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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008525
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112161
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】西出 蒼
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 光
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB02
4C316FA01
4C316FA18
4C316FB12
4C316FB15
4C316FY08
4C316FY09
4C316FY10
(57)【要約】
【課題】 使用者が色覚異常者であっても装置の状態を把握しやすい眼科装置を提供する。
【解決手段】 眼科装置は、眼の検査または治療を行うための本体部と、第1色の可視光を発する第1発光素子と、第1色に対する色覚異常者において認識可能な第2色の可視光を発する第2発光素子と、を有する光源ユニットと、光源ユニットを制御することで装置の状態を報知する制御手段と、を備え、制御手段は、装置が第1状態である場合に、光源ユニットに第1色の可視光と第2色の可視光とを発光させることによって、第1状態に関する報知を実行する。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の検査または治療を行うための本体部と、
第1色の可視光を発する第1発光素子と、前記第1色に対する色覚異常者において認識可能な第2色の可視光を発する第2発光素子と、を有する光源ユニットと、
前記光源ユニットを制御することで装置の状態を報知する制御手段と、を備える眼科装置において、
前記制御手段は、装置が第1状態である場合に、前記光源ユニットに前記第1色の可視光と前記第2色の可視光とを発光させることによって、前記第1状態に関する報知を実行する眼科装置。
【請求項2】
前記光源ユニットは、前記第1色および前記第2色とのいずれとも異なる第3色の可視光を発光する第3発光素子を、更に有する請求項1記載の眼科装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1状態を含むそれぞれの状態の間で、前記第1色、前記第2色、および、前記第3色の可視光の発光条件を異ならせ、且つ、それぞれの状態において、前記第1色、前記第2色、および、前記第3色の可視光のうち2つ以上を発光させることによって、それぞれの状態に関する報知を実行する、請求項2記載の眼科装置。
【請求項4】
前記制御手段は、それぞれの状態において、前記第1色、前記第2色、および、前記第3色の可視光のすべてを発光させることで、それぞれの状態に関する報知を実行する、請求項3記載の眼科装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記発光条件として、前記第1色、前記第2色、および、前記第3色の間の可視光の光量比を、前記各状態の間で異ならせる、請求項3又は4記載の眼科装置。
【請求項6】
前記光源ユニットは、前記第1色、前記第2色、および、前記第3色の可視光の同時発光に基づいて白色光を照射可能であり、
前記制御手段は、装置が第1状態である場合に、前記光源ユニットに前記第1色の可視光と前記白色光とを交互に発光させることによって、前記第1状態に関する報知を実行する請求項2記載の眼科装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1色の可視光と前記第2色の可視光とを同時発光することで前記第1状態に関する報知を実行する請求項1又は2記載の眼科装置。
【請求項8】
前記眼科装置は、前記本体部を操作するための操作手段を備え、
前記光源ユニットは、前記操作手段を照明するために、操作手段の周囲に設けられていることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の眼科装置。
【請求項9】
前記眼科装置は、前記第1色に対する色覚異常者に対して報知を行う第1モードと、前記第1色に対する色覚異常者とは異なる色覚を持つ使用者に対して報知を行う第2モードと、のうち一方を選択するモード選択手段を備え、
前記制御手段は、前記モード選択手段によって前記第1モードが選択された場合における、前記第1状態に関する報知と、
前記モード選択手段によって前記第2モードが選択された場合における、前記第1状態に関する報知と、が互いに異なるように前記光源ユニットを制御することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の眼科装置。
【請求項10】
第1色の可視光を発する第1発光素子と、前記第1色に対する色覚異常者において認識可能な第2色の可視光を発する第2発光素子と、を有する固視灯と、を含む本体部と、
前記光源ユニットを制御することで装置の状態を報知する制御手段と、を備える眼科装置において、
前記制御手段は、装置が第1状態である場合に、前記固視灯に前記第1色の可視光と前記第2色の可視光とを発光させることによって、前記第1状態に関する報知を実行する眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を検査または治療する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
装置の状態を使用者に対して報知するための表示灯を備えた眼科装置が知られている。例えば、特許文献1には、発光時の色を変更可能な光源が、ジョイスティックの近傍に配置された装置が開示されている。特許文献1に開示された装置は、装置の状態に応じて、光源から発せられる光の色が変更される。よって、使用者は、光の色に基づいて装置の状態を把握できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020―162824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、使用者が色覚異常者であるケースは何ら想定されていなかった。このため、装置の状態を光の色によって報知する装置では、色覚異常者が装置の状態を適切に把握できないおそれがあった。
【0005】
本開示は、従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、使用者が色覚異常者であっても装置の状態を把握しやすい眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の第1態様に係る眼科装置は、眼の検査または治療を行うための本体部と、第1色の可視光を発する第1発光素子と、前記第1色に対する色覚異常者において認識可能な第2色の可視光を発する第2発光素子と、を有する光源ユニットと、前記光源ユニットを制御することで装置の状態を報知する制御手段と、を備える眼科装置において、前記制御手段は、装置が第1状態である場合に、前記光源ユニットに前記第1色の可視光と前記第2色の可視光とを発光させることによって、前記第1状態に関する報知を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、使用者が色覚異常者であっても装置の状態を把握しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例における眼科装置の外観を示す概略図である。
図2】光源ユニットを上方から見た図である。
図3】光源ユニットを側方から見た一部断面図である。
図4】本実施例における眼科装置に備えられる光学系の概略構成を示す図である。
図5】本実施例における眼科装置の制御系を説明するための図である。
図6】本実施例における、装置の状態と可視光の発光条件との対応関係を説明する図である。
図7】本実施例における眼科装置の動作を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[概要]
以下、第1の実施形態に係る眼科装置(例えば、眼科装置1)について説明する。眼科装置(例えば、眼科装置1)は、眼の検査または治療を行うための本体部(例えば、本体部10)を備える。眼科装置は、照明光を発する光源ユニット(例えば、光源ユニット50)を備える。眼科装置は、光源ユニットを制御する制御手段(例えば、制御部90)を備える。また、眼科装置は、本体部を操作するための操作手段(例えば、操作部8)を備えてもよい。
【0010】
<本体部>
例えば、本体部は、眼科装置の用途に応じて、眼の検査または治療を行う。例えば、眼科装置は、OCT(Optical Coherence Tomography)装置であってもよい。その場合、本体部は、OCT光学系(例えば、OCT光学系110)や、被検眼を観察するための光学系(例えば、観察光学系140)等を備えてもよい。もちろん眼科装置はOCT装置に限定されず、眼屈折力測定装置、角膜測定装置、角膜内皮細胞撮影装置、眼圧測定装置、眼軸長測定装置、眼底カメラ、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)装置、眼科用レーザ治療装置、白内障/硝子体手術装置、超音波式眼軸長測定装置、等であってもよい。もちろん、複数の装置が複合された装置であってもよい。
【0011】
<光源ユニット>
本実施形態において、光源ユニットは、装置の状態を外部に知らせるために利用される。光源ユニットは、使用者に対する照明と兼用されてもよい。例えば、光源ユニットは、使用者が眼科装置を操作するための操作部の周囲に配置されていてもよい。この場合、操作部が照明されることで、使用者は暗室でも操作を行いやすい。もちろん光源ユニットの用途はこれに限定されない。例えば、光源ユニットはパイロットランプであってもよい。例えば、光源ユニットは、使用者が制御手段に入力を行うためのスイッチといった入力手段と兼ねられてもよい。
【0012】
例えば、光源ユニットは、第1発光素子と第2発光素子とを備える。第1発光素子は、第1色の可視光を発する。第2発光素子は、第2色の可視光を発する。第1色と第2色とは、互いに異なる波長(色相)の色である。また、第2色は、第1色に対する色覚異常者において認識可能な色として定められる。
【0013】
更に、光源ユニットは、第3発光素子を備えていてもよい。第3発光素子は、第1色と、第2色とのいずれとも異なる第3色の可視光を発する。第3色は、第1色および第2色の両方に対する色覚異常者において認識可能な色であることが望ましい。
【0014】
なお、光源ユニットにおいて、各種の発光素子は、1つの光源として実装されていてもよいし、互いに独立した光源として実装されてもよい。具体例として、それぞれの発光素子がLED素子である場合では、発光色の異なるLED素子が1つのパッケージ内に実装されていてもよいし、別個のパッケージに実装されてもよい。第1,第2,第3発光素子が1つのパッケージ内に実装された光源として、いわゆるフルカラーLEDを利用することができる。フルカラーLEDは、3色の混合比(光量比)を変えることによって、発光色を多様に変化できるので、より多くの装置状態を報知するうえで適している。
【0015】
<制御手段>
本実施形態において、制御手段は、光源ユニットに設けられた各発光素子の発光条件を、装置の状態に応じて制御する。発光条件として、各発光素子の光量が制御されてもよい。換言すれば、各発光素子の間の光量比が制御されてもよい。また、各発光素子の発光タイミングが制御されてもよい。更に、また、その他の発光条件が制御されてもよい。
【0016】
本実施形態において、制御手段は、装置(眼科装置)が第1状態である場合に、光源ユニットに第1色の可視光と第2色の可視光とを発光させることによって、第1状態に関する報知を行ってもよい。ここで、第2色は、第1色に対する色覚異常者において認識可能であるので、使用者が第1色に対する色覚異常者であっても、第2光源の点灯状態に基づいて装置の状態を適切に把握できる。なお、第1状態は、例えば、待機中、撮影中、エラー等の、装置の状態のうち、いずれかであってもよい。
【0017】
また、第1状態である場合に発せられる第1色の可視光は、第2色に対する色覚異常者において認識可能な色であってもよい。これにより、装置が第1状態であることを使用者が認識できない可能性がいっそう低減される。
【0018】
第1状態である場合に、制御手段は、第1色の可視光と第2色の可視光とを同時に発光させてもよいし、交互に発光させてもよい。同時に発光させる場合は、使用者が第1色に対する色覚異常者である場合と、そうでない場合との間で、装置の状態を把握するまでにタイムラグが生じることを抑制できる。
【0019】
また、第1,第2,第3発光素子を備える場合、制御手段は、第1状態を含むそれぞれの装置の状態の間で、第1色の可視光、第2色の可視光、及び第3色の可視光の発光条件をそれぞれ異ならせ、且つ、それぞれの状態において、第1色の可視光、第2色の可視光、および第3色の可視光のうち2つ以上を発光させてもよい。これによって、それぞれの状態に関する報知が実行されてもよい。第1状態を含むそれぞれの状態の間で、第1色、第2色、および、第3色の可視光の発光条件が異なっており、且つ、それぞれの状態において、第1色、第2色、および、第3色の可視光のうち2つ以上が発光されることで、使用者の色覚に関わらず、それぞれの状態の違いを、光源ユニットからの照明光に基づいて使用者に適切に把握させやすくなる。なお、装置のそれぞれの状態において、第1色、第2色、および第3色の可視光のすべてを発光させることがより好ましい。第1色、第2色、および第3色の可視光のすべてが発光された場合は、いずれか2つだけを発光させる場合と比較して、色覚異常者に対してより装置の状態を確実に把握させやすい。
【0020】
第1,第2,第3発光素子を備える場合、例えば、制御手段は、発光条件として、第1色、第2色、および第3色の間の可視光の光量比を、装置のそれぞれの状態の間で異ならせてもよい。これによれば、制御手段は、色覚異常者に対して、装置の状態の違いを光源ユニットから出射される光の色の違いとして報知できる。
【0021】
また、一例として、第1色の可視光の光量を、装置の状態ごとに異ならせて、且つ第2色の可視光の光量を装置の状態ごとに異ならせ、さらに且つ、第3色の可視光の光量を装置の状態ごとに異ならせてもよい。この場合、使用者がどのような色覚異常であっても、認識できる可視光の発光条件に基づいて装置の状態を認識できる。このため、色覚異常を持つ使用者に対して、装置の状態の違いをより適切に報知できる。
【0022】
例えば、光源ユニットは、第1色、第2色、および、第3色の可視光の同時発光に基づいて白色光を照射可能であってもよい。この場合において、制御手段は、装置が第1状態である場合に、光源ユニットに第1色の可視光と白色光とを交互に発光させることによって、第1状態に関する報知を実行してもよい。これによれば、正常色覚者には、第1色で点滅しているように見える。一般に、使用者は白色光に意味を見出しにくいので、白色光の点滅は、装置の状態を把握する妨げとなりにくい。一方で、第1色に対する色覚異常者にとっては、第1色の点滅は把握しにくいものの、白色光の点滅に基づいて、装置の状態を把握し得る。なお、白色光は、正常色覚者が白色と認識できる範囲であればよく、数値によって厳密に定義されない。
[実施例]
本開示に係る第1実施例を図面に基づいて説明する。本実施例の眼科装置1は、観察系としてSLOを有するOCT装置である。
【0023】
<全体構成>
図1に示すように、本実施例の眼科装置1は、本体部10と、コンピュータ300とを有する。例えば、コンピュータ300は眼科装置1の本体部10の外部に設けられ、本体部10と接続されている。詳細は後述するが、眼科装置1は、本体部10に内蔵される制御部90とコンピュータ300とが連携して、装置動作が制御される。特に断りが無い限り、本実施例において、コンピュータ300はPCであるものとする。眼科装置1は、モニタ310として、汎用ディスプレイを有する。モニタ310への映像信号はコンピュータ300から出力される。また、コンピュータ300には、マウスやキーボード等によるPC側操作部330が接続される。
【0024】
<装置外観>
次に、図1に基づいて、装置の外観を説明する。例えば、本体部10は、基台20と、XYZ駆動部30と、顔支持部40と、本体側操作部96と、検眼部100と、光源ユニット50と、を少なくとも備える。基台20は、装置全体を支持する。XYZ駆動部30は、例えば、検眼部100を基台20に対して上下左右前後方向(3次元方向)に移動させる。
【0025】
顔支持部40は、例えば、顎台である。顔支持部40は、例えば、額当て41、顎受け42、および基部46などを備える。額当て41には被検者の額が当接される。顎受け42は、被検者の顎を支持する。顎受け42は、顎台駆動部43の駆動によって上下方向に移動されてもよい。基部46は、額当て41、顎受け42を支持する。顔支持部40は、顎受け42に顎が載っているか否かを検知する顎台センサ44を備えてもよい。例えば、顎台センサ44は、例えば、顎受け42が被検者の顎で下方向に押し込まれたことを検知する。顎台センサ44は、例えば、フォトセンサ、磁気センサ、圧力センサ、接触センサなどであってもよい。なお、顔支持部40は、図示無き回動機構によって基台20および検眼部100に対して回動できてもよい。これによって、被検者の顔の向きを変更できるようにしてもよい。
【0026】
本実施例では、本体側操作部96として、ジョイスティックが設けられている。本実施例では、アライメント状態を手動で調整する際にジョイスティックが操作される。また、図1図3に示すように、本体側操作部96であるジョイスティックには、例えば、撮影ボタン96a、上下動ダイアル96bなどが設けられる。
<光源ユニット>
光源ユニット50は、操作部96を照明する。図2,3に示すように、光源ユニット50は、例えば、8個の光源51a~51hと、拡散板52、基盤53を備える。光源51a~51hは、本体側操作部96の前後左右斜めの8方向に配置されている。ただし、光源ユニット50が備える光源の数および配置はこれに限定されない。光源51a~51hのそれぞれは、図3に示すように、基台20に固定された基盤53に配置される。本実施例において、光源51a~51hから照射された光が、拡散版52によって拡散され、光源ユニット50からの照明光として照射される。
【0027】
それぞれの光源51a~51hは、可視光を照射する。例えば、それぞれの光源51a~51hから照射される可視光の色は変更可能である。本実施例において、それぞれの光源51a~51hは、いわゆるフルカラーLEDである。図3に示すように、光源51a~51hの各々は、赤色の可視光を発する赤色発光素子55aと、緑色の可視光を発する緑色発光素子55bと、青色の可視光を発する青色発光素子55cと、が1つにパッケージされている。後述の制御部90によって、各発光素子55a,55b,55cの光量が、それぞれ制御される。各発光素子55a,55b,55cの光量比が変更されることで、それぞれの光源51a~51hが出射する可視光の色が制御される。また、所定の光量比に制御することで、光源51a~51hは白色光を照射することができる。
【0028】
拡散板52は、光源51a~51hの上方に設けられ、光源51a~51hからの光を拡散させながら、基台20の外部に透過させる。拡散板52は、例えば、リング状であり、本体側操作部96の周りを囲む。光源51a~51hから出射された光は、拡散板52によって拡散され、本体側操作部96を下から照明する。これによって、暗い部屋であっても本体側操作部96の位置が分かり易くなる。図2に示すように、光源51a~51hは、操作部の前後左右斜めの8方向に配置されている。ただし、光源51a~51hの配置方向はこれに限らない。なお、光源ユニット50は、拡散板52の代わりに透明板を備えてもよい。
【0029】
<検眼部100>
検眼部100は、被検眼の検査(撮影または測定)を行う。検眼部100は、例えば、被検眼の眼屈折力、角膜曲率、または眼圧等を測定する光学系等を備えてもよい。また、検眼部100は、被検眼の前眼部、または眼底等を撮影するための光学系等を備えてもよい。本実施例では、一例として、被検眼の断層画像を撮影する光学系を備える場合について説明する。
【0030】
図4は、装置の光学系の概略構成を示している。図4に示すように、本実施例の検眼部100は、OCT光学系110、観察光学系140、固視標投影部150などを備える。
【0031】
OCT光学系110は、例えば、被検眼Eに測定光を照射し、その反射光と測定光とによって取得されたOCT信号を取得する。例えば、OCT光学系110は、OCT信号を取得することによって、被検眼Eの断層像を撮影する。
【0032】
OCT光学系110は、いわゆる光断層干渉計(OCT:Optical coherence tomography)の光学系である。OCT光学系110は、測定光源111から出射された光をカップラー(光分割器)112によって測定光(試料光)と参照光に分割する。そして、OCT光学系110は、測定光学系120によって測定光を眼Eの眼底Efに導く。測定光学系120は、例えば、走査部(例えば、光スキャナ)121を備える。走査部121は、例えば、被検眼上の撮像位置を変更するため、被検眼上における測定光の走査位置を変更する。また、OCT光学系110は、参照光を参照光学系130に導く。その後、被検眼Eによって反射された測定光と,参照光との合成による干渉光を検出器113に受光させる。
【0033】
検出器113は、測定光と参照光との干渉状態を検出する。フーリエドメインOCTの場合では、干渉光のスペクトル強度が検出器113によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって所定範囲における深さプロファイル(Aスキャン信号)が取得される。例えば、Spectral-domain OCT(SD-OCT)、Swept-source OCT(SS-OCT)が挙げられる。また、Time-domain OCT(TD-OCT)であってもよい。
【0034】
光源111から出射された光は、カップラー112によって測定光束と参照光束に分割される。そして、測定光束は、光ファイバーを通過した後、空気中へ出射される。その光束は、測定光学系120の光学部材を介して眼底Efに集光される。そして、眼底Efで反射された光は、同様の光路を経て光ファイバーに戻される。
【0035】
走査部121は、眼底上でXY方向(横断方向)に測定光を走査させる。走査部121は、瞳孔と略共役な位置に配置される。例えば、走査部121は、2つのガルバノミラー等を有するガルバノスキャナであり、その反射角度が駆動機構122によって任意に調整される。走査部121としては、光を偏向させる構成であればよい。例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられる。
【0036】
参照光学系130は、眼底Efでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系130は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系130は、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー)によって形成され、カップラー112からの光を反射光学系により反射することにより再度カップラー112に戻し、検出器113に導く。他の例としては、参照光学系130は、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成され、カップラー112からの光を戻さず透過させることにより検出器113へと導く。
【0037】
参照光学系130は、参照光路中の光学部材を移動させることにより、測定光と参照光との光路長差を変更する構成を有する。例えば、参照ミラーが光軸方向に移動される。光路長差を変更するための構成は、測定光学系120の測定光路中に配置されてもよい。
【0038】
観察光学系140は、被検眼の観察画像を撮影する。観察画像は、例えば、眼底Efの正面画像であってもよいし、前眼部画像であってもよい。本実施例の観察光学系140は、いわゆる走査型レーザ検眼鏡(SLO)である。例えば、観察光学系140は、例えば、SLO光源141、フォーカシングレンズ143、走査部144、リレーレンズ145等を備える。SLO光源141は、高コヒーレントな光を発する光源であり、例えば、λ=780nmのレーザダイオード光源が用いられる。フォーカシングレンズ143は、被検眼の屈折誤差に合わせて光軸方向に移動可能である。走査部144は、駆動部144aの駆動により眼底上でXY方向に測定光を高速で走査させることが可能なガルバノミラーとポリゴンミラーとの組み合せからなる。リレーレンズ145は、走査部144によって反射した測定光を対物レンズ101までリレーする。
【0039】
SLO光源141とフォーカシングレンズ143との間には、ビームスプリッタ142が配置されている。ビームスプリッタ142の反射方向には、集光レンズ146と、眼底に共役な位置に置かれる共焦点開口147と、受光素子148が設けられている。
【0040】
SLO光源141から発せられたレーザ光(測定光)は、ビームスプリッタ142を透過した後、フォーカシングレンズ143を介して、走査部144に達し、ガルバノミラー及びポリゴンミラー等の駆動により反射方向が変えられる。そして、走査部144で反射されたレーザ光は、リレーレンズ145および対物レンズ101を介して、眼底に集光される。
【0041】
そして、眼底で反射したレーザ光は、対物レンズ101、リレーレンズ145、走査部144、フォーカシングレンズ143を経て、ビームスプリッタ142にて反射される。その後、集光レンズ146にて集光された後、共焦点開口147を介して、受光素子148によって検出される。そして、受光素子148にて検出された受光信号は後述する制御部90へと入力される。制御部90は受光素子148にて得られた受光信号に基づいて被検眼眼底の正面画像を取得する。取得された正面画像はHDD350に記憶される。なお、SLO画像の取得は、走査部144に設けられたガルバノミラーによるレーザ光の縦方向の走査(副走査)とポリゴンミラーによるレーザ光の横方向の走査(主走査)によって行われる。
【0042】
なお、観察光学系140の構成としては、いわゆる眼底カメラタイプの構成であってもよい。また、OCT光学系110は、観察光学系140として兼用されてもよい。すなわち、正面画像は、二次元的に得られた断層画像を形成するデータを用いて取得されるようにしてもよい(例えば、三次元断層画像の深さ方向への積算画像、XY各位置でのスペクトルデータの積算値等)。
【0043】
固視標投影部150は、眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。固視標投影部150は、例えば、眼Eに固視標を呈示する。固視標投影部150は、例えば、可視光を発する可視光源を有する。固視標投影部150は、内部固視灯タイプであってもよいし、外部固視灯タイプであってもよい。
【0044】
顔撮影部160は、例えば、被検眼の顔を撮影する。顔撮影部160は、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔を撮影する。
【0045】
<制御系>
次に、眼科装置1の制御系を説明する。本実施例では、図5に示すように、コンピュータ300と、装置本体10の制御部90と、によって眼科装置1の制御系が形成される。コンピュータ300と装置本体10の制御部90とは相互に接続されている。
【0046】
<コンピュータ>
コンピュータ300は、OCT信号の処理、画像処理、および、それらの処理結果に基づく撮影制御等の処理コストが比較的高い処理を行う。また、コンピュータ300は、モニタ310、PC側操作部330、および、HDD350等への入出力を担っている。後述の撮影ソフトを構成するプログラムは、例えば、HDD350に記憶されている。また、HDD350は、撮影結果を格納するストレージを兼用してもよい。
【0047】
コンピュータ300は、装置本体10に実行させるタスク毎に、制御部90に対して信号(コマンド)を入力する。制御部90は装置本体10を制御して、コマンドに応じたタスクを装置本体10に実行させる。コマンドは、コンピュータ側の制御プログラムに従って自動的に送信される他、PC側操作部330からの入力に基づいて送信される。本実施例では、例えば、後述の、接続(動作開始)、オプティマイズ、および、キャプチャー、等のタスクと対応するコマンドが、装置本体10の制御部90に入力される。
【0048】
<装置本体の制御部>
装置本体10の制御部90は、CPU91、ROM92、RAM93等を有する。ROM92には、各コマンドと対応するタスクについての制御プログラム等が記憶されている。また、装置本体10のROM92には、装置の状態に応じて光源ユニット50を制御するためのプログラム、および、装置の状態と光源ユニット50における可視光の発光条件(発光素子55a~55cの発光条件)との対応関係を規定したテーブル等が記憶されている。制御部90は、テーブルにおいて予め規定された発光条件で、各発光素子55a~55cが制御される。例えば、制御部90は装置の状態ごとに、状態と対応する照明光の色及び光源51a~51hの点灯パターンをROM92から読み込み、赤色発光素子55a、緑色発光素子55b、青色発光素子55cそれぞれの光量を制御する。
【0049】
<装置の状態と発光条件との対応関係>
図6は、本実施例における、装置の状態と可視光の光源ユニット50における発光条件との対応関係を規定したテーブルを示している。本実施例では、発光素子55a~55cの光量と点灯パターンとの2種類の条件を組み合わせて、装置の状態毎の発光条件が定められている。
【0050】
ところで、仮に、装置の状態が波長域の狭い単色光のみによって報知されてしまうと、使用者が色覚異常者である場合には色の判別が難しいために、装置からの光に基づいて装置の状態を認識できないおそれがある。日本人男性の約5%、白人男性の8~10%が何らかの色覚異常であると言われており、その多くは、赤緑色覚異常(1型色覚、2型色覚)によって占められている。赤緑色覚異常(1型色覚、2型色覚)では、赤色と緑色の判別が難しい。このため、仮に、装置のある状態が赤色の単色光のみを用いて報知され、別の状態が緑色の単色光のみを用いて報知されていると、2つの状態が両者を混同されてしまったり、少なくとも何れかの状態で発光していることが認識されなかったりするおそれがある。また、ごく少数ではあるが、使用者が、青黄色覚異常(3型色覚)である場合は、青と緑との判別がつきにくく、報知が、青の単色光のみで行われる場合と、緑の単色光のみで行われる場合と、の間で同様の問題が生じ得る。
【0051】
これに対し、本実施形態では、いずれの装置の状態を報知する際にも、発光素子55a~55cをすべて発光させる。加えて、赤、青、緑の3色の発光条件を、装置の状態毎に異ならせる。つまり、装置が取り得る複数の状態間で、発光素子55a~55cの光量と点灯パターンとの2種類の条件の組み合わせが互いに異なっている。
【0052】
図6のテーブルによれば、<待機中>、<PC接続中>、<スキャン中>、<オプティマイズ中>、<撮影中>、<エラー>、および、<ワーニング>の7種類の状態で、光源ユニット50を介して装置の状態が報知される。<>で囲まれた状態の詳細は、図7の説明において後述する。
【0053】
図6のテーブルでは、装置の状態毎に、発光素子55a~55cの光量と点灯パターンとの2種類の条件が定められている。図6のテーブルにおいて、それぞれの発光素子55a,55b,55cからの光の光量比は、(R,G,B)という形式で表記されている。
【0054】
図6のテーブルによれば、装置の状態が<待機中>及び<PC接続中>である場合において、赤、青、緑の3色の可視光の光量比は(R1,G1,B1)である。例えば、装置の状態が<スキャン中>、<オプティマイズ中>及び<撮影中>である場合において、それぞれの可視光の光量比は(R2,G2,B2)である。例えば、装置の状態が<エラー>である場合において、それぞれの可視光の光量比は(R3,G3,B3)である。例えば、装置の状態が<ワーニング>である場合において、それぞれの可視光の光量比は(R4,G4,B4)である。
【0055】
このように、装置の幾つかの状態の間で、赤、青、緑の3色の可視光の光量比を異ならせて、発光素子55a~55cをすべて発光させている。これにより、使用者がいずれかの色弁別が困難であっても、状態間の違いを光源ユニット50から照射される光の色の違いとして、使用者に認識させることができる。
【0056】
なお、それぞれの装置の状態では、図6のテーブルにおける「照明光の色」で、発光素子55a,55b,55cの同時発光に基づいて光源ユニット50から光が照射される。このとき、赤、青、緑の3色覚が揃った正常色覚者によって光源ユニット50から発せられた光が「照明光の色」として認識される範囲で、赤、青、緑の3色の可視光が混合される(すなわち、光量比(R、G、B)が定められている)。
【0057】
例えば、<待機中>及び<PC接続中>では、「照明光の色:緑」と正常色覚者に認識される範囲で、光量比(R1,G1,B1)が定められている。例えば、R1およびB1に対して、G1が比視感度ベースで十分に大きくなるように設定されていてもよい。これによれば、通常の色覚を有する使用者に、照明光の色が緑色であると認識させる場合に、照明光が黄色や水色といった別の色に誤認されることを抑制できる。
【0058】
同様に、<スキャン中>、<オプティマイズ中>及び<撮影中>では、「照明光の色:青」と正常色覚者に認識される範囲で光量比(R2,G2,B2)が定められており、<エラー>では、「照明光の色:赤」と正常色覚者に認識される範囲で光量比(R3,G3,B4)が定められており、<ワーニング>では、「照明光の色:黄」と正常色覚者に認識される範囲で光量比(R4,G4,B4)が定められている。このときの光量比は、例えば、正常色覚者に対する官能検査に基づいて実験的に定められてもよい。
【0059】
また、例えば、装置の状態を表すために、光源51a~51hの点灯パターンが制御部90によって制御される。図6のテーブルによれば、<待機中>、<スキャン中>、<エラー>、および、<ワーニング>の4つの状態における「点灯パターン」は、「点灯」である。つまり、本実施例では、装置の状態が別の状態に変化するまでの間、それぞれの状態ごとに定められた光量比で、光源51a~51hが継続的に発光される。残りの状態における「点灯パターン」は、「点滅」である。「点滅」では、それぞれの状態ごとの「照明光の色」で間隔を空けて繰り返し光源ユニット50から光が発光される。
【0060】
例えば、<待機中>と<PC接続中>とは、「照明光の色:緑」であり、それぞれの状態の間で可視光の光量比が同一であるため、色の違いは無いが、点灯パターンの違いによって、2つの状態を使用者が判別できる。
【0061】
同様に、<オプティマイズ中>、<撮影中>および、<スキャン中>は、いずれも「照明光の色:青」であり、それぞれの状態の間で可視光の光量比が同一であるが、<オプティマイズ中>、および、<撮影中>である場合の「点灯パターン」は「点滅」であるのに対し、<スキャン中>は「点灯」であるので、<スキャン中>と他の2つの状態とを使用者は判別できる。
【0062】
更に、本実施例では、<オプティマイズ中>と<撮影中>との間では、互いに異なる態様で「点滅」が実行される。すなわち、<オプティマイズ中>において、光源51a~51hは同じタイミングで点滅する。その一方で、<撮影中>において、光源51a~51hはそれぞれ異なるタイミングで点滅する。一例として、<撮影中>においては、光源51aから51hまで時計回りに順次点灯していく。このように、点灯パターンが異なることで、使用者は<オプティマイズ中>と、<撮影中>とを判別できる。
【0063】
以上の通り、装置が取り得る複数の状態の間で、発光素子55a~55cの光量と点灯パターンとの2種類の条件の組み合わせが互いに異なっている。これにより、上記のような色覚異常者に対しても、それぞれの状態の違いを、光源ユニット50から照射される光の色および点灯パターンの違いとして、使用者に認識させることができる。詳細には、使用者が赤緑色覚異常(1型色覚、2型色覚)である場合、前述の通り、赤色と緑色の判別が困難であること、或いは、赤色または緑色の単色光の認識が困難であることが想定される。これに対し、本実施例において、各状態で光源ユニット50から照射される光には、赤緑色覚異常(1型色覚、2型色覚)において弁別可能な青色発光素子55cからの青色光の成分が含まれている。よって、使用者が赤緑色覚異常であっても、少なくとも光源ユニット50から光が照射されていることを認識できる。更には、状態毎の光量比(R,G,B)の違い、および、点灯パターンの違いから、報知される状態の違いを、色と点灯パターンの組合せの違いとして認識できると考えられる。同様に、使用者が青黄色覚異常(3型色覚)である場合、前述の通り、青色と緑色の判別が困難であること、或いは、青色の単色光の認識が困難であることが想定される。これに対し、本実施例において、各状態で光源ユニット50から照射される光には、青黄色覚異常(3型色覚)において弁別可能な赤色発光素子55aからの赤色光の成分が含まれている。その結果、同様に、使用者が青黄色覚異常であっても、少なくとも光源ユニット50から光が照射されていることを認識でき、報知される状態の違いを認識できると考えられる。
【0064】
さらにまた、「点灯パターン」が「点滅」となる状態(<PC接続中><オプティマイズ中>と<撮影中>)では、図6のテーブルに示す「照明光の色」と白色とが交互に点灯される。本実施例において、白色の光は、それぞれの発光素子55a,55b,55cからの光(赤色光、緑色光、青色光)のいずれも含むため、使用者が色覚異常者である場合でも、認識されやすい。
【0065】
例えば、装置の状態が<PC接続中>である場合において、照明光は、緑色と、白色とが交互に切り換えられる。これにより、使用者が色覚異常者である場合でも、白色光に含まれる、認識できる色の可視光の点滅が認識されることで、適切に装置の状態が報知される。また、使用者が通常の色覚を有する場合であっても、白色と緑色とが交互に切り換えられている場合は、緑色で点滅していることが認識されやすい。よって適切に装置の状態が報知される。
【0066】
同様に、装置の状態が<オプティマイズ中>及び<撮影中>である場合も、照明光の色が、青色と、白色と、で交互に切り替えられることで、使用者に光源51a~51hの点灯パターンが認識されやすく、よって適切に使用者に装置の状態が報知される。
【0067】
[動作]
以上のような構成を備える眼科装置1の動作例を、図7のフローチャート図を用いて説明する。なお、本実施例においてはOCT光学系110を用いて被検眼のOCT画像を取得する場合を例に説明する。
【0068】
<S101:待機中>
本実施例において、<待機中>とは、本体部10に電源が入れられ、本体部10の初期化処理が完了した後に、コンピュータ300との接続を待機している状態である。初期化処理では、例えば、OCT光学系110に含まれる各種の光学素子が、初期位置へと変位される。
【0069】
まず、使用者が本体部10の電源を入れる。電源が入ると、制御部90は、光源ユニット50の光源51a~51hを点灯する。この場合、前述のように、「照明光の色:緑」に対応する光量比(R1,G1,B1)となるように、且つ、「照明パターン:点灯」で発光素子55a,55b,55cを発光させる。これにより、<待機中>となっていることを使用者が確認できることで、使用者は、本体部10とコンピュータ300との接続作業に着手できる。
【0070】
<S102:PC接続中>
使用者は、コンピュータ300側にも電源を入れる。電源投入後、コンピュータ300では、撮影ソフトが起動される。使用者は、モニタ310を介して、撮影ソフトが起動され、コンピュータ300側の撮影準備が完了したことを確認する。その後、使用者がコンピュータ300を操作することで、接続を開始する指示(動作開始の指示)がコンピュータ300から装置本体10側の制御部90に対して出力される。制御部90は、<待機中>の状態で、接続を開始する指示(動作開始の指示)を受け付けることによって、制御部90は本体部10とコンピュータ300との接続を開始する。
【0071】
接続が開始されてから完了するまでの装置の状態を、<PC接続中>と称する。<PC接続中>の間、制御部90は前述のように、照明光の色を、緑色と、白色とを交互に切り替えることで点滅させる。<PC接続中>では、撮影準備が完了していないから、<PC接続中>が報知されることで、使用者は無用な操作を控えることができる。
【0072】
<S103:スキャン中>
制御部90とコンピュータ300との接続が完了することによって、検眼部100の光学系、および、駆動部30を駆動させるための指示を、本体部10側の制御部90が受付可能になる。また、制御部90は、走査部121を制御してスキャンを開始する。これにより、OCT画像がリアルタイムで取得される。本実施例において、この状態を<スキャン中>と称する。制御部90に対して、オプティマイズの開始信号、又は、キャプチャー信号が入力された場合は、<スキャン中>から他の装置の状態に移行する。よって、<スキャン中>は、OCT光学系110の駆動制御に関する指示を受け付ける状態と言い換えることができる。<スキャン中>であることが報知されることで、使用者はオプティマイズや、キャプチャーの操作を入力するきっかけを得ることができる。
【0073】
このとき、使用者は、顔支持部40に顔が支持されるように被検者を誘導し、更に、被検眼と検眼部100とのアライメントを行ってもよい。以下にアライメント方法の一例を説明する。例えば、制御部90はXYZ駆動部30を制御し、被検眼Eと検眼部100とのアライメントを行う。例えば、制御部90は、顔撮影部160及び観察光学系140によって取得された観察画像に基づいて、被検眼の前眼部に対してアライメントを行う。なお、アライメントの方法については、特開2013-179978号公報に記載の方法を参照できる。もちろん、使用者が制御部90の代わりにアライメントを行ってもよい。その場合、例えば、使用者は本体側操作部96を操作することで、被検眼と検眼部100とのアライメントを調整してもよい。また、例えば、制御部90は、リアルタイムで取得されたOCT画像に基づいて、アライメントを調整してもよい。例えば、走査部121の動作は、検眼部100と被検眼の前眼部とのアライメントが行われた後に開始されてもよい。
【0074】
<S104:オプティマイズ中>
制御部90にオプティマイズを開始する信号が入力されると、完了するまでの間、<オプティマイズ中>の状態となる。
【0075】
本実施例において、使用者がコンピュータ300を操作することで、制御部90にオプティマイズを開始する信号が入力される。ここでは、OCT光学系110における撮影条件の最適化制御を、オプティマイズと称する。具体例として、測定光学系と参照光学系との光路長差調整、フォーカス調整、ポラライザ調整等が挙げられる。なお、<オプティマイズ中>の間も、OCT画像がリアルタイムで取得されていてもよく、この場合は、スキャンによってリアルタイムに取得されるOCT画像等の感度又は解像度に基づいて最適化制御が実行されてもよい。最適化制御が完了すると、装置の状態は<スキャン中>に戻る。
【0076】
装置の状態が<オプティマイズ中>である間、制御部90は前述のように、照明光の色を、青色と、白色とを交互に切り替えることで点滅させる。これにより、装置の状態が<オプティマイズ中>だと使用者に報知され、使用者は不適切なタイミングでのキャプチャー操作等を控えることができる。
【0077】
<S105:撮影中>
<スキャン中>の状態で、キャプチャー信号(レリーズ信号)が入力されることで、静止画としてOCT画像が撮影(キャプチャー)される。撮影が開始されてから完了するまでの状態を、<撮影中>と称する。<撮影中>における走査部121の走査は、前述の<スキャン中>における走査とは異なる条件で行われる。例えば、予め定められた複数のスキャンライン(又は2次元走査範囲)に関するOCT画像が取得されてもよい。また、例えば、走査部121は、<スキャン中>における走査より細かく走査を行う。これによれば、前述の<スキャン中>においてリアルタイムに撮影していた被検眼のOCT画像よりも、高画質な画像を得ることができる。例えば、キャプチャー信号に基づいて取得されたOCT画像は、コンピュータ300へ転送され、HDD350に記憶される。
【0078】
例えば、装置の状態が<撮影中>の場合、制御部90は、前述の通り、光源51a~51hから発される光の色を、所定の順序(例えば、時計回り)で青色と白色とで切換える。これにより、装置の状態が<撮影中>だと使用者に報知され、使用者は被検者の状態に注意を払うことができる。
【0079】
<S106:エラー>
本体部10が起動してから復帰困難な異常が検知された場合に、<エラー>の状態となる。例えば、例えば、ハードウェアの破損の結果として、<エラー>に移行される。<エラー>に移行すると、それまで行われていた本体部10の動作が中止され、眼科装置1による検査は終了される。そのまま装置の動作が継続されることで、更なる破損等が生じることが抑制できる。<エラー>状態が報知されることで、使用者は、眼科装置1を修理に出すことができる。例えば、装置の状態が<エラー>に移行する条件が、予めROM92に記憶されていてもよい。
【0080】
装置の状態が<エラー>である間、制御部90は、前述の図6に示したように、光源51a~51hから出射される、それぞれの可視光の光量比が(R3,G3,B3)となるように制御する。
【0081】
<S107:ワーニング>
非推奨の装置設定および装置状態で、装置が動作している場合に、<ワーニング>の状態となる。<ワーニング>に移行した場合、それまで行われていた本体部10の動作は中断され、眼科装置1の動作は停止した状態となる。例えば、<ワーニング>に移行する原因となった異常が解消された場合、本体部10の動作は再開され、装置の状態は、<ワーニング>に移行する前へ戻る。例えば、<ワーニング>に移行する条件が、予めROM92に記憶されていてもよい。一例として、HDD350の空き容量の不足によって撮影画像が保存できない場合、又は前眼部を撮影するためのアダプタを検眼部100に取り付ける際に、正常に取り付けられていない場合、等に装置の状態は<ワーニング>に移行してもよい。
【0082】
これにより、不適切な装置設定および装置状態で撮影が行われてしまうことが抑制される。
【0083】
装置の状態が<ワーニング>である間、制御部90は、前述の図6に示したように、光源51a~51hから出射される、それぞれの可視光の光量比が(R4,G4,B4)となるように制御する。
【0084】
以上の通り、本実施例では、装置の状態が別の状態へと移行される際に、発光素子55a,55b,55cの光量比(R,G,B)か、点灯パターンの少なくとも一方の変更を必ず伴っている。各状態では発光素子55a,55b,55cの全てが点灯されているので、使用者が色覚異常者であっても装置の状態の変化をより確実に把握させることができる。また、それぞれの状態の間で、発光素子55a,55b,55cの光量比(R,G,B)と点灯パターンとの組合せが互いに異なっているので、使用者が色覚異常者であっても各タイミングでの装置の状態を一意的に把握しやすい。
【0085】
[変容例]
例えば、発光条件は、それぞれの可視光の光量比や、光源51a~51hの点灯パターンに限定されない。例えば、発光条件は、光源ユニット50から可視光が照射される方向等の他の条件であってもよい。
【0086】
また、上記の実施例で示した装置の状態は一例であり、上記の装置の状態とは異なる状態が、照明光の色又は光源51a~51hの点灯パターンによって使用者に報知されてもよい。一例として、制御部90は、本体部10が起動された際に、検眼部100の位置や、顎受け42の高さ等を所定の高さに調整する初期化動作を行ってもよい。その場合、制御部90は、初期化動作が行われている間、それぞれの発光素子の発光条件(例えば、それぞれの可視光の光量比や、光源の点灯パターン等)を、使用者に、他の装置の状態と判別できるように制御してもよい。このように、制御部90は、上記の実施例に記載された以外の装置の状態を報知する場合であっても、装置の状態ごとに、光源ユニットから照射される可視光の発光条件を異ならせることで、適切に装置の状態を報知できる。
【0087】
また、光源ユニット50に備えられる発光素子が発する可視光の色は、赤色、緑色、及び青色に限定されない。例えば、紫色、水色、黄色等の色の可視光を発する発光素子が備えられていてもよい。
【0088】
また、上記の実施例では各装置の状態を報知するために3色の可視光全てが発光される場合を説明したが、これに限定されず、少なくとも2色の可視光が発光されればよい。
【0089】
また、上記の実施例では、光源51a~51hが点滅する場合に、特定の色の可視光と、白色光とが交互に切り替えられる場合を説明したが、特定の色と切り換えられるのは必ずしも白色光でなくてもよい。例えば、特定の色と、色覚異常者が認識できる色とが、交互に切り換えられることで点滅してもよい。
【0090】
また、眼科装置は、第1色に対する色覚異常者に対して報知を行う第1モードと、第1色に対する色覚異常者とは異なる色覚を持つ使用者に対して報知を行う第2モードと、のうち一方を選択するモード選択手段を備えてもよい。例えば、モード選択手段は、制御部90であってもよく、その場合、外部(例えば、コンピュータ300)からの入力信号に基づいてモードを選択してもよい。例えば、モード選択手段は、装置にスイッチとして取り付けられてもよい。例えば、制御手段は、モード選択手段によって第1モードが選択された場合における、第1状態に関する報知と、モード選択手段によって第2モードが選択された場合における、第1状態に関する報知と、が互いに異なるように光源ユニットを制御してもよい。
【0091】
また、固視標投影部150に備えられた図示なき固視灯から照射される可視光の色についても、光源ユニット50から照射される照明光と同様に、第1の色の可視光と、第1の色に対する色覚異常者において認識可能な第2の色の可視光とを発光させてもよい。これによれば、被検者が色覚異常者である場合でも、固視灯が点灯していることを認識しやすいため、良好に固視をさせることができる。なお、本実施例において、被検者は、眼科装置を使用する「使用者」の一例であるとする。
【符号の説明】
【0092】
10 眼科装置
50 光源ユニット
51 光源
55a 赤色発光素子
55b 緑色発光素子
55c 青色発光素子
90 制御部
100 検眼部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7