(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085478
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】高容量、ミクロンスケール、体積変化アノード粒子を有する金属イオン電池セルのための電解質
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20230613BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20230613BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20230613BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230613BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20230613BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20230613BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/38 Z
H01M4/134
H01M10/0567
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061910
(22)【出願日】2023-04-06
(62)【分割の表示】P 2020514573の分割
【原出願日】2018-09-12
(31)【優先権主張番号】62/557,416
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/128,340
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513198814
【氏名又は名称】シラ ナノテクノロジーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】グレブ ユーシン
(72)【発明者】
【氏名】アシュレイ ワード
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サイクル動作、レート能等を改善したリチウムイオン電池セルを提供する。
【解決手段】リチウムイオン電池セルは、アノード電極102、カソード電極103、セパレータ104、およびアノード電極とカソード電極をイオン連結する電解質を含む。アノード電極は、高容量電極(例えば、約2mAh/cm
2~約10mAh/cm
2の範囲)である。電解質は溶媒組成物を含み、溶媒組成物は、溶媒組成物の約10vol.%~約80vol.%の範囲の低融点(LMP)溶媒、および溶媒組成物の約20vol.%~約90vol.%の範囲の通常融点(RMP)溶媒を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.2ミクロン~約20ミクロンの範囲の平均粒径を有し、活性材料を含むアノード粒子を含み、2mAh/cm2~10mAh/cm2の範囲の容量負荷量を有するアノード電極と、
カソード電極と、
前記アノード電極と前記カソード電極とを電気的に分離するセパレータと、
前記アノード電極と前記カソード電極とをイオン連結する電解質と、
を含み、
前記活性材料が、1種または複数のケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ガリウム、ヒ素、リン、銀、カドミウム、インジウム、スズ、鉛、ビスマス、それらの合金を含み、
前記電解質が、LiPF6および電解質溶媒組成物を含み、
該電解質溶媒組成物が、(a)1種または複数のエステル、および(b)通常融点溶媒組成物、を含み、
1種または複数の前記エステルが約-140℃~約-60℃の範囲の融点を有し、
1種または複数の前記エステルの分子当たりの炭素原子の平均数が4から7個の範囲であり、
前記通常融点溶媒組成物が約-60℃~約+30℃の範囲の融点を有する、リチウムイオン電池セル。
【請求項2】
1種または複数の前記エステルの分子当たりの炭素原子の平均数が5から6個の範囲である、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項3】
前記電解質が、分子当たり3個の炭素原子を有するエステルを含まない、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項4】
前記電解質が、分子当たり8または9個の炭素原子を有するエステルを含まない、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項5】
1種または複数の前記エステルが直鎖状または環状エステルを含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項6】
1種または複数の前記エステルが側枝を有するエステルを含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項7】
1種または複数の前記エステルが、同じ化学式であるが異なる分子構造の2以上のエステルを含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項8】
1種または複数の前記エステルのうちの少なくとも1種のエステルが、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、または酪酸エチルから選択される、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項9】
1種または複数の前記エステルの分子当たりの炭素原子の数の差が3以下である、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項10】
前記電解質溶媒組成物中の1種または複数の前記エステルの体積分率が約20vol.%~約70vol.%の範囲である、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項11】
前記通常融点溶媒組成物がフッ化環状カーボネートを含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項12】
前記フッ化環状カーボネートが炭酸フルオロエチレン(FEC)であり、前記電解質溶媒組成物中のFECの体積分率が1~30vol.%の範囲である、請求項11に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項13】
前記通常融点溶媒組成物が1種または複数の環状カーボネートを含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項14】
1種または複数の前記環状カーボネートが炭酸ビニレン(VC)および/または炭酸ビニルエチレン(VEC)を含み、前記電解質溶媒組成物中の前記VCおよび/またはVECの体積分率が約0.1~約5vol.%の範囲である、請求項13に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項15】
1種または複数の前記環状カーボネートが炭酸プロピレン(PC)および/または炭酸エチレン(EC)である、請求項13に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項16】
前記通常融点溶媒組成物が1種または複数の直鎖状カーボネートを含み、前記電解質溶媒組成物中の1種または複数の前記直鎖状カーボネートの体積分率が5vol.%~60vol.%の範囲である、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項17】
1種または複数の前記直鎖状カーボネートの分子当たりの全ての原子の平均数が12から16個の範囲である、請求項16に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項18】
1種または複数の前記直鎖状カーボネートが、分子当たり18原子を有するカーボネートを含み、該カーボネートが炭酸ジエチル(DEC)である、請求項16に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項19】
前記電解質溶媒組成物が、前記電解質溶媒組成物の5vol.%未満の体積分率でニトリルおよび/またはジニトリルを含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項20】
前記アノード粒子が、約0.5m2/g~約50m2/gの範囲の比表面積を有する、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項21】
前記電解質中の総塩濃度が約1.2M~約1.8Mの範囲の濃度である、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【請求項22】
前記電解質がさらにSO2FN-(Li+)SO2F(LiFSI)を含み、LiPF6とLiFSIのモル分率の比が約100:1~約1:1の範囲である、請求項1に記載のリチウムイオン電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2018年9月11日に出願された「Electrolyte for a Metal-Ion Battery Cell with High-Capacity,Micron-Scale,Volume-Changing Anode Particles」と題する米国特許非仮出願第16/128,340号明細書、および2017年9月12日に出願された「Improved Liquid Electrolytes for Cells with High-Capacity Anodes based on Micron-Scale Volume-Changing Particles」と題する米国特許仮出願第62/557,416号明細書への優先権を主張し、これらは各々、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、一般に、エネルギー貯蔵デバイス、より詳細には電池技術などに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
一部にはそれらの比較的高いエネルギー密度、比較的高い比エネルギー、軽量および長寿命の可能性に起因して、先進的な充電式電池は、幅広い範囲の消費者向け電気製品、電気自動車、格子貯蔵および他の重要な用途に望ましい。
【0004】
しかしながら、電池の商業的な普及の増加にも関わらず、特に、低またはゼロ排出のハイブリッド電気または完全電気自動車、消費者向け電気製品、ウェアラブルデバイス、省エネルギー貨物船および機関車、ドローン、航空宇宙用途、ならびに送電網における適用のために、これらの電池のさらなる開発が必要である。特に、さらなる改善は、種々の充電式電池、例えば、いくつか挙げると、充電式LiおよびLiイオン電池、充電式NaおよびNaイオン電池、充電式KおよびKイオン電池、充電式CaおよびCaイオン電池、ならびに充電式MgおよびMgイオン電池について望まれている。
【0005】
広範囲の電解質組成物が、LiおよびLiイオン電池ならびに他の金属および金属イオン電池の構築に利用され得る。しかしながら、改善されたセル性能(例えば、低くて安定な抵抗、高いサイクル動作安定性、高いレート能など)のために、アノードおよびカソードの両方における活性粒子の具体的な種類および具体的なサイズ、ならびに具体的な動作条件(例えば、温度、充電レート、放電レート、電圧範囲、容量利用率など)について、電解質の最適な選択を開発する必要がある。多くの場合、電解質成分およびそれらの比の選択は、些事ではなく、反直感的であり得る。
【0006】
特定の種類の充電式電池では、電荷保存性アノード材料は、最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化(例えば、8~180vol.%)、および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化(例えば、5~50vol.%)を示す、高容量(ナノ)複合体粉末として生成され得る。そのような電荷保存性アノード粒子のサブセットには、約0.2~約40ミクロンの範囲の平均サイズ(例えば、直径または厚さ)を有するアノード粒子が含まれる。そのようなクラスの電荷保存性粒子は、大規模化可能な製造ならびに高いセルレベルエネルギー密度および他の性能特徴の達成への大きな展望を提示する。残念ながら、そのような粒子は比較的新しく、従来の電解質を使用するセルにおけるそれらの使用は、比較的不十分なセル性能特徴および限られたサイクル安定性につながり得る。高容量(ナノ)複合体アノード容量負荷(面積容量)が中程度になる(例えば、2~4mAh/cm2)場合、およびさらに面積容量が高くなる(例えば、4~10mAh/cm2)場合により一層、セル性能は特に不十分になり得る。しかしながら、より高い容量負荷は、セルエネルギー密度を増加させ、セルの製造コストを低下させるために有利である。同様に、そのようなアノードの多孔度(例えば、電極中の(ナノ)複合体活性アノード粒子間のスペースによって占有され、電解質で満たされた体積)が中程度に小さくなる(例えば、最初の充電-放電サイクル後に25~35vol.%)場合、およびアノードの多孔度が小さくなる(例えば、最初の充電-放電サイクル後に5~25vol.%)場合により一層、または電極中の結合剤および伝導性添加剤の量が中程度に小さくなる(例えば、5~15wt.%)場合、ならびに電極中の結合剤および伝導性添加剤の量が小さくなる(例えば、0.5~5wt.%)場合により一層、セル性能は劣化し得る。しかしながら、より高い電極密度ならびにより低い結合剤および伝導性添加剤含有量は、セルエネルギー密度を増加させ、コストを低下させるために有利である。より低い結合剤含有量はまた、セルレート性能を上昇させるためにも有利であり得る。
【0007】
最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化(例えば、8~180vol.%)、および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化(例えば、5~50vol.%)を示す材料の例には、いわゆる変換型(いわゆる化学的変換およびいわゆる「真の変換」のサブクラスの両方を含む)、ならびにいわゆる合金型活性電極材料を含む(ナノ)複合体が含まれる。金属イオン電池(例えば、Liイオン電池)の場合、そのような変換型活性電極材料の例には、金属フッ化物(例えば、フッ化リチウム、フッ化鉄、フッ化銅、フッ化ビスマス、それらの混合物および合金など)、金属塩化物、金属ヨウ化物、金属臭化物、金属カルコゲン化物(例えば、硫化リチウムおよび他の金属硫化物を含む硫化物)、硫黄、セレニウム、金属酸化物(酸化リチウムおよび酸化ケイ素を含むがこれらに限定されない)、金属窒化物、金属リン化物(リン化リチウムを含む)、金属水素化物などが含まれるが、これらに限定されない。金属イオン電池(例えば、Liイオン電池)の場合、そのような合金型電極材料の例には、ケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ガリウム、ヒ素、リン、銀、カドミウム、インジウム、スズ、鉛、ビスマス、それらの合金などが含まれるがこれらに限定されない。これらの材料は、典型的には、市販の金属イオン(例えば、Liイオン)電池に一般に使用されるいわゆるインターカレート型電極よりも高い重量および体積容量を提示する。合金型電極材料は、特に、Liイオン電池用の特定の高容量アノードにおける使用に有利である。ケイ素ベースの合金型アノードは、そのような用途に特に魅力的であり得る。
【0008】
したがって、改善された電池、成分ならびに他の関連する材料および製造方法への必要性が引き続き存在している。
【発明の概要】
【0009】
本明細書に開示される実施形態は、改善された電池、成分、ならびに他の関連する材料および製造方法を提供することによって、上述の必要性に対処する。
【0010】
一例として、金属イオン電池セルは、アノードおよびカソード電極を含み、アノード電極は、約2mAh/cm2~約10mAh/cm2の範囲の容量負荷を有し、(i)約0.2ミクロン~約20ミクロンの範囲の平均粒径を有し、(ii)電池セルの1回または複数の充電-放電サイクルの間に約8vol.%~約180vol.%の範囲の体積膨張を示し、(iii)約550mAh/g~約2200mAh/gの範囲の比容量を示すアノード粒子を含む。金属イオン電池セルは、アノード電極とカソード電極を電気的に分離するセパレータ、およびアノード電極とカソード電極をイオン連結する電解質をさらに含み、電解質は、1種または複数の金属イオン塩および溶媒組成物を含む。溶媒組成物は、各々が約-140℃~約-60℃の範囲の融点を有し、溶媒組成物の約10vol.%~約80vol.%の範囲である1種または複数の低融点溶媒、および各々が約-60℃~約+30℃の範囲の融点を有し、溶媒組成物の約20vol.%~約90vol.%の範囲である1種または複数の通常融点溶媒を含む。
【0011】
添付の図面は、本開示の実施形態の説明を助けるために提示され、実施形態の限定ではなく例示のためにのみ提供される。他に述べられない限りまたは文脈により暗に示されない限り、図面中の異なる網掛け、濃淡および/または塗りつぶしパターンは、異なる成分、要素、特徴などの間の差異を描出することのみを意味し、用いた具体的なパターンについて本開示外で定義され得る特定の材料、色または他の特性の使用を示唆することは意味しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本明細書に記載される成分、材料、方法および他の技術が実行され得るLiイオン電池例を示す図である。
【
図3A】高容量、および最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化、および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化を示す(ナノ)複合体アノードを含むフルセルの性能特徴に対する電解質組成物例の影響を示す図であって、サイクル1およびサイクル5についての典型的な充電-放電曲線を示す図である。
【
図3B】高容量、および最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化、および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化を示す(ナノ)複合体アノードを含むフルセルの性能特徴に対する電解質組成物例の影響を示す図であって、比容量を活性アノード材料の重量によって正規化した、セル例の電気化学安定性を示す図である。
【
図4A】高容量、および最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化、および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化を示す(ナノ)複合体アノードを含むフルセルの性能特徴に対する電解質組成物例の影響を示す図であって、サイクル動作させたセルの性能に対するいくつかの電解質組成物例の影響を例示する図である。
【
図4B】高容量、および最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化、および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化を示す(ナノ)複合体アノードを含むフルセルの性能特徴に対する電解質組成物例の影響を示す図であって、サイクル動作させたセルの性能に対するいくつかの電解質組成物例の影響を例示する図である。
【
図5】高容量、および最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化、および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化を示す(ナノ)複合体アノードを含むフルセルの性能特徴に対する電解質組成物例の影響を示す図であって、低電極容量負荷および高電極容量負荷セルの性能に対する塩濃度の影響を例示する図である。
【
図6】高容量、および最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化、および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化を示す(ナノ)複合体アノードを含むフルセルの性能特徴に対する電解質組成物例の影響を示す図であって、サイクル動作させたセルの性能に対する電解質組成物例の影響を例示する図である。
【
図7A】高容量、および最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化、および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化を示す(ナノ)複合体アノードを含むフルセルの性能特徴に対する電解質組成物例の影響を示す図であって、サイクル動作させたセルの性能に対する他の電解質組成物例の影響を例示する図である。
【
図7B】高容量、および最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化、および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化を示す(ナノ)複合体アノードを含むフルセルの性能特徴に対する電解質組成物例の影響を示す図であって、サイクル動作させたセルの性能に対する他の電解質組成物例の影響を例示する図である。
【
図7C】高容量、および最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化、および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化を示す(ナノ)複合体アノードを含むフルセルの性能特徴に対する電解質組成物例の影響を示す図であって、サイクル動作させたセルの性能に対する他の電解質組成物例の影響を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の態様は、以下の記載および本発明の具体的な実施形態を対象とした関連する図面に開示される。「本発明の実施形態」という用語は、本発明のすべての実施形態が、議論される特徴、利点、方法または動作モードを含むことを必ずしも必要とせず、代替の実施形態が、本発明の範囲から逸脱することなく考案され得る。さらに、本発明の周知要素は詳細に記載されないことがあるか、または他の、より関連する詳細を不明瞭にしないために省略されることがある。
【0014】
本発明の任意の実施形態に関して本明細書に記載されるあらゆる数値範囲は、関連する数値範囲の上限および下限を定義するだけでなく、上限および下限が特徴付けられる精度レベルと矛盾しない単位または増分におけるその範囲内の各個別の値の開示を暗に示すことも意図される。例えば、7nm~20nmの数値距離範囲(すなわち、1の単位または増分の精度レベル)は、1の単位または増分で8から19までの介在する数値が明示的に開示されるかのように、[7、8、9、10、…、19、20]のセット(単位nm)を包含する。別の例では、約-120℃~約-60℃の温度範囲は、増分範囲で-120℃~-60℃の間に介在する数値(単位℃)が明示的に開示されるかのように、約-120℃~約-119℃、約-119℃~約-118℃、…約-61℃~約-60℃の温度範囲のセット(単位℃)を包含する。なお別の例では、30.92%~47.44%(すなわち、100分の1の単位または増分の精度レベル)の数値パーセンテージ範囲は、100分の1の単位または増分で30.92~47.44の間に介在する数値が明示的に開示されるかのように、[30.92、30.93、30.94、…、47.43、47.44]のセット(単位%)を包含する。したがって、任意の開示される数値範囲に包含される介在する数値のいずれも、それらの介在する数値が明示的に開示されているものとして解釈されることが意図され、それによって、あらゆるそのような介在する数値は、より広い範囲内に入る部分範囲のそれ自体特有の上限および/または下限を構成し得る。各部分範囲(例えば、より広い範囲からの少なくとも1つの介在する数値を上限および/または下限として含む各範囲)は、それによって、より広い範囲の明示された開示により暗に開示されていると解釈されることが意図される。
【0015】
以下の記載は、LiおよびLiイオン電池の文脈で特定の例を記載することがある(簡潔さと便利さのため、およびLi技術が現在一般的であるため)が、種々の態様は、他の充電式および一次電池(例えば、Naイオン、Mgイオン、Kイオン、Caイオンならびに他の金属および金属イオン電池など)に適用可能であり得ることを認識されたい。さらに、以下の記載はまた、Liを含まない状態での材料配合の特定の例(例えば、ケイ素含有ナノ複合体アノードの場合)を記載することがあるが、種々の態様は、Li含有電極および活性材料(例えば、中でも、部分的または完全リチウム化Si含有アノード、部分的または完全リチウム化金属フッ化物含有カソード(例えば、LiFと、Cu、Fe、Cu-Fe合金、種々の他の合金および金属の混合物などの金属との混合物など)、部分的または完全リチウム化カルコゲン化物(例えば、Li2S、Li2S/金属混合物、Li2Se、Li2Se/金属混合物、Li2S-Li2Se混合物、リチウム化カルコゲン化物を含む種々の他の組成物など)、部分的または完全リチウム化金属酸化物(例えば、Li2O、Li2O/金属混合物など))に適用可能であり得ることを認識されたい。
【0016】
さらに、以下の記載は、Liイオン電池用のアノードおよびカソード活性材料のいくつかの特定の合金型および変換型化学(例えば、ケイ素含有アノードまたは金属フッ化物含有もしくは硫化リチウム含有カソード)の文脈で特定の例を記載することがあるが、種々の態様は、Liイオン電池用の他の化学(他の変換型および合金型電極、ならびに種々のインターカレント型電極)、ならびに他の電池化学に適用可能であり得ることを認識されたい。金属イオン電池(例えば、Liイオン電池)の場合、他の好適な変換型電極の例には、金属塩化物、金属ヨウ化物、金属臭化物、硫黄、セレニウム、金属酸化物、金属窒化物、金属リン化物、金属水素化物などが含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
電池(例えば、Liイオン電池)動作の間、変換材料は、1つの結晶構造から別の結晶構造に変化(変換)する(したがって、名称「変換」型)。この過程には、化学結合を壊し、新しい結合を形成することも伴う。(例えば、Liイオン)電池動作の間、Liイオンは、合金型材料に挿入され、リチウム合金が形成される(したがって、名称「合金」型)。時として、「合金」型電極材料は、「変換」型電極材料のサブクラスとみなされる。
【0018】
図1は、本明細書に記載される成分、材料、方法および他の技術またはその組合せが種々の実施形態に従って適用され得る金属イオン(例えば、Liイオン)電池の例を示している。ここでは、例示の目的で円柱状の電池が示されているが、プリズムまたはパウチ(積層型)電池を含む他の種類の構成も、所望に応じて使用できる。電池例100は、負アノード102、正カソード103、アノード102とカソード103の間に位置するセパレータ104、セパレータ104を含浸する電解質(暗に示される)、電池ケース105、および電池ケース105を封止する封止材106を含む。
【0019】
この種類のLiまたはNaベースの電池用の従来の電解質は、一般に、1~2wt.%の他の有機添加剤とのカーボネート溶媒の混合物中、LiまたはNa単一塩(例えば、Liイオン電池ではLiPF6およびNaイオン電池ではNaPF6またはNaClO4塩)の0.8~1.2M(1M±0.2M)溶液で構成される。一般的な有機添加剤には、ニトリル、エステル、スルホン、スルホキシド、リンベースの溶媒、ケイ素ベースの溶媒、エーテルなどが含まれ得る。そのような添加剤溶媒は、修飾(例えば、スルホン化またはフッ化)され得る。
【0020】
最も従来のLiイオン電池電解質に使用される従来の塩は、LiPF6である。あまり一般的ではない塩(例えば、主に研究発表において調査されているか、または一部の場合には、Liイオン電池電解質用途で記載されたことさえないが、それでも適用可能かつ有用であり得るもの)の例には、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム(LiSbF6)、ヘキサフルオロケイ酸リチウム(Li2SiF6)、ヘキサフルオロアルミン酸リチウム(Li3AlF6)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C2O4)2、ジフルオロ(オキサレート)ホウ酸リチウム(LiBF2(C2O4))、種々のリチウムイミド(例えば、SO2FN-(Li+)SO2F、CF3SO2N-(Li+)SO2CF3、CF3CF2SO2N-(Li+)SO2CF3、CF3CF2SO2N-(Li+)SO2CF2CF3、CF3SO2N-(Li+)SO2CF2OCF3、CF3OCF2SO2N-(Li+)SO2CF2OCF3、C6F5SO2N-(Li+)SO2CF3、C6F5SO2N-(Li+)SO2C6F5またはCF3SO2N-(Li+)SO2PhCF3など)などが含まれる。
【0021】
Liイオン電池に利用される電極は、典型的には、(i)活性材料、伝導性添加剤、結合剤溶液、および一部の場合には界面活性剤または他の機能性添加剤を含むスラリーを形成し、(ii)スラリーを金属箔(例えば、大部分のアノードではCu箔および大部分のカソードではAl箔)上にキャストし、(iii)キャストされた電極を乾燥して溶媒を完全に蒸発させることによって生成される。
【0022】
Liイオン電池に利用される従来のアノード材料は、インターカレート型のものである。金属イオンは、電池の充電または放電の間に、そのような材料の格子間位置にインターカレートされ、そこを占有する。そのようなアノードは、電極で使用された場合、小さなまたは非常に小さな体積変化を起こす。フッ化ポリビニリデンまたは二フッ化ポリビニリデン(PVDF)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)は、これらの電極で使用される2種の最も一般的な結合剤である。カーボンブラックは、これらの電極で使用される最も一般的な伝導性添加剤である。しかしながら、そのようなアノードは、比較的小さな重量および体積容量(典型的には、グラファイトまたは硬質炭素ベースのアノードの場合には370mAh/g未満の充電式比容量、および、集電箔の体積を考慮しない電極レベルで600mAh/cm3未満の充電式体積容量)を示す。
【0023】
Liイオン電池に使用するための合金型アノード材料は、インターカレート型アノードと比較してより高い重量および体積容量を提示する。例えば、ケイ素(Si)は、インターカレート型グラファイト(またはグラファイト様)アノードと比較して、およそ10倍高い重量容量およびおよそ3倍高い体積容量を提示する。しかしながら、Siは、Li挿入の間に大幅な体積膨張(最大およそ300vol.%)に悩まされ、したがって、Si含有アノードの厚さ変化および機械的破損を誘発し得る。さらに、Si(およびSiのリチウム化の間に形成され得る一部のLi-Si合金化合物)は、比較的低い電気伝導性および比較的低いイオン(Liイオン)伝導性に悩まされる。Siの電気およびイオン伝導性は、グラファイトの電気およびイオン伝導性よりも低い。(ナノ)複合体Si含有粒子の形成(Si-炭素複合体、Si-金属複合体、Si-ポリマー複合体、Si-セラミック複合体、ナノ構造化Si、炭素、ポリマー、セラミックおよび金属の種々の組合せを含む複合体、またはナノ構造化Si、もしくは種々の形状および形態のナノ構造化もしくはナノサイズSi粒子を含む他の種類の多孔質複合体を含むがこれらに限定されない)は、Liイオン挿入および引出の間の体積変化を低減し得、これは、次いで、充電式Liイオンセルのより良好なサイクル安定性をもたらし得る。
【0024】
Si含有ナノ複合体アノードに加えて、合金型活性材料を含むそのようなナノ複合体アノードの他の例には、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ガリウム、ヒ素、リン、銀、カドミウム、インジウム、スズ、鉛、ビスマス、それらの合金などを含むものが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
合金型活性材料を含む(ナノ)複合体アノードに加えて、他の興味深い種類の高容量(ナノ)複合体アノードは、金属酸化物(酸化ケイ素、酸化リチウムなどを含む)、金属窒化物、金属リン化物(リン化リチウムを含む)、金属水素化物などを含み得る。
【0026】
特に、最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化(例えば、約8~約180vol.%)、後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化(例えば、約4~約50vol.%)、および約0.2~約40ミクロン(一部の適用では、より好ましくは、約0.4~約20ミクロン)の範囲の平均サイズを示す高容量(ナノ)複合体アノード粉末は、製造性および性能特徴の点で、電池用途に特に魅力的であり得る。中程度(例えば、約2~4mAh/cm2)から高い(例えば、約4~約10mAh/cm2)電極面積容量負荷を有する電極もまた、セルにおける使用に特に魅力的である。一部の設計では、近球形(楕円体)形状のこれらの複合体粒子は、さらに、レート性能および電極の体積容量を増加させるために非常に魅力的であり得る。しかしながら、ナノ複合体アノード材料および電極配合物を含むそのような合金型または変換型活性材料の形成および利用により達成され得るいくらかの改善にも関わらず、セル性能特徴における実質的なさらなる改善は、従来の技術水準によって公知のまたは示されているものを超える、電解質(例えば、液体電解質)の改善された組成物および調製により達成され得る。残念ながら、最初の充電-放電サイクルの間の中程度に高い体積変化(例えば、約8~約180vol.%)、後続の充電-放電サイクルの間の中程度の体積変化(例えば、約4~約50vol.%)、約0.2~約40ミクロンの範囲の平均サイズ、および比較的低い密度(例えば、約0.5~3.8g/cc)を示す高容量(ナノ)複合体アノードおよびカソード粉末は比較的新しく、それらの性能特徴および限られたサイクル安定性は典型的には、特に、電極面積容量負荷が中程度(例えば、約2~約4mAh/cm2)である場合、およびさらに電極面積容量負荷が高い(例えば、約4~約10mAh/cm2)場合により一層、比較的不十分である。しかしながら、より高い容量負荷は、セルエネルギー密度を増加させ、セルの製造コストを低下させるために有利である。同様に、そのような電極(例えば、アノード)多孔度(電極中の(ナノ)複合体活性アノード粒子間のスペースによって占有され、電解質で満たされた体積)が、中程度に小さくなる(例えば、約25~約35vol.%)場合、および電極多孔度が小さくなる(例えば、約5~約25vol.%)場合により一層、または電極中の結合剤および伝導性添加剤の量が中程度に小さくなる(例えば、合計で約6~約15wt.%)場合、ならびに電極中の結合剤および伝導性添加剤の量が小さくなる(例えば、合計で約0.5~約5wt.%)場合により一層、セル性能は悪くなり得る。しかしながら、より高い電極密度およびより低い結合剤含有量は、セルエネルギー密度を増加させ、特定の用途においてコストを低下させるために有利である。より低い結合剤含有量はまた、セルレート性能を上昇させるためにも有利であり得る。より大きな体積変化は一部の設計において劣った性能をもたらすが、これは、アノード上に形成される固体電解質相間(SEI)層の損傷、電極内の電極粒子の不均一なリチウム化および脱リチウム化、ならびに他の要因と関連し得る。
【0027】
驚くべきことに、本発明者らは、(種々の粒径の)インターカレート型アノードおよびカソード電極で良好に働く電解質組成物、ならびにナノサイズ(例えば、約1nm~約200nmの範囲)の変換型アノード材料および変換型カソード材料またはナノサイズ(典型的には、1nm~200nmの範囲)の合金型アノード材料について改善された性能を示す電解質が、最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化(例えば、約8~約180vol.%)、後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化(例えば、約4~約50vol.%)、および約0.2~約40ミクロンの範囲の平均サイズを示す高容量(ナノ)複合体アノード粒子(例えば、粉末)を含むセルにおいて十分に機能しないことを見出した。さらに、典型的には、従来のナノサイズ(例えば、約1nm~約200nmの範囲)の合金型アノードを含むセルにおいて十分に機能しない電解質が、最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化(例えば、約8~約180vol.%)、後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化(例えば、約4~約50vol.%)、および約0.2~約40ミクロンの範囲の平均サイズを示す高容量(ナノ)複合体アノード粒子(例えば、粉末)を含むセルにおいて顕著に良好に機能することが見出された。合金型アノード材料を含むそのような(ナノ)複合体アノードによる他の方法で改善されたセル性能に対する電解質組成物の変化の影響は、特定の用途で特に強いことが見出された。特に、約0.5m2/g~約50m2/gの範囲の比表面積を有するそのようなアノード粉末のサブクラスの改善された性能について電解質組成物を特定することは、特に有益であり、良好な安定性、良好なエネルギー密度および他の性能特徴の組合せを達成するために影響が大きいことが見出された。一例では、ケイ素(Si)を含むアノード材料の場合、約600mAh/g~2200mAh/gまたは約2600mAh/gの範囲の重量容量((ナノ)複合体粒子、結合剤および伝導性添加剤を合わせた総質量によって正規化)を有する(ナノ)複合体電極は、そのようなアノードを含む開示される電解質組成物の組合せにより、セルが、良好な安定性、良好なエネルギー密度、良好なレート性能および他の重要かつ所望の性能特徴の魅力的な組合せを達成することが可能になるため、特に有益であった。
【0028】
本開示の1つまたは複数の実施形態は、広範囲の電池について、サイクル動作の間に一定の体積変化(例えば、最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化(例えば、約8~約160または約180vol.%)および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化(例えば、約4~約50vol.%))が生じ、約0.2~約40ミクロンの範囲の平均粒径、および約0.5~約50m2/gの範囲の比表面積を有するナノ複合体アノード材料(例えば、変換型および合金型活性材料を含む材料)を含む種々の種類のセルの上で議論した課題のいくつかを克服する。1つまたは複数の実施形態によると、実質的により安定なセルは、中程度(例えば、約2~約4mAh/cm2)および高容量負荷(例えば、約4~約10mAh/cm2)、高い充填密度(最初の充電-放電サイクル後の、約5~約35vol.%の範囲の電解質で満たされた電極細孔度)、ならびに比較的低い結合剤含有量(例えば、約0.5~約14wt.%)のそのような電極により組み立てられ得る。
【0029】
Liイオン電池に利用される従来のカソード材料は、インターカレート型で一般に結晶のものである。そのようなカソードは、典型的には、約4.3V vs.Li/Li+未満の最高充電電位、約190mAh/g未満の重量容量(活性材料の質量に対して)、および約800mAh/cm3未満の体積容量(集電箔によって占有される体積は含めない、電極の体積に対して)を示す。所与のアノードについて、Liイオン電池における、より高いエネルギー密度は、高電圧カソード(約4.35V vs.Li/Li+~約5.1V vs.Li/Li+の最高充電電位を有するカソード)を使用すること、またはいわゆる変換型カソード材料(それらの組成中にFまたはSを含むものを含むがこれらに限定されない)を使用することのいずれかによって達成され得る。一部の高電圧インターカレート型カソードは、ニッケル(Ni)を含み得る。一部の高電圧インターカレート型カソードは、マンガン(Mn)を含み得る。一部の高電圧インターカレート型カソードは、コバルト(Co)を含み得る。一部の設計では、高電圧インターカレート型カソード粒子は、それらの構造または表面層にフッ素(F)を含み得る。一部の高電圧インターカレート型カソードは、リン(P)を含み得る。そのような種類のより高いエネルギー密度カソードと高容量(例えば、Siベースの)アノードとの組合せは、高いセルレベルエネルギー密度につながり得る。残念ながら、そのようなセルのサイクル安定性および他の性能特徴は、少なくとも従来の電解質と組み合わせて使用される場合、一部の用途では十分ではないことがある。
【0030】
それによって、本開示の1つまたは複数の実施形態は、高電圧インターカレートカソード(約4.2V~約4.5V vs.Li/Li+、一部の場合には約4.5V vs.Li/Li+~約5.1V vs.Li/Li+の範囲の最高充電電位を有するカソード)と、高容量中程度体積変化アノードのサブクラス(例えば、最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化(例えば、約8~約160または約180vol.%)、後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化(例えば、約4~約50vol.%)、約0.2~約40ミクロンの範囲の平均サイズ(例えば、平均直径)、および複合体電極粒子の質量によって正規化して約0.5~約50m2/gの範囲の比表面積、およびSi含有アノードの場合、約550~約2200mAh/gまたは約2700mAh/gの範囲(複合体アノード粒子、伝導性添加剤および結合剤の総質量によって正規化した場合)または約650~約2200mAh/gもしくは約2900mAh/gの範囲(複合体アノード粒子のみの質量によって正規化した場合)の比容量を示す(ナノ)複合体アノード粉末を含むアノード)との組合せに対して良好に働く電解質組成物を対象とする。少なくとも1つの実施形態では、特定の電解質組成物は、最高カソード充電電位の値に基づいて選択され得る。
【0031】
高比容量および高体積容量の変換型カソード材料の例には、フッ化物、塩化物、硫化物、セレン化物などが含まれるが、これらに限定されない。例えば、フッ化物ベースのカソードは、一部の場合には300mAh/gを超える(電極レベルでは1200mAh/cm3超)、それらの非常に高い容量に起因して際立った技術的可能性を提示し得る。例えば、Liを含まない状態において、FeF3は712mAh/gの理論比容量を提示し、FeF2は571mAh/gの理論比容量を提示し、MnF3は719mAh/gの理論比容量を提示し、CuF2は528mAh/gの理論比容量を提示し、NiF2は554mAh/gの理論比容量を提示し、PbF2は219mAh/gの理論比容量を提示し、BiF3は302mAh/gの理論比容量を提示し、BiF5は441mAh/gの理論比容量を提示し、SnF2は342mAh/gの理論比容量を提示し、SnF4は551mAh/gの理論比容量を提示し、SbF3は450mAh/gの理論比容量を提示し、SbF5は618mAh/gの理論比容量を提示し、CdF2は356mAh/gの理論比容量を提示し、ZnF2は519mAh/gの理論比容量を提示する。AgFおよびAgF2もまた、理論比容量を提示し、さらに、非常に高いリチウム化能を示す。フッ化物の混合物(例えば、合金の形態の)は、複合則に従って概算された理論容量を提示し得る。混合金属フッ化物の使用は、時として有利であり得る(例えば、より高いレート、より低い抵抗、より高い実用容量またはより長い安定性を提示し得る)。金属と混合した金属フッ化物の使用もまた、時として有利であり得る(例えば、より高いレート、より低い抵抗、より高い実用容量またはより長い安定性を提示し得る)。完全リチウム化状態において、金属フッ化物は、金属およびLiFクラスター(またはナノ粒子)の混合物を含む複合体に変換する。変換型金属フッ化物カソードの全体的な可逆性反応の例には、CuF2ベースのカソードについての2Li+CuF2⇔2LiF+Cu、またはFeF3ベースのカソードについての3Li+FeF3⇔3LiF+Feが含まれる。金属フッ化物ベースのカソードは、Liを含まない、または部分的リチウム化もしくは完全リチウム化状態の両方で調製することができることを認識されたい。見込みのある変換型カソード(または、一部の場合にはアノード)材料の別の例は、硫黄(S)(Liを含まない状態)または硫化リチウム(Li2S、完全リチウム化状態)である。サイクル動作の間の活性材料の溶解を低減する、電気伝導性を改善する、またはS/Li2S電極の機械安定性を改善するために、多孔質S、Li2S、多孔質S-C複合体、Li2S-C複合体、多孔質S-ポリマー複合体、またはSもしくはLi2Sまたはその両方を含む他の複合体の形成を利用することができる。
【0032】
一部の設計では、異なる電解質組成物が、同一のアノード(例えば、Si含有ナノ複合体アノード)および異なるカソード(インターカレート型、高電圧インターカレート型、Sを含む変換型、Fを含む変換型など)を含むセルについて最も好ましい性能を提示し得ることに留意されたい。
【0033】
残念ながら、Liイオン電池に使用される多くの変換型電極は、性能限界に悩まされる。(ナノ)複合体の形成は、少なくとも部分的に、そのような限界を克服し得る。例えば、特定の(ナノ)複合体は、低減された電圧ヒステリシス、改善された容量利用率、改善されたレート性能、改善された機械安定性および時として改善された電気化学安定性、低減された体積変化、ならびに/または他の有益な特質をもたらし得る。そのような複合体カソード材料の例には、LiF-Cu-Fe-Cナノ複合体、LiF-Cu-Fe-Ag-Cナノ複合体、LiF-Cu-Fe-Ti-Cナノ複合体、LiF-Cu-Fe-Mn-Cナノ複合体、FeF2-Cナノ複合体、FeF3-Cナノ複合体、CuF2-Cナノ複合体、CuF2-C-AlF3ナノ複合体、CuF2-C-Al2O3ナノ複合体、LiF-Cu-Cナノ複合体、LiF-Cu-C-ポリマーナノ複合体、LiF-Cu-別の金属-C-ポリマーナノ複合体、LiF-Cu-別の金属酸化物-C-ポリマーナノ複合体、LiF-Cu-別の金属フッ化物-C-ポリマーナノ複合体、LiF-Cu-金属-ポリマーナノ複合体、およびLiF、FeF3、FeF2、MnF3、CuF2、NiF2、PbF2、BiF3、BiF5、CoF2、SnF2、SnF4、SbF3、SbF5、CdF2、ZnF2、AgF、AlF3、AgF2もしくは他の金属フッ化物またはそれらの混合物を含む多くの他の多孔質ナノ複合体が含まれるが、これらに限定されない。そのような複合体はまた、酸化物およびオキシフッ化物を含み得、伝導性(主にsp2-結合)炭素を含み得る。一部の例では、金属フッ化物ナノ粒子は、多孔質炭素の細孔(例えば、活性炭素粒子の細孔)に浸透して、他の関連する組成物の中でもこれらの金属フッ化物-Cまたは混合金属-LiF-別の金属酸化物または金属フッ化物-Cナノ複合体が形成され得る。特に、最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い(カソードについて)体積変化(例えば、約5~約100vol.%)、後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化(例えば、約4~約50vol.%)、および約0.2~約40ミクロンの範囲の平均サイズ(例えば、球形粒子の場合には直径、または平坦粒子の場合には厚さ、またはランダムな形状の粒子の場合には平均寸法)を示す高容量(ナノ)複合体カソード粒子(例えば、粉末)は、製造性および性能特徴の点で、電池用途に特に魅力的であり得る。一部の設計では、近球形(楕円体)形状の複合体カソード粒子は、さらに、レート性能および電極の体積容量を最適にするために非常に魅力的であり得る。しかしながら、そのような変換型ナノ複合体カソード材料の形成および利用ならびに電極最適化により達成され得るいくらかの改善にも関わらず、セル性能特徴におけるさらなる改善は、従来の技術水準によって公知のまたは示されているものを超える、電解質の改善された組成物および調製により達成され得る。
【0034】
それによって、本開示の1つまたは複数の実施形態は、(i)最初の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化(例えば、約5~約50vol.%)、および後続の充電-放電サイクルの間に小~中程度の体積変化(例えば、約3~約40vol.%)、ならびに約0.2~約40ミクロンの範囲の平均サイズ(例えば、球形粒子の場合、直径)を示す高容量変換型(ナノ)複合体カソード材料と、(ii)高容量中程度体積変化アノードのサブクラスとの組合せに対して良好に働く電解質組成物であって、アノードが、最初の充電-放電サイクルの間に適度に高い体積変化(例えば、約8~約160または約180vol.%)、後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化(例えば、約4~約50vol.%)、約0.2~約40ミクロンの範囲の平均サイズ(例えば、平均直径)、および活性電極粒子の質量によって正規化して約0.5~約50m2/gの範囲の比表面積、およびSi含有アノードの場合、約550~約2200mAh/gまたは約2700mAh/gの範囲(複合体電極粒子、伝導性添加剤および結合剤の総質量によって正規化した場合)または約650~約2200mAh/gもしくは約2900mAh/gの範囲(複合体アノード粒子のみの質量によって正規化した場合)の比容量を示す(ナノ)複合体アノード粉末を含む、電解質組成物を対象とする。
【0035】
本発明者らは、高容量ナノ複合体粒子または粉末(変換または合金型活性材料を含む)をベースとする電極を含むセルが、サイクル動作の間に一定の体積変化(最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化(例えば、約8~約180vol.%の増加または約8~約70vol.%の減少)および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化(例えば、約4~約50vol.%))を生じ、約0.2~約40ミクロンの範囲の平均サイズ(例えば、多くの他のものの中でもSiベースのナノ複合体アノード粉末)が、大幅に改善された性能(特に、高い容量負荷)をもたらす電解質の特定の組成物から利益を受け得ることを見出した。
【0036】
例えば、(i)サイクル動作の間の高容量ナノ複合体粒子の連続した体積変化と(ii)電極動作電位での電気伝導性電極表面における電解質の分解(例えば、Siベースのアノードの場合、主に電気化学電解質還元)との組合せは、ナノ複合体粒子の表面での固体電解質相間(SEI)層の連続した(比較的ゆっくりであっても)成長をもたらし、その結果セル容量の不可逆損失につながり得る。
【0037】
電解質中の結合剤の膨張は、結合剤組成物のみに依存するのではなく、電解質組成物にも依存し得る。さらに、そのような膨張(およびその結果の性能低下)は、多くの場合、結合剤の電解質への曝露時の弾性率の低下と相関する。この意味で、特定の電解質における弾性率の低下が小さいほど、結合剤連結(ナノ)複合体活性粒子/伝導性添加剤界面は安定になる。結合剤弾性率の15~20%を超える低下は、性能の著しい低下につながり得る。一例では、結合剤弾性率の2倍(2×)の低下が、実質的な性能低下につながり得る。さらなる例では、弾性率の5倍以上(例えば、5×~500×)の低下は、非常に大幅な性能低下につながり得る。したがって、大幅な結合剤膨張を誘導しない電解質組成物を選択することが、特定の用途では、非常に優先され得る。一部の例では、電解質に曝露された場合、結合剤弾性率を約30vol.%未満(より好ましくは、10vol.%以下)低下させる電解質組成物を選択することが好ましいことがある。2種以上の結合剤組成物を含むアノードでは、電解質に曝露された場合、少なくとも1種の結合剤の弾性率が30vol.%を超えて(より好ましくは、10vol.%超)低下しない電解質組成物を選択することが好ましいことがある。
【0038】
以下の電解質組成物は、サイクル動作の間に一定の体積変化(最初の充電-放電サイクルの間に中程度に高い体積変化(例えば、約8~約160もしくは約180vol.%の増加または約8~約70vol.%の減少)、および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化(例えば、約4~約50vol.%))、約0.2~約40ミクロンの範囲の平均サイズ(一部の用途について、より好ましくは、約0.4~約20ミクロン)、および約0.5m2/g~約50m2/gの範囲の比表面積を生じる高容量ナノ複合体電極粉末(変換または合金型活性材料を含む)を含むLiおよびLiイオンセルにおける使用に有益であり得る。これらの電解質は、1種または複数の以下の成分:(a)低融点(LMP)溶媒または溶媒混合物;(b)通常融点(RMP)溶媒または溶媒混合物;(c)添加剤(ADD)溶媒または溶媒混合物(例えば、アノード電解質相間特性を改善する、またはカソード電解質相間特性を改善する、またはLi塩を安定化させる、または他の有用な機能性を提供するために添加される);(d)主(MN)Li塩またはLi塩混合物;(e)添加剤(ADD)塩または塩混合物(Liベースとは限らない)(例えば、アノード電解質相間特性を改善する、またはカソード電解質相間特性を改善する、またはLi塩を安定化させる、または他の有用な機能性を提供するために添加される);(f)他の機能性添加剤(OFADD)(例えば、セル安全性を高めるために添加される)を含み、LMP溶媒またはLMP溶媒混合物は、好ましくは、電解質中の全溶媒の体積の約10~約95vol.%を占め(より好ましくは、一部の設計では、LMP溶媒またはLMP溶媒混合物は、電解質中の全溶媒の体積の約10~約80vol.%を占め得、例えば、高容量ナノ構造化アノードを含むセルについて、LMP溶媒のより好ましい体積分率は、約20vol.%~約60vol.%の範囲であり得る)、RMP溶媒またはRMP溶媒混合物は、好ましくは、電解質中の全溶媒の体積の約5~約90vol.%を占め得(より好ましくは、一部の設計では、RMP溶媒またはRMP溶媒混合物は、電解質中の全溶媒の体積の約20~約90vol.%を占め得)、ADD溶媒または溶媒混合物は、好ましくは、電解質中の全溶媒の体積の約0~約6vol.%を占め得る。特定の用途のためのLMP、RMPおよびADD溶媒または溶媒混合物の最適な体積分率の特定の値は、所与の用途におけるセルに望ましいセル動作電位、セル動作(またはセル保存)温度、ならびに充電および放電レートに依存し得る。LMP溶媒または共溶媒としての使用に適したエステルの例には、数例を挙げると、種々のギ酸エステル(例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸アミル、ギ酸ヘキシル、ギ酸ヘプチルなど)、種々の酢酸エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチルなど)、種々のプロピオン酸エステル(例えば、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸ヘプチルなど)、種々の酪酸エステル(酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチル、酪酸アミル、酪酸ヘキシル、酪酸ヘプチルなど)、種々の吉草酸エステル(例えば、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、吉草酸ブチル、吉草酸アミル、吉草酸ヘキシル、吉草酸ヘプチルなど)、種々のカプロン酸エステル(例えば、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプロン酸ブチル、カプロン酸アミル、カプロン酸ヘキシル、カプロン酸ヘプチルなど)、種々のヘプタン酸エステル(例えば、ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸エチル、ヘプタン酸プロピル、ヘプタン酸ブチル、ヘプタン酸アミル、ヘプタン酸ヘキシル、ヘプタン酸ヘプチルなど)、種々のカプリル酸エステル(例えば、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、カプリル酸ブチル、カプリル酸アミル、カプリル酸ヘキシル、カプリル酸ヘプチルなど)、種々のノナン酸エステル(例えば、ノナン酸メチル、ノナン酸エチル、ノナン酸プロピル、ノナン酸ブチル、ノナン酸アミル、ノナン酸ヘキシル、ノナン酸ヘプチルなど)、種々のデカン酸エステル(例えば、デカン酸メチル、デカン酸エチル、デカン酸プロピル、デカン酸ブチル、デカン酸アミル、デカン酸ヘキシル、デカン酸ヘプチルなど)、および上で議論したエステルのフッ化されたものが含まれ得るが、これらに限定されない。電解質中のRMP溶媒としての使用(または、電解質中のRMP溶媒混合物の作製)に適した溶媒の例は、種々のカーボネート(フッ化非環状カーボネートおよび炭酸プロピレンが、高電圧カソードを含むセルにおける使用に特に有利であり得る)、種々のスルホン(例えば、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホンなど)、および種々のスルホキシド、種々のラクトン、種々のリンベース溶媒(例えば、メチルホスホン酸ジメチル、ホスホン酸トリフェニルなど)、種々のケイ素ベース溶媒、様々な種類の高融点エステル(例えば、約マイナス(-)50℃超の融点を有するエステル)、種々のエーテル(例えば、ジオキソラン、モノグリム、ジグリム、トリグリム、テトラグリムおよびポリエチレンオキシドなど)、種々の環状エステルベース分子(例えば、ブチロラクトンおよびバレロラクトン)、種々のジニトリル(例えば、スクシノニトリル、アジポニトリルおよびグルタロニトリル)、ならびに種々のイオン性液体(例えば、イミダゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウムなどが、高電圧カソードを含むセルにおいて特に有用であり得る)を含み得る。RMP溶媒はまた、(完全または部分的のいずれかで)フッ化されていてもよい。(Liイオン電池において)最も幅広く使用されるフッ化溶媒は、炭酸フルオロエチレン(FEC)である。FECは、より安定な(炭酸エチレン、ECと比較してより架橋された)SEIを形成するのを助けるが、その過剰量の使用(例えば、約30vol.%超)によりまた、特に高温または/および約4.2V vs. Li/Li+超で動作する高電圧カソードを含むセルにおいて、セル性能の低下が誘導され得る。電解質中のADD溶媒としての使用(または電解質中のADD溶媒混合物の作製)に適した溶媒の例には、中でも、種々のカーボネート(フッ化カーボネートを含む)、種々のスルホン(フッ化されたものを含む)、種々のスルホキシド(フッ化されたものを含む)、種々のラクトン(フッ化されたものを含む)、種々のリンベース溶媒(フッ化されたものを含む)、種々のケイ素ベース溶媒(フッ化されたものを含む)、ならびに種々のエーテル(フッ化されたものを含む)、種々のニトリルおよびジニトリルが含まれ得る。ニトリルおよびジニトリルは、典型的には、アノードにおける好ましくないSEI形成に悩まされるが、少量(例えば、典型的には10vol.%未満、より典型的には5vol.%未満)では、電解質混合物中でのそれらの適用により、特に、高電圧カソードが利用される場合、電解質伝導性およびセル性能が改善され得る。一部の場合(例えば、高(例えば、約20vol.%超の)含有量のいわゆる「SEI形成剤」が電解質中で利用される場合)、ニトリルおよびジニトリルもまた、LMP溶媒混合物の成分であり得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、LMPとは、一般に閾値未満(例えば、マイナス(-)60℃未満)、典型的には、例えば、約マイナス(-)120℃~約マイナス(-)60℃の範囲である、(溶媒または溶媒混合物の)融点を指す。本明細書で使用される場合、RMPとは、一般に閾値超(例えば、マイナス(-)60℃超)、典型的には、例えば、約マイナス(-)60℃~約プラス(+)30℃の範囲である、(溶媒または溶媒混合物の)融点を指す。さらなる例では、LMPとは、より狭い範囲、例えば、約マイナス(-)110℃~約マイナス(-)70℃、または約マイナス(-)100℃~約マイナス(-)80℃の範囲の、(溶媒または溶媒混合物の)融点を指すことがある。
【0040】
本開示の1つまたは複数の実施形態では、電解質中のLMP溶媒(またはLMP溶媒混合物の少なくとも1つの主成分)が、約+50℃を超える(より好ましくは、約+70℃を超える、なおより好ましくは、約+80℃を超える)沸点を示すことがさらに有利であり得る。
【0041】
上で記載されるものと同じ種類の高容量ナノ複合体電極粒子または粉末を含む(例えば、アノード中の同じ種類/クラスの高容量ナノ複合体アノード粉末を含む、または同じ種類/クラスの高容量ナノ複合体カソード粉末を含む)セルに関して、さらなる議論が以下に提供される。
【0042】
一部の設計では、種々の環状または直鎖状エステル(例えば、γ-バレロラクトン、γ-メチレン-γ-ブチロラクトン、γ-ヘキサラクトン、α-アンゲリカラクトン、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、5,6-ジヒドロ-2H-ピラン-2-オン、γ-ブチロラクトン、δ-ヘキサラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、フタリド、γ-カプロラクトン、酢酸プロピル、ギ酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、吉草酸メチル、酪酸メチル、酪酸エチル、吉草酸ブチル、酪酸ブチルなど)(一部の設計では、官能基を含まず、一部の設計では、さらなる官能基(例えば、ハロゲン、アルコール、アルカン、アルケン、アルキン、ケトン、アルデヒド、エーテル、アミン、アミド、イミド、ニトリル、スルホニル、カルボン酸、ホスフェートなど)を含む)、種々の環状または直鎖状エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、フラン、4-メチルピラン、ピラン、12-クラウン-4、15-クラウン-5、18-クラウン-6、4-メチル-1,3-ジオキサン、ジメチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、ジエチルエーテル、メトキシエタン、ジオキサン、ジオキサラン、モノグリム、ジグリム、トリグリム、テトラグリムなど)(一部の設計では、官能基を含まず、一部の設計ではさらなる官能基(例えば、ハロゲン、アルコール、アルカン、アルケン、アルキン、ケトン、アルデヒド、エーテル、アミン、アミド、イミド、ニトリル、スルホニル、カルボン酸、ホスフェートなど)を含む)、種々の無水物(例えば、グルタル酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、無水酪酸、無水イソ酪酸など)(一部の設計では、官能基を含まず、一部の設計ではさらなる官能基(例えば、ハロゲン、アルコール、アルカン、アルケン、アルキン、ケトン、アルデヒド、エーテル、アミン、アミド、イミド、ニトリル、スルホニル、カルボン酸、ホスフェートなど)を含む)が、有利には、LMP溶媒またはLMP混合物中の共溶媒として利用され得る。
【0043】
一部の設計では、選択した電解質溶媒に(例えば、LMPもしくはLMP混合物中の溶媒、例えば、無水物、エーテル、エステルおよびその他の少なくとも一部に、またはRMPもしくはRMP混合物からの溶媒の少なくとも一部に)様々な官能基を付加することにより、特定の用途において種々の利点がもたらされ得る。例えば、電子供与材料(例えば、アルカン、メトキシ、アミンなど)の付加は、還元電位を低減し得(つまり、還元されにくくする)、これは、特定の溶媒についてそのような低減を回避または最小化する必要がある場合(例えば、そのような溶媒が、SEIを形成するために使用されるのではなく、セル動作温度における電極細孔内の高イオン伝導性を維持するために添加される場合)に有利であり得る。別の例では、電子電子求引材料(例えば、フッ素、エステル、ニトロ基など)の付加は、溶媒還元電位を増加し得(還元されやすくする)、これは、そのような溶媒が、安定なSEI形成の成分として使用される場合に有利であり得る。一例では、高電位でのそのようなSEIの形成(他の電解質溶媒成分が還元される前の)は、電極表面での他の溶媒(例えば、安定性の低いSEI、またはイオン伝導性の低いSEI、またはあまり好ましくない他の特徴を有するSEIを形成する溶媒)の望ましくない還元を防止し得る。さらに、そのような溶媒は、カソードが高い電極電位(例えば、約4.4V vs.Li/Li+超)に曝露される場合、より高い酸化電位を提示し得る(これは、改善された安定性を維持し、漏れ率を低減するなどするのに有利であり得る)。
【0044】
電子求引材料の場合、そのような溶媒または共溶媒における選択された水素原子のフッ素原子による置き換え(例えば、種々のフッ化反応または他の機序を使用することによる)は、一部の設計において特に有利であり得る。具体的には、適用されると既に十分良好に働く(例えば、いくらか安定なSEIを形成する)電解質溶媒/共溶媒(例えば、LMPの成分および/またはRMP電解質溶媒成分)は、特に、高容量ナノ構造化アノード(例えば、Si含有アノード)がセル構築に利用される場合、少なくとも部分的なフッ化からさらに利益を受け得る(例えば、増加したサイクル安定性または他の利益を示す)。そのような反応により、SEI形成の可能性が増加し得、サイクル動作の間の電極の電気化学安定性が高まり得る(例えば、アノードSEIまたはカソードSEI保護層の強化された安定性を介して)。好適な例には、種々のフッ化エステル、種々のフッ化エーテル、LMP成分の場合、種々のフッ化無水物、およびRMP成分の場合、種々の他のフッ化溶媒(カーボネート、ニトリル、スルホン、より大きなエステルなどを含む)が含まれる。最適なフッ化またはフッ化溶媒の含有量は、用途によって変動し得ることを認識されたい。例えば、過剰量のフッ化または多すぎるフッ化溶媒の使用は、一部の用途では(例えば、電池カソードが高温(例えば、約40℃超)および高動作電位(例えば、4.4V vs.Li/Li+超)に曝露され得る場合)、望ましくないことがある。さらに、過剰なフッ化または多すぎるフッ素溶媒の使用により、セパレータまたは電極の一部の電解質湿潤が低下し、したがって、特に低温における容量利用率およびレート性能が低下し得る。フッ化溶媒の最適な含有量は、セル動作、ならびに電極およびセパレータの表面化学および特性に依存し得る。
【0045】
一部の設計では、それらの構造中に二重結合(例えば、溶媒分子当たり1つ、1つ未満または1つ超の二重結合)を示す溶媒(共溶媒)(例えば、LMPの成分またはRMP電解質溶媒成分)の使用、または化学もしく電気化学反応時にポリマーを形成する他の機会は、より安定なSEIの形成(例えば、アルケン重合を介した)に有利であり得る。二重結合およびフッ素の両方を含有する溶媒分子は、好ましい特徴(例えば、改善された安定性など)を有するSEIの形成に特に魅力的であり得る。同様に、開環重合を受け得る溶媒(共溶媒)(例えば、アルケンまたは種々のヘテロ原子を含有する環構造を有する溶媒、例えば、プロパンスルホン)もまた、より安定なSEIを形成するそれらの能力に起因して、一部の設計では、電解質成分として有利に利用され得る。
【0046】
溶媒(共溶媒)の極性(官能基により影響を受ける)は、電解質特性に対して大きな影響を有し得る。例えば、極性の高い溶媒ほど、電解質塩への高い溶解度をもたらし得、したがって、改善されたイオン伝導率に寄与し得る。同時に、極性の高い溶媒ほど、典型的には、乾燥しにくい(水残留物を除去するのに費用がかかる)。さらに、多くの極性溶媒(例えば、アミンおよびアルコールなど)はまた、プロトンの供給源でもあり得、これは、望ましくない副反応(例えば、水素放出など)を誘導し得る。
【0047】
一部の設計では、電解質中に、そのうちの1種または複数が広い電気化学安定性ウィンドウを示し、そのうちの1種または複数の他のものがより狭い電気化学安定性ウィンドウを示す(少なくとも電解質塩との組合せで)溶媒の混合物を有することが有益であり得る。一部の設計では、電解質溶媒の少なくともいくつかの電気化学安定性ウィンドウの差が約1Vを超えることが有益であり得る。一部の設計では、LMP溶媒混合物の少なくとも1種の成分が、RMP溶媒混合物の少なくとも1種の成分よりも(少なくとも同じ電解質塩で使用される場合)高い電気化学安定性ウィンドウを示すことが有利であり得る。
【0048】
図2は、本開示の実施形態による好適な電解質組成物のLMP(またはRMP)成分として効果的に使用され得るそれらの融点および他の特徴(例えば、沸点、引火点、屈折率)により選択した直鎖状エステル溶媒(さらなる官能基を含まない)の例を示している。
【0049】
図3Aおよび3Bは、インターカレート型リン酸鉄リチウム(LFP)粉末カソードおよび高容量ナノ複合体Si含有粉末アノードを含む適合フルセルの選択した性能特徴の例示的な例を示している。セルは、1.85~3.65Vの範囲の電位でサイクル動作させた。ナノ複合体アノードは、最初の充電-放電サイクルの間に中程度から高い体積変化、および後続の充電-放電サイクルの間に中程度の体積変化を示した。個々のアノード粒子は、約3ミクロンの平均粒径および約5m
2/gの比表面積を示した。アノードコーティングは、92wt.%のナノ複合体アノード粉末および8wt.%の不活性成分(結合剤および伝導性添加剤)を含んだ。セル電解質は、炭酸ビニレン(VC)2vol.%(ADD電解質成分として)、40vol.%の環状および直鎖状カーボネート(各20vol.%)の混合物(電解質のRMP成分として)、ならびに非常に高含有量(58vol.%の高さ)の酪酸メチル(MB)(直鎖状エステルおよび電解質のLMP成分として;酪酸メチルは、約-95℃の非常に低い融点を示す)を含んだ。サイクル安定性は、アノード活性材料の比容量によって例示される。
図3Aは、サイクル1(より高い充電容量の曲線)およびサイクル5(最初のサイクルの不可逆損失に起因した、より低い充電容量の曲線)についての典型的な充電-放電曲線を示している。このセル例は、88%の最初の充電-放電サイクル効率を示した。
図3Bは、比容量を活性アノード材料の重量(92wt.%のアノードコーティングの重量)によって正規化した、セル例の電気化学安定性を示している。セルは、0.5℃レートにおいて室温でサイクル動作させ、約940サイクルのサイクル寿命(サイクル5の容量の80%になるまで)を示した。
【0050】
一部の設計では、2種以上の塩の混合物を利用する一方、約0.8M~約2.0Mの範囲の電解質中総塩濃度を有することが有利であり得る。約0.8M未満の電解質中塩濃度は、特に、高面積容量電極が使用される場合(例えば、約4mAh/cm2)(例えば、高容量アノード材料が使用される場合)、セル安定性の低下をもたらし得る。電解質中のより高い塩濃度は、レート性能の低下、および一部の設計では、セル安定性の低下をもたらし得る。そのような低下した性能特徴は、電解質中のLi+カチオンの低減された運動性に関連し得る。より高い塩濃度はまた、一部の用途では望ましくないことがある、電解質密度およびコストの増加をもたらし得る。最適な塩濃度は、特定のセル設計および電解質組成物に依存し得る。興味深いことに、一部のセル(例えば、中でもLi2SもしくはLi2SeもしくはSもしくはSeベースの変換型カソードまたはLi金属アノードを含むもの)は、時として(例えば、高速充電が必要でない場合)、低減された電解質モル濃度(例えば、約0.2M未満)から利益を受け得る。
【0051】
一部の場合には、塩の組合せが、同じ濃度の個々の塩よりも高いLi+運動性を示し得る。一部の設計では、そのような塩は、Li塩(またはそれらの溶媒和対応物)が共晶系(低下した融点を有する)を形成するように選択され得る。一例では、いくつかのLiイミド塩(例えば、SO2FN-(Li+)SO2FとCF3SO2N-(Li+)SO2CF3塩の混合物、またはCF3SO2N-(Li+)SO2CF3とCF3CF2SO2N-(Li+)SO2CF3の混合物、またはCF3SO2N-(Li+)SO2CF3とCF3CF2SO2N-(Li+)SO2CF2CF3の混合物など)が、そのような系を形成し得る。一部の設計では、そのような塩およびそれらの相対分率は、凝固点降下を誘導するように選択され得る。一部の設計では、塩の最も好ましい相対分率は、氷点を最小にする(そのような凝固点降下を介して)ように選択され得る。一部の設計では、他のLiおよび非Li塩が、少量(例えば、約0.001M~約0.500M)で添加されて、電解質融点をさらに降下させ、SEI特性を改善し、活性材料またはそれらの成分の溶解を低減し得る。一部の設計では、非Li塩は、Mg、K、CaまたはNaの塩であり得る。一部の設計では、非Li塩は、希土類金属(例えば、La)の塩であり得る。
【0052】
2種以上の塩(例えば、3種の塩、または4種の塩、または5種の塩など)を利用する一部の設計では、塩のうちの少なくとも1種がLiPF6を含む(充電式LiまたはLiイオン電池の場合)ことが有利であり得る。一部の設計では、1種の他の塩もまたLiの塩であることがさらに有利であり得る。少なくとも1種の他の(非LiPF6)塩が、アノード電位の約0.3~2.3V vs.Li/Li+未満への低下時に、電解質中で電気化学的に不安定である(例えば、アノードで分解する)ことがさらに有利であり得る。一部の設計では、塩の分解が、約0.3V vs.Li/Li+超、より好ましくは約1V vs.Li/Li+超(および一部の設計では、より好ましくは、約1.5V vs.Li/Li+超)であることが有利であり得る。電解質中の非LiPF6塩が、約0.3V vs.Li/Li+超、より好ましくは、約1V vs.Li/Li+超(および一部の設計では、より好ましくは、約1.5V vs.Li/Li+超またはさらに約2.0V vs.Li/Li+超)で電解質還元を誘導または触媒することがさらに有利であり得る。電解質中の(例えば、部分的に分解された)非LiPF6塩が、電解質中の溶媒分子の少なくとも一部と反応してオリゴマーを形成することがさらに有利であり得る。一部の設計では、非LiPF6塩は、LiFSI塩であり得る。さらに、LiPF6塩およびLiFSI塩の両方を含む電解質の場合、LiPF6およびLiFSI塩のモル分率の比は、好ましくは、約100:1~約1:1の範囲であり得る。まさに最適な比は電極特徴(例えば、厚さ、結合剤の量、密度、アノードおよびカソード組成物、ならびに容量など)、利用される電解質溶媒混合物、およびサイクル動作条件(温度、セル電圧範囲など)に依存し得る。電解質溶媒が、LMPおよびRMP溶媒の混合物、ならびに(任意選択で)ADDおよび他の共溶媒を含むことがさらに有利であり得る。一部の設計では、LMP溶媒または溶媒混合物がエステルを含むこともまた有利であり得る。
【0053】
一部の設計では、電解質中のすべての溶媒の分率として約1~約30vol.%の範囲の、電解質混合物中の小分率の少なくとも1種の少なくとも部分的にフッ化された溶媒を利用する一方、約0.8M~約2.0Mの範囲の、電解質中総塩濃度を有することが有利であり得る。電解質溶媒混合物が、直鎖状および環状分子の両方を含むことがさらに有利であり得る。環状分子のうちの少なくとも1種がフッ素原子を含むことが有利であり得る。一部の設計では、電解質が、電解質中に炭酸フルオロエチレン(FEC)共溶媒(例えば、電解質中のすべての溶媒の分率として、約1~約30vol.%の範囲)を含むことが好ましいことがある。一例では、FECの最適な量は、ナノ構造化アノード粒子の表面積に依存し得る。より小さい表面積(例えば、約15m2/g未満)を有するナノ構造化アノード粒子では、FEC含有量は、形成効率に大幅に影響しないことがある。しかしながら、より大きな表面積(例えば、約15m2/g超)を示す粒子では、より高いFEC含有量により、形成効率の改善が可能になり得る。より小さい表面積およびより小さい体積変化もまた、安定的な動作のためにより小さいFEC分率を必要とし得る。より高いFEC含有量(例えば、20超~30vol.%)は、特に、セルのカソードが高電位(例えば、約4.3~4.4V vs.Li/Li+超)に曝露される場合、高温(例えば、約35℃超)においてセル性能を低下させ得る。電解質溶媒が、LMPおよびRMP溶媒の混合物、ならびに(任意選択で)ADD溶媒を含むことがさらに有利であり得る。一部の設計では、LMP溶媒または溶媒混合物がエステルを含むこともまた有利であり得る。一部の設計では、電解質が、FECに加えて他の環状カーボネート(または他のフッ化環状カーボネート)を含むこともまた有利であり得る。一部の設計では、他の環状カーボネートが、約+34~37℃の融点を有する炭酸エチレン(EC)または高融点(例えば、約+25℃超)を有する別の環状カーボネートを含むことが有利であり得る。さらに、他の環状カーボネートに対するFEC(または他のフッ化環状カーボネート)のvol.比は、好ましくは、約9:1~約1:50の範囲であり得る。まさに最適な比は、電極特徴(例えば、厚さ、結合剤の量、密度、アノードおよびカソード組成物、ならびに容量など)、利用される電解質溶媒混合物、およびセルのサイクル動作条件(温度、電圧範囲など)に依存し得る。
【0054】
図4Aおよび4Bは、粉末ベースの高容量Si含有ナノ複合体アノードおよび粉末ベースのインターカレート型カソード(この例では、酸化コバルトリチウム、LiCO)を含み、2.5~4.4Vの電圧範囲でサイクル動作させたセルの性能に対するいくつかの電解質組成物例の影響を例示している。サイクル安定性は、「C/2」レートでサイクル動作させたいくつかのセル例で試験した。2~3つのほぼ同一のセルを構築し、コンシステンシーについて試験した。これらの例では、すべての電解質が、環状カーボネートの総量を30vol.%で一定に維持するように、1.2Mの量の同じ塩(LiPF
6)、58vol.%(総溶媒体積の分率として)の量の、
図2-a,
図2-bから選択されるエステル(-90℃未満の融点を有する)、2vol.%の量の、同量の同じADD環状カーボネート溶媒、20vol.%の量の、同量の同じ直鎖状カーボネート、および様々な量のFEC(0~30vol.%の範囲)および様々な量の別の環状カーボネート(EC)(0~30vol.%の範囲)を含む。
図4Aは、ナノ構造化Siアノードの表面積が大きいほど、より低い最初の充電-放電サイクル効率(例えば、
図4Aの下側の曲線に対応するデータ点)およびFEC分率に対する効率のより強い依存性を示すことを例示している。ナノ構造化Siアノードの表面積が小さいほど、より高い最初の充電-放電サイクル効率(例えば、
図4Aの上側の曲線に対応するデータ点)およびFEC分率に対する効率のより弱い依存性を示す。
図4Bは、室温および45℃におけるSi含有アノードを含むLiイオンセルの性能を示しており、ほぼ同一のSi含有アノードを含むほぼ同一のセルについて、約20vol.%未満の(この例では)FEC含有量により、室温におけるセルサイクル安定性が低下し(例えば、
図4Bの上側の曲線に対応するデータ点)、一方、約20vol.%超のFEC含有量により45℃において安定性がわずかに低下する(例えば、
図4Bの下側の曲線に対応するデータ点)ことを例示している。
【0055】
面積電極容量が約4mAh/cm2よりも高い一部の設計では、電解質中のすべての溶媒の分率として約1vol.%~約30vol.%の範囲の、電解質中の小分率の少なくとも1種の少なくとも部分的にフッ化された溶媒を利用する場合、約1Mを超える(好ましくは、約1.1Mを超え、一部の設計では、約1.2Mを超え、約2.4M未満、一部の設計では、約1.8M未満の)電解質中の総Li塩濃度を有することが有利であり得る。そのような高容量負荷において、1~1.1M以下のLi塩濃度は、一部の設計では、特に、高容量Si含有複合体アノードが使用される場合、より速い分解をもたらし得る。
【0056】
図5は、粉末ベースの高容量Si含有ナノ複合体アノードおよび粉末ベースのインターカレート型カソード(この例では、酸化コバルトリチウム、LiCO)を含み、2.5~4.4Vの電圧範囲でサイクル動作させた低電極容量負荷および高電極容量負荷セルの性能に対する塩濃度の影響を例示している。サイクル安定性は、「C/2」レートでサイクル動作させたいくつかのセル例で試験した。2つのほぼ同一のセルを構築し、コンシステンシーについて試験した。これらの例では、すべての電解質が、1Mまたは1.2Mのいずれかの量のLiPF
6塩、FEC 20vol.%、DEC 78vol.%およびVC 2vol.%を含む。
図5に示される結果から明らかなように、高容量負荷(この例では、5.7mg/cm
2の高質量負荷)アノードを含むセルの不十分なサイクル安定性は、LiPF
6塩濃度が1Mから1.2Mに増加した場合、大幅に改善され得る。より低い質量(容量)負荷(この例では、2mg/cm
2)では、より高い塩濃度の有益な影響は、大幅に小さくなる(例えば、
図5において、1.2M LiPF
6 2mg/cm
2の曲線を1.2M LiPF
6 5.7 mg/cm
2と比較)。
【0057】
一部の設計では、小分率のフッ素含有環状カーボネート(例えば、電解質中の共溶媒として炭酸フルオロエチレン(FEC))(例えば、電解質中のすべての溶媒の分率として約1~約30vol.%の範囲)、約マイナス(-)10℃~約マイナス(-)60℃の範囲の融点を有する他の(例えば、フッ素を含まない)環状カーボネートおよび直鎖状(例えば、フッ素含有またはフッ素を含まない)カーボネートを利用する一方、約0.8M~約2.0Mの範囲の電解質中の総塩濃度を有することが有利であり得る。カーボネート(例えば、環状カーボネート)が、それらの分子構造中に二重結合酸素(=O、カルボニル基)を含むことが有利であり得る。カーボネート(例えば、環状カーボネート)が、それらの分子構造中に少なくとも1つメチル側基(-CH3)を含むこともまた有利であり得る。一部の設計では、約マイナス(-)49℃の融点を有する炭酸プロピレン(PC)が、電解質混合物中の環状カーボネートのうちの少なくとも1種であることもまた有利であり得る。PCの量は、好ましくは、約0~約50vol.%の範囲であり得る。一部の設計では、約25vol.%~約50vol.%の範囲のPCの量が有利であり得る。これは、典型的には、PC量が5~20vol.%を超えた場合安定性の大幅な低下を示す従来のグラファイトアノード含有セルとは対照的である。電解質が、FECに加えて、またはFECおよびPC混合物に加えて、異なる融点を有する2~5種の環状カーボネートの混合物を含むこともまた有利であり得る。電解質溶媒が、LMPおよびRMP溶媒の混合物、ならびに(任意選択で)ADDおよび溶媒を含むことがさらに有利であり得る。一部の設計では、LMP溶媒または溶媒混合物がエステルを含むこともまた有利であり得る。一部の設計では、ADD溶媒が、少量(例えば、約0.1~約5vol.%)の炭酸ビニレン(VC)または炭酸ビニルエチレン(VEC)環状カーボネートを含むことが有利であり得る(一部の設計では、VCの使用が好ましいことがある)。電解質混合物中のすべての環状溶媒の総量が、約10~約60vol.%の範囲であることがさらに有利であり得る。電解質混合物中の環状カーボネートの総量が、約10~約50vol.%の範囲であることがさらに有利であり得る。より高量の環状溶媒は、一般に、高いサイクル動作Cレートにおける容量維持率または低温における性能、および一部の場合にはさらにサイクル安定性に有害である。
【0058】
一部の設計では、電解質中の小分率の炭酸フルオロエチレン(FEC)共溶媒(例えば、電解質中のすべての溶媒の分率として約1~約30vol.%の範囲)、いくらかの量の非FEC環状カーボネート(例えば、電解質中のすべての溶媒の分率として、約5~約30vol.%の範囲)およびいくらかの量のLMP共溶媒(例えば、電解質中のすべての溶媒の体積分率として、約20~約70vol.%の範囲)を利用する一方、約0.8M~約2.0Mの範囲の電解質中総塩濃度を有することが有利であり得る。一部の設計では、電解質組成物が、少なくとも1種の直鎖状溶媒(例えば、LMPもしくはRMP溶媒または溶媒混合物の成分として)をさらに含むことが有利であり得る。一部の設計では、電解質組成物が、少なくとも1種の直鎖状カーボネート(例えば、RMP溶媒混合物の成分として)を含むことが有利であり得る。一部の設計では、電解質が2種以上の直鎖状カーボネートの混合物を含むことが有利であり得る。一部の設計では、直鎖状カーボネートの分率が、約5vol.%~約60vol.%(電解質中のすべての溶媒の体積分率として)を構成することが有利であり得る。一部の設計では、すべての直鎖状カーボネートの総分率が、約10vol.%~約30vol.%(電解質中のすべての溶媒の体積分率として)を構成することがさらにより有利であり得る。一部の設計では、電解質中の直鎖状カーボネートのうちの少なくとも1種または唯一の直鎖状カーボネートまたはすべての直鎖状カーボネートの混合物が約-10℃~約-60℃の融点を示すことが好ましいことがある。一例では、直鎖状カーボネート分子のサイズは、セル性能において大きな役割を果たし得る。例えば、電解質中のより短鎖の直鎖状カーボネートは、より良好なレート性能、一部の場合にはより良好なサイクル安定性につながり得る。しかしながら、短すぎる直鎖状カーボネートはまた、サイクル安定性の低下をもたらし得る。一部の設計では、電解質中の直鎖状カーボネートの原子の平均数は、好ましくは、カーボネート分子当たり約12~約26個の範囲であり得る。一部の設計では、電解質が、直鎖状カーボネートまたは直鎖状カーボネート混合物の成分として炭酸ジエチル(DEC)を含むことが有利であり得る。DEC含有電解質は、より良好なレート性能(例えば、より高いレートにおけるより良好な容量維持率)を示し得る。さらに、DECを含む電解質は、特定の用途において高いサイクル安定性を提示し得る。
【0059】
図6は、粉末ベースの高容量Si含有ナノ複合体アノードおよび粉末ベースのインターカレート型カソード(この例では、酸化コバルトリチウム、LiCO)を含み、2.5~4.4Vの電圧範囲でサイクル動作させたセルの性能に対する電解質組成物例の影響を例示している。サイクル安定性は、45℃において「C/2」レートでサイクル動作させたいくつかのセル例で試験した。各電解質組成物について2~3つのほぼ同一のセルを構築し、コンシステンシーについて試験した。電解質B(
図6の上側の曲線)は、1M LiPF
6、0.2M LiFSI、PC 20vol.%、FEC 10vol.%、直鎖状カーボネート(この例では、DEC)20vol.%、VC 2vol.%および48vol.%の直鎖状エステル(MB)を含む。電解質A(
図6の下側の曲線)は、1.2M LiPF
6を含み、LiFSIを含まず、FEC 20vol.%および同じ直鎖状エステル(MB)を含み、サイクル安定性の低下を示す。
【0060】
一部の設計では、好適な電解質組成物中のLMP溶媒が、最適な性能のために特定の分子サイズを示すことが有利であり得る。LMP分子の最適なサイズまたはサイズ分布は、電極特徴(例えば、厚さ、結合剤の量、密度、アノードおよびカソード組成物、ならびに容量など)、利用される電解質溶媒混合物、およびセルのサイクル動作条件(温度、電圧範囲など)に依存し得る。一例では、平均LMP分子(例えば、2種以上のLMP溶媒が利用される場合、LMP溶媒混合物中、または単一溶媒LMP組成物中)は、好ましくは、溶媒分子当たり約9個の原子~約30個の原子を含み得る。一部の設計では、平均LMP分子(例えば、LMP溶媒混合物中または単一溶媒LMP組成物中)が、その分子構造中に約3~約10個の炭素原子を含むことが有利であり得る。より小さなLMP分子(特により小さな直鎖状分子)は、セルサイクル安定性の低下につながり得る。より大きなLMP分子(特により大きな直鎖状分子)は、セルのレート性能の望ましくない低下につながり得る。直鎖状エステルがLMP溶媒の成分として使用される場合、そのようなエステルが、平均で、分子当たり約3~約9個の炭素原子を含むことが有利であり得る。LMP溶媒が側枝(さらなる官能基)を有するエステルを含む場合、そのようなエステルが、平均で、分子当たり約4~約12個の炭素原子を含むことが有利であり得る。一部の設計では、分子当たり(平均で)4~7個の炭素原子を含む平均エステル分子(LMP共溶媒中)により、セルにおいて最も安定な性能がもたらされ得る。一部の設計では、分子当たり(平均で)5~6個の炭素原子(一部の設計では、分子当たり5個の炭素原子)を含む平均エステル分子(LMP共溶媒中)により、セルにおいて最も安定な性能がもたらされ得る。一部の設計では、約50vol.%以上のLMP溶媒が、分子当たり(平均で)5個の原子を含むエステル分子を含むことが有利であり得る。
【0061】
図7Aから7Cは、粉末ベースの高容量Si含有ナノ複合体アノードおよび粉末ベースのインターカレート型カソード(この例では、酸化コバルトリチウム、LCO)を含み、2.5~4.4Vの電圧範囲でサイクル動作させたセルの性能に対する他の電解質組成物例の影響を例示している。サイクル安定性は、室温および45℃において「C/2」レートでサイクル動作させたいくつかのセル例で試験した。2~3つのほぼ同一のセルを構築し、コンシステンシーについて試験した。これらの例では、すべての電解質は、1.2M LiPF
6、FEC 20vol.%、20vol.%の直鎖状カーボネート、ADD溶媒として環状カーボネート(この例ではVC)2vol.%、および直鎖状エステル48vol.%を含む。異なる分子サイズ(および分子量)のエステルを、各図に示される通り、各電解質について選択した。この例示的な例において、エステルのうちの1種類のみ(エステルの混合物ではなく)を、各電解質中で使用した。この一連の電解質を含むセルのレート性能は、エステルの炭素鎖長に強く相関した。エステル中最短の炭素鎖長を有する電解質をベースとするセルは、より高いレートにおいて最良の容量維持率を示し、一方、エステル中最長の炭素鎖長を有する電解質を含むセルは、最低の容量維持率を示す。この例では、分子中に6個以上の炭素原子を含むエステルは、性能の望ましくない低下を示した。分子当たり5~6個の炭素原子を含むエステルを含む電解質は、室温において最高のサイクル安定性を示した。分子当たり3個の炭素原子を含むエステルを含む電解質は、室温および45℃において非常に速い分解を示した。分子当たり8~9個の炭素原子を含むエステルを含む電解質は、室温において顕著に速い分解および45℃においてはるかに速い分解を示した。
【0062】
好適な電解質混合物中で共溶媒としてエステルが使用される(例えば、高容量ナノ構造化アノードおよび高電圧インターカレートカソードを含む一部のセルのための)一部の設計では、電解質溶媒中のエステルの総分率が、電解質中のすべての溶媒の総vol.分率として、約20vol.%~約70vol.%(直鎖状エステルのみを含む一部の設計では、約30vol.%~約60vol.%)の範囲であることが有利であり得る。より低いおよびより高いエステル分率は、特に高温において、サイクル安定性の顕著な低下をもたらし得る。
【0063】
一部の設計では、電解質溶媒混合物中で、同じ化学式であるが異なる分子構造の2種、3種またはそれよりも多いエステルの組合せを使用することが(改善されたセル性能のために)有利であり得る。例えば、酪酸メチル(C5H10O2)をプロピオン酸エチル(C5H10O2)もしくは酢酸プロピル(C5H10O2)もしくはギ酸ブチル(C5H10O2)と組み合わせる、またはそれらの種々の混合物(もしくは組合せ)を使用する。または、別の例では、以下のエステル:吉草酸メチル(C6H12O2)、酪酸エチル(C6H12O2)、プロピオン酸プロピル(C6H12O2)、酢酸ブチル(C6H12O2)およびギ酸アミル(C6H12O2)のうちの2種、3種またはそれよりも多くの組合せを使用する。または、なお別の例では、以下のエステル:カプロン酸メチル(C7H14O2)、吉草酸エチル(C7H14O2)、酪酸プロピル(C7H14O2)、プロピオン酸ブチル(C7H14O2)、酢酸アミル(C7H14O2)、ギ酸ヘキシル(C7H14O2)のうちの2種、3種またはそれよりも多くの組合せを使用する。
【0064】
一部の設計では、電解質中で、例えば、炭素原子の数の差が3個以下である類似の化学式を有する2種、3種またはそれよりも多いエステルの組合せ(および一部の設計では、エーテルおよび無水物の組合せ)を使用すること(例えば、C5H10O2、C6H12O2およびC7H14O2の化学式を有するエステルの組合せを使用すること)が、(改善されたセル性能、例えば、改善されたレートまたは改善された安定性などのために)有利であり得る。一部の設計では、エステル(またはエーテルまたは無水物)のそのような組合せが、個々の溶媒(例えば、個々のエステルまたは個々のエーテルまたは個々の無水物)の各々よりも低い融点を示すことが有利であり得る。
【0065】
一部の設計では、電解質中で、官能基を有するおよび有さないエステルの組合せ(および一部の設計では、エーテルの組合せまたは無水物の組合せ)を使用することが(改善されたセル性能のために)有利であり得る。一部の設計では、そのようなエステル(またはエーテル)の直鎖状(または環状)部分が同じであるまたは類似しており、そのため、(例えば、異なる)官能基の存在によりこれらのエステル(またはエーテル)が区別されることが有利であり得る。
【0066】
一部の設計では、直鎖状および環状エステルの組合せ(および一部の設計では、エステルおよびエーテルの組合せ)が使用される場合、ならびにそれらが官能基を有する場合、エステルまたはエーテルの少なくとも一部が官能化されないままであることが(改善されたセル性能のために)有利であり得る。
【0067】
一部の設計では、電解質中で直鎖状および環状エステルの組合せを使用することが(改善されたセル性能のために)有利であり得る。
【0068】
一部の設計では、直鎖状および環状エステルの組合せが使用される場合、ならびにそれらのうちの少なくとも一部が官能基を有する場合、直鎖状および環状エステルの少なくとも一部が同じ官能基を有することが(改善されたセル性能のために)有利であり得る。
【0069】
一部の設計(種々のエステルの混合物が使用される場合)では、電解質混合物中の直鎖状エステルが同じ化学テール(同じR基)を示すか、または同じサブクラスに属するかのいずれかであることが有利であり得る。
【0070】
一部の設計では、電解質中でエーテルおよびエステルの組合せを使用することが(改善されたセル性能のために)有利であり得る。一部の設計では、エステル分子中の炭素原子の数が、エーテル分子中の炭素原子の数を5個よりも多く超えない(例えば、エーテル分子中に2または3個の炭素原子を有し、エステル分子中に5または6または7個の炭素原子を有する)ことが有利であり得る。
【0071】
一部の設計では、電解質中でエステル、エーテルおよび無水物(例えば、官能基を有するおよびまたは有さない)の組合せを使用することが(改善されたセル性能のために)有利であり得る。
【0072】
一部の設計では、エステル、エーテルおよび無水物の組合せが使用される場合、そのようなエステル(またはエーテルまたは無水物)の直鎖状(または環状)部分が同じであるまたは類似しており、そのため、(例えば、異なる)官能基の存在によりこれらのエステル(またはエーテルまたは無水物)が区別されることが有利であり得る。
【0073】
一部の設計では、電解質中で直鎖状および環状無水物の組合せを使用することが(改善されたセル性能のために)有利であり得る。
【0074】
一部の設計(例えば、高電圧カソードを含むセルを用いる)では、RMP溶媒の成分としてスルホンを使用することが(改善されたセル性能のために)有利であり得る。一部の設計では、スルホンが、電解質配合物中のすべてのRMP溶媒の約17vol.%~約97vol.%を含むことが有利であり得る。一部の設計では、スルホンが、環状および直鎖状(または、より一般に、非環状)スルホンの両方を含むことが有利であり得る。
【0075】
上記の例示的なナノ複合体粒子(例えば、アノードまたはカソード粒子)は、一般に、任意の形状(例えば、近球形、円柱状、プレート状、ランダムな形状を有するなど)および任意のサイズのものであり得る。粒子の最大サイズは、レート性能要件、部分的に充填された粒子へのイオン拡散率、および/または他のパラメーターに依存し得る。大部分の用途では、固体電解質相間から(例えば、複合体粒子の表面から)複合体の内部コアまでの平均拡散距離に関わらず、粒子は、最適な性能のために10ミクロンよりも小さいことがある。
【0076】
この開示の一部の態様は、従来のインターカレート型電極にも適用可能であり得、特に、中程度および高容量負荷(例えば、3mAh/cm2超)を有する電極について、改善されたレート性能または改善された安定性の利益をもたらし得る。
【0077】
一例では、ナノ複合体粒子の「サイズ」は、種々の方法のうちの任意のもので決定され得る。一例では、個々の粒子のサイズとは、粒子が球形または近球形である場合、粒子の直径を指し得る。別の例では、個々の粒子のサイズとは、粒子が非球形(例えば、楕円体、長円など)の場合、粒子の等体積球(例えば、粒子の代表的な同体積サイズの球)の直径を指し得る。等体積球の手法が使用される場合、粒子の総細孔体積は、粒子の等体積球において維持される。なお別の例では、不規則形状の粒子(例えば、長円粒子)について、個々の粒子のサイズとは、粒子の最小寸法(例えば、幅)または粒子の長さ(例えば、長さ)を指し得る。したがって、本開示の実施形態に関して記載される様々な粒子サイズ範囲とは、それぞれの粒子の形状および/または他の特徴に基づいて、上述の方法論のいずれかに従って決定されたサイズを指し得る。
【0078】
この記載は、すべての当業者が、本発明の実施形態を作製または使用することを可能にするために提供される。しかしながら、当業者にはこれらの実施形態への様々な修正が容易に明らかとなるため、本発明は、本明細書に開示される特定の配合物、方法ステップおよび材料に限定されないことを認識されたい。つまり、本明細書に定義される一般原理は、本発明の要旨または範囲から逸脱することなく他の実施形態に適用され得る。