(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085502
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】オーブンレンジ
(51)【国際特許分類】
F24C 1/00 20060101AFI20230613BHJP
F24C 7/04 20210101ALI20230613BHJP
F24C 7/02 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
F24C1/00 370M
F24C7/04 301Z
F24C7/02 340G
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023062463
(22)【出願日】2023-04-07
(62)【分割の表示】P 2019041102の分割
【原出願日】2019-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一也
(72)【発明者】
【氏名】木村 智志
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 紀子
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被加熱物の肉汁を中に閉じ込めたまま中まで加熱することができるオーブンレンジを提供する。
【解決手段】被調理物を熱風コンベクション加熱する熱風ユニットと、被調理物をスチーム加熱する蒸気供給装置と、複数のメニューの中から、特定のメニューを選択的に設定可能にするメニュー選択設定手段7aと、設定された特定のメニューに従う所定の手順で被調理物を加熱調理するように熱風ユニット、蒸気供給装置のそれぞれを制御する加熱調理制御部52と、を備え、特定のメニューには複数のハイブリッド調理メニューを含み、ハイブリッド調理メニューを設定すると、マイクロ波によるレンジ加熱をすることなく所定の時間が経過するまで被調理物を熱風コンベクション加熱する第1工程、選択されたハイブリッド調理メニューに応じた所定の時間が経過するまで被調理物をスチーム加熱する第2工程、の順に連続で加熱調理する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を熱風コンベクション加熱するオーブン加熱手段と、
前記被調理物をスチーム加熱するスチーム加熱手段と、
複数のメニューの中から、特定のメニューを選択的に設定可能にするメニュー選択設定手段と、
前記設定された特定のメニューに従う所定の手順で被調理物を加熱調理するようにそれぞれの加熱手段を制御する加熱調理制御部と、を備え、
前記特定のメニューには、前記被調理物として複数の焼成品に応じた複数のハイブリッド調理メニューを含み、
前記メニュー選択設定手段により、前記ハイブリッド調理メニューを設定すると、前記加熱調理制御部は、マイクロ波によるレンジ加熱をすることなく、
選択された前記ハイブリッド調理メニューに応じた所定の時間が経過するまで前記被調理物を熱風コンベクション加熱する第1工程、
選択された前記ハイブリッド調理メニューに応じた所定の時間が経過するまで前記被調理物をスチーム加熱する第2工程、
の順に連続で加熱調理するようにそれぞれの加熱手段を制御することを特徴とするオーブンレンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーブン加熱手段とスチーム加熱手段とを備えるオーブンレンジに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のオーブンレンジでは、オーブン加熱手段のみ、またはスチーム加熱手段のみで被調理物を加熱調理していた。しかしながら加熱調理が終了しても、被調理物に上手に焼き色がつかないことや、被調理物の中まで熱が通っていないことがあった。
【0003】
その一方で、例えば当該オーブンレンジと同等の加熱調理器として、スチーム加熱手段としての蒸気を用いた加熱の後にオーブン加熱手段としての上ヒータ、中ヒータ、下ヒータによる加熱で被調理物の表面に焼き色をつけやすくできるものが開示されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の加熱調理器は、スチーム加熱手段で被調理物の油脂分を最初に落とすため、被調理物が水っぽくならない一方で、被調理物内の肉汁まで外に流出してしまいジューシーさに難があるという不満があった。
【0006】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、被加熱物の肉汁を中に閉じ込めたまま中まで加熱することができるオーブンレンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のオーブンレンジは、被調理物を熱風コンベクション加熱するオーブン加熱手段と、前記被調理物をスチーム加熱するスチーム加熱手段と、複数のメニューの中から、特定のメニューを選択的に設定可能にするメニュー選択設定手段と、前記設定された特定のメニューに従う所定の手順で被調理物を加熱調理するようにそれぞれの加熱手段を制御する加熱調理制御部と、を備え、前記特定のメニューには、前記被調理物として複数の焼成品に応じた複数のハイブリッド調理メニューを含み、前記メニュー選択設定手段により、前記ハイブリッド調理メニューを設定すると、前記加熱調理制御部は、マイクロ波によるレンジ加熱をすることなく、選択された前記ハイブリッド調理メニューに応じた所定の時間が経過するまで前記被調理物を輻射加熱する第1工程、選択された前記ハイブリッド調理メニューに応じた所定の時間が経過するまで前記被調理物を熱風コンベクション加熱する第2工程、の順に連続で加熱調理するようにそれぞれの加熱手段を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メニュー選択設定手段により、ハイブリッド調理メニューを選択して設定すると、熱風コンベクション加熱で被調理物の表面に焼き色をつけた後にスチーム加熱で中まで蒸し焼きにすることで、被調理物内の肉汁を中に閉じ込めたまま当該被調理物を中まで加熱して食味を増すことが可能なオーブンレンジを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態を示すオーブンレンジの外観斜視図である。
【
図2】同上、扉を開けた時の正面前方から見た図である。
【
図4】同上、キャビネットやオーブン後板を外した状態の正面前方から見た図である。
【
図6】同上、主な電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】本実施形態の「ハイブリッド調理」メニューで、ハンバーグを加熱調理する工程と所要時間を示した図である。
【
図8】従来と本実施形態で、ハンバーグを加熱調理する工程と所要時間、加熱調理したハンバーグの仕上がりの結果を比較した図である。
【
図9】
図8のハンバーグの食味試験の結果を比較した図である。
【
図10】従来と本実施形態で、鶏の照り焼きを加熱調理する工程と所要時間、加熱調理した鶏の照り焼きの仕上がりの結果を比較した図である。
【
図11】
図10の鶏の照り焼きの食味試験の結果を比較した図である。
【
図12】従来と本実施形態で、塩鮭を加熱調理する工程と所要時間、加熱調理した塩鮭の仕上がりの結果を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明における好ましいオーブンレンジの実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
【0011】
図1~
図7は、本発明のオーブンレンジの一実施形態を示している。先ず
図1~
図5に基いて、オーブンレンジの全体構成を説明すると、1は略矩形箱状に構成される本体で、この本体1は、製品となるオーブンレンジの外郭を覆う部材として、金属製のキャビネット2を備えている。また3は、本体1の前面に設けられる開閉自在な扉である。
【0012】
扉3の上部には、縦開きの扉3を開閉するときに手をかける開閉操作用のハンドル4を備えており、扉3の下部には、表示や報知や操作のための操作パネル部5を備えている。操作パネル部5は、調理の設定内容や進行状況などを表示する表示手段6の他に、加熱調理に関する各種の操作入力を可能にする操作手段7が配設される。扉3の内部で操作パネル部5の後側には、図示しないが、表示手段6や操作手段7などの制御を行なうために、操作パネルPC(印刷回路)板が配置される。
【0013】
本体1の下部には、本体1の前面より着脱が可能な給水カセット8と水受け9が各々配設される。給水カセット8は、後述の蒸気供給装置33から発生する蒸気の供給源として、液体となる水を入れる有底状の容器である。また水受け9は、本体1からの食品カスや水滴、蒸気などを受ける有底状の容器である。
【0014】
本体1の左右側面と上面を形成するキャビネット2は、本体1ひいてはオーブンレンジの底面を形成するオーブン底板11を覆うように、本体1の前面を形成するオーブン前板12と、本体1の後面を形成するオーブン後板13との間に設けられる。また本体1には、加熱調理すべき被調理物Sを内部に収容する調理室14と、調理室14の温度を検出する温度検出素子たるサーミスタ15が設けられる。調理室14の前面はオーブン前板12に達していて、被調理物Sを出し入れするために開口しており、この開口を扉3で開閉する構成となっている。またサーミスタ15は、調理室14内部において、扉3の近傍に配置される。
【0015】
調理室14の内面を形成する周壁は、天井壁14aと、底壁14bと、左側壁14cと、右側壁14dと、奥壁14eとからなる。調理室14の奥壁14eは、その中央に吸込み口16を備えており、吸込み口16の周囲には複数の吹出し口17を備えている。また、調理室14の上壁面となるドーム状の天井壁14aに対向して、本体1の上部には、調理室14の上方から被調理物Sを輻射加熱するグリル用の上ヒータ18が設けられる。これにより、上ヒータ18への通電に伴う熱放射によって、調理室14内に収容した被調理物Sを上方向から輻射加熱して、被調理物Sをレンジ加熱する構成となっている。なお、本体1の下部にも下ヒータ(図示せず)を設け、調理室14の下方からも輻射加熱するようにして、上ヒータ18および/または下ヒータにより被調理物Sを輻射加熱する構成としてもよい。
【0016】
調理室14の左側壁14cと右側壁14dには、調理室14の内部に角皿21を吊設状態で収納保持するために、左右一対の棚支え22を上下二段に備えている。角皿21は熱伝導性の高い材料で形成されるのが好ましく、ここで使用する角皿21は、例えば金属(アルミや銅やステンレス等)で形成されており、上面を開口した有底凹状で、その他は無孔に形成される収容部21aと、収容部21aの上端より外側水平方向に延設するフランジ部21bとにより構成される。これにより、例えば棚支え22に角皿21を載せて上ヒータ18を利用した輻射加熱や後述する熱風ユニット24を利用した熱風コンベクション加熱を行なった場合、被調理物Sとしての食品に上方向や側面方向から輻射加熱や熱風コンベクション加熱を直接行なうことに加えて、角皿21も同時に加熱することで角皿21との接触部となる食品の下面に熱を伝達し、当該食品の表面全体に焼き色をつけ、焼き上げることが可能になる。またフランジ部21bには、角皿21を通して熱風の流通を可能にする通気孔21cが開口形成される。
図2では、調理室14の内部で下段の棚支え22に角皿21のフランジ部21bを載せて、収容部21aに被調理物Sを載せた状態を示しているが、調理に応じて角皿21を上段の棚支え22にだけ載せたり、2枚の角皿21を上段と下段の棚支え22に各々載せたりしてもよく、後述する実施例のように、角皿21の収容部21a上に焼き網などを収納保持することもできる。
【0017】
24は、本体1の内部において、調理室14の室外後方から下方にかけて具備されるオーブン加熱用の熱風ユニットである。この熱風ユニット24は、奥壁14eに取付けられる凸状のケーシング26と、空気を加熱する熱風ヒータ27と、調理室14内に加熱した空気を送り込んで循環させる熱風ファン28と、熱風ファン28を所定方向に回転させる電動の熱風モータ29と、熱風モータ29からの駆動力を熱風ファン28に伝達する伝達機構30と、により概ね構成される。奥壁14eとケーシング26との間の内部空間として、調理室14の室外後方に形成された加熱室31には、熱風ヒータ27と熱風ファン28がそれぞれ配設される一方で、本体1の内部に形成された調理室14とオーブン底板11との間の下部空間32には、熱風モータ29が配設される。そして、熱風ユニット24全体を後側外方から覆うように、本体1の後部にオーブン後板13が配設される。
【0018】
本実施形態の熱風ファン28は、軸方向に取り入れた空気を、回転時の遠心力によって、軸方向と直角な放射方向に吐き出すいわゆる遠心ファンとして設けられており、管状の熱風ヒータ27は熱風ファン28の放射方向を取り囲んで配置される。発熱部でもある熱風ヒータ27は、例えばシーズヒータ、マイカヒータ、石英管ヒータやハロゲンヒータなどを用いる。前述した吸込み口16や吹出し口17は、調理室14と加熱室31との間を連通する通風部として機能するものである。
【0019】
そして熱風モータ29への通電に伴い熱風ファン28が回転駆動すると、調理室14の内部から吸込み口16を通して吸引された空気が、熱風ファン28の放射方向に吹出して、通電した熱風ヒータ27により加熱され、吹出し口17を通過して、調理室14内に熱風が供給される。これにより、調理室14の内外で熱風を循環させる経路が形成され、調理室14内の被調理物Sを熱風コンベクション加熱する。また、角皿21の周囲にスリット状の通気孔21cを設けることで、例えば上下2段の棚支え22に角皿21を各々載せて、熱風ユニット24を利用した熱風コンベクション加熱を行なった場合でも、各角皿21の通気孔21cを通して調理室14内で熱風が上下に循環するため、被調理物Sとなる食品を前後左右から包み込んで焼き上げることが可能になる。
【0020】
調理室14の左側壁14cには、蒸気供給装置33に連通する蒸気噴出孔34が設けられる。本体1の内部に設けられる蒸気供給装置33は、金属製で中空の蒸発容器35や、吸水カセット8と蒸発容器35との間を連結する給水管36や、蒸発容器35に装着されるシーズヒータなどの蒸発用ヒータ37や、給水カセット8からの水を蒸発容器35内に導く給水ポンプ38や、蒸発容器35内の温度を検出する容器温度検出手段39などを備え、蒸発容器35内に連通して複数の蒸気噴出孔34を有している。これにより、給水カセット8に水を収容した状態で給水ポンプ38が駆動されると、給水カセット8から送られてきた水が、蒸気用ヒータ37の通電により所定の温度に加熱された蒸発容器35の内部に導かれて蒸気化され、蒸気噴出口33から調理室14の内部に飽和蒸気や過熱水蒸気が供給され、調理室14内に入れられた被調理物Sのスチーム加熱を行なう構成となっている。
【0021】
図6は、本実施形態のオーブンレンジの主な電気的構成を図示したものである。同図において、41はマイクロコンピュータにより構成される制御手段であり、この制御手段81は周知のように、演算処理手段としてのCPUや、記憶手段としてのメモリや、計時手段としてのタイマや、入出力デバイスなどを備えている。
【0022】
制御手段41の入力ポートには、前述したキーやタッチパネルによる操作手段7の他に、調理室14内の温度を検出するサーミスタ15などの庫内温度検出手段42と、熱風ファン28の回転速度を検出する熱風モータ回転検出手段43と、扉3の開閉状態を検出する扉開閉検出手段44と、前述した蒸気容器内の温度を検出するサーミスタなどの容器温度検出手段39が、それぞれ電気的に接続される。
【0023】
制御手段41の出力ポートには、前述した表示手段6の他に、輻射加熱用の上ヒータ18を通断電させるリレーなどの上ヒータ駆動手段46と、熱風コンベクション加熱用の熱風ヒータ27を通断電させるリレーなどの熱風ヒータ駆動手段47と、スチーム加熱用の蒸発用ヒータを通断電させるリレーなどの蒸発用ヒータ駆動手段48と、熱風モータ29を回転駆動させるための熱風モータ駆動手段49と、蒸気供給装置33の給水ポンプ38を動作させるためのポンプ駆動手段50が、それぞれ電気的に接続される。
【0024】
制御手段41は、操作手段7からの操作信号と、庫内温度検出手段42や、熱風モータ回転検出手段43や、扉開閉検出手段44や、容器温度検出手段39からの各検出信号を受けて、計時手段からの計時に基づく所定のタイミングで、上ヒータ駆動手段46と、熱風ヒータ駆動手段47と、蒸発用ヒータ駆動手段48と、熱風モータ駆動手段49と、ポンプ駆動手段50に駆動用の制御信号を出力し、また表示手段6に表示用の制御信号を出力する機能を有する。こうした機能は、記憶媒体としての前記メモリに記録したプログラムを、制御手段41が読み取ることで実現するが、特に本実施形態では、制御手段41を加熱調理制御部52と、表示制御部53として機能させるプログラムを備えている。
【0025】
加熱調理制御部52は、主に被調理物Sの加熱調理に係る各部の動作を制御するもので、操作手段7の操作に伴う操作信号を受け取ると、扉開閉検出手段44からの検出信号により、扉3が閉じていると判断した場合に、その操作信号に応じて、上ヒータ駆動手段46や、熱風ヒータ駆動手段47や、蒸発用ヒータ駆動手段48や、熱風モータ駆動手段49や、ポンプ駆動手段50に制御信号を送出して、被調理物Sに対する種々の加熱調理を制御する。本実施形態では、加熱調理を実行するための被加熱物Sの材料および加熱条件を含む調理情報として、予め複数のメニューが前記メモリに記憶保持されており、加熱調理制御部52は操作手段7に組み込まれたメニュー選択設定手段7aが適宜操作されると、その中から選択された一つのメニューを、これから加熱調理を行なう特定のメニューとして設定し、その特定のメニューに従う所定の手順で、被調理物Sを自動的に加熱調理する構成となっている。
【0026】
こうした自動的に加熱調理する構成の中で、本実施形態では、メニュー選択設定手段7aからの操作信号を受けて、複数のメニューの中から、熱風コンベクション加熱およびスチーム加熱のハイブリッド調理を行なうためのハイブリッド調理メニューを選択的に設定した場合に、加熱出力や温度や時間などの加熱条件を設定することなく、予熱や熱風コンベクション加熱やスチーム加熱のハイブリッド調理の全ての工程が完了するように、熱風ヒータ駆動手段47や、蒸発用ヒータ駆動手段48や、熱風モータ駆動手段49や、ポンプ駆動手段50の動作をそれぞれ制御して、調理室14内を所定の温度に予熱した後に、所定の温度で被調理物Sの熱風コンベクション加熱を行ない、その後、所定の温度で被調理物Sのスチーム加熱を行なうハイブリッド調理メニュー制御部54を、加熱調理制御部95の中の一機能として備えている。なお、当該ハイブリッド調理メニューに輻射加熱をさらに加えてもよく、この場合、予熱後に輻射加熱を行なうように、ハイブリッド調理メニュー制御部54が上ヒータ駆動手段46の動作を制御し、その後前述のように、所定の温度で被調理物Sの熱風コンベクション加熱およびスチーム加熱を行なうように制御することが好ましい。
【0027】
ハイブリッド調理メニュー制御部54により加熱調理される焼成品は、例えばハンバーグ、鶏の照り焼き、塩鮭、ピーマンの肉づめなど一種類に限られない。したがって、メニュー選択設定手段7aで選択可能なハイブリッド調理メニューも、ハイブリッド調理メニ
ュー制御部54により加熱調理される焼成品の種類に合わせて、メモリに複数記憶保持されるのが好ましい。
【0028】
なおハイブリッド調理メニュー制御部54が熱風ヒータ駆動手段47や熱風モータ駆動手段49を駆動させて調理室14内を予熱する予熱工程後に、当該熱風ヒータ駆動手段47や熱風モータ駆動手段49を駆動させて熱風コンベクション加熱を行なうオーブン工程に切替える場合には、一時的に扉3を開けて被調理物Sを出し入れする必要がある。その一方で、オーブン工程から、蒸発用ヒータ駆動手段48やポンプ駆動手段50を駆動させてスチーム加熱を行なう過熱水蒸気工程に切替える場合や、上ヒータ駆動手段46を駆動させて輻射加熱を行なうグリル工程から前記オーブン工程に切替える場合は、扉3を開ける必要はなく、自動的に連続で加熱調理する構成とすることができる。ここで、熱風ヒータ27を有する熱風ユニット24は被調理物Sを熱源となる熱風ヒータ27で加熱するオーブン加熱手段に相当し、被調理物を過熱水蒸気でスチーム加熱する蒸気供給装置33はスチーム加熱手段に相当し、熱源となる上ヒータ18で被調理物Sを加熱する上ヒータ18および上ヒータ駆動手段46はグリル加熱手段に相当する。なお、オーブン加熱手段やスチーム加熱手段やグリル加熱手段がどのような構成で本体1のどの位置に設けられるかは、特に限定されない。
【0029】
表示制御部53は、主に表示手段6となるLCD表示器の表示に係る動作を制御するものである。表示制御部53の制御対象となる表示手段6は、液晶パネルや照明灯により構成されるが、それ以外の表示器を用いてもよい。また本実施形態のオーブンレンジが報知手段を備える場合は、当該報知手段の報知に係る動作も制御するように構成してもよい。
【0030】
メニュー選択設定手段7aは、具体的には表示手段6の表面上に設けられ、表示手段6に表示される複数のメニューの中から、特定のメニューを選択可能にするタッチキーと、当該タッチキーの操作により特定のメニューを選択した状態で押動操作されると、その特定のメニューが加熱調理制御部52により設定記憶され、特定のメニューに従う所定の手順で、被調理物Sの加熱調理を開始させるスタートキーと、により構成される。なお、これは一例であり、メニュー選択設定手段7aの構成は特に限定されない。
【0031】
次に、上記構成のオーブンレンジについてその作用を説明する。予め調理室14内に被調理物Sを入れた状態で、ハンドル4を手で握りながら扉3を閉め、メニュー選択設定手段7aにより特定のメニューを選択操作した後に、被調理物Sの加熱調理開始を指示すると、制御手段41のメモリに組み込まれた制御プログラムに従って、選択した調理メニューに対応して生成された制御信号が所定のタイミングで出力され、被調理物Sが加熱調理される。
【0032】
ここで例えば、オーブン加熱のメニューを選択した場合、加熱調理制御部54は扉開閉検出手段44や庫内温度検出手段42からの検出信号を受けて、調理室14内が設定した温度に加熱されるように、熱風ヒータ駆動手段47と熱風モータ駆動手段49に各々制御信号を送出し、熱風ヒータ27と熱風モータ29の通断電を制御することでオーブン加熱手段を制御する。これにより、熱風モータ29に発生した回転力が熱風ファン28に伝達し、熱風ファン28が加熱室31の内部で回転して、その速度は熱風モータ回転検出手段42により加熱調理制御部52に取り込まれると共に、調理室14から吸込み口16を通して加熱室31に吸込んだ空気を、通電した熱風ヒータ27側に送り出し、それにより加熱された空気が吹出し口17を通して調理室14に熱風として供給することで、調理室14内の被調理物Sが熱風コンベクション加熱される。
【0033】
また、過熱水蒸気を使ったスチーム加熱の調理のメニューを選択した場合、加熱調理制御部54は扉開閉検出手段44、容器温度検出手段39および庫内温度検出手段42からの検出信号を受けて、蒸発容器35内が所定の温度になり、調理室14内が設定した温度に加熱されるように、蒸発用ヒータ駆動手段48とポンプ駆動手段50に各々制御信号を送出し、蒸気供給装置33に組み込まれた蒸発用ヒータ37の通断電と給水ポンプ38の動作とを制御することでスチーム加熱手段を制御する。これにより、蒸気噴出孔34から調理室14内に飽和蒸気や過熱水蒸気を噴出させ、調理室14内の被調理物Sをスチーム加熱して蒸し上げている。
【0034】
さらに、グリル加熱の調理のメニューを選択した場合、加熱調理制御部54は扉開閉検出手段44からの検出信号を受けて上ヒータ駆動手段47に制御信号を送出し、調理室14内の被調理物が上方向から輻射加熱されるように、上ヒータ18の通断電を制御することでグリル加熱手段を制御する。なお加熱調理制御部54は、扉開閉検出手段44からの検出信号に加えて、庫内温度検出手段42からの検出信号を受けて、上ヒータ駆動手段47に制御信号を送出してもよい。
【0035】
こうした各種の加熱調理の他に、本実施形態では加熱調理制御部54に組み込まれたハイブリッド調理メニュー制御部54により、輻射加熱、熱風コンベクション加熱およびスチーム加熱を順次行なうハイブリッド調理を被調理物Sに行なうことができる。以下、ハイブリッド調理メニュー制御部54による加熱調理の一連の手順を詳細に説明する。
【0036】
図7は、本実施形態のハイブリッド調理メニューにより被調理物Sとしてのハンバーグを加熱調理するまでの工程と所要時間を示したものである。ハンバーグの加熱調理に合わせた
図7のようなハンバーグ定数を有するハイブリッド調理メニューを選択した場合、ハイブリッド調理メニュー制御部54は扉開閉検出手段44や庫内温度検出手段42からの検出信号を受けて、調理室14内が設定した温度である、例えば250度に加熱されるようにオーブン加熱手段を制御して熱風コンベクション加熱する予熱工程を行なう。設定温度の250度に達したという検出信号を庫内温度検出手段42から受け取ると、ハイブリッド調理メニュー制御部54は予熱工程を停止し、図示しない報知手段で予熱が完了したことをユーザに報知する。その後、ユーザがハンドル4を手で握りながら扉3を開け、被調理物Sとしてのハンバーグを収容部21aに載置した角皿21を棚支え22に収納保持し、ハンドル4を手で握りながら扉3を閉めると、予熱工程から1stの工程であるグリル工程に移行する。
【0037】
グリル工程中は、ハイブリッド調理メニュー制御部54は前述した輻射加熱の調理のメニューを選択した場合のように、扉開閉検出手段44の検出信号を受けてグリル加熱手段を制御する。これにより、輻射加熱でハンバーグの表面に焼き色をつけることができ、合わせて角皿21を加熱することで、当該角皿21が接しているハンバーグの下面に熱を伝達し、当該ハンバーグの下面に焼き色をつけることができる。所定の時間である5分が経過した情報を制御手段41のタイマからハイブリッド調理メニュー制御部54が受け取ると、2ndの工程であるオーブン工程に移行する。
【0038】
オーブン工程中は、ハイブリッド調理メニュー制御部54は前述したオーブン加熱の調理のメニューを選択した場合のように、扉開閉検出手段44や庫内温度検出手段42からの検出信号を受けて、設定温度である250度でオーブン加熱するようにオーブン加熱手段を制御する。これにより、熱風コンベクション加熱の高出力でハンバーグの表面にさらに焼き色をつけることができ、合わせて角皿21を引き続き加熱することで、ハンバーグの下面に引き続き熱を伝達し、当該ハンバーグの下面にさらなる焼き色をつけることができる。所定の時間である10分が経過した情報を制御手段41のタイマからハイブリッド調理メニュー制御部54が受け取ると、3rdの工程である過熱水蒸気工程に移行する。
【0039】
過熱水蒸気工程中は、ハイブリッド調理メニュー制御部54は前述したスチーム加熱の
調理のメニューを選択した場合のように、扉開閉検出手段44や庫内温度検出手段42からの検出信号を受けて、設定温度である250度でスチーム加熱するようにスチーム加熱手段を制御する。これにより、飽和蒸気や過熱水蒸気のスチームでハンバーグを加熱することで、当該ハンバーグを中まで蒸し焼きにすることができる。所定の時間である5分が経過した情報を制御手段41のタイマからハイブリッド調理メニュー制御部54が受け取ると、ハイブリッド調理メニュー制御部54は過熱水蒸気工程を停止し、図示しない報知手段でハイブリッド調理メニューが終了したことをユーザに報知する。
【0040】
こうして本実施形態では、輻射加熱および熱風コンベクション加熱でハンバーグの表面に焼き色をつけた後に、スチーム加熱で中まで蒸し焼きにすることで、ハンバーグの裏表に焼き色をつけたら蓋をして弱火で蒸し焼きするというフライパンを使用したハンバーグの焼き方を再現することができ、ハンバーグ内の肉汁を中に閉じ込めたまま当該ハンバーグを中まで加熱するという、過熱水蒸気を使ったスチーム加熱の調理と熱風コンベクション加熱の調理の良いとこどりをすることを可能にしている。そのため、ハンバーグ内の肉汁が外に流出せず、当該ハンバーグをジューシーに加熱調理できるために食味を増すことができる。また輻射加熱や熱風コンベクション加熱、スチーム加熱は、例えばマイクロ波によるレンジ加熱とは異なり、金属製の角皿21を使用することができるので、被調理物Sであるハンバーグを加熱調理する工程である、グリル工程、オーブン工程および過熱水蒸気工程にわたって、調理室14内に入れたハンバーグを自動的に連続で加熱調理することが可能となり、ハンバーグの移動の手間や扉3の開閉による熱の流出を最小限にすることができる。
【0041】
なお本実施形態では、グリル工程、オーブン工程および過熱水蒸気工程でハンバーグを加熱調理したが、オーブン工程および過熱水蒸気工程のみで加熱調理するように、ハイブリッド調理メニュー制御部54がそれぞれの加熱手段を制御するように構成してもよい。この場合、熱風コンベクション加熱で被調理物Sの表面に焼き色をつけた後にスチーム加熱で中まで蒸し焼きにすることで、前述の効果と同様の効果を得ることができる。また
図7では被調理物Sとしてハンバーグを採用して説明しているが、本発明はこれに限定されず、鶏の照り焼き、塩鮭、ピーマンの肉づめなども被調理物Sとしてハイブリッド調理メニューに採用できることは理解されよう。
【0042】
次に、本実施形態のオーブンレンジのレシピと従来のオーブンレンジのレシピとの食味試験の結果について、
図8~
図13を参照して説明する。
【実施例0043】
本願発明者らは、9人の食味試験者により、本実施形態のオーブンレンジの3つのレシピ、オーブン加熱:スチーム加熱が2:1(以下、「2:1」レシピという)、オーブン加熱:スチーム加熱が1:1(以下、「1:1」レシピという)、オーブン加熱:スチーム加熱が1:2(以下、「1:2」レシピという)でそれぞれ加熱調理した被調理物Sとしてのハンバーグと、従来の2つのレシピ、オーブン加熱の調理メニュー(以下、「3:0」レシピという)およびスチーム加熱の調理メニュー(以下、「0:3」レシピという)でそれぞれ加熱調理した被調理物Sとしてのハンバーグとを用いて、食味の比較試験を行った。
【0044】
図8は、これらのレシピのそれぞれについて、予熱工程PHとオーブン工程OHと過熱水蒸気工程SHの所要時間、および仕上がりの結果を比較したものであり、調理室14内の庫内温度Tと、ハンバーグの上面の検知温度t1および下面の検知温度t2と、オーブン加熱手段やスチーム加熱手段に入力する電圧Vの推移をあらわしたタイミングチャートも比較している。これらのレシピに共通して、予熱工程は調理室14内が250度になるまで熱風コンベクション加熱を行なっており、熱風コンベクション加熱やスチーム加熱は設
定温度が250度であり、ハンバーグへの加熱時間全体が14分になるように加熱調理される。これは従来のレシピが、スチーム加熱の調理メニューの場合は、予熱ありで300度の11分~16分で加熱調理され、オーブン加熱の調理メニューの場合は予熱ありで250度の11分~16分で加熱調理されることから各数値が採用された。
【0045】
図8の比較結果として、熱風コンベクション加熱の割合が多い方がハンバーグ表面、特に下面の焼き色が濃く、スチーム加熱の割合が多くなるに従い、段々と焼き色が薄くなる結果となった。また「0:3」レシピ以外のレシピは、ハンバーグの上面の温度t1と下面の温度t2が略同一となる結果となった。
【0046】
図9の食味試験結果では、単純に美味しいか、好みかの順位が示されており、9人の食味試験者が評価した順位の平均も示されている。順位は1位~5位の5段階で評価される。その結果、「1:1」レシピで加熱調理したハンバーグが最も美味しい・好みとの結果となった。また「1:2」レシピ、「2:1」レシピのハイブリッド調理メニューで加熱調理したハンバーグも従来の「3:0」レシピや「0:3」レシピで加熱調理したハンバーグよりも美味しい・好みとの結果となった。このことより、本実施形態のオーブンレンジのハイブリッド調理メニューは、従来のオーブンレンジのレシピと比較しても美味しいハンバーグを加熱調理できるとの効果を確認できた。
本願発明者らは、3人の食味試験者により、本実施形態のオーブンレンジの3つのレシピ、「2:1」レシピ、「1:1」レシピ、「1:2」レシピでそれぞれ加熱調理した被調理物Sとしての鶏の照り焼きと、従来の2つのレシピ、「3:0」レシピおよび「0:3」レシピでそれぞれ加熱調理した被調理物Sとしての鶏の照り焼きとを用いて、食味の比較試験を行った。