(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085604
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】車載装置、接続切替方法および接続切替プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20230614BHJP
H04L 43/10 20220101ALI20230614BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
H04L43/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199722
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】後呂 翔太
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA05
5K033BA06
5K033CB06
5K033DB03
5K033EA02
(57)【要約】
【課題】車載装置における消費電力を抑え、かつ信頼性を高める。
【解決手段】車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、プロセッサと、通信ポートと、前記プロセッサに接続され、前記車載装置の外部から前記通信ポートを介して受信したフレームを前記プロセッサへ出力する第1通信IC(Integrated Circuit)と、前記プロセッサに接続され、前記通信ポートを介して受信したフレームが所定条件を満たす場合、受信した前記フレームを前記プロセッサへ出力する第2通信ICと、前記通信ポートの接続先を、前記第1通信ICと前記第2通信ICとの間で切り替える第1切替部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置であって、
プロセッサと、
通信ポートと、
前記プロセッサに接続され、前記車載装置の外部から前記通信ポートを介して受信したフレームを前記プロセッサへ出力する第1通信IC(Integrated Circuit)と、
前記プロセッサに接続され、前記通信ポートを介して受信したフレームが所定条件を満たす場合、受信した前記フレームを前記プロセッサへ出力する第2通信ICと、
前記通信ポートの接続先を、前記第1通信ICと前記第2通信ICとの間で切り替える第1切替部とを備える、車載装置。
【請求項2】
前記車載装置は、さらに、
前記第1通信ICと前記第1切替部との間に接続される第2切替部を備え、
前記第2切替部は、前記第1通信ICと前記第1切替部とが電気的に接続される状態と、前記第1通信ICと前記第2通信ICとが電気的に接続される状態とを切り替える、請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記第1切替部が前記第2切替部と前記通信ポートとを電気的に接続し、かつ前記第2切替部が前記第1通信ICと前記第2通信ICとを電気的に接続している状態において、前記第1通信ICおよび前記第2通信IC間でフレームを送受信させるループバック検査を行う、請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記第1通信ICは、CAN(Controller Area Network)トランシーバであり、
前記第2通信ICは、パーシャルネットワークに対応しているCANトランシーバである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記車両の走行が停止している状態において、前記ループバック検査を行う、請求項3に記載の車載装置。
【請求項6】
前記車両の走行している状態は、前記車両が駐車されている状態である、請求項5に記載の車載装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記ループバック検査において、前記第1通信ICへ出力したフレームを前記第2通信ICから受けることができるか否かを確認する第1検査、および前記第2通信ICへ出力したフレームを前記第1通信ICから受けることができるか否かを確認する第2検査を行い、前記第1検査の結果および前記第2検査の結果を前記車両の外部に設けられた外部装置へ通知する、請求項3に記載の車載装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記第1検査の結果および前記第2検査の結果を前記外部装置へ通知した後に、前記第1検査の結果および前記第2検査の結果に基づく指示を前記外部装置から受信した場合、前記指示に従って前記通信ポートの接続先を前記第1通信ICと前記第2通信ICとの間で切り替えるように前記第1切替部を制御する、請求項7に記載の車載装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、スリープ動作を行うことが可能であり、
前記プロセッサは、前記第1切替部が前記第1通信ICと前記通信ポートとを電気的に接続している第1の接続状態と、前記第1切替部が前記第2通信ICと前記通信ポートとを電気的に接続している第2の接続状態とにおいて、前記スリープ動作に関するモードを切り替える、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記第1の接続状態において、間欠的に起動するモードで動作し、前記第2の接続状態において、前記車載装置の外部からのフレームを前記第2通信ICから受けた場合に起動するモードで動作する、請求項9に記載の車載装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、間欠的に起動するモードで動作し、前記第2の接続状態における前記プロセッサの起動の周期は、前記第1の接続状態における前記プロセッサの起動の周期よりも長い、請求項9に記載の車載装置。
【請求項12】
車両に搭載される車載装置における接続切替方法であって、
前記車載装置は、
プロセッサと、
通信ポートと、
前記プロセッサに接続され、前記車載装置の外部から前記通信ポートを介して受信したフレームを前記プロセッサへ出力する第1通信ICと、
前記プロセッサに接続され、前記通信ポートを介して受信したフレームが所定条件を満たす場合、受信した前記フレームを前記プロセッサへ出力する第2通信ICと、
前記通信ポートの接続先を、前記第1通信ICと前記第2通信ICとの間で切り替える第1切替部とを備え、
前記通信ポートと前記第2通信ICとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御するステップと、
前記車載装置の状態が所定条件を満たす場合、前記通信ポートと前記第1通信ICとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御するステップとを含む、接続切替方法。
【請求項13】
車両に搭載される車載装置において用いられる接続切替プログラムであって、
前記車載装置は、
プロセッサと、
通信ポートと、
前記プロセッサに接続され、前記車載装置の外部から前記通信ポートを介して受信したフレームを前記プロセッサへ出力する第1通信ICと、
前記プロセッサに接続され、前記通信ポートを介して受信したフレームが所定条件を満たす場合、受信した前記フレームを前記プロセッサへ出力する第2通信ICと、
前記通信ポートの接続先を、前記第1通信ICと前記第2通信ICとの間で切り替える第1切替部とを備え、
コンピュータを、
前記通信ポートと前記第2通信ICとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御し、前記車載装置の状態が所定条件を満たす場合、前記通信ポートと前記第1通信ICとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御する制御部、
として機能させるための、接続切替プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置、接続切替方法および接続切替プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される車載装置の機能の高度化に伴い、車載装置における処理負荷および通信負荷が増加する傾向にあり、車載装置における消費電力を抑えるための技術が開発されている。たとえば、特開2015-081021号公報(特許文献1)には、以下のような車載ネットワークシステムが開示されている。すなわち、車載ネットワークシステムは、パーシャルネットワークに対応したネットワークマネージメントに基づいて通常モードと、スリープモードとを選択的に実行する機能を有する複数のECUと、管理ECUとを備える。各ECUは、管理ECUの電源リレーによって個別に電源をオン/オフできるようになっている。管理ECUは、通信バスを介して取得した情報に基づいて車両の状況に該当するシーンを特定し、特定したシーンに対応する特定のECUについて、電源のオン/オフを切替える制御内容を決定する。そして、決定した制御内容に基づき、電源リレーのスイッチを操作して、特定のECUの電源のオン/オフを切替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-081021号公報
【特許文献2】特開2014-227060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような特許文献1に記載の技術を超えて、車載装置における消費電力を抑え、かつより信頼性の高い技術が求められる。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、車載装置における消費電力を抑え、かつ信頼性を高めることのできる車載装置、接続切替方法および接続切替プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、プロセッサと、通信ポートと、前記プロセッサに接続され、前記車載装置の外部から前記通信ポートを介して受信したフレームを前記プロセッサへ出力する第1通信IC(Integrated Circuit)と、前記プロセッサに接続され、前記通信ポートを介して受信したフレームが所定条件を満たす場合、受信した前記フレームを前記プロセッサへ出力する第2通信ICと、前記通信ポートの接続先を、前記第1通信ICと前記第2通信ICとの間で切り替える第1切替部とを備える。
【0007】
本開示の接続切替方法は、車両に搭載される車載装置における接続切替方法であって、前記車載装置は、プロセッサと、通信ポートと、前記プロセッサに接続され、前記車載装置の外部から前記通信ポートを介して受信したフレームを前記プロセッサへ出力する第1通信ICと、前記プロセッサに接続され、前記通信ポートを介して受信したフレームが所定条件を満たす場合、受信した前記フレームを前記プロセッサへ出力する第2通信ICと、前記通信ポートの接続先を、前記第1通信ICと前記第2通信ICとの間で切り替える第1切替部とを備え、前記通信ポートと前記第2通信ICとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御するステップと、前記車載装置の状態が所定条件を満たす場合、前記通信ポートと前記第1通信ICとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御するステップとを含む。
【0008】
本開示の接続切替プログラムは、車両に搭載される車載装置において用いられる接続切替プログラムであって、前記車載装置は、プロセッサと、通信ポートと、前記プロセッサに接続され、前記車載装置の外部から前記通信ポートを介して受信したフレームを前記プロセッサへ出力する第1通信ICと、前記プロセッサに接続され、前記通信ポートを介して受信したフレームが所定条件を満たす場合、受信した前記フレームを前記プロセッサへ出力する第2通信ICと、前記通信ポートの接続先を、前記第1通信ICと前記第2通信ICとの間で切り替える第1切替部とを備え、コンピュータを、前記通信ポートと前記第2通信ICとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御し、前記車載装置の状態が所定条件を満たす場合、前記通信ポートと前記第1通信ICとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御する制御部、として機能させるためのプログラムである。
【0009】
本開示の一態様は、車載装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、車載装置を含むシステムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、車載装置における消費電力を抑え、かつ信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る車載装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係る車載装置における第1切替部の切り替え動作を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係る車載装置における第2切替部の切り替え動作を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る車載装置がPNトランシーバ接続状態である場合におけるプロセッサの動作を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係る車載装置が通常トランシーバ接続状態である場合におけるプロセッサの動作を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る車載装置の接続状態の切り替えの動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態に係る車載装置のループバック検査の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載装置の構成を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載装置が通常トランシーバ接続状態である場合における、車載装置が各フレームを受けるタイミングと、車載装置におけるプロセッサの起動タイミングとの関係を示すタイムチャートである。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載装置がPNトランシーバ接続状態である場合における、車載装置が各フレームを受けるタイミングと、車載装置におけるプロセッサの起動タイミングとの関係を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の実施の形態に係る車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、プロセッサと、通信ポートと、前記プロセッサに接続され、前記車載装置の外部から前記通信ポートを介して受信したフレームを前記プロセッサへ出力する第1通信IC(Integrated Circuit)と、前記プロセッサに接続され、前記通信ポートを介して受信したフレームが所定条件を満たす場合、受信した前記フレームを前記プロセッサへ出力する第2通信ICと、前記通信ポートの接続先を、前記第1通信ICと前記第2通信ICとの間で切り替える第1切替部とを備える。
【0013】
このような構成により、たとえば、通常時においては、通信ポートと第2通信ICとを電気的に接続し、所定条件を満たすフレームがプロセッサに到着した場合に当該プロセッサが起動することにより、消費電力を抑えることができる。また、たとえば、第2通信IC等に不具合が生じた場合には、通信ポートと第1通信ICとを電気的に接続することにより、車載装置へのフレームをプロセッサにおいて処理することができる。したがって、車載装置における消費電力を抑え、かつ信頼性を高めることができる。
【0014】
(2)前記車載装置は、さらに、前記第1通信ICと前記第1切替部との間に接続される第2切替部を備えてもよく、前記第2切替部は、前記第1通信ICと前記第1切替部とが電気的に接続される状態と、前記第1通信ICと前記第2通信ICとが電気的に接続される状態とを切り替える。
【0015】
このような構成により、たとえば、第1通信ICおよび第2通信IC間でフレームを送受信させるループバック検査を行い、第2通信IC、または第2通信ICからのフレームを処理するプロセッサのソフトウェア等の不具合を検知することができる。
【0016】
(3)前記プロセッサは、前記第1切替部が前記第2切替部と前記通信ポートとを電気的に接続し、かつ前記第2切替部が前記第1通信ICと前記第2通信ICとを電気的に接続している状態において、前記第1通信ICおよび前記第2通信IC間でフレームを送受信させるループバック検査を行ってもよい。
【0017】
このような構成により、車載装置の外部からのフレームがプロセッサへ到着することを避けた状態でループバック検査を行うことができるため、より正確な検査結果を得ることができる。
【0018】
(4)前記第1通信ICは、CAN(Controller Area Network)トランシーバであってもよく、前記第2通信ICは、パーシャルネットワークに対応しているCANトランシーバであってもよい。
【0019】
このような構成により、CANに従った通信を行う車載装置において、消費電力を抑え、かつ信頼性を高めることができる。
【0020】
(5)前記プロセッサは、前記車両の走行が停止している状態において、前記ループバック検査を行ってもよい。
【0021】
このような構成により、車両の走行に対して、ループバック検査の影響が及ぶことを避けることができる。
【0022】
(6)前記車両の走行している状態は、前記車両が駐車されている状態であってもよい。
【0023】
このように、車両の走行が長時間にわたって停止している状態においてループバック検査を行う構成により、車両の走行に対してループバック検査の影響が及ぶことをより確実に避けることができる。
【0024】
(7)前記プロセッサは、前記ループバック検査において、前記第1通信ICへ出力したフレームを前記第2通信ICから受けることができるか否かを確認する第1検査、および前記第2通信ICへ出力したフレームを前記第1通信ICから受けることができるか否かを確認する第2検査を行い、前記第1検査の結果および前記第2検査の結果を前記車両の外部に設けられた外部装置へ通知してもよい。
【0025】
このように、第1検査および第2検査の両方を行う構成により、第2通信IC、または第2通信ICからのフレームを処理するプロセッサのソフトウェア等の不具合をより正確に検知することができる。また、検査の結果を車両の外部における外部装置へ通知する構成により、たとえば、車両の管理センタにおいて、当該車両における第2通信IC等の不具合を把握することができる。
【0026】
(8)前記プロセッサは、前記第1検査の結果および前記第2検査の結果を前記外部装置へ通知した後に、前記第1検査の結果および前記第2検査の結果に基づく指示を前記外部装置から受信した場合、前記指示に従って前記通信ポートの接続先を前記第1通信ICと前記第2通信ICとの間で切り替えるように前記第1切替部を制御してもよい。
【0027】
このような構成により、たとえば、種々の情報を把握可能な管理センタにおいて、車載装置における通信ポートの接続先をより適切に決定することができる。
【0028】
(9)前記プロセッサは、スリープ動作を行うことが可能であり、前記プロセッサは、前記第1切替部が前記第1通信ICと前記通信ポートとを電気的に接続している第1の接続状態と、前記第1切替部が前記第2通信ICと前記通信ポートとを電気的に接続している第2の接続状態とにおいて、前記スリープ動作に関するモードを切り替えてもよい。
【0029】
車載装置が第1の接続状態である場合と比較して、車載装置が第2の接続状態である場合の方が、プロセッサへのフレームの到着頻度が少なくなる可能性が高い。上記のような構成により、プロセッサへのフレームの到着頻度に応じた適切なモードでプロセッサを動作させることができるため、車載装置における消費電力を適切に抑えることができる。
【0030】
(10)前記プロセッサは、前記第1の接続状態において、間欠的に起動するモードで動作し、前記第2の接続状態において、前記車載装置の外部からのフレームを前記第2通信ICから受けた場合に起動するモードで動作してもよい。
【0031】
このような構成により、プロセッサにおいて、当該プロセッサに到着するフレームの処理を可能としつつ、車載装置における消費電力を適切に抑えることができる。
【0032】
(11)前記プロセッサは、間欠的に起動するモードで動作し、前記第2の接続状態における前記プロセッサの起動の周期は、前記第1の接続状態における前記プロセッサの起動の周期よりも長くてもよい。
【0033】
このように、車載装置の接続状態が第1の接続状態および第2の接続状態のいずれである場合においてもプロセッサが間欠的に起動する構成により、プロセッサにおいて、第1通信ICおよび第2通信ICのいずれも経由しないフレームを受けた場合であっても、当該フレームに対する処理を行うことができる。また、第2の接続状態におけるプロセッサの起動の周期が、第1の接続状態におけるプロセッサの起動の周期よりも長い構成により、プロセッサへのフレームの到着頻度に応じて、車載装置における消費電力を適切に抑えることができる。
【0034】
(12)本開示の実施の形態に係る接続切替方法は、車両に搭載される車載装置における接続切替方法であって、前記車載装置は、プロセッサと、通信ポートと、前記プロセッサに接続され、前記車載装置の外部から前記通信ポートを介して受信したフレームを前記プロセッサへ出力する第1通信ICと、前記プロセッサに接続され、前記通信ポートを介して受信したフレームが所定条件を満たす場合、受信した前記フレームを前記プロセッサへ出力する第2通信ICと、前記通信ポートの接続先を、前記第1通信ICと前記第2通信ICとの間で切り替える第1切替部とを備え、前記通信ポートと前記第2通信ICとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御するステップと、前記車載装置の状態が所定条件を満たす場合、前記通信ポートと前記第1通信ICとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御するステップとを含む。
【0035】
このような方法により、たとえば、通常時においては、通信ポートと第2通信ICとを電気的に接続し、所定条件を満たすフレームがプロセッサに到着した場合に当該プロセッサが起動することにより、消費電力を抑えることができる。また、たとえば、第2通信IC等に不具合が生じた場合には、通信ポートと第1通信ICとを電気的に接続することにより、車載装置へのフレームをプロセッサにおいて処理することができる。したがって、車載装置における消費電力を抑え、かつ信頼性を高めることができる。
【0036】
(13)本開示の実施の形態に係る接続切替プログラムは、車両に搭載される車載装置において用いられる接続切替プログラムであって、前記車載装置は、プロセッサと、通信ポートと、前記プロセッサに接続され、前記車載装置の外部から前記通信ポートを介して受信したフレームを前記プロセッサへ出力する第1通信ICと、前記プロセッサに接続され、前記通信ポートを介して受信したフレームが所定条件を満たす場合、受信した前記フレームを前記プロセッサへ出力する第2通信ICと、前記通信ポートの接続先を、前記第1通信ICと前記第2通信ICとの間で切り替える第1切替部とを備え、コンピュータを、前記通信ポートと前記第2通信ICとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御し、前記車載装置の状態が所定条件を満たす場合、前記通信ポートと前記第1通信ICとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御する制御部、として機能させるためのプログラムである。
【0037】
このような構成により、たとえば、通常時においては、通信ポートと第2通信ICとを電気的に接続し、所定条件を満たすフレームがプロセッサに到着した場合に当該プロセッサが起動することにより、消費電力を抑えることができる。また、たとえば、第2通信IC等に不具合が生じた場合には、通信ポートと第1通信ICとを電気的に接続することにより、車載装置へのフレームをプロセッサにおいて処理することができる。したがって、車載装置における消費電力を抑え、かつ信頼性を高めることができる。
【0038】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0039】
<構成および基本動作>
[全体構成]
図1は、本開示の実施の形態に係る車載装置の構成を示す図である。
図1を参照して、車載装置101は、たとえば車両に搭載されるECU(Electronic Control Unit)である。
【0040】
詳細には、当該車両は、たとえば、複数のECUと、これら複数のECUを制御する統合ECUとを備える通信システムを搭載している。車載装置101は、たとえば、統合ECUにより制御されるECUのうちの1つであり、通信システムにおける他のECUまたは統合ECUとの間で、CAN(Controller Area Network)の規格に従った通信を行う。
【0041】
より詳細には、車載装置101は、CANHおよびCANLの通信線にそれぞれ対応する通信ポート10H,10Lと、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ11と、第1通信IC(Integrated Circuit)の一例である通常トランシーバ12と、第2通信ICの一例であるPNトランシーバ13と、第1切替部14と、第2切替部15とを備える。通信ポート10H,10Lは、たとえば、コネクタまたは集積回路の端子である。プロセッサ11は、制御部の一例である。
【0042】
通常トランシーバ12は、たとえばCANトランシーバであり、STB(Strobe)、TxD(Transmit Data)およびRxD(Receive Data)にそれぞれ対応する3つの端子を介してプロセッサ11と接続されている。
【0043】
通常トランシーバ12は、車載装置101の外部から送信されたフレームを通信ポート10H,10Lを介して受信すると、当該フレームをプロセッサ11へ出力する。また、通常トランシーバ12は、プロセッサ11から出力されたフレームを受けると、当該フレームを通信ポート10H,10Lを介して車載装置101の外部へ送信する。
【0044】
PNトランシーバ13は、たとえば、パーシャルネットワークに対応しているCANトランシーバである。PNトランシーバ13は、SCLK(Serial CLocK)、SDI(Serial Data In)、SDO(Serial Data Out)、nCS(n Chip Select)、TxDおよびRxDにそれぞれ対応する6つの端子を介してプロセッサ11と接続されている。
【0045】
PNトランシーバ13は、車載装置101の外部から送信されたフレームを通信ポート10H,10Lを介して受信すると、当該フレームが所定条件を満たすか否かを判断する。そして、PNトランシーバ13は、当該フレームが所定条件を満たすと判断した場合、当該フレームをプロセッサ11へ出力する。
【0046】
また、PNトランシーバ13は、プロセッサ11から出力されたフレームを受けると、当該フレームを通信ポート10H,10Lを介して車載装置101の外部へ送信する。
【0047】
第1切替部14は、プロセッサ11からの制御信号を受けて動作することにより、通信ポート10H,10Lの接続先を、通常トランシーバ12とPNトランシーバ13との間で切り替え可能である。
【0048】
第2切替部15は、通常トランシーバ12と第1切替部14との間に接続される。第2切替部15は、プロセッサ11からの制御信号を受けて動作することにより、通常トランシーバ12と第1切替部14とが電気的に接続される状態と、通常トランシーバ12とPNトランシーバ13とが電気的に接続される状態とを切り替える。
【0049】
図2は、本開示の実施の形態に係る車載装置における第1切替部の切り替え動作を説明するための図である。
図3は、本開示の実施の形態に係る車載装置における第2切替部の切り替え動作を説明するための図である。
【0050】
図1~
図3を参照して、
図1は、第1切替部14が、通信ポート10H,10LとPNトランシーバ13とを電気的に接続し、第2切替部15が、通常トランシーバ12と第1切替部14とを電気的に接続している状態(以下、「PNトランシーバ接続状態」(第2の接続状態)と称する。)を示している。
【0051】
図2は、第2切替部15が、通常トランシーバ12と第1切替部14とを電気的に接続し、第1切替部14が、第2切替部15を介して通常トランシーバ12と通信ポート10H,10Lとを電気的に接続している状態(以下、「通常トランシーバ接続状態」(第1の接続状態)と称する。)を示している。
【0052】
図3は、第1切替部14が、通信ポート10H,10Lと第2切替部15とを電気的に接続し、第2切替部15が、通常トランシーバ12とPNトランシーバ13とを電気的に接続している状態(以下、「ループバック接続状態」と称する。)を示している。
【0053】
なお、車載装置101は、CANに従った通信を行う構成に限らず、たとえば、LIN(Local Interconnect Network)またはCXIP(Clock Extension Peripheral Interface)に従った通信を行う構成であってもよい。この場合、車載装置101は、CANHおよびCANLの通信線にそれぞれ対応する通信ポート10H,10Lの代わりに、LINまたはCXIPの通信線に対応する通信ポートを備える。
【0054】
[PNトランシーバ接続状態の詳細]
再び
図1を参照して、プロセッサ11は、たとえば、動作開始時において、車載装置101がPNトランシーバ接続状態となるように、第1切替部14および第2切替部15を制御する。
【0055】
PNトランシーバ接続状態においては、車載装置101の外部から車載装置101へ送信されたフレームは、通信ポート10H,10Lを介してPNトランシーバ13に到着する。PNトランシーバ13は、当該フレームを受信すると、たとえば当該フレームに含まれるID(Identification)等を参照して、当該フレームが所定条件を満たすか否かを判断する。
【0056】
より詳細には、PNトランシーバ13は、たとえば、当該フレームに含まれるIDのビットパターンが、PNトランシーバ13に予め登録されている所定のパターンと一致するか否かを確認する。そして、PNトランシーバ13は、当該ビットパターンが所定のパターンと一致する場合、当該フレームは所定条件を満たすとして、当該フレームをプロセッサ11へ出力する。
【0057】
一方、PNトランシーバ13は、当該フレームに含まれるIDのビットパターンが所定のパターンと一致しない場合、当該フレームは所定条件を満たさないとして、たとえば当該フレームを破棄する。
【0058】
なお、PNトランシーバ13は、車載装置101の外部からのフレームに含まれるIDのビットパターンに加えて、さらに、当該フレームのデータ長を確認し、IDのビットパターンおよびデータ長の組み合わせに基づいて、当該フレームが所定条件を満たすか否かを判断してもよい。
【0059】
図4は、本開示の実施の形態に係る車載装置がPNトランシーバ接続状態である場合におけるプロセッサの動作を説明するための図である。
図4を参照して、プロセッサ11は、スリープ動作を行うことが可能であり、PNトランシーバ接続状態と通常トランシーバ接続状態とにおいて、スリープ動作に関するモードを切り替える。
【0060】
より詳細には、プロセッサ11は、車載装置101がPNトランシーバ接続状態である場合、フレームが到着していない状態ではスリープ状態を継続し、車載装置101の外部からのフレームを通信ポート10H,10LおよびPNトランシーバ13経由で受けると起動する、すなわちPNトランシーバ13が所定条件を満たすフレームをプロセッサ11へ出力すると起動するモード(以下、「PNスリープモード」と称する。)で動作する。
【0061】
そして、プロセッサ11は、PNトランシーバ13からのフレームを受けて起動すると、たとえば、当該フレームに含まれるデータに基づいて、車両に搭載された機器の制御等の所定の処理を行い、当該処理の完了後に再びスリープ状態へ遷移する。
【0062】
[通常トランシーバ接続状態の詳細]
再び
図2を参照して、プロセッサ11は、後述するループバック検査において、車載装置101の状態が所定条件を満たすと判断した場合、車載装置101が通常トランシーバ接続状態となるように、第1切替部14および第2切替部15へ制御信号を出力する。
【0063】
車載装置101の接続状態が所定条件を満たす場合とは、たとえば、PNトランシーバ13、またはPNトランシーバ13からのフレームを処理するプロセッサ11のソフトウェア等に不具合がある場合などである。
【0064】
また、プロセッサ11は、たとえば、第1切替部14および第2切替部15への制御信号を出力したタイミングから所定時間T1が経過した後、第1切替部14および第2切替部15の状態を確認することにより、通常トランシーバ接続状態への切り替えが完了したか否かを確認する。そして、プロセッサ11は、通常トランシーバ接続状態への切り替えが完了したことを確認すると、スリープ状態へ遷移する。
【0065】
通常トランシーバ接続状態においては、車載装置101の外部から車載装置101へ送信されたフレームは、通信ポート10H,10Lを介して通常トランシーバ12に到着する。通常トランシーバ12は、当該フレームを受信すると、上述のとおり、当該フレームをプロセッサ11へ出力する。
【0066】
図5は、本開示の実施の形態に係る車載装置が通常トランシーバ接続状態である場合におけるプロセッサの動作を説明するための図である。
図5を参照して、プロセッサ11は、車載装置101が通常トランシーバ接続状態である場合、間欠的に起動するモード(以下、「通常スリープモード」と称する。)で動作する。
【0067】
たとえば、プロセッサ11は、所定の周期で起動し、起動したタイミングから所定時間T2が経過するとスリープ状態へ遷移する。プロセッサ11が起動している所定時間T2の長さは、プロセッサ11の起動周期よりも短い。
【0068】
また、プロセッサ11は、起動している状態において車載装置101の外部からのフレームを通信ポート10H,10Lおよび通常トランシーバ12経由で受けると、当該フレームのID等を参照して、当該フレームが所定条件を満たすか否か判断する。そして、プロセッサ11は、当該フレームが所定条件を満たさないフレームである場合、たとえば当該フレームを破棄する。
【0069】
一方、プロセッサ11は、当該フレームが所定条件を満たす場合、たとえば、当該フレームに含まれるデータに基づいて、車両に搭載された機器の制御等の所定の処理を行う。そして、プロセッサ11は、当該処理が完了したタイミング、および起動したタイミングから所定時間T2が経過したタイミングのうちの遅い方のタイミングで再びスリープ状態へ遷移する。
【0070】
[ループバック接続状態の詳細]
再び
図3を参照して、プロセッサ11は、定期的または不定期に、ループバック検査を行う。より詳細には、プロセッサ11は、たとえば1か月に一度、車載装置101を搭載する車両の走行が停止している状態において、車載装置101がループバック接続状態となるように、第1切替部14および第2切替部15へ制御信号を出力する。車両の走行が停止している状態とは、たとえば、当該車両が駐車されている状態、または当該車両が停車している状態である。
【0071】
また、プロセッサ11は、たとえば、第1切替部14および第2切替部15への制御信号を出力したタイミングから所定時間T3が経過した後、第1切替部14および第2切替部15の状態を確認することにより、ループバック接続状態への切り替えが完了したか否かを確認する。
【0072】
そして、プロセッサ11は、ループバック接続状態への切り替えが完了したことを確認すると、通常トランシーバ12およびPNトランシーバ13間でフレームを送受信させるループバック検査を行う。
【0073】
すなわち、プロセッサ11は、ループバック検査において、たとえば、上述した所定条件を満たす検査用のフレームを通常トランシーバ12へ出力し、当該フレームをPNトランシーバ13から受けることができるか否かを確認する第1検査を行う。さらに、プロセッサ11は、たとえば、検査用のフレームをPNトランシーバ13へ出力し、当該フレームを通常トランシーバ12から受けることができるか否かを確認する第2検査を行う。
【0074】
なお、第2検査において出力される検査用のフレームは、所定条件を満たすフレームであってもよいし、所定条件を満たさないフレームであってもよい。
【0075】
また、プロセッサ11は、たとえば、第1検査および第2検査の両方において、検査用のフレームを正常に受けることができた場合、PNトランシーバ13、およびPNトランシーバ13からのフレームを処理するプロセッサ11のソフトウェア等が正常であると判断する。この場合、プロセッサ11は、車載装置101がループバック接続状態からPNトランシーバ接続状態へ遷移するように、第1切替部14および第2切替部15を制御する。
【0076】
一方、プロセッサ11は、たとえば、第1検査および第2検査の少なくともいずれか一方において、検査用のフレームを正常に受けることができない場合、PNトランシーバ13、またはPNトランシーバ13からのフレームを処理するプロセッサ11のソフトウェア等に不具合があると判断する。この場合、プロセッサ11は、車載装置101の状態が所定条件を満たすとして、車載装置101の接続状態がループバック接続状態から通常トランシーバ接続状態へ遷移するように、第1切替部14および第2切替部15を制御する。
【0077】
なお、プロセッサ11は、定期的にループバック検査を行う構成に限らない。たとえば、プロセッサ11は、車載装置101がPNトランシーバ接続状態である場合において、外部からのフレームを正常に受信することができない等のエラーを検知した場合、または車両の管理センタからループバック検査を行う旨の指示を、図示しない外部ネットワークおよび車外通信装置を経由して受信した場合等にループバック検査を行う構成であってもよい。
【0078】
また、プロセッサ11は、第1検査および第2検査の両方を行う構成に限らず、たとえば第2検査を行わない構成であってもよい。
【0079】
また、プロセッサ11は、ループバック検査を行わない構成であってもよい。たとえば、プロセッサ11は、車載装置101がPNトランシーバ接続状態である場合において、外部からのフレームを正常に受信することができない等のエラーを検知した場合、または外部からのフレームの処理との兼ね合いにより通常トランシーバ接続状態にする必要が生じた場合などには、ループバック検査を行うことなく、車載装置101の接続状態が通常トランシーバ接続状態となるように第1切替部14を制御してもよい。これにより、第1切替部14および第2切替部15の状態、ならびに車載装置101における処理内容等に応じて、車載装置101の接続状態を適切に切り替えることができる。この場合、車載装置101は、第2切替部15を備えなくてもよい。
【0080】
<動作の流れ>
次に、車載装置101の動作の流れについて図面を用いて説明する。
【0081】
車載装置101は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。車載装置101のプログラムは、外部からインストールすることができる。また、車載装置101のプログラムは、記録媒体に格納された状態でまたは通信回線を介して流通する。
【0082】
[全体の流れ]
図6は、本開示の実施の形態に係る車載装置の接続状態の切り替えの動作手順の一例を定めたフローチャートである。ここでは、車載装置101がループバック検査を行う周期は1か月であるとする。
【0083】
図6を参照して、まず、プロセッサ11は、車載装置101の動作開始時において、車載装置101がPNトランシーバ接続状態となるように第1切替部14および第2切替部を制御し(ステップS10)、PNスリープモードで動作する(ステップS11)。
【0084】
次に、プロセッサ11は、前回のループバック検査を行ったタイミングから1か月が経過したか否かを確認する(ステップS12)。
【0085】
次に、プロセッサ11は、前回のループバック検査を行ったタイミングから1か月が経過していない場合(ステップS12において「NO」)、車載装置101のPNトランシーバ接続状態を継続し、かつPNスリープモードでの動作を継続する。
【0086】
一方、プロセッサ11は、前回のループバック検査を行ったタイミングから1か月が経過した場合(ステップS11において「YES」)、車載装置101を搭載する車両の走行が停止しているか否かを確認する(ステップS13)。
【0087】
次に、プロセッサ11は、当該車両の走行が停止していない場合(ステップS13において「NO」)、車載装置101のPNトランシーバ接続状態を継続し、かつPNスリープモードでの動作を継続しつつ、当該車両の走行が停止するまで待機する。一方、プロセッサ11は、当該車両の走行が停止している場合(ステップS13において「YES」)、ループバック検査を行う(ステップS14)。
【0088】
次に、プロセッサ11は、ループバック検査の結果に基づいて、車載装置101の接続状態を通常トランシーバ接続状態にすべきか否かを判断する(ステップS15)。
【0089】
たとえば、プロセッサ11は、ループバック検査において、PNトランシーバ13、およびPNトランシーバ13からのフレームを処理するプロセッサ11のソフトウェア等が正常であると判断したとする。この場合、プロセッサ11は、車載装置101の接続状態をPNトランシーバ接続状態にすべきと判断とする(ステップS15において「NO」)。
【0090】
そして、プロセッサ11は、車載装置101の接続状態がループバック接続状態からPNトランシーバ接続状態へ切り替わるように、第1切替部14および第2切替部15を制御し(ステップS16)、PNスリープモードで動作する(ステップS17)。そして、プロセッサ11は、ステップS12以降の動作を再び行う。
【0091】
一方、プロセッサ11は、たとえば、ループバック検査において、PNトランシーバ13、またはPNトランシーバ13からのフレームを処理するプロセッサ11のソフトウェア等に不具合があると判断したとする。この場合、プロセッサ11は、車載装置101の状態は所定条件を満たすため、車載装置101の接続状態を通常トランシーバ接続状態にすべきと判断とする(ステップS15において「YES」)。
【0092】
そして、プロセッサ11は、車載装置101の接続状態がループバック接続状態から通常トランシーバ接続状態へ切り替わるように、第1切替部14および第2切替部15を制御し(ステップS18)、通常スリープモードで動作する(ステップS19)。そして、プロセッサ11は、ステップS12以降の動作を再び行う。
【0093】
なお、プロセッサ11は、ループバック検査において、PNトランシーバ13、またはPNトランシーバ13からのフレームを処理するプロセッサ11のソフトウェア等の不具合を検知した場合に限らず、たとえば、管理センタからの通知に従って、車載装置101の接続状態を通常トランシーバ接続状態に切り替えてもよい。
【0094】
たとえば、プロセッサ11は、後述するように、ループバック検査における第1検査および第2検査の結果を管理センタへ通知する。この場合、管理センタ側において、たとえば、車載装置101におけるループバック検査の結果に基づいて、当該車載装置101のPNトランシーバ13等に不具合があるか否かを判断し、PNトランシーバ13等に不具合があると判断した場合、通常トランシーバ接続状態にすべき旨の通知を当該車載装置101へ送信する。
【0095】
当該車載装置101におけるプロセッサ11は、通常トランシーバ接続状態にすべき旨の通知を管理センタから受けた場合、車載装置101の接続状態を通常トランシーバ接続状態に切り替える。
【0096】
[ループバック検査の流れ]
図7は、本開示の実施の形態に係る車載装置のループバック検査の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図7は、
図6に示すステップS14の詳細を示している。
【0097】
図7を参照して、まず、プロセッサ11は、車載装置101の接続状態がPNトランシーバ接続状態または通常トランシーバ接続状態からループバック接続状態へ切り替わるように、第1切替部14および第2切替部15へ制御信号を出力する(ステップS21)。
【0098】
次に、プロセッサ11は、たとえば、第1切替部14および第2切替部15への制御信号を出力したタイミングから所定時間T3が経過した後、第1切替部14および第2切替部15の状態を確認することにより、ループバック接続状態への切り替えが完了したか否かを確認する(ステップS22)。
【0099】
次に、プロセッサ11は、ループバック接続状態への切り替えが完了していない場合(ステップS22において「NO」)、たとえば通知等のエラー処理を行う(ステップS23)。
【0100】
この場合、
図6に示すステップS15において、プロセッサ11は、ループバック接続状態への切り替え(ステップS21)を行う前における車載装置101の接続状態がPNトランシーバ接続状態である場合には、車載装置101をPNトランシーバ接続状態にすべきと判断し(ステップS15において「NO」)、ステップS16およびステップS17の動作を行う。
【0101】
また、ステップS15において、プロセッサ11は、ループバック接続状態への切り替え(ステップS21)を行う前における車載装置101の接続状態が通常トランシーバ接続状態である場合には、車載装置101を通常トランシーバ接続状態にすべきと判断し(ステップS15において「YES」)、ステップS18およびステップS19の動作を行う。
【0102】
一方、ステップS22において、プロセッサ11は、ループバック接続状態への切り替えが完了した場合(ステップS22において「YES」)、所定条件を満たす検査用のフレームを通常トランシーバ12へ出力し(ステップS24)、当該フレームをPNトランシーバ13から受けたか否かを確認する第1検査を行う(ステップS25)。
【0103】
次に、プロセッサ11は、検査用の他のフレームをPNトランシーバ13へ出力し(ステップS26)、当該フレームを通常トランシーバ12から受けたか否かを確認する第2検査を行う(ステップS27)。
【0104】
次に、プロセッサ11は、第1検査および第2検査の結果を、たとえば車外通信装置および外部ネットワークを経由して管理センタへ通知する(ステップS28)。
【0105】
なお、プロセッサ11は、所定条件を満たす検査用のフレームを通常トランシーバ12へ出力し(ステップS24)、当該フレームをPNトランシーバ13から受けたか否かを確認する第1検査(ステップS25)を、ステップS27とステップS28との間で行ってもよい。
【0106】
<変形例>
プロセッサ11は、車載装置101がPNトランシーバ接続状態である場合において、PNトランシーバ13からのフレームを受けるまでスリープ状態を継続するPNスリープモードで動作する構成に限らず、間欠的に起動するモードで動作する構成であってもよい。
【0107】
すなわち、プロセッサ11は、車載装置101がPNトランシーバ接続状態、および通常トランシーバ接続状態のいずれの場合においても、間欠的に起動するモードで動作してもよい。この場合、プロセッサ11は、たとえば、車載装置101がPNトランシーバ接続状態である場合における起動の周期を、車載装置101が通常トランシーバ接続状態である場合における起動の周期よりも長くする。以下、変形例に係る車載装置101の詳細について説明する。
【0108】
図8は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載装置の構成を示す図である。より詳細には、変形例に係る車載装置101は、
図1に示す車載装置101と比較して、さらに、通信ポート21,22,23を備える。通信ポート21,22,23は、たとえば、コネクタまたは集積回路の端子である。
【0109】
通信ポート21,22,23は、それぞれ、特定の信号の送信に用いられる通信線である第1のジカ線および第2のジカ線、ならびに車両に搭載されたセンサによる計測値等を示す信号の送信に用いられるAD線に対応する。
【0110】
ここでは、通信ポート10H,10Lへ入力されるフレームの車載装置101への送信周期が第1周期St1であり、通信ポート21へ入力されるフレームの車載装置101への送信周期が第2周期St2であるとする。また、通信ポート22へ入力されるフレームの車載装置101への送信周期が第3周期St3であり、通信ポート24へ入力されるフレームの車載装置101への送信周期が第4周期St4であるとする。
【0111】
第1周期St1、第2周期St2、第3周期St3および第4周期St4の各々の長さは、St1<St2<St3<St4の関係であるとする。
【0112】
図9は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載装置が通常トランシーバ接続状態である場合における、車載装置が各フレームを受けるタイミングと、車載装置におけるプロセッサの起動タイミングとの関係を示すタイムチャートである。
【0113】
図9を参照して、プロセッサ11は、車載装置101が通常トランシーバ接続状態である場合、たとえば、車載装置101の外部から第1周期St1で送信されるCANフレームを、通信ポート10H,10Lおよび通常トランシーバ12を介して受ける。このため、プロセッサ11は、たとえば第1周期St1で間欠的に起動するモードで動作するように設定されている。これにより、プロセッサ11は、消費電力を抑え、かつ通信ポート10H,10LからのCANフレーム、および通信ポート21,22,23からの各フレームに対する所定の処理を行うことができる。
【0114】
図10は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載装置がPNトランシーバ接続状態である場合における、車載装置が各フレームを受けるタイミングと、車載装置におけるプロセッサの起動タイミングとの関係を示すタイムチャートである。
【0115】
図10を参照して、プロセッサ11は、車載装置101がPNトランシーバ接続状態である場合、たとえば、車載装置101の外部からの所定条件を満たすCANフレームを、通信ポート10H,10LおよびPNトランシーバ13を介して不定期で受ける。
【0116】
一方、プロセッサ11は、たとえば、車載装置101の外部から第2周期St2で送信されるフレームを、通信ポート21を介して受ける。このため、プロセッサ11は、たとえば第2周期St2で間欠的に起動するスリープモードで動作し、スリープ状態においてPNトランシーバ13から所定条件を満たすCANフレームを受けた場合には起動するモードで動作するように設定されている。これにより、プロセッサ11は、消費電力をより一層抑えることができ、かつ所定条件を満たす通信ポート10H,10LからのCANフレーム、および通信ポート21,22,23からの各フレームに対する所定の処理を行うことができる。
【0117】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0118】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
車両に搭載される車載装置であって、
プロセッサと、
通信ポートと、
前記プロセッサに接続され、前記車載装置の外部から前記通信ポートを介して受信したフレームを前記プロセッサへ出力する第1通信IC(Integrated Circuit)と、
前記プロセッサに接続され、前記通信ポートを介して受信したフレームが所定条件を満たす場合、受信した前記フレームを前記プロセッサへ出力する第2通信ICと、
前記通信ポートの接続先を、前記第1通信ICと前記第2通信ICとの間で切り替える第1切替部とを備え、
前記プロセッサは、前記車載装置の動作開始時において、前記第2通信ICと前記通信ポートとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御し、
前記プロセッサは、前記車載装置の状態が所定条件を満たす場合、前記第1通信ICと前記通信ポートとが電気的に接続されるように前記第1切替部を制御する、車載装置。
【符号の説明】
【0119】
10H,10L 通信ポート
11 プロセッサ
12 通常トランシーバ(第1通信IC)
13 PNトランシーバ(第2通信IC)
14 第1切替部
15 第2切替部
21,22,23 通信ポート
101 車載装置