IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2023-85289肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法
<>
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図1
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図2
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図3
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図4
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図5A
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図5B
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図5C
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図5D
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図5E
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図5F
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図5G
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図6
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図7
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図8
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図9
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図10
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図11
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図12
  • -肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085289
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】肝臓オルガノイド疾患モデルおよびその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/077 20100101AFI20230613BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20230613BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230613BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230613BHJP
【FI】
C12N5/077
C12N1/00 B
C12Q1/02
C12N1/00 G
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023036651
(22)【出願日】2023-03-09
(62)【分割の表示】P 2019522226の分割
【原出願日】2017-11-03
(31)【優先権主張番号】62/517,414
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/417,371
(32)【優先日】2016-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.NONIDET
(71)【出願人】
【識別番号】500469235
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル メディカル センター
(71)【出願人】
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】武部 貴則
(72)【発明者】
【氏名】大内 梨江
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】脂肪毒性オルガノイドモデルを作製し使用する方法を提供する。
【解決手段】特定の態様では、方法は肝臓オルガノイドを遊離脂肪酸(FFA)組成物と接触させるステップを含み得る。一態様において、FFA組成物は、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓オルガノイドを遊離脂肪酸(FFA)組成物と接触させるステップを含み、前記FFA組成物がオレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、またはそれらの組み合わせ、好ましくはオレイン酸を含む、脂肪毒性オルガノイドモデルの作製方法。
【請求項2】
前記脂肪毒性オルガノイドモデルが脂肪肝疾患のモデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪毒性オルガノイドモデルが脂肪性肝炎のモデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脂肪毒性オルガノイドモデルが肝硬変モデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脂肪毒性オルガノイドモデルが、非経口栄養関連肝疾患(PNALD)のモデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪毒性オルガノイドモデルがNAFLDのモデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記脂肪毒性オルガノイドモデルが、細胞骨格フィラメント組織崩壊、ROS増加、ミトコンドリア膨化、トリグリセリド蓄積、線維症、肝細胞バルーニング、IL6分泌、脂肪症、炎症、バルーニングおよびマロリー体様(Mallory’s body-like)、組織硬化、細胞死、およびそれらの組み合わせを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
NAFLDおよび/または胆汁うっ滞を含む、肝疾患の治療のための薬物をスクリーニングする方法であって、候補薬物を請求項1に記載の脂肪毒性オルガノイドモデルと接触させるステップを含む方法。
【請求項9】
前記栄養補助食品/TPNを請求項1に記載の脂肪毒性オルガノイドモデルと接触させるステップを含む、栄養補助食品/TPNの有効性をアッセイする方法。
【請求項10】
脂肪肝疾患の三次元(3D)肝臓オルガノイドモデルであって、前記オルガノイドが、脂肪症、炎症、バルーニングおよびマロリー体、ROS蓄積およびミトコンドリア過負荷、線維症および組織硬化、ならびに細胞死を特徴とする、オルガノイドモデル。
【請求項11】
薬物誘発性肝毒性および炎症/線維症の三次元(3D)肝臓オルガノイドモデル。
【請求項12】
非経口栄養関連肝疾患(PNALD)の三次元(3D)肝臓オルガノイドモデル。
【請求項13】
前記モデルが、炎症性細胞、例えばT細胞または他の炎症性分泌タンパク質を含まない、請求項1~12のいずれかに記載の肝臓オルガノイドモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年11月4日に出願された米国仮特許出願第62/471,371号、および2016年6月9日に出願された第62/517,414号の優先権および利益を主張するものであり、これらの各内容は全ての目的のために参照によりその全てが本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
不可逆的な上皮臓器のリモデリングは、世界中の死と病気の主な要因であり、ヘルスケアシステムに毎年何十億ドルもの費用がかかる(Hynds and Giangreco,2013)。上皮のリモデリングの疾患には、肺癌および胃腸癌、ならびに肝硬変、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および炎症性腸疾患などの慢性疾患が含まれる(Hynds and Giangreco,2013)。残念なことに、主に動物で行われているほとんどの上皮器官研究はこれらの病気のための新しい治療法を生み出すことができず、そして死亡率は容認できないほど高いままである。これは、製薬業界で膨大な数の化合物ライブラリーの有効性を試験するための予測的ヒトシステムの欠如によるものであり、臨床的に適切な治療法開発に向けてヒトの炎症および線維症をモデル化するための高忠実度システムを開発する根本的な課題を強いている。
【0003】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、致命的な肝障害を発症する可能性を高めるため、先進国で克服すべき主要な課題の1つであるが、今のところ効果的な治療法はない。同様に、医原性の非経口栄養関連肝疾患(PNALD)は、非経口栄養から生じる障害であり、現在有効な治療法はない。脂肪性肝炎および/または脂肪滴の蓄積および膀胱骨格フィラメント組織崩壊、脂肪症、および肝細胞膨化などの肝疾患の臨床病理学的特徴を有するモデル、ならびにこれらおよび他の肝障害または病状に対処するために使用することができるものが必要とされている。患者の幹細胞を用いた疾患モデルの有望にもかかわらず、現在のアプローチは、単細胞、単遺伝子性、および比較的単純な病状へのそれらの適用において限定され、上皮臓器線維症などのより一般的かつ複雑な疾患病状を捉えられない。
【0004】
ヒトの肝臓は、脂質代謝、アンモニウムおよび胆汁産生、凝固、ならびに外因性化合物の解毒など、生命に不可欠な多くの代謝機能を提供する重要な臓器である。人工多能性幹細胞(iPSC)技術を使用して、患者の肝反応のインビトロ再構成は、再生療法、創薬、および薬物毒性研究を含む多数の有望な用途により、製薬業界にとって魅力的である。この目的のために、現在、従来のインビトロアプローチは、肝細胞を生成するために二次元(2-D)および3-D分化プラットフォームを研究している。しかしながら、報告された方法のほとんどは細胞を主に標的上皮細胞型に分化させ、線維化促進性および/または炎症性細胞型などの必須の支持成分を完全に欠いている。あるいは、出願人らは、上皮系列と支持系列を混合することによる共培養ベースのアプローチを提案したが、これらのアッセイは非常に可変的であり、上皮細胞培地(ECM)およびそれらを同時に維持することができる培地を選択することの困難性などの多くの人為的な変化によってしばしば混乱させられる。したがって、支持系統を疾患モデル化およびさらなるスクリーニング適用のために共同開発する、新しくて頑強なアッセイシステムの確立の必要性がある。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示されているのは、脂肪毒性オルガノイドモデルを作製し使用する方法である。特定の態様では、方法は肝臓オルガノイドを遊離脂肪酸(FFA)組成物と接触させるステップを含み得る。一態様において、FFA組成物は、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
当業者は、以下に記載される図面が例示目的のみのためであることを理解するだろう。図面は、決して本教示の範囲を限定することを意図しない。
【0007】
特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開の謄本は、請求および必要な料金の支払いにより、官庁によって提供されるであろう。
【0008】
図1】ヒトiPSC-肝臓オルガノイドにおける前線維化系統と炎症性系統の同時分化(Co-differentiation) A.レチノイン酸(RA)ベースの肝臓オルガノイド分化方法および20日目の肝臓オルガノイドの明視野像の概略図。 スケールバー、100μm。B.4日間のRAの存在下および非存在下での培養後20日目のMatrigel中の肝臓オルガノイドの明視野像。C.4日間のRAの存在下(黒色バー)および非存在下(灰色のバー)での培養後20日目にオルガノイド数を手動で測定した。D.4日間のRAの存在下(黒色バー)および非存在下(灰色のバー)での培養後20日目にオルガノイドの直径を、Image Jによって認識させおよび測定した。E.4日間のRAあり(黒色バー)およびなし(灰色バー)でMatrigel中での肝臓オルガノイドの22~25日間培養後24時間で収集した培養上清から、アルブミン産生を測定した。F.4日間のRAの存在下および非存在下で培養後25日目に、内部管腔構造を有するオルガノイドを手動で計数した。赤と灰色のバーは、それぞれ内部管腔あり(HLO)/なし(スフェロイド)のオルガノイドの割合を示す。G.胆汁輸送活性は、培養培地中で、肝細胞のエステラーゼ加水分解後にフルオレセイン(緑色)に変わり、蛍光の流れを追跡する、フルオレセインジアセテート(FD)によってモニターした。結果は平均値±標準偏差で表し、n=3である。Epcam、CD166、およびCD68陽性集団の割合をフローサイトメトリーによって決定した。結果は平均値±標準偏差で表し、n=2~3である。H.単細胞RNA配列決定ヒトiPSC、ヒトiPSC由来胚体内胚葉、前腸スフェロイド、HLO、ヒト成人肝組織、およびヒト胎児肝組織によって発現される肝細胞、星状細胞、クッパー細胞、および内皮関連遺伝子についてのFPKM(log2)値。I.Epcam、CD166、CD68、およびF4/80陽性集団の割合をフローサイトメトリーによって決定した。結果は平均値±標準偏差で表し、n=3である。J.アルブミン、CD68、ビメンチン、GFAPおよびEpcamについての25日目のHLOの免疫蛍光(IF)染色。白い矢印は、CD68、GFAP、およびビメンチンについての陽性の細胞の局在を示している。結果は平均値±標準偏差で表し、n=3である。K.食細胞活性を、食作用を反映するpHrodoインジケーターを用いて細胞内pHをモニターすることによって分析した(赤)。蛍光発現は共焦点顕微鏡下で捕獲した。結果は平均値±標準偏差で表し、n=6である。
図2】脂肪酸処理による脂肪性肝炎オルガノイド(sHLO)の生成 A.脂肪性肝炎HLO(sHLO)の生成方法の概略図 B.脂肪滴(緑色)、膜(赤色)、核(青色)の生細胞イメージング)画像は、10~20枚のZスタック画像を重ね合わせて採用した。用量依存的に、脂肪滴蓄積の増加ならびに脂肪滴および細胞の拡大が観察された。C.各オルガノイドサイズによって正規化された代表的な総脂質体積。バーは総脂質体積の平均を示す。脂肪滴は、0(黒)、200μM OA(赤)、400μM OA(緑)、および800μM OA(青)に応じて用量依存的に増加した。D.HLO中のトリグリセリドの定量化。HLOを1つのMatrigel液滴から単離し、オレイン酸(800μM)の存在下(青色バー)または非存在下(黒色バー)でHCM培地に分け、そして3日間培養した。E.オレイン酸(800μM)の存在下または非存在下で培養し、3日間培養した20~30のHLOを含むウェルから得た培養上清を用いたIL-6のELISA測定。最終値は各ウェル中のオルガノイドの数によって正規化した。未処理(黒色バー)と比較した場合、800μM OA処理(青色バー)においてIL-6は2.2倍放出された。F.炎症誘発性サイトカインTNF-アルファおよびIL-8の遺伝子発現。それらは18Sによって正規化された。TNF-アルファおよびIL-8遺伝子発現は両方とも、未処理(黒色バー)と比較して、200μM OA(赤色バー)および800μM OA(青色バー)においてアップレギュレートされた。G.10~20個のHLOを、0、400、800μMのOAを含むHCM培地中で3日間培養した。培養上清を各ウェルから回収し、それらの上清との膜貫通を使用することによってTHP-1遊走を測定した。遊走した細胞を計数し、各ウェル中の正確な数のオルガノイドによって正規化した。H.25日目のHLOのトリクローム染色で、HLO(黒色バー)、sHLO(赤色バー)およびcHLO(青色バー)集団におけるトリクローム染色されたHLOの割合結果は平均±標準偏差で表し、n=8~20のオルガノイドである。I.25日目のHLOのEpcamおよびビメンチンについてのIF染色で、HLO(黒色バー)、sHLO(赤いバー)およびcHLO(青色バー)集団におけるEpcamおよびビメンチン陽性HLOの割合。結果は平均±標準偏差で表し、n=8~20オルガノイドである。J.20~30個のHLOを、オレイン酸(800μM)の存在下(青色バー)または非存在下で5日間培養した。これらの上清を用いてP3NPをELISAにより測定した。最終値は、各ウェル内の正確な数のオルガノイドによって正規化した。P3NPは、未処理(黒色バー)と比較した場合、800μM OA処理(青色バー)において2.8倍増加した。
図3】AFMによって測定した脂肪性肝炎HLOの硬変転移A.AFMによってHLOの硬化を測定するための概略図。各単一HLO(25×25平方μmに14×14マトリックス)の上部領域をAFMカンチレバーで走査し、これは、HLOのトポグラフィー的および機械的情報の空間的マッピングを提供することができる。スケールバー、100μm。B.単一HLOの計算されたヤング率(HLOの硬化;E、kPa)の代表的ヒストグラムはガウス様分布を示し、そのピーク値および幅は0(黒)、200(赤)、400(緑)および800(青)μM OAに応じて用量依存的に増加した。C.ヤング率(HLOの硬化)を7~12個のオルガノイドから決定し、箱ひげ図を伴うドットプロットによってまとめた。中央値の増加は、用量依存的に0(黒)、200(赤)、400(緑)および800(青)μM OAで観察された。
図4】cHLOの硬さは、ウォルマン病の臨床表現型を要約している。A.健康人(317D6)、NAFLD患者(NAFLD150、NAFLD77、およびNAFLD27)、およびウォルマン病患者(WD90、WD92、およびWD91)を含むいくつかのiPSC系統から確立されたHLOおよびcHLOの明視野像。B.いくつかのiPSC系統に由来した単一のHLOおよびcLOの平均のヤング率(HLOの硬化:Pa)。
図5A】iPSC-sHLOを使用した脂肪症のヒト表現型変異のモデリング A.肝臓TG含有量の増加に関与するPNPLA3、GCKR、およびTM6SF2の代表的な対立遺伝子機能。
図5B】B.3つのリスク対立遺伝子の全多遺伝子性スコアリング(total polygenic scoring)に基づく公的に利用可能な2504細胞株のパーセント分布を示す円グラフ:0.6<x(緑色領域)、0.3<x≦0.6(黄色領域)、x<=0.3(茶色領域)。
図5C】C.この表は、さらなる研究において割り当てられた多遺伝子性スコアを含むドナーの特徴を要約する。
図5D】D.3つの対立遺伝子の3つの群の全多遺伝子性スコアリングにおける脂肪滴(緑色)および核(青色)の生細胞イメージング:0.6<x、0.3<x<=0.6、x<=0.3。画像は、10~20枚のZスタック画像を重ね合わせて採用した。
図5E】E.3つの対立遺伝子の3つの群の全多遺伝子性スコアリングの各オルガノイドサイズによって正規化された代表的な総脂質体積:0.6<x、0.3<x<=0.6、x<=0.3。赤と紺のバーは、それぞれ800μM OAと200μM OAで処理されたsHLOを示す。
図5F】F.3つの対立遺伝子の3つの群の全多遺伝子性スコアリングにおける炎症誘発性サイトカインの代表的な遺伝子発現:0.6<x(黒いバー)、0.3<x<0.6(赤いバー)、x<=0.3(青いバー)。
図5G】G.3つの対立遺伝子の3つの群の全多遺伝子性スコアリングにおける単一cLOの平均のヤング率(HLOの硬化:Pa):0.6<x(黒点)、0.3<x<=0.6(赤点)、x<=0.3(青点)H.OCA応答
図6】THP-1の食細胞活性
図7】800μMのOA、PA、LAおよびSAの脂質蓄積比較。
図8】400および800μMのOAによるTHP-1の実際の遊走細胞数
図9】A.E-cad-mrubyオルガノイド、HepG2、LX-2、およびTHP-1からのE-cad陽性および陰性ソート済み再構成スフェロイドの写真。B.炎症誘発性サイトカインTNF-アルファおよびIL-8の遺伝子発現。C.P3NPのELISA測定。
図10】肝臓オルガノイドのROS産生に対するレスベラトロールの効果がないこと。
図11】BODIPY陽性細胞(脂質)の割合をフローサイトメトリーで測定した。結果は平均値±標準偏差を表し、n=5である。
図12】400μMイントラリピッドの存在下および非存在下におけるオルガノイド中の脂質蓄積
図13】未処理培養、800μMのOA単独培養、および800μMのOAと40ng/mlのFGF19培養における肝臓オルガノイドの明視野像。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特に明記しない限り、用語は当業者による従来の使用法に従って理解されるべきである。
【0010】
「約」もしくは「およそ」という用語は、当業者による決定に従って、例えば、測定システムの制限の、その値がどのように測定され、または、決定されるかに依存する、特定の値に対して許容できる誤差範囲内にあることを意味する。例えば、「約」は、当該技術分野における実務に従って、1以上の標準偏差内であることを意味し得る。あるいは、「約」は、与えられた値の20%まで、または10%まで、または5%まで、または1%までの範囲であることを意味し得る。あるいは、特に生物系または生物学的プロセスに関して、この用語は、ある値の10倍以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内であることを意味し得る。特定の値が本出願および特許請求の範囲に記載されている場合、特に明記しない限り、特定の値に対する許容可能な誤差範囲内を意味する「約」という用語を想定すべきである。
【0011】
本明細書中で使用されるとき、用語「全能性(totipotent)幹細胞」(全能性(omnipotent)幹細胞としても知られる)は、胚性細胞型および胚体外細胞型に分化することのできる幹細胞である。そのような細胞は完全で生存可能な生物を構築することができる。これらの細胞は卵細胞と精子細胞の融合から産生される。受精卵の最初の数回の分裂によって産生された細胞も全能性である。
【0012】
本明細書で使用されるとき、用語「多能性幹細胞(PSC)」は、体のほぼ全ての細胞型、すなわち、内胚葉(胃内胃壁、消化管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、尿生殖器)、および外胚葉(表皮組織および神経系))を含む3つの胚葉(胚上皮)のいずれかに由来する細胞に分化できる任意の細胞を包含する。PSCは、着床前の胚盤胞の内細胞塊細胞の子孫であり得るか、または特定の遺伝子の発現を強制することによって、成体体細胞などの非多能性細胞の誘導により得ることができる。多能性幹細胞は、任意の適切な供給源に由来し得る。多能性幹細胞の供給源の例には、ヒト、げっ歯類、ブタ、およびウシを含む哺乳動物の供給源が含まれる。
【0013】
本明細書で使用されるとき、用語「人工多能性幹細胞(iPSC)」は、一般にiPS細胞とも略され、特定の遺伝子の「強制的な」発現を誘導することによって、成体体細胞などの通常は非多能性細胞から人工的に誘導される多能性幹細胞の一種を指す。hiPSCはヒトiPSCを指す。
【0014】
本明細書中で使用されるとき、用語「胚性幹細胞(ESC)」はまた一般にES細胞とも略され、多能性であり、かつ初期胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する細胞を指す。本発明の目的のために、用語「ESC」は、胚性生殖細胞も場合により包含するように広く使用される。
【0015】
本明細書中で使用されるとき、用語「前駆細胞」は、1つ以上の前駆細胞がそれ自体を再生する能力または1つ以上の特殊化細胞型に分化する能力を獲得することになる、本明細書に記載の方法において使用され得る任意の細胞を包含する。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、多能性であるか、または多能性になる能力を有する。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、多能性を獲得するために外部因子(例えば増殖因子)の処理に供される。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、全能性(totipotentまたはomnipotent)幹細胞;多能性幹細胞(誘導型または非誘導型);多分化能性幹細胞;オリゴ分化能性幹細胞および単分化能性幹細胞であり得る。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、胚、幼児、子供、または成人由来であり得る。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、多能性が遺伝子操作またはタンパク質/ペプチド処置を介して付与されるような処置を受ける体細胞であり得る。
【0016】
胚性細胞由来の多能性幹細胞
いくつかの実施形態では、1つのステップは、多能性であるかまたは多能性になるように誘導され得る幹細胞を得ることである。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は胚性幹細胞に由来し、また、この胚性幹細胞は哺乳動物初期胚の全能性細胞に由来し、インビトロで無限の未分化増殖が可能である。胚性幹細胞は、初期段階の胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する多能性幹細胞である。胚盤胞から胚性幹細胞を誘導するための方法は当技術分野において周知である。ヒト胚性幹細胞H9(H9-hESC)は、本明細書に記載されている例示的な実施形態において使用されるが、本明細書に記載されている方法およびシステムは任意の幹細胞に適用可能であることは当業者には理解されよう。
【0017】
本発明に従う実施形態において使用され得るさらなる幹細胞は、National Stem Cell Bank(NSCB)、Human Embryonic Stem Cell Research Center at the University of California,San Francisco(UCSF);WISC cell Bank at the Wi Cell Research Institute;the University of Wisconsin Stem Cell and Regenerative Medicine Center(UW-SCRMC);Novocell,Inc.(San Diego、Calif.);Cellartis AB(Goteborg、Sweden);ES Cell International Pte Ltd(Singapore);Technion at the Israel Institute of Technology(Haifa、Israel);ならびにPrinceton Universityおよびthe University of Pennsylvaniaが保有するthe Stem Cell Databaseによって提供されるものか、それらが保有するデータベースに記載されているものを含むが、これらに限定されない。本発明に従う実施形態において使用され得る例示的な胚性幹細胞は、SA01(SA001);SA02(SA002);ES01(HES-1);ES02(HES-2);ES03(HES-3);ES04(HES-4);ES05(HES-5);ES06(HES-6);BG01(BGN-01);BG02(BGN-02);BG03(BGN-03);TE03(13);TE04(14);TE06(16);UC01(HSF1);UC06(HSF6);WA01(H1);WA07(H7);WA09(H9);WA13(H13);WA14(H14)を含むが、これらに限定されない。
【0018】
胚性幹細胞についてのさらなる詳細は、例えば、Thomson et al.,1998,"Embryonic Stem Cell Lines Derived from Human Blastocysts",Science 282 (5391):1145-1147;Andrews et al.,2005,"Embryonic stem(ES)cells and embryonal carcinoma(EC)cells:opposite sides of the same coin",Biochem Soc Trans 33:1526-1530;Martin 1980,"Teratocarcinomas and mammalian embryogenesis",Science 209(4458):768-776;Evans and Kaufman,1981,"Establishment in culture of pluripotent cells from mouse embryos",Nature 292(5819):154-156;Klimanskaya et al.,2005,"Human embryonic stem cells derived without feeder cells",Lancet 365(9471):1636-1641において見出すことができ、それらの各記載は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
人工多能性幹細胞(iPSC)
いくつかの実施形態では、iPSCは、成体線維芽細胞などの非多能性細胞への特定の幹細胞関連遺伝子のトランスフェクションによって誘導される。トランスフェクションは典型的には、レトロウイルスのようなウイルスベクターを通して達成される。トランスフェクトされた遺伝子はマスター転写調節因子Oct-3/4(Pouf51)およびSox2を含むが、他の遺伝子が誘導の効率を高めることが示唆されている。3~4週間後、少数のトランスフェクトされた細胞が多能性幹細胞と形態学的および生化学的に類似するようになり、通常は形態学的選択、倍加時間、またはレポーター遺伝子および抗生物質選択を通じて単離される。本明細書中で使用されるとき、iPSCには、第一世代iPSC、マウスにおける第二世代iPSC、およびヒト人工多能性幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、レトロウイルス系を用いて、4つの中心遺伝子:Oct3/4、Sox2、Klf4、およびc-Mycを用いて、ヒト線維芽細胞を多能性幹細胞に形質転換する。別の実施形態では、レンチウイルス系を用いて体細胞をOCT4、SOX2、NANOG、およびLIN28で形質転換する。発現がiPSCにおいて誘導される遺伝子には、Oct-3/4(例えば、Pou5fl);Sox遺伝子ファミリーの特定のメンバー(例えば、Sox1、Sox2、Sox3、およびSox15);Klfファミリーの特定のメンバー(例えば、Klf1、Klf2、Klf4、およびKlf5)、Mycファミリーの特定のメンバー(例えば、C-myc、L-myc、およびN-myc)、Nanog、およびLIN28が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
いくつかの実施形態では、iPSCを作製するために非ウイルス系技術が使用される。いくつかの実施形態では、アデノウイルスを使用して、必要な4つの遺伝子をマウスの皮膚および肝臓細胞のDNAに輸送し、その結果、胚性幹細胞と同一の細胞を得ることができる。アデノウイルスはそれ自身の遺伝子のいずれも標的宿主に組み込まないので、腫瘍を作り出す危険性が排除される。いくつかの実施形態では、リプログラミングは、非常に低い効率ではあるが、ウイルストランスフェクション系を全く用いることなく、プラスミドを介して達成することができる。他の実施形態では、タンパク質の直接送達を使用してiPSCを作製し、したがってウイルスまたは遺伝子改変の必要性を排除する。いくつかの実施形態では、マウスiPSC細胞の作製は、類似の方法論を使用して可能であり、ポリアルギニンアンカーを介して細胞内に導かれる特定のタンパク質による細胞の反復処理は、多能性を誘導するのに十分であった。いくつかの実施形態では、多能性誘導遺伝子の発現はまた、低酸素条件下で体細胞をFGF2で処理することによっても増加させることができる。
【0021】
胚性幹細胞に関するさらなる詳細は、Kaji et al.,2009,"Virus free induction of pluripotency and subsequent excision of reprogramming factors",Nature 458:771-775;Woltjen et al.,2009,"piggyBac transposition reprograms fibroblasts to induced pluripotent stem cells",Nature 458:766-770;Okita et al.,2008,"Generation of Mouse Induced Pluripotent Stem Cells Without Viral Vectors",Science 322(5903):949-953;Stadtfeld et al.,2008,"Induced Pluripotent Stem Cells Generated without Viral Integration",Science 322(5903):945-949;およびZhou et al.,2009,"Generation of Induced Pluripotent Stem Cells Using Recombinant Proteins",Cell Stem Cell 4(5):381-384において見出すことができ、それらの各記載は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
いくつかの実施形態では、例示的なiPS細胞株には、iPS-DF19-9;iPS-DF19-9;iPS-DF4-3;iPS-DF6-9;iPS(包皮);iPS(IMR90);およびiPS(IMR90)が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
DE発生に関連するシグナル伝達経路の機能に関するさらなる詳細は、例えば、ZornおよびWells,2009,"Vertebrate endoderm development and organ formation",Annu Rev Cell Dev Biol 25:221-251;Dessimoz et al.,2006,"FGF signaling is necessary for establishing gut tube domains along the anterior-posterior axis in vivo",Mech Dev 123:42-55;McLin et al.,2007,"Repression of Wnt/β-catenin signaling in the anterior endoderm is essential for liver and pancreas development.Development",134:2207-2217;WellsおよびMelton,2000,Development 127:1563-1572;de Santa Barbara et al.,2003,"Development and differentiation of the intestinal epithelium",Cell Mol Life Sci 60(7):1322-1332において見出すことができ、それらの各記載は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
多能性細胞(例えば、iPSCまたはESC)から胚体内胚葉を作製するための任意の方法が、本明細書に記載の方法に適用可能である。例示的な方法は、例えば、US97/19068B2(Wells et al.),"Methods and systems for converting precursor cells into intestinal tissues through directed differentiation",およびUS2017/0240866A1(Wells et al.),"Methods and systems for converting precursor cells into gastric tissues through directed differentiation"に記載されている。いくつかの実施形態では、多能性細胞は桑実胚に由来し得る。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は幹細胞であり得る。これらの方法で使用される幹細胞は、胚性幹細胞を含み得るが、これに限定されない。胚性幹細胞は、胚の内部細胞塊または胚の生殖巣堤に由来し得る。胚性幹細胞または生殖細胞は、ヒトを含む種々の哺乳動物種を含むがこれらに限定されない種々の動物種に由来し得る。いくつかの実施形態において、ヒト胚性幹細胞は胚体内胚葉を産生するために使用される。いくつかの実施形態において、ヒト胚性生殖細胞は、胚体内胚葉を産生するために使用される。いくつかの実施形態では、iPSCは胚体内胚葉を産生するために使用される。本発明において使用することができるDE細胞を取得または作製するためのさらなる方法としては、米国特許第.7,510,876号(D’Amour et al.);米国特許第7,326,572号(Fisk et al.);Kubo1 et al.,2004,"Development of definitive endoderm from embryonic stem cells in culture",Development 131:1651-1662;D’Amour et al.,2005,"Efficient differentiation of human embryonic stem cells to definitive endoderm",Nature Biotechnology 23:1534-1541;およびAng et al.,1993,"The formation and maintenance of the definitive endoderm lineage in the mouse:involvement of HNF3/forkhead proteins",Development 119:1301-1315に記載されたものを含むが、これらに限定されない。
【0025】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、致命的な肝障害を発症する可能性を高めるために先進国で克服すべき主要な課題の1つであるが、今のところ効果的な治療法はない。同様に、医原性の親栄養関連肝疾患(PNALD)は、現在効果的な治療法がない疾患である。脂肪性肝炎および/または脂肪滴の蓄積および膀胱骨格フィラメント組織崩壊、脂肪症、および肝細胞膨化などの肝疾患の臨床病理学的特徴を有するモデルが必要とされている。患者の幹細胞を用いた疾患モデルの有望にもかかわらず、現在のアプローチは、単細胞、単遺伝子性、および比較的単純な病状へのそれらの適用において限定され、上皮臓器線維症などのより一般的かつ複雑な病的病状を捉えられない。
【0026】
一態様では、脂肪毒性オルガノイドモデルを作製する方法が開示される。この方法は、本明細書に記載の方法に従って作製された肝臓オルガノイドを遊離脂肪酸(FFA)組成物と接触させるステップを含み得る。FFA組成物は、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、またはそれらの組み合わせ、好ましくはオレイン酸を含み得る。FFAの量は当業者によって決定され得る。一態様では、FFA、好ましくはオレイン酸は、約10μM~約10,000μM、または約20μM~約5,000μM、または約30μM~約2500μM、または約40μM~約1250μMまたは約50μM~約1000μM、または約75μM~約900μMまたは約80μM~約800μM、または約90μM~約700μM、または約100μM~約500μM、または約200μM~約400μM、の量で肝臓オルガノイドと接触させることができる。FFAは、肝臓オルガノイドと、約1時間~約10日間、または約2時間~約9日間、または約3時間~約8日間、または約4時間~約7日間、または約5時間~約6日間、または約6時間~約5日間、または約7時間~約4日間、または約8時間~約3日間、または約9時間~約2日間、または約10時間~約1日間、接触させることができる。一態様では、範囲は約3~約5日間、±24時間である。
【0027】
一態様では、脂肪毒性オルガノイドモデルは脂肪肝疾患のモデルである。
【0028】
一態様では、脂肪毒性オルガノイドモデルは脂肪性肝炎のモデルである。
【0029】
一態様では、脂肪毒性オルガノイドモデルは肝硬変のモデルである。
【0030】
一態様では、脂肪毒性オルガノイドモデルは、非経口栄養関連肝疾患(PNALD)のモデルである。
【0031】
一態様では、脂肪毒性オルガノイドモデルはNAFLDのモデルである。
【0032】
一態様では、脂肪毒性オルガノイドモデルは、細胞骨格フィラメント組織崩壊、ROS増加、ミトコンドリア膨化、トリグリセリド蓄積、線維症、肝細胞バルーニング、IL6分泌、脂肪症、炎症、バルーニングおよびマロリー体様(Mallory’s body-like)、組織硬化、細胞死およびそれらの組み合わせを特徴とし得る。
【0033】
一態様では、NAFLDおよび/または胆汁うっ滞を含む、肝疾患の治療のための薬物をスクリーニングする方法が開示されている。この方法は、本明細書に開示されているように、候補薬物を脂肪毒性オルガノイドモデルと接触させるステップを含み得る。
【0034】
一態様では、栄養補助食品/TPNの有効性をアッセイする方法が開示されている。この方法は、栄養サプリメント/TPNを本明細書に開示されているような脂肪毒性オルガノイドモデルと接触させるステップを含み得る。
【0035】
一態様では、脂肪肝疾患の三次元(3D)肝臓オルガノイドモデルが開示され、オルガノイドは脂肪症、炎症、バルーニングおよびマロリー体、ROS蓄積およびミトコンドリア過負荷、線維症および組織硬化、ならびに細胞死を特徴とする。
【0036】
一態様では、三次元(3D)肝臓オルガノイドモデルは、薬物誘発性肝毒性および炎症/線維症のモデルである。
【0037】
一態様では、三次元(3D)肝臓オルガノイドモデルは、非経口栄養関連肝疾患(PNALD)のモデルである。
【0038】
一態様では、三次元(3D)肝臓オルガノイドモデルは炎症性細胞、例えばT細胞または他の炎症性分泌タンパク質を含まない。
【0039】
前述の方法において使用され得る、および/または前述の組成物を得るために使用され得る、iPSC細胞から肝臓オルガノイドの形成を誘導する方法もまた開示される。方法は、以下のステップを含み得る。
【0040】
a)後部前腸スフェロイドを形成するのに十分な期間、好ましくは約1~約3日間、iPSC細胞由来の胚体内胚葉(DE)をFGF経路活性化剤およびGSK3阻害剤と接触させる工程と、b)肝臓オルガノイドを形成するのに十分な期間、好ましくは約1~約5日間、好ましくは約4日間、レチノイン酸(RA)の存在下で、ステップaで得られた後部前腸スフェロイドをインキュベートする工程と、を含み得る。
【0041】
線維芽細胞増殖因子(FGF)は、血管新生、創傷治癒、および胚発生に関与する増殖因子のファミリーである。FGFはヘパリン結合タンパク質であり、細胞表面関連ヘパラン硫酸プロテオグリカンとの相互作用はFGFシグナル伝達に必須であることが示されている。適切なFGF経路活性化剤は、当業者には容易に理解されよう。例示的なFGF経路活性化剤としてはFGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、およびFGF23からなる群から選択される1つ以上の分子が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、FGFシグナル伝達経路に関連する細胞成分を標的とするsiRNAおよび/またはshRNAを用いてこれらの経路を活性化してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、DE培養物は、10ng/ml以上;20ng/ml以上;50ng/ml以上;75ng/ml以上;100ng/ml以上;120ng/ml以上;150ng/ml以上;200ng/ml以上;500ng/ml以上;1,000ng/ml以上;1,200ng/ml以上;1,500ng/ml以上;2,000ng/ml以上;5,000ng/ml以上;7,000ng/ml以上;10,000ng/ml以上;または15,000ng/ml以上の濃度の本明細書に記載のシグナル伝達経路の1つ以上の分子で処置される。いくつかの実施形態では、シグナル伝達分子の濃度は処置の間、一定に維持される。他の実施形態では、シグナル伝達経路の分子の濃度は、処置の過程で変化する。いくつかの実施形態において、本発明によるシグナル伝達分子は、DMEMおよびウシ胎仔血清(FBS)を含む培地に懸濁される。FBSは、2%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、または50%以上の濃度であり得る。当業者は、本明細書に記載されるレジメンが、限定されるものではないがFGFシグナル伝達経路における任意の分子を含む、本明細書に記載されるシグナル伝達経路の任意の既知の分子に単独でまたは組み合わせて適用可能であることを理解するであろう。
【0043】
適切なGSK3阻害剤は、当業者には容易に理解されよう。例示的なGSK3阻害剤としては、例えば、GSK3βを阻害するChiron/CHIR99021が挙げられるが、これに限定されない。当業者は、開示された方法を実施するのに適したGSK3阻害剤を認識するであろう。GSK3阻害剤は、約1μM~約100μM、または約2μM~約50μM、または約3μM~約25μMの量で投与されてもよい。当業者は、適切な量および期間を容易に認識するであろう。
【0044】
一態様において、幹細胞は、哺乳動物、またはヒトのiPSCであり得る。
【0045】
一態様において、前腸スフェロイドは、例えば、商標名Matrigelとして販売されている市販の基底膜マトリックスなどの基底膜マトリックス中に埋め込むことができる。
【0046】
一態様において、肝臓オルガノイドは、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、アルブミン(ALB)、レチノール結合タンパク質(RBP4)、サイトケラチン19(CK19)、肝細胞核因子6(HNF6)、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)、HNF4a、E-カドヘリン、DAPI、およびEpcamを発現し得ることを特徴とし得る。そのような発現は、例えば、40日目~50日目に起こり得る。発現レベルは、ヒト肝細胞において観察されるもの、例えば、成体肝細胞のものと類似していてもよい。
【0047】
一態様において、肝臓オルガノイドは、胆汁輸送活性を有することを特徴とし得る。
【0048】
一態様において、肝臓オルガノイドは幹細胞に由来してもよく、内在化微絨毛細胞および間葉系細胞をさらに含む管腔構造を含んでもよい。管腔構造は、極性肝細胞および基底膜によって囲まれていてもよい。肝臓オルガノイドは、機能的星細胞および機能的クッパー細胞を含み得る。
【0049】
ある特定の態様において、肝臓オルガノイドは、以下:胆汁産生能、胆汁輸送活性、少なくとも50ng/mL/1xe細胞/24時間の補体因子H発現、少なくとも40ng/mL/1xe細胞/24時間の補体因子B、少なくとも1000ng/mL/1xe細胞/24時間のC3発現、少なくとも1000ng/mL/1xe細胞/24時間のC4発現、少なくとも1000ng/mL/1xe細胞/24時間のフィブリノゲン産生、および少なくとも1000ng/mL/1xe細胞/24時間のアルブミン産生、のうちの1つ以上を有することを特徴とし得る。一態様において、肝臓オルガノイドは、少なくとも10,000ng/mL 1xe細胞/24時間の総肝臓タンパク質発現を有することを特徴とし得る。肝臓オルガノイドは、PROX1、RBP4、CYP2C9、CYP3A4、ABCC11、CFH、C3、C5、ALB、FBG、MRP2、ALCAM、CD68、CD34、CD31から選択される1つ以上の遺伝子を発現し得ることを特徴とし得る。一態様において、肝臓オルガノイドは、例えば、CY2C9*2変異体などの薬物代謝シトクロム変異体を含む細胞を含み得る。肝臓オルガノイドは、US2016/0177270に記載されているもののような血管系を含み得る。
【0050】
一態様において、肝臓オルガノイドは、肝臓オルガノイドが炎症細胞、例えば、T細胞または他の炎症性分泌タンパク質を含まないことを特徴とし得る。
【実施例0051】
3D組織の高次機能を達成したヒトオルガノイド系は、健康および疾患においてインビボの臓器構造によく似ているが、炎症および線維症などのより一般的で複雑な病状を捉えることができなかった。ここで、出願人は脂肪性肝炎の本質的な特徴を示す多細胞ヒト肝臓オルガノイド(HLO)モデルを開発した。培養上の脂肪酸曝露は持続的な脂肪症の誘導を可能にし、続いてHLOで大規模な線維症を発症する炎症誘発性および線維性の系統の進行性の活性化が続く。興味深いことに、脂肪性肝炎の表現型の発現は臨床的に報告された遺伝的要因によって強く影響される。原子間力顕微鏡測定は、全体的なオルガノイド硬化が炎症および線維症の重症度と相関することを明らかにした。臨床表現型に対する測定の忠実度は、3つの一遺伝子性の脂肪性肝炎特異的iPSC株を用いて確認された。さらに、本出願人は、オルガノイドにおいて医原性の親の栄養関連肝疾患(PNALD)モデルを確立した。
【0052】
レチノイン酸(RA)シグナル伝達は、初期器官特定化期(early organ specification phase)の間、前腸内胚葉からの甲状腺、肺、および膵臓のよく知られた重要な指定子(specifier)であるが、モデル生物における肝臓の特定化には明らかに必須ではない(Kelly and Drysdale,2015ゼブラフィッシュを除く(Negishi et al.,2010)。実際、アフリカツメガエルとニワトリは、RAを欠く胚で肝臓の特定化が生じるので哺乳動物と似ている(Chen et al.,2004、Stafford et al.,2004)。逆に、いくつかの動物実験は、RAが間葉からの肝星状細胞分化を促進することを示唆し、これは、STMおよび星状細胞で発現されるジンクフィンガー転写因子WT1によって部分的に制御される(Ijpenberg et al.,2007、Wang et al.,2013)。さらに、いくつかの研究は、バランスのとれたRA調節がヒト幹細胞からの単球の運命特定を誘導することを示唆している(Purton et al.,2000、Ronn et al.,2015)。また、その後の肝芽の成長は、未知のメカニズムを介したRAシグナル伝達によって促進される(Zorn and Wells,2009)。実質細胞および非実質細胞の両方の特定化に対するRAのより広い役割を考えると、出願人は、時限的RA曝露が炎症誘発性系統を含む肝間質細胞の系統多様化に影響を及ぼし、それによって炎症および線維症をモデル化するためのヒト肝臓オルガノイドの創製を容易にし得ると仮定した。
【0053】
最近、PSCからの前腸スフェロイド生成による腸オルガノイドへの指向性分化が報告されている(McCracken et al.,2017、Spence et al.,2011)。これらのオルガノイドは、上皮細胞を生成するだけでなく、間葉系細胞成分も同時発生する。ここで、この前腸生成法を利用することによって、本出願人は、肝臓オルガノイドへの適時のRAパルスは、ヒトiPSCからの肝特異化後の支持系統を優先的に同時分化させるという仮説を試験した。それらが同時発生することができる4-D状態で上皮系統と支持系統との間の密接な相互作用を促進することによって、出願人は、炎症および線維症をモデル化するための肝臓オルガノイドの適用性を実証した。出願人はまた、生きている状態において単一のオルガノイドレベルで硬化を評価することによって線維症の重症度を決定するためのスクリーニングプラットフォームを確立した。本方法は、薬物開発および個別化治療に向けた上皮器官の炎症および線維症の研究のための非常に貴重な適用プラットフォームとして役立つ。
【0054】
結果
ヒトiPSCからのRAに基づく肝臓オルガノイドモデルの生成
RAシグナル伝達が間質細胞に対する系統分化の決定に影響を与えるかどうかを明らかにするために、出願人は、RAの一過性誘導によるヒトiPSCからの肝臓オルガノイドモデルを確立した。以前に記載されているように(Spence et al.,2011)、出願人は、最初にiPSCを胚体内胚葉(DE)の特定化を介して前腸スフェロイドに分化させた。前腸スフェロイドを同じウェルで増殖した付着細胞と混合し、混合物をMatrigelに包埋した。RAは環境依存プロセスを介した多様な系統に対する既知の指定子であるので、出願人は、肝細胞培養培地(HCM)中で培養されて、図1、Aに示すように20日目に確立されたオルガノイドに特徴付けられる肝細胞成熟プロセスの前の初期RAシグナル伝達の持続時間を設定した。培養培地中の最高濃度のアルブミンは、0~5日の様々な期間のRAの中で4日間のRA曝露で観察されたので、確立されたオルガノイドのさらなる特徴付けをRA曝露0~4日間の2つの条件間で比較した。RAの処理されたウェルでは、未処理のものと比較してオルガノイドの数は1.8倍増加し、サイズはRA処理後に1.5倍に増加した(図1、B、C、およびD)。アルブミン分泌は、未処理(0.5~3.5μg/ml、図1、E)と比較した場合、RA処理群(3.0~6.5μg/ml)において2倍増加した。注目すべきことに、アルブミン分泌が、アルブミンが最初に検出された20日後から40日以上維持された(データは示さず)。興味深いことに、内部管腔構造は95%のRA処理オルガノイドに現れたが、未処理オルガノイドの12%にしか検出されず、オルガノイドの内腔化はRAシグナル伝達に依存することを示した(図1、F)。
【0055】
次に、出願人は、肝細胞における排出輸送のマーカーである、肝細胞中のエステラーゼ加水分解後にフルオレセインに変わるフルオレセインジアセテートを培養培地中に添加することによって胆汁輸送活性を試験し、そして蛍光の流れを追跡した。蛍光物質は、フルオレセインジアセテート添加後数分以内にオルガノイドの細胞に吸収され、その後細胞から内腔に排泄された(図1、G)。対照的に、蛍光はスフェロイドでは検出されなかった。胆汁輸送活性は肝臓の重要な機能であるので、今後HLOと定義されるヒト肝臓オルガノイドは、アルブミン分泌および胆汁輸送機能を含む複数のヒト肝細胞機能を表すモデルとして使用され得る。
【0056】
ヒトiPSC肝臓オルガノイドにおける線維化前および炎症性系統の同時分化
興味深いことに、RA処理HLOの単細胞RNA配列決定(scRNA-seq)分析は、星状細胞マーカー(ACTA2、DES、PDGFRB)、クッパー細胞マーカー(CD68、IRF7)、および内皮細胞マーカー(OIT3、DPP4、C1QTNF1;図1、H)によって証明されるように、星状細胞、肝内在性マクロファージ、クッパー細胞、および内皮細胞に特異的な発現痕跡を示した(Bahar Halpern et al.,2017、El Taghdouini et al.,2015、van de Garde et al.,2016)。星状細胞およびクッパー細胞の存在を確認するために、出願人は、上皮細胞マーカーEpCAM、星状細胞マーカーCD166/ALCAM、ならびにクッパー細胞マーカーCD68およびF4/80を用いてFACSによる定量分析を行った(Yanagimachi et al.,2013)。EpCAM+細胞の頻度はHLOの78.85±7.35%であったが、EpCAM-CD166+、EpCAM-CD68+、およびEpCAM-F4/80+発現細胞はそれぞれ32.4±1.2%、1.69±0.3%、および1.68±0.2%であった(図1、I)。免疫組織化学により、CD68細胞の発現もHLOで検出され、CD68発現は内腔側の細胞に局在していた(図1、J)。ヒト肝星状細胞の新規マーカーであり、げっ歯類における星状細胞の分化転換のプロセスに必要であると報告されているビメンチンおよびGFAP(Geerts et al.,2001、Kordes et al.,2014)は両方ともHLOで検出され、同じ細胞中で同時発現し(図1、J)、これは星状細胞がHLOに存在することを示している。
【0057】
CD68発現細胞がクッパー細胞と同様にHLOにおいて機能的に活性であるかどうかを調べるために、出願人は、THP1ヒトマクロファージ細胞において観察されたように、食作用において生じる高pHから低pHへの環境シフトに応答して蛍光(赤)の劇的な増加を受けるpH感受性ローダミンベースの生細胞色素を用いて、肝臓に存在するクッパー細胞において活性であると報告されている、HLOにおける食作用活性をモニターした(図8)。HLOでは、CD68発現細胞と同様に活性が検出され局在したが、スフェロイドでは検出されることはまれであった(図1、K)。これらの所見は、RAベースの肝臓オルガノイド(HLO)が、ヒトiPSCから星状細胞およびクッパー細胞を含む多系統の肝臓間質細胞を自然に発生させる独特の肝臓モデルであることを示している。
【0058】
遊離脂肪酸によるHLOの炎症反応と線維化誘導
現在、遊離脂肪酸(FFA)がインビトロの脂肪毒性肝細胞モデルを確立するための開始因子として広く使用されているが、しかしながら、脂肪蓄積が唯一の表現型である(Kanuri and Bergheim,2013)。肝細胞とクッパー細胞の代替共培養モデルは、ILファミリーサイトカイン、マクロファージ関連サイトカイン、およびMMP関連サイトカインの発現増加などの炎症反応を示したが、その後の線維症は示さなかった(Hassan et al.,2014)。包括的なトランスクリプトーム解析によって示される脂質代謝機能関連遺伝子を有する肝細胞、星状細胞およびクッパー様細胞の存在を考えると、出願人は、FFA曝露が自然に炎症反応および結果として生じるHLOにおける線維性反応を引き起こすと仮定した。この仮説を検証するために、出願人はFFAを用いて3~5日間HLOを処理した。出願人は、3日および5日のOA処理HLOを脂肪性肝炎(s)HLOおよび肝硬変(c)HLOとして示した(図4、A)。sHLOは、3日間オレイン酸で処理したHLOであり、脂質蓄積および炎症を示す。cHLOは、5日間オレイン酸で処理されたHLOであり、脂質蓄積および炎症に加えて線維症(HLOは硬化する)を示す。最初に、脂質蓄積に関して、オレイン酸(OA、18:1 n9)、リノール酸(LA、18:2)、パルミチン酸(PA、16:0)、およびステアリン酸(SA、18:0)を含む複数のFFAの効果を比較するため、生細胞イメージングを、FFA曝露の3日後に脂質色素BODIPYを用いて実施した。図7が示すように、OAは肝細胞様細胞における脂質蓄積の誘導に最も効果的であり、SAは最も効果が低かった。OAが大量の脂質蓄積を引き起こすことを考慮して、sHLOにおける炎症反応を引き起こすためにOAの濃度を変えた(0、200、400、および800μM)。生細胞イメージングおよびその後の定量化により、脂質蓄積が用量依存的にsHLOにおいて上昇したことが示された(18倍まで;図4、BおよびC)。脂質蓄積の増加に加えて、脂肪滴のサイズは拡大した(図4、B)。肝細胞バルーニング(拡大)は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)活性(NASスコアリング)を決定するための病理学的等級付け指標の1つであり、これは、細胞膜のライブイメージングにより800μMのOA処理sHLOにおいて確認された(図4B)。肝臓に蓄積された脂質の主成分であるトリグリセリドも、800μMの処理されたsHLOにおいて検出されたが、未処理のsHLOでは検出されなかった(図4、D)。より重要なことに、培養上清のELISAは、未処理のものと比較した場合、IL-6が800μMのOA処理sHLO培地中で2.2倍分泌されたことを示した(図4、E)。IL-8およびTNF-アルファもまた、200μMまたは800μMのOA処理条件下でアップレギュレートされた(それぞれ10倍および2倍の増加;図4、F)。さらに、OA処理sHLO馴化培地を用いて、トランスウェルで培養してから24時間後にTHP1の遊走を評価し、THP-1遊走細胞は、OA処理sHLO中で上昇し、これは、FFA処理が、おそらく肝細胞様細胞にストレスを引き起こすことによってsHLOにおいて炎症反応を自然に誘発したことを示唆している(最大2倍:図4、Gおよび図8)。これらの炎症および線維症の特徴がHLOに特異的であるかどうかを確認するために、出願人はE-cad mRuby胚性幹(ES)細胞由来のオルガノイドから上皮マーカーE-cadを単離し、E-cad陽性または陰性細胞のいずれかからスフェロイドを再構築し、そしてIL6およびP3NPについてのELISAならびにIL8およびTNF-αについてのRNA発現に適用した。図9が示すように、E-cad陽性細胞も陰性細胞由来スフェロイドも、P3NPおよびIL-6分泌産生を引き起こさず、炎症マーカーの遺伝子発現を過剰発現しなかった。出願人はまた、ヒト肝細胞細胞株HepG2、マクロファージ細胞株THP-1、および肝星状細胞LX-2を用いて同じ実験を試験し、そしてE-cad陽性および陰性細胞の同様の結果を有した。結果は、肝臓オルガノイドが炎症および線維症反応に対するFFA治療にのみ反応することを示した。
【0059】
HLOが線維症様状態に向かって進行するかどうかをさらに決定するために、出願人はsHLOおよびcHLOに対してマッソントリクローム染色を行った。トリクローム陽性HLOはsHLOでは観察されなかったが、cHLOでは有意に増加した(図2、H)。さらに、上皮マーカーEpcamおよび線維症マーカービメンチンのIF染色は、cHLOにおいてEpcam陽性HLOの増加およびビメンチン陽性HLOの減少を示し(図2、I)、これは、OA処理が、cHLOにおいて線維性集団ならびにマトリックス沈着の選択的増加を誘導したことを示唆している。さらに、P3NPのELISAも、OA曝露の5日目に測定された。未処理のものと比較した場合、P3NP分泌は、800μMのOA処理HLOの培地中で2.8倍増加した(図4、J)。まとめると、これらの観察は、FFA曝露が単にトリグリセリドの蓄積を引き起こすだけでなく、HLOにおける炎症反応および線維症も引き起こしたことを示した。
【0060】
単細胞レベルでのFFA処理による炎症および線維症のcHLOプロファイル
AFMによる線維症のハイスループット定量
蓄積された証拠は、肝臓の硬化が肝線維症の重症度とよく相関していることを示し(Yoneda et al.,2008)、それによりHLOの硬化を測定することはHLOの線維症の重症度を評価する可能性がある。平滑筋アクチン免疫染色の出願人の予備的定性分析は、OA曝露による用量依存性線維症進行を示す(図2、H、I、およびJ)。スクリーニング可能なフォーマットにおいてより定量的な洞察を得るために、出願人はこのように、HLO線維症が原子間力顕微鏡(AFM)を用いた微小押し込み(micro-indentation)を用いて用量依存的に硬化を増大させることができるかどうかを生きた状態で評価した。図4のAに示すように、各単一HLOの上部領域(25×25μm四方の14×14マトリックス)をAFMカンチレバーで走査し、これは、HLOのトポグラフィー的および機械的情報の空間マッピングを提供することができる。単一HLOの計算されたヤング率(E、kPa)の代表的なヒストグラムは、明らかにガウス様分布を示し、そのピーク値および幅は、OA濃度に従って増加した(図4、B;0、200、400、800μM)。HLOから決定されたヤング率は、箱ひげ図によるドットプロットによって要約され(図4、C)、これは、HLOの硬さが0から800μM OAまで徐々に上昇すること、すなわち中央値の緩やかなシフトおよび硬化範囲の拡大が、OA濃度の上昇に従って観察された。エメディアン値は、0、200、400、および800μMのOA処理オルガノイドについて、それぞれ1.2kPa、1.6kPa、2.4kPa、および2.8kPaであった。さらに、90パーセンタイルと10パーセンタイルとの間の差(ΔP90-10)は、未処理オルガノイドについては3.2kPaであり、800μM OA処理オルガノイドについては7.0kPaであった。図3、Fが示すように、TNF-アルファおよびIL-8もまた、NAFLD患者における線維症の重症度と相関することが知られているOA添加によってアップレギュレートされた(Ajmera et al.,2017)。これらの結果は、HLOの硬化が線維症の重症度について定量化可能な測定値となり得、したがって線維症のハイスループットスクリーニングに潜在的に適用され得ることを示す。
【0061】
cHLO硬さはウォルマン病の臨床表現型を再現する
多能性幹細胞由来の線維症および肝硬変に関するモデルの臨床的関連性は、患者における遺伝的影響の未確定の性質のために不明である。線維症の素因はおそらくこのモデルでは捉えられないであろう。したがって、出願人は、健常人(317D6)、NAFLD/NASH患者(NAFLD150、77、および27)およびウォルマン病患者(WD90、91、および92)を含むiPSC由来の先天性脂肪性肝炎患者を評価することによって臨床表現型に対するアッセイの忠実度を調べた(図5、A)。具体的には、出願人は、致命的な脂肪性肝炎を伴う単一遺伝性疾患である3つのウォルマン病患者特異的iPSC株を確立し、特に臨床診断当時の酵素活性との顕著な相関を伴う正常iPSC株由来オルガノイドと比較して有意な硬さ増加を確認した(図5、B)。
【0062】
iPSC‐sHLOを用いた脂肪症のヒト表現型変異のモデリング
第二に、出願人は脂肪性肝炎の進行に対する多遺伝子効果を評価するためにこの新しいオルガノイドモデルを拡張した。大規模なGWASにより、肝臓トリグリセリド含有量(HTGC)の独立した決定因子であることが繰り返し示されている、3つのタンパク質コーディング配列変異体PNPLA3(パタチン様ホスホリパーゼ3)p.I148M、TM6SF2(膜貫通型6スーパーファミリーメンバー2)p.E167K、およびGCKR(グルコキナーゼ調節蛋白質)p.P446L(Xu et al.,2015)(Zain et al.,2015)(図6、A)。したがって、出願人は大規模セルバンクにアプローチし、以下に示す、報告された効果の大きさβ(SNP)(Stender et al.,2017)、加重投与量を乗算する標準化HTGCおける対立遺伝子ごとの変化、の合計により、2504個の細胞株を多遺伝子スコア(図6、B)でマッピングした:Σ{β(SNP)×(リスク対立遺伝子の投与量)}。3つの異なる閾値を有するiPSC株の獲得後(図6、BおよびC)、出願人は7つのiPSCオルガノイドを生成し、そして表現型に対する多遺伝子性の影響を推定するために脂肪肝炎を誘発した。驚くべきことに、出願人は、「脂肪症」(ライブイメージングによる、図6、DおよびE)と「炎症」(qRT-PCR、図6、F)との顕著な相関関係を見出したが、「線維症」(AFMに基づく硬化測定、図6、G)については多遺伝子性スコアとの相関関係は見出せなかった。出願人はまた、細胞株間でOCA応答が異なり、OCAに対する応答はSNP数に依存することを見出した(図6H)。
【0063】
討論
ヒトPSCからの多細胞肝臓オルガノイド
一連の最近の研究は、内皮細胞(Takebe et al.,2013)、間葉系細胞(Takebe et al.,2015)、および神経堤細胞(Workman et al.,2017)を実験的に組み合わせることによって支持系統の内胚葉由来オルガノイドへの統合の成功を報告した。RA脈動に基づく方法は、細胞を持続的な細胞極性で多様化するように自然に関与させ、そして合理的な費用で著しく再現性がありそして拡張性がある。支持系統の正確な性質が発生的に関連するものであるか肝臓特異的なものであるかにかかわらず、間質集団はLPSおよび脂肪酸を含む既知の線維症誘発物質に対して完全に反応性であり、多細胞および複雑な病理学をモデル化するための新しい方法を開く。
【0064】
炎症と線維症を分析するための機械的オルガノイドスクリーニングの見込み
将来のスクリーニングの観点からは、単一のオルガノイドベースの肝臓測定は、その堅牢性、正規化、および比較的単純さのために非常に魅力的な読み出し情報である。例えば、オルガノイドのライブ蛍光イメージング分析に基づいて、嚢胞性線維症患者の腸オルガノイドについて機能的膨潤アッセイが確立され、効果的な薬物選択が実証された(Saini,2016)。iPSCからの単一の肝臓オルガノイドのライブ硬さ評価は、線維症の重症度を予測するための効果的な方法である。脂肪肝疾患患者では、肝臓の硬化の測定値と線維症の病期との間に有意な相関関係がエラストグラフィによって臨床的に報告されている(Yoneda et al.,2008)。さらに、超音波検査で定義されたNAFLDを有する対象のサブグループにおいて、肝臓の硬化の増加と真性糖尿病(DM)の存在および/またはより高いインスリン抵抗性との間の強い関連性が観察された(Koehler et al.,2016)。興味深いことに、ヒト肝臓オルガノイド(HLO)硬化は、炎症性サイトカイン産生および線維芽細胞増殖を伴って、LPSおよびFFAの両方に比例して増加した。多数の上皮臓器線維症が多様な病理学的メカニズムを介して同様の表現型を共有することを考慮すると、オルガノイドに基づく硬さ検出アッセイは、肺、腎臓、心臓および腸オルガノイドを用いて線維症を分析するために使用できる。
【0065】
肝臓オルガノイドでは、ハイコンテンツイメージングシステムを使用して複数の測定値を生体内にて評価することができる。事実、脂肪処理した肝臓オルガノイドでは、脂肪滴の数とサイズ、胆汁輸送活性、食細胞の増加、細胞形態の劣化を効果的にイメージできる。したがって、オルガノイドベースのアッセイプラットフォームを使用して、脂肪肝疾患のヒト特有のメカニズムをよりよく理解し、これらの疾患に対する創薬のためのハイコンテンツなスクリーニングを確立することができる。化合物ライブラリーおよび栄養代謝産物と組み合わせると、オルガノイドベースの機械的スクリーニングは、そうでなければ前臨床的に試験することができない、ヒトにおける有効な治療を意味するための非常に魅力的なモデル系であろう。
【0066】
栄養精密医学(治療の個別化)
患者特異的なiPSC由来のオルガノイドは、個別化された薬効と上皮反応を予測するために使用されるかもしれない。ヒトiPSCは、健康な人と病気の人の両方から樹立することができる。集団iPSCパネルの確立と並行して、患者のiPS細胞の使用は、脂肪毒性、薬効および安全性に関する個人間の差異をモデル化することが期待される(Warren et al.,2017a、Warren et al.,2017b)。そうすることで、肝臓オルガノイドベースのプラットフォームを用いた表現型スクリーニングは、障害に対する非常に効果的な介入の個別選択を促進するだろう。例えば、栄養補給は個人に応じて変更され得るので、開示されたシステムは投与前に栄養関連状態を反映するための非常に適合性のあるアッセイであり得る。具体的には、肝脂肪症および線維症(PNALD)への起こり得る進行を最小限に抑える目的で、患者特異的iPSC由来オルガノイドを使用して、各患者に対してPN製剤をカスタマイズすることができる。実際、診療所では、PN製剤はしばしばカスタマイズされており(Mercaldi et al.,2012)、なぜなら、肥満で体液制限を必要とし、肝/腎機能障害を示すことが多い、重症患者のカロリー、アミノ酸、および電解質のニーズを市販の溶液は満たさないからである(Boullata et al.,2014)。栄養上の必要性を超えて、PN製品に関連して起こり得る悪影響の低減についての洞察を得ることが緊急の必要性である。したがって、肝臓オルガノイドは、特にPNALDリスク評価についての安全上の懸念を評価するのに有用であり、各患者に対するPN製剤のカスタマイズ戦略を容易にする。
【0067】
全体として、出願人は、4-Dオルガノイド培養において上皮系統と間質系統との間のクロストークを可能にすることが、肝臓の脂肪症および線維症に関連する臨床的に関連する病理をモデル化するのに有用であることを実証した。このモデルは最終的に、人口高齢化の高まりで懸念される、NAFLDやNASHのようなより一般的な病理学の分析につながるであろう。より広くは、本出願人は、現在進化しているオルガノイド技術と相まって、人間的で複雑な病理学をモデル化するための実行可能な戦略を確立し(Lancaster and Knoblich,2014)、単一オルガノイドレベルで回復不可能な疾患に対する効果的な治療法を発見する新しい方法を切り開いた。
【0068】
方法
hPSC維持この研究で使用されたTkDA3ヒトiPSCクローンは、K.EtoおよびH.Nakauchiの好意により提供された。ヒトiPSC株を、以前に記載されたように維持した(Takebe et al.,2015;Takebe et al.,2014)。5% CO、95%空気中、1/30希釈で37℃のMatrigel(Corning Inc.、NY、USA)でコーティングしたプレート上で、未分化hiPSCをmTeSR1培地中でフィーダー不含条件下で維持した(StemCell technologies、Vancouver、Canada)。
【0069】
胚体内胚葉誘導以前に記載された方法にわずかな修飾を加えて使用して、ヒトiPSCを胚体内胚葉に分化させた(Spence et al.,2011)。簡単に説明すると、ヒトiPSCのコロニーをAccutase(Thermo Fisher Scientific Inc.、MA、USA)中で単離し、150,000細胞/mLをMatrigelコート組織培養プレート(VWR Scientific Products、West Chester、PA)に蒔いた。1日目には、100ng/mLのアクチビンA(R&D Systems、MN、USA)および50ng/mLの骨形成タンパク質4(BMP4;R&D Systems)を含むRPMI 1640培地(Life Technologies)に、2日目には、100ng/mLのアクチビンAおよび0.2%ウシ胎仔血清(FCS;Thermo Fisher Scientific Inc.)を含むRPMI 1640培地に、ならびに3日目には、100ng/mLのアクチビンAおよび2%FCSを含むRPMI 1640培地に、培地を交換した。4~6日目に、細胞を、500ng/mlの線維芽細胞増殖因子(FGF4;R&D Systems)およびuMのCHIR99021(Stemgent、MA、USA)を含有するB27(Life Technologies)およびN2(Gibco、CA、USA)を伴うアドバンストDMEM/F12(Thermo Fisher Scientific Inc.)中で培養した。細胞を、95%空気で5%CO中、37℃で維持し、培地は毎日交換した。分化の7日目にスフェロイドがプレート上に現れた。
【0070】
HLO誘導7日目に、スフェロイドと付着細胞を静かにピペットで移してディッシュから剥がす。それらを800rpmで3分間遠心分離し、上清を除去した後にB27、N2および2μMのレチノイン酸(RA;Sigma、MO、USA)を含むAdvanced DMEM/F12中のディッシュ上で100%Matrigel液滴に包埋し、4日間培養する。RA処理後、Matrigel液滴に包埋されたスフェロイドを、10ng/mLの肝細胞増殖因子(HGF;PeproTech、NJ、USA)、0.1μMのデキサメタゾン(Dex;Sigma)および20ng/mLのオンコスタチンM(OSM;R&D Systems)を含む肝細胞培養培地(HCM;Lonza、MD、USA)で培養した。HLO誘導のための培養物を95%空気を含む5%CO中で37℃に維持し、培地を2~3日毎に交換した。HLO(20~30日目)を分析するために、引っかきおよびピペッティングによってオルガノイドをMatrigelから単離した。
【0071】
アルブミン、IL-6、およびP3NP ELISA。HLOのアルブミン分泌レベルを測定するために、Matrigelに包埋したHLOから200μLの培養上清を回収した。IL-6およびP3NPについては、20~30個のオルガノイドを超低接着マルチウェルプレート96ウェルプレート(Corning)上に播種し培養した。各ウェルのオルガノイドの正確な数を規定し、最後にIL-6とP3NPの分泌レベルを数で正規化するために、オルガノイドをキーエンス(KEYENCE)BZ-X710蛍光顕微鏡で捕獲した。培養上清を培養後24時間(アルブミンの場合)、96時間(IL-6の場合)および120時間(P3NP)の時点で集め、そして使用するまで-80℃で保存した。上清を1,500rpmで3分間遠心分離して破片をペレットにし、得られた上清をHuman Albumin ELISA Quantitation Set(Bethyl Laboratories,Inc.、TX、USA)、Human IL-6 ELISA Kit (Biolegend、CA,USA)、およびHuman N-terminal procollagen III propeptide,PIIINP ELISA Kit(My BioSource、CA,USA)を用いて、製造業者の説明書に従ってアッセイした。有意性検定はスチューデントのt検定によって行われた。
【0072】
胆汁輸送活性オルガノイド中の胆汁輸送活性を評価するためにフルオレセインジアセテートを使用した。10mg/mLフルオレセインジアセテート(Sigma)をHLOと共に培養したHCM培地に添加し、5分間静置し、蛍光顕微鏡BZ-X710(キーエンス、大阪、日本)を使用して捕獲した。
【0073】
食細胞、脂質、ROS生細胞イメージング。超低接着6マルチウェルプレートで培養した後、5~10個のHLOをピックアップし、Microslide 8ウェルガラスボトムプレート(Ibidi、WI、USA)に播種し、生細胞染色を行った。以下の抗体を使用した:食細胞活性のためのpHrodo(登録商標)Red S.aureus Bioparticles(登録商標)Conjugate(Thermo Fisher Scientific Inc.)、脂質のためのBODIPY(登録商標)493/503(Thermo Fisher Scientific Inc.)、膜のためのDi-8-ANEPPS(Thermo Fisher Scientific Inc.)、およびROS検出のためのCellROX green reagent(Thermo Fisher Scientific Inc.)。核染色は、NucBlue Live ReadyProbes Reagent(Thermo Fisher Scientific Inc.)によってマークされた。hLOHLOを60倍の水浸対物レンズを用いてニコンA1倒立共焦点顕微鏡(日本)で可視化し、走査した。最終的な脂肪滴量は、IMARIS8によって計算され、各オルガノイドサイズによって正規化された。脂肪滴量およびROS産生(%)についての有意性検定は、スチューデントのt検定によって行った。
【0074】
HE染色と免疫組織化学HLOをMatrigelから単離し、4%パラホルムアルデヒド中で固定しそしてパラフィン中に包埋した。切片をHE染色および免疫組織化学染色にかけた。以下の一次抗体を使用した:抗アルファ平滑筋アクチン抗体(1:200希釈;abcam、Cambridge、UK)、Desmin抗体(予備希釈されもの;Roche,Basel,Switzerland)、およびCD68抗体(1:200希釈、abcam)。
【0075】
フローサイトメトリーHLOを10個のMatrigel液滴から単離し、1×PBSで洗浄した。トリプシン-EDTA(0.05%)、フェノールレッド(Gibco)の10分間の処理によって、HLOを単細胞に解離させた。PBS洗浄後、単細胞をBV421結合Epcam抗体(BioLegend)、PE結合CD166抗体(eBioscience、CA、USA)、およびPE/Cy7-CD68(eBioscience)を用いてフローサイトメトリーに供した。DNAをヨウ化プロピジウム染色により測定した。
【0076】
LPSおよびFFAへの曝露ならびにOCAおよびFGF19による処理Matrigelから単離し、1×PBSで洗浄した20~30個のHLOを各条件に分け、超低接着6マルチウェルプレート(Corning)上で培養した。HLOをLPS(Sigma)、OA(Sigma)、LA(Sigma)、SA(Sigma)、またはPA(Sigma)と共に培養し、培養後1および3日目(LPS HLOの場合)および3および5日目(OAの場合)に収集した。HLOに対するOCA(INT-747、MedChem Express、NJ、USA)およびヒトFGF19組換え体(Sigma)の阻害効果を試験するために、20~30個のHLOをオレイン酸(800μM)の存在下または非存在下にHCM培地で培養し、1μMのOCAおよび40ng/mlのFGF19を800μMのOA条件に添加した。HLOは、脂質生細胞イメージングのために3日目に集められ、そして硬化測定のために5日目に集められた。
【0077】
全組織標本免疫蛍光法。HLOを4%パラホルムアルデヒド中で30分間固定し、0.5%Nonidet P-40で15分間透過処理した。HLOを1×PBSで3回洗浄し、ブロッキング緩衝液と共に室温で1時間インキュベートした。次にHLOを一次抗体、抗α平滑筋アクチン抗体(1:50希釈;abcam)と4℃で一晩インキュベートした。HLOを1×PBSで洗浄し、ブロッキング緩衝液中の二次抗体中、室温で30分間インキュベートした。HLOを洗浄し、DAPIを含むFluoroshield封入剤(abcam)を用いてマウントした。染色されたHLOを60倍の水浸対物レンズを用いてニコンA1倒立共焦点顕微鏡(日本)で可視化し、走査した。
【0078】
RNA単離、RT-qPCR。RNeasyミニキット(Qiagen、Hilden、Germany)を用いてRNAを単離した。製造元のプロトコルに従ってRT-PCRのためのSuperScriptIII First-Strand Synthesis System(Invitrogen、CA、USA)を用いて逆転写を行った。qPCRは、QuantStudio 3リアルタイムPCRシステム(Thermo Fisher Scientific Inc.)上でTaqMan遺伝子発現マスターミックス(Applied Biosystems)を使用して実施した。各標的遺伝子についての全てのプライマーおよびプローブ情報は、Universal ProbeLibrary Assay Design Center(https://qpcr.probefinder.com/organism.jsp)から入手した。有意性検定はスチューデントのt検定によって行われた。
【0079】
AFMによるHLO硬化測定0、50200、1400、2800ng/mLμMのLPSOAで処理したHLOを、AFM(NanoWizard IV、JPK Instruments、Germany)を用いた硬化測定に使用した。窒化ケイ素カンチレバー(CSC37、k=0.3N/m、MikroMasch、Bulgaria)を有するAFMヘッドを、Z軸ピエゾステージ(JPK CellHesionモジュール、JPK Instruments、Germany)と連結した蛍光立体顕微鏡(M205 FA、Leica、Germany)に取り付け、これにより約100μmの深度まで押込み測定が可能になる。オルガノイドの基質として、フィブロネクチンコーティング皿を使用した。組織培養皿(φ=34mm、TPP Techno Plastic Products、Switzerland)を最初に1μg/mLフィブロネクチン溶液(Sigma)と共に4℃で一晩インキュベートした。その後、組織培養皿を蒸留水で2回洗浄し、1時間乾燥した。その後、51日間OALPSとインキュベートしたHLOをフィブロネクチンコーティング皿に入れ、37℃で1時間インキュベートした。次に試料皿をAFMステージ上に置き、25×25μm四方の14×14マトリックスの力-距離曲線を各HLOから測定した。最後に、得られた力-距離曲線を修正Hertzモデル(Sneddon、1965)と適合させることによって、HLOのヤング率(E、Pa)を求めた。有意性検定のためにDunn-Holland-Wolfe検定を行った。
【0080】
THP-1細胞遊走アッセイ。T.Suzukiから寄贈されたTHP-1細胞を、10%FBSを含むAdvanced DMEM/F12(Thermo Fisher Scientific Inc.)中で維持した。THP-1浮遊細胞を収集し、そして200,000個の細胞を、CytoSelect(商標)96Well Cell Migration Assay(5μm、Fluorometric Format;Cell Biolabs、CA、USA)の膜チャンバーに無血清Advanced DMEM/F12と共に添加した。10~20個のHLOを、超低接着96マルチウェルプレート(Corning)を用いて0、400、800μMのOAを含むHCM培地中で3日間培養した。各ウェルのオルガノイドの正確な数を規定し、最後に最終的に遊走した細胞をその数で正規化するために、オルガノイドをキーエンスBZ-X710蛍光顕微鏡で捕獲した。HLOの培養上清150μLを収集し、キットのフィーダートレイに加えた。キットを5%CO細胞培養インキュベーター中37℃で24時間インキュベートした。遊走した細胞を、Countess II FL Automated Cell Counter(Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて計数した。有意性検定はスチューデントのt検定によって行われた。
【0081】
トリグリセリドアッセイトリグリセリドの定量的測定のために、HLOを1つのMatrigel液滴から単離し、オレイン酸(800μM)の存在下または非存在下でHCM培地に分けた。それらを、超低接着6マルチウェルプレート上で3日間培養した。肝臓トリグリセリド蓄積の定量的推定は、EnzyChrom Triglyceride assay kit(Bioassay Systems、CA、USA)を用いるトリグリセリド質量の酵素アッセイによって実施した。
【0082】
HLO生存アッセイHLOをMatrigelから収集し、1×PBSで洗浄した。30~40個のオルガノイドを、超低接着6マルチウェルプレート(Corning)上で培養した。HLOは毎日キーエンスBZ-X710蛍光顕微鏡で捕獲した。生き残った、そして死んだオルガノイドを写真から手動で数えた。丸みを帯びた形状を有するHLOは生存しているものとして数えが、形状が異なるオルガノイドは死んだものとして数えた。同じ時点でOA処理HLOの生存率を評価するために、3Dセルタイターグローアッセイ(3D cell titer glo assay)を使用した(Promega、Wi、USA)。
【0083】
統計と再現性対応のない両側スチューデントのt検定、Dunn-Holland-Wolfe検定、またはWelchのt検定を使用して統計分析を行った。結果は平均±標準誤差で示した。0.05未満のP値を統計的に有意と見なした。特に明記しない限り、N値は生物学的に独立した複製を指す。
【0084】
参考文献
Ajmera,V.,Perito,E.R.,Bass,N.M.,Terrault,N.A.,Yates,K.P.,Gill,R.,Loomba,R.,Diehl,A.M.,Aouizerat,B.E.,and Network,N.C.R.(2017).Novel plasma biomarkers associated with liver disease severity in adults with nonalcoholic fatty liver disease.Hepatology 65,65-77.
Bahar Halpern,K.,Shenhav,R.,Matcovitch-Natan,O.,Toth,B.,Lemze,D.,Golan,M.,Massasa,E.E.,Baydatch,S.,Landen,S.,Moor,A.E.,et al.(2017).Single-cell spatial reconstruction reveals global division of labour in the mammalian liver.Nature 542,352-356.
Boullata,J.I.,Gilbert,K.,Sacks,G.,Labossiere,R.J.,Crill,C.,Goday,P.,Kumpf,V.J.,Mattox,T.W.,Plogsted,S.,Holcombe,B.,et al.(2014).A.S.P.E.N.clinical guidelines:parenteral nutrition ordering,order review,compounding,labeling,and dispensing.JPEN J Parenter Enteral Nutr 38,334-377.
Chen,Y.,Pan,F.C.,Brandes,N.,Afelik,S.,Solter,M.,and Pieler,T.(2004).Retinoic acid signaling is essential for pancreas development and promotes endocrine at the expense of exocrine cell differentiation in Xenopus.Dev Biol 271,144-160.
Dash,A.,Figler,R.A.,Blackman,B.R.,Marukian,S.,Collado,M.S.,Lawson,M.J.,Hoang,S.A.,Mackey,A.J.,Manka,D.,Cole,B.K.,et al.(2017).Pharmacotoxicology of clinically-relevant concentrations of obeticholic acid in an organotypic human hepatocyte system.Toxicol In Vitro 39,93-103.
El Kasmi,K.C.,Anderson,A.L.,Devereaux,M.W.,Vue,P.M.,Zhang,W.,Setchell,K.D.,Karpen,S.J.,and Sokol,R.J.(2013).Phytosterols promote liver injury and Kupffer cell activation in parenteral nutrition-associated liver disease.Sci Transl Med 5,206ra137.
El Taghdouini,A.,Najimi,M.,Sancho-Bru,P.,Sokal,E.,and van Grunsven,L.A.(2015).In vitro reversion of activated primary human hepatic stellate cells.Fibrogenesis Tissue Repair 8,14.
Geerts,A.,Eliasson,C.,Niki,T.,Wielant,A.,Vaeyens,F.,and Pekny,M.(2001).Formation of normal desmin intermediate filaments in mouse hepatic stellate cells requires vimentin.Hepatology 33,177-188.
Hassan,W.,Rongyin,G.,Daoud,A.,Ding,L.,Wang,L.,Liu,J.,and Shang,J.(2014).Reduced oxidative stress contributes to the lipid lowering effects of isoquercitrin in free fatty acids induced hepatocytes.Oxid Med Cell Longev 2014,313602.
Hynds,R.E.,and Giangreco,A.(2013).Concise review:the relevance of human stem cell-derived organoid models for epithelial translational medicine.Stem Cells 31,417-422.
Ijpenberg,A.,Perez-Pomares,J.M.,Guadix,J.A.,Carmona,R.,Portillo-Sanchez,V.,Macias,D.,Hohenstein,P.,Miles,C.M.,Hastie,N.D.,and Munoz-Chapuli,R.(2007).Wt1 and retinoic acid signaling are essential for stellate cell development and liver morphogenesis.Dev Biol 312,157-170.
Ito,K.,Sakuma,S.,Kimura,M.,Takebe,T.,Kaneko,M.,and Arai,F.(2016).Temporal Transition of Mechanical Characteristics of HUVEC/MSC Spheroids Using a Microfluidic Chip with Force Sensor Probes.Micromachines-Basel 7.
Kanuri,G.,and Bergheim,I.(2013).In vitro and in vivo models of non-alcoholic fatty liver disease (NAFLD).Int J Mol Sci 14,11963-11980.
Kelly,G.M.,and Drysdale,T.A.(2015).Retinoic Acid and the Development of the Endoderm.J Dev Biol 3,25-56.
Koehler,E.M.,Plompen,E.P.,Schouten,J.N.,Hansen,B.E.,Darwish Murad,S.,Taimr,P.,Leebeek,F.W.,Hofman,A.,Stricker,B.H.,Castera,L.,et al.(2016).Presence of diabetes mellitus and steatosis is associated with liver stiffness in a general population:The Rotterdam study.Hepatology 63,138-147.
Kordes,C.,Sawitza,I.,Gotze,S.,Herebian,D.,and Haussinger,D.(2014).Hepatic stellate cells contribute to progenitor cells and liver regeneration.J Clin Invest 124,5503-5515.
Kumar,J.A.,and Teckman,J.H.(2015).Controversies in the Mechanism of Total Parenteral Nutrition Induced Pathology.Children (Basel) 2,358-370.
Lancaster,M.A.,and Knoblich,J.A.(2014).Organogenesis in a dish:modeling development and disease using organoid technologies.Science 345,1247125.
McCracken,K.W.,Aihara,E.,Martin,B.,Crawford,C.M.,Broda,T.,Treguier,J.,Zhang,X.,Shannon,J.M.,Montrose,M.H.,and Wells,J.M.(2017).Wnt/beta-catenin promotes gastric fundus specification in mice and humans.Nature 541,182-187.
Mercaldi,C.J.,Reynolds,M.W.,and Turpin,R.S.(2012).Methods to identify and compare parenteral nutrition administered from hospital-compounded and premixed multichamber bags in a retrospective hospital claims database.JPEN J Parenter Enteral Nutr 36,330-336.
Nandivada,P.,Carlson,S.J.,Chang,M.I.,Cowan,E.,Gura,K.M.,and Puder,M.(2013).Treatment of parenteral nutrition-associated liver disease:the role of lipid emulsions.Adv Nutr 4,711-717.
Negishi,T.,Nagai,Y.,Asaoka,Y.,Ohno,M.,Namae,M.,Mitani,H.,Sasaki,T.,Shimizu,N.,Terai,S.,Sakaida,I.,et al.(2010).Retinoic acid signaling positively regulates liver specification by inducing wnt2bb gene expression in medaka.Hepatology 51,1037-1045.
Neuschwander-Tetri,B.A.,Loomba,R.,Sanyal,A.J.,Lavine,J.E.,Van Natta,M.L.,Abdelmalek,M.F.,Chalasani,N.,Dasarathy,S.,Diehl,A.M.,Hameed,B.,et al.(2015).Farnesoid X nuclear receptor ligand obeticholic acid for non-cirrhotic,non-alcoholic steatohepatitis (FLINT):a multicentre,randomised,placebo-controlled trial.Lancet 385,956-965.
Orso,G.,Mandato,C.,Veropalumbo,C.,Cecchi,N.,Garzi,A.,and Vajro,P.(2016).Pediatric parenteral nutrition-associated liver disease and cholestasis:Novel advances in pathomechanisms-based prevention and treatment.Dig Liver Dis 48,215-222.
Purton,L.E.,Bernstein,I.D.,and Collins,S.J.(2000).All-trans retinoic acid enhances the long-term repopulating activity of cultured hematopoietic stem cells.Blood 95,470-477.
Ronn,R.E.,Guibentif,C.,Moraghebi,R.,Chaves,P.,Saxena,S.,Garcia,B.,and Woods,N.B.(2015).Retinoic acid regulates hematopoietic development from human pluripotent stem cells.Stem Cell Reports 4,269-281.
Saini,A.(2016).Cystic Fibrosis Patients Benefit from Mini Guts.Cell Stem Cell 19,425-427.
Spence,J.R.,Mayhew,C.N.,Rankin,S.A.,Kuhar,M.F.,Vallance,J.E.,Tolle,K.,Hoskins,E.E.,Kalinichenko,V.V.,Wells,S.I.,Zorn,A.M.,et al.(2011).Directed differentiation of human pluripotent stem cells into intestinal tissue in vitro.Nature 470,105-109.
Stafford,D.,Hornbruch,A.,Mueller,P.R.,and Prince,V.E.(2004).A conserved role for retinoid signaling in vertebrate pancreas development.Dev Genes Evol 214,432-441.
Stender,S.,Kozlitina,J.,Nordestgaard,B.G.,Tybjaerg-Hansen,A.,Hobbs,H.H.,and Cohen,J.C.(2017).Adiposity amplifies the genetic risk of fatty liver disease conferred by multiple loci.Nat Genet 49,842-847.
Takebe,T.,Enomura,M.,Yoshizawa,E.,Kimura,M.,Koike,H.,Ueno,Y.,Matsuzaki,T.,Yamazaki,T.,Toyohara,T.,Osafune,K.,et al.(2015).Vascularized and Complex Organ Buds from Diverse Tissues via Mesenchymal Cell-Driven Condensation.Cell Stem Cell 16,556-565.
Takebe,T.,Sekine,K.,Enomura,M.,Koike,H.,Kimura,M.,Ogaeri,T.,Zhang,R.R.,Ueno,Y.,Zheng,Y.W.,Koike,N.,et al.(2013).Vascularized and functional human liver from an iPSC-derived organ bud transplant.Nature 499,481-484.
Takebe,T.,Zhang,R.R.,Koike,H.,Kimura,M.,Yoshizawa,E.,Enomura,M.,Koike,N.,Sekine,K.,and Taniguchi,H.(2014).Generation of a vascularized and functional human liver from an iPSC-derived organ bud transplant.Nat Protoc 9,396-409.
Tsedensodnom,O.,and Sadler,K.C.(2013).ROS:redux and paradox in fatty liver disease.Hepatology 58,1210-1212.
van de Garde,M.D.,Movita,D.,van der Heide,M.,Herschke,F.,De Jonghe,S.,Gama,L.,Boonstra,A.,and Vanwolleghem,T.(2016).Liver Monocytes and Kupffer Cells Remain Transcriptionally Distinct during Chronic Viral Infection.PLoS One 11,e0166094.
Wang,Y.,Li,J.,Wang,X.,Sang,M.,and Ho,W.(2013).Hepatic stellate cells,liver innate immunity,and hepatitis C virus.J Gastroenterol Hepatol 28 Suppl 1,112-115.
Warren,C.R.,Jaquish,C.E.,and Cowan,C.A.(2017a).The NextGen Genetic Association Studies Consortium:A Foray into In Vitro Population Genetics.Cell Stem Cell 20,431-433.
Warren,C.R.,O’Sullivan,J.F.,Friesen,M.,Becker,C.E.,Zhang,X.,Liu,P.,Wakabayashi,Y.,Morningstar,J.E.,Shi,X.,Choi,J.,et al.(2017b).Induced Pluripotent Stem Cell Differentiation Enables Functional Validation of GWAS Variants in Metabolic Disease.Cell Stem Cell 20,547-557 e547.
Workman,M.J.,Mahe,M.M.,Trisno,S.,Poling,H.M.,Watson,C.L.,Sundaram,N.,Chang,C.F.,Schiesser,J.,Aubert,P.,Stanley,E.G.,et al.(2017).Engineered human pluripotent-stem-cell-derived intestinal tissues with a functional enteric nervous system.Nat Med 23,49-59.
Xu,R.,Tao,A.,Zhang,S.,Deng,Y.,and Chen,G.(2015).Association between patatin-like phospholipase domain containing 3 gene (PNPLA3) polymorphisms and nonalcoholic fatty liver disease:a HuGE review and meta-analysis.Sci Rep 5,9284.
Yanagimachi,M.D.,Niwa,A.,Tanaka,T.,Honda-Ozaki,F.,Nishimoto,S.,Murata,Y.,Yasumi,T.,Ito,J.,Tomida,S.,Oshima,K.,et al.(2013).Robust and highly-efficient differentiation of functional monocytic cells from human pluripotent stem cells under serum- and feeder cell-free conditions.PLoS One 8,e59243.
Yoneda,M.,Yoneda,M.,Mawatari,H.,Fujita,K.,Endo,H.,Iida,H.,Nozaki,Y.,Yonemitsu,K.,Higurashi,T.,Takahashi,H.,et al.(2008).Noninvasive assessment of liver fibrosis by measurement of stiffness in patients with nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD).Dig Liver Dis 40,371-378.
Zain,S.M.,Mohamed,Z.,and Mohamed,R.(2015).Common variant in the glucokinase regulatory gene rs780094 and risk of nonalcoholic fatty liver disease:a meta-analysis.J Gastroenterol Hepatol 30,21-27.
Zambrano,E.,El-Hennawy,M.,Ehrenkranz,R.A.,Zelterman,D.,and Reyes-Mugica,M.(2004).Total parenteral nutrition induced liver pathology:an autopsy series of 24 newborn cases.Pediatr Dev Pathol 7,425-432.
Zorn,A.M.,and Wells,J.M.(2009).Vertebrate endoderm development and organ formation.Annu Rev Cell Dev Biol 25,221-251.
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓オルガノイドを遊離脂肪酸(FFA)組成物と接触させるステップを含み、前記FFA組成物がオレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、またはそれらの組み合わせ、好ましくはオレイン酸を含む、脂肪毒性オルガノイドモデルの作製方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
ヒトの肝臓は、脂質代謝、アンモニウムおよび胆汁産生、凝固、ならびに外因性化合物の解毒など、生命に不可欠な多くの代謝機能を提供する重要な臓器である。人工多能性幹細胞(iPSC)技術を使用して、患者の肝反応のインビトロ再構成は、再生療法、創薬、および薬物毒性研究を含む多数の有望な用途により、製薬業界にとって魅力的である。この目的のために、現在、従来のインビトロアプローチは、肝細胞を生成するために二次元(2-D)および3-D分化プラットフォームを研究している。しかしながら、報告された方法のほとんどは細胞を主に標的上皮細胞型に分化させ、線維化促進性および/または炎症性細胞型などの必須の支持成分を完全に欠いている。あるいは、出願人らは、上皮系列と支持系列を混合することによる共培養ベースのアプローチを提案したが、これらのアッセイは非常に可変的であり、上皮細胞培地(ECM)およびそれらを同時に維持することができる培地を選択することの困難性などの多くの人為的な変化によってしばしば混乱させられる。したがって、支持系統を疾患モデル化およびさらなるスクリーニング適用のために共同開発する、新しくて頑強なアッセイシステムの確立の必要性がある。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 国際公開第2015/185714号
(非特許文献)
(非特許文献1) Gori et al."Investigating Non alcoholic Fatty Liver Disease in a Liver-on-a-Chip Microfluidic Device",PLoS One 11(7):e0159729. Doi10.1371/journal.pone.0159729,July 20,2016.
(非特許文献2) Park et al."Lipotoxicity of Palmitic Acid on Neural Progenitor Cells and Hippocampal Neurogenesis",Toxicological Research,27(2),103:110,June 2011.
(非特許文献3) Nandivada et al."Treatment of Parenteral Nutrition-Associated Liver Disease:The Role of Lipid Emulsions",Nutr.Vol.4:711-717,November 2013.
(非特許文献4) Cabezas et al."Nonalcoholic Fatty Liver Disease:A Pathological View",Nobumi Tagaya,ISBN 978-953-51-0853-5,November 21,2012.
(非特許文献5) Kruitwagen et al."Long-Term Adult Feline Liver Organoid Cultures for Disease Modeling of Hepatic Steatosis" Stem Cell Reports,vol.8,no.4,April 1,2017.
(非特許文献6) Kruitwagen et al."Research Communications of the 26th ECVIM-CA Congress-20160908 to 2016091-SCH-O-5 LONG-TERM ADULT FELINE LIVER ORGANOID CULTURES FOR DISEASE MODELLING OF HEPATIC LIPIDOSIS", Journal of Veterinary Internal Medicine, vol.31,no.1,January 1,2017
(非特許文献7) Mori et al."Micropatterned organoid culture of rat hepatocytes and HepG2 cells" Journal of Bioscience and Bioengineering.Vol.106,no.3,September 1,2008.
(非特許文献8) Nantasanti et al."Concise Review: Organoids Are a Powerful Tool for the Study of Liver Disease and Personalized Treatment Design in Humans and Animals:Organoids for Disease Modeling and Therapy",Stem Cells Translational Medicine,vol.5,no.3.January 21,2016.
(非特許文献9) Ricchi et al."Differential effect of oleic and palmitic acid on lipid accumulation and apoptosis in cultured hepatocytes" Journal of Gastroenterology and Hepatology,vol.24,no.5,May 1,2009.
【外国語明細書】