(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085578
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】可変NDフィルタ
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1506 20190101AFI20230614BHJP
G02F 1/1523 20190101ALI20230614BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
G02F1/1506
G02F1/1523
G09F9/30 370Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020080372
(22)【出願日】2020-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】持塚 多久男
【テーマコード(参考)】
2K101
5C094
【Fターム(参考)】
2K101AA23
2K101DA13
2K101DB03
2K101DB28
2K101DB52
2K101DC03
2K101DC06
2K101DC37
2K101DC63
2K101DC64
2K101DC66
2K101ED01
2K101EE01
2K101EG52
2K101EG54
2K101EJ11
2K101EK03
5C094BA51
5C094EA05
5C094JA07
(57)【要約】
【課題】白濁及び干渉縞の発生を抑制することができる可変NDフィルタを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る可変NDフィルタ1は、第1の透明電極2と、第1の透明電極2に間隙Sを介して対向する第2の透明電極3と、間隙Sに収容された電解液4と、第1の透明電極2及び第2の透明電極3に電圧を印加する駆動回路5と、を備え、第1の透明電極2及び第2の透明電極3のそれぞれの電解液4との界面2b,3bが平坦状とされており、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の少なくともいずれかは無彩色の光を透過するFTO膜によって構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透明電極と、
前記第1の透明電極に間隙を介して対向する第2の透明電極と、
前記間隙に収容された電解液と、
前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に電圧を印加する駆動回路と、
を備え、
前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極のそれぞれの前記電解液との界面が平坦状とされており、
前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極の少なくともいずれかは無彩色の光を透過するFTO膜によって構成されている、
可変NDフィルタ。
【請求項2】
前記界面の表面粗さが50nm未満である、
請求項1に記載の可変NDフィルタ。
【請求項3】
前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極の一方は、無彩色の光を透過するFTO膜によって構成されており、
前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極の他方は、有彩色の光を透過するITO膜によって構成されている、
請求項1又は2に記載の可変NDフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変NDフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2012/118188号公報には、一対の基板と、一対の基板が互いに対向する一対の面のそれぞれに形成された一対の電極と、一対の電極の間に設けられた電解質層とを備える表示装置が記載されている。電解質層は、銀を含む金属塩によって構成されている。
【0003】
電極は、ITO、IZO、SnO2及びZnOの少なくともいずれかを含む透明電極である。一対の電極のうちの一方は比較的大きな凹凸が形成された透明導電性の粒子修飾電極であり、一対の電極のうちの他方は平滑な電極である。一対の電極に電圧を印加すると、一方の電極では金属塩中の銀イオンが還元されて銀として析出する一方、電圧を解除すると、銀は再び銀イオンとして溶解する。銀が平滑な電極上に形成されれば鏡状態となり、銀が粒子修飾電極上に形成されれば光が乱反射される黒状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/118188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した表示装置では、一方の電極が凹凸を有する粒子修飾電極である。そして、粒子修飾電極上で銀が析出することにより黒みを出すことが可能となる。しかしながら、この粒子修飾電極では、比較的大きな凹凸が形成されていることにより、電圧を印加していない透過状態において白濁が生じ、更に干渉縞が生じるという現状がある。従って、この表示装置は、白濁及び干渉縞が生じるため、カメラ等の光学機器への応用ができないという問題がある。
【0006】
本開示は、白濁及び干渉縞の発生を抑制することができる可変NDフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る可変NDフィルタは、第1の透明電極と、第1の透明電極に間隙を介して対向する第2の透明電極と、間隙に収容された電解液と、第1の透明電極及び第2の透明電極に電圧を印加する駆動回路と、を備え、第1の透明電極及び第2の透明電極のそれぞれの電解液との界面が平坦状とされており、第1の透明電極及び第2の透明電極の少なくともいずれかは無彩色の光を透過するFTO膜によって構成されている。
【0008】
この可変NDフィルタは、第1の透明電極及び第2の透明電極の間に電解液が収容されており、第1の透明電極及び第2の透明電極のそれぞれの電解液との界面が平坦状とされている。従って、第1の透明電極及び第2の透明電極に電圧を印加していない透過状態において、白濁の発生を抑制することができる。また、透過状態において干渉縞の発生を抑制することができる。よって、この可変NDフィルタをカメラ等に応用することができる。更に、第1の透明電極及び第2の透明電極のうちの少なくとも一方は、無彩色の光を透過するFTO膜である。従って、前述した界面が平坦であってもFTO膜によって黒色等の無彩色の光を透過するので、黒みを表現可能な可変NDフィルタとすることができる。
【0009】
前述した界面の表面粗さが50nm未満であってもよい。この場合、第1の透明電極及び第2の透明電極のそれぞれの界面の平坦性を高めることができるので、白濁及び干渉縞の発生をより確実に抑制することができる。
【0010】
第1の透明電極及び第2の透明電極の一方は、無彩色の光を透過するFTO膜によって構成されており、第1の透明電極及び第2の透明電極の他方は、有彩色の光を透過するITO膜によって構成されていてもよい。この場合、FTO膜によって黒みを含む無彩色を表現できると共に、ITO膜によって有彩色を表現することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、白濁及び干渉縞の発生を抑制することができる電子式可変NDフィルタ-を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る可変NDフィルタの断面を模式的に示す図である。
【
図2】ITO膜に金属塩を電析させたセルの分光特性を示すグラフである。
【
図3】FTO膜に金属塩を電析させたセルの分光特性を示すグラフである。
【
図4】変形例に係る可変NDフィルタの断面を模式的に示す図である。
【
図5】(a)は、ITO膜を用いた場合における表面の粗さの測定データを示す図である。(b)は、FTO膜を用いた場合における表面の粗さの測定データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しながら本開示に係るNDフィルタの実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0014】
本実施形態に係る可変NDフィルタ1は、金属塩析出型調光素子であり、例えば、カメラに搭載される光学フィルタである。一例として、可変NDフィルタ1は、カメラ用のソフトタイプハーフNDフィルタである。この場合、可変NDフィルタ1は、例えば、カメラ装置に内蔵されるセル固定枠に固定される。
【0015】
図1に示されるように、可変NDフィルタ1は、第1の透明電極2と、第1の透明電極2に間隙Sを介して対向する第2の透明電極3と、間隙Sに収容された電解液4と、第1の透明電極2及び第2の透明電極3に電圧を印加する駆動回路5とを備える。可変NDフィルタ1は、更に、間隙Sを封止するシール材6と、第1の透明電極2及び第2の透明電極3を間隙Sの反対側から挟み込む一対の透明基板7と、駆動回路5を制御する制御回路8とを備える。
【0016】
駆動回路5は、第1の透明電極2に電気的に接続される第1のリード線5bと、第2の透明電極3に電気的に接続される第2のリード線5cと、直流電源5dと、複数のスイッチ5fとを備える。なお、スイッチを含む駆動回路の構成は、駆動回路5の構成に限られず適宜変更可能である。
【0017】
第1の透明電極2及び第2の透明電極3のそれぞれは、例えば、電極対を構成する透明電極膜である。この場合、第1の透明電極2及び第2の透明電極3のそれぞれは、透明基板7に成膜形成されている。第1の透明電極2及び第2の透明電極3の少なくとも一方は、FTO(F-doped Tin Oxide:フッ化ドープ酸化スズ)によって構成されている。なお、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の双方がFTO膜によって構成されていてもよい。
【0018】
例えば、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の他方は、ITO(Indium TinOxide:酸化インジウムスズ)によって構成されている。第1の透明電極2及び第2の透明電極3のいずれかは、ITO透明電極膜であってもよい。この場合、例えば、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の表面抵抗値は10Ω/□である。
【0019】
透明基板7は、例えば、矩形板状とされている。透明基板7は、ガラス製であってもよいし、樹脂製であってもよい。透明基板7は、第1の透明電極2及び第2の透明電極3のいずれかが接触する内面7bと、内面7bの反対側を向く外面7cとを有する。例えば、内面7b及び外面7cは平滑面(平坦面であってもよい)とされている。外面7cには、反射防止膜が設けられていてもよい。例えば、一対の透明基板7の間の距離(一方の透明基板7から他方の透明基板7までの距離)は100μm以上且つ500μm以下である。
【0020】
第1の透明電極2及び第2の透明電極3のそれぞれを駆動回路5に接続するために、内面7b及び外面7cの面外方向D1から見たときにおける一対の透明基板7の位置は互いにずれている。これにより、各透明基板7の一部は、内面7b及び外面7cの面内方向D2の外側にはみ出している。
【0021】
シール材6は、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の間隙Sを囲んでいる。一対の透明基板7、第1の透明電極2、第2の透明電極3及びシール材6に囲まれた間隙Sに収容された電解液4は、金属塩析出型調光素子として光Lが透過する可変NDフィルタ1の光透過領域を構成する。
【0022】
第1の透明電極2は電解液4に接触する界面2bを有し、第2の透明電極3は電解液4に接触する界面3bを有し、界面2b及び界面3bは互いに対向している。界面2b及び界面3bは、例えば、平滑面である。一例として、界面2b及び界面3bは平坦面であってもよい。
【0023】
界面2bの表面粗さ(算術表面粗さRa)は、例えば、50nm未満である。また、界面2bの表面粗さは、40nm以下、30nm以下、20nm以下、又は10nm以下であってもよい。界面2bの表面粗さが50nm未満であることにより、第1の透明電極2及び第2の透明電極3に電圧を印加していない状態において可変NDフィルタ1の透明度が高い状態を確保することができる。すなわち、界面2bの表面粗さが50nm以上である場合、可変NDフィルタ1に白濁又は干渉縞が生じる懸念がある。界面3bについても同様である。このため、界面3bの表面粗さも、例えば、50nm未満である。
【0024】
電解液4は、例えば、メタノールを含む溶媒に銀イオン及び銅イオンの少なくともいずれかが含まれた液体である。一例として、電解液4は、炭酸プロピレン及びメタノールを溶媒として含むと共に、AgNO3(硝酸銀)、CuCl2(塩化第二銅)及びLiBr(臭化リチウム)を溶質として含む電解液である。例えば、電解液4は、メタノールよりも高沸点の非水溶媒、及び当該非水溶媒よりも含有重量が少ないメタノールを含有していてもよい。また、電解液4は、メタノールよりも高沸点の当該非水溶液が炭酸プロピレンを最も含有重量が多い成分とするものであってもよい。
【0025】
例えば、電解液4に含まれている硝酸銀の重量は電解液4に含まれる塩化第二銅の重量よりも大きい。電解液4には増粘剤が添加されていてもよい。この増粘剤は、例えば、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール又はポリメチルメタアクリレート等のポリマーによって構成されていてもよい。
【0026】
駆動回路5において、例えば、スイッチ5fがOFFとなっている場合には、電流は流れず、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の間には電圧が生じない。すなわち、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の間は無電位(フローティング電位)となるため、電解液4における金属陽イオン(例えばAg+、Cu2+)及び陰イオン(例えばNO3-、Cl-)は分散した状態となっている。従って、電解液4は無色透明であり、可変NDフィルタ1の光透過領域は、その全域で、すなわち、一方の透明基板7から第1の透明電極2,電解液4、第2の透明電極3及び他方の透明基板7に至るまで、可変NDフィルタ1の厚さ方向(面外方向D1)の全体が無色透明となる。
【0027】
一方、スイッチ5fがONとなっている場合には、第2のリード線5c及び第1のリード線5bを介して電流が流れ、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の間に電圧が生じる。このとき、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の間に電圧が印加されて、例えば、第1の透明電極2が負電極に設定され、第2の透明電極3が正電極に設定される。
【0028】
そして、正電極に設定された第2の透明電極3から負電極に設定された第1の透明電極2に向かって電場Eが生じる。電場Eの向きは、例えば、可変NDフィルタ1の厚さ方向(面外方向D1)に一致する。この電場Eによって、電解液4の金属陽イオン(例えばAg+、Cu2+)が負電極に設定された第1の透明電極2に移動して還元される。その結果、第1の透明電極2(界面2b)に、例えば、銀及び銅を含む析出層が形成されて光の透過率が低い低透過率面が形成される。
【0029】
駆動回路5は、制御回路8に接続されており、制御回路8によってスイッチ5fが制御されることにより、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の間に印加される電圧は可変とされている。第1の透明電極2及び第2の透明電極3の間に印加される電圧が可変とされていることにより、例えば、可変NDフィルタ1における光の透過率、色彩、明るさ及び分光特性が調整される。
【0030】
図2は、第1の透明電極2がITO膜によって構成されている場合における可変NDフィルタ1の光の透過率と当該光の波長との関係を示すグラフである。すなわち、
図2は、ITO膜に金属塩を電析させたセルの分光特性を示す。ところで、電解液4に含まれる銀イオンは、前述したように、電気的に還元されて銀として第1の透明電極2に析出するが、当該析出する析出粒子の形状又は大きさによって当該析出粒子が吸収する光の波長が異なることが知られている(プラズモン共鳴)。本実施形態では、このプラズモン共鳴の特性を用いて可変NDフィルタ1を透過する光の色彩を可変としている。
【0031】
図2及び後述する
図3では、電圧の大きさを4段階に分けた結果を示しており、グラフの実線が最も大きい電圧、二点鎖線が次に大きい電圧、一点鎖線が3番目に大きい電圧、破線が最も小さい電圧、の場合をそれぞれ示している。
図2に示されるように、第1の透明電極2がITO膜によって構成されている場合、可変NDフィルタ1を通る光の波長が大きいほど可変NDフィルタ1を通る光の透過率が高くなっている。
【0032】
すなわち、可視光の波長帯域(例えば400nm以上且つ700nm以下の波長)において波長が大きいほど光の透過率が高いので、赤みがかった光が透過される。また、電圧の調整によって第1の透明電極2に銀イオンを含む金属イオンを析出させると、可変NDフィルタ1を透過する光の色彩を、赤、青及び黄の3原色等、有彩色(マルチカラー)とすることが可能となる。
【0033】
図3は、FTO膜に金属塩を電析させたセルの分光特性を示す。
図3に示されるように、第1の透明電極2がFTO膜によって構成されている場合、第1の透明電極2がITO膜によって構成されている場合と比較して、可変NDフィルタ1を通る光の波長にかかわらず可変NDフィルタ1を通る光の透過率が安定している。この場合、可変NDフィルタ1を透過する光の波長によって光の透過率が変動しにくくなるので、黒みがかった光が透過される。従って、電圧の調整によって第1の透明電極2に銀イオンを含む金属イオンを析出させると、可変NDフィルタ1を透過する光の色彩を無彩色(フラットな特性を有する黒色又は灰色を含むニュートラルカラー)とすることが可能となる。
【0034】
次に、本実施形態に係る可変NDフィルタ1から得られる作用効果について詳細に説明する。
図1に示されるように、可変NDフィルタ1は、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の間に電解液4が収容されており、第1の透明電極2及び第2の透明電極3のそれぞれの電解液4との界面2b,3bが平坦状とされている。
【0035】
従って、第1の透明電極2及び第2の透明電極3に電圧を印加していない透過状態において、白濁の発生を抑制することができる。また、透過状態において干渉縞の発生を抑制することができる。すなわち、本実施形態に係る可変NDフィルタ1では、電解液4が透明な安定消色状態で散乱及び干渉縞が発生しない状態を維持することが可能である。
【0036】
よって、可変NDフィルタ1をカメラ等に応用することができる。更に、第1の透明電極2及び第2の透明電極3のうちの少なくとも一方は、無彩色の光を透過するFTO膜である。従って、界面2b,3bが平坦であってもFTO膜によって黒色等の無彩色の光を透過するので、黒みを表現可能な可変NDフィルタ1とすることができる。
【0037】
前述したように、界面2b,3bの表面粗さが50nm未満であってもよい。この場合、第1の透明電極2及び第2の透明電極3のそれぞれの界面2b,3bの平坦性を高めることができるので、白濁及び干渉縞の発生をより確実に抑えることができる。
【0038】
前述したように、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の一方は、無彩色の光を透過するFTO膜によって構成されており、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の他方は、有彩色の光を透過するITO膜によって構成されていてもよい。この場合、FTO膜によって黒みを含む無彩色を表現できると共に、ITO膜によって有彩色を表現することができる。なお、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の他方は、ITO膜以外(例えば、SnO2膜又はZnO膜)によって構成されていてもよい。
【0039】
以上、本開示に係る可変NDフィルタの実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る可変NDフィルタは、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、可変NDフィルタの各部の構成は、上記の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0040】
図4は、変形例に係る可変NDフィルタ11を示している。
図4に示されるように、可変NDフィルタ11は、前述した第1の透明電極2、第2の透明電極3及び電解液4の組Cを複数備える。すなわち、可変NDフィルタ11は、面外方向D1に沿って並ぶ2つの組Cを備え、各組Cの面外方向D1の両端側、及び一対の組Cの間、のそれぞれに透明基板7が配置されている。このように、複数の組Cを備えた可変NDフィルタ11であっても、前述と同様の効果が得られる。更に、複数の組Cを備えることにより、前述した可変NDフィルタ1と比較して、更に黒みがかかった光を透過できるという効果も得られる。
【0041】
また、前述の実施形態では、カメラに搭載される光学フィルタである可変NDフィルタ1について説明した。しかしながら、本開示に係る可変NDフィルタは、カメラ以外に用いられるものであってもよい。例えば、本開示に係る可変NDフィルタは、調光用ガラスであってもよい。調光用ガラスとしては、例えば、建築用調光窓ガラス、自動車用調光窓ガラス、又は航空機用調光窓ガラスが挙げられる。
【0042】
(実施例)
以下では、可変NDフィルタの実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。
図1に例示されるように、実施例に係る可変NDフィルタ1では、第1の透明電極2及び第2の透明電極3の一方をITO透明電極膜、第1の透明電極2及び第2の透明電極の他方をFTO透明電極膜とした。当該ITO透明電極膜の算術平均粗さRaは2nmであり、当該ITO透明電極膜の最大断面高さRtは24nmである。当該FTO透明電極膜の算術平均粗さRaは4nmであり、当該FTO透明電極膜の最大断面高さRtは36nmである。
【0043】
図5(a)は縦倍率を100000(0.1μm/10mm)、横倍率を50(200μm/10mm)としたときのITO透明電極膜の粗さ曲線を示す。
図5(a)に示される測定データでは、算術平均粗さRaが2nm、二乗平均平方根高さRqが2nm、最大高さが22nm、最大断面高さRtは24nmであった。
図5(b)は縦倍率を100000(0.1μm/10mm)、横倍率を50(200μm/10mm)としたときのFTO透明電極膜の粗さ曲線を示す。
図5(b)に示される測定データでは、算術平均粗さRaが4nm、二乗平均平方根高さRqが5nm、最大高さが35nm、最大断面高さRtは36nmであった。なお、シール材6(スペーサ)の厚さは0.3mmとし、電解液4は特許第6402113号に基づく電解液とした。
【0044】
特許第6402113号に基づく電解液とは、
「メタノールよりも高沸点の非水溶媒、及び当該非水溶媒よりも含有重量が少ないメタノールを含有する、非水溶媒で構成される溶媒中に、少なくとも銀イオン及び当該銀イオンよりも含有重量が少ない銅イオンを含む組成を有し、
メタノールよりも高沸点の当該非水溶媒が、炭酸プロピレンを最も含有重量が多い成分とする」電解液であり、
「銀の金属塩を脱水メタノールに溶解して銀塩-メタノール溶液を作成する工程、
銅の金属塩を脱水メタノールに溶解して銅金属塩-メタノール溶液を作成する工程、
当該銀塩-メタノール溶液及び当該銅金属塩-メタノール溶液を、メタノールよりも高沸点で該銀塩-メタノール溶液及び当該銅金属塩-メタノール溶液の合計量よりも重量が多い非水溶媒に混合する工程、並びに、
当該銀塩-メタノール溶液及び銅金属塩-メタノール溶液が混合される前又は後の非水溶媒に支持電解質を溶解する工程」を経て得られた電解液である。
【0045】
以上のように構成された実施例に係る可変NDフィルタ1は、目視上、第1の透明電極2及び第2の透明電極3のいずれにも白濁及び干渉ムラはなく良好であった。そして、実施例に係る可変NDフィルタからも
図2及び
図3に示される特性が得られた。すなわち、ITO透明電極膜側では長波長側の透過率が高くなるのに対し、FTO透明電極膜側では平坦な特性であって色味がない特性を示すことが分かった。従って、実施例に係る可変NDフィルタ1からも、白濁及び干渉縞の発生を抑え、且つITO透明電極膜側でマルチカラーを得られつつFTO透明電極膜側では透過率減衰時可視領域で平坦な特性を得られることが分かった。
【符号の説明】
【0046】
1…可変NDフィルタ、2…第1の透明電極、2b…界面、3…第2の透明電極、3b…界面、4…電解液、5…駆動回路、5b…第1のリード線、5c…第2のリード線、5d…直流電源、5f…スイッチ、6…シール材、7…透明基板、7b…内面、7c…外面、8…制御回路、11…可変NDフィルタ、C…組、D1…面外方向、D2…面内方向、E…電場、S…間隙。