(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085489
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】HER2阻害薬としての[1,3]ジアジノ[5,4-d]ピリミジン
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20230613BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20230613BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230613BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C07D487/04 148
C07D519/00 311
A61K31/519
A61P35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023062141
(22)【出願日】2023-04-06
(62)【分割の表示】P 2022563041の分割
【原出願日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】20171221.3
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルディング,ビルギット
(72)【発明者】
【氏名】ブーセ,ディートリヒ
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルハルト,ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】フックス,ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】ノイミュラー,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ペトロンスキ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】シャルン,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】トロイ,マティアス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】HER2及びその変異体の阻害薬としてのピリミジン類及び誘導体を提供する。
【解決手段】式(I)で示される、新規な[1,3]ジアジノ[5,4-d]ピリミジン類及び誘導体を提供する。(式中、R
1は、水素、-CH
3、-CCH、-OCH
3及びハロゲンからなる群より選択され、R
2は、水素又はハロゲンであり、R
3及びR
4は、特定の置換基である)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化18】
(式中、
R
1は、水素、-CH
3、-CCH、-OCH
3及びハロゲンからなる群より選択され、
R
2は、水素又はハロゲンであり;
R
3は、式(i.1)、(i.2)、(i.3)及び(i.4):
【表20】
からなる群より選択され;
R
4は、R
4.a及びR
4.b:
【化19】
(式中、
Qは、1つのN原子を含む4~6員のヘテロシクリルを表し、ここで、前記環の1つの炭素原子は、任意選択的にメチルにより置換されており;
Zは、1つのN原子を含む4~6員のヘテロシクリルを表し、ここで、前記環の1つの炭素原子は、任意選択的にメチルにより置換されている)
からなる群より選択され;
R
5は、-H又はCH
3であり;
R
1及びR
2の少なくとも1つは、水素ではない)
の化合物、又はその塩。
【請求項2】
R1が、-CH3、-CCH、-OCH3及びハロゲンからなる群より選択される、請求項1記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
R1が-CH3である、請求項1記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
R1が-CCHである、請求項1記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
R1が-OCH3である、請求項1記載の化合物又はその塩。
【請求項6】
R1が塩素である、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項7】
R1がフッ素である、請求項1記載の化合物又はその塩。
【請求項8】
R2が水素である、請求項1~7の1項以上に記載の化合物又はその塩。
【請求項9】
R2が塩素である、請求項1~7の1項以上に記載の化合物又はその塩。
【請求項10】
R
4が、R
4.a及びR
4.bからなる群より選択され、
R
4.aは、R
4.a.1:
【化20】
(式中、
R
6は、-H又はCH
3であり、
nは、1又は2であり;
mは、1又は2である)
であり、
R
4.bは、R
4.b.1:
【化21】
(式中、
pは、1又は2であり;
qは、1又は2である)
である、請求項1~9の1項以上に記載の化合物又はその塩。
【請求項11】
例I-01~I-19:
【表21】
からなる群より選択される、請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【請求項12】
治療的に有効な量の、少なくとも1つの請求項1~11のいずれか1項記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩、及び1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項1~11の1項以上に記載の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【請求項14】
脳腫瘍、乳癌、胆道癌、膀胱癌、子宮頸癌、大腸癌、子宮内膜癌、皮膚癌、食道腫瘍、頭頸部腫瘍、胃腸癌、胆嚢腫瘍、腎癌、肝臓癌、肺癌または前立腺癌に罹患している患者を処置するための、請求項1~11の1項以上に記載の化合物の使用。
【請求項15】
式(I)の化合物に加えて、細胞増殖抑制活性物質及び細胞毒性活性物質からなる群より選択される薬学的に活性な化合物を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、式(I):
【化1】
(式中、基R
1、R
2、R
3及びR
4は、特許請求の範囲及び明細書において与えられる意味を有する)
の新規な[1,3]ジアジノ[5,4-d]ピリミジン及び誘導体、HER2及びその変異体の阻害薬としてのそれらの使用、そのような化合物を含む医薬組成物、及び医薬としての、特に、腫瘍性疾患の処置及び/又は予防のための薬物としてのそれらの使用に関する。
【0002】
発明の背景
ERBB膜貫通受容体チロシンキナーゼ(RTK)のファミリーは、EGFR(ERBB1)、HER2(Neu、ERBB2)、HER3(ERBB3)及びHER4(ERBB4)の4つのメンバーからなり、発生の間に必須の機能を果たす(Citri et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 2006, 7(7), 505-516; Hynes et al., Curr. Opin. Cell Biol., 2009, 21(2), 177-184; Wang, Z., Methods Mol. Biol., 2017, 1652, 3-35.)。ERBBシグナル伝達は、EGFR、HER3又はHER4の細胞外ドメインが、その各々のリガンドと結合し、次いでERBBファミリーメンバーのホモ二量体又はヘテロ二量体が形成されると、開始される。リガンドが同定されていないHER2は、他のERBBメンバーにとって好ましい二量体化のパートナーである。リガンド-受容体活性複合体が形成されると、EGFR、HER2、HER3又はHER4の細胞内チロシンキナーゼドメインは、自己リン酸化又はトランスリン酸化によって活性化され、次いでマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ及び/又はホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)経路を最も顕著に関与させるシグナル伝達カスケードを誘発する(Citri et al., Nat. Rev. Mol. Cell. Biol., 2006, 7(7), 505-516; Hynes et al., Curr. Opin. Cell Biol., 2009, 21(2), 177-184; Wang, Z., Methods Mol. Biol., 2017, 1652, 3-35)。
【0003】
異常なERBBシグナル伝達は、癌又は神経疾患を含むいくつかの病態生理学的状態に関与している。癌において、ERBBシグナル伝達は、RTKを構造的に活性化(二量体化を促進するか、又は平衡をキナーゼの活性型コンフォーマーに移動させることによる)する変異を通じて、及び/又はRTKの増幅及びその結果としての過剰発現を通じて、過剰に活性化される。どちらの腫瘍形成の機序も、ERBBシグナル伝達の正味の出力を増加させ、それによって、細胞の生存、細胞の成長及び増殖を促進する(Arteaga et al., Cancer Cell, 2014, 25(3), 282-303)。
【0004】
異常なHER2シグナル伝達は、広範囲の様々なヒト悪性腫瘍において観察される。発癌性の変異は、タンパク質の細胞外領域、(近接)膜領域及び細胞内領域について説明される。まとめると、これらの変異は、HER2を構造的に活性化させ、癌のイニシエーション、腫瘍の維持及び成長を促進する(Connell et al., ESMO Open, 2017, 2(5), e000279)。同様に、HER2の過剰発現は、HER2シグナル伝達を増加させ、乳癌、胃癌又は肺癌を含む様々な適応症における腫瘍性形質転換及び腫瘍維持のベースとなる。
【0005】
したがって、HER2の発癌性シグナル伝達に対する干渉は、腫瘍成長の阻害をもたらす。標的療法は、HER2指向性抗体(トラスツズマブ及びペルツズマブを含む)、HER2指向性抗体-薬物複合体(トラスツズマブ-DM1(T-DM1、アド-トラスツズマブ エムタンシン(ado-trastuzumab emtansine))及びHER2キナーゼドメインを阻害する小分子(アファチニブ、ネラチニブ、ラパチニブ)を含む。
【0006】
全体として、HER2の発癌性変異又はHER2野生型の過剰発現(例えば、遺伝子増幅による)によって引き起こされる腫瘍は、HER2特異的チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)から利益を得る可能性がある。まとめると、HER2の改変は、最大で全てのヒトの癌の6~7%に影響を及ぼしており、EGFR野生型を回避する(sparing)TKI(チロシンキナーゼ阻害薬)が、有効な治療選択肢として現れる可能性がある。
【0007】
ツカチニブなどの、EGFR野生型との比較において選択的な(selective over EGFR wild type)HER2野生型阻害薬があるにもかかわらず、これらの阻害薬は、エクソン20変異を有するHER2に有効性を有さない。他の選択的野生型HER2阻害薬は、先行技術文献である、国際公開公報第2003/049740号、国際公開公報第2007/059257号、国際公開公報第2005/044302号及び国際公開公報第2019/042409号に開示されている。
【0008】
HER2エクソン20変異は、増強されたキナーゼ活性をもたらすHER2機能獲得変異のサブセットを構成する(Wang et al. Cancer Cell, 2006, 10(1), 25-38)。この増強されたHER2キナーゼ活性は、下流のシグナル伝達カスケードに供給され、変異細胞の成長、増殖及び生存を促進することによって、腫瘍性形質転換を刺激する。
【0009】
遺伝子操作されたマウスモデルにおける研究は、NSCLCにおいて最もよく見られるHER2エクソン20変異、4アミノ酸YVMAの重複(p.A775_G776insYVMA)が、発癌性の成長を引き起こすのに必要かつ十分であることを実証している(Perera et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2009, 106(2), 474-479)。HER2-YVMA発現の解消は、腫瘍の縮小と関連しており、このことは、腫瘍の維持にこのHER2の発癌性変異体が必要であることを示唆している(Perera et al. 2009)。さらに、この研究は、マウスモデルにおいて、汎ERBB遮断薬アファチニブがインビボで有効であり、HER2-YVMAの発癌性シグナル伝達を妨げることができることを実証した(Perera et al. 2009)。
【0010】
NSCLCにおけるHER2の発癌性変異は、主にHER2のチロシンキナーゼドメインに影響を及ぼし、ERBB2遺伝子のエクソン20にクラスターを形成する(Stephens et al., Nature, 2004, 431(7008), 525-526)。肺癌患者の2~4%は、HER2エクソン20における活性化変異を有すると推定される。臨床的に承認されたERBBを標的とするチロシンキナーゼ阻害薬は、EGFR野生型がもたらす用量制限毒性により制限されるため、これらの患者には有効でない。HER2 エクソン20変異NSCLC患者に対してアファチニブ及び他の汎ERBB遮断薬が示す有効性は限定的であった。これは主に、有効用量に達することに制限があるためであった。特に、EGFR野生型がもたらす毒性が、有効な投与量を制限する。
【0011】
アリチニブ、イブルチニブ、ネラチニブ、ポジオチニブ及びピロチニブは、変異型HER2 エクソン20の汎ERBB阻害薬として知られている。変異型HER2エクソン20のさらなる阻害薬は、先行技術文献の、国際公開公報第2015/175632号、国際公開公報第2015/195228号、国際公開公報第2016/183278号及び国際公開公報第2019/046775号に開示されている。
【0012】
EGFR野生型がもたらす用量制限毒性という欠点を克服するための、EGFR野生型を回避しつつ、HER2 エクソン20変異蛋白を選択的に標的とする化合物に対する、未だ満たされていない医療上の高いニーズが存在する。
【0013】
本発明の化合物が、EGFR野生型を回避しつつ、野生型および変異型HER2 エクソン20のチロシンキナーゼドメインに、オルソステリックな、かつ共有結合的な形で結合し、野生型HER2及びエクソン20に変異を有する変異型HER2の選択的阻害薬として作用することが見出された。
【0014】
発明の概要
本発明の目的は、EGFR野生型との比較において選択的である、変異型HER2 エクソン20の新たな阻害薬を提供することである。本発明の化合物は、HER2 エクソン20の選択的阻害薬として作用し、従来技術の化合物と比較して高い、EGFR野生型との比較においての選択性に加えて、野生型EGFR回避の改善された有効性プロファイルを示す。さらに、本発明のいくつかの化合物は、良好な代謝安定性など、改善された薬物動態学的及び薬理学的プロファイルを示す。
【0015】
本発明の化合物は、過剰又は異常な細胞増殖を特徴とする疾患及び/又は病態の予防及び/又は治療、特に癌の治療及び/又は予防に有用である。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、式(I):
【化2】
(式中、
R
1は、水素、-CH
3、-CCH、-OCH
3及びハロゲンからなる群より選択され;
R
2は、水素又はハロゲンであり;
R
3は、式(i.1)、(i.2)、(i.3)、(i.4):
【表1】
からなる群より選択され;
R
4は、R
4.a及びR
4.b:
【化3】
(式中、
Qは、1つのN原子を含む4~6員のヘテロシクリルを表し、ここで、前記環の1つの炭素原子は、任意選択的にメチルにより置換されており;
Zは、1つのN原子を含む4~6員のヘテロシクリルを表し、ここで、前記環の1つの炭素原子は、任意選択的にメチルにより置換されている)
からなる群より選択され;
R
5は、-H又は-CH
3であり;
R
1及びR
2の少なくとも1つは、水素ではない)
の新規な[1,3]ジアジノ[5,4-d]ピリミジン類及び誘導体に関する。
【0017】
好ましい実施態様
本発明の別の実施態様では、R1は、-CH3、-CCH、-OCH3及びハロゲンからなる群より選択される。
【0018】
本発明の別の実施態様では、R1は、-CH3、-CCH、-OCH3、塩素及びフッ素からなる群より選択される。
【0019】
本発明の別の実施態様では、R1は、-CH3である。
【0020】
本発明の別の実施態様では、R1は、-CCHである。
【0021】
本発明の別の実施態様では、R1は、-OCH3である。
【0022】
本発明の別の実施態様では、R1は、塩素である。
【0023】
本発明の別の実施態様では、R1は、フッ素である。
【0024】
本発明の別の実施態様では、R1は、水素である。
【0025】
本発明の別の実施態様では、R2は、水素、フッ素及び塩素からなる群より選択される。
【0026】
本発明の別の実施態様では、R2は、水素である。
【0027】
本発明の別の実施態様では、R2は、ハロゲンである。
【0028】
本発明の別の実施態様では、R2は、フッ素又は塩素である。
【0029】
本発明の別の実施態様では、R2は、フッ素である。
【0030】
本発明の別の実施態様では、R2は、塩素である。
【0031】
本発明の別の実施態様では、R
3は、式(i.1)、(i.2)、(i.3)及び(i.4):
【表2】
からなる群より選択される。
【0032】
本発明の別の実施態様では、R3は、式(i.1)又は(i.3)からなる群である。
【0033】
本発明の別の実施態様では、R3は、式(i.2)又は(i.4)からなる群である。
【0034】
本発明の別の実施態様では、R3は、式(i.1)又は(i.2)からなる群である。
【0035】
本発明の別の実施態様では、R3は、式(i.1)又は(i.4)からなる群である。
【0036】
本発明の別の実施態様では、R3は、式(i.2)又は(i.3)からなる群である。
【0037】
本発明の別の実施態様では、R3は、式(i.3)又は(i.4)からなる群である。
【0038】
本発明の別の実施態様では、R3は、式(i.1)の群である。
【0039】
本発明の別の実施態様では、R3は、式(i.2)の群である。
【0040】
本発明の別の実施態様では、R3は、式(i.3)の群である。
【0041】
本発明の別の実施態様では、R3は、式(i.4)の群である。
【0042】
本発明の別の実施態様では、R
4は、R
4.aであり、ここでR
4.aは、
【化4】
である。
【0043】
本発明の別の実施態様では、R4.aは、R
4.a.1であり、ここでR
4.a.1は、
【化5】
(式中、
R
6は、-H又は-CH
3であり、
nは、1又は2であり;
mは、1又は2である)
である。
【0044】
本発明の別の実施態様では、R
4は、R
4.bであり、ここでR
4.bは、
【化6】
である。
【0045】
本発明の別の実施態様では、R
4.bは、R
4.b.1であり、ここでR
4.b.1は、
【化7】
(式中、
pは1又は2であり;
qは1又は2である)
である。
【0046】
本発明の別の実施態様では、R5は、-Hである。
【0047】
本発明の別の実施態様では、R5は、-CH3である。
【0048】
本発明の別の実施態様では、R6は、-Hである。
【0049】
本発明の別の実施態様では、R6は、-CH3である。
【0050】
本発明の別の実施態様では、mは、1である。
【0051】
本発明の別の実施態様では、mは、2である。
【0052】
本発明の別の実施態様では、nは、1である。
【0053】
本発明の別の実施態様では、nは、2である。
【0054】
本発明の別の実施態様では、mが1であり、nが1であるか、又はmが2であり、nが2である。
【0055】
本発明の別の実施態様では、pは、1である。
【0056】
本発明の別の実施態様では、pは、2である。
【0057】
本発明の別の実施態様では、qは、1である。
【0058】
本発明の別の実施態様では、qは、2である。
【0059】
本発明の別の実施態様では、Qは、前記環の1つの炭素原子が任意選択的にメチルにより置換されている、1つのN原子を含む4~6員の飽和ヘテロシクリルを表す。
【0060】
本発明の別の実施態様では、Qは、前記環の1つの炭素原子が任意選択的にメチルにより置換されている、1つのN原子を含む4~6員の部分不飽和ヘテロシクリルを表す。
【0061】
本発明の別の実施態様では、Qは、アゼチジニルを表す。
【0062】
本発明の別の実施態様では、Qは、ピロリジニルを表す。
【0063】
本発明の別の実施態様では、Qは、ピペリジニルを表す。
【0064】
本発明の別の実施態様では、Qは、前記環の1つの炭素原子がメチルにより置換されているアゼチジニルを表す。
【0065】
本発明の別の実施態様では、Qは、前記環の1つの炭素原子がメチルにより置換されているピロリジニルを表す。
【0066】
本発明の別の実施態様では、Qは、前記環の炭素原子1つがメチルにより置換されているピペリジニルを表す。
【0067】
本発明の別の実施態様では、Zは、前記環の1つの炭素原子が任意選択的にメチルにより置換されている、1つのN原子を含む4~6員の飽和ヘテロシクリルを表す。
【0068】
本発明の別の実施態様では、Zは、前記環の1つの炭素原子が任意選択的にメチルにより置換されている、1つのN原子を含む4~6員の部分不飽和ヘテロシクリルを表す。
【0069】
本発明の別の実施態様では、Zは、アゼチジニルを表す。
【0070】
本発明の別の実施態様では、Zは、ピロリジニルを表す。
【0071】
本発明の別の実施態様では、Zは、ピペリジニルを表す。
【0072】
本発明の別の実施態様では、Zは、前記環の炭素原子1つが、メチルにより置換されているアゼチジニルを表す。
【0073】
本発明の別の実施態様では、Zは、前記環の炭素原子1つがメチルにより置換されているピロリジニルを表す。
【0074】
本発明の別の実施態様では、Zは、前記環の炭素原子1つがメチルにより置換されているピペリジニルを表す。
【0075】
本発明の別の実施態様では、Q及びZは、前記環の1つの炭素原子が、任意選択的にメチルにより置換されている、1つのN原子を含む4~6員の飽和ヘテロシクリルを表す。
【0076】
本発明の別の実施態様では、Q及びZは、前記環の1つの炭素原子が、任意選択的にメチルにより置換されている、1つのN原子を含む4~6員の部分不飽和ヘテロシクリルを表す。
【0077】
R1、R2、R3、R4、R4.a、R4.a.1、R4.b、R4.b.1、R5、R6、m、n、p、q、Q及びZの定義のいずれか及びそれぞれを、互いに組み合わせ得る。
【0078】
本発明の好ましい実施態様は、例I-01~I-19:
【表3】
からなる群より選択される、上記の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩である。
【0079】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-01~I-19からなる群より選択される、上記の式(I)の化合物である。
【0080】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-01~I-19からなる群より選択される、上記の式(I)の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0081】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-01~I-13からなる群より選択される、上記の式(I)の化合物である。
【0082】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-01~I-13からなる群より選択される、上記の式(I)の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0083】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-14~I-19からなる群より選択される、上記の式(I)の化合物である。
【0084】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-14~I-19からなる群より選択される、上記の式(I)の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0085】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-01の化合物である。
【0086】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-02の化合物である。
【0087】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-03の化合物である。
【0088】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-04の化合物である。
【0089】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-05の化合物である。
【0090】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-06の化合物である。
【0091】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-07の化合物である。
【0092】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-08の化合物である。
【0093】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-09の化合物である。
【0094】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-10の化合物である。
【0095】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-11の化合物である。
【0096】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-12の化合物である。
【0097】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-13の化合物である。
【0098】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-14の化合物である。
【0099】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-15の化合物である。
【0100】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-16の化合物である。
【0101】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-17の化合物である。
【0102】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-18の化合物である。
【0103】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-19の化合物である。
【0104】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-01の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0105】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-02の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0106】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-03の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0107】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-04の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0108】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-05の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0109】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-06の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0110】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-07の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0111】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-08の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0112】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-09の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0113】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-10の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0114】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-11の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0115】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-12の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0116】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-13の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0117】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-14の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0118】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-15の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0119】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-16の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0120】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-17の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0121】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-18の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0122】
本発明のさらに好ましい実施態様は、例I-19の化合物の薬学的に許容され得る塩である。
【0123】
本発明の別の実施態様は、治療的に有効な量の、少なくとも1つの式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩、及び1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤を含む、医薬組成物である。
【0124】
本発明の別の実施態様は、医薬として使用するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩である。
【0125】
本発明の別の実施態様は、脳腫瘍、乳癌、胆道癌、膀胱癌、子宮頸癌、大腸癌、子宮内膜癌、皮膚癌、食道腫瘍、頭頸部腫瘍、胃腸癌、胆嚢腫瘍、腎臓癌、肝臓癌、肺癌又は前立腺癌を含む癌に罹患している患者を処置するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩の使用である。
【0126】
本発明の別の実施態様は、乳癌、膀胱癌、大腸癌、胃腸癌、食道癌又は肺癌に罹患している患者を処置するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩の使用である。
【0127】
本発明の別の実施態様は、肺の癌/腫瘍/癌腫:例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)(扁平上皮癌、紡錘細胞癌、腺癌、大細胞癌、明細胞癌、気管支肺胞上皮癌(bronchioalveolar))、小細胞肺癌(SCLC)(燕麦細胞癌、中間細胞癌、複合燕麦細胞癌)に罹患している患者を処置するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩の使用である。
【0128】
本発明の別の実施態様は、NSCLCに罹患している患者を処置するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩の使用である。
【0129】
本発明の別の実施態様は、式(I)の化合物に加えて、細胞増殖抑制活性物質及び細胞毒性活性物質からなる群より選択される薬学的に活性な化合物をさらに含む医薬組成物である。
【0130】
本発明はさらに、式(I)の化合物の水和物、溶媒和物、多形、代謝物及びそのプロドラッグに関する。
【0131】
別の実施態様では、本発明は、式(I)の化合物の薬学的に許容され得る塩に関する。
【0132】
別の態様では、本発明は、細胞内の野生型及び/又は変異型HER2を阻害する方法であって、前記細胞を式(I)の化合物と接触させることを含む方法に関する。別の実施態様では、本発明は、細胞内のエクソン20変異を有するHER2を阻害する方法であって、好ましくは、前記細胞を式(I)の化合物と接触させることを含む方法に関する。
【0133】
別の態様では、本発明は、細胞における野生型及び/又は変異型HER2のリン酸化を阻害する方法であって、前記細胞を式(I)の化合物と接触させることを含む方法に関する。別の実施態様では、本発明は、細胞内のHER2エクソン20変異体のリン酸化を阻害する方法であって、前記細胞を式(I)の化合物と接触させることを含む方法に関する。
【0134】
別の態様では、本発明は、野生型及び/又は変異型HER2の阻害が治療上の利益となる疾患及び/又は病態の治療及び/又は予防のための、式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)の使用に関する。別の実施態様では、本発明は、HER2 エクソン20変異タンパク質の阻害が治療上の利益となる疾患及び/又は病態の治療及び/又は予防のための、式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)の使用に関する。
【0135】
別の態様では、本発明は、治療的に有効な量の式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)を被験者に投与することを含む、それを必要とする被験体において、野生型及び/又は変異型HER2を阻害する方法に使用するための、式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)に関する。別の実施態様では、本発明は、治療的に有効な量の式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)を被験者に投与することを含む、それを必要とするヒト被験者において、HER2エクソン20変異体を阻害する方法に使用するための、式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)に関する。
【0136】
別の態様では、本発明は、癌の治療及び/又は予防のための、式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)に関する。別の実施態様では、本発明は、癌がHER2過剰発現及び/又はHER2増幅を伴う、癌の治療及び/又は予防のための、式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)に関する。別の実施態様では、本発明は、癌がHER2エクソン20変異癌である、癌の治療及び/又は予防のための、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩に関する。別の実施態様では、本発明は、前記HER2過剰発現、HER2増幅及び/又はHER2エクソン20変異癌が、脳腫瘍、乳癌、胆道癌、膀胱癌、子宮頸癌、大腸癌、子宮内膜癌、皮膚癌、食道腫瘍、頭頸部腫瘍、胃腸癌、胆嚢腫瘍、腎臓癌、肝臓癌、肺癌及び前立腺癌から選択される、癌の治療及び/又は予防のための、式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)に関する。
【0137】
別の態様では、本発明は、治療的に有効な量の式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)をヒトに投与することを含む、上記疾患及び病態を治療及び/又は予防する方法に関する。
【0138】
別の態様では、本発明は、上記疾患及び病態の治療及び/又は予防に使用するための、式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)に関する。
【0139】
別の態様では、本発明は、上記疾患及び病態の治療及び/又は予防のための医薬の調製のための、式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)の使用に関する。
【0140】
さらに、以下の癌、腫瘍及びその他の増殖性疾患は、これらに限定されることなく、本発明の化合物で処置することができる:
頭頸部の癌/腫瘍/癌腫:例えば、鼻腔、副鼻腔、鼻咽頭、口腔(口唇、歯肉、歯槽堤、臼後三角、口腔底、舌、硬口蓋、頬粘膜を含む)、中咽頭(舌根、扁桃、扁桃柱、軟口蓋、扁桃窩、咽頭壁を含む)、中耳、喉頭(声門上、声門、声門下、声帯を含む)、下咽頭、唾液腺(小唾液腺を含む)の腫瘍/癌腫/癌;
肺の癌/腫瘍/癌腫:例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)(扁平上皮癌、紡錘細胞癌、腺癌、大細胞癌、明細胞癌、気管支肺胞上皮癌(bronchioalveolar))、小細胞肺癌(SCLC)(燕麦細胞癌、中間細胞癌、複合燕麦細胞癌);
縦隔の新生物(neoplasms):例えば、神経原性腫瘍(神経線維腫、神経鞘腫、悪性シュワン腫、神経肉腫、神経節芽細胞腫、神経節細胞腫、神経芽細胞腫、褐色細胞腫、傍神経節腫を含む)、胚細胞腫瘍(精上皮腫、奇形腫、非精上皮腫を含む)、胸腺腫瘍(胸腺腫、胸腺脂肪腫、胸腺癌、胸腺カルチノイドを含む)、間葉性腫瘍(線維腫、線維肉腫、脂肪腫、脂肪肉腫、粘液腫、中皮腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、黄色肉芽腫、間葉腫、血管腫、血管内皮腫、血管周皮腫、リンパ管腫、リンパ管周皮腫、リンパ管筋腫を含む);
消化管(GI)の癌/腫瘍/癌腫:例えば、食道、胃(胃癌)、膵臓、肝臓及び胆道系(肝細胞癌(HCC)、例えば小児HCC、線維層板状HCC、混合型HCC、紡錘細胞HCC、明細胞HCC、巨細胞HCC、癌肉腫HCC、硬化性HCC;肝芽腫;胆管癌;胆管細胞癌;肝嚢胞腺癌;血管肉腫、血管内皮腫、平滑筋肉腫、悪性シュワン腫、線維肉腫、クラツキン腫瘍を含む)、胆嚢、肝外胆管、小腸(十二指腸、空腸、回腸を含む)、大腸(盲腸、結腸、直腸、肛門;結腸直腸癌、消化管間質腫瘍(GIST))、泌尿生殖器系(腎臓、例えば腎盂、腎細胞癌(RCC)、腎芽腫(ウィルムス(Wilms')腫瘍)、副腎腫、グラヴィッツ(Grawitz)腫瘍;尿管;膀胱、(例えば尿膜管癌、尿路上皮癌);尿道、(例えば遠位、球膜様部、前立腺部);前立腺(アンドロゲン依存性、アンドロゲン非依存性、去勢抵抗性、ホルモン非依存性、ホルモン不応性)、陰茎の腫瘍/癌腫/癌;
精巣の癌/腫瘍/癌腫:例えば、精上皮腫、非精上皮腫;
婦人科癌/腫瘍/癌腫:例えば、卵巣、卵管、腹膜、子宮頸部、外陰部、膣、子宮体(子宮内膜、子宮底を含む)の癌/腫瘍/癌腫;
乳房の癌/腫瘍/癌腫:例えば、乳癌(mammary carcinoma)(浸潤性乳管、コロイド、浸潤性小葉(lobular invasive)、管状、腺嚢胞性、乳頭状、髄様、粘液性(mucinous)、ホルモン受容体陽性乳癌(エストロゲン受容体陽性乳癌、プロゲステロン受容体陽性乳癌)、HER2陽性乳癌、トリプルネガティブ乳癌、乳房のパジェット病(Paget's disease);
内分泌系の癌/腫瘍/癌腫:例えば、内分泌腺、甲状腺(甲状腺癌/腫瘍;乳頭状、濾胞性、未分化、髄様)、副甲状腺(副甲状腺癌/腫瘍)、副腎皮質(副腎皮質癌/腫瘍)、下垂体(プロラクチノーマ、頭蓋咽頭腫を含む)、胸腺、副腎、松果体、頸動脈小体、島細胞腫瘍、傍神経節、膵内分泌腫瘍(PET;非機能性(nonfluorineunctional)PET、PPオーマ、ガストリノーマ、インスリノーマ、VIPオーマ、グルカゴノーマ、ソマトスタチノーマ、GRFオーマ、ACTHオーマ)、カルチノイド腫瘍の腫瘍/癌腫/癌;
軟部組織の肉腫:例えば、線維肉腫、線維性組織球腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、カポジ肉腫、グロームス(glomus)腫瘍、血管周囲細胞腫、滑膜肉腫、腱鞘巨細胞腫、胸膜及び腹膜の単発性線維性腫瘍、びまん性中皮腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)、顆粒細胞腫、明細胞肉腫、メラニン細胞性神経鞘腫、神経叢肉腫(plexosarcoma)、神経芽細胞腫、神経節芽細胞腫、神経上皮腫、骨外性ユーイング(Ewing's)肉腫、傍神経節腫、骨外性軟骨肉腫、骨外性骨肉腫、間葉腫、胞巣状軟部肉腫、類上皮肉腫、腎外性横紋筋様腫瘍、線維形成性小細胞腫瘍;
骨の肉腫:例えば、骨髄腫、細網肉腫、軟骨肉腫(中枢、末梢、明細胞、間葉性軟骨肉腫を含む)、骨肉腫(傍骨性、骨膜性、表在性高悪性度、小細胞、放射線誘発性骨肉腫、パジェット(Paget's)肉腫を含む)、ユーイング腫瘍、悪性巨細胞腫瘍、アダマンチノーマ、(線維性)組織球腫、線維肉腫、脊索腫、小円形細胞肉腫、血管内皮腫、血管周皮腫、骨軟骨腫、類骨骨腫、骨芽腫、好酸球性肉芽腫、軟骨芽腫;
中皮腫:例えば、胸膜中皮腫、腹膜中皮腫;
皮膚の癌:例えば、基底細胞癌、扁平上皮癌、メルケル(Merkel's)細胞癌、黒色腫(皮膚性、表在拡大型、悪性黒子型、末端黒子型、結節型、眼球内黒色腫を含む)、日光角化症、眼瞼癌;
中枢神経系及び脳の新生物:例えば、星状細胞腫(大脳、小脳、びまん性、線維性、未分化、毛様細胞性、原形質性、大円形細胞性(gemistocytary))、膠芽腫、神経膠腫、乏突起膠腫、乏突起星状細胞腫、上衣腫、上衣芽腫、脈絡叢腫瘍、髄芽腫、髄膜腫、シュワン腫、血管芽腫、血管腫、血管周皮腫、神経腫、神経節腫、神経芽腫、網膜芽腫、神経鞘腫(例えば聴神経)、脊髄軸腫瘍;
リンパ腫及び白血病:例えば、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)(小リンパ球性リンパ腫(SLL)、リンパ形質細胞様リンパ腫(LPL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、バーキットリンパ腫(BL)、T細胞非ホジキンリンパ腫(未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)を含む)、リンパ芽球性T細胞リンパ腫(T-LBL)、成人T細胞リンパ腫、リンパ芽球性B細胞リンパ腫(B-LBL)、免疫細胞腫、慢性B細胞リンパ性白血病(BchlorineL)、慢性T細胞リンパ性白血病(TchlorineL)、B細胞小リンパ球性リンパ腫(B-SLL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTLC)、原発性中枢神経系リンパ腫(PCNSL)、免疫芽腫、ホジキン病(HD)(結節性リンパ球優位型HD(NLPHD)、結節性硬化型HD(NSHD)、混合細胞型HD(MCHD)、リンパ球豊富型古典的HD、リンパ球減少型HD(LDHD)を含む)、大型顆粒リンパ球白血病(LGL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性/骨髄様白血病(AML)、急性リンパ性/リンパ芽球性白血病(ALL)、急性前骨髄球性白血病(APL)、慢性リンパ性/リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、毛状細胞性白血病、慢性骨髄性/骨髄様白血病(CML)、骨髄腫、形質細胞腫、多発性骨髄腫(MM)、形質細胞腫、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML);
原発部位不明の癌(CUP)。
【0141】
上記のすべての癌/腫瘍/癌腫(その体内の特定の位置/起源により特徴付けられる)は、原発腫瘍及びそれらに由来する転移腫瘍の両方を含むことが意図される。
【0142】
上記のすべての癌/腫瘍/癌腫は、その病理組織学的分類によりさらに区別され得る:
上皮性癌、例えば、扁平上皮癌(SCC)(上皮内癌、表在浸潤性、疣状癌、偽肉腫、未分化、移行上皮、リンパ上皮)、腺癌(AC)(高分化型、粘液性、乳頭状、多形巨細胞、導管、小細胞、印環細胞、紡錘細胞、明細胞、燕麦細胞、コロイド、腺扁平上皮、粘表皮、腺様嚢胞)、ムチン性嚢胞腺癌、腺房細胞癌、大細胞癌、小細胞癌、神経内分泌腫瘍(小細胞癌、傍神経節腫、カルチノイド);膨大細胞癌;
非上皮性の癌、例えば、肉腫(線維肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、血管肉腫、巨細胞性肉腫、リンパ肉腫、線維性組織球腫、脂肪肉腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、神経線維肉腫)、リンパ腫、黒色腫、胚細胞腫瘍、血液学的腫瘍、混合型及び未分化型の癌。
【0143】
別の態様では、本発明は、癌の治療及び/又は予防に使用するための式(I)の化合物、(又はその薬学的に許容され得る塩)に関し、ここで、前記化合物は、細胞増殖抑制活性物質及び/又は細胞毒性活性物質を組み合わせて、並びに/あるいは放射線療法及び/又は免疫療法と組み合わせて投与される。
【0144】
別の態様では、本発明は、癌の治療及び/又は予防に使用するための、式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)と、細胞増殖抑制活性物質及び/又は細胞毒性活性物質の組み合わせ、並びに/あるいは放射線療法及び/又は免疫療法との組み合わせに関する。
【0145】
別の態様では、本発明は、癌を治療及び/又は予防する方法に関し、ここで、前記方法は、細胞増殖抑制活性物質及び/又は細胞毒性活性物質を組み合わせて、ならびに/あるいは放射線療法及び/又は免疫療法及び/又は標的療法と組み合わせて、式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)を投与することを含む。
【0146】
本発明の化合物は、それ自体で、又は1つ又はいくつかの他の薬理活性物質、例えば、細胞増殖阻害薬、抗血管新生物質、ステロイド又は免疫調節薬/チェックポイント阻害薬などのような、最先端又は標準治療化合物などと組み合わせて使用され得る。
【0147】
本発明による化合物と組み合わせて投与され得る薬理活性物質は、
ホルモン、ホルモン類似体及び抗ホルモン剤(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、フルベストラント、酢酸メゲストロール、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、アミノグルテチミド、酢酸シプロテロン、フィナステリド、酢酸ブセレリン、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン、メドロキシプロゲステロン、オクトレオチド)、
アロマターゼ阻害薬(たとえば、アナストロゾール、レトロゾール、リアロゾール、ボロゾール、エキセメスタン、アタメスタン)、
LHRHアゴニスト及びアンタゴニスト(例えば、酢酸ゴセレリン、リュープロリド(luprolide))、
成長因子及び/又はそれらに対応する受容体の阻害薬(例えば、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、ヒト上皮成長因子(HER(例えば、HER2,HER3,HER4))及び肝細胞成長因子(HGF)などの成長因子、及び/又はそれらに対応する受容体)、阻害薬は、例えば、(抗)成長因子抗体、(抗)成長因子受容体抗体及びチロシンキナーゼ阻害薬であり、例えば、セツキシマブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、ニンテダニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ボスチニブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ及びトラスツズマブ);
代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、ラルチトレキセドなどの葉酸拮抗薬、5-フルオロウラシル(5fluorineU)などのピリミジン類似体、リボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシド類似体であるカペシタビン及びゲムシタビン、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン及びペントスタチンなどのプリン及びアデノシン類似体、シタラビン(araC)、フルダラビン);
抗腫瘍抗生物質(例えば、ドキソルビシン、ドキシル(PEG化リポソーム型ドキソルビシン塩酸塩)、ミオセット(PEG化されていないリポソーム型ドキソルビシン)、ダウノルビシン、エピルビシン及びイダルビシンなどのアントラサイクリン、マイトマイシン-C、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ストレプトゾシン);
白金誘導体(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン);
アルキル化剤(例えば、エストラムスチン、メクロレタミン、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ダカルバジン、シクロホスファミド、イホスファミド、テモゾロミド、例えばカルムスチン及びロムスチンなどのニトロソウレア、チオテパ);
抗有糸分裂剤(例えばビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン及びビンクリスチンなどのビンカアルカロイド;及びパクリタキセル、ドセタキセルなどのタキサン類);
血管新生阻害薬(例えばタスキニモド)、チューブリン阻害薬;
DNA合成阻害薬、PARP阻害薬、トポイソメラーゼ阻害薬(例えば、エトポシド及びエトポホスなどのエピポドフィロトキシン、テニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカン、ミトキサントロン)、セリン/トレオニンキナーゼ阻害薬(例えば、PDK1阻害薬、Raf阻害薬、A-Raf阻害薬、B-Raf阻害薬、C-Raf阻害薬、mTOR阻害薬、mTORC1/2阻害薬、PI3K阻害薬、PI3Kα阻害薬、mTOR/PI3K二重阻害薬、STK33阻害薬、AKT阻害薬、PLK1阻害薬、CDKの阻害薬、オーロラキナーゼ阻害薬)、チロシンキナーゼ阻害薬(例えば、PTK2/FAK阻害薬)、タンパク質-タンパク質相互作用阻害薬(例えば、IAPアクチベーター、Mcl-1、MDM2/MDMX)、MEK阻害薬、ERK阻害薬、KRAS阻害薬(例えば、KRAS G12C阻害薬)、シグナル伝達経路阻害薬(例えば、SOS1阻害薬)、FLT3阻害薬、BRD4阻害薬、IGF-1R阻害薬、TRAILR2アゴニスト、Bcl-xL阻害薬、Bcl-2阻害薬、Bcl-2/Bcl-xL阻害薬、ErbB受容体阻害薬、BCR-ABL阻害薬、ABL阻害薬、Src阻害薬、ラパマイシン類似体(例えば、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムス、シロリムス)、アンドロゲン合成阻害薬、アンドロゲン受容体阻害薬、DNMT阻害薬、HDAC阻害薬、ANG1/2阻害薬、CYP17阻害薬、放射性医薬品、プロテアソーム阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬(例えば、CTLA4、PD1、PD-L1、PD-L2、LAG3、及びTIM3結合分子/イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブなどの免疫グロブリン)、ADCC(抗体依存性細胞介在障害)エンハンサー(例えば、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD20抗体)、T細胞エンゲージャー(例えば、CD3×BCMA、CD3×CD33、CD3×CD19のような二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTEs(登録商標))、PSMA×CD3)などの免疫療法薬、腫瘍ワクチン、及びアミフォスチン、アナグレリド、クロドロネート、フィルグラスチン、インターフェロン、インターフェロンアルファ、ロイコボリン、プロカルバジン、レバミゾール、メスナ、ミトタン、パミドロネート及びポルフィマーなどの様々な化学療法薬
を含むが、これらに限定されない。
【0148】
別の態様では、本発明は、式(I)の少なくとも1つの化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)、及び任意選択的に少なくとも1つの薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0149】
別の態様では、本発明は、式(I)の化合物(又はその薬学的に許容され得る塩)、及び少なくとも1つの他の細胞増殖抑制活性物質及び/又は細胞毒性活性物質を含む、医薬組成物に関する。
【0150】
本発明の化合物を投与するための好適な製剤は、当業者には明らかであり、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、坐剤、トローチ剤(lozenges, troches)、溶液、特に注射用溶液(s.c.、i.v.、i.m)及び点滴(注射剤)、エリキシル剤、シロップ剤、サシェ、乳剤、吸入剤又は分散性粉末を含む。
【0151】
例えば、1つ以上の式(I)の化合物を、既知の賦形剤、例えば不活性希釈剤、担体、崩壊剤、アジュバント、界面活性剤、結合剤及び/又は滑沢剤と混合することにより、適切な錠剤を得ることができる。
【0152】
1日当たりに適用され得る式(I)の化合物の投与量範囲は、通常1mgから2000mg、好ましくは10mgから1000mgである。
【0153】
静脈内使用のための投与量は、様々な注入速度で1mgから1000mgであり、好ましくは様々な注入速度で5mgから500mgである。
【0154】
しかしながら、体重、年齢、投与経路、疾患の重症度、薬物に対する個々の反応、製剤の性質、及び薬物が投与される投与時間及び投与間隔(1日当たり1回又は複数回での継続的又は間欠的な処置)によっては、規定された量から逸脱することが必要になる場合が時にあり得る。したがって、上記の最小投与量よりも少なく使用すれば十分な場合もあるが、上限を超えなければならない場合もある。大量に投与する場合は、1日全体にわたる、何回かの少用量に分けることが賢明である。
【0155】
一般的な定義
本明細書において具体的に定義されていない用語は、開示と文脈に照らして当業者がそれらに与えるであろう意味を与えるべきである。しかしながら、本明細書で使用されるとき、特に断りがない限り、以下の用語は記載されている意味を有し、以下の慣例に従う。
【0156】
以下で定義される基、ラジカル、又は部分構造ではしばしば、炭素原子の数が基の前に指定され、例えばC1-6アルキルは、1から6個の炭素原子を有するアルキル基又はラジカルを意味する。
【0157】
OH、NH2、S(O)、S(O)2、CN(シアノ)、COOH、CF3、CH3、CCH、OCH3のような基では、当業者はその基自体の遊離原子価から分子へのラジカル結合点を見出すことができる。
【0158】
本発明の化合物が、化学名の形式及び化学式で示され、何らかの不一致がある場合は、式が優先するものとする。部分式において、定義されているコア分子に接続している結合を示すため、アスタリスクを使用する場合がある。
【0159】
置換基の原子の数え方は、コアか、又はその置換基が結合している基に最も近い原子から始まる。
【0160】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素原子を表す。好ましくは、ハロゲンは、フッ素及び/又は塩素を指す。
【0161】
用語「ヘテロシクリル」又は「ヘテロサイクル」は、3から14個の環原子からなり、N、O又はS(O)r(式中、r=0、1又は2である)から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、芳香環系を任意選択的に含む、飽和又は不飽和の、単環又は多環系を意味し、ここで、いずれのヘテロ原子も前記芳香環の一部ではない。用語「ヘテロシクリル」又は「ヘテロサイクル」は、可能性のあるすべての異性体を含むことが意図される。
【0162】
したがって、用語「ヘテロシクリル」又は「ヘテロサイクル」は、以下:
【化8】
の例示的な構造(ラジカル(適切な原子価が維持されている限り,各形式として、任意選択的にいずれかの原子に共有結合を介して結合している)として描かれてはいない)を含む。
【0163】
上記の用語の多くは、式又は基の定義において繰り返し使用され得、各場合において、互いに独立して上記の意味の1つを有する。
【0164】
本明細書で使用されるとき、用語「置換された」は、指定された原子の通常の原子価を超えないこと、及び置換が安定な化合物をもたらすことを条件として、指定された原子上のいずれか1つ以上の水素が、示された群から選択されたものに置き換えられることを意味する。
【0165】
特に示されていない限り、明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、所与の化学式又は名称は、その互変異性体及びすべての立体異性体、光学異性体及び幾何異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、E/Z異性体など)及びラセミ体、並びにそのような異性体及びエナンチオマーが存在する場合の、別々のエナンチオマーの様々な比率の混合物、ジアステレオマーの混合物、又は上記のいずれかの形態の混合物、及びその溶媒和物、例えば遊離化合物の水和物を包含するものとする。
【0166】
一般に、当業者に公知の合成原理、例えば、対応する混合物の分離により、立体化学的に純粋な出発物質を使用することにより、及び/又は立体選択的合成により、実質的に純粋な立体異性体を得ることができる。ラセミ体の分割や、例えば光学的に活性な出発物質から出発する及び/又はキラルな試薬を使用することによる合成などにより、光学活性な形態を調製する方法は、当技術分野で公知である。
【0167】
本発明のエナンチオマー的に純粋な化合物又は中間体は、例えば、適切なジアステレオマー化合物又は中間体(公知の方法により(例えば、クロマトグラフィー分離又は結晶化により)分離することができる)の調製及びそれに続く分離による、及び/又はキラルな出発物質、キラルな触媒又はキラルな補助剤などのキラルな試薬を使用することによる、不斉合成を介して調製され得る。
【0168】
さらに、対応するラセミ混合物からエナンチオマー的に純粋な化合物を調製する方法、例えば、対応するラセミ混合物のキラルな固定相上でのクロマトグラフィー分離によるもの、又は適切な分割剤を使用したラセミ混合物の分割によるもの、例えば、ラセミ化合物の光学活性な酸又は塩基とのジアステレオマー塩の形成、それに続く塩の分割及びその塩からの目的の化合物の放出によるもの、又は光学活性なキラル補助試薬を用いた対応するラセミ化合物の誘導体化、それに続くジアステレオマーの分割及びキラル補助基の除去によるもの、又はラセミ体の速度論的分割によるもの(例えば酵素的分割によるもの);好適な条件下での、鏡像結晶の集合体からのエナンチオ選択的結晶化によるもの、又は光学活性なキラル補助剤の存在下における、好適な溶媒からの(分別)結晶化によるものなどは、当業者に公知である。
【0169】
本明細書において「薬学的に許容され得る」との語句は、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応、又はその他の問題若しくは合併症がなく、正常な医学的判断の範囲内で、ヒトの組織と接触して使用するのに好適であり、かつ合理的な利益/リスク比に見合う、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指して用いられる。
【0170】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容され得る塩」は、親化合物がその酸又は塩基塩を作ることによって修飾されている、開示された化合物の誘導体を指す。薬学的に許容され得る塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸又は有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ又は有機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
例えば、このような塩には、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ゲンチジン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、4-メチル-ベンゼンスルホン酸、リン酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸、酒石酸による塩が含まれる。
【0172】
本発明の薬学的に許容され得る塩は、塩基性又は酸性部分を含む親化合物から、従来の化学的方法によって合成することができる。一般的に、そのような塩は、遊離酸又は塩基型のこれらの化合物を、水中、又はエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリル、又はその混合物のような有機希釈剤中で、十分な量の適切な塩基又は酸と反応させることによって調製することができる。
【0173】
上記以外の酸の塩、例えば、本発明の化合物を精製又は単離するために有用な塩(例えばトリフルオロ酢酸塩)も、本発明の一部を構成する。
【0174】
基又は置換基はしばしば、対応する基の名称(例えば、Ra、Rbなど)を有する多数の代替の基/置換基から選択される。このような基を繰り返し使用して、分子の異なる部分で本発明による化合物を定義する場合、その種々の使用は、互いに完全に独立しているとみなされることが指摘される。
【0175】
本明細書で使用されるとき、用語「治療的に有効な量」は、病気の症状を回避すること、これらの症状を予防又は軽減すること、あるいは治療を受けた患者の生存期間を延長することができる、物質の量を指す。
【0176】
本明細書で使用されるとき、用語「プロドラッグ」は、(i)体内での代謝過程(薬物を使用可能又は活性な形態に変換する)の後にその効果を発揮する薬物の、不活性な形態、又は(ii)それ自体は活性ではないが、薬理学的に活性な代謝物を生じる物質(すなわち、不活性な前駆体)を指す。
【0177】
用語「プロドラッグ」は、薬理効果を示す前に少なくとも何らかの生体内変換を受ける、親化合物又は活性薬物の共有結合された誘導体、担体又は前駆体を意味する。そのようなプロドラッグは、代謝的に開裂可能な基又は、他の変換可能な基のどちらかを有し、例えば、血中での加水分解、又はチオエーテル基の場合のような、酸化を介した活性化によって、インビボで急速に変換されて親化合物を生成する。ほとんどの一般的なプロドラッグは、親化合物のエステル及びアミド類似体を含む。プロドラッグは、改善された化学的安定性、改善された患者の受諾及びコンプライアンス、改善されたバイオアベイラビリティ、延長された作用時間、改善された臓器選択性、改善された製剤(例えば、増加した水溶性)、及び/又は減少した副作用(例えば毒性)を目的として製剤化される。一般に、プロドラッグ自体は、生物活性が弱いか又は全くなく、そして通常の条件下では安定である。プロドラッグは、当該技術分野で公知の方法、例えばA Textbook of Drug Design and Development, Krogsgaard-Larsen and H. Bundgaard (eds.), Gordon & Breach, 1991, particularly Chapter 5: “Design and Applications of Prodrugs”; Design of Prodrugs, H. Bundgaard (ed.), Elsevier, 1985; Prodrugs: Topical and Ocular Drug Delivery, K.B. Sloan (ed.), Marcel Dekker, 1998; Methods in Enzymology, K. Widder et al. (eds.), Vol. 42, Academic Press, 1985, particularly pp. 309-396; Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 5th Ed., M. Wolff (ed.), John Wiley & Sons, 1995, particularly Vol. 1 and pp. 172-178 and pp. 949-982; Pro-Drugs as Novel Delivery Systems, T. Higuchi and V. Stella (eds.), Am. Chem. Soc., 1975; Bioreversible Carriers in Drug Design, E.B. Roche (ed.), Elsevier, 1987(各々全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものを使用して、親化合物から容易に調製することができる。
【0178】
本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容され得るプロドラッグ」は、本発明の化合物のプロドラッグを意味し、これは、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応などがなく、正常な医学的判断の範囲内で、ヒトの組織と接触して使用するのに好適であり、合理的な利益/リスク比に見合っており、かつその意図する使用に有効であり、また可能であれば両性イオン型である。
【0179】
本明細書で使用されるとき、用語「EGFR野生型に対して選択的な化合物」は、HER2に対して、EGFRと比較して高い有効性を示す化合物を指し、ここで前記化合物の有効性は、後述するBA/F3増殖アッセイ、又は腫瘍細胞株増殖アッセイなどの生物学的アッセイにおいて、決定することができる。
【0180】
本明細書で使用されるとき、用語「FGFR野生型を回避すること(sparing)」又は「FGFR野生型回避活性」は、EGFR野生型に対する化合物の低い有効性、例えば、例I-01~I-19の有効性範囲を指し、これは後述のBA/F3増殖アッセイ、又は腫瘍細胞株増殖アッセイなどの生物学的アッセイにより決定することができる。
【0181】
本明細書で使用されるとき、用語「HER2増幅を伴う癌」は、癌細胞が2つ超のERBB2遺伝子コピーを示す癌を指す。
【0182】
本明細書で使用されるとき、用語「HER2過剰発現を伴う癌」は、癌の細胞が免疫組織化学、及び/又はERBB2メッセンジャーRNAをアッセイする方法によって検出可能なレベルで、HER2を発現する癌を指す。
【0183】
本明細書で使用されるとき、用語「変異型HER2」は、変異型HER2タンパク質及び一致するDNA変異体を指すが、本明細書で使用されるとき、「HER2エクソン20変異体」は、HER2エクソン20変異型タンパク質及び一致するDNA変異体を指す。
【0184】
用語「HER2変異癌」又は「HER2変異を伴う癌」は、前記癌又は腫瘍細胞がHER2変異(表1及び表2に挙げられた変異を含むが、これに限定されない)を有する癌を指す。
【0185】
本明細書で使用されるとき、用語「HER2エクソン20変異を伴う癌」又は「HER2エクソン20変異癌」は、癌又は腫瘍細胞が少なくとも1つのHER2エクソン20変異(表1に挙げられた変異を含むが、これに限定されない)を含む癌を指す。
【0186】
ERBB2(HER2) エクソン20は、キナーゼドメインの一部をコードし、アミノ酸769から835の範囲である。この領域内のすべての変異、挿入、重複又は欠失は、エクソン20変異と定義され、これは表1に挙げられた変異を含む。さらに、発癌性のHER2変異はエクソン20外に存在し、これは表2に挙げられる変異を含む。
【表4】
【表5】
【0187】
【0188】
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な実施例(本発明の原理を、その範囲を制限することなく例として説明する)から明らかになるであろう。
【0189】
本発明による化合物の調製
一般
本発明による化合物及びその中間体は、当業者に公知であり、有機合成の文献に記載されている合成方法を使用して得てもよい。好ましくは、前記化合物は、以下でより詳細に説明されている調製の方法と同様な方法で、特に、実験の項に記載されているようにして得られる。場合によっては、反応ステップを実施する順序を変更させてもよい。本明細書には詳述されていないが、当業者に公知である反応方法の変法も使用してもよい。
【0190】
本発明による化合物を調製するための一般的なプロセスは、以下のスキームを研究する当業者に明らかになるであろう。出発物質は、文献又は本明細書に記載されている方法により調製してもよく、同様又は類似の方法で調製してもよい。出発物質又は中間体のいずれかの官能基は、通常の保護基を使用して保護してもよい。これらの保護基は、当業者に知られている方法を使用して、反応シーケンス内の好適な段階で再び開裂してもよい。
【0191】
一般的な反応スキーム及び合成経路の概要
【化9】
本発明による化合物Cは、市販のパラフルオロニトロベンゼン(A)及びアルコールから出発して合成することができ、置換反応及びそれに続くニトロ基の還元により反応させて、対応するアミンCを生成する(例えば、Ishikawa et al., J. Med. Chem. 2011, 54 (23), 8030-8050; McDaniel et al., J. Med. Chem. 2017, 60 (20), 8369-8384を参照のこと)。
【0192】
【0193】
【化11】
本発明による化合物Fは、一般経路1に従って、化合物Dから合成することができる(例えば、Wang et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2016, 26 (11), 2589-2593, Wan et al., Org. Lett. 2006, 8, 11, 2425-2428を参照のこと)。あるいは、本発明による化合物Fは、一般的な経路2に従って、化合物Gから合成することができ、これは当該アニリンで置換される(例えば、Wang et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2016, 26 (11), 2589-2593, Wan et al., Org. Lett. 2006, 8, 11, 2425-2428を参照のこと)。アルキルスルフィドHはスルホキシドJ又はスルホンに酸化され、置換又は非置換のアミンで置換される(例えば、Del Bello et al., Bioorg. Med. Chem. 2015, 23 (17), 5725-5733を参照のこと)。
【0194】
【化12】
【化13】
本発明による式(I)の化合物は、化合物Fから、Bocで保護された置換又は非置換のアミンを脱保護し、これに続く塩化アクリロイル又はアクリル酸無水物(acryloyl anhydride)との反応により合成することができる(例えば、Zhang et al., Eur. J. Med. Chem. 2019, 178, 417-432を参照のこと)。
【0195】
特に明記されていない限り、すべての反応は、化学実験室で一般的に使用されている方法を使用して、市販の装置において実施される。空気及び/又は湿気に敏感な出発物質は、保護ガス下で貯蔵され、対応する反応及び操作は、保護ガス(窒素やアルゴン)下で実施される。
【0196】
本発明による化合物は、ソフトウェアAutoNom(Beilstein)又はMarvinSketch(ChemAxon、製品バージョン17.24.3)を使用して、CAS規則に従って命名される。化合物が構造式とその命名法の両方で表される場合、矛盾があれば構造式が決定的となる。
【0197】
式(I)の例化合物であるI-01~I-19、及び中間体は、以下に記載される合成の方法(一般式の置換基は、上記の意味を有する)によって調製される。これらの方法は、本発明の例示を意図し、本発明の主題及びクレームされた化合物の範囲を、これらの例に制限するものではない。出発化合物の調製が記載されていない場合、それらは商業的に入手可能であるか、又はその合成が先行技術において記載されているか、又はそれらは公知の先行技術の化合物、又は本明細書に記載されている方法と同様に調製してもよい、すなわち、これらの化合物を合成するのは有機化学者の技術範囲内である。文献に記載されている物質は、公表されている合成の方法により調製することができる。
【0198】
クロマトグラフィー
薄層クロマトグラフィーは、メルク製の既製品のガラス上のシリカゲル60TLCプレート(蛍光指示薬F-254含有)を用いて実施する。
【0199】
例化合物の分取高圧クロマトグラフィー(RP HPLC)は、Waters社製(名称:SunFire(商標)Prep C18,OBD(商標)10μm,50×150mm又はSunFire(商標)Prep C18 OBD(商標)5μm,30×50mm又はXBridge(商標)Prep C18,OBD(商標)10μm,50×150mm又はXBridge(商標)Prep C18,OBD(商標)5μm,30×150mm又はXBridge(商標)Prep C18,OBD(商標)5μm,30×50mm)及びYMC社製(名称:Actus-Triart Prep C18,5μm,30×50mm)のカラムを用いて、Agilent又はGilsonのシステムで実施する。
【0200】
H2O/アセトニトリルの様々なグラジエントを使用して、化合物を溶出する。Agilentシステムの場合、5% 酸性修飾剤(1L H2Oに対して20mL HCOOH/アセトニトリル(1/1))を水に加える(酸性条件)。Gilsonシステムの場合、0.1% HCOOHを水に加える。
【0201】
Agilentシステムの塩基性条件下でのクロマトグラフィーには、H2O/アセトニトリルグラジエントを使用し、5%の塩基性修飾剤を、水溶性溶離液(50g NH4HCO3+50mL NH3(H2O中25%)+水で1Lの水溶性溶離液とする)に加える。Gilsonシステムでは、水溶性溶離液は、5mLのNH4HCO3溶液(1L H2O中158g)および2mL NH3(H2O中28%)に、H2Oを補充して1Lとしたものからなる。
【0202】
使用したHPLC-MSカラムは、Waters(XBridge(商標) C18、2.5μm、2.1×20mm又はXBridge(商標) C18、2.5μm、2.1×30mm又はAquity UPLC BEH C18、1.7μm、2.1×50mm)、YMC(Triart C18、3.0μm、2.0×30mm)及びPhenomenex(Luna C18、5.0μm、2.0×30mm)から入手した。
【0203】
HPLC質量分析法/UV分光法
本発明による例化合物を特性評価するための保持時間/MS-ESI+は、HPLC-MS装置(質量検出器を有する高速液体クロマトグラフィー)を使用して生じさせる。注入ピークで溶出する化合物には、保持時間tRet=0.00が与えられる。
【0204】
方法1
HPLC Agilent1100/1200システム
MS 1200シリーズ LC/MSD(MM-ES+APCI+3 000V、四重極、G6130)
MSD信号設定 スキャンpos 150~750
カラム Waters;部品番号:186003020;XBridg e BEH C18,3.5μm,30×2.1mmカラム又はW aters;部品番号:186006028;XBridge BEH C18 XP、2.5μm、30×2.1mmカラム
溶離液 5mM NH4HCO3/18mM NH3(pH=9.2)
B:アセトニトリル(HPLCグレード)
検出信号 UV 254nm(帯域幅8、参照オフ)
スペクトル 範囲:190~400nm;ステップ:2nm
ピーク幅 >0.0031分(0.063秒)(80Hz)
注入 0.5μL標準注入
流速 1.4mL/分
カラム温度 45℃
グラジエント 0.0~1.0分: 15%→95%B
1.0~1.3分: 95%B
停止時間:1.3分
【0205】
方法2
HPLC Agilent1100/1200システム
MS 1200シリーズLC/MSD(API-ES+/-3000 V、四重極,G6140)
MSD信号設定 スキャンpos150~750、スキャンneg150~75 0
カラム YMC;部品番号:TA12S03-0302WT;Tria rt C18,3μm、12nm;30×2.0mmカラム
溶離液 A:H2O+0.11% ギ酸
B:アセトニトリル+0.1% ギ酸(HPLCグレード)
検出信号 UV 254nm(帯域幅10,参照オフ)
スペクトル 範囲:190~400nm;ステップ:4nm
ピーク幅 >0.005分(0.1秒)
注入 0.5μL標準注入
流速 1.4mL/分
カラム温度 45℃
グラジエント 0.0~1.0分: 15%→100%B
1.0~1.1分: 100%B
停止時間:1.23分
【0206】
方法3
HPLC Agilent1100/1200システム
MS 1200シリーズLC/MSD(MM-ES+APCI+/- 4000 V,四重極,G6130)
MSD信号設定 スキャンpos150~800、スキャンneg150~80 0
カラム Waters;部品番号:186003020;XBridg e BEH C18、3.5μm、30×2.1mmカラム又はW aters;部品番号:186006028;XBridge BEH C18 XP、2.5μm,30×2.1mmカラム
溶離液 5mM NH4HCO3/18mM NH3(pH=9.2)
B:アセトニトリル(HPLCグレード)
検出信号 UV 254nm(帯域幅8、参照オフ)
スペクトル 範囲:190~400nm;ステップ:4nm
ピーク幅 >0.0031分(0.063秒)
注入 0.5μL標準注入
流速 1.4mL/分
カラム温度 45℃
グラジエント 0.0~1.0分: 15%→95%B
1.0~1.3分: 95%B
停止時間:1.3分
【0207】
方法4
HPLC Agilent1100/1200システム
MS 1200シリーズLC/MSD(API-ES+/-3000 V,四重極,G6140)
MSD信号設定 スキャンpos150~750
カラム YMC;部品番号:TA12S03-0302WT;Tria rt C18、3μm、12nm;30×2.0mmカラム
溶離液 A:H2O+0.11% ギ酸
B:MeCN+0.1% ギ酸(HPLCグレード)
検出信号 UV 254nm(帯域幅10、参照オフ)
スペクトル 範囲:190~400nm;ステップ:4nm
ピーク幅 >0.005分(0.1秒)
注入 0.5μL標準注入
流速 1.4mL/分
カラム温度 45℃
グラジエント 0.0~1.0分: 15%→100%B
1.0~1.1分: 100%B
停止時間:1.23分
【0208】
方法5
HPLC Agilent1260システム
MS 1200シリーズLC/MSD(API-ES+/-3000V 、四重極、G6140)
MSD信号設定 スキャンpos/neg120~900m/z
カラム Waters、Xbridge C18、2.5μm、2.1× 20mmカラム
溶離液 A:20mM NH4HCO3/NH3 pH9
B:アセトニトリルHPLCグレード
検出信号 315nm(帯域幅170nm、参照オフ)
スペクトル 範囲:230~400nm
ピーク幅 <0.01分
注入 5μL標準注入
カラム温度 60℃
流量 1.00mL/分
グラジエント 0.00~1.50分: 10%→95%B
1.50~2.00分: 95%B
2.00~2.10分: 95%→10%B
【0209】
方法6
HPLC Agilent1100/1200システム
MS 1200シリーズLC/MSD(MM-ES+APCI+/- 3000 V、四重極、G6130B)
MSD信号設定 スキャンpos/neg150~750
カラム Waters;部品番号:186003389、XBridg e BEH C18、2.5μm、2.1×30mm)カラム
溶離液 A:5mM NH4HCO3/18mM NH3(pH=9.2)
B:アセトニトリル(HPLCグレード)
検出信号 UV 254nm、230nm、214nm(帯域幅8、参照オフ)
スペクトル 範囲:190~400nm;スリット:4nm
ピーク幅 >0.0031分(0.063秒 応答時間、80Hz)
注入 0、5μL標準注入
流速 1.4mL/分
カラム温度 45℃
グラジエント 0.0~1.0分: 15%→95%B
1.0~1.1分: 95%B
停止時間:1.3分
【0210】
方法7
HPLC Agilent1100/1200シリーズ
MS AgilentLC/MSDSL
カラム Waters X-Bridge BEH C18、2.5μm、 2.1×30mm XP
溶離液 A:5mM NH4HCO3/19mM NH3(H2O中)
B:アセトニトリル(HPLCグレード)
検出信号 MS:正及び負のモード
質量範囲 100~1200m/z
流速 1.40mL/分
カラム温度 45℃
グラジエント 0.00~1.00分: 5%B→100%B
1.00~1.37分: 100%B
1.37~1.40分: 100%B→5%B
【0211】
方法8
HPLC Agilent RRLC
MS Agilent Technologies-6130 四重極 LC/MS
MSD信号設定 スキャン正70~1200、スキャン負70~1200
カラム X-Bridge C18 4.6×75mm、3.5μm
溶離液 A:10mM NH4HCO3(H2O中)、
B:アセトニトリル(HPLCグレード)
検出信号 UV 215/254nm(帯域幅 4、参照オフ)
スペクトル 範囲:200~400nm;ステップ:2nm
ピーク幅 >0.1分(応答時間2.0秒)(2.5Hz)
注入 4.0μL 注入、針洗浄有り
流速 2.0mL/分
カラム温度 35℃
グラジエント 0.0~0.2分: 10%B
0.2~2.5分: 10%→75%B
2.5~3.0分: 75%→100%B
3.0~4.8分: 100%B
4.8~5.0分: 100%→10%B
【0212】
方法9
HPLC Waters Acquity-UPLC-SQ検出器-2
カラム AQUITY UPLC BEH C18 1.7μm,2.1× 50mm
溶離液 A:0.07% ギ酸(アセトニトリル中)
B:0.07% ギ酸(水中)
流速 0.6mL/分
カラム温度 35℃
グラジエント 0.0~0.3分: 97%B
0.3~2.2分: 97%→2%B
2.2~4.5分: 2%B
4.5~4.51分: 2%9→7%B
【0213】
方法10
HPLC Thermo Scientific,Dionex Ulti mate-3000
MS Thermo Scientific LCQ FLEET(イ オントラップ)
MSD信号設定 ESIモード、スキャンPos及びNeg100~1500
カラム X-Bridge C18 2.5μm,4.6×50mm
溶離液 A:H2O中10mM NH4HCO3
B:アセトニトリル(HPLCグレード)
検出信号 ダイオードアレイ
スペクトル 範囲:200~400nm;検出信号:215及び254nm
流量 1.0mL/分
カラム温度 35℃
グラジエント 0.0~0.80分: 5%B
0.80~4.0分: 5%→75%B
4.0~5.0分: 75%→98%B
5.0~6.80分: 98%B
6.80~8.0分: 98%→5%B
【0214】
方法11
HPLC-MS Waters Acquity-Binary Solvent Manager-UPLC-SQ Detector-2
MSD信号設定 スキャンpos及びNeg100~1500
カラム AQUITY UPLC BEH C18 1.7μm 2.1×5 0mm
溶離液 A:ギ酸0.07%(アセトニトリル中)、
B:ギ酸0.07%(水中)
検出信号 ダイオードアレイ
スペクトル 範囲:200~400nm;分解能:1.2nm
注入 0.5μL 標準注入
流速 0.6mL/分
カラム温度 35℃
グラジエント 0.0~0.40分: 97%B
0.40~2.50分: 97%→2%B
2.50~3.40分: 2%B
3.40~3.50分: 2%→97%B
3.50~4.0分: 97%B
【0215】
化合物Cの合成
【化14】
B-01の合成
1-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-オール(500mg、3.38mmol)、1-フルオロ-2-メチル-4-ニトロベンゼン(681mg、4.39mmol)及び炭酸カリウム(1.16g、8.44mmol)を、DMF(5mL)中、80℃で6時間撹拌する。反応混合物を濃縮する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、シクロヘキサン/酢酸エチルグラジエント)により精製する。
【0216】
化合物B-02~B-09(表1)を、上記の手順と同様に合成する。
【表7】
【0217】
C-01及びC-05の合成
方法1:C-01の合成
B-01(950mg、3.35mmol)及び10% Pd/C(100mg)を、エタノール(10mL)/THF(10mL)中、水素雰囲気(3bar)下に、18~25℃の温度で24時間撹拌する。反応混合物をろ過し、真空中で濃縮する。
【0218】
化合物C-03及びC-06~C-08(表2)を、上記の手順と同様に合成する。
【0219】
方法2:C-05の合成
B-05(250mg、0.81mmol)及び鉄(226mg、55.8mmol)を、エタノール及びNH4Clの飽和水溶液中に懸濁する。得られた反応混合物を80℃で3時間、次に18~25℃の温度で16時間撹拌する。反応混合物をセライトのパッド上で濾過し、濾液を真空中で濃縮する。得られた残留物は、さらに精製することなく、次の合成ステップで使用される。
【0220】
化合物C-02、C-04、C-09(表2)を、上記の手順と同様に合成する。
【表8】
【0221】
化合物Fの合成
一般的な経路1(スキーム2)による化合物Fの合成
【化15】
【0222】
E-01の合成
6-メタンスルフィニル[1,3]ジアジノ[5,4-d]ピリミジン-4-オール(国際公開公報第9732880号に従って調製した6-メタンスルフィニルピリミド[5,4-d]ピリミジン-4-オール、D、211mg、1.00mmol)及びtert-ブチル-N-(ピペリジン-4-イル)カルバメート(246mg、1.20mmol)を、ジオキサン(4mL)中、還流下16時間撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO2、ジクロロメタン/メタノールグラジエント)により精製する。
【0223】
化合物E-02(表3)を、上記の手順と同様に合成する。
【表9】
【0224】
F-03の合成
E-01(200mg、0.55mmol)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(441mg、0.83mmol)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ(endec)-7-エン(126mg、0.83mmol)を、乾燥THF(4mL)中、18~25℃の温度で30分間撹拌する。C-03(205mg、0.66mmol)(乾燥THF(1mL)中)を加え、混合物を70℃で16時間撹拌する。混合物を真空中で濃縮し、粗生成物を分取逆相HPLCで精製する。
【0225】
化合物F-04、F-06、及びF-12(表6)を、上記の手順と同様に合成する。
【0226】
一般的な経路2(スキーム3)による化合物Fの合成
【化16】
【0227】
H-01の合成
8-クロロ-2-(メチルチオ)ピリミド[5,4-d]ピリミジン(500mg、1.97mmol)及びC-01(492mg、1.97mmol)を、イソプロパノール(10mL)中、50℃で3時間撹拌する。沈殿物をろ過により採取し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO2、ジクロロメタン/メタノールグラジエント)により精製して、生成物H-01を与える。
【0228】
化合物H-02~H-06(表4)を、上記の手順と同様に合成する。生成物は、反応混合物を有機溶媒と水層の間で分配し、真空中で有機層を減少させ、粗生成物をカラム精製することによって単離してもよい。
【表10】
【0229】
J-01の合成
H-01(860mg、1.80mmol)(ジクロロメタン(30mL)中)に、m-クロロ過安息香酸(77%、444mg、1.98mmol)を5℃で加え、反応混合物を18~25℃の温度で2時間撹拌する。NaHCO3の飽和水溶液(200mL)を加え、水層をジクロロメタンで数回抽出する。合わせた有機層を水洗し、乾燥(Mg2SO4)し、濾過して、真空中で濃縮する。粗生成物のJ-01は、さらに精製することなく、次のステップで使用される。
【0230】
化合物J-02~J-06(表5)を、上記の手順と同様に合成する。
【表11】
【0231】
F-01の合成
J-01(5.42g、9.74mmol)、tert-ブチル-N-(ピペリジン-4-イル)カルバメート(2.39g、11.7mmol)及びN-エチル-ジイソプロピルアミン(2.51g、19.4mmol)を、DMF(50mL)中、60℃で16時間撹拌する。反応混合物を真空中で濃縮し、粗生成物は、さらに精製することなく、次のステップで使用される。
【0232】
化合物F-02、F-05、F-07~F-11、及びF-13~F-19(表6)を、上記の手順と同様に合成する。
【表12】
【0233】
【0234】
K-01の合成
F-01(5.66g、9.73mmol)(乾燥ジクロロメタン(100mL)及びメタノール(30mL)中)に、HCl(4N ジオキサン中、22mL)を加える。反応混合物を45℃で4時間撹拌し、次に真空中で濃縮する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO2、ジクロロメタン/メタノールグラジエント)により精製する。
【0235】
化合物K-02~K-19(表7)を、上記の手順と同様に合成する。
【表13】
【0236】
I-01の合成
K-01(168mg、0.15mmol)(乾燥ジクロロメタン(2mL)中)に、塩化アクリロイル(13μL、0.16mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(149μL、0.88mmol)を加え、18~25℃の温度で1時間撹拌する。反応混合物を真空中で濃縮し、粗生成物を分取RP-HPLC-MSにより精製する。
【0237】
化合物I-02~I-19(表8)を、上記の手順と同様に合成する。
【表14】
【0238】
生物学的アッセイ
Ba/F3細胞モデルの生成及び増殖アッセイ
Ba/F3細胞をDSMZ(ACC300)から取り寄せ、5%CO2雰囲気下、RPMI-1640(ATCC30-2001)+10% FBS+10ng/mL IL-3中、37℃で増殖する。HER2変異体及びEGFR WTを含むプラスミドを、GeneScriptから得た。EGFR/HER2依存性Ba/F3モデルを作成するために、Ba/F3細胞に、EGFR WT、HER2 WT又はHER2変異体(YVMA)を有するベクターを含むレトロウイルスで形質導入する。Platinum-E細胞(CellBiolabs社)をレトロウイルスのパッケージングに使用する。Ba/F3細胞にレトロウイルスを加える。感染を確実にするために、4μg/mL ポリブレンを加え、細胞をスピン感染させる。感染効率は、細胞分析装置を使用してGFP陽性細胞を測定することにより確認される。感染効率10%~20%の細胞をさらに培養し、1μg/mLでピューロマイシン選択を開始する。対照として、親Ba/F3細胞を用いて選択状態を評価する。親Ba/F3細胞の培養物が死滅したとき、選択は成功したと見なされる。HER2変異の形質転換能を評価するために、それ以上増殖培地にIL-3を補充しなかった。空のベクターを有するBa/F3細胞を対照として使用する。EGFリガンドへの依存性で知られる、EGFR WTを発現するBa/F3細胞とするために、IL-3からEGFへの変更を実施する。実験を行う約10日前に、ピューロマイシンを除外する。増殖アッセイ(表10及び表12中のデータ)のために、Ba/F3細胞を増殖培地中5×103細胞/100μLで96ウェルプレートに播種する。HP D3000 Digital Dispenserを使用して化合物を添加する。すべての処理を、3回の反復実験(technical triplicates)で実施する。処理した細胞を、5%CO2下、37℃で72時間インキュベートする。CellTiter-Glo(商標登録)発光細胞生存性アッセイ(Promega社)を実施し、マルチラベルのPlate Reader VICTORX4を使用して化学発光を測定する。生データは、Boehringer Ingelheim proprietary software MegaLab(プログラムPRISM(GraphPad Inc.)に基づくカーブフィッティング)にインポートされ、分析される。
【0239】
pEGFRアッセイ
このアッセイは、Tyr1068でのEGFRのリン酸化を定量し、HEK細胞で発現するトランスジェニックEGFR野生型(WT)タンパク質に対する、化合物の阻害効果を測定するために使用される。
【0240】
ヒトHEK細胞(ATCC CRL-1573)を、L-グルタミン不含、非必須アミノ酸及びピルビン酸ナトリウム含有イーグル最小必須培地、MEM Eagle EBSS(EMEM Lonza BE12-662F)+5mL GlutaMax(Gibco 35050-038;L-アラニル-L-グルタミン)+5mL Sodium Pyruvat(Gibco;100mM)+10% FBS中、5% CO2雰囲気下、37℃で増殖させ、EGFR WTをコードするレトロウイルスベクターで形質導入する。形質導入した細胞は、ピューロマイシンを使用して選択される。p-EGFR Tyr1068は、AlphaScreen Surefire pEGF Receptor(Tyr1068)アッセイ(PerkinElmer,TGRERS)を使用して決定される。前記アッセイのために、HEK EGFR WT細胞を、10% FBSを含むMEM培地中に播種する。60nLの化合物希釈液を、エコープラットフォームを使用して、Greiner TC384プレートの各ウェルに加えた。次に、60μLの60,000細胞/ウェルを加える。細胞を化合物と共に37℃で4時間インキュベートする。遠心分離及び培地上清の除去の後、プロテアーゼ阻害薬を含むTGR/Perkin Elmerキットからの1.6倍溶解緩衝液 20μLを加える。この混合物を、振とう(700rpm)しながら、20~25℃の温度で20分間インキュベートする。遠心分離の後に、溶解液 4μLをProxiplatesに移す。5μLのAcceptorMix(反応緩衝液1と反応緩衝液2を合わせて1:25に希釈した活性化緩衝液(TGRERS Assay Kit, PerkinElmer)に、Protein A Acceptor Beads 6760137, Perkin Elmerを1:50で加えたもの)を各ウェルに加える。プレートを1分間(1400rpm)振とうして、20~25℃の温度で2時間、暗所でインキュベートする。3μLのドナーミックス((AlphaScreen Streptavidin-coated Donor Beads (6760002,PerkinElmer)を、Dilution Buffer (TGRERS Assay Kit,PerkinElmer)中に1:50で希釈したもの)を、各ウェルに加える。プレートを1分間(1400rpm)振とうして、20~25℃の温度で2時間、暗所でインキュベートする。次にプレートを、Envisionリーダープラットフォームを使用して分析する。結果は以下の方法で計算される:試験化合物の値と陰性対照(DMSO)の値の比率が計算される。IC50値は、4パラメトリックロジスティックモデルを使用して、MEGASTARIC50アプリケーションにおけるこれらの値から計算される。
【0241】
この細胞リン酸化-EGFR(pEGFR)化合物用量応答アッセイは、EGFR WTを発現するHEK細胞における、Tyr1068でのEGFRのリン酸化を定量する。このアッセイの結果は、IC50値として提供される。所与の化合物についてのpEGFR IC50値が高いほど、EGFR WT回避活性は高くなる。表9及び表11にデータを報告する。
【0242】
pHER2(ERBB2)YVMAアッセイ
このアッセイは、Tyr1221/1222でのHER2 YVMAのリン酸化を定量し、ドキシサイクリン誘導性発現系を使用してHEK細胞に発現したトランスジェニックHER2 YVMAタンパク質に対する、化合物の阻害効果を測定するために使用される。
【0243】
ヒトHEK細胞を、L-グルタミン不含、非必須アミノ酸及びピルビン酸ナトリウム含有イーグル最小必須培地、MEM Eagle EBSS(EMEM Lonza BE12-662F)+5mL GlutaMax(Gibco 35050-038;L-アラニル-L-グルタミン)+5mL Sodium Pyruvat(Gibco;100mM)+10% FBS中、5% CO2雰囲気下、37℃で増殖させ、HER2 YVMAをコードするレトロウイルスベクターで形質導入する。形質導入した細胞は、ピューロマイシンを使用して選択される。p-ERBB2 Tyr1221/1222は、AlphaScreen Surefire ErbB2 (Tyr1221/1222)アッセイ(PerkinElmer,TGREB2S)を使用して決定される。前記アッセイのために、HEK HER2 YVMA細胞を、10% FBSを含むMEM培地中に播種する。化合物を加える4時間前に、1μg/mL ドキシサイクリンを使用してHER2 YVMA発現を誘導した。60nLの化合物希釈液を、エコープラットフォームを使用して、Greiner TC384プレートの各ウェルに加えた。次に、60μLの60,000細胞/ウェルを加える。細胞を化合物と共に37℃で4時間インキュベートする。遠心分離及び培地上清の除去の後、プロテアーゼ阻害薬を含むTGR/Perkin Elmerキットからの1.6倍溶解緩衝液 20μLを加える。この混合物を、振とう(700rpm)しながら、20~25℃の温度で20分間インキュベートする。遠心分離の後に、溶解液 4μLをProxiplatesに移す。5μLのAcceptorMix(反応緩衝液1と反応緩衝液2を合わせて1:25に希釈した活性化緩衝液(TGRERS Assay Kit, PerkinElmer)に、Protein A Acceptor Beads 6760137, Perkin Elmerを1:50で加えたもの)を各ウェルに加える。プレートを1分間(1400rpm)振とうして、20~25℃の温度で2時間、暗所でインキュベートする。3μLのドナーミックス((AlphaScreen Streptavidin-coated Donor Beads (6760002,PerkinElmer)を、Dilution Buffer (TGRERS Assay Kit,PerkinElmer)中に1:50で希釈したもの)を、各ウェルに加える。プレートを1分間(1400rpm)振とうして、20~25℃の温度で2時間、暗所でインキュベートする。次にプレートを、Envisionリーダープラットフォームを使用して分析する。結果は以下の方法で計算される:試験化合物の値と陰性対照(DMSO)の値の比率が計算される。IC50値は、4パラメトリックロジスティックモデルを使用して、MEGASTARIC50アプリケーションにおけるこれらの値から計算される。
【0244】
この細胞リン酸化-HER2 YVMA(pHER2 YVMA)化合物用量応答アッセイは、HER2 YVMAを発現するHEK細胞における、Tyr1221/1222でのHER2 YVMAのリン酸化を定量する。このアッセイの結果は、IC50値として提供される。所与の化合物についての報告されたpHER2 YVMA IC50値が低いほど、pHER2 YVMAキナーゼに対する化合物の阻害効果は強くなる。表9及び表11にデータを報告する。
【0245】
HER2 YVMA腫瘍細胞株モデルの作製と増殖試験
HER2WT依存性NCI-H2170細胞は、(ATCC、CRL-5928)から取り寄せ、RPMI-1640(Gibco#A10491)ATCC-Formulation+10% FCS中、5%CO2雰囲気下、37℃で増殖する。相同性指向ゲノム工学を用いて、YVMAをコードする12ヌクレオチド配列を、NCI-H2170細胞における、ゲノム上のHER2遺伝子座のエクソン20に挿入する。この結果、HER2 WTが、HER2 YVMA変異体(HER2p.A775_G776insYVMAを表す)に変化する。HER2エクソン20 YVMA挿入変異体を含むDNAテンプレートを、GenScript社から得た。YVMAアミノ酸重複をもたらす、HER2 エクソン20における12ヌクレオチド挿入の存在を確認するために、PCRとそれに続くサンガー法シーケンシングを用いる。
【0246】
増殖アッセイには、NCI-H2170(HER2野生型)、NCI-H2170 HER2 YVMA及びEGFR WT依存性A431細胞を使用する。NCI-H2170HER2 YVMA又はNCI-H2170細胞を、増殖培地(RPMI ATCC+10% FCS+ペニシリン/ストレプトマイシン)中、750細胞/60μLで96ウェルプレートに播種する。A431細胞(ATCC CRL-1555)(DMEM(Sigma#D6429)+5mL Sodium Pyruvat Gibco 11360-039)を、5000細胞/ウェル(200μL)の密度で、96ウェルプレートにプレーティングする。細胞をプレーティングした1日後に、HP D3000 DigitalDispenserを使用して、化合物を加える。すべての処理を、3回の反復実験で実施する。処理した細胞を、5%CO
2下、37℃で72時間インキュベートする。CellTiter-Glo(商標登録)Luminescent Cell Viability アッセイ(Promega)を実施し、マルチラベルPlate ReaderVICTORX4を使用して、化学発光を測定する。生データは、Boehringer Ingelheim proprietary software MegaLab(プログラムPRISM(GraphPad Inc.)に基づくカーブフィッティング)にインポートされ、分析される。表10及び12にデータを報告する。
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【0247】
【0248】
活性物質は粉砕し、ラクトース及びトウモロコシデンプンの一部と混合する。混合物を篩にかけ、次いでポリビニルピロリドン溶液を用いて湿式造粒する。顆粒と残りのトウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウムを一緒に混合する。混合物を圧縮して、好適な形状及びサイズの錠剤を生成する。
【外国語明細書】