IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レメゲン,エルティーディー.の特許一覧

特開2023-85555抗Her2抗体薬物コンジュゲートの製剤
<>
  • 特開-抗Her2抗体薬物コンジュゲートの製剤 図1
  • 特開-抗Her2抗体薬物コンジュゲートの製剤 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085555
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】抗Her2抗体薬物コンジュゲートの製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20230613BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230613BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230613BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230613BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230613BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230613BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/10
A61K9/08
A61P35/00
A61K39/395 L
A61K9/19
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065779
(22)【出願日】2023-04-13
(62)【分割の表示】P 2021500575の分割
【原出願日】2020-03-25
(31)【優先権主張番号】201910231203.4
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520087262
【氏名又は名称】レメゲン シーオー.,エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】REMEGEN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.58 Beijing Middle Road, Yantai Development Zone, Yantai District, China(Shandong)Pilot Free Trade Zone, Yantai, Shandong 264006 China
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】李 壮林
(72)【発明者】
【氏名】徐 巧玉
(72)【発明者】
【氏名】姚 雪静
(72)【発明者】
【氏名】鮑 倩ジン
(72)【発明者】
【氏名】房 健民
(57)【要約】
【課題】抗Her2抗体薬物コンジュゲートの製剤の提供。
【解決手段】本発明は、非還元糖と、組換えヒト化抗Her2モノクローナル抗体-MMAE複合体と、界面活性剤との混合物を含む医薬製剤に関する。前記医薬製剤は、粒子状物質の減少、凝集体形成の低減、コンジュゲートの安定性の改善、凍結乾燥粉末の外観の改善などの特徴を有する。本発明は、抗体-薬物コンジュゲートの水含有液体医薬製剤であって、抗体-薬物コンジュゲート、非還元糖、アミノ酸、カオトロピック剤を含み、前記非還元糖は、マンニトール、ショ糖、トレハロース、又はそれらの組み合わせから選ばれ、前記アミノ酸は、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、又はそれらの組み合わせから選ばれ、前記カオトロピック剤は、グリセリン、Tween80、又はそれらの組み合わせから選ばれる、水含有液体医薬製剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗Her2抗体薬物コンジュゲートの製剤に関し、抗腫瘍薬の分野に属する
【背景技術】
【0002】
腫瘍を標的とした生物学的療法は、がん治療の研究においてますます注目を集めている
。その中で、モノクローナル抗体は標的特異性が高く、副作用が少ないが、単独で使用し
た場合、その有効性は比較的限られている。現在、最も成功している抗腫瘍モノクローナ
ル抗体薬は、例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ球性腫瘍(CLL)な
どを標的とする。
Her2/neuとしても知られるErbB2は、EGFRファミリーの第2のメンバ
ーであり、ErbB2は、EGFRファミリーの他の3つのメンバーとヘテロダイマーを
形成して、生物学的役割を果たす。ErbB2をコードするneu遺伝子は、ラット神経
芽細胞腫から最初に単離されたものである。ヒト体細胞のneu遺伝子の相同遺伝子は、
Her2と称され、17番染色体の長腕(17q21.1)にあり、コードされた生成物
ErbB2は、1255個のアミノ酸からなり、分子量が約185kDaであり、そのう
ち、720~987番目がチロシンキナーゼ活性領域に属する。ErbB2は、PI3K
及びMAPKシグナル伝達経路を介して作用することに加えて、サイクリン(cycli
n)D及びc-mycの発現を低下させ、さらに、サイクリン依存性キナーゼ(cycl
in-dependentkinase、cdk)阻害剤p27kiplの発現を低減さ
せ、cdk2の活性が阻害されて細胞増殖を引き起こす。研究の拡大及び深まりにつれて
、HER2がさまざまな腫瘍で発現及び過剰発現することを発見しているため、悪性腫瘍
を治療するためにHER2を標的とする有効な医薬品が臨床的に必要とされ、現在、市販
されているHer2を標的とするモノクローナル抗体は、3つの種類がある(表1を参照
)。
【0003】
【表1】
【0004】
抗体標的化の特徴に基づいて、新世代の生物学的標的化薬物:抗体-薬物コンジュゲー
ト(Antibody Drug Conjuate、ADC)が出現し、ADCは、抗
体、細胞毒素、及び両方を連結するリンカーの3つの部分からなる。モノクローナル抗体
を細胞毒素とカップリングした後、抗体-薬物コンジュゲートは、モノクローナル抗体の
標的性を使用して、がん細胞の表面の受容体を特異的に認識し、受容体に結合してから、
細胞に入り、細胞内プロテアーゼを使用して細胞毒性物質を放出し、がん細胞が増殖する
のを防ぎ、がん細胞を殺す。従来技術において、一般に、哺乳動物細胞培養を使用して発
現抗体を生成し、高度に精製された抗体は、リンカーを介して細胞毒素MMAEにカップ
リングされ、抗体-薬物コンジュゲート(Antibody Drug Conjuat
e、ADC)を取得する。抗体薬物カップリング技術は、小分子毒素薬物と生物学的タン
パク質を統合し、両方の利点を備え、新世代の治療製品になり、薬物の有効性を大幅に高
めるとともに、毒性の副作用を軽減する。現在、米国FDAで承認された4つのADC薬
がある(表2を参照)。
【0005】
【表2】
【0006】
他の生体高分子薬と同様に、ADC薬は、分解、例えば、酸化、脱アミド化及び断片化
、ならびに微粒子及び凝集体の形成を受けやすい。さらに、薬物カップリング自体が安定
性を低下させ、抗体の物理化学的特性を変化させる可能性がある。例えば、DM1を抗-
HER2抗体であるトラスツズマブにカップリングさせると、抗体のCH2ドメインの安
定性が失われる(非特許文献1:Physicochemical Stability
of the Antibody-Drug Conjugate Trastuzu
mab-DM1: Changes due to Modification and
Conjugation Processes. Aditya A. Wakank
arら、 Bioconjugate Chemistry 2010: 21 (9)
、 1588-1595)。ADC薬は、一般に疎水性であり、全体として、カップリン
グされていない抗体よりも不溶性である可能性があるため、凝集、微粒子の形成及び表面
吸着を起こしやすくなる。輸送及び保管中に安定したADC薬を提供するため、製剤中の
各添加剤を注意深く選択する必要がある。現在、市販されているADC薬の添加剤の成分
を表3に示す。現在市販されているADC製剤に使用される添加剤成分の種類は、依然と
しても非常に限られており、関連する製剤成分の選択肢が多いため、輸送及び保管中に安
定性を提供するADC添加剤製剤の組み合わせを開発し、これは、大量の添加剤製剤組成
へのスクリーニング及び好適な濃度の特定に関し、多大な労力及び長い時間を必要とする
【0007】
【表3】
【0008】
上記の4つのADC製剤添加剤成分は、各製剤のいずれにも独立した特性を持つ。モノ
クローナル抗体薬の壊れやすい安定性と構造の複雑さのために、そのような薬を製造して
保管することは非常に困難になる。抗体の異質性構造、特に相補性決定領域(CDR)及
びFcグリコシル化により、異なるモノクローナル抗体の製剤開発のそれぞれをケースバ
イケースで実施する必要がある(非特許文献2:Monoclonal antibod
ies: formulations of marketed products a
nd recent advances in novel delivery sys
tem 、Yanan Cui等、Drug Development and Ind
ustrial Pharmacy、第43卷、第4期、第519~530頁、2017
年)。しかも、ADC薬は、さらにカップリング及び毒素分子に関するため、その製剤開
発に独自性がより高くなる。
【0009】
特許出願(特許文献1:CN105008398A又は特許文献2:WO201507
4528A1)は、ヒト化RC48抗体薬物コンジュゲートを開示しており、ここで、ヒ
ト化RC48抗体は、Her2を標的とするモノクローナル抗体(受託番号C20131
70 中国典型培養物保蔵センターに寄託されたハムスター卵巣細胞(CHO細胞)によ
って分泌される抗体、又はそれに由来する抗体)であり、毒物は、Monomethyl
AuristatinE(MMAE)から選択され、該毒物は、アプリシアトキシンの
誘導体に属する。リンカーは、Maleimido-Caproyl-Valine-C
itrulline-p-AminoBenzyloxy (mc-VC-PAB)から
選択され、組換えヒト化抗Her2モノクローナル抗体-MMAE複合体のうち、モノク
ローナル抗体とMMAEは、システインを介してリンカーに連結してなる。該薬物は、H
er2陽性腫瘍に対して優れた治療効果を達成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】CN105008398A
【特許文献2】WO2015074528A1
【特許文献3】CN201810998055.4
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Physicochemical Stability of the Antibody-Drug Conjugate Trastuzumab-DM1: Changes due to Modification and Conjugation Processes. Aditya A. Wakankarら、 Bioconjugate Chemistry 2010: 21 (9)、 1588-1595
【非特許文献2】Monoclonal antibodies: formulations of marketed products and recent advances in novel delivery system 、Yanan Cui等、Drug Development and Industrial Pharmacy、第43卷、第4期、第519~530頁、2017年
【非特許文献3】Human Epidermal Growth Factor Receptor 2 (HER2) in Cancers:Overexpression and Therapeutic Implications、Nida Iqbal and Naveed Iqbal、Molecular Biology International、Volume 2014、 Article ID 852748
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記試験に示すように、カップリングによる組換えヒト化抗Her2モノクローナル抗
体-MMAE複合体は、精製された後、通常のバッファーへの溶解度が低く、裸眼で見え
る不溶性粒子が現れ、注射液の基準を満たさないことが分かるが、有効な治療用量を達成
するように、タンパク質濃度が5mg/ml以上に達する必要があるため、如何に一定の
保証濃度の確保を前提として不溶性粒子の問題を解決するかという方法は、さらなる研究
が必要である。さらに、タンパク質溶液を真空凍結乾燥する場合は、凍結乾燥粉末の外観
を良くしつつ、凍結乾燥プロセス中にタンパク質が損傷するのを防ぐために、凍結乾燥保
護剤を添加する必要がある。長期保存中でタンパク質凍結乾燥粉末がゆっくりと分解する
のを避けるために、適切なタンパク質安定剤を加える必要がある。如何に適切なタンパク
質安定剤を特定するかという方法は、大量の試験を通じて開発及び決定する必要もある。
【0013】
従って、本発明は、生物学的製剤に利用可能な添加剤に対して広範なスクリーニング及
び濃度範囲の研究を行うことにより、抗Her2モノクローナル抗体-MMAE複合体の
添加剤の組み合わせを得、抗Her2モノクローナル抗体-MMAE複合体は凍結乾燥の
前後で十分に溶解でき、不溶性粒子及び目に見える異物がヒト用注射液の基準を満たすと
ともに、凍結乾燥及び保存過程で長期間にわたって安定して維持し、再構成後でも重合ま
たは分解しにくく、良好な生物学的活性を維持するという技術的効果を達成することを、
目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、抗体-薬物コンジュゲートの水含有液体医薬製剤であって、抗体-薬物コン
ジュゲート、非還元糖、アミノ酸、カオトロピック剤を含み、前記非還元糖は、マンニト
ール、ショ糖、トレハロース、又はそれらの組み合わせから選ばれ、前記アミノ酸は、ヒ
スチジン、アラニン、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、又はそれらの組み合わせか
ら選ばれ、前記カオトロピック剤は、グリセリン、Tween80、又はそれらの組み合
わせから選ばれる、水含有液体医薬製剤を提供する。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記マンニトールの濃度は、100~300mmol/L
であり、好ましくは、190~300mmol/Lであり、より好ましくは、200~2
60mmol/Lであり、最も好ましくは、240~260mmol/Lであり、前記シ
ョ糖の濃度は、0~100mmol/Lであり、好ましくは、40~100mmol/L
であり、より好ましくは、60~100mmol/Lであり、最も好ましくは、40~6
0mmol/Lである。
幾つかの実施形態において、前記ヒスチジンは、ヒスチジン塩酸塩であり、濃度が0~
100mmol/Lであり、好ましくは、5~50mmol/Lであり、より好ましくは
、5~20mmol/Lであり、最も好ましくは、10mmol/Lであり、前記アルギ
ニンは、アルギニン塩酸塩であり、濃度が0~160mmol/Lであり、好ましくは、
20~100mmol/Lであり、より好ましくは、30~90mmol/Lであり、最
も好ましくは、約35mmol/Lである。
幾つかの実施形態において、前記グリセリンの含有量が0~1%であり、好ましくは、
0.2~0.5%(w/v)であり、前記Tween80が質量%で、0~0.02%(
w/v)である。
【0016】
さらに、前記抗体-薬物コンジュゲートの前記抗体は、抗HER2モノクローナル抗体
であり、抗体がカップリングした薬物は、MMAE又はMMAF及びその誘導体、或いは
DM1、DM4及びその誘導体である。
さらに、前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、抗HER2モノクローナル抗体
-vc-MMAEであり、前記抗HER2モノクローナル抗体とMMAEは、リンカーv
cにより連結され、ここで、前記リンカーとMMAEを連結した構造は、以下の通りであ
る。
【0017】
【化1】
【0018】
さらに、前記抗HER2モノクローナル抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、
(i)前記重鎖は、それぞれSEQ ID NO:1、2及び3で表されるアミノ酸配
列を有するCDR1-3を含み、及び/又は
(ii)前記軽鎖は、それぞれSEQ ID NO:4、5及び6で表されるアミノ酸
配列を有するCDR1-3を含む。
【0019】
さらに、前記モノクローナル抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体であることが好ましい

幾つかの実施形態において、前記抗HER2モノクローナル抗体-vc-MMAEの濃
度は、5~30mg/mlである。
幾つかの実施形態において、前記非還元糖は、240~260mmol/Lのマンニト
ール及び/又は40mmol/L~60mmol/Lのショ糖であり、前記アミノ酸は、
8~12mmol/Lのヒスチジン塩酸塩であり、前記カオトロピック剤は、0~0.0
2%(w/v)のTween 80である。
幾つかの実施形態において、前記非還元糖は、約260mmol/Lのマンニトール及
び約40mmol/Lショ糖であり、前記アミノ酸は、約10mmol/Lのヒスチジン
塩酸塩であり、前記抗体-薬物コンジュゲートの濃度は、約10mg/mlであり、前記
カオトロピック剤は、約0.02%(w/v)のTween 80である。
【0020】
幾つかの実施形態において、前記非還元糖は、約240mmol/Lのマンニトール及
び約60mmol/Lショ糖であり、前記アミノ酸は、約10mmol/Lのヒスチジン
塩酸塩であり、前記抗体-薬物コンジュゲートの濃度は、約10mg/mlであり、前記
カオトロピック剤は、約0.02%(w/v)のTween 80である。
さらに、前記製剤のpHは、4.5~7であり、好ましくは、5.6~6.8であり、
より好ましくは、5.6~6.5、5.6~6.4、5.6~6.3、6.1~6.4、
6.1~6.3である。
前記製剤のpHは、NaOH又は塩酸で調整される。
幾つかの実施形態において、前記凍結乾燥医薬製剤は、上記水含有液体医薬製剤を凍結
乾燥することにより得られる。
さらに、薬物の凍結乾燥前の水含有液体医薬製剤は、約260mmol/Lのマンニト
ール、約40mmol/Lのショ糖、約10mmol/Lのヒスチジン塩酸塩、約0.0
2%(w/v)のTween 80、約10mg/mlの抗HER2モノクローナル抗体
-vc-MMAEを含み、pHが5.6~6.8である。
【0021】
さらに、薬物の凍結乾燥前の水含有液体医薬製剤は、約240mmol/Lのマンニト
ール、約60mmol/Lのショ糖、約10mmol/Lのヒスチジン塩酸塩、0.02
%のTween 80、約10mg/mlの抗HER2モノクローナル抗体-vc-MM
AEを含み、pHが5.6~6.8である。
さらに、薬物の凍結乾燥前の水含有液体医薬製剤に含まれる前記非還元糖は、マンニト
ール及びショ糖であり、それらの濃度は、それぞれ約47.36mg/ml及び約13.
69mg/mlであり、前記アミノ酸は、ヒスチジン塩酸塩であり、その濃度は、約2.
10mg/mlであり、前記カオトロピック剤は、Tween 80であり、その含有量
は、約0.02%(w/v)である。
さらに、薬物の凍結乾燥前の水含有液体医薬製剤に含まれる前記非還元糖は、マンニト
ール及びショ糖であり、それらの濃度は、それぞれ約43.72mg/ml及び約20.
54mg/mlであり、前記アミノ酸は、ヒスチジン塩酸塩であり、その濃度は、約2.
10mg/mlであり、前記カオトロピック剤は、Tween 80であり、その含有量
が約0.02%(w/v)である。
【0022】
本発明は、さらに、Her2の異常発現による疾患を治療する薬物の調製における上記
医薬製剤の用途を提供し、前記異常発現による疾患は、がんであることがさらに好ましく
、前記がん症は、Her2陽性がんであることがさらに好ましく、前記Her2陽性がん
は、乳がん、卵巣がん、胃がん、尿路上皮がん、胃食道接合部がん、食道がん、子宮内膜
がん、肺がん又は膀胱がんであることがさらに好ましい(非特許文献3 Human E
pidermal Growth Factor Receptor 2 (HER2)
in Cancers:Overexpression and Therapeut
ic Implications、Nida Iqbal and Naveed Iq
bal、Molecular Biology International、Volu
me 2014、 Article ID 852748;特許文献3:CN20181
0998055.4を参照)。
【0023】
本発明は、さらに、抗体-薬物コンジュゲート医薬製剤を調製するための方法を提供す
る。前記方法は、
(1)上記のいずれかの製剤を調製すること、及び
(2)該製剤中の抗体-薬物コンジュゲートの安定性を評価することを含む。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
抗体-薬物コンジュゲートの水含有液体医薬製剤であって、抗体-薬物コンジュゲート、非還元糖、アミノ酸、カオトロピック剤を含み、前記非還元糖は、マンニトール、ショ糖、トレハロース、又はそれらの組み合わせから選ばれ、前記アミノ酸は、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、及び上記アミノ酸の塩酸塩、又はそれらの組み合わせから選ばれ、前記カオトロピック剤は、グリセリン、Tween80、又はそれらの組み合わせから選ばれる、水含有液体医薬製剤。
(項目2)
前記マンニトールの濃度は、100~300mmol/Lであり、好ましくは、190~300mmol/Lであり、より好ましくは、200~260mmol/Lであり、最も好ましくは、240~260mmol/Lであり、前記ショ糖の濃度は、0~100mmol/Lであり、好ましくは、40~100mmol/Lであり、より好ましくは、60~100mmol/Lであり、最も好ましくは、40~60mmol/Lである、項目1に記載の水含有液体医薬製剤。
(項目3)
前記ヒスチジンは、ヒスチジン塩酸塩であり、その濃度が0~100mmol/Lであり、好ましくは、5~50mmol/Lであり、より好ましくは、5~20mmol/Lであり、最も好ましくは、10mmol/Lであり、前記アルギニンは、アルギニン塩酸塩であり、その濃度は、0~160mmol/Lであり、好ましくは、20~100mmol/Lであり、より好ましくは、30~90mmol/Lであり、最も好ましくは、35mmol/Lである、項目1又は2に記載の水含有液体医薬製剤。
(項目4)
前記グリセリンの含有量は、0~1%であり、好ましくは、0.2~0.5%(w/v)であり、前記Tween80は、質量%で0~0.02%(w/v)である、項目1~3のいずれか1項に記載の水含有液体医薬製剤。
(項目5)
前記抗体-薬物コンジュゲートの前記抗体は、抗HER2モノクローナル抗体であり、抗体がカップリングした薬物は、MMAE又はMMAF及びその誘導体、或いはDM1、DM4及びその誘導体である、項目1~4のいずれか1項に記載の水含有液体医薬製剤。
(項目6)
前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、抗HER2モノクローナル抗体-vc-MMAEであり、前記抗HER2モノクローナル抗体とMMAEは、リンカーvcにより連結され、ここで、前記リンカーとMMAEを連結した構造は、
【化1A】
である、項目5に記載の水含有液体医薬製剤。
(項目7)
前記抗HER2モノクローナル抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、
(i)前記重鎖は、それぞれSEQ ID NO:1、2及び3で表されるアミノ酸配列を有するCDR1-3を含み、及び/又は
(ii)前記軽鎖は、それぞれSEQ ID NO:4、5及び6で表されるアミノ酸配列を有するCDR1-3を含み、
前記モノクローナル抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体であることが好ましい、項目5又は6に記載の水含有液体医薬製剤。
(項目8)
前記抗HER2モノクローナル抗体-vc-MMAEの濃度は、5~30mg/mlである、項目1~7のいずれか1項に記載の水含有液体医薬製剤。
(項目9)
前記非還元糖は、240~260mmol/Lのマンニトール及び/又は40mmol/L~60mmol/Lのショ糖であり、前記アミノ酸は、8~12mmol/Lのヒスチジン塩酸塩であり、前記カオトロピック剤は、0~0.02%(w/v)のTween80である、項目8に記載の水含有液体医薬製剤。
(項目10)
前記非還元糖は、約260mmol/Lのマンニトール及び約40mmol/Lのショ糖であり、前記アミノ酸は、約10mmol/Lのヒスチジン塩酸塩であり、前記抗体-薬物コンジュゲートの濃度は、約10mg/mlであり、前記カオトロピック剤は、0.02%(w/v)のTween 80である、項目9に記載の水含有液体医薬製剤。
(項目11)
前記非還元糖は、約240mmol/Lのマンニトール及び約60mmol/Lのショ糖であり、前記アミノ酸は、約10mmol/Lのヒスチジン塩酸塩であり、前記抗体-薬物コンジュゲートの濃度は、約10mg/mlであり、前記カオトロピック剤は、約0.02%(w/v)のTween 80である、項目10に記載の水含有液体医薬製剤。
(項目12)
前記製剤のpHは、4.5~7であり、好ましくは、5.6~6.8であり、より好ましくは、5.6~6.5、5.6~6.4、5.6~6.3、6.1~6.4、6.1~6.3である、項目1~11のいずれか1項に記載の水含有液体医薬製剤。
(項目13)
項目1~12のいずれか1項に記載の水含有液体医薬製剤を凍結乾燥させることにより得られる、抗体-薬物コンジュゲートの凍結乾燥医薬製剤。
(項目14)
前記水含有液体医薬製剤は、約260mmol/Lのマンニトール、約40mmol/Lのショ糖、約10mmol/Lのヒスチジン塩酸塩、約0.02%(w/v)のTween 80、約10mg/mlの抗HER2モノクローナル抗体-vc-MMAEを含み、pHが5.6~6.8である、項目13に記載の凍結乾燥医薬製剤。
(項目15)
前記水含有液体医薬製剤は、約240mmol/Lのマンニトール、約60mmol/Lのショ糖、約10mmol/Lのヒスチジン塩酸塩、約0.02%のTween 80、約10mg/mlの抗HER2モノクローナル抗体-vc-MMAEを含み、pHが5.6~6.8である、項目13に記載の凍結乾燥医薬製剤。
(項目16)
前記水含有液体医薬製剤に含まれる前記非還元糖は、マンニトール及びショ糖であり、それらの濃度がそれぞれ約47.36mg/ml及び約13.69mg/mlであり、前記アミノ酸は、ヒスチジン塩酸塩であり、その濃度が約2.10mg/mlであり、前記カオトロピック剤は、Tween 80であり、その含有量が約0.02%(w/v)である、項目13に記載の凍結乾燥医薬製剤。
(項目17)
前記水含有液体医薬製剤に含まれる前記非還元糖は、マンニトール及びショ糖であり、それらの濃度がそれぞれ約43.72mg/ml及び約20.54mg/mlであり、前記アミノ酸は、ヒスチジン塩酸塩であり、その濃度が約2.10mg/mlであり、前記カオトロピック剤は、Tween 80であり、その含有量が約0.02%(w/v)である、項目13に記載の凍結乾燥医薬製剤。
(項目18)
項目1~17のいずれか1項に記載の医薬製剤のHer2の異常発現による疾患を治療する薬物の調製における用途であって、前記異常発現による疾患は、さらに好ましくは、がん症であり、前記がん症は、さらに好ましくは、Her2陽性がんであり、前記Her2陽性がんは、さらに好ましくは、乳がん、卵巣がん、胃がん、尿路上皮がん、胃食道接合部がん、食道がん、子宮内膜がん、肺がん又は膀胱がんである、用途。
(項目19)
(1)項目1~17のいずれかの製剤を調製すること、及び
(2)該製剤中の抗体-薬物コンジュゲートの安定性を評価すること、を含む抗体-薬物コンジュゲート医薬製剤を調製するための方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の抗Her2モノクローナル抗体-MMAE複合体は凍結乾燥の前後で十分に溶
解でき、不溶性粒子及び目に見える異物がヒト用注射液の基準を満たすとともに、凍結乾
燥及び保存過程で長期間にわたって安定して維持し、再構成後でも重合または分解しにく
く、良好な生物学的活性を維持するという技術的効果を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、精製後のベア抗体のSDS-PAGE電気泳動像を示し、ここで、レーン1~2は、抗体非還元電気泳動を示し、レーン3~4は、抗体還元電気泳動を示し、図1の結果より、実験で得られたモノクローナル抗体の純度がさらなる実験の要件を満たすことが明らかになる。
図2図2は、カップリングされたADCの10% SDS-PAGE電気泳動像を示し、ここで、Naは、非還元電気泳動を示し、Nbは、抗体がTCEPで還元された後の非還元電気泳動を示し、Raは、RC48-vc-MMAE還元電気泳動を示し、Rbは、抗体がTCEPで還元された後の還元電気泳動を示し、図2の結果より、得られたカップリングADCの純度がさらなる実験の要件を満たすことが明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施例1:抗体の精製
マウスモノクローナル抗体mRC48及び関連するヒト化抗体RC48は、特許出願(
CN105008398A又はWO2015074528A1)の実施例に開示された関
連方法に基づいて得られ、ヒトIgG1κ重鎖定常領域及び重鎖可変領域RC48-VH
、並びにヒトIgG1κ軽鎖定常領域及び軽鎖可変領域RC48-VLを含み、上記の増
幅された各フラグメントをそれぞれ発現ベクターpcDNA3.0にサブクローニングし
た。構築された異なるプラスミドを懸濁CHO細胞(Invitrogen)にトランス
フェクションした。標準的な条件下で培養し、培地中の栄養物質がなくなり、細胞がさら
に成長しなくなったら、タンクに入れ、遠心分離またはろ過によって細胞を分離し、上清
を採取する。抗体タンパク質は上清に存在し、Protein Aアフィニティークロマ
トグラフィーカラムにロードして第1ステップの精製を行い、溶出された目的とするタン
パク質をカチオン充填剤のグクロマトグラフィーカラムにロードして第2ステップの精製
を行い、目的とするタンパク質のピークを収集する。その後、第3のステップのカラムに
ロードして目的のタンパク質透過モードで第3ステップの精製を行い、精製されたタンパ
ク質は、各指標の検査に合格した後、限外ろ過により濃縮する。タンパク質の濃度が約2
0~30mg/mlに達し、これは、抗体タンパク質ストック溶液であり、-80℃で長
期間保存できる。
ここで、RC48抗体のCDR配列は、以下の通りである。
【0027】
【表4】
【0028】
実施例2:抗体とMMAEのカップリング
ヒト化抗体RC48と薬物分子のカップリング
TCEP(Tris-2-carboxyethyl-phosphine)、DTP
A(Diethylene triamine pentacetate acid)の
母液をそれぞれカップリングバッファーに溶解させ、まず、カップリングバッファーで希
釈され、体積比1:1(v:v=1:1)でモノクローナル抗体と混合した。TCEPと
抗体の最終濃度モル比は、1.9:1であり、DTPAの最終濃度は、1mmol/Lで
ある。25℃で2.5hr撹拌して反応させた。TCEP還元の再現性は良好であり、還
元後の遊離チオール基の数は、3.5~4.5に達する可能性がある。
TCEP還元後、抗体は次のカップリングを直接に行うことができる。10mmol/
Lの薬物(vc-MMAE、vc-MMAF、mc-MMAF)を調製してDMSO(d
imethyl sulfoxide、ジメチルスルホキシド)に溶解させ、薬物とチオ
ール基のモル比で1.1:1でゆっくりと加え、25℃で2hr撹拌して反応させた。D
TNB法により412nmにおける遊離チオール基の濃度(0に近い)を検出し、精製し
て残留未反応薬物及びDMSOなどの遊離小分子を除去し、SDS-PAGE電気泳動法
、SEC、HPLC法によりカップリング状況を検出した。カップリング反応の再現性は
、良好であり、放出された遊離チオール基は完全にカップリングされることができ、結合
度が3.5~4.5である。
【0029】
実施例3:組換えヒト化抗Her-2モノクローナル抗体-MMAE複合体(RC48
-vc-MMAE)溶解及び純度に対するpHの影響に関する研究
実験条件:注射用組換えヒト化抗Her2モノクローナル抗体-MMAE複合体タンパ
ク質2g
0.1mol/Lのクエン酸、0.02mol/Lのトリス(ヒドロキシメチル)アミノ
メタン、0.02mol/Lのリン酸二水素ナトリウム、0.15mol/Lの塩化ナト
リウムの緩衝液に限外ろ過し、希釈倍数は、104倍以上であり、13部に均等に分割し
、各部分を孔径30kDの遠心式限外ろ過チューブでタンパク質濃度10mg/mlに濃
縮し、それぞれ塩酸又は水酸化ナトリウム溶液でpH値が4.2、4.6、5.0、5.
4、5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.4になる
まで調整し、清澄度を観察し、濃度変化を検出し(結果を表5に示す)、サンプルをクリ
ーンベンチ内でそれぞれ滅菌された膜孔径0.22μmのシリンジフィルターで滅菌され
た20ml バイアル瓶にろ過し、各pH値あたり3本であり、ボトル口部を滅菌済みの
ゴム栓で密封し、アルミキャップを締めた。25℃で保管し、0時間、1日目、3日目、
7日目に滅菌シリンジで採取し、SEC-HPLC純度の検査を行った(結果を表6に示
す)。
研究によると、実験条件下でタンパク質のpHを変更すると、タンパク質の溶解に大き
な影響を与え、pH5.4以下では、タンパク質は沈澱し、pH5.6以上では、タンパ
ク質の溶解性は良好であり、pH6.8以下では、3日間保存した場合にタンパク質凝集
体は、増加していないが、7日間保存した場合にわずかに増加し、pH7.0以上では、
凝集体は時間とともに増加し、pHが高いほど、凝集体が増加した(具体的な結果を表5
、表6に示す)。
【0030】
【表5】
【0031】
【表6】
【0032】
実施例4:添加剤のスクリーニング
初期段階での大量の情報分析及び試験スクリーニングを通じて、最初に、添加剤として
ショ糖、マンニトール、グリセリン、ヒスチジン、アルギニン、ポリソルベート80(即
ち、Tween 80)などを特定し、さらに候補添加剤をスクリーニングしながら、さ
らに以下の試験を実施した。
【0033】
【表7】
【0034】
【表8】
【0035】
説明:「-」は、白点の数が3個未満であることを意味し、「+」は、白点の数が3~
5個であることを意味し、「++」は、白点の数が5個を超えることを意味する。
【0036】
【表9】
【0037】
以上の結果から、アルギニンの添加は、タンパク質の目に見える異物の改善に明らかな
影響を及ぼさないことが分かった。ショ糖、グリセリン及びポリソルベート80を加える
と、いずれもタンパク質の状態を改善できる。従って、タンパク質を保護するために適量
なショ糖を製剤処方に添加し、タンパク質の溶解を促進するためにグリセリン及びポリソ
ルベート80を添加した。
【0038】
実施例5:真空凍結乾燥
-80℃の冷蔵庫からタンパク質ストック溶液を取り出して溶かし、「1×製剤バッフ
ァー」でタンパク質の濃度が10mg/mlになるまで正確に希釈し、無菌、発熱性物質
なしの標準的な20mlの凍結乾燥用バイアル瓶で分取り、1本あたり6mlであり、真
空凍結乾燥を行った。
凍結乾燥の条件:
予備凍結:温度-45℃、5時間;
1回乾燥:温度-26℃、40時間、真空度10~15Pa;
2回乾燥:温度25℃、10時間、真空度10~15Pa。
凍結乾燥後、ゴム栓を真空下で押し、凍結乾燥機から取り外し、アルミキャップを締め
た。
【0039】
実施例6:処方のスクリーニング
表10に設計された処方に従って、処方製剤凍結乾燥粉末の外観及び成形安定性を調査
した。凍結乾燥されたサンプルを4℃、37℃で保存し、それぞれ外観を0、1、3、7
日目に観察し、外観の良い製剤処方をスクリーニングし、結果を表11に示した。
【0040】
【表10】
【0041】
【表11】
【0042】
説明:1)「- -」は、集塊体が凍結乾燥前の体積の半分以下に収縮することを意味
し、「-」は、収縮しているが、集塊体の体積が凍結乾燥前の半分を超えることを意味し
、「+」は、辺縁部のみがわずかに収縮し、集塊体の体積が凍結乾燥前とほぼ同じである
ことを意味し、「++」は、全く収縮していないが、集塊体の体積が凍結乾燥前と同じで
あることを意味する。
【0043】
凍結乾燥粉末外観の合格基準は、色が均一であり、細孔が緻密であり、保持凍結乾燥前
の体積、形状を基本的に変化せずに維持し、塊状又はスポンジ状の集塊構造を示すことで
ある。表11から、グリセリンを含む製剤処方が37℃で1日置いた後に僅かに収縮し、
7日置いた後に外観が収縮し、著しく窪んでいることを認めるため、ADC製剤の添加剤
としてグリセリンを除外したことが分かった。
【0044】
実施例7:凍結乾燥粉末処方の決定及び安定性の検査
凍結乾燥粉末の外観検査により、処方B7-B12が排除され、水分の含有量検査、目
に見える異物及び不溶性粒子検査、保存サンプルの安定性調査によりさらなる添加剤のス
クリーニングを行った(処方B1~B6)。
各処方の凍結乾燥粉末をそれぞれ37、25及び4℃で保存し、異なる時点でサンプリ
ングし、SDS-PAGE、逆相HPLC、リガンド結合法による生物活性、水分の含有
量、外観、pH値、目に見える異物及び不溶性粒子などの検査を行った。
【0045】
【表12】
【0046】
説明:「- -」は、集塊体が凍結乾燥前の体積の半分以下に収縮することを意味し、
「-」は、収縮しているが、集塊体の体積が凍結乾燥前の半分を超えることを意味し、「
+」は、辺縁部のみがわずかに収縮し、集塊体の体積が凍結乾燥前とほぼ同じであること
を意味し、「++」は、全く収縮していないが、集塊体の体積が凍結乾燥前と同じである
ことを意味する。
【0047】
表12から、処方B1~B6の凍結乾燥粉外観はいずれも要件を満たすことが分かった
【0048】
各処方あたり3本のサンプルを採取し、規定の方法に従って水分含有量を測定し、平均
値を取り、結果を表13に示した。
【0049】
【表13】
【0050】
処方B1、B2、B3、B4、B5、B6の水分含有量は、いずれも3%未満であり、
合格した。
各処方からランダムに5本のサンプルを採取し、規定の方法に従って再溶解した後に目
に見える異物を検査し、中でも、3本のサンプルを採取し、規定の方法に従って不溶性粒
子を測定し、結果を表14に示した。
【0051】
【表14】
【0052】
以上の結果から、目に見える異物及び不溶性粒子の検査では、処方B1、B3、B5が
規定を満たしていないため、排除されていることが分かった。
【0053】
【表15】
【0054】
【表16】
【0055】
【表17】
【0056】
説明:外観標準として、「- -」集塊体が凍結乾燥前の体積の半分以下に収縮するこ
とを意味し;「-」収縮しているが、集塊体の体積が凍結乾燥前の半分を超えることを意
味し;「+」辺縁部のみがわずかに収縮し、集塊体の体積が凍結乾燥前とほぼ同じである
ことを意味し;「++」全く収縮していないが、集塊体の体積が凍結乾燥前と同じである
ことを意味する。
【0057】
以上の結果によると、処方B2及び処方B4の異なる温度(4℃、25℃、37℃)に
おける安定性が良いが、処方B6の不溶性粒子が多すぎるため、排除されていることが分
かった。以上の試験により、処方B2及びB4は、凍結乾燥粉末の外観検査、凍結乾燥粉
末の水分含有量の測定、凍結乾燥粉末の再溶解後の目に見える異物及び不溶性粒子の検査
、安定性の点でいずれも優れたレベルに達した。
【0058】
上記の実験的証拠より分かるように、非還元糖、アミノ酸、カオトロピック剤という物
質のうち、具体的な添加剤の選択は、最終製剤に予測できない影響を与えることを示し、
本発明のHer2モノクローナル抗体-薬物コンジュゲートは、良好な製剤の組み合わせ
を得るために、大量の試験を通じて各性能を検査する必要がある。例えば、アルギニンを
添加すると、タンパク質の目に見える異物の改善に明らかな影響を与えない。ショ糖、グ
リセリン及びポリソルベート80を添加すると、いずれもタンパク質の凝集を改善できる
が、グリセリンを添加すると、凍結乾燥製品は、再構成後に、再構成された水溶液の外観
が収縮し、著しく窪みやすい。さらに、ショ糖の濃度が高すぎたり、マンニトールの濃度
が低すぎたりすると、再構成後の不溶性物質は増加してしまう。
これらの結果は、いずれも関連する試験を実施する前に予測しにくく、しかも、ADC
製剤は、複数の添加剤の併用に関連し、さらに、長期安定性試験などの要因に関連するた
め、ADC製剤の開発は非常に困難である。
大量の試験を通じて、各性能に優れたHer2 ADC製剤の組み合わせを特定し、抗
Her2モノクローナル抗体-MMAE複合体は、は凍結乾燥の前後で十分に溶解され、
不溶性粒子及び目に見える異物がヒト用注射液基準を満たすとともに、凍結乾燥及び保存
過程で長期間にわたって安定して維持し、特に、25℃又は37℃の高温条件下で長時間
置かれた場合に、依然としても良好な安定性を維持し、前記ADC製剤は、再構成後でも
重合または分解しにくく、良好な生物学的活性を維持する。
図1
図2
【配列表】
2023085555000001.app