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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085634
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/44 20140101AFI20230614BHJP
   E05B 85/02 20140101ALI20230614BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
E05B77/44
E05B85/02
B60J5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199759
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】北村 陽亮
(72)【発明者】
【氏名】高山 達也
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ06
2E250LL01
2E250PP02
(57)【要約】
【課題】車両用ドアロック装置において、不正具によりハウジングの上部が容易に破壊されないようにして、防盗性の向上を図る。
【解決手段】車体側のストライカに係合することにより、ドアを閉位置に保持する噛合機構を含む噛合ユニット2と、噛合機構とストライカとの係合状態を解除可能とするアンロック状態、及び解除不能とするロック状態に切替可能なロック機構8を収容したハウジング7と、ハウジング7の上面を被覆する金属製の防盗カバー11と、を備える。防盗カバー11は、ドアの後端から前端部、及び上端から車外側に向けて下り傾斜する傾斜面111a~111eを有し、かつ水平方向の平坦面を有しない防盗上被覆部111を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側のストライカに係合することにより、ドアを閉位置に保持する噛合機構を含む噛合ユニットと、
前記噛合機構と前記ストライカとの係合状態を解除可能とするアンロック状態、及び解除不能とするロック状態に切替可能なロック機構を収容したハウジングと、
前記ハウジングの上面を被覆する金属製の防盗カバーと、を備え、
前記防盗カバーは、前記ドアの後端から前端部、及び上端から車外側に向けて下り傾斜する傾斜面を有し、かつ水平方向の平坦面を有しない防盗上被覆部を有することを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項2】
車体側のストライカに係合することにより、ドアを閉位置に保持する噛合機構を含む噛合ユニットと、
前記噛合機構と前記ストライカとの係合状態を解除可能とするアンロック状態、及び解除不能とするロック状態に切替可能なロック機構を収容したハウジングと、
前記ハウジングの上面を被覆する上被覆部を有する金属製の保護カバーと、
前記保護カバーの前記上被覆部を被覆し、かつ板厚が前記保護カバーの板厚よりも大の金属製の防盗カバーと、を備え、
前記防盗カバーは、前記ドアの後端から前端部、及び上端から車外側に向けて下り傾斜する傾斜面を有し、かつ水平方向の平坦面を有しない防盗上被覆部を有することを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記保護カバーの前記上被覆部と前記防盗カバーの前記防盗上被覆部との間に隙間を設けたことを特徴とする請求項2記載の車両用ドアロック装置。
【請求項4】
前記防盗カバーにおける前記防盗上被覆部の側端面は、前記ドアのインナパネルに近接することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の車両用ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防盗対策を施した車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、車両用ドアロック装置には、ドアが不正行為により開けられないようにした防盗対策が施されている。不正行為には、一例として、ドアのアウタパネルと窓ガラスとの間の隙間に、マイナスドライバー等の金属板製の不正具を強引に挿入して、挿入した不正具の先端を車両用ドアロック装置におけるハウジングの上面に突き当てて破壊することで、ハウジング内のロック機構を操作して、ドアを不正に開けるようにした不正解除方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記不正行為を防止するため、アンロック状態、及びロック状態に切替可能なロック機構を収容する合成樹脂製のハウジングの上面に、当該上面を保護する合成樹脂製の保護カバーを設け、保護カバーの上面カバー部を、ハウジング上面側から車両上方に突出する頂部と当該頂部から傾斜状に延出する傾斜面とからなる形状とすると共に、頂部における上下方向の肉厚が傾斜面における上下方向の肉厚を上回る凸形状とすることによって、マイナスドライバー等の金属製の不正具がドアのアウタパネルと窓ガラスとの間の隙間から挿入されて、不正具の力が保護カバーの上面カバー部に作用した場合であっても、不正具が上面カバー部の特定位置に留まるのを抑制することで、保護カバーが簡単に破損され難くして防盗性の向上を図った車両用ドアロック装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、上記不正行為を防止するため、アンロック状態、及びロック状態に切替可能なロック機構を収容する合成樹脂製のハウジング(特許文献2においては、ケーシング及びカバーにより構成される)の上面に、金属製のプロテクタを設けて、当該プロテクタによりハウジングの上面全域を被覆して防護することにより、ドアのアウタパネルと窓ガラスとの間の隙間から金属製の不正具が挿入されても、ハウジングの上面が容易に破壊されないようにして、防盗性の向上を図った車両用ドアロック装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6250975号公報
【特許文献2】特許第6361042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の車両用ドアロック装置は、保護カバーを設けたことによって、不正具からの攻撃に対してある程度の抑止効果があるものの、不正具を保護カバーに当接させた状態で大きな力で押し込まれると、合成樹脂製の保護カバーでは、不正具の押込み力に対して耐え得る強度にも限界があり、より確実な防盗対策を望むものとしては不十分である。
【0007】
また、特許文献2に開示の車両用ドアロック装置は、ハウジングの上面全域を被覆して防護するプロテクタを金属製としたことにより、不正具の攻撃に対する耐強度は、合成樹脂製のプロテクタに比して大きいが、プロテクタの上面が平坦な形状であるため、ドアのアウタパネルと窓ガラスとの間の隙間から挿入された金属製の不正具が保護カバーの上面に当接した場合、不正具の先端部がプロテクタの上面に留まってしまい、プロテクタの上面が変形する虞があり、より確実な防盗対策を望むものとしては不十分である。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み、不正具によりハウジングの上部が容易に破壊されないようにすることによって、防盗性の向上を可能にした車両用ドアロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
車両用ドアロック装置において、車体側のストライカに係合することにより、ドアを閉位置に保持する噛合機構を含む噛合ユニットと、前記噛合機構と前記ストライカとの係合状態を解除可能とするアンロック状態、及び解除不能とするロック状態に切替可能なロック機構を収容したハウジングと、前記ハウジングの上面を被覆する金属製の防盗カバーと、を備え、前記防盗カバーは、前記ドアの後端から前端部、及び上端から車外側に向けて下り傾斜する傾斜面を有し、かつ水平方向の平坦面を有しない防盗上被覆部を有することを特徴とする。
【0010】
車両用ドアロック装置において、車体側のストライカに係合することにより、ドアを閉位置に保持する噛合機構を含む噛合ユニットと、前記噛合機構と前記ストライカとの係合状態を解除可能とするアンロック状態、及び解除不能とするロック状態に切替可能なロック機構を収容したハウジングと、前記ハウジングの上面を被覆する上被覆部を有する金属製の保護カバーと、前記保護カバーの前記上被覆部を被覆し、かつ板厚が前記保護カバーの板厚よりも大の金属製の防盗カバーと、を備え、前記防盗カバーは、前記ドアの後端から前端部、及び上端から車外側に向けて下り傾斜する傾斜面を有し、かつ水平方向の平坦面を有しない防盗上被覆部を有することを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記保護カバーの前記上被覆部と前記防盗カバーの前記防盗上被覆部との間に隙間を設ける。
【0012】
好ましくは、前記防盗カバーにおける前記防盗上被覆部の側端面は、前記ドアのインナパネルに近接する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ロック機構を収容したハウジングの上部に、ドアの後端から前端部、及び上端から車外側に向けて下り傾斜する傾斜面を有し、かつ水平方向の平坦面を有しない金属製の防盗カバーを設けたことにより、不正具の先端部を防盗カバーの上面に強い力で当接させても、不正具が防盗カバーの上面上を滑動して下り勾配方向へ誘導されるため、防盗カバーの変形を最小限に抑えることができる。この結果、ハウジングの上部が破壊されることがないので、防盗性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る車両用ドアロック装置の後斜め車外側から見た斜視図である。
図2】車両用ドアロック装置の前斜め車外側から見た斜視図である。
図3】車両用ドアロック装置の前斜め車外側から見た分解斜視図である。
図4】車両用ドアロック装置の車外側から見た上半分の側面図である。
図5】車両用ドアロック装置の車内側から見た上半分の側面図である。
図6】車両用ドアロック装置の平面図である。
図7】車両用ドアロック装置の前から見た上半分の正面図である。
図8図4におけるVIII-VIII線縦断面図である。
図9図4におけるIX-IX線縦断面図である。
図10図4におけるX-X線縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではなく、以下の実施形態から当業者が自明の範囲内で適宜変更したものも含む。
【0016】
車両用ドアロック装置1は、自動車のフロントドアD(以下、ドアと記す)の後端内部に取り付けられると共に、ドアを閉位置に保持するための噛合機構を有する噛合ユニット2と、噛合ユニット2に組み付けられる操作ユニット3とを備えて、ドアの車内外に設けられる図示略のドア開操作用のドアハンドルに連結されることで、ドアハンドルの操作に基づいて、噛合機構が解除作動して、閉じているドアを開けることができるようにしたものである。
【0017】
図1~3に示すように、噛合ユニット2は、ドア内部に固定される合成樹脂製のボディ4を有し、このボディ4内に、図示略の車体側のストライカと係合可能なラッチ5、及びラッチ5に係合可能なラチェット6を含む噛合機構が収容されることで構成される。ドアが閉じられた場合には、ラッチ5が回動してストライカに係合すると共に、ラチェット6が回動してラッチ5に係合することで、ドアは閉位置に保持される。
【0018】
操作ユニット3は、ボディ4の前面に取り付けられると共に、図6に示すように平面視略L字状の合成樹脂製のハウジング7を有する。ハウジング7における後述の部品収容部72内には、ドアの車外側に設けられるロック、アンロック操作用の図示略のキーシリンダの操作、及び図示略のモータの動力によりロック状態及びアンロック状態に切替可能なロック機構を構成するロックレバー8及び他のレバーが収容される。ロックレバー8がアンロック状態にある場合には、ドアハンドルのドア開操作を可能にしてドアを開けることができ、ロックレバー8がロック状態にある場合には、ドアハンドルのドア開操作を不能にしてドアを開けることができない。
【0019】
ハウジング7は、ボディ4の前面側を覆うボディ覆い部71と、ボディ覆い部71に連設され、平面視でボディ覆い部71に対して直角な部品収容部72とを有する。部品収容部72は、車内側を向く側面がドアのインナパネルDに対向するように配置される。部品収容部72の後部で、かつ最上部には、車外側に突出する略円筒状のキーシリンダ連結部73が設けられる。なお、部品収容部72におけるインナパネルDに対向する側は、ハウジング7の一部を構成する合成樹脂製のカバー7A(図8~10参照)により閉塞される。
【0020】
ハウジング7における部品収容部72の上部には、ハウジング7内への雨水等の浸入を防止する合成樹脂製の防水カバー9が設けられる。防水カバー9の上面には、金属製の保護カバー10が設けられる。さらに、保護カバー10の上面には、金属製の防盗カバー11が設けられる。
【0021】
防水カバー9は、ハウジング7における部品収容部72の上部全域を被覆し、かつ車内外方向から挟み込むように取り付けられて、部品収容部72の上部の接合部分72a(部品収容部72とカバー7Aとの接合部分(図8~10参照))から部品収容部72内への雨水浸入を阻止する。
【0022】
保護カバー10は、板厚が略0.5mm程度の金属板により形成される。保護カバー10には、防水カバー9を介してハウジング7における部品収容部72の上面全域を覆う上被覆部101と、防水カバー9を介してハウジング7における部品収容部72の前面の上半分を覆う前被覆部102と、防水カバー9を介してハウジング7における部品収容部72の車外側側面の上半分を覆う外被覆部103と、防水カバー9を介して部品収容部72の車内側側面の上部を被覆する内被覆部104と、上被覆部101の後端に連設されて、ハウジング7におけるキーシリンダ連結部73を上側から覆うキーシリンダ連結被覆部105とを一体形成して、ネジ12、13によりハウジング7における部品収容部72の上部に固定される。
【0023】
保護カバー10の上被覆部101は、最上部の第1傾斜面101aと、第1傾斜面101aの前端に連なる第2傾斜面101bと、第1傾斜面101aの車外側に連なる第3傾斜面101cと、キーシリンダ連結被覆部105の前端及び第3傾斜面101cにそれぞれ連なる第4傾斜面101dと、第4傾斜面101dの車外側に連なる第5傾斜面101eとを形成して、水平方向を向く平坦面は形成していない。
【0024】
第1傾斜面101aは、上被覆部101の最上面を形成し、キーシリンダ連結被覆部105に連なる後端を起点として前方へ向けて下り傾斜すると共に、平面視において車内外方向の幅が前方に行くに従って漸増するような三角形状を呈する。
【0025】
第2傾斜面101bは、第1傾斜面101aの前端に連なる後端から前方へ向けて、第1傾斜面の下り勾配よりも急勾配で下り傾斜して、前端が前被覆部102の上端に連なる。
【0026】
第3傾斜面101cは、キーシリンダ連結被覆部105に連なる後端を起点として前方へ向けて下り傾斜すると共に、第1傾斜面101aに連なる上端から車外側に向けて下り傾斜して、下端が外被覆部103の上端に連なる。
【0027】
第4傾斜面101dは、キーシリンダ連結被覆部105の前端に連なる後端を起点として前方へ向けて下り傾斜する。
【0028】
第5傾斜面101eは、第4傾斜面101dに連なる部分から車外側に向けて下り傾斜して、下端が外被覆部103の上端に連なる。
【0029】
前被覆部102は、防水カバー9の前方を向く面を被覆することで、ハウジング7の前面上部が不正具により攻撃されて破壊されないように、ハウジング7の前面の上半分を防護する。
【0030】
外被覆部103は、防水カバー9の車外側を向く面を被覆することで、ハウジング7の車外側を向く面の上部が不正具により攻撃されて破壊されないように、ハウジング7の上半分を防護する。
【0031】
防盗カバー11は、板厚が保護カバー10の板厚よりも厚い2mm程度の金属板により形成されて、保護カバー10の上被覆部101の全域及び外被覆部103の上部を被覆するように、保護カバー10を介してハウジング7に固着される。好ましくは、防盗カバー11は、保護カバー10に溶接により固着される。防盗カバー11には、保護カバー10の上被覆部101を被覆する防盗上被覆部111と、保護カバー10の外被覆部103の上部を被覆する防盗外被覆部112とを一体形成する。
【0032】
防盗カバー11の防盗上被覆部111は、保護カバー10の上被覆部101の形状と略同様な形状を呈して、最上部の第1防盗傾斜面111aと、第1防盗傾斜面111aの前端に連なる第2防盗傾斜面111bと、第1防盗傾斜面111aの外側に連なる第3防盗傾斜面111cと、第3防盗傾斜面111cの後端に連なる第4防盗傾斜面111dと、第4防盗傾斜面111dの車外側に連なる第5防盗傾斜面111eとを有して、水平方向の平坦面は有していない。
【0033】
さらに、本実施形態における防盗カバー11は、図8~10に示すように、防盗上被覆部111の車内側を向く側端面111fがドアのインナパネルDに近接するように、保護カバー10を介してハウジング7の上部に取り付けられる。このようにすることで、車内側から挿入された不正具により、ハウジング7の上部が攻撃されることを阻止でき、防盗性をより向上させることができる。
【0034】
第1防盗傾斜面111aは、保護カバー10の第1傾斜面101a上に重合して、防盗上被覆部111の最上面を形成すると共に、保護カバー10のキーシリンダ連結被覆部105に隣接する後端を起点として前方へ向けて下り傾斜して、図6に示すように平面視において車内外方向の幅が前方に行くに従って漸増するような三角形状を呈する。
【0035】
第2防盗傾斜面111bは、保護カバー10の第2傾斜面101b上に重合して、第1防盗傾斜面111aの前端に連なる後端から前方へ向けて、第1防盗傾斜面111aの下り勾配よりも急勾配で下り傾斜する。
【0036】
第3防盗傾斜面111cは、保護カバー10の第3傾斜面101c上に重合して、防盗カバー11の後端を起点として前方へ向けて下り傾斜すると共に、第1防盗傾斜面111aに連なる上端から車外側に向けて下り傾斜して、下端が防盗外被覆部112の上端に連なる。なお、常時においては、図9に示すように、保護カバー10の第3傾斜面101cと防盗カバー11の第3防盗傾斜面111cとの間には隙間G1が設けられる。
【0037】
第4防盗傾斜面111dは、保護カバー10の第4傾斜面101d上に重合して、防盗カバー11の後端を起点として前方へ向けて下り傾斜する。なお、常時においては、図8に示すように、保護カバー10の第4傾斜面101dと防盗カバー11の第4防盗傾斜面111dとの間には隙間G2が設けられる。
【0038】
第5防盗傾斜面111eは、保護カバー10の第5傾斜面101e上に重合して、第4防盗傾斜面111dに連なる部分から車外側に向けて下り傾斜して、下端が防盗外被覆部112の上端に連なる。
【0039】
次に、金属製の不正具が不正にドアのアウタパネルと窓ガラスとの間の隙間からドア内に挿入された場合における防盗カバー11の作用効果について説明する。
【0040】
ドア内に不正に不正具が挿入されると、不正具の先端部は、車両用ドアロック装置1における部品収容部72の最上部に位置する金属製の防盗カバー11の防盗上被覆部111、すなわち第1防盗傾斜面111a~第5防盗傾斜面111eのいずれかの傾斜面に当接する。
【0041】
例えば、図4に示すように、不正具Aの先端部が第1防盗傾斜面111aに真上から当接した場合には、不正具Aの先端部は、下り方向である矢印x1方向へ滑動して、最終的に第5防盗傾斜面111eを滑動して部品収容部72の前側に誘導され、また、不正具Aの先端部が第4防盗傾斜面111dに真上から当接した場合には、不正具Aの先端部は、下り方向であるx2方向へ滑動して、最終的に車外側の防盗外被覆部112に誘導される。
【0042】
さらに、図10に示すように、不正具Aの先端部が第3防盗傾斜面111cに真上から当接した場合には、不正具Aの先端部は、下り方向である矢印x3方向へ滑動して、最終的に車外側の防盗外被覆部112に誘導され、また、不正具Aの先端部が第5防盗傾斜面111eに真上から当接した場合には、下り方向である矢印x4方向へ滑動して、最終的に車外側の防盗外被覆部112側に誘導される。
【0043】
上述のように、不正具Aがドア内に不正に挿入されても、金属製の防盗カバー11は、不正具Aの挿入を受け止めると共に、不正具Aの先端部が挿入された位置に留まることがないように、不正具Aの先端部をハウジング7における部品収容部72の前方または車外方向に誘導するものであるから、不正具Aによる攻撃力により容易に変形することはない。これにより、ハウジング7における部品収容部72の上部が破壊されてロック機構が不正に操作されることを阻止して、防盗性の向上を図ることができる。
【0044】
さらに、前記実施形態の車両用ドアロック装置1においては、ハウジング7の上部を金属製の保護カバー10及び金属製の防盗カバー11により二重で被覆したことにより、防盗性が著しく向上する。また、保護カバー10の上被覆部102と防盗カバー11の防盗上被覆部111との間に隙間を設けたことにより、仮に不正具Aにより防盗カバー11の防盗上被覆部111が変形させられたとしても、当該変形は保護カバー10の上被覆部101に直接伝達されないので、不正具Aによる攻撃力に対して強固に耐えることができ、より一層の防盗性の向上を図ることが可能となる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
【0046】
(a)防水カバー9及び保護カバー10を省略する。
(b)防盗カバー11における防盗上被覆部111の車内側の端部を下方に延出させ、当該延出した部分と防盗外被覆部112との間に、保護カバー10を嵌め込む。なお、保護カバー10を省略した場合は、防水カバー9の上部を嵌め込む。
【符号の説明】
【0047】
1 車両用ドアロック装置 2 噛合ユニット
3 操作ユニット 4 ボディ
5 ラッチ 6 ラチェット
7 ハウジング 71 ボディ覆い部
72 部品収容部 72a 接合部分
73 キーシリンダ連結部 7A カバー
8 ロックレバー(ロック機構) 9 防水カバー
10 保護カバー 101 上被覆部
101a 第1傾斜面 101b 第2傾斜面
101c 第3傾斜面 101d 第4傾斜面
101e 第5傾斜面 102 前被覆部
103 外被覆部 104 内被覆部
105 キーシリンダ連結被覆部 11 防盗カバー
111 防盗上被覆部 111a 第1防盗傾斜面
111b 第2防盗傾斜面 111c 第3防盗傾斜面
111d 第4防盗傾斜面 111e 第5防盗傾斜面
111f 側端面 112 防盗外被覆部
12、13 ネジ A 不正具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10