(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085538
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】石膏ボード
(51)【国際特許分類】
E04F 13/14 20060101AFI20230613BHJP
E04C 2/26 20060101ALI20230613BHJP
E04C 2/30 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
E04F13/14 102Z
E04F13/14 102C
E04C2/26 P
E04C2/30 X
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064671
(22)【出願日】2023-04-12
(62)【分割の表示】P 2019560876の分割
【原出願日】2018-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2017243437
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000160359
【氏名又は名称】吉野石膏株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】新見 克己
(72)【発明者】
【氏名】下島 幹吉
(57)【要約】
【課題】保管や梱包や搬送や配送等の取り扱いは従来の規格化された寸法の石膏ボードと同様であり、簡便な手段でありながら、施工現場で行う、所望の位置での石膏ボードの切り分けを、作業者が手際よくできるようにした易切断性又は易破断性の石膏ボードの提供。
【解決手段】石膏を主成分とする石膏芯と、前記石膏芯の少なくとも表裏2面を密着被覆した石膏ボード用原紙とからなる面材である石膏ボードにおいて、前記石膏ボード用原紙の少なくとも一方の面に、切断する位置を表示した切り取り線表示が設けられており、さらに、前記切り取り線表示の少なくともいずれかの位置に重ねて、前記石膏ボード用原紙に密着している前記石膏芯の表面に達する深さで、且つ、前記石膏芯の内部には及ばない線状の切り込みが設けられていることを特徴とする石膏ボード。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏を主成分とする石膏芯と、前記石膏芯の少なくとも表裏2面を密着被覆した石膏ボード用原紙とからなる面材である石膏ボードにおいて、
前記石膏ボード用原紙の少なくとも一方の面に、切断する位置を表示した切り取り線表示が設けられており、
さらに、前記切り取り線表示の少なくともいずれかの位置に重ねて、前記石膏ボード用原紙に密着している前記石膏芯の表面に達する深さで、且つ、前記石膏芯の内部には及ばない線状の切り込みが設けられていることを特徴とする石膏ボード。
【請求項2】
前記石膏ボード用原紙の両方の面に前記切り取り線表示が設けられており、石膏ボード用原紙の一方の面に設けられた前記切り取り線表示の位置が、石膏ボード用原紙の他方の面に設けられた前記切り取り線表示の位置と、石膏芯を介して上下で整合するように設けられている請求項1に記載の石膏ボード。
【請求項3】
さらに、前記石膏ボード用原紙の少なくとも一方の面に、前記切り取り線表示に沿って切断した場合の石膏ボード部材片を識別するためのマーク表示が設けられている請求項1又は2に記載の石膏ボード。
【請求項4】
さらに、前記切り取り線表示が、切り取り線表示同士が交差する交点を持つようにして2以上設けられており、且つ、前記交点の1以上に、石膏ボードを貫通した形態を有する穴状の切り込みが設けられている請求項1又は2に記載の石膏ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボードを所望の位置で切断して石膏ボード部材を得る際における作業者の労力を低減できる易切断性又は易破断性の石膏ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
石膏系建築材料の代表的なものに、石膏芯(コア)を、石膏ボード用原紙と呼ばれる専用の板紙(以下、単に「原紙」とも呼ぶ)で密着被覆してなる板状の構造体(面材)である石膏ボードがある。石膏ボードは、通常、焼石膏、接着剤、種々の添加剤及び水等をミキサーで混練し、得られるスラリーを、上下の原紙の間に流し込み、次いで、厚みや幅を決定する成型機を通過させ、硬化後、粗切断して強制乾燥機を通し、その後に一定の寸法に切断することで製造されている。この方法は、「流し込み成形法」と呼ばれている。このような簡便な方法で大量生産可能な石膏ボードは、安価で丈夫で、耐久性及び経済性に優れることに加え、防火性、耐火性、断熱性及び遮音性等の高い機能性を示し、しかも施工性に優れることから、一般住宅や、低層~超高層建築物等の内装材や天井材などとして広く使用されている。このため、建材としての標準化の要請から、或いは、大量生産する必要があることから、製品の規格化が進んでおり、石膏ボードは、厚みや大きさが特定の値に規定された規格品として販売され、広く利用されている。
【0003】
さらに、建築方法に合致するように規格化された石膏ボードは、その取り付け手法や、取り付け用部材も種々に開発され、これらの規格化も進んでいる。このため、現場で、作業者が、規格化された寸法の面材である石膏ボードを、規定の手順で次々に貼っていくことで、内装の広い壁面や天井面を一気に迅速に施工できるので、石膏ボードは、利便性に優れた内装用の建材として極めて有用である。
【0004】
石膏ボードは、上記したように、主に面材として使用されているが、耐火性などの機能性に優れることから、面材としてだけでなく、間柱などの被覆材としても使用されている。その際に、施工現場で帯状の石膏ボードが必要になることに鑑み、その工程を簡略にする目的で、石膏ボードの長手方向に所定の切り込み長さと、石膏芯内に及ぶ所定の切り込み深さとを有する複数の切り込みをミシン目状に入れた石膏ボード、これを可能にする加工装置が提案されている(特許文献1参照)。この技術によれば、石膏ボードを、作業者自身の力で、切り離し面を略平滑にしつつ、簡単に折り曲げて帯状石膏ボードにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術にあるように、建物の全ての施工箇所において、定められた寸法に調整された規格品の石膏ボード製品(以下、「規格品の石膏ボード」と呼ぶ)をそのまま適用できるものでないため、規格品の石膏ボードをそのまま施工することに加えて、現場で規格品の石膏ボードを切断し、切断して得た石膏ボード部材を施工することが行われている。現場での施工の際に必要となる石膏ボード部材の形状は、先述した従来技術で提案されている帯状のものに限ったことではない。
【0007】
近年、一般住宅のデザインも規格化され、また、高層化の技術が進歩したことで、低層~超高層建築物も多くなっており、デザインを統一した大規模集合住宅も多く作られている。そのような規格化は、工場で構造部材を組み立ててユニット化することで、施工の簡略化・効率化を可能にした結果、実現されている。このため、近年、特に建物の外装工事における施工方法は大きく変化しており、現場施工する比率は減少している。
【0008】
一方、石膏ボードを使用する内装工事は建築物の最終段階であり、現場施工する必要がある。先に述べたように、規格品の石膏ボードを使用することで、内装の広い壁面や天井面を一気に迅速に形成することができる。しかし、壁面や天井面等の完成にあたっては、規格品の石膏ボードを目的とする形状に切断し、切断した石膏ボードを適宜に施工する必要が生じている。現場で石膏ボードを切断する場合、まず、石膏ボードの原紙上の切断する位置に印をし、その印に沿って電動切断工具等を使用して切断しており、煩雑な作業が必要となっている。また、切断に電動切断工具を使用した場合、騒音の問題や、石膏ボードのコア部から粉塵が発生するといった課題が生じることも考えられる。
【0009】
上記した状況に対し、予め工場で、規格品の石膏ボードを所望の寸法に切断し、複数の部材にして現場に持ち込めば、施工現場での石膏ボードの切断作業を簡略化することが可能になる。特に、同様の寸法の石膏ボード部材が一度に大量に必要となる、規格化されたデザインの住宅用や大規模集合住宅用などに対してであれば、上記手法は有効であると考えられる。実際に、施工主からの要望を受けて、予め工場で、規格品の石膏ボードを目的の寸法に切断し、切断した石膏ボード部材を施工現場に持ち込む事例も増えてきている。
【0010】
しかしながら、必要とされる石膏ボード部材は、規格品の石膏ボードと異なり、複数の多様な形の部材を必要とし、建築物件毎に形や部材数が異なり、また、当然に、従来の1枚の石膏ボード製品に対して切断後の部材の数が複数になることから、下記のような様々な問題を生じる。まず、石膏ボードを切断する工場においては、施工主からの異なる要望に柔軟に対応できる切断設備や稼働システムを設ける必要が新たに生じる。加えて、切断後の、形状が種々に異なる石膏ボード部材の保管や梱包等に対し、新たな対応システムを設ける必要が生じる。さらに、搬送という点でも、下記に提示するように、大きな影響を受ける。例えば、形状が種々に異なる切断後の石膏ボード部材は、規格化された寸法の石膏ボードに比べて、積み込み積み下ろし作業が煩雑になり、また、目的の寸法に切断された部材を合致する施工現場に届ける必要が生じるため、配送の管理が煩雑になるという問題も生じる。
【0011】
従って、本発明の目的は、上記した保管や梱包や搬送や配送等の取り扱いについては、規格品の石膏ボードと同様で異なることがなく、簡便な手段でありながら、施工現場で行う、所望の位置での石膏ボードの切断作業又は破断作業を、作業者が鋸やカッターナイフ等の簡易な利器で、場合によっては手で、手際よくできるようにした易切断性又は易破断性の石膏ボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。
[1]石膏を主成分とする石膏芯と、前記石膏芯の少なくとも表裏2面を密着被覆した石膏ボード用原紙とからなる面材である石膏ボードにおいて、前記石膏ボード用原紙の少なくとも一方の面に、切断する位置を表示した切り取り線表示が設けられていることを特徴とする石膏ボード。
【0013】
上記の本発明の好ましい形態としては、以下のものが挙げられる。
[2]前記石膏ボード用原紙の両方の面に前記切り取り線表示が設けられており、石膏ボード用原紙の一方の面に設けられた前記切り取り線表示の位置が、石膏ボード用原紙の他方の面に設けられた前記切り取り線表示の位置と、石膏芯を介して上下で整合するように設けられている上記[1]に記載の石膏ボード。
【0014】
[3]前記切り取り線表示が、該切り取り線表示同士が交差する交点を持つようにして2以上設けられており、且つ、前記交点の1以上に、穴状及び/又は短線状の切り込みが設けられている上記[1]又は[2]に記載の石膏ボード。
【0015】
[4]前記穴状の切り込みが、石膏ボードを貫通した形態を有する上記[3]に記載の石膏ボード。
【0016】
[5]さらに、前記切り取り線表示の少なくともいずれかの位置に重ねて、前記石膏ボード用原紙に密着している前記石膏芯の表面に達する深さで、線状の切り込みが設けられている上記[1]~[4]に記載の石膏ボード。
【0017】
[6]前記線状の切り込みが、前記石膏芯の内部には及ばない上記[5]に記載の石膏ボード。
【0018】
[7]さらに、前記石膏ボード用原紙の表裏2面の少なくとも一方の面に、前記切り取り線表示に沿って切断した場合の石膏ボード部材片を識別するためのマーク表示が設けられている上記[1]~[6]に記載の石膏ボード。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、保管や梱包や搬送や配送等の取り扱いは、通常の規格品の石膏ボードと同様であり、異なることはなく、規格品の石膏ボードの表裏を構成する原紙の一方又は両方の面に、石膏ボードを切り分ける位置(切断位置)を表示した切り取り線表示を設けるという形態上の特徴により、作業者は、所望する切断位置を目視で直ちに認識することが可能になるので、従来行っていた、寸法を測り、石膏ボードの切断する位置に印をする作業を省くこと、或いは、簡略化することができるという有用な効果が得られる。また、切断位置を表示した切り取り線表示を、石膏芯を介して上下で整合するようにして原紙の両方の面に設けた好ましい態様にすることで、表裏で位置ずれのない、寸法精度のよい垂直な切断面を有する石膏ボード部材を容易に得ることが可能になる。また、本発明の石膏ボードの好ましい態様では、上記した切り取り線表示同士が交差する交点を持つようにして2以上設け、この交点の1以上に穴状及び/又は短線状の切り込みを設けることで、鋸やカッターナイフ等の利器の刃先をこの切り込みに入れることができるようになるので、作業者は、この穴状の切り込みを出発点として、原紙面上に設けられた切り取り線表示に沿って、迅速に手際よく石膏ボードを切断することができるようになる。また、本発明の好ましい態様によれば、原紙面上に設けられた切り取り線表示の少なくともいずれかの位置に重ねて、原紙に密着している石膏芯に達する切り込みを設けておくという極めて簡便な手段で、施工現場で行う所望の位置での、鋸やカッターナイフ等の利器を使用せずに作業者の手で手際よく切断(破断)できる石膏ボードの提供が可能になる。
【0020】
上記したように、本発明によって提供される石膏ボードは、現場で施工する前までは、通常の規格品の石膏ボードと何ら異なることなく、保管や梱包や搬送等ができるので、工場で予め石膏ボードを切断して所望のサイズの多様な製品とした場合のように、形状が異なる部材が増えることによって生じる影響はない。また、作業者は、切り取り線表示によって所望する切断位置を直ちに認識でき、従来行っていた、石膏ボードの切り分ける位置に印をする作業が省け、或いは、簡便化でき、鋸やカッターナイフ等の簡易な利器で、場合によっては道具を使うことなく、手で手際よく切断(破断)できることから、現場で施工する作業者に与えていた労力を大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】表裏2面の石膏ボード用原紙に切り取り線表示が、表裏の位置が整合するようにして設けられており、且つ、一方の面の切り取り線表示の交点に穴状の切り込みが設けられた本発明の石膏ボードの一例の模式的な斜視図である。
【
図2】石膏ボード用原紙に切り取り線表示と、切り取り線表示に沿って切断した場合の石膏ボード部材片を識別するためのマーク表示が設けられている本発明の石膏ボードの一例と、これを切り取り線表示の位置で切断して建築物に適用した状態を説明するための模式図である。
【
図3】石膏ボード用原紙に、特定のピッチで切り取り線表示を設け、切り取り線表示の交点に穴状の切り込みを設けた本発明の石膏ボードの一例の模式的な斜視図である。
【
図4】石膏ボード用原紙の切り取り線表示の交点に設けた切り込みの形状を説明するための模式的な断面図であり、(1)は短線状の切り込みを石膏ボード用原紙の一方に設けた状態、(2)は短線状の切り込みを石膏ボード用原紙の両方に設けた状態、(3)は穴状の切り込みを石膏ボード用原紙の一方に設けた状態、(4)は穴状の切り込みが貫通しており、石膏ボード用原紙の両方に設けた状態となっている場合を示している。
【
図5】石膏ボード用原紙に、切り取り線表示を設け、該切り取り線表示に重ねて線状の切り込みを設けた本発明の石膏ボードの一例の、内部構造を示すために一部を切り欠いた模式的な斜視図である。また、(1)は線状の切り込みを石膏ボード用原紙の一方に設けた状態、(2)は線状の切り込みを石膏ボード用原紙の両方に設けた状態を説明するための模式的な断面図である。
【
図6】石膏ボード用原紙に、切り取り線表示を設け、該切り取り線表示の一部に重ねて線状の切り込みと、切り取り線表示の交点に穴状の切り込みを設けた本発明の石膏ボードの一例の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明者らは、前記した従来技術の課題について検討する過程で、石膏を主成分とする石膏芯と、該石膏芯の少なくとも表裏2面を密着被覆した石膏ボード用原紙とからなる、表裏面が原紙で覆われた面材である石膏ボードを切断する場合に、石膏芯に密着被覆されている石膏ボードの表裏面を構成する原紙さえ切断できれば、内部の石膏芯については、何らの道具を用いることなく手で切断(破断)することができるようになることに着目した。すなわち、規格品の石膏ボードを切断して部材を手際よく得るためには、表面を構成する、石膏ボードの曲げ強度を実現している石膏ボード用原紙を、所望の位置で切断し易くなる工夫をすることが、石膏ボードを所望の位置で手際よく切断するための手段として効果的であるとの認識をもった。
【0023】
そして、上記した認識の下、さらなる検討の結果、まず、採寸して石膏ボードの切断する位置に印をする作業は、作業者に対し、大きな労力と時間的な負担をかけており、この点が改善できれば、手際のよい作業が可能になり、極めて有用であることを見出した。これに対し、本発明者らは、寸法が正確に定められている規格品の石膏ボードの表裏2面を構成する原紙の、少なくともいずれかの面に、例えば、
図3に示したように、あるピッチで切り取り線表示を設けておけば、石膏ボードの切断する位置に印をする作業にかかる負荷を、格段に低減できると考えた。また、この場合に、
図1に示したように、石膏ボードの表裏2面を構成するいずれの原紙面にも切り取り線表示を設け、且つ、表裏2面に設けた切り取り線表示が互いに上下で整合する位置になるように構成すれば、これらの切り取り線表示に沿って切断することで、より正確に寸法精度よく切断ができるようになると考えた。また、例えば、上記と異なる実施形態として、石膏ボードの表裏2面を構成するそれぞれの原紙面に、それぞれ異なるピッチの切り取り線表示を設けておけば、これらの切り取り線表示に沿ってより多様な寸法に石膏ボードを切断する作業をすることも可能になると考えた。
【0024】
本発明者らは、規格品の石膏ボードを構成する原紙に、上記したような切り取り線表示を設けると共に、例えば、
図1や
図3に示したように、切り取り線表示が交差する交点に、鋸やカッターナイフ等の利器の刃先を入れることができる程度の大きさの穴状及び/又は短線状の切り込みを設けておけば、作業者が、これらの交点にある切り込みを起点として、切り取り線表示に沿って、鋸やカッターナイフ等の利器の刃を走らせることで石膏ボードを容易に切断でき、所望する大きさの石膏ボードが手際よく得られるようになることを見出した。具体的には、交点にある切り込みに鋸等の利器を入れることで、ここを起点として、鋸等の利器で切り取り線表示に沿って原紙と石膏芯とを一緒に手際よく切断できるようになる。また、交点にある切り込みにカッターナイフ等の利器を入れることで、ここを起点として、カッターナイフ等の利器で、切り取り線表示に沿って原紙部分を手際よく切断することができるようになる。また、交点にある切り込みを、
図4(3)に示したように、石膏芯の内部に及ぶようにしたり、
図4(4)に示したように貫通孔とすれば、鋸等の利器の刃を、石膏ボードの一方の面から他方の面まで容易に差し込むことができるので、切り取り線表示に沿って原紙と石膏芯とを一緒に切断する作業の開始を、より円滑に且つ正確にできるようになる。
【0025】
本発明者らの検討によれば、先に述べたように、石膏ボードは、原紙部分さえ切断できていれば、原紙に密着している内部の石膏芯の部分は、作業者が手で折ることによって容易に切断(破断)できるので、必ずしも原紙と石膏芯とを一緒に切断する必要はない。そのようにすれば、作業者は、カッターナイフ等のより簡易な利器を使用するだけで、石膏ボードを切断することができるようになる。具体的には、表裏のうちの少なくとも一方の面の原紙に設けた所望の切り取り線表示に沿って、カッターナイフ等の利器で原紙を切断すれば、下記のように、手際よく、石膏ボードを切断することができる。原紙が切れていれば石膏芯を手で破断できるので、作業者は、例えば、表裏面の片方の原紙のみを、その面に設けられている切り取り線表示に沿って切断した後、手で石膏芯を破断し、最後に、切れていない側の面の原紙をカッター等で切断することで、石膏ボードを所望の位置で切断することができる。この場合に、切れていない側の面の原紙には必ずしも切り取り線表示を設ける必要はない。
【0026】
また、別の構成として、石膏ボードの両方の面に切り取り線表示を設け、且つ、石膏ボード用原紙の一方の面に設けられた切り取り線表示の位置が、石膏ボード用原紙の他方の面に設けられた切り取り線表示の位置と、石膏芯を介して上下で整合するように設けた態様とすることが好ましい。このような形態にすれば、作業者は、それぞれの切り取り線表示に沿ってカッターナイフ等の利器を走らせて、表裏面の原紙を切断して、それぞれの原紙を切れている状態にし、その後に、手で石膏芯を破断することで、石膏ボードを所望の位置で、しかも破断面が略平滑で綺麗な状態に切断することができる。いずれにしても、上記したように構成すれば、作業者は、石膏芯を切断するための鋸等の利器を用いる必要がないので、より手際よく石膏ボードを切断することができるようになる。
【0027】
また、さらなる改良として、例えば、
図5に示したように、規格品の石膏ボードに設けた切り取り線表示の少なくともいずれかの位置に重ねて、原紙に密着している石膏芯の表面に達する状態の、連続した線状の切り込みを予め設けておくことも好ましい形態である。このようにすれば、原紙を切れている状態にできるので、作業者は、上記したカッターナイフ等の利器で原紙を切断する作業を省略できたり、簡略化することが可能になる。勿論、この線状の切り込みに沿って鋸等の利器の刃を走らせることで、石膏ボードを円滑に切断することもできる。
図5に示した例では、線状の切り込みを、切り取り線表示の全てに重ねて連続して設けているが、本発明はこれに限定されず、作業者の手順を考慮して、切り取り線表示の一部に線状の切り込みを設ける形態としてもよい。
【0028】
図5(1)の模式的な断面図に示したように、切り取り線表示の位置に重ねて設ける線状の切り込みは、原紙に密着している前記石膏芯の表面に達する、石膏ボード表面の原紙を切れた状態にするためのものである。この場合に、切り取り線表示の位置に重ねて予め設ける線状の切り込みは、石膏芯の内部には及ばないようにすることが好ましい。すなわち、本発明者らの検討によれば、先に述べたように、面材である石膏ボードを切断する場合、石膏ボードの表面を構成する原紙さえ切れていれば、原紙に密着している石膏芯は、何らの道具を用いることなく手で切断(破断)することが可能になるので、上記のように構成すれば十分である。さらに、予め設けておく切り込みを石膏芯の内部に及ばない形態とすれば、原紙よりも硬い石膏芯の内部に切り込みを設ける必要がなくなるため、使用する切断装置の消耗を抑制することや、切り込みを設けるための設備や、石膏芯の内部に切り込みを設けた際に生じる削りカスを処理するための処理設備等を不要にすることができる。これに対し、先に挙げた従来技術で提案されている、原紙にミシン目を入れる構成の場合は、石膏芯内に所定の深さに及ぶ切り込みを設けておかないと、作業者が手で石膏ボード部材を破断した場合に、破断面が略平滑で綺麗な状態に切り分けることができなくなる。さらに、この場合は、石膏芯内に所定の深さに及ぶ切り込みを正確に設けるための装置や、削りカスを処理するための処理設備等が必要となるので、予め所望の寸法に切断した石膏ボード部材を製品とする場合よりも設備等が簡便になるものの、十分であるとは言い難かった。
【0029】
本発明のより好ましい形態としては、
図5(2)の模式的な断面図に示したように、切り取り線表示を、石膏ボードの表裏2面を構成する一方の石膏ボード用原紙に設けられた切り取り線表示の位置が、他方の石膏ボード用原紙に設けられた前記切り取り線表示の位置と、石膏芯を介して上下で整合するように設け、これらの切り取り線表示の位置の全てに重ねて線状の切り込みを設ける構成とすることが挙げられる。このようにすれば、作業者は、何らの利器を用いることなく、手で切断(破断)するだけで所望の寸法の石膏ボード部材を得ることができ、一方の原紙面に線状の切り込みを設けた形態の石膏ボードよりも、容易に且つ円滑に、より手際よく石膏ボードを切断することが可能になる。さらに、石膏ボードの表裏の原紙のいずれにも線状の切り込みを設け、その位置関係が
図5(2)のようになるように構成した場合は、作業者がより手際よく石膏ボード部材を得ることができるようになることに加え、その切断面は、先に述べた、
図5(1)に示した表裏のうちの一方の面の原紙に切り取り線表示の位置に重ねて線状の切り込みを設ける構成とした場合に比べ、より綺麗(平坦)なものになる。
【0030】
〔石膏ボード〕
以下、本発明の石膏ボードを構成する要件について説明する。まず、本発明を構成する石膏ボードは、基本的には、従来より市販され、広く建材として使用されている、石膏を主成分とする石膏芯と、該石膏芯を密着被覆する石膏ボード用原紙とからなる表裏2面を有する面材である。本発明では、いわゆる「流し込み成形法」によって作製された従来公知の、石膏芯及び石膏ボード用原紙からなる、定められた寸法に調整された規格品の石膏ボード製品をいずれも使用できる。本発明の石膏ボードは、石膏芯を密着被覆した石膏ボード製品の表裏2面を構成する石膏ボード用原紙の、一方或いは両方の面に、切断する位置を表示した「切り取り線表示」を設けたことを特徴とする。さらに、好ましい実施形態として、この切り取り線表示の交点の1以上に、「穴状及び/又は短線状の切り込み」が設けられていること、或いは、切り取り線表示の少なくともいずれかの位置に重ねて、前記原紙に密着している石膏芯の表面に達する、「線状の切り込み」を有することを特徴とする。以下、これらの構成について説明する。
【0031】
〔切り取り線表示〕
本発明を構成する切り取り線表示は、施工作業者が従来行っていた、石膏ボードの切断する位置に印をする作業を省く、或いは、簡略化する目的のものである。したがって、
図3に示したように、寸法が正確に定められている規格品の石膏ボードの表裏2面を構成する石膏ボード用原紙の一方の面或いは両方の面に、特定の幅のピッチで設けておけば、切断して用いる構成の石膏ボードの汎用材料として使用でき、作業者が施工の際に行う、採寸して石膏ボードの切断する位置に印をする作業を簡略化できる。また、
図1や
図2に示したように、施工者の要望に基づき、特定の施工現場での切断作業に合致する特定の位置に、切り取り線表示を設けることも好ましい形態である。このような形態の石膏ボード製品は、規格化された住宅建設用の製品として、或いは、同じ間取りの部屋が多数設けられる集合住宅や集合事務所用などの製品として有用である。
【0032】
切り取り線表示は、石膏ボードの表裏2面を構成する石膏ボード用原紙の一方の面或いは両方の面に、例えば、印刷することで容易に形成できる。切断後に得られた石膏ボード部材は、住宅等を施工するためのものであることから、切り取り線表示の線種及び線幅等は、切断した石膏ボード部材を施工した場合に、施工精度(寸法精度)に影響を及ぼさなければいずれでもよい。すなわち、施工作業者が、切断する位置を視認でき、且つ、その線に沿って、鋸やカッターナイフ等の利器で切断した場合に、線が太すぎて切断した石膏ボード部材に寸法誤差が生じるといったことがなければいずれでもよい。したがって、切り取り線表示を印刷する場合、図示したような連続した直線であっても、不連続の線や、切断する始点と終点のみを印したものでもよい。また、切り取り線表示は、通常、直線であることが多いが、施工現場によっては、曲線であることを要求される場合も考えられる。なお、切り取り線表示は、作業者が、切断する位置を視認できればよいことから、切り取り線表示を設ける具体的な方法は、印刷に限定されるものではない。
【0033】
切り取り線表示は、石膏ボードの表裏2面を構成する石膏ボード用原紙の少なくとも一方に設けられていればよい。また、先に述べたように、施工精度(寸法精度)を高めるためには、
図1に示したように、石膏ボード用原紙の両方に設け、さらに、その際に、一方の石膏ボード用原紙に設けられた切り取り線表示の位置に、上下で整合するように、他方の面の切り取り線表示を設けることが好ましい。切り取り線表示を印刷する場合、原紙に予め印刷しておくことも可能である。しかし、寸法精度を高めるためには、石膏ボード製品に印刷するように構成することが好ましい。
【0034】
〔切り取り線表示の交点に設ける穴状及び/又は短線状の切り込み〕
本発明の好ましい形態を構成する穴状及び/又は短線状の切り込みは、前記切り取り線表示が、該切り取り線表示同士が交差する交点を持つようにして2以上設けられている場合に、この交点の1以上に設けられる。先に述べたように、この穴状及び/又は短線状の切り込みは、切断作業を開始する際に、鋸やカッターナイフ等の利器の刃先を入れるためのものである。このため、刃先の先端が引っかかる程度のものであればいずれの形状のものでもよく、穴又は短線の形状は、その開口部の形が、円形に限らず、三角、四角等の多角形等、様々な形状をとることも可能である。また、短線の形状としては、スリット状やクロス状等が挙げられる。
【0035】
穴状及び/又は短線状の切り込みにおける開口部の大きさは、カッターナイフ等の利器の刃先が入るものであればよく、特に限定されない。例えば、0.1~5.0mm程度であればよい。また、その深さは、
図4(1)又は(2)に示したように、例えば、原紙に密着している石膏芯の表面に達するものや、
図4(3)に示したように、石膏芯の内部に達するものなど、いずれであってもよい。さらに、本発明の好ましい形態を構成する穴状及び/又は短線状の切り込みの深さは、
図4(4)に示したように、石膏ボードの表裏2面を構成する一方の面の石膏ボード用原紙の面から、もう一方の面の石膏ボード用原紙に到達する貫通した形態(貫通孔)となるように構成されたものであってもよい。前記したように、
図4(4)は、原紙と石膏芯を一緒に切断する場合における好ましい形態である。
【0036】
上記した穴状及び/又は短線状の切り込みを設ける場合には、切り取り線表示同士が交差する交点の1以上に設ける。また、例えば、
図3に示したように、切り取り線表示同士が交差する交点のすべてに設けることも好ましい形態である。このようにすれば、作業者は、これらの穴状及び/又は短線状の切り込みのいずれかを始点として、手際よく鋸やカッターナイフ等の利器で切断を開始することができる。そして、さらに、前記交点に続く切り取り線表示に沿って鋸やカッターナイフ等の利器で、原紙のみを、或いは、原紙と石膏芯とを一緒に切断することで、所望の形状に切断された石膏ボード部材を手際よく得ることができる。
【0037】
〔線状の切り込み〕
本発明の好ましい形態を構成する線状の切り込みは、上記した切り取り線表示の少なくともいずれかの位置に重ねて設けられていることを要し、さらに、その深さは、原紙に密着している石膏芯の表面に達するものであることが好ましい。また、本発明を構成する線状の切り込みは、石膏芯の内部には及ばないものであることが好ましい。先述したように、石膏ボードの曲げ強度は原紙による割合が高く、原紙が切断されていれば、鋸やカッターナイフ等の利器を使用することなく、石膏芯を折ることで石膏ボードを切断することができる。勿論、切り取り線表示に重ねて設けられている線状の切り込みに沿って鋸やカッターナイフ等の利器を用いて、石膏ボードを切断することもできる。この場合も、原紙が切断されているのでより容易に切断できる。
【0038】
特に、
図1、
図2、或いは、
図5に示したように、施工者の要望に基づき、特定の施工現場での切断作業に合致する特定の位置に切り取り線表示を設けた場合は、作業者は、その表示のすべてに沿って切断することになるので、表示のすべてに重ねて、線状の切り込みを設けるようにすることが好ましい。より作業性を高めるための具体例としては、下記の全て満たす構成とすることがより好ましい。、まず、石膏ボードを構成する表裏にある原紙の面にいずれも切り取り線表示が設けられており、且つ、石膏ボードの表裏のうちの一方の原紙面に設けられた切り取り線表示の位置が、石膏ボードの表裏のうちの他方の面に設けられた切り取り線表示の位置と、石膏芯を介して上下で整合しており、さらに、これらの切り取り線表示のすべてに重ねて、線状の切り込みを設けた構成にすることが特に好ましい。このように構成すれば、石膏ボードの表裏のうちの一方の原紙面に設けられた線状の切り込みの位置に、上下で整合するように、石膏ボードの表裏のうちの他方の原紙面の線状の切り込みが設けられることになり、その位置関係が
図5(2)に示したように、原紙が切れている部分が上下で整合した構成となるため、手で石膏芯を破断することで石膏ボードを容易に切り分けることができるようになる。勿論、この場合も、作業者は、石膏芯を、鋸等の利器を用いて切断してもよい。
【0039】
本発明は、上記した特に好ましい構成に限定されず、石膏ボードの表裏のうちの一方の原紙面の切り取り線表示のみに重ねて、連続した線状の切り込みを設けた構成としてもよい。この場合、石膏芯を折ると、他方の原紙面は切断されずにつながった状態になるが、つながっている原紙を、鋸やカッターナイフ等の利器で切断することで、目的の寸法の石膏ボード部材に手際よく切り分けることができる。また、本発明の好ましい形態を構成する線状の切り込みは、その深さを、原紙に密着している石膏芯の表面に達するものとし、石膏芯の内部には及ばない状態のものとすることが好ましい。このようにすることで、切り込みが石膏芯の内部深くに及んでいた場合に懸念される、搬送工程や、切断作業の前に石膏芯が折れてしまうといった事故が起こる可能性を低減することができる。
【0040】
本発明で規定する、「石膏を主成分とする石膏芯と、前記石膏芯の少なくとも表裏2面を密着被覆した石膏ボード用原紙とからなる面材である石膏ボード」は、先に述べたように、いわゆる「流し込み成形法」によって作製される。これに対し、石膏ボードの製造方法には、石膏製の板や石膏芯を作成後、石膏ボード用原紙を糊等の接着剤で貼り付けることで得る方法もある。この場合は、石膏製の板や石膏芯と原紙が接着剤を介して積層されることになるので、本発明で規定する構成の「石膏ボード用原紙が、石膏芯の少なくとも表裏2面を密着被覆した状態の石膏ボード」とはならない。この構成の違いから、下記に述べるように、本発明で規定する構成以外の石膏ボードでは、本発明で達成される効果を得ることができない。
【0041】
すなわち、本発明者らの検討によれば、本発明で規定する構成の石膏ボードの場合は、例えば、壁紙を貼る際に、先に述べたようにして作業者が石膏ボードを切断して得た石膏ボード部材内に切り込みが設けられていることで、壁紙と石膏芯の間が湿潤状態になる場合があったとしても、原紙が石膏芯から剥がれることはない。その理由は、本発明で規定する構成の石膏ボードは、いわゆる流し込み成形法で、焼石膏、水を含むスラリーを上下の原紙間に流し込んで作製されるため、得られる石膏ボードは、紙の繊維と焼石膏が水和して生成する二水石膏の結晶とが絡み合うことから、原紙により石膏芯が密着被覆されている状態になるためであると考えられる。これに対し、本発明者らの検討によれば、予め用意した石膏製の板や石膏芯に予め切り込みを設けた原紙が接着剤を介して積層させた構成の石膏ボード(石膏板)の場合や、予め用意した石膏製の板や石膏芯に接着剤を介して積層させた石膏ボード用原紙に、切り取り線表示と、これに重ねて切り込みを設けた構成とした場合は、壁紙を貼る際に、石膏製の板や石膏芯と原紙とを上記した糊等の接着剤で貼り付けているため、壁紙と石膏芯の間が湿潤状態になった際に、接着剤の接着力が低下することにより、石膏ボード用原紙が剥離することが生じる。上記したように、本発明で規定する構成の石膏ボード以外の場合は、石膏ボード用原紙が剥離するという重大な問題が生じてしまい、実用上、利用できる技術となり難い。
【0042】
本発明の好ましい形態を構成する線状の切り込みは、前記した切り取り線表示の少なくともいずれかの位置に重ねて設けられていることを要するが、切り取り線表示と線状の切り込みは、その位置が完全に一致している必要はなく、線状の切り込みが目的とする部材の寸法となるように形成されていればよい。また、切り取り線表示は、線状の切り込みの位置を作業者が視認できるものであればいずれでもよく、本発明の目的を達成できる。
【0043】
〔その他のマーク表示〕
本発明の石膏ボードの好ましい形態として、より作業者が手際よく作業ができるようにする目的で、
図6に示したように、石膏ボードを構成する原紙に番号等の目印を印刷して、作業者が、切断した石膏ボード部材を区別できるようにすることが挙げられる。さらには、原紙に、切断する順番を示すマーク表示(図中では、丸付き文字で表示)を設けておくことも好ましい形態である。
図6に示した例では、切り取り線表示に重ねて設けた線状の切り込みを白線で示し、切り取り線表示のみの部分を黒線で示している。
図6に示した例では、この黒線の切り取り線表示と、切り取り線表示に重ねた線状の切り込みを設けた切り取り線表示との交点に、鋸やカッターナイフ等の利器の刃先が入るサイズの穴状の切り込みが設けられている。さらに、切り取り線表示のみでも、この穴状の切り込みを始点として切り取り線表示に沿って、鋸やカッターナイフ等の利器で原紙を切断できるが、
図6に示した例では、切り取り線表示に重ねて、線状の切り込みを設けている。
【0044】
本発明の石膏ボードは、上記したように、切断又は破断した石膏ボード部材を作業者が区別しやすくするために番号等のマーク表示を設けてもよい。その場合、
図2(1)に示したように、石膏ボードに設けた番号等のマークに整合するように、設置する側にも同一の番号等を記載しておけば、より手際よく施工作業をすることができるようになる。
図2の(2)~(4)は、いずれも本発明の石膏ボードの一例である。具体的に説明すると、
図2の(2)及び(3)は、切り取り線表示を設けた例であり、
図2(4)は、切り取り線表示の交点に穴状の切り込みを設けた例である。
図2の(2)及び(3)の切り取り線表示の全てに重ねて、線状の切り込みを設けることがより好ましい。
【0045】
また、
図2(1)は、施工する現場を説明するための模式的な図であり、それぞれの大きさの石膏ボード部材を配置する箇所に、
図2の(2)~(4)に記したマーク表示に一致する番号が記載されている。
図2(3)及び(4)では、不要で端材となる部分に「×」印を付けている。このように構成した本発明の石膏ボードを用いると、現場での施工作業がより円滑に、且つ、迅速に行えるようになる。勿論、上記した
図2の(2)~(4)において、切り取り線表示に重ねて連続した線状の切り込みを設けた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10:石膏ボード用原紙(製造時上側)
20:石膏ボード用原紙(製造時下側)
30:石膏芯
40:切り取り線表示
50:穴
60:切り取り線表示+切り込み線