(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085320
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】治療送達用注入ポート
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20230613BHJP
A61M 39/02 20060101ALI20230613BHJP
A61M 31/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61M5/142 524
A61M39/02 114
A61M31/00
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023040413
(22)【出願日】2023-03-15
(62)【分割の表示】P 2020538903の分割
【原出願日】2019-01-14
(31)【優先権主張番号】15/871,871
(32)【優先日】2018-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512144911
【氏名又は名称】トライザラス ライフ サイエンシズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ベンジャミン ジャローチ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ イー.チョーマス
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ピンチャック
(72)【発明者】
【氏名】アラビンド アレパリー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】癌又は他の疾患の治療のために血管を通して標的組織に治療剤を注入するための医療機器及び方法を提供する。
【解決手段】治療システムは、ガイドシースと、圧力制御要素を備えたカテーテルとを有する。圧力制御要素は、好ましくは、脾静脈から分岐する小さな支流血管を横切って延びるように適合された拡張した構成を備える。圧力制御要素は、支流血管に配置され、治療剤が圧力下で支流血管内に直接的に送達され、組織深部に浸透するように強いられる。また、血管内圧力の監視のための圧力応答要素が、標的器官による最大取り込みのための治療剤の時間送達するために提供される。血管経路を介して組織及び器官を処置するための方法が提供される。
【選択図】
図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療剤を患者の血管内に注入するための埋め込み型デバイスにおいて、
前記埋め込み型デバイスは、
a)近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端の間に延びる第1の管腔とを有し、遠位オリフィスを有するカテーテルと、
b)前記遠位オリフィスより近位にありかつ前記遠位端に位置する第1の閉塞要素であって、前記第1の閉塞要素が、複数の血管の内の1つを横切って延び、前記第1の閉塞要素を流れるのを遮断するように適合された、拡張した構成と、流体を前記複数の血管の内の1つを通過させるように流すことを可能にするように適合された折り畳まれた構成を有する第1の閉塞要素と、
c)前記カテーテルの前記近位端に位置する埋め込み可能な注入ポートであって、前記注入ポートは、第1の針穿孔可能な隔壁を通して到達可能な第1のチャンバを有するハウジングを備え、前記第1のチャンバは前記第1の管腔を通して前記遠位オリフィスと流体連通している、注入ポートとを備える、治療剤を患者の血管内に注入するための埋め込み型デバイス。
【請求項2】
前記注入ポートは、さらに、第2の針穿孔可能な隔壁を通して到達可能な第2のチャンバを備え、前記第2のチャンバは前記第1の閉塞要素と流体連通しており、流体が圧力下で前記第2のチャンバに注入されると、前記第1の閉塞要素は前記拡張した構成に拡張し、前記第1のチャンバは前記第1のチャンバと流体連通しない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1の閉塞要素がバルーンである、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の閉塞要素がマレコットである、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記デバイスは、前記第1の閉塞要素の遠位に位置する第2の閉塞要素をさらに備え、
前記第2の閉塞要素は、治療剤が前記第1の針穿孔可能な隔壁を通して前記第1のチャンバ内に圧力下で注入される時に、血管壁を横切って自動的に拡張するように適合されている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第2のチャンバは、液体を圧力下で前記第2のチャンバに注入する時に容積が増大する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第2のチャンバは、減少した容積に向かって前記第2のチャンバを付勢するバネを有する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記カテーテルは、前記第1の管腔及び前記遠位オリフィスを有する第1のカテーテルと、前記第1のカテーテルがその中を延びる第2の管腔を有する第2のカテーテルとを備え、第1の閉塞器が前記第1のカテーテル及び前記第2のカテーテルの両方の遠位端に連結されており、前記第2のチャンバの容積が変化する時、前記第1のカテーテルと前記第2のカテーテルは、前記第1の閉塞要素を前記折り畳まれた構成と前記拡張した構成との間で移動させるように互いに対して長手方向に変位させられる、請求項2に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第2のチャンバは、閉鎖空間であり、かつ、変形可能な壁を備え、前記変形可能な壁の変形の際に、前記第1の閉塞要素は、前記折り畳まれた構成から前記拡張した構成に向かって移動させられる、請求項2に記載のデバイス。
【請求項10】
前記変形可能な壁は、前記第1のカテーテル及び前記第2のカテーテルから軸外に位置している、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第2のチャンバは、閉鎖空間であり、かつ、ピストン上で移動可能な壁を備え、前記壁の移動時に、前記第1の閉塞要素は、前記折り畳まれた構成から前記拡張した構成に向かって移動させられる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスは、前記ハウジングの内部に位置する第1の磁石をさらに備え、前記ハウジングの外部にある第2の磁石が前記第1の磁石に磁気的に連結される時に、前記第1の閉塞要素は、前記折り畳まれた構成から前記拡張した構成に向かって移動させられる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1の磁石は、前記第1のカテーテルの近位部に連結されている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記デバイスは、
モータと、
前記モータに回転可能に連結されたロッドと、
軸に連結されたアームであって、前記モータが前記ロッドを回転させるように作動させられる時、前記アームは、前記ロッドに対して長手方向に変位し、前記アームの長手方向の変位により、前記折り畳まれた構成と前記拡張した構成との間で前記第1の閉塞要素を移動させる、アームとをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
治療剤を患者の血管内に注入するためのシステムにおいて、
前記システムは、
a)近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端の間に延びる管腔とを有するカテーテルと、
b)血管内の圧力を感知するために前記カテーテルの前記遠位端に対して連結された圧力検出要素と、
c)血管内の決定された流体圧力が感知される時に、治療剤の一定用量の一部を自動的に注入するように構成された注入システムとを備える、治療剤を患者の血管内に注入するためのシステム。
【請求項16】
前記カテーテルが、前記カテーテルの外側に連結された少なくとも1つの拡張可能な血管閉塞器を有する、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記カテーテルが、前記カテーテルの外側に連結された最大で1つの拡張可能な血管閉塞器を備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記拡張可能な血管閉塞器が、動的閉塞器の近位表面及び遠位表面における相対的な液圧に反応して開閉するように適合された動的閉塞器である、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記拡張可能な血管閉塞器が静的閉塞器である、請求項16記載のシステム。
【請求項20】
前記注入システムが、前記血管内の決定された流体圧よりも大きい圧力を、前記血管内で発生させるように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
前記注入システムが、血管内の決定された流体圧より98Pa(10mmHg)~2MPa(200mmHg)の間の大きな、血管内の圧力を発生するように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記注入システムが、前記圧力検出要素と前記注入システムを連結するタイミングシステムをさらに備え、前記タイミングシステムは、前記圧力検出要素が予め決定された流体圧力を感知した後、設定時間だけ前記注入システムの起動を遅らせるように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
前記システムは、前記カテーテルの前記近位端に位置する埋め込み可能な注入ポートをさらに備え、前記注入ポートは、第1の針穿孔可能な隔壁を通して到達可能な第1のチャンバを有し、前記第1のチャンバは前記第1の管腔と流体連通している、ハウジングを備える、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載された医療機器及び方法は、一般に、癌又は他の疾患の治療のために血管を通して標的組織に治療剤を注入するための医療機器及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの例では、全身治療が、患者の疾患を治療するために用いられる。全身治療の効果は、少なくとも部分的には、標的組織に到達しない治療(例えば、放射線塞栓剤、生物学的製剤及び/又は他の治療製剤)によって変わり得る。例えば、膵臓癌及び/又は糖尿病などのいくつかの疾患の治療において、特に多数の内因性膵島細胞が存在する膵尾部に、効率的かつ安全な生着が達成され得る膵臓に生物学的細胞を送達することが好ましい場合がある。具体的には、場合によっては、インスリンを産生及び/又は調節する身体の能力に影響を及ぼす糖尿病のいくつかの全身治療が、インスリン産生β細胞を膵臓組織に移植することを試みているが、供給の不足及び免疫抑制の長期的必要性のために、成功は限られている。糖尿病に対する他の形態の治療では、自己幹細胞(間葉系、骨髄、その他)の移植は、特にこれらの細胞に対する自己免疫反応が限られていると思われるII型糖尿病において、インスリンの供給を増加及び/又は置換することができる。このような治療では、移植を可能にするために細胞を膵臓組織に「ホーミング(homing)」することを期待して、例えば、腎臓、肝臓の被膜下腔に外科的に細胞を移植し、静脈内及び動脈内の両方で非選択的な全身注射を行うなど、様々な方法が用いられてきたが、しかしながら、最良の移植様式はまだ確立されていない。
【0003】
また、いくつかの例では、治療には、上記細胞を膵臓自体に移植することが含まれうる。例えば、ある治療には、膵臓組織の動脈供給へのこれらの細胞の亜選択的血管内注射を備える。しかしながら、このようなアプローチは、(脾臓、肝臓、及び/又は胃を備える同じ血管床の他の器官に対して)実際に膵臓に導入された細胞の数の変動を受けやすい。さらに、このような細胞への他の非標的器官の不注意な曝露は、患者の健康リスクをもたらす可能性がある。
【0004】
膵癌の治療も同様に効果がない可能性がある。例えば、膵臓癌はほぼ化学療法抵抗性の腫瘍と考えられている。全身化学療法の無効な結果は、少なくとも部分的には、骨髄及び上皮組織における用量制限毒性のために、腫瘍内の薬物濃度が不十分であるためである。全身化学療法はその有効性に限界があるため、進行膵癌患者には全身化学療法を超えた治療が好ましい。例えば、そのような治療の1つは、化学療法の局所動脈内送達を備えることができる。動脈内注入は、より高い薬物濃度を腫瘍に到達させることを可能にする。さらに、動注化学療法は、化学療法薬の初回通過効果を利用することもでき、腫瘍細胞膜でより高いレベルの薬物濃度を生成し、したがって静注と比較して細胞薬物取り込みを増強する。最後に、局所送達は全身性の副作用を減少させることができる。
【0005】
動注化学療法治療は、通常、腹腔/肝動脈又は門脈に留置された小さなカテーテルを介して実施される。カテーテルの局在化における問題は、隣接臓器と重複する膵臓への血液供給の重複性である。さらに、肝動脈及び脾動脈の膵臓への分枝の大きさ及び解剖学的変異性が小さいため、インターベンション技術を介した再現性のあるカニューレ挿入が不可能である。治療を正しい位置に送達するには、好ましくは治療の治療送達に先立って可視化技術を通して得られる、患者の動脈解剖学の知識が必要である。
【0006】
それでも、標準的なカテーテルでは、注入された治療を限定的にコントロールすることが可能である。治療は高圧の領域から低圧の領域へと流れていく。心臓が拍動する時に血液に働く周期的な圧力を考えると、治療は良好ではなく健康な組織に逆流し、そこで害を及ぼすことがある。
【0007】
これらの問題の一部を緩和するため、本願と同一の発明者であるChomas氏の特許文献1(米国特許第8696698号明細書)は、カテーテルの遠位端に装着されたマイクロバルブの形態の圧力制御治療送達デバイスを記載している。マイクロバルブは周囲の血圧に関連して血管内で動的に拡張・収縮する。治療は、カテーテルを通して、著しい圧力下で注入することができる。治療剤を注入すると、治療の下流(遠位)の血管内の圧力は、治療の上流(近位)よりも常に高くなり、マイクロバルブを開放させ、薬剤の逆流を遮断する。
【0008】
膵臓への治療剤の送達のためにChomas氏の圧力制御治療送達デバイスを使用するための1つの問題は、膵臓を通して延びる門脈が脾臓に開いていることである。脾臓には大量の血液を貯蔵する能力がある。そのようなものとして、門脈内に注入されたあらゆる治療剤は、門脈から離れた小さな支流血管内にではなく、脾臓に移動するであろう。したがって、治療剤は、必要であれば、膵臓の深部で好ましい治療濃度に達しない可能性がある。
【0009】
Agah氏の特許文献2(米国特許出願公開第2016/0082178号明細書)は、血管内アプローチを用いて支流血管を単離し、可視化するためのデバイス及び方法を開示している。このデバイスは、外側カテーテルと、入れ子式の配置で長手方向に変位可能な内側カテーテルを備える。各カテーテルには閉塞要素が連結されている。外側カテーテルは側面開口部を備え、外側カテーテルを通して2つの閉塞要素の間の側面開口部から薬剤を注入することができる。使用時には、デバイスを門脈に進め、カテーテルを移動させて支流血管の対向する側に閉塞器を位置させる。次いで、閉塞器を拡張して、支流血管を備える門脈の領域を隔離し、それによって、隔離された領域内の血流の停止を引き起こす。次に、造影剤を外側カテーテルから注入し、側面開口部から門脈に注入し、そこで門脈の孤立した領域内のみを移動し、門脈の栄養血管に離れて血管を視覚化する。同様の後続のステップを実施して、治療剤を門脈及び支流血管に注入することができる。
【0010】
このシステムにはいくつかの欠点がある。門脈は顕著な尿細管強度を持たず、注入された治療剤の圧力増加にさらされると拡張することができるので、薬剤は、閉塞器の周囲を流れ、薬剤を受け取ることを意図していない領域に流出する可能性がある。これは、それが最も必要とされる支流血管における治療剤の濃度の低下をもたらし、また、意図しない組織に移動し、有害に作用する治療剤をもたらす可能性がある。さらに、閉塞器をあまりにも大きな大きさに拡張して漏れを防止しようとすると、血管が損傷する可能性がある。さらに、治療剤の放出は門脈内にある、しかしながら、治療剤の放出のためのカテーテル内の開口部又は開口部の大きさは門脈の直径に関連して非常に小さく、治療剤で目的とする組織を飽和及び貫通するために好ましい圧力の発生をさらに防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第8696698号号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0082178号明細書
【発明の概要】
【0012】
血管注入治療剤による臓器の治療のためのシステムが提供される。実施形態では、システムは、近位端及び遠位端を有する外側ガイドシース、外側ガイドシース内で長手方向に変位可能であり、1つの遠位閉塞デバイスを備えた第1のカテーテル、及び外側ガイドシース内で長手方向に変位可能で、別の遠位閉塞デバイスを備えた第2のカテーテルを備える。
【0013】
一実施形態では、第1及び第2カテーテルは、ガイドシース内で平行及び非同軸に配列される。
【0014】
別の実施形態では、第1及び第2カテーテルは同軸である。
【0015】
別の実施形態では、第2のカテーテルは、第1のカテーテルの一部内で平行かつ同軸に延びるが、第1のカテーテルは、第1の遠位閉塞デバイスの近位の位置で第2のカテーテルを第1のカテーテル外に延ばすように適合され、その結果、遠位閉塞デバイスは治療構成において非同軸である。
【0016】
一実施形態では、1つの遠位閉塞デバイスは、より大きな血管から分岐する小さな支流血管を横切って延びるように大きさが拡大された構成を有し、第1のカテーテルは、第1のカテーテルの遠位端に位置するオリフィスから治療剤を送達して、閉塞デバイスの遠位側に出るように適合される。
【0017】
一実施形態では、システムは、他のいかなる閉塞デバイスもなく、単独で、第1の閉塞デバイスに限定される。
【0018】
一実施形態では、第1及び第2の遠位閉塞デバイスが提供され、第1の閉塞デバイスは、静的デバイス、例えばバルーンであることが好ましく、第2の閉塞デバイスは動的である。第1の閉塞デバイスは、第2の閉塞デバイスが意図する(例えば、支流血管)よりもより大きな血管(例えば、脾静脈)内の流体の流れを横切って遮断するために使用され、かつ遮断するために意図されるので、好ましくは、少なくとも使用され、かつ任意に設計及び構造において、第2の閉塞デバイスよりもより大きな最大径まで拡大する。
【0019】
第2の閉塞デバイスは、比較的高圧下での注入液、すなわち圧力制御要素の注入を可能にするように構成されている。圧力制御要素は、動的デバイス又は静的デバイスであってもよい。
【0020】
動的圧力制御要素は、所定の流体圧力条件を受けた時に展開される容器の直径まで自動的に拡張し、比較的低い流体圧力条件を受けた時により小さな直径まで収縮するマイクロバルブを含んでもよい。使用に適したマイクロバルブは、有利には、円錐台部分を有するフィラメント状の編組上にポリマーを電気紡糸又は浸漬被覆することによって形成されるマイクロポラスポリマーを備えることが好ましい。微孔性ポリマーは、マイクロバルブの片側で流体圧の発生を可能にし、一方、マイクロバルブを通過することから5μmを超えるマイクロバルブの加圧側の粒子を遮断する。
【0021】
静的制御要素は、流体拡張性バルーン、自己拡張性フィルタ、及び機械的に拡張可能なマレコットカテーテルを備える。これらの要素は、静的圧力制御要素の周囲の容器内の流れを遮断するために十分に拡張されることによって容器の閉塞を引き起こし、容器内の局所化された流体圧力条件を考慮して拡張において変調しない。
【0022】
一実施形態では、埋め込み可能な注入ポートが第1及び第2カテーテルの近位端に提供され、遠位閉塞デバイスが第1及び第2カテーテルの遠位端に提供される。注入ポートは、治療剤を注入することができ、かつ遠位オリフィスと流体連通している第1チャンバを備える。実施形態では、注入ポートは、折り畳まれた直径と拡張した直径との間で遠位閉塞デバイスの動きを引き起こすために、第1及び第2カテーテルの長手方向のずれを引き起こすように作動可能である。カテーテルのずれは、注入ポートへの機械的、電気的又は磁気的エネルギーの適用に影響され得る。別の実施形態では、注入ポートは、流体の圧力下で拡張されると、遠位閉塞デバイスを拡張させる第2のチャンバを備える。注入ポートは、皮下に埋め込むと生体適合性があり、血栓形成や組織の被包化を最小限に抑える物質で構成されている。
【0023】
実施形態では、システムはまた、局所的な圧力又はタイミング事象に基づいて注入液の注入を可能にするように適合された圧力検出要素及び/又は注入タイミング要素を備える。
【0024】
一実施形態では、このような圧力検出要素は、心臓又は標的器官における圧力の変化に対して、意図された血圧、血圧の変化、又は所定の時間遅延の間に、注入液を注入することを可能にする。圧力検出要素は、例えば、拡張期に注入を可能にするか又は作動せることができ、収縮期に注入を停止するか又は不作動とすることができる、これは、圧力差を増加させ、注入物の臓器取り込みを最大にする。一例として、圧力検出要素は、圧力センサと、選択的に、ポンプとを含んでもよい。
【0025】
一実施形態では、注入タイミング要素は、心拍数の循環の一部に続く設定されたタイムオフセットで注入を可能にするように適合され、心臓での圧力変化後に標的器官で生じる圧力の結果的な変化を説明することができるそのような遅延を伴う。一例として、タイミング要素は、EKG又はパルスオキシメータと、場合によってはポンプとの接続を備えることができる。
【0026】
このシステムはまた、穿刺先端及び遠位開口部を備えた到達針を含んでいてもよい。到達針が曲がっていることがある。穿孔先端は、除去可能な閉鎖孔の形成であってもよく、これを除去すると、遠位開口部が露出する。穿孔先端は、門脈を直接穿孔し、到達針の遠位開口部と門脈の内部とを連通する方法で門脈の内部に入るように構成され、大きさが決められている。一実施形態では、到達針は、そこを通るガイドシースの長手方向の通過を可能にする大きさの管腔を備える。また、このシステムは、特にガイドシースが門脈に挿入された後に、ガイドシース上での到達針の移動を容易にするための交換デバイスを備えることができる。
【0027】
有用な一実施形態では、到達針は、他の血管内血管を横断することなく、直接門脈内に展開される。これは、超音波の視覚化の助けを借りて門脈を直接穿刺することによって達成される。一実施形態では、次にガイドカテーテルを到達針を通して門脈内に進める。一実施形態では、次いで、第1のカテーテルをガイドカテーテルから外に進め、門脈を通り、膵臓を横切って脾臓に向かう脾静脈に進める。好ましくは、静的閉塞デバイスが、第1のカテーテルの末端及び脾臓に隣接する脾静脈に提供される。閉塞デバイスを拡張して脾静脈を閉塞する。
【0028】
一実施形態では、次に、造影剤をガイドカテーテルを通して(第1及び第2カテーテルの周囲、又は専用の管腔のいずれか)、門脈内及び脾静脈内に注入し、脾静脈及び脾静脈から離れて膵臓の深部に延びる支流血管を視覚化することを提供する脾静脈に注入する。一実施形態では、第1の閉塞デバイスは、その後、拡張状態のままでよい、又は、折り畳まれて、門脈まで脾静脈内の血流を再び可能にしてもよい。次に、ガイドワイヤを第2のカテーテルを通して進め、造影剤によって提供される画像の誘導下で、脾静脈から延びる第1の支流血管内に誘導する。
【0029】
一実施形態では、次いで、第2のカテーテルをガイドワイヤ上に進め、その末端の別の閉塞デバイスが第1の支流血管の開口部又はそれを超えるようにする。第2のカテーテル上の閉塞デバイスが静的デバイスである場合、その後、それを拡張して第1の支流血管内の通過を遮断する。第2のカテーテル上の閉塞デバイスが動的である場合、注入された治療剤の体液圧の上昇を被験体と閉塞デバイスが自動的に拡張するため、予備拡張は不要である。
【0030】
次いで、治療剤を、第2のカテーテルを通して、支流血管内に圧力下で注入する。支流血管内の圧力が全身圧よりも高く、第2のカテーテル上の閉塞器デバイスを拡張して血管壁との非外傷性接触にすると、治療剤は支流血管の領域外への流出を妨げ、膵組織の深部に強制的に入り込む。さらに、処理剤は、循環血流によって供給されない組織の低酸素領域に強制される、したがって、処理は、組織内に留まり、比較的長期間有効であり得る。圧力を増大させる別の方法は、大きな圧力ヘッドを発達させることができるように、支流血管の大きさに近づく直径で第2のカテーテルを提供することである。これが達成され得るさらに別の方法は、血管壁が直径が拡張しても、血管壁の大きさに自動的に適合できるように第2の閉塞デバイスを適合させることである。これらのアプローチは、個別に又は組み合わせて使用することができる。
【0031】
有用な一実施形態では、血圧又は血圧の変化が検出され、治療剤が、標的器官又は心臓における圧力が感知された条件を満たすことを感知するだけで、第2のカテーテルを通して注入される。条件が満たされると、システムは手動注射を可能にするか、又は処理剤を自動的に注入するポンプを備えることができる。
【0032】
有用な別の実施形態では、前述の方法と組み合わせることができるか、又は使用せずに使用し、感知された状態に続いて処方された時間の後に、処置剤を注入する。感知された状態に続く処方された時間に、システムは、手動注射を可能にするか、又は処理剤を自動的に注射するポンプを備えることができる。
【0033】
一実施形態では、注入タイミング要素は、心拍数の循環の一部に続く設定された時間オフセットで注入を可能にするように適合され、心臓での圧力変化後に標的器官で生じる圧力の結果的な変化を説明することができるそのような遅延を伴う。一例として、タイミング要素は、EKG又はパルスオキシメータと、場合によってはポンプとの接続を備えることができる。
【0034】
また、人体全体の様々な器官における腫瘍を治療するために、システムを使用するための実施形態も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、圧力制御治療送達を行うための治療システムに組み立てることができるキットの概略図である。
【
図2】
図2は、第1及び第2カテーテルがガイドカテーテル内に延びる、組み立てられたシステムの実施形態の概略図である。
【
図4】
図4は、圧力制御治療送達を行うための治療システムの遠位端の一実施形態の概略図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す治療システムの動的閉塞要素である。
【
図6】
図6は、圧力制御治療送達を行うための治療システムの別の実施形態の概略図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す治療システムのための最初の静的閉塞要素を示す。
【
図8】
図8は、
図6に示す治療システムのための最初の静的閉塞要素を示す。
【
図9】
図9は、
図6に示す治療システムのための最初の静的閉塞要素を示す。
【
図10】
図10は、圧力制御治療送達を行うためのキット及びシステムの到達針の概略図である。
【
図11】
図11は、圧力制御治療送達を実施するための方法を示す。
【
図12】
図12は、圧力制御治療送達を実施するための方法を示す。
【
図13】
図13は、圧力制御治療送達を実施するための方法を示す。
【
図14】
図14は、圧力制御治療送達を実施するための方法を示す。
【
図15】
図15は、豚の膵臓上の圧力制御治療送達による治療の例示的結果を示す写真である。
【
図16】
図16は、第1及び第2のカテーテルがガイドカテーテル内に延びている、システムの別の実施形態の概略図であり、第2のカテーテルが第1のカテーテルの外側を横断していることを示す。
【
図17】
図17は、圧力制御治療送達を行うための治療システムの別の実施形態の概略図である。
【
図18】
図18は、本明細書に記載されるシステムを使用する方法のフローチャートである。
【
図19】
図19は、本明細書に記載されるシステムを使用する方法の別のフローチャートである。
【
図20】
図20は、圧力制御治療送達を行うための治療システムの遠位端のさらに別の実施形態の概略図である。
【
図21】
図21は、圧制御された治療送達を行うための治療システムの遠位端のさらに別の実施形態の概略図であり、折り畳まれた構成で示された第2の咬合器を有する。
【
図22】
図22は、
図21の治療システムの実施形態の概略図であり、第2の閉塞器は拡張した構成で示されている。
【
図23】
図23は、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図である。
【
図24A】
図24Aは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、閉塞器が折り畳まれるであろう構成で示される。
【
図24B】
図24Bは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、カテーテルを通して治療剤を送達するために閉塞器が拡張されるであろう構成で示される。
【
図25A】
図25Aは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、閉塞器が折り畳まれるであろう構成で示される。
【
図25B】
図25Bは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、カテーテルを通して治療剤を送達するために閉塞器が拡張されるであろう構成で示される。
【
図26A】
図26Aは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、閉塞器が折り畳まれるであろう構成で示される。
【
図26B】
図26Bは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、カテーテルを通して治療剤を送達するために閉塞器が拡張されるであろう構成で示される。
【
図27A】
図27Aは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、閉塞器が折り畳まれるであろう構成で示される。
【
図27B】
図27Bは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、カテーテルを通して治療剤を送達するために閉塞器が拡張されるであろう構成で示される。
【
図28A】
図28Aは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、閉塞器が折り畳まれるであろう構成で示される。
【
図28B】
図28Bは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、カテーテルを通して治療剤を送達するために閉塞器が拡張されるであろう構成で示される。
【
図29A】
図29Aは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、閉塞器が折り畳まれるであろう構成で示される。
【
図29B】
図29Bは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、カテーテルを通して治療剤を送達するために閉塞器が拡張されるであろう構成で示される。
【
図30A】
図30Aは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、閉塞器が折り畳まれるであろう構成で示される。
【
図30B】
図30Bは、圧力制御治療送達を実施するための治療システムと関連して使用することができる埋め込み型注入ポートの様々な実施形態の内の一つの模式図であり、カテーテルを通して治療剤を送達するために閉塞器が拡張されるであろう構成で示される。
【
図31】
図31は、圧力制御治療システムの代替実施形態の概略図である。
【
図32】
図32は、圧力制御治療システムの代替実施形態の概略図である。
【
図33】
図33は、圧力制御治療システムの代替実施形態の概略図である。
【
図34】
図34は、脾静脈において静脈側治療処置を行うために、
図31、32及び33の圧力制御治療処置システムの実施形態を使用する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の説明を参照して、「近位」及び「遠位」という用語は、本明細書に記載されるデバイス及びシステムの使用者の手を参照して定義され、「近位」という用語は、使用者の手に近く、「遠位」という用語は、使用中に患者の体内にさらに位置することが多いように、使用者の手からさらに離れている。
【0037】
本明細書に記載のデバイス及び方法は、造影剤を一次血管に注入し、造影剤によって提供される視覚化を用いて、一次血管から導かれ、例えば腫瘍と連通する支流血管を同定する、又は血管系出血部位に導く1つ又は複数の支流血管を同定するシステムの使用に関連している。例えば、治療される腫瘍は、固形腫瘍であり得る。場合によっては、腫瘍は、例えば、膵臓、結腸、肝臓、肺、又は子宮の癌に特異的な腫瘍などの癌性腫瘍であり得る。以下に様々の例を示す。
【0038】
本明細書に記載されるように、治療システムは、治療処置中の血流から必要以上の大きな領域を単離することなく、治療剤による領域の標的治療、標的領域内の治療剤の単離、全て、を可能にするように、例えば固形腫瘍の周囲に治療剤を提供するために使用される。場合によっては、固形腫瘍は、膵臓、結腸、肝臓、肺又は子宮の癌と関連している。治療システムを所定の位置に置くと、治療剤(例えば、免疫療法剤、化学塞栓剤、放射線塞栓剤、造影剤との併用)を、1つ以上の支流血管によって供給される臓器又は他の限定された組織領域の領域に圧力下で注入することができる。このように、治療システムは、腫瘍に接続された小さな腫瘍支流血管を同定し、小さな腫瘍支流に圧力下で治療剤を選択的に注入するために使用される。
【0039】
実施形態では、方法は、標的血管が腫瘍の近くにある患者内の標的血管に治療システムを導入するステップを備える。標的血管は、動脈又は静脈であってもよい。標的血管は、限定されるわけではないが、膵臓、結腸、肝臓、肺、子宮、前立腺又は脳、並びに頭頸部腫瘍と連通する標的血管を含む、様々な器官のいずれか内で先導するか、又は延在することができる。実施形態では、治療システムは、非血管内で標的血管の中に又は隣接に導入されうる。実施形態において、治療システムは、到達針を介して、標的血管内に導入されてもよく、又は、標的血管と直接的に連通する隣接の血管内に導入されてもよい。
【0040】
図1、2及び3を参照すると、治療システム10の実施形態は、外側ガイドシース12と、第1カテーテル14と、第2カテーテル16とを備える。ガイドシース12は、近位端及び遠位端20、22、並びに、近位端と遠位端の間に延びる管腔18を有する。第1及び第2カテーテル14、16は平行に配置されている。一実施形態では、第1及び第2カテーテル14、16は、ガイドシース12の管腔18内で非同軸に延在し、各々が遠位端22から外に延在できるように、ガイドシースに対して長手方向に変位可能であり、ガイドシースの管腔18内に後退する。
【0041】
第1のカテーテル14は、近位端及び遠位端24、26を有し、その遠位端26に第1の遠位閉塞デバイス28を備えている。第2のカテーテル16は近位端及び遠位端30、32を有し、そこを通って管腔34が延びている。遠位の圧力制御要素38が遠位端32に装着され、管腔の遠位オリフィス36が圧力制御要素38の遠位において開口している。以下に詳細に考察するように、遠位閉塞デバイス28と圧力制御要素38は、互いに相対的に分枝した血管内に進めることができる、すなわち、遠位閉塞デバイス28は一次血管内に配置することができ、遠位圧力制御要素38がその支流血管内に配置されている。
【0042】
図16に移ると、別の実施形態の(参照番号を100ずつ増やした同様の部分を有する)治療システム110の遠位端が示される。治療システムは、外側ガイドシース112、第1カテーテル114、及び、第2カテーテル116を備える。ガイドシース112は、第1及び第2カテーテル112、114がその中に導入される管腔118を有する。第1のカテーテルは、(その拡張のための)遠位閉塞デバイス128まで延びている第1の管腔170と、遠位閉塞デバイス128の近位の位置において側部開口部174を有する第2の管腔172とを備える。第2のカテーテル116は、遠位端132に装着されたその遠位圧力制御要素138を通して延びる管腔134を有する。第2の管腔172及び側部開口部174は、それを通して遠位圧力制御要素138及び第2のカテーテル116を受容するような大きさである。第2のカテーテルは、第1のカテーテル114の第2の管腔を通して移動させ、側方開口部174から進めることができ、その結果、遠位閉塞デバイス128及び圧力制御要素138を別々の分枝された血管に進めることができる。治療システム10の以下の説明は、治療システム110のこの実施形態に等しく適用される。
【0043】
一実施形態では、第1のカテーテル14上の閉塞デバイス28は、肝臓と膵臓との間のその一部に沿って門脈に挿入される大きさのバルーンであることが好ましく、脾静脈に沿って脾臓へ/脾臓からの流体の流れを完全に遮断するために脾静脈を横切るように延びるような大きさの拡張した構成を有している。
【0044】
一実施形態では、第2のカテーテル16上の圧力制御要素38は、脾静脈から分岐する小さな支流血管を横切って延びるような大きさである(したがって、閉塞デバイス28よりも小さい)拡張した構成を備え、圧力制御要素38の遠位側で出るように、管腔34を通してオリフィス36から出るように治療剤を送達するように構成されている。圧力制御要素38は、閉塞デバイス28が意図する(脾静脈自体)よりも小さな血管(脾静脈から離れた支流血管)内での拡張を意図しているため、好ましくは少なくとも使用され、場合によっては設計及び構造において、第1の閉塞デバイス28よりも小さな最大径に拡張する。
【0045】
圧力制御要素38は、動的デバイス又は静的デバイスであってもよい。
図1~
図5に示すように、一実施形態の動的圧力制御要素は、所定の流体圧力条件を受けた時に展開され、容器の直径まで自動的に拡張し、比較的低い流体圧力条件を受けた時により小さな直径まで折り畳まれる、マイクロバルブ38’を備える。したがって、一旦マイクロバルブ38’が血管内に展開されると、マイクロバルブは、フィルタバルブ周囲の局所的な液圧に応じて動的に可動であり(開閉し)、マイクロバルブの近位側で流体圧が高くなると、マイクロバルブ周囲の流体流が許容されるように、マイクロバルブは血管の直径よりも小さい第1の直径を有する、比較的収縮した構成をとり、マイクロバルブの遠位側で流体圧が高くなると、マイクロバルブは、マイクロバルブが血管壁に接触するように適合した第1の直径よりも比較的大きい第2の直径を有する、拡張した構成をとる。第2のカテーテル16は、マイクロバルブ38’へと、又はそれを通るように同軸に延在する。放射線不透過マーカー44’は、使用中のマイクロバルブ38’の透視可視化を提供するために、カテーテル又はマイクロバルブ上に提供することができる。使用に適したマイクロバルブ38’は、好ましくは、微孔性ポリマー42’で被覆されたフィラメント編組40’を備える。微孔性ポリマー42’によって、マイクロバルブ38’の一方の側で流体圧の発生が可能となりつつ、マイクロバルブの加圧側の5μmを超える粒子がマイクロバルブを通過するのを阻止する。
【0046】
編組40’は、好ましくは、円錐台形状に拡張する。編組40’は、金属フィラメント、ポリマーフィラメント、セラミックフィラメント、ガラスフィラメント、放射線不透過酸化物、又は、金属フィラメントとポリマーフィラメントの組合せから作られており、外部からの力を受けない場合、実質的に円錐台形状に形成されている。金属フィラメントが使用される場合、フィラメントは、ステンレススチール又は形状記憶ニッケル-チタン合金(ニチノール)などの弾性又は超弾性金属であることが好ましい。ポリマーフィラメントが利用される場合、フィラメントは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリマー、フッ素化ポリマー、ナイロン、ポリアミド又は他の任意の適切なポリマーから構成され得る。ポリマーフィラメントは、使用中のフィルタバルブの画像化を容易にするために、バリウム硫酸、ヨード化合物、放射性パク金属粒子又は他の造影剤などの放射線不透過性物質を含浸させることができる。ヨウ素化ポリマー材料もまた、ポリマーフィラメントとして使用され得る。
【0047】
編組40’は、所定の力で拡張した構成に付勢されることが好ましい。したがって、ポリマーフィラメントが利用される場合、1つ以上の金属フィラメントをポリマーフィラメントと組み合わせて利用して、編組に所望の拡張力を提供することができる。いくつかのフィラメントの内の1つ、複数又は全てのフィラメントの直径もまた、拡張力を制御するために選択することができる。さらに、拡張力を変化させるために、編組の角度を変化させることができる。さらに、以下に示すように、ポリマー被覆の厚さを調整して拡張力を変化させることができる。
【0048】
編組の半径方向の拡張力は、Jedwab氏及びClerc氏によって(1993年発行の「応用生体材料ジャーナル(Journal of Applied Biomaterials)」の第4巻の第77頁~第85頁)に記載されており、後に、DeBeule氏によって(DeBeule氏らによる2005年発行の「生体力学及び医用生体工学におけるコンピュータメソッド(Computer Methods in Biomechanics and Biomedical Engineering)」参照)、以下の式として更新された。
【数1】
K1、K2、K3は、以下の式与えられる定数である。
【数2】
IとIpは、編組状フィラメントの表面と極の慣性モーメントであり、Eはフィラメントのヤング弾性率、Gはフィラメントのせん断弾性係数である。これらの材料特性は、初期の編み角度(β
0)、最終的な編み角度(β)、ステント直径(D
0)、フィラメント数(n)と共に、編みバルブの半径方向力に影響を及ぼす。
【0049】
編組40’のいくつかのフィラメントは、その長さに沿って互いに連結しておらず、動的な流動条件に応答して要素38が急速に開閉できるようになっている。(いくつかのフィラメントは、円錐台上の構築物では近位端で共に連結してもよく、管状では近位端と遠位端で共に連結してもよい。)
【0050】
当業者によって理解されるように、編組形状及び材料特性は、バルブの半径方向力及び時定数に密接に関連している。バルブは、異なる直径及び流動条件の動脈の血管において有用であるため、各実施は独自の最適化を有しうる。単なる一例として、1つの実施形態において、要素は10個のフィラメントを有するが、別の実施形態においては、要素は40個のフィラメントを有する。好適には、フィラメント直径は0.025mm~0.127mmの範囲で選択されるが、他の直径を利用してもよい。好適には、編組角度(すなわち、完全に開いた位置-形状記憶位置におけるフィラメントによって取られる交差角度)は、100°~150°の範囲で選択されるが、他の編組角度を使用してもよい。フィラメントのヤング率は少なくとも100MPaであることが好ましく、より好ましくは少なくとも200MPaである。
【0051】
ポリマー42’は、噴霧、紡糸、電解紡糸、接着剤との連結、熱融合、編組の機械的捕捉、融解連結、浸漬被覆、又は他の所望のいずれかの方法を含む、フィルタを形成するためのいくつかの方法により、編組40’上に被覆することができる。フィルタは、ePTFEなどの孔を有する材料、レーザードリル穴を有するポリウレタンなどの孔を付加した固体材料としうる、又は、フィルタは、編組上に敷かれた非常に薄いフィラメントのウエブとしうる。
【0052】
ポリマーフィルタが網状の細いフィラメントである場合、フィルタに直径の異なるビーズを通過させ、どの直径のビーズがフィルタを大量に通過できるかを見つけることにより、フィルタの特徴的な孔の大きさを決定することができる。米国特許第4738740号によれば、非常に細いフィラメントは、静電場の助けによって、又は静電場の不在下、もしくはその両方で、回転マンドレル上に紡糸することができる。こうして形成されたフィルタは、接着剤で編組構造に接着することができるか、又は編組をマンドレル上に置き、フィルタをその上、又はその下、又は編組の上と下の両方に回転させて、本質的にそれを捕捉することができる。フィルタは、スプレー又はエレクトロスピニングから形成されたいくつかの孔を有し、次いで、二次操作によって孔がレーザードリル加工されるか又は形成される二次ステップを有することができる。一実施形態では、静電的に堆積又は紡糸することができる材料を使用して、編組上にフィルタを形成し、好ましい材料は、それ自体に接合することができる。フィルタは、ポリウレタン、ペレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、フルオロポリマー、アクリルポリマー、アクリレート、ポリカーボネート、又は他の適切な材料から作りうる。ポリマーは、湿った状態で編組上に紡糸され、したがって、ポリマーは、溶媒に可溶性であることが好ましい。好ましい実施形態では、フィルタは、ジメチルアセトアミドに可溶性のポリウレタンから形成される。ポリマー材料は液体状態で編組上に紡糸され、静電スピンプロセスには5~10%固体、湿式スピンプロセスには15~25%固体の好適な濃度である。
【0053】
編組をポリマー被覆するための別の代替構造として、編組は、編組上にフィルタを形成するように浸漬被覆され得る。編組は、完全に拡張した編組の内径と同じ外径を有するマンドレル上に取り付けられる。マンドレルは、PTFEが放出面として作用するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)被覆鋼が好ましい。代わりに、非被覆マンドレルを使用してもよい。編組をマンドレルに取り付ける際には、編組の内径とマンドレルの外径が互いに離間しないようにすることが重要である。したがって、それらは±0.065mmの許容範囲内で共通の直径を有することが好ましい。内側の編組全体をマンドレルに接触させた状態に保つことで、後に述べるように、フィラメントをポリマーで均等に被覆することが可能となり、その結果、ポリマーが乾燥した後にフィルタバルブが均一に拡張する。代わりに、編組は、(編組の内径よりも大きい)大き過ぎるマンドレルに装着することができるが、そのようにすると、フィラメントの編組の角度が増加し、それによってフィルタバルブの大きさを変更し、その拡張力に影響を及ぼすことになる。別の構成では、編組は、上述した同様の許容範囲を設けて、編組の外径と同じ大きさを有する管状マンドレル内に取り付けることができる。さらに別の代替法として、編組は、(編組の外径よりも小さい内径を有する)小さい管状マンドレルの内部に装着することができるが、そのようにすると、フィラメントの編組角度が減少し、それによってフィルタバルブの大きさもまた小さくなり、その拡張力に影響を及ぼすであろう。マンドレルのタイプ(固体又は管状)及びその上の編組の位置(外部又は内部)は、編組上のポリマーの局在化に影響し(固体マンドレル上の外部装着のための滑らかな内部被覆フィルタバルブを提供し、管状マンドレル内に内部装着するための滑らかな外部被覆フィルタバルブを提供する)、それによって、結果として生じるフィルタバルブの潤滑性の領域を変化させる。
【0054】
一旦、編組がマンドレル上に(又はマンドレル内に)しっかりと装着されると、この編組は制御された定常速度で高分子溶液に浸漬被覆される。この溶液は、30℃~200℃の範囲の蒸気点を有する溶媒系に溶解したエラストマー熱可塑性ポリマーであり、0.05Pa・s(50cP)~10Pa・s(10000cP)の動的粘度範囲を有する溶液を生成する。デセントとアクセントの速度は、溶液の粘度に逆に依存し、1mm/秒~100mm/秒の範囲である。その速度は、編組上のポリマーの均等な被覆を提供し、編組状フィラメントがマンドレルと接触している場所でさえも編組の全ての表面の湿潤を可能にし、その結果、特にマンドレルと接触している表面へのポリマー被覆の編組状への吸着を可能にし、そして浸漬工程の間に捕捉され得る気泡を放出するために重要である。一例として、ペレタン溶液(溶媒ジメチルアセトアミド(DMA)及びテトラヒドロフラン(THF)に溶解したペレタン)に浸漬する方法の1つの実施形態において、速度は135mm (6インチ)の編組の滞留時間が16秒になるようである。また、速度は、ポリマーが溶液からの編組の引き抜きの間に編組全体の長さを揺るがす(wick down)ようにすることが好ましい。編組を溶液中に1回のみ浸漬して、被覆の厚さを制限し、それによって、編組状フィラメント上の拘束を防止し、及び/又は、ポリマー被覆膜の滑らかさ制御する。制御された速度は、マンドレルを、定常で制御された速度で編組をポリマー溶液中に浸漬して上げる、機械化された装置に連結することによって制御され得る。
【0055】
編組をポリマー溶液から引き抜いた後、溶媒は、溶媒沸点に対応する相対的及び温度範囲にわたって蒸発させられ、高蒸気点溶媒に対してより高い温度及びより長い時間が利用される。全ての好ましいポリマー溶液は、被覆厚さの均一性を制御するためにいくつかのDMAを使用し、溶媒蒸発の速度を制御するためにTHFを使用し得る。THFなどの低蒸気点溶媒に対するDMAなどの高蒸気点溶媒の比は、低粘度の高溶媒含有ポリマー溶液から高粘度の低溶媒含有ポリマー溶液への遷移速度の制御を可能にし、ポリマー膜の品質に影響を及ぼす。1つの方法では、DMAを急速に放出するために、DMAの沸点(165℃)を超える温度に加熱されたオーブン中で溶媒を放出する。この温度での好ましい加熱時間は5分であり、これはDMAを放出するのに十分である。THFは実質的に低い沸点(66℃)を有し、このような実質的な加熱なしに急速に気化するであろうことが認識される。あるいは、ポリマー被覆された編組は、DMAの沸点より下の温度、例えば、被覆された編組からDMAを放出するであろうが、DMAの沸点より上で起こるであろうよりも遅い速度で、DMAの沸点より下の温度、例えば、80℃~100℃で、オーブン加熱することができる。この温度はDMAを急速に駆動し、一方、被覆・編組を、編組の融点又は軟化点よりも安全に低く保つ。この温度での好ましい加熱時間は10分であり、これはDMAを放出するのに十分である。さらに別の代替法として、ポリマー被覆された編組構造は、周囲の室温を乾燥させることができ、その結果、上記の各々よりも遅い速度でDMA放出が生じる。
【0056】
ポリマー被覆編組から溶媒が放出された後、被覆編組をポリマーのガラス転移温度未満に冷却して、編組上のポリマーを可塑化する。一旦冷却されると、被覆された編組はマンドレルから解放される。マンドレルがPTFEで被覆されている場合、編組はマンドレルから自己解放することもあれば、容易に解放させられることもある。マンドレルが被覆されていない場合、イソプロピルアルコール(IPA)などの放出剤を用いて、マンドレルから被覆された編組の除去を容易にすることができる。編組上に形成された得られたエラストマー膜フィルタは、100~1000%の伸長の範囲にわたって弾性的に変形され得る。ペレタンに加えて、膜は、脂肪族ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン(TPU)、及びスチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン(SIBS)などの他のウレタンを備える他の熱可塑性エラストマーから形成され得るが、これらに限定されるものではない。これらのポリマーは、適切な溶媒に溶解するか、又はそれらの融点まで加熱して流体を形成することができる。
【0057】
一例として、動的圧力制御要素38’としての使用に適したマイクロバルブの様々な実施形態が、参照によって本明細書に組み込まれる、本願と同じ発明者の米国特許第8696698号明細書、米国特許出願公開第2015/0272716号明細書及び米国特許出願公開第2015/0306311号明細書に開示されている。
【0058】
静的圧力制御要素38”は、拡張するように作動され得るか、又は自己拡張し得る。静的圧力制御要素38”は、流体拡張可能バルーン40”(
図6及び7)、自己拡張(非動的)フィルタ40”’(
図8)、又はマレコット(
図9)などの機械的拡張可能デバイス40””を備え得る。これらの静的圧力制御要素38”の各々は、静的圧力制御要素の周囲の血管内の流れを遮断するのに十分に拡張されることによって血管を閉塞し得、血管内及び要素38”の周囲の局所的な流体圧力条件を考慮して大きさを調節しない。同様に、静的圧力制御要素38”はまた、血管内のその位置を蛍光透視的に同定するために、放射線不透過性マーカー44”を備え得る。
【0059】
図10を参照すると、このシステムは、近位開口部52と、遠位開口部54と、これらの間の管腔56、及び穿孔先端58を備えた到達針50を備えることもできる。到達針50は、湾曲していることが好ましい。穿孔先端56は、除去可能な閉鎖器60の末端にあってもよく、これを除去すると、遠位開口部54が露出する。穿孔先端56は、血管、特に門脈を直接的に穿孔し、到達針の遠位開口部54と門脈の内部を連通する様式で門脈の内部に入るように構成されかつ大きさが決められている。一実施形態では、到達針は、そこを通るガイドシース12の長手方向の通過を可能にする大きさの管腔を備える。このシステムはまた、以下に記載するように、ガイドシース12上の到達針50の移動を容易にするために、特にガイドシースが門脈に挿入された後に、交換デバイス(図示せず)を含んでいてもよい。
【0060】
図20を参照すると、別の実施形態のシステム310は、第1及び第2の管腔334、335を有するカテーテル314を備える。動的又は静的な第1の閉塞器338が、カテーテルの遠位端326に隣接するカテーテル314に提供される。静的な第2の閉塞器328が、第1の閉塞器338に対して近位に変位したカテーテル314に提供される。第1の管腔334は、カテーテルの遠位端326にある遠位オリフィス336と流体連通しており、第1の閉塞器338に開口しており、第2の管腔335は、第2の閉塞器328と流体連通しており、十分な量の流体がその中に注入されると、第2の閉塞器328の拡張を引き起こすように適合している。
【0061】
次に
図21に移ると、システム410の別の実施形態では、第1及び第2カテーテル414、416は、一方が他方の内部で同軸に延びる。動的閉塞器438は、第1のカテーテル414の端部に設けられ、第2の閉塞器428(折り畳まれた構成で示される)は、第2のカテーテル416の端部に設けられる。機械的に拡張可能なマレコットの形態の第2の閉塞器428は、複数の半径方向に拡張可能なフラップ429a、429b(この図には2つのフラップが示されているが、
図9に示されているように追加のフラップが意図されている)を画定し、これらのフラップはそれぞれヒンジ点430a、430bで曲がることができる。第2のカテーテル416の遠位端は、第1のカテーテル414に対して、例えばクリンプカラー417で固定される。
図22を参照すると、第1のカテーテル414が第2のカテーテル416に対して後退すると、第2の閉塞器428は拡張する。
【0062】
図17に移ると、システム210の別の実施形態が示される。システム210は、その遠位端に圧力制御要素238を有するカテーテル216を備える。システムは、さらに、局所的な圧力又は圧力に相関するタイミング事象に基づいて注入液の注入を可能にするように適合された内部の圧力検出要素280、及び/又は、外部の圧力応答性タイミング要素282を備える。
【0063】
圧力検出要素280は、カテーテル216の近位端又は遠位端に連結することができ、又は圧力が有利に感知される適切な位置へのカテーテル216との共存のための他の構造として、又は別々のガイダンスとして提供することができる。注入タイミング要素282は、システムに直接的に又はワイヤレスで連結することができる。システム210は、さらに、ガイドシース12及び針50に関して前述したように、外側ガイドシース及び到達針を備えている。システム210は、任意に、カテーテル14及び閉塞デバイス28に関して前述したように、別の遠位閉塞デバイスを有する別のカテーテルを備えることができる。圧力検出要素280は、心臓又は標的器官における圧力を検出する圧力センサ又は他のシステムとすることができる。圧力検出要素280は、カテーテル216の近位端、例えばマルチポートハブ284で連結されてもよいが、カテーテル216の遠位端と連通しており、局所圧力をユーザに特定する。この識別は、圧力検出要素280に連結されたメータ又はディスプレイ286によって行われてもよい。これにより、意図した血圧の間、血圧の変化、又は心臓又は標的器官における圧力の変化に対する所定の時間遅延で、注入液を注入することができる。
圧力検出要素280は、例えば、拡張期に注入を許可又は作動させることができ、収縮期に注入を停止又は不作動させることができる、これは、標的器官における圧力差を増加させ、注入物の器官取り込みを最大にする。
【0064】
さらに、圧力検出要素280は、圧力状態の検出時にマルチポートハブ284を通して治療剤を自動的に注入するポンプ288に任意に連結されてもよい。圧力事象は急速に循環することができるので、検出された圧力条件での注入の自動化は、検出された圧力条件に急速に応答する際の制限として、人間の応答時間を除去する。さらに、ポンプ288は、閉ループ方式で注入速度を修正して、治療の投与中に意図した圧力値を生じるように操作することができる。
【0065】
一実施形態では、圧力応答性の注入タイミング要素282は、心拍周期の一部に続く設定されたタイムオフセットでポンプ288を介して注入液を注入することを可能にするように構成されており、心臓での圧力変化後に標的器官で生じる圧力の結果的な変化を説明することができるような遅延を伴う。一例として、タイミング要素は、EKG又はパルスオキシメータへの接続を含んでもよい。
【0066】
次に
図11に移ると、システム10に関して記載された1つの使用方法(しかし、一般にシステム110及び210に適用可能である)において、到達針50は、そこから支流血管が延びる一次血管に展開され、又は、一次血管に隣接しかつ直接連通する血管内に展開される。例えば、脾静脈(SV)から延びる支流血管の治療のために、到達針50は、好ましくは他の血管内血管を横断することなく、隣接する門脈(PV)に直接挿入され、これは、超音波の可視化の助けで門脈を直接穿刺することによって達成することができる。次に、
図12に示すように、ガイドシースを到達針を通して門脈内に挿入し、到達針を引き抜き、ガイドシースを門脈(PV)内の位置に残す。あるいは、交換デバイス(図には示していない)を用いて到達針をガイドシースに交換する。それにもかかわらず、ガイドシース12を門脈(PV)内に進めることができる。第1及び/又は第2のカテーテル14、16は、ガイドシース12に予め装填され、好ましくはガイドシースの遠位端22に向かって進めることができる(
図2に示すように)。代わりに、ガイドシース12は、共に又は必要に応じて個別に進められる、第1及び/又は第2のカテーテル14、16無しで進められうる。さらに別の代替として、ガイドシース12は、第1及び/又は第2のカテーテル14、16をガイドシース内で部分的に進めてもよい。第1及び第2カテーテル14、16の両方を用いる別の方法では、ガイドシースが門脈(PV)に位置した後、第1カテーテル14をガイドシースの遠位端まで進める。
【0067】
図13を参照すると、1つの方法に従い、最初に、第1のカテーテル14の遠位端の静的閉塞要素28を、次に、ガイドカテーテル12から外に進め、門脈(PV)を通して、膵臓(P)を横断する脾静脈(SV)及び脾臓(S)の起始部まで進める。静的閉塞要素28が脾臓(S)に隣接する脾静脈(SV)の末端にあると、静的閉塞デバイス28は、例えば、第1のカテーテル14に沿った流体拡張を介して拡張され、脾臓への門脈流を閉塞する。
【0068】
その後、門脈(PV)及び脾静脈(SV)を通して大量の造影剤を注入し、門脈及び脾静脈の解剖学的構造を画像化する。好ましくは、造影剤は、ガイドカテーテル12を通して注入される(
図3に示される管腔18を通して、第1及び第2カテーテルの周囲、又はその専用管腔のいずれかを通して)、より好ましくはないが、造影剤は、第1の閉塞要素の近位に位置する第1カテーテルの穴を通して注入され得るが、容積及び圧力は、より大きな直径のガイドカテーテルを通して注入されるほど好ましくないであろう。造影剤は、静的閉塞要素28によって脾臓(S)に入るのを妨げられるため、脾静脈(SV)及び脾静脈(SV)から離れて膵臓(P)の深部に延びる支流血管(FV)を標的とする。次いで、静的閉塞要素28は拡張状態のままであってもよく、又は任意に収縮を介して収縮させ、再び脾臓(S)と門脈(PV)との間の血流を可能にする。
【0069】
次にガイドワイヤ62を、造影剤によって提供される視覚化の誘導下で、ガイドカテーテル12を通して進め、脾静脈から延びる第1の支流血管内に誘導する。ガイドワイヤ62はマイクロワイヤーであり、好ましくは0.4mm(0.014インチ)~0.5mm(0.020インチ)である。治療システム10の第1の実施形態を使用して、ガイドワイヤは、第1のカテーテルに対して平行及び非同軸に進められ、治療システム110の第2の実施形態を使用して、ガイドワイヤは、第1のカテーテルを通して、その側面開口部174から進められる(
図16)。
【0070】
次に
図14を参照すると、第2のカテーテル16をガイドワイヤ62を覆って進め、第2の閉塞デバイス38が第1の支流血管の開口部において又はそれを越えているようにする。第2の閉塞デバイスが静的デバイス38”、38”’、38”である場合、次いで、それを第1の支流血管内の流体通路を遮断するように拡張される。第2の閉塞デバイス38’が動的である場合、注入された治療剤の増大した流体圧に曝されると、第2の閉塞デバイスは自動的にそれに拡張するため、支流血管壁への前拡張は不要である。次いで、治療剤を、第2のカテーテル16を通して、第2の閉塞デバイス38の遠位に、そして支流血管内に圧力下で注入する。治療剤は、組織浸透の進行を監視するために、造影剤と組み合わせて注入されることが好ましい。このような圧力で、好ましくは、治療剤は、循環血流によって供給されない組織の低酸素領域に深く押し込まれる。このように、治療は、他の治療方法によってサービスされない組織に到達することができ、比較的長期間効果的であるように組織内に留まる。
【0071】
治療剤の種類に応じて、異なる注入処置が好適に利用される。放射線塞栓球などの「重い」注入液については、球体が懸濁液から落ち着かないように、球体が標的組織、すなわち腫瘍に到達する前に送達するように、第2のカテーテル16内で球体と血管をできるだけ速く前方に駆動するために、薬剤を体外から第2のカテーテル16を通して比較的高圧、例えば2.1MPa(300psi)~8.3MPa(1200psi)で注入する。注入圧は、圧力よりも98Pa(10mmHg)~2kPa(200mmHg)の血管内の液圧の正味の増加を生成することが好ましい。従来のマイクロカテーテルを通して注入すると、「重い」注入液は実質的に逆流するであろう。第2のカテーテル16及び第2の閉塞要素38は、かかる処置で必要とされるミリ秒程度の圧力の急速な増加を支持することができる。このような注入処置は、高い剪断速度条件の発現をもたらす可能性があり、これは「重い」注入液の問題ではない。
【0072】
様々の生物学的輸液、特にCAR-T、CAR-NK、TCR-R、TCR-NK、及びそれらの、細胞又はその組み合わせなどの細胞に対しては、セルの損傷を防ぐ、及び/又は細胞の早期活性化を防ぐために、比較的低い剪断速度が望まれる。したがって、別の方法が好ましい。細胞は、比較的低い圧力(例えば、2.1MPa(300psi)未満)で患者の外部から第2のカテーテル16を通って注入され、細胞が第2のカテーテルから出て支流血管に入った後、より低い剪断速度で、一回のボーラス投与量の生理食塩水が、有意に高い圧力(2.1MPa(300psi)超)で第2のカテーテルを通って流されて、生物学的注入剤の腫瘍内深くへの遠位流を促進し、支流血管から腫瘍及び/又は組織の新たに開かれた領域への注入剤の前方流を支持する。生物学的製剤を注入するステップと流すステップの2つのステップを繰り返すことができる。
【0073】
図6に戻ると、生物学的注入のための1つの実施形態では、第2のカテーテル16の近位端は、第1及び第2のポート92、94に連結されたハブ90を2方向栓96に備える。第1のポート92は生物学的輸液を受け取ることを意図しており、第2のポート94は生理食塩水を受け取ることを意図している。栓96は、第1のポート92と第2のカテーテル16とを連通するように最初に設定され、生物学的注入液は比較的低圧で注入される。次に、栓96は、第2のポート94と第2のカテーテル16とを連通するように再構成され、第2のカテーテルは、好ましい圧力及び時間プロファイルに従って流される。例えば、第2のカテーテル16は、第2のカテーテルから残存する生物学的注入液を除去するために2mLで比較的低圧で流され、その後、8.3MPa(1200psi)の比較的高圧で20mLで流され、又は2.1MPa(300psi)~13.8MPa(2000psi)の間で上下に循環され得る、生物学的注入液及び生理食塩水の流しを比較的異なる圧力で注入するための他の適切なプロファイルを使用することができる。生物学的注入に続く生理食塩水の注入は、生物学的注入物の組織への深い浸透を促進するために繰り返されることが好ましい。第2のカテーテルからの注入と流しは、手動で行うこともあれば、ポンプを介して行うこともある。
【0074】
任意に、全身圧力に対する注入圧力を監視するために、注入圧力を各注入後に測定することができる。より具体的には、標準的な血圧計又は他の血圧計を用いて、全身の患者血圧を測定することができる。次いで、第2のカテーテルのハブに連結された血圧モニタを利用して、注入対象での圧力を測定する。治療剤は、注入対象が全身圧力、全身圧力より98Pa(10mmHg)上、又は全身圧力より2kPa(200mmHg)上を測定するまで注入する。
【0075】
図31に移ると、本明細書に記載される治療に使用するためのシステムの別の実施形態が示される。システム1300は、その遠位端に静的閉塞デバイス1328を有する第1のカテーテル1314と、その遠位端に動的閉塞デバイス1338を有する第2のカテーテル1316とを備える。以前の実施形態とは異なり、動的閉塞デバイス1338は、第2のカテーテル1316上の比較的遠位の位置のみに装着され、その装着部の比較的近位の位置でより大きな直径まで外側に拡張可能であるように方向が逆転される。さらに、動的閉塞デバイスの近位の第2カテーテル1339の遠位部は、第2カテーテルの第1管腔と連通している複数の半径方向孔1340を備える。第2のカテーテルの第1の管腔は、閉鎖された遠位端1342を有する。第2のカテーテル1339は、また、ガイドワイヤ1350を通過させるための開放遠位端1344を有する第2の管腔を備え得る。身体内部のシステムとして使用する場合、第2のカテーテル1316は、静的閉塞デバイス1328と動的閉塞デバイス1338との間の可変距離を規定するために、第1のカテーテル1314に対して長手方向に変位可能であり、その間に半径方向孔が位置している。第1及び第2カテーテルの近位端はハブ1352に連結されている。
【0076】
実施形態では、第1カテーテルと第2カテーテルは、互いに対して長手方向に移動することができる。1つの実施形態では、第1カテーテルと第2カテーテルは互いに分離しており、
図31に示すように、互いに平行に延びていてもよい。別の実施形態では、第2のカテーテル1316aは、
図32に示すように、第1のカテーテル1314a内の第3の管腔1352aを通って延びることができる。
【0077】
さらに別の実施形態では、静的閉塞デバイス1328bと動的閉塞デバイス1338bは、単一のカテーテル1314bに沿って比較的ずれた位置に固定され、静的閉塞デバイス1328bと動的閉塞デバイス1338bとの間のカテーテル1314bには半径方向の孔1340bが設けられている。静的閉塞デバイス1328b及び動的閉塞デバイス1338bの位置は、内部腸間膜静脈の分枝及び脾臓などの解剖学的標識点の間の一定の距離を調整するように設計されている。この実施形態はまた、異なる解剖学的距離を調整するために、並びに異なる器官、組織及び血管において実施される異なる処置を調整するために、異なる大きさで提供されてもよい。
【0078】
図34を参照すると、1つの使用方法において、第1及び第2カテーテル1314、1316は門脈(PV)を通って脾静脈(SV)に進められ、静的閉塞デバイス1328は下腸間膜静脈(IMV)の分枝のすぐ遠位に位置し、動的閉塞デバイス1338は脾臓のすぐ近位に位置する。脾静脈(SV)から延びる支流血管(FV)は、2つの閉塞デバイス1328、1338の間に位置する。次に、静的閉塞デバイス1328を通過する血管内の流れを遮断するために、静的閉塞を十分に拡張するために、生理食塩水などの拡張媒体を第1カテーテル1314を通して静的閉塞デバイス1328内に注入する。次に、2つの閉塞デバイス1328、1338の間で、第2のカテーテル1316の第1の管腔を通して加圧下で治療剤を注入し、孔1340から脾静脈(SV)に注入する。治療剤が孔1340から出ると、動的閉塞デバイス1338の(支流血管(FV)に面する)近位側の方が動的閉塞デバイスの(脾臓に面する)遠位側よりも高い圧力が存在するように、脾静脈(SV)内の圧力が自然血圧を超えて増加する。これにより、逆向きの動的閉塞デバイス1338は、増加した圧力下で拡張し、治療剤の流れが動的閉塞デバイス1338の遠位に流れるのを妨げ、脾臓に向かう。従って、治療剤は支流血管(FV)に圧力下で強制される。治療剤の注入が完了すると、圧力は動的閉塞デバイス1338の近位側及び遠位側で平衡化し、動的閉塞デバイス1338は少なくとも部分的に自動的に再び折り畳まれ、それによって流れが可能となる。同様の処置は、
図33に示した単一のカテーテル実施形態で達成することができる。
【0079】
図18を参照すると、治療剤の別の注入方法に従い、
図17のシステム210に従ってシステムを提供し、患者内で進めることができる。システム210は、内部の圧力検出要素280と外部の圧力応答型のタイミング要素282両方、又は、タイミング要素のない圧力検出要素の備えることができる。処置の適切なポイントで、圧力検出要素280を300で作動させて、注入のための標的位置での圧力状態又は患者内の別の局所状態、例えば心臓での圧力状態を検出する。このシステムは、このような状態が304で発生するまで、302でこのような状態を継続的に監視する。304での圧力条件の検出に際して、システムは、圧力事象の検出後の予めプリセットされた期間、治療剤の注入を遅延させるためにタイムオフセットがプリセットされているかどうかを306で決定する。タイムオフセットが306に設定されている場合、システムはタイムオフセットを308に待つ。その後、308での遅延の後、ポンプは310で作動させられ、決められた量の治療剤を患者に312で注入する。オフセットが306に設定されていない場合、システムは直ちにポンプを310に作動させる。この方法は、治療剤の全用量を312で注入すること、又は代替的に治療剤の部分用量を注入することを備える。いくつかの圧力条件が満たされるたびに、用量の特定の部分を注入することができる。例えば、100mLの治療用量に対して、各25mLの4回の部分的投与を、各々予めプリセットされた圧力条件の検出時に注入することができる。
【0080】
図19を参照すると、治療剤の注入のための別の圧力応答法に従い、
図17のシステム210に従い、システムを提供し、患者に進めることができる。このシステムは、血管内圧検出要素280とタイミング要素282、又は血管内圧検出要素を持たないタイミング要素282の両方を備えることができる。処置の適切なポイントで、タイミング要素282を300操作して、患者のバイタルサインを測定する。このようなバイタルサインは、患者の外部で測定することができ、患者のシステム内の圧力の直接的な監視を必要としない。しかし、測定されたバイタルサインは患者の脈拍と相関しており、従って、患者の血管系内で生じる圧力事象を確実に示す。一例として、パルスオキシメータ又はEKGをタイミング要素として使用することができる。システムは、適切なタイミング条件が404で検出されるまで、402でタイミング条件を継続的に監視する。404におけるタイミング事象の検出は、システムが、タイミング事象の検出後の予めプリセットされた期間、治療剤の注射を遅延させるためにタイムオフセットがプリセットされているかどうかを406で決定する。タイムオフセットが406に設定されている場合、システムはタイムオフセットを408に待つ。その後、408での遅延の後、ポンプは410で作動させられ、決められた量の治療剤を患者に412で注入する。オフセットが406に設定されていない場合、システムはただちにポンプを310に作動させる。この方法は、治療剤の全用量を412で注入すること、又は代替的に治療剤の部分用量を注入することを備える。システムは血管系の外部のバイタルサインを測定するにもかかわらず、血管内圧に応答する圧力に適合されることが認識される。
【0081】
図18及び
図19に関して説明された方法は、圧力検出要素とタイミング要素の両方がシステムに組み込まれている場合に、別々に使用され得るか、又は組み合わされ得る。
【0082】
上記の方法にかかわらず、注入は、目標用量が注入されるか、視覚化を通して下流非標的側副血管の増強が実現されるか、又は目標圧に到達するまで、好ましくは継続する。
【0083】
支流血管内の第2のカテーテル16を介する注入の終了時に、第2の閉塞要素38、138が折り畳まれる(又は、別の実施形態に従い、唯一の閉塞要素238が折り畳まれる)。選択肢として、第2の閉塞要素38、138、238を支流血管内に展開し、折り畳まれる前に、血管をゆっくり吸引して圧力を緩和し、注入液の逆流を防止する。第2の閉塞要素が一旦折り畳まれると、治療剤は脾静脈を通過し始め、門脈に入ることがある。したがって、治療剤が全身循環を開始するにつれて、治療剤を希釈するために、第2のカテーテル及びガイドカテーテルの少なくとも1つを通して、再び生理食塩水をさらに注入する。
【0084】
次いで、ガイドワイヤ62を別の第2の支流血管内に進め、ガイドワイヤ上の第2のカテーテルを第2の支流血管内に進め、第2の支流血管内に圧力下で治療剤の用量の追加部分を提供することにより、治療を継続することができる。このプロセスは、支流血管の1つ以上を通して選択された標的組織に適切な用量が注入されるまで繰り返してもよい。注入が完了した後、1本目と2本目のカテーテルとガイドカテーテルを次に門脈から引き抜き、患者の外に出す。
図15を参照すると、記載された方法に従って注入されたブタ膵臓が示され、強調された領域は、ここに記載された方法を用いて注入液によって得られた浸透の深さを示す。
【0085】
前述のように、このシステムは、第1のカテーテル及び閉塞要素28なしで使用することができ、注入は、第2のカテーテルの遠位オリフィスのみを通して、そして外に行う。圧力検出要素及び/又は注入タイミング要素は、結果的に第2のカテーテルに連結される。
【0086】
本明細書に記載されるシステム及び処置は、既知の先行技術を上回る幾つかの利点を提供する。2つの同軸バルーン(又は2つのフィルタ)を備えるシステムと比較して、本明細書の治療システム及び方法は、治療剤の正確な標的注入を提供する。さらに、治療システム及び方法は、高圧注入を可能にし、治療剤を標的組織に深く延ばし、さもなければ治療に閉じられる可能性のある血管をさらに開くことを可能にする。これは、少なくとも部分的には、注入がシステムの末端に提示され、方法で使用されるシステムが圧力制御を可能にするためである。以前のデバイスで使用されたカテーテルの大きさを考慮すると、門脈又は脾静脈などの大きな断面血管で腫瘍圧を克服するために有意な圧力を発生することは実行不可能であることを理解すべきである。第2のカテーテルのハブで測定される有意な注入圧力を達成するために、血管直径に対するカテーテル内直径の好ましい適切な比は1:8である、すなわち、0.5mm(0.021インチ)の内直径カテーテルは4.3mm(0.168インチ)の血管に十分適している。加えて、動的な第2閉塞要素38”は、圧力が増加するにつれて自動的に拡張する、これは、例えば、治療剤の注入に起因する局所的な圧力条件に応答して、自動的に、初期直径に対して直径の最大3倍の増加を可能にする。さらに、動的な第2閉塞要素38”は、フィルタとバルブの両方である。フィルタは、血漿及び造影剤の流動を可能にし、インターベンション実施者に局所流動状態の指標を提供する。バルブは、逆流血を捕捉するために展開中に実質的に直ちに動的に拡張し、動脈の全身平均圧に急速に到達する。バルブは作動して支流血管を閉塞し、圧力が上昇して血管が拡張しようとすると、バルブは閉塞を増大させる。対照的に、バルーンは圧力が上昇し血管が拡張するにつれて閉塞性が低下する。
【0087】
上記のシステム及び方法は、膵臓の治療に関して特に記載されているが、システム及び方法は、他の器官及び組織の治療を提供するために、同様の方法で明確に使用することができる。
【0088】
一例として、システム及び方法を前立腺癌の治療に使用することができる。前立腺は、動脈到達又は静脈到達のいずれかからアプローチすることができる。動脈アプローチでは、前立腺を大腿動脈又は橈骨動脈のいずれかからアプローチすることができる。大腿動脈アプローチでは、標準的な方法論を用いて大腿動脈から腸骨動脈に到達する。次に、閉塞器付きカテーテルを内腸骨動脈、次いで膀胱動脈、次いで前立腺動脈に追跡する。橈骨動脈アプローチでは、標準的な方法論を用いて橈骨動脈に到達する。次に、閉塞器付きカテーテルを橈骨動脈から上腕動脈、腋窩動脈、鎖骨下動脈、大動脈弓、そして下行大動脈まで追跡する。そこから、腸骨動脈、内腸骨動脈、膀胱動脈、そして前立腺動脈へと追跡を続ける。静脈アプローチでは、大腿静脈に到達した後、骨盤の内腸骨静脈及び前立腺静脈を選択的に挿管する。このアプローチにかかわらず、一旦、閉塞器が前立腺と密接に流体連通している血管内に配置されると、少なくとも1つの閉塞器は、治療剤の流動を拘束するために、治療剤の注入の前及び/又は実質的に同時に拡張され、治療剤による前立腺の血管の深い貫通を作り出す閉塞器の上昇した下流圧を発生させる。
【0089】
別の例として、システム及び方法を甲状腺癌の治療に使用することができる。甲状腺は、動脈到達又は静脈到達のいずれかからアプローチすることができる。動脈到達では、少なくとも大腿動脈又は橈骨動脈から甲状腺にアプローチすることができる。大腿動脈アプローチでは、標準的な方法論を用いて腸骨動脈に到達する。次に、閉塞器付きカテーテルを大動脈に、次に大動脈弓に追跡する。そこから下甲状腺動脈は鎖骨下動脈から甲状頚動脈幹の分枝から、上甲状腺動脈は外頚動脈から発生する。橈骨動脈アプローチでは、標準的な方法論を用いて橈骨動脈に到達する。次に、閉塞器付きカテーテルを橈骨動脈、上腕動脈、腋窩動脈、鎖骨下動脈、及び下甲状腺動脈まで追跡する。さらに別の動脈アプローチでは、カテーテルを橈骨動脈から上腕動脈、腋窩動脈、鎖骨下動脈、腕頭動脈幹、頸動脈、次いで上甲状腺動脈まで追跡する。1つの静脈アプローチでは、カテーテルと閉塞器を上大静脈から腕頭静脈、下甲状腺静脈まで追跡する。別の静脈アプローチでは、カテーテル及び閉塞器を上大静脈から腕頭静脈、内頸静脈、及び上甲状腺静脈まで追跡する。このアプローチにかかわらず、一旦閉塞器が甲状腺と密接な流体連通している血管内に配置されると、少なくとも1つの閉塞器は、治療剤の流動を拘束するために、治療剤の注入に先立って、及び/又は実質的に治療剤の注入と同時に拡張され、治療剤による甲状腺の血管の深い貫通を作り出す、閉塞器の上昇した下流圧を発生させる。
【0090】
別の例として、システム及び方法は、動脈到達又は静脈到達のいずれかからアプローチすることができる、頭頸部の癌の治療に使用することができる。動脈到達では、頭頸部は少なくとも大腿動脈又は橈骨動脈からアプローチできる。大腿動脈アプローチでは、標準的な方法論を用いて腸骨動脈に到達する。次に、閉塞器付きカテーテルを大動脈に、次に大動脈弓に追跡する。そこから腕頭動脈幹に到達でき、カテーテルを総頸動脈に進めた後、上喉頭動脈に進める。あるいは、標準的な方法論を用いて腸骨動脈に到達する。その後、カテーテルを大動脈、次いでアーチックアーチに追跡する。そこから腕頭動脈幹に到達し、総頸動脈、次いで外頸動脈を介してカテーテルを進める。次に、顔面動脈、肺胞動脈、又は上顎動脈を腫瘍の位置に応じて選択することができる。橈骨動脈アプローチでは、標準的な方法論を用いて橈骨動脈に到達する。次に、閉塞器付きカテーテルを橈骨動脈、上腕動脈、腋窩動脈、鎖骨下動脈、及び腕頭動脈に追跡する。そして、カテーテルを総頸動脈と外頸動脈に進める。そこから、顔面動脈、肺胞動脈、又は上顎動脈を腫瘍の位置に応じて選択することができる。橈骨動脈アプローチでは、標準的な手技を用いて橈骨動脈に到達し、次にカテーテルを橈骨動脈から上腕動脈、腋窩動脈、鎖骨下動脈、腕頭動脈幹、総頸動脈、次に上喉頭動脈まで追跡する。1つの静脈アプローチでは、カテーテル及び閉塞器を上大静脈から腕頭静脈、鎖骨下静脈、外頸静脈、及び前頸静脈まで追跡する。別の静脈アプローチでは、カテーテル及び閉塞器を上大静脈から腕頭静脈、内頸静脈、上甲状腺静脈及び喉頭静脈まで追跡する。さらに別の静脈アプローチでは、カテーテル及び閉塞器を上大静脈、腕頭静脈、内頸静脈、及び顔面静脈、肺胞静脈、又は上顎静脈のうちの1つまで追跡する。このアプローチにかかわらず、一旦閉塞器が治療を必要とする頭部又は頸部の標的組織と密接に流体連通した血管内に配置されると、少なくとも1つの閉塞器は、治療剤の流動を拘束するために、治療剤の注入前及び/又は治療剤の注入と実質的に同時に拡張され、治療剤による標的組織の血管の深い貫通を作り出す閉塞器の上昇した下流圧を発生させる。
【0091】
別の例として、システム及び方法は、動脈到達、静脈到達、又は心室アプローチからアプローチすることができる、脳の癌の治療に使用することができる。動脈到達では、脳は少なくとも大腿動脈又は橈骨動脈からアプローチできる。大腿動脈アプローチでは、標準的な方法論を用いて腸骨動脈に到達する。次に、閉塞器付きカテーテルを大動脈に、次に大動脈弓に追跡する。そこから腕頭動脈幹に到達でき、カテーテルを総頸動脈、次いで内頸動脈、ウィリス動脈輪に進める。そこから、左右の中大脳動脈又は前大脳動脈に到達できる。あるいは、腕頭動脈幹に到達でき、カテーテルを椎骨動脈、脳底動脈、ウィリス動脈輪に進める。そこから、左右の中大脳動脈又は前大脳動脈に到達できる。橈骨動脈アプローチでは、標準的な方法論を用いて橈骨動脈に到達する。次に、閉塞器付きカテーテルを橈骨動脈、上腕動脈、腋窩動脈、鎖骨下動脈、及び腕頭動脈に追跡する。そして、カテーテルを総頸動脈、内頸動脈、ウィリス動脈輪に進める。そこから、左右の中大脳動脈、又は前大脳動脈を、腫瘍の位置に応じて到達のために選択することができる。別の橈骨動脈アプローチでは、カテーテルを橈骨動脈から上腕動脈、腋窩動脈、鎖骨下動脈、その後腕頭動脈に進める。そして、カテーテルを椎骨動脈、脳底動脈、ウィリス動脈輪に進める。そこから、左右の中大脳動脈、又は前大脳動脈を、腫瘍の位置に応じて到達のために選択することができる。1つの静脈アプローチでは、標準的な手技を用いて頸静脈に到達し、カテーテルと閉塞器をS状静脈洞に進め、その後横静脈洞に進める。横静脈洞から、様々な到達ポイントに到達することができる。例えば、横静脈洞を用いて、カテーテルを上錐体静脈洞、海綿静脈洞、眼静脈、蝶頭頂静脈洞、又は後方海綿静脈間静脈洞に進めることができる。また、横静脈洞から、Labbeの静脈及びトローラードの静脈に到達を提供することができる。また、横静脈洞から、直静脈洞、及び下矢状静脈洞、内大脳静脈、又はローゼンタール基底静脈のいずれかに到達することができる。また、横静脈洞から、上矢状静脈洞に、次いで皮質静脈又はトロラード静脈のいずれかに到達することができる。脳室アプローチでは、頭皮を小さく切開した後、頭蓋に小さな穴を開ける。頭蓋骨に穴が開くと、脳の保護膜に小さな開口部ができる。切開、孔、開口部は側脳室へのカテーテル留置に適合する。その後、デバイスを心室間孔、第3心室、中脳水道、又は第4心室内の標的位置まで追跡する。このアプローチにかかわらず、一旦、治療を必要とする脳の標的組織と密接に流体連通している血管又は脳室に閉塞器を配置すると、少なくとも1つの閉塞器は、治療剤の流動を拘束するために、治療剤の注入前及び/又は治療剤の注入と実質的に同時に拡張され、治療剤による標的組織の血管及び/又は脳室の深い貫通を作り出す閉塞器の上昇した下流圧を発生させる。
【0092】
別の例として、システム及び方法は、動脈到達又は静脈到達のいずれかからアプローチすることができる、心臓の癌の治療に使用することができる。動脈到達において、心臓は、少なくとも大腿動脈又は橈骨動脈からアプローチすることができる。大腿動脈アプローチでは、標準的な方法論を用いて腸骨動脈に到達する。次に、閉塞器付きカテーテルを大動脈に、次に大動脈弓に追跡する。そこから、左主冠動脈にカテーテルを進め、左前室下降冠動脈又は左回旋冠動脈のいずれかにする。あるいは、標準的な方法論を用いて腸骨動脈に到達する。その後、カテーテルを大動脈に、次いで大動脈弓に追跡する。そこから、カテーテルを右主冠動脈に右後室間動脈又は辺縁動脈のいずれかに進める。橈骨動脈アプローチでは、標準的な手技を用いて橈骨動脈に到達し、次にカテーテルを橈骨動脈から上腕動脈、腋窩動脈、鎖骨下動脈、腕頭動脈幹、次に大動脈弓まで追跡する。次いで、カテーテルを左主冠動脈に進めて、左前室下降冠動脈又は左回旋冠動脈のいずれかにする。又は、標準的な手技を用いて橈骨動脈に到達する。次に、カテーテルを橈骨動脈から上腕動脈、腋窩動脈、鎖骨下動脈、腕頭動脈、その後大動脈弓に進める。その後、カテーテルを右主冠動脈に進め、その後右後室間動脈又は辺縁動脈のいずれかに進める。静脈アプローチでは、標準的な手技を用いて頸静脈に到達する。その後、腕頭静脈から上大静脈までカテーテルを追跡する。次に、カテーテルを冠静脈洞まで追跡し、大心静脈、前心静脈、中心静脈、又は小心静脈まで進める。このアプローチにかかわらず、一旦閉塞器が治療を必要とする心臓の標的組織と密接に流体連通した血管内に配置されると、少なくとも1つの閉塞器が、治療剤の流動を拘束するために、治療剤の注入前及び/又は治療剤の注入と実質的に同時に拡張され、そして治療剤による標的組織の血管の深い貫通を作り出す閉塞器の上昇した下流圧を生成する。
【0093】
別の例として、システム及び方法は、大腿動脈又は橈骨動脈のいずれかからの動脈到達からアプローチすることができる、子宮癌及び子宮頸癌の治療に使用することができる。大腿動脈アプローチでは、標準的な方法論を用いて腸骨動脈に到達する。次に、閉塞器付きカテーテルを内腸骨動脈、次に膣動脈、次に膣動脈叢に追跡する。又は、腸骨動脈から、デバイスを内腸骨動脈、次いで子宮動脈、次いで子宮動脈叢に追跡することができる。橈骨動脈アプローチでは、標準的な手技を用いて橈骨動脈に到達し、次にカテーテルを橈骨動脈から上腕動脈、腋窩動脈、鎖骨下動脈、腕頭動脈幹、大動脈弓、次に下行大動脈まで追跡する。次に、このデバイスをさらに腸骨動脈、さらに内腸骨動脈、次いで膣動脈、次いで膣動脈叢に追跡する。あるいは、鎖骨下動脈から、カテーテルを大動脈弓を通って、次いで下行大動脈まで追跡する。その後、追跡は腸骨動脈から内腸骨動脈、次いで子宮動脈から子宮動脈叢、大動脈弓、及び下行大動脈まで継続される。追跡はさらに腸骨動脈、続いて内腸骨動脈、子宮動脈、次いで子宮動脈叢へと続く。このアプローチにかかわらず、一旦閉塞器が子宮又は子宮頸部の標的組織と密接に流体連通した血管内に配置されると、少なくとも1つの閉塞器は、治療剤の流動を拘束するために、治療剤の注入前及び/又は治療剤の注入と実質的に同時に拡張され、治療剤による標的組織の血管の深い貫通を作り出す閉塞器の上昇した下流圧を発生させる。
【0094】
別の例として、システム及び方法は、動脈又は静脈到達からアプローチすることができる卵巣腫瘍の治療に使用することができる。動脈到達アプローチには、大動脈を通って大動脈から分岐する卵巣動脈への大腿動脈又は橈骨動脈アプローチのいずれかが含まれ得る。静脈到達には、大腿静脈から外腸骨静脈、内腸骨静脈、下大静脈から卵巣静脈への追跡が含まれる。このアプローチにかかわらず、一旦閉塞器が卵巣の標的組織と密接に流体連通している血管内に配置されると、少なくとも1つの閉塞器は、治療剤の流動を拘束するために、治療剤の注入前及び/又は治療剤の注入と実質的に同時に拡張され、治療剤による標的組織の血管の深い貫通を作り出す閉塞器の上昇した下流圧を発生させる。
【0095】
別の例として、システム及び方法は、動脈又は静脈到達のいずれかからアプローチすることができる肺癌の治療に使用することができる。動脈アプローチでは、肺は大腿動脈又は橈骨動脈のいずれかから到達することができる。大腿動脈又は橈骨動脈から、デバイスを大動脈に、次いで大動脈から気管支動脈に追跡する。静脈アプローチでは、肺は大腿静脈から下大静脈、心臓の右心房、心臓の右心室、次いで肺動脈に到達することができる。このアプローチにかかわらず、一旦閉塞器が標的肺組織と密接な流体連通した血管内に配置されると、少なくとも1つの閉塞器は、治療剤の流動を拘束するために、治療剤の注入前及び/又は治療剤の注入と実質的に同時に拡張され、そして治療剤による標的組織の血管の深い貫通を作り出す閉塞器の上昇した下流圧を発生させる。
【0096】
別の例として、システム及び方法は、動脈又は静脈到達のいずれかからアプローチすることができる肺癌の治療に使用することができる。動脈アプローチでは、肺は大腿動脈又は橈骨動脈のいずれかから到達することができる。大腿動脈又は橈骨動脈から、デバイスを大動脈に、次いで大動脈から気管支動脈に追跡する。静脈アプローチでは、肺は大腿静脈から下大静脈、心臓の右心房、心臓の右心室、次いで肺動脈に到達することができる。このアプローチにかかわらず、一旦閉塞器が標的肺組織と密接な流体連通した血管内に配置されると、少なくとも1つの閉塞器は、治療剤の流動を拘束するために、治療剤の注入前及び/又は治療剤の注入と実質的に同時に拡張され、そして治療剤による標的組織の血管の深い貫通を作り出す閉塞器の上昇した下流圧を発生させる。別の例として、システム及び方法は、腎細胞癌を備える腎臓の治療に使用することができる。腎臓は動脈側又は静脈側のいずれからもアプローチできる。動脈アプローチでは、大腿動脈又は橈骨動脈のいずれかから腎臓に到達することができる。大腿動脈又は橈骨動脈から、デバイスを大動脈に、次に腎動脈に追跡して大動脈から離す。静脈アプローチでは、肺を大腿静脈から下大静脈、下大静脈から分枝する腎静脈に到達することができる。このアプローチにかかわらず、一旦閉塞器が腎臓と密接に流体連通した血管に配置されると、少なくとも1つの閉塞器は、治療剤の流動を拘束するために、治療剤の注入前及び/又は治療剤の注入と実質的に同時に拡張され、治療剤による標的組織の血管の深い貫通を作り出す閉塞器の上昇した下流圧を発生させる。
【0097】
前述の実施形態及び治療のいずれにおいても、注入ポートをカテーテルの近位端に連結することができる。注入ポートは、2つの閉塞デバイスを提供する実施形態について連結することができるが、単一の閉塞デバイスからなるシステムの長期間の埋め込みに関して最大の利点を有し得ることが予想され、そのうちの前述のシステムのいずれかは、注入ポートと共に使用するためにそのように改変することができる。注入ポートは、患者の外部で使用してもよいし、埋め込んでもよく、好ましくは皮下に埋め込んでもよい。一例として、
図23を参照すると、注入ポート500は、第1のチャンバ502及び第2のチャンバ504を備え、各々はそれぞれ針穿孔可能な隔壁506、508を有する。隔壁506、508は、それらが針で刺された後に隔壁を通して体液が漏れないように、十分に自己治癒するように適合される。第1のチャンバ502は、遠位オリフィスを有する第1のカテーテル512の第1の管腔510を通して流体連通している。第2のチャンバ504は、充填されると、第2のカテーテル514の遠位端に連結された静的閉塞器の拡張をもたらす。これは、様々な方法で行われる可能性がある。
【0098】
第1の実施例では、静的閉塞器は、弾性バルーン又は非弾性バルーン(例えば、
図20に示されるバルーン328)のような流体拡張可能であり、第2のチャンバ504は静的閉塞器の内部と流体連通している。拡張流体、例えば、生理食塩水を第2のチャンバ504内に圧力下で注入すると、静的閉塞器が血管の壁を横切るように十分に拡張し、そこで血管を閉塞する。治療剤又は別の流体、例えば生理食塩水の第1のチャンバ502への圧力下での注入は、薬剤を遠位オリフィスから出させ、拡張した静的閉塞器の血管遠位部における全身圧よりも高い圧力を生じさせ、そして任意に、血管壁を横切る動的閉塞器(第1の閉塞器の遠位に位置する)の実質的に同時に自動拡張を生じさせることができる。
【0099】
図24Aを参照すると、埋め込み型ポート600の第2の例では、静的閉塞器はマレコット型デバイスであり、静的閉塞器は、その近位部及び遠位部の相対的な長手方向の変位によって拡張される。図示した例では、第1の内側カテーテル612は、第2の外側カテーテル614を貫通し、場合によってはそれを越えて延びている。静的閉塞器は、第2の外側カテーテル614の遠位端の近位に設けられている。第1のチャンバ602は、第1のカテーテル612の近位端616と流体連通している。第2のチャンバ604は閉じられている、しかしながら、第2のチャンバ604は、第1のカテーテル612の近位端616が取り付けられる弾性的に変形可能な壁618を備える。
図24Bに示されるように、第2のチャンバ604への流体の注入は、第2のチャンバを拡張した容積に変形させる。第2のチャンバが拡張するにつれて、第1のカテーテル612は、静的閉塞器を拡張するために第2のカテーテル614に対して近位側に引き出される。次いで、圧力下で第1のチャンバ602内に治療剤又は別の流体を注入すると、薬剤は遠位オリフィスから出るようになり、拡張した静的閉塞器の遠位側の血管内に全身圧よりも高い圧力を生じる。シリンジ又は解放弁を介して第2のチャンバ604から液体を引き出すことにより、変形した壁618はその形状を再形成することが可能であり、静的閉塞器はそれによって直径が縮小するか、又は折り畳まれる。
【0100】
図25Aに戻ると、埋め込み型ポート700の第3の例では、
図24Aに示した第2の例と実質的に類似して、第1のカテーテルの近位端上に張力バネ720を設けて壁718を変形させ、それによって第2のチャンバ704を減容積に偏位させ、第1のカテーテル712を静的閉塞器が折り畳まれる比較的遠位の位置に偏位させる。
図25Bに示されるように、第2のチャンバ704への流体の注入は、第2のチャンバを、スプリング720のバイアスに抗して、拡張した容積に変形させる。第2のチャンバ704が拡張するにつれて、第1のカテーテル712は、静的閉塞器を拡張するために第2のカテーテル714に対して近位に引き込まれる。次いで、圧力下で第1のチャンバ702内に治療剤又は別の流体を注入すると、薬剤は遠位オリフィスから出て、拡張した静的閉塞器の遠位側の血管内の全身圧よりも高い圧力を生じる。第2の隔壁708を通して、又は解放弁を介して、シリンジで第2のチャンバ704から流体を引き出すことによって、スプリング720は、壁718をその前の形状に引き戻すことが可能であり、静的閉塞器は、それによって直径が減少するか、又は折り畳まれる。
【0101】
図26Aを参照すると、
図25Aに示した例と実質的に類似した埋め込み型ポート800の第4の例では、静的型閉塞器はマレコット型デバイスであり、静的型閉塞器は、その近位部及び遠位部の相対的な長手方向の変位によって拡張される。第1のチャンバ802は、第1のカテーテル812の近位端816と流体連通している。第2のチャンバ804はカテーテルから閉じられており、第1のカテーテル812の近位端816が取り付けられる長手方向に変位可能なピストン822の一部として可動壁818を備える。引張ばね820が設けられて、ピストン822を減少チャンバ容積に向かって付勢する。
図26Bに示すように、第2の隔壁808を通して第2のチャンバ804に液体を注入すると、壁818がピストン822上で変位し、第2のチャンバ804の容積がバネ820の偏りに逆らって拡張する。第2のチャンバ804が拡張するにつれて、第1のカテーテル812は、静的閉塞器を拡張するために第2のカテーテル814に対して近位に引き込まれる。次いで、圧力下で第1の隔壁806を通して第1のチャンバ802内に治療剤又は別の流体を注入すると、薬剤は第1のカテーテルの末端で遠位オリフィスから出るようになり、拡張した静的閉塞器の遠位側の血管内に全身圧よりも高い圧力を生じる。シリンジ又は解放弁を介して第2のチャンバ804から流体を引き出すことによって、ピストン822は、バネ820のバイアスに応じて遠位に変位することが可能であり、静的閉塞器は、それによって直径が減少するか、又は、折り畳まれる。
【0102】
図27Aを参照すると、埋め込み可能な注入ポート900の第5の例において、静的閉塞器はマレコット型デバイスであり、静的閉塞器は、その近位部及び遠位部の相対的な長手方向の変位によって拡張される。第1のチャンバ902は、第1のカテーテル912の近位端916と流体連通している。第2のチャンバ904は閉じられており、第1のカテーテル912の近位端916の外側に延びているが隣接している変形可能な壁918を備える。変形可能な壁918は、第1のカテーテルの軸が変形可能な壁918と交差しないように位置する。したがって、第2のチャンバ904は、第1のカテーテル902から分離される。
図27Bに向かって、第2のチャンバ904への流体の注入は、変形可能な壁918を拡張させ、第1のカテーテル912の近位端916を接触させ、変位させる。このような変位によって、第1のカテーテル912は第2のカテーテル914に対して近位に変位し、静的閉塞器を拡張する。次いで、圧力下で第1のチャンバ902内に治療剤又は別の流体を注入すると、薬剤は遠位オリフィスから出るようになり、拡張した静的閉塞器の遠位側の血管内に全身圧よりも高い圧力を生じる。シリンジを用いて、又は解放弁を介して第2のチャンバ904から流体を引き出すことにより、変形可能な壁918は第1のカテーテル912との変位可能な接触から解放され、第1のカテーテルは第2のカテーテル914に対して遠位に変位して、静的閉塞器が直径において折り畳まれるのを許容する。
【0103】
図28Aを参照すると、注入ポート1000の第6の例では、静的閉塞器はマレコット型デバイスであり、このデバイスでは、第2の閉塞器は、近位部及び遠位部の相対的な長手方向の変位によって拡張される。注入ポート1000は、第1のカテーテル1012の近位端1016と流体連通している、単一の流体チャンバ1002を備える。注入ポートの第2の部分1005は、第1のカテーテルの近位端が延びるハウジングである。第1のカテーテル1012の近位部1016には、第1の磁石1024が備えられている。
図28Bを参照すると、ハウジング1005の外部で、対向する極性を有する第2の磁石1026が、第1の磁石1024と磁気的に関連付けられると、第1の磁石1024は、第2の磁石1026の方へ引き出される。これにより、第1のカテーテル1012の近位部1016がハウジング1005内で変形し、第2のカテーテル1014に対して第1のカテーテル1012が長手方向に変位し、静的閉塞器が拡張する。次いで、圧力下で第1のチャンバ1002内に治療剤又は別の流体を注入すると、薬剤は第1のカテーテルの遠位オリフィスから出るようになり、拡張した静的閉塞器の遠位側の血管内に全身圧よりも高い圧力を生じる。静的閉塞器は、第1の磁石1024との磁気的関連から第2の磁石1026を除去することによって直径を減少させることができ、第1のカテーテル1012の近位部1016をその変形から解放することができる。
【0104】
図29Aを参照すると、第6の実施例と実質的に類似した注入ポート1100の第7の実施例において、第1のカテーテル1112の近位部1116は、1つ以上のピボット関節1128、1130を有して形成され得る。バネ1120は、第1のカテーテル1112の近位部1116を比較的直線的な構成に偏らせるために、第1の磁石1124に反対側の第1のカテーテルの近位部1116に連結されてもよい。
図29Bを参照すると、第2の磁石1126を第1の磁石1124と磁気的に会合させると、第1の磁石1124は第2の磁石1126に向かって引き寄せられ、第1のカテーテルの近位部1116をバネ1120の偏りに抗して引っ張り、ピボット関節1128でカテーテルを軸方向に変形させる。第2の磁石1126が除去されると、スプリング1120は、基端部分1116を矯正して、今度は、静的閉塞器を折り畳むを補助する。
【0105】
図30Aを参照すると、注入ポート1200の第8の例において、静的閉塞器は、静的閉塞器が、その近位部及び遠位部の相対的な長手方向の変位によって拡張されるマレコット型デバイスである。第1のカテーテル1212の近位部1216は、第2のカテーテル1214に対して長手方向に変位可能なピストン1222に連結されている。第1のチャンバ1202は、第1のカテーテル1212の近位端1216と流体連通している。ハウジング1205には、電気モータ1230が設けられている。モータ1230は、ねじを切ったロッド1232を回転させる。ねじ穴1236を有するアーム1234は、ねじロッド1232上に延び、第1のカテーテル1212の近位部1216に固定される。
図30Bに向かって、モータ1230が作動されると、糸付きロッド1232が回転し、第2のカテーテル1214に対するアーム1234、ひいては第1のカテーテル1212の長手方向の変位を引き起こす。モータ1230が作動して静的閉塞器を開く。次いで、治療剤又は別の流体を、圧力下で隔壁1206を通して第1のチャンバ1202内に注入して、薬剤を第1のカテーテル1212の遠位オリフィスから出させ、拡張した静的閉塞器の遠位側の血管内に全身圧力よりも高い圧力を作り出す。静的な閉塞器は、モータ1230を逆に作動させることによって、直径を小さくすることができる。
【0106】
注入ポート実施形態の各々において、任意に、動的閉塞器を静的閉塞器の遠位に提供することができ、治療剤の注入に際して静的閉塞器の遠位に発生する血管圧の増加に際して自動的に拡張する。さらに、第1のカテーテルの近位端に注入ポートを備えた実施形態は、局所的な動脈内注入が病態を制御するために長期間にわたって好ましい場合に使用することができる。このような場合、長期間にわたって治療を行うために、注入ポンプ又は記載された注入ポート又は別の注入ポートが使用される。閉塞デバイスを標的血管系に進め、近位注入ポートを患者に、好ましくは皮下に、しかし容易に針付きシリンジに到達することができるように埋め込む。そして、処方された投与期間において、静的閉塞デバイスの拡張を引き起こすためにポートの第2のチャンバ内に一回のボーラス投与量の液体を送達するために、並びに遠位オリフィスから薬剤を送達するためにポートの第1のチャンバ内に別々の薬剤のボーラスを送達するために、注射ポートを使用することができる。これは全て、医師が標的血管系に再接近することを必要とせずに行われる。さらに、第1のチャンバにおける一回のボーラス投与量の薬剤与を、比較的高い圧力下で食塩水のボーラス投与で追跡して、最初に注入されたものよりも比較的高い圧力下で、治療剤の標的血管への流入を進めることができる、すなわち、カテーテルを通過しながら、薬剤に減少したストレスを提供するが、標的器官及び組織への再現性のあるカニューレ挿入、並びに標的血管への薬剤の深い浸透を提供することができる。
【0107】
本明細書には、圧力制御治療送達のための治療システム及び方法の実施形態が記載され、図示されている。本発明の特定の実施形態が記載されているが、本発明が当技術分野が許容する範囲で広いこと、及び明細書が同様に読まれることが意図されているため、本発明がそれに限定されることは意図されていない。従って、特定の実施形態は、膵臓周囲の特定の血管に関する閉塞要素のための好ましい次元を備えるが、このシステムは、他の器官内及び周囲の血管を通して提供される治療に適合することができ、閉塞要素は、同様に、そのような他の器官の関連する血管を完全に越えて延びるように適合することができることが理解されるであろう。また、このシステムは、主に人間の治療処置に適合されるが、ブタの組織及び器官について実証されており、一般的に哺乳動物の処置に使用することができる。この際、人間及び動物ともに「患者」とみなす。さらに、門脈を介した治療のためのシステムが記載されている一方で、システム及び圧力応答性の使用方法は、動脈側注入中に治療剤を注入するためにも使用され得る。さらに、様々な例示的治療剤が開示されているが、システム及び方法は、いずれの特定の治療剤にも限定されない。さらなる例として、限定ではなく、チェックポイント阻害剤及び腫瘍溶解性ウイルスもまた、治療剤として使用することができる。また、治療剤の組み合わせを注入してもよい。特定の次元及び比が開示されている一方で、本発明はこれに限定されないことが理解されるであろう。さらに、ここに開示されたデバイスに関して「第1」及び「第2」という用語に関して参照されている特定のカテーテル、閉塞器などであるが、そのような要素に関する「第1」及び第2」という用語は、1つが原発性又はそれ以上の重要であることを示すものではなく、第1の用語が第2の用語を有するために提供されることを必要とするものでもない。さらに、「第1」と「第2」という用語は、記載された構成要素に関して、「第1」又は「第2」と呼ばれるカテーテル又は閉塞器のいずれかが「第1」又は「第2」として指定されていた可能性があるため、相互に使用することができる。異なる実施形態の様々な例示的特徴が示され、記載される一方で、ここに記載される様々な適合性及び/又は適合性の特徴を使用する実施形態が、記載される発明の明示的範囲内にあることは、ここに示される教示の範囲内で十分にある。したがって、請求項に記載された範囲から逸脱することなく、提供された発明に対してさらに他の改変を行うことができることは、当業者には認識されるであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0107
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0107】
本明細書には、圧力制御治療送達のための治療システム及び方法の実施形態が記載され、図示されている。本発明の特定の実施形態が記載されているが、本発明が当技術分野が許容する範囲で広いこと、及び明細書が同様に読まれることが意図されているため、本発明がそれに限定されることは意図されていない。従って、特定の実施形態は、膵臓周囲の特定の血管に関する閉塞要素のための好ましい次元を備えるが、このシステムは、他の器官内及び周囲の血管を通して提供される治療に適合することができ、閉塞要素は、同様に、そのような他の器官の関連する血管を完全に越えて延びるように適合することができることが理解されるであろう。また、このシステムは、主に人間の治療処置に適合されるが、ブタの組織及び器官について実証されており、一般的に哺乳動物の処置に使用することができる。この際、人間及び動物ともに「患者」とみなす。さらに、門脈を介した治療のためのシステムが記載されている一方で、システム及び圧力応答性の使用方法は、動脈側注入中に治療剤を注入するためにも使用され得る。さらに、様々な例示的治療剤が開示されているが、システム及び方法は、いずれの特定の治療剤にも限定されない。さらなる例として、限定ではなく、チェックポイント阻害剤及び腫瘍溶解性ウイルスもまた、治療剤として使用することができる。また、治療剤の組み合わせを注入してもよい。特定の次元及び比が開示されている一方で、本発明はこれに限定されないことが理解されるであろう。さらに、ここに開示されたデバイスに関して「第1」及び「第2」という用語に関して参照されている特定のカテーテル、閉塞器などであるが、そのような要素に関する「第1」及び第2」という用語は、1つが原発性又はそれ以上の重要であることを示すものではなく、第1の用語が第2の用語を有するために提供されることを必要とするものでもない。さらに、「第1」と「第2」という用語は、記載された構成要素に関して、「第1」又は「第2」と呼ばれるカテーテル又は閉塞器のいずれかが「第1」又は「第2」として指定されていた可能性があるため、相互に使用することができる。異なる実施形態の様々な例示的特徴が示され、記載される一方で、ここに記載される様々な適合性及び/又は適合性の特徴を使用する実施形態が、記載される発明の明示的範囲内にあることは、ここに示される教示の範囲内で十分にある。したがって、請求項に記載された範囲から逸脱することなく、提供された発明に対してさらに他の改変を行うことができることは、当業者には認識されるであろう。
また、本開示は以下の発明を含む。
第1の態様は、
治療剤を患者の血管内に注入するための埋め込み型デバイスにおいて、
前記埋め込み型デバイスは、
a)近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端の間に延びる第1の管腔とを有し、遠位オリフィスを有するカテーテルと、
b)前記遠位オリフィスより近位にありかつ前記遠位端に位置する第1の閉塞要素であって、前記第1の閉塞要素が、複数の血管の内の1つを横切って延び、前記第1の閉塞要素を流れるのを遮断するように適合された、拡張した構成と、流体を前記複数の血管の内の1つを通過させるように流すことを可能にするように適合された折り畳まれた構成を有する第1の閉塞要素と、
c)前記カテーテルの前記近位端に位置する埋め込み可能な注入ポートであって、前記注入ポートは、第1の針穿孔可能な隔壁を通して到達可能な第1のチャンバを有するハウジングを備え、前記第1のチャンバは前記第1の管腔を通して前記遠位オリフィスと流体連通している、注入ポートとを備える、治療剤を患者の血管内に注入するための埋め込み型デバイスである。
第2の態様は、
前記注入ポートは、さらに、第2の針穿孔可能な隔壁を通して到達可能な第2のチャンバを備え、前記第2のチャンバは前記第1の閉塞要素と流体連通しており、流体が圧力下で前記第2のチャンバに注入されると、前記第1の閉塞要素は前記拡張した構成に拡張し、前記第1のチャンバは前記第1のチャンバと流体連通しない、第1の態様におけるデバイスである。
第3の態様は、
前記第1の閉塞要素がバルーンである、第2の態様におけるデバイスである。
第4の態様は、
前記第1の閉塞要素がマレコットである、第2の態様におけるデバイスである。
第5の態様は、
前記デバイスは、前記第1の閉塞要素の遠位に位置する第2の閉塞要素をさらに備え、
前記第2の閉塞要素は、治療剤が前記第1の針穿孔可能な隔壁を通して前記第1のチャンバ内に圧力下で注入される時に、血管壁を横切って自動的に拡張するように適合されている、第2の態様におけるデバイスである。
第6の態様は、
前記第2のチャンバは、液体を圧力下で前記第2のチャンバに注入する時に容積が増大する、第2の態様におけるデバイスである。
第7の態様は、
前記第2のチャンバは、減少した容積に向かって前記第2のチャンバを付勢するバネを有する、第6の態様におけるデバイスである。
第8の態様は、
前記カテーテルは、前記第1の管腔及び前記遠位オリフィスを有する第1のカテーテルと、前記第1のカテーテルがその中を延びる第2の管腔を有する第2のカテーテルとを備え、第1の閉塞器が前記第1のカテーテル及び前記第2のカテーテルの両方の遠位端に連結されており、前記第2のチャンバの容積が変化する時、前記第1のカテーテルと前記第2のカテーテルは、前記第1の閉塞要素を前記折り畳まれた構成と前記拡張した構成との間で移動させるように互いに対して長手方向に変位させられる、第2の態様におけるデバイスである。
第9の態様は、
前記第2のチャンバは、閉鎖空間であり、かつ、変形可能な壁を備え、前記変形可能な壁の変形の際に、前記第1の閉塞要素は、前記折り畳まれた構成から前記拡張した構成に向かって移動させられる、第2の態様におけるデバイスである。
第10の態様は、
前記変形可能な壁は、前記第1のカテーテル及び前記第2のカテーテルから軸外に位置している、第9の態様におけるデバイスである。
第11の態様は、
前記第2のチャンバは、閉鎖空間であり、かつ、ピストン上で移動可能な壁を備え、前記壁の移動時に、前記第1の閉塞要素は、前記折り畳まれた構成から前記拡張した構成に向かって移動させられる、第1の態様におけるデバイスである。
第12の態様は、
前記デバイスは、前記ハウジングの内部に位置する第1の磁石をさらに備え、前記ハウジングの外部にある第2の磁石が前記第1の磁石に磁気的に連結される時に、前記第1の閉塞要素は、前記折り畳まれた構成から前記拡張した構成に向かって移動させられる、第1の態様におけるデバイスである。
第13の態様は、
前記第1の磁石は、前記第1のカテーテルの近位部に連結されている、第12の態様におけるデバイスである。
第14の態様は、
前記デバイスは、
モータと、
前記モータに回転可能に連結されたロッドと、
軸に連結されたアームであって、前記モータが前記ロッドを回転させるように作動させられる時、前記アームは、前記ロッドに対して長手方向に変位し、前記アームの長手方向の変位により、前記折り畳まれた構成と前記拡張した構成との間で前記第1の閉塞要素を移動させる、アームとをさらに備える、第1の態様におけるデバイスである。
第15の態様は、
治療剤を患者の血管内に注入するためのシステムにおいて、
前記システムは、
a)近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端の間に延びる管腔とを有するカテーテルと、
b)血管内の圧力を感知するために前記カテーテルの前記遠位端に対して連結された圧力検出要素と、
c)血管内の決定された流体圧力が感知される時に、治療剤の一定用量の一部を自動的に注入するように構成された注入システムとを備える、治療剤を患者の血管内に注入するためのシステムである。
第16の態様は、
前記カテーテルが、前記カテーテルの外側に連結された少なくとも1つの拡張可能な血管閉塞器を有する、第15の態様におけるシステムである。
第17の態様は、
前記カテーテルが、前記カテーテルの外側に連結された最大で1つの拡張可能な血管閉塞器を備える、第16の態様におけるシステムである。
第18の態様は、
前記拡張可能な血管閉塞器が、動的閉塞器の近位表面及び遠位表面における相対的な液圧に反応して開閉するように適合された動的閉塞器である、第16の態様におけるシステムである。
第19の態様は、
前記拡張可能な血管閉塞器が静的閉塞器である、第16の態様におけるシステムである。
第20の態様は、
前記注入システムが、前記血管内の決定された流体圧よりも大きい圧力を、前記血管内で発生させるように構成されている、第15の態様におけるシステムである。
第21の態様は、
前記注入システムが、血管内の決定された流体圧より98Pa(10mmHg)~2MPa(200mmHg)の間の大きな、血管内の圧力を発生するように構成されている、第20の態様におけるシステムである。
第22の態様は、
前記注入システムが、前記圧力検出要素と前記注入システムを連結するタイミングシステムをさらに備え、前記タイミングシステムは、前記圧力検出要素が予め決定された流体圧力を感知した後、設定時間だけ前記注入システムの起動を遅らせるように構成されている、第15の態様におけるシステムである。
第23の態様は、
前記システムは、前記カテーテルの前記近位端に位置する埋め込み可能な注入ポートをさらに備え、前記注入ポートは、第1の針穿孔可能な隔壁を通して到達可能な第1のチャンバを有し、前記第1のチャンバは前記第1の管腔と流体連通している、ハウジングを備える、第15の態様におけるシステムである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療剤を患者の血管内に注入するためのシステムにおいて、
前記システムは、
a)近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端の間に延びる管腔とを有するカテーテルと、
b)血管内の圧力を感知するために前記カテーテルの前記遠位端に対して連結された圧力検出要素と、
c)前記圧力検出要素が決定された流体圧力を感知した時に、治療剤の一定用量の一部を自動的に注入するように作動させられるように構成された注入システムと、
d)前記注入システムに連結されたタイミングシステムであって、前記圧力検出要素が前記決定された流体圧力を感知した後、設定時間だけ前記注入システムの起動を遅らせるように構成されているタイミングシステムとを備える、システム。
【請求項2】
前記タイミングシステムは前記注入システムに直接的に連結されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記タイミングシステムは前記注入システムに遠隔に連結されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記カテーテルが、前記カテーテルの外側に連結された少なくとも1つの拡張可能な血管閉塞器を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記カテーテルが、前記カテーテルの外側に連結された最大で1つの拡張可能な血管閉塞器を備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記拡張可能な血管閉塞器が、動的閉塞器の近位表面及び遠位表面における相対的な液圧に反応して開閉するように適合された動的閉塞器である、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記拡張可能な血管閉塞器が静的閉塞器である、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記注入システムが、前記血管内の決定された流体圧よりも大きい圧力を前記血管内で発生させるように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記注入システムが、血管内の決定された流体圧より大きな、98Pa(10mmHg)~2MPa(200mmHg)の間の圧力を血管内で発生するように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムは、前記カテーテルの前記近位端に位置する埋め込み可能な注入ポートをさらに備え、前記注入ポートは、第1の針穿孔可能な隔壁を通して到達可能な第1のチャンバを有するハウジングであって、前記第1のチャンバは第1の管腔と流体連通している、ハウジングを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記注入システムは、前記注入システムが前記治療剤の前記一定用量の前記一部を注入する速度を調節するように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムは、圧力感知システムが前記血管の中で決定された流体圧力を感知するときに前記注入システムを不作動させる自動遮断をさらに備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
治療剤を患者の血管内に注入するためのシステムにおいて、
前記システムは、
a)近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端の間に延びる管腔とを有するカテーテルと、
b)心拍のサイクルの予め定めた部分を同定するためのセンサシステムと、
c)起動させられる時に治療剤の一定用量の一部を注入するように構成された注入システムと、
d)前記センサシステム及び前記注入システムに連結しているタイミングシステムであって、前記センサシステムが前記心拍のサイクルの予め定めた部分を感知した後、設定時間だけ前記注入システムの起動を遅らせるように構成されているタイミングシステムとを備える、システム。
【請求項14】
前記タイミングシステムは前記センサシステムに直接的に連結されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記タイミングシステムは前記センサシステムに遠隔に連結されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記センサシステムはパルスオキシメータシステムである、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記センサシステムはEKGシステムである、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記センサシステムは、前記一定用量の前記治療剤が送達されるべき標的位置から離れた患者の位置において圧力変化を検出する、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記センサシステムは心臓において圧力変化を検出し、標的位置は心臓以外の器官である、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記注入システムは、ある速度で前記治療剤の前記一定用量の前記一部を注入するように適合されており、前記ある速度は前記注入システムによって調節することができる、請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
注入の速度は上昇するように傾斜を付けられうる、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記システムは、血管の中で予め決定された流体圧力に反応して前記注入システムを不作動させる自動遮断をさらに備えている、請求項13に記載のシステム。
【外国語明細書】