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  • -変電所接続方向の判定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085614
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】変電所接続方向の判定方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/18 20060101AFI20230614BHJP
   H02J 3/12 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H02J3/18 178
H02J3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199735
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾本 勇太
(72)【発明者】
【氏名】苻川 謙治
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066DA01
(57)【要約】
【課題】 配電線上に設置した自動電圧調整器による変電所接続方向判定方法を提供する。
【解決手段】 自動電圧調整器の一次側インピーダンスと二次側インピーダンスの大小比較から変電所接続方向の判定を行う。タップ切換前演算範囲でm1回データサンプリングし、タップ切換後演算範囲でm2回データサンプリングして、m3回の判定を行う。m3回の判定のうち、同値判定となったn回との間に(n/m3)>(1/2)の条件が成立する場合、最終判定結果とすることで、変電所接続方向の判定精度を高める。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線に設置される自動電圧調整器のタップの切換前後で発生する一次側電圧と一次側電流の変化量から一次側配電系統のインピーダンスを算出し、前記タップの切換前後で発生する二次側電圧と二次側電流の変化量から二次側配電系統のインピーダンスを算出し、両インピーダンスの大小比較をすることによって当該調整器の一次側又は二次側の何れに変電所が接続されているかの判定をm3回繰り返し、m3回中n回同じ判定結果となったことをもって、最終の判定結果とすることを特徴とする変電所接続方向の判定方法。
【請求項2】
前記m3とnは、(n/m3)>(1/2)の条件を満たした場合に、前記最終の判定結果とすることを特徴とする請求項1記載の変電所接続方向の判定方法。
【請求項3】
前記m3回の判定は、タップ切換前演算範囲で行うm1回のデータサンプリングと、タップ切換後演算範囲で行うm2回データサンプリングに基づきm1×m2回行うことを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載の変電所接続方向の判定方法。
【請求項4】
前記自動電圧調整器の一次側電圧と二次側電圧のタップ切換前後の差電圧変化量が一定サイクル所定電圧を超えた場合の最初のサイクル時を自動電圧調整器のタップ切換完了点として検出することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の変電所接続方向の判定方法。
【請求項5】
前記自動電圧調整器のタップの切換前後で発生する一次側電圧、二次側電圧と一次側電流、二次側電流の変化量の測定において、タップ切換前後のデータ測定のインターバル時間を極力短くすることと、配電線の電圧偏差、過渡現象、および、該配電線に接続される分散型電源の電圧変動による制御時間を考慮して、一次側電圧、二次側電圧、一次側電流、二次側電流の前記演算サイクル数m1,m2と、前記インターバル時間を決定したことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の変電所接続方向の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線上に設置した自動電圧調整器の変電所接続方向の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)を設置した配電系統を単純化した等価回路である。配電線上に設置したSVRは、変電所の接続方向を基に、その反対側である負荷側の電圧を適正電圧(運用電圧)に保つようタップ制御する。前記変電所の接続方向は系統の切替えによって変更される。
【0003】
変電所の接続方向の判定としては、その一例が下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-102128号公報
【0005】
前記特許文献1に記載される判定方法は、SVRからみた一次側と二次側の各インピーダンスZ,Zを算出し、その大小比較を行うことで変電所の接続方向を判定するものである。変電所接続側は実質的に無限大母線に接続されていると考えられるので、変電所接続側のインピーダンスが負荷側のインピーダンスより小さくなることに基づいて変電所の接続方向を判定する。
【0006】
具体的には、タップの切換えがあったとき、タップ切換前後の一次側電圧Vと二次側電圧V及び二次側電流Iを測定し、各々の測定値から一次側電圧Vの変化分ΔVと二次側電圧Vの変化分ΔV及び二次側電流の変化分ΔIを算出する。
【0007】
そして、一次側電圧Vと二次側電圧Vと二次側電流Iを所定の式に代入することにより、一次側電流Iを求め、その変化分ΔIを算出し、一次側のインピーダンスをZ=ΔV1/ΔIとして、二次側のインピーダンスZ=ΔV/ΔIとして求め、両者Z,Zの大小を比較する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1記載の判定方法は、SVRからみた二次側に水力発電機などに使用される同期発電機や誘導発電機が分散型電源として接続されている場合、二次側電圧Vの変化分ΔVが小さくなり、また、一次側電圧Vの変化分ΔV1が大きくなる時があり、変電所の接続方向を誤判定する原因となる。
【0009】
図2はSVRからみた二次側に同期発電機などの分散型電源が接続された場合の系統電圧をグラフ化したものである。図2の点線で示すように、系統電圧は、分散型電源から系統へ供給される電力によって、変電所(S/S)から分散型電源に近づくにしたがって次第に上昇していく。
【0010】
SVRは、当該系統電圧を適正電圧(運用電圧)に保つようタップ制御する。図2の実線はSVRによって系統電圧の電圧を制御した直後の状態を示している。SVRは、分散型電源によって上昇した系統電圧を適正電圧に保つため、SVRの設置点における電圧を低下させるようタップ制御する。
【0011】
このとき、SVRの二次側に同期発電機などの分散型電源が接続されていると、図2の実線で示すように、二次側電圧Vの変化分ΔVが小さく、一次側電圧Vの変化分ΔVが大きくなる事象が発生する。
【0012】
この状態で、前述した変電所接続方向の判定を行うと、図2に示すように、SVRからみた一次側に変電所が接続されているのであれば、一次側のインピーダンスZ(=ΔV1/ΔI)<二次側のインピーダンスZ(=ΔV/ΔI)とならなければいけない。しかし、二次側電圧Vの変化分ΔVが小さく、一次側電圧Vの変化分ΔVが大きくなったことに伴い、一次側のインピーダンスZ(=ΔV1/ΔI)>二次側のインピーダンスZ(=ΔV/ΔI)となって、変電所の接続方向を実際とは逆方向であると誤判定してしまう。
【0013】
変電所接続方向の誤判定は、その後のSVRによる系統電圧の適正化制御において、タップの上下限位置への張り付き問題を発生させる。
【0014】
なお、図2に実線で示すSVRのタップ切換直後の系統電圧は、同期発電機などの分散型電源による力率一定制御によって、図3に示すように、時間の経過とともに、SVRからみた一次側の電圧がタップ切換直前の値に近づくよう推移し、SVRからみた二次側の電圧が適正電圧に調整される。
【0015】
しかし、系統電圧が適正電圧に保たれるよう変化したとしても、SVRのタップが上下限位置に張り付いた状態は解消されないため、SVRによるその後のタップ制御に支障をきたす。
【0016】
そこで、本発明は、系統電圧調整用に設置した電圧調整器の二次側に同期発電機などの分散型電源が接続された場合においても、変電所接続方向の誤判定を抑制することのできる変電所接続方向の判定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1記載の発明は、配電線に設置される自動電圧調整器のタップの切換前後で発生する一次側電圧と一次側電流の変化量から一次側配電系統のインピーダンスを算出し、前記タップの切換前後で発生する二次側電圧と二次側電流の変化量から二次側配電系統のインピーダンスを算出し、両インピーダンスの大小比較をすることによって当該調整器の一次側又は二次側の何れに変電所が接続されているかの判定をm回繰り返し、m回中n回同じ判定結果となったことをもって、最終の判定結果とすることを特徴とする変電所接続方向の判定方法。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のmとnが、(n/m)>(1/2)の条件を満たした場合に、最終の判定結果とすることを特徴とする変電所接続方向の判定方法。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2の何れかに記載のm回の判定は、タップ切換前演算範囲で行うm回のデータサンプリングと、タップ切換後演算範囲で行うm回のデータサンプリングに基づき、m×m回行うことを特徴とする変電所接続方向の判定方法。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の自動電圧調整器の一次側電圧と二次側電圧のタップ切換前後の差電圧変化量が一定サイクル所定電圧を超えた場合の最初のサイクル時を自動電圧調整器のタップ切換完了点として検出することを特徴とする変電所接続方向の判定方法。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の自動電圧調整器のタップの切換前後で発生する一次側電圧、二次側電圧と一次側電流、二次側電流の変化量の測定において、タップ切換前後のデータ測定のインターバル時間を極力短くすることと、配電線の電圧偏差、過渡現象、および、該配電線に接続される分散型電源の電圧変動による制御時間を考慮して、一次側電圧、二次側電圧、一次側電流、二次側電流の前記演算サイクル数m,mと、前記インターバル時間を決定したことを特徴とする変電所接続方向の判定方法。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明によれば、配電線に同期発電機などの分散型電源が接続されている場合でも、変電所接続方法の誤判定を極力抑制することができる。
【0023】
請求項2記載の発明によれば、変電所の接続方法の判定精度を高めることができる。
【0024】
請求項3記載の発明によれば、判定に使用する演算範囲を増やすことができ配電線の系統状態に合わせた設定ができる。
【0025】
請求項4記載の発明によれば、正確なタップ切換完了点を検出できるので、一次側及び二次側インピーダンスの判定データ範囲を適切に設定することができる。
【0026】
請求項5記載の発明によれば、配電線の電圧偏差や、タップ切換時に発生する過渡現象および一次側電圧の変化分拡大による影響を極力排除して、インピーダンスの大小判定に必要なデータの取得を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】配電系統の単純化した等価回路である。
図2】タップ切換直前・直後の系統電圧を示すグラフである。
図3】タップ切換から数秒後の系統電圧を示すグラフである。
図4】タップ切換完了点とインピーダンス判定用のデータ範囲の関係を示すタイムチャートである。
図5】本発明に係る変電所接続方向の判定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図1乃至図5を用いて説明する。図1に示す等価回路において、SVRの一次側と二次側の何れに変電所が接続されているか判定する場合、タップ切換前のSVRの一次側電圧V,二次側電圧V,二次側電流Iと、タップ切換後の一次側電圧V´,二次側電圧V´,二次側電流I´を測定する。本発明では、当該測定を、タップ切換前はm回行い、タップ切換後はm回行うこととする。また、本実施例では、m=3回、m=2回を例示し、タップ切換前のSVRの一次側電圧V1a~V1c,二次側電圧V2a~V2c,二次側電流I2a~I2c、タップ切換後の一次側電圧V1a´~V1b´,二次側電圧V2a´~V2b´,二次側電流I2a´~I2b´と表記する。
【0029】
タップ切換前後の一次側電流I1a~I1c,I1a´, I1b´は、タップ切換前後の二次側電流I2a~I2c,I2a´~I2b´と一次側電圧V1a~V1c,V1a´~V1b´及び二次側電圧V2a~V2c,V2a´~V2b´の比から算出する。本実施例の場合、タップ切換前の一次側電流I1a~I1c、タップ切換後の一次側電流I1a´~I1b´がそれぞれ算出される。
【0030】
上記データの測定は、タップ切換前の一次側電圧V1a~V1cと二次側電圧V2a~V2c及び二次側電流I2a~I2cについては、図4(a)に示すように、タップ切換完了点前のタップ切換前除外サイクル数以前の演算範囲内でサンプリングする。
【0031】
タップ切換後の一次側電圧V1a´~V1b´と二次側電圧V2a´~V2b´及び二次側電流I2a´~I2b´は、タップ切換完了点後のタップ切換後除外サイクル数以後の演算範囲内でサンプリングする。
【0032】
タップ切換前後の一次側電流I1a~I1c,I1a´~I1b´は、サンプリング毎にタップ切換前後の二次側電流I2a~I2c,I2a´~I2b´と一次側電圧V1a~V1c,V1a´~V1b´,二次側電圧V2a~V2c,V2a´~V2b´の比から算出する。
【0033】
図4(a)に示すタップ切換前後のデータ測定の演算範囲(演算サイクル数m回と同義)は、タップ切換前後のインターバル時間(タップ切換前の演算範囲とタップ切換後の演算範囲の周期)を極力短くする目的と、当該サイクル数で配電線の電圧変動の標準偏差σが極小になることから、後述する変電所の接続方向の判定精度を高める目的で設定される。また、タップ切換後の除外サイクル数は、前記インターバル時間を極力短くする目的と、タップ切換後の過渡現象および配電線に接続される同期発電機などの分散型電源による力率一定制御の時定数を考慮して設定される。
【0034】
また、上述したタップ切換完了点は、タップ切換前の一次側電圧V1a~V1cと二次側電圧V2a~V2cの差電圧V12a~V12cとタップ切換後の一次側電圧V1a´~V1b´と二次側電圧V2a´~V2b´の差電圧V12a´~V12b´間の差ΔV12a~V12bが1タップ分の電圧変化(例えば50[V])を越えたサイクルが連続して一定サイクル(例えば10サイクル)に達したときの最初の1サイクル時として検出する。このタップ切換完了点の検出条件は、タップ切換のインターバルを極力短くし、かつ、正確なタップ切換点の算出を可能とする目的で設定している。
【0035】
このようにしてサンプリングしたタップ切換前後の各データV1a~V1c,V1a´~V1b´,V2a~V2c,V2a´~V2b´,I2a~I2c,I2a´~I2b´と、これらの各データから算出したI1a~I1c,I1a´~I1b´は、SVRの一次側インピーダンスの大きさ|Z1A|~|Z1F|を算出するために用いられる。
【0036】
ここで、|Z1A|=ΔV1A/ΔI1Aであり、ΔV1A=|V1a-V1a´|、ΔI1A=|I1a-I1a´|である。同様に、|Z1B|=ΔV1B/ΔI1Bであり、ΔV1B=|V1a-V1b´|、ΔI1B=|I1a-I1b´|である。また、|Z1C|=ΔV1C/ΔI1Cであり、ΔV1C=|V1b-V1a´|、ΔI1C=|I1b-I1a´|、|Z1D|=ΔV1D/ΔI1Dであり、ΔV1D=|V1b-V1b´|、ΔI1D=|I1b-I1b´|、|Z1E|=ΔV1E/ΔI1Eであり、ΔV1E=|V1c-V1a´|、ΔI1E=|I1c-I1a´|、|Z1F|=ΔV1F/ΔI1Fであり、ΔV1F=|V1c-V1b´|、ΔI1F=|I1c-I1b´|である。
【0037】
また、サンプリングしたタップ切換前後の各データV2a~V2c,V2a´~V2b´,I2a~I2c,I2a´~I2b´は、SVRの二次側インピーダンスの大きさ|Z2A|~|Z2F|を算出するために用いられる。
【0038】
|Z2A|=ΔV2A/ΔI2Aであり、ΔV2A=|V2a-V2a´|、ΔI2A=|I2a-I2a´|である。同様に、|Z2B|=ΔV2B/ΔI2Bであり、ΔV2B=|V2a-V2b´|、ΔI2B=|I2a-I2b´|である。また、|Z2C|=ΔV2C/ΔI2Cであり、ΔV2C=|V1b-V1a´|、ΔI2C=|I2b-I2a´|、|Z2D|=ΔV2D/ΔI2Dであり、ΔV2D=|V2b-V2b´|、ΔI2D=|I2b-I2b´|、|Z2E|=ΔV2E/ΔI2Eであり、ΔV2E=|V1c-V1a´|、ΔI2E=|I2c-I2a´|、|Z2F|=ΔV2F/ΔI2Fであり、ΔV2F=|V2c-V2b´|、ΔI2F=|I2c-I2b´|である。
【0039】
このように算出した一次側インピーダンスの大きさ|Z1A|~|Z1F|と二次側インピーダンスの大きさ|Z2A|~|Z2F|を大小比較することにより、|Z1A~F|≦|Z2A~F|の場合は順送として、SVRの一次側に変電所が接続されていると判定し、|Z1A~F|>|Z2A~F|の場合は逆送として、SVRの二次側に変電所が接続されていると判定する。
【0040】
以上の如く、一次側インピーダンス|Z1A~F|と二次側インピーダンス|Z2A~F|を大小比較することにより、SVRのどちらに変電所が接続されているか一定の精度で判定することができるが、本発明は、このようなm回の判定のうち、n回同値となることによって、当該同値による判定結果を最終的な判定結果とすることに特徴がある。このとき、mとnは(n/m)>(1/2)の条件を満たすものとする。
【0041】
また、図4(b)における演算範囲におけるm回およびm回のサンプリングによって、配電線に接続した同期発電機などの分散型電源による力率一定制御が間に合わない状態に起因した、変電所接続方向の誤判定を排除できるタップ切換後除外サイクル数を設定することに特徴を有する。
【0042】
当該力率一定制御が間に合わない状態での、変電所接続方向の誤判定を排除できるタップ切換後除外サイクル数としては、例えば、当該分散型電源による力率一定制御の完了時点が図4(b)の演算範囲内にある場合や、該演算範囲の直前または直後にある場合が考えられる。
【0043】
前記該演算範囲の直前または直後の範囲については、当該判定方法を実施する自動電圧調整器において、適正なサンプリング回数を設定して演算することにより、n回同値となった場合に、当該同値による判定結果が実際の変電所接続方向と一致する範囲とすればよい。
【0044】
図5は本発明の判定方法を説明するためのフローチャートである。まず、ステップSの順送状態において、SVRが負荷側電圧を適正電圧に保つためにステップSでタップ切換を行うと、ステップSで、逆送判定した回数n=0に設定される。
【0045】
次に、ステップSで前述したインピーダンス|Z1A~F|,|Z2A~F|の大小比較を開始し、ステップSで順送か逆送かの判定を行う。ステップSの判定結果が順送であれば、ステップSの現状に変化がないので、ステップSで電源側と判定されていた方向に変電所が接続されていると判定する。
【0046】
逆に、ステップSの判定結果が逆送であった場合は、系統の切替等によって変電所の接続方向に変更が生じたと考えられる。この場合、ステップSにおいて、逆送判定した回数n=n+1とする。ステップSにおける順送か逆送かの判定はステップSとの間でm回(本実施例では6回)繰り返し行われる。
【0047】
回の判定のうち、逆送判定した回数L=n回とする。当該判定をm回繰り返した後、ステップSへ移行する。ステップSでは(L/m)≦(1/2)の条件を満たす場合は、ステップSまで戻って変電所接続方向に変更はないとしてSVRの負荷側電圧を適正に保つ制御を継続する。例えば、L=3の場合、(L/m)=(3/6)=0.5≦(1/2)となるので、ステップSに戻って変電所接続方向に変更なしとしてSVRの負荷側電圧を適正に保つ制御を継続する。
【0048】
また、ステップSの判定結果が(L/m)>(1/2)であった場合は、ステップSに移行し、変電所接続方向に変更(順送→逆送)があったと判定し、ステップS10において、その反対側となるSVRの負荷側電圧を適正に保つ制御を実行する。例えば、L=4の場合、(L/m)=(4/6)≒0.7>(1/2)となるので、ステップSに移行して、変電所接続方向に変更(順送→逆送)があったと判定し、ステップS10において、その反対側となるSVRの負荷側電圧を適正に保つ制御を実行する。
【0049】
次に、ステップS11において、順送判定した回数n=0に設定し、ステップS12で、前述したインピーダンス|Z1A~F|,|Z2A~F|の大小比較を開始する。そして、ステップS13で順送か逆送かの判定を行い、ステップS13の判定結果が逆送であれば、ステップSの現状に変化がないので、ステップSで電源側と判定されていた方向に変電所が接続されていると判定する。
【0050】
逆に、ステップS13の判定結果が順送であった場合は、系統の切替等によって変電所の接続方向に変更が生じたと考えられる。この場合、ステップS15において、順送判定した回数n=n+1とする。ステップS13における順送か逆送かの判定はステップS15との間でm回(本実施例では6回)繰り返し行われる。
【0051】
回の判定のうち、順送判定した回数L=n回とする。当該判定はm回繰り返された後、ステップS16へ移行する。ステップS16では(L/m)≦(1/2)の条件を満たす場合は、ステップSまで戻って変電所接続方向に変更はないとしてSVRの負荷側電圧を適正に保つ制御を継続する。例えば、L=2の場合、(L/m)=(3/6)=0.5≦(1/2)となるので、ステップSに戻って変電所接続方向に変更なしとしてSVRの負荷側電圧を適正に保つ制御を継続する。
【0052】
また、ステップS16の判定結果が(L/m)>(1/2)であった場合は、ステップSに移行し、変電所接続方向に変更(逆送→順送)があったと判定し、ステップSにおいて、その反対側となるSVRの負荷側電圧を適正に保つ制御を実行する。例えば、L=4の場合、(L/m)=(4/6)≒0.7>(1/2)となるので、ステップSに移行して、変電所接続方向に変更(逆送→順送)があったと判定し、ステップSにおいて、その反対側となるSVRの負荷側電圧を適正に保つ制御を実行する。
【0053】
以上説明した図5に示す変電所接続方向の判定方法においても、SVRの二次側に同期発電機などの分散型電源が接続されていた場合、ステップSおよびステップS10におけるSVRのタップ切り換えの実行によって、図2に示すように、二次側電圧Vの変化分ΔVが小さくなり一次側電圧Vの変化分ΔVが大きくなる事象が発生する。
【0054】
当該事象は、同期発電機などの分散型電源がその力率が一定となるよう動作することにより、系統の力率がSVRによるタップ制御が行われる前の力率と同じ(力率一定)となることによって、図3に示すように、SVRのタップ切換から数秒遅れてSVRからみた一次側の電圧がタップ切換前の状態と一致するよう変化し、SVRからみた二次側の電圧を適正電圧に保つよう変化する。
【0055】
そこで、本発明は、図5に示すタップ切換後除外サイクルを設けることにより、タップ切換後の過渡現象の影響を排除するとともに、図2から図3への力率一定制御が完了するまでの時間帯においても、ステップSやステップS13における順送と逆送の判定をm回行い、ステップSにおける順送判定と異なる判定回数(n回=L)が(L/m)>(1/2)の条件を満たす場合(ステップS)や、ステップSにおける逆送判定と異なる判定回数(n回=L)が(L/m)>(1/2)となった場合(ステップS16)は、n(LまたはL)回同値となった判定結果を最終の判定結果とする。
【0056】
これにより、図2に示すように、タップ切換直後の判定のみによって、変電所の接続方向を判定する場合と比較して、誤判定する可能性を小さくすることができる。
【0057】
なお、上記実施例において、図4に示す演算範囲やタップ切換前後の除外サイクル数、タップ切換時間の横軸長さは一例として記載したものであり、各時間の長さの比率とは関係ないことは当然である。
【0058】
また、タップ切換前のサンプリング回数3回およびタップ切換後のサンプリング回数2回はあくまで例示であり、任意のm,m回数を設定できることは当然である。なお、判定回数mはm×mとして決定される。
【0059】
以上説明したように、本発明の変電所接続方向の判定方法は、m回の順送/逆送判定のうちn回、順送/逆送状態が現状から変更されたと判定され、かつ、(n/m)>(1/2)の条件を満たす場合は、n回の判定結果を最終的な判定結果とするので、変電所の接続方向の誤判定を極力抑制することができる。
【0060】
また、タップ切換前後の最適なインターバル時間及び電圧・電流変化量を計算するために使用する交流電圧・交流電流のサイクル数を決定したので、タップ切換後の過渡現象の影響を排除するとともに、同期発電機による力率一定制御を利用した変電所接続方向の判定が可能となる。
【0061】
さらに、タップ切換完了点を正確に検出することができるので、一次側インピーダンスと二次側インピ―ダンスの判定データ範囲を適切に設定することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、配電用自動電圧調整装置に利用される。
図1
図2
図3
図4
図5