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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085590
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】運動強度設定システムとその利用
(51)【国際特許分類】
   A63B 24/00 20060101AFI20230614BHJP
   A63B 22/06 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A63B24/00
A63B22/06 G
A63B22/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199700
(22)【出願日】2021-12-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.第27回日本心臓リハビリテーション学会学術集会(開催日:令和3年6月19日~20日、発表日:令和3年6月19日)
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(72)【発明者】
【氏名】山田 純生
(57)【要約】
【課題】ATに対応する基準運動強度、および、ATより高く且つRC以下の範囲内で高運動強度を適切に設定可能な運動強度設定システムを提供する。
【解決手段】運動強度設定システム1は、運動負荷装置10と、ユーザが実施した運動強度の運動の継続に対する自己効力感を入力するための自己効力感入力装置12と、基準運動強度および高運動強度を設定する制御装置20と、を備える。制御装置20は、運動後に、ユーザが当該運動中の最後に当該運動の運動強度における自己効力感を肯定的に入力した時の運動強度に基づいて、上記基準運動強度を設定するように構成され、かつ、少なくとも、上記自己効力感の入力結果に基づく第1の判断基準と、ユーザの運動耐容能に対応する評価指標によって設定される第2の判断基準とによりユーザを分類し、該分類と上記設定された基準運動強度とに基づいて、上記高運動強度を設定するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動するユーザの身体に対して運動強度を増大もしくは減少させながら負荷を与える運動負荷装置と、
前記ユーザが実施した前記運動強度の運動の継続に対する自己効力感を入力するための自己効力感入力装置と、
有酸素運動から無酸素運動へと切り替わる嫌気性代謝閾値の運動強度に対応する基準運動強度と、当該基準運動強度より高く、かつ、過剰喚起が開始される呼吸性代償開始点に対応する運動強度以下の範囲に設定される高運動強度とを設定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
運動後に、前記ユーザが当該運動中の最後に当該運動の運動強度における前記自己効力感を肯定的に入力した時の当該運動強度に基づいて、前記基準運動強度を設定するように構成され、かつ、
少なくとも、前記自己効力感の入力結果に基づく第1の判断基準と、前記ユーザの運動耐容能に対応する評価指標によって設定される第2の判断基準とにより前記ユーザを分類し、該分類と前記基準運動強度とに基づいて、前記高運動強度を設定するように構成されている、
運動強度設定システム。
【請求項2】
前記第2の判断基準は、予め定められた前記運動耐容能に対応する評価指標の基準値と、前記ユーザの運動耐容能に対応する評価指標の値との大小関係の比較によって、前記ユーザを分類するように設定されている、請求項1に記載の運動強度設定システム。
【請求項3】
前記ユーザの運動耐容能に対応する評価指標が、最高酸素摂取量と相関性を有する評価指標である、請求項1または2に記載の運動強度設定システム。
【請求項4】
前記最高酸素摂取量と相関性を有する評価指標が、前記ユーザが複数の設問に対してそれぞれ複数の選択肢から回答し、当該回答された選択肢を基に計算される点数である、請求項3に記載の運動強度設定システム。
【請求項5】
前記自己効力感入力装置は、前記自己効力感の程度を予め用意された複数の選択肢から1つを選択することで入力できるように構成されており、
前記選択肢は、前記自己効力感の程度が前記複数の選択肢の中で最も肯定的な第1の選択肢と、当該第1の選択肢よりも自己効力感の程度が劣る第2の選択肢とを少なくとも含み、
ここで、前記第1の判断基準は、前記複数の選択肢のうち、前記第1の選択肢のみを選択したユーザと、前記第1の選択肢以外の選択肢を少なくとも一度選択したユーザとを分類するように設定されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の運動強度設定システム。
【請求項6】
前記運動負荷装置は、自転車エルゴメーターである、請求項1~5のいずれか1項に記載の運動強度設定システム。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1~6のいずれか一項に記載の運動強度設定システムとして動作させるように構成されている、コンピュータプログラム。
【請求項8】
ユーザの身体に対して所定の運動強度を負荷して運動させる運動負荷装置と、
第2制御装置と、
を備え、
前記第2制御装置は、請求項1~6のいずれか一項に記載の運動強度設定システムによって設定された基準運動強度および高運動強度を基に、前記運動負荷装置の前記運動強度を制御するように構成されている、運動支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、至適運動処方のための基準運動強度および適切な高運動強度の両者を設定することができる設定システムとその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
健康で生活の質(Quality Of Life:QOL)を向上させるための三要素として、「栄養・食生活」、「運動」および「休養」が挙げられる。これらのうちの「運動」は、身体の一部または全部を動かすことであり、運動を通じて健康の維持や体力の増進のみならず、諸症状の軽減や機能の回復を図ることができる。そのため、近年では、心血管疾患患者や心不全患者等を対象とした循環器リハビリテーションにおいても運動療法が中心的な役割を担っており、運動療法は、循環器診療ガイドラインでも高い推奨レベルの循環器治療として位置づけられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、個人の運動能力や症状に適した安全かつ効果的な運動療法を実現するために、有酸素運動から無酸素運動へと切り替わる運動強度の閾値である嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold:AT)に対応する基準運動強度を簡便に決定することができる基準運動強度設定システムが開示されている。ATに対応する基準運動強度が設定されることで、より安全かつ効果的な有酸素運動等の運動処方が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-130640号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】インターナショナル ジャーナル オブ カーディオロジー(International Journal of Cardiology),Vol.261, No.15(2018),P134-141
【非特許文献2】ジャーナル オブ カーディオロジー(Journal of Cardiology), Vol.60, No.5(2012),P411-415
【非特許文献3】ジャーナル オブ ストローク アンド セレブロバスキュラー ディジーズ(Journal of Stroke & Cerebrovascular Diseases), Vol.28, No.2,(2019),P317-324
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の運動療法としては、一定強度による有酸素運動(例えば、中強度持続トレーニング(MICT))が広く知られているが、近年、これに代わる療法として、高強度と低~中強度の運動を交互に繰り返す高強度インターバルトレーニング(high intensity interval training:「HIT」または「HIIT」ともいう)の有効性が示唆されている(例えば、非特許文献1)。HITは、MICTと同等の平均運動量で高強度運動による心血管疾患の一次予防や二次予防等の効果を得ることができる。一方で、HITでは高強度運動を実施することから、安全性の観点から適切な運動強度が設定されることが要求される。そのため、高強度運動に対応する運動強度(以下、「高運動強度」ともいう)の適切かつ簡便な設定方法が望まれている。また、HITでは、低~中強度に対応する運動強度の設定が必要であるため、ATに対応する基準運動強度の適切な設定も望まれる。
【0007】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ATに対応する基準運動強度および高運動強度を適切に決定することができる運動強度設定システムを提供することである。また、本発明の他の目的は、この運動強度設定システムのためのプログラムと、該運動強度設定システムを利用した運動支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで開示される技術によると、運動強度設定システムが提供される。この運動強度設定システムは、運動するユーザの身体に対して運動強度を増大もしくは減少させながら負荷を与える運動負荷装置と、上記ユーザが実施した上記運動強度の運動の継続に対する自己効力感を入力するための自己効力感入力装置と、有酸素運動から無酸素運動へと切り替わる嫌気性代謝閾値の運動強度に対応する基準運動強度と、当該基準運動強度より高く、かつ、過剰喚起が開始する呼吸性代償開始点に対応する運動強度以下の範囲に設定される高運動強度とを設定する制御装置と、を備える。そして上記制御装置は、運動後に、上記ユーザが当該運動中の最後に当該運動の運動強度における上記自己効力感を肯定的に入力した時の当該運動強度に基づいて、上記基準運動強度を設定するように構成され、かつ、少なくとも、上記自己効力感の入力結果に基づく第1の判断基準と、上記ユーザの運動耐容能に対応する評価指標によって設定される第2の判断基準とにより上記ユーザを分類し、該分類と上記設定された基準運動強度とに基づいて、上記高運動強度を設定するように構成されている。
【0009】
上記構成では、健康行動の心理学的指標である自己効力感を「特定強度における運動継続の自己効力感」として利用することで、ユーザの“運動の持続可能性”を聴取するようにしている。これにより、至適運動強度の指標とされるATに対応する基準運動強度(以下、「AT強度」等という場合がある。)を、安全かつ、従来よりも精度よく決定することができる。また、上記構成では、自己効力感の入力結果によるユーザの主観的な運動の持続可能性と、客観性を有する運動耐容能に対応する評価指標に基づいてユーザを分類して、当該分類に基づいた適切な高運動強度が設定できるように構成されている。ここで、高運動強度は、AT強度よりも高い運動強度で、呼吸性代償開始点(respiratory compensation point:RC)に対応する運動強度(以下「RC強度」ともいう)以下になるように設定される。RCを超えた高い運動強度では、無酸素運動によって血中に蓄積する乳酸を血液中で緩衝しきれず血中pHが下がり、過剰換気が引き起こされる等の心肺への負担が高くなり過ぎる可能性がある。そのため、AT強度以上RC強度以下の範囲に高運動強度が設定されることで、より安全性が高い適切な高運動強度を得ることができる。
【0010】
なお、本明細書における自己効力感(セルフ・エフィカシー、Self-Efficacy:SE)とは、自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できるかという可能性の認知を意味する。換言すると、自己効力感とは、自身が持っている効力予期の程度であり、ある結果を生み出すために適切な行動を遂行できるという確信の程度を意味する。ただし、自己効力感は、心理学的要素を含む主観的指標であり、必要な行動を実際に行えるかどうかを保証するものではない。
【0011】
ここで開示される運動強度設定システムの好適な一態様では、上記第2の判断基準は、予め定められた上記運動耐容能に対応する評価指標の基準値と、上記ユーザの運動耐容能に対応する評価指標の値との大小関係の比較によって、上記ユーザを分類するように設定されている。かかる構成によれば、予め定められた基準値との比較という簡便な方法でユーザを分類することができる。
【0012】
ここで開示される運動強度設定システムの好適な一態様では、上記ユーザの運動耐容能に対応する評価指標が、最高酸素摂取量と相関性を有する評価指標である。最高酸素摂取量(peak VO)は、運動耐容能のもっとも客観的な指標の一つとして広く認知されている。一方で、peak VOを測定するには、典型的には、呼吸ガス代謝計等の専門的な医療機器を要する心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise testing:CPX)を実施する必要がある。そのため、上記構成のように、peak VOと相関性を有する評価指標を用いることで、CPXを実施しない簡便な方法で高運動強度が設定でき得る。
【0013】
ここで開示される運動強度設定システムの好適な一態様では、上記最高酸素摂取量と相関性を有する評価指標が、上記ユーザが複数の設問に対してそれぞれ複数の選択肢から回答し、当該回答された選択肢を基に計算される点数である。かかる構成によれば、設問に対して選択肢を回答するという非常に簡便な方法で、高運動強度を設定することができる。
【0014】
ここで開示される運動強度設定システムの好適な一態様では、上記自己効力感入力装置は、上記自己効力感の程度を予め用意された複数の選択肢から1つを選択することで入力できるように構成されており、上記選択肢は、上記自己効力感の程度が上記複数の選択肢の中で最も肯定的な第1の選択肢と、当該第1の選択肢よりも自己効力感の程度が劣る第2の選択肢とを少なくとも含む。そして、上記第1の判断基準は、上記複数の選択肢のうち、上記第1の選択肢のみを選択したユーザと、上記第1の選択肢以外の選択肢を少なくとも一度選択したユーザとを分類するように設定されている。
これにより、主観的な指標である自己効力感の程度を常に最も肯定的に捉えるユーザを分類することができる。このようなユーザは、主観的な側面からの運動の持続可能性と、客観的な側面からの運動の持続可能性とが乖離している虞がある。このようなユーザは、例えば、高い精神力により、身体が安全に許容できる運動量を超えた運動を実行し易い、又は、身体が安全に許容できる運動量に認識が弱い等の傾向のあるユーザといえる。そのため、このようなユーザを分類せずに、運動耐容能の対応する評価指標のみで高運動強度を設定した際に、高強度の運動を実施した際に、身体に過剰な負荷をかけてしまうリスクが高くなり得る。したがって、上記構成により、このようなユーザを分類することで、かかるユーザに対して、より安全で適切な高運動強度を設定することができる。
【0015】
ここに開示される基準運動強度設定システムの好適な一態様では、上記運動負荷装置は、自転車エルゴメーターである。これにより、汎用されている運動負荷装置を利用して、簡便に適切な基準運動強度および高運動強度を得ることができる。
【0016】
ここに開示される技術によると、ATに対応する基準運動強度およびAT強度以上RC強度以下の範囲に設定される高運動強度適切に決定することができる運動強度設定アルゴリズムが提供される。そこで、ここで開示される技術は、他の側面において、コンピュータを、上記のいずれかの基準運動強度設定システムとして動作させるように構成されている、コンピュータプログラムをも提供する。これにより、コンピュータと運動負荷装置とを接続することで、当該運動強度設定アルゴリズムを利用した基準運動強度および高運動強度の設定を簡便に利用することができる。
【0017】
また、他の側面から、ここで開示される技術は、運動支援システムを提供する。この運動支援システムは、ユーザの身体に対して所定の運動強度を負荷して運動させる運動負荷装置と、制御装置と、を備える。そして上記制御装置は、上記のいずれかの基準運動強度設定システムによって設定された基準運動強度および高運動強度を基に、上記運動負荷装置の上記運動強度を制御するように構成されている。これにより、得られた基準運動強度および高運動強度を利用した運動を、簡便かつスムーズにユーザに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る運動強度設定システムの構成を説明する概念図である。
図2】一実施形態に係る運動強度設定システムのブロック図である。
図3】一実施形態に係る基準運動強度設定のためのアルゴリズムを示すフロー図である。
図4】一実施形態に係る高運動強度設定のためのアルゴリズムを示すフロー図である。
図5】一実施形態に係る運動負荷装置が提供するHITメニューを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を適宜参照しつつ、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄(運動の実施方法や提供方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面において、同様の作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、本明細書において数値範囲を示す「A~B」との表記は、A以上B以下を意味し、Aを上回りBを下回る範囲を包含する。
【0020】
図1は、ここで開示される運動強度設定システム1の構成を説明する概念図である。運動強度設定システム1は、至適運動処方のための基準運動強度および高運動強度を設定するためのシステムである。この運動強度設定システム1は、運動負荷装置10と、自己効力感入力装置(以下、単に「SE入力装置」と記す場合がある。)12と、制御装置20と、付加的な負荷制御装置14と心拍測定装置16とを備えている。これらの各構成要素は、有線または無線で通信可能に接続されている。本実施形態において、運動負荷装置10、SE入力装置12、負荷制御装置14および心拍測定装置16と、制御装置20とは、インターネットを介して相互に通信可能に接続されている。しかしながら、通信手段はインターネットに限定されない。通信手段は、例えば、イントラネット、エクストラネット等の公知の接続手段であってよい。また、制御装置20は、運動負荷装置10、SE入力装置12と、負荷制御装置14および心拍測定装置16等と、地理的に離れた場所に設置されていてもよいし、近接した場所に(例えば、着脱可能であるが一体的に)設置されていてもよい。なお、運動強度設定システム1は、さらに第2制御装置30を備えており、ここに開示される運動支援システム100としても機能し得る。
【0021】
運動負荷装置10は、ユーザの身体に対して所定の運動強度の負荷を加えて運動させることができる運動装置である。運動負荷装置10は、典型的には負荷制御装置14を備えている。負荷制御装置14は、運動負荷装置10を運転する際に必要な仕事量(W)、換言すると負荷の強度を制御する装置である。運動負荷装置10は、運動負荷を段階的に、あるいは、連続的に変化させることができるように構成されていてもよい。負荷制御装置14は、例えば、後述する制御装置20から運動負荷に関する指示を受信することができる。また、負荷制御装置14は、例えば、ユーザが行っている運動の運動負荷に関する情報を制御装置20に送信することができる。負荷制御装置14は、制御装置20によって指示される運動負荷となるよう、運動負荷装置10の負荷を制御する。運動負荷装置10としては、これに限定されるものではないが、各種の運動または運動競技を任意の運動強度で実施するための器具であるエルゴメーターやトレッドミル等を利用してもよい。エルゴメーターとしては、身体能力を計測するための器具や、トレーニングのための器具などであってよく、例えば、自転車エルゴメーター、フィットネスバイク、上肢エルゴメーター(ローイングエルゴメーター)等が挙げられる。
【0022】
SE入力装置12は、ユーザが実施した所定の運動強度の運動の継続に対する自己効力感を入力するための装置である。SE入力装置12は、これに限定されるものではないが、コンピュータやマイクロコンピュータにより構成されていてもよい。好適な一例として、SE入力装置12は、タブレット端末やスマートフォン、小型パソコン等の携帯端末であり得る。また、SE入力装置12は、音声認識装置を備えていてもよい。本実施形態のSE入力装置12は、図示しない、液晶画面等からなる表示部と、タッチパネル等からなる入力部と、制御部と備えるタブレット端末である。SE入力装置12は、運動負荷装置10に着脱可能に備えられていてもよい。SE入力装置12の制御部の構成は特に限定されず、例えば、制御装置20や負荷制御装置14等の外部機器との間で各種の情報を送受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(central processing unit:CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)とを備えている。SE入力装置12には、ユーザによって、上記所定の運動を、さらに所定時間遂行することが可能かどうかの認知が入力される。ユーザによって入力された認知結果は、例えば、制御装置20(一例として、自己効力感判定部22)に送られる。
【0023】
SE入力装置12の制御プログラムは、ユーザが、運動負荷装置10を使用して自ら実施した所定の運動強度の運動についての“運動遂行の見込み感”を入力できるように構成されている。換言すれば、ユーザの主観的な側面からの“運動の持続可能性”を入力することができる。本実施形態では、運動遂行の見込み感”をタッチパネルで入力できるように構成されている。特に限定されるものではないが、SE入力装置12は、“運動遂行の見込み感”を、予め用意された複数の段階(例えば、2~10段階、一例として3~5段階)の選択肢の中から1つを選択することで、入力できるように構成されることが好ましい。このとき、選択肢の内容および構成は特に制限されないが、例えば、運動の遂行について肯定的な認知を示す選択肢と、運動の遂行について否定的な認知を示す選択肢とを含むとよい。また、肯定的な認知を示す選択肢は、例えば、自己効力感の程度が肯定的な第1の選択肢と第2の選択肢とを含むとよい。この場合、併せて、自己効力感が否定的な1つまたは2つ以上の程度の選択肢も含むとよい。ここで、第1の選択肢は、第2の選択肢よりも自己効力感の肯定的な程度が高い選択肢である。一例として、第1の選択肢は、自己効力感の程度が最も肯定的な選択肢であってよい。なお、“運動遂行の見込み感”の入力方法は、タッチパネルに限定されず、例えば、ユーザが発する音声を認識する音声認識装置を介して入力できるように構成されていてもよい。
【0024】
心拍測定装置16は、心拍数をする装置である。心拍測定装置16は、ユーザが、運動負荷装置10を使用して所定の運動強度の運動を実施しているときの心拍を測定する。心拍測定装置16の構成は特に制限されない。心拍測定装置16は、典型的には、心臓内の電気の流れを電位変動として電極を介して計測し、記録する。また、ここでいう心拍測定装置16は、手や手首、指等の心臓とは異なる部位で脈動を検出する装置(いわゆる脈拍計)であってもよい。心拍測定装置16は、電極をユーザの生体表面(例えば胸部等)に貼り付けて使用するパッチ型や、肢部や指先等に装着して使用するベルト型(例えば腕時計型)やクリップ型等の各種の形態であってよい。測定された心電図信号や心拍数等の生体情報は、例えば、制御装置20(一例として、心拍判定部23)に送られる。なお、心電図から測定される「心拍」と、脈波から測定される「脈拍」とは厳密には区別され得るが、ここに開示される技術では、「心拍数」と「脈拍」とを同一に扱うことができる。したがって、ここでいう「心拍数」は、「脈拍数」を含むものとする。
【0025】
制御装置20は、運動強度設定システム1の制御を行うほか、運動支援システム100の第2制御装置30としての機能も備え得る。換言すれば、制御装置20は、単独で、運動強度設定システム1および運動支援システム100のサーバーとして機能し得る。制御装置20は、基準運動強度および高運動強度を決定する。制御装置20の構成は特に限定されない。図2は、一実施形態に係る運動強度設定システムの構成を示すブロック図である。制御装置20は、例えば、コンピュータにより構成されてよく、SE入力装置12や負荷制御装置14、心拍測定装置16等の要素や外部機器との間で各種の情報を送受信するI/Fと、制御プログラムの命令を実行するCPUと、CPUが実行するプログラムを格納したROMと、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAMとを備えている。また本実施形態に係る制御装置20は、運動強度記憶部21と、自己効力感判定部(以下、単に「SE判定部」という場合がある。)22と、心拍判定部23と、負荷増大部24と、負荷低減部25と、基準運動強度設定部26と、運動耐容能判定部27と、高運動強度設定部28とを備えている。制御装置20の各部は、回路やマイクロコンピュータ等のハードウェアによって構成されていてもよいし、CPUがコンピュータプログラムを実行することにより機能的に実現されるようになっていてもよい。
【0026】
制御装置20は、運動強度設定システム1の動作を包括的に制御するとともに、運動強度設定システム1によって基準運動強度および高運動強度を決定する。制御装置20は、例えば、運動負荷装置10の動作を制御する。制御装置20は、負荷制御装置14に運動負荷装置10の負荷を指示する。また、制御装置20は、少なくともSE判定部22の判断に基づき、負荷増大部24および負荷低減部25を制御することで、運動負荷装置10の運動強度を増大もしくは低減させる。
【0027】
図3は、一実施形態に係る基準運動強度を決定するためのアルゴリズムを示すフロー図である。図3における工程S1~S4は、運動負荷を増大させる漸増ステージであり、工程S5~S8は、運動負荷を減少させる漸減ステージを示す。そして、制御装置20は、増減された運動強度を基に基準運動強度を決定する(工程S9参照)。工程S1~S9の詳細については、具体例と共に後述する。また、図4は、一実施形態に係る高運動強度を決定するためのアルゴリズムを示すフロー図である。図4における工程S11およびS12は、ユーザの主観的な運動の持続可能性または客観的な運動の持続可能性に基づいてユーザを分類する。S13では、その分類に基づき、適切な高運動強度を決定する。工程S11~S13の詳細については、具体例と共に後述する。以下、制御装置20の各部の動作や機能について、適宜図を参照しつつ説明する。
【0028】
運動強度記憶部21は、運動負荷装置10に設定されている運動強度を記憶する。運動強度記憶部21は、運動負荷装置10から送られる運動強度を受信し、記憶する。運動負荷装置10において、一例では、運動負荷の強度が変化される。運動強度記憶部21は、例えば、ユーザが実施した運動負荷試験等における運動強度(運動負荷)を記憶する。運動強度の初期値(初回運動負荷L1)については、ユーザが設定してもよいし、予め設定された初回運動強度Lwarm-upを採用してもよい。運動強度の初期値は、ユーザが運動負荷装置10に対して設定してもよいし、制御装置20が運動負荷装置10に対して設定するように構成されていてもよい。運動強度記憶部21は、少なくとも基準運動強度を決定するためのアルゴリズムにおいて、ユーザが現在実施している運動強度および図3に示す漸減ステージで最後に実施した運動の運動強度を記憶していればよい。運動強度記憶部21は、例えば、ユーザが運動負荷試験において実施した運動強度を運動負荷装置10から受信するごとに上書きすることで現在または最後の運動強度を記憶するようにしてもよい。あるいは、運動強度記憶部21は、運動負荷装置10から運動強度を時刻情報とともに受信し、運動強度の履歴として記憶していてもよい。また、運動強度記憶部21は、ユーザ情報と、後述する、ユーザがSE入力装置12に入力した所定の運動に対する自己効力感と紐づけて、当該運動に係る運動強度を記憶してもよい。
【0029】
SE判定部22は、ユーザがSE入力装置12に入力した自己効力感に関する情報をSE入力装置12から受信する。SE判定部22は、受信した自己効力感に関する情報が、「当該運動を遂行できる見込みがある」と評価できるか否かを判断する。このSE判定部22の判断基準は、例えば、SE入力装置12の構成や、自己効力感に関する回答としてあらかじめ選択肢が用意されている場合はその選択肢の内容によっても異なり得るために一概には言えない。例えば、ユーザが運動遂行について肯定的な選択肢を選択した場合に、「当該運動を遂行できる見込みがある」(Yes)と判断してもよい。好ましい一例では、例えば、ユーザが運動遂行について、より肯定的な第1の選択肢を選択した場合に、「当該運動を遂行できる見込みがある」(Yes)と判断するようにしてもよい。SE判定部22による判断結果は、例えば、RAMに記憶させてもよいし、後述する負荷増大部24、負荷低減部25、及び/又は高運動強度設定部28に送るようにしてもよい。
【0030】
心拍判定部23は、心拍測定装置16によって測定されたユーザの運動時の心拍を、心拍測定装置16から受信する。心拍判定部23は、受信した心拍が、「当該運動を遂行しても安全である」と評価できるか否かを判断する。心拍判定部23は、ここで開示される技術において任意の要素であるが、「自己効力感」という主観的な指標に対して、その運動時の心拍数応答という客観的指標を加えることで、基準運動強度をより安全かつ適切なものとして決定するために寄与する。心拍判定部23の判断基準は、例えば、ユーザの体質や健康状態等によって異なり得るために一概には言えない。心拍判定部23は、例えば、ユーザの安静時心拍数(Harte Rate at rest:HRat rest)を基準として、当該ユーザの運動時心拍が予め定められた所定の範囲(例えば、「許容運動時心拍範囲」という。)に収まっていれば、「当該運動を遂行しても安全である」と評価するようにしてもよい。かかる運動時心拍の安全領域を示す基準は、例えば、ユーザの年齢、性別、疾患の有無や体力、病歴、服用薬などを考慮して、複数パターンが予め用意されているとよい。また、かかる運動時心拍の安全領域を示す基準は、例えば、運動の開始からの時間や自己効力感等を考慮して、複数パターンが予め用意されているとよい。
【0031】
一例として、運動時心拍の安全領域を示す基準は、心拍に影響を与え得る薬剤を服用しているか否かを考慮して、それぞれに適切な基準を設定することができる。例えば、後述の具体例では、循環器疾患の患者について、心不全標準治療薬であり心拍数応答を減ずる薬剤であるβ遮断薬の服用の有無と、自己効力感の程度とを考慮に入れて、運動時心拍の安全領域を示す基準を複数パターン(下記表3および表4では12パターン)に設定した例を示している。このような運動時心拍の安全領域を示す基準は、ここで開示される技術における許容運動時心拍範囲の一例である。心拍判定部23による判断結果は、例えば、RAMに記憶させてもよいし、後述する負荷増大部24、負荷低減部25、及び/又は、基準運動強度設定部26に送るようにしてもよい。運動時心拍が、例えば、このように条件別に設定された基準値未満あるいは基準値以下である場合に、「当該運動を遂行しても安全である」と評価することができる。
【0032】
負荷増大部24は、SE判定部22と、必要に応じて心拍判定部23とによる判断結果を受信し得る。負荷増大部24は、少なくとも、SE判定部22の判断に基づいて、所定の条件を満たしたときに、運動負荷装置10に設定されている運動強度を増大させるように構成されている。負荷増大部24は、例えば、ユーザが運動負荷装置10を用いて運動を始めてから、少なくとも、SE判定部22が、遂行見込みがあるとは言えない(No)と判断したことがない状態において、運動強度を増大させることができる。負荷増大部24は、好ましくは、SE判定部22と心拍判定部23との判断に基づいて、所定の条件を満たしたときに、運動負荷装置10に設定されている運動強度を増大させるように構成されているとよい。すなわち、例えば、負荷増大部24は、SE判定部22が、遂行見込みがあるとは言えない(No)と判断したことがない状態において、心拍判定部23が運動遂行は安全である(Yes)と判断した場合に、運動強度を増大させるように構成するとよい。負荷増大部24は、例えば、負荷制御装置14に所定の増大量だけ運動強度を増大するように指示を送ることで、運動負荷装置10に設定されている運動強度を増大させることができる。SE判定部22および心拍判定部23の判断結果は、負荷増大部24がRAMを参照することで取得してもよいし、SE判定部22および心拍判定部23が、常に、あるいは、必要に応じて、負荷増大部24に送るように構成されていてもよい。
【0033】
負荷低減部25は、少なくとも、SE判定部22の判断に基づいて、所定の条件を満たしたときに、運動負荷装置10に設定されている運動強度を低減させるように構成されている。負荷低減部25は、例えば、SE判定部22が、遂行見込みがあるとは言えない(No)と判断した場合に、運動強度を低減させることができる。負荷低減部25は、好ましくは、SE判定部22と心拍判定部23との判断に基づいて、所定の条件を満たしたときに、運動負荷装置10に設定されている運動強度を低減させるように構成されていてもよい。すなわち、負荷低減部25は、SE判定部22が、遂行見込みがある(Yes)と判断した場合であっても、心拍判定部23が運動遂行は安全であるとは言えない(No)と判断した場合には、運動強度を低減させるように構成されているとよい。負荷低減部25は、例えば、負荷制御装置14に所定の低減量だけ運動強度を低減するように指示を送ることで、運動負荷装置10に設定されている運動強度を低減させることができる。SE判定部22および心拍判定部23の判断結果は、負荷低減部25がRAMを参照することで取得してもよいし、SE判定部22および心拍判定部23が、常に、あるいは、必要に応じて、負荷低減部25に送るように構成されていてもよい。
【0034】
基準運動強度設定部26は、少なくとも、SE判定部22の判断に基づいて、所定の条件を満たしたときに、運動負荷装置10に設定されている運動強度を基準運動強度とするように構成されている。基準運動強度設定部26は、例えば、SE判定部22が、遂行見込みがあるとは言えない(No)と少なくとも1回判断したのちに、遂行見込みがある(Yes)と判断した場合に、運動負荷装置10に設定されている運動強度を基準運動強度に決定することができる。基準運動強度設定部26は、好ましくは、SE判定部22と心拍判定部23との判断に基づいて、所定の条件を満たしたときに、基準運動強度を決定するように構成されていてもよい。すなわち、基準運動強度設定部26は、SE判定部22が、遂行見込みがある(Yes)と判断した場合であっても、心拍判定部23が運動遂行は安全であるとは言えない(No)と判断した場合には、基準運動強度を決定することがないように構成されていてもよい。このことによって、呼吸ガス代謝測定(例えば、CPX)を行わずに簡便かつ安全に、AT強度により近い基準運動強度を決定することができる。
【0035】
基準運動強度設定部26は、SE判定部22および心拍判定部23の判断結果を、RAMを参照することで取得してもよいし、SE判定部22および心拍判定部23が、常に、あるいは、必要に応じて、基準運動強度設定部26に判断結果を送るように構成されていてもよい。基準運動強度設定部26は、例えば、決定した基準運動強度を運動強度記憶部21、RAMに記憶させてもよい。基準運動強度設定部26は、例えば、決定した基準運動強度を、液晶画面等の表示部に表示するように構成されていてもよい。かかる表示部は、例えば、SE入力装置12を構成するタブレット端末などであってよい。
【0036】
運動耐容能判定部27は、少なくとも、ユーザの運動耐容能に対応する評価指標に関するデータを受信する。運動耐容能に対応する評価指標は、例えば、最高酸素摂取量(peak VO)や、peak VOと相関性を有する評価指標等が挙げられる。このなかでも、より簡便な方法であるpeak VOと相関性を有する評価指標が好適に採用される。peak VOと相関性を有する評価試験としては、例えば、6分間歩行距離(6MWD)や、ユーザの身体活動についての実行可能性に関する回答式試験であって、複数の設問に対し、肯定的な回答から否定的な回答までを含む選択肢の中から回答し、その合計点を点数化した試験等が挙げられる。かかる回答式試験としては、例えば、本発明者らが開発したSEW-7(self-efficiency for walking-7)や、PMADL-8(performance measure for activities of daily living-8)等が挙げられる。このような評価試験は、専門的な設備および環境を要するCPXを実施しなくとも、peak VOを容易に推定することができるため、より簡便に高運動強度を設定することができるようになる。
なお、本明細書において「最高酸素摂取量(peak VO)と相関性を有する評価指標」とは、peak VOと、当該評価指標との相関係数の絶対値が0.5以上のものをいう。
【0037】
運動耐容能判定部27は、ユーザの運動耐容能に合わせ、より安全かつ効果的な高運動強度を設定できるよう、ユーザを少なくとも2群に分類するために予め設定された運動耐容能に対応する評価指標の基準値が設定される。そして、かかる基準値と、ユーザの運動耐容能に対応する評価指標の値との大小関係の比較により、ユーザがいずれかの群に分類されるかを判定できるよう設定される。即ち、ユーザの運動耐容能に合わせた適切な高運動強度を設定できるようユーザを分類する。ユーザを分類するために予め設定された基準は、運動耐容能に関するデータの種類や、ユーザの年齢、性別、疾患の有無や体力、病歴、服用薬などの種々の条件により異なり得るために一概には言えない。かかる基準の設定の具体的な一例は後述する。
【0038】
運動耐容能判定部27が受信するユーザの運動耐容能に関するデータは、高運動強度が設定される前に入力されていればよく、基準運動強度が設定される前であっても、基準運動強度が設定された後であってもよい。かかるデータは、例えば、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力手段によって入力することができる。また、例えば、SE入力装置12に上記peak VOと相関し得る評価試験が実施できるように設定し、SE入力装置12から運動耐容能判定部27へ試験データが送信されるように設定されていてもよい。
【0039】
高運動強度設定部28は、SE判定部22の判断結果及び/又は運動耐容能判定部27の判断結果により分類し、該分類ごとに高運動強度を設定できるように構成されている。高運動強度設定部28は、例えば、SE判定部22が、遂行見込みがある(Yes)の選択肢のみと判断している場合と、遂行見込みがない(No)の選択肢が少なくとも一度以上選択されたと判断した場合とでユーザを分類できるように構成され得る。
【0040】
また、高運動強度設定部28は、例えば、運動耐容能判定部27の判断結果に基づき、上記SE判定部の判断結果に基づき分類されたユーザをさらに少なくとも2群以上に分類する。一例では、SE判定部22の判断結果によりユーザが2群で分類された後、各群において、運動耐容能判定部27の判断結果に基づいて、さらに2群に分類するように設定される。これにより、ユーザを4群に分類することができ、各群に適当な高運動強度を設定、又は、高運動強度の未設定の決定を行うことができる。
【0041】
高運動強度設定部28で設定される各群の高運動強度は、例えば、基準運動強度設定部26で決定された基準運動強度に基づいて算出されるように設定されている。例えば、複数のCPX被験者のデータから解析される回帰式により高運動強度と基準運動強度(AT強度)との関係式を求め、設定することができる。設定され得る関係式は、被験者データが多くなるほどより正確な高強度設定が可能になるため、適宜変更され得るものであり、特に限定されるものではない。この設定方法の一例は、後述の具体例で説明する。
【0042】
高運動強度設定部28は、SE判定部22および運動耐容能判定部27の判断結果を、RAMを参照することで取得してもよいし、SE判定部22および運動耐容能判定部27が、常に、あるいは、必要に応じて、高運動強度設定部28に判断結果を送るように構成されていてもよい。高運動強度設定部28は、例えば、決定した高運動強度を運動強度記憶部21やRAMに記憶させてもよい。高運動強度設定部28は、例えば、決定した基準運動強度を、液晶画面等の表示部に表示するように構成されていてもよい。かかる表示部は、例えば、SE入力装置12を構成するタブレット端末などであってよい。
【0043】
なお、以上の運動強度設定システム1において、制御装置20には、例えば、ここで開示される運動強度設定プログラムが記憶されている。運動強度設定プログラムは、コンピュータを、上記の運動強度設定システムとして動作させるように構成されている。より具体的には、ここで開示される運動強度設定プログラムは、コンピュータを、上記の運動強度記憶部21、SE判定部22、心拍判定部23、負荷増大部24、負荷低減部25、基準運動強度設定部26、運動耐容能判定部27、および、高運動強度設定部28として機能させるためのプログラムをも提供する。このプログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、ROM、RAM等が例示される。また、プログラムは、CDやDVDなどの記録媒体から読み込むものであってもよいし、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。
【0044】
運動支援システム100は、運動負荷装置10と、第2制御装置30とを備える。運動負荷装置10は、上記運動強度設定システム1におけるものと同様の運動負荷装置であってよく、重ねての説明は省略する。第2制御装置30も、制御装置20と同様であってよく、例えば、他の要素や外部機器等との間で各種の情報を送受信するI/Fと、制御プログラムの命令を実行するCPUと、CPUが実行するプログラムを格納したROMと、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAMとを備えている。本実施形態における第2制御装置30は、I/F、CPU、ROM、RAMが制御装置20と共通である。第2制御装置30は、運動負荷装置10と電気的に通信可能に接続されている。第2制御装置30は、制御装置20によって決定された基準運動強度および高運動強度を基に、運動負荷装置10の運動強度を制御するように構成されている。例えば、第2制御装置30は、運動負荷装置10が提供する運動メニューの運動強度を、高運動強度、基準運動強度、又は基準同強度よりも所定値低く設定された低運動強度に設定するよう、運動負荷装置10に指示を送る。運動負荷装置10が提供する運動メニューの内容は、従来と同様であってよく、例えば、ユーザの疾患別のリハビリを目的とした運動メニューや、健康維持を目的とした運動メニュー、筋力トレーニングを目的とした運動メニューなどであってよい。一例として、循環器疾患患者のリハビリを目的とした高強度インターバルトレーニング(HIT)が好適に設定される。
【0045】
運動負荷装置10が提供する運動メニューは、例えば、負荷を一定にして実施するものであってもよいし、負荷を変化させるもの(例えば、HIT)であってもよい。図5に、処方例として、HITメニューの一例を示した。HITは、高強度の運動と、低~中強度の運動を繰り返し行うよう設定される。HITの高強度の運動には、ここで開示される運動強度設定システムで設定された高運動強度の運動が好適に採用される。また、典型的には、安全性の観点から、HITの高強度の運動の上限はRC強度であることが好ましい。詳細は後述するが、CPXのデータから得られるRCは、生体(ヒト)の呼気反応は、CPXにおける負荷の増加に対して遅れて現出することに鑑み、ここでのRC強度は、CPXで測定されるRCの2分前の運動強度のことを指す。HITにおける低~中強度の運動としては、例えば、ここで開示される運動強度設定システムで設定された基準運動強度の運動を基に好適に設定され得る。例えば、(基準運動強度-10W)~基準運動強度程度に設定されるとよい。このように設定されたHITメニューの運動強度は、ユーザの主観的な側面からの運動の持続可能性、客観的な側面からの運動の持続可能性の両者を考慮して設定されているため、ユーザが実行し易く、かつ、より安全性が高い。
【0046】
図5に示すHITメニューは、安静期、ウォーミングアップ、低~中強度運動、高強度運動と低~中強度運動の繰り返し、および、クールダウンの順で構成されている。安静期では、例えば、安静時心拍数や安静時血圧が測定され得る。ウォーミングアップにおける運動強度、ユーザに合わせた低強度よりも低い運動強度が設定される(例えば、5W~15W)。その後、低~中強度運動を1~3分間程度行った後、高強度運動と低~中強度運動とが複数回(例えば2~10回)繰り返されるよう設定される。かかる繰り返しにおける高強度運動は、例えば、30秒~2分間程度とし、低~中強度運動(積極的休止期)は、例えば、2分~5分程度で設定される。クールダウンでは、ウォーミングアップと同程度の運動強度の運動を行う。なお、HITメニューはユーザの年齢、性別、疾患の有無や体力、病歴、服用薬などを考慮して個別に設定されるため、上述の例に限定されるものではない。
【0047】
従来の運動支援システムでは、例えば運動の目的別に様々な運動メニューが提供されていた。しかしながら、そのような運動メニューは、ユーザごとに、運動強度の基準とすべき基準運動強度や高運動強度を、適切に、かつ、簡便に決定することができないことが、長年のネックであった。そのため、運動メニューを処方する前に、呼吸ガス代謝測定を伴う運動負荷試験(例えばCPX)などの、ユーザの負担の大きな試験が必要となっていた。これに対し、ここに開示される運動支援システム100においては、運動強度設定システム1によって簡便に得られた基準運動強度を基に、自動的にユーザに適した運動メニューを処方することができる。
【0048】
以下、ここで開示される技術に関する具体例を図面に基づいて説明するが、ここで開示される技術を以下の具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0049】
<CPXによる高運動強度および基準運動強度の設定>
循環器疾患患者に対し、高強度インターバルトレーニングを処方するために、適切な高運動強度および基準運動強度をCPX測定した。まず、循環器専門病院でリハビリテーションを行っている循環器疾患患者66人に対してCPXを実施し、ATに対応するAT強度およびRCに対応するRC強度を測定した。具体的には、呼気ガス分析装置と自転車エルゴメーターとを行いて、自転車エルゴメーターによる運動(自転車漕ぎ)時のAT強度およびRC強度を測定した。まず、被験者を約4分間安静にさせて安静時心拍数を測定したのち、自転車エルゴメーターに着座させて、呼気ガス分析装置の呼気マスクを、呼吸気の漏れがないように口および鼻を覆うように装着させた。そして、マスク装着後の約2分間は自転車を漕がずに安静に待機したのち、回転速度の目安となる合図に合わせて50回転/分の駆動速度でペダルを漕ぐウォーミングアップと負荷試験とを連続して実施した。なお、ウォーミングアップでは、ペダル負荷強度を10ワット(W)に設定し、ウォーミングアップ時間は3分間とした。また、負荷試験では、ペダル負荷が1分で10W直線的に漸増するように設定した。そして、被験者のRCが測定可能となる十分な時間の負荷試験を行った後、ペダル負荷を減少させて2~3分間のクールダウン運動を行った後、運動を停止した。
【0050】
CPXによって得られた運動時の呼気中の酸素濃度および二酸化炭素濃度とその流量の分析結果から、一呼吸ごとの酸素摂取量(VO)と二酸化炭素産生量(VCO)とを算出した。そして酸素摂取量(VO)をX軸に、二酸化炭素産生量(VCO)をY軸にプロットしたときに、二酸化炭素産生量(VCO)が酸素摂取量(VO)に比して増加し始める点(即ちグラフの屈曲点)をAT点とした。ここで、通常は、このAT点におけるペダル負荷強度(ATnormal)をAT強度とするが、生体(ヒト)の呼気反応は、CPXにおけるペダル負荷の増加に対してやや遅れて現出する。したがって、CPXで測定されたAT時点のペダル負荷で運動処方すると、過剰な負荷となることより、臨床では、この生体の呼気反応の遅れを考慮して、AT点に達する1分前のペダル強度をAT強度(基準運動強度)として処方している。そのため、このCPX試験では、ペダル負荷が1分で10W漸増させたことを考慮し、基準運動強度として、次式:基準運動強度(W)=ATnormal-10(W);として算出される値を採用した。
【0051】
また、CPXによって得られた、1分間あたりに肺を出入りするガスの総量を示す分時換気量(VE)と、VCOに基づき、RCを算出した。具体的には、X軸に運動強度(W)、Y軸にVE/VCOとしたグラフにおいて、VE/COが増加し始める点(即ち変曲点)をRCとした。ここでも、生体の呼気反応がCPXにおけるペダル負荷の遅れを考慮し、RCに達する2分前のペダル強度をRC強度とした。そのため、RC強度として、次式:RC強度(W)=RCnormal-20(W);として算出される値を採用した。なお、式中のRCnormalはグラフ中の変曲点(RC)の運動強度(W)のことをいう。
【0052】
また、負荷試験において得られたVOの最高値を最高酸素摂取量(peak VO)とした。peak VOは、運動耐容能のもっとも客観的な指標の一つである。また、peak VOは、心疾患の重症度と高い相関性を有しており、予後判定の指標になり得る。なお、peak VOは、一般的に、体格が大きい程高い値となるため、体重で補正した値とした(即ち、peak VOの単位はmL/min/kg)。
【0053】
次に、上記算出したpeak VOについて、peak VO≧14(mL/min/kg)を基準として、被験者を2群に分類した。peak VO<14(mL/min/kg)である場合には、心疾患の予後が比較的悪い群に分類される。分類の結果、peak VO≧14(mL/min/kg)であった被験者は49人、peak VO<14(mL/min/kg)であった被験者は17人であった。
【0054】
次いで、各群において、上記算出した基準運動強度(AT強度)をX軸、上記算出したRC強度をY軸としたグラフを作成した。そして、このグラフを回帰分析することにより、各群において以下の関係式を得られた。
・peak VO<14(mL/min/kg)の群:
RC強度(W)=1.9+1.3×基準運動強度(W)
・peak VO≧14(mL/min/kg)の群:
RC強度(W)=12+1.2×基準運動強度(W)
【0055】
次いで、上記関係式から、HITにおける高運動強度を設定した。HITでは、安全性や実行可能性を高める観点から、高運動強度の上限はRC強度(W)以下に設定されるとよい。そのため、ここでは、RC強度(W)よりも凡そ2W分の強度を下げ、高運動強度を以下の式のように設定した。式中、高運動強度を「高強度(W)」と示す。
・peak VO<14(mL/min/kg)の群:
高強度(W)=1.3×基準運動強度(W)
・peak VO≧14(mL/min/kg)の群:
高強度(W)=10+1.2×基準運動強度(W)
なお、ここでは、RC強度(W)から2Wを引いた値を高運動強度に設定したが、基準運動強度よりも高い値となる限りにおいて、特に限定されない。例えば、RC強度を高運動強度として採用してもよい。また、高強度運動の効果を高める観点から、高運動強度は、例えば、RC強度よりも10W低い範囲までに設定されるとよく、好ましくは、RC強度よりも5W低い範囲までで設定され得る。
【0056】
以上のようにして、CPXによって得られたpeak VOによって分類される各群の高運動強度を設定した。このように設定された高運動強度の式は、ここで開示される運動強度設定システムに入力することで、高運動強度を設定するアルゴリズムの一部とすることができる(図4のS13参照)。
【0057】
<SEW-7とpeak VOの解析>
次に、上述のpeak VO≧14(mL/min/kg)による分類に代わる分類方法として、SEW-7の点数による分類について検討した。SEW-7は、表1に示すように、身体活動に関する複数の設問に対して、1~5点のいずれかを選択して回答する試験である。SEW-7の結果は、各設問に対して回答された点数の合計点で示される。SEW-7は、本発明者らにより、peak VOと相関性が高いことが報告されている評価指標である(非特許文献3参照)。SEW-7は、主観的な側面からの運動の持続可能性の評価であるが、peak VOとの相関性が高いことから、客観的な側面からの運動持続可能性の評価を包含している試験であるといえる。本発明者は、心臓外科手術後3ヵ月の146人の患者のSEW-7およびpeak VOのデータに基づき、ROC解析(Receiver Operating Characteristic analysis)により、peak VO≧14(mL/min/kg)を予想するSEW-7のカットオフ値を算出した。その結果、カットオフ値として26点が適切であることがわかった。即ち、SEW-7≧26の群と、SEW-7<26の群とに分類することで、SEW-7≧26の群がpeak VO≧14(mL/min/kg)の群と対応し、SEW-7<26の群がpeak VO<14(mL/min/kg)の群に対応することがわかった。なお、かかるROC解析では、AUC:0.834、P値<0.001、感度:0.7、特異度:0.836であった。
【0058】
【表1】
【0059】
<運動強度設定システムによる基準運動強度および高運動強度の設定>
次に、循環器疾患患者13人に対し、図1に示されるような運動強度設定システム1を用いて、基準運動強度および高運動強度を設定した。この13人は、CPX後、基準運動強度レベルの運動療法を1ヶ月以上実行できた患者である。運動強度設定システム1は、図3および4のアルゴリズムに沿って、基準運動強度および高運動強度が設定されるように構成されている。ここでは、運動負荷装置10として自転車エルゴメーターを使用し、制御装置20としてパーソナルコンピュータを使用した。また、これらイントラネットにより接続した。以下、図3および4を参照しながら、基準運動強度および高運動強度を設定するアルゴリズムについて詳細に説明する。なお、図3および4に示すアルゴリズムは一例であって、ここで開示される運動強度設定システムに設定されるアルゴリズムをかかる例に限定するものではない。
【0060】
〔基準運動強度の測定〕
図3に示す基準運動強度を設定するためのアルゴリズムは、大まかには、工程S1~S4で構成される漸増ステージと、工程S5~S8で構成される漸減ステージとで構成されている。漸増ステージでは、被験者が主観的に「当該運動を遂行できる見込みがある」と判断しなくなるまで、又は、客観的な心拍数のモニタリングにより、被験者の心拍数が許容運動心拍数の限度を超えるまで、徐々に運動負荷を増大させる。漸減ステージでは、被験者が主観的に「当該運動を遂行できる見込みがある」と判断され、かつ、心拍数のモニタリングにより、客観的に被験者の心拍数が許容運動心拍数の範囲に収まるまで、徐々に運動負荷を低減させ、基準運動強度を設定する。このように設定された基準運動強度は、被験者の主観的に「当該運動を遂行できる見込みがある」と判断した運動強度であるため、リハビリテーションとして継続し易い運動強度であるといえる。また、このように設定された運動強度は、客観的な心拍数の判断基準により、より安全性の高い範囲に設定される。さらに、漸増ステージで増大させた運動強度から徐々に運動強度を低減させて設定されていることから、継続して実行し易く、且つ、安全性の高い範囲のなかで、よりリハビリテーションの効果の高い運動強度を設定することができる。
【0061】
まず、被験者は、胸部に心電図電極(心拍測定装置16)を装着し、双極誘導法により心電図を測定可能とした。そして被験者は、自転車エルゴメーターに着座し、運動時の心拍(HR)を測定しながら、工程S1に示されるように、ペダル強度を初回運動負荷(Lwarm-up)として、所定の初回運動(ウォーミングアップ)を開始する。図3中のL1は、初回運動における運動強度を意味している。運動療法の現場においては、持久力の改善等を目的として、自転車エルゴメーターを用いて運動負荷(仕事量)を20~120W程度とする駆動トレーニングが広く行われている。本例では、被験者が循環器疾患患者であることから、工程S1において、制御装置20は、自転車エルゴメーターの初回運動負荷(Lwarm-up)を10Wと十分に低い値にするように、負荷制御装置14に指示を送る。これにより、被験者は、抵抗感なく初回運動を開始することができる。また、本例の初回運動における駆動速度は50回転/分を目安とし、初期の運動継続時間を3分間としている。しかしながら、基準運動強度の測定における自転車エルゴメーターの初回運動負荷、駆動速度、および初回運動の運動継続時間はこれに限定されない。たとえば、制御装置20は、被験者が健常者や定期的な運動経験者である場合、十分に安全が確認できる場合等には、初回運動負荷(Lwarm-up)を、10Wを超える値、例えば10~60W程度(一例として、20W以上や30W以上、40W以上等であり、60W以下、50W以下程度)等に設定するよう構成されていてもよい。同様に、制御装置20は、駆動速度を例えば60回転/分等の他の速度としてもよいし、初回運動の運動継続時間を、例えば5分間等と他の時間に設定してもよい。運動強度記憶部21は、自転車エルゴメーターに設定されている初回運動の運動負荷L1を記憶する。
【0062】
そして工程S2において、制御装置20は、被験者に、工程S1で実施している初回運動強度の運動の継続に対する自己効力感を、自己効力感入力装置12に入力させる。本例では、被験者が工程S1を終了後に、スムーズに後述する工程S4またはS5の運動に移行できるように、自己効力感入力装置12は、例えば工程S1における初期の運動継続時間が例えば1.5分間(1/2)を経過したあたりで、自己効力感の入力を促すように構成されている。具体的には、例えば、運動継続についての自己効力感を尋ねる質問と、回答の選択肢とを、自己効力感入力装置12のタッチパネル式の液晶画面に表示させるように構成されている。ここでは、表2に示す質問と回答の選択肢を液晶画面に表示し、被験者に入力させた。
【0063】
【表2】
【0064】
本例では、質問として、当該運動強度による運動の継続についての自己効力感を尋ねるようにしている。また、本例では、自己効力感についての回答の選択肢が4つ用意されており、そのうち肯定的な回答の選択肢が2つ含まれている。肯定的な回答は、強い肯定感を示す第1の選択肢と、第1の選択肢よりは肯定的な程度が低い第2の選択肢とを含んでいる。また、回答の選択肢は、他に、否定的な回答の選択肢を1つ(第4の選択肢)と、回答不能の選択肢を1つ含んでいる(第3の選択肢)。ただし、自己効力感の入力を促す表示の内容やタイミング等はこの例に限定されない。自己効力感入力装置12は、被験者により入力された自己効力感の程度を、例えば制御装置20の記憶部に記憶させる。
【0065】
また、工程S2において、SE判定部22は、被験者が入力した自己効力感が、「当該運動を遂行できる見込みがある」と評価できるか否かを判断する。本例では、被験者が、肯定的な程度が強い第1の選択肢「1.強くそう思う」を選択した場合に、被験者が「当該運動を遂行できる見込みがある」と認知している、つまり「Yes」と評価するようにしている。そして、被験者が、第1の選択肢以外の、第2~4の選択肢を選択した場合に、被験者が「当該運動を遂行できる見込みがある」とは認知していない、つまり「No」と評価するようにしている。SE判定部22の判断が「Yes」の場合は工程S3に進む。SE判定部22の判断が「No」の場合は工程S5に進む。
【0066】
工程S3において、心拍判定部23は、心拍測定装置16によって初回運動時(例えば、上記SE判定時)に測定されたユーザの心拍数(heart rate:HR)が、「当該運動を遂行しても安全である」と評価できるか否かを判断する。換言すると、自己効力感という主観的指標に加えて、HRという客観的指標により、運動負荷を増大してもよいかどうかを判断する。本例では、予め測定されている被験者の安静時心拍数(HRat rest)と被験者の状態とから、下記の表3および4に示す、第1および第2の許容運動時心拍数(HRex1、HRex2)を設定している。そして、この漸増ステージでは、運動時の心拍数(運動時HR)が第1の許容運動時心拍数(HRex1)よりも低い場合(運動時HR<HRex1)に、「当該運動を遂行しても安全である」、つまり「Yes」と評価するようにしている。そして、運動時HRが第1の許容運動時心拍数(HRex1)と同じかより高い場合(運動時HR≧HRex1)に、「当該運動を遂行しても安全である」とは判断しない、つまり「No」と評価するようにしている。心拍判定部23の判断が「Yes」の場合は工程S4に進む。心拍判定部23の判断が「No」の場合は工程S5に進む。本例において、第1の許容運動時心拍数(HRex1)は、被験者の安静時心拍数(3とおり)と、β遮断薬の服用の有無(2とおり)と、を考慮して、計6通りに設定されている。なお、表3および4に示す第2の許容運動時心拍数(HRex2)は、工程S7での判断基準であり、後述する。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
なお、上記表3および4に示す心拍数(HR)は、例えば、ユーザが循環器疾患等の患者である場合に、医師等の医療者の判断で他の任意の値に変更してもよい。また、例えば、ユーザが健常者である場合にも、表3および4に示す心拍数(HR)を、医師等の医療者の判断で他の任意の値に変更してもよい。
【0070】
工程S4は、初回運動に引き続いて実施される漸増ステージの運動である。図3中のL2は、漸増ステージにおける自転車エルゴメーターに設定される運動負荷である。また、「L1→L2」は、初回運動から漸増ステージまたは漸減ステージへの移行に際し、計算上、初回運動負荷L1を漸増ステージ運動負荷L2に置き換えることを意味する。漸増ステージにおけるシーケンスで、運動負荷が既にL2(>L1)となっている場合は、運動負荷の置き換えは行われない。負荷増大部24は、SE判定部22および心拍判定部23の判断に基づいて、自転車エルゴメーターの運動負荷L2を、初回運動における運動負荷L1に対して、所定の増分ΔL1だけ増大させる。そして被験者は、初回運動に引き続き、増大された運動負荷L2にて漸増ステージにおける運動を実施する。本例では、運動強度の増分ΔL1を、初回運動時の初回運動負荷(Lwarm-up)と同じ大きさとしている。また、漸増ステージにおける駆動速度は50回転/分を目安とし、運動継続時間を2分間としている。しかしながら、漸増ステージの運動強度の増分ΔL1や、駆動速度、運動継続時間はこれに限定されない。例えば、増分ΔL1は、被験者の状態等に応じて、5~30W程度の範囲で任意の値に設定することができる。漸増ステージの運動継続時間は、例えば、初回運動の運動継続時間よりも短い時間(例えば、1分間以上3分間未満、好ましくは2分間以上2.5分間以下)で適宜設定することができる。工程S4が終了すると、再び工程S2に進む。運動強度記憶部21は、この工程S4における運動強度を記憶する。
【0071】
2回目以降の工程S2では、被験者が工程S4の運動を終了後に、スムーズに再度工程S4または後述するS5の運動に移行できるように、自己効力感入力装置12は、例えば工程S4における漸増ステージの運動継続時間が例えば1.5分間(3/4)を経過したあたりで、自己効力感の入力を促すように構成されていてもよい。そしてSE判定部22は、被験者が入力した自己効力感が、「当該運動を遂行できる見込みがある」と評価できるか否かを判断する。また、2回目以降の工程S3では、心拍判定部23は、工程S4における漸増ステージの運動中の所定のタイミング(例えばSE判定時)で、心拍測定装置16によって測定されたユーザの運動時の心拍数(HR)が、ユーザの体調もしくは投与薬剤等に応じて、「当該運動を遂行しても安全である」と評価できる任意の値を設定するように構成されていてもよい。そして、SE判定部22および心拍判定部23がいずれも「Yes」と判断した場合に、再度工程S4に進み、漸増ステージを繰り返す。運動強度記憶部21は、工程S4における運動強度が増大されるたび、当該増大された運動強度を記憶する。即ち、漸増ステージが繰り返されるたびに、所定の増分ΔL1が運動負荷に加算される。SE判定部22および心拍判定部23の少なくとも一方が「No」と判断した場合は、工程S5に進み、漸増ステージを終了して漸減ステージに移行する。
【0072】
工程S5は、漸増ステージに引き続いて実施される漸減ステージの運動である。図3中のL3は、漸減ステージにおける自転車エルゴメーターに設定される運動負荷である。負荷低減部25は、SE判定部22および心拍判定部23の判断に基づいて、自転車エルゴメーターの運動負荷L3を、直前の漸増ステージでの運動における運動負荷L2に対して、所定の減分ΔL2だけ低減させる。そして被験者は、漸増ステージの運動に引き続き、低減された運動負荷L3にて漸減ステージにおける運動を実施する。本例では、運動強度の減分ΔL2を、初回運動時の初回運動負荷(Lwarm-up)の1/2としている。また、漸減ステージにおける駆動速度は50回転/分を目安とし、運動継続時間を1分間としている。しかしながら、漸減ステージの運動強度の減分ΔL2や、駆動速度、運動継続時間はこれに限定されない。例えば、減分ΔL2は、被験者の状態等に応じて、1~50W程度の範囲で任意の値に設定することができる。漸減ステージの運動継続時間は、例えば、漸増ステージの運動継続時間よりも短い時間(例えば、0.5分間以上2分間以下、好ましくは0.5分間以上1.5分間以下)で適宜設定することができる。工程S5が終了すると、工程S6に進む。運動強度記憶部21は、この工程S5における運動強度を記憶する。
【0073】
工程S6は、工程S2と同様であり、制御装置20は、被験者に、工程S5で実施している漸減ステージの運動の継続に対する自己効力感を、自己効力感入力装置12に入力させる。本例では、被験者が工程S5を終了後に、スムーズに次工程に移行できるように、自己効力感入力装置12は、例えば工程S5における運動継続時間が例えば40秒間(1/3)を経過したあたりで、自己効力感の入力を促すように構成されていてもよい。自己効力感の入力を促す表示の内容やタイミング等は、工程S2と同様であるために重ねての説明は省略する。自己効力感入力装置12は、被験者により入力された自己効力感の程度を、例えば制御装置20の記憶部に記憶させる。
【0074】
そしてSE判定部22は、被験者が入力した自己効力感が、「当該運動を遂行できる見込みがある」と評価できるか否かを判断する。SE判定部22による判断についても工程S2と同様であるため、重ねての説明は省略する。SE判定部22の判断が「Yes」の場合は工程S7に進む。SE判定部22の判断が「No」の場合は工程S8に進む。
【0075】
工程S7において、心拍判定部23は、心拍測定装置16によって工程S5の漸減ステージの運動時(例えば、上記SE判定時)に測定されたユーザの運動時HRが、「当該運動を遂行しても安全である」と評価できるか否かを判断する。換言すると、自己効力感という主観的指標に加えて、HRという客観的指標により、運動負荷を増大してもよいかどうかを判断する。本例では、上述のように許容運動時心拍数(HRex1、HRex2)を設定している。そして、この漸減ステージでは、運動時HRが第2の許容運動時心拍数(HRex2)と同じかより低い場合(運動時HR≦HRex2)に、「当該運動を遂行しても安全である」、つまり「Yes」と評価するようにしている。そして、運動時HRが第2の許容運動時心拍数(HRex2)よりも高い場合(運動時HR>HRex2)に、「当該運動を遂行しても安全である」とは判断しない、つまり「No」と評価するようにしている。心拍判定部23の判断が「Yes」の場合は工程S9に進む。心拍判定部23の判断が「No」の場合は工程S8に進む。
【0076】
工程S8は、繰り返し実施される漸減ステージの運動である。工程S8において、負荷低減部25は、SE判定部22および心拍判定部23の判断に基づいて、自転車エルゴメーターの運動負荷L3を、直前の漸減ステージでの運動における運動負荷L3に対して、所定の減分ΔL3だけ低減させる。そして被験者は、引き続き、低減された運動負荷L3にて漸減ステージにおける運動を実施する。本例では、運動強度の減分ΔL3を、初回運動時の初回運動負荷(Lwarm-up)の1/2としている。また、漸減ステージにおける駆動速度は50回転/分を目安とし、運動継続時間を1分間としている。しかしながら、漸減ステージの運動強度の減分ΔL3や、駆動速度、運動継続時間はこれに限定されない。工程S8が終了すると、再び工程S6に進む。運動強度記憶部21は、この工程S8における運動強度を記憶する。
【0077】
2回目以降の工程S6では、2回目以降の工程S2と同様に、被験者が工程S8の運動を終了後に、スムーズに次工程に移行できるように、自己効力感入力装置12は、例えば工程S8における漸減ステージの運動継続時間が例えば40秒間(1/3)を経過したあたりで、自己効力感の入力を促すように構成されていてもよい。そしてSE判定部22は、被験者が入力した自己効力感が、「当該運動を遂行できる見込みがある」と評価できるか否かを判断する。また、2回目以降の工程S7では、心拍判定部23は、工程S8における漸減ステージの運動中の所定のタイミング(例えばSE判定時)で、心拍測定装置16によって測定されたユーザの運動時HRが、「当該運動を遂行しても安全である」と評価できるか否かを判断するように構成されていてもよい。そして、SE判定部22および心拍判定部23の少なくとも一方が「No」と判断した場合に、工程S8に進み、漸減ステージを繰り返す。運動強度記憶部21は、工程S8における運動強度が低減されるたび、当該低減された運動強度を記憶する。SE判定部22および心拍判定部23の両方が「Yes」と判断した場合は、工程S9に進み、漸減ステージを終了する。
【0078】
工程S9では、基準運動強度設定部26は、運動負荷装置10に設定されている運動強度を基準運動強度とする。運動負荷装置10に設定されている運動強度とは、例えば、運動強度記憶部21が最後に記憶した運動強度である。これにより、CPXを行うことなく、AT強度に対応する基準運動強度を決定することができる。ただし、上記基準運動強度の設定工程において、下肢疲労、不整脈、心電図のST部の低下等の症状が見られたときは、設定工程を終了するとよい。
【0079】
次いで、図4に示すアルゴリズムに沿って、高運動強度を設定した。このアルゴリズムは、工程S11~S13で構成されている。工程S11では、第1の判断基準に基づき被験者を分類し、工程S12では、第2の判断基準に基づき被験者を分類する。このアルゴリズムは、基準運動強度が設定された後に実行される。このアルゴリズムは、上述の工程S9から連続的に実行されてもよく、別途実行されてもよい。ここでは、上記工程9で基準運動強度の設定後、連続的に実行されている。
【0080】
工程S11では、工程S1およびS7で被験者により入力された自己効力感の程度に基づき、被験者を分類する。具体的には、工程S1およびS7の両方を通じて、自己効力感の程度の入力に対するSE判定部22の判断が全て「Yes」の場合と、少なくとも1回以上「No」である場合とで被験者を分類する。ここでは、表2に示す選択肢のうち「1.強くそう思う」を選択した場合を「Yes」と判断するように設定されているため、工程S11では、SEの程度について選択肢1のみを選択した被験者を「Yes」、SEの程度について選択肢2~4を1回以上選択した被験者を「No」に分類し、工程S12に進む。ここで「Yes」に分類される被験者は、主観的な運動の持続可能性は高い一方で、客観的な運動の持続可能性が伴っていないと判断でき得る。そのため、工程S11では、主観的な運動の持続可能性と客観的な運動の持続可能性との乖離が生じやすい被験者か否かを分類することができる。
【0081】
工程S12では、運動耐容能に対応する評価指標に基づいて被験者を分類する。ここでは、かかる評価指標として、SEW-7が採用されている。制御装置20の記憶部には、上述のpeak VO≧14(mL/min/kg)を予想するSEW-7のカットオフ値が設定されている。運動耐容能判定部27は、被験者のSEW-7の結果がSEW-7≧26である場合を「Yes」、SEW-7<26の場合を「No」と判断する。なお、被験者のSEW-7の結果の入力は、工程S12の実行前であれば特に限定されず、図3に示す基準運動強度設定のためのアルゴリズムの実行前であってもよく、基準運動強度決定後であってもよい。ここでは、図3に示すアルゴリズムの実行前に入力されている。なお、SEW-7以外にも、上述した運動耐容能に対応する評価指標が設定され得る。
【0082】
工程S13では、工程S11およびS12による分類に基づき、高運動強度設定部28により高運動強度が設定される。工程S11で「No」、かつ、工程S12で「Yes」に分類された群(以下、「第1の群」ともいう)では、以下の式:
高運動強度(W)=10+1.2×基準運動強度(W)
により、高運動強度が設定される。式中の基準運動強度は、工程S9で設定された運動強度を意味する(以下、他の群も同じ)。かかる式は、上述のCPXの結果に基づいて設定された、peak VO≧14(mL/min/kg)の群に対してのHITにおける高運動強度を求める式である。第1の群では、主観的な運動の持続可能性と、客観的な運動の持続可能性とが乖離しておらず(即ち、自身の身体の状態を判断できている)、運動耐容能が比較的高いため、分類された4群の中で最も高運動強度が高く設定されている。
【0083】
工程S13において、工程S11で「No」、かつ、工程S12で「No」に分類された群(以下、「第2の群」ともいう)では、以下の式:
高運動強度(W)=1.3×基準運動強度(W)
により、高運動強度が設定される。かかる式は、上述のCPXの結果に基づいて設定された、peak VO<14(mL/min/kg)の被験者に対してのHITにおける高運動強度を求める式である。第2の群では、この群では、主観的な運動の持続可能性と、客観的な運動の持続可能性とが乖離していないが、運動耐容能が比較的低いため、第1の群よりも高運動強度が低く設定されている。
【0084】
工程S13において、工程S11で「Yes」、かつ、工程S12で「Yes」に分類された群(以下、「第3の群」ともいう)では、以下の式:
高運動強度(W)=0+1.2×基準運動強度(W)
により、高運動強度が設定される。かかる式は、第1の群に設定された高運動強度よりも10W低くなるように設定されている。これは、第3の群の運動耐容能は第1の群と同様に比較的高いが、主観的な運動の持続可能性と、客観的な運動の持続可能性とが乖離している虞があるため、被験者の安全性を考慮している。なお、ここでは第1の群よりも10W低くなる設定となっているが、特に限定されるものではなく、例えば、5W~15W程度低く設定されてもよい。
【0085】
工程S13において、工程S11で「Yes」、かつ、工程S12で「No」に分類された群(以下、「第4の群」ともいう)では、高運動強度が設定されないように設定されている。第4の群に分類される被験者は、運動耐容能が比較的低い被験者が、主観的な運動の持続可能性と、客観的な運動の持続可能性とが乖離している虞がある状態で高強度運動を実行するのはリスクが高いと考えられるからである。そのため、第4の群に分類された場合には、被験者の応答の適切性等を検討する必要がある。
【0086】
以上のようにして、被験者13人の高運動強度を設定した。被験者13人の分類の内訳は、第1の群に10人、第2の群に2人、第3の群に1人、第4の群に0人であった。また、この被験者13人のCPXによって測定されたpeak VOを用いて、工程S12のおける分類基準をpeak VO≧14(mL/min/kg)とした場合であっても、第1の群~第4の群への分類が同じになることが確認できた。そのため、CPX等によりpeak VOを測定することなく、SEW-7のような簡便な方法で精度の高い分類が実施できることが確かめられた。
【0087】
次に、上記のように設定された高運動強度および基準運動強度に基づいたHITの実行可能性について検討した。HITの運動中止判定基準は以下の項目1~6の項目とし、いずれかの項目にも該当しない被験者が全体の80%以上であれば、HITの「実行可能性あり」と判断することができる。
【0088】
(運動中止判定基準)
1.高強度運動時の心拍数が、低強度運動時の心拍数よりも30bpm以上増加する。
(ただし、β遮断薬服用患者の場合は20bpm以上の増加とする。)
2.収縮期血圧(SBP)について:
・連続して2回、高強度運動時のSBPが、低強度運動時のSBPよりも20mmHg 以上増加する。
・高強度運動時のSBPが、低強度運動時のSBPよりも10mmHg以上低下する。
3.胸痛が出現する。
4.重症不整脈(Lown分類III以上)または新規心房細動が出現する。
5.ペダルが回せなくなる。
6.被験者から中止の希望がある。
【0089】
HITは自転車エルゴメーターを用いて実施し、被験者の心拍数、血圧をモニタリングしながら行った。HITのメニューは、図5で示すものと同様とした。即ち、2分間の安静期を設けた後、ペダル負荷10W、3分間のウォーミングアップを行った。その後、低強度(基準運動強度-10W)の運動を2分間行った後、1分間の高強度(高運動強度)の運動と3分間の低強度の運動を繰り返し行い、5回目の高強度の運動後にペダル負荷を10Wまで減少し、2~3分間のクールダウン運動を行い、運動を停止した。
【0090】
この結果、被験者13人中12人(約92%)が上記運動中止判定基準の項目1~6のいずれにも該当しなかったため、上記アルゴリズムで設定された高運動強度および基準運動強度に基づくHITは、「実行可能性あり」と判断された。
【0091】
以上のように、本技術によれば、ユーザに適した基準運動強度および高運動強度を安全性の高い範囲で設定することができる。また、かかる基準運動協および高運動強度に基づくHITの実行可能性が高いことから、本技術は、例えば、循環器疾患患者のリハビリテーションや、フレイル(加齢に伴う健常状態から要介護状態へ移行する中間段階)の予防や回復等に好適に利用することができる。
【0092】
以上、本技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、図4における高運動強度設定のアルゴリズムにおいて、工程S11と工程S12とは、必ずしもこの順番で処理される必要はなく、逆になるように設定されていてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 運動強度設定システム
10 運動負荷装置
12 自己効力感入力装置
14 負荷制御装置
16 心拍測定装置
20 制御装置
21 運動強度記憶部
22 自己効力感判定部
23 心拍判定部
24 負荷増大部
25 負荷低減部
26 基準運動強度設定部
27 運動耐容能判定部
28 高運動強度設定部
30 第2制御装置
100 運動支援システム
図1
図2
図3
図4
図5