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特開2023-85461レーダーシステムにおけるトランシーバ性能パラメータの測定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085461
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】レーダーシステムにおけるトランシーバ性能パラメータの測定
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20230613BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20230613BHJP
【FI】
G01S7/40 169
G01S13/931
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061397
(22)【出願日】2023-04-05
(62)【分割の表示】P 2020178515の分割
【原出願日】2016-09-30
(31)【優先権主張番号】14/870,129
(32)【優先日】2015-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】カーティック サブライ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ポール ギンスバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル コラム ブリーン
(72)【発明者】
【氏名】サンディープ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】カーティク ラマスブラマニアン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機能セーフティ規格を満たす必要がある。
【解決手段】一つ又は複数の受信チャネル(202)及び/又は一つ又は複数の送信チャネル(204)の性能パラメータを監視するように構成されるレーダーシステムオンチップ(SOC)(102)の説明する例において、レーダーSOCは、レーダーSOCがテストモードで動作するとき、少なくとも1つの送信チャネルから少なくとも1つの受信チャネルにテスト信号を提供するために、少なくとも1つの送信チャネルを少なくとも1つの受信チャネルに結合するループバックパスを含み得る。いくつかの実施形態において、ループバックパスは、一つ又は複数の送信チャネルの各々に結合されるコンバイナ(318)と、一つ又は複数の受信チャネルの各々に結合されるスプリッタ(320)と、コンバイナの出力をスプリッタの入力に結合する単一ワイヤとを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ又は複数の性能パラメータを監視するために構成されるレーダーシステムオンチップ(SOC)であって、前記SOCが、
一つ又は複数の受信チャネル、
一つ又は複数の送信チャネル、
前記一つ又は複数の送信チャネルに結合され、前記レーダーSOCがテストモードで動作するとき連続波信号を生成するように動作可能な、伝送生成回路要素、及び
前記一つ又は複数の送信チャネルを前記一つ又は複数の受信チャネルに結合するループバックパス、
を含み、
前記ループバックパスが、前記一つ又は複数の送信チャネルに結合されるコンバイナと、前記一つ又は複数のチャネルに結合されるスプリッタと、前記コンバイナの出力を前記スプリッタの入力に結合する単一ワイヤとを含み、前記ループバックパスが、前記レーダーSOCがテストモードで動作するとき前記連続波信号を受信する少なくとも一つの送信チャネルから少なくとも一つの受信チャネルへテスト信号を提供するように動作可能である、レーダーSOC。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダーSOCであって、
前記一つ又は複数の送信チャネルの各送信チャネルが、前記連続波信号を受信するために前記伝送生成回路要素に結合されるプログラマブルシフタを含み、前記プログラマブルシフタが、テスト信号を生成するために前記連続波信号に非ゼロの周波数を付加するように動作可能であり、
前記コンバイナが、前記プログラマブルシフタによって出力されるテスト信号を受信するために各プログラマブルシフタに結合され、前記ループバックパスが、送信チャネルの前記プログラマブルシフタから前記一つ又は複数の受信チャネルの各々に前記テスト信号を提供するように動作可能である、レーダーSOC。
【請求項3】
請求項2に記載のレーダーSOCであって、
受信チャネルにおける前記受信したテスト信号が、前記受信チャネルの利得と前記受信チャネルの位相とで構成されるグループから選択される少なくとも1つを計算するために用いられる、レーダーSOC。
【請求項4】
請求項3に記載のレーダーSOCであって、
前記一つ又は複数の受信チャネルが少なくとも2つの受信チャネルを含み、各受信チャネルにおける前記受信したテスト信号が、受信チャネルのペア間の利得不一致と受信チャネルのペア間の位相不一致とで構成されるグループから選択される少なくとも1つを計算するために用いられる、レーダーSOC。
【請求項5】
請求項1に記載のレーダーSOCであって、
前記一つ又は複数の受信チャネルの各受信チャネルからノイズデータ信号が収集され、各受信チャネルにおける前記ノイズデータ信号が、前記受信チャネルについてノイズ指数を計算するために用いられる、レーダーSOC。
【請求項6】
請求項1に記載のレーダーSOCであって、
前記連続波信号に基づくテスト信号が送信チャネルによって送信され、前記一つ又は複数の受信チャネルの各受信チャネルによって受信される反射テスト信号が、前記受信チャネル及び前記送信チャネルの組み合わせについてレーダーシステムノイズ指数を計算するために用いられる、レーダーSOC。
【請求項7】
請求項1に記載のレーダーSOCであって、
前記一つ又は複数の送信チャネルが少なくとも2つの送信チャネルを含み、
前記少なくとも2つの送信チャネルの各送信チャネルが、前記連続波信号を受信するために前記伝送生成回路要素に結合されるプログラマブルシフタを含み、
各プログラマブルシフタが、異なる周波数シフトを前記連続波信号に適用するように動作可能であり、
前記プログラマブルシフタからの周波数シフトテスト信号で構成されるマルチトーンテスト信号が、前記一つ又は複数の受信チャネルによって受信され、
前記マルチトーンテスト信号が、少なくとも1つの受信チャネルについて少なくとも1つの非線形性メトリクスを計算するために用いられる、レーダーSOC。
【請求項8】
請求項7に記載のレーダーSOCであって、
前記プログラマブルシフタからの前記周波数シフトテスト信号が、それぞれの送信チャネルによって送信される、レーダーSOC。
【請求項9】
請求項7に記載のレーダーSOCであって、
前記コンバイナが、前記プログラマブルシフタによって出力される周波数シフトテスト信号を受信するために各プログラマブルシフタに結合され、
前記コンバイナが、前記マルチトーンテスト信号を出力するために各プログラマブルシフタからの前記周波数シフトテスト信号を組み合わせるように動作可能であり、
前記ループバックパスが、前記マルチトーンテスト信号を前記一つ又は複数の受信チャネルに提供するように動作可能である、レーダーSOC。
【請求項10】
請求項7に記載のレーダーSOCであって、
前記コンバイナが、前記プログラマブルシフタによって出力される周波数シフトテスト信号を受信するために各プログラマブルシフタに結合され、
前記コンバイナが、少なくとも1つのプログラマブルシフタからの少なくとも1つの周波数シフトテスト信号に基づいてテスト信号を出力し、
前記ループバックパスが、前記コンバイナによって出力される前記テスト信号を前記受信チャネルに提供するように動作可能であり、
少なくとも1つのプログラマブルシフタからの少なくとも1つの周波数シフトテスト信号が、前記それぞれの送信チャネルによって送信される、レーダーSOC。
【請求項11】
請求項1に記載のレーダーSOCであって、
前記コンバイナが、前記一つ又は複数の送信チャネルの各々において電力増幅器チェーンによって出力されるテスト信号を受信するために結合され、
前記ループバックパスが、前記コンバイナと前記スプリッタとの間に結合される周波数シフタを含み、前記周波数シフタが、前記コンバイナによって出力されるテスト信号に周波数を付加するように動作可能であり、前記ループバックパスが、前記テスト信号を送信チャネルの前記電力増幅器チェーンから前記受信チャネルに提供するように動作可能であり、
受信チャネルにおける前記受信したテスト信号が、利得と位相とで構成されるグループから選択される少なくとも1つを前記送信チャネルについて計算するために用いられる、レーダーSOC。
【請求項12】
請求項11に記載のレーダーSOCであって、
前記周波数シフタが、オンオフキーイング(OOK)変調器と2位相シフトキーイング(BPSK)変調器とで構成されるグループから選択される1つである、レーダーSOC。
【請求項13】
一つ又は複数の性能パラメータを監視するために構成されるレーダーシステムオンチップ(SOC)であって、前記レーダーSOCが、
一つ又は複数の受信チャネル、
一つ又は複数の送信チャネル、及び
前記一つ又は複数の送信チャネルに結合され、前記レーダーSOCがテストモードで動作するとき連続波信号を生成するように動作可能な、伝送生成回路要素、
を含む、レーダーSOC。
【請求項14】
請求項13に記載のレーダーSOCであって、
ノイズデータ信号が前記一つ又は複数の受信チャネルのうちの或る受信チャネルから収集され、前記受信チャネルにおける前記ノイズデータ信号が、前記受信チャネルについてノイズ指数を計算するために用いられる、レーダーSOC。
【請求項15】
請求項13に記載のレーダーSOCであって、
前記連続波信号に基づくテスト信号が、前記一つ又は複数の送信チャネルのうちの或る送信チャネルによって送信され、
前記一つ又は複数の受信チャネルのうちの或る受信チャネルによって受信される反射テスト信号が、前記受信チャネル及び前記送信チャネルの組み合わせについてレーダーシステムノイズ指数を計算するために用いられる、レーダーSOC。
【請求項16】
請求項13に記載のレーダーSOCであって、
前記一つ又は複数の送信チャネルのうちの或る送信チャネルが、前記連続波信号を受信するために前記伝送生成回路要素に結合されるプログラマブルシフタを含み、前記プログラマブルシフタが、テスト信号を生成するために非ゼロの周波数を前記連続波信号に付加するように動作可能であり、
前記プログラマブルシフタの出力が、ループバックパスを介して前記一つ又は複数の受信チャネルの第1の受信チャネルの入力に結合され、前記ループバックパスが、前記テスト信号を前記第1の受信チャネルに提供するように動作可能である、レーダーSOC。
【請求項17】
請求項16に記載のレーダーSOCであって、
前記第1の受信チャネルにおける前記受信されたテスト信号が、前記第1の受信チャネルの利得と前記第1の受信チャネルの位相とで構成されるグループから選択される少なくとも1つを計算するために用いられる、レーダーSOC。
【請求項18】
請求項16に記載のレーダーSOCであって、
前記プログラマブルシフタの前記出力が、前記ループバックパスを介して前記一つ又は複数の受信チャネルの第2の受信チャネルの入力に結合され、前記ループバックパスが、前記テスト信号を前記第1の受信チャネル及び前記第2の受信チャネルに提供するように動作可能であり、
前記第1の受信チャネル及び前記第2の受信チャネルにおける前記受信されたテスト信号が、前記第1の受信チャネルと前記第2の受信チャネルとの間の利得不一致と、前記第1の受信チャネルと前記第2の受信チャネルとの間の位相不一致とで構成されるグループから選択される少なくとも1つを計算するために用いられる、レーダーSOC。
【請求項19】
請求項13に記載のレーダーSOCであって、
前記一つ又は複数の送信チャネルが少なくとも2つの送信チャネルを含み、前記少なくとも2つの送信チャネルの各送信チャネルが、前記連続波信号を受信するために前記伝送
生成回路要素に結合されるプログラマブルシフタを含み、各プログラマブルシフタが、異なる周波数シフトを前記連続波信号に適用するように動作可能であり、
前記プログラマブルシフタからの周波数シフトテスト信号で構成されるマルチトーンテスト信号が、前記一つ又は複数の受信チャネルのうちの或る受信チャネルによって受信され、前記マルチトーンテスト信号が、前記受信チャネルについて少なくとも1つの非線形性メトリクスを計算するために用いられる、レーダーSOC。
【請求項20】
請求項19に記載のレーダーSOCであって、
前記プログラマブルシフタからの前記周波数シフトテスト信号が、それぞれの送信チャネルによって送信される、レーダーSOC。
【請求項21】
請求項19に記載のレーダーSOCであって、
コンバイナが、前記プログラマブルシフタによって出力される周波数シフトテスト信号を受信するために各プログラマブルシフタに結合され、
前記コンバイナが、前記マルチトーンテスト信号を出力するために前記プログラマブルシフタからの前記周波数シフトテスト信号を組み合わせるように動作可能であり、
前記コンバイナが、前記マルチトーンテスト信号を前記受信チャネルに提供するように動作可能なループバックパスを介して前記受信チャネルに結合される、レーダーSOC。
【請求項22】
請求項19に記載のレーダーSOCであって、
コンバイナが、前記プログラマブルシフタによって出力される周波数シフトテスト信号を受信するために各プログラマブルシフタに結合され、
前記コンバイナが、第1のプログラマブルシフタからの周波数シフトテスト信号に基づいてテスト信号を出力し、
前記コンバイナが、前記テスト信号を前記受信チャネルに提供するように動作可能なループバックパスを介して前記受信チャネルに結合され、
第2のプログラマブルシフタからの周波数シフトテスト信号が、前記それぞれの送信チャネルによって送信され、前記マルチトーン信号が、前記テスト信号及び前記送信された周波数シフトテスト信号を含む、レーダーSOC。
【請求項23】
請求項13に記載のレーダーSOCであって、
前記一つ又は複数の送信チャネルのうちの或る送信チャネルが、前記連続波信号を受信するために前記伝送生成回路要素に結合される電力増幅器チェーンを含み、前記電力増幅器チェーンが、前記連続波信号に基づいてテスト信号を生成するように動作可能であり、
前記電力増幅器チェーンの出力が周波数シフタに結合され、前記周波数シフタが、周波数を前記テスト信号に付加するように動作可能であり、
前記周波数シフタが、前記周波数シフタによって出力された前記周波数シフトテスト信号を受信チャネルに提供するように動作可能なループバックパスに含まれ、
前記受信チャネルにおいて受信された前記周波数シフトテスト信号が、利得と位相とで構成されるグループから選択される少なくとも1つを前記送信チャネルについて計算するために用いられる、レーダーSOC。
【請求項24】
請求項23に記載のレーダーSOCであって、
前記周波数シフタが、オンオフキーイング(OOK)変調器と2位相シフトキーイング(BPSK)変調器とで構成されるグループから選択される1つである、レーダーSOC。
【請求項25】
一つ又は複数の性能パラメータを監視するために構成されるレーダーシステムオンチップ(SOC)であって、前記レーダーSOCが、
複数の受信チャネル、
複数の送信チャネル、
前記複数の送信チャネルに結合され、前記レーダーSOCがテストモードで動作するとき連続波信号を生成するように動作可能な、伝送生成回路要素、及び
前記複数の送信チャネルを前記複数の受信チャネルに結合するループバックパス、
を含み、
前記ループバックパスが、各送信チャネルに含まれるプログラマブルシフタの出力に結合される第1のコンバイナと、各送信チャネルにおける電力増幅器チェーンの出力に結合される第2のコンバイナと、前記第2のコンバイナの出力に結合される周波数シフタと、前記第1のコンバイナの出力及び前記周波数シフタの出力に結合される第3のコンバイナと、各前記受信チャネルの入力に結合されるスプリッタと、前記第3のコンバイナの出力を前記スプリッタの入力に結合する単一ワイヤとを含み、
前記ループバックパスが、前記レーダーSOCがテストモードで動作するときテスト信号を前記連続波信号を受信する少なくとも一つの送信チャネルから前記受信チャネルに提供するように動作可能である、レーダーSOC。
【請求項26】
請求項25に記載のレーダーSOCであって、
前記周波数シフタが、オンオフキーイング(OOK)変調器と2位相シフトキーイング(BPSK)変調器とで構成されるグループから選択される1つである、レーダーSOC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般にレーダーシステムに関し、より具体的には、レーダーシステムにおけるトランシーバ性能パラメータの測定に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の操作エラーを減らすために、先進運転支援システム(ADAS)と呼ばれる新しいクラスのセーフティシステムが自動車に導入されてきている。これらのシステムは、主にミリメートル波車載レーダーに基づくスマートセンサによって作動され得る。リアビューカメラ、電子安定制御、及び視覚ベース歩行者検出システムなどの機能を提供し得る、こうした支援システムの急増は、一つには、マイクロコントローラ及びセンサ技術における向上によって実行可能となってきている。拡張埋め込みレーダーベースのソリューションは、ADAS設計者に対する補足的なセーフティ機能を実行可能にしている。
【0003】
車載レーダーシステムにおいて、レーダーセンサは、車両周囲の障害物、及び車両に対する検出されたオブジェクトの速度を検出するために有用である。レーダーシステムにおける処理ユニットが、レーダーセンサによって生成される信号に基づいて、例えば、衝突を回避するため又は巻き添え被害を削減するために必要とされる適切なアクションを決定し得る。現在の車両レーダーシステムは、車両周囲のオブジェクト及び障害物、任意の検出されたオブジェクト及び障害物の車両に対する位置、並びに、任意の検出されたオブジェクト及び障害物の車両に対する速度を検出することができる。例えば、レーダーシステムは、処理ユニットを介して、車両運転者に潜在的な危険に関して警告すること、危険な状況にある車両を制御することによって衝突を防止すること、車両の部分的な制御を引き継ぐこと、又は運転者が車両を駐車させるのを支援することが可能である。
【0004】
車載レーダーシステムは、「自動車機能セーフティ」と題する国際規格26262の機能セーフティ規格を満たす必要がある。ISO26262は、機能セーフティを、電気/電子システムの不良挙動によって生じる不当なリスクがないこととして定義する。車載レーダーにおける機能セーフティは、レーダーにおける構成要素の欠陥に起因して人に危害が加えられるのを防止することである。車載レーダーの場合、レーダーは、およそ100ミリ秒(ms)のフォールトトレラントな時間間隔内で適切に機能するものと認識されるべきである。したがって、車両が動作している間、劣化した信号対ノイズ比(SNR)或いは障害物の存在又は位置の誤検出につながり得る、レーダーのいかなる部分における障害も検出されるべきであり、およそ100mn以内に適切な応答が成されるべきである。
【発明の概要】
【0005】
レーダーシステムにおけるトランシーバ性能パラメータの測定のための方法及び装置の説明する例において、一つ又は複数の性能パラメータを監視するために構成されるレーダーシステムオンチップ(SOC)が、一つ又は複数の受信チャネルと、一つ又は複数の送信チャネルと、一つ又は複数の送信チャネルに結合される伝送生成回路要素と、一つ又は複数の送信チャネルを一つ又は複数の受信チャネルに結合するループバックパスを含む。伝送生成回路要素は、レーダーSOCがテストモードで動作するとき連続波信号を生成するように動作可能である。ループバックパスは、一つ又は複数の送信チャネルに結合されるコンバイナと、一つ又は複数のチャネルに結合されるスプリッタと、コンバイナの出力をスプリッタの入力に結合する単一ワイヤとを含む。ループバックパスは、レーダーSOCがテストモードで動作するとき、連続波信号を受信する少なくとも一つの送信チャネルから少なくとも一つの受信チャネルへテスト信号を提供するように動作可能である。
【0006】
一態様において、一つ又は複数の性能パラメータを監視するために構成されるレーダーシステムオンチップ(SOC)が、一つ又は複数の受信チャネル、一つ又は複数の送信チャネル、及び、一つ又は複数の送信チャネルに結合される伝送生成回路要素を含む。伝送生成回路要素は、レーダーSOCがテストモードで動作するとき連続波信号を生成するように動作可能である。
【0007】
一態様において、一つ又は複数の性能パラメータを監視するために構成されるレーダーシステムオンチップが、受信チャネルと、送信チャネルと、送信チャネルに結合される伝送生成回路要素と、送信チャネルを受信チャネルに結合するループバックパスとを含む。伝送生成回路要素は、レーダーSOCがテストモードで動作するとき連続波信号を生成するように動作可能である。ループバックパスは、各送信チャネルに含まれるプログラマブルシフタの出力に結合される第1のコンバイナ、各送信チャネルにおける電力増幅器チェーンの出力に結合される第2のコンバイナ、第2のコンバイナの出力に結合される周波数シフタ、第1のコンバイナ及び周波数シフタの出力に結合される第3のコンバイナ、各受信チャネルの出力に結合されるスプリッタ、及び、第3のコンバイナの出力をスプリッタの入力に結合する単一ワイヤを含む。ループバックパスは、レーダーSOCがテストモードで動作するとき、連続波信号を受信する少なくとも一つの送信チャネルから受信チャネルへテスト信号を提供するように動作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】レーダーシステムの動作の間、性能監視を実施するように構成される、例示の周波数変調連続波(FMCW)レーダーシステムのブロック図である。
【0009】
図2】例示のレーダーシステムオンチップ(SOC)のブロック図である。
【0010】
図3】レーダーSOCが受信チャネル及び/又は送信チャネルの性能パラメータを測定するように構成される、図2のレーダーSOCの例示の実施形態の簡略ブロック図である。
図4】レーダーSOCが受信チャネル及び/又は送信チャネルの性能パラメータを測定するように構成される、図2のレーダーSOCの例示の実施形態の簡略ブロック図である。
図5】レーダーSOCが受信チャネル及び/又は送信チャネルの性能パラメータを測定するように構成される、図2のレーダーSOCの例示の実施形態の簡略ブロック図である。
【0011】
図6】方法のフローチャートである。
図7】方法のフローチャートである。
図8】方法のフローチャートである。
図9】方法のフローチャートである。
図10】方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本開示の具体的な実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。様々な図面における同様の要素は、整合性のために同様の参照番号によって示される。
【0013】
本開示の実施形態は、例えば動作している車両において用いられる場合に、レーダーシステムオンチップ(SOC)、すなわち、レーダーSOCとしてレーダートランシーバー集積回路における性能を監視することを考慮している。より具体的に言えば、様々な実施形態において、レーダーSOCの受信チャネル及び/又は送信チャネルの性能が、SOC上で捕捉されるテスト信号に基づいて測定され得る。例えば、テスト信号は、複数の受信チャネル間の及び/又は複数の送信チャネル間の利得及び位相応答の不一致、受信チャネル及び/又は送信チャネルにおけるノイズ及びスプリアストーンのレベル、並びに/或いは、受信チャネルの非線形性を検出するために有用である。様々な実施形態において、送信チャネルから受信チャネルへテスト信号を伝送するために各送信チャネル/受信チャネルペアを結合するワイヤを有する代わりに、SOCの一つ又は複数の送信チャネルがコンバイナに結合され、コンバイナの出力が、受信チャネルのうちの一つ又は複数に結合されるスプリッタに単一ワイヤを介してルーティングされる。
【0014】
図1は、例示の周波数変調連続波(FMCW)レーダーシステム100のブロック図であり、レーダーシステム100は、レーダーシステム100の動作の間、性能監視を実施するように構成される。例示のFMCWレーダーシステム100は、レーダーシステムオンチップ(SOC)102、処理ユニット104、及びネットワークインターフェース106を含む。レーダーSOC102の様々な実施形態のアーキテクチャを、図2図5を参照して説明する。
【0015】
レーダーSOC102は、高速シリアルインターフェースを介して処理ユニット104に結合される。図2を参照してより詳細に説明するように、レーダーSOC102は、高速シリアルインターフェースを介して処理ユニット104に提供される、複数のデジタル中間周波数(IF)信号(代替として、デチャープ信号、ビート信号、又はロー(raw)レーダー信号と呼ばれる)を生成するための機能を含む。更に、図3図4、及び図5を参照してより詳細に説明するように、レーダーSOC102の様々な実施形態が、SOC102の受信チャネル及び/又は送信チャネルのためのテストデータを生成するように、並びに、受信チャネル及び/又は送信チャネルの性能パラメータの監視に使用すべきテストデータを処理ユニット104に提供するように構成される。
【0016】
処理ユニット104は、レーダー信号処理を実施するための、すなわち、例えば、任意の検出されたオブジェクトの距離、速度、及び角度を判定するために、受信したレーダー信号を処理するための機能を含む。また、処理ユニット104は、オブジェクトの追跡、動きの速度及び方向の判定などの、検出されたオブジェクトに関する情報の後処理を実施するための機能を含み得る。また、処理ユニット104は、レーダーSOC102によって提供されるテストデータに基づく性能監視を実施するため、及び、性能監視によって検出された条件に基づく緩和を実施するための機能を含む。性能監視のためのテストデータ及びオプションについて、本明細書においてより詳細に説明する。
【0017】
処理ユニット104は、レーダーデータを用いるアプリケーションの処理スループットのために必要に応じて、任意の適切なプロセッサ又はプロセッサの組み合わせを含み得る。例えば、処理ユニット104は、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロコントローラ(MCU)、DSP及びMCUの両方の処理を組み合わせたSOC、又は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)及びDSPを含み得る。
【0018】
処理ユニット104は、必要に応じて、車両における一つ又は複数の電子制御ユニットに、ネットワークインターフェース106を介して制御情報を提供する。電子制御ユニット(ECU)は、車両における一つ又は複数の電子システム又はサブシステムを制御する、車両における任意の組み込みシステムに対する総称である。ECUのタイプの例には、電子/エンジン制御モジュール(ECM)、パワートレイン制御モジュール(PCM)、伝送制御モジュール(TCM)、ブレーキ制御モジュール(BCM又はEBCM)、中央制御モジュール(CCM)、中央タイミングモジュール(CTM)、汎用電子モジュール(GEM)、車体制御モジュール(BCM)、及びサスペンション制御モジュール(SCM)が含まれる。
【0019】
ネットワークインターフェース106は、コントローラエリアネットワーク(CAN)プロトコル、FlexRayプロトコル、又はイーサネットプロトコルなど、任意の適切なプロトコルを実装し得る。
【0020】
図2は、例示のレーダーSOC102のブロック図である。レーダーSOC102は、FMCW信号を送信するための複数の送信チャネル204、及び、反射された送信信号を受信するための複数の受信チャネル202を含み得る。また、受信チャネルの数は、送信チャネルの数よりも多くてよい。例えば、レーダーSOC102の実施形態が、2つの送信チャネル及び4つの受信チャネルを有し得る。
【0021】
送信チャネルは、適切な送信器及びアンテナを含む。受信チャネルは、適切な受信器及びアンテナを含む。また、受信チャネル202の各々は同一であり、受信信号を増幅するための低ノイズ増幅器(LNA)206、208と、IF信号を生成するために伝送生成回路要素によって生成される信号を受信信号とミックスするためのミキサ210、212と、IF信号をフィルタリングするためのベースバンド・バンドバスフィルタ214、216と、フィルタリングされたIF信号を増幅するための可変利得増幅器(VGA)215、217と、アナログIF信号をデジタルIF信号に変換するためのアナログ・デジタル変換器(ADC)218、220とを含む。ミキサは、低ノイズ増幅器及び伝送生成回路要素から受信する入力の周波数の差に等しい周波数を有する出力信号を生成するダウンコンバータとして働き、これらの入力は、いずれも無線周波(RF)信号である。受信チャネルのバンドパスフィルタ、VGA及びADCは、まとめて、ベースバンドチェーン又はベースバンドフィルタチェーンと呼ぶことができる。また、バンドパスフィルタ及びVGAは、まとめて、IF増幅器(IFA)と呼ぶことができる。
【0022】
受信チャネル202は、デジタルIF信号をDFE222に提供するために、デジタルフロントエンド(DFE)構成要素222に結合される。DFE222は、データ転送レートを減少させるために、デジタルIF信号に対してデシメーションフィルタリングを実施するための機能を含む。また、DFE222は、例えば、DCオフセット除去、RX間利得インバランス非理想性及びRX間位相インバランス非理想性などの受信チャネルにおける非理想性のデジタル補償など、他の動作をデジタルIF信号に対して実施することもできる。DFE222は、レーダーSOC102が通常モードのとき、デシメーションされたデジタルIF信号を処理ユニット104に転送するために、高速シリアルインターフェース(I/F)224に結合される。いくつかの実施形態において、DFEは、レーダーSOC102がテストモードのときデジタルテスト信号を制御モジュール228に転送するために、制御モジュール228にも結合される。
【0023】
シリアル周辺インターフェース(SPI)226は、処理ユニット104との通信のためのインターフェースを提供する。例えば、処理ユニット104は、例えば、チャープのタイミング及び周波数、出力電力レベル、監視機能のトリガなど、制御情報を、制御モジュール228に送信するために、SPI226を用い得る。レーダーSOC102は、例えばテストデータを処理ユニット104に送信するために、SPI 226を用い得る。
【0024】
制御モジュール228は、レーダーSOC102の動作を通常モード及びテストモードで制御するための機能を含む。例えば、制御モジュール228は、DFE222の出力サンプルを記憶するためのバッファ、バッファコンテンツのスペクトル情報を計算するためのFFT(高速フーリエ変換)エンジン、並びに、通常モード及びテストモードでレーダーSOC102の動作を制御するためのファームウェアを実行するMCUを含み得る。制御モジュール228の機能を、図6図10の方法を参照してより詳細に説明する。
【0025】
プログラマブルタイミングエンジン232は、制御モジュール228からのレーダーフレームにおけるチャープのシーケンスについてチャープパラメータ値を受信するため、並びに、パラメータ値に基づいてフレームにおけるチャープの送信及び受信を制御するチャープ制御信号を生成するための機能を含む。例えば、チャープパラメータは、レーダーシステムアーキテクチャによって定義され、いずれの送信器をイネーブルにするかを示すための送信器イネーブルパラメータ、チャープ周波数開始値、チャープ周波数勾配、チャープ持続時間、送信チャネルがいつ送信するべきか及び更なるレーダー処理のためにDFE出力デジタルをいつ収集するべきかのインジケータなどを含み得る。これらのパラメータのうちの一つ又は複数がプログラム可能であり得る。
【0026】
無線周波数合成器(SYNTH)230は、タイミングエンジン232からのチャープ制御信号に基づいて送信のためのFMCW信号を生成するための機能を含む。いくつかの実施形態において、SYNTH230は、電圧制御発振器(VCO)を備える位相ロックループ(PLL)を含む。
【0027】
クロック乗算器240は、送信信号(LO信号)の周波数を、ミキサ206、208のLO周波数へと増加させる。クリーンアップPLL(位相ロックループ)234は、外部低周波基準クロック(図示せず)の信号の周波数をSYNTH230の周波数へと増加させるように、及び、クロック信号から出る基準クロック位相ノイズをフィルタリングするように動作する。
【0028】
クロック乗算器240、合成器230、タイミング生成器232、及びクリーンアップPLL234は、伝送生成回路要素の例である。伝送生成回路要素は、送信チャネルへの入力として、及び、クロック乗算器を介した受信チャネルにおけるミキサへの入力として、無線周波数(RF)信号を生成する。伝送生成回路要素の出力は、LO(局部発振器)信号又はFMCW信号と呼ばれ得る。
【0029】
図3図4、及び図5は、図2のレーダーSOC102の例示の実施形態の簡略化されたブロック図であり、これらの実施例において、レーダーSOC102が、受信器及び/又は送信器の性能パラメータを測定するように構成される。説明を簡単にするために、図示される実施形態は、各々4つの受信チャネル及び2つの送信チャネルを有する。いくつかの実施形態において、受信チャネルの数及び/又は送信チャネルの数は異なり得る。これらの方法において、伝送生成回路要素は、レーダーSOCがテストモードで動作するとき、ゼロ勾配の連続波信号、すなわち周波数が一定の連続RF波、を備えるLO信号を生成するように構成される。レーダーSOCが通常モードで動作するとき、伝送生成回路要素の出力は、経時的に周波数が変化するRF信号であり、例えば、RF信号の周波数は、チャープ制御パラメータに応答して、時間0から100マイクロ秒にわたって77GHzから81GHzまで変化し、結果として、送信信号の遅延バージョンとしての反射信号となり、各受信チャネルにおけるミキサは往復遅延に比例するIF信号を出力する。
【0030】
図3図4、及び図5のブロック図の各々は、少なくとも1つのコンバイナを含む。一般に、コンバイナは、出力信号を形成するために入力信号を付加するハードウェア回路であり得る。コンバイナが単一入力信号を受信する場合、その信号はコンバイナによって出力される。いくつかの実施形態において、コンバイナは、信号を付加する前に、プログラム可能な利得又は減衰を各入力信号に印加し得る。いくつかの実施形態において、コンバイナは、各入力信号の利得、減衰、及び/又は遅延がコンバイナ出力と実質的に同様であるように、対称的であり得る。
【0031】
次に図3を参照すると、図示される例示のFMCWレーダーSOC102は、SOC102がテストモードで動作するときに、受信チャネル202の各々に対して、送信チャネル204において生成される信号の内部ループバックを提供するように構成される。図6の方法を参照してより詳細に説明するように、この構成は、異なる無線及び中間周波数での受信チャネル間の利得及び位相不一致を判定するために有用である。また、図7の方法を参照してより詳細に説明するように、この構成は、受信チャネル202についてノイズ指数を決定するために有用である。また、図10の方法を参照してより詳細に説明するように、この構成は、受信チャネル202における非線形性メトリクスを決定するために有用である。
【0032】
2つの送信チャネルは、各々、FMCW信号を受信するためにSYNTH230に結合されるプレ電力増幅器(PPA)302、312、増幅された信号を受信するためにPPA302、312に結合されるプログラマブルシフタ304、314、及び、シフトされた信号を受信するためにシフタ304、314に結合される電力増幅器(PA)306、316の、信号電力増幅器チェーンを組み込む。いくつかの実施形態において、シフタ304、314は、周波数及び位相の両方のシフティングについてプログラムされ得る。したがって、シフタ304、314の出力信号は、入力周波数にプログラマブルオフセット周波数を加えた周波数に等しい周波数、及び、入力位相にプログラマブルオフセット位相を加えた位相に等しい位相を有し得る。コンバイナ318は、シフトされた信号を受信して組み合わせるために、シフタ304、314の出力に結合される。コンバイナ318は、組み合わされた信号をスプリッタに提供するために、スプリッタ320にも結合される。
【0033】
スプリッタ320は、受信チャネル202の各々に結合される。スプリッタ320は、等しい電力及び位相の信号を受信チャネル202の各々に提供するために、コンバイナ318からの組み合わされた信号を分割する。スプリッタ320は、スプリッタから受信チャネル202の各々のLNAに入力される信号の利得、減衰、及び/又は遅延が実質的に同様となるように、対称的であり得る。
【0034】
各受信チャネル202は、スプリッタ320と低ノイズ増幅器(LNA)との間に結合される、無線周波数(RF)電力検出器307、309、311、313を含む。電力検出器307、309、311、313は、コンバイナ308からの組み合わされた信号の電力を測定する。この電力測定値は、受信信号強度インジケータ(RSSI)とも呼ばれ得る。電力検出器307、309、311、313は、電力測定値を制御モジュール228に提供するために、制御モジュール228に結合される。いくつかの実施形態において、電力検出器307、309、311、313は、各々、電力検出センサと、センサからの電力測定値をデジタル電力測定値に変換するためのアナログ・デジタル変換器とを組み込み得る。本明細書においてより詳細に説明するように、電力検出器307、309、311、313の出力(電力測定値)は、レーダーSOCがテストモードで動作するとき、制御モジュール228によってアクセスされ得る。
【0035】
次に、図4を参照すると、図示される例示のFMCWレーダーSOCは、SOC102がテストモードで動作するとき、受信チャネル202の各々に、送信チャネル204において生成される信号の内部ループバックを提供するように構成される。図8の方法を参照してより詳細に説明するように、この構成は、送信チャネル204間の電力及び位相の不一致を判定するために有用である。
【0036】
この例において、コンバイナ402は、電力増幅器チェーンからの信号を受信するため、及び2つの信号を組み合わせて単一信号を生成するために、送信チャネル204の電力増幅器チェーンの各々に結合される。コンバイナ402は、各送信チャネルからコンバイナ出力への信号の利得及び/又は遅延が実質的に同様となるように、対称的であり得る。
【0037】
コンバイナ402はまた、組み合わされた信号を周波数シフタ404に提供するために、周波数シフタ404に結合される。例えば、周波数シフタ404は、オンオフキーイング(OOK)変調器又は2位相シフトキーイング(BPSK)変調器であり得る。OOK変調器の一例は、0.5/Fshiftの間、入力信号を、及び、0.5/Fshiftの間、ゼロを、交互に出力することによって、入力信号における周波数シフトFshiftを達成する回路である。BPSK変調器の一例は、0.5/Fshiftの間、1つの極性を有する入力信号を出力すること、及び、0.5/Fshiftの間、反対の極性を有する入力信号を出力すること、を交互に行うことによって、入力信号における周波数シフトFshiftを達成する回路である。周波数シフタ404は、周波数シフトされた組み合わされた信号をスプリッタ320に提供するために、スプリッタ320に結合される。
【0038】
各送信チャネル204は、PA306、316の出力に結合される無線周波数(RF)電力検出器407、417を含む。各電力検出器407、417は、それぞれのPA306、316から出力される信号の電力を測定する。電力検出器407、417は、電力測定値を制御モジュール228に提供するために、制御モジュール228に結合される。いくつかの実施形態において、各電力検出器407、417は、電力検出センサと、センサからの電力測定値をデジタル電力測定値に変換するためのアナログ・デジタル変換器とを組み込み得る。本明細書においてより詳細に説明するように、電力検出器407、417の出力(電力測定値)は、レーダーSOCがテストモードで動作するとき、制御モジュール228によってアクセスされ得る。
【0039】
次に図5を参照すると、図示される例示のFMCWレーダーSOCは、図3の例及び図4の例の組み合わせであり、したがって、SOC102がテストモードで動作するとき、本明細書で説明する方法の任意のものを実施し得る。ループバック(LB)コンバイナ502が付加される。LBコンバイナ502は、組み合わされた信号を送信チャネル204の電力増幅器チェーンから受信するために、周波数シフタ404とスプリッタ240との間に結合される。LBコンバイナ502は、コンバイナ318から出力される信号を受信するために、コンバイナ318とスプリッタ240との間にも結合される。
【0040】
図6図10は、SOC102がテストモードで動作され適切に構成されるとき、レーダーSOC102の様々な性能パラメータを決定するための方法についてのフローチャートである。これらの方法は、制御モジュール228の制御下で実施され得る。したがって、制御モジュール228は、ループバックパス及びその他の構成要素を、所望の測定を実施するために必要に応じて構成し得る。また、これらの方法において、制御モジュール228によって決定されるテスト結果、すなわち性能パラメータ値、はセーフティプロセッサに報告される。
【0041】
一般に、セーフティプロセッサは、性能パラメータ値を受信し、パラメータ値に基づいて一つ又は複数のアクションを実施する。例えば、セーフティプロセッサは、パラメータ値を所定の閾値と比較し得、閾値を越える場合、影響を受けるエンティティに通知し得る。別の例において、パラメータ値のうちの一つ又は複数が、検出されるオブジェクトの存在、位置、及び速度に関してレーダーから受信するデータを修正させることができる。下記に記載する方法において、セーフティプロセッサは、説明を簡潔にするために処理ユニット104であるものと想定される。
【0042】
図6は、レーダーSOC102の受信チャネル202間の利得及び位相の不一致を判定するための方法のフローチャートである。この方法は、図3の例示的実施形態及び図5の例示的実施形態において実施され得る。この方法は、無線及び中間周波数の任意の組み合わせで実施され得る。例えば、77~81GHzレーダーの場合、無線周波数(RF)は、77、79、又は81GHzであり得、性能監視のための典型的な中間周波数(IF)は、15、10、5、2、1、0.5、又は0.1MHzであり得る。下記の説明では、例として、RF=80GHz及びIF=1MHzが用いられる。
【0043】
図6に示されるように、送信チャネル204のうちの1つから受信チャネル202へのループバックパスは、制御モジュール228によってイネーブルされる(600)。図3の例示のSOC102では、ループバックパスは、選択された送信チャネルのPPA及びシフタ、コンバイナ318、及びスプリッタ320を含む。図5の例示のSOC102では、ループバックパスはLBコンバイナ502も含む。また、PA、コンバイナ402、及び周波数シフタ404を介する他のループバックパスはイネーブルされない。
【0044】
また、制御モジュール228は、選択された送信チャネルからのループバックパスを通過する連続波(CW)テスト信号、例えば80GHz+1MHz、を生成させる(602)。CWテスト信号は、SYNTH230からの局部発振器(LO)信号の周波数を80GHzに設定すること、及び、電力増幅器チェーンにおけるシフタを、LO信号に1MHzの周波数を付加するようにプログラミングすることによって生成され得る。
【0045】
テスト信号は、受信チャネル202の各々へとスプリッタ320を通過し、制御モジュール228は、受信チャネルの各々からデジタルテストデータ信号を収集する(604)。いくつかの実施形態において、制御モジュール228は、各受信チャネル202におけるADCの出力から信号を収集する。他の実施形態において、制御モジュール228は、DFE222の出力から信号を収集する。受信チャネル202からのデータ収集は同時に及び同期して実施される。すなわち、4つの受信チャネル202からのデータ収集は同時に開始される。
【0046】
制御モジュール228は、テストデータ信号に対して高速フーリエ変換(FFT)を実施し、4つの受信チャネル202の各々において同時に及び同期して受信されたテストデータ信号の振幅Ai及び位相θi(i=1,・・・,4)を決定する(606)。受信チャネルにおいて受信されたテスト信号の振幅Ai及び位相θiは、下記のように決定され得る。説明を容易にするために、ADCデータのNsサンプルがサンプリングレートFsで収集され、例えば、Ns=1024及びFs=10.24MHzであり、FFTOut[0,1,2,・・・,Ns-1]と称されるNs FFT出力複素サンプルを生成するために、NsポイントFFTが実施されると想定する。DFE出力が収集される期間はNs/Fsとしてプログラミングされ得、チャープ持続時間はNs/Fsに等しいか又はこれをわずかに超えるものし得る。周波数IFのテストデータ信号に対応するFFT出力サンプルインデックスindxは、IF/Fs×Nsによって与えられる。FFTOut[indx]の値は、X+jYによって示される複素数である。この数の振幅はA=sqrt(X2+Y2)/Nsによって与えられ、位相はθ=arctan(Y/X)によって与えられる。また、制御モジュール228は、対応する受信チャネル202について、電力検出器307、309、311、313の各々から電力データPiを受信する(608)。
【0047】
次いで、制御モジュール228は、各受信チャネルについての利得、受信チャネル間の利得不一致、及び受信チャネル間の位相不一致といった性能パラメータを計算する(610)。これらのパラメータ値は、セーフティプロセッサ104に報告される(612)。受信チャネルiについての利得は、下記のように計算され得る。
Gain=20logA-P
ループバックパスが受信チャネルをまたがって対称的に設計される場合、利得は電力データを使用せずに、すなわち、下記のように計算され得る。
Gain=20logA
【0048】
簡潔且つ説明し易くするために、上記の利得計算式の右側にいくつかの付加的定数項が示されていない。これらの定数項は、無線設計者にとって一般的であり知られている。例えば、P及びAの単位を一致させるために、より多くの付加的定数項が存在し得る。例えば、Aの値は、受信チャネルにおけるADCでの信号レベル(「LSBがいくつあるか」)を示し、Pの値は、受信チャネルの入力LNAで検出される電力の値(「dBミリワット」又は「dBワット」)を示す。A及びPの単位を一致させるために、
などの定数を、こうした目的で上記の式に付加し得、上式で、ADCFullScaleはADCのフルスケール電圧(1ボルトなど)であり、NumBitsは各ADC出力ワードにおけるビット数であり、Resistanceは例えば典型的な50オーム抵抗であり得る。無線設計者に知られている他の標準的な概念について標準化するために、他の同様の設計定数が存在し得る。
【0049】
2つの受信チャネルi及びj間の利得不一致は、下記のように計算され得る。
GainMismatchi,j=Gain-Gain
2つの受信チャネルi及びjの間の位相不一致は、下記のように計算され得る。
PhaseMismatchi,j=θ-θ
【0050】
上記方法は、様々な無線周波数及び中間周波数において、利得、利得不一致、及び位相不一致を見つけるために有用である。例えば、この方法は、これらのパラメータを、IFをすべて例えば1MHzに設定して、RF=77GHz、79GHz、81GHzの各々で計算するために有用である。これは、利得及び位相が、所望の無線周波数の範囲にわたって複数の受信チャネル間で良好に一致するかどうかを判定するのに役立つ。別の例において、この方法は、これらのパラメータを、RFをすべて例えば79GHzに設定して、IF=1MHz、5MHz、10MHzの各々で計算するために有用である。これは、利得及び位相が、所望の中間周波数の範囲にわたって複数の受信チャネル間で良好に一致するかどうかを判定するのに役立つ。
【0051】
図7は、レーダーSOC102の受信チャネル202におけるノイズ指数を決定するための方法のフローチャートである。この方法は、図3の例示の実施形態及び図5の例示の実施形態において実施され得る。初期的に、図6の方法を参照して説明したように、受信チャネルの各々について利得が決定される(700)。次いで、制御モジュール228は、選択された送信チャネルからのループバックパスをディセーブルにし(702)、そのため送信チャネルからの信号は受信チャネルに到達できず、したがってノイズ信号のみが受信チャネルに到達することが保証される。
【0052】
次いで、制御モジュール228は、数マイクロ秒間、受信チャネルの各々からデジタルノイズデータを収集し(704)、対応するノイズデータに基づいて各受信チャネルのノイズ電力を計算する(706)。いくつかの実施形態において、制御モジュール228は、各受信チャネル202におけるADCの出力からノイズデータ信号を収集する。他の実施形態において、制御モジュール228は、DFE222の出力からノイズデータ信号を収集する。
【0053】
受信チャネルiについてのノイズ電力は、対応するノイズデータに対してFFTを実施すること、及びFFT出力の2乗値を合計することによって計算され得る。例えば、受信チャネルiについてのノイズ電力は、下記のように計算し得る。説明を容易にするために、ADCデータのNsサンプルがサンプリングレートFsで収集され、例えば、Ns=1024及びFs=10.24MHzであり、FFTOut[0,1,2,・・・,Ns-1]と称されるNs FFT出力複素サンプルを生成するために、NsポイントFFTが実施されることを想定する。レーダー信号処理のための当該のIF帯域幅に対応する、indxMinから始まりindxMaxまでのFFT出力サンプルインデックス範囲は、indexMin=0、indexMax=IFBandwidth/Fs×Nsによって与えられる。FFTOut[indxMin to indxMax]の値は、X[indx]+jY[indx]によって示される複素数であり、ここで、indx=indxMin to indxMaxは関連がある。ノイズ電力は下記のように計算し得る。
IFBandwidthについての典型的な値は、5MHz又は10MHzであり、正確なレーダー周波数プランニング、スキャンする最大ターゲット距離、FMCW周波数勾配などに依存する。Fsの値はIFBandwidthよりも高く選択されるべきである。
【0054】
次いで、制御モジュール228は、各受信チャネルのノイズ電力のノイズ電力スペクトル密度(PSD)を計算する(708)。受信チャネルiについてのノイズPSDは下記のように計算し得、
NoisePSDi = 10×log10( NoisePoweri / IFBandwidth )
上式で、IFBandwidthは中間周波数(IF)の帯域幅である。最終的に、制御モジュール228は、対応するノイズPSDに基づいて各受信チャネルiについてノイズ指数(NF)を計算し(710)、ノイズ指数をセーフティプロセッサに報告する(712)。受信チャネルiについてのノイズ指数NFは、下記のように計算し得る。
NF=NoisePSD-Gain
【0055】
テストモードにおいて、図6図7、及び図9の方法で用いられるようなシフタ304及び314は、LO RF周波数からのIFの周波数オフセットを有する受信チャネルへの入力としてテスト信号を生成するために、LO信号に対して周波数シフトIFを提供する。この周波数シフトがなければ、テスト信号の周波数は、受信チャネルにおけるミキサでのLO周波数と同じになり、したがって、IFA入力でのテスト信号を実質的に0Hzに近づけることになる。レーダーSOCのための典型的なIFA回路及びADCは、0Hz近くでは性能が低い、すなわち高ノイズであるが、例えば数MHzなどのより高い周波数でははるかに性能が高く、すなわち低ノイズである。IFA及びADCにおける0Hz近くのノイズは、フリッカーノイズと称され得、典型的なIFA及びADC回路におけるより高い周波数では影響は無視し得る。
【0056】
また、レーダーIFA回路は、典型的に、高域フィルタ(HPF)及び低域フィルタ又は有効帯域フィルタを含む。IFAにおけるHPFは、0Hz、及び500kHz未満などの、非常に低いIF周波数を減衰させる。したがって、テスト信号がこうした低い周波数を有する場合、ADC入力及び出力は、非常に低い振幅のテスト信号、及び、同様の/近い周波数でテスト信号を破損する非常に大量のノイズを含む。ADC出力でのテスト信号の低い振幅及びテスト信号のIF周波数近くの高ノイズ電力は、上記性能パラメータの測定を実施困難かつ低精度にする可能性がある。LO信号の周波数をシフトするためにシフタ304、314を用いることで、IFAを通過するテスト信号が、0Hzよりも大幅に高い周波数IFを有することを保証する。したがって、ADC入力及び出力は、テスト信号の著しい振幅、及び、同様の/近い周波数での比較的低いノイズ電力を含む。
【0057】
図10の方法において、シフタ304及び314は、マルチトーンの異なる非ゼロのIF周波数で構成されるマルチトーンテスト信号の生成もイネーブルにする。
【0058】
図8は、レーダーSOC102の送信チャネル204間の電力及び位相の不一致を判定するための方法のフローチャートである。この方法は、図4の例示の実施形態及び図5の例示の実施形態において実施され得る。この方法は、任意の適切な無線周波数で実施され得る。例えば、77~81GHzレーダーの場合、無線周波数(RF)は77、79、又は81GHzであり得る。下記の説明において、例としてRF=80GHzが用いられる。
【0059】
図8に示されるように、受信チャネル202への送信チャネル204の1つからのループバックパスが、制御モジュール228によってイネーブルされる(800)。図4の例示のSOC102において、ループバックパスは、選択された送信チャネルのPPA、シフタ、及びPA、すなわち電力増幅器チェーンと、コンバイナ402、周波数シフタ404、及びスプリッタ320を含む。図5の例示のSOC102において、ループバックパスは、LBコンバイナ502も含む。また、コンバイナ318を介するループバックパスはイネーブルされない。どちらの実施形態においても、他の送信チャネルはイネーブルされない。
【0060】
また、制御モジュール228は、選択された送信チャネルからのループバックパスを通過する連続波(CW)テスト信号、例えば80GHz、を生成させる(802)。CWテスト信号は、SYNTH230からの局部発振器(LO)信号の周波数を80GHzに設定すること、及び、選択された送信チャネルの電力増幅器チェーンにおけるシフタを、LO信号に0MHzの周波数を付加するようにプログラミングすることによって生成され得る。また、制御モジュール228は、テスト信号を中間周波数(IF)、例えば1MHz、シフトするように周波数シフタ404を構成する(803)。
【0061】
周波数シフトされたテスト信号は、受信チャネル202へとスプリッタ320を通過し、制御モジュール228は、1つの受信チャネルからデジタルデータ信号を収集する(804)。受信チャネルのうちの任意の1つが、データ収集のために選択され得る。いくつかの実施形態において、制御モジュール228は、受信チャネルにおけるADCの出力からテスト信号を収集する。他の実施形態において、制御モジュール228は、DFE222の出力からテスト信号を収集する。データ収集は、周波数シフタ404の動作と同時に及び同期的に実施される。すなわち、データ収集は、周波数シフタ404がテスト信号における所望の周波数シフトを生じさせると同時に開始され、数マイクロ秒間継続する。
【0062】
制御モジュール228は、テストデータ信号に対して高速フーリエ変換(FFT)を実施し、受信したテストデータ信号の振幅Ai及び位相θi(i=1,・・・,2)を決定する(806)。振幅及び位相の決定については前述している。このプロセスにおいて、Ai及びθiは、所与のRF周波数での送信チャネルi及び選択された受信チャネルの組み合わされた振幅及び位相応答である。また、制御モジュール228は、送信チャネルにおける電力検出器から電力データPiを受信する(808)。データ収集プロセス800~808は、他の送信チャネルについて反復される(809)。
【0063】
次いで、制御モジュール228は、送信チャネル間の電力不一致と、送信チャネル間の位相不一致という、性能パラメータを計算する(810)。これらのパラメータ値及び各送信チャネルの電力は、セーフティプロセッサ104に報告される(812)。2つの送信チャネルi及びjの間の位相不一致は、下記のように計算し得る。
PhaseMismatchi,j=θ-θ
2つの送信チャネルi及びjの間の電力不一致は、下記のように計算し得る。
PowerMismatchi,j=P-P
【0064】
代替として、コンバイナを含むパスと選択された受信チャネル入力へのパスとが、送信チャネルをまたがって一致する場合、2つの送信チャネルi及びjの間の電力不一致は、下記のように計算し得る。
PowerMismatchi,j=A-A
この場合、測定されたADC出力振幅は、様々なPA出力での送信器電力不一致のみを表す。他の電力不一致式と比較して、この式は、電力測定値における如何なる誤差も電力検出器回路から除去する。
【0065】
図8の方法においてテストモードで用いられる周波数シフタ404は、シフタ304、314について前述した目的と同様の目的を果たす。したがって、周波数シフタ404によって周波数シフトが実施されない場合、受信チャネル入力でのテスト信号は0Hzに近くなり、IFA及びADCにおけるフリッカーノイズによって破損され得る。また、テスト信号は受信チャネルのIFAのHPFによって減衰され、テスト信号に対応するADC入力及び出力の振幅は低くなる。テスト信号の低振幅、及びテスト信号のIF周波数近くの高ノイズ電力により、送信チャネルの利得及び位相不一致の測定は、実施困難及び低精度となり得る。
【0066】
また、送信チャネルにおけるPAの後の周波数シフタ404は、付加的な目的を果たす。送信チャネルの利得及び位相の不一致を測定するために、図8の方法は、送信チャネルにおいてPAをイネーブルし、これがLO信号の外部放出を生じさせる。この外部に放出されたLO信号は、レーダーシステム、又はレーダーシステムが設置される車両のシャーシなど、レーダー周囲のオブジェクトによって反射される。これはまた、送信チャネルアンテナから受信チャネルアンテナへ電磁的に結合する。すべての反射及び結合に起因して受信チャネルで受信される信号全体を、外部信号と呼ぶことができる。外部信号の周波数は、LO信号のRF周波数と同じである。周波数シフタ404によって周波数シフトが実施されない場合、受信チャネルLNAで受信されるテスト信号も、LO信号と同じ周波数を有する。
【0067】
外部信号及びテスト信号が同じ周波数を有する場合、ADC出力を処理するときにこの2つを区別することはできない。したがって、テスト信号からの送信チャネルの利得及び位相の不一致などの測定は外部信号に起因して破損され得、測定はエラーになり得る。テスト信号が受信チャネルLNAにわたる前に、PA出力信号に周波数シフトを付与することによって、周波数シフタ404は、LNA入力での、及びしたがってADC出力での、外部信号及びテスト信号の周波数が異なることを保証する。FFT又は等価のデジタル信号処理を実施することによって、ADC出力での2つの信号の周波数に差が与えられる場合、上記の方法は、推定値が外部信号によって破損されることなく、テスト信号からの送信チャネルの利得及び位相の不一致を正確に推定することができる。外部信号はFFT入力での0Hz信号に、したがってFFTインデックス0に、対応する一方で、テスト信号は周波数IF及びFFTインデックスに対応することになる。
【0068】
図9は、レーダーSOC102の送信チャネル及び受信チャネルの各組み合わせについて、レーダーシステムノイズ指数を決定するための方法のフローチャートである。この方法は、図3の例示の実施形態及び図5の例示の実施形態において実施され得る。この方法において、このパラメータを測定するためにループバックパスを用いる代わりに、テスト信号が送信チャネルによって送信され、受信チャネル202はこのテスト信号を、レーダーシステムが搭載された車両のシャーシ又はレーダーシステムのシャーシなどの近隣の静的オブジェクトから反射されたものとして受信する。レーダーシステムノイズ指数は、受信された反射信号を破損する平均ノイズ電力である。ノイズ源は、レーダーシステムノイズ指数を測定する際に用いられる、受信チャネル及び送信チャネルの両方である。受信チャネルノイズは、所望のオブジェクト反射入力信号に直接付加される一方で、送信チャネルノイズは、主に、送信アンテナから受信アンテナへの電磁結合を介して、及び近隣の静的オブジェクトからの強力な反射を介して、入力信号を破損させる。
【0069】
初期的に、図6の方法を参照して前述したように、受信チャネルの各々について利得が決定される(900)。次いで、制御モジュール228は、選択された送信チャネルからのループバックパスをディセーブルにし(902)、送信チャネルからの信号がこのパスを介して受信チャネルに到達できないようにする。また、他の送信チャネルがイネーブルされない。また制御モジュール228は、選択された送信チャネルによって送信される連続波(CW)テスト信号、例えばRF=80GHz、を生成させる(903)。CWテスト信号は、SYNTH230からの局部発振器(LO)信号の周波数を80GHzに設定すること、及び、選択された送信チャネルの電力増幅器チェーンにおけるシフタを、LO信号に0MHzの周波数を付加するようにプログラミングすることによって生成され得る。
【0070】
受信チャネル202は、テスト信号を、近隣の静的オブジェクトから反射されるものとして受信する。制御モジュール228は、数マイクロ秒間、受信チャネルの各々からデジタルノイズデータを収集し(904)、対応するノイズデータに基づいて各受信チャネルのノイズ電力を計算する(906)。いくつかの実施形態において、制御モジュール228は、各受信チャネル202におけるADCの出力からノイズデータ信号を収集する。他の実施形態において、制御モジュール228は、DFE222の出力からノイズデータ信号を収集する。受信チャネルiについてのノイズ電力の計算については前述している。
【0071】
次いで、制御モジュール228は、各受信チャネルのノイズ電力のノイズ電力スペクトル密度(PSD)を計算する(908)。計算されたノイズ電力は、選択された送信チャネル及び受信チャネルによって導入されるノイズを含む。受信チャネルiについてのノイズPSDは下記のように計算することができ、
NoisePSDi=10×log10( NoisePoweri / IFBandwidth )
上式で、IFBandwidthは中間周波数(IF)の帯域幅である。次いで、制御モジュール228は、対応するノイズPSDに基づいて各受信チャネルについてレーダーシステムノイズ指数(RSNF)を計算する(910)。受信チャネルiについてのレーダーシステムノイズ指数RSNFは、下記のように計算し得る。
RSNF=NoisePSD-Gain
【0072】
レーダーシステムノイズ指数計算902~910は、他の送信チャネルについて反復される(911)。最終的に、制御モジュール228は、各受信チャネル/送信チャネルペアについて計算されたレーダーシステムノイズ指数を、セーフティプロセッサに報告する(912)。
【0073】
上記方法において、ADCサンプルの収集の間に用いられるRF周波数は、実質的に一定であり、すなわち、通常のFMCWレーダー動作におけるようにランピングしない。したがって、様々な距離のオブジェクトからの反射に対応する受信信号は、すべて実質的に同じ周波数、すなわち、前述の「RF」と同じ周波数、を有する。典型的なFMCWレーダーにおける通常の動作の間、送信信号の周波数勾配は非ゼロであり、様々な距離にある周囲のオブジェクトからの反射に対応する受信信号は、RFに等しい周波数にオブジェクトの距離に比例する周波数を加えた周波数を有する。ADC出力のFFTにおいて測定された電力は、レーダーシステムノイズに加えて反射された信号の電力を含み、これにより、反射された信号の電力とレーダーシステムノイズとの区別が困難となる。上記方法では、ゼロ勾配を伴う定数RFを用いることで、様々な距離のオブジェクトからの反射を同じRF周波数で発生させる。また、対応する信号は、受信チャネルにおける高域フィルタによって高度に減衰され、ADCの出力の測定された電力は、レーダーシステムノイズの電力と緊密に一致する。
【0074】
図10は、レーダーSOC102の受信チャネルの非線形性メトリクスを決定するための方法のフローチャートである。この方法は、図3の例示の実施形態及び図5の例示の実施形態において実施され得る。この方法は、任意の適切なRF並びにIF1及びIF2周波数で実施され得る。例えば、77~81GHzレーダーの場合、RFは77、79、又は81GHzであり得、IF1及びIF2周波数は、IF1=2MHz、IF2=2.5MHzであり得る。この方法の説明では、例示の目的で、RF=80GHz、IF1=2MHz、IF2=2.5MHzが用いられる。いくつかの実施形態において、IF1及びIF2周波数値は、m×IF1+n×IF2となるように選択され、ここで、mは、+/-1、+/-2、+/-3、・・・のうちの一つ又は複数であり、nは、+/-1、+/-2、+/-3、・・・のうちの一つ又は複数であり、m及びnは、IF1又はIF2の整数倍ではない。
【0075】
理想的な受信チャネルは、単に受信信号の拡縮バージョンである、ADC出力での信号を生成する。したがって、LNA入力信号がxである場合、ADC出力信号はk×xであり、ここで周波数はRFからIFへとダウンシフトされる。こうした理想的な受信チャネルは、線形受信チャネルと呼ぶことができる。非理想的な、すなわち非線形の、受信チャネルは、ADC出力でk×x+k×x+k×x+・・・を生成する。FMCWレーダーシステムにおけるこの非線形性の影響は、k×x項に対応する実際のオブジェクト反射を検出する代わりに、FMCWレーダー信号プロセッサが、不在オブジェクトが、k×x及びk×xに対応する距離に存在するものと思いこみ、誤って検出してしまうことである。また、複数の反射が存在する場合、線形受信チャネルは、ADC出力でk×x+k×xを生成する。しかし、非線形受信チャネルは、k31×x ×x などの付加的な項を生成し、これによってFMCWレーダー信号プロセッサは、不在オブジェクトが、対応する距離に存在するものと誤って検出してしまう。この方法は、セーフティプロセッサが受信チャネルにおいて破損/障害を検出するために閾値と比較し得る、非線形性メトリクスを決定する。
【0076】
提示された方法は、単一受信チャネルについての非線形性メトリクスの計算に対処する。この方法は、他の受信チャネルについての非線形性メトリクスを計算するために反復され得る。代替として、いくつかの実施形態において、非線形性メトリクスは、2トーンテスト信号の単一伝送に基づいてすべての受信チャネルについて計算され、すなわち、2トーンテストデータ信号が受信チャネルの各々から収集され、非線形性メトリクスが各受信チャネルについて計算される。
【0077】
図10に示されるように、初期的に制御モジュール228は、送信チャネル204から受信チャネル202へのテストパス(ループバックパス)を構成する(1000)。図3の例示のSOC102において、送信チャネルのループバックパスは、送信チャネルのPPA及びシフタ、コンバイナ318、並びにスプリッタ320を含む。図5の例示のSOC102において、ループバックパスはLBコンバイナ502も含む。また、制御モジュール228は、一方の送信チャネルのシフタをIF1周波数だけ周波数シフトさせ、他方の送信チャネルのシフタをIF2周波数だけ周波数シフトさせる。
【0078】
また、制御モジュール228は、送信チャネルのイネーブルされたテストパスを受信チャネル202へと通過する、80GHzの2トーン連続波(CW)テスト信号を生成させる(1002)。2トーンCWテスト信号は、SYNTH230からの局部発振器(LO)信号の周波数を80GHzに設定することで生成され得る。IF1周波数だけ周波数シフトするようにプログラミングされたシフタは、80GHz+IF1の信号を伝搬し、IF2だけ周波数シフトするようにプログラミングされたシフタは、80GHz+IF2の信号を伝搬し、したがって、選択された受信チャネルのLNA入力で2トーンテスト信号が提供される。
【0079】
次いで、制御モジュール228は、受信チャネルのうちの1つからデジタルの2トーンテストデータ信号を収集する。いくつかの実施形態において、制御モジュール228は、受信チャネルにおけるADCの出力からテスト信号を収集する。他の実施形態において、制御モジュール228は、DFE222の出力からテスト信号を収集する。
【0080】
次いで、制御モジュール228は、受信した2トーンテストデータ信号に基づいて受信チャネルについて非線形性メトリクスを計算する(1006)。非線形性メトリクスを計算するために、制御モジュールは、テストデータ信号のFFTを実施し、周波数IF1、IF2、m×IF1+n×IF2で、FFT出力における2つのトーンの大きさM1、M2、Mmnを計算し、ここで、mは、+/-1、+/-2、+/-3、・・・のうちの一つ又は複数であり、nは、+/-1、+/-2、+/-3、・・・のうちの一つ又は複数である。このFFTは下記のように実施され得る。説明を容易にするために、ADCデータのNsサンプルがサンプリングレートFsで収集され、例えば、Ns=1024及びFs=10.24MHz、並びに、FFTOut[0,1,2,・・・,Ns-1]と称されるNs FFT出力複素サンプルを生成するために、NsポイントFFTが実施されることを想定する。周波数{IF1,IF2,m×IF1+n×IF2}に対応する、FFT出力サンプルインデックス{indx1,indx2,indxmn}は、{IF1/Fs×Ns,IF2/Fs×Ns,(m×IF1+n×IF2)/Fs×Ns}によって与えられる。FFTOut[indxi]の値は、(X+jY)で示される複素数である。この数の大きさMは、M=sqrt(X+Y)/Nsによって与えられる。したがって、それぞれのインデックスindx1、indx2、indxmnに対応するM1、M2、及びMmnの値を見つけることができる。
【0081】
M1及びM2は、周波数RF+IF1及びRF+IF2で受信チャネルに提供される2つのトーンx1及びx2に対応し、Mmnは、非線形受信チャネルによってつくられる相互変調積kmn×x1m×x2nに対応する。また、M1及びM2の値は有意である。また、理想的な受信チャネルは相互変調積を生じさせないため、理想的な受信器において、Mmnの値は0に近い。しかしながら、非線形受信チャネルにおいて、Mmnの値は、0でない可能性があり、M1及びM2よりも数桁小さい可能性がある。Mmnの値が小さいほど、受信チャネルはより良い性能を示す。
【0082】
M1、M2、及びMmnが与えられると、制御モジュール228は、これらの値をデシベルに変換するために、M1_dB=20×log10(M1)、M2_dB=20×log10(M2)、Mmn_dB=20×log10(Mmn)を計算する。結果の変換された値を用いて、制御モジュール228は、非線形性メトリクス(NM)について値を計算し、これらのメトリクス値をセーフティプロセッサに報告する(1008)。計算され得る2つの非線形性メトリクスの例は、下記の通りである。
NM1=M1_dB+0.5×M2_dB-0.5×M12_dB
NM2=M1_dB+M2_dB-M11_dB
他の非線形性メトリクスが、M1_dB、M2_dB、Mmn_dBの重み付け和、又はM1、M2、Mmnの積として同様に計算され得る。Mmnの値がM1及びM2の値よりも著しく低い場合、NMiの値は高いため、NMiの低い値は、受信チャネルにおいて相互変調積が高いことを示す。
【0083】
2つの異なる送信チャネルから2つのトーンx1及びx2を生成することによって、受信チャネル(組み合わされた信号k1×x1+k2×x2上で動作する)によってつくられる相互変調積を、個々の送信チャネル(各々が、2つの信号x1及びx2のうちの1つのみで動作する)における非線形性によって生じる任意の付加トーンと区別することができる。個々の送信チャネルにおける非線形性によって生じる付加トーンは、x1、x1、x1、・・・などの付加項、及び受信チャネルへの信号入力においてx2について相応の付加項を生じさせる。本方法は、相互変調積Amnの周波数がこれらの項の周波数と一致しないことを保証することによって、これらの項による当該の相互変調積Amnの破損を回避する。
【0084】
図10の方法は、説明を簡単にするために、2つの送信チャネル及び2トーンテスト信号を想定している。本方法は、2つより多くの送信チャネルを用い、各送信チャネルが、異なる周波数シフト、すなわち、IF1、IF2、IF3、・・・、を生成するようにプログラミングされるように拡張可能である。マルチトーンの相互変調積に対応するFFTインデックスは、非線形性メトリクスを計算するために観察される。送信チャネルにおける非線形性を緩和するためにIF1、IF2、IF3、・・・について選択される値は、IF1、IF2、IF3、・・・の倍数が、m×IF1+n×IF2+p×IF3となる相互変調積の周波数と一致しないようにすべきであり、ここで、m、n、pは、整数0、+/-1、+/-2、・・・である。
【0085】
図10の方法の別の実施形態において、シフタ304及び314の出力は、異なるパスを介して受信チャネルのそれぞれのLNAに達するように構成される。例えば、シフタ304の出力は、PA306がディセーブルの状態で、コンバイナ318及びLBコンバイナ502を介して受信チャネルのLNAに達するように構成され得、シフタ314の出力は、PA316及び対応するアンテナを介して伝送されるように構成され得る。この後者の信号は、例えば、車両又はレーダーシャーシなどの、外部オブジェクトからの反射、及び/又は、送信アンテナから受信アンテナへの電磁結合を介して、受信チャネルのLNAに達する。また、シフタ314のIF周波数は、外部オブジェクトからの近隣の強力な反射、及び/又は、通常のFMCWレーダー動作の間に観察される電磁結合に対応する、周波数オフセットと同様に、例えば10KHzにプログラミングされ、シフタ304のIF周波数は、中反射強度及び中距離のオブジェクトに対応して、例えば数MHzにプログラミングされる。
【0086】
この実施形態において、外部アンテナパスを介するトーンは、チップ内ループバックパスを介して実現可能なトーンよりもかなり高い振幅を有し、実際のレーダー動作の間の信号の強度をより良く模倣し得る。また、PAのうちの1つのみがイネーブルされる場合、送信回路及びループバックパスによって生成されるいかなる望ましくない相互変調積の強度も低下し、そのため、受信チャネルによって生成される相互変調積の検出及び推定が向上する。
【0087】
図10の方法の別の実施形態において、シフタ304及び314の出力は、それぞれのPA及びアンテナを介して伝送されるように構成可能である。伝送される信号は、例えば、車両又はレーダーシャーシなどの外部オブジェクトからの反射、及び/又は、送信アンテナから受信アンテナへの電磁結合を介して、受信チャネルのLNAに達する。また、シフタ314のIF周波数は、外部オブジェクトからの近隣の強力な反射、及び/又は、通常のFMCWレーダー動作の間に観察される電磁結合に対応する周波数オフセットと同様に、例えば10KHzにプログラミングされ、シフタ304のIF周波数は、中反射強度及び中距離のオブジェクトに対応して、例えば数MHzにプログラミングされる。また、PA306の出力電力は、LNAによって受信された反射信号の大きさが、外部オブジェクトからの近隣の強力な反射、及び/又は、通常のFMCWレーダー動作の間に観察される電磁結合のものと同様であるように、高く保たれ、PA316の出力電力は、LNAに達する反射信号の大きさが、中反射強度及び中距離のオブジェクトのものと同様であるように、高く保たれる。
【0088】
本開示を限定数の実施形態に関して説明してきたが、本開示の範囲内で他の実施形態も考案可能である。
【0089】
例えば、本明細書において、パラメータ値を決定するための信号の処理がレーダーSOC上の制御モジュールにおいて実施される実施形態を説明してきた。いくつかの実施形態において、信号処理の一部又はすべてが、例えば、処理ユニットによって又は外部MCUによって、SOCの外部で実施される。
【0090】
別の例において、セーフティプロセッサがレーダーSOCの外部にある実施形態を本明細書において説明してきた。いくつかの実施形態において、セーフティプロセッサは、レーダーSOCの一部であり、例えば、SOC上の制御プロセッサ又は別のプロセッサである。
【0091】
別の例において、SYNTHによって出力されるLO信号が送信チャネルにおけるPPAに及び受信チャネルにおけるミキサに提供される実施形態を本明細書において説明してきた。いくつかの実施形態はLO分散ネットワークを用いる。一般に、LO分散ネットワークは、LO信号を受信チャネルのミキサ及び送信チャネルのシフタに通信する、セルのツリーである。例えば、セルは、ワイヤ、又はPPAなどの増幅器、又は周波数乗算器、又は周波数分配器であり得る。
【0092】
別の例においてクロック乗算器が用いられる。いくつかの実施形態において、SYNTHは低周波数ではなくLO周波数で動作するため、乗算器は不要である。
【0093】
別の例において、伝送信号生成回路要素が無線周波数合成器を含むものと想定される実施形態を本明細書において説明してきた。いくつかの実施形態において、この回路要素は、オープンループ発振器(無線周波数発振器)に加えて、デジタル・アナログ変換器(DAC)又は他の適切な伝送信号生成回路要素を含む。
【0094】
別の例において、ノイズ電力スペクトル密度(PSD)が計算される方法実施形態を本明細書において説明してきた。いくつかの実施形態において、ノイズPSDを計算するための前述の式の代替が、ノイズPSDを計算するために用いられる。任意の周波数帯域におけるノイズPSDが、その周波数帯域に対応するFFT出力を用いて、及び、その周波数帯域の上限周波数と下限周波数における差を、前述の式における「IFBandwidth」として用いて計算され得る。これは、ノイズPSDが、異なる周波数帯域において異なることが予測されるときに有用である。
【0095】
別の例において、受信チャネルiについてのノイズ指数NFが受信チャネルの利得に関して計算される方法実施形態を本明細書において説明してきた。いくつかの実施形態において、ノイズ指数は、受信チャネルにおける利得に関係なく決定され、すなわち、下記の通りである。
NF=NoisePSD
【0096】
別の例において、受信チャネルiについてのレーダーシステムノイズ指数RSNFが受信チャネルの利得に関して計算される方法実施形態を本明細書において説明してきた。いくつかの実施形態において、レーダーシステムノイズ指数は、受信チャネルにおける利得に関係なく決定され、すなわち、下記の通りである。
RSNF=NoisePSD
【0097】
別の例において、例示のFMCWレーダーSOCを参照して、実施形態を本明細書において説明してきた。いくつかの実施形態は、一定周波数、ステップ周波数、及び三角周波数レーダーなどの、他のタイプのレーダーについてのものである。
【0098】
別の例において、レーダーSOCは、性能パラメータのうちの一つ又は複数を監視するために、テストモードで周期的及び自動的に動作する。そのような実施形態のいくつかにおいて、レーダーSOCは、チャープのフレームを送信及び受信するために、固定された時間期間、通常モードで動作し得る。フレーム間の時間期間の間、レーダーSOCは、性能パラメータのうちの一つ又は複数を監視するためにテストモードで自動的に動作する。例えば、通常モードでの動作が100マイクロ秒間発生し得、テストモードでの動作が80マイクロ秒間発生し得、500マイクロ秒ごとに1回繰り返される。別の例において、持続時間は、それぞれ、5ミリ秒、3ミリ秒、及び40ミリ秒であり得る。
【0099】
別の例において、複数の送信チャネルが存在することを想定する実施形態を本明細書において説明してきた。いくつかの実施形態は、単一送信チャネルを有するか、又は1つの送信チャネルのみを使用する。こうした実施形態において、コンバイナは存在してもよく、又は存在しなくてもよい。コンバイナが単一送信チャネルに結合される場合、コンバイナの出力信号はコンバイナの入力信号である。こうした実施形態において、受信チャネル利得、受信チャネル位相、受信チャネル間の利得及び位相不一致、受信チャネルノイズ指数、及びレーダーシステムノイズ指数などの、一つ又は複数の性能パラメータが計算され得る。
【0100】
別の例において、複数の受信チャネルが存在することを想定する実施形態を本明細書において説明してきた。いくつかの実施形態は、単一受信チャネルを有するか、又は1つの受信チャネルのみを用いる。こうした実施形態において、スプリッタは存在してもよく、又は存在しなくてもよい。スプリッタが存在する場合、スプリッタ出力は単一受信チャネルにのみ結合される。こうした実施形態において、送信チャネル利得、送信チャネル位相、送信チャネル間の利得及び位相不一致、送信チャネルノイズ指数、及びレーダーシステムノイズ指数などの、一つ又は複数の性能パラメータが計算可能である。
【0101】
別の例において、すべての受信チャネルがスプリッタに結合され、すべての送信チャネルは少なくとも1つのコンバイナに結合される実施形態を本明細書において説明してきた。いくつかの実施形態において、受信チャネルのサブセットがスプリッタに結合され、及び/又は、送信チャネルのサブセットが少なくとも1つのコンバイナに結合される。こうした実施形態において、性能パラメータを決定するために説明した方法の一つ又は複数が実施され得る。
【0102】
方法ステップは、本明細書において順次提示及び説明され得るが、本明細書において図示され説明されるステップのうちの一つ又は複数が、同時に実施され得、組み合わされ得、及び/又は、本明細書において図示される及び/又は説明される順とは異なる順で実施され得る。したがって、実施形態は、本明細書において図示される及び/又は説明されるステップの特定の順に限定されない。
【0103】
レーダーシステムにおける構成要素は、異なる名称で呼ばれ得、及び/又は、説明した機能性を逸脱することなく、本明細書に示されない様式で組み合わされ得る。「結合」という用語及びその派生語は、間接的、直接、光学的、及び/又はワイヤレスの、電気接続を意味するものと意図される。例えば、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合、その接続は、直接電気接続を介する、他のデバイス及び接続を介した間接的電気接続を介する、光学的電気接続を介する、及び/又は、ワイヤレス電気接続を介することが可能である。
【0104】
特許請求の範囲内で、説明した実施形態における改変が可能であり、他の実施形態が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダーシステムオンチップ(SOC)であって、
前記レーダーSOCがテストモードで動作するときに信号を生成するように動作可能である伝送生成回路要素と、
前記伝送生成回路要素に結合される複数の送信チャネルであって、前記複数の送信チャネルの或る送信チャネルが前記信号に基づいてテスト信号を送信するように動作可能である、前記複数の送信チャネルと、
複数の受信チャネルであって、各受信チャネルが反射テスト信号を受信するように動作可能である、前記複数の受信チャネルと、
前記複数の受信チャネルに結合される制御モジュールであって、前記反射テスト信号を用いて前記複数の受信チャネルの間の相違を計算するように動作可能である、前記制御モジュールと、
を含む、レーダーシステムオンチップ(SOC)。
【請求項2】
請求項に記載のレーダーシステムオンチップ(SOCであって、
前記複数の送信チャネルの或る送信チャネルが、前記信号を受信するために前記伝送生成回路要素に結合されるプログラマブルシフタを含み、
前記プログラマブルシフタが、テスト信号を生成するために非ゼロの周波数を連続波信号に付加するように動作可能であり、
前記プログラマブルシフタの出力が、ループバック経路を介して前記複数の受信チャネルの第1の受信チャネルの入力に結合され、
前記ループバック経路が、前記テスト信号を前記第1の受信チャネルに提供するように動作可能である、レーダーシステムオンチップ(SOC
【請求項3】
請求項に記載のレーダーシステムオンチップ(SOCであって、
前記プログラマブルシフタの出力が、前記ループバック経路を介して前記複数の受信チャネルの第2の受信チャネルの入力に結合され、
前記ループバック経路が、前記テスト信号を前記第1の受信チャネル前記第2の受信チャネルに提供するように動作可能であり、
前記相違が、前記第1の受信チャネルと前記第2の受信チャネルとの間の利得不一致と、前記第1の受信チャネルと前記第2の受信チャネルとの間の位相不一致とで構成されるグループから選択される、レーダーシステムオンチップ(SOC