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  • 特開-チョウザメを原料とする食品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085424
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】チョウザメを原料とする食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20230613BHJP
【FI】
A23L17/00 A
A23L17/00 Z
A23L17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060529
(22)【出願日】2023-04-04
(62)【分割の表示】P 2021063848の分割
【原出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】521069375
【氏名又は名称】株式会社 築地商店MFS
(74)【代理人】
【識別番号】100132333
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 孝明
(72)【発明者】
【氏名】築地 加代子
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、種々の有効成分を有するチョウザメの魚肉から、適度に脂質を除去し、さらに、中骨と共に食品とすることで、ヒトやペットが安心して食することができる食品を提供する。
【解決手段】チョウザメの魚肉部と中骨部を原材料とし、該原材料から静置により分離される油性成分が除去されることにより、油性成分量が調製されてなることを特徴とするチョウザメを原材料とする食品である。
また、チョウザメを原料とする食品であって、食品の乾燥物100g中の成分組成が以下の特徴を有する。
タンパク質含有量55gから75g
脂質20gから40g
n3-脂肪酸4gから8g。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョウザメの魚肉部と中骨部を原材料とし、該原材料から静置により分離される油性成分が除去されることにより、油性成分量が調製されてなることを特徴とするチョウザメを原材料とする食品。
【請求項2】
前記食品の乾燥物100g中の成分組成が以下の特徴を有する請求項1に記載のチョウザメを原材料とする食品。
タンパク質含有量 55gから75g
脂質 20gから40g
n3-脂肪酸 4gから8g
【請求項3】
チョウザメの魚肉部と中骨部からなり、乾燥物100g中の成分組成が以下の特徴を有するチョウザメを原材料とする食品。
タンパク質含有量 55gから75g
脂質 20gから40g
n3-脂肪酸 4gから8g
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョウザメを原料とする食品に関する
【0002】
本発明は、従来、その卵であるキャビアを商品とするために養殖されるチョウザメにおいてキャビア以外の組織や雄の、価値ある利用方法を提供し、優れた栄養バランスを有する食品を提供することを目的とする。特に、チョウザメは、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのn3-脂肪酸を豊富に含み、また、カルノシンやバレニンなどのイミダゾ-ルジペプチド、さらにはビタミンDを豊富に含んでおり、チョウザメの有効有益な利用方法を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0003】
高級食材のキャビアは、宮崎県を代表とする日本国内においても、養殖されたチョウザメから生産されるようになってきた。 しかしながら、採卵後の雌のチョウザメの取り扱いについて、廃棄されてしまうことも多く、魚肉・頭・皮・中骨などを有効活用することが課題となっている。さらに、SDGs等の社会課題解決の良いテ-マと考えられている。
チョウザメの皮からは、いわゆるマリ-ンコラ-ゲンと呼ばれる魚由来のコラ-ゲンが豊富であり、化粧品などへの活用が行われている。
【0004】
さらに、雌雄判別してからの雄およびキャビアを採卵した後の雌の魚肉の活用にあたり、チョウザメの魚肉には、次の大きな利点を有することが知られている。1つめは、現在、健康や運動がブ-ムとなり、食品の機能を活用した運動機能の強化や疲労回復の機能が注目されている、カルノシンやバレニンなどのイミダゾ-ルジペプチドが多く含まれていること、2つめは、動脈硬化の予防、高脂血症の改善、血栓の抑制等の効果が期待されているドコサヘキサエン酸(DHA) 及びエイコサペンタエン酸(EPA) 等を含むn3-脂肪酸が、豊富に含まれていること等である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、チョウザメの魚肉は、利点を有する種々の成分を豊富に含有するが、そのまま用いた場合、タンパク質に対して脂質の割合が高く、栄養過多になる可能性がある。
また、従来、中骨は、皮膚に比べコラ-ゲン含量が少なく、コラ-ゲン抽出法も煩雑となるためあまり活用が進んでいない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、種々の有効成分を有するチョウザメの魚肉から、適度に脂質を除去し、さらに、中骨と混合して食品とすることで、魚由来のコラ-ゲンを豊富に含む、ヒトやペットが安心して食することができる食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~()の本発明により、達成される。
【0008】
) チョウザメの魚肉部と中骨部を原材料とし、該原材料から静置により油性成分が除去されることにより、油性成分量が調製されてなることを特徴とするチョウザメを原材料とする食品。
【0009】
) 前記食品の乾燥物100g中の成分組成が以下の特徴を有する前記()に記載のチョウザメを原材料とする食品。
タンパク質含有量 55gから75g
脂質 20gから40g
n3-脂肪酸 4gから8g
【0010】
) 前記乾燥物100g中に0.5gから2.0gのカルノシンが含有されてなることを特徴とする前記()または()に記載のチョウザメを原材料とする食品。
【0011】
) 前記乾燥物100g中に0.6gから2.0gのヒドロキシプロリンが含有されてなることを特徴とする前記()ないし()に記載のチョウザメを原材料とする食品。
【0012】
) チョウザメの魚肉部と中骨部からなり、乾燥物100g中の成分組成が以下の特徴を有するチョウザメを原材料とする食品。
タンパク質含有量 55gから75g
脂質 20gから40g
n3-脂肪酸 4gから8g
【0013】
) 前記乾燥物100g中に0.5gから1.5gのカルノシンが含有されてなることを特徴とする前記()に記載のチョウザメを原材料とする食品。
【0014】
) 前記乾燥物100g中に0.5gから2.0gのヒドロキシプロリンが含有されてなることを特徴とする前記(5)または()に記載のチョウザメを原材料とする食品。
【0015】
また、本発明は、以下の(8)~(14)に記載の製造方法により製造することができる。
【0016】
) チョウザメの魚肉部及び中骨部が原材料として準備される原材料準備工程と、 前記原材料が高圧蒸気により加熱処理される蒸煮工程と、 前記蒸煮工程の後、前記原材料が、固形成分と、前記原材料から遊離した液性成分とに分離される分離工程と、 前記液性成分の上層に浮遊する油性成分が前記液性成分から除去された調製煮汁が調製される油分調製工程と、 前記固形成分と前記調製煮汁が混合され食品が調製される混合工程とを有することを特徴とするチョウザメを原料とする食品の製造方法。
【0017】
) 前記混合工程は、前記調製煮汁と前記固形成分が、所定の比率40:60から70:30で混合されることを特徴とする前記()に記載のチョウザメを原料とする食品の製造方法
【0018】
10) 前記油分調製工程は、前記油性成分として前記液性成分の1%から10%が除去されることを特徴とする前記()または()に記載のチョウザメを原料とする食品の製造方法
【0019】
11) 前記原材料準備工程は、前記魚肉部と前記中骨部が、4:1から2:1の比率とされることを特徴とする前記()ないし(10)に記載のチョウザメを原料とする食品の製造方法。
【0020】
12) 前記蒸煮工程は、水蒸気により加圧され、温度105℃から130℃、時間20分から60分であることを特徴とする前記()ないし(11)に記載のチョウザメを原料とする食品の製造方法。
【0021】
13) 前記混合工程は、前記固形成分が細かくされ、前記調製煮汁と混合されることを特徴とする前記()ないし(12)に記載のチョウザメを原料とする食品の製造方法。
【0022】
14) 前記食品が気密性容器に密封され、加圧加熱殺菌されるレトルト工程を有することを特徴とする前記()ないし(13)に記載のチョウザメを原料とする食品の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
また、前記(1)~(7)の本発明は、前記構成により、種々の有効成分を有するチョウザメの魚肉から、適度に脂質を除去し、さらに、中骨と共に食品とすることで、魚由来のコラ-ゲンを豊富に含む、ヒトやペットが安心して食することができる食品を提供することができる。
【0024】
また、前記(8)~(14)の製造方法は、種々の有効成分を有するチョウザメの魚肉から、適度に脂質を除去し、さらに、中骨と共に食品とすることで、魚由来のコラ-ゲンを豊富に含む、ヒトやペットが安心して食することができる食品の製造方法を提供することができるので、本発明に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のチョウザメを原料とする食品の製造方法の一実施例のフロ-図である。
図2】本発明の食品の製造方法の一実施例で用いる蒸煮釜の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、前記のとおりの特徴を有するものであるが、以下、本発明のチョウザメを原料とする食品および食品の製造方法について詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の食品の製造方法の一実施例のフロ-図である。図2は、本発明の食品の製造方法の一実施例の蒸煮工程で用いる蒸煮釜の概要図である。
本発明の食品の製造方法は、図1に示すとおり、原材料準備工程、蒸煮工程、分離工程、油分調製工程および混合工程を有し、食品を長期保存するためにレトルト工程を有していても良い。原材料準備工程は、チョウザメの魚肉部及び中骨部が原材料として準備される工程であり、蒸煮工程は、前記原材料が高圧蒸気により加熱処理される工程であり、 分離工程は、前記蒸煮工程の後、前記原材料が、固形成分と前記原材料から遊離した液性成分とに分離される工程であり、油分調製工程は、前記液性成分の上層に浮遊する油性成分が前記液性成分から除去された調製煮汁が調製される工程であり、混合工程は、前記固形成分と前記調製煮汁が混合され、食品が調製される工程である。
【0028】
[原材料準備工程]
原材料準備工程で準備される原材料は、チョウザメの魚肉部と中骨部を有する。チョウザメは、硬骨魚類に属するチョウザメ目に属する魚類をさすが、日本国内においては、シロチョウザメ、シベリアチョウザメ、ロシアチョウザメおよびベルテル等が養殖されており、好適に用いることができる。
本発明は、上記の種に限らず、チョウザメ科チョウザメ属に属するナリバ-スタ-ジョン、バイカルチョウザメ、チョウコウチョウザメ、チュウゴクチョウザメ、アム-ルチョウザメ、センニンチョウザメ、グリ-ンスタ-ジョン、サハリンチョウザメ、コチョウザメ、ステラ-タススタ-ジョン、ペルシャチョウザメ、シップスタ-ジョン、アドリアチョウザメ、バルトチョウザメ、大西洋チョウザメ、ガルフチョウザメ、ミズウミチョウザメ、ショ-トノ-ズスタ-ジョン、チョウザメ科ダウリアチョウザメ属に属するオオチョウザメ、ダウリアチョウザメ、チョウザメ科シュ-ドスカフィリンクス属に属するダリアスタ-ジョン 、ドワ-フスタ-ジョン、アムダリアスタ-ジョン、チョウザメ科スカフィリンクス属に属するパリッドスタ-ジョン、シャベルノ-ズスタ-ジョン、アラバマスタ-ジョン、ヘラチョウザメ科ヘラチョウザメ属に属するヘラチョウザメ、ヘラチョウザメ科ハシナガチョウザメ属に属するシナヘラチョウザメなどを用いることができる。
なお、前記したベルテスは、オオチョウザメとコチョウザメの属間雑種であるが、上記のチョウザメ目に属するチョウザメの交配種も、本発明では好適に用いることができる。
【0029】
チョウザメは、通常の方法により3枚におろされる。すなわちチョウザメは、頭部、尾部、ひれが切り落とされ、内臓が取り除かれた後、胴体部が両側の筋肉部と、筋肉部の間の部分で脊椎骨や脊索を有する中骨に解体される。さらに、両側の筋肉部から皮が剥がされ、本発明の魚肉部となる。また、前記中骨が本発明の中骨部となる。
前記魚肉部と前記中骨部は、適度な大きさに分割し用いることができる。前記魚肉部および前記中骨部は、それぞれ長さ3cmから6cm程度に分割されることが好ましい。
魚肉部と中骨部の使用比率は、解体したチョウザメ1頭から採取される魚肉部と中骨部を全て用いることができるが、得られ食品の栄養バランスの点で、前記魚肉部と前記中骨部が、4:1から2:1の比率とされることが好ましい。
使用するチョウザメは、キャビアを採取した後の雌だけでなく、雌雄判別してからの雄および一定期間抱卵がみられない雌を使用することができる。
【0030】
[蒸煮工程]
蒸煮工程は、図2に示す蒸煮釜を用いることができる。蒸煮釜1は、釜2、釜2と気密に閉鎖可能な蓋3および釜2の内部の下方に設けられ液体が通過する穴が開けられたステンレス製のパンチングメタル7からなる。
釜2のパンチングメタル7の上部に原材料準備工程で準備された食品の原材料が投入される。投入された原材料は、パンチングメタル7上に堆積し、釜2の底には到達しない。釜2の底には、液体や気体を流通させる排出管が接続されており、前記排出管の途中に設けられた排出弁6を開閉することにより前記排出管を開放/閉鎖することができる。釜2と蓋3とは気密に閉鎖可能であり、図示しない閉鎖ジグにより押さえられ、釜2内部を、加圧および減圧が可能となっている。蓋3には、水蒸気が流入する蒸気流入管が接続されており、前記蒸気流入管の途中に設けられた蒸気流入弁4を開閉することにより前記蒸気流入管を開放/閉鎖することができる。また、蓋3には、さらに釜2内の気体や液体を排出する脱気管が接続されており、前記脱気管の途中に設けられた脱気弁5を開閉することにより前記脱気管を開放/閉鎖することができる。
【0031】
蒸煮工程では、釜2に原材料が投入された後、蓋3を締め、釜2と蓋3が閉鎖ジグによりしっかりと気密に押さえられ、前記蒸気流入管より水蒸気が流入し、高圧水蒸気により前記原材料が加熱処理される。釜2内の圧力と温度は、通常の高圧蒸気装置と同様、蒸気流入弁4と脱気弁5とを開閉制御することにより調節される。原材料の加熱処理は、釜2内の空気を水蒸気と置換し、水蒸気の圧力と温度で制御し、釜内温度が100℃を越える所定の温度に到達したのち、所定温度を維持し、処理時間として15分以上行われる。所定の処理時間が経過したら、蒸気流入弁4を閉鎖し、脱気弁5を開放し、常圧に戻し終了する。水蒸気による加熱処理は、好ましくは温度105℃から130℃、処理時間20分から60分である。本条件より弱い場合、余分な油分の遊離が少なく、強い条件では、脂質の酸化など原材料に含有される成分の変性が多くなってしまう。
【0032】
[分離工程]
前記蒸煮工程を終了した後、釜2内の固形成分と液性成分とを分離する工程である。
図2に記載の釜2を用いる場合は、前記蒸煮工程が終了したら、排出弁6を開放し、釜2の底にある排出管から前記液性成分を排出、採取し、前記固形成分と分離し、回収する。
【0033】
[油分調製工程]
前記分離工程により分離採取された液性成分であるいわゆる煮汁について、静置すると、水性部分と前記水性部分の上層に浮遊する油性成分となる。
油分調製工程は、前記油性成分を除去する工程である。本工程により、大凡の油性成分が除去され、調製煮汁が調製される。前記油性成分をどの程度除去するかにより、得られる食品の栄養バランスを調製することができるが、前記油性成分として前記液性成分の2%から10%が除去されることが好ましく、3%から6%が除去されることがより好ましい。
【0034】
[混合工程]
油分調製工程により調製された調製煮汁と前記固形成分を混合し、得られる食品の栄養バランスの調製や得られる食品の形態を調製し、食品を得る工程である。得られる食品の栄養バランスの点から、前記調製煮汁と前記固形成分が、所定の比率40:60から70:30で混合されることが好ましい。また、得られる食品の摂取状況、用途により、形態を調製するが、魚肉部と中骨部とを均質に混合するために、前記固形成分は、開放型のパドル付きブレンダ-などの混練装置で混練され、フレ-ク状に細かくされることが好ましい。
前記混練処理は、前記調製煮汁との混合の前でも、後でもよい。
調製煮汁と混合された食品の形態は、特に限定されす、フレ-ク状、ペ-スト状、一部塊を有するなどがある。
混合工程により、得られた食品は、そのまま食することができるが、保存期間を長くし市場に流通させるために、本製造方法は、以下のレトルト工程を有することが好ましい。
【0035】
[レトルト工程]
レトルト工程は、混合工程により調製された食品を、所定の容器に密封し、加圧加熱殺菌を行う工程である。前記所定の容器は、気密性や遮光性を有する容器であって、缶詰も含まれる。また、複数のフィルムがラミネ-トされたレトルトパウチがあり、一般的には、食品側にポリプロピレン、外側にポリエステルなどの合成樹脂やアルミ箔などが用いられている。本発明の食品のレトルト工程は、これに限らず、食味を損なわず、長期間保存を可能とするものであればよい。
【0036】
(実施例)
以下に、本発明のチョウザメを原料とするペットフ-ドの製造例を示す。
チョウザメとしては、シロチョウザメの雌雄判別後の雄、キャビア採卵後の雌および5歳を越えた雌を用いた。シロチョウザメの頭部、尾部、ひれを切り落とし、内臓を取り除いた後、胴体部を両側の筋肉部と、筋肉部の間の部分で脊椎骨や脊索を有する中骨とし、3枚におろした。さらに、両側の筋肉部から皮を剥がし、約4cmの大きさに切断し、魚肉部とした。前記中骨を約4cmの大きさに切断し、中骨部とした。
食品の原材料として、魚肉部73kg、中骨部28kgを図2に示す蒸煮釜に投入した。中骨部は魚肉部の約38%であった。
原材料を蒸煮釜に投入し、蓋を閉め、閉鎖ジグで釜に蓋をしっかりと押さえつけた。その後、蒸煮釜を制御し、120℃で60分、加熱加圧処理を行った。その結果、55.3kgの液性成分が得られ、固形成分は45.7kgであった。得られた液性成分から、2kgの上層を油性成分として除去し、調製煮汁を得た。
固形成分を開放型のパドル付きブレンダ-により混練し、フレ-ク状の固形成分と調製煮汁を45:55の割合で、さらに混練混合し、チョウザメ食品とした。
チョウザメ食品を100gづつレトルトパウチに充填、密封した後、120℃で15分、高圧蒸気滅菌を行い、市場に流通可能なチョウザメ食品を製造した。
【0037】
[混合工程後の食品の組成]
本実施例で用いた魚肉部と前記で混合工程後に得られた本発明のチョウザメ食品について、湿潤状態と乾燥状態での組成分析を行った。結果を表1に示す。

【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1に示されているように、本発明は、魚肉そのままを使用する場合に比べ、乾燥状態で乾燥物中、タンパク質が1.3倍となり、脂質が0.63倍となっていた。これにより、本発明のチョウザメを原料とした食品が、高タンパク低脂質食品となった。また、EPA、DHAの含有量は減少していたが、n3-脂肪酸、n6-脂肪酸としては、ともに、本発明の食品の製造方法により、含有量が増加していた。理由は、不明であるが、脊椎骨軟骨や脊策組織からなる中骨部を混合して、製造したことによると考えられる。
イミダゾ-ルジペプチドであるカルノシンは、減少したが、チョウザメの魚肉部には、元々、他の魚類に比べ豊富に含まれているため、依然としてイミダゾ-ルジペプチドの豊富な食品となっている。
さらに、中骨部が適量混合されているため、コラ-ゲンの指標アミノ酸であるヒドロキシプロリンが、魚肉をそのまま使用する場合に比べ1.5倍となった。
また、チョウザメの魚肉部には、ビタミンDが非常に多く含まれている。ビタミンDの多い紅鮭やマイワシよりも豊富に含まれており、本発明においては、総量として脂質量を大きく減らしているにもかかわらず、元のビタミンD量は維持されていた。
【0041】
以上の通り、本発明のチョウザメを用いた食品は、チョウザメの魚肉部と中骨部を原材料として、その原材料から油性成分が除去されることにより、油性成分量が調製されてなるという新規な構成であるので、チョウザメを原材料としながら、高タンパク質で低脂質となっており、元々チョウザメに豊富に含まれているn3-脂肪酸、イミダゾ-ルジペプチド、ビタミンDおよびコラ-ゲンが維持され、あるいは増強されて含有されるものとなった。本発明の食品は、チョウザメという素材を十分に活かしながら、全く新規な食品となった。
【0042】
従来のチョウザメを原料とする食品に比べ、成分ごとの新たな特徴は、本発明の食品の乾燥物100g中の成分組成が以下の特徴を有する新規な、チョウザメを原材料とする食品となっている。
タンパク質含有量 56gから76g
脂質 20gから40g
n3-脂肪酸 4gから8g
【0043】
また、本発明の食品の乾燥物100g中に0.5gから2.0gのカルノシンが含有されてなる新規な、チョウザメを原材料とする食品となっている。
さらに、本発明の乾燥物100g中に0.6gから2.0gのヒドロキシプロリンが含有されてなる新規な、チョウザメを原材料とする食品となっている。
また、さらに、本発明の乾燥物100g中に6,000IUから12,000IUのビタミンDが含有されてなる新規な、チョウザメを原材料とする食品となっている。
【0044】
本実施例でしめされたとおり、本発明は、チョウザメの魚肉部と中骨部からなり、乾燥物100g中の成分組成が以下の新規な特徴を有する、チョウザメを原材料とする食品となっている。
タンパク質含有量 56gから76g
脂質 20gから40g
n3-脂肪酸 4gから8g
【0045】
さらに、本発明の食品の乾燥物100g中に0.5gから1.5gのカルノシンが含有されてなる新規な、チョウザメを原材料とする食品となっている。
また、さらに本発明の食品の乾燥物100g中に0.5gから2.0gのヒドロキシプロリンが含有されてなる新規な、チョウザメを原材料とする食品となっている。
また、さらに、本発明の乾燥物100g中に6,000IUから12,000IUのビタミンDが含有されてなる新規な、チョウザメを原材料とする食品となっている。
【0046】
本発明のチョウザメを原材料とする食品およびその製造方法により得られる食品は、ヒトあるいはペットなどの動物が、通常の食料として利用できるだけでなく、n3-脂肪酸、イミダゾ-ルジペプチド、ビタミンDおよび魚肉性コラ-ゲンを有効に摂取できる。
また、流動性、固形物の大きさ、他の食品との混合等により、摂取の容易さ、摂取方法のバリエ-ション等に合わせた態様が可能である。
【0047】
以上の7り、本発明は、種々の有効成分を有するチョウザメの魚肉から、適度に脂質を除去し、さらに、中骨と共に食品とすることで、魚由来のコラ-ゲンを豊富に含む、ヒトやペットが安心して食することができる食品の製造方法を提供するものである。
【0048】
また、本発明は、種々の有効成分を有するチョウザメの魚肉から、適度に脂質を除去し、さらに、中骨と共に食品とすることで、魚由来のコラ-ゲンを豊富に含む、ヒトやペットが安心して食することができる食品を提供するものである。
【0049】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 蒸煮釜
2 釜
3 蓋
4 蒸気流入弁
5 脱気弁
6 排出弁
7 パンチングメタル
8 食材料
図1
図2