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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085582
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】ジヒドロキノリノン化合物の共結晶
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20230614BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C07D401/12 CSP
A61K31/4709
A61P31/04
A61P31/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020083251
(22)【出願日】2020-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 菜沙
(72)【発明者】
【氏名】宮田 憲一
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB08
4C063CC14
4C063DD10
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC28
4C086GA07
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA02
4C086ZB35
(57)【要約】
【課題】5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(化合物A)の新たな原薬形態、これを含有する医薬及びこれらの製法の提供。
【解決手段】化合物Aとコフォーマーとの共結晶。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンとコフォーマーとの共結晶。
【請求項2】
コフォーマーが不揮発性有機酸である、請求項1に記載の共結晶。
【請求項3】
不揮発性有機酸がo-、m-又はp-位の少なくとも1つがヒドロキシ、アミノ及びカルボキシルからなる群から選択される基で置換されていてもよい安息香酸である、請求項2に記載の共結晶。
【請求項4】
X線源としてCuKα線を用いて得られる粉末X線回折図において、回折角(2θ)9.7°±0.2°、11.4°±0.2°、16.0°±0.2°、18.7°±0.2°、19.3°±0.2°、21.1°±0.2°、22.8°±0.2°、25.0°±0.2°、25.9°±0.2°及び26.9°±0.2°からなる群から選択される少なくとも3つに回折ピークを含む、請求項1~3のいずれかに記載の共結晶。
【請求項5】
X線源としてCuKα線を用いて得られる粉末X線回折図において、回折角(2θ)3.9°±0.2°、7.8°±0.2°、11.8°±0.2°、14.1°±0.2°、15.1°±0.2°、18.9°±0.2°、20.0°±0.2°、24.8°±0.2°及び25.8°±0.2°からなる群から選択される少なくとも3つに回折ピークを含む、請求項1~3のいずれかに記載の共結晶。
【請求項6】
X線源としてCuKα線を用いて得られる粉末X線回折図において、回折角(2θ)9.9°±0.2°、11.4°±0.2°、16.2°±0.2°、18.8°±0.2°、19.3°±0.2°、19.8°±0.2°、23.8°±0.2°、24.9°±0.2°、25.3°±0.2°、26.1°±0.2°及び27.3°±0.2°からなる群から選択される少なくとも3つに回折ピークを含む、請求項1~3のいずれかに記載の共結晶。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の共結晶を含有する医薬組成物。
【請求項8】
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンとコフォーマーとの共結晶の製造方法であって、
(1)5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン及びコフォーマーを良溶媒中で混合する工程及び
(2)前記工程(1)で得られる混合物に貧溶媒を加える工程を含む方法。
【請求項9】
良溶媒がテトラヒドロフラン、アセトン又はメタノールであり、貧溶媒がヘキサン又は水である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンの共結晶、これを含有する医薬組成物、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品開発では、医薬品化合物それ自体の薬効だけでなく、製剤化過程を経ても医薬品として許容される物性(例えば溶解性、生物学的利用能、薬物動態や安定性)を有する原薬形態が求められている。そのような原薬形態の1つとして、一般に、活性分子と第2成分(本明細書において、「コフォーマー(Coformer)」ともいう。)が結晶構造中に組み込まれて形成される共結晶が知られている。共結晶の形成は、例えば難水溶性活性分子の製剤化に有用であるが、当該活性分子に特有のコフォーマーを探索し、医薬としての有用性を保持又は改善した共結晶を見出す必要がある。
【0003】
式:
【化1】
で示される5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(本明細書において、「化合物A」ともいう。)は、結核菌、多剤耐性結核菌及び/又は非結核性抗酸菌に対して抗菌作用を有する化合物として知られている(特許文献1)。化合物Aについて医薬的に有用な共結晶はこれまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/031255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題の一つは、5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(「化合物A」)の新たな原薬形態、これを含有する医薬及びこれらの製法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、化合物Aの新規な共結晶形態を見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0007】
化合物Aの共結晶により、結核菌、多剤耐性結核菌及び/又は非結核性抗酸菌に対して抗菌作用を有する医薬品のより安定かつ効率的な供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、化合物A(II形晶)と2,5DHBAをモル比1:2で物理混合したサンプルのTG/DTA曲線を示す。
図2図2は、化合物A(II形晶)のTG/DTA曲線を示す。
図3図3は、2,5DHBAのTG/DTA曲線を示す。
図4図4は、化合物A(II形晶)とサリチル酸をモル比1:2で物理混合したサンプルのTG/DTA曲線を示す。
図5図5は、サリチル酸のTG/DTA曲線を示す。
図6図6は、化合物A(II形晶)と2,5DHBAをモル比1:2で物理混合したサンプルのDSC/PXRD同時測定結果を示す。
図7図7は、THF/ヘキサン系の晶析で得られた2,5DHBA共結晶THF和物のTG/DTA曲線を示す。
図8図8は、THF/ヘキサン系の晶析で得られた2,5DHBA共結晶THF和物を100℃まで加熱した後のPXRDパターンを示す(2,5DHBA共結晶(II形晶))。
図9図9は、THF/ヘキサン系の晶析で得られた2,5DHBA共結晶THF和物を145℃まで加熱した後のPXRDパターンを示す(2,5DHBA共結晶(I形晶))。
図10図10は、化合物A(II形晶)のPXRDパターンを示す。
図11図11は、2,5DHBAのPXRDパターンを示す。
図12図12は、THF/ヘキサン系の晶析で得られた2,5DHBA共結晶THF和物を100℃まで加熱した後(2,5DHBA共結晶(II形晶))のTG/DTA曲線を示す。
図13図13はメタノール/水系の晶析で得られた2,5DHBA共結晶(I形晶)のTG/DTA曲線を示す。
図14図14は、THF/ヘキサン系の晶析で得られた2,5DHBA共結晶THF和物のPXRDパターンを示す。
図15図15は、化合物A(II形晶)とサリチル酸をモル比1:1で物理混合し、加熱したサンプルのPXRDパターンを示す。上から順に、化合物A単独、サリチル酸単独、物理混合物を100℃まで加熱したサンプル、120℃まで加熱したサンプル、150℃まで加熱したサンプルを示す。
図16図16は、アセトン/水系におけるサリチル酸共結晶のPXRDパターンを示す。
図17図17は、アセトン/水系におけるサリチル酸共結晶のTG/DTA曲線を示す。
図18図18は、アセトン/水系におけるサリチル酸共結晶のORTEP図を示す。
図19図19は、非対称単位中のサリチル酸共結晶のORTEP図を示す。
図20図20は、1%ヒプロメロース溶解JP1における化合物A(II形晶)、2,5DHBA共結晶(I形晶)及びサリチル酸共結晶の溶出プロファイルを示す。〇は2,5DHBA共結晶(I形晶)、△はサリチル酸共結晶、×は化合物A(II形晶)の溶出プロファイルを示す。
図21図21は、1%ヒプロメロース溶解JP2における化合物A(II形晶)、2,5DHBA共結晶(I形晶)及びサリチル酸共結晶の溶出プロファイルを示す。〇は2,5DHBA共結晶(I形晶)、△はサリチル酸共結晶、×は化合物A(II形晶)の溶出プロファイルを示す。
図22図22は、2,5DHBA共結晶(I形晶;〇)、化合物Aフリー体(II形晶;×)のイヌ薬物動態試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
いくつかの具体的態様を以下に例示する。
[項1]
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンとコフォーマーとの共結晶。
【0010】
[項2]
コフォーマーが不揮発性有機酸である、項1に記載の共結晶。
【0011】
[項3]
不揮発性有機酸がo-、m-又はp-位の少なくとも1つがヒドロキシ、アミノ及びカルボキシルからなる群から選択される基で置換されていてもよい安息香酸である、項2に記載の共結晶。
【0012】
[項4]
X線源としてCuKα線を用いて得られる粉末X線回折図において、回折角(2θ)9.7°±0.2°、11.4°±0.2°、16.0°±0.2°、18.7°±0.2°、19.3°±0.2°、21.1°±0.2°、22.8°±0.2°、25.0°±0.2°、25.9°±0.2°及び26.9°±0.2°からなる群から選択される少なくとも3つに回折ピークを含む、項1~3のいずれかに記載の共結晶。
【0013】
[項5]
X線源としてCuKα線を用いて得られる粉末X線回折図において、回折角(2θ)3.9°±0.2°、7.8°±0.2°、11.8°±0.2°、14.1°±0.2°、15.1°±0.2°、18.9°±0.2°、20.0°±0.2°、24.8°±0.2°及び25.8°±0.2°からなる群から選択される少なくとも3つに回折ピークを含む、項1~3のいずれかに記載の共結晶。
【0014】
[項6]
X線源としてCuKα線を用いて得られる粉末X線回折図において、回折角(2θ)9.9°±0.2°、11.4°±0.2°、16.2°±0.2°、18.8°±0.2°、19.3°±0.2°、19.8°±0.2°、23.8°±0.2°、24.9°±0.2°、25.3°±0.2°、26.1°±0.2°及び27.3°±0.2°からなる群から選択される少なくとも3つに回折ピークを含む、項1~3のいずれかに記載の共結晶。
【0015】
[項7]
項1~6のいずれかに記載の共結晶を含有する医薬組成物。
【0016】
[項8]
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンとコフォーマーとの共結晶の製造方法であって、
(1)5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン及びコフォーマーを良溶媒中で混合する工程及び
(2)前記工程(1)で得られる混合物に貧溶媒を加える工程を含む方法。
【0017】
[項9]
良溶媒がテトラヒドロフラン、アセトン又はメタノールであり、貧溶媒がヘキサン又は水である、項8に記載の方法。
【0018】
本明細書において「共結晶」は、化合物Aと任意の第2成分(「コフォーマー(Coformer)」)とが任意のモル比にて同一結晶格子内に存在して構成される結晶性物質であり、溶媒和物とは区別される。共結晶は、複数の結晶形態(本明細書において、「結晶多形」ともいう。)として存在しうる。共結晶を形成する化合物Aは、いずれの結晶形態又はこれらの混合物であってもよく、非晶質であってもよい。
【0019】
共結晶の結晶形態としては、例えばI形共結晶(共結晶(I形晶))又はII形共結晶(共結晶(II形晶))が挙げられる。ある態様において、共結晶は、実質的に純粋なI形共結晶であり、すなわち、実質的にいずれかの他の結晶形態を含まないI形共結晶である。ここで、実質的にいずれかの他の結晶形態を含まないI形共結晶は、例えば10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満にていずれかの他の結晶形態、例えばII形共結晶を含んでいてもよいI形共結晶である。別の態様において、共結晶は、実質的に純粋なII形共結晶であり、すなわち、実質的にいずれかの他の結晶形態を含まないII形共結晶である。ここで、実質的にいずれかの他の結晶形態を含まないII形共結晶は、例えば10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満にていずれかの他の結晶形態、例えばI形共結晶を含んでいてもよいII形共結晶である。
【0020】
本明細書において「コフォーマー」は、化合物Aと共結晶を形成しうる非イオン化分子である。具体的には、例えば有機酸、アミノ酸、アミン、アミドが挙げられ、好ましくは不揮発性有機酸又はアミノ酸である。化合物Aとコフォーマーとのモル比は、コフォーマーに応じて任意の値をとりうるが、例えば1:0.5~1:2.5、1:0.8~1:2、好ましくは1:0.9~1:1.5であり、より好ましくは1:1である。
ある態様において、コフォーマーは、所定条件下で共結晶の結晶格子から溶出し、これにより化合物Aが過飽和状態となり溶解度を向上させてもよい。この場合、コフォーマーは水溶性であることが好ましい。別の態様において、コフォーマーは、常温(15℃~25℃)常圧下で固体の分子である。
【0021】
本明細書において「有機酸」とは、化合物Aと共結晶を形成しうる酸性を示す有機化合物であれば特に制限されるものではないが、例えば、カルボン酸、フェノール類が挙げられる。「カルボン酸」とは、化合物Aと共結晶を形成しうる、少なくとも一つのカルボキシル基(-COOH)を有する有機化合物であれば特に制限されるものではないが、例えば、鎖状カルボン酸、芳香族カルボン酸、複素環カルボン酸が挙げられる。
【0022】
本明細書において「不揮発性有機酸」は、化合物Aと共結晶を形成しうる有機酸であれば特に制限されるものではないが、例えば常温(15℃~25℃)常圧下で容易に揮発しない有機酸が挙げられる。ある態様において、不揮発性有機酸は、水溶性有機酸である。好ましくは、カルボン酸である。より好ましくは、安息香酸化合物であって、o-、m-又はp-位の少なくとも1つがヒドロキシ、アミノ及びカルボキシルからなる群から選択される基で置換されていてもよい安息香酸である。より好ましくは、2,5-ジヒドロキシ安息香酸又はサリチル酸である。
【0023】
本明細書において「アミノ酸」は、アミノ基とカルボキシル基の両方の官能基を持つ有機化合物であれば特に制限されるものではなく、天然アミノ酸、非天然アミノ酸を含む。
【0024】
本明細書において「アミン」は、アンモニアの水素原子を炭化水素基またはアリール基で置換した化合物であれば特に制限されるものではないが、脂肪族アミン、芳香族アミンを含む。
【0025】
本明細書において「アミド」は、オキソ酸とアンモニア又は1級もしくは2級アミンが脱水縮合した化合物であれば特に制限されるものではないが、例えばカルボン酸アミドが挙げられる。
【0026】
コフォーマーとしては、例えば以下に例示する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【表1】

【0027】
化合物Aの共結晶は、当該共結晶と溶媒分子とが任意のモル比にて形成する溶媒和物を含む。そのような溶媒和物としては、例えば水和物、エタノール和物及びTHF和物が挙げられる。
【0028】
本明細書において、以下の略語を用いることがある。
Coformer:Cocrystal former
2,5DHBA:2,5-ジヒドロキシ安息香酸(ゲンチジン酸)
THF:テトラヒドロフラン
NMR:核磁気共鳴
UHPLC:超高速液体クロマトグラフィー
LC/MS/MS:液体クロマトグラフィー質量分析
PXRD:粉末X線回折
TG/DTA:示差熱量重量同時測定
max:最高血中濃度
AUC:薬物濃度時間曲線下面積
JP1:日本薬局方溶出試験第1液
JP2:日本薬局方溶出試験第2液
【0029】
[製造方法]
化合物Aを製造する方法を以下に例示する。各工程で得られる化合物は、適宜、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の当分野で通常用いられる公知の方法により単離及び精製してもよく、あるいは、単離又は精製せず次の工程に進んでもよい。また、各工程で用いられる試薬は市販されていてもよく、当業者に公知の方法に従い製造してもよい。
【0030】
(製造方法1)
4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリン・4-メチルベンゼンスルホネートの合成
4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリン・4-メチルベンゼンスルホネートは、2,6-ジフルオロアニリンを塩素化剤及びアルキルチオ尿素の存在下、溶媒中にて反応させて製造することができる。
塩素化剤としては、N-クロロスクシンイミド、トリクロロイソシアヌル酸が挙げられる。
アルキルチオ尿素としては、1,3-ジメチルチオ尿素が挙げられる。
溶媒としては、アセトニトリル、酢酸エチル及びこれらの混合物が挙げられる。
反応温度は、例えば室温である。
反応時間は、例えば30分~6時間であり、好ましくは1~2時間である。
【0031】
(製造方法2)
1-エチル-1-(2-メチルアリル)-4-オキソピペリジン-1-イウム ヨージドの合成
1-エチル-1-(2-メチルアリル)-4-オキソピペリジン-1-イウム ヨージドは、イソブテニルクロリドをヨウ素化剤の存在下、溶媒中にて1-エチル-4-ピペリドンと反応させて製造することができる。
ヨウ素化剤としては、ヨウ化ナトリウムが挙げられる。
溶媒としては、アセトンが挙げられる。
反応温度は、例えば室温~50℃である。
反応時間は、例えば3~20時間であり、好ましくは5~13時間である。
【0032】
(製造方法3)
1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)ピペリジン-4-オンの合成
1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)ピペリジン-4-オンは、4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリン・4-メチルベンゼンスルホネートを塩基で処理して4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリンを得た後、アルキルチオ尿素の存在下、溶媒中にて1-エチル-1-(2-メチルアリル)-4-オキソピペリジン-1-イウム ヨージドと反応させて製造することができる。
塩基としては、水酸化ナトリウムが挙げられる。
アルキルチオ尿素としては、1,3-ジメチルチオ尿素が挙げられる。
溶媒としては、例えば水が挙げられる。
4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリンを得る反応において、反応温度は、例えば室温である。反応時間は、例えば30分~3時間であり、好ましくは1時間である。
1-エチル-1-(2-メチルアリル)-4-オキソピペリジン-1-イウム ヨージドとの反応において、反応温度は、例えば還流温度である。反応時間は、例えば5~12時間であり、好ましくは10時間である。
【0033】
(製造方法4)
(3R,4R)-6-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-1-オキサ-6-アザスピロ[2.5]オクタ-4-オールの合成
(1)1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)ピペリジン-4-オンをシリル化剤及び塩基存在下、溶媒中にて反応させて、4-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを製造することができる。
シリル化剤としては、例えばtert-ブチルジメチルシリルクロリドが挙げられる。
塩基としては、例えばトリエチルアミンが挙げられる。
溶媒としては、例えばアセトニトリルが挙げられる。
反応温度は、例えば還流温度である。
反応時間は、例えば1~5時間であり、好ましくは2時間である。
(2)(1)で得られた4-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを、添加剤の存在下、D-エポキソンと溶媒中にて不斉エポキシ化反応させて、(1R,6R)-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-3-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-7-オキサ-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタンを製造することができる。
添加剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、炭酸カリウム、過酸化水素水及びこれらの混合物が挙げられる。
溶媒としては、例えばトルエン、プロパノール、アセトニトリル及びこれらの混合物が挙げられる。
反応温度は、例えば0~20℃であり、好ましくは5~15℃である。
反応時間は、例えば2~10時間であり、好ましくは5時間である。
(3)(2)で得られた(1R,6R)-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-3-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-7-オキサ-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタンをイリド生成剤及び塩基存在下、溶媒中にて反応させて、(3R,4R)-6-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-1-オキサ-6-アザスピロ[2.5]オクタ-4-オールを製造することができる。
イリド生成剤としては、例えばトリメチルスルホキソニウムヨージドが挙げられる。
塩基としては、例えば水酸化カリウムが挙げられる。
溶媒としては、例えばジメチルスルホキシドが挙げられる。
反応温度は、例えば室温である。
反応時間は、例えば1~5時間であり、好ましくは3時間である。
【0034】
(製造方法5)
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(化合物A)の合成
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンは、(3R,4R)-6-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-1-オキサ-6-アザスピロ[2.5]オクタ-4-オールを塩基存在下、溶媒中にて8-フルオロ-5-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンと反応させて、製造することができる。
塩基としては、例えば炭酸カリウムが挙げられる。
溶媒としては、例えばプロパノール、水及びこれらの混合物が挙げられる。
反応温度は、例えば還流温度である。
反応時間は、例えば1~5時間であり、好ましくは3時間である。
【0035】
(製造方法6)
(3R,4R)-6-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-1-オキサ-6-アザスピロ[2.5]オクタ-4-オールの合成(別法)
(1)2-メチル-2-ビニルオキシランを触媒及び添加剤存在下、溶媒中、1,3-ビス(ヘキサフルオロ-α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンとビニルエポキシド転移反応した後、4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリン・4-メチルベンゼンスルホネート及びパラホルムアルデヒドと反応させて、[1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル]メタノールを製造することができる。
(1-1)ビニルエポキシド転移反応の条件
触媒としては、例えばパラジウム触媒が挙げられ、好ましくはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムである。
添加剤としては、例えばトリフェニルホスフィンが挙げられる。
溶媒としては、例えばトルエン、1,2-ジメトキシエタン及びこれらの混合物が挙げられる。
反応温度は、例えば室温である。
反応時間は、例えば30分~2時間であり、好ましくは1時間半である。
(1-2)4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリン・4-メチルベンゼンスルホネートとの反応条件
溶媒としては、例えばトルエンが挙げられる。
反応温度は、例えば室温である。
反応時間は、例えば1~4時間であり、好ましくは2時間半である。
【0036】
(2)(1)で得られた[1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル]メタノールを過酸化物及び添加剤の存在下、溶媒中、反応させた後、塩基及び添加剤の存在下で処理して[(1R,6R)-3-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-7-オキサ-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-6-イル]メタノールを製造することができる。
(2-1)過酸化物との反応条件
過酸化物としては、例えばクメンヒドロペルオキシドが挙げられる。
添加剤としては、例えばゼオライト、(D)-(-)-酒石酸イソプロピル、チタンテトライソプロポキシド及びこれらの混合物が挙げられる。
溶媒としては、例えばトルエン、ジメチルスルホキシド及びこれらの混合物が挙げられる。
反応温度は、例えば0℃以下~室温である。
反応時間は、例えば1~5時間であり、好ましくは3時間である。
(2-2)塩基処理条件
塩基としては、例えばトリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン及びこれらの混合物が挙げられる。
添加剤としては、例えば無水フタル酸が挙げられる。
溶媒としては、例えば酢酸エチルが挙げられる。
反応温度は、例えば室温である。
反応時間は、例えば30分~2時間であり、好ましくは1時間である。
【0037】
(3)(2)で得られた[(1R,6R)-3-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-7-オキサ-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-6-イル]メタノールを、トシルクロリド及び塩基存在下、溶媒中にて反応させた後、脱離処理して(S)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-4-メチレンピペリジン-3-オールを製造することができる。
(3-1)トシル化条件
塩基としては、例えばトリエチルアミン、トリメチルアミン塩酸塩及びこれらの混合物が挙げられる。
溶媒としては、例えばトルエンが挙げられる。
反応温度は、例えば室温である。
反応時間は、例えば30分~3時間であり、好ましくは1時間半である。
(3-2)脱離条件
添加剤として、例えばヨウ化ナトリウム、アスコルビン酸及びこれらの混合物を用いてもよい。
溶媒としては、例えばアセトニトリル、水及びこれらの混合物が挙げられる。
反応温度は、例えば室温~80℃である。
反応時間は、例えば1~4時間であり、好ましくは3時間である。
【0038】
(4)(3)で得られた(S)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-4-メチレンピペリジン-3-オールと過安息香酸とのエポキシ化反応により(3R,4R)-6-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-1-オキサ-6-アザスピロ[2.5]オクタ-4-オールを製造することができる。
過安息香酸としては、例えばm-クロロ過安息香酸が挙げられる。
溶媒としては、例えば酢酸エチル、水及びこれらの混合物が挙げられる。
反応温度は、例えば10℃以下である。
反応時間は、例えば1~4時間であり、好ましくは3時間である。
【0039】
(製造方法7)
8-フルオロ-5-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンの合成
(製造方法7-1)
N-(2,5-ジフルオロフェニル)-3-フェニルアクリルアミドの合成
1,4-ジフルオロ-2-ニトロベンゼンを、水素雰囲気下及びパラジウム触媒の存在下、溶媒中にて桂皮酸クロリドと反応させてN-(2,5-ジフルオロフェニル)-3-フェニルアクリルアミドを製造することができる。
パラジウム触媒としては、例えば5%パラジウム炭素が挙げられる。
溶媒としては、例えば酢酸エチルが挙げられる。
反応温度は、例えば0℃以下である。
反応時間は、例えば30分~2時間であり、好ましくは1時間である。
【0040】
(製造方法7-2)
5,8-ジフルオロキノリン-2(1H)-オンの合成
N-(2,5-ジフルオロフェニル)-3-フェニルアクリルアミドを、塩化アルミニウムの存在下、反応させて5,8-ジフルオロキノリン-2(1H)-オンを製造することができる。
添加剤として、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム及びこれらの混合物を用いてもよい。
反応温度は、例えば100~130℃であり、好ましくは120℃である。
反応時間は、例えば30分~3時間であり、好ましくは1時間である。
【0041】
(製造方法7-3)
2-クロロ-5,8-ジフルオロキノリンの合成
5,8-ジフルオロキノリン-2(1H)-オンを溶媒中にて塩化チオニルと反応させて、2-クロロ-5,8-ジフルオロキノリンを製造することができる。
溶媒としては、例えばN,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。
反応温度は、例えば60~80℃であり、好ましくは70℃である。
反応時間は、例えば30分~3時間であり、好ましくは1時間である。
【0042】
(製造方法7-4)
8-フルオロ-2,5-ジメトキシキノリンの合成
2-クロロ-5,8-ジフルオロキノリンを塩基存在下、溶媒中にてメタノールと反応させて、8-フルオロ-2,5-ジメトキシキノリンを製造することができる。
塩基としては、例えばtert-ブトキシカリウムが挙げられる。
溶媒としては、例えばN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。
反応温度は、例えば60~80℃であり、好ましくは70℃である。
反応時間は、例えば30分~3時間であり、好ましくは1時間である。
【0043】
(製造方法7-5)
8-フルオロ-5-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンの合成
8-フルオロ-2,5-ジメトキシキノリンを酸存在下、反応させて、8-フルオロ-5-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンを製造することができる。
酸としては、例えば酢酸、臭化水素酸及びこれらの混合物が挙げられる。
反応温度は、例えば還流温度である。
反応時間は、例えば6~18時間であり、好ましくは14時間である。
【0044】
(製造方法7-6)
8-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル アセテートの合成
8-フルオロ-5-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンを酸存在下、無水酢酸と反応させて、8-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル アセテートを製造することができる。
酸としては、例えば濃硫酸が挙げられる。
反応温度は、例えば100~130℃であり、好ましくは120℃である。
反応時間は、例えば1~4時間であり、好ましくは2時間である。
【0045】
(製造方法7-7)
8-フルオロ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-5-イル アセテートの合成
8-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル アセテートを水素雰囲気下及びパラジウム触媒存在下、溶媒中にて還元反応させて、8-フルオロ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-5-イル アセテートを製造することができる。
パラジウム触媒としては、例えば10%パラジウム炭素が挙げられる。
溶媒としては、例えば酢酸が挙げられる。
反応温度は、例えば60~80℃であり、好ましくは70℃である。
反応時間は、例えば6~10時間であり、好ましくは8時間である。
【0046】
(製造方法7-8)
8-フルオロ-5-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンの合成
8-フルオロ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-5-イル アセテートを酸存在下、溶媒中にて反応させて、8-フルオロ-5-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンを製造することができる。
酸としては、例えば濃塩酸が挙げられる。
溶媒としては、例えばメタノールが挙げられる。
反応温度は、例えば還流温度である。
反応時間は、例えば30分である。
【0047】
(製造方法8)
8-フルオロ-5-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンの合成(別法)
(製造方法8-1)
2,5-ビス(ベンジルオキシ)-8-フルオロキノリンの合成
2-クロロ-5,8-ジフルオロキノリンを塩基存在下、溶媒中にてベンジルアルコールと反応させて、2,5-ビス(ベンジルオキシ)-8-フルオロキノリンを製造することができる。
塩基としては、例えばtert-ブトキシカリウムが挙げられる。
溶媒としては、例えばN,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。
反応温度は、例えば30~80℃であり、好ましくは70℃である。
反応時間は、例えば1~4時間であり、好ましくは2時間である。
【0048】
(製造方法8-2)
8-フルオロ-5-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンの合成
2,5-ビス(ベンジルオキシ)-8-フルオロキノリンをパラジウム触媒及び酸存在下、水素雰囲気下にて反応させて、8-フルオロ-5-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンを製造することができる。
パラジウム触媒としては、例えば5%パラジウム炭素が挙げられる。
酸としては、例えば酢酸が挙げられる。
反応温度は、例えば60~80℃であり、好ましくは70℃である。
反応時間は、例えば1~4時間であり、好ましくは2時間である。
【0049】
[化合物Aの結晶多形の製造方法]
上記製造方法により得られた化合物Aを酢酸及び/又は酢酸カリウムの存在下、60~80℃で結晶が溶解するまで撹拌し、熱時ろ過した後、ゆっくりと冷却し、30℃以下で1時間以上熟成させて化合物Aの酢酸和物を得、これを真空乾燥又は送風乾燥することにより、化合物AのI形結晶を製造することができる。
また、化合物Aを溶媒中で室温~還流温度下で撹拌した後、冷却して熟成させ、送風乾燥することにより、化合物AのII形結晶を製造することができる。
【0050】
[化合物Aの共結晶の製造方法]
(粉砕法)
上記で得られた化合物A及びコフォーマーをモル比1:1~1:20にて常温下混合し、溶媒を添加するか、又は溶媒非添加条件下で粉砕することにより、化合物Aの共結晶を得ることができる。
化合物A及びコフォーマーのモル比としては、好ましくは1:1又は1:2であり、より好ましくは1:1である。
溶媒としては、例えば水が挙げられる。
粉砕は、当分野にて用いられる方法であれば特に制限はないが、例えば機械粉砕及びボールミル粉砕が挙げられる。
【0051】
(溶融法(熱分析法))
化合物Aとコフォーマーの物理混合物の示差熱量重量同時測定により化合物Aの共結晶を確認することができる。
【0052】
(晶析法)
上記で得られた化合物A及びコフォーマーのモル比1:1~1:200の混合物を常温にて良溶媒に溶解させた後、貧溶媒を少量ずつ滴下して化合物Aの共結晶を得ることができる。
化合物A及びコフォーマーのモル比としては、好ましくは1:2~1:150であり、より好ましくは1:5、1:10、1:20、1:50又は1:100である。
良溶媒としては、例えばTHF、アセトン、メタノール及び酢酸が挙げられる。好ましくはTHF、アセトン又はメタノールである。添加量としては、例えば化合物Aに対し0.1~10%(w/v)であり、好ましくは0.5~5%(w/v)である。
貧溶媒としては、例えばヘキサン、水及びジエチルエーテルが挙げられる。好ましくはヘキサン及び水である。添加量としては、例えば化合物Aに対し0.01~15%(w/v)であり、好ましくは0.1~12%(w/v)であり、より好ましくは0.3~10%(w/v)であり、さらに好ましくは0.1~5%(w/v)である。
良溶媒と貧溶媒の組合せとしては、上記いずれかの任意の組合せが挙げられる。良溶媒/貧溶媒の組合せとして好ましくは、THF/ヘキサン、メタノール/水、又はアセトン/水の組合せであり、より好ましくはメタノール/水又はアセトン/水の組合せである。
【0053】
[共結晶]
ある態様において、化合物Aの共結晶は、X線源としてCuKα線を用いて得られる粉末X線回折図において、回折角(2θ)9.7°±0.2°、11.4°±0.2°、16.0°±0.2°、18.7°±0.2°、19.3°±0.2°、21.1°±0.2°、22.8°±0.2°、25.0°±0.2°、25.9°±0.2°及び26.9°±0.2°からなる群から選択される少なくとも3つ、5つ、7つ又は9つに回折ピークを含むPXRDパターンを示しうる(2,5DHBA共結晶(I形晶))。別の態様において、共結晶は、X線源としてCuKα線を用いて得られる粉末X線回折図において、回折角(2θ)3.9°±0.2°、7.8°±0.2°、11.8°±0.2°、14.1°±0.2°、15.1°±0.2°、18.9°±0.2°、20.0°±0.2°、24.8°±0.2°及び25.8°±0.2°からなる群から選択される少なくとも3つ、5つ、7つ又は9つに回折ピークを含むPXRDパターンを示しうる(2,5DHBA共結晶(II形晶))。さらに別の態様において、共結晶は、X線源としてCuKα線を用いて得られる粉末X線回折図において、回折角(2θ)9.9°±0.2°、11.4°±0.2°、16.2°±0.2°、18.8°±0.2°、19.3°±0.2°、19.8°±0.2°、23.8°±0.2°、24.9°±0.2°、25.3°±0.2°、26.1°±0.2°及び27.3°±0.2°からなる群から選択される少なくとも3つ、5つ、7つ又は9つに回折ピークを含むPXRDパターンを示しうる(サリチル酸共結晶)。前記回折角(2θ)における±0.2°は、測定機器や測定条件等により生じる可能性がある誤差であり、当該回折角の誤差は許容範囲として本発明の範囲に含まれる。
ある態様において、2,5DHBA共結晶(I形晶)は、示差熱量重量同時測定において155~166℃の融点を示しうる。ここで、オンセット温度は157℃、ピークトップ温度は160℃を示しうる。例えば、2,5DHBA共結晶(I形晶)は、図13のTG/DTA曲線を示す。
ある態様において、2,5DHBA共結晶(II形晶)は、示差熱量重量同時測定において140~150℃の融点を示しうる。ここで、オンセット温度は145℃、ピークトップ温度は147℃を示しうる。その後、150℃±1℃の発熱ピークでI形共結晶への再結晶化を示しうる。例えば、2,5DHBA共結晶(II形晶)は、図12のTG/DTA曲線を示す。
2,5DHBA共結晶(II形晶)は、任意の転移条件、例えば100~145℃の加熱によりI形共結晶に転移してもよい。
ある態様において、サリチル酸共結晶は、示差熱量重量同時測定において150~170℃の融点を示しうる。ここで、オンセット温度は161℃、ピークトップ温度は163℃を示しうる。例えば、サリチル酸共結晶は、図17のTG/DTA曲線を示す。
【0054】
[製剤/医薬組成物]
化合物Aの共結晶は、当分野において通常用いられる公知の方法に従い、少なくとも1種以上の製薬上許容される担体とともに製剤化することができる。該製剤(本明細書において、「医薬組成物」ともいう。)中の化合物Aの含量は、剤形、投与量等の条件により異なるが、例えば、製剤全体又は核錠子の1~50重量%、好ましくは1.5~35重量%である。また、製剤中の共結晶の含量としては、例えば製剤全体又は核錠子の1~70重量%、好ましくは1.5~50重量%である。化合物Aの共結晶は、ヒト及びヒト以外の哺乳動物に対して投与することができる。投与量は、投与対象、症状、剤形、投与ルート等により異なるが、例えば、ヒト成人患者(体重65kg)に経口投与する場合の投与量は、化合物Aとして、通常1回あたり約1mg~100mgの範囲であり、好ましくは約3mg~60mgの範囲である。また、共結晶としては、例えば1回あたり約1mg~150mgの範囲であり、好ましくは約3mg~80mgの範囲である。
【0055】
「製薬上許容される担体」としては、当分野において通常用いられる水溶性コーティング剤、界面活性剤、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤等の成分が挙げられる。ある態様において、製薬上許容される担体は、水溶性コーティング剤又は界面活性剤を含むことにより、化合物Aが過飽和に達した後の結晶化を阻害し、溶出を促進してもよい。水溶性コーティング剤としては、例えば水溶性ポリマー、具体的にはヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースフタル酸エステル又はヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルが挙げられ、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0056】
化合物Aの共結晶の製剤化方法としては、例えば湿式造粒法、乾式造粒法及び直接打錠法が挙げられる。
【0057】
化合物Aの共結晶を含む医薬組成物の剤形としては、錠剤(フィルムコーティング錠を含む)、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤等の経口剤が挙げられる。フィルムコーティング錠又はカプセル剤が好ましい。ある態様において、フィルムコーティング錠は、結晶転移を避けるため、非セルロース系可塑剤(例えばポリエチレングリコール)を含まないものであってもよい。別の態様において、フィルムコーティング錠は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んでもよい。
【実施例0058】
以下に実施例及び試験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例等で用いた分析装置及び測定機器の測定条件等を以下に示す。
【0059】
(粉末X線回折装置)
装置名:X’Pert PRO MPD
メーカー:スペクトリクス株式会社
測定法:透過法
線源:CuKα線(λ=1.5418Å)
電流:40mA
電圧:45kV
測定範囲:3~39.999°
ステップサイズ:0.0167113°
スキャンスピード:0.334225°/sec
【0060】
(X線回折-示差走査熱量計同時測定装置)
X線回折-示差走査熱量計同時測定は以下に記載の条件で行い、XRD-DSCソフトを用いて、PXRDデータと示差走査熱量測定データのドッキング表示を行った。
装置名:RINT2000、XRD-DSC II
メーカー:株式会社リガク
測定法:反射法
線源:CuKα線(λ=1.5418Å)
電流:40mA
電圧:40kV
測定範囲:3~40°
スキャンスピード:10°/min
サンプリング幅:0.02°
昇温速度:1℃/min
【0061】
(単結晶構造解析)
単結晶X線回折データの収集は、XtaLAB Synergy R, DW system, HyPix diffractometerを用いて行った。測定温度は100Kとし、X線源はCuKα線(λ=1.5418Å)を使用した。データ収集及びプロセシングは、CrysAlisPro(Rigaku, V1.171.40.67a, 2019)プログラムで行った。
【0062】
(示差熱量重量同時測定)
TG/DTAは、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の熱分析装置TG/DTA7200を用いて測定した。3~10mgの試料をアルミニウムパンに入れ、乾燥窒素雰囲気下で室温から180、200、250又は300℃まで昇温速度5℃/min又は10℃/minで加熱した。測定は、リファレンスパンに基準物質としてα-アルミナを用いるか、又は空パン(基準物質なし)で実施した。
【0063】
(超高速液体クロマトグラフィー測定)
UHPLCは、アジレントテクノロジー株式会社のAgilent 1290 Infinity LC Systemを用いて測定した。
(液体クロマトグラフィー質量分析測定)
MS/MSは、エドワーズ株式会社のTSQ Vantageシステムを用いて測定し、HPLCは、株式会社島津製作所のShimadzu Nexeraシステムを用いて測定した。
【0064】
(粒子径測定)
粒子径測定は、株式会社島津製作所のレーザ回折式粒子径分布測定装置SALD-3100を用いて測定した。回分セルに水又はコフォーマー飽和水溶液を15mL入れ、そこに化合物A又は共結晶5mgを水又はコフォーマー飽和水溶液300μLで懸濁し、ソニケーション分散させたものを投入して測定した。
【0065】
[参考例]
(参考例1)
1-(2,6-ジクロロベンジル)-1-メチル-4-オキソピペリジン-1-イウム ブロミドの合成
アセトン(70L)、2,6-ジクロロベンジルブロミド(14.00kg)、1-メチル-4-ピペリドン(7.26kg)を反応容器に加え、還流下にて5時間撹拌した。析出晶を分離し、アセトン(70L)にて洗浄を行い、50℃で20時間送風乾燥し、標題化合物(18.82kg)を白色~微黄色固体として得た(91%収率)。
1HNMR (DMSO-d6) δ ppm: 2.48-2.61 (2H, m), 2.88-3.04 (2H, m), 3.45 (3H, s), 3.85-3.98 (2H, m), 3.98-4.12 (2H, m), 4.99 (2H, s), 7.58-7.74 (3H, m).
【0066】
(参考例2)
1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)ピペリジン-4-オンの合成
水(35mL)、4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリン・4-メチルベンゼンスルホネート(5g)を反応容器に加え、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液(3.28mL)をゆっくり流入した。流入終了後、室温にて1時間撹拌した。析出晶を分離し、水(25mL)にて洗浄を行い、4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリンを白色~灰色固体として得た。得られた固体へ、2-プロパノール(15mL)、水(15mL)、1-(2,6-ジクロロベンジル)-1-メチル-4-オキソピペリジン-1-イウム ブロミド(7.57g)、1,3-ジメチルチオ尿素(0.085g)を加え、還流下にて10時間撹拌した。トルエン(15mL)、塩化ナトリウム(0.375g)を加え、分液した。水層にトルエン(15mL)を加えて抽出した。有機層を合わせて減圧濃縮し、残渣へ2-プロパノール(7.5mL)を加え、-10℃以下で1時間撹拌した。析出晶を分離し、2-プロパノール(5mL)にて洗浄を行い、35℃で12時間以上送風乾燥し、標題化合物(1.27g)を白色~微黄色固体として得た(34%収率)。
1HNMR (CDCl3) δ ppm: 2.58 (4H, t, J = 6.0 Hz), 3.46 (4H, t, J = 6.0 Hz), 6.86-6.98 (2H, m).
【0067】
[実施例]
(実施例1)
N-(2,5-ジフルオロフェニル)-3-フェニルアクリルアミドの合成
1,4-ジフルオロ-2-ニトロベンゼン(75.0g)、酢酸エチル(375mL)、5%パラジウム炭素(4.0g)を反応容器に加え、水素雰囲気下にて、25~60℃で4時間撹拌した。固体をろ去し、ろ液に水(375mL)、重炭酸ナトリウム(59.4g)を加え、0℃を超えない温度で桂皮酸クロリド(86.0g)ゆっくり流入した。流入終了後、1時間撹拌した。分液を行い、有機層を水(375mL)で2回洗浄した。有機層を減圧濃縮し、残渣にトルエン(375mL)を加えて再結晶し、表題化合物(100.0g)を白色固体として得た(81%収率)。
1HNMR (DMSO-d6) δ ppm: 6.96-7.02 (1H,m), 7.13 (1H, d, J = 15.6 Hz), 7.31-7.39 (1H, m), 7.42-7.50 (3H, m), 7.61-7.66 (3H, m), 8.09-8.16 (1H, m), 10.1 (1H, s).
【0068】
(実施例2)
5,8-ジフルオロキノリン-2(1H)-オンの合成
塩化ナトリウム(36.0g)、塩化カリウム(36.0g)、塩化アルミニウム(238.0g)を反応容器に加え、内容物が熔融するまで加熱した。撹拌下、N-(2,5-ジフルオロフェニル)-3-フェニルアクリルアミド(103g)をゆっくり投入し、投入終了後120℃で1時間撹拌した。反応液を氷水(2L)に少しずつ流入した。流入終了後、室温にて1時間撹拌した。析出晶をろ取し、表題化合物(75.5g)を淡赤色固体として得た(104%収率)。
1HNMR (DMSO-d6) δ ppm: 6.63 (1H, d, J = 9.9 Hz), 7.02 (1H, dtd, J = 12.9 Hz, 9.2 Hz, 3.6 Hz), 7.40-7.48 (1H, m), 8.00 (1H, dd, J = 9.9 Hz, 1.2 Hz), 12.0 (1H, s).
【0069】
(実施例3)
2-クロロ-5,8-ジフルオロキノリンの合成
5,8-ジフルオロキノリン-2(1H)-オン(69.9g)、N,N-ジメチルホルムアミド(350mL)を反応容器に加え、0℃付近まで冷却した。塩化チオニル(115.0g)をゆっくり流入した。流入後、70℃付近で1時間撹拌した。アセトン/水(2/1)の混合液(700mL)を加えて結晶を析出させ、25%水酸化ナトリウム水溶液(340mL)を加えて中和した。40℃で1時間熟成し、0℃で1時間熟成し、析出晶をろ取し、水で洗浄し、表題化合物(63.0g)を褐色固体として得た(81%収率)。
1HNMR (DMSO-d6) δ ppm: 7.52 (1H, dtd, J = 12.9 Hz, 9.3 Hz, 3.6 Hz), 7.69-7.76 (1H, m), 7.80 (1H, d, J = 8.7 Hz), 8.58 (1H, dd, J = 9.0 Hz, 1.5 Hz).
【0070】
(実施例4)
8-フルオロ-2,5-ジメトキシキノリンの合成
t-ブトキシカリウム(14.1g)、N,N-ジメチルアセトアミド(50mL)、メタノール(1.3g)を反応容器に加え、10℃以下まで冷却した。30℃を超えない温度で2-クロロ-5,8-ジフルオロキノリン(10.0g)をゆっくり投入した。70℃付近で1時間撹拌した。20℃付近まで冷却後、水/メタノール(1.5/1)の混合液(100mL)を流入して結晶を析出させ、水(30mL)を加え20~40℃で1時間撹拌した。さらに0℃付近で1時間熟成させた後、析出晶をろ取し、水/メタール(1/1)の混合液で洗浄し、表題化合物(7.7g)を褐色固体として得た(74%収率)。
1HNMR (DMSO-d6) δ ppm: 3.95 (3H, s), 4.01 (3H, s), 6.84 (1H, dd, J = 8.7 Hz, 3.3 Hz), 7.05 (1H, d, J = 9.0 Hz), 7.44 (1H, dd, J = 11.1 Hz, 8.7 Hz), 8.38 (1H, dd, J = 9.0 Hz, 0.9 Hz).
【0071】
(実施例5)
8-フルオロ-5-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンの合成
8-フルオロ-2,5-ジメトキシキノリン(100g)、酢酸(300mL)、臭化水素酸水溶液(50%,1.2L)を反応容器に加え、還流下にて14時間反応液を水(3L)に流入し、70~100℃で1時間熟成した。その後室温にて1時間熟成し、析出晶をろ取し、水で洗浄し、表題化合物(85.7g)をベージュ色の固体として得た(99%収率)。
1HNMR (DMSO-d6) δppm: 6.46 (1H, d, J = 9.8 Hz), 6.52 (1H, dd, J = 8.8 Hz, 3.7 Hz), 7.21 (1H, dd, J = 10.9 Hz, 8.8 Hz), 8.02 (1H, dd, J = 9.8 Hz, 1.6 Hz), 10.33 (1H, brs), 11.60 (1H, brs).
【0072】
(実施例6)
8-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル アセテートの合成
8-フルオロ-5-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン(2.0g)、無水酢酸(12mL)、濃硫酸(0.03mL)を反応容器に加え、120℃付近にて2時間撹拌した。0℃付近まで冷却し、反応液を水(20mL)へ流入した。流入終了後、1時間以上熟成した。析出物をろ取し、水で洗浄し、表題化合物(2.13g)を白色~ベージュ色の固体として得た(86%収率)。
1HNMR (DMSO-d6) δppm: 2.39 (3H, s), 6.60 (1H, d, J = 9.9 Hz), 6.96 (1H, dd, J = 8.7 Hz, 3.9 Hz), 7.45 (1H, dd, J = 10.5 Hz, 8.7 Hz), 7.90 (1H, dd, J = 9.9 Hz, 1.8 Hz), 11.9 (1H, s).
【0073】
(実施例7)
8-フルオロ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-5-イル アセテートの合成
8-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル アセテート(128g)、10%パラジウム炭素(12.8g)、酢酸(1.0L)を反応容器に加え、水素雰囲気下にて70℃で8時間撹拌した。析出物をろ去し、水(1.3L)を加えて、80℃付近まで加熱した。室温付近まで冷却し、0℃付近にて1時間熟成した。析出物をろ取し、水で洗浄し、表題化合物(104g)を白色~ベージュ色の固体として得た(80%収率)。
1HNMR (DMSO-d6) δppm: 2.29 (3H, s), 2.45 (2H, dd, J = 8.1 Hz, 6.0 Hz), 2.73 (2H, dd, J = 8.1 Hz, 6.9 Hz), 6.75 (1H, dd, J = 9.0 Hz, 4.2 Hz), 7.12 (1H, t, J = 9.3 Hz), 10.2 (1H, s).
【0074】
(実施例8)
8-フルオロ-5-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンの合成
8-フルオロ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-5-イル アセテート(51g)、メタノール(255mL)、濃塩酸(306g)を反応容器に加え、還流下にて30分撹拌した。冷却し、水(1.0L)を流入し、30~40℃で1時間以上熟成した。0℃付近まで冷やし、析出晶をろ取し、水で洗浄し、表題化合物(40.9g)を白色~ベージュ色の固体として得た(98%収率)。
1HNMR (DMSO-d6) δppm: 2.42 (2H, dd, J = 7.8 Hz, 6.3 Hz), 2.79 (2H, t, J = 7.8 Hz), 6.40 (1H, dd, J = 9.0 Hz, 4.2 Hz), 6.85 (1H, t, J = 10.5 Hz), 9.45 (1H, s), 9.90 (1H, s).
【0075】
(実施例9)
2,5-ビス(ベンジルオキシ)-8-フルオロキノリンの合成
tert-ブトキシカリウム(46.4g)、N,N-ジメチルホルムアミド(165mL)、ベンジルアルコール(50.1g)を反応容器に加え、30℃を超えない温度で2-クロロ-5,8-ジフルオロキノリン(33.0g)をゆっくり投入した。70℃付近にて2時間撹拌した。20℃付近まで冷却し、水/アセトン(1/2)の混合液(330mL)を加えて結晶化させ、水(165mL)を加え、20~40℃で1時間熟成した。0℃で1時間熟成したのち、析出晶をろ取し、水/アセトン(1/1)の混合液で洗浄し、褐色固体を得た。アセトン(330mL)、活性炭(3.3g)を加え、還流下にて30分以上撹拌した。析出物を熱時ろ過し、ろ液を冷却して結晶化させ、表題化合物(44.2g)を淡褐色固体として得た(74%収率)。
1HNMR (CDCl3) δppm: 5.19 (2H, s), 5.58 (2H, s), 6.69 (1H, dd, J = 8.8 Hz, 3.6 Hz), 6.96 (1H, d, J = 9.2 Hz), 7.23 (1H, dd, J = 10.8 Hz, 2.0 Hz), 7.32-7.43 (6H, m), 7.48 (2H, d, J = 7.2 Hz), 7.55 (2H, d, J = 7.2 Hz), 8.46 (1H, dd, J = 9.2 Hz, 1.6 Hz).
【0076】
(実施例10)
8-フルオロ-5-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンの合成
2,5-ビス(ベンジルオキシ)-8-フルオロキノリン(35.6g)、5%パラジウム炭素(3.5g)、酢酸(245mL)を反応容器に加え、水素雰囲気下にて70℃付近で2時間撹拌した。析出物をろ去し、残渣の一部を濃縮した。水(350mL)を加えて加熱し、冷却して再結晶した。20~40℃で1時間熟成し、0℃で1時間熟成した。析出物をろ取し、水で洗浄し、表題化合物(14.0g)を淡褐色固体として得た(78%収率)。
1HNMR:実施例5参照
【0077】
(実施例11)
4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリン・4-メチルベンゼンスルホネートの合成(1)
アセトニトリル(140L)、N-クロロスクシンイミド(22.75kg)、1,3-ジメチルチオ尿素(0.32kg)を反応容器に加え、2,6-ジフルオロアニリン(20.0kg)をゆっくり流入した。流入終了後、室温にて2時間撹拌した。p-トルエンスルホン酸一水和物(32.41kg)を投入し、1時間以上熟成した。析出晶を分離し、酢酸エチル(60L)にて洗浄を行い、60℃で19時間送風乾燥し、標題化合物(44.66kg)を白色~微黄色固体として得た(85%収率)。
1HNMR (DMSO-d6) δppm: 2.29 (3H, s), 6.33-6.80 (3H, brs), 7.03-7.19 (4H, m), 7.44-7.52 (2H, m).
【0078】
(実施例12)
4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリン・4-メチルベンゼンスルホネートの合成(2)
アセトニトリル(60L)、酢酸エチル(60L)、2,6-ジフルオロアニリン(20.0kg)を反応容器に加え、トリクロロイソシアヌル酸(12.60kg)をゆっくり投入した。投入終了後、室温にて1時間撹拌した。析出晶をろ去し、アセトニトリル(20L)/酢酸エチル(20L)の混合液にて洗浄した。p-トルエンスルホン酸一水和物(32.41kg)を投入し、1時間以上熟成した。析出晶を分離し、アセトニトリル(40L)/酢酸エチル(20L)の混合液にて洗浄を行い、60℃で19時間送風乾燥し、標題化合物(44.68kg)を白色~微黄色固体として得た(85%収率)。
1HNMR:実施例11参照
【0079】
(実施例13)
1-エチル-1-(2-メチルアリル)-4-オキソピペリジン-1-イウム ヨージドの合成
アセトン(60L)、イソブテニルクロリド(18.42kg)、ヨウ化ナトリウム(28.15kg)を反応容器に加え、室温にて5時間撹拌した。水(200L)を流入し、分液し、有機層(27L)を取得した。得られた有機層へ、アセトン(140L)、1-エチル-4-ピペリドン(20.0kg)を加え、50℃を超えない温度で8時間撹拌した。析出晶を分離し、アセトン(200L)にて洗浄を行い、60℃で11時間送風乾燥し、標題化合物(41.35kg)を白色~微黄色固体として得た(85%収率)。
1HNMR (DMSO-d6) δ ppm: 1.34 (3H, t, J = 7.2 Hz), 1.98 (3H, s), 2.55-2.87 (4H, m), 3.56 (2H, q, J = 7.2 Hz), 3.64-3.80 (4H, m), 4.10 (2H, s), 5.41 (1H, brs), 5.49-5.55 (1H, m).
【0080】
(実施例14)
1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)ピペリジン-4-オンの合成
水(418L)、4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリン・4-メチルベンゼンスルホネート(59.77kg)を反応容器に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液(31.33kg)をゆっくり流入した。流入終了後、室温にて1時間撹拌した。析出晶を分離し、水(299L)にて洗浄を行い、4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリンを白色~灰色固体として得た。得られた固体へ2-プロパノール(179L)、水(179L)、1-エチル-1-(2-メチルアリル)-4-オキソピペリジン-1-イウム ヨージド(82.48kg)、1,3-ジメチルチオ尿素(1.02kg)を加え、還流下にて10時間撹拌した。0℃付近まで冷却し、1時間以上熟成した。析出晶を分離し、2-プロパノール(20L)/水(20L)の混合液にて洗浄を行い、続いて2-プロパノール(20L)にて洗浄を行い、35℃で37時間送風乾燥し、標題化合物(26.30kg)を白色~微黄色固体として得た(60%収率)。
1HNMR:参考例2参照
【0081】
(実施例15)
(3R,4R)-6-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-1-オキサ-6-アザスピロ[2.5]オクタ-4-オールの合成
アセトニトリル(48L)、1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)ピペリジン-4-オン(16.0kg)、tert-ブチルジメチルシリルクロシド(11.3kg)、ヨウ化ナトリウム(11.2kg)、トリエチルアミン(8.24kg)を反応容器に加え、還流下にて2時間撹拌した。トルエン(64L)及び水(64L)/重炭酸ナトリウム(3.20kg)の混合液を流入し、分液した。有機層を水(64L)、水(32L)で洗浄した。有機層を減圧濃縮し、残渣へトルエン(128L)及びシリカゲル60N(1.60kg)を加え、室温にて30分以上撹拌した。析出物をろ去し、トルエン(16.7kg)にて洗浄を行い、4-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンのトルエン溶液を得た。1-プロパノール(58.9kg)、アセトニトリル(74L)、水(99L)/エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(15.0g)/炭酸カリウム(27.0kg)の混合液、D-エポキソン(2.52kg)を加え、10℃を超えない温度で35%過酸化水素水(25.3kg)をゆっくり流入した。流入終了後、5~15℃で5時間撹拌した。20℃を超えない温度で、水(131L)/チオ硫酸ナトリウム五水和物(65.1kg)/炭酸ナトリウム(528g)の混合液をゆっくり流入し、30分以上撹拌した。静置後に分液し、有機層を水(160L)/塩化ナトリウム(4kg)の混合液で2回洗浄を行い、(1R,6R)-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-3-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-7-オキサ-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタンのトルエン/1-プロパノール/アセトニトリル混合液を得た。ジメチルスルホキシド(88.0kg)、トリメチルスルホキソニウムヨージド(15.8kg)、48%水酸化カリウム水溶液(8.38kg)を加え、室温にて3時間撹拌した。水(160L)を流入し、分液した。有機層を水(160L)/塩化ナトリウム(4kg)の混合液で洗浄した。有機層を減圧濃縮し、残渣にエタノール(64L)を流入し、還流下にて固体が溶解するまで撹拌した。25℃付近まで冷却し、1時間以上熟成した。析出晶を分離し、エタノール(12.6kg)にて洗浄を行い、60℃で16時間送風乾燥し、標題化合物(7.10kg)を白色~微黄色固体として得た(39%収率)。
1HNMR (CDCl3) δ ppm: 1.76 (1H, dt, J = 13.8 Hz, 4.1 Hz), 2.02-2.17 (1H, m), 2.08 (1H, d, J = 11.1 Hz), 2.70 (1H, d, J = 4.7 Hz), 3.02-3.22 (2H, m), 3.06 (1H, d, J = 4.7 Hz), 3.23-3.36 (1H, m), 3.37-3.48 (1H, m), 3.79-3.91 (1H, m), 6.84-6.95 (2H, m).
【0082】
(実施例16)
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンの合成
(3R,4R)-6-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-1-オキサ-6-アザスピロ[2.5]オクタ-4-オール(13.83kg)、8-フルオロ-5-ヒドロキシ3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(10.00kg)、炭酸カリウム(1.39kg)、2-プロパノール(69L)、水(14L)を反応容器に加え、還流下にて3時間撹拌した。水(138L)を流入し、30~50℃で1時間以上熟成した。析出晶を分離し、2-プロパノール(42L)にて洗浄を行い、60℃で19時間送風乾燥し、標題化合物(20.94kg)を白色~微黄色固体として得た(91%収率、II形)。
1HNMR (DMSO-d6) δ ppm: 1.62-1.75 (1H, m), 1.83-1.99 (1H, m), 2.40-2.54 (2H, m), 2.80-3.01 (4H, m), 3.15-3.40 (2H, m), 3.62-3.80 (1H, m), 3.68 (1H, d, J = 9.0 Hz), 4.02 (1H, d, J = 9.0 Hz), 4.52 (1H, s), 4.86 (1H, d, J = 6.3 Hz), 6.58 (1H, dd, J = 9.0 Hz, 3.9 Hz), 6.97-7.07 (1H, m), 7.21-7.33 (2H, m), 10.0 (1H, s).
【0083】
(実施例17)
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンの精製(1)
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(20.93kg、II形)、酢酸(175.65kg)を反応容器に加え、70℃付近にて結晶が溶解するまで撹拌した。熱時ろ過し、70℃付近まで温めた水(41.86kg)をろ過機を通して流入した。ゆっくり冷却し、30℃以下で1時間以上熟成した。析出晶を分離し、酢酸(49.40kg)/水(15.70kg)の混合液にて洗浄を行い、85℃、1.0kPaで24時間真空乾燥し、標題化合物(15.45kg)を白色~微黄色固体として得た(73%収率、I形)。
1HNMR:実施例16参照
【0084】
(実施例18)
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンの精製(2)
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(11.10kg、II形)、酢酸カリウム(1.91kg)、酢酸(100kg)を反応容器に加え、70℃付近にて結晶が溶解するまで撹拌した。熱時ろ過し、70℃付近まで温めた水(22kg)をろ過機を通して流入した。ゆっくり冷却し、30℃以下で1時間以上熟成した。析出晶を分離し、酢酸(26kg)/水(8kg)の混合液にて洗浄を行い、65~70℃、1.0kPaで42時間真空乾燥し、標題化合物(8.61kg)を白色~微黄色固体として得た(77%収率、I形)。
1HNMR:実施例16参照
【0085】
(実施例19)
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンの精製(3)
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(3.10kg、II形)、ジメチルスルホキシド(19L)を反応容器に加え、水(37L)をゆっくり流入した。流入終了後、室温にて1時間以上熟成した。析出晶を分離し、エタノール(25L)にて洗浄を行い、50℃で19時間送風乾燥し、標題化合物(2.81kg)を白色~微黄色固体として得た(93%収率、I形)。
1HNMR:実施例16参照
【0086】
(実施例20)
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンの精製(4)
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(2.00kg、II形)、酢酸(16L)を反応容器に加え、70℃付近にて結晶が溶解するまで撹拌した。熱時ろ過し、60℃付近まで温めた水(4L)を流入した。ゆっくり冷却し、30℃以下で1時間以上熟成した。析出晶を分離し、酢酸(45L)/水(15L)の混合液にて洗浄を行った。得られた結晶に、水(55L)を通過させた。結晶を分離し、50℃で終夜送風乾燥し、標題化合物(1.27kg)を白色~微黄色固体として得た(63%収率、I形)。
1HNMR:実施例16参照
【0087】
(実施例21)
(S)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-4-メチレンピペリジン-3-オールの合成
トルエン(40L)、1,2-ジメトキシエタン(40L)、トリフェニルホスフィン(0.62kg)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.43kg)、1,3-ビス(ヘキサフルオロ-α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン(3.95kg)を反応容器に加え、2-メチル-2-ビニルオキシラン(20.51kg)をゆっくり流入した。流入終了後、室温にて1時間半撹拌した。トルエン(81L)、パラホルムアルデヒド(5.06kg)、4-クロロ-2,6-ジフルオロアニリン・4-メチルベンゼンスルホネート(44.25kg)を加え、室温にて2時間半撹拌した。水(101L)及び25%水酸化ナトリウム水溶液(34.58kg)を流入し、分液した。水(97L)にて洗浄を行い、有機層を減圧濃縮した。残渣にトルエン(71L)、シリカゲル60N(1.02kg)、活性炭(0.53kg)を加え、室温にて30分以上撹拌した。析出物をろ去し、トルエン(71L)にて洗浄を行い、[1-(4-クロロ-2,6-ジクロロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル]メタノールのトルエン溶液を得た。ゼオラムA-3(3.45kg)、(D)-(-)-酒石酸イソプロピル(3.40kg)、チタンテトライソプロポキシド(3.75kg)を加え、0℃を超えない温度でクメンヒドロペルオキシド(17.55kg)及びトルエン(17L)をゆっくり流入した。流入終了後、0℃以下にて2時間撹拌した。ジメチルスルホキシド(10.30kg)を流入し、室温にて1時間撹拌した。50%DL-乳酸(34L)、水(137L)を流入し、分液した。有機層を重炭酸ナトリウム(8.86kg)/水(137L)の混合液にて洗浄した。有機層を減圧濃縮し、残渣へ酢酸エチル(137L)、トリエチルアミン(10.67kg)、4-ジメチルアミノピリジン(0.81kg)、無水フタル酸(13.66kg)を加え、室温にて1時間撹拌した。ヘプタン(137L)及び重炭酸ナトリウム(8.86kg)/水(102L)の混合液を流入し、分液した。水層を酢酸エチル(137L)/ヘプタン(137L)の混合液にて洗浄した。トルエン(204L)、25%水酸化ナトリウム水溶液(126.52kg)を流入し、70℃付近にて2時間撹拌した。静置後に分液し、有機層へ濃塩酸(12.99kg)及び水(137L)を流入し、分液した。重炭酸ナトリウム(8.86kg)/水(137L)の混合液にて洗浄を行い、有機層を減圧濃縮した。残渣へトルエン(109L)を流入し、[(1R,6R)-3-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-7-オキサ-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-6-イル]メタノールのトルエン溶液を得た。トリエチルアミン(7.33kg)、トリメチルアミン塩酸塩(0.31kg)、トシルクロリド(12.56kg)を加え、室温にて1時間半撹拌した。重炭酸ナトリウム(2.27kg)/水(73L)の混合液を流入し、分液した。有機層を減圧濃縮し、残渣にアセトニトリル(106L)、ヨウ化ナトリウム(10.87kg)を加え、70℃付近にて2時間撹拌した。水(89L)及びアスコルビン酸(12.77kg)を加え、室温にて1時間撹拌した。酢酸エチル(145L)を流入し、分液した。有機層を亜硫酸ナトリウム(8.31kg)/水(89L)の混合液及び水(89L)で洗浄を行い、減圧濃縮した。残渣へメタノール(18L)を流入し、ヘプタン(177L)にて抽出した。ヘプタン層にシリカゲル60N(1.55kg)を加え、室温にて30分以上撹拌した。析出物をろ去し、ヘプタン(18L)/エタノール(13L)の混合液にて洗浄した。ろ液を減圧濃縮し、残渣へエタノール(27L)及び2-プロパノール(27L)を流入した。撹拌下に水(100L)をゆっくり流入して結晶を析出させた。析出晶を分離し、水(27L)にて洗浄を行い、40℃で20時間送風乾燥し、標題化合物(1.60kg)を白色~灰色固体として得た(4%収率)。
1HNMR (CDCl3) δ ppm: 2.29 (1H, dt, J = 13.8 Hz, 4.9 Hz), 2.54-2.73 (2H, m), 3.01-3.19 (3H, m), 3.29-3.40 (1H, m), 4.13-4.26 (1H, m), 4.87 (1H, s), 5.00 (1H, s), 6.83-6.95 (2H, m).
【0088】
(実施例22)
(3R,4R)-6-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-1-オキサ-6-アザスピロ[2.5]オクタ-4-オールの合成
(S)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-4-メチレンピペリジン-3-オール(7.21kg)、酢酸エチル(22L)、水(36L)を反応容器に加え、m-クロロ過安息香酸(10.27kg)をゆっくり投入した。投入終了後、10℃を超えない温度で3時間撹拌した。重炭酸ナトリウム(3.50kg)、亜硫酸ナトリウム(3.50kg)/水(36L)の混合液を流入し、30分以上撹拌した。析出晶を分離し、水(14L)にて洗浄を行った。エタノール(10L)を流入し、還流下にて結晶が溶解するまで撹拌した。25℃付近まで冷却し、1時間以上熟成した。析出晶を分離し、エタノール(3L)にて洗浄を行い、60℃で17時間送風乾燥し、標題化合物(1.52kg)を白色~微黄色固体として得た(19%収率)。
1HNMR:実施例15参照
【0089】
(実施例23)
酢酸和物の調製
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(20.93kg、II形)、酢酸(175.65kg)を反応容器に加え、70℃付近にて結晶が溶解するまで撹拌した。熱時ろ過し、70℃付近まで温めた水(41.86kg)をろ過機を通して流入した。ゆっくり冷却し、30℃以下で1時間以上熟成した。析出晶を分離し、酢酸(49.40kg)/水(15.70kg)の混合液にて洗浄を行い、標題化合物の酢酸和物(18.55kg)を得た。
1HNMR (DMSO-d6) δ ppm: 1.62-1.74 (1H, m), 1.83-1.99 (1H, m), 1.90 (3H, s), 2.40-2.54 (2H, m), 2.80-3.00 (4H, m), 3.14-3.40 (2H, m), 3.62-3.80 (1H, m), 3.68 (1H, d, J = 9.2 Hz), 4.01 (1H, d, J = 9.2 Hz), 4.54 (1H, brs), 4.88 (1H, brs), 6.57 (1H, dd, J = 9.2 Hz, 3.6 Hz), 6.97-7.07 (1H, m), 7.21-7.32 (2H, m), 10.0 (1H, s). 12.0 (1H, brs).
【0090】
(実施例24)
I形結晶の調製
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(20.93kg、II形)、酢酸(175.65kg)を反応容器に加え、70℃付近にて結晶が溶解するまで撹拌した。熱時ろ過し、70℃付近まで温めた水(41.86kg)をろ過機を通して流入した。ゆっくり冷却し、30℃以下で1時間以上熟成した。析出晶を分離し、酢酸(49.40kg)/水(15.70kg)の混合液にて洗浄を行い、85℃、1.0kPaで24時間真空乾燥し、標題化合物(15.45kg)を白色~微黄色固体として得た(73%収率、I形)。
1HNMR:実施例16参照
【0091】
(実施例25)
II形結晶の調製
5-{[(3R,4R)-1-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロキシピペリジン-4-イル]メトキシ}-8-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(200g、I+II形)、メタノール(2L)を反応容器に加え、室温にて22時間撹拌した。析出晶を分離し、メタノール(600mL)にて洗浄を行い、80℃で17時間送風乾燥し、標題化合物(181.70g)を白色~微黄色固体として得た(90%収率、II形)。
1HNMR:実施例16参照
【0092】
スクリーニング:粉砕法(機械粉砕)
化合物A(II形晶)とコフォーマーをモル比1:2で総量約250mgとなるように秤量し、エタノール25μLを添加して機械粉砕した(型式Micro Smash MS-100)。粉砕時には直径4.5mmのジルコニアビーズ2個を入れ、4000rpmで3分間を2セット実施した。粉砕後のサンプルについてPXRD測定(型式X‘PertPro MPD、PANalytical)を行った。
【0093】
スクリーニング:熱分析法
上記粉砕法で作製した化合物A(II形晶)とコフォーマーの物理混合物をTG/DTA(型式TG/DTA7200、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社)にて昇温速度5℃/minで化合物A及びコフォーマーの融点以上の温度まで加熱した。別法として、化合物A(II形晶)40mgに対してモル比2のコフォーマーを秤量し、メノウ乳鉢で粉砕後、上記と同条件でTG/DTA測定を行った。その結果、2,5DHBA又はサリチル酸との物理混合物で共結晶形成を確認した。
化合物Aと2,5DHBAの物理混合物の熱分析結果を図1に示す。図1によれば、約134~145℃にかけて化合物Aと2,5DHBAの共融に由来する吸熱ピーク、約147℃にて共結晶形成に伴う発熱ピーク、約150~172℃(オンセット154℃)に共結晶の融点を示唆する吸熱ピークが認められた。図2及び図3は、それぞれ化合物Aと2,5DHBA単独の熱分析結果を示す。
化合物Aとサリチル酸の物理混合物の熱分析結果を図4に示す。図4によれば、約131~150℃にかけて化合物Aとサリチル酸の共融に由来する吸熱ピーク、約150~170℃(オンセット159℃)に共結晶の融点を示唆する吸熱ピークが認められた。図5は、サリチル酸単独の熱分析結果を示す。
【0094】
化合物Aと2,5DHBAとの共結晶
(サンプル分析)
X線回折-示差走査熱量同時測定装置(型式TTR2000、DSC/XRD II, リガク)にて、化合物A(II形晶)と2,5DHBAのモル比1:2の物理混合物を測定した。測定条件は、昇温速度1℃/min,スキャン速度10°/minで行った。143~147℃付近の発熱ピーク後に図6に示す回折パターンが得られたことから、混合物が共融し再結晶化に伴って共結晶が形成したことを確認した(2,5DHBA共結晶(I形晶))。
【0095】
(ボールミル粉砕法)
ボールミル粉砕機(型式RETSCH MIXER MILL MM200、Retsch)を使用した粉砕法を実施した。化合物A(II形晶)500mgに対して2,5DHBAをモル比1:1で,添加溶媒としてアセトン、メタノール又は水を用いるか、又は溶媒非添加で実施した。粉砕条件は粉砕時間99分、粉砕頻度30/秒とした。その結果、モル比1:1の溶媒非添加条件で2,5DHBA共結晶(I形晶)及び2,5DHBA共結晶(II形晶)が得られた。添加溶媒として水を用いた条件では、2,5DHBA共結晶(I形晶)が得られた。
【0096】
(晶析法:THF/ヘキサン系)
化合物A(II形晶)を100mgに対して、2,5DHBAをモル比1、5、10又は20で混合し、THF(2mL)に溶解させた。そこにヘキサンを1mLずつ固体が析出するまで最大5mL滴下した。2,5DHBAのモル比5、10又は20の条件で化合物Aと2,5DHBAの共結晶THF和物を白~微黄色固体として得た。
(晶析法:メタノール/水系)
化合物A(I形晶)を10mgに対して、2,5DHBAをモル比100で混合し、メタノール(2mL)に溶解させた。そこに水を1mLずつ固体が析出するまで滴下し、2,5DHBA共結晶(I形晶)を白~微黄色固体として得た。
(晶析法:アセトン/水系)
化合物A(I形晶)を10mgに対して、2,5DHBAを飽和させたアセトン(2mL)に溶解させた。そこに水を1mLずつ固体が析出するまで滴下した。得られた析出物は、2,5DHBA共結晶(I形晶)と2,5DHBAの混晶を白~微黄色固体として得た。
【0097】
(晶析法で得られたサンプルの分析)
THF/ヘキサン系にて化合物Aに対し2,5DHBAを10モル混合して得られたサンプルを熱分析測定したところ、約95℃までに吸熱ピークと共に3.8%の重量減少が認められた後、約142~152℃で吸発熱ピークを観測し、約152~162℃で融解した(図7)。100℃又は145℃まで加熱し、室温まで冷却したところ、100℃まで加熱したサンプルは2,5DHBA共結晶(II形晶)の粉末X線回折パターンを示し(図8)、145℃まで加熱したサンプルは2,5DHBA共結晶(I形晶)の粉末X線回折パターンを示した(図9)。
溶液NMRの結果から、95℃付近までの重量減少は結晶中に含まれるTHFであることが確認された。また、脱溶媒後の結晶の溶液NMRの結果から、得られた共結晶中の化合物Aと2,5DHBAのモル比は1:1で、THFの残留はないことがわかった。
(粉末X線回折)
得られた2,5DHBA共結晶のPXRDパターンを図8及び9に示す。比較のために、化合物A(II形晶)及び2,5DHBAの回折パターンをそれぞれ図10及び11に示す。
図8によれば、2,5DHBA共結晶(II形晶)は、回折角(2θ)3.9°、7.8°、11.8°、14.1°、15.1°、18.9°、20.0°、24.8°及び25.8°付近にピークを示した。
図9によれば、2,5DHBA共結晶(I形晶)は、回折角(2θ)9.7°、11.4°、16.0°、18.7°、19.3°、21.1°、22.8°、25.0°、25.9°及び26.9°付近にピークを示した。
(熱分析)
上記THF/ヘキサン系の晶析法で得られた2,5DHBA共結晶(II形晶)のTG/DTA曲線を図12に、上記メタノール/水系の晶析法で得られた2,5DHBA共結晶(I形晶)のTG/DTA曲線を図13に示す。
【0098】
(晶析法のスケールアップ)
500mLのビーカーに化合物A(II形晶)5gと化合物Aに対しモル比10の2,5DHBAをTHF(100mL)に溶解させた。そこにスターラーで撹拌しながらヘキサン(250mL)を加え結晶を析出させ、その後3日撹拌し2,5DHBA共結晶THF和物を得た(図14)。これをろ取し、室温で風乾させた後、110℃で20時間加熱して2,5DHBA共結晶(I形晶)を得た。得られた2,5DHBA共結晶(I形晶)をジェットミル粉砕し(型式A―Oジェットミル、セイシン企業)、粉砕によってメディアン径が2.3μmの薬物粒子径を得た(粒度測定型式Shimadzu SALDー3100)。粉砕後も粉末X線回折パターンに変化がないことを確認した。
(粉末X線回折)
化合物Aと2,5DHBAとの共結晶THF和物のPXRDパターンを図14に示す。
図14によれば、2,5DHBA共結晶THF和物は、回折角(2θ)8.4°、9.2°、16.0°、16.3、17.6°、18.9°、19.5°、21.7°、24.7°、25.4°、26.5°及び27.9°付近にピークを示した。
【0099】
化合物Aとサリチル酸との共結晶
(サンプル分析)
化合物A(II形晶)とサリチル酸のモル比1:1の物理混合物を調製し、100℃、120℃又は150℃まで加熱し室温まで冷却してPXRDを測定した(図15)。その結果、100℃での回折パターンは主に化合物Aとサリチル酸の物理混合物であったが、120℃および150℃加熱サンプルでは化合物Aとサリチル酸の共結晶の回折パターンが観測された。一部化合物Aが残存しているが、主な回折パターンはサリチル酸との共結晶の回折パターンであると判断した。当該回折パターンは、後述する晶析で得られた共結晶のPXRDパターンとも一致することを確認した。
【0100】
(晶析法:アセトン/水系)
(1)化合物A(I形晶)を10mgに対して、サリチル酸をモル比5、10又は50で混合し、アセトン(2mL)に溶解させた。そこに水を1mLずつ固体が析出するまで滴下した。サリチル酸のモル比50の条件で共結晶を白~微黄色固体として得た(図16)。
(2)化合物A(II形晶)1gと化合物Aに対しモル比50のサリチル酸をアセトン(200mL)に溶解させた。そこにスターラーで撹拌しながら水(300mL)を加え結晶を析出させた。析出物をろ取し、室温で風乾させた後、120℃で5時間加熱してサリチル酸共結晶を得た。得られたサリチル酸共結晶を磁性乳鉢で粉砕し、メディアン径が25.8μmの薬物粒子径を得た(粒度測定型式Shimadzu SALDー3100)。
(晶析法:アセトン/ヘキサン系)
化合物A(I形晶)を10mgに対して、サリチル酸をモル比5、10又は50で混合し、アセトン(2mL)に溶解させた。そこにヘキサンを1mLずつ固体が析出するまで滴下した。サリチル酸のモル比50の条件で共結晶を白~微黄色固体として得た。
(晶析法:THF/ヘキサン系)
化合物A(I形晶)を100mgに対して、サリチル酸をモル比5、10又は50で混合し、THF(2mL)に溶解させた。そこにヘキサンを1mLずつ固体が析出するまで滴下した。サリチル酸のモル比50の条件で共結晶を白~微黄色固体として得た。
【0101】
(粉末X線回折)
アセトン/水系におけるサリチル酸共結晶のPXRDパターンを図16に示す。
図16によれば、サリチル酸共結晶は、回折角(2θ)9.9°、11.4°、16.2°、18.8°、19.3°、19.8°、23.8°、24.9°、25.3°、26.1°及び27.3°付近にピークを示した。
(熱分析)
アセトン/水系におけるサリチル酸共結晶のTG/DTA曲線を図17に示す。
【0102】
(単結晶構造解析)
上記アセトン/水系晶析条件で得られたサリチル酸共結晶について単結晶構造解析を行った。
構造はSHELXT(Sheldrick, G. M.: SHELXT-Integrated space-group and crystal-structure determination. Acta Cryst. A71 (2015) 3-8.1)で直接法により決定した。非水素原子は異方的に、水素原子は等方的に精密化した。計算は全てCrystal Structure crystallographic software packageとSHELXL(Sheldrick, G. M.: Crystal structure refinement with SHELXL. Acta. Cryst. C71 (2015) 3-8.)で行った。
得られた結晶データ及び精密化パラメータを以下に示す。
【表2】


図18にORTEP図を示す。
非対称単位中に化合物A及びサリチル酸が3分子ずつ確認されたことから、サリチル酸共結晶は化合物Aとサリチル酸のモル比1:1の共結晶であることを確認した(図19)。
【0103】
[試験例]
(溶出試験)
JP1及びJP2に1%ヒドロキシプロピルメチルセルロースを溶解させた試験液で溶出試験を実施した。具体的には、試験液20mL、サンプルはジェットミル粉砕後の2,5DHBA共結晶(I形晶)及び磁性乳鉢粉砕後のサリチル酸共結晶、対照としてジェットミル粉砕後の化合物Aフリー体(II形)(メディアン径2.7μm)をそれぞれ化合物Aとして約5mgを乳糖で20倍散し、37℃、150rpmで溶出試験を実施した。スターラーはμDiss Profiler(Pion社)を使用し、UHPLCで定量した。両試験液とも速やかに溶出した後に過飽和を示し、その最高濃度はJP1及びJP2共に2,5DHBA共結晶(I形晶)及びサリチル酸共結晶が対照の12~15倍であった(図20及び21)。
【0104】
(イヌ薬物動態試験)
ジェットミル粉砕後の2,5DHBA共結晶(I形晶)及びジェットミル粉砕後の化合物Aフリー体(II形晶)を化合物Aとして100mgをビーグル犬4頭に経口投与した。投与は原末を乳糖で20倍散し、カプセル剤に製剤化して行った。その結果、共結晶/化合物Aフリー体(II形晶)ではCmaxとAUC共に6.3倍の吸収改善が認められた(図22)。
【0105】
(光安定性試験)
2,5DHBA共結晶(I形晶)およびサリチル酸共結晶の固体状態の光安定性を評価した。サンプルは、2,5DHBA共結晶(I形晶)およびサリチル酸共結晶と、対照として化合物Aフリー体(II形晶)を用いた。保存条件は、光照射下(白色蛍光ランプと近紫外蛍光ランプ)で2週間とした。2週間後に外観観察を行った。光安定性試験の結果、化合物Aのフリー体(II形晶)は光照射下で表面の変色(白色から微帯黄白色)が認められたが、2,5DHBA共結晶(I形晶)とサリチル酸共結晶では特に変化は認められなかった。
【0106】
(熱湿度安定性試験)
2,5DHBA共結晶(I形晶)の固体状態の熱湿度安定性を評価した。保存条件は、40℃/75%RH(Open系、Close系)、60℃(Close系)で4週間とした。4週間後に外観観察に加えて、純度(UHPLC)、結晶性(PXRD、TG/DTA)の評価を行った。熱湿度安定性試験の結果、いずれの項目も試験前後で特に変化は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
化合物Aの共結晶により、結核菌、多剤耐性結核菌及び/又は非結核性抗酸菌に対して抗菌作用を有する医薬品のより安定かつ効率的な供給が可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22