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特開2023-85301高アンモニア血症を治療するためのグルタミン合成酵素の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085301
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】高アンモニア血症を治療するためのグルタミン合成酵素の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/53 20060101AFI20230613BHJP
   C12N 15/52 20060101ALI20230613BHJP
   C12N 9/00 20060101ALI20230613BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230613BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230613BHJP
【FI】
A61K38/53
C12N15/52 Z ZNA
C12N9/00
C12N15/62 Z
C07K19/00
A61P1/16
A61P39/02
A61P13/12
A61K47/60
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023038030
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2020515296の分割
【原出願日】2018-05-24
(31)【優先権主張番号】1708288.4
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1800867.2
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】519417779
【氏名又は名称】テリス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Thoeris GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】タマラ・ニコルソン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高アンモニア血症の治療のためのグルタミン合成酵素融合タンパク質、該融合タンパク質を含む医薬組成物、および該融合タンパク質の使用を提供する。
【解決手段】本発明は、高アンモニア血症の治療のためのタンパク質療法(酵素補充タンパク質療法などの)としてのグルタミン合成酵素の使用に関する。特に、本発明は、グルタミン合成酵素の全身投与に関する。グルタミン合成酵素は、循環中のその半減期を増加させるために、コンジュゲート型または融合型で提供され得る。グルタミン合成酵素を含む医薬組成物も提供される。本発明はまた、グルタミン合成酵素タンパク質および窒素捕捉剤などのアンモニア低下剤の組み合わせを含む使用、方法および組成物にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象への全身非経口投与による高アンモニア血症の治療または予防において使用するためのグルタミン合成酵素(GS)タンパク質。
【請求項2】
タンパク質が、アンモニア低下剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項1に記載の使用のためのタンパク質。
【請求項3】
高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、GSタンパク質と組み合わせて使用するためのアンモニア低下剤。
【請求項4】
高アンモニア血症が、尿素サイクル異常症(UCD)および/またはグルタミン合成酵素欠損症に起因して生じる、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項5】
高アンモニア血症が臓器不全と関連する、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項6】
高アンモニア血症が非アルコール性脂肪肝疾患に起因して生じる、請求項1から5のいずれか1項に記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項7】
高アンモニア血症が急性肝不全、肝硬変、ならびに/または腎機能障害および/もしくは腎不全に起因して生じる、請求項1から5に記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項8】
GSタンパク質が、配列番号1に記載されたアミノ酸配列と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む、またはその酵素的に活性な断片である、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項9】
GSタンパク質が医薬組成物の形態で投与される、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項10】
GSタンパク質が非経口栄養組成物の形態で投与される、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項11】
GSタンパク質が部分に連結されている、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項12】
部分が、タンパク質、ペプチド、非タンパク質ポリマーまたはアフィニティータグから選択される、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項13】
部分が、ポリエチレングリコール(PEG)である、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項14】
PEGが、GSタンパク質にタンパク質のN末端で連結されている、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項15】
GSタンパク質が、ペプチドリンカーまたは化学結合を介して部分に連結されている、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項16】
GSタンパク質が、共有結合を介して部分に連結されている、請求項8から12のいずれか1項に記載の使用のための前記請求項のいずれかに記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項17】
GSタンパク質が、対象への非経口投与に適した形態である、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項18】
GSタンパク質が、対象への皮下投与に適した形態にある、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項19】
GSタンパク質が、タンパク質の多量体型を含む調製として提供される、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項20】
GSタンパク質が単量体型で提供される、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項21】
アンモニア低下剤が、窒素捕捉剤、イオン交換樹脂(例えばRelapsa)、アンモニア吸収体(リポソームベースのアンモニア吸収体のような、例えばVersantis)、アンモニアを除去する操作されたマイクロバイオーム(例えばSynlogic)、リファキシミンおよびラクツロースからなる群から選択される、請求項2から20のいずれか1項に記載の使用のためのタンパク質、またはアンモニア低下剤。
【請求項22】
窒素捕捉剤が、フェニル酢酸の薬学的に許容される塩またはその薬学的に許容されるプロドラッグ、フェニル酪酸の薬学的に許容される塩、その薬学的に許容されるプロドラッグ、グリセロールフェニル酪酸、その薬学的に許容されるプロドラッグ、安息香酸の薬学的に許容される塩またはその薬学的に許容されるプロドラッグ、およびアンモニア結合樹脂からなる群から選択される、請求項21に記載の使用のためのタンパク質、または窒素捕捉剤。
【請求項23】
フェニル酢酸の薬学的に許容される塩がフェニル酢酸ナトリウムである、請求項22に記載の使用のためのタンパク質、または窒素捕捉剤。
【請求項24】
対象への全身非経口投与による高アンモニア血症の治療または予防のための組成物を製造するための、GSタンパク質の使用。
【請求項25】
高アンモニア血症の治療または予防のためにGSタンパク質と組み合わせて使用する組成物を製造するための、アンモニア低下剤の使用。
【請求項26】
高アンモニア血症の治療または予防において使用する組成物を製造するための、GSタンパク質およびアンモニア低下剤の使用。
【請求項27】
高アンモニア血症が、請求項4から7に定義された通りである、請求項24または26に記載のGSタンパク質および/またはアンモニア低下剤の使用。
【請求項28】
GSタンパク質が、請求項8から20に定義された通りである、請求項24から27のいずれか1項に記載のGSタンパク質および/またはアンモニア低下剤の使用。
【請求項29】
アンモニア低下剤が、窒素捕捉剤、イオン交換樹脂(例えばRelapsa)、アンモニア吸収体(リポソームベースのアンモニア吸収体のような、例えばVersantis)、アンモニアを除去する操作されたマイクロバイオーム(例えばSynlogic)、リファキシミンおよびラクツロースからなる群から選択される、請求項24から28のいずれか1項に記載のGSタンパク質および/またはアンモニア低下剤の使用。
【請求項30】
窒素捕捉剤が、請求項22または23に定義された通りである、請求項24から29のいずれか1項に記載のGSタンパク質および/またはアンモニア低下剤の使用。
【請求項31】
対象における高アンモニア血症を治療または予防する方法であって、前記対象にGSタンパク質を全身および非経口投与することを含む方法。
【請求項32】
アンモニア低下剤を投与することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
高アンモニア血症が、請求項4から7に定義された通りである、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
GSタンパク質が、請求項8から20に定義された通りである、請求項31から33に記載の方法。
【請求項35】
アンモニア低下剤が、窒素捕捉剤、イオン交換樹脂(例えばRelapsa)、アンモニア吸収体(リポソームベースのアンモニア吸収体のような、例えばVersantis)、アンモニアを除去する操作されたマイクロバイオーム(例えばSynlogic)、リファキシミンおよびラクツロースからなる群から選択される、請求項32から34に記載の方法。
【請求項36】
窒素捕捉剤が、請求項22または23に定義された通りである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
組成物が全身非経口投与に適した形態にある、高アンモニア血症の治療または予防において使用するためのGSタンパク質を含む組成物。
【請求項38】
高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、GSタンパク質と組み合わせて使用するためのアンモニア低下剤を含む組成物。
【請求項39】
GSタンパク質およびアンモニア低下剤を含む組成物。
【請求項40】
組成物が、高アンモニア血症の治療または予防において使用するためのものである、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
組成物が医薬組成物または栄養組成物である、請求項37から40のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
組成物が、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、請求項37から41のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項43】
組成物が全身非経口投与に適した形態にある、請求項38から42のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項44】
組成物が皮下投与に適した形態にある、請求項37から43のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項45】
組成物がさらなる治療剤を含む、請求項37から44のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項46】
高アンモニア血症が、請求項4から7に定義された通りである、請求項37から45のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
GSタンパク質が、請求項8から20に定義された通りである、請求項37から46のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項48】
アンモニア低下剤が、窒素捕捉剤、イオン交換樹脂(例えばRelapsa)、アンモニア吸収体(リポソームベースのアンモニア吸収体のような、例えばVersantis)、アンモニアを除去する操作されたマイクロバイオーム(例えばSynlogic)、リファキシミンおよびラクツロースからなる群から選択される、請求項38から47のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
窒素捕捉剤が、請求項22または23に定義された通りである、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
全身非経口投与用のGSタンパク質およびさらなる治療剤を含むキット。
【請求項51】
さらなる治療剤が、高アンモニア血症に対して有効である、請求項50に記載のキット。
【請求項52】
さらなる治療剤が、アンモニア低下剤またはそのアミノ酸もしくは尿素サイクル中間体もしくは類似体である、請求項50または51に記載のキット。
【請求項53】
アンモニア低下剤が、窒素捕捉剤、イオン交換樹脂(例えばRelapsa)、アンモニア吸収体(リポソームベースのアンモニア吸収体のような、例えばVersantis)、アンモニアを除去する操作されたマイクロバイオーム(例えばSynlogic)、リファキシミンおよびラクツロースからなる群から選択される、請求項52に記載のキット。
【請求項54】
窒素捕捉剤が、請求項22または23に定義された通りである、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
高アンモニア血症が、請求項4から7に定義された通りである、請求項50から54のいずれか1項に記載のキット。
【請求項56】
GSタンパク質が、請求項8から20に定義された通りである、請求項50から55のいずれか1項に記載のキット。
【請求項57】
高アンモニア血症の治療または予防において個別、同時または連続使用するための組み合わせ調製物としての、全身非経口投与用のGSタンパク質およびさらなる治療剤を含む生成物。
【請求項58】
さらなる治療剤が、アンモニア低下剤またはそのアミノ酸もしく尿素サイクル中間体もしくは類似体である、請求項57に記載の生成物。
【請求項59】
アンモニア低下剤が、窒素捕捉剤、イオン交換樹脂(例えばRelapsa)、アンモニア吸収体(リポソームベースのアンモニア吸収体のような、例えばVersantis)、アンモニアを除去する操作されたマイクロバイオーム(例えばSynlogic)、リファキシミンおよびラクツロースからなる群から選択される、請求項58に記載の生成物。
【請求項60】
窒素捕捉剤が、請求項22または23に定義された通りである、請求項59に記載の生成物。
【請求項61】
高アンモニア血症が、請求項4から7に定義された通りである、請求項57から60のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項62】
GSタンパク質が、請求項8から20に定義された通りである、請求項57から61のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項63】
高アンモニア血症の治療または予防において使用するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターであって、全身投与用である発現ベクター。
【請求項64】
アンモニア低下剤をさらにコードする、請求項63に記載の使用のための発現ベクター。
【請求項65】
高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、アンモニア低下剤と組み合わせて使用するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクター。
【請求項66】
高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターと組み合わせて使用するためのアンモニア低下剤。
【請求項67】
請求項63から66に定義された通りの使用のための発現ベクターを含む細胞。
【請求項68】
高アンモニア血症の治療または予防のための組成物を製造するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターの使用であって、組成物が全身投与用である、使用。
【請求項69】
高アンモニア血症の治療または予防のために、アンモニア低下剤と組み合わせて使用するための、組成物を製造するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターの使用。
【請求項70】
高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターと組み合わせて使用するための、組成物を製造するためのアンモニア低下剤の使用。
【請求項71】
対象における高アンモニア血症を治療または予防する方法であって、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターの全身投与を含む方法。
【請求項72】
対象における高アンモニア血症を治療または予防する方法であって、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクター、およびアンモニア低下剤の投与を含む方法。
【請求項73】
高アンモニア血症の治療または予防において使用するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターを含む組成物であって、全身投与用である組成物。
【請求項74】
アンモニア低下剤をさらに含む、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、アンモニア低下剤と組み合わせて使用するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターを含む組成物。
【請求項76】
高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターと組み合わせて使用するための、アンモニア低下剤を含む組成物。
【請求項77】
グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクター、およびさらなる治療剤を含むキット。
【請求項78】
さらなる治療剤が、高アンモニア血症に対して有効である薬剤であってもよい、請求項77に記載のキット。
【請求項79】
高アンモニア血症に対して有効である薬剤が、アンモニア低下剤またはそのアミノ酸もしくは尿素サイクル中間体である、請求項78に記載のキット。
【請求項80】
グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターおよびさらなる治療剤を、高アンモニア血症の治療または予防において個別、同時または連続使用するための組み合わせ調製物として含む生成物。
【請求項81】
さらなる治療剤が、請求項78または79に定義された通りである、請求項80に記載の生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高アンモニア血症の治療のためのタンパク質療法(酵素補充タンパク質療法などの)としてのグルタミン合成酵素の使用、および特にグルタミン合成酵素の全身投与に関する。グルタミン合成酵素は、故に、グルタミン合成酵素の循環レベルを増加させることを目的として、タンパク質、またはポリペプチドとして投与される。グルタミン合成酵素は、循環中のその半減期を増加させるために、コンジュゲート型または融合型で提供され得る。グルタミン合成酵素を含む医薬組成物も提供される。本発明はまた、グルタミン合成酵素タンパク質、および窒素捕捉剤などのアンモニア低下剤の組み合わせを含む使用、方法および組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
高アンモニア血症は、血液中の増加したまたは過剰なアンモニアを特徴とする代謝状態である。主に、アンモニアの脳への移行増加につながる可能性があり、それが今度は、とりわけ脳の損傷、発作、遅滞、昏睡およびさらには死につながる、極めて重症になり得る神経障害および精神神経異常を引き起こすことから、高アンモニア血症は危険な状態である。実際に、脳症は、高アンモニア血症の一般的で危険な合併症である。脳症/脳損傷の正確な機序はまだ解明されていないが、増加したアンモニアに起因する星状細胞の浸透圧ストレスが役割を果たし、脳浮腫および頭蓋内圧亢進につながっていると考えられている。高アンモニア血症は、先天性または後天性、および原発性または二次性であり得る。
【0003】
原発性(先天性)高アンモニア血症は、尿素サイクルのいずれかの酵素または輸送体タンパク質の活性低下を特徴とする様々な先天性代謝異常から生じる。実際に、そのような先天性代謝異常は、尿素サイクル異常症(urea cycle disorder)(UCD)と呼ばれる疾患群を形成する。pHに応じてその荷電形態、アンモニウム(NH )と体内に同時に存在し得るアンモニア(NH)は、タンパク質および他の窒素化合物の異化の産物である。アンモニアは、腎臓による尿中排泄の前に、尿素サイクルの酵素によって毒性の低い物質、尿素へ変換される。体内での特定のアミノ酸(アルギニン、シトルリンおよびオルニチン)生成の唯一の供給源としても機能する尿素サイクルは、6つの酵素[5つの触媒性酵素、カルバモイルリン酸合成酵素I(CPS1)、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、またはアルギニノコハク酸合成酵素(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)およびアルギナーゼ(ARG)、ならびに補因子生成酵素(co-factor producing enzyme)であるN-アセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)]、ならびに2つの輸送体タンパク質、オルニチントランスロカーゼ(ornithine translocase)(ORNT1)およびシトリンを含む。欠損は、これらの8つのタンパク質のいずれか1つまたは複数で生じ得る。最初の4つの酵素のいずれかの活性またはNAGSの活性の重度の欠乏または完全な欠如は、生後数日中にアンモニアおよび他の前駆体代謝産物の蓄積をもたらす。重症UCDの乳児は出生時には正常であるが、脳浮腫ならびに関連する徴候の嗜眠、食欲不振、過換気または低換気、高体温、発作、神経学的姿勢および昏睡を急速に発症する。UCDの重症度は、経路における欠損酵素の位置および酵素欠損の重症度によって影響される。迅速な同定および現在の治療戦略により、高アンモニア血症の新生児の生存率は過去数十年で劇的に向上したが、知的能力は一般的に損なわれる。これらの酵素のより軽度または部分的な欠損症、およびARG欠損症では、アンモニア蓄積が病気またはストレスによって、生涯のほとんどどの時点においても誘発される可能性がある。これらの障害では、血漿アンモニア濃度の上昇および症状(symptoms)はUCDの新生児症状(presentation)より軽微であることが多く、初めて認識される臨床エピソードが、数ヶ月または数十年にわたって生じない場合がある。
【0004】
二次性高アンモニア血症は、尿素サイクルの一部ではない酵素/タンパク質の活性低下(例えば、プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、ガラクトース血症、脂肪酸酸化障害およびミトコンドリア障害)、またはより広くアンモニア代謝および/もしくは窒素代謝に大きく寄与している細胞(例えば肝臓)の機能障害を特徴とする先天性中間代謝異常に起因する。
【0005】
後天性高アンモニア血症は通常、ウイルス肝炎または過剰なアルコール摂取などの急性および慢性肝不全の両方を含む肝臓疾患に起因する。肝臓における血液濾過の減少をもたらす肝臓機能障害または肝臓の血管バイパスは、高アンモニア血症につながる。高アンモニア血症による肝性脳症は、肝臓疾患の一般的な合併症である。
【0006】
高アンモニア血症はまた、腎機能障害、例えば腎臓の機能障害および/もしくは腎不全、薬物毒性(例えば、バルプロ酸またはシクロホスファミドによる)、免疫抑制療法もしくは細胞傷害性療法後の特発性高アンモニア血症症候群、滞留した尿および尿路感染症における尿素分解、または必須アミノ酸完全静脈栄養を含む他の理由でも生じ得る。
【0007】
高アンモニア血症に対する現在の治療は、例えば、血液透析(一般的に新生児で使用される)によって、または窒素老廃物の除去を増加させる化合物、例えば非吸収性二糖(例えばラクツロース)もしくは抗生物質[例えばリファキシミン(rifaxamin)]もしくは窒素を尿素以外の産物に変換し、次いで排泄される化合物[例えば、安息香酸ナトリウム、アルギニン、カルグルミン酸、フェニル酢酸塩もしくはより最近ではフェニル酪酸塩、またはL-オルニチンL-アスパラギン酸塩(LOLA)もしくはL-オルニチンフェニル酢酸塩(OP)などの化合物]を投与することにより、血中および/または脳内のアンモニアレベルを低減するように設計される。
【0008】
状態の管理はまた、タンパク質および/または窒素摂取量ならびにカロリーの非経口摂取量の管理を含む、タンパク質摂取量を制限し、適正な栄養摂取量を確保するための食事コントロールも含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、状態の治療および管理の改善にもかかわらず、現在の療法は非特異的であり、状態の管理に必ずしもうまく成功していない。特にUCDの場合、現在の療法は多くのアンモニア上昇イベントを予防することができず、重症型の該疾患患者は5歳前後で肝臓移植について評価されることが多い。それ故に、高アンモニア血症に対するさらなるまたは改善された療法が引き続き必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このニーズに対処しようとするものであり、グルタミン合成酵素を使用して、非毒性産物グルタミンに変換することによりアンモニアを解毒するという概念に基づく。特に、本発明は、血液中のアンモニアのレベルを低減するためのタンパク質療法としてグルタミン合成酵素を全身投与することを提案する。
【0011】
グルタミン合成酵素(GS)は反応を触媒する:
グルタミン酸+ATP+NH→グルタミン+ADP+リン酸。
【0012】
グルタミン合成は身体のいくつかの臓器で生じ、臓器および全身の窒素バランスにおいて役割を果たし得る。ごく最近、骨格筋内のGSの過剰発現に基づく遺伝子療法が、急性高アンモニア血症の治療に提案された(Torres-Vega et al, Gene Therapy 2015, 22, 58-64)。この療法の理論的根拠は、肝臓疾患患者の筋肉において一般的に欠乏しているGSを置き換え、または増やし、これにより筋肉内のこの酵素によるアンモニアのクリアランスを増加させることを目指すというものである。しかし、遺伝子療法は、臨床診療で成功裏に施行するのが困難なことが判明しており、全ての患者が遺伝子療法に適しているわけではなく(例えば小児、幹細胞ベースの遺伝子療法を例外として)、または患者は遺伝子療法に不応性である場合がある(例えば免疫理由のために)。さらに、そのような療法は、筋肉に主に局所的効果をもたらすであろう。したがって、より一般的に適用可能な療法のニーズは依然として残っている。
【0013】
タンパク質としてのGSの全身的投与は、そのようなより一般的な効果を達成するのに役立つ可能性がある。本発明者らは、GS、特にヒトGSが成功裏に発現および精製され得、非修飾、およびポリエチレングリコールなどのポリマーパートナーに結合された修飾形態のいずれにおいてもGS活性を保持または発揮し得ることを示した。さらに、動物試験は、GSの高い循環レベルが全身投与によって達成され得ること、ならびに動物に投与された修飾および非修飾GSのいずれもが、血液および他の組織(例えば肝臓)において活性を保持することを示した。故に、GSの治療的レベルは、GSタンパク質の全身(例えば非経口)投与によって達成され得る。
【0014】
さらに、本発明者らはまた、GSタンパク質およびアンモニア低下剤(窒素捕捉剤、例えば、フェニル酢酸ナトリウムなどのフェニル酢酸の薬学的に許容される塩などの)の併用には相乗効果があり、高アンモニア血症を治療または予防するGSタンパク質の能力をさらに高め得ることも驚くべきことに見出した。したがって、1つの態様において本発明は、対象への全身非経口投与による高アンモニア血症の治療または予防において使用するためのグルタミン合成酵素(GS)タンパク質を提供する。
【0015】
適切な実施形態において、高アンモニア血症の治療または予防において使用するためのGSタンパク質は、アンモニア低下剤と組み合わせて使用するためのものであってもよい。
【0016】
別の態様において、本発明は、高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、GSタンパク質と組み合わせて使用するためのアンモニア低下剤を提供する。
【0017】
本発明の関連する態様はまた、対象への全身非経口投与による高アンモニア血症の治療または予防のための組成物(例えば医薬組成物または栄養組成物、例えば医薬品またはサプリメント)の製造のためのGSタンパク質の使用も提供する。
【0018】
適切な実施形態において、組成物は、アンモニア低下剤と組み合わせて使用するためのものであってもよい。
【0019】
本発明のさらなる態様はまた、高アンモニア血症の治療または予防のためにGSタンパク質と組み合わせて使用する組成物を製造するためのアンモニア低下剤の使用も提供する。
【0020】
さらなる態様において本発明は、高アンモニア血症の治療または予防において使用する組成物を製造するためのGSタンパク質およびアンモニア低下剤の使用を提供する。
【0021】
さらなる態様において本発明は、対象における高アンモニア血症を治療または予防する方法であって、前記対象(より具体的には、それを必要とする対象)にGSタンパク質を全身および非経口投与することを含む方法を提供する。適切な実施形態において、方法は、アンモニア低下剤を投与することをさらに含む。
【0022】
対象への全身非経口投与による高アンモニア血症の治療または予防において使用するための、GSタンパク質を含む組成物も提供される。
【0023】
適切には、GSタンパク質を含む組成物は、医薬組成物または栄養組成物、例えば医薬品またはサプリメントであってもよい。適切には、組成物は、アンモニア低下剤をさらに含んでもよい。
【0024】
本発明はまた、高アンモニア血症の治療または予防において使用するためのアンモニア低下剤を含む組成物に関する。適切には、アンモニア低下剤を含む組成物は、医薬組成物または栄養組成物、例えば医薬品またはサプリメントであってもよい。
【0025】
本発明はまた、GSタンパク質およびアンモニア低下剤を含む組成物に関する。
【0026】
適切には組成物は、医薬組成物または栄養組成物となり得る。適切には、組成物は、高アンモニア血症の治療または予防において使用するためのものであってもよい。
【0027】
用語「GSタンパク質」は、あるいは、「グルタミン合成酵素(GS)活性を有するタンパク質」として表現することができる。用語「タンパク質」は、ペプチドおよびポリペプチド、ならびにタンパク質またはポリペプチド断片を含む任意のタンパク質性分子を含むように本明細書で広く使用される。以下により詳細に記載されるように、GSタンパク質は、これが天然に現れる場合の(例えば、天然のまたは野生型GS)完全長のGS酵素でなくても、または該GS酵素に対応しなくてもよく、切断されたまたは他の変異体が含まれる。また、含まれるのは、同様に以下により詳細に記載されるように、GSタンパク質と他の分子とのコンジュゲート、または融合体である。
【0028】
用語「高アンモニア血症」は、任意の状態がない対象、例えば、健康な対象、または高アンモニア血症につながるもしくはこれを引き起こす基礎疾患がない対象におけるアンモニアのレベルと比較して、血液中の(または任意の血液由来産物もしくは試料、例えば血漿で測定もしくは決定された)アンモニアが上昇する任意の状態を含む。健康上、アンモニア輸送および代謝は、低い血漿/血中濃度(正常範囲10~40μmol/L)を維持するようにしっかり制御される。故に、>40、60もしくは70もしくは80μmol/Lまたはそれ以上、例えば41、42、45、50、55、60、70もしくは80μmol/Lまたはそれ以上の血漿(または血中)アンモニア濃度は、高アンモニア血症を示していると見なされ得る。例えば、正常なアニオンギャップおよび正常な血漿グルコース濃度と関連する>100μmol/L、および特に150μmol/L以上の血漿アンモニア濃度は、高アンモニア血症、またはより具体的には、UCDの存在を示している可能性がある。
【0029】
高アンモニア血症は、上記で論じられた原因または状態のいずれかから生じ得、すなわち高アンモニア血症は、上記で論じたように先天性または後天性、原発性または二次性であり得る。故に、1つの実施形態において高アンモニア血症は、尿素サイクル異常症(UCD)に起因して(または関連して)生じ得る。上記で論じたように、UCDは、タンパク質の活性を不活性化または低減する可能性がある、尿素サイクルのタンパク質のいずれか1つまたは複数の欠損から生じ得る。
【0030】
さらなる実施形態において高アンモニア血症は、尿素サイクルの一部ではないが、体内の窒素代謝および/またはバランスに影響を与え、血液中のアンモニア量の増加につながるタンパク質(例えば酵素)に影響を与える先天性代謝異常に起因して生じ得る。適切には、そのような先天性代謝異常は、グルタミン合成酵素欠損症であり得る。
【0031】
さらなる実施形態において、高アンモニア血症は後天性であり得、窒素代謝および/またはバランス、例えば、窒素含有分子または物質の異化および/または排出に関与する身体の臓器または組織、例えば肝臓または腎臓の疾患または損傷によって生じ得る。
【0032】
故に、慢性または急性肝不全の両方を含むいかなる種類の肝臓損傷または疾患、例えば過剰なアルコール消費量に起因するまたは薬物(レクリエーショナルであろうと、医薬品であろうと)に起因する肝臓損傷、いずれかの原因に起因する肝硬変、非アルコール性脂肪肝疾患、肝臓の感染症または肝臓への外傷は、高アンモニア血症につながる可能性がある。
【0033】
同様に、上記に肝臓について記載された、腎臓のいかなる種類の損傷または疾患もまた、高アンモニア血症につながる可能性がある。故に、例えば、敗血症、傷害からの臓器損傷(外的傷害、例えば外傷であろうと、内的傷害、例えば自己免疫障害からであろうと)、または任意の全身性感染症などの身体の複数の臓器を冒す任意の状態(例えば多臓器不全)は、高アンモニア血症を生じさせる可能性がある。
【0034】
高アンモニア血症は、根底にある原因に応じて、臨床的、生化学的および/または分子遺伝学的データに基づき検出または診断することができる。故に例えば、高アンモニア血症は、当技術分野で周知のおよび使用される手法に従ってアンモニアの血中レベル(例えば、血漿または血清または任意の血液由来試料中の)を評価またはモニタリングすることにより、検出することができる。血液(血漿または血清等)中に存在するアミノ酸および/もしくはその濃度(例えば、アルギニンまたはシトルリン)、または血液もしくは他の体液もしくは組織中の他の代謝産物(例えば、尿中オロチン酸)の分析もまた、UCDが関与していることを同定するのに役立つ場合があり、および/またはその正確な性質(すなわち、関与している特異的タンパク質/酵素欠損)を決定するであろう。そのような決定および分析は、物理的(例えば、MRIまたは他の撮像)および/または行動/応答検査等の両方、肝臓および/または腎臓または他の臓器機能検査等を含む、臨床評価、例えば神経学的および精神神経病学的評価と組み合わせることができる。UCDが疑われる場合、家族歴の調査および/または分子遺伝学的検査のおよび/または尿素サイクル酵素の酵素活性の評価もまた行われ得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、本発明による使用のためのグルタミン合成酵素またはGSタンパク質への言及は、ヒトGSおよびヒト以外の動物(マウス、ウシ、ウサギ、ラット、サル、チンパンジー、およびイヌ等などの)由来、または例えば菌類、植物もしくは細菌を含む他の供給源由来のGS、ならびに酵素的に活性な変異体を含む、酵素的に活性なGSの全ての形態への言及を含む。代表的なGSタンパク質としては、故に、配列番号1もしくは2もしくは4(それぞれヒトGS、前駆体、成熟N末端タグ化型)に記載されたGSポリペプチド、または配列番号6[ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acididophilus)株30SC由来のGS]もしくは配列番号7[トウモロコシ、ゼア・マイス(Zea Mays)由来のGS]に記載されたGSポリペプチド、またはその酵素的に活性な断片と、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するものが挙げられる。例えば、GSへの言及はまた、Nおよび/もしくはC末端切断ポリペプチドまたはアミノ酸修飾タンパク質(例えば、アデニル化などの翻訳後修飾、またはタンパク質の構造もしくは活性に影響を与え得るアミノ酸多型などの他の修飾)も含み得る。GSへの言及はまた、タンパク質の多量体も含み得る。用語「GS」は、故に、全ての天然型のGS酵素またはポリペプチド、ならびにGS酵素活性を保持する1つまたは複数のアミノ酸置換、付加(挿入および伸長を含む)または欠失を有する合成的に誘導および修飾されたポリペプチドを含む、その酵素的に活性な断片または変異体を含む。
【0036】
GSは、故に、酵素分類EC6.3.1.2の範囲内にある任意の酵素であってもよく、または該酵素に由来してもよい。GSは、GS活性を有する任意のポリペプチドまたはペプチドであってもよい。GS活性は、例えば上記に示された反応スキームに従って、グルタミン酸およびアンモニアをグルタミンに変換する能力として定義することができる。GS活性は、当技術分野で公知のおよび文献に記載されたアッセイまたはテスト(例えば機能的活性アッセイ)を用いて評価または決定することができる。例えば、GS酵素活性アッセイは、Listrom et al, Biochem. J. 1997, 328, 159-163に記載されている。GS活性のアッセイはまた、以下の実施例にも記載されている(実施例2および4参照)。
【0037】
該用語はまた、それ自体ではGS活性を示さないが、対象に投与すると活性なGSに変換され得る形態の、GSのプロドラッグも含む。
【0038】
故に、本明細書で使用される場合、GSタンパク質またはポリペプチドに関して「酵素的に活性な」は、グルタミンへのグルタミン酸およびアンモニアの変換を触媒することができるGSタンパク質またはポリペプチドを指す。典型的には、酵素的に活性なGSタンパク質またはポリペプチドは、配列番号1、2、4、6または7に記載されたGSポリペプチドの酵素活性の少なくともまたは約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%を示す。
【0039】
用語「対象」は本明細書で使用される場合、任意のヒトまたはヒト以外の動物を含み、例えばヒト、霊長類、家畜動物(例えばヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ)、実験室テスト動物(例えばマウス、ウサギ、ラット、モルモット)、コンパニオン動物(例えばイヌ、ネコ)および捕獲野生動物(例えばキツネ、カンガルー、シカ)を含む、特に哺乳動物を指す。好ましくは、哺乳動物は、ヒトまたは実験室テスト動物である。さらにより好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「治療(treating)」、「治療(treatment)」、「予防(preventing)」および「予防(prevention)」は、状態もしくは症状を治すもしくは改善する、状態もしくは疾患の確立を予防する、またはさもなければ、状態もしくは疾患もしくは他の望ましくない症状の進行をいかなる方法であろうと予防する、妨げる、遅らせる、低減するもしくは好転させる、あらゆる使用を指す。故に用語「治療(treating)」および「予防(preventing)」等は、その最も広い文脈で考えられるべきである。例えば、治療は、患者が完全に回復するまで治療されることを必ずしも含意するわけではないが、患者もしくは対象の状態、または疾患もしくは状態の症状の任意の向上または改善を含む。故に、例えばUCDの場合、本発明による治療は、根底にある遺伝性障害は当然ながら治療しないが、むしろ高アンモニア血症の結果として生じる臨床状態を治療する。複数の症状を示すまたは複数の症状を特徴とする状態では、治療または予防は、前記症状の全てを必ずしも治す、改善する、予防する、妨げる、遅らせる、低減するまたは好転させるわけではないが、前記症状の1つまたは複数を治す、改善する、予防する、妨げる、遅らせる、低減するまたは好転させる可能性がある。適切な実施形態において、本発明による「治療」は、例えば正常または健康なレベル、例えば範囲10~40μmol/Lへの、血液中のアンモニアのレベルの低減を含み得る。故に、治療は、正常または健康なアンモニアレベルの回復を含む。同様に、本発明による予防は、上記に示されているように、任意の正常または健康な範囲での血漿/血中アンモニアレベルの維持を含み得る。
【0041】
適切な実施形態において、本発明による「治療」は、対象の組織におけるグルタミン合成酵素レベルおよび/または活性の、例えば正常または健康なレベルへの増加を含み得る。そのような増加は、任意の適切な組織(例えば肝臓および/または筋肉)においてであってもよい。グルタミン合成酵素レベルおよび/または活性の増加は、例えば、対象におけるグルタミンのレベル、グルタミン酸のレベルを測定すること、および/またはグルタミンのレベルとグルタミン酸のレベルの比を決定することにより決定することができる。正常または健康なグルタミンおよび/またはグルタミン酸のレベルは、これらが測定される試料に応じて異なり得ることが理解されるであろう。また、正常または健康なグルタミンおよび/またはグルタミン酸のレベルは、対象特異的であり、対象の体重、食生活、性別および年齢などの要因に依存し得ることも理解されるであろう。正常または健康なグルタミンおよび/またはグルタミン酸のレベルは、当業者に公知であろう。
【0042】
適切な実施形態において本発明による「治療」は、浮腫の低減を含み得る。用語「浮腫」は、本明細書で使用される場合、対象における漿液の異常な蓄積を指す。適切な実施形態において、浮腫は、脳浮腫、肺浮腫、抹消浮腫、および/または黄斑浮腫であってもよい。適切には、本発明の文脈において、「治療」は、脳浮腫(例えば前頭前野の)の低減を指し得る。例として、浮腫は、CTスキャン、MRI、および/またはx線によって評価することができる。浮腫を評価する他の方法は、当業者に公知であろう。
【0043】
適切な実施形態において本発明による「治療」は、神経心理学的、神経精神病学的および神経認知的機能の向上を含み得る。用語「神経心理学的、神経精神病学的および神経認知的機能」は、例えば、記憶、注意、認知、精神運動活性、協調および気分をコントロールする脳の機能を指す。GSタンパク質およびアンモニア低下剤の組み合わせを含む本発明の使用、方法および組成物は、そのような実施形態において特に有用であり得る。神経機能を評価するための様々な方法は、当業者に公知であろう。ニューロン機能状態は、脳波記録、コンピュータによるテスト、紙と鉛筆によるテスト、および神経心理学者による評価を用いて評価することができる。
【0044】
適切な実施形態において本発明による「治療」は、サルコペニアおよび身体機能の向上を含み得る。用語「サルコペニア」は、筋肉量の低減を指す。用語「身体機能」は、対象の力、特に筋力を指す。サルコペニアの重症度は、臨床ツール、栄養ツール、身体組成の測定、または撮像を使用することにより決定することができる。身体機能は、例えば、酸素デリバリーおよび消費、運動テストおよび握力テスト、ならびに/または疲労のレベルの向上、ならびに/または免疫系機能の評価によって評価することができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「改善(amelioration)」は、状態または疾患の少なくとも1つの指標または症状の重症度の低下を指す。特定の実施形態において、改善は、状態または疾患の1つまたは複数の指標の進行における遅延または減速を含む。指標の重症度は、当業者に公知の主観的または客観的尺度によって決定することができる。
【0046】
本明細書で使用される場合、アンモニアレベルの上昇と「と関連する」疾患または状態の文脈で使用されるときの用語「と関連する(associated with)」は、疾患または状態が、アンモニアレベルの上昇の結果生じ得る、アンモニアレベルの上昇をもたらし得る、アンモニアレベルの上昇を特徴とし得る、またはさもなければアンモニアレベルの上昇と関連し得ることを意味する。故に、疾患または状態とアンモニアレベルの上昇の関連は、直接的または間接的であってもよく、時間的に離れていてもよい。
【0047】
アンモニアのレベルを決定するための適当な試料としては、アンモニアが生じ得る任意の適当なまたは望ましい試料が挙げられる。同様に、グルタミン合成酵素レベルおよび/またはグルタミン合成酵素活性を決定するための適当な試料としては、グルタミン合成酵素、グルタミンおよび/またはグルタミン酸が存在し得る任意の適当なまたは望ましい試料が挙げられる。これらは、任意の適当なまたは望ましい組織試料または体液試料であってもよい。適切な組織の例は、肝臓および/または筋肉組織である。好都合には、試料は、任意の体液試料であってもよく、典型的には血液または任意の血液由来試料、例えば血漿または血清等となろうが、任意の他の体液、例えば尿、脳脊髄液、または糞便もしくは組織試料等、例えば生検試料または洗浄液(lavage fluid)もしくは洗浄液(washing fluid)試料等であってもよい。これは、当然ながら、治療される等の状態のまさにその性質に依存し得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、望ましい効果を提供するための、文脈に応じてGSタンパク質および/またはアンモニア低下剤の、非毒性であるが十分な量または用量をその意味の範囲内で含む。該タンパク質および/またはアンモニア低下剤の有効量は異なり得ることが理解されるであろう。例示的な治療有効量は、本明細書の他の部分に明記されている。
【0049】
必要とされる正確な量または用量は、治療される種、対象の年齢および全身状態、治療される状態の重症度、投与される特定のFMO3、および投与様式等などの要因に応じて対象ごとに異なるであろう。故に、正確な「有効量」を明記することは適当ではない。しかし、任意の所与のケースについて、適当な「有効量」は、日常的な実験のみを用いて当業者によって決定され得る。
【0050】
ヒトGSは、373個のアミノ酸のポリペプチド(配列番号1に示された)として発現される。これは、発現された場合の完全「前駆体」タンパク質に相当し、該タンパク質は、次いでアミノ酸2~373を有する成熟型にさらにプロセシングされる(配列番号2に示された372個のアミノ酸の成熟タンパク質をインビボで(in vivo)もたらすようにN末端メチオニンのみが除去されている。配列番号3に記載された例示的なポリヌクレオチドは、配列番号1のポリペプチドをコードするcDNAに相当する。配列番号4は、以下の実施例で調製および使用されるように、N末端 Hisタグおよびリンカー配列を備えた配列番号1のGSポリペプチドを含む、修飾されたヒトGSタンパク質に相当する。配列番号5は、以下の実施例で使用されるように、細菌における発現のためにコドン最適化された配列番号4のポリペプチドをコードするcDNA配列である。
【0051】
ヒトGSは、十分に特徴付けられている(例えばListrom et al., 1997、上記参照)。植物および細菌を含む他の生物由来のGS酵素もまた同定されており、そのような他のGS酵素の核酸およびアミノ酸配列は当技術分野で周知であり、例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)ヌクレオチド(ncbi.nlm.nih.gov/nuccore)およびタンパク質(ncbi.nlm.nih.gov/protein)データベースなどの自由に利用可能なデータベースで提供されている。植物または細菌のGS酵素とヒトGSの間の配列同一性は低くなり得るが、構造的および機能的類似性は高い。したがって、植物もしくは細菌のGS、もしくは実際に他の生物由来のGS、またはそのアミノ酸配列変異体が使用され得る。代表的な例として、配列番号6は、ヒトGSと23.8%の配列同一性およびラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)のGSと61.9%の配列同一性を有する、ラクトバチルス・アシドフィルス株30SC由来のGSのアミノ酸配列を記載し、ならびに配列番号7は、ヒトGSと55.7%の配列同一性を有する、トウモロコシ(corn)[トウモロコシ(maize)、ゼア・マイス]由来のGSのアミノ酸配列を記載する。
【0052】
GSは、一般的に、複数(すなわち、2またはそれ以上)の単量体サブユニットを含む多量体として存在する。例えば、上記に提供されたGSアミノ酸配列は、そのような単量体サブユニットに相当する。ヒトGSは、十二量体(12個のサブユニット)として最も高頻度で報告されている。本明細書で使用される場合、GSは、単量体および/または多量体として提供され得る。多量体は、2個以上の単量体サブユニット、例えば2~20個、2~16個、2~15個、2~14個または2~12個のサブユニットを含み得る。
【0053】
実際に、本発明の驚くべき特徴は、12サブユニット多量体という文献の報告に反して、ヒトGSを、単量体型も含む複数の異なるタイプの多量体の混合物として発現するおよび/または得ることができることである。単量体型は、活性であることが示されている。故に、本発明によれば、GSは、単量体としておよび/または多量体として使用することができ、多量体は、単一の多量体型として、または単量体を含んでも含まなくてもよい異なる多量体型の混合物として提供することができる。以下の例で報告されるように、4個以上、例えば4~10個、例えば5~8個の多量体型が得られ得る。多量体のサイズは、2~20個のサブユニットであり得る。
【0054】
本明細書で提供される方法において使用されるGSタンパク質は、得られたGSが酵素活性を示すことを条件として、組換え方法、タンパク質単離および精製方法、ならびに化学合成方法などの当技術分野で公知の任意の方法によって得ることができる。したがって、GSは、組換えGS、組織から単離された天然のGS、または化学的に合成されたGSであってもよい。
【0055】
配列番号1に記載されたポリペプチドなどのGSポリペプチドを修飾して、本明細書で提供される方法において使用するための酵素的に活性なGS変異体を生成することは、十分に当業者の能力の範囲内である。例えば、当業者は、基質結合、または活性部位に関与する位置での修飾は、これらの重要な領域の外側の位置での修飾より耐用性が低い可能性があることを理解するであろう。グルタミンへのグルタミン酸およびアンモニアの変換を触媒するGSポリペプチドの能力を評価するために、以下の実施例に記載されるものなどの当技術分野で周知の方法を用いて、任意のGSポリペプチドをテストすることができる。
【0056】
いくつかの例では、本明細書で本発明により使用されるGSは、当技術分野で周知の原核生物または真核生物発現系を用いて作製される組換えGSである。例示的な原核生物発現系としては、以下に限定されるものではないが、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)発現系が挙げられ、例示的な真核生物発現系には、以下に限定されるものではないが、酵母、昆虫細胞および哺乳動物細胞発現系が挙げられる。
【0057】
GSをコードする核酸は、以下に限定されるものではないが、肝臓RNAのRT-PCRおよび合成ヌクレオチド合成を含む任意の適切な方法によって得ることができる。増幅のためのプライマーは、上記に記載されたものなどの公知のGS配列に基づき設計することができる。GSの核酸およびアミノ酸配列は当技術分野で周知であり、例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)ヌクレオチド(ncbi.nlm.nih.gov/nuccore)およびタンパク質(ncbi.nlm.nih.gov/protein)データベースなどの自由に利用可能なデータベースで提供されている。
【0058】
配列番号3に記載された配列を有する核酸などのGSポリペプチドをコードする核酸は、最適な発現系に適した発現ベクターにクローニングすることができる。いくつかの例では、核酸は、特定の系での発現にコドン最適化される。例えば、GSポリペプチドをコードする核酸は、エシェリキア・コリでの発現にコドン最適化されてもよい。エシェリキア・コリでの発現のためのGSをコードする例示的なコドン最適化核酸は、配列番号5に記載されており、GGGGSリンカー(配列番号4に記載された)を介して結合されたHisタグを含むGSポリペプチドをコードする。
【0059】
典型的にはGSをコードする核酸は、異種の核酸分子の発現を促進する制御配列に作動可能に連結された発現ベクターにクローニングされる。GSの発現に適した多くの発現ベクターが利用可能であり、当業者に公知である。発現ベクターの選択は、宿主発現系の選択によって影響される。そのような選択は、当業者の技術のレベルの十分に範囲内である。一般に、発現ベクターは、転写プロモーターおよび適宜エンハンサー、翻訳シグナル、ならびに転写および翻訳終結シグナルを含むことができる。安定な形質転換に使用される発現ベクターは、典型的には、形質転換された細胞の選択および維持を可能にする選択可能なマーカーを有する。いくつかの場合では、細胞中のベクターのコピー数を増幅するのに複製起点が使用され得る。
【0060】
GSポリペプチドはまた、タンパク質融合体として発現することもできる。例えば、融合体は、追加の機能性をポリペプチドに加えるように生成されてもよい。融合タンパク質の例としては、以下に限定されるものではないが、GSおよび精製のためのアフィニティータグ(例えばHisタグ、例えばhis6、MYC、FLAG、HAまたはGSTタグ)、リーダー配列(pelBリーダー配列などの)、タンパク質分泌を指示する配列、またはGSを安定化および/もしくは可溶化するタンパク質(例えばマルトース結合タンパク質(MBP))、またはインビボ半減期を増加させるタンパク質(例えば、アルブミンもしくはFcドメイン、またはそれらの断片)を含有する融合体が挙げられる。
【0061】
原核生物、特にエシェリキア・コリは、大量のGSを作製するための系を提供する。エシェリキア・コリの形質転換は、当業者に周知の簡単で迅速な手法である。エシェリキア・コリの発現ベクターは、高レベルのタンパク質発現の誘導、および宿主細胞に対してある程度の毒性を示すタンパク質の発現に有用な誘導性プロモーターを含有することができる。誘導性プロモーターの例としては、lacプロモーター、trpプロモーター、ハイブリッドtacプロモーター、T7およびSP6 RNAプロモーター、ならびに温度制御λPLプロモーターが挙げられる。
【0062】
他の例では、GSを作製するのにバキュロウイルス発現系などの真核生物発現系が使用される。典型的には、発現ベクターは、高レベル発現のためのバキュロウイルスのポリヘドリンプロモーターなどのプロモーターを使用する。一般的に使用されるバキュロウイルス系としては、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)、およびカイコ(Bombyx mori)核多角体病ウイルス(BmNPV)などのバキュロウイルス、ならびにスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)に由来するSf9、シューダレチア・ウニプンクタ(Pseudaletia unipuncta)(A7S)およびオオカバマダラ(Danaus plexippus)(DpNl)などの昆虫細胞株が挙げられる。高レベル発現のためには、GSのヌクレオチド配列は、ウイルスのポリヘドリン開始コドンのすぐ下流に融合される。
【0063】
サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母もまた、GSの発現宿主として使用することができる。酵母は、エピソーム複製ベクターを用いて、または相同組換えによる安定な染色体組込みによって形質転換することができる。典型的には、GALl、GAL7、およびGAL5などの誘導性プロモーターが、遺伝子発現を制御するのに使用される。酵母発現ベクターは、形質転換DNAを選択および維持するためのLEU2、TRPl、HIS3、およびURA3などの選択可能なマーカーを含むことが多い。
【0064】
哺乳動物発現系もまた、GSを発現するのに使用することができる。発現コンストラクトは、アデノウイルスなどのウイルス感染、またはリポソーム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランなどの直接DNA導入、ならびに電気穿孔およびマイクロインジェクションなどの物理的手段によって哺乳動物細胞に導入することができる。哺乳動物細胞用の発現ベクターは、典型的には、mRNAキャップ部位、TATAボックス、翻訳開始配列(コザックコンセンサス配列)およびポリアデニル化エレメントを含む。そのようなベクターは、高レベル発現のための転写プロモーター-エンハンサー、例えばSV40プロモーター-エンハンサー、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)の長末端反復を含むことが多い。哺乳動物発現に利用可能な例示的な細胞株としては、以下に限定されるものではないが、BHK、293-F、CHO、Balb/3T3、HeLa、MT2、マウスNSO(非分泌)および他の骨髄腫細胞株、ハイブリドーマおよびヘテロハイブリドーマ細胞株、リンパ球、線維芽細胞、Sp2/0、COS、NIH3T3、HEK293、293S、293T、2B8、およびHKB細胞などのマウス、ラット、ヒト、サル、ならびにニワトリおよびハムスター細胞が挙げられる。
【0065】
発現後、GSは、以下に限定されるものではないが、SDS-PAGE、サイズ画分およびサイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、キレートクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよびアフィニティークロマトグラフィーを含む、当業者に公知の任意の方法を用いて精製することができる。アフィニティー精製法は、調製の効率および純度を向上するのに使用され得る。例えば、GSを結合する抗体および他の分子がアフィニティー精製において使用され得る。上記で論じたように、発現コンストラクトは、his、myc、FLAGもしくはHAタグまたはGST部分などのアフィニティータグをGSに加えるように操作されてもよく、次いで、それぞれNi樹脂、myc抗体、HA抗体、FLAG抗体またはグルタチオン樹脂を用いてアフィニティー精製されてもよい。純度は、SDSページおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)などのゲル電気泳動および染色および分光光度法を含む、当技術分野で公知の任意の方法によって評価することができる。
【0066】
本発明による使用のために、アフィニティータグ(例えばhisタグ等)が除去されてもよいが、これは必ずしも必要ではなく、GSポリペプチドは結合されたタグと共に使用されてもよい。
【0067】
タグまたは他の融合パートナーは、当技術分野で周知の原理に従って、任意の適切なリンカーであり得るリンカーを介してGSに結合されてもよい。そのようなリンカーは、典型的にはおよび好都合には、短い(例えば2~10、2~8または2-6mer)ペプチドであってもよい。例としてリンカーGGSGが挙げられ得るが、任意の適切なアミノ酸から成っていてもよい。アミノ酸リンカーは、組換え手段によって融合タンパク質の調製を可能にするが、非アミノ酸ベースのリンカーもまた、やはり当技術分野で周知のおよび文献に記載されている原理および手法に従って使用され得る。リンカーは、切断可能(例えば酵素的に)または非切断可能であってもよい。
【0068】
GSポリペプチドは、裸のポリペプチド鎖として、あるいはさらなる部分または化学基もしくは物質に結合またはコンジュゲートすることにより修飾される修飾ポリペプチドとして調製することができる。例示的な修飾としては、以下に限定されるものではないが、ペグ化、アルブミン化(albumination)または他の公知の修飾が挙げられる。例えば、いくつかの例では、記載された方法において使用するためのGSポリペプチドは、当技術分野で周知の標準的な方法を用いてペグ化される。これは、例えば、循環中のGSタンパク質の半減期を増加させるのに役立ち得る。故に、本発明の好ましい実施形態においてGSタンパク質は、ポリエチレングリコール(PEG)または多糖もしくはオリゴ糖などのポリマーとのコンジュゲートとして提供されてもよい。PEGとのコンジュゲートが特に好ましい。上記に示されているように、そのようなコンジュゲートの調製は、当技術分野で周知であり、文献に記載されている。故に、コンジュゲーを調製するのに、例えば100ダルトン~100kD、ただしより頻繁には5kD~100kD、例えば12または15kD~60または80kD、例えば15~50、15~40、または15~30kDなどの様々なサイズのPEGが使用され得る。さらに、PEGは、GSタンパク質に様々な方法で結合または連結することができ、1つを超えるPEGが1つ1つのタンパク質に結合され得る。PEGは、上記の融合タンパク質に関して直接的または間接的に、例えば記載されているリンカーを介して、もしくはリンカー機能を提供し得る任意の分子基もしくは化学基によって連結することができる。故に、PEGは、NまたはC末端の一方または両方、あるいはGS分子の内部、例えばGSタンパク質分子の1つもしくは複数のリジン残基のアミノ基、または該タンパク質分子の任意の他の化学的部分もしくは残基で連結することができる。PEGなどのポリマーをタンパク質に結合またはコンジュゲートする方法は、当技術分野で周知であり、文献に記載されている(例えば、Roberts et al. 2012, Advanced Drug Delivery Reviews, 64 (supplement) 116-127およびVeronese 2001, Biomaterials 22, 405-417参照)。以下の実施例に提示されるデータは、PEGをN末端に連結して調製されたPEGコンジュゲートが、例えば様々なコンジュゲートを投与された動物由来の肝臓溶解物の活性アッセイにおいて、特に有効であることを示している。したがって、GSタンパク質のN末端に連結されたPEGを含むPEGコンジュゲートは、本発明の1つの好ましい実施形態となる。GSタンパク質は、単量体および/または多量体型でペグ化されてもよい。故に、便宜上、単量体型および様々な多量体型の両方のGSを含む調製物がペグ化に供されてもよい。
【0069】
GSは、対象に投与するための医薬組成物として製剤化することができる。GSは、選択された量のGSを1つまたは複数の生理学的または薬学的に許容される担体または賦形剤と混合して、任意の従来の様式で製剤化することができる。
【0070】
したがって、本発明のさらなる態様は、非経口全身投与用である、GSタンパク質および1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0071】
担体または賦形剤の選択は投与専門医の技術の範囲内であり、投与様式などのいくつかのパラメーターに依存し得る。いくつかの例では、GSは液体として提供される。他の例では、GSは、乾燥(desiccated)または凍結乾燥形態などの乾燥(dried)形態で提供される。そのような乾燥形態は、水、緩衝液、生理食塩水または他の適切な溶液などの適切な溶液の添加により、投与の前に再水和することができる。本明細書で提供されるGSは、直接投与用に製剤化されてもよく、または希釈もしくは他の変更のために製剤化されてもよい。したがって、GSは、単回(または単位)投与形態または複数回投与形態で製剤化することができる。単回投与形態の例としては、アンプルおよびシリンジが挙げられる。複数回投与形態の例としては、複数の単位用量を含有するバイアルおよびボトルが挙げられる。
【0072】
製剤中のGSの濃度は、投与するとグルタミン酸の存在下でアンモニアをグルタミンに変換するのに有効なGSの量をデリバリーするのに有効である。濃度および量は、対象における基質レベル、および投与様式を含むいくつかの要因に依存し、経験的に決定することができる。本明細書で提供される組成物中のGSの例示的な濃度としては、以下に限定されるものではないが、(約)0.1、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、1000、2000、3000、4000もしくは5000mg/mL GSまたはそれ以上の濃度が挙げられる。
【0073】
GS組成物を製剤化するために、1つの実施形態においてGSの重量画分が、望ましい濃度で選択された媒体に溶解、懸濁、分散され、またはさもなければ混合される。得られた混合物は、溶液、懸濁液、エマルションおよび他のそのような混合物であり、以下に限定されるものではないが、溶液、懸濁液、ペースト、ゲル、エアロゾル、スプレー、または全身投与に適した任意の他の製剤を含む、非水性または水性混合物として製剤化することができる。
【0074】
一般に、GS組成物は、規制機関からの承認を考慮して調製され、またはさもなければ動物およびヒトでの使用に関して一般に認識されている薬局方に従って調製される。GS組成物は、希釈剤、賦形剤、または媒体などの担体を含んでもよい。そのような薬学的担体は、水および油などの滅菌液体であってもよい。生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた、特に注射可能な溶液のための液体担体として使用することができる。組成物は、活性な成分と一緒に、希釈剤、例えば、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウム、またはカルボキシメチルセルロース;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルク;ならびに結合剤、例えば、デンプン、天然ゴム、例えばアカシアゴム、ゼラチン、グルコース、糖蜜、ポリビニルピロリジン、セルロースおよびその誘導体、ポビドン、クロスポビドン、および当業者に公知の他のそのような結合剤を含有することができる。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールが挙げられる。GS組成物はまた、所望であれば、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム(triethanolamine sodium acetate)、オレイン酸トリエタノールアミン、および他のそのような薬剤を含有することもできる。適切な薬学的担体の例は、E. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
組織標的化リポソームを含むリポソーム懸濁液もまた、薬学的に許容される担体として適切である場合がある。これらは、当業者に公知の方法により調製することができる。リポソームデリバリーとしてはまた、コラーゲンゲルおよびフィブロネクチンで修飾されたリポソームなどの医薬マトリックスを含む徐放性製剤も挙げられ得る。
【0075】
医薬組成物だけでなく、GSはまた、他の手段、例えば、食事サプリメントなどの栄養組成物、例えば非経口栄養組成物で製剤化または投与することもできる(例えば、単独でまたは他のサプリメント成分と一緒に)。GSは、ポリペプチド(例えば精製された酵素)として、または発現宿主細胞もしくは生物の一部としてそのような食品に含まれてもよい。故に、例えば微生物(例えば、酵母または細菌または真菌)宿主細胞または植物(植物細胞を含む)が、GSを発現するように操作されてもよく、それ自体、例えば細胞全体または抽出物もしくは他の処理物(酵素活性を保持することができる)として投与されてもよく、または栄養組成物に組み込まれてもよい。故に、例えば、ヒトまたはヒト以外の動物の消費に適した細菌または酵母細胞が、GSを発現するように操作されてもよい(すなわち、GSをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子の導入によって)。あるいは、植物が類似の(analagous)様式で操作されてもよく、適当な植物の部分等(例えば種、葉、塊茎等)が投与に提供されてもよい。どの微生物(例えば酵母、細菌、藻または真菌)がヒトまたは他の動物の消費に適しているかは当技術分野で公知であり、多くのそのような生物が、今日、例えば生菌製剤で使用されている。任意のそのような生菌生物または製剤は、例えば、ビフィドバクテリウムまたはラクトバチルス属種(例えばラクトバチルス・アシドフィルス)等などの乳酸菌に基づき使用され得る。故に、本発明によればそのような生物または調製物は、GI管用に製剤化されてもよく、および例えば注射もしくは注入、または浣腸もしくは直腸投与等によって、GI管に直接投与されてもよい。対象に投与されるGSの正確な量または用量は、GSの活性、投与経路、治療される疾患または状態、投薬回数、ならびに対象の体重、年齢および全身状態などの他の検討事項に依存する。特定の投薬量および投与プロトコルは経験的に決定することができ、または例えば、動物モデルでの試験から推定することができる。GSの例示的な治療有効用量としては、以下に限定されるものではないが、1日につき(約)1μg/kg~(約)1000μg/kg体重、または1日につき(約)10μg/kg~(約)100μg/kg体重を含む、1日につき(約)0.1μg/kg体重~1日につき(約)10000μg/kg体重が挙げられる。故に、例えば、対象は、1日につき体重1kgあたり0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、400、600、800、1000、2000、4000、6000、8000、10000、もしくは20000μgまたはそれ以上のGSを投与されてもよい。
【0076】
GSは、全身投与されるが非経口であることが本発明の特徴である。「経口」とは、経口デリバリーによることを意味する。したがって、非経口は、GSタンパク質が口を介した摂取によって投与されないことを意味する。GSタンパク質を腸、またはより一般には胃腸(GI)管にデリバリーする他の投与手段が挙げられ得るが(例えば直腸に、または浣腸、もしくはGI管への直接投与によって)、特定の実施形態においてこれらは除外される。したがって、特定の実施形態において本発明は腸内投与を含むが、別の実施形態では含まない。さらなる実施形態において本発明は、筋肉、特に骨格筋への投与を含まない。故に、そのような実施形態において投与は、筋肉を対象にしない、すなわち非筋肉指向型療法(non-muscle directed therapy)である。
【0077】
したがって、GSは、GSタンパク質を全身にデリバリーするが、経口投与を含まない任意の方法および経路によって投与することができる。特定の実施形態においてGSタンパク質は、非経口的に投与され得る。当業者は、各投与経路に適した様式で案出された、以下に限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、皮内、経皮、皮下、または腹腔内投与を含む、およびそれらのいずれか2つ以上の任意の組み合わせによる、投与またはデリバリーの適当な方法を容易に理解し、選択することができるであろう。いくつかの例では、本明細書に記載されたGS組成物は皮下投与される。他の例ではGS組成物は、静脈内投与される。例えば、GS組成物は、静脈内ボーラスなどの注射または注入よって静脈内投与することができる。
【0078】
GSタンパク質はまた、他の治療剤または活性剤、特に、高アンモニア血症を治療(例えば改善)し得る第2のまたはさらなる治療剤と併用してまたは組み合わせて投与することもできる。高アンモニア血症を治療するのに活性である第2のまたはさらなる治療剤は、あるいは、抗高アンモニア血症(hyperammonenia)剤または高アンモニア血症に対する薬剤として定義されてもよい。第2のまたはさらなる薬剤は、典型的には、窒素捕捉剤(またはアンモニア捕捉剤)または置換アミノ酸もしくは尿素サイクル中間体、またはその類似体などのアンモニア低下剤であり得る。そのような薬剤は、それ故に、アミノ酸、例えばアルギニン、グルタミン酸、シトルリンおよび/もしくはオルニチン、ならびに/またはN-アセチルグルタミン酸および/もしくは類似体分子カルバミルグルタミン酸[Carbaglu(登録商標)]を含み得る。より適切には、第2のまたはさらなる薬剤は、アンモニア低下剤、より適切には窒素捕捉剤である。そのような実施形態は、本発明の特定の態様をもたらす。
【0079】
用語「アンモニア低下剤」は、アンモニアを除去および/もしくは低減し、またはアンモニア産生を阻害する化合物を指す。アンモニア低下剤は、窒素捕捉剤、イオン交換樹脂(例えばRelapsa)、アンモニア吸収体(リポソームベースのアンモニア吸収体のような、例えばVersantis)、アンモニアを除去する操作されたマイクロバイオーム(例えばSynlogic)、リファキシミンおよびラクツロースからなる群から選択されてもよい。
【0080】
用語「窒素捕捉剤」は、本明細書で使用される場合、アンモニアを除去することにより対象における窒素および/またはアンモニアのレベルを低減する化合物を指す。適切な実施形態において窒素捕捉剤は、フェニルアセチルグルタミンに代謝され、次いで尿中に排泄される得ることにより、対象における窒素および/またはアンモニアの量を低減する。
【0081】
適切な実施形態において、窒素捕捉剤は、フェニル酢酸の薬学的に許容される塩(本明細書ではフェニル酢酸塩とも呼ばれる)、フェニル酪酸の薬学的に許容される塩(本明細書ではフェニル酪酸塩とも呼ばれる)、グリセロールフェニル酪酸、安息香酸の薬学的に許容される塩、その薬学的に許容されるプロドラッグ、およびアンモニア結合樹脂からなる群から選択されてもよい。他の窒素捕捉剤は当業者に周知であろう。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、例えば、十分に塩基性であるフェニル酢酸の酸付加塩、例えば、無機酸または有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、シトリックメタンスルホネート(citric methane sulfonate)またはマレイン酸との例えば酸付加塩を含む。さらに、十分に酸性であるフェニル酢酸の適切な薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩もしくはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩もしくはマグネシウム塩、アンモニウム塩または薬学的に許容されるカチオンを提供する有機塩基との塩、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、モルホリンまたはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミンとの塩である。
【0083】
適切な実施形態において、フェニル酢酸の薬学的に許容される塩は、フェニル酢酸ナトリウム、フェニル酢酸カリウム、オルニチンフェニル酢酸塩からなる群から選択されてもよい。
【0084】
適切な実施形態において、フェニル酪酸の薬学的に許容される塩は、フェニル酪酸ナトリウムおよびフェニル酢酸カリウムからなる群から選択されてもよい。
【0085】
適切な実施形態において、安息香酸の薬学的に許容される塩は、安息香酸ナトリウムおよび安息香酸カリウムからなる群から選択されてもよい。
【0086】
アンモニア低下剤は、例えば水和形態などの、溶媒和形態および非溶媒和形態で存在してもよいことが理解されるものとする。本発明の文脈において包含されるのは、全てのそのような溶媒和形態および非溶媒和形態であることが理解されるべきである。
【0087】
用語「プロドラッグ」は、本明細書で使用される場合、化学的または生物学的部分によってアンモニア低下剤(窒素捕捉剤などの)より活性が低下されているが、アンモニア低下剤に代謝される、またはインビボで加水分解を受けてアンモニア低下剤を形成する薬剤を指す。
【0088】
特に、循環からグルタミンを除去するように作用する(GSの作用によって形成されるグルタミン)、フェニル酢酸またはフェニル酪酸化合物などの薬剤が好ましい。アンモニア低下剤などの第2のまたはさらなる薬剤は、同じ製剤もしくは組成物中、または別個の組成物もしくは製剤中でを含め、GSタンパク質と個別、連続的または同時に投与されてもよい。
【0089】
したがって、さらなる態様において、本発明は、全身非経口投与用のGSタンパク質およびさらなる治療剤を、高アンモニア血症の治療または予防において個別、同時または連続使用するための組み合わせ調製物として含む生成物を提供する。
【0090】
第2のまたはさらなる薬剤は、経口を含む同じ投与経路または異なる投与経路によって投与されてもよい。故に、1つの例示的な実施形態において、第2のまたはアンモニア低下剤などのさらなる薬剤は、経口的に、または他の全身的手段によって投与されてもよく、GSは、非経口全身的手段によって投与されてもよい。
【0091】
窒素捕捉剤(フェニル酢酸ナトリウム、オルニチンフェニル酢酸塩、フェニル酪酸ナトリウム、または安息香酸ナトリウムを含む)などのアンモニア低下剤は、例えば急性管理のために静脈内注入によって、および/または例えば長期維持のために経口的に投与されてもよい。i.v.注入は末梢であってもよいが、中心i.v.注入が好ましい。同様に、アルギニンなどのアミノ酸は、経口的に、またはi.v.、例えば中心i.v.注入によって投与されてもよい。
【0092】
したがって、本発明のさらなる態様は、全身非経口投与用のGSタンパク質およびさらなる治療剤を、高アンモニア血症の治療または予防において個別、同時または連続使用するための組み合わせ調製物として含む生成物(例えば、組み合わせ生成物)を提供する。適切な実施形態において、そのようなさらなる治療剤はアンモニア低下剤であってもよい。より適切には、アンモニア低下剤は窒素捕捉剤であってもよい。より適切には、窒素捕捉剤は、フェニル酢酸の薬学的に許容される塩、より適切にはフェニル酢酸ナトリウムであってもよい。
【0093】
あるいは、本発明のこの態様はまた、(a)全身非経口投与用のGSタンパク質および(b)さらなる治療剤を含むキットも提供すると見なせる。適切には、さらなる治療薬は、高アンモニア血症に対して有効となり得る。適切には、さらなる治療剤は、アンモニア低下剤、より適切には窒素捕捉剤である。
【0094】
したがって、さらなる態様において本発明は、(a)全身非経口投与用のGSタンパク質および(b)窒素捕捉剤を含むキットを提供する。適切には、窒素捕捉剤は、フェニル酢酸の薬学的に許容される塩、より適切にはフェニル酢酸ナトリウムであってもよい。
【0095】
そのようなキットは、高アンモニア血症の治療または予防において使用するために提供され得る。キットの構成要素は、当該薬剤を1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤と一緒に含む別個の医薬組成物として提供されてもよい。本発明の組成物は、1回または1回を超えて投与することができる。1回を超えて投与される場合、組成物は一定の間隔でまたは必要に応じて、例えば臨床医によって決定されたように投与することができる。一定の間隔としては、例えば、ほぼ毎日、毎週、隔週、毎月、または任意の他の間隔が挙げられ得る。治療プロトコルの選択は、当業者の技術のレベルの十分に範囲内である。例えば、プロトコルは、動物モデルでの試験に基づき決定され得る。他の例では、血液中のアンモニアレベルが 所定のレベルを上回る場合、組成物の反復用量が対象に投与されてもよい。
【0096】
本発明による、GSタンパク質と組み合わせたGSタンパク質の使用、またはアンモニア低下剤の使用は、遺伝子療法が適切もしくは適当でない対象、例えば小児、または遺伝子療法に不応性である対象の治療に有利である。そのような不応性の対象としては、例えば、遺伝子療法のデリバリーに使用されるウイルスベクターに以前に曝露されている者、またはこれに免疫反応を示している者が挙げられ得る。
【0097】
有利には、治療剤としてのタンパク質の使用は、より高用量の活性タンパク質を対象にデリバリーし、対象およびニーズに従って用量を調整できるようにする。さらに、遺伝子療法と比較して、タンパク質療法は、はるかに速い応答を可能にし、故に緊急の使用によりに適している。
【0098】
すでに述べたように、本発明の1つの態様は、高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、GSタンパク質と組み合わせて使用するためのアンモニア低下剤を含む医薬組成物に関する。アンモニア低下剤は、対象に投与するための医薬組成物として製剤化することができる。アンモニア低下剤は、選択された量の窒素捕捉剤を、1つまたは複数の生理学的または薬学的に許容される担体または賦形剤と混合することにより、任意の従来の様式で製剤化することができる。適切には、組成物は、非経口全身投与用、または経口投与用であってもよい。医薬組成物はまた、GSタンパク質を含むこともできることが理解されるであろう。そのような実施形態において、組成物は非経口全身投与用に製剤化されるであろう。
【0099】
担体または賦形剤の選択は投与専門医の技術の範囲内であり、投与様式などのいくつかのパラメーターに依存し得る。いくつかの例ではアンモニア低下剤は、液体として提供される。他の例では、アンモニア低下剤は、乾燥形態で提供される。そのような乾燥形態は、水、緩衝液、生理食塩水または他の適切な溶液などの適切な溶液の添加により、投与の前に再水和することができる。アンモニア低下剤は、直接投与用に製剤化されてもよく、または希釈もしくは他の変更のために製剤化されてもよい。したがって、アンモニア低下剤は、単回(または単位)投与形態または複数回投与形態で製剤化することができる。単回投与形態の例としては、アンプルおよびシリンジが挙げられる。複数回投与形態の例としては、複数の単位用量を含有するバイアルおよびボトルが挙げられる。
【0100】
製剤中のアンモニア低下剤の濃度は、投与すると窒素および/もしくはアンモニウムを循環から除去し、またはアンモニア産生を低減もしくは阻害するのに有効なアンモニア低下剤の量をデリバリーするのに有効である。濃度および量は、対象における基質レベル、および投与様式を含むいくつかの要因に依存し、経験的に決定することができる。本明細書で提供される組成物中のアンモニア低下剤の例示的な濃度としては、以下に限定されるものではないが、、(約)0.1、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、1000、2000、3000、4000もしくは5000mg/mLアンモニア低下剤またはそれ以上の濃度が挙げられる。
【0101】
アンモニア低下剤組成物を製剤化するために、1つの実施形態においてアンモニア低下剤の重量画分が、望ましい濃度で選択された媒体に溶解、懸濁、分散され、またはさもなければ混合される。得られた混合物は、溶液、懸濁液、エマルションおよび他のそのような混合物であり、以下に限定されるものではないが、溶液、懸濁液、ペースト、ゲル、エアロゾル、スプレー、または全身投与に適した任意の他の製剤を含む、非水性または水性混合物として製剤化することができる。
【0102】
一般に、アンモニア低下剤は、規制機関からの承認を考慮して調製され、またはさもなければ動物およびヒトでの使用に関して一般に認識されている薬局方に従って調製される。組成物は、希釈剤、賦形剤、または媒体などの担体を含んでもよい。そのような薬学的担体は、水および油などの滅菌液体であってもよい。生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた、特に注射可能な溶液のための液体担体として使用することができる。組成物は、活性な成分と一緒に、希釈剤、例えば、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウム、またはカルボキシメチルセルロース;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルク;ならびに結合剤、例えば、デンプン、天然ゴム、例えばアカシアゴム、ゼラチン、グルコース、糖蜜、ポリビニルピロリジン、セルロースおよびその誘導体、ポビドン、クロスポビドン、および当業者に公知の他のそのような結合剤を含有することができる。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールが挙げられる。フェニル酢酸、またはその薬学的に許容される塩組成物はまた、所望であれば、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、および他のそのような薬剤も含有することができる。適切な薬学的担体の他の例は、当業者に公知であろう。
【0103】
アンモニア低下剤は、化合物を身体にデリバリーする任意の方法および経路によって投与することができる。特定の実施形態において、アンモニア低下剤は、非経口的に投与することができる。当業者は、各投与経路に適した様式で製剤化された、以下に限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、皮内、経皮、皮下、または腹腔内投与を含む、およびそれらのいずれか2つ以上の任意の組み合わせによる、投与またはデリバリーの適当な方法を容易に理解し、選択することができるであろう。
【0104】
医薬組成物だけでなく、アンモニア低下剤はまた、他の手段、例えば、食事サプリメントなどの栄養組成物、例えば非経口栄養組成物で製剤化または投与することもできる(例えば、単独でまたは他のサプリメント成分と一緒に)。適切には、そのような組成物は、経口または非経口投与用であってもよい。
【0105】
すでに述べたように、アンモニア低下剤は、GSタンパク質と組み合わせて投与するためのものである。アンモニア低下剤は、同じ製剤もしくは組成物中、または別個の組成物もしくは製剤中でを含め、GSタンパク質と個別、連続的または同時に投与されてもよいことが理解されるであろう。故に、1つの例示的な実施形態においてアンモニア低下剤は、経口的に、または他の全身的手段によって投与されてもよく、GSは、非経口全身的手段によって投与されてもよい。
【0106】
アンモニア低下剤の例示的な治療有効用量としては、以下に限定されるものではないが、1日につき(約)10mg/kg~約1000mg/kg体重、または1日につき約100mg/kg~約500mg/kg体重を含む、1日につき約1mg/kg体重~1日につき(約)2000mg/kg体重が挙げられる。故に、例えば、対象は、1日につき体重1kgあたり1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、もしくは2000mgまたはそれ以上のアンモニア低下剤を投与されてもよい。アンモニア低下剤の他の例示的な治療有効用量としては、以下に限定されるものではないが、約1g/日~約50g/日が挙げられる。故に、例えば、対象は、1日につき1、2、3、4、5、10、20、30、40、もしくは50グラム、またはそれ以上のアンモニア低下剤を投与されてもよい。有効用量は、アンモニア低下剤に応じて異なり得ることが理解されるであろう。GS組成物、および/またはアンモニア低下剤を含む組成物もしくはアンモニア低下剤ではないさらなる薬剤を含む組成物は、所望であれば、1つまたは複数の単位投与形態を含有することができる、針付きシリンジ、またはバイアルおよび針付きシリンジなどの、パッケージ、キットまたはディスペンサ装置で提示されてもよい。キットまたはディスペンサ装置は、投与説明書が添付されていてもよい。GS組成物およびアンモニア低下剤を含む組成物が別個である実施形態において、キットは、GS組成物およびアンモニア低下剤を含む組成物を含み得る。適切には、そのような実施形態において、キットは、GS組成物、および窒素捕捉剤を含み得る。適切には、そのような実施形態において、キットは、GS組成物、およびフェニル酢酸塩、例えばフェニル酢酸ナトリウムを含む組成物を含み得る。組成物は、包装材料、組成物、および組成物が高アンモニア血症または高アンモニア血症と関連する疾患もしくは状態を治療するために、対象に投与するためのものであることを示すラベルを含有する製品としてパッケージされてもよい。
【0107】
さらなる態様において、本発明は、高アンモニア血症の治療または予防において使用するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターであって、身投与用である発現ベクターを提供する。
【0108】
適切な実施形態において、ベクターは、アンモニア低下剤をさらにコードする。
【0109】
別の態様において、本発明は、高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、アンモニア低下剤と組み合わせて使用するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターを提供する。
【0110】
別の態様において、本発明は、高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターと組み合わせて使用するためのアンモニア低下剤を提供する。
【0111】
別の態様において、本発明は、高アンモニア血症の治療において使用するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクター、および高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、アンモニア低下剤と組み合わせて使用するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターからなる群から選択される発現ベクターを含む細胞を提供する。
【0112】
別の態様において、本発明は、高アンモニア血症の治療または予防のための組成物を製造するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターの使用であって、組成物が全身投与用である、使用を提供する。
【0113】
別の態様において、本発明は、高アンモニア血症の治療または予防のために、アンモニア低下剤と組み合わせて使用するための、組成物を製造するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターの使用を提供する。
【0114】
別の態様において、本発明は、高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターと組み合わせて使用するための、組成物を製造するためのアンモニア低下剤の使用を提供する。
【0115】
別の態様において、本発明は、対象における高アンモニア血症を治療または予防する方法であって、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターの全身投与を含む方法を提供する。
【0116】
別の態様において、本発明は、対象における高アンモニア血症を治療または予防する方法であって、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクター、およびアンモニア低下剤の投与を含む方法を提供する。
【0117】
別の態様において、本発明は、組成物が全身投与である、高アンモニア血症の治療または予防において使用するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターを含む組成物を提供する。
【0118】
適切な実施形態において、組成物は、アンモニア低下剤をさらに含んでもよい。
【0119】
別の態様において、本発明は、高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、アンモニア低下剤と組み合わせて使用するための、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターを含む組成物を提供する。
【0120】
別の態様において、本発明は、高アンモニア血症の治療または予防において使用するために、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターと組み合わせて使用するための、アンモニア低下剤を含む組成物を提供する。
【0121】
別の態様において、本発明は、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクター、およびさらなる治療剤を含むキットを提供する。適切には、さらなる治療剤は、高アンモニア血症に対して有効である薬剤であってもよい。適切には、高アンモニア血症に対して有効である薬剤は、アンモニア低下剤またはそのアミノ酸もしくは尿素サイクル中間体である。
【0122】
別の態様において、本発明は、グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする発現ベクターおよびさらなる治療剤を、高アンモニア血症の治療または予防において個別、同時または連続使用するための組み合わせ調製物として含む生成物を提供する。適切には、さらなる治療剤は、高アンモニア血症に対して有効である薬剤であってもよい。適切には、高アンモニア血症に対して有効である薬剤は、アンモニア低下剤またはそのアミノ酸もしくは尿素サイクル中間体である。より適切には、さらなる治療剤は窒素捕捉剤である。
【0123】
適切な実施形態において、発現ベクターは、ウイルス性または非ウイルス性であってよい。例として、適切なウイルス性発現ベクターは、パラミクソウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、およびヘルペスウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来し得る。他の適切なウイルスベクターは、当業者に公知であろう。
【0124】
適切な非ウイルス性発現ベクターは、無機粒子発現ベクター(リン酸カルシウム、シリカ、および金などの)、脂質ベースの粒子発現ベクター(例えば、カチオン性脂質、脂質ナノエマルション、および固体脂質ナノ粒子)およびポリマーベースの粒子発現ベクター[例えば、ペプチド、ポリエチレンイミン、キトサン、およびデンドリマー(dendimers)]からなる群から選択されてもよい。他の適切な非ウイルス性発現ベクターは、当業者に公知であろう。
【0125】
適切な全身投与方法は、当業者に公知であろう。例として、全身投与は、静脈内または皮下経路などの非経口投与経路によって達成されてもよい。「全身投与」は、発現ベクター産物(グルタミン合成酵素またはその生物学的に活性な断片などの)を患者の複数の部位内で発現できるようにすることが理解されるであろう。本発明の文脈において、全身投与は筋肉内投与を含まない。
【0126】
用語「生物学的に活性な」は、グルタミン酸をグルタミンに変換する能力を示すグルタミン合成酵素(配列番号1)をコードする核酸の断片または変異体を指す。配列番号1に記載のタンパク質は、配列番号2に記載の核酸配列によってコードされる。故に、ベクターは、グルタミン合成酵素の生物学的に活性な断片または変異体をコードする配列番号2の断片または変異体を含み得ることが理解されるであろう。
【0127】
用語「変異体」は、本明細書で使用される場合、配列番号1のポリペプチドの一次構造の変更を含むポリペプチドを指す。適切には、変異体は、配列番号1のポリペプチドと70%以上の同一性;配列番号1のポリペプチドと80%以上の同一性;配列番号1のポリペプチドと90%以上の同一性;配列番号1のポリペプチドと95%以上の同一性;配列番号1のポリペプチドと96%以上の同一性;配列番号1のポリペプチドと97%以上の同一性;配列番号1のポリペプチドと98%以上の同一性;またはさらには配列番号1のポリペプチドと99%以上の同一性を共有してもよい。変異体は、配列番号1に記載の配列に関して、配列番号1のポリペプチドと1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、10%以上、20%以上、またはさらには30%以上異なってもよい。
【0128】
用語「断片」は、本明細書で使用される場合、配列番号1のポリペプチドの一次構造の長さの変更を含むポリペプチドを指す。適切な断片は、配列番号1の完全長の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%を含み得る。実際に、適切な変異体は、配列番号1の少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%を含み得る。
【0129】
(文脈が他を要求する場合を除いて)高アンモニア血症の予防において使用するためのGSタンパク質、アンモニア低下剤と組み合わせて使用するためのGSタンパク質、GSタンパク質と組み合わせて使用するためのアンモニア低下剤、それらの使用、治療方法、組成物、キットおよび生成物に関して記載された実施形態は、本発明の残りの態様に概ね適用可能であることが理解されるであろう。
【0130】
本発明は、以下の非限定的実施例および図を参照してこれよりさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0131】
図1図1は、実施例1で調製されるヒトGSタンパク質の20kDa N末端アルデヒドPEGコンジュゲートのSuperose 12カラムでのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す。グラフは、多量体が画分8および9、ならびに単量体が画分10に溶出されたことを示す。
図2図2は、様々なGS候補:非コンジュゲートGS(wt GS)および陰性対照と対比したPEGコンジュゲート変異体(Trin GS1、Trin GS2、Trin GS3、Trin GS 4)のインビトロ(in-vitro)GS活性の比較を示す。グルタミン合成酵素活性が、Acosta et al., 2009, World J. Gastroenterol.,15(23), 2893-2899のアッセイに従ってOD570nmとして示されている。Trin GS1 - (N末端アルデヒド単量体);Trin GS2 - Nof-20;Trin GS3 - Nof-30、Trin GS4 - N末端アルデヒド単量体。
図3図3は、(A)ベースライン、(B)投与後24時間、および(C)投与後72時間時点の様々なコンジュゲートのオス、野生型(wt)CD1マウスの投与前および投与後の血漿に関するPEG ELISA結果を示す。(Trin1 - N末端アルデヒドコンジュゲートGS単量体;Trin2 - Nof-20 GSコンジュゲート多量体;Trin 3 - Nof-30コンジュゲートGS多量体;Trin4 - N末端アルデヒドコンジュゲートPEG多量体)
図4図4は、実施例3に記載されている、2.5mg/kg、投与後3日の投与されたwt CD1マウスにおける肝臓溶解物中のGS活性(OD535nm)結果を示す。
図5図5Aは、肝臓GS活性アッセイ結果を示す。図5Bは、血漿GS活性アッセイ結果を示す。両方とも、肝臓および血漿GS活性は、GSタンパク質、およびGSタンパク質と窒素捕捉剤で治療されたBDLラットでアッセイされた。
図6図6は、GSタンパク質、およびGSタンパク質と窒素捕捉剤で治療されたBDLラットで測定されたアンモニア血中レベルを図示する。
図7図7は、GSタンパク質、またはGSタンパク質と窒素捕捉剤で治療されたBDLラットにおける前頭前野の浮腫の割合を示すグラフを図示する。
図8図8は、GSタンパク質、またはGSタンパク質と窒素捕捉剤で治療されたBDLラットのロータロッド握力テストの結果を示す。
図9図9は、GSタンパク質、またはGSタンパク質と窒素捕捉剤(SP - フェニル酢酸ナトリウム)で治療されたOTCマウスのアンモニアレベルを示すグラフである。
図10図10は、GSタンパク質、またはDSタンパク質と窒素捕捉剤(SP - フェニル酢酸ナトリウム)で治療されたOTCマウスの血漿および肝臓GS活性におけるアンモニアレベルの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例0132】
GSタンパク質およびGSタンパク質-PEGコンジュゲートの作製および精製
ヒトグルタミン合成酵素(GS)の作製:ヒトGSの遺伝子(HisタグおよびリンカーGGGGSをGSのN末端にコードする5’配列を含み、細菌における発現のためにコドン最適化された配列番号5)を含有するpET30aベクターを、エシェリキア・コリ発現系で使用した。プラスミド構築後、GSの発現の評価を広範な誘導(IPTG)および発現温度で行った。ヒトGSは、SDS-PAGEによって検出されたコンストラクトで可溶性に発現した。溶解緩衝液(50mMトリス pH8.0、10%グリセロール、0.1%トリトンX-100、100ug/mlリゾチーム、1mM PMSF、3単位のDNAse、2mM MgCl)を使用して細胞から可溶性タンパク質を抽出した。可溶性タンパク質は、遠心分離後に抽出した。発現試験後、最良の条件をBL21(DE3)細胞で見出し、培養し、0.1mM IPTGで25℃、16時間誘導した。試した他の条件には、多様なIPTG誘導(0.01M~0.1M IPTG)の使用、様々なインキュベーション温度(16℃~37℃にわたる)、および4~16時間の誘導インキュベーション時間が含まれた。
【0133】
発現GSの精製:発現タンパク質の最初の精製工程は、Ni-NTAビーズによるHisタグ精製、20mMイミダゾールによる洗浄、および300mMイミダゾールによる溶出を含んだ。
【0134】
タンパク質PEGコンジュゲーション:GSタンパク質を、還元条件下で(20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムの使用により)N末端アルデヒド20kDa pegに16時間コンジュゲートした(Dr Reddy’s 20kDa N末端Aldehyde PEG)。
【0135】
最終精製:コンジュゲートしたタンパク質を、SECクロマトグラフィーを用いてさらに精製した。Superose6またはSuperose 12カラム(図1参照)を使用した。多量体は画分8±9で見出された。Superose 12の画分10は(低濃度の)多量体を含んだ。Superose 6では、多量体が画分8+9、単量体が画分12/13で見出された。
【0136】
トレハロースおよびスクロースを含有するPBS、pH7.4中のGSの最終製剤を調製した。
【実施例0137】
GS調製物の活性
Ehrenfeld et al., 1963, J. Biol. Chem. 238(11)、3711-3716に記載された元のアッセイから修正されたAcosta et al., 2009のアッセイ(上記参照)を用いて、実施例1に従って調製した様々なGS調製物およびPEGコンジュゲートをGS活性についてテストした。
【0138】
100ugの精製タンパク質試料を、以下の反応緩衝液に添加した:150μLストック溶液(100mmol/Lイミダゾール-HCl緩衝液[pH7.1]、40mmol/L MgCl2、50mmol/L、β-メルカプトエタノール、20mmol/L ATP、100mmol/L、グルタミン酸、およびpH7.2に調整した200mmol/Lヒドロキシルアミン)。チューブを37℃で15分間インキュベートした。0.6mL [2×濃度]塩化第二鉄試薬(0.37mol/L FeCl3、0.67mol/L HClおよび0.20mol/Lトリクロロ酢酸)を添加して反応を停止した。試料を氷上に5分間置いた。沈殿したタンパク質を10,000gで遠心分離によって除去し、上清の吸光度を試薬ブランクに対して535~570nmで読み取った。結果を図2に示す。Trin1 - (Dr Reddy’sから入手した20kDサイズのN末端アルデヒド単量体PEG);Trin2 - NOF corporationから入手した、単官能性直鎖状20kD PEG、NHS活性エステルとGSタンパク質にコンジュゲートされたNof-20コンジュゲートGS);Trin3 - NOF corporationから入手した、単官能性直鎖状30kD PEG、NHS活性エステルとGSタンパク質にコンジュゲートされたNof-30);Trin4 - N末端アルデヒド、GS多量体)。他のコンジュゲートの活性は類似していたが、Trin4(N末端アルデヒド多量体)は最良の活性を示し、wt GS(非コンジュゲート)と比べて活性プロファイルは酷似していた。
【実施例0139】
GSタンパク質のマウスへの投与 - GSタンパク質-PEGコンジュゲートの血漿レベルに対する効果
オスの野生型(wt)CD1マウスに、実施例1に記載されているように調製した様々なGSタンパク質およびPEGコンジュゲート(Trin1 - N末端アルデヒドコンジュゲートGS単量体;Trin2 - Nof-20 GSコンジュゲート多量体;Trin 3 - Nof-30コンジュゲートGS多量体;Trin4 - N末端アルデヒドコンジュゲートPEG多量体)の皮下(s.c)投与により2.5mg/kgで投与した。ELISAを、製造者によって概説されたプロトコルに従って行った(Abcam PEG ELISAキット、ab133065)。図3に示されている血漿ELISAの結果は、予想通り、非コンジュゲートwt GSに関して、全ての時点で極めて低いかまたは検出不可能なレベルを示している。24時間後、いくつかの候補は血漿中で高レベルであることが見出されたが、投与後72時間後、Trin-GS 4(N末端アルデヒドコンジュゲートPEG GS多量体)は、最も高い存在を示した。各群N=2匹。故に、この実験は、GSタンパク質の全身投与が、高い循環レベルのGS PEGコンジュゲートを、および特に治療的に有効または活性となり得るレベルで得るのに成功裏に使用され得ることを示している。
【実施例0140】
GSタンパク質のマウスへの投与 - 肝臓溶解物のGS活性レベル
活性アッセイは、500μgの肝臓溶解物(実施例3の実験から選別したマウス由来)を必要に応じて各反応に添加したこと以外は、実施例2に記載されているように行った。結果を図4に示す。投与後3日の肝臓溶解物におけるGS活性結果は、優れた候補はN末端アルデヒドコンジュゲートPEG GS多量体であり、媒体(生理食塩水投与)対照と比べたベースラインを上回る有意な活性を示す唯一の候補であったことを示すものである。各群N=2匹。
【実施例0141】
尿素サイクル異常症(OTC欠損症)のOtcspf-ashマウスモデルを使用して、GSおよびGS+SPの効果を示した。使用したマウスの詳細は、https://www.jax.org/strain/001811(B6EiC3Sn a/A-Otcspf-ash/J)に見出すことができる。マウスに通常の食事を与える。年齢は約10週~23週とばらつきがあり、群をよくマッチさせた。全ての動物は、オスのヘミ接合性である(OTCはX連鎖性であるため、オスのX染色体にのみ存在し、それ故にマウスはノックアウトである)。
【0142】
全ての群[媒体、GSおよびGS+SP;GS=グルタミン合成酵素、GS+SP=グルタミン合成酵素+フェニル酢酸ナトリウム(Sodium Phenlyacetate)]を次のように治療した:
実験は火曜日から翌週の水曜日まで(8日)行った。
SPは1日2回、350mg/kg、i.p.投与した;GSは最初の4日間、全ての治療群に投与し(1日1回、40mg/kgでi.p.)、次いで2日間[週末]中断し、40mg/kg i.p.でGSをさらに3日間投与した。
【0143】
マウスを8日目に選別し、血液を抽出し、血漿について遠沈し、この血漿をアンモニア定量化に使用した(以下の方法参照)。
【0144】
文献に記載された標準的な方法を用いて遺伝子型判定を行う。
【0145】
材料および方法
全ての実験は、欧州指令2010/63/EUに従って改訂された1986年動物(科学的処置)法に従って行った。全ての動物は、「実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)」(国立衛生研究所刊行物86-23;1985年改訂)に概説された基準に従って人道的なケアを受けた。これらの実験に使用した全ての動物は、Charles River Laboratories(ケント、UK)から入手したオスSprague-Dawleyラット(実験開始時の体重、250g)であり、5群に分けた:胆管結紮動物+アンモニア+生理食塩水血清(BDL+HA+SS、n=6)、胆管結紮動物+アンモニア+フェニル酢酸ナトリウム(BDL+HA+SP、n=6)、胆管結紮動物+アンモニア+フェニル酢酸ナトリウム+グルタミン合成酵素(BDL+HA+SP+GS、n=5)、胆管結紮動物+アンモニア+グルタミン合成酵素(BDL+HA+GS、n=6)、偽手術を受けた動物+グルタミン合成酵素(SHAM+GS、n=5)。SPおよびGSを含む治療を「COMBO」と呼ぶ場合がある。
【0146】
胆管結紮手術
全身麻酔下(誘導に100%酸素中5%イソフルラン、維持に空気中2%イソフルラン)、慢性肝傷害を誘導するためにラットは胆管の三重結紮を受け(小開腹手術方法)、手術28日間後に試験された。正中開腹手術を麻酔下で行った。BDL群では、総胆管を単離し、3-0絹糸で三重に結紮し、結紮部間で切開した。偽手術群は、結紮部間での切開なしに同じ手順を行った。BDL後、全ての動物は体重が増加し続け、偽手術対照と同程度であった。両群の全死亡率は10%未満であり、手術の36時間以内に発生した。
【0147】
非肝硬変高アンモニア血症条件
23匹のラットに高アンモニア血症(HA)食を投与した。約100gのストックに使用したアミノ酸レシピは、15gロイシン、7.7gフェニルアラニン、7gグルタミン酸、10gアラニン、4.4gプロリン、5.8gスレオニン、11gアスパラギン酸、5gセリン、4.8gグリシン、3.3gアルギニン、9.6gリジン、8.4gヒスチジン、3gチロシン、1.5gトリプトファン、および10.6gバリンであった。この混合(標準的なげっ歯動物の食事粉末と1:5混合した)の25gは毎日新たに調製し、ラットは5日間これに自由にアクセスできた。レシピは、全身の高アンモニア血症をもたらすことが知られている[2]、[1]消化管出血の効果を模倣したげっ歯動物ヘモグロビンのアミノ酸組成に近似していた。
【0148】
フェニル酢酸ナトリウム条件
11匹のラットにフェニル酢酸ナトリウム(SP)食を投与した。5日間、1日0.3g/kgを食事粉末と混合し、毎日新たに調製した。
【0149】
グルタミン合成酵素条件
16匹のラットに、GSを2日に1回(1日目および3日目)腹腔内注射した。注射した総容量は、18~22mg/kgのGSを可能にする3ml i.p.であった。
【0150】
採血および生化学
血漿試料を全群で下肢静脈から異なる時点で採取した。グルタミン合成酵素で治療後の時点は、次のようにカウントした:6時間、24時間、48時間および5日間。適当なキットを備えたCobas Integra 400マルチアナライザー(Roche-diagnostics、バージェスヒル、ウェストサセックス、UK)を用いて、時点ごとの血漿アンモニアレベルについてそれぞれ血漿200μlを用いて分析を行った。
【0151】
脳浮腫
これは、以前に記載されている乾燥重量法を用いて測定した[3、4]。簡単には、オーブン乾燥エッペンドルフを高感度電子秤で秤量し、次いで各動物の前頭前野、線条体、海馬、小脳および皮質をそれぞれ標識したエッペンドルフに入れ、再秤量した;全試料、0.1mg差内。個々の脳試料を充填したエッペンドルフをオーブンで60℃、7日間乾燥した後、乾燥重量を決定した。組織含水率を次いで%H2O=(1-乾燥wt/湿wt)×100%として計算した。
【0152】
自発運動活性評価のためのテスト:ロータロッド-加速ロッド(accelerod)テスト
運動能力のこのテストは、本発明者らが運動協調性および耐疲労性を評価できるようにする電動式回転ロッドからなる(Jones and Roberts 1968)。Ugo Basileの加速ロータロッド7750(Ugo Basile Biological Research Apparatus、イタリア)をラットに使用した。その後の手順は2つのパートがある。最初のパートでは、動物を器具に入れ、速度を2rpmで60秒間一定に維持した。第2のパートでは、回転速度が20rpmに達するまで一定に上げる加速ロッドテストセッションで、ラットを5分間評価した。ロッドから落ちるまでにかかる時間および実際の回転速度を、1時間の治療後に全群について治療前および治療後条件で記録した。
【0153】
TCA直接方法(TCA direct method)を用いた血液中のアンモニア決定
論文(Clin Chim Acta. 1968 Oct;22(2)183-86)に記載された方法を使用して、血漿アンモニア濃度を次のように測定した。
【0154】
原理
アルカリ溶液中、アンモニウムイオンは次亜塩素酸塩と反応してモノクロラミンを形成する。フェノールおよび過剰な次亜塩素酸塩の存在下で、ニトロプルシドを触媒として使用するとモノクロラミンは青色化合物、インドフェノールを形成する。アンモニウムの濃度は、630nmで分光測定により決定される。
【0155】
方法
3.5gのフェノールおよび0.04gニトロプルシドナトリウムを100ml蒸留水に溶解して、試薬Aを調製する。
1.8g水酸化ナトリウムを48ml蒸留水に溶解し、4mlの1M次亜塩素酸塩ナトリウム溶液に添加して、試薬Bを調製する。
150μlの5%TCAを50μlの各血漿試料に添加し、10,000RPMで4℃、10分間遠心分離する。50μlの上清を採取し、96ウェルプレートに入れ、50μlの両試薬AおよびBを添加する。
検量線用の標準塩化アンモニウム濃度は、塩化アンモニウムを蒸留水に溶解し、濃度を400μmol~3μmolにするために連続希釈して作成する。ブランクとして蒸留水を使用する。
ウェルプレートを遮光し、50℃で60分間インキュベートする。分光光度計を用いて吸光度を630nmで測定して、アンモニア濃度を決定する。
【0156】
結果
GSタンパク質のマウスへの投与 - 肝臓および血液中のGS活性レベル
活性アッセイは、上記の材料および方法セクションに記載されているように行った。結果を図5AおよびBに示す。5日目に測定したラット肝臓の結果は、SHAM+GS群で最もGS活性が良いことを示している。さらに、GSおよびGS+SP治療は、BDLを受けたマウスの肝臓のGS活性を増加させることが図5Aから分かる。血液で測定した場合、結果は、BDL+GS群で最もGS活性が良いことを示している。さらに、図5Bから、血液中のGS活性が経時的に、投与後24時間および48時間でさえ一貫して(consistant)いることが分かる。
【0157】
GSタンパク質のマウスへの投与 - BDLラットにおけるアンモニア濃度
図6に見られるように、アンモニアレベルはBDLラットで最も高い。GS、GS+SP、およびSP治療は、それぞれ血液中のアンモニアレベルの有意な低減をもたらした。GSは、2回投与後にアンモニアレベルを低減した。GS+SP治療は、アンモニアレベルを最も有意に低減した。これは、相乗効果を示唆するものである。
【0158】
GSタンパク質のマウスへの投与 - BDLラットにおける脳腫脹
脳浮腫は前頭前野で測定した。GS治療は、SP治療、およびさらにSP+GC治療と比べて脳浮腫を最も有意に低減することが見出された(図7)。SP治療は、対照(すなわち、治療なしのBDLマウス)と比較して腫脹を統計的に有意に低減しなかった。
【0159】
GSタンパク質のマウスへの投与 - BDLラットにおける脳および身体機能
図8は、ロータロッド握力テストの結果を示している。驚くべきことに、GS投与は、全ての被験マウス群で成績を改善することが見出された。SP治療単独は統計的に有意な効果につながらなかったが、GS+SP治療は最良の改善を示し、相乗効果(synergisic effect)を示唆している。
【0160】
OTC欠損症を有するマウスの治療
図9に示されているように、アンモニアは治療群で極めて有意に減少する。
【0161】
図10では、GSまたはGS&SPで治療したOTCマウスで血漿GS活性が、媒体群の0.2から、GSのみ群の0.8およびGS&SP群の約1.1に増加したことが分かる。肝臓GS活性は、媒体群の約0.175から、GSのみ群の約2.8およびGS&SP群の約2.5に増加した。
【0162】
結果の概要
まとめると、投与したGSは生体適合性で安全であり、血液および肝臓GS活性を改善する。これはまた、アンモニアおよび脳浮腫の低減につながるほか、神経認知および/または身体機能を改善する。さらに、データは、SPおよびGS治療が相乗効果(synergstic effect)を有し得ることを示唆している。
(参考文献)
[1] Riggs A. The amino acid composition of some mammalian hemoglobins: mouse, guinea pig, and elephant. J Biol Chem 1963;238:2983-2987.
[2] Balata S, Olde Damink SW, Ferguson K, Marshall I, Hayes PC, Deutz NE, Williams R, Wardlaw J, Jalan R. Induced hyperammonemia alters neuropsychology, brain MR spectroscopy and magnetization transfer in cirrhosis. Hepatology 2003;37:931-939.
[3] Stewart-Wallace AM. A biochemical study of cerbral tissue, and of changes in cerebral oedema. Brain 1939; 62: 426-38.
[4] Traber PG, Ganger DR, Blei AT. Brain edema in rabbits with galactosamine-induced fulminant hepatitis. Regional differences and effects on intracranial pressure. Gastroenterology 1986; 91: 1347-56.
配列:
配列番号1[完全ヒトタンパク質]
MTTSASSHLNKGIKQVYMSLPQGEKVQAMYIWIDGTGEGLRCKTRTLDSEPKCVEELPEWNFDGSSTLQSEGSNSDMYLVPAAMFRDPFRKDPNKLVLCEVFKYNRRPAETNLRHTCKRIMDMVSNQHPWFGMEQEYTLMGTDGHPFGWPSNGFPGPQGPYYCGVGADRAYGRDIVEAHYRACLYAGVKIAGTNAEVMPAQWEFQIGPCEGISMGDHLWVARFILHRVCEDFGVIATFDPKPIPGNWNGAGCHTNFSTKAMREENGLKYIEEAIEKLSKRHQYHIRAYDPKGGLDNARRLTGFHETSNINDFSAGVANRSASIRIPRTVGQEKKGYFEDRRPSANCDPFSVTEALIRTCLLNETGDEPFQYKN
配列2(インビボでの成熟タンパク質のためにメチオニンのみが切断されている):
TTSASSHLNKGIKQVYMSLPQGEKVQAMYIWIDGTGEGLRCKTRTLDSEPKCVEELPEWNFDGSSTLQSEGSNSDMYLVPAAMFRDPFRKDPNKLVLCEVFKYNRRPAETNLRHTCKRIMDMVSNQHPWFGMEQEYTLMGTDGHPFGWPSNGFPGPQGPYYCGVGADRAYGRDIVEAHYRACLYAGVKIAGTNAEVMPAQWEFQIGPCEGISMGDHLWVARFILHRVCEDFGVIATFDPKPIPGNWNGAGCHTNFSTKAMREENGLKYIEEAIEKLSKRHQYHIRAYDPKGGLDNARRLTGFHETSNINDFSAGVANRSASIRIPRTVGQEKKGYFEDRRPSANCDPFSVTEALIRTCLLNETGDEPFQYKN
配列番号3 cDNA
CGAGAGTGGGAGAAGAGCGGAGCGTGTGAGCAGTACTGCGGCCTCCTCTCCTCTCCTAAC
CTGCTCTCGCGGCCTACCTTTACCCGCCCGCCTGCTCGGCGACCAGAACACCTTCCACCA
TGACCACCTCAGCAAGTTCCCACTTAAATAAAGGCATCAAGCAGGTGTACATGTCCCTGC
CTCAGGGTGAGAAAGTCCAGGCCATGTATATCTGGATCGATGGTACTGGAGAAGGACTGC
GCTGCAAGACCCGGACCCTGGACAGTGAGCCCAAGTGTGTGGAAGAGTTGCCTGAGTGGA
ATTTCGATGGCTCCAGTACTTTACAGTCTGAGGGTTCCAACAGTGACATGTATCTCGTGC
CTGCTGCCATGTTTCGGGACCCCTTCCGTAAGGACCCTAACAAGCTGGTGTTATGTGAAG
TTTTCAAGTACAATCGAAGGCCTGCAGAGACCAATTTGAGGCACACCTGTAAACGGATAA
TGGACATGGTGAGCAACCAGCACCCCTGGTTTGGCATGGAGCAGGAGTATACCCTCATGG
GGACAGATGGGCACCCCTTTGGTTGGCCTTCCAACGGCTTCCCAGGGCCCCAGGGTCCAT
ATTACTGTGGTGTGGGAGCAGACAGAGCCTATGGCAGGGACATCGTGGAGGCCCATTACC
GGGCCTGCTTGTATGCTGGAGTCAAGATTGCGGGGACTAATGCCGAGGTCATGCCTGCCC
AGTGGGAATTTCAGATTGGACCTTGTGAAGGAATCAGCATGGGAGATCATCTCTGGGTGG
CCCGTTTCATCTTGCATCGTGTGTGTGAAGACTTTGGAGTGATAGCAACCTTTGATCCTA
AGCCCATTCCTGGGAACTGGAATGGTGCAGGCTGCCATACCAACTTCAGCACCAAGGCCA
TGCGGGAGGAGAATGGTCTGAAGTACATCGAGGAGGCCATTGAGAAACTAAGCAAGCGGC
ACCAGTACCACATCCGTGCCTATGATCCCAAGGGAGGCCTGGACAATGCCCGACGTCTAA
CTGGATTCCATGAAACCTCCAACATCAACGACTTTTCTGGTGGTGTAGCCAATCGTAGCG
CCAGCATACGCATTCCCCGGACTGTTGGCCAGGAGAAGAAGGGTTACTTTGAAGATCGTC
GCCCCTCTGCCAACTGCGACCCCTTTTCGGTGACAGAAGCCCTCATCCGCACGTGTCTTC
TCAATGAAACCGGCGATGAGCCCTTCCAGTACAAAAATTAAGTGGACTAGACCTCCAGCT
GTTGAGCCCCTCCTAGTTCTTCATCCCACTCCAACTCTTCCCCCTCTCCCAGTTGTCCCG
ATTGTAACTCAAAGGGTGGAATATCAAGGTCGTTTTTTTTCATTCC
配列番号4:実施例1で使用した、細菌中で増殖させたGSタンパク質
MGSSHHHHHHGGGGSMTTSASSHLNKGIKQVYMSLPQGEKVQAMYIWIDGTGEGLRCKTRTLDSEPKCVEELPEWNFDGSSTLQSEGSNSDMYLVPAAMFRDPFRKDPNKLVLCEVFKYNRRPAETNLRHTCKRIMDMVSNQHPWFGMEQEYTLMGTDGHPFGWPSNGFPGPQGPYYCGVGADRAYGRDIVEAHYRACLYAGVKIAGTNAEVMPAQWEFQIGPCEGISMGDHLWVARFILHRVCEDFGVIATFDPKPIPGNWNGAGCHTNFSTKAMREENGLKYIEEAIEKLSKRHQYHIRAYDPKGGLDNARRLTGFHETSNINDFSAGVANRSASIRIPRTVGQEKKGYFEDRRPSANCDPFSVTEALIRTCLLNETG DEPFQYKN
配列番号5 cDNA(実施例1で使用した細菌の最適化cDNA)。
ATGGGCAGCAGCCACCACCATCACCACCACGGCGGCGGCGGTAGCATGACCACCTCGGCAAGCAGCCACCTGAATAAAGGCATCAAACAGGTGTATATGTCTCTGCCGCAGGGTGAAAAAGTTCAAGCCATGTACATTTGGATCGATGGCACCGGTGAAGGCCTGCGTTGCAAAACCCGCACGCTGGACTCAGAACCGAAATGTGTGGAAGAACTGCCGGAATGGAACTTTGATGGTAGCTCTACGCTGCAGTCGGAAGGCAGTAATTCCGACATGTATCTGGTTCCGGCGGCCATGTTTCGTGATCCGTTCCGCAAAGACCCGAACAAACTGGTGCTGTGCGAAGTTTTTAAATACAACCGTCGCCCGGCGGAAACCAATCTGCGTCATACGTGTAAACGCATTATGGATATGGTCAGCAACCAGCACCCGTGGTTCGGTATGGAACAAGAATATACCCTGATGGGTACGGATGGCCATCCGTTTGGTTGGCCGAGCAATGGTTTCCCGGGTCCGCAGGGTCCGTATTACTGCGGTGTCGGCGCAGATCGTGCTTACGGTCGCGACATTGTGGAAGCACACTATCGTGCTTGTCTGTACGCGGGTGTTAAAATCGCCGGCACCAATGCAGAAGTCATGCCGGCTCAGTGGGAATTTCAAATTGGCCCGTGCGAAGGTATCAGCATGGGCGATCATCTGTGGGTTGCTCGTTTCATCCTGCACCGCGTCTGTGAAGATTTTGGTGTGATTGCGACCTTCGACCCGAAACCGATCCCGGGCAACTGGAATGGTGCTGGCTGCCATACCAACTTTAGCACGAAAGCGATGCGTGAAGAAAATGGCCTGAAATACATCGAAGAAGCAATCGAAAAACTGTCTAAACGTCATCAGTATCACATTCGCGCCTACGATCCGAAAGGCGGTCTGGACAACGCACGTCGCCTGACCGGTTTTCACGAAACGAGCAACATCAATGATTTCTCTGCGGGCGTTGCCAATCGCTCAGCCTCGATTCGTATCCCGCGCACCGTCGGTCAAGAGAAAAAAGGCTATTTTGAAGATCGTCGCCCGAGTGCAAACTGTGACCCGTTCTCCGTGACGGAAGCCCTGATCCGCACCTGTCTGCTGAATGAAACCGGCGATGAACCGTTCCAATACAAAAAT
配列番号6[ラクトバチルス・アシドフィルス株30SC GS]
>tr|F0TG87|F0TG87_LACA3グルタミン合成酵素OS=ラクトバチルス・アシドフィルス(株30SC)
MSKQYTTEEIRKEVADKDVRFLRLCFTDINGTEKAVEVPTSQLDKVLTNDIRFDGSSIDGFVRLEESDMVLYPDFSTWSVLPWGDEHGGKIGRLICSVHMTDGKPFAGDPRNNLKRVLGEMKEAGFDTFDIGFEMEFHLFKLDENGNWTTEVPDHASYFDMTSDDEGARCRREIVETLEEIGFEVEAAHHEVGDGQQEIDFRFDDALTTADRCQTFKMVARHIARKHGLFATFMAKPVEGQAGNGMHNNMSLFKNKHNVFYDKDGEFHLSNTALYFLNGILEHARAITAIGNPTVNSYKRLIPGFEAPVYIAWAAKNRSPLVRIPSAGEINTRLEMRSADPTANPYLLLAACLTAGLKGIKEQKMPMKPVEENIFEMTEEERAEHGIKPLPTTLHNAIKAFKEDDLIKSALGEHLTHSFIESKELEWSKYSQSVSDWERQRYMNW
配列番号7[ゼア・マイスGS][トウモロコシ(corn)/トウモロコシ(Maize)GS]
>tr|B4G1P1|B4G1P1_MAIZEグルタミン合成酵素
MACLTDLVNLNLSDNTEKIIAEYIWIGGSGMDLRSKARTLSGPVTDPSKLPKWNYDGSSTGQAPGEDSEVILYPQAIFKDPFRRGNNILVMCDCYTPAGEPIPTNKRYNAAKIFSSPEVAAEEPWYGIEQEYTLLQKDTNWPLGWPIGGFPGPQGPYYCGIGAEKSFGRDIVDAHYKACLYAGINISGINGEVMPGQWEFQVGPSVGISSGDQVWVARYILERITEIAGVVVTFDPKPIPGDWNGAGAHTNYSTESMRKEGGYEVIKAAIEKLKLRHREHIAAYGEGNERRLTGRHETADINTFSWGVANRGASVRVGRETEQNGKGYFEDRRPASNMDPYVVTSMIAETTIIWKP
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2023085301000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-04-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)配列番号4の配列、またはグルタミン合成酵素活性および配列番号4の配列と少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を有するかまたは含む;ii)配列番号4の配列またはグルタミン合成酵素活性および配列番号4の配列と少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を有するかまたは含み、かつ1つのアミノ酸欠失を有する;またはiii)配列番号5の配列によりコードされる;またはiv)配列番号5の配列によりコードされ、かつ1つのアミノ酸欠失;および薬学的に許容される賦形剤を有するグルタミン合成酵素融合タンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項2】
グルタミン合成酵素融合タンパク質の変異体が、配列番号1の配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
グルタミン合成酵素融合タンパク質の変異体が、配列番号1の配列と少なくとも97%、98%または99%の配列同一性を有する、請求項1または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
配列番号4の配列または1つのアミノ酸欠失を有するその変異体を有するグルタミン合成酵素融合タンパク質;および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項5】
グルタミン合成酵素融合タンパク質が、部分に連結されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
部分が、タンパク質、ペプチド、非タンパク質ポリマーまたはアフィニティータグから選択される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
グルタミン合成酵素融合タンパク質が、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされている、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
PEGが、融合タンパク質にN末端で連結されている、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
PEGが、20kDa N末端アルデヒドPEGである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
融合タンパク質が、全身非経口投与に適した形態にある、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
グルタミン合成酵素融合タンパク質が、対象への非経口または皮下投与に適した形態にある、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
融合タンパク質が、多量体型または単量体型である、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
組成物が、非経口栄養組成物である、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に定義された通りである、グルタミン合成酵素タンパク質融合タンパク質。
【請求項15】
対象への全身非経口、非経口または皮下投与による高アンモニア血症の治療または予防のための組成物の製造のための、請求項1から13のいずれか一項に定義された通りのグルタミン合成酵素タンパク質融合タンパク質の使用。
【請求項16】
高アンモニア血症が、尿素サイクル異常症(UCD)および/またはグルタミン合成酵素欠損症に起因して生じる、臓器不全と関連する、または非アルコール性脂肪肝疾患、肝性脳症、急性肝不全、肝硬変、ならびに/または腎機能障害および/もしくは腎不全に起因して生じる、請求項1から13のいずれか一項に定義された通りのグルタミン合成酵素タンパク質融合タンパク質の使用。
【外国語明細書】