(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085599
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】微小電力無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 5/02 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
H04B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199717
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】515226803
【氏名又は名称】株式会社アドバンストアールエフデザイン
(72)【発明者】
【氏名】田中 喜好
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AB05
5K012AB19
5K012AC09
5K012AC11
5K012AC12
5K012AE02
5K012BA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】消費電力の低減を実現し、更に大幅に受信感度を向上した受信機を用いて通信距離を確保した無線通信システムを提供する。
【解決手段】送信機32は、二次変調によりスペクトラム拡散された送信波33を送信する。再送信端末34は、再送信波35を送信する。受信機59は、受信アンテナ36で送信波33と再送信波35を受信し、両者を乗算器41で乗算した後、LPF42で低域周波数成分を取り出し、キャリア再生回路43により再生キャリアを作り出し、この再生キャリアを用いて位相復調器45で復調データ57を取り出す。受信機59は更に、送信機の二次変調に用いた符号と同一の符号を発生する符号発生器52の出力と受信信号との相関を相関検出器53で求め、復調データ56を復調することにより拡散利得を得る。これにより、低い受信信号レベルでも受信が可能となる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の送信情報を変調した一次変調出力を特定の符号で二次変調し、当該二次変調出力を無線送信する送信手段と、
第二の送信情報を変調した変調出力によって駆動される非線形素子と当該非線形素子に接続されるアンテナを有する再送信手段と、
前記再送信手段により送信される再送信無線信号と、前記二次変調で用いる特定の符号と同一の符号との相関を検出し、当該相関検出出力から第一の送信情報を復調する第一の受信手段と、
前記再送信手段により送信された再送信無線信号と、前記送信手段で送信された無線信号を乗算し、乗算出力から第二の送信情報を復調する第二の受信手段を有することを特徴とする微小電力無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は極めて小さな電力を用いて無線通信により情報を伝送するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
あらゆるものが通信ネットワークで接続されるIoT(Internet of Things)において、無線通信は有線配線を不要とすることから有用な通信手段と考えられる。
【0003】
無線通信を行うためには、伝送しようとする情報データを高周波信号に変調して、電波として送信する必要がある。高周波信号を発生する発振回路を動作させるには電力が必要であり、特に周波数が高くなるほど必要とする電力が増す。集積回路内のCMOSゲートはゲートのON/OFFの繰り返しでゲート内部の静電容量への充放電が行われることとなるため、繰返し数すなわち周波数が高くなるほど消費電流が多くなる。
【0004】
消費電力が大きくなればそれに応じて容量の大きな電池が必要となり、物に通信機能を持たせる機器を付属させる上で、電池の大きさは重要な課題となる。様々な物に通信機能を持たせることを考えれば、電池の大きさは出来る限り小さくすることが望まれる。即ち、無線通信機器の消費電力をできる限り低くすることが望まれることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
情報データを送信する従来の無線送信機は、
図1に示すように、搬送波(キャリア)1を発生させるキャリア発振器2と情報データ3を変調する変調器4と送信するのに必要な出力まで増幅する電力増幅器5と送信アンテナ6から成る。送信機の消費電力に影響するものとして、送信機内部回路の動作周波数がある。この動作周波数は送信機の搬送波周波数(キャリア周波数)に相当する。しかしながら、無線通信に使用する周波数は極めて高く、搬送波周波数を低くするわけにはいかないため、高周波で動作する回路を如何に少なくするかが課題となる。
【0006】
一方で、消費電力を下げるためには、送信出力電力も大幅に低下させる必要がある。電波が自由空間伝搬する場合、受信電力は距離の二乗に反比例することから、無線通信可能な距離は送信電力の二乗に比例することとなり、送信電力の低下は更に大幅な通信距離の低下を招くこととなる。送信電力の低下に伴う通信距離の低下を防ぐためには、受信感度の向上が必要となってくる。
【0007】
本発明は上記課題を解決し、消費電力の低減を実現し、更に大幅に受信感度を向上した受信機を用いて通信距離を確保した無線通信システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明では、
図2に示すような概略構成とし、送信機7と受信機12及び、再送信端末10から成り、送信機7からの送信波8をアンテナ9で受けて再送信端末10によってふたたびアンテナ9から再送信波11を送信し、受信機12により受信を行う。
【0009】
再送信端末の構成は
図3に示すように、発振回路18で生成した搬送波19に変調器17で情報データ20を変調し、その変調出力16を非線形素子15加える。非線形素子としては半導体のダイオードやトランジスタなどを用いることができる。非線形素子15にはアンテナ13が接続され、アンテナ13で受信された高周波電流14が非線形素子内に流れる。非線形素子15は変調出力16で駆動されるとともに、その非線形性により高周波電流に高次の歪成分を生じる。この歪成分はアンテナ13による受信された高周波成分に変調出力16を更に変調したものとなる。この変調された成分が再度アンテナ13から再送信される。
【0010】
搬送波19の周波数は、アンテナ13を介して無線で送受信される高周波の周波数f0に比べて極めて低い値f1とすることで、発振回路18および変調器17を低い動作周波数とし、結果として回路の消費電力を低減することが可能となる。
【0011】
再送信される高周波信号のスペクトラムは
図4に示すように、送信機から送信される送信波21の周波数f0に対し、上下f1の周波数離れた再送信波22および再送信波23から成る。この上下f1の周波数離れた再送信波の一方を受信機で受信する。
【0012】
再送信波22または23は、アンテナ13で受信される受信電力よりも低い値で再送信されるため、受信機で受信されるレベルは極めて低い値となる。このような低いレベルでも信号が受信できるようにするため、送信機および受信機を次に示す構成とする。
【0013】
無線信号を送る送信機は、送信情報として自身の個別IDを含むデータを変調した信号に、特定の符号パターンの二次変調を行う。再送信端末から再送信される信号を受信する受信機では、受信信号波形と、当該特定符号パターンとの相関検出を行い、同一符号パターンに対して大きな相関値ピークを生じ、いわゆる相関利得を得て、結果として雑音電力よりも低い信号レベルでも受信が可能となるまで受信感度を向上させることができる。
【0014】
再送信端末において、情報データを変調した変調出力16で非線形素子15を駆動することによって再送信される信号は、送信機の送信信号にこの変調出力16を更に変調した信号になる。送信機の一次変調と二次変調に加えて三重に変調された信号となり、単純な復調では、再送信端末の情報データを復調することはできない。
【0015】
送信機からの送信波は、周波数f0の搬送波に一次及び二次変調された信号x(t)で変調された信号と考えられる。
図4から明らかなように、再送信端末からの再送信波は、周波数(f0- f1)の搬送波にx(t)が変調された信号と考えられる。送信機からの送信波と再送信端末からの再送信波を乗算すると、x2(t)を振幅とした2つの周波数成分との積となる。2つの周波数成分の積は、三角関数の積を和に分解すると、周波数成分2f0との周波数成分f1となる。2f0は高い周波数成分であるため、乗算出力に低域通過フィルタ(LPF)を通過させることで、f1の周波数成分のみを取り出すことができる。
【0016】
送信機の一次及び二次変調信号を2値(1または-1)のディジタル符号とすれば、x2(t)は振幅1の直流となり、LPF通過後の信号は周波数f1の正弦波となる。実際の再送信波は極めて低い周波数成分の情報データで変調されているため、LPF通過後の信号は周波数f1の搬送波にこの情報データが変調された信号となる。この信号を復調することで、情報データを受信機で再生することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、極めて低い消費電力で動作させた再送信端末によって、送信機からの送信波を、情報データが変調された変調信号で更に変調して再送信し、再送信された極めて低いレベルの信号を受信機で受信する際に、送信機で二次変調される特定符号パターンとの相関検出を行うことで受信感度の大幅な向上を行うことで受信することを可能とするとともに、送信機からの送信波と再送信端末からの再送信波を乗算処理することで、再送信端末からの情報データも復調できるようになる。
【0018】
再送信端末の内部動作周波数を低くし、消費電力を大幅に低下させることで、必要な電池を小型化できるとともに、電池寿命の大幅な長期化が可能となり、様々な物に取り付けて無線通信により情報を送ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例0021】
図5は本発明の実施例を示したもので、大きく分けて送信機32、受信機59および再送信端末34から構成される。
【0022】
送信機32では、自身のIDを含む送信情報24を発振器25で発振した搬送波26に一次変調器27で変調を施し、その後、符号発生器28により発生する特定のパターンの符号により二次変調器29で変調を施し、電力増幅器30で増幅した後に送信アンテナ31から送信波33として送信する。
【0023】
再送信端末34で再送信された再送信波35は、受信機59の受信アンテナ46で受信された後、LNA(Low Noise Amplifier)47で増幅された後にミクサ50に入力され、発振器48の発振出力で周波数変換され、フィルタ51で目的とする周波数成分のみを通過させる。この目的とする周波数は、送信波33の周波数f0から再送信端末の搬送波周波数f1だけ離れた周波数とする。フィルタ51の出力は相関検出器53で符号発生器52により発生した符号パターンとの相関検出を行う。このとき符号発生器52で発生する符号パターンは送信機32の符号発生器28で発生する符号パターンと同一のものとすることで、雑音や干渉妨害が有っても相関値が得られるいわゆる相関利得を生じる。相関検出器53の出力は、その後データ復調器55で復調され、復調データ56を出力し、制御回路58に入力されて、送信機の送信情報24が通知されることとなる。このとき、制御回路58は、受信機59が目的とする受信周波数の周波数設定データ49を発振器48に設定するとともに、相関検出を行うための符号パターンの符号設定データ54を符号発生器52に設定する。
【0024】
受信アンテナ36で受信された送信波33及び再送信波35は、それぞれ帯域通過フィルタ(BPF)37または38を通過した後に、増幅器39または40で増幅され、乗算器41に入力される。このときBPF37の通過周波数は送信機の搬送波26の周波数f0の周辺とし、BPF38の通過周波数は送信機の搬送波26の周波数f0から再送信端末の搬送波周波数f1だけ離れた周波数の周辺となる。乗算器41の出力は、低域通過フィルタ(LPF)42を通り、キャリア再生回路43に入力され、再生キャリア44を出力する。このとき、LPF42は再送信端末の搬送波周波数f1を通過させる遮断周波数のものとし、再生キャリア44はこの周波数f1を再生した出力となる。LPF42の出力は、位相復調器45に入力され、再生キャリア44を用いて位相復調を行い、復調データ57を出力する。
1:搬送波、2:キャリア発振器、3:情報データ、4:変調器、5:電力増幅器、6:送信アンテナ、7: 送信機、8: 送信波、9:アンテナ、10: 再送信端末、11: 再送信波、12: 受信機、13:アンテナ、14: 高周波電流、15: 非線形素子、16: 変調出力、17: 変調器、18: 発振回路、19: 搬送波、20: 情報データ、21:送信波、22:再送信波、23:再送信波、24:送信情報、25:発振器、26:搬送波、27:一次変調器、28:符号発生器、29:二次変調器、30:電力増幅器、31:送信アンテナ、32:送信機、33:送信波、34:再送信端末、35:再送信波、36:受信アンテナ、37:BPF、38:BPF、39:増幅器、40:増幅器、41:乗算器、42:LPF、43:キャリア再生回路、44:再生キャリア、45:位相復調器、46:受信アンテナ、47:LNA、48:発振器、49:周波数設定データ、50:ミクサ、51:フィルタ、52:符号発生器、53:相関検出器、54:符号設定データ、55:データ復調器、56:復調データ、57:復調データ、58:制御回路、59:受信機