が1216Daであることを確認し、Man5GlcNAc2グリカン修飾が図式的に下に示されるとおりに存在する。正規化スペクトルは正規化長(NL)で示され、GBP-WTの場合2.27E3、GBP-D83N-A85Tの場合4.29E3、GBP-P30T-V31N-R33Tの場合7.64E2、およびGBP-33-39-longinsertの場合2.14E3。S-S:ジスルフィド単結合、pyroQ:N末ピログルタミン残基、M5:Man5GlcNAc2グリカン修飾。
【0028】
【
図17】
図17:LacNAcをベースとした過ヨウ素酸酸化を伴う、続くオキシムライゲーションの図式概略図。
【
図18】
図18:シアリル-LacNAcをベースとした過ヨウ素酸酸化を伴う、続くオキシムライゲーションの図式概略図。
【
図19】
図19:GAOをベースとしたLacNAc酸化を伴う、続くオキシムライゲーションの図式概略図。
【
図20】
図20:GAO-F2をベースとしたGlcNAc酸化を伴う、続くオキシムライゲーションの図式概略図。
【0029】
【
図21】
図21:アジド修飾形態のGalNAc(GalNAz)の、単一GlcNAcN-グリカンへの化学酵素(chemo-enzymatic)カップリング、続く、歪んだアルキンをもつアジドのクリック化学反応についての図式概略図。
【
図22】
図22:アジド修飾形態のSia(AzSia)の、LacNAc N-グリカンへの化学酵素カップリング、続く、歪んだアルキンをもつアジドのクリック化学反応についての図式概略図。
【
図23】
図23:Pichia pastoris野生型(NRRLY11430)、GlycoSwitchM5株、およびGlycoDelete株において産生されたナノボディーF-VHH-4バリアント(上パネル)およびF-VHH-L66バリアント(下パネル)のクマシーおよび抗HISウェスタンブロット分析。クマシー分析において、3つの異なるクローンの上清が、各ナノボディー-Pichia株の組み合わせについて試験された;ウェスタンブロット分析については、1つの代表的なクローンの上清が分析された。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な記載
本発明は、具体的な態様に関し、ある図面を参照して記載されるであろうが、しかし本発明はこれらに限定されず、クレームのみによって限定されるものである。クレーム中のいずれの引用符号(reference signs)も、本範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。記載される図面は、概略図でしかなく、非限定的なものである。図面において、要素のいくつかのサイズは、誇張して見せたものもあり、説明目的のためスケール通りに描画されていないものもある。用語「を含む(comprising)」が、本記載およびクレームにおいて使用される場合、他の要素またはステップを排除しない。不明確または明確な項目が、単数名詞、例として「a」または「an」、「the」を参照するときに使用される場合、これは、他にとくに明記されていない限り、その名詞の複数形を包含する。
【0031】
さらにまた、本記載中および本クレーム中の第1、第2、第3等の用語は、同様の要素どうしを区別するために使用され、必ずしも順序または時系列を記載するために使用されてはいない。そのように使用される用語が適切な状況下で交換可能であること、および本明細書に記載の本発明の態様が本明細書に記載または説明される以外の順番で運用可能であることは、理解されるべきである。
【0032】
以下の用語または定義は専ら、本発明の理解に役立つために提供されている。本明細書中とくに定義されていない限り、本明細書に使用されるすべの用語は、本発明に係る当業者にとっても同じ意味を有する。実践者は具体的に、当該技術分野の定義および用語について、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Press, Plainsview, New York (2012);およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Supplement 114), John Wiley & Sons, New York (2016)を対象にする(directed to)。本明細書に提供される定義は、当業者によって理解されるより小さい範囲を有するものと解釈されるべきではない。
【0033】
本明細書に使用されるとき、用語「ヌクレオチド配列」は、いずれの長さのヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそれらの類似体のいずれかのポリマー形態を指す。ヌクレオチド配列は、いずれの3次元構造を有していてもよく、既知または未知のいずれの機能を果たしてもよい。ヌクレオチド配列の非限定例は、遺伝子、遺伝子フラグメント、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分枝のポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、いずれの配列の単離されたDNA、制御領域、いずれの配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーを包含する。ヌクレオチド配列は、直線状であってもよく、または環状であってもよい。
【0034】
本明細書に使用されるとき、用語「ポリペプチド」は、コードされているアミノ酸およびコードされていないアミノ酸、化学的もしくは生化学的に修飾または誘導体化されたアミノ酸、ならびに修飾ペプチド主鎖(backbones)を有するポリペプチドを包含し得る、いずれの長さのポリマー形態のアミノ酸をも指す。ポリペプチド配列は、ここで下に描かれるとおりたった一文字の(または1文字)アミノ酸コードまたは3文字アミノ酸コードで描かれ得る:
【0035】
【0036】
用語「免疫グロブリンドメイン」は、本明細書に使用されるとき、抗体鎖(例として、従来の4鎖抗体の鎖または重鎖抗体の鎖など)の球状領域を、またはかかる球状領域から本質的になるポリペプチドを指す。免疫グロブリンドメインは、2つのベータシート状に配置されて、任意に保存ジスルフィド結合によって安定化されている、約7つの逆平行ベータ鎖の2層サンドイッチからなる、抗体分子の免疫グロブリン折り畳み特徴を保持することを特徴とする。
【0037】
用語「免疫グロブリン可変ドメイン」は、本明細書に使用されるとき、当該技術分野においてかつ本明細書において下に夫々「フレームワーク領域1」または「FR1」として;「フレームワーク領域2」または「FR2」として;「フレームワーク領域3」または「FR3」として;および「フレームワーク領域4」または「FR4」として参照される4つの「フレームワーク領域」であって、当該技術分野においてかつ本明細書において下に夫々「相補性決定領域1」または「CDR1」として;「相補性決定領域2」または「CDR2」として;および「相補性決定領域3」または「CDR3」として参照される3つの「相補性決定領域」または「CDR」によって中断される前記フレームワーク領域から本質的になる免疫グロブリンドメインを意味する。よって、免疫グロブリン可変ドメインの一般構造または配列は、以下:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4に示され得る。それは、抗原結合部位を持つことによって抗体へ抗原に対する特異性を授与する免疫グロブリン可変ドメイン(単数または複数)である。
【0038】
用語「免疫グロブリン単一可変ドメイン」(「ISVD」と略される)は、用語「単一可変ドメイン」と同等であり、抗原結合部位が単一免疫グロブリンドメイン上に存在しかつこれによって形成される分子を定義する。これは、「従来の」免疫グロブリンまたはそれらのフラグメントは別として、2つの免疫グロブリンドメイン、とりわけ2つの可変ドメインが相互作用することで抗原結合部位を形成する免疫グロブリン単一可変ドメインを定める。典型的には、従来の免疫グロブリンにおいて、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)は、相互作用することで抗原結合部位を形成する。このケースにおいて、VHおよびVL両方の相補性決定領域(CDR)は、抗原結合部位に寄与するであろう。すなわち合計6つのCDRは、抗原結合部位の形成に関与するであろう。
【0039】
上の定義の観点から、従来の4鎖抗体(IgG分子、IgM分子、IgA分子、IgD分子、もしくはIgE分子など;当該技術分野において知られている)の抗原結合ドメイン、またはFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント(ジスルフィド連結FvもしくはscFvフラグメントなど)の抗原結合ドメイン、あるいはかかる従来の4鎖抗体に由来する二重特異性抗体(すべてが当該技術分野において知られている)の抗原結合ドメインは、通常、免疫グロブリン単一可変ドメインとしては見なされないであろう。なぜなら、これらのケースにおいて、抗原の夫々のエピトープへ結合することは、通常、1つの(単一)免疫グロブリンドメインによってではなく、(結び付けられた)免疫グロブリンドメイン(軽鎖および重鎖可変ドメインなど)の対によって、すなわち免疫グロブリンドメインのVH-VL対(夫々の抗原のエピトープへ共同して結合する)によって、生じるからである。
【0040】
対照的に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、追加の免疫グロブリン可変ドメインとの対形成をせずに、抗原のエピトープへ特異的に結合することが可能である。免疫グロブリン単一可変ドメインの結合部位は、単一のVH/VHHまたはVLドメインによって形成されている。ゆえに、免疫グロブリン単一可変ドメインの抗原結合部位は、わずか3つのCDRによって形成されている。
【0041】
そのため、単一可変ドメインは、単一抗原結合ユニットを形成することが可能である限り(すなわち、本質的に単一可変ドメインからなる機能的な抗原結合ユニットであって、結果として、単一抗原結合ドメインが、別の可変ドメインと相互作用することで機能的な抗原結合ユニットを形成する必要がなくなる)、軽鎖可変ドメイン配列(例として、VL配列)またはその好適なフラグメント;あるいは重鎖可変ドメイン配列(例として、VH配列もしくはVHH配列)またはその好適なフラグメントであってもよい。
【0042】
本発明の一態様において、免疫グロブリン単一可変ドメインは、重鎖可変ドメイン配列(例として、VH配列)である;より具体的に言うと、免疫グロブリン単一可変ドメインは、従来の4鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列、または重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列であり得る。
【0043】
例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインは、(単一)ドメイン抗体(もしくは(単一)ドメイン抗体としての使用に好適なアミノ酸配列)、「dAb」またはdAb(もしくはdAbとしての使用に好適なアミノ酸配列)、またはNanobody(本明細書に定義されるとおりであって、これに限定されないがVHHを包含する);他の単一可変ドメイン、またはこれらのいずれか1つの、いずれの好適なフラグメントであってもよい。
【0044】
とりわけ、免疫グロブリン単一可変ドメインは、Nanobody(登録商標)(本明細書に定義されるとおりの)またはその好適なフラグメントであってもよい。[注記:Nanobody(登録商標)、Nanobodies(登録商標)およびNanoclone(登録商標)は、Ablynx N.V.の登録商標である]Nanobodiesの総記については、さらなる下の記載、ならびに本明細書に引用される先行技術(例として、WO 08/020079(16頁)の記載など)を参照されたい。
【0045】
「VHHドメイン」は、またVHH、VHHドメイン、VHH抗体フラグメント、およびVHH抗体としても知られており、「重鎖抗体」の(すなわち、「軽鎖がない抗体」の;Hamers-Casterman et al (1993) Nature 363: 446-448)抗原結合免疫グロブリン(可変の)ドメインとして初めて記載された。用語「VHHドメイン」は、これらの可変ドメインを、従来の4鎖抗体に存在する重鎖可変ドメイン(これは、本明細書中「VHドメイン」または「VHドメイン」と言及される)から、および従来の4鎖抗体に存在する軽鎖可変ドメイン(これは、本明細書中「VLドメイン」または「VLドメイン」と言及される)から区別するために、選ばれた。
【0046】
VHHおよびNanobodiesのさらなる記載については、Muyldermans(Molecular Biotechnology 74: 277-302, 2001における総括)による総説、ならびに一般の背景技術として触れられている以下の特許出願:Vrije Universiteit BrusselのWO 94/04678、WO 95/04079、およびWO 96/34103;UnileverのWO 94/25591、WO 99/37681、WO 00/40968、WO 00/43507、WO 00/65057、WO 01/40310、WO 01/44301、EP 1134231、およびWO 02/48193;Vlaams Instituut voor Biotechnologie(VIB)のWO 97/49805、WO 01/21817、WO 03/035694、WO 03/054016、およびWO 03/055527;Algonomics N.V.およびAblynx N.V.のWO 03/050531;National Research Council of CanadaによるWO 01/90190;Institute ofAntibodiesによるWO 03/025020(=EP 1433793);ならびにAblynx N.V.によるWO 04/041867、WO 04/041862、WO 04/041865、WO 04/041863、WO 04/062551、WO 05/044858、WO 06/40153、WO 06/079372、WO 06/122786、WO 06/122787、およびWO 06/122825、およびAblynx N.V.によってさらに公開された特許出願を参照されたい。
【0047】
また、これらの出願において触れられているさらなる先行技術、とりわけ国際出願WO 06/040153の41~43頁に触れられた参考文献のリストも参照されたい。これらのリストおよび参考文献は参照によって本明細書に組み込まれる。これらの参考文献に記載されるとおり、Nanobodies(とりわけVHH配列および部分的にヒト化されたNanobodies)は、とりわけ、フレームワーク配列の1以上における1以上の「顕著な(Hallmark)残基」の存在によって特徴付けられ得る。Nanobodiesのヒト化および/またはラクダ化、ならびに他の修飾体(modifications)、一部、もしくはフラグメント、誘導体、または「Nanobody融合体」、多価構築物(リンカー配列のいくつかの非限定例を包含する)、およびNanobodiesおよびそれらの調製物の半減期を増加する種々の修飾体を包含する、Nanobodiesのさらなる記載は、例としてWO 08/101985およびWO 08/142164から見出され得る。Nanobodiesのさらなる総記については、本明細書に引用される先行技術(例として、WO 08/020079(16頁)の記載など)を参照されたい。
【0048】
「ドメイン抗体(Domain antibodies)」は、また「Dabs」、「ドメイン抗体(Domain Antibodies)」、および「dAbs」(用語「ドメイン抗体(Domain Antibodies)」および「dAbs」は、GlaxoSmithKline系の会社による商標として使用されている)としても知られており、例として、EP 0368684、Ward et al.(Nature 341: 544-546, 1989)、Holt et al.(Tends in Biotechnology 21: 484-490, 2003)、およびWO 03/002609、ならびに例えば、Domantis LtdのWO 04/068820、WO 06/030220、WO 06/003388、および他の公開された特許出願に記載されている。ドメイン抗体は、本質的に、非ラクダ科の哺乳動物の、とりわけヒトの4鎖抗体のVHまたはVLドメインに対応する。単一抗原結合ドメインとしてのエピトープに結合するためには、すなわち、VLドメインまたはVHドメイン夫々と対をなさずにエピトープに結合するためには、かかる抗原結合特性にとって特異的な選択が、例としてヒト単一VHまたはVLドメイン配列のライブラリを使用することによって、要される。ドメイン抗体は、VHHのように、およそ13kDa~およそ16kDaの分子量を有し、完全ヒト配列に由来する場合、例としてヒトにおける治療的使用のためのヒト化を要さない。
【0049】
また、単一可変ドメインが、ある種のサメに由来し得るものあることも注記すべきことである(例えば、所謂「IgNARドメイン」、例えばWO 05/18629を参照)。
【0050】
よって、本発明の意味において、用語「免疫グロブリン単一可変ドメイン」または「単一可変ドメイン」は、非ヒト供給源に、好ましくはラクダ科の動物に由来するポリペプチド、好ましくはラクダ科の動物の重鎖抗体を含む。これらは、先に記載のとおり、ヒト化されていてもよい。その上、前記用語は、例として、Davies and Riechmann(FEBS 339: 285-290, 1994;Biotechnol. 13: 475-479, 1995;Prot. Eng. 9: 531-537, 1996)およびRiechmannおよびMuyldermans(J. Immunol. Methods 231: 25-38, 1999)に記載されるとおり、「ラクダ化」されている、非ラクダ科動物の供給源に、例としてマウスまたはヒトに由来するポリペプチドを含む。
【0051】
IVDのアミノ酸残基のナンバリングについては、種々のナンバリングスキームが適用され得る。例えば、ナンバリングは、ラクダ科動物からのVHHドメインへ適用されているとおり、Honegger, A.およびPlueckthun, A.(J.Mol.Biol. 309, 2001)によって与えられる、すべての重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)のためのAHoナンバリングスキームに従って実施され得る。VHドメインのアミノ酸残基をナンバリングするための代わりの方法は、また類似したやり方でVHHドメインへも適用され得るが、当該技術分野において知られている。例えば、FR配列およびCDR配列の描写は、Riechmann, L.およびMuyldermans, S., 231(1-2), J Immunol Methods. 1999の論文においてラクダ科動物からのVHHドメインへ適用されているとおり、Kabatナンバリング系を使用することによってなされ得る。CDR領域の決定はまた、種々の方法に従ってなされてもよい。
【0052】
Kabatに従うCDR決定において、VHHのFR1は、アミノ酸残基を位置1~30にて含み、VHHのCDR1は、アミノ酸残基を位置31~35にて含み、VHHのFR2は、アミノ酸を位置36~49にて含み、VHHのCDR2は、アミノ酸残基を位置50~65にて含み、VHHのFR3は、アミノ酸残基を位置66~94にて含み、VHHのCDR3は、アミノ酸残基を位置95~102にて含み、およびVHHのFR4は、アミノ酸残基を位置103~113にて含む。例のセクションにおいて使用される特定のナノボディーへ適用される2つの異なるナンバリングスキームの概観は、
図9または11に描かれている。しかしながら、本記載およびクレームにおいては、上に記載のとおりAHoに従うナンバリングに倣う。
【0053】
-VHドメインについて、およびVHHドメインについて、当該技術分野において周知のとおり-CDRの各々におけるアミノ酸残基の総数が変動してもよく、KabatナンバリングまたはAHoナンバリングによって示されるアミノ酸残基の総数に対応していないくてもよい(つまり、KabatまたはAHoナンバリングに従う1以上の位置は、実際の配列に占有されていなくてもよく、または実際の配列は、KabatナンバリングまたはAHoナンバリングによって考慮される数より多くのアミノ酸残基を含有していてもよい)ことは注記されるべきである。これは、一般に、KabatまたはAHoに従うナンバリングが、実際の配列中のアミノ酸残基の実際のナンバリングに対応していても、または対応していないくてもよいことを意味する。VHドメインおよびVHHドメイン中のアミノ酸残基の総数は、大抵、110から120までの範囲内、しばしば112と115との間にあるであろう。しかしながら、より小さい配列およびより長い配列がまた、本明細書に記載の目的にとって好適であってもよいことは注記されるべきである。
【0054】
ドメイン抗体およびNanobodies(VHHドメインを包含する)などの免疫グロブリン単一可変ドメインは、ヒト化に供され得る。とりわけ、Nanobodies(VHHドメインを包含する)などのヒト化免疫グロブリン単一可変ドメインは、先の段落において一般に定義されるとおりの免疫グロブリン単一可変ドメインであってもよいが、前記ドメインにおいて、ヒト化置換(本明細書に定義されるとおり)であるかおよび/またはこれに対応する少なくとも1個のアミノ酸残基(とりわけ、少なくとも1個のフレームワーク残基)が存在する。
【0055】
潜在的に有用なヒト化置換は、天然に存在するVHH配列のフレームワーク領域の配列を、密接に関わっている1以上のヒトVH配列の対応するフレームワーク配列と比較することによって、解明され得る。その後、こうして決定された潜在的に有用なヒト化置換(またはそれらの組み合わせ)の1以上は、該VHH配列中へ(さらに本明細書に記載のとおり、それ自体知られているいずれのやり方においても)導入され得、その結果得られるヒト化VHH配列は、標的に対する親和性について、安定性について、発現の容易さおよびそのレベルについて、および/または他の所望される特性について、試験され得る。このように、たかが知れた(a limited degree of)試行錯誤によって(by means of)、他の好適なヒト化置換(またはそれらの好適な組み合わせ)は、本明細書の本開示に基づき、当業者によって決定され得る。また、前の記載にも基づくと、(フレームワーク領域のうち)Nanobody(VHHドメインを包含する)などの免疫グロブリン単一可変ドメインは、部分的にヒト化されていても、または完全にヒト化されていてもよい。
【0056】
ドメイン抗体およびNanobodies(VHHドメインおよびヒト化VHHドメインを包含する)などの免疫グロブリン単一可変ドメインはまた、1以上のCDRのアミノ酸配列に1以上の変更を導入することによって、親和性成熟にも供され得るが、それらの変更は、その結果得られる免疫グロブリン単一可変ドメインのその夫々の抗原に対して、夫々の親分子と比較して改善された親和性をもたらす。本発明の、親和性が成熟された免疫グロブリン単一可変ドメイン分子は、例えば、Marks et al.(Biotechnology 10:779-783, 1992)、Barbas, et al.(Proc. Nat. Acad. Sci, USA 91: 3809-3813, 1994)、Shier et al.(Gene 169: 147-155, 1995)、Yelton et al.(Immunol. 155: 1994-2004, 1995)、Jackson et al.(J. Immunol. 154: 3310-9, 1995)、Hawkins et al.(J. MoI. Biol. 226: 889 896, 1992)、Johnson and Hawkins(Affinity maturation ofantibodies using phage display, Oxford University Press, 1996)によって記載されるとおり、当該技術分野において知られている方法によって調製されてもよい。
【0057】
免疫グロブリン単一可変ドメイン(ドメイン抗体またはNanobodyなど)から出発して、ポリペプチドを設計/選択するプロセスおよび/または調製するプロセスはまた、本明細書中、該免疫グロブリン単一可変ドメインを「フォーマットする」こととしても言及される;ポリペプチドの一部を構成する免疫グロブリン単一可変ドメインは、「フォーマットされる」か、または該ポリペプチドの「フォーマットで」あると言われる。免疫グロブリン単一可変ドメインがフォーマットされ得る手段の例およびかかるフォーマットの例は、本明細書の本開示に基づき、当業者にとって明確であろう;フォーマットされたかかる免疫グロブリン単一可変ドメインは、本発明のさらなる側面を形成する。
【0058】
用語「グリコシル化受容部位」は、N-またはO-グリコシル化され得るIVD内の位置を指す。N連結型グリカンは、典型的には、アスパラギン(Asn)へ付着されている一方で、O連結型グリカンは、一般的に、セリン側鎖、トレオニン側鎖、チロシン側鎖、ヒドロキシリシン側鎖、またはヒドロキシプロリン側鎖のヒドロキシル酸素へ連結されている。
【0059】
「NXT」、「NXS」、「NXC」または「NXV」モチーフは、コンセンサス配列Asn-Xaa-Thr/SerまたはAsn-Xaa-Cys/Valを指すが、ここでXaaは、プロリンを除くいずれのアミノ酸でもあり得る(Shrimal, S. and Gilmore, R., J Cell Sci. 126(23), 2013, Sun, S. and Zhang, H., Anal. Chem. 87 (24), 2015)。潜在的なN-グリコシル化受容部位は、コンセンサス配列Asn-Xaa-Thr/SerまたはAsn-Xaa-Cys/Valに特異的であることが当該技術分野において周知である。AsnとThr/Serとの間のプロリンの存在が、非効率的なN-グリコシル化に繋がることは当該技術分野において示されている。具体的な側面において、本発明に従うIVDまたはISVDのN連結型グリコシル化受容部位は、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、ヒスチジン(H)またはトリプトファン(W)などの天然のまたは改変された芳香族アミノ酸残基のような芳香族残基とともに拡張される。
【0060】
かかる修飾体は、すなわちPrice, J.L. et al., Biopolymers. 98(3), 2012において、およびMurray, A.N. et al., Chem Biol. 22(8), 2015において記載されている。より具体的な態様において、芳香族残基は、N連結型グリコシル化シークオン(N-x-T/N-x-S)中のアスパラギン(N)残基と比べて、位置-1(F/Y/H/W-N-x-T/S)、-2(F/Y/H/W-x1-N-x-T/S)、または-3(F/Y/H/W-x2-x1-N-x-T/S)に位置する(Murray AN et al (2015) Chem. Biol. 22(8):1052-62およびPrice JL et al (2012) Biopolymers 98(3):195-211)。かかる修飾体は具体的に、N-グリコシル化受容部位のグリコシル化効率、グリカン均一性、および糖タンパク質(glycoprotein)安定性の増大に対して有用である。
【0061】
用語「発現ベクター」は、本明細書に使用されるとき、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター(ラムダファージなど)、ウイルスベクター(アデノウイルスのAAVまたはバキュロウイルスベクターなど)、または人工の染色体ベクター(細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、もしくはP1人工染色体(PAC)など)を包含する、当業者に知られているいずれのベクターも包含する。発現ベクターは一般に、所望されるコード配列と、具体的な宿主生物(例として、高等真核生物、下等真核生物、原核生物)中、作動可能に(operably)連結されたコード配列の発現にとって必要な適切なプロモーター配列とを含有する。
【0062】
典型的には、ベクターは、ヌクレオチド配列を含むが、前記配列中、発現可能なプロモーターまたは調節性ヌクレオチド配列は、調節性ヌクレオチド配列が、結び付けられるヌクレオチド配列の転写または発現をもまた調節できるように、mRNAをコードするヌクレオチド配列もしくはDNA領域へ動作可能に(operatively)連結されているかまたはこれと結び付けられている。典型的には、ベクターの調節性ヌクレオチド配列またはプロモーターは、結び付けられるヌクレオチド配列に対し、天然に見出される(ゆえに動作可能に連結されるDNA領域のコード配列とは異種である)もののようには、動作可能に連結されていない。
【0063】
用語「動作可能に」または「作動可能に」「連結された」は、本明細書に使用されるとき、プロモーター配列が関心のある遺伝子の転写を開始させることができるように、発現可能なプロモーター配列と関心のあるDNA領域または遺伝子との間の機能的な連結を指し、かつ前記用語は、真核細胞における転写の適正な終止を確実にするために、関心のある遺伝子と転写終止配列との間の機能的な連結を指す。「誘導性プロモーター」は、たとえば、これらに限定されないが、温度、pH、ある栄養素、特定の細胞シグナル等々の外部刺激に応答してスイッチが「オン」または「オフ」に入れられ得る(それによって、遺伝子転写を調節する)プロモーターを指す。前記誘導性プロモーターは、「構成的プロモーター」と区別するために使用されるが、前記構成的プロモーターとは、スイッチが絶え間なく「オン」に入れられているプロモーターを意図する、すなわち前記構成的プロモーターから、遺伝子転写が構成的に活性がある。
【0064】
「グリカン」は、本明細書に使用されるとき、一般に、グリコシドが連結された(glycosidically linked)単糖類、オリゴ糖類(oligosaccharides)、および多糖類(polysaccharides)を指す。ゆえに、糖タンパク質、糖脂質(glycolipid)、またはプロテオグリカンなどの糖抱合体(glycoconjugate)の炭水化物部分は、本明細書中「グリカン」と言及される。グリカンは、単糖類残基のホモ-またはヘテロポリマーであり得、直線状または分枝状であり得る。N連結型グリカンは、また本明細書においてもさらに例示されるとおり、GalNAc、ガラクトース、ノイラミン酸、N-アセチルグルコサミン、フコース、マンノース、および他の単糖類から構成されてもよい。
【0065】
真核生物において、O連結型グリカンは、ゴルジ装置中、ペプチド鎖のセリン残基またはトレオニン残基上に、1度に1つの糖が集められる。N連結型グリカンとは違って、知られているコンセンサス配列はないが、しかし-1または+3のいずれかでのプロリン残基の位置は、セリンまたはトレオニンと比べて、O連結型グリコシル化にとって好ましい。
【0066】
「複合N-グリカン」は、本願に使用されるとき、典型的には1つ、2つ、またはそれ以上の(例として、最大6つまでの)外部分枝(outer branches)をもつ構造を指し、前記外部分枝は、ほとんどの場合、内核構造Man3GlcNAc2へ連結されている。用語「複合N-グリカン」は、当業者に周知であり、文献に定義されている。実例として、複合N-グリカンは、GlcNAcの少なくとも1つの分枝または少なくとも2つの分枝を交互に有していてもよく、また任意に、様々なオリゴ糖類において終止していてもよいガラクトース(Gal)残基(しかし、典型的には、マンノース残基とともには終止していないであろう)も有していてもよい。分かりやすくするために、糖タンパク質のN-グリコシル化部位上に存在する単一のGlcNAc、LacNAc、シアリル-LacNAc、またはこれらのアジド修飾型(version)(よって、内核構造Man3GlcNAc2を欠いている)は、複合N-グリカンとは見なされない。
【0067】
「高(Hyper)マンノシルグリカン」は、9つを超えるマンノース残基を含むN-グリカンである。典型的には、かかる高(hyper)マンノシルグリカンは、酵母細胞などの下等真核細胞、具体的に言うと、野生型Pichia pastorisなどの野生型酵母細胞において産生される。Pichia pastorisなどの酵母細胞において産生されるN-グリカンはまた、修飾されたマンノース-6-リン酸でもあり得る。
【0068】
「高等真核細胞」は、本明細書に使用されるとき、単細胞生物からの細胞ではない真核細胞を指す。言い換えれば、高等真核細胞は、ヒト細胞株または別の哺乳動物の細胞株(例として、CHO細胞株)などの多細胞真核生物からの(または細胞培養のケースにおいて、前記多細胞真核生物に由来する)細胞である。典型的には、高等真核細胞は、真菌細胞ではないであろう。具体的に、前記用語は一般に、哺乳動物の細胞、ヒト細胞株、および昆虫細胞株を指す。
【0069】
より具体的には、前記用語は、脊椎動物細胞を、さらにいっそう具体的には、哺乳動物の細胞またはヒト細胞を指す。高等真核細胞は、本明細書に記載のとおり、典型的には、細胞培養(例として、HEK細胞株またはCHO細胞株などの、細胞株)の一部であろうが、このことは必ずしも、厳密に要されるとは限らない(例として、植物細胞のケースにおいては、植物自体が、組み換えタンパク質を産生するために使用され得る)。
【0070】
「下等真核細胞」とは、糸状菌細胞または酵母細胞を意図する。酵母細胞は、種Saccharomyces(例として、Saccharomyces cerevisiae)、Hansenula(例として、Hansenula polymorpha)、Arxula(例として、Arxula adeninivorans)、Yarrowia(例として、Yarrowia lipolytica)、Kluyveromyces(例として、Kluyveromyces lactis)、またはKomagataella phaffii(Kurtzman, C.P. (2009) J Ind Microbiol Biotechnol. 36(11))を形成し得るが、Komagataella phaffiiは、これまでに名付けられていたものであって、旧命名法の下ではPichia pastorisがよく知られており、また本明細書においてもさらに使用される。特定の態様に従うと、下等真核細胞は、Pichia細胞であり、最も具体的な態様において、Pichia pastoris細胞である。特定の態様において、糸状菌細胞は、Myceliopthora thermophila(またDyadic社によるC1としても知られている)、Aspergillus種(例として、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Aspergillus japonicus)、Fusarium種(例として、Fusarium venenatum)、Hypocrea種およびTrichoderma種(例として、Trichoderma reesei)である。
【0071】
「原核細胞」は、典型的には、例えば、E. coli、Lactococcus種およびBacillus種などの細菌細胞のような非病原性原核生物に言及する。
【0072】
具体的な態様に従うと、本発明の細胞は、糖鎖改変細胞である。「糖鎖改変細胞」は、野生型のバックグラウンド(background)と比較して変更されたN-グリカン構造および/またはO-グリカン構造をもつタンパク質を発現するように遺伝子操作された(genetically modified)細胞を指す。典型的には、糖タンパク質上の天然に存在する修飾は、グリコシル化経路に関与する酵素の遺伝子工学によって変えられている。一般に、N連結型グリコシル化における糖鎖(sugar chains)は、3つの型に分けられ得る:高(high-)マンノース(典型的には酵母)、複合(典型的には哺乳動物)およびハイブリッド型グリコシル化。その外に、様々なO-グリカンパターンが存在し、例えば、哺乳動物の細胞におけるムチン型O-グリコシル化とは異なる酵母オリゴマンノシルグリカンもある。
【0073】
N-およびO-グリコシル化の種々の型はすべて、当業者に周知であり、文献に定義されている。相当な努力が、所望されるN-および/またはO-グリコシル化パターンを有する糖タンパク質を産生し、かつ当該技術分野において知られている真核細胞を改変するためのストラテジーの同定および最適化へ向けられる(例として、De Pourcq, K. et al., Appl Microbiol Biotechnol. 87(5), 2010)。かかる糖鎖改変発現系の非限定的な一例は、特許出願WO2010015722に記載されており、エンドグルコサミニダーゼおよび標的タンパク質の両方を発現する(高等または下等)真核細胞に関し、ここで組み換え分泌標的タンパク質が、一様なN-グリコシル化パターン(とりわけ、GlcNAcで修飾されたガラクトース(LacNAc)などの、1つの単一GlcNAc残基(下等真核生物において)もしくはその修飾体、またはシアリル-LacNAc(哺乳動物の細胞において)によって特徴付けられる。
【0074】
また、網羅されるのには、グリコシル化パターンがヒト様(-like)もしくはヒト化であるタンパク質または糖タンパク質(すなわち、複合型糖タンパク質)を発現するように遺伝子操作された細胞もある。これは、不活性化された内在性のグリコシル化酵素を有するか、および/または複合グリコシル化に必要とされる少なくとも1つの酵素をコードする少なくとも1つの他の外来性の核酸配列を含む、細胞、とりわけ下等真核細胞を提供することによって達成され得る。不活性化され得る内在性のグリコシル化酵素は、アルファ-1,6-マンノシルトランスフェラーゼOch1p、Alg3p、Mnn1pファミリーのアルファ-1,3-マンノシルトランスフェラーゼ、ベータ-1,2-マンノシルトランスフェラーゼを包含する。
【0075】
複合グリコシル化に必要とされる酵素は、これらに限定されないが:N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII、マンノシダーゼII、ガラクトシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼおよびシアリルトランスフェラーゼ、およびドナー糖ヌクレオチド合成または輸送に関与する酵素を包含する。ここで想定されるさらに他の糖鎖改変細胞、とりわけ酵母細胞は、高(high)マンノース構造(高(high)マンノース型グリカン)の産生に関与する少なくとも1つの酵素が発現されない点で特徴付けられる。高(high)マンノース構造の産生に関与する酵素は、典型的には、マンノシルトランスフェラーゼである。
【0076】
とりわけ、アルファ-1,6-マンノシルトランスフェラーゼOch1p、Alg3p、Mnn1pファミリーのアルファ-1,3-マンノシルトランスフェラーゼ、ベータ-1,2-マンノシルトランスフェラーゼは、発現されていなくてもよい。よって、細胞は、加えてまたは代わりに、具体的なN-グリカン構造の高収率での産生を可能にさせる1以上の酵素または酵素活性を発現するように改変され得る。かかる酵素は、宿主細胞内オルガネラの標的にされ得るが、前記オルガネラ中、酵素は、例えば、通常は酵素に結び付けられていないシグナルペプチドを用いて、最適な活性を有するであろう。本明細書に記載の酵素およびそれらの活性が、当該技術分野において周知であることは、明らかなはずである。
【0077】
本発明に従う「糖鎖改変細胞」として本明細書中、具体的に想定されるのは、WO2010015722およびWO2015032899に記載されるとおりの細胞である(さらに本明細書中、GlycoDelete細胞、またはGlycoDeleteバックグラウンドを有する細胞と指定される)。手短に、かかる細胞は、グリコシル化不均一性を低減するように改変されており、少なくとも、エンドグルコサミニダーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列、および標的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む。
【0078】
グリコシル化における不均一性が、N連結型糖を起源とするのみならず、糖タンパク質へ付着されているO-グリカンもまた起源とするところ、本発明のポリペプチドからそれらの多様な炭水化物鎖を除去することが望ましくあり得る。これは、WO2017005925に記載のとおりの内在性のUDP-ガラクトース4-エピメラーゼ(GalE)の発現および/または活性が減退している細胞においてエンドグルコサミニダーゼ酵素を発現することによって達成され得る。後者の出願に記載の細胞はまた、本発明に従う糖鎖改変細胞としても具体的に想定され、本明細書中GlycoDoubleDelete細胞またはGlycoDoubleDeleteバックグラウンドを有する細胞としてさらに記載される。
【0079】
また本明細書中、「糖鎖改変細胞」として具体的に言及されるものには、ヒトN-グリコシル化経路を模倣するよう改変された非哺乳動物の細胞もある(すなわち、GlycoSwitch(登録商標)、またLaukens, B. et al (2015) Methods Mol Biol. 1321およびJacobs, P.P. et al. (2009) Nat Protoc. 4(1)も参照)。
【0080】
「IVD抱合体」または「ISVD抱合体」は、本明細書中、特定の成分とカップリングされている(または、抱合されている、もしくは接続されている;これらは当該技術分野において同等の用語である)本発明のIVDまたはISVDを含むポリペプチドとして言及され、本明細書中、「被抱合成分(conjugated moiety)」としてさらに定義される。IVD抱合体とISVD抱合体との間のカップリングは、IVDまたはISVDに存在する特定のアミノ酸(例として、リシン、システイン)を介して生じ得る。好ましくは、カップリングは、該IVDまたはISVDのポリペプチド配列に存在する導入されたグリカン(例として、導入されたN-グリカン)を介して生じる。
【0081】
グリカン特異的な抱合は、IVDまたはISVDの導入されたグリカン部位に存在するグリカンを用いて実施され得る。特定のケースにおいて、グリカンは、「被抱合成分」へカップリングされる前に、さらにin vitroで修飾され得る(例として、特定のエキソグリコシダーゼ酵素でトリミングされる)。加えて、カップリングはまた、i)該IVDまたはISVDに存在する特定のアミノ酸と被抱合成分との間の組み合わせとしても、およびii)導入されたグリカンと被抱合成分とを介したカップリングとしても、生じ得る。抱合は、当該技術分野において記載されるいずれの方法によって実施されてもよく、いくつかの非限定的な実施態様(illustrative embodiments)は、例のセクションにおいて概説されるであろう。
【0082】
本明細書に使用されるとき、用語「被抱合成分」は、具体的な生物学的または特定の機能的な活性をもつ薬剤(例として、タンパク質(例として、第2のIVDまたはISVD)、ヌクレオチド配列、脂質、(他の)炭水化物、ポリマー、ペプチド、薬物成分(例として、細胞毒性薬)、トレーサー、および検出剤)を含む。例えば、本発明に従うポリペプチドおよび被抱合成分を含むIVDまたはISVD抱合体は、抱合されていない本発明のIVDまたはISVDポリペプチドと比較して、少なくとも1つの追加の機能または特性を有する。例えば、本発明のポリペプチドと被抱合成分である細胞毒性薬とを含むIVDまたはISVD抱合体は、第2の機能としての薬物細胞毒性(すなわち、IVDまたはISVDポリペプチドによって授けられた抗原結合に加えて)をもつ結合ポリペプチドの形成をもたらす。
【0083】
もう1つの他の例において、第2の結合ポリペプチドの、本発明のIVDまたはISVDポリペプチドへの抱合は、追加の結合特性を授けてもよい。ある態様において、被抱合成分が、遺伝子学的にコードされる治療用もしくは診断用のタンパク質またはヌクレオチド配列である場合、被抱合成分は、当該技術分野において周知であるペプチド合成または組み換えDNA方法のいずれかによって合成されても、または発現されてもよい。別の側面において、被抱合成分が、非遺伝子学的にコードされるペプチド、例として、薬物成分である場合、被抱合成分は、人工的に合成されても、または天然の供給源から精製されてもよい。
【0084】
本発明は、特定の領域に、とりわけ効率的なグリコシル化を可能にする領域に存在するグリコシル化受容部位を有するIVDまたはISVDを含むポリペプチドを提供することを目的とし、そのグリコシル化は、IVDまたはISVDの結合および折り畳みに干渉せず、このことが、さらなる使用、例としてIVDまたはISVD抱合体の産生のために、より受け入れられるものとさせている。
【0085】
本発明は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を提供するが、そのポリペプチドは、抗体模倣薬(antibody mimetic)を含み、ここで該抗体模倣薬は、いずれか可能な位置にて導入された、少なくとも1つの人工的に改変されたN-グリコシル化部位を有し、ならびに、ここで該グリコシル化受容部位のグリコシル化は、GlcNAc、LacNAcおよびシアリル-LacNAcからなる群から選択される1以上のグリカンからなる。
【0086】
もう1つの他の態様において、本発明は、ポリペプチドを提供するが、そのポリペプチドは、抗体模倣薬を含み、ここで該抗体模倣薬は、いずれか可能な位置にて導入された、少なくとも1つの人工的に改変されたN-グリコシル化部位を有し、ならびに、ここで該グリコシル化受容部位のグリコシル化は、GlcNAc、LacNAcおよびシアリル-LacNAcからなる群から選択される1以上のグリカンからなる。
【0087】
もう1つの他の態様において、本発明は、ポリペプチドを含む抱合体を提供するが、そのポリペプチドは、抗体模倣薬を含み、ここで該抗体模倣薬は、いずれか可能な位置にて導入された、少なくとも1つの人工的に改変されたN-グリコシル化部位を有し、ならびに、ここで該グリコシル化受容部位のグリコシル化は、GlcNAc、LacNAcおよびシアリル-LacNAc、および該グリカンへカップリングされる被抱合成分からなる群から選択される1以上のグリカンからなる。
【0088】
用語「抗体模倣薬」は、本明細書に使用されるとき、抗体のように特異的に抗原に結合するが構造的に抗体とは関係のない人工の(ポリ-)ペプチドを指す。これらは、大抵、約3~20kDaの分子量をもつ抗体より有意に小さい。抗体模倣薬の非限定例は、アブジュリン(abdurins)、アドネクチン(adnectins)、アフィボディ(affibodies)、アフィリン(affilins)、アフィマー(affimers)、アルファボディ(alphabodies)、アフィチン(affitins)、アンチカリン(anticalins)、アヴィマー(avimers)、DARPins、フィノマー(fynomers)、キュニッツ(Kunits)ドメインペプチド、モノボディ(monobodies)、プロテインAのZドメイン、ガンマB結晶、ユビキチン、シスタチン、Sulfolobus acidocaldariusからのSac7D、リポカリン、膜受容体のAドメイン、アンキリンリピートモチーフ、FynのSH3ドメイン、プロテアーゼインヒビターのキュニッツドメイン、フィブロネクチンの10番目のIII型ドメイン、3-もしくは4-ヘリックス束タンパク質、アルマジロリピートドメイン、ロイシンリッチ(-rich)リピートドメイン、PDZドメイン、SUMOまたはSUMO様ドメイン、免疫グロブリン様ドメイン、ホスホチロシン結合ドメイン、プレクストリン相同ドメイン、src homology 2ドメイン、または合成ペプチドリガンド、例として、(ランダム)ペプチドライブラリからの合成ペプチドリガンドである。
【0089】
抗原結合タンパク質の他の例はまた、合成の結合タンパク質も、より具体的に言うと、モノボディも包含する(例として、検討用に(for a review)、Sha et al., 2017. Protein Science. 26:910-924を参照)。モノボディは、フィブロネクチンIII型ドメインに基づいて構築された合成タンパク質である。受容体の細胞外ドメイン、キナーゼ、ステロイドホルモン受容体、および調節(modular)タンパク質ドメインを包含する、多岐にわたる(diverse array of)標的に対して高い親和性で結合するモノボディは単離されている(Koide, 2012)。
【0090】
もう1つの他の態様において、本発明は、ISVDポリペプチドを提供するが、そのポリペプチドは、そのポリペプチド配列中いずれか可能な位置にて導入された、少なくとも1つの人工的に改変されたN-グリコシル化部位を有し、ならびに、ここで該グリコシル化受容部位のグリコシル化は、GlcNAc、LacNAcおよびシアリル-LacNAcからなる群から選択される1以上のグリカンからなる。
【0091】
もう1つの他の態様において、本発明は、ISVDポリペプチドを含む抱合体を提供するが、そのポリペプチドは、その配列中いずれか可能な位置にて導入された、少なくとも1つの人工的に改変されたN-グリコシル化部位を有し、ならびに、ここで該グリコシル化受容部位のグリコシル化は、GlcNAc、LacNAcおよびシアリル-LacNAc、および該グリカンへカップリングされる被抱合成分からなる群から選択される1以上のグリカンからなる。
【0092】
もう1つの他の態様において、本発明は、IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を提供するが、ここで該IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸83~88のいずれか、および/またはアミノ酸27~40のいずれかに存在するグリコシル化受容部位を有する。分かりやすくするために、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸83~88のいずれか、および/またはアミノ酸27~40のいずれかに存在するグリコシル化受容部位を有するIVDは、本明細書中、「本発明のIVD」または「本発明のISVD」としてさらに指定される。
【0093】
もう1つの他の態様において、本発明は、IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を提供するが、ここで該IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸83~88のいずれかに存在するグリコシル化受容部位を有する。もう1つの他の態様において、本発明は、IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を提供するが、ここで該IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸27~40のいずれかに存在するグリコシル化受容部位を有する。もう1つの他の態様において、本発明は、IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を提供するが、ここで該IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸83~88のいずれか、およびアミノ酸27~40のいずれかに存在するグリコシル化受容部位を有する。
【0094】
該グリコシル化受容部位は、N-またはO連結型グリカンで修飾され得る(が、必ずしも修飾されるとは限らない)。本発明がN-グリコシル化に限定されないことは、本明細書中、具体的に想定されている。本開示は、N-およびO-グリコシル化の両方を採用するための手段を提供する。
【0095】
本発明に従う態様において、IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が提供されるが、ここで該IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸84~88、85~88、86~88、87および88、83~87、84~87、85~87、83、84、85、86、87、88、83~86、84~86、85および86、83~85、84および85、または83および84のいずれか、および/またはアミノ酸28~40、29~40、30~40、31~40、32~40、33~40、34~40、35~40、36~40、37~40、38~40、39および40、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39および40、27~39、28~39、29~39、30~39、31~39、32~39、33~39、34~39、35~39、36~39、37~39、38および39、27~38、28~38、29~38、30~38、31~38、32~38、33~38、34~38、35~38、36~38、37および38、27~37、28~37、29~37、30~37、31~37、32~37、33~37、34~37、35~37、36および37、27~36、28~36、29~36、30~36、31~36、32~36、33~36、34~36、35~36、27~35、28~35、29~35、30~35、31~35、32~35、33~35、34および35、27~34、28~34、29~34、30~34、31~34、32~34、33および34、27~33、28~33、29~33、30~33、31~33、32および33、27~32、28~32、29~32、30~32、31および32、27~31、28~31、29~31、30および31、27~30、28~30、29および30、27~29、28および29、または27および28のいずれかに存在するグリコシル化受容部位を有する。
【0096】
本発明に従うもう1つの他の態様において、IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が提供されるが、ここで該IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸86に、および/またはアミノ酸27に存在するグリコシル化受容部位を有する。
本発明に従うもう1つの他の態様において、IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が提供されるが、ここで該IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸86およびアミノ酸27に存在するグリコシル化受容部位を有する。
【0097】
本発明に従うもう1つの他の態様において、IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が提供されるが、ここで該IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸86に存在するグリコシル化受容部位を有する。
本発明に従うもう1つの他の態様において、IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が提供されるが、ここで該IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸27に存在するグリコシル化受容部位を有する。
【0098】
好ましい態様において、IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が提供されるが、ここで該IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸83~88のいずれかに存在するグリコシル化受容部位を有する。より具体的に言うと、該IVDのグリコシル化受容部位は、(AHoナンバリング規則に従って)アミノ酸84~88、83、84、85、86、87、88、85~88、86~88、87および88、83~87、84~87、85~87、86および87、83~86、84~86、85および86、83~85、84および85、または83および84に存在する。最も具体的に言うと、該IVDのグリコシル化受容部位は、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸86に存在する。
【0099】
本発明に従う別の態様において、IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が提供されるが、ここで該IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸27~40のいずれかに存在するグリコシル化受容部位を有する。より具体的に言うと、該IVDのグリコシル化受容部位は、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、28~40、29~40、30~40、31~40、32~40、33~40、34~40、35~40、36~40、37~40、38~40、39および40、27~39、28~39、29~39、30~39、31~39、32~39、33~39、34~39、35~39、36~39、37~39、38および39、27~38、28~38、29~38、30~38、31~38、32~38、33~38、34~38、35~38、36~38、37および38、27~37、28~37、29~37、30~37、31~37、32~37、33~37、34~37、35~37、36および37、27~36、28~36、29~36、30~36、31~36、32~36、33~36、34~36、35~36、27~35、28~35、29~35、30~35、31~35、32~35、33~35、34および35、27~34、28~34、29~34、30~34、31~34、32~34、33および34、27~33、28~33、29~33、30~33、31~33、32および33、27~32、28~32、29~32、30~32、31および32、27~31、28~31、29~31、30および31、27~30、28~30、29および30、27~29、28および29、または27および28のいずれかに存在する。
【0100】
最も具体的に言うと、該IVDのグリコシル化受容部位は、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸27に存在する。
IVD中、位置83~88および/または27~40の次に、グリコシル化される傾向にある追加の位置が選択され得ることは、本明細書に提示される本開示に基づけば当業者にとって明らかなはずである。
【0101】
したがって、本発明に従う具体的な態様において、IVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が提供されるが、ここで該IVDは、(AHoナンバリング規則に従って)IVDのアミノ酸83~88に、および/またはアミノ酸27~40に存在するグリコシル化受容部位を有し、かつIVD中位置14および/または位置48などの位置に存在する追加のグリコシル化受容部位を有する。具体的な態様に従うと、本発明のIVDは、該IVD中、可能などの位置でもIVD中に導入される追加のグリコシル化受容部位を有する。他の具体的な態様に従うと、本発明のIVDは、IVD中、(AHoナンバリング規則に従って)位置14に存在する追加のグリコシル化受容部位を有する。他の具体的な態様に従うと、本発明のIVDは、IVD中、(AHoナンバリング規則に従って)位置48に存在する追加のグリコシル化受容部位を有する。
【0102】
もう1つの他の態様において、本発明のIVDは、具体的な態様に従うと、位置16および/または49および/または139に存在する追加のグリコシル化受容部位を有する。
もう1つの他の態様において、本発明のIVDは、余剰の末端アミノ(N-)末タグおよび/または余剰のカルボキシ末端(C-)を有するが、それらのタグは、グリコシル化受容部位、具体的にはN-グリカン受容部位を包含する。
【0103】
よって、本発明の範囲が、本発明のIVD内の少なくとも2つまたはさらにいっそう多くのグリコシル化受容部位の併用を包含することは明らかである。本願に基づき、当業者は、本発明のIVD中に同定された特定のグリコシル化受容部位内のまたは前記部位の次に、追加のグリコシル化受容部位を選択する仕方を知っており、かつさらなる位置およびそれらの組み合わせの同定/または使用もまた、提示されるとおりの本発明の範囲内にある。
【0104】
特定の態様において、本発明は、本明細書の前に記載のIVDヌクレオチド配列にコードされるポリペプチドを提供する。
【0105】
別の態様に従うと、該IVDのグリコシル化受容部位は、N-グリコシル化され得るアスパラギン残基である。より具体的には、該IVDは、NXT、NXS、NXCまたはNXVのモチーフ(前記モチーフ中Xは、プロリンを除くいずれのアミノ酸でもあり得る)を、NXT/NXS/NXC/NXVモチーフのアスパラギン残基がアミノ酸83~88のいずれにもおよび/またはアミノ酸27~40のいずれにも存在できるように含有する。さらにいっそう具体的には、該IVDは、NXT/NXSモチーフを含有する。
【0106】
具体的な態様に従うと、本発明は、前に記載のとおりのIVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を提供するが、ここで該IVDは、免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)である。
【0107】
具体的な態様に従うと、前に記載のとおりのISVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が提供されるが、ここで該ISVDは、重鎖可変ドメイン配列である。より具体的な態様に従うと、ISVDは、重鎖抗体に、好ましくはラクダ科動物の重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列である。
【0108】
別の具体的な態様において、前に記載のとおりのISVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が提供されるが、ここで該ポリペプチドは、該ISVDからなる。もう1つの他の態様において、前に記載のとおりのIVDを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターが提供される。
【0109】
本発明において、用語「ISVDを含むポリペプチドを含む」は、ISVDが、半減期延長ポリペプチド(例として、血清アルブミンを対象にするVHH)などの別のポリペプチド、第2のVHH(二重特異性のまたは二価のIgGを創出するため、など)、酵素、治療用タンパク質、IgA FcドメインまたはIgG FcドメインなどのFcドメインへ融合(またはカップリング)され得ることを意味する。
【0110】
もう1つの他の態様において、本発明は、本発明に従う発現ベクターを含む細胞を提供する。具体的な態様において、細胞は、哺乳動物の細胞もしくは植物細胞などの高等真核細胞、糸状菌細胞もしくは酵母細胞などの下等真核細胞、または原核細胞である。
【0111】
高等真核細胞は、いずれの高等真核生物でもあり得るが、しかし具体的な態様において、哺乳動物の細胞は、想定されるものである。使用される細胞の性質は、典型的には、所望されるグリコシル化特性、および/または本明細書に記載のIVDもしくはISVDを産生する容易さおよび費用に応じるであろう。哺乳動物の細胞は、実例として、免疫原性に係る問題を避けるために使用されてもよい。タンパク質産生のための高等真核細胞株は、修飾されたグリコシル化経路をもつ細胞株も包含し、当該技術分野において周知である。
【0112】
タンパク質を担持、発現、および産生し、これに続き単離および/または精製するのに好適な動物または哺乳動物の宿主細胞の非限定例は、CHO-K1(ATCC CCL-61)、DG44(Chasin et al., 1986, Som. Cell Molec.Genet., 12:555-556;およびKolkekar et al., 1997, Biochemistry, 36:10901-10909)、CHO-K1 Tet-On細胞株(Clontech)、CHOと指定された(designated)ECACC 85050302(CAMR, Salisbury, Wiltshire, UK)、CHOクローン13(GEIMG, Genova, IT)、CHOクローンB(GEIMG, Genova, IT)、CHO-K1/SFと指定されたECACC 93061607(CAMR, Salisbury, Wiltshire, UK)、RR-CHOK1と指定されたECACC 92052129(CAMR, Salisbury, Wiltshire, UK)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ陰性CHO細胞(CHO/-DHFR、Urlaub and Chasin, 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216)、およびdp12.CHO細胞(米国特許第5,721,121号)などの、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO);SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1細胞(COS細胞、COS-7、ATCC CRL-1651);ヒト胎児腎臓細胞(例として、293細胞、または293T細胞、または懸濁培養中で成長させるためにサブクローニングされた293細胞、Graham et al., 1977, J. Gen. Virol., 36:59);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL-10);サル腎臓細胞(CV1、ATCC CCL-70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587;VERO、ATCC CCL-81);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, 1980, Biol. Reprod., 23:243-251);ヒト子宮頸部癌細胞(HELA、ATCC CCL-2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL-34);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL-75);ヒト肝臓がん細胞(HEP-G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562、ATCC CCL-51);バッファローラット(buffalo rat)肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL-1442);TRI細胞(Mather, 1982, Annals NYAcad. Sci., 383:44-68);MCR 5細胞;FS4細胞を包含する。具体的な態様に従うと、細胞は、CHO細胞、Hek293細胞、またはCOS細胞から選択される哺乳動物の細胞である。さらに具体的な態様に従うと、哺乳動物の細胞は、CHO細胞およびHek293細胞から選択される。
【0113】
他の具体的な態様に従うと、本発明に従う細胞は、植物細胞である。典型的な植物細胞は、タバコ、トマト、ニンジン、トウモロコシ、藻類、ムラサキウマゴヤシ、イネ、大豆、Arabidopsis thaliana、Taxus cuspidata、Nicotiana benthamiana、およびCatharanthus roseusからの細胞を含む。本発明に従うIVDまたはISVDポリペプチドの産生に有用であり得る、更なる追加の植物種は、Weathers, P.J. et al., Appl Microbiol Biotechnol. 85(5), 2010に記載されている。
【0114】
より具体的な態様において、本発明に従う細胞は、糸状菌細胞または酵母細胞などの下等真核細胞である。糸状菌および酵母細胞の特定の例は、本明細書の前に概説されている。
より具体的な態様において、本発明に従う細胞は、E. coli、Lactococcus種またはBacillus種などの原核細胞である。
【0115】
より具体的な態様において、前に記載のとおりの本発明に従う細胞は、糖鎖改変細胞である。糖鎖改変細胞は、不要なN-グリコシル化および/またはO-グリコシル化を除去することが可能であり得る。糖鎖改変細胞という用語は、本明細書の前に概説されている。糖鎖改変細胞はまた、改変されることで前に記載のとおりのヒトグリコシル化経路を模倣する非哺乳動物の細胞でもあり得る。
【0116】
具体的な態様において、前に記載のとおりの本発明に従うヌクレオチド配列にコードされるIVDを含むポリペプチドが提供されるが、ここでポリペプチドは、グリカン(または1より多くのグリカン)を含み、ここでグリカンは、末端のGlcNAc、GalNAc、ガラクトース、シアル酸、グルコース、グルコサミン、ガラクトサミン、バシロサミン(例えば、Bacillus subtilusおよびCampylobacter jejuniにおいて類型化される(described)希少なアミノ糖(2,4-ジアセトアミド-2,4,6-トリデオキシグルコース))、
マンノースもしくはマンノース-6-P糖、またはGalNAz、アジド-シアル酸(AzSia)、もしくはGlcNAzなどの化学修飾単糖類を有する。特定の糖をもつグリカンを含むIVDポリペプチドは、in vivoで作られ得る。
【0117】
例えば、高等真核細胞は典型的には末端のシアル酸をもつグリカンを生成するであろうし、酵母細胞は典型的には末端のマンノースまたはマンノース-6Pをもつグリカンを生成するであろうし、ある糸状菌は末端のガラクトースをもつグリカンを生成するであろうし、ある糖鎖改変酵母細胞は末端のGlcNAcを産生し(例として、WO2010015722に記載される)、ある糖鎖改変高等真核細胞は末端のGlcNAc、ガラクトース、およびシアル酸をもつグリカンの混合物を産生し(例として、WO2010015722およびWO2015032899に記載される)、他の糖鎖改変高等真核細胞は末端のGlcNAcをもつグリカンを産生し(WO2017005925を参照)、ある突然変異ガラクトシルトランスフェラーゼを含む真核細胞はGalNAcを非還元GlcNAc糖へ酵素的に付着し得(WO2004063344を参照)、UDP-GalNAz(C2置換のアジドアセトアミド-ガラクトースUDP-誘導体)が供給された、突然変異ガラクトシルトランスフェラーゼを含む真核細胞は、グリカンの末端非還元GlcNAcにてGalNAzを組み込むであろう(WO2007095506およびWO2008029281を参照)。任意に、特定の糖をもつグリカンを含むIVDポリペプチドは、所望される末端の糖が得られるまで、グリカンのin vivoでのトリミング、これに続くin vitroでのトリミングの組み合わせによって作られ得る。例として、WO2015057065(Synaffix)。
【0118】
もう1つの他の具体的な態様において、本発明は、本発明のIVDを含むポリペプチドを提供するが、ここでIVDは、グリカン(または1より多くのグリカン)を含み、かつここでグリカンは、GlcNAc、LacNAc、シアリル-LacNAc、Man5GlcNAc2、Man8GlcNAc2、Man9GlcNAc2、高(hyper-)マンノシル化されたグリカン、マンノース-6-リン酸グリカン、複合グリカン、ハイブリッドグリカン、および化学修飾グリカン(GlcNAz、GlcNAc-GalNAz、アジド-シアル酸-LacNAcなど)からなる群から選択されるグリカンからなる。
【0119】
もう1つの他の具体的な態様において、本発明は、本発明のIVDを含むポリペプチドを含む組成物を提供するが、ここでIVDは、グリカン(または1より多くのグリカン)を含み、かつここでグリカンは、GlcNAc、LacNAc、シアリル-LacNAc、Man5GlcNAc2、Man8GlcNAc2、Man9GlcNAc2、高(hyper)マンノシルグリカン、マンノース-6-リン酸グリカン、複合グリカン、ハイブリッドグリカン、および化学修飾グリカン(GlcNAz、GlcNAc-GalNAz、アジド-シアル酸-LacNAcなど)からなる群から選択されるグリカンからなり、ここで該ポリペプチド中の具体的な位置(単数または複数)でのこれらのグリカンの1以上の存在は、試料中の同じペプチドに関して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%である。
【0120】
本明細書の前に記載の様々な宿主細胞が、本発明によって提供されるIVD上に存在する特定のグリカンを産生するの具体的に有用であり得る一方、組み合わせられたin vivoおよびin vitroアプローチもまた所望のグリカン構造を得ることが可能であることは留意されるべきである。実際に、真核生物宿主中に産生された本発明のIVDまたはISVDは精製され得、グリカン構造は、好適なエンドグルコサミニダーゼまたはエキソグリコシダーゼによってトリミングされ得、およびその後、様々なグリコシルトランスフェラーゼ(例として、ガラクトシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、ポリシアリルトランスフェラーゼ等)のin vitroでの使用によって再編され(re-built)得る。
【0121】
IVD-抱合体
具体的な態様において、本発明は、IVD-抱合体を提供する。好ましい態様において、本発明に従うIVDまたはISVDポリペプチドは、該IVDまたはISVDポリペプチド上に存在するグリカン構造を介して、特定の成分(本明細書の前に定義されるとおりの被抱合成分)へカップリングされる。かかるグリカンの特定の成分への特定のカップリングは、当該技術分野において、グリカン特異的抱合として言及される。IVDまたはISVDポリペプチド上に存在する、本明細書の前に記載されるとおりの、特定の末端炭水化物をもつグリカン構造または特定のグリカン構造は、特定の成分とのカップリングのための開始点として使用される。
【0122】
抱合のために使用され得る特定の成分
本発明のIVDまたはISVD中に存在するグリカン構造へのカップリングのために使用され得る被抱合成分は、当該技術分野において多すぎるほど(plethora)存在する。被抱合成分は、例えば、半減期延長成分、治療剤、検出ユニット、標的化成分、または第2の(同じか、もしくは異なる)IVDもしくはISVDポリペプチドでさえも含む。1以上の被抱合成分は、また互いに異なっていてもよいが、本発明のIVDまたはISVDへ連結され得る。1つの被抱合成分でさえ、1より多くの機能を有し得る、すなわち半減期延長成分は同時に、標的化成分としても有用であり得る。
【0123】
i) 半減期延長成分
様々な半減期延長成分が本明細書において想定されている。非限定的かつ手短には、半減期延長ストラテジーがKontermann, R.E., Expert Opin Biol Ther. 16(7), 2016またはvan Witteloostuijn, S.B., ChemMedChem. 11(22), 2016に記載されている。とりわけ、共有結合の化学的修飾(covalent chemical modification)に依存する様々な半減期延長技法が開発されている。これらの方法は、PEG化、非構造(unstructured)ポリペプチドをベースとしたPEG模倣物への融合、ポリシアリル化の採用(例として、ポリシアリルトランスフェラーゼ酵素の酵素的な使用(enzymatic use))、ビオチン-カップリング、ポリオキサゾリン-カップリング、大きな多糖類との抱合、脂質化、アルブミンまたはIgGのFcドメインもしくはIgAのFcドメインへの融合、および自己集合へ向かわせる生体直交型(bio-orthogonal)成分との誘導体化を包含する。もう1つの他の半減期延長成分は、血清アルブミンを対象にするIVD(VHHなど)である。
【0124】
ii) 治療成分
ある態様において、被抱合成分は、すなわち抗炎症剤、抗がん剤、細胞毒性剤、抗感染剤(例として、抗真菌剤、抗細菌剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤等々)、および麻酔治療剤(anesthetic therapeutic agents)を包含する様々な治療剤を含む。特定の態様において、被抱合成分は、プロドラッグを変換することが可能な酵素であり、前記プロドラッグは毒性薬物へ変換される。毒物(例として、毒素、細胞毒性薬、放射性核種)もまた、治療目的上好適であり得、がん治療において具体的に有用である。ゆえに、IVD-抱合体の特定の例は、抗体-薬物-抱合体(ADC)である。原則として、治療目的上好適であるどの剤も、本明細書において想定されるものである。記載のとおりの治療剤は、典型的には、小分子または生物製剤であるが、しかし治療剤はまた、そもそも、当業者にとって明らかであるはずの別のものでもあり得、かつ本発明はこれらに限定されるべきではない。
【0125】
iii) 検出成分
ある態様において、被抱合成分は、検出成分を含む。用語「検出成分」または「検出可能な標識」は、検出目的のために使用され得る特性または機能を保有するいずれかのユニット、すなわち発色団ユニット、蛍光ユニット、リン光ユニット、ルミネセンスユニット、光吸収ユニット、放射性ユニット、および遷移金属同位体質量タグ(mass tag)ユニットを含む群から選択されるものを指す。限定せずに、検出成分は、当業者にとって明らかなはずであるとおり、小分子または巨大分子であり得る。
【0126】
好適な蛍光ユニットは、免疫蛍光技術、例として、フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡法の技術分野から知られているものである。本発明のこれらの態様において、検出ユニットを含む抱合体は、検出ユニットを励起し、およびその結果得られる放射(フォトルミネセンス)を検出することによって検出される。この態様において、検出ユニットは、好ましくは蛍光ユニットである。
【0127】
有用な蛍光ユニットは、フィコビリタンパク質などのタンパク質をベースとしたもの、ポリフルオレンなどのポリマー、フルオレセインのようなキサンテン、もしくはローダミン、シアニン、オキサジン、クマリン、アクリジン、オキサジアゾール、ピレン、ピロメテンなどの有機小分子染料、またはRu錯体、Eu錯体、Pt錯体などの有機金属錯体であってもよい。単一分子実体(single molecule entities)の外、蛍光タンパク質または有機小分子染料の塊(clusters)、ならびに量子ドット、アップコンバーティング(upconverting)ナノ粒子、金ナノ粒子、染色された(dyed)ポリマーナノ粒子などのナノ粒子もまた、蛍光ユニットとしても使用され得る。
【0128】
フォトルミネセンス検出ユニットの別の群は、励起後の光の時間-遅延放射をもつリン光ユニットである。リン光ユニットは、Pd錯体、Pt錯体、Tb錯体、Eu錯体などの有機金属錯体、またはランタニドがドープされたSrAl2O4などの組み込まれたリン光色素をもつナノ粒子を包含する。
【0129】
本発明の別の態様において、検出ユニットを含む抱合体は、照射によって事前に励起されることなく検出される。この態様において、検出ユニットは、放射性標識であり得る。それらは、非放射性同位体をこれらの放射性同位体(counterparts)(トリチウム、32P、35Sまたは14Cなど)と交換すること、またはチロシンへ結合されている125I、フルオロデオキシグルコース内18F、もしくは有機金属錯体(すなわち、99Tc-DTPA)などの、共有結合された標識を導入することによって、放射性同位体を標識するという形態であってもよい。
【0130】
別の態様において、検出ユニットは、化学発光(chemiluminescence)を引き起こすことが可能なもの、すなわちルミノール存在下での西洋ワサビペルオキシダーゼ標識である。
本発明の別の態様において、検出ユニットを含む抱合体は、放射線放出(radiation emission)によっては検出されないが、しかしUV、可視光、またはNIR放射線の吸収によって検出される。好適な光吸収検出成分は、N-アリールローダミン、アゾ染料、およびスチルベンのような有機小分子クエンチャー染料などの、蛍光放射のない光吸収染料である。
【0131】
別の態様において、光吸収検出ユニットは、パルス光レーザーによって、光音響シグナルを生成することによって、照射され得る。
本発明の別の態様において、検出ユニットを含む抱合体は、遷移金属同位体の質量分析検出によって検出される。遷移金属同位体質量タグ標識は、共有結合された有機金属錯体またはナノ粒子の構成要素として導入されてもよい。当該技術分野において知られているのは、ランタニドの同位体タグおよび隣接する後期遷移元素である。
【0132】
iv) 標的化成分
ある態様において、被抱合成分は、標的化成分を含む。本明細書に使用されるとき、用語「標的化成分」は、標的分子へ結合する被抱合成分を指す。小分子または生物製剤は両者とも、標的化成分として採用され得る。標的化成分は、限定せずに、タンパク質、ヌクレオチド配列、脂質、他の炭水化物(例として、特定のグリカン)、およびそれらの組み合わせ(例として、糖タンパク質、糖ペプチド(glycopeputides)、および糖脂質)を含み得る。標的へ結合できるいずれの成分も、本発明に従う標的化成分として採用され得る。
【0133】
IVD-抱合体において有用なリンカー
ある態様において、IVD-抱合体は、グリカンと標的化成分との間にリンカーを含む。あるリンカーは他のリンカーより有用であり、特定のリンカーの使用は本願に応じるであろう。例えば、オキシムおよびヒドラゾン、とりわけ脂肪族アルデヒドに由来するものは、水中またはより低いpHにて、経時的により低い安定性を示す。芳香族的に(aromatically)安定化された構造体は、グリカンを被抱合成分へ安定して連結するのにより有用であり得る。安定化されたかかるリンカーもまた、具体的に被抱合成分が腫瘍細胞を死滅させることを意図した毒性物質であるとき、被抱合成分の早過ぎる放出に起因する逆効果を制限し得るところ、本願の範囲内にある。
【0134】
具体的に対象にするのは、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン試薬(BICYCLO[6.1.0]NON-4-YNE REAGENTS)、ならびに芳香族的に安定化されたトリアゾールリンカーおよびスルファミドリンカーである。また抱合体の増大した安定性が、該抱合体内に含まれる成分のいずれの凝集傾向をも低減させることは、一般的な専門(technical)知識の範囲内である。安定性が増大されたIVD抱合体の産生については、読者は、これらに限らないが(non-exclusively)、WO2013036748、WO2014065661、WO2015057064およびWO2016053107を、ならびに本明細書中明示的に述べられたSynaffix B.V.によって出願された他の特許出願を参照されたい。
【0135】
一般に、当該技術分野において知られている様々なリンカーが、本発明に従うIVDおよび被抱合成分を連結させるために使用され得る。明らかなはずであるとおり、切断可能および切断不可能なリンカーが、所望の放出プロファイルを獲得するために採用され得る。一般に、リンカーおよび抱合の化学の最適な組み合わせは、ユニークな各面(facet):IVD、被抱合成分、および処置されるべき疾患のプロファイルを相関させるためにユニークに合わせられなければならない。本明細書に使用される抗体-薬物抱合体およびリンカーに関する検討用には、例えば、Jessica R. McCombs and Shawn C. Owen, AAPS J. 17(2), 2015、およびLu, J. et al., Int J Mol Sci. 17(4), 2016、ならびにがんおよび感染性疾患の処置のための抱合体において有用な新規四級アンモニウム塩リンカーを記載するPillow, T.H., Pharm Pat Anal. 6(1), 2017による近年の総説を参照。
【0136】
更に他の好適なスペーサーまたはリンカーは、当業者にとっては明らかであろう。これらは一般に、当該技術分野において使用されるいずれのリンカーまたはスペーサーであってもよい。特定の側面において、リンカーまたはスペーサーは、医薬用途(pharmaceutical use)を意図する適用における使用に好適である。例えば、ISVD-抱合体またはIVD-抱合体中のグリカンと成分との間のリンカーはまた、ある側面において、好適なアミノ酸配列、とりわけ1と50との間の、またはより具体的に言うと1と30との間のアミノ酸残基のアミノ酸配列であってもよい。かかるアミノ酸配列のいくつかの例は、WO 99/42077に記載のとおりの例えば(GS)nまたは(GGGSS)nまたは(GSS)nなどのGly-Ser(GS)リンカー、および本明細書に述べられるAblynxによる出願(例えば、WO 06/040153およびWO 06/122825を参照)に記載の(G4S)3、GS30、GS15、GS9およびGS7リンカー、ならびに天然に存在する重鎖抗体または同様の配列(WO 94/04678に記載のものなど)のヒンジ領域などのヒンジ様領域を包含する。
【0137】
更に他の好適なリンカーは一般に、有機化合物またはポリマー、とりわけ医薬用途のためのポリペプチドにおける使用に好適なものを含む。実例として、ポリ(エチレングリコール)成分は、抗体ドメインを連結するために使用されている、例えばWO 04/081026を参照。リンカーの長さ、柔軟度、および/または他の特性が、本発明の最終IVD抱合体の特性(これらに限定されないが、特定の標的に対する親和性、特異性、または結合活性(avidity)を包含する)に対してある影響を及ぼし得ることは、本発明の範囲内に網羅される。本明細書の本開示に基づき、当業者は、本発明の特定のIVDまたはISVDにおける使用のための最適なリンカーを、任意にいくつかの限定的なルーチン実験後に、決定できるであろう。例えば、第1および第2の標的に対して向けられる構成単位(building blocks)を含む本発明の多価ISVDにおいて、リンカーの長さおよび柔軟性は、リンカーによって各構成単位がその同種の(cognate)標的へ結合できるようになるのが好ましい。
【0138】
また、本明細書の本開示に基づき、当業者は、本発明の特定のIVDまたはISVDにおける使用のための最適なリンカーを、任意にいくつかの限定的なルーチン実験後に、決定できるであろう。最終に、2以上のリンカーが本発明のIVDまたはISVDにおいて使用されるとき、これらのリンカーは同じであっても、または異なっていてもよい。また、本明細書の本開示に基づき、当業者は、本発明の特定のポリペプチドにおける使用のための最適なリンカーを、任意にいくつかの限定的なルーチン実験後に、決定できるであろう。ある特定の態様において、より高い親水性および結果的に改善された水可溶性をもつIVD抱合体を提供し得る(例えば炭水化物を包含する)より長いリンカーをもつIVD抱合体を産生することが所望される。よって、より多くの炭水化物をもつリンカーを含むIVD抱合体もまた、本願の範囲内である。またPEGで修飾されたかまたはPEGからなるリンカーも、IVD抱合体の親水特性を増大するのに有用であり得る。
【0139】
もう1つの他の態様において、本発明は、本発明のIVDを含むポリペプチドを産生する方法を提供するが、該方法は、好適な発現宿主中に、本発明のIVDをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入すること、本発明の該IVDを発現すること、およびそれを単離することというステップを含む。好適な条件は、本発明に従うIVDを含むポリペプチドを発現するために選出されなければならない。
【0140】
用語「好適な細胞」とは、哺乳動物の細胞または植物細胞などの高等真核細胞、糸状菌細胞または酵母細胞などの下等真核細胞は、任意に糖鎖改変されているが、上に説明されているとおり想定されるものである。
【0141】
具体的に本明細書において想定されるものは、本発明に従うIVDまたはIVSDを含むポリペプチドの産生であるが、ここで該ポリペプチドは、グリコシル化されており、かつ末端のGlcNAc、GalNAc、ガラクトース、シアル酸、グルコース、グルコサミン、ガラクトサミン、バシロサミン、マンノースもしくはマンノース-6-P糖、または化学修飾単糖類(GalNAz、AzSia、もしくはGlcNAzなど)をもつ1以上のグリカンを含む。
【0142】
例えば、本発明のIVDを含むポリペプチド(ここでポリペプチドは、N-グリコシル化されており、かつ末端のGlcNAc、ガラクトース、またはシアル酸をもつN-グリカンの混合物を含む)は典型的には、WO2010015722およびWO2015032899に記載のとおり、本発明に従う高等真核糖鎖改変細胞中の発現によって得られ得る。例えば、本発明のIVDを含むポリペプチド(ここでポリペプチドは、N-グリコシル化されており、かつ末端のGlcNAcをもつN-グリカンを含むかまたはこれを本質的に含む)は、WO2010015722に記載のとおり、下等真核細胞中で産生され得る。例えば、末端のGlcNAcをもつN-グリカンは、WO2017005925に記載のとおり、内在性のUDP-ガラクトース4-エピメラーゼ(GalE)の発現および/または活性を欠く(deficient in)糖鎖改変細胞中で産生され得る。
【0143】
また具体的に本明細書において想定されるものには、本発明に従うIVDを含むポリペプチドの産生もあるが、ここで該ポリペプチドのグリコシル化は、GlcNAc、LacNAc、シアリル-LacNAc、Man5GlcNAc2、Man8GlcNAc2、Man9GlcNAc2、複合グリカン、ハイブリッドグリカン、およびGlcNAc-GalNAzからなる群から選択される1以上のグリカンからなる。さらにいっそう具体的に本明細書において想定されるのは、本発明に従うIVDを含むポリペプチドの産生があるが、ここで該ポリペプチドのグリコシル化は、GlcNAc、LacNAc、シアリル-LacNAc、Man5GlcNAc2、Man8GlcNAc2、Man9GlcNAc2、および複合グリカンからなる群から選択される1以上のグリカンからなる。
【0144】
本発明のIVDを含むポリペプチド(ここでポリペプチドは、グリコシル化されており、およびここでグリコシル化は、GlcNAcグリカン、LacNAcグリカン、およびシアリル-LacNAcグリカンからなる)は典型的には、WO2010015722およびWO2015032899に記載のとおり、本発明に従う哺乳動物の糖鎖改変細胞中で得られるが、かかるGlcNAcグリカン、LacNAcグリカン、およびシアリル-LacNAcグリカンはまた、下等真核細胞中でも改変され得る(例として、酵母中への、哺乳動物の複合グリコシル化経路の導入を介して)。本発明のIVDを含むポリペプチド(ここでポリペプチドは、グリコシル化されており、およびここでグリコシル化は、GlcNAcからなる)は、WO2017005925に記載のとおり内在性のUDP-ガラクトース4-エピメラーゼ(GalE)の発現および/または活性を欠き得る、本発明に従う糖鎖改変細胞中で産生され得る。
【0145】
本発明のIVDを含むポリペプチド(ここでポリペプチドは、グリコシル化されており、およびここでグリコシル化は、複合グリカンからなる)は、任意に糖鎖改変されている、本発明に従う高等真核細胞中で産生され得る。本発明のIVDを含むポリペプチド(ここでポリペプチドは、グリコシル化されており、およびここでグリコシル化は、Man5GlcNAc2グリカン、Man8GlcNAc2グリカン、Man9GlcNAc2グリカン、高(hyper)マンノシル化されたグリカン、マンノース-6-リン酸で修飾されたグリカン、および複合グリカンからなる群から選択される1以上のグリカンからなる)は、本発明に従う糖鎖改変細胞中、具体的に酵母細胞中で産生され得る。
【0146】
特定成分をIVDへ連結させるためのカップリング方法
もう1つの他の態様において、本発明は、本発明のIVDまたはISVD抱合体を産生するための方法を提供する。一般に、かかる方法は、えり抜きの(of choice)好適な細胞中に、本発明に従うIVDをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入すること、これに続き、しばらくの間IVDポリペプチドを発現すること、IVDポリペプチドを精製すること、および特定の被抱合成分を精製されたIVDポリペプチドへ連結することによって始める。カップリング方法自体は一般に、in vitroで実行される。
【0147】
当該技術分野において、特定の被抱合成分を本発明のIVDポリペプチドに連結させるための実現性は、幾つか存在する。そこで一般に言われているのは、カップリング反応を実行するための、化学的な、酵素的な、および化学-酵素の組み合わせられた抱合ストラテジーである。
【0148】
具体的な態様に従うと、IVD-抱合体を産生するための該方法は、
- 本発明のIVDを含むポリペプチドのグリカンに存在する近接のジオールまたはジオールを酸化させること
- 得られた遊離アルデヒド基を、アミノオキシ含有分子と反応させること
というステップを含む。
【0149】
酸化のため、過ヨウ素酸ナトリウム、または当該技術分野において知られている数種の他の同等な試薬が使用され得る。特定の態様において、酸化されるべきジオールは、本発明のIVD上に存在するLacNAc二糖類(disaccharaide)またはシアリル-LacNAc三糖類(trisaccharide)が起源である。オキシムはそれに続き、LacNAc/シアリル-LacNAc酸化-オキシムライゲーション化学として一般的に記載される、その結果得られた遊離アルデヒド基とアミノオキシ含有分子との反応によって形成される。
【0150】
当該技術分野において周知なのは、パラ-フェニレンジアミン、2-アミノフェノール、または2-(アミノメチル)ベンズイミダゾールのような触媒の使用である。オキシムおよびヒドラジンの抱合は、クリック化学、より複雑な生体直交型修飾ストラテジーの有望な代替手段である。還元的アミノ化条件の下、アルデヒド(例として、ガラクトース酸化は、ジ-アルデヒドを生成し、シアル酸酸化は、モノ-アルデヒドを生成する)は、アミンと反応し得、これによって安定なオキサゼピン誘導体がもたらされる。
【0151】
別の具体的な態様に従うと、IVD-抱合体を産生するための該方法は任意に、
- 本発明のIVD上に存在する末端LacNAc N-グリカン中のGal残基のC6ヒドロキシル基を酸化すること
- 遊離アルデヒド基を、アミノオキシ含有分子と反応させること
というステップを含む。
【0152】
酸化のため、酵素ガラクトースオキシダーゼ(GAO)が使用され得る。上に言及されるステップを採用すると、典型的にはオキシム結合が、任意にカタラーゼの存在下で、形成されるが、これらのすべてが当該技術分野において周知である。
オキシムおよびヒドラゾンの安定性をモジュレートするために、またはこれを具体的に増大させるために、リンカーの使用は、前に記載のとおり、具体的に本明細書において想定されている。
【0153】
より具体的な態様において、被抱合成分は、IVD上に存在するグリカン、具体的には単一のGlcNAcまたはLacNAcへ、単糖類誘導体を介して連結されている。単糖類誘導体は、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ、β(1,3)-ガラクトシルトランスフェラーゼ、突然変異触媒ドメインを含むβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ、突然変異触媒ドメインを含むβ(1,3)-ガラクトシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、またはGalNAcトランスフェラーゼなどのグリコシルトランスフェラーゼの存在下、IVD上に存在するグリカンへ連結され得る。単糖類は、アジド基、ケト基、アルキニル基、もしくはチオール基、またはそれらの前駆体から選択され得る、1個、2個、3個、または4個の官能基を含み得る。官能基はまた、ハロゲン、スルホニルオキシ基、ハロゲン化アセトアミド基、メルカプトアセトアミド基、またはスルホニル化ヒドロキシアセトアミド基からも選択され得る。詳細なプロトコルについては、読者は、WO2015057064およびWO2015057065を参照されたい。
【0154】
更に他の具体的な態様において、被抱合成分は、オキシム結合を介してグリカンへ、および/またはアジド修飾形態のUDP-GalNAcの、末端GlcNAcをもつN-グリカンへの抱合を介して連結されている。さらにいっそう具体的な態様において、被抱合成分は、修飾ガラクトシルトランスフェラーゼを使用し、これに続きクリック化学をベースとした反応を介して関心のある分子を付着させることで、アジド修飾形態のUDP-GalNAcの、末端のGlcNAcをもつN-グリカンへの抱合を介してグリカンへ連結される。クリック化学をベースとした反応は、本分野において働いている者(those active in this field)には周知であり、また本明細書に提供される例に基づき明らかにもなっている。クリック化学における目下のアプローチに係る総説については、読者は、Jain, N. et al. Pharm Res. 32(11), 2015、Qasba, P.K. et al., Biotechnol Prog. 24(3), 2008、またはNwe, K. and Brechbiel, M.W., Cancer Biother Radiopharm. 24(3), 2009を参照されたい。
【0155】
前に記載のとおりのIVD抱合体の安定性をモジュレートするためのリンカーの使用は、具体的に本明細書において想定されている。
特定の数種の方法は、さらに下の例のセクションにおいて詳細に特定されている。
【0156】
本発明のIVDおよびIVD-抱合体の適用
具体的な態様において、本発明のIVDを含むポリペプチド-抱合体は、循環半減期をモジュレートするため、もしくはIVD安定性を増大させるために、選択的標的化のために、IVD-抱合体の免疫原性をモジュレートするために、または検出目的のために、使用される。
もう1つの他の態様において、本発明のIVD-抱合体は、医薬として使用される。
【0157】
もう1つの他の態様において、本発明のIVD(いずれに成分とも抱合させていない)は、医薬として使用される。
もう1つの他の態様において、本発明のIVD(いずれに成分とも抱合させていない)は、抗体の事前結合を防止するために使用される。
もう1つの他の態様において、本発明のIVD(いずれに成分とも抱合させていない)は、免疫原性を低減するために使用される。
【0158】
表現「循環半減期をモジュレートするため」に関し、ポリペプチド(例として、IVD-抱合体)の半減期が増加するかまたは減少するかのいずれかであり得ることが意味される。いくつかの用途のために、本発明のIVDを含むポリペプチドまたは本発明のIVD-抱合体が、クレームされたとおりのポリペプチドまたはIVD-抱合体の特定の特性を欠如しているポリペプチドまたは抱合体より短い時間、血流中に留まることは有用であり得る。しばしば、多くの治療用分子が、腎での濾過閾より小さくかつ循環から迅速に喪失し、それによってそれらの治療可能性(their therapeutic potential)を限定するところ、長期にわたる(prolonged)半減期も目的としている(aimed)。非限定例として、アルブミンまたは上に参照されたとおりの他の半減期延長成分は、かかる分子の循環半減期を増加させるために、熟練した実践者に知られている様々なやり方において使用され得る。
【0159】
「選択的標的化」に関し、本発明のポリペプチドおよびIVD-抱合体が、関心のある標的に対する排他的な効果を獲得するのに有用であり得ることを意味する。この例は、正常な体細胞と相互作用しないがん細胞の選択的標的化がしばしば失敗している従来の化学治療である。その結果として(As a consequence thereof)、器官損傷を包含する重篤な副作用が引き起こされて、より低用量での(with lower dose)十分に機能を果たさない(impaired)処置を、最終的に低生存率をもたらす。本発明のポリペプチドおよびIVD-抱合体は、任意に標的化成分を含むが、がん治療に限定されない従来のアプローチの不利な点を克服するのに有用であり得る。
【0160】
本発明のポリペプチドおよび抱合体を使用して免疫原性をモジュレートするすることは、クレームされたとおりのポリペプチドまたはIVD-抱合体の特定の特性を欠如しているポリペプチドまたはIVD-抱合体と比較すると、達成され得ることである。例えば、長期の(long-term)処置にとって、免疫原性を下げることは好ましいことである。具体的および非限定的には、本明細書に記載のとおりのグリカンは、免疫原性を修正する(modify)ためのツールとして利用され得る。当業者は、一般的な知識および本明細書に提供される本開示に基づき、免疫原性を適応させ得る。
【0161】
本明細書に記載のとおりのポリペプチドおよび抱合体は、既存の抗体への結合を防止または低減するために使用され得る。この効果は、ISVD上のグリカンについての文献に記載されている(すなわちWO2016150845を参照)。抗体の事前結合を防止するための本発明に従うポリペプチドおよび抱合体の使用は、本開示の範囲内であり、また本明細書において想定されるものでもある。
【0162】
本発明のポリペプチドおよび抱合体はまた、前に説明されたとおり具体的に検出ユニットを含むとき、検出目的のためにも提供される。具体的に、本発明のポリペプチドおよび抱合体は、クレームされたポリペプチドまたは抱合体の特定の特性を欠如しているポリペプチドまたは抱合体より、検出目的に向いている(prone)。よって具体的な態様において、本発明のIVD-抱合体はまた、診断目的のためにも使用され得る。
【0163】
もう1つの他の態様において、本発明は、本発明のIVDを含むキットを提供する。
もう1つの他の態様において、本発明は、本発明のIVD-抱合体を含むキットを提供する。
別の態様において、前に記載のとおりのIVDを含むポリペプチドまたはIVD-抱合体を含む医薬組成物が提供される。
【0164】
したがって、本発明は、薬学的に許容し得る担体と、薬学的に有効な量の本発明のポリペプチド、ヌクレオチド配列、およびIVD-抱合体と、薬学的に許容し得る担体から構成される医薬組成物を包含する。薬学的に許容し得る担体は、好ましくは、相対的に非毒性であり、かつ活性成分(active ingredient)の有効な活性と合致した濃度にて患者に無害である担体であって、その担体に起因するいずれの副作用も、活性成分の有益な効果を損なうことがない。
【0165】
薬学的に有効な量の本発明のポリペプチド、ヌクレオチド配列、および抱合体と、薬学的に許容し得る担体とは、好ましくは、処置されている具体的な条件で、結果を挙げるかまたは影響を及ぼす量である。本発明のポリペプチド、ヌクレオチド配列、および抱合体と、薬学的に許容し得る担体とは、いずれの有効な従来の剤形(即時放出、徐放、および時限放出の調製物を包含する)も使用し、当該技術分野において周知である薬学的に許容し得る担体とともに投与され得、かついずれの好適なルート(当業者に一般的に知られているいずれのルートなど)によっても投与され得る。
【0166】
治療のため、本発明の医薬組成物は、標準的な技法に従っていずれの患者にも投与され得る。投与は、経口的に、非経口的に、局所的に、経鼻的に、点眼的に(ophthalmically)、髄腔内に、脳室内に、舌下に、経直腸的に、経膣的に、等を包含する、いずれの適切な様式によるものであってもよい。ナノ技術としての製剤ならびにエアロゾルおよび吸入薬(inhalant)の更に他の技法もまた、本発明の範囲内である。投薬量および投与の頻度は、患者の年齢、性別、および状態、他の薬物との併用投与、禁忌(counter-indications)、ならびに臨床医によって考慮されるべき他のパラメータに応じるであろう。
【0167】
本発明の医薬組成物は、保管のために凍結乾燥され得、使用に先立ち好適な担体において再構成され得る。
【0168】
凍結乾燥体または液体として調製されるとき、生理学的に許容し得る担体、賦形剤、安定剤が、本発明の医薬組成物中へ加えられることが必要となる(Remington's Pharmaceutical Sciences 22th edition, Ed. Allen, Loyd V, Jr. (2012))。担体、賦形剤、および安定剤の投薬量と濃度とは、対象(ヒト、マウス、および他の哺乳動物)に対して安全であるべきであり、それらは、ホスファート、シトラート、および他の有機酸などの緩衝剤;ビタミンCなどの酸化防止剤、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどの小ポリペプチド、タンパク質;PVPなどの親水性ポリマー、アミノ酢酸、グルタマート、アスパラギン、アルギニン、リシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンなどのグリコース、二糖類、および他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコール;Na+などの対イオン、および/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはPEGなどの界面活性剤等を包含する。
【0169】
本発明の医薬組成物を含有する調製物は、注射前に滅菌されるはずである。この手順は、凍結乾燥および再構成の前または後に、滅菌濾過膜を使用してなされ得る。
医薬組成物は大抵、コルク付きi.v.溶液瓶などの、滅菌されたアクセスポート(access port)付き容器に充填されている。コルクは、皮下注射針によって貫通され得る。
【0170】
具体的な態様、特定の立体配置、ならびに材料および/または分子が、本明細書中、本発明に従うヌクレオチド配列、細胞、ポリペプチド、抱合体、および方法について考察されてきたが、様々な変更(changes)または改変(modifications)が、形式上かつ詳細に、本発明の範囲および精神から逸脱せずになされてもよいことは、理解されるべきである。以下の例は、具体的な態様をより良く解説するために提供されるものであって、本願を限定するものとして見なされるべきものではない。本願は、クレームによってしか限定されない。
【0171】
例1:N-グリカンを導入するための合理的な設計アプローチとしての、ISVD構造の結晶学的データの使用
本例において、我々は、代表的な免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチド(RCSB Protein Data Bankまたは手短に言えば:PDBデータベースから探し出した(isolated from)エントリー3K74からの鎖B;3K74は、2つの鎖、言い換えれば、A鎖(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)およびB鎖(ジヒドロ葉酸レダクターゼに結合するナノボディー)を含有する;本明細書において、さらに我々は、ナノボディー(B鎖)のみを特定するために3K74を使用する)の入手可能な結晶学的構造から、人工のN-グリコシル化部位の導入に好適な構造中の領域を特定することを始めた。この3K74 ISVDポリペプチドは、Oyen D. et al (2011) J.Mol.Biol. 407: 138-148によって最初に記載されたナノボディーであり、そのタンパク質2次構造は、
図1に図式的に描かれている。
【0172】
我々の合理的な設計アプローチにおいて、我々は、N-グリカンの導入のための2次構造中の潜在的な領域が、抗体の抗原認識部位と干渉すべきでない(または妨害すべきでない)と、重要なことには、折り畳みの間にベータシートの形成を阻止すべきでないと推論した。ナノボディーのCDR領域が抗原認識に重要であり、かつベータシート構造が正確な折り畳みに重要であるところ、我々は、CDR領域とベータ鎖との間のタンパク質領域がおそらくN-グリカンの付着などの些細な修飾に対して感受性が低いであろうと仮定した。
【0173】
例2:N-グリコシル化のサイン導入のためのISVD中9つの仮想領域の選択
例1において概説された我々の合理的な設計アプローチおよび特定の基準に基づき、我々は、代表的なナノボディー3K74に存在する合計9つの領域を選択した(
図1、右パネルを参照、人工のN-グリカン受容部位の導入のために選択された9つの領域は黒色で描かれている)。ベータシート構造要素に存在する領域に加えて、我々は、N-およびC末グリコシル化タグの、配列番号1で表される実際のナノボディーアミノ酸配列への付加を計画した。
【0174】
いずれのN-およびC末タグもない、ナノボディー3K74のアミノ酸配列は、配列番号1で表される。配列番号1中CDR1、CDR2、およびCDR3の領域に下線を付す。
配列番号2はCDR1を表し、配列番号3はCDR2を表し、配列番号4はCDR3を表し、配列番号5はFR1を表し、配列番号6はFR2を表し、配列番号7はFR3を表し、および配列番号8はFR4を表す。
【0175】
配列番号1(115アミノ酸):
QLQESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFNNYWMYWVRRAPGKGLEWVSMINPGGIITKYAESVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLTSEDTAVYYCAKDWATGLAKKGQGTQVTVSS
【0176】
配列番号2(CDR1):GFTFNNYW
配列番号3(CDR2):INPGGIITK
配列番号4(CDR3):AKDWATGLA
配列番号5(FR1):QLQESGGGLVQPGGSLRLSCAAS
配列番号6(FR2):MYWVRRAPGKGLEWVSM
配列番号7(FR3):YAESVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLTSEDTAVYYC
配列番号8(FR4):KKGQGTQVTVSS
【0177】
また、例1において概説された基準に基づき、我々は、ナノボディー3K74の9つの選択されたタンパク質領域内の特定のアミノ酸配列を選択した(ナノボディー構造の9つの異なる領域中に導入されるべき10のN-グリカン受容部位案を描く
図2を参照)。
【0178】
例3:GFP結合ナノボディーを使用する概念実証(Proof-of-concept)
GFP結合ナノボディー(GBPと略され、Kubala, M.H. et al (2010) Protein Sci. 19(12)によって公開された)を、例2において特定され、合理的に設計された10のN-グリコシル化受容部位案の導入のためのベンチマーク(benchmark)ISVDとして選択した。我々は、人工のN末糖鎖タグ付けされたバリアント(QADDANATVQLVESGGA、野生型GBP中QVQLVESGGAの代わり)を包含させた。我々はまた、C末糖鎖(glyco-)HISタグ付けされたバリアント(VSSLQAAAAAANATVAAASGDVWDIHHHHHH、野生型(HISタグ付けされた)GBP中VSSHHHHHHの代わり)も包含させた。GBPバリアントのすべてが、精製および/または検出を容易にするC末ヒスチジンタグ(6×HIS)を備えていた。
【0179】
ナノボディーGBPのアミノ酸配列は、配列番号9で表される。配列番号9中CDR1、CDR2およびCDR3の領域に下線を付す。
配列番号10はCDR1を表し、配列番号11はCDR2を表し、配列番号12はCDR3を表し、配列番号13はFR1を表し、配列番号14はFR2を表し、配列番号15はFR3を表し、および配列番号16はFR4を表す。
【0180】
配列番号9:
QVQLVESGGALVQPGGSLRLSCAASGFPVNRYSMRWYRQAPGKEREWVAGMSSAGDRSSYEDSVKGRFTISRDDARNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCNVNVGFEYWGQGTQVTVSSHHHHHH(121アミノ酸)
【0181】
配列番号10(CDR1):GFPVNRYS
配列番号11(CDR2):MSSAGDRSS
配列番号12(CDR3):NVNVGFE
配列番号13(FR1):QVQLVESGGALVQPGGSLRLSCAAS
配列番号14(FR2):MRWYRQAPGKEREWVAG
配列番号15(FR3):YEDSVKGRFTISRDDARNTVYLQMNSLKPEDTAVYYC
配列番号16(FR4):YWGQGTQVTVSS
【0182】
図3は、GBPナノボディーと、例1からの参照ナノボディー3K74とのアミノ酸アライメントを描く。N連結型グリコシル化サインを、3K74参照ナノボディー結晶構造の合理的な分析を通して同定された仮定の場所にて、GBPタンパク質に導入した。ナノボディーGBP中N-グリカン受容部位を得るために導入された特定の突然変異を
図4に描く。
【0183】
数種のキメラ遺伝子を構築した:
図4に描かれるとおり、野生型GBPナノボディーと、特定の位置に導入されたN-グリコシル化受容部位をもつ種々の突然変異体とのコード配列を、Pichia pastorisのAOX1プロモーター(メタノール誘導性プロモーター)へ作動可能に連結した。その結果得られた発現ベクターを、Pichia pastorisの3つの異なる株:野生型(WT)、GlycoSwitch M5(GSM5)およびGlycoDelete(GD)に導入した。GlycoSwitch M5株は、主にMan5GlcNAc2構造をもつ、その糖タンパク質を修飾する(Jacobs, P.P. et al., (2009) Nat Protoc. 4(1))一方、GlycoDelete株中に発現されるタンパク質は、単一のGlcNAc残基が均一に修飾される(例えば、Claes, K. et al. (2016) ACS Synth Biol. 5(10)、および出願WO2010015722中考察される一般のGlycoDelete技術を参照)。
【0184】
続いて、組み換えPichia pastorisの種々の培養物をまず、唯一の炭素供給源としてのグリセロールを含有する培地中48h、28℃にて成長させ、続いて、組み換えタンパク質発現を、グリセロールをメタノールに置換することによって誘導した。28℃にて、もう48時間後に、成長培地(上清)を、各組み換え培養物から回収した。培養上清を続いて、エンドグリコシダーゼPNGaseFで処置するか(N-グリカンを除去するため)またはモックで処置するかのいずれかを行い、クマシーブルー(Coomassie Blue)染色SDS-PAGEおよびHisタグ特異的ウェスタンブロット(Western Blot)を介してアッセイした。この分析の結果を
図5、6および7に示す。
【0185】
我々のデータは、N-グリコシル化の効率に変動はあったが、ナノボディーGBPのグリコシル化が、ほとんどすべてのそれらの糖鎖バリアント(S73N-K75Tバリアント(aHoナンバリング)を除く)について得られたことを示す。グリコシル化効率を特定する概観については、表1を参照。これはまた
図4の上部にも示される(グリコシル化効率について、+++、+、および-として表示される)ことに留意されたい。意外なことに、極めて効率的なグリコシル化に繋がる4つの特定の位置を、ナノボディータンパク質構造から同定した:位置14、位置27、位置48、および位置86。また意外なことに、これらの位置の2つ(27および86)は、N-グリカン部位の導入に関するナノボディーについて何ら記載されてこなかった。位置14および48は、WO2016150845において偶然にも引用されている。位置14、27、48および86は、Ahoナンバリングに従う。
【0186】
Pichia pastoris GlycoDeleteバックグラウンドにおいて産生された-D鎖とE鎖との間のループ中に修飾された-とりわけ高度に効率的にグリコシル化されたGBP-R86Nバリアント(aHoナンバリング)をさらに、標準的なNi
2+親和性クロマトグラフィーおよびゲル濾過を使用した精製後に詳細に特徴付けし、続いてESI-QTOF質量分析計を使用した分析した。結果を
図8に描く。
【0187】
ナノボディーGBP-R86Nが、主にそのグリコシル化された形態で生じた。我々は、この糖鎖バリアントが極めて効率的なグリコシル化を可能にさせることを示す。
【0188】
ナノボディーの機能性が保持されているかどうか検証するため、我々は、非修飾GBPナノボディーと、位置14、27、48および86での4つの選択されたグリコシル化バリアントとの両方の熱安定性およびGFP結合親和性を分析した。選択された糖鎖バリアントを、Pichia pastoris Kai3中、組み換えで産生した(Vervecken, N. et al (2007) Modification of the N-glycosylation pathway to produce homogeneous, human-like glycans using GlycoSwitch plasmids, in: J.M. Cregg (Ed.), Pichia Protocols、Humana Press, New York, pp. 119‐138を参照)。そのPichia株は、組み換えタンパク質上Man5GlcNAc2型N-グリカンを生成する。GBP-WTおよびそれらの糖鎖バリアントの融解曲線を、qPCR機においてSYPRO Orange染料を使用するサーマルシフトアッセイから得た(Huynh K & Partch CL in Current Protocols in Protein Sciences 79, 2015)。
【0189】
Man5GlcNAc2型N-グリカンが、位置14、27または48にて導入された場合、融解曲線の形状は変化する:それは、GBP-WTおよび糖鎖バリアントR86Nについて得られる2つの変性ピークの代わりに、たった1つの変性ピークしか示さない(
図12を参照)。しかしながら、熱変性が開始する温度はシフトしない。意外なことに、我々は、ナノボディー機能(抗原結合)が、4つの特定の領域中N-グリカンの存在によって損なわれないことを観察した:GFP結合親和性は、ナノモル濃度以下の(sub-nanomolar)範囲にある(
図13を参照)。Man5GlcNAc2型N-グリカンが位置48にて生じたときのみ、抗原親和性は穏やかに減少する(解離定数K
Dは増加する)が、これは大部分が、減少した結合速度(association rate)(k
on)に起因する(
図13を参照)。
【0190】
例4:アプローチの一般化
我々がこれらの知見を他のナノボディーに当てはめられるか評価するため、我々は、数種の他のナノボディーにN連結グリコシル化サインを導入した。ナノボディーNb41(これは、Claes, K. et al (2016) ACS Synth Biol. 5(10)においてNbCA4141と指定される)において、我々は、参照ナノボディー3K74中のK86NおよびGBPナノボディー中のR86Nに対応する部位にてN-グリコシル化シークオンを導入した。Nb41の配列は、配列番号17で表される。配列番号18はCDR1を表し、配列番号19はCDR2を表し、配列番号20はCDR3を表し、配列番号21はFR1を表し、配列番号22はFR2を表し、配列番号23はFR3を表し、および配列番号24はFR4を表す。
【0191】
ナノボディーF-VHH-4およびF-VHH-L66(Rossey, I. et al. (2017) Nat. Commun. 8, 14158)において、我々は、GBP中G27Nおよび/またはR86Nに対応する部位にてN-グリコシル化シークオンを導入し、よって1つまたは2つのN連結型グリコシル化サインのいずれかを担持するナノボディーが得られた。F-VHH-4およびF-VHH-L66の配列は夫々、配列番号25および配列番号26で表される。
【0192】
配列番号17:
QVQLQESGGGLVQPGGSLRLSCVASGSIFSINAMGWYRQAPGKQRELVAAISSGGRTNYADSVKGRFTISRDNAKNTVHLQMNSLKPEDTAVYYCNVGSWGFRSHSYLSGSSWGQGTQVTVSSHHHHHH(129アミノ酸)
3つのCDR領域に下線を付す。
【0193】
配列番号18(CDR1):GSIFSINA
配列番号19(CDR2):ISSGGRTN
配列番号20(CDR3):NVGSWGFRSHSYLSGS
配列番号21(FR1):QVQLQESGGGLVQPGGSLRLSCVAS
配列番号22(FR2):MGWYRQAPGKQRELVAA
配列番号23(FR3):YADSVKGRFTISRDNAKNTVHLQMNSLKPEDTAVYYC
配列番号24(FR4):SWGQGTQVTVSS
【0194】
配列番号25(F-VHH-4):
QVQLQESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLDYYYIGWFRQAPGKEREAVSCISGSSGSTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCATIRSSSWGGCVHYGMDYWGKGTQVTVSSGSHHHHHHHH(135アミノ酸)
配列番号26(F-VHH-L66):
QVQLQESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLDYYYIGWFRQAPGKEREGVSCISSSHGSTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCATVAVAHFRGCGVDGMDYWGKGTQVTVSSGSHHHHHHHH(135アミノ酸)
【0195】
図9は、ナノボディーNb41、F-VHH-4、およびF-VHH-L66と、ナノボディーGBPおよび3K74との配列アライメントを描く。
【0196】
野生型Nb41(いずれのN-グリコシル化サインもない)を、例3において概説されたのと同様に、Pichia WTにおいて組み換えで産生した。Nb41において、K86N突然変異は、GBP-R86N突然変異と同等である。Nb41-K86Nを、例3において概説されたのと同様に、Pichia WT、Pichia GSM5、およびPichia GlycoDeleteにおいて組み換えで産生した。発現の誘導後、すべての組み換え産生物の上清を回収し、PNGaseF処置またはモック処置し、クマシーブルー染色SDS-PAGEおよび/またはHisタグ特異的ウェスタンブロット分析を介してアッセイした。データを集積したものを
図10に示す。
【0197】
Nb41について、我々は、グリコシル化が、WTナノボディーには存在していなかった(期待されるとおり)一方、位置86(AHoナンバリング)でのグリコシル化サインの導入が、効率的なN-グリカン修飾を可能にさせたことを示す。
【0198】
野生型F-VHH-4およびF-VHH-L66(いずれのN-グリコシル化サインもない)、ならびにG27N突然変異および/またはK86N突然変異(夫々GBP中G27NおよびR86Nに対応する;AHoナンバリング)を担持するそれらのバリアントを、例3において概説されたのと同様に、Pichia WT、Pichia GSM5(Pichia Kai3株と同名)およびPichia GlycoDelete中、組み換えで産生した。発現誘導後、すべての組み換え産生の上清を回収し、クマシーブルー染色SDS-PAGE分析、Hisタグ特異的ウェスタンブロット分析、および質量分析(mass spectrometry analysis)を介してアッセイした。クマシーブルーおよびウェスタンブロットデータを
図23に示す。
【0199】
F-VHH-4およびF-VHH-L66について、我々は、グリコシル化が、WTナノボディーには存在していなかった(期待されるとおり)一方、位置27または86(AHoナンバリング)でのグリコシル化サインの導入が、効率的なN-グリカン修飾を可能にさせたことを見出した。同じ主鎖中の位置27でのおよび位置86でのN連結型グリコシル化サインの同時導入によって、両部位での効率的なN-グリカン修飾に繋がった。
【0200】
位置27および86(AHoナンバリング)でのグリコシル化効率を客観的に評価するため、我々は、Pichia pastoris GlycoSwitchM5中に産生されたVHH糖鎖バリアントのHisタグ特異的ウェスタンブロットに関し密度測定(densitometry)分析を実施した。F-VHH-4-G27Nの部位占有率が96%と決定され(
図23)、F-VHH-4-R86Nのそれが93%であり(
図23)、GBP-G27N-P30Tのそれが86%であり(
図7)、GBP-R86Nのそれが93%であった(
図5)。位置27および86にてN-グリコシル化部位をもつ他のすべてのナノボディーバリアントについて、蛍光の増分が上方のバンド(N-グリコシル化されたナノボディーに対応する)の過剰曝露を防止するのに十分なほど低く設定されたとしても、下方のバンド(グリコシル化されなかったナノボディーに対応する)は検出され得た。これは、少なくとも80%のN-グリコシル化を示唆する。
【0201】
異なる組み換えPichia pastorisバックグラウンドにおけるGBP、Nb41、F-VHH-4、およびF-VHH-L66ナノボディーを用いて得られたグリコシル化効率を集積したものを表1に要約する(また具体的にはGBP突然変異体について
図11も参照)。
【表2-1】
【表2-2】
【0202】
表1:N-グリコシル化ナノボディーバリアントの概観。Pichia株:WT=野生型、GSM5=GlycoSwitchM5(Pichia Kai3株の代替名)、GD=GlycoDelete。N-グリコシル化型:高(High)Man=高(high-)マンノースN-グリコシル化、Man5=Man5GlcNAc2、およびGlcNAc=単一GlcNAc残基。*Pichia GlycoDelete中に産生されたナノボディーGBP-R86Nについて、N-グリコシル化をESI-QTOF質量分析によって検証かつ定量化した。CB=クマシーブリリアントブルー(Coomassie Brilliant Blue)染色SDS-PAGE分析、WB=Hisタグ特異的ウェスタンブロット分析、MS=質量分析(Mass spectrometric analysis)。
【0203】
異なるPichiaバックグラウンドにおいて産生されたRSV特異的VHHであるF-VHH-L66およびF-VHH-4(WT、GSM5(GS Man5として
図14に示される)、およびGlycoDelete)を、RSV中和アッセイにおいて、それらの中和能力(neutralizing capacity)についてアッセイした。手短に:ベロ細胞を96ウェルプレート中15.000細胞/ウェルの密度にて播種し、37℃にて培養した。翌日、Optimem中4倍段階希釈の精製VHH(400ng/mlにて始める)を等体積のRSV A2(1,34PFU/μl)とともに混合し、30分間37℃にてインキュベートした。
【0204】
続いて、ベロ細胞をOptimemで1度洗浄し、Optimemを50μlのVHH-ウイルス混合物と置き換えた。細胞を37℃にて3hインキュベートした。3h後、50μlのDMEM+1.2%アビセル+1%FCSを細胞へ加え、細胞をさらに37℃にて3日間インキュベートした。最後に、細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定し、ポリクローナルヤギ抗RSV抗体で染色して、プラークを計数した。VHHのF-VHH-L66の結果を
図14に示す。
【0205】
我々の結果は、これらのVHH中のグリコシル化部位の導入が、RSVへのVHH結合およびRSVの中和を遮断しないことを示す。それにもかかわらず、存在するグリカン(単数または複数)(の型)の効果は識別され得る。グリカンのサイズは、VHHの中和能力と逆の相関関係があるようだが、大きな流体力学半径をもつグリカンは、より小さなグリカン(WTグリカン>Man5グリカン>GlycoDeleteグリカン)より多く中和に干渉することが示唆される。その上、これらのVHHについて、部位27(AHoナンバリング)でのグリカンは、部位86(AHoナンバリング)でのグリカンよりわずかに多く中和を妨害するように見える;両部位でのグリカンの存在は相加効果を有する。
【0206】
よって、我々は驚くべきことに、小さなGlycoDelete型グリカン(GlcNAc、LacNAc、およびシアリル-LacNAc)のVHH中の種々の位置での導入が、RSVウイルスを対象にするVHHについて本明細書に示されるとおり、VHHの効率の低減には繋がらないと結論付けられる。
【0207】
我々は、効率的なN-グリコシル化を可能にさせるISVD内の位置(ここでナノボディーに対して適用される)が、構造基準に基づき合理的に選択され得ること、これらの位置が、ISVD内に保存されていること、および我々の概念が、種々のナノボディーに適応され得ることを結論付けた。ISVDの機能を圧迫させずに効率的なN-グリカン産生に繋げるISVD配列中の具体的に好ましい位置は、2つの領域83~88および27~40(AHoナンバリング)である。
【0208】
例5:ISVDの属における効率的なN-グリカン導入のために同定された位置の一般化
222のVHHコード鎖の配列(PDB検索を、クエリー「VHH」またはナノボディーを用いて実行し、巨大分子名が「ナノボディー」、「nb」、「nab」、「vhh」もしくは「cab」のいずれかを含有する得られたPDB IDにつき1つの鎖を選択した;または供給源の種は、Camelus dromedarius、Lama glama、もしくはVicugna pacosである;または保存されているアミノ酸配列「VQL」が、最初の40アミノ酸残基にある)をRCSB Protein Data Bank(要するにPDB)から抽出し、PyMOL(PyMOL Molecular Graphics System, Version 1.3 Schroedinger, LLC.)を使用してアライメントした。これらのVHHの各々において、アミノ酸83と88(AHo)との間の領域、およびアミノ酸27と40(AHo)との間の領域は、2次構造のベータ鎖を連結するアミノ酸鎖を構成する。
【0209】
続いて、これらの保存されているリンカー領域の存在を、Antibody Variable Domain Database(ABVDDB)においてアライメントされたVHHコード配列のほとんど100%(1668のうち1667)において確認した。具体的な仮説に限定されずに、我々は、これらの選択された領域において、グリカン置換基が、抗原認識への干渉を最小限にするように、抗原結合領域から離れて突き出したものと推論する。我々は、これら2つの保存されている領域内に位置付けらる位置にて導入されたグリコシル化受容部位が、すべてのナノボディーにおいて効率的にN-グリコシル化されるであろうと予想される人工のN-グリカン部位の導入のために使用され得ると結論付ける。
【0210】
次のステップにおいて、我々は、アミノ酸83と88(AHo)との間の、およびアミノ酸27と40(AHo)との間の単一のどの位置でもN-x-Tシークオンを導入することによって(ただし、バリアントの各々において、N(Asn)が、シークオン中には存在するが、種々の位置(例として、82、83、84、85、85と86との間の人工的に挿入された配列、86、87、88、26、27、29、30、31、32、33、33と39との人工的に挿入された配列、39、または40)にて存在するように(
図15を参照))、GBPナノボディーバリアントをコードするいくつかの(a range of)発現プラスミドを生成した。
【0211】
具体的に言うと、GBPナノボディーアミノ酸配列(AHo-ナンバリング)について、位置28および34~38は存在しないことに留意されたい。これらすべてのナノボディーバリアントを、上に記載のとおり組み換えPichia pastoris Kai3株中で産生した-位置29および85にてアルギニンへ突然変異したアミノ酸をもつバリアント(F29N-P30A-V31TおよびA85N)は、Pichia pastorisにおいて効率的には形質転換せず、評価しなかった。続いて、すべての組み換えバリアントの上清を回収し、PNGaseF処置またはモック処置し、N-グリコシル化の存在について、クマシーブリリアントブルー染色SDS-PAGEおよび/またはHisタグ特異的ウェスタンブロット分析を介してアッセイした(
図16を参照)。
【0212】
N-グリカンの存在を、発現されたナノボディーバリアントの各々において確認することができた;しかしながら、N-グリカン付加(部位占有率)の効率は、N-グリコシル化シークオン導入のために選出された正確なアミノ酸位置に潜在的に応じる(表2を参照)。存在するグリカンが実際に(GlcNAc)
2Man
5であることを確認するため、野生型GBP、選択された各領域(領域27~40中のGBP-P30A-V31N-R33T、および領域83~88中のGBP-D84N-A85T)中の糖鎖バリアント、および最初の領域(GBP-33-39-longinsert)中に人工挿入物を含有する糖鎖バリアントの上清試料を、無傷のタンパク質質量分析によって分析した(
図16の右下)。各糖鎖バリアントについて、1216Da(GlcNAc)
2Man
5修飾の存在を示すピークが観察された。
【0213】
上の結果は、ナノボディーが、合理的に選出され保存されている領域(N-グリカンの存在が抗原認識およびタンパク質の折り畳みに影響を及ぼさない)において効果的にグリコシル化され得ることを示す。これらのデータは、グリカン媒介標的化および部位特異的グリカンをベースとした抱合ストラテジーのための道を開く。
【表3】
【0214】
表2:選択された領域内のN-グリコシル化GBPバリアントの概観。Pichia株GSM5=GlycoSwitchM5。Man5=Man5GlcNAc2。*Pichia GlycoDelete中に産生されたナノボディーGBP-R86Nについて、N-グリコシル化を、クマシーブリリアントブルー(CB)を用いるSDS-PAGEおよび抗HISウェスタンブロット(WB)検出によって定量化した。pKai61ベクターの起源は、Schoonooghe S et al (2009) BMC Biotechnol. 9, 70に記載されている。
【0215】
例6:グリカン特異的抱合方法の開発
先の例からのデータは、ISVD(ナノボディーによって例示される)が、合理的に選出され保存されている領域(グリカンの存在が抗原認識およびタンパク質の折り畳みに影響を及ぼさない)において効果的にグリコシル化され得ることを、説得力をもって示す。これらのデータは、ISVDのグリカン媒介標的化および部位特異的グリカンをベースとした抱合ストラテジーのための道を開く。以下の例において、我々は、グリカン特異的抱合方法の本願のため、人工的に改変されたN-グリコシル化部位(例3、4および5において概説されたとおり)にて単純かつ均一なN連結型グリカンをもつナノボディーを使用している。
【0216】
実際に、GlcNAcのみおよび/またはLacNAcのみおよび/またはシアリル-LacNAcのみを含むN-グリカンは、in vitroアプローチによって得られ得るか、あるいは、WO2010015722に記載されるとおりGlycoDelete技術を介して、またはWO2017005925に記載されるとおりGlycoDoubleDelete技術を介してin vivoで得られる得る。単純なN-グリカンは、多種多様の所望される成分-例として、PEG鎖、キレーター、毒性薬物等々へのカップリングのために使用され得るタンパク質上に生体直交型の柄を提供する。異なるグリカンをベースとした抱合化学を、市販のビオチン化PEGを使用して、評価/最適化する。基本的に、抱合のための広範な方法が2つ存在する:例7において例示されるとりの化学方法、および例8において例示されるとおりの化学と酵素とを組み合わせた抱合方法。
【0217】
例7:化学抱合ストラテジー
この例において、我々は、位置86(Ahoナンバリング)にて人工的に導入されたN-グリカンをもつナノボディーが、どのようにして、グリカン上にPEG-ビオチンで特異的に修飾され得るかを示す。ナノボディーを先ず、HEK293のGlycoDelete細胞(WO2010015722を参照)、HEK293のGlycoDoubledelete細胞(WO2017005925を参照)、Pichia-GlycoDelete細胞、またはガラクトシルトランスフェラーゼを過剰発現するPichia-GlycoDelete細胞において組み換えで発現させる。使用されるGlycoDelete方法に応じて、GlcNAc、LacNAcおよびシアリル-LacNAcからなる群から選択されるグリカンで修飾されたナノボディーが得られる。
【0218】
最初の抱合ストラテジーに従うと、グリカン中の近接ジオール(単数または複数)を、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)によって酸化させる。この化学の初期バージョンは、例として蛍光標識抗体を生成するため、数十年間使用されている。GlycoDelete技術を介して得られた糖鎖改変ナノボディーは、過ヨウ素酸酸化が純粋産物を生産するグリカンを担持する(野生型グリカンの状況とは対照的に)。LacNAc型グリカン(GlcNAc-Gal)は、ガラクトース残基中、酸化され得る単一の近接「cis」ジオールを含有する(C3およびC4環位置にて)。
【0219】
シアリル-LacNAc型グリカンは、ガラクトース残基中の近接cisジオールに加えて、末端シアル酸残基のグリセロール側鎖中に近接ジオールを含有するが、前記近接ジオールは過ヨウ素酸酸化を受けやすい。シアル酸中の近接ジオールは、過ヨウ素酸塩(periodate)によって、ガラクトースよりはるかに容易に酸化されるが、依然として産物均一性を保持しつつシアル酸酸化を好む穏やかな酸化条件の使用を可能にさせる。グリカン中に存在する近接ジオールの過ヨウ素酸酸化は、アミノオキシ含有分子と容易に反応することでオキシム(これは即時に水中で安定する)を形成し得る遊離アルデヒド基を創出する。
【0220】
代わりに、遊離アルデヒドは、ヒドラジン含有分子と反応することで安定なヒドラゾン連結を形成し得るか、または還元的アミノ化を介してアミン含有分子へ連結され得る。この様式で抱合されたLacNAcおよびシアリル-LacNAcグリカンは、タンパク質のアスパラギンへ直接連結された無傷のGlcNAc残基を保持するが、これはリソソーム中の抱合体分解性の観点から好ましい。LacNAc-およびシアリル-LacNAcをベースとした過ヨウ素酸酸化と、これに続くオキシムライゲーションとの図式概略図は、
図17(LacNAc)および
図18(シアリル-LacNAc)に説明されている。
【0221】
手短に、R86N突然変異を担持するGBPを、HEK293のGlycoDelete細胞中組み換えで産生して精製し、非グリコシル化されたタンパク質と、単一LacNAc鎖またはシアリル-LacNAc鎖のいずれかを担持するタンパク質との混合物が生産された。精製されたタンパク質を次いで、穏やかな過ヨウ素酸酸化、これに続き、ビオチン化されかつアミノオキシ修飾された短いPEG鎖へのオキシムライゲーションに供した。質量分析(Mass spec analysis)は、PEG鎖がシアリル-LacNAc担持GBPへ選択的に連結されたことを示した。
【0222】
例8:化学酵素抱合ストラテジー
この例においては、代替的抱合ストラテジーを適用する。グリカンの過ヨウ素酸酸化の代わりに、我々は、酵素ガラクトースオキシダーゼ(GAO)を使用して、関心のあるナノボディー上に人工的に導入されたLacNAcグリカン(例7において得られたとおり)中のGal残基のC6ヒドロキシル基を酸化させる。この酵素的酸化はまた、遊離アルデヒド基も創出するが、前記基は、例7に記載されるとおりオキシムライゲーション、ヒドラゾンライゲーション、または還元的アミノ化を介して、関心のある分子へ連結され得る(Park, A. et al., Endocrinology 154、2013)。
【0223】
GAOをベースとしたLacNAc酸化と、これに続くオキシムライゲーションとの図式概略図は、
図19に説明されている。同様のアプローチにおいて、突然変異形態のガラクトースオキシダーゼ(GAO-F2;Rannes, J.B. et al.(2011), J. Am. Chem. Soc., 133, 8436-8439を参照)を使用して、GlcNAcのC6ヒドロキシル基を酸化させ得る;関心のあるカーゴ(cargo)を次いで、GlcNAc残基へ直接連結させ得る。GAO-F2をベースとしたGlcNAc酸化と、これに続くオキシムライゲーションとの図式概略図は、
図20に説明されている。
【0224】
手短に、R86N突然変異を担持するGBPを、Pichia GlycoDelete細胞中またはガラクトシルトランスフェラーゼを共発現するPichia GlycoDelete細胞中組み換えで産生した。タンパク質を精製し、非グリコシル化されたタンパク質と単一GlcNAc残基を担持するタンパク質(Pichia-GlycoDelete)との混合物、または非グリコシル化されたタンパク質とGlcNAcもしくはLacNAcを担持するタンパク質(ガラクトシルトランスフェラーゼを共発現するPichia-GlycoDelete)との混合物が生産された。
【0225】
ガラクトシルトランスフェラーゼを共発現するPichia-GlycoDeleteに由来する精製タンパク質を次いで、GAOで酸化させて、ワンポット(one-pot)反応で、ビオチン化されかつアミノオキシ修飾された短いPEG鎖へ連結させた。質量分析は、PEG鎖がLacNAc担持GBPへ選択的に連結されたことを示した。Pichia-GlycoDeleteに由来する精製タンパク質をGAO-F2で酸化させて、ワンポット反応で、ビオチン化されかつアミノオキシ修飾された短いPEG鎖へ連結させた。質量分析は、PEG鎖がGlcNAc担持GBPへ選択的に連結されたことを示した。
【0226】
代替の化学-酵素ストラテジーにおいて、我々は、酵素hST6Gal1(Wu, Z.L., Carbohydrate Research 412, 2015)を使用して、アジド修飾形態のSia(AzSia)をLacNAcへ抱合させ得るか、または突然変異形態のヒトベータ-1,4-ガラクトシル/GalNAcトランスフェラーゼ(van Geel, R., Bioconjug. Chem. 26, 2015)を使用して、アジド修飾形態のGalNAc(GalNAz)を関心のある我々のナノボディー上に存在する単一GlcNAcのN-グリカンへ抱合させ得る。アジド官能基を介してナノボディー上に導入されたGalNAz/AzSiaを、クリック化学(例として、銅フリーのアジド-アルキンシクロ付加反応)を採用して、PEG鎖または関心のある別の分子で、均一におよび部位特異的に官能化させ得る。概略図は、
図21(GalNAz)および
図22(AzSia)に説明されている。
【0227】
アジド修飾されたGlcNAcグリカン、LacNAcグリカン、およびシアリル-LacNAcグリカンはまた、関心のあるタンパク質を産生するGlycoDelete細胞へ、アジド修飾された単糖類前駆体(GlcNAz、GalNAz、AzSia)を供給することによっても得られ得る;これは、これに続くクリック化学を介する部位特異的官能化を可能にさせる。
【0228】
手短に、R86N突然変異を担持するGBPを、Pichia GlycoDelete細胞中またはガラクトシルトランスフェラーゼを共発現するPichia GlycoDelete細胞中組み換えで産生した。タンパク質を精製し、非グリコシル化されたタンパク質と単一GlcNAc残基を担持するタンパク質(Pichia-GlycoDelete)との混合物、または非グリコシル化されたタンパク質とGlcNAcもしくはLacNAcを担持するタンパク質(ガラクトシルトランスフェラーゼを共発現するPichia-GlycoDelete)との混合物が生産された。
【0229】
ガラクトシルトランスフェラーゼを共発現するPichia-GlycoDeleteに由来する精製タンパク質を次いで、CMP-アジド-シアル酸と、AzSia残基をLacNAc鎖へ付加する組み換えhST6Gal1酵素とともにインキュベートし、続いて、ビオチン化されかつDBCO修飾された短いPEG鎖とのクリック反応に供した。質量分析は、PEG鎖がLacNAc担持GBPへ選択的に連結されたことを示した。Pichia-GlycoDeleteに由来する精製タンパク質を、UDP-GalNAzと、GalNAz残基を単一GlcNAcグリカンへ付加する突然変異形態のヒトベータ-1,4-ガラクトシル/GalNAcトランスフェラーゼ酵素とともにインキュベートし、続いて、ビオチン化されかつDBCO修飾された短いPEG鎖とのクリック反応に供した。質量分析は、PEG鎖がGlcNAc担持GBPへ選択的に連結されたことを示した。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【外国語明細書】