(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085499
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】治療要求を正確に満たす患者の体の標的領域へのエネルギーの伝送
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20230613BHJP
A61N 5/067 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61N5/067
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023062412
(22)【出願日】2023-04-06
(62)【分割の表示】P 2021507057の分割
【原出願日】2019-08-09
(31)【優先権主張番号】62/716,449
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】レヴィン,フィリップ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】治療の要求を正確に満たすように、エネルギーを患者の体の標的領域に伝送するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】システム20であって、正確な経路でエネルギービームをスキャンすることにより、患者の体の標的領域に特定の量のエネルギーを伝送することができるシステムは、一定のドーズ量及び/又は注入量のエネルギーを患者の体の一定の形状及び/又はサイズを有する標的領域に伝送するために、エネルギービームの経路及び持続時間を定義するビーム経路決定ユニット22を含むことができる。システムは、エネルギー伝送システムをさらに含むことができ、エネルギー伝送システムは、エネルギービームを持続時間だけ投射するエネルギー源と、ドーズ量及び/又は注入量を標的領域に伝送して、ドーズ量分布及び/又は注入量分布を達成するために、経路に沿ってエネルギービームを案内(又はスキャン)する案内装置28とをさらに含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正確に成型されたドーズ量分布及び/又は注入量分布を患者の体の一定の形状又はサイズを有する標的領域に伝送するシステムであって、
ビーム経路決定ユニットと、エネルギー伝送システムと、を含み、
前記ビーム経路決定ユニットは、前記ドーズ量分布又は注入量分布を前記標的領域に伝送するための電磁ビームの1つ又は複数の経路を含むスキャンパターンを定義するように配置され、前記ドーズ量分布又は前記注入量分布は、パラメータによって定義され、前記パラメータは、ビームパワー、スキャンレート、ビームパワー変調レートを少なくとも含み、かつ、前記パラメータは、ビームパワーで前記標的領域への照射を実行し、前記標的領域に対する間欠的な照射の形成をもたらすように選択され、
前記エネルギー伝送システムは、エネルギー源及び案内装置を含み、前記ビーム経路決定ユニットに結合され、前記エネルギー源が、前記パラメータを有する前記電磁ビームを投射するように配置され、前記案内装置が、前記スキャンパターンに沿って前記電磁ビームを案内して、前記標的領域にエネルギーを累積し、前記標的領域に対する間欠的な照射の形成をもたらすように配置される、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記スキャンパターンは、少なくとも部分的に外部案内物によって決定され、前記外部案内物は、前記標的領域の上、中又は周囲に配置されたマーキングまたはマーカー、トランスポンダ、前記標的領域に対する間欠的な照射の期間に取得された画像のうちの少なくとも1つを含み、
前記経路決定ユニットは、前記外部案内物を識別して前記エネルギー伝送システムを前記スキャンパターンに追従させるための1つ又は複数のガイドセンサ及び/又はガイド画像プロセッサを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電磁ビームは、ガウス強度分布を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記スキャンレートと前記ビームパワー変調レートとは、前記標的領域の所定位置における前記ドーズ量分布及び/又は注入量分布を定義する、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記電磁ビームが前記1つ又は複数の経路に沿って案内されるとき、前記ドーズ量分布及び/又は前記注入量分布は、少なくとも1つの測定可能な有効性パラメータ及び/又は安全性パラメータに基づいて定義され、
前記1つ又は複数の経路は、患者の内部解剖学的構造の2D画像又は3D画像に基づいて定義される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年8月9日に出願され、出願番号62/716,449である「SCANNEDーBEAM LIGHT THERAPY」と題された米国仮出願の利益を主張する。この出願の全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の全体は、治療エネルギーの伝送に関し、より具体的に、治療の要求を正確に満たすように、エネルギーを患者の体の標的領域(任意の形状及び/又はサイズを有する)に伝送するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、光エネルギーなど、各種類のエネルギーは、様々な病状の治療にますます使用されている。例えば、米国食品医薬品管理局(FDA)は、癌及び他の類似する疾患を治療すること、筋骨の異常及び自己免疫性の乱れによる痛みを緩和することや美容手術等を実行することには光エネルギーを使用することを既に承認している。しかし、光エネルギーの伝送は、時間がかかり、高価であり、特に正確ではないため、光エネルギーは、エネルギーの伝送が必要とされるいくつかの応用に広く用いられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示によれば、エネルギービームが操作及びスキャンされることで任意のサイズ又は形状の治療領域を充填することによって、必要なドーズ量及び/又は注入量を正確且つ具体的且つ迅速に伝送することができるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本開示は、ドーズ量分布(profile)及び/又は注入量分布を、患者の体の一定の形状又はサイズを有する標的領域に伝送可能なシステムを含むことができる。当該システムは、ビーム経路決定ユニットを含み、このビーム経路決定ユニットは、一定のドーズ量及び/又は注入量のエネルギーを患者の体の形状及び/又はサイズを有する標的領域に伝送するために、エネルギービームの経路及び持続時間を定義するように配置される。当該システムは、エネルギー伝送システムをさらに含み、このエネルギー伝送システムは、エネルギー源及び案内装置を含み、ビーム経路決定ユニットに結合される。エネルギー源は、エネルギービームを持続時間だけ投射するように配置される。案内装置は、経路に沿ってエネルギービームを案内して、ドーズ量及び/又は注入量を患者の体の標的領域に伝送して、ドーズ量分布及び/又は注入量分布を達成するように配置される。
【0006】
別の一態様では、本開示は、ドーズ量分布及び/又は注入量分布を患者の体の一定の形状又はサイズを有する標的領域に伝送するための方法を含むことができる。当該方法は、一定のドーズ量及び/又は注入量のエネルギーを患者の体の一定の形状及び/又はサイズを有する標的領域に伝送するために、ビーム経路決定ユニットによってエネルギービームの経路及び持続時間が定義されることを含む。当該方法は、さらに、エネルギー伝送システムのエネルギー源により、エネルギービームを持続時間だけ投射することと、エネルギー伝送システムの案内装置によって、ドーズ量及び/又は注入量を患者の体の標的領域に伝送して、ドーズ量分布及び/又は注入量分布を達成することとを含む。
【0007】
さらなる別の態様では、本開示は、正確に成型されたドーズ量分布及び/又は注入量分布を、患者の体の一定の形状又はサイズを有する標的領域に伝送するシステムを含むことができる。当該システムは、ビーム経路決定ユニットを含み、このビーム経路決定ユニットは、電磁ビームのための1つ又は複数の経路を含む標的領域のスキャンパターンを定義し、かつ、電磁ビームのパラメータを設定するように配置される。パラメータは、ビームサイズ、スキャンレート、間隔距離及び/又はシーケンシャル経路の重なり、及び経路の繰り返し回数のうちの少なくとも1つを含むことができる。当該システムは、エネルギー伝送システムをさらに含み、このエネルギー伝送システムは、エネルギー源及び案内装置を含み、ビーム経路決定ユニットに結合される。エネルギー源は、パラメータを有する電磁ビームを投射するように配置される。案内装置は、スキャンパターンに沿って電磁ビームを案内して、標的領域にエネルギーを蓄積するように配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の前述および他の特徴は、添付の図面を参照して以下の説明を読むことにより、本開示に係る技術分野の当業者にとって明らかになるであろう。各図面は、下記の通りである。
【
図1】本開示の一態様による、ドーズ量分布及び/又は注入量分布を患者の体における一定の形状及び/又はサイズを有する標的領域に伝送するシステムを例示する図である。
【
図2】
図1のシステムで使用可能な経路に沿ったビーム投射の例を示す2つの図を含む。
【
図3】本開示の別の態様による、ドーズ量分布及び/又は注入量分布を患者の体における一定の形状及び/又はサイズを有する標的領域に伝送する方法を例示するプロセスフロー図である。
【
図6】ガウスビームの左から右への平行移動、及び標的領域に伝送された、関連する累積ドーズ量を示す。
【
図7】ビームスポットサイズと累積ドーズ量分布のシャープネスとの関係を示す。
【
図8】隣接するスキャン経路の間隔と累積ドーズ量の均一性との関係を示す。
【
図9】異なる治療応用のための異なる均一性を示す。
【
図11】深さの関数としてのエネルギーの減衰を示す。
【
図13】ガウスビームの平行移動により達成される三角形の治療ゾーンを示す。
【
図19】ビーム経路と意図された表面治療ゾーン又は意図された深部組織治療ゾーンとの正確な位置合わせを図るための基準マーカーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語は、本開示が属する分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0010】
本開示の文脈において、単数形「一」、「1つ」、「一つ」及び「当該」は、文脈上他に示されない限り、複数形を含むこともできる。
【0011】
本明細書で使用される「含む」という用語は、記載された特徴、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定することができるが、1つ又は複数の他の特徴、ステップ、操作、要素、コンポーネント、および/またはグループの存在又は追加を排除するものではない。
【0012】
本明細書で使用されるように、用語「及び/又は」は、関連する、リストされたアイテムのうちの1つ又は複数の任意及び全ての組み合わせを含むことができる。
【0013】
また、「第1」、「第2」などの用語は、本明細書では様々な要素を説明するために使用され得るが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、一つの要素を他の要素と区別するためだけに用いられる。従って、以下で述べる「第1」要素は、本開示の教示から逸脱することなく、「第2」要素と呼ぶこともできる。
【0014】
本明細書で使用されるように、用語「エネルギー」は、波または粒子によって進行する放射エネルギー、特に電磁放射(可視および/または不可視)を表すために使用することができる。光(電磁放射の一種)と組み合わせて使用されるエネルギーは、光エネルギーと呼ばれてもよい。本明細書で使用される「エネルギービーム」、「電磁ビーム」、「光ビーム」などは、波または粒子によって進行し、かつ、自由伝搬時に実質的に中心軸の周りに集中した状態を維持したり、レンズ又は反射器の適切な構成によって導かれたりする放射エネルギーを指すことができる。
【0015】
本明細書で使用されるように、用語「エネルギー源」は、エネルギービームを提供/生成するように構成することができるものを指すことができる。光エネルギーの場合、エネルギー源は、例えば、少なくとも1つのレーザーおよび/または光源を含むことができ、エネルギービームのスペクトル調整および/またはスペクトル変調を可能にするように構成することができる。
【0016】
本明細書で使用されるように、用語「エネルギービーム」は、一方向に送信されたエネルギーを指すことができる。エネルギービームは、パルス変調されたもの及び/又は連続的なものであってもよい。エネルギービームは、形状(円、矩形、正方形、六角形、三角形など)及び/又はサイズで投射することができる。また、エネルギービームは、コリメートされたものであってもよいし、発散されたものであってもよいし、収束されたものであってもよいし、又は焦点距離を持つものであってもよい。エネルギービームは、任意のビーム分布のタイプであってもよい。場合によっては、エネルギービームは、ガウス強度分布を有してもよく、又は、非ガウス強度分布を有してもよい。
【0017】
本明細書で使用されるように、用語「ドーズ量」は、標的領域に伝送される総エネルギーを指すことができる。患者へのエネルギーの伝送は、一定のドーズ量が要求されることがある。場合によっては、用語「ドーズ量」は、使用量(単位面積あたりのドーズ量)を含むことができる。
【0018】
本明細書で使用されるように、用語「ドーズ量分布」は、治療完了後に、標的領域内の累積ドーズ量の2D又は3Dパターンを指すことができる。「ドーズ量分布」は、ビームが標的領域内にスキャンされることに伴い、ビームの指定された経路の側面に沿って又は向かって且つ指定された深さまで生成されたドーズ量のパターンを指すこともできる。
【0019】
本明細書で使用されるように、用語「注入量」は、標的領域の表面積を通過するエネルギーを指すことができる。患者へのエネルギーの伝送には、一定の注入量の要求を有する場合がある。
【0020】
本明細書で使用されるように、用語「注入量分布」は、治療完了後に、標的領域内の累積注入量の2D又は3Dのパターンを指すことができる。「注入量分布」は、ビームが標的領域内にスキャンされることに伴い、ビームの指定された経路の側面に沿って又は向かって且つ指定された深さまで生成された注入量パターンを指すこともできる。
【0021】
本明細書で使用されるように、用語「伝送特性」は、エネルギービームの1つ又は複数の特性を指すことができる。伝送特性は、ドーズ量分布及び/又は注入量分布に基づくことができ、かつ、経路に沿って変化することができる。例えば、伝送特性は、ビームスキャンレート、ビーム経路の繰り返し回数、経路面積の繰り返し回数、ビームパワー変調パターン及び/又はレート、ビームサイズ、ビームコリメータ、発散、収束又は集光、ビーム強度分布、ビーム形状などを含むことができる。
【0022】
本明細書で使用されるように、用語「標的領域」は、エネルギーで治療される患者の体の任意の形状及び/又はサイズの一部を指すことができる。標的領域は、面積、表面積、体積などを含むことができる。いくつかの例では、標的領域は、大きい及び/又は複雑であってもよい。
【0023】
本明細書で使用されるように、用語「経路」は、エネルギービームの平行移動が沿う空間におけるパターンを指すことができる。経路は、連続的であっても不連続であってもよい。不連続経路は、空間的に互いに分離された2つ又はそれ以上のサブ経路を含む。場合によっては、経路は、エネルギービームのための患者の中、上、付近又は周囲の1つ又は複数の案内物を含むことができる。場合によっては、経路は、患者の皮膚の中、上又は下のマーカー(例えば、描画、概略図、基準マーカー等)を含むことができる。
【0024】
本明細書で使用されるように、用語「持続時間」は、標的領域がエネルギーに曝露される時間を指すことができる。場合によっては、標的領域の異なる部分は、エネルギーに曝露される時間が異なってもよい。
【0025】
本明細書で使用されるように、用語「対象」及び「患者」は、入れ替えて使用可能であり、人、豚、ラット、マウス、犬、猫、山羊、羊、馬、猿、類人猿、ウサギ、牛などを含むが、これらに限定されない任意の温血生物を指す。
【0026】
概要
本開示は、治療ドーズ量の要求及び/又は注入量の要求を正確に満たすために、エネルギーを患者の体の治療領域(任意の形状又はサイズの線、曲線、面積、表面積及び/又は体積)に伝送することを説明する。臨床結果は、通常、ドーズ量と注入量に敏感である(注入量レベルが高すぎると、非常に危険になる可能性があり、注入量レベルが低すぎると、有効性の閾値を下回る可能性があり、このような閾値が存在する場合)。本開示は、臨床医及び他の医療専門家が治療領域全体にわたって(しかし、当該領域が大きいか、又は不規則な形状であってもよい)必要な総ドーズ量及び/又は必要な平均、最小また最大の注入量を正確に達成することを可能にする。有利には、エネルギーは、大きくて高価なエネルギー源を必要とせずに、患者の体の面積又は体積に伝送することができる。本明細書に記載のシステム及び方法は、治療領域自体よりも小さい次元のビームを用いて、治療領域を通る経路でスキャンする。有効性及び安全性に影響を与える他の要素、例えば、ドーズ量分布及び/又は注入量分布、あるいくつかの動的パラメータ、例えばスキャンレート、経路の繰り返しレート、パワー変調レート及び時間変調形状(CW、ステップ関数、鋸歯状の曲線など)、ビームのスペクトル成分、及び治療の深さは、治療領域内に正確に制御可能である。言い換えれば、時間、空間及び波長におけるエネルギー分布を正確に伝送することができる。
【0027】
システム
図1は、ドーズ量分布及び/又は注入量分布(エネルギーの伝送に対応)を患者の体の標的領域に伝送するシステム20を示す。標的領域は、任意の形状、任意の複雑度及び/又は任意のサイズの線、曲線、面積、表面積又は体積であってもよい。エネルギー伝送では、大きくて高価なエネルギー源を必要とせず、治療ドーズ量/注入量の要求を正確に満たすことができる。治療領域自体の次元よりも小さい投射ビームをスキャンし、ドーズ量及び/又は注入量、並びに有効性及び/又は安全性に影響を与える他の要素(例えば、動的パラメータ、スキャンレート、経路の繰り返しレート、パワー変調レート及び時間変調形状(cw、ステップ関数、鋸歯状の曲線など)、ビームのスペクトル成分、治療深さなど)を正確に制御することにより、治療領域を「塗布」又は「充填」することができる。言い換えれば、時間、空間及び波長におけるエネルギー分布を標的領域に正確に伝送することができる。
【0028】
システム20は、正確な経路にわたって投射されたエネルギービームをスキャンすることで、パルス光の利点を正確な大面積/表面積/体積照射と組み合わせることができる。従って、エネルギービームを移動することは、患者の体の特定の部分において一定期間(短い期間であってもよい)に当該ビームを見て、そして当該ビームが次の箇所に移動するという意味で、静止エネルギービームをパルス変調することと同等であり得る。経路に沿った各照射位置は、オンとオフの時間を経る。繰り返されるスキャン(経路の少なくとも一部)の場合、繰り返される各照射位置は、一連のオンとオフの時間を経てもよい。ドーズ量及び/又は注入量は、1つ又は複数の伝送特性を調整することで制御可能であり、伝送特性は、ビーム強度、ビーム次元、ビームサイズ、ビーム形状、ビーム数、ビーム変調、スキャンレート、経路長/形状、経路の重なり、繰り返し回数などを含む。場合によっては、伝送特性は、経路に沿って変化することができる。
【0029】
図1に示すように、システム20は、ビーム経路決定ユニット22及びエネルギー伝送システム24を含む。ビーム経路決定ユニット22は、プロセッサ及び非一時的メモリ(未図示)を含むことができ、このように、ビーム経路決定ユニット22は、コンピュータと画像プロセッサとして操作可能である(又は、コンピュータと画像プロセッサの機能を有する)。ビーム経路決定ユニット22は、エネルギービームが従う経路、及びそれが一定のドーズ量及び/又は注入量のエネルギーを患者の体の標的領域に伝送する持続時間を定義するように配置されてもよい。少なくとも一部の経路は、直線及び/又は湾曲、開放及び/又は閉鎖、並びに、連続及び/又は不連続であってもよい。例えば、ビーム経路決定ユニット22は、患者の皮膚に描かれた(例えば、患者の皮膚に描かれ、又はマークされた、基準マーカー(患者の皮膚上、患者の組織内に埋め込まれ、患者の近くに付加された物体など)/入れ墨によって指示されることなど)経路を追跡することができる。このような場合、ビーム経路決定ユニット22は、経路の自動追跡を実行することができる。別の例として、ビーム経路決定ユニット22は、経路の少なくとも一部で事前にプログラミングすることができる。さらに別の例として、ビーム経路決定ユニット22は、画像(放射線撮影、超音波検査、コンピュータ断層撮影などによって生成される)を処理して、臨床医によって提供される基準に基づいて経路又は治療領域を定義することができる。
【0030】
ビーム経路決定ユニット22は、エネルギー伝送システム24がエネルギービームを伝送する経路及び持続時間を指示することができる。例えば、ビーム経路決定ユニット22は、エネルギー伝送システム24に経路及び/又は持続時間に関する指令を送信することができる。エネルギー伝送システム24は、少なくともエネルギー源26及び案内装置28を含むことができる。エネルギー源26は、投射形状(円、正方形、矩形、三角形、六角形など)及び投射サイズを有するエネルギービーム(経路に沿って変化可能な焦点距離を有し得る)を伝送することができる。エネルギー源26は、エネルギービームの少なくとも一部を投射するように配置される1つ又は複数の源(場合によっては、エネルギービームの一部は、波長、周波数、スペクトル成分などの点で異なることがある)を含むことができる。例えば、1つ又は複数の源は、レーザー、レーザーダイオード、発光ダイオード及び/又は他のタイプの光源であり得る。エネルギービームは、連続的(cw)及び/又はパルス変調するものであってもよく、スペクトル調整及び/又はスペクトル変調が行われたものであってもよい。案内装置28は、ビーム経路決定ユニット22によって定義された経路に沿ってエネルギービームを案内するように配置されてもよい。
【0031】
図2は、経路に沿ったビーム投射の2つの例10、11を示す。例10、11では、ビーム軸線は、配向を変えることができ、かつ、関連するドーズ量分布及び/又は注入量分布の生成期間に、経路は空間において任意の形状をとることができる。なお、ドーズ量分布及び/又は注入量分布は、必ずしもビーム軸線に垂直である必要はない。
【0032】
例示的な経路は、
図1のシステムによって決定することができ、また、特定の波長の光エネルギーは、患者の肩甲骨、脊椎及び寛骨内に位置する骨髄に伝送される。従来では、光のパッチは、最初、1つの肩甲骨に、そしてもう1つの肩甲骨に、そして脊椎などに沿って連続して照射される。これは、時間がかかり、高価で且つ特に正確ではない。システム20を使用することでは、延伸する治療領域全体にわたって光のパッチをタイリングすることではなく、光ビームを操作およびスキャンして、延伸する標的領域内のそれぞれの単独の位置を正確、具体的且つ迅速にアドレッシングする。
【0033】
ビームがスキャンされる(標的領域に対して移動する)ので、パワー及び時間に敏感な特定の生体力学的現象(例えば、血液灌流による自己冷却、組織の光退色、ニューラルネットワーク内の化学及び電気的輸送など、エンドソーム輸送におけるタンパク質相互作用、細胞内構造内および細胞内構造間の一時的な吸収およびエネルギー輸送など)は、手術の効率及び/又は有効性を向上させるために、具体的にアドレッシングされることができる。
【0034】
ビームがスキャンされるレートは、生体特徴との相互作用を確保し、他には「見えない」という精度の高い選択的な治療パラメータとすることもできる。これは、可能なことであり、特定の生物学的プロセスは、自身の「時定数」を持っているため、一部のプロセスがエネルギー刺激に対して非常に早く応答し、他の一部のプロセスがよりゆっくりと応答するためである。そのため、場合によっては、ビームは、治療領域を非常に速く通過することができ、特定の「高速」又は「超高速」の生物機能のみが応答でき、他の遅いプロセスでは、ビームが全く現れないことと同じである。このように、本発明は、大きい及び/又は複雑な標的領域に治療特異性を提供するための手段を提供する。これにより、本発明のスキャンレートは、特定の速いプロセス(例えば、ミトコンドリア吸収)を標的としながら、特定の遅い生物的及び物理的プロセス(例えば、熱伝送和熱損傷)を防止及び/又は回避するために用いられることができる。
【0035】
例えば、本発明の迅速スキャンビームの滞留時間は、非常に短くなり得るので、より高出力のレーザー(特定の深部組織の応用では、レーザーは、低出力のエネルギー源よりも大きい浸透深さを有する)を用いて、その上に被覆された組織を損傷せずに治療内部組織を治療することができる。過剰なエネルギーが体組織の領域に投入されると、体組織は、加熱されて損傷する可能性がある。しかしながら、十分な時間が与えられると、加熱された生体組織を流れる血液は、余計な熱が損傷レベルまで付加される前に放熱することができる。従って、治療上、著しく且つ熱的に安全な滞留時間を達成するために、エネルギービームが治療領域上で迅速に平行移動すると、組織に損傷を与えることなく、強化なエネルギービームを組織に伝送することができる。迅速にスキャンされたビームは、短時間に静止ビームをパルスオンした後に十分な時間オフにしたままで血液灌流により放熱することと同等であると考えることができる。しかしながら、静止ビームと異なり、本発明のスキャンビームは、治療領域内の別の位置に移動しながら、以前に治療された組織が短い時間の照射後に正常化するのに十分な時間を与える。なお、治療領域の各標的部分が安全かつ一時的に治療された後、スキャンビームは、治療エンドポイントを満たす総累積ドーズ量を達成するために、同じ位置に繰り返して戻るように案内されることができる。このように、強力なビームを用いて、組織の任意の部分にも悪影響を与えることなく、大きく複雑な標的領域を迅速に治療することができる。
【0036】
前述のように、本発明のスキャンエネルギービームの平行移動は、体の標的領域に対する間欠的な照射をもたらす。これにより、エネルギー源が、cw又は連続波モードで操作されても、標的領域は、間欠的又はパルス曝露を経る。従って、エネルギービームが常に、又はほとんどがオンされた場合でも、本発明は、治療するために、生物動態及び光の動的特異性を用いることができる。上記の臨床的利点に加えて、これは、レーザー、レーザーダイオード、発光ダイオード、白熱光源などのCW操作が簡単であり、且つ費用効果の高いエネルギー源となり得るため、経済的利点を提供することができる。しかし、パルスエネルギー源も本発明と完全に互換性がある。エネルギービームが平行移動されるとき、パルス変調し、又は時間変調するものであり得る。時間変調は、ビームの平行移動と組み合わせて使用されるとき、治療に追加的な自由度を与え、そうでなければ、これらの自由度は、使用不可能となり、時間変調では、オンとオフを繰り返し、又はエネルギー源又は投射ビームを変調することで、ビームパワーが方形波、正弦波、三角波などに従うようになる。例えば、ビームをスキャンすると同時にパルス変調することで、標的組織は、超短の持続時間でエネルギーに曝露されることが可能となり、これは、単独スキャン又はパルス変調だけで達成できないことである。
【0037】
方法
本開示の別の態様は、ドーズ量分布及び/又は注入量分布を患者の体の一定の形状又はサイズを有する標的領域に伝送する方法30(
図3)を含むことができる。方法30は、(例えば、
図1に示され、上記で説明されたシステム20の)ビーム経路決定ユニット22及びエネルギー伝送システム24を用いて実行することができる。
【0038】
方法30は、フローチャートに例示されるプロセスフローを有すると例示される。便宜上、方法30は、順次に実行されると示され、説明される。しかし、本開示は、いくつかのステップが、異なる順序で行われ、及び/又は本明細書に示され、説明された他のステップと同時に行うことができるため、例示された順序に限定されないと理解されるべきである。さらに、方法30を実施するために、図示されたすべての態様が必要とされるわけではない。
【0039】
32では、一定のドーズ量/注入量(又はドーズ量分布/注入量分布)のエネルギーを患者の体の標的領域(面積、表面積及び/又は体積であってもよい)に伝送するために、エネルギービームが患者の体の標的領域を照射する経路及び持続時間(経路の異なる部分によって変化し得る)を定義することができ(例えば、ビーム経路決定ユニット22によって)、パラメータを選択することができる。経路及び持続時間は、ドーズ量分布及び/又は注入量分布(ビーム投射期間及び/又はその前に、定義され、及び/又はビーム投射期間を調整することができる)を満たすように定義される。定義又は調整は、有効性及び/又は安全性に関連する少なくとも1つの測定可能なパラメータに基づくことができる。場合によっては、患者の皮膚に描かれた経路(例えば、基準マーカー、患者の皮膚に描かれたマーカーなど)を追跡して経路を決定することができる。他の場合、患者の内部解剖学的構造の2次元(2D)又は3次元(3D)画像に基づいてビーム経路を定義することができる。他の場合、患者の中、上又は近くに位置するマーキング又はマーカー、又はトランスポンダに基づいてビーム経路を定義又は調整することができる。
【0040】
34では、エネルギービームを持続時間だけ投射することができる(例えば、エネルギー伝送システム24のエネルギー源26によって)。スキャンレート、繰り返し回数などを調整することで、ドーズ量を制御することができる。例えば、エネルギービームは、連続波(cw)ビーム、スキャンビーム及び/又はパルスビームとして投射することができる。エネルギービームは、投射された形状(円、正方形、矩形、六角形、三角形など)及び/又は投射されたサイズを有することができる。エネルギービームの分布は、コリメートされたものであってもよいし、発散されたものであってもよいし、収束されたものであってもよいし、集束されたものであってもよいし、拡散されたものであってもよいし、実質的に均一的及び/又はガウス型なものであってもよい。36では、経路に沿って(例えば、エネルギー伝送システム24の案内装置28によって)エネルギービームを案内し、ドーズ量/注入量(又はドーズ量/注入量分布)を患者の体の標的領域に伝送することができる。言い換えれば、エネルギービームは、経路の部分に沿って持続時間だけスキャンすることができる(例えば、ラスタースキャンとして)。
【0041】
理論的なスキャンエネルギービーム
図4には、正規化されたガウスビーム分布が示される。42では、ビームを直接観察した強度分布を示す。44では、強度分布の3D図を示す。46では、ビームの中心を通る2Dの軸方向断面を示し、強度とビームサイズの標準的な測定値(他の標準的な測定値がFWHM、90%パワーでの直径などを含む)を示す。ガウスビームの「ビームサイズ」及び「スポットサイズ」という用語は、ビームサイズの任意の標準的な測定値を指す。非ガウスビーム分布(例えば、フラットトップ分布、バットウィング分布、三角形分布など)は、類似するビームサイズ又はスポットサイズの測定値を有する。本明細書の例の多くには、ガウスビーム分布を使用するが、例示は、非ガウスビームを含むように拡張できると理解されるべきである。
【0042】
図5は、2つの隣接するガウスビームの合計を示す。52では、2つのビームの正規化された強度分布が示され、ビームを直接観察すると、第1ビームは、点Aを中心とし、第2ビームは、点Bを中心とする。54では、2つのビームの組み合わせの正規化された強度分布の3D曲線図が示される。56ではビームの中心を通る2D軸方向断面が示される。当該簡単な例示では、2つのビームが同時に照射され、それらの強度が加算されて、総ドーズ量を標的領域に伝送され、当該総ドーズ量は、
図4に示されたのと同じ全体分布を有する。本発明の最初に位置Aに照射され、そして位置Bに平行移動された単一のビームは、同時に照射される2つのビームと同じ総ドーズ量を標的領域に伝送することができる。なお、ビームサイズ、ビーム経路、他のビーム特性(パワー、スペクトル成分など)及び/又はスキャンレートを明確に選択することによって、所望の移動ビームが時間の経過に伴って伝送するエネルギーの標的組織内での総合により生成された任意の成形のドーズ量及び/又は注入量分布を作成することができる。
【0043】
図6は、ガウスビームの左から右への平行移動、及び標的領域に伝送された関連する累積ドーズ量の2D断面図を示す。さらに、伝送されるドーズ量を累積するために、同一の標的領域に平行移動するビームを繰り返してスキャンすることができる。なお、ビーム経路は、2D又は3D標的領域内の任意の箇所に案内されることができ、湾曲した経路、又は方向が連続して変化する任意の複雑な経路に従うことができる。
【0044】
図7は、ビームスポットサイズと累積ドーズ量分布のシャープネスとの関係を示す。通常、ビームスポットサイズが減少するにつれて、治療領域内のドーズ量及び/又は注入量分布のエッジがシャープになる。言い換えれば、ビームスポットサイズは、治療の解像度を決定する。いずれの場合も、ビームスポットサイズは、処理領域の最小の横方向の範囲よりも小さくする必要がある(ペイントブラシがペイントされる領域よりも小さくなければならないのと同じように)。
【0045】
図8は、隣接するスキャン経路の間隔と累積ドーズ量の均一性との関係を示す。左側には、スポットサイズ=16単位である82のガウスビームの5つの平行経路が示される。各経路は、最後の経路から12単位の距離が離れている。なお、累積ドーズ量は、スキャンの間に谷を示す。右側には、同様なガウスビーム(スポットサイズ=16単位)は、再び5つの平行なスキャン経路84に沿って平行移動するが、今回は、経路が6単位のみ離れている。なお、累積ドーズ量は、スキャン領域内に実質的に均一に分布し、スキャン領域は、図の光側のスキャン領域よりも小さい。通常、累積ドーズ量分布の均一性は、スポットサイズと経路間隔との比が増加するにつれて、増加する(
図9には、さらに例示する)。
【0046】
図9は、異なる治療応用に使用される異なる均一性を示す。一部の治療応用は、他の治療応用よりも寛容である。実際、一部の治療応用は、特定の不均一性が必要になる場合がある。このような特定の不均一性は、
図1のシステムによってスキャンレート、スキャン間隔、ビームパワー、ビームサイズ及び形状、並びに繰り返しスキャンの回数を調整することで、正確に伝送することができる。
【0047】
理論-様々な標的領域へのエネルギー伝送
エネルギー伝送のための一部の応用は、主に治療ドーズ量のエネルギーの表面伝送に係る皮膚治療に対することができる。皮膚治療の場合、治療領域は、表面積である。エネルギー伝送のための他の応用は、治療ドーズ量が皮膚表面下の臓器に伝送する必要がある場合があり、このような場合、治療領域は、体積である。エネルギーが皮膚を通って下にある組織に伝送されると、当該エネルギーの一部が、皮膚及び他の中間組織に散乱され、吸収され、そして、一般的に減衰すると理解されるべきである。なお、減衰を補償するためにビームパワーを増加させると、潜在的な皮膚の損傷が、ビームパワーに上限をもたらす。
【0048】
図10及び
図11は、深さの関数としての散乱によるエネルギー減衰を示す。
図10は、大スポットサイズのフラットトップビームが光散乱組織を透過するに伴うドーズ量の減少のモンテカルロシミュレーションを示す。
図11は、2つのビームサイズ(同じ強度の大スポットサイズビームと小スポットサイズビーム)のシミュレーション結果の比較を示す。より大きい(より広い)ビームは、深さでのドーズ量はより高く且つより均一である。これにより、大きな皮下治療体積の最適なドーズ量には、広い面積の皮膚表面を照射する必要がある。しかし、十分なサイズ及びパワーの光ビームは、通常、この目的に使用できないか、コストがかかりすぎるか、複雑である。本発明では、エネルギービームをスキャンすることで、大きい(広い)照射面積を容易に達成できる。
図10と
図11は、例示された単一の静止ビームに適用されるように、同様に本発明のスキャンされたビームに適用される。言い換えれば、ビームが肉体を透過するときに生じるエネルギーの減衰の観点から、本発明の大きいスキャン面積は、同じ大きさの単一のビームに相当する。これにより、本発明では、単一の、大きくて且つ均一な静止エネルギービームを伝送するコスト及び困難なしに、大きくて且つ均一な表面照射領域によって与えられる深さ浸透の利点を達成することができる。なお、本発明では、スキャンビームが常に移動するので、皮膚に損傷を与えることなく、より深く浸透する、より高いビームパワーを伝送することができる。
【0049】
ビームは、一定の速度(距離/時間)及び方向で治療領域を横切って平行移動する。当該平行移動レートは、放射照度(単位時間あたりに標的領域を通過するエネルギー量)などの時間係数を含む任意の治療パラメータに直接関係する。例えば、所定のパワーレベルで操作されるビームが、レートBよりも速いレートAで治療表面を横切って平行移動すると、レートAで得られた平均放射照度は、レートBでの平均放射照度よりも小さくなる。また、平行移動するビームの患者皮膚での滞留時間は、静止ビームに対して滞留時間が減少するため、治療期間の熱の過度の蓄積を防止することができる。平行移動するビームが治療領域のサブ領域を離れた後、血液灌流などの自然熱輸送プロセスは、任意の塚のスキャンのために、ビームが当該サブ領域に戻る前に、余分な熱を放散する。光治療期間では、患者の体の放熱は、重要な安全上の考慮事項である。従って、ビーム平行移動速度は、治療期間に患者の皮膚を保護すると同時に高パワーを伝送する手段を提供する。実際には、ビームがパワーレベルBの値の半分のパワーレベルAで治療表面を横切って平行移動すると、パワーレベルAでレートAで移動するビームで得られた放射照度は、パワーレベルBでレートAで移動するビームの放射照度の半分となる。
【0050】
なお、平行移動するビームは、治療領域に対してコリメートされたものであってもよいし、発散されたものであってもよいし、収束されたものであってもよいし、具体的に集束されたものであってもよい。これらのパラメータは必ずしも一定である必要はない。それらは、ビームの平行移動時に変化することができ、例えば、深さが変化する標的領域に対して、意図された治療を最適化するために必要とされる可能性がある。平行移動するビームが治療経路に沿って平行移動することに伴い、平行移動するビームは、連続的にオン(cw)及び/又は変調(方形波、正弦曲線など)され得る。スペクトル成分、ビーム数、入射角などを含むビーム制御のこれらと他のパラメータは、治療の質を最適化及び調整するために、ビームに応用することができる。
【0051】
本開示は、正確なドーズ量、注入量及び放射照度レベルを臨床的に大きく及び/又は複雑な領域に伝送することができる。
図12と
図13は、平行移動するガウスビームによって達成される三角形の治療ゾーンを示す。
図12は、累積ドーズ量の正規化された軸方向(又は頂部)の図を示す。
図13は、治療ゾーン内のxとy位置の関数としての正規化されたドーズ量の3D図を示す。治療ゾーンの境界が明確なエッジは、8単位のガウスビームスポットサイズ(xとy軸に沿って示される比率に対して)で達成される。
【0052】
治療される領域の形状及びサイズ、達成しようとする所望のドーズ量均一性及び伝送されるドーズ量領域の所望の解像度又はシャープネスに応じてビームの平行移動の経路を決定する。例示として、臨床医は、光治療を患者の甲状腺に応用すると希望することがあり得る。標準的な実験技術を使用して甲状腺の予備的な放射性核種スキャンを取得する(
図14)。臨床医は、画像処理ユニット(例えば、ビーム経路決定ユニット12の)と併せて、処置される領域を定義する(
図15)。
図16の白い線で示すように、好ましい経路が生成される(例えば、ビーム経路決定ユニット12によって)。甲状腺の治療に必要なドーズ量の均一性及び伝送されるドーズ量領域のシャープネスを達成するために、平行経路の間隔及びビームスポットサイズとの両方を選択する。
図17の3D図に示される高さが均一なドーズ量分布は、8単位のガウスビームスポットサイズと4単位の経路間隔(xとy軸に沿って示されるスケールに対して)によって生じる。例えば、スキャン位置に応じてビームパワーを調整することで、必要に応じて、選択されたサブ領域により高い、又はより低いドーズ量を伝送し、当該分布のさらなる最適化を達成する。
【0053】
図18及び
図19は、ビーム経路と、意図された表面治療ゾーン、又は意図された深部組織治療ゾーンとの正確な位置合わせを図るために用いられる基準マーカーを示す。治療の前に、又は治療期間に、治療される領域を識別することができる。例えば、x線イメージングは、治療期間に標的構造に関する2D又は3D情報を提供するために用いられることでき、当該情報は、例えば、患者の運動の適応経路を生成するために、臨床医がビーム経路決定ユニット22と併せて使用することができる。なお、基準マーカー、皮膚表面のマーキング、入れ墨などを使用して(例えば、ビーム経路決定ユニット22によって)、ビーム経路と、意図された表面治療ゾーン、又は意図された深部組織治療ゾーンとの正確な位置合わせを行うことができる。
図18は、2つの基準マーカー1601を有する患者の左腸骨のx線画像、及び臨床医の意図された治療ゾーン1602の輪郭を示す。
図19は、治療ゾーン、ビーム経路及び基準マーカー情報の例示的な表現を示す。
【0054】
エネルギービームのスキャンには、任意の周知の方法または開発中の方法を使用できることに留意されたい(例えば、検流計、音響光学、フラットベッド平行移動、動的レンズ、多素子アレイの整相など)。これにより、人体の任意の部分にまたがり、体内の任意の深さに焦点を合わせた非常に大きな治療領域に対処することができる。
【0055】
上記の説明から、当業者は、改善、変更、および修正を認識するであろう。 そのような改善、変更、および修正は、当業者の技術の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によってカバーされることを意図する。