(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085583
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】集積回路の電源供給用の電気回路、コンデンサ及び集積回路付電気回路
(51)【国際特許分類】
H01L 25/00 20060101AFI20230614BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20230614BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20230614BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20230614BHJP
H01G 4/35 20060101ALI20230614BHJP
H03H 7/01 20060101ALI20230614BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H01L25/00 B
H01G9/15
H01G4/40 A
H01G4/30 201A
H01G4/30 550
H01G4/35
H03H7/01 A
H01L27/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020084089
(22)【出願日】2020-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 一明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昭二
(72)【発明者】
【氏名】倉貫 健司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎也
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
5F038
5J024
【Fターム(参考)】
5E001AB02
5E082AB03
5E082AB06
5E082AB09
5F038AC02
5F038AC04
5F038AC07
5F038AC15
5F038AC16
5F038CD02
5F038CD14
5F038DF01
5F038DF04
5F038EZ16
5J024AA01
5J024BA11
5J024CA02
5J024DA03
5J024DA25
5J024EA05
5J024EA08
5J024KA02
(57)【要約】
【課題】コンデンサの員数を削減する。
【解決手段】集積回路41の電源供給用の電気回路101は、電路30と、少なくとも1つの所定のコンデンサ11と、を備える。電路30は、電源PS1から集積回路41に直流電力を供給する。所定のコンデンサ11は、所定の特性を有する。所定のコンデンサ11は、電路30とグランドとに電気的に接続されている。所定の特性は、少なくとも周波数が5[MHz]以上10[MHz]以下におけるインピーダンスが10[mΩ]以下という特性である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路の電源供給用の電気回路であって、
電源から前記集積回路に直流電力を供給する電路と、
所定の特性を有し、前記電路とグランドとに電気的に接続された少なくとも1つの所定のコンデンサと、を備え、
前記所定の特性は、少なくとも周波数が5[MHz]以上10[MHz]以下におけるインピーダンスが10[mΩ]以下という特性である、
集積回路の電源供給用の電気回路。
【請求項2】
前記所定の特性は、周波数が100[kHz]以上10[MHz]以下におけるインピーダンスが10[mΩ]以下という特性である、
請求項1に記載の集積回路の電源供給用の電気回路。
【請求項3】
前記電源と前記所定のコンデンサとの間に電気的に接続されたDC/DCコンバータを更に備える、
請求項1又は2に記載の集積回路の電源供給用の電気回路。
【請求項4】
前記DC/DCコンバータのスイッチング周波数は、200[kHz]以上10[MHz]以下である、
請求項3に記載の集積回路の電源供給用の電気回路。
【請求項5】
前記所定のコンデンサと前記集積回路との間の配線インピーダンスは、前記DC/DCコンバータと前記集積回路との間の配線インピーダンスよりも小さい、
請求項3又は4に記載の集積回路の電源供給用の電気回路。
【請求項6】
前記所定のコンデンサの自己共振周波数は、300[kHz]以上1[GHz]以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の集積回路の電源供給用の電気回路。
【請求項7】
前記所定のコンデンサの駆動電圧は3.3[V]以下である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の集積回路の電源供給用の電気回路。
【請求項8】
前記所定のコンデンサは、電解コンデンサであって、
前記所定のコンデンサは、
複数のコンデンサ素子が積層された素子積層体と、
前記素子積層体を封止する外装体と、
第1の外部電極と、
第2の外部電極と、
第3の外部電極と、を備え、
前記複数のコンデンサ素子のそれぞれは、
表面に多孔質部を有する陽極体と、
前記多孔質部の少なくとも一部の表面に形成された誘電体層と、
前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、
前記陽極体が露出する第1端部と、
前記陽極体が前記陰極部で覆われた第2端部と、を有し、
少なくとも前記第1端部の端面は、前記外装体から露出しており、
前記複数のコンデンサ素子は、前記第1端部が前記外装体の第1の面を向いた第1のコンデンサ素子と、前記第1端部が前記外装体の前記第1の面と異なる第2の面を向いた第2のコンデンサ素子と、を有し、
前記素子積層体において、前記第1のコンデンサ素子と前記第2のコンデンサ素子とが交互に積層され、
前記第1のコンデンサ素子の前記第1端部は、前記第1の外部電極と電気的に接続しており、
前記第2のコンデンサ素子の前記第1端部は、前記第2の外部電極と電気的に接続しており、
前記第3の外部電極は、前記コンデンサ素子の前記陰極部と電気的に接続している、
請求項1~7のいずれか一項に記載の集積回路の電源供給用の電気回路。
【請求項9】
前記所定のコンデンサは、貫通コンデンサであって、
前記所定のコンデンサは、
筐体と、
前記筐体の外部に露出し前記電路に電気的に接続された2つの陽極端子と、
前記筐体の内部に配置され前記2つの陽極端子を電気的に接続している貫通部と、
前記筐体の外部に露出し前記グランドに電気的に接続された陰極端子と、を備える、
請求項1~7のいずれか一項に記載の集積回路の電源供給用の電気回路。
【請求項10】
前記電路に電気的に接続された前記所定のコンデンサの個数は1つである、
請求項1~9のいずれか一項に記載の集積回路の電源供給用の電気回路。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の集積回路の電源供給用の電気回路に前記所定のコンデンサとして用いられる、
コンデンサ。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の集積回路の電源供給用の電気回路と、前記集積回路と、を備える、
集積回路付電気回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に集積回路の電源供給用の電気回路、コンデンサ及び集積回路付電気回路に関し、より詳細には、コンデンサを備える集積回路の電源供給用の電気回路、この電気回路に用いられるコンデンサ、及び、この電気回路を備える集積回路付電気回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のデジタル信号処理基板は、クロック動作用の素子が接続されたLSIと、このLSIに電力を供給する電源入力ラインと、この電源入力ラインとアース間に接続されたデカップリングコンデンサとを有する。デカップリングコンデンサとして、ESRが25mΩ(100kHz)以下、ESLが800pH(500MHz)以下の面実装型の固体電解コンデンサを用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、LSI等の集積回路に要求される仕様は更に高度化している。例えば、より広い周波数帯において、集積回路から見た電源供給ラインのインピーダンスを抑えることが要求されている。そのため、より多くのコンデンサが必要となるという課題があった。
【0005】
本開示は、コンデンサの員数を削減することができる集積回路の電源供給用の電気回路、コンデンサ及び集積回路付電気回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る集積回路の電源供給用の電気回路は、電路と、少なくとも1つの所定のコンデンサと、を備える。前記電路は、電源から前記集積回路に直流電力を供給する。前記所定のコンデンサは、所定の特性を有する。前記所定のコンデンサは、前記電路とグランドとに電気的に接続されている。前記所定の特性は、少なくとも周波数が5[MHz]以上10[MHz]以下におけるインピーダンスが10[mΩ]以下という特性である。
【0007】
本開示の一態様に係るコンデンサは、前記集積回路の電源供給用の電気回路に、前記所定のコンデンサとして用いられる。
【0008】
本開示の一態様に係る集積回路付電気回路は、前記集積回路の電源供給用の電気回路と、前記集積回路と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、コンデンサの員数を削減することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る集積回路付電気回路の回路図である。
【
図2】
図2は、同上の集積回路付電気回路の要部の概略図である。
【
図3】
図3は、比較例に係る集積回路付電気回路の要部の概略図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るコンデンサの特性図である。
【
図5】
図5は、比較例に係るコンデンサの特性図である。
【
図6】
図6は、比較例に係る複数のコンデンサの並列回路の特性図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係るコンデンサの模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、同上のコンデンサのコンデンサ素子の模式的な断面図である。
【
図9】
図9は、変形例1に係る集積回路付電気回路の要部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
以下、実施形態に係る集積回路の電源供給用の電気回路、コンデンサ及び集積回路付電気回路について、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
(1)概要
図1に示すように、本実施形態の集積回路41の電源供給用の電気回路101は、電路30と、少なくとも1つの所定のコンデンサ11と、を備える。電路30は、電源PS1から集積回路41に直流電力を供給する。所定のコンデンサ11は、所定の特性を有する。所定のコンデンサ11は、電路30とグランドとに電気的に接続されている。所定の特性は、少なくとも周波数が5[MHz]以上10[MHz]以下におけるインピーダンスが10[mΩ]以下という特性である。
【0013】
本実施形態によれば、電気回路101に用いるコンデンサの員数を削減することができる。つまり、集積回路41への電源供給ラインである電路30の電圧変動を抑制するために要するコンデンサの員数を削減できる。
【0014】
所定のコンデンサ11が有する所定の特性は、より好ましくは、周波数が100[kHz]以上10[MHz]以下におけるインピーダンスが10[mΩ]以下という特性である。
【0015】
所定のコンデンサ11の自己共振周波数は、300[kHz]以上1[GHz]以下であることが好ましい。また、所定のコンデンサ11の駆動電圧は3.3[V]以下であることが好ましい。
【0016】
コンデンサ11は、集積回路41の電源供給用の電気回路101に上記所定のコンデンサ11として用いられる。コンデンサ11は、電気回路101のうちコンデンサ11以外の構成とは独立して提供されてもよい。
【0017】
また、集積回路付電気回路100は、集積回路41の電源供給用の電気回路101と、集積回路41と、を備える。
【0018】
(2)詳細
集積回路41は、例えば、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)である。集積回路41は、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、又は、マイクロコントローラに備えられる。
【0019】
電気回路101は、例えば、プリント配線板の回路である。
図1に示すように、集積回路41の電源供給用の電気回路101(以下、単に「電気回路101」と称す)は、電路30として、第1電路31及び第2電路32を備える。また、電気回路101は、コンデンサ11に加えて、コンデンサ42、45を備える。各コンデンサ11、42、45は、電解コンデンサである。また、電気回路101は、DC/DCコンバータ43と、インダクタ44と、を備える。
【0020】
電気回路101は、電源PS1に電気的に接続される。第1電路31の第1端は、電源PS1に電気的に接続される。第1電路31の第2端は、DC/DCコンバータ43に電気的に接続される。電源PS1は、直流電源である。電源PS1は、例えば、バッテリである。電源PS1は、直流電力をDC/DCコンバータ43に供給する。
【0021】
電気回路101は、集積回路41に電気的に接続される。第2電路32の第1端は、DC/DCコンバータ43に電気的に接続される。第2電路32の第2端は、集積回路41に電気的に接続される。コンデンサ11は、第2電路32とグランドとの間に電気的に接続されている。より詳細には、コンデンサ11の第1端は第2電路32に電気的に接続されており、第2端はグランドに電気的に接続されている。
【0022】
つまり、DC/DCコンバータ43は、電源PS1とコンデンサ11(所定のコンデンサ)との間に電気的に接続される。DC/DCコンバータ43は、電源PS1から入力された直流電力を所定の電圧の直流電力に変換して、第2電路32へ出力する。集積回路41(の電源ピン)には、DC/DCコンバータ43から出力された直流電力が、第2電路32を介して入力される。
【0023】
DC/DCコンバータ43のスイッチング周波数は、200[kHz]以上10[MHz]以下である。
【0024】
第1電路31とグランドとの間には、コンデンサ42が電気的に接続されている。第2電路32とグランドとの間には、コンデンサ45が電気的に接続されている。すなわち、DC/DCコンバータ43の入力段にコンデンサ42が設けられ、出力段にコンデンサ45が設けられている。コンデンサ42は、DC/DCコンバータ43の入力電圧を平滑化する。コンデンサ45は、DC/DCコンバータ43の出力電圧を平滑化する。
【0025】
第2電路32には、インダクタ44が電気的に接続されている。より詳細には、インダクタ44は、DC/DCコンバータ43とコンデンサ45との間に電気的に接続されている。インダクタ44は、コンデンサ45と共にローパスフィルタを構成する。
【0026】
第2電路32とグランドとの間には、コンデンサ11が電気的に接続されている。コンデンサ11と第2電路32との接続点は、コンデンサ45と集積回路41との間に位置する。
【0027】
また、
図1では、第2電路32の寄生抵抗46及び寄生インダクタンス47を図示している。第2電路32の配線インピーダンスは、寄生抵抗46及び寄生インダクタンス47により決まる。ここで、コンデンサ11と集積回路41との間の電路長は、DC/DCコンバータ43と集積回路41との間の電路長よりも短い。コンデンサ11(所定のコンデンサ)と集積回路41との間の配線インピーダンスは、DC/DCコンバータ43と集積回路41との間の配線インピーダンスよりも小さい。
【0028】
図2は、集積回路付電気回路100の一部の構成の空間配置の一例を示す模式図である。
図2では、第2電路32の一部として、導体パターン321、322が設けられている。導体パターン321は、DC/DCコンバータ43(
図1参照)及びインダクタ44の第1端に電気的に接続されている。導体パターン322は、インダクタ44の第2端及び集積回路41に電気的に接続されている。
【0029】
また、導体パターン322は、第1パターンN1と、第2パターンN2と、第3パターンP1と、を有している。第1パターンN1及び第2パターンN2の電位は、グランド電位である。第3パターンP1の電位は、グランド電位と異なる。インダクタ44の第2端は、第3パターンP1に電気的に接続されている。
【0030】
コンデンサ11は、4つの外部電極を備えている。より詳細には、コンデンサ11は、第1の外部電極21と、第2の外部電極22と、2つの第3の外部電極23と、を備えている。第1の外部電極21及び第2の外部電極22は、陽極端子である。第1の外部電極21及び第2の外部電極22は、第3パターンP1に電気的に接続されている。2つの第3の外部電極23は、陰極端子である。2つの第3の外部電極23のうち一方は、第1パターンN1に電気的に接続されており、他方は、第2パターンN2に電気的に接続されている。集積回路41は、第3パターンP1に電気的に接続されている。また、集積回路41は、グランドパターン(第1パターンN1又は第2パターンN2)に電気的に接続されている。
【0031】
図1、
図2では、コンデンサ11の個数は1個である。このように、電路30に電気的に接続されたコンデンサ11(所定のコンデンサ)の個数は1つであってもよい。あるいは、電路30に電気的に接続されたコンデンサ11(所定のコンデンサ)の個数は複数個であってもよい。集積回路41のロードラインインピーダンスが、集積回路41に要求される所望の値以下となる範囲で、コンデンサ11の個数を可能な限り少なくすることで、コスト及び実装面積等を削減することが好ましい。ここで、集積回路41のロードラインインピーダンスとは、集積回路41から見た電源供給ライン全体の総インピーダンスである。すなわち、集積回路41のロードラインインピーダンスは、DC/DCコンバータ43のインピーダンス、電路30の配線インピーダンス、及び、電路30に電気的に接続されたコンデンサ11等の各素子のインピーダンスから計算される。
【0032】
集積回路41のロードラインインピーダンスは、例えば、10[MHz]以下の周波数において10[mΩ]以下である。
【0033】
また、一例として、集積回路41の使用される周波数帯において、集積回路41の消費電流が200[A]の場合のロードラインインピーダンスは、1.0[mΩ]以下である。
【0034】
別の一例として、集積回路41の使用される周波数帯において、集積回路41の消費電流が226[A]の場合のロードラインインピーダンスは、0.9[mΩ]以下である。
【0035】
別の一例として、集積回路41の使用される周波数帯において、集積回路41の消費電流が117[A]の場合のロードラインインピーダンスは、0.85[mΩ]以下である。
【0036】
別の一例として、集積回路41の使用される周波数帯において、集積回路41の消費電流が392[A]の場合のロードラインインピーダンスは、0.6[mΩ]以下である。
【0037】
別の一例として、集積回路41の使用される周波数帯において、集積回路41の消費電流が490[A]以上520[A]以下の場合のロードラインインピーダンスは、0.5[mΩ]以下である。
【0038】
コンデンサ11は、一方向を向いた第1のコンデンサ素子10a(
図7参照)と、これと反対方向を向いた第2のコンデンサ素子10b(
図7参照)と、を交互に積層した交互積層構造を有している。交互積層構造を有することによって、コンデンサ11は、上述の所定の特性を有している。このようなコンデンサを、交互積層コンデンサと称す。所定の特性は、少なくとも周波数が5[MHz]以上10[MHz]以下におけるインピーダンスが10[mΩ]以下という特性である。
【0039】
また、コンデンサ11の自己共振周波数におけるコンデンサ11のESR(等価直列抵抗)は、2[mΩ]以下である。500[MHz]におけるコンデンサ11のESL(等価直列インダクタンス)は、100[pH]以下である。
【0040】
電路30の電圧は、DC/DCコンバータ43のスイッチング動作及び集積回路41における負荷電流の変動等に起因して変動する。コンデンサ11を設けることで、電圧変動の範囲を、集積回路41に要求される範囲内に収めることができる。また、コンデンサ11が上述の所定の特性を有しているため、必要なコンデンサの員数を削減できる。すなわち、コンデンサ11が比較的広い周波数帯において低インピーダンスであるため、コンデンサ11の員数を削減できる。また、コンデンサ11(第1のコンデンサ)と並列に、所定の特性を有しない第2のコンデンサを電路30に電気的に接続してもよいが、この場合も、コンデンサ11の員数及び第2のコンデンサの員数を削減できる。また、コンデンサ11及び第2のコンデンサの実装面積を低減できる場合がある。
【0041】
図3は、比較例に係る集積回路付電気回路100Pの一部の構成の空間配置の一例を示す模式図である。
図3に示すように、コンデンサ11に代えて、コンデンサ11と比較してインピーダンスが大きいコンデンサ11Pを用いる場合は、このようなコンデンサ11Pを複数個(
図3Pでは6つ)並列に接続した並列回路によって、単一のコンデンサ11に相当する特性を得ることができるが、より多くの個数のコンデンサ11Pが必要となる。なお、ここでは一例として、コンデンサ11Pは、セラミックコンデンサであるとする。
【0042】
図4に、本実施形態のコンデンサ11(交互積層コンデンサ)の特性を示す。
図5に、比較例のコンデンサ11Pの特性を示す。コンデンサ11Pの静電容量は、100[μF]である。
図6に、比較例のコンデンサ11Pを6個並列に接続した並列回路の特性を示す。
図4~
図6の横軸は周波数(単位は、[MHz])を表し、縦軸はインピーダンス(単位は、[Ω])を表す。コンデンサ11、11Pのインピーダンスは、自己共振周波数f
0より低い周波数帯では容量成分が支配的であるため、周波数が大きいほどインピーダンスが小さい。自己共振周波数f
0では、ESR(等価直列抵抗)に相当するインピーダンスのみが現れる。自己共振周波数f
0より高い周波数帯では、ESL(等価直列インダクタンス)が支配的であるため、周波数が大きいほどインピーダンスが大きい。
【0043】
図4より、コンデンサ11は、上述の所定の特性を有している。所定の特性は、少なくとも周波数が5[MHz]以上10[MHz]以下におけるインピーダンスが10[mΩ]以下という特性である。ここでは、より広い周波数帯におけるインピーダンスに着目して、次の特性を所定の特性とする。所定の特性は、周波数が100[kHz]以上10[MHz]以下におけるインピーダンスが10[mΩ]以下という特性である。
図5より、コンデンサ11Pは所定の特性を有さず、
図6より、6つのコンデンサ11Pの並列回路は所定の特性を有する。つまり、本実施形態では、比較例の6つのコンデンサ11Pの並列回路を、1つのコンデンサ11に置き換えられるので、コンデンサの員数を削減できる。コンデンサ11を用いることで、員数を削減しつつ、集積回路41のロードラインインピーダンスを低減することができる。
【0044】
また、
図4より、コンデンサ11の自己共振周波数f
0は、300[kHz]以上1[GHz]以下である。
【0045】
コンデンサ11として交互積層コンデンサを採用することで、セラミックコンデンサを採用する場合と比較して、温度及び印加電圧等による特性変化を低減できる。また、コンデンサ11としてセラミックコンデンサを採用する場合と比較して、コンデンサ11に供給される直流に重畳する交流成分によるコンデンサ11の静電容量の変化(ACバイアス特性)が非常に小さい。
【0046】
次に、本実施形態のコンデンサ11(以下、電解コンデンサ11とも称す)の構造について、
図7、
図8を参照して説明する。
【0047】
[電解コンデンサ]
本開示の一実施形態に係る電解コンデンサ11は、複数のコンデンサ素子10が積層された素子積層体と、素子積層体を封止する外装体14と、第1の外部電極21と、第2の外部電極22と、第3の外部電極23と、を備える。
【0048】
複数のコンデンサ素子10は、それぞれ、表面に多孔質部5を有する陽極体3と、多孔質部5の少なくとも一部の表面に形成された誘電体層と、誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部6と、を有する。複数のコンデンサ素子10は、陽極体3が露出する第1端部1aと、陽極体3が陰極部6で覆われた第2端部2aを有し、少なくとも第1端部1aの端面は外装体14から露出している。
【0049】
複数のコンデンサ素子10は、第1端部1aが外装体14の第1の面14aを向くものと、第1端部1aが外装体14の第1の面14aと異なる第2の面14bを向くものがある。このうち、第1端部1aが外装体14の第1の面14aを向くものを第1のコンデンサ素子10aと、第1端部1aが外装体14の第1の面14aと異なる第2の面14bを向くものを第2のコンデンサ素子10bと称する。第1のコンデンサ素子10aの第1端部1aは第1の外部電極21と電気的に接続している。第2のコンデンサ素子10bの第1端部1aは第2の外部電極22と電気的に接続している。
【0050】
この構成によれば、第1のコンデンサ素子10aと第2のコンデンサ素子10bとで、素子内を電流が流れる向きが異なる。このため、電流により生じる磁界の向きが異なるため、素子積層体内に生じる磁束は減少する。よって、ESLが低減される。好ましくは、第1の面14aと第2の面14bとは、外装体14の互いに対向する面であってもよい。さらに、第1のコンデンサ素子10aと第2のコンデンサ素子10bとが交互に積層されている場合、素子積層体内に生じる磁束が効果的に減少し得る。よって、ESLが効果的に低減され得る。
【0051】
第1のコンデンサ素子10aの数と第2のコンデンサ素子10bの数は同数であってもよい。第1のコンデンサ素子10aの数と第2のコンデンサ素子10bの数が同数であると、第1のコンデンサ素子10a内を流れる電流により生じる磁界と第2のコンデンサ素子10b内を流れる電流により生じる磁界とが過不足なく打ち消し合い、素子積層体内に生じる磁束が減少する。よって、ESLを低減させやすい。
【0052】
さらに、素子積層体と外部電極との電気的接続は、それぞれのコンデンサ素子10の外装体14から露出した第1端部1aの端面を、外部電極(第1の外部電極21または第2の外部電極22)と電気的に接続することで行われ得る。第1端部1aの端面と外部電極との電気的接続は、例えば、第1の面14aまたは第2の面14bに沿うように形成した外部電極を用いて、あるいは、第1の面14aまたは第2の面14bに沿うように形成した中間電極(後述する陽極電極層16に相当)を外部電極と電気的に接続させることで、行うことができる。この場合、外装体14内に、第1端部1aと外部電極(第1の外部電極21または第2の外部電極22)とを接続するための他の部材を介在させる必要がないことから、電解コンデンサ11の容量を高めることが容易である。また、陰極部6が形成されない陽極体3の部分(陽極引出部)から第1の外部電極21または第2の外部電極22に至る電流経路において、素子積層体の積層面に平行に流れる電流経路は、陽極引出部の長さに略等しく、短くすることが容易である。よって、上記の素子積層体の積層面に平行に流れる電流経路により生じるESLをさらに低減できる。
【0053】
第3の外部電極23は、コンデンサ素子10の陰極部6と電気的に接続する。第3の外部電極23は、例えば、素子積層体の最も外側の層(すなわち、最下層または最上層)において陰極部6と電気的に接続している。これにより、陰極端子が電解コンデンサ11の底面に設けられ得る。一方、第1の外部電極21または第2の外部電極22を電解コンデンサ11の底面に延在させることで、陽極端子が電解コンデンサ11の底面に設けられ得る。この場合、第1の外部電極21または第2の外部電極22の延在部分に流れる電流は、陽極引出部に流れる電流とは逆方向に流れる。よって、陽極引出部に流れる電流より生じる磁界は、第1の外部電極21または第2の外部電極22の延在部分に流れる電流により生じる磁界により打ち消され、電解コンデンサ11のESLが一層低減される。結果として、延在部分により、陰極端子と第1および/または第2外部電極との離間距離を短くできるため、ESLが改善される。これらの相乗効果により、ESLは顕著に低減される。
【0054】
第1端部1aは、コンタクト層15を介して、第1の外部電極21または第2の外部電極22と電気的に接続されてもよい。コンタクト層15は、例えば、複数のコンデンサ素子10の第1端部1aの端面に選択的に形成され得る。コンタクト層15は、複数のコンデンサ素子10の第1端部1aのそれぞれと、第1の面14aまたは第2の面14bを覆うように形成された中間電極(陽極電極層16)または外部電極との間を接続し得る。コンタクト層15を介することにより、第1端部1aと外部電極との電気的接続を確実にすることができる。よって、電解コンデンサ11の信頼性を高めることができる。
【0055】
第1の外部電極21と第2の外部電極22とは、陽極体3の長手方向において互いに対向していてもよく、短手方向において互いに対向していてもよい。例えば、第1の外部電極21と第2の外部電極22は、それぞれ、外装体14の一表面(例えば、底面)の短手方向に沿う端部に配置されていてもよく、長手方向に沿う端部に配置されていてもよい。ESLを低減させる点で、第1の外部電極21と第2の外部電極22とを、陽極体3の短手方向において互いに対向させてもよい。一方、第1の外部電極21と第2の外部電極22とを、陽極体3の長手方向において互いに対向させる場合、第1の外部電極21または第2の外部電極22の電解コンデンサ11の底面における延在距離を長くすることが容易であり、陰極端子と陽極端子との離間距離を制御し易く、ESLを所望の値に制御し易い。
【0056】
図7は、本開示の一実施形態に係る電解コンデンサ11の構造を模式的に示す断面図である。
図8は、
図7の電解コンデンサ11を構成するコンデンサ素子10の構造を示す断面図である。しかしながら、本開示に係る電解コンデンサ11は、これらに限定されるものではない。
【0057】
図7および
図8に示すように、電解コンデンサ11は、複数のコンデンサ素子10(10a、10b)を備える。コンデンサ素子10は、陽極体3と、陰極部6とを備える。陽極体3は、例えば箔(陽極箔)である。陽極体3は、表面に多孔質部5を有し、多孔質部5の少なくとも一部の表面に誘電体層(図示しない)が形成されている。陰極部6は、誘電体層の少なくとも一部を覆っている。
【0058】
コンデンサ素子10は、一方の端部(第1端部)1aにおいて陰極部6で覆われることなく、陽極体3が露出している一方で、他方の端部(第2端部)2aの陽極体3は陰極部6で覆われている。以下において、陽極体3の陰極部6で覆われていない部分を第1部分1と称し、陽極体3の陰極部6で覆われた部分を第2部分2と称する。第1部分1の端部が第1端部1aであり、第2部分2の端部が第2端部2aである。誘電体層は、少なくとも第2部分2に形成された多孔質部5の表面に形成される。なお、陽極体3の第1部分1は、陽極引出部とも呼ばれる。陽極体3の第2部分2は、陰極形成部とも呼ばれる。
【0059】
より具体的には、第2部分2は、芯部4と、粗面化(エッチングなど)などにより芯部4の表面に形成された多孔質部(多孔体)5とを有する。一方、第1部分1では、表面に多孔質部5を有していてもよく、有していなくてもよい。誘電体層は、多孔質部5の表面に沿って形成されている。誘電体層の少なくとも一部は、多孔質部5の孔の内壁面を覆い、その内壁面に沿って形成されている。
【0060】
陰極部6は、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層7と、固体電解質層7の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを備える。誘電体層の表面は、陽極体3の表面の形状に応じた凹凸形状が形成されている。固体電解質層7は、このような誘電体層の凹凸を埋めるように形成され得る。陰極引出層は、例えば、固体電解質層7の少なくとも一部を覆うカーボン層8と、カーボン層8を覆う銀ペースト層9とを備える。
【0061】
なお、陽極体3上に誘電体層(多孔質部5)を介して固体電解質層7が形成されている陽極体3の部分が第2部分2であり、陽極体3上に誘電体層(多孔質部5)を介して固体電解質層7が形成されていない陽極体3の部分が第1部分1である。
【0062】
陽極体3の陰極部6と対向しない領域のうち、少なくとも陰極部6に隣接する部分には、陽極体3の表面を覆うように絶縁性の分離層(または絶縁部材)12が形成され得る。これにより、陰極部6と陽極体3の露出部分(第1部分1)との接触が規制されている。分離層12は、例えば、絶縁性の樹脂層である。
【0063】
図7の例では、4つのコンデンサ素子10(10a、10b)が、陰極部6(第2部分2)同士を重ねるようにして積層されている。しかしながら、陽極体3における第1部分1の向きが異なる2種類のコンデンサ素子10が存在する。
図7において、第1のコンデンサ素子10aは、陽極体3の第1部分1が第2部分2に対して一方向(図の右方向)を向いている。これに対し、第2のコンデンサ素子10bは、陽極体3の第1部分1が、第2部分2に対して、第1のコンデンサ素子10aの第1部分1が向く方向と反対方向(図の左方向)を向いている。第1のコンデンサ素子10aと、第2のコンデンサ素子10bとが交互に積層され、素子積層体が構成されている。複数のコンデンサ素子10(10a、10b)において、積層方向で互いに隣り合う陰極部6は、導電性を有する接着層13を介して電気的に接続されている。接着層13の形成には、例えば、導電性接着剤が用いられる。接着層13は、例えば、銀を含む。
【0064】
電解コンデンサ11は、複数のコンデンサ素子10(10a、10b)が積層された上述の素子積層体と、素子積層体を封止する外装体14と、第1の外部電極21と、第2の外部電極22と、第3の外部電極23と、を備える。素子積層体において、第1端部1aの端面は、外装体14から露出している。
【0065】
外装体14は、ほぼ直方体の外形を有し、電解コンデンサ11もほぼ直方体の外形を有する。外装体14は、第1の面14aおよび第1の面14aとは反対側の第2の面14bを有する。素子積層体において、第1のコンデンサ素子10aの第1端部1aが第1の面14aを向いており(すなわち、第1端部1aが第2端部2aよりも第1の面14a側にある)、第2のコンデンサ素子10bの第1端部1aが第2の面14bを向いている(すなわち、第1端部1aが第2端部2aよりも第2の面14b側にある)。
【0066】
電解コンデンサ11において、外装体14から露出する複数の第1端部1a(第1部分1)のそれぞれは、第1の面14aに沿って延在する第1の外部電極21または第2の面14bに沿って延在する第2の外部電極22と電気的に接続される。この場合、電解コンデンサ11の陽極を形成するために、複数の第1部分1を束ねる必要がなく、複数の第1部分1を束ねるための長さを確保する必要がない。よって、複数の第1部分1を束ねる場合と比べて、陽極体3に占める第1部分1の割合を小さくして高容量化することができる。また、第1部分1によるESLの寄与が低減される。また、第3の外部電極23と第1の外部電極21および/または第2の外部電極22との離間距離を短くできるため、ESLが改善する。
【0067】
電解コンデンサ11において、外装体14から露出する複数の第1端部1aの端面のそれぞれは、コンタクト層15で覆われている。陽極電極層16が、コンタクト層15および外装体14の第1の面14aおよび第2の面14bを覆っている。第1の外部電極21および第2の外部電極22が、陽極電極層16を覆っており、これにより複数の第1端部1a(第1部分1)が第1の外部電極21または第2の外部電極22と電気的に接続される。具体的に、コンタクト層15と第1の外部電極21との間に、外装体14の第1の面14aを覆う陽極電極層16が介在し、コンタクト層15と、第2の外部電極22との間に、外装体14の第2の面14bを覆う陽極電極層16が介在している。
【0068】
図7の例では、素子積層体は、基板17に支持されている。基板17は、例えば、その表面および裏面に導電性の配線パターンが形成された積層基板であり、表面の配線パターンと裏面の配線パターンとはスルーホールにより電気的に接続されている。表面の配線パターンは最下層に積層されたコンデンサ素子10の陰極部6と電気的に接続し、裏面の配線パターンは第3の外部電極23と電気的に接続される。よって、基板17を介して、第3の外部電極23と、素子積層体の各コンデンサ素子10の陰極部6との電気的接続がされている。この場合、裏面の配線パターン次第で、第3の外部電極23の個数、形状および配置を任意に設定することが可能である。第3の外部電極23は、例えばめっき処理により基板17上に形成され、第3の外部電極23を形成した基板17が一部材として取り扱われ得る。
【0069】
第3の外部電極23の少なくとも一部は電解コンデンサ11の底面において露出している。第3の外部電極23の底面における露出部分は、電解コンデンサ11の陰極端子を構成する。
図7の例では、2つの第3の外部電極23が、離間して設けられており、複数の領域において第3の外部電極23が露出している。
【0070】
第1の外部電極21の一部は、外装体14の底面に沿って折り曲げられ、電解コンデンサ11の底面において露出している。同様に、第2の外部電極22の一部は、外装体14の底面に沿って第1の外部電極21の折り曲げ部分と対向するように折り曲げられ、電解コンデンサ11の底面において露出している。第1の外部電極21および第2の外部電極22の底面における露出部分は、電解コンデンサ11の陽極端子を構成する。すなわち、本実施形態では、電解コンデンサ11は、離間した2つの陽極端子を有する。離間した2つの陽極端子の間に挟まれるように、陰極端子が存在し得る。
【0071】
電解コンデンサ11のESLは、底面における第1の外部電極21と第3の外部電極23との離間距離L1、および、底面における第2の外部電極22と第3の外部電極23との離間距離L2に依存する。上記離間距離L1およびL2が短いほど、ESLが小さくなり易い。ESLを低減するため、底面において第3の外部電極23を複数配置してもよい。この場合、複数の第3の外部電極23の一つは第1の外部電極21に近接して配置され、複数の第3の外部電極23の他の一つは第2の外部電極22に近接して配置され得る。これにより、ESLが効果的に低減され得る。離間距離L1およびL2は、例えば、0.4mm~1.1mmであってもよい。なお、「第3の外部電極23を複数有する」とは、複数の離間した領域において、第3の外部電極23が露出していることを意味し、複数の第3の外部電極23が離間している場合に限られない。複数の第3の外部電極23の2つ以上が、外装体14内で連続して形成され、電気的に接続されていてもよい。複数の第3の外部電極23は、1つが上面に設けられ他の1つが底面に設けられるなど、外装体14の異なる面に設けられていてもよい。
【0072】
電解コンデンサ11において、第1のコンデンサ素子10aに流れる電流の向きは、第2のコンデンサ素子10bに流れる電流の向きと逆となる。このため、第1のコンデンサ素子10aに流れる電流により生じる磁界と、第2のコンデンサ素子10bに流れる電流により生じる磁界とが打ち消し合い、電解コンデンサ11に生じる磁束が減少する。結果、ESLが低減する。
【0073】
一方で、第1部分1、および、第2部分2のうちコンデンサ素子10同士が重ならない部分(
図7において、陰極引出層で覆われていない部分)では、磁界の打ち消し効果は生じないが、本実施形態の電解コンデンサ11では、第1部分1の長さを短くすることが容易である。よって、この部分により生じるESLの寄与は低減される。さらに、第1の外部電極21および第2の外部電極22が外装体14の底面に沿って延在していることにより、この部分により生じるESLの寄与を一層低減できる。これらの効果により、電解コンデンサ11のESLは、顕著に改善され得る。
【0074】
以下、上記実施形態に係る電解コンデンサ11の構成要素について、より詳細に説明する。
【0075】
(陽極体3)
陽極体3は、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、および弁作用金属を含む化合物(金属間化合物など)などを含むことができる。これらの材料は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。弁作用金属としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンなどを用いることができる。陽極体3は、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、または弁作用金属を含む化合物の箔であってもよく、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、または弁作用金属を含む化合物の多孔質焼結体であってもよい。
【0076】
陽極体3に金属箔を用いる場合、通常、表面積を増やすため、陽極箔の少なくとも第2部分2の表面には、多孔質部5が形成される。第2部分2は、芯部4と、芯部4の表面に形成された多孔質部5とを有する。多孔質部5は、陽極箔の少なくとも第2部分2の表面をエッチングなどにより粗面化することにより形成してもよい。第1部分1の表面に所定のマスキング部材を配置した後、エッチング処理などの粗面化処理を行うことも可能である。一方で、陽極箔の表面の全面をエッチング処理などにより粗面化処理することも可能である。前者の場合、第1部分1の表面には多孔質部5を有さず、第2部分2の表面に多孔質部5を有する陽極箔が得られる。後者の場合、第2部分2の表面に加え、第1部分1の表面にも多孔質部5が形成される。エッチング処理としては、公知の手法を用いればよく、例えば、電解エッチングが挙げられる。マスキング部材は、特に限定されないが、樹脂などの絶縁体が好ましい。マスキング部材は、固体電解質層7の形成前に取り除かれるが、導電性材料を含む導電体であってもよい。
【0077】
陽極箔の表面の全面を粗面化処理する場合、第1部分1の表面に多孔質部5を有する。このため、多孔質部5と外装体14の密着性が十分でなく、多孔質部5と外装体14との接触部分を通じて電解コンデンサ11内部に空気(具体的には、酸素および水分)が侵入する場合がある。これを抑制するため、多孔質に形成された第1部分1を予め圧縮し、多孔質部5の孔をつぶしておいてもよい。これにより、外装体14から露出する第1端部1aより多孔質部5を介した電解コンデンサ11内部への空気の侵入、および当該空気の侵入による電解コンデンサ11の信頼性の低下を抑制できる。
【0078】
(誘電体層)
誘電体層は、例えば、陽極体3の少なくとも第2部分2の表面の弁作用金属を、化成処理などにより陽極酸化することで形成される。誘電体層は弁作用金属の酸化物を含む。例えば、弁作用金属としてアルミニウムを用いた場合の誘電体層は酸化アルミニウムを含む。誘電体層は、少なくとも多孔質部5が形成されている第2部分2の表面(多孔質部5の孔の内壁面を含む)に沿って形成される。なお、誘電体層の形成方法はこれに限定されず、第2部分2の表面に、誘電体として機能する絶縁性の層を形成できればよい。誘電体層は、第1部分1の表面(例えば、第1部分1の表面の多孔質部5上)にも形成されてもよい。
【0079】
(陰極部6)
陰極部6は、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層7と、固体電解質層7の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを備える。
【0080】
(固体電解質層7)
固体電解質層7は、例えば、導電性高分子を含む。導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体などを用いることができる。固体電解質層7は、例えば、原料モノマーを誘電体層上で化学重合および/または電解重合することにより、形成することができる。あるいは、導電性高分子が溶解した溶液、または、導電性高分子が分散した分散液を、誘電体層に塗布することにより、形成することができる。固体電解質層7は、マンガン化合物を含んでもよい。
【0081】
(陰極引出層)
陰極引出層は、例えば、カーボン層8および銀ペースト層9を備える。カーボン層8は、導電性を有していればよく、例えば、黒鉛などの導電性炭素材料を用いて構成することができる。カーボン層8は、例えば、カーボンペーストを固体電解質層7の表面の少なくとも一部に塗布して形成される。銀ペースト層9には、例えば、銀粉末とバインダ樹脂(エポキシ樹脂など)とを含む組成物を用いることができる。銀ペースト層9は、例えば、銀ペーストをカーボン層8の表面に塗布して形成される。なお、陰極引出層の構成は、これに限られず、集電機能を有する構成であればよい。
【0082】
(分離層12)
第1部分1と陰極部6を電気的に分離するため、絶縁性の分離層12を設けてもよい。分離層12は、第1部分1の表面の少なくとも一部を覆うように、陰極部6に近接して設けられ得る。分離層12は、第1部分1および外装体14と密着していることが好ましい。これにより、上記の電解コンデンサ11内部への空気の侵入を抑制できる。分離層12は、第1部分1の上に誘電体層を介して配置されてもよい。
【0083】
分離層12は、例えば、樹脂を含み、後述の外装体14について例示するものを用いることができる。第1部分1の多孔質部5に形成した誘電体層を圧縮して緻密化することで、絶縁性を持たせてもよい。
【0084】
第1部分1と密着する分離層12は、例えば、シート状の絶縁部材(樹脂テープなど)を、第1部分1に貼り付けることにより得られる。表面に多孔質部5を有する陽極箔を用いる場合では、第1部分1の多孔質部5を圧縮して平坦化してから、絶縁部材を第1部分1に密着させてもよい。シート状の絶縁部材は、第1部分1に貼り付ける側の表面に粘着層を有することが好ましい。
【0085】
また、液状樹脂を第1部分1に塗布または含浸させて、第1部分1と密着する絶縁部材を形成してもよい。液状樹脂を用いた方法では、絶縁部材は、第1部分1の多孔質部5の表面の凹凸を埋めるように形成される。多孔質部5の表面の凹部に液状樹脂が容易に入り込み、凹部内にも絶縁部材を容易に形成することができる。液状樹脂としては、後述の第4工程で例示する硬化性樹脂組成物などを用いることができる。
【0086】
(外装体14)
外装体14は、例えば、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂もしくはそれを含む組成物を含んでもよい。
【0087】
外装体14は、例えば、射出成形などの成形技術を用いて形成することができる。外装体14は、例えば、所定の金型を用いて、硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂(組成物)を、コンデンサ素子10を覆うように所定の箇所に充填して形成することができる。
【0088】
硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂に加え、フィラー、硬化剤、重合開始剤、および/または触媒などを含んでもよい。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂が例示される。硬化剤、重合開始剤、触媒などは、硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択される。
【0089】
硬化性樹脂組成物および熱可塑性樹脂(組成物)としては、後述の第3工程で例示するものを用いることができる。
【0090】
分離層12と外装体14との間の密着性の観点から、絶縁部材および外装体14は、それぞれ樹脂を含むことが好ましい。外装体14は、弁作用金属を含む第1部分1や弁作用金属の酸化物を含む誘電体層と比べて、樹脂を含む絶縁部材と密着し易い。
【0091】
分離層12および外装体14は、互いに同一の樹脂を含むことがより好ましい。この場合、分離層12と外装体14との間の密着性がさらに向上し、それにより電解コンデンサ11内部への空気の侵入がさらに抑制される。分離層12および外装体14に含まれる互いに同一の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0092】
外装体14の強度などを高める観点から、外装体14はフィラーを含むことが好ましい。一方、分離層12は、外装体14よりも粒径が小さいフィラーを含むことが好ましく、フィラーを含まないことがより好ましい。第1部分1に液状樹脂を含浸させて分離層12を形成する場合、液状樹脂は、外装体14よりも粒径が小さいフィラーを含むことが好ましく、フィラーを含まないことがより好ましい。この場合、第1部分1の多孔質部5の表面の凹部の深部にまで、液状樹脂を含浸させ易く、分離層12を形成し易い。また、複数のコンデンサ素子10を積層可能なように、厚みの小さい分離層12を形成し易い。
【0093】
(コンタクト層15)
コンタクト層15は、陽極体3の第1端部1aの端面を覆うように形成され得る。好ましくは、コンタクト層15は、樹脂材料である外装体14(および、分離層12)の表面を極力覆わず、外装体14から露出した第1端部1aの表面のみを覆うように形成され得る。
【0094】
コンタクト層15は、陽極体3を構成する金属よりもイオン化傾向の小さい金属を含んでいてもよい。例えば陽極体3がアルミニウム(Al)箔である場合、コンタクト層15としては、例えば、Zn、Ni、Sn、Cu、Agを含む材料を用いることができる。この場合、コンタクト層15の表面において強固な酸化膜の形成が抑制されるため、第1端部1aにおける陽極体3の露出部分を直接外部電極と接続する場合と比べて、電気的接続をより確実にすることができる。
【0095】
コンタクト層15と陽極体3との界面に、合金層が形成されていてもよい。例えば陽極体3がアルミニウム(Al)箔である場合、Cu、Zn、またはAgは、原子間距離がAlと近いため、Alとの金属間結合による合金層が界面に形成され得る。これにより、陽極体3との接合強度をより強固にすることができる。コンタクト層15は、上記の元素の単元素金属で構成されてもよいし、青銅あるいは黄銅などの合金で構成されてもよいし、複数の異なる単元素の金属層が積層されたもの(例えば、Cu層とAg層との積層構造)であってもよい。
【0096】
コンタクト層15を形成する場合、外装体14はフィラーを含まないか、あるいは、外装体14がフィラーを含む場合、フィラーのヤング率がコンタクト層15のヤング率よりも小さいことが好ましい。これにより、外装体14の表面へのコンタクト層15の形成が抑制され、第1端部1aの端面にコンタクト層15が選択的に形成され得る。
【0097】
コンタクト層15は、例えば、コールドスプレー法、溶射、めっき、蒸着等により形成され得る。コールドスプレー法では、例えば、固体状態の金属粒子を、第1端部1aの露出表面を含む外装体14の表面(第1の面14aおよび/または第2の面14b)に衝突させることにより、金属粒子を塑性変形により表面に固着させて、第1端部1aの端面に金属粒子を構成する金属を含むコンタクト層15を形成する。この場合に、金属粒子のヤング率が外装体14の構成部材(例えば、フィラー)のヤング率よりも大きい場合、外装体14の表面に衝突した金属粒子は、外装体14の表面で塑性変形することが抑制され、外装体14の表面に固着することが抑制され得る。衝突によるエネルギーの少なくとも一部は、外装体14の破壊に使用され、樹脂の一部が削り取られる。結果、陽極体3の第1端部1aの端面に選択的にコンタクト層15が形成されるとともに、外装体14の表面(第1の面14aおよび/または第2の面14b)が粗面化され得る。
【0098】
(陽極電極層16)
コンタクト層15と外部電極(第1の外部電極21または第2の外部電極22)との間に、陽極電極層16を介在させてもよい。陽極電極層16は、外装体14の第1の面14aまたは第2の面14bを覆うとともに、必要に応じてコンタクト層15を介して、(複数の)コンデンサ素子10の第1端部1aと電気的に接続し得る。
【0099】
陽極電極層16は、導電性粒子が混入された導電性樹脂層を含んでいてもよい。導電性樹脂層は、導電性粒子および樹脂材料を含む導電性ペーストを外装体14の第1の面14aまたは第2の面14bに塗布乾燥により形成され得る。樹脂材料は、外装体14および陽極体3(コンタクト層15)を構成する材料との接着に適しており、化学結合(例えば、水素結合)により接合強度を高めることができる。導電性粒子としては、例えば、銀、銅などの金属粒子や、カーボンなどの導電性の無機材料の粒子を用いることができる。
【0100】
陽極電極層16は、金属層であってもよい。その場合、電解めっき法、無電解めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法、化学蒸着(CVD)法、コールドスプレー法、溶射法を用いて、陽極電極層16を形成してもよい。
【0101】
陽極電極層16は、外装体14の第1の面14aおよび第2の面14bと直交する表面(例えば、上面または底面)の一部を被覆してもよい。
【0102】
陽極電極層16により被覆される外装体14の表面の粗さRaは、5マイクロメートル以上であってもよい。この場合、陽極電極層16と外装体14との接触面積が増大し、アンカー効果により陽極電極層16と外装体14との密着性が向上し、信頼性をより高めることができる。
【0103】
(外部電極)
第1~第3の外部電極21~23は、金属層であることが好ましい。金属層は、例えば、めっき層である。金属層は、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、銀(Ag)、および金(Au)よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。第1~第3電極層の形成には、例えば、電解めっき法、無電解めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法、化学蒸着(CVD)法、コールドスプレー法、溶射法などの成膜技術を用いてもよい。
【0104】
第1~第3の外部電極21~23は、例えば、Ni層と錫層との積層構造であってもよい。第1~第3の外部電極21~23は、少なくともその外表面が、はんだとの濡れ性に優れた金属であればよい。このような金属として、たとえばSn、Au、Ag、Pd等が挙げられる。
【0105】
第1の外部電極21および第2の外部電極22については、予めSn被膜を形成したCu製のキャップを、陽極電極層16に接着させることにより、外部電極を形成してもよい。
【0106】
第1の外部電極21と第2の外部電極22とは、ともに電解コンデンサ11の陽極端子を構成する。電解コンデンサ11を基板17に搭載するに際して、第1の外部電極21および第2の外部電極22の両方を、基板17上の電極と接続する必要がある。しかしながら、第1の外部電極21と第2の外部電極22との間を、第1の面14aおよび第2の面14b以外の外装体14の表面を介して、電気的に接続してもよい。この場合、電解コンデンサ11を基板17に搭載するに際して、第1の外部電極21と第2の外部電極22のいずれか一方を、基板上の電極と接続すればよい。
【0107】
[電解コンデンサ11の製造方法]
本開示の一実施形態に係る電解コンデンサ11は、例えば、陽極体3を準備する第1工程と、複数のコンデンサ素子10を得る第2工程と、複数のコンデンサ素子10を積層した素子積層体を得る第3工程と、素子積層体を外装体14で覆う第4工程と、第1部分1の端面を形成して外装体14から露出させる第5工程と、第1部分1の端面を外部電極と電気的に接続させる第6工程と、を含む製造方法により製造され得る。製造方法は、さらに、陽極体3の一部に分離層12(絶縁部材)を配置する工程(分離層配置工程)を含んでもよい。以下、電解コンデンサ11の製造方法の各工程について説明する。
【0108】
(第1工程)
第1工程では、表面に誘電体層が形成された陽極体3を準備する。より具体的には、一方の端部を含む第1部分1と一方の端部とは反対側の他方の端部を含む第2部分2とを備え、少なくとも第2部分2の表面に誘電体層が形成された陽極体3が準備される。第1工程は、例えば、陽極体3の表面に多孔質部5を形成する工程と、多孔質部5の表面に誘電体層を形成する工程とを含む。より具体的には、第1工程で用いられる陽極体3は、除去予定端部(上記一方の端部)を含む第1部分1と、第2端部2a(上記他方の端部)を含む第2部分2とを有する。少なくとも第2部分2の表面には、多孔質部5を形成することが好ましい。
【0109】
陽極体3の表面の多孔質部5を形成する際には、陽極体3の表面に凹凸を形成できればよく、例えば、陽極箔の表面をエッチング(例えば、電解エッチング)などにより粗面化することにより行ってもよい。
【0110】
誘電体層は、陽極体3を化成処理することにより形成すればよい。化成処理は、例えば、陽極体3を化成液中に浸漬することにより、陽極体3の表面に化成液を含浸させ、陽極体3をアノードとして、化成液中に浸漬したカソードとの間に電圧を印加することにより行うことができる。陽極体3の表面に多孔質部5を有する場合、誘電体層は、多孔質部5の表面の凹凸形状に沿って形成される。
【0111】
(分離層配置工程)
分離層12(絶縁部材)を備える電解コンデンサ11を製造する場合、分離層12(絶縁部材)を配置する工程を、第1工程の後、第2工程の前に行ってもよい。この工程では、陽極体3の一部に絶縁部材を配置する。より具体的には、この工程では、陽極体3の第1部分1の上に誘電体層を介して絶縁部材を配置する。絶縁部材は、絶縁部材は、第1部分1と後工程で形成される陰極部6とを隔離するように配置される。
【0112】
分離層配置工程では、シート状の絶縁部材(樹脂テープなど)を、陽極体3の一部(例えば、第1部分1)に貼り付けてもよい。表面に多孔質部5が形成された陽極体3を用いる場合でも、第1部分1の表面の凹凸を圧縮し平坦化することで、絶縁部材を第1部分1に強固に密着させることができる。シート状の絶縁部材は、第1部分1に貼り付ける側の表面に粘着層を有することが好ましい。
【0113】
上記以外に、分離層配置工程では、液状樹脂を陽極体3の一部(例えば、第1部分1)に塗布または含浸させて絶縁部材を形成してもよい。例えば、液状樹脂を塗布または含浸させた後、硬化させればよい。この場合、第1部分1に密着する絶縁部材を容易に形成することができる。液状樹脂としては、第4工程(外装体14の形成)で例示する硬化性樹脂組成物、樹脂を溶媒に溶解させた樹脂溶液などを用いることができる。
【0114】
陽極体3の表面に多孔質部5が形成されている場合、陽極体3の多孔質部5の表面の一部(例えば、第1部分1の表面)に液状樹脂を塗布または含浸させることが好ましい。この場合、第1部分1の多孔質部5の表面の凹凸を埋めるように絶縁部材を容易に形成することができる。多孔質部5の表面の凹部に液状樹脂が容易に入り込み、凹部内にも絶縁部材を容易に形成することができる。これにより、陽極体3の表面の多孔質部5が絶縁部材で保護されるため、第4工程で陽極体3を外装体14とともに部分的に除去する際に、陽極体3の多孔質部5の崩壊が抑制される。陽極体3の多孔質部5の表面と絶縁部材とが強固に密着しているため、第4工程で陽極体3を外装体14とともに部分的に除去する際に、絶縁部材が陽極体3の多孔質部5の表面から剥離することが抑制される。
【0115】
(第2工程)
第2工程では、陽極体3上に陰極部6を形成してコンデンサ素子10を得る。第6工程で絶縁部材を設ける場合には、第2工程で、陽極体3の絶縁部材が配置されていない部分に陰極部6を形成し、コンデンサ素子10を得る。より具体的には、第2工程では、陽極体3の第2部分2の表面に形成された誘電体層の少なくとも一部を陰極部6で覆う。
【0116】
陰極部6を形成する工程は、例えば、誘電体の少なくとも一部を覆う固体電解質を形成する工程と、固体電解質層7の少なくとも一部を覆う陰極引出層を形成する工程と、を含む。
【0117】
固体電解質層7は、例えば、原料モノマーを誘電体層上で化学重合および/または電解重合することにより、形成することができる。また、固体電解質層7は、導電性高分子を含む処理液を付着させた後、乾燥させて形成してもよい。処理液は、さらにドーパントなどの他の成分を含んでもよい。導電性高分子には、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が用いられる。ドーパントには、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)が用いられる。処理液は、導電性高分子の分散液または溶液である。分散媒(溶媒)としては、例えば、水、有機溶媒、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0118】
陰極引出層は、例えば、固体電解質層上に、カーボン層8と銀ペースト層9とを順次積層することにより、形成することができる。
【0119】
(第3工程)
第3工程では、複数のコンデンサ素子10を積層し、素子積層体を得る。この工程では、例えば、複数のコンデンサ素子10を、隣接するコンデンサ素子10間で第1部分1が反対側を向くように、交互に複数のコンデンサ素子10の陰極部6同士を導電性接着材を介して重ね合わせ、素子積層体を得る。
【0120】
その後、素子積層体を、導電性接着材を介して、表面および裏面に配線パターンが形成された積層基板(基板17)の上に載置する。積層基板の素子積層体が載置される側と反対側には第3の外部電極23が予め形成されている。載置により、第3の外部電極23は、積層基板に形成された配線パターン、および、表面の配線パターンと裏面の配線パターン都を接続するスルーホールを介して、素子積層体を構成するコンデンサ素子10の陰極部6と電気的に接続される。
【0121】
他に、例えば、所定の形状に加工した板状の第3の外部電極23を導電性のペースト等を介して、素子積層体の最下層または最上層において露出する陰極部6の表面に貼り付けることにより、素子積層体と第3の外部電極23との電気的接続を行ってもよい。
【0122】
電解めっき法、無電解めっき法、物理蒸着法、化学蒸着法、コールドスプレー法、および/または溶射法を用いて、第3の外部電極23を形成してもよい。
【0123】
(第4工程)
第4工程では、素子積層体を外装体14で覆う。このとき、第3の外部電極23の全部が外装体14で覆われず、第3の外部電極23の少なくとも一部が露出するようにする。外装体14は射出成形などを用いて形成することができる。外装体14は、例えば、所定の金型を用いて、硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂(組成物)を、素子積層体を覆うように所定の箇所に充填して形成することができる。
【0124】
硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂に加え、フィラー、硬化剤、重合開始剤、および/または触媒などを含んでもよい。硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ジアリルフタレート、不飽和ポリエステルなどが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられる。熱可塑性樹脂およびフィラーを含む熱可塑性樹脂組成物を用いてもよい。
【0125】
フィラーとしては、例えば、絶縁性の粒子および/または繊維などが好ましい。フィラーを構成する絶縁性材料としては、例えば、シリカ、アルミナなどの絶縁性の化合物(酸化物など)、ガラス、鉱物材料(タルク、マイカ、クレーなど)などが挙げられる。外装体14は、これらのフィラーを一種含んでもよく、二種以上組み合わせて含んでもよい。
【0126】
(第5工程)
第5工程では、第4工程の後、第1部分1の端面を形成して、外装体14から露出させる。より具体的には、素子積層体の両端部側において、少なくとも陽極体3を外装体14とともに部分的に除去して、少なくとも陽極体3の第1端部1a(具体的には、第1端部1aの端面)を、第1の面14aおよび第2の面14bの両面において外装体14から露出させる。第1端部1aを外装体14から露出させる方法としては、例えば、コンデンサ素子10を外装体14で覆った後、外装体14から第1端部1aが露出するように、外装体14の表面を研磨したり、外装体14の一部を切り離したりする方法が挙げられる。また、第1部分1の一部を外装体14の一部とともに切り離してもよい。この場合、多孔質部5を含まず、かつ、自然酸化皮膜が形成されていない表面を有する第1端部1aを、外装体14より容易に露出させることができ、第1部分1と外部電極との間において抵抗が小さく信頼性の高い接続状態が得られる。外装体14の切断方法としては、ダイシングが好ましい。これにより、切断面には第1部分1の第1端部1aの露出端面が現れる。なお、素子積層体において第1部分1の向きが異なる2種類のコンデンサ素子10を有することから、第1部分1の一部を外装体14の一部とともに切り離す場合、2箇所で切断する必要がある。2つの切断面の一方が第1の面14aとなり、他方が第2の面14bとなる。
【0127】
第5工程では、素子積層体の両端部側において、陽極体3および絶縁部材を外装体14とともに部分的に除去して、第1端部1aの端面および絶縁部材の端面を外装体14から露出させてもよい。この場合、陽極体3および絶縁部材にそれぞれ外装体14から露出する面一の端面が形成される。これにより、外装体14の表面と面一の陽極体3の端面および絶縁部材の端面を、それぞれ、外装体14から容易に露出させることができる。
【0128】
第5工程により、自然酸化皮膜が形成されていない陽極体3(第1端部1a)の端面を、外装体14から容易に露出させることができ、陽極体3(より具体的には、第1部分1)と外部電極との間において抵抗が小さく信頼性の高い接続状態が得られる。
【0129】
(第6工程)
第6工程では、外装体14から露出する陽極体3(第1端部1a)の端面を、外部電極と電気的に接続させる。この工程では、例えば、第1の外部電極21を、外装体14の第1の面14aを覆うように形成し、第2の外部電極22を第2の面14bを覆うように形成して、それぞれの外部電極を第1端部1aの端面と電気的に接続させる。第1端部1aの端面と外部電極との電気的接続は、接合などにより行ってもよいし、電解めっき法、無電解めっき法、物理蒸着法、化学蒸着法、コールドスプレー法、および/または溶射法を用いてもよい。
【0130】
第1の外部電極21および第2の外部電極22を形成するに先立って、第1端部1aの端面である表面にコンタクト層15を形成する工程、および/または、外装体14の第1の面14aまたは第2の面14bを覆う陽極電極層16を形成する工程を行ってもよい。陽極電極層16を形成する場合、第1の外部電極21および第2の外部電極22は、陽極電極層16を覆うように形成される。
【0131】
(コンタクト層15を形成する工程)
コンタクト層15の形成は、例えば、コールドスプレー法、溶射、めっき、蒸着等の方法により形成することができる。コンタクト層15は、外装体14の第1の面14aおよび第2の面14bを極力覆わず、第1端部1aの端面を選択的に覆うように形成してもよい。
【0132】
コールドスプレー法を用いる場合、コンタクト層15は、金属粒子を高速で第1端部1aの端面に衝突させることにより形成される。金属粒子は、陽極体3を構成する金属よりもイオン化傾向の小さい金属の粒子であってもよい。例えば陽極体3がAl箔である場合、このような金属粒子としてCu粒子が挙げられる。この場合、高速で第1端部1aの端面に衝突したCu粒子は、端面に形成された自然酸化膜(Al酸化膜)を突き破り、AlとCuとの金属結合が形成され得る。結果、コンタクト層15と第1端部1aとの界面には、AlとCuとの合金層が形成され得る。一方、コンタクト層15の表面は、非弁作用金属であるCu層で被覆されている。Cuは、Alよりもイオン化傾向が小さいため、コンタクト層15の表面は酸化され難く、外部電極(または、陽極電極層16)との電気的接続を確実に行うことができる。
【0133】
コールドスプレー法は、空気、窒素、ヘリウムなどの圧縮された気体により、数μm~数十μmの大きさの金属粒子を亜音速から超音速にまで加速して、固相状態のまま基材に衝突させて金属被膜を形成する技術である。コールドスプレー法における金属粒子の付着メカニズムに関しては、解明されていない部分もあるが、一般的には、金属粒子の衝突エネルギーによって、金属粒子または金属基材が塑性変形し、金属表面に新生面が露出することによって、活性化するものと考えられている。
【0134】
上記コールドスプレー法において、金属粒子は、非金属材料で構成された外装体14の第1の面14aおよび第2の面14b、および、分離層12(絶縁部材)の端面にも衝突し得る。金属粒子が衝突する基材が樹脂基材である場合、金属粒子と樹脂基材との結合は、主として、樹脂基材の表面の凹凸に塑性変形した金属粒子が嵌まり込むことによる、機械的な接合と考えられる。よって、樹脂基材の表面に金属を成膜するには、(ia)樹脂基材に十分な硬度を持たせて衝突のエネルギーを金属粒子の塑性変形に効率よく費やすこと、(iia)金属粒子の塑性変形が起こりやすい金属材料および加工条件を選定すること、および(iiia)衝突のエネルギーで樹脂基材が破壊されにくいこと、が条件となる。
【0135】
逆に、樹脂基材に金属粒子を固着させない場合には、(ib)樹脂基材に弾性を持たせて衝突エネルギーを塑性変形のエネルギーに変換させないこと、(iib)第1端部1aの端面にコンタクト層15を形成できる範囲内で、塑性変形の起こり難い金属材料および加工条件を選定すること、および(iiib)樹脂基材の強度を下げて、塑性変形が起こる衝撃以下で基材を破壊させること、が基本条件となる。
【0136】
一般に、金属粒子のヤング率が、樹脂基材を構成する部材(例えば、フィラー)のヤング率よりも小さい場合、金属粒子の衝突時の塑性変形が促される傾向にあり、大きい場合、金属粒子の衝突時の塑性変形が抑制される傾向にある。後者の場合、金属粒子の衝突エネルギーによって樹脂基材が脆性破壊し、樹脂基材の表面が削り取られる。
【0137】
よって、金属粒子(コンタクト層15と言い換えてもよい)のヤング率を、樹脂基材に含まれるフィラーのヤング率より大きくすることで、金属粒子が樹脂基材に固着し難い状態を作ることができる。これにより、外装体14の第1の面14aおよび第2の面14b、および、分離層12(絶縁部材)の端面にコンタクト層15が形成されるのが抑制され、コンタクト層15を第1端部1aの端面に選択的に形成することが可能となる。また、外装体14の第1の面14aおよび第2の面14bに金属粒子を衝突させることにより、第1の面14aおよび第2の面14bを粗面化する効果を得ることができる。
【0138】
例えば、外装体14にヤング率が94GPaのシリカが充填されている場合、これより大きなヤング率を持ち、かつ、Alとの接合が容易な金属粒子として、Cu粒子およびNi粒子を用いることができる。ただし、金属粒子の形状、サイズ、温度、および、樹脂材料に充填するシリカのサイズ、充填率等によっても、固着状態は変化するので、これに限定されるわけではない。
【0139】
(陽極電極層16を形成する工程)
陽極電極層16は、第1端部1aの端面またはコンタクト層15を覆い、外装体14の第1の面14aおよび第2の面14b、および、分離層12を設ける場合、分離層12(絶縁部材)の端面を覆うように形成され得る。
【0140】
陽極電極層16は、導電性粒子および樹脂材料を含む導電性ペーストの塗布により形成してもよい。具体的には、導電性ペースト(例えば、銀ペースト)を、ディップ法、転写法、印刷法、ディスペンス法などで各端面に塗布し、その後、高温で硬化させることにより、陽極電極層16を形成する。
【0141】
他に、電解めっき法、無電解めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法、化学蒸着(CVD)法、コールドスプレー法、溶射法によって、金属層である陽極電極層16を形成してもよい。
【0142】
(変形例1)
以下、実施形態の変形例1に係る集積回路付電気回路100A及び電気回路101Aについて、
図9を参照して説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0143】
本変形例1では、所定の特性を有する所定のコンデンサを実現するために、貫通コンデンサを採用する場合について説明する。すなわち、本変形例1のコンデンサ11A(所定のコンデンサ)は、貫通コンデンサである。
【0144】
コンデンサ11Aは、筐体24と、2つの陽極端子25、26と、貫通部27と、少なくとも1つ(
図9では4つ)の陰極端子28と、を備えている。2つの陽極端子25、26は、筐体24の外部に露出している。2つの陽極端子25、26は、電路30に電気的に接続されている。貫通部27は、筐体24の内部に配置されている。貫通部27は、2つの陽極端子25、26を電気的に接続している。陰極端子28は、筐体24の外部に露出している。陰極端子28は、グランド(すなわち、グランド電位の導体パターンN3)に電気的に接続されている。
【0145】
筐体24の形状は、直方体状である。2つの陽極端子25、26は、筐体24の互いに対向する2面に設けられている。複数の陰極端子28の各々は、筐体24のうち上記2面とは別の面(導体パターンN3との対向面)に設けられている。
【0146】
貫通部27の形状は、例えば、シート状又はワイヤ状である。貫通部27の第1端は、陽極端子25に電気的に接続されている。貫通部27の第2端は、陽極端子26に電気的に接続されている。
【0147】
コンデンサ11Aは、少なくとも1つの内部接地電極を更に備えている。内部接地電極は、筐体24の内部に配置されている。内部接地電極は、少なくとも1つの陰極端子28に電気的に接続されている。内部接地電極は、貫通部27との間に間隔をあけて貫通部27に対向している。
【0148】
図9では、第2電路32の一部として、導体パターン321と、導体パターンP2、P3と、が設けられている。導体パターン321は、DC/DCコンバータ43(
図1参照)及びインダクタ44の第1端に電気的に接続されている。導体パターンP2は、インダクタ44の第2端及び陽極端子25に電気的に接続されている。導体パターンP3は、陽極端子26及び集積回路41に電気的に接続されている。また、集積回路41は、グランドパターン(導体パターンN3)に電気的に接続されている。
【0149】
貫通部27は、導体パターンP2、P3間を電気的に接続している。つまり、貫通部27は、電路30(第2電路32)の一部を兼ねている。集積回路付電気回路100Aは、このような構成を備えるが、集積回路付電気回路100Aの等価回路は、実施形態の集積回路付電気回路100(
図1参照)と同じである。
【0150】
(変形例2)
以下、実施形態の変形例2について説明する。
【0151】
所定の特性を有するコンデンサ11を実現するために、コンデンサ11は、以下に列挙する構成のうち少なくとも1つの構成を有していてもよい。
【0152】
コンデンサ11は、LW反転タイプの構造であってもよい。LW反転タイプのコンデンサは、実装面と対向する方向から見て長方形状であり、長手方向に沿った2辺に外部電極(第1の外部電極21及び第2の外部電極22)が設けられた構造を有する。
【0153】
また、コンデンサ11は、LW反転タイプの構造であって、かつ、実施形態と同様に交互積層コンデンサであってもよい。
【0154】
また、コンデンサ11は、3つ以上の外部電極を有する多端子コンデンサであってもよい。また、複数の多端子コンデンサを並列に接続する場合に、互いに隣り合う多端子コンデンサの極性が逆であるように接続してもよい。つまり、極性がある方向になるときの多端子コンデンサの方向を正方向として、正方向に向いた多端子コンデンサと、正方向とは反対方向に向いた多端子コンデンサとを交互に配置してもよい。これにより、多端子コンデンサで生じる磁束が効果的に減少し、ESLを効果的に低減され得る。
【0155】
実施形態の交互積層コンデンサにおいて、第1のコンデンサ素子10aと第2のコンデンサ素子10bとの組の個数は、2組に限定されず、1組又は3組以上であってもよい。また、第1のコンデンサ素子10aと第2のコンデンサ素子10bとが交互に積層していることに限定されず、複数の第1のコンデンサ素子10aからなる第1積層構造と、複数の第2のコンデンサ素子10bからなる第2積層構造とが、交互に積層していてもよい。
【0156】
(実施形態のその他の変形例)
以下、実施形態のその他の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。また、以下の変形例は、上述の変形例1又は2と適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0157】
コンデンサ11は、第1電路31とグランドとに電気的に接続されてもよい。また、第1電路31とグランドとの間に、複数のコンデンサ11の並列回路が電気的に接続されてもよい。第2電路32とグランドとの間に、複数のコンデンサ11の並列回路が電気的に接続されてもよい。
【0158】
実施形態では、コンデンサ11は、集積回路41を収容するパッケージの外部に配置されているが、パッケージに内蔵されていてもよい。
【0159】
集積回路41は、量子コンピュータに用いられてもよい。
【0160】
電源PS1として、交流電源と、交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換して出力するAC/DCコンバータと、を用いてもよい。
【0161】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0162】
第1の態様に係る集積回路(41)の電源供給用の電気回路(101、101A)は、電路(30)と、少なくとも1つの所定のコンデンサ(11、11A)と、を備える。電路(30)は、電源(PS1)から集積回路(41)に直流電力を供給する。所定のコンデンサ(11、11A)は、所定の特性を有する。所定のコンデンサ(11、11A)は、電路(30)とグランドとに電気的に接続されている。所定の特性は、少なくとも周波数が5[MHz]以上10[MHz]以下におけるインピーダンスが10[mΩ]以下という特性である。
【0163】
上記の構成によれば、電気回路(101、101A)に用いるコンデンサの員数を削減することができる。
【0164】
また、第2の態様に係る集積回路(41)の電源供給用の電気回路(101、101A)では、第1の態様において、所定の特性は、周波数が100[kHz]以上10[MHz]以下におけるインピーダンスが10[mΩ]以下という特性である。
【0165】
上記の構成によれば、電気回路(101、101A)に用いるコンデンサの員数を削減することができる。
【0166】
また、第3の態様に係る集積回路(41)の電源供給用の電気回路(101、101A)は、第1又は2の態様において、DC/DCコンバータ(43)を更に備える。DC/DCコンバータ(43)は、電源(PS1)と所定のコンデンサ(11、11A)との間に電気的に接続されている。
【0167】
上記の構成によれば、集積回路(41)に所望の電圧を供給できる。
【0168】
また、第4の態様に係る集積回路(41)の電源供給用の電気回路(101、101A)では、第3の態様において、DC/DCコンバータ(43)のスイッチング周波数は、200[kHz]以上10[MHz]以下である。
【0169】
上記の構成によれば、集積回路(41)の入力電圧の交流成分を制限できる。
【0170】
また、第5の態様に係る集積回路(41)の電源供給用の電気回路(101、101A)では、第3又は4の態様において、所定のコンデンサ(11、11A)と集積回路(41)との間の配線インピーダンスは、DC/DCコンバータ(43)と集積回路(41)との間の配線インピーダンスよりも小さい。
【0171】
上記の構成によれば、DC/DCコンバータ(43)の出力電圧の高調波成分を、所定のコンデンサ(11、11A)により低減できる。
【0172】
また、第6の態様に係る集積回路(41)の電源供給用の電気回路(101、101A)では、第1~5の態様のいずれか1つにおいて、所定のコンデンサ(11、11A)の自己共振周波数(f0)は、300[kHz]以上10[GHz]以下である。
【0173】
上記の構成によれば、自己共振周波数(f0)の前後の周波数帯において、所定のコンデンサ(11、11A)のインピーダンスを抑えられる。
【0174】
また、第7の態様に係る集積回路(41)の電源供給用の電気回路(101、101A)では、第1~6の態様のいずれか1つにおいて、所定のコンデンサ(11、11A)の駆動電圧は3.3[V]以下である。
【0175】
上記の構成によれば、所定のコンデンサ(11、11A)は、集積回路(41)に電気的に接続される電路(30)での使用に適する。
【0176】
また、第8の態様に係る集積回路(41)の電源供給用の電気回路(101)では、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、所定のコンデンサ(11)は、電解コンデンサである。所定のコンデンサ(11)は、複数のコンデンサ素子(10)が積層された素子積層体と、素子積層体を封止する外装体(14)と、第1の外部電極(21)と、第2の外部電極(22)と、第3の外部電極(23)と、を備える。複数のコンデンサ素子(10)のそれぞれは、陽極体(3)と、誘電体層と、陰極部(6)と、第1端部(1a)と、第2端部(2a)と、を有する。陽極体(3)は、表面に多孔質部(5)を有する。誘電体層は、多孔質部(5)の少なくとも一部の表面に形成されている。陰極部(6)は、誘電体層の少なくとも一部を覆う。第1端部(1a)では、陽極体(3)が露出する。第2端部(2a)では、陽極体(3)が陰極部(6)で覆われている。少なくとも第1端部(1a)の端面は、外装体(14)から露出している。複数のコンデンサ素子(10)は、第1のコンデンサ素子(10a)と、第2のコンデンサ素子(10b)と、を有する。第1のコンデンサ素子(10a)では、第1端部(1a)が外装体(14)の第1の面(14a)を向いている。第2のコンデンサ素子(10b)では、第1端部(1a)が外装体(14)の第1の面(14a)と異なる第2の面(14b)を向いている。素子積層体において、第1のコンデンサ素子(10a)と第2のコンデンサ素子(10b)とが交互に積層されている。第1のコンデンサ素子(10a)の第1端部(1a)は、第1の外部電極(21)と電気的に接続している。第2のコンデンサ素子(10b)の第1端部(1a)は、第2の外部電極(22)と電気的に接続している。第3の外部電極(23)は、コンデンサ素子(10)の陰極部(6)と電気的に接続している。
【0177】
上記の構成によれば、低ESLかつ高容量の所定のコンデンサ(11)を提供できる。
【0178】
また、第9の態様に係る集積回路(41)の電源供給用の電気回路(101A)では、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、所定のコンデンサ(11A)は、貫通コンデンサである。所定のコンデンサ(11A)は、筐体(24)と、2つの陽極端子(25、26)と、貫通部(27)と、陰極端子(28)と、を備えている。2つの陽極端子(25、26)は、筐体(24)の外部に露出している。2つの陽極端子(25、26)は、電路(30)に電気的に接続されている。貫通部(27)は、筐体(24)の内部に配置されている。貫通部(27)は、2つの陽極端子(25、26)を電気的に接続している。陰極端子(28)は、筐体(24)の外部に露出している。陰極端子(28)は、グランドに電気的に接続されている。
【0179】
上記の構成によれば、低ESLかつ高容量の所定のコンデンサ(11A)を提供できる。
【0180】
また、第10の態様に係る集積回路(41)の電源供給用の電気回路(101、101A)では、第1~9の態様のいずれか1つにおいて、電路(30)に電気的に接続された所定のコンデンサ(11、11A)の個数は1つである。
【0181】
上記の構成によれば、所定のコンデンサ(11、11A)の員数を少なくできる。
【0182】
第1の態様以外の構成については、集積回路(41)の電源供給用の電気回路(101、101A)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0183】
また、第11の態様に係るコンデンサ(11、11A)は、第1~10の態様のいずれか1つに係る集積回路(41)の電源供給用の電気回路(101、101A)に、所定のコンデンサ(11、11A)として用いられる。
【0184】
上記の構成によれば、電気回路(101、101A)に用いるコンデンサの員数を削減することができる。
【0185】
また、第12の態様に係る集積回路付電気回路(100、100A)は、第1~10の態様のいずれか1つに係る集積回路(41)の電源供給用の電気回路(101、101A)と、集積回路(41)と、を備える。
【0186】
上記の構成によれば、電気回路(101、101A)に用いるコンデンサの員数を削減することができる。
【符号の説明】
【0187】
1a 第1端部
2a 第2端部
3 陽極体
5 多孔質部
6 陰極部
10 コンデンサ素子
10a 第1のコンデンサ素子
10b 第2のコンデンサ素子
11、11A コンデンサ
14 外装体
14a 第1の面
14b 第2の面
21 第1の外部電極
22 第2の外部電極
23 第3の外部電極
24 筐体
25、26 陽極端子
27 貫通部
28 陰極端子
30 電路
41 集積回路
43 DC/DCコンバータ
100、100A 集積回路付電気回路
101、101A 電気回路
f0 自己共振周波数
PS1 電源