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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085640
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】送信装置及び送信システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/23 20160101AFI20230614BHJP
   H02J 50/27 20160101ALI20230614BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20230614BHJP
   H01Q 3/42 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H02J50/23
H02J50/27
H04B7/06 958
H01Q3/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199777
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 瑞貴
(72)【発明者】
【氏名】楊 波
(72)【発明者】
【氏名】篠原 真毅
(72)【発明者】
【氏名】三谷 友彦
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA07
5J021DB03
5J021EA04
5J021FA17
5J021FA23
5J021FA24
5J021FA26
5J021GA02
5J021HA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】パイロット信号と送信信号の干渉を抑制した送信装置及びそれを備える送信システムを提供する。
【解決手段】送電システムにおいて、送信装置は、複数の受信用アンテナ素子22及び複数の送信用アンテナ素子23を有するアレイアンテナ21と、夫々複数の受信用アンテナ素子及び複数の送信用アンテナ素子に接続された複数の位相共役回路40と、を備える。位相共役回路は、夫々、受信用アンテナ素子で受信したパイロット信号を入力され、送信用アンテナ素子に供給される送信信号を出力する。夫々の位相共役回路から出力される送信信号の周波数は、入力されたパイロット信号の周波数の1/2倍に等しく、夫々の位相共役回路から出力される送信信号の位相差は、夫々の位相共役回路に入力されたパイロット信号の、任意の1つの位相共役回路に入力されたパイロット信号に対する位相差の-1/2倍に等しい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信用アンテナ素子及び複数の送信用アンテナ素子を有するアレイアンテナと、
それぞれ前記複数の受信用アンテナ素子及び前記複数の送信用アンテナ素子に接続された複数の位相共役回路と、を備え、
前記位相共役回路は、それぞれ、前記受信用アンテナ素子で受信されたパイロット信号を入力され、前記送信用アンテナ素子に供給される送信信号を出力し、
前記それぞれの位相共役回路から出力される送信信号の周波数は、前記それぞれの位相共役回路に入力されたパイロット信号の周波数の1/2倍に等しく、
前記それぞれの位相共役回路から出力される送信信号の、前記複数の位相共役回路のうちの任意の1つの位相共役回路から出力される送信信号に対する位相差は、前記それぞれの位相共役回路に入力されたパイロット信号の、前記任意の1つの位相共役回路に入力されたパイロット信号に対する位相差の-1/2倍に等しい、送信装置。
【請求項2】
前記位相共役回路は、それぞれ、
前記パイロット信号と、前記パイロット信号の周波数の2倍の周波数を有し、前記それぞれの位相共役回路で同位相を有する基準信号とをミキシングするミキサーと、
前記ミキサーから出力されて伝送された信号を1/2に分周する分周器と、
前記ミキサーから出力されて伝送された2つの異なる周波数を有する信号のうち、より低い周波数を有する信号を通過させる第1フィルタと、を有する、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記位相共役回路は、それぞれ、前記ミキサー、前記分周器、及び前記第1フィルタを含む回路から出力された信号を増幅して前記送信用アンテナ素子に供給する電力増幅器を有する、請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記位相共役回路は、それぞれ、前記ミキサーの入力側に接続され、前記パイロット信号を通過させ、前記送信信号を遮断する第2フィルタを有する、請求項2又は3に記載の送信装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の送信装置と、
レクテナを有する受信装置と、
を備え、
前記レクテナは、前記レクテナに到達した前記送信信号の一部を2次高調波として反射することで、前記パイロット信号を発生させる、送信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送信を行う送信装置、及びそれを備える送信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センサ、カメラ、IоTデバイス等が、工場、施設等に多く設置されている。このような機器に給電するための技術として、マイクロ波送電、特にレトロディレクティブ方式の送電が注目されている。この方式では、一般に、目標から放射されたパイロット信号を受け、そのパイロット信号を用いて目標の方向を推定し、その目標の方向を向く送電ビームを形成することで、目標の方向に送電ビームを制御する。
【0003】
特許文献1には、マルチパス環境内のビーコン信号の到着時間の差異を利用して、クライアント機器に無線電力供給を行う無線電力送信システムが開示されている。この無線電力送信システムは、クライアント機器からのビーコン信号をアレイアンテナで受信し、そのビーコン信号の到着時間の反転に基づいて送信開始をずらした送信信号をアレイアンテナから送信する。これにより、送信信号は、異なる伝搬遅延を有する経路を進んでも、ほぼ同時にクライアント機器に到着する。
【0004】
特許文献2には、分離構成された複数の送電ユニットから目標装置に送電を行うマイクロ波送電システムが開示されている。それぞれの送電ユニットは、受信アンテナ、送電アンテナ、位相同期回路、共役位相生成回路、及びマイクロ波発生装置を備える。位相同期回路は、それぞれの送電ユニットによって受信され、それぞれの送電ユニットの間で伝送するパイロット信号の間の位相差に基づいて、位相同期信号を生成する。共役位相生成回路は、送電ユニットによって受信されたパイロット信号と、位相同期回路によって生成された位相同期信号とを重畳して、共役位相波を生成する。マイクロ波発生装置は、共役位相波の位相を補正して発生させたマイクロ波を送電アンテナに供給する。このような構成によって、分離構成された複数の送電ユニット間の位相同期制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2021-507663号公報
【特許文献2】特開2004-7932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に開示された送電システムは、パイロット信号と送電信号に同じ周波数を用いる。このため、パイロット信号と送電信号が干渉し、目標の方向推定の精度が低下するおそれがある。
【0007】
同様に、パイロット信号を用いて通信ビームを形成する通信システムでも、パイロット信号と通信信号が干渉し、目標の方向推定の精度が低下するおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、パイロット信号と送信信号の干渉を抑制した送信装置、及びそれを備える送信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の送信装置は、複数の受信用アンテナ素子及び複数の送信用アンテナ素子を有するアレイアンテナと、それぞれ前記複数の受信用アンテナ素子及び前記複数の送信用アンテナ素子に接続された複数の位相共役回路と、を備え、前記位相共役回路は、それぞれ、前記受信用アンテナ素子で受信されたパイロット信号を入力され、前記送信用アンテナ素子に供給される送信信号を出力し、前記それぞれの位相共役回路から出力される送信信号の周波数は、前記それぞれの位相共役回路に入力されたパイロット信号の周波数の1/2倍に等しく、前記それぞれの位相共役回路から出力される送信信号の、前記複数の位相共役回路のうちの任意の1つの位相共役回路から出力される送信信号に対する位相差は、前記それぞれの位相共役回路に入力されたパイロット信号の、前記任意の1つの位相共役回路に入力されたパイロット信号に対する位相差の-1/2倍に等しい。
【0010】
本発明の送信システムは、本発明の送信装置と、レクテナを有する受信装置と、を備え、前記レクテナは、前記レクテナに到達した前記送信信号の一部を2次高調波として反射することで、前記パイロット信号を発生させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パイロット信号と送信信号の干渉を抑制し、目標の方向推定の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明の実施形態に係る送電システム10の概念図である。
図2図2は受電装置30に設けられたレクテナ31のブロック図である。
図3図3は送電装置20の主要部のブロック図である。
図4図4(A)及び図4(B)は送電ビームの形成を説明するための概念図である。
図5図5は位相共役回路40のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以降、本発明を実施するための複数の形態を示す。それぞれの実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能である。それぞれの実施形態では、その実施形態以前に説明した点と異なる点について説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0014】
本発明の実施形態に係る送信システムはレトロディレクティブ方式の送電システムでもよい。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る送電システム10の概念図である。送電システム10は送電装置20及び受電装置30を備える。送電装置20は本発明の「送信装置」の一例である。受電装置30は本発明の「受信装置」の一例である。送電システム10は次のように動作する。
【0016】
送電装置20は、最初に短時間だけ、周波数fの送電信号を広角に又は等方的に放射する。送電装置20によって放射される送電信号の周波数は例えば2.45GHzである。送電装置20によって放射される送電信号は本発明の「送信信号」の一例である。
【0017】
受電装置30は、受電装置30に到達した送電信号の一部を2次高調波として反射することで、周波数2fのパイロット信号を発生させる。パイロット信号の周波数は例えば4.9GHzである。送電装置20は、送電装置20に到達したパイロット信号の位相を用いて、パイロット信号の到来方向を向き、パイロット信号の到来経路を再現する周波数fの送電ビームを形成する。換言すれば、送電装置20は、パイロット信号の到来方向に向けて周波数fの送電信号を放射する。これにより、受電装置30はパイロット信号の放射を続け、送電装置20は送電信号の放射を続ける。
【0018】
送電装置20は、例えば、送電開始から所定時間の経過後に送電を停止してもよいし、受電装置30から受けた停止命令に応じて送電を停止してもよい。
【0019】
なお、送電装置20は、送電装置20の周囲を走査するように最初の送電信号を放射してもよい。
【0020】
受電装置30が移動すると、パイロット信号の到来経路が変化する。送電装置20は、変化したパイロット信号の到来経路を再現する送電ビームを形成する。このように、送電装置20は、受電装置30を自動追尾して受電装置30に送電することができる。
【0021】
図2は受電装置30に設けられたレクテナ31のブロック図である。レクテナ31はアンテナ32及び整流回路33を備える。整流回路33は、アンテナ32と負荷の間に接続され、シャント接続されたダイオードで構成される。レクテナ31は、一般的なレクテナに設けられる、高調波の再放射を防止するフィルタを備えていない。このため、整流回路33による整流時に発生する高調波はアンテナ32から放射される。これにより、レクテナ31は、レクテナ31に到達した送電信号の一部を2次高調波として反射する。
【0022】
図3は送電装置20の主要部のブロック図である。送電装置20はアレイアンテナ21及び複数の位相共役回路40を備える。アレイアンテナ21は複数の受信用アンテナ素子22及び複数の送電用アンテナ素子23を有する。送電用アンテナ素子23は本発明の「送信用アンテナ素子」の一例である。受信用アンテナ素子22はパイロット信号の周波数2fで動作し、送電用アンテナ素子23は送電信号の周波数fで動作する。受信用アンテナ素子22と送電用アンテナ素子23は受信と送電を分離するように働く。位相共役回路40は、それぞれ、対をなす受信用アンテナ素子22と送電用アンテナ素子23に接続される。位相共役回路40は、それぞれ、受信用アンテナ素子22で受信されたパイロット信号を入力され、送電用アンテナ素子23に供給される送電信号を出力する。送電装置20は、それぞれの位相共役回路40に接続された局部発振器24をさらに備える。局部発振器24は、それぞれの位相共役回路40で共有され、それぞれの位相共役回路40に共通の基準信号を供給する。送電装置20は、最初の送電信号を放射するために、図3に示された回路とは別に設けられた一般的な送信回路(図示せず)をさらに備える。
【0023】
なお、送電装置20は、受信用アンテナ素子22及び送電用アンテナ素子23に代えて、2つの周波数で動作して受信と送電に共用されるアンテナ素子を備えてもよい。この場合、受信と送電に共用されるアンテナ素子が、本発明の「受信用アンテナ素子」の一例になると共に、本発明の「送信用アンテナ素子」の一例にもなる。
【0024】
それぞれの位相共役回路40から出力される送電信号の周波数は、それぞれの位相共役回路40に入力されたパイロット信号の周波数の1/2倍に等しい。それぞれの位相共役回路40から出力される送電信号の、複数の位相共役回路40のうちの任意の1つの位相共役回路40から出力される送電信号に対する位相差は、それぞれの位相共役回路40に入力されたパイロット信号の、上記の任意の1つの位相共役回路40に入力されたパイロット信号に対する位相差の-1/2倍に等しい。
【0025】
即ち、送電信号の周波数はfであり、パイロット信号の周波数は2fである。また、時間tにおいて、n番目の受信用アンテナ素子22で取得されてn番目の位相共役回路40に入力されたパイロット信号の位相が2(ωt-θ)である場合、n番目の位相共役回路40から出力されてn番目の送電用アンテナ素子23に入力される送電信号の位相はωt+α+θである。ここで、2ωはパイロット信号の角周波数である。-2θは、n番目の位相共役回路40に入力されたパイロット信号の、1番目の位相共役回路40に入力されたパイロット信号に対する位相差である。αは、時間t=0において1番目の位相共役回路40から出力される送電信号の位相である。
【0026】
なお、受信用アンテナ素子22、送電用アンテナ素子23、及び位相共役回路40の順番は、それぞれの受信用アンテナ素子22、送電用アンテナ素子23、及び位相共役回路40を区別するための便宜的なものである。
【0027】
図4(A)及び図4(B)は送電ビームの形成を説明するための概念図である。図4(A)に例示されるように、n番目の受信用アンテナ素子22で取得された周波数2fのパイロット信号の位相は、1番目の受信用アンテナ素子22で取得されたパイロット信号の位相より2θn遅れていたとする。その場合、図4(B)に例示されるように、n番目の送電用アンテナ素子23に入力される周波数fの送電信号の位相が、1番目の送電用アンテナ素子23に入力される周波数fの送電信号の位相よりθn進んでいれば、それぞれの送電用アンテナ素子23から放射される送電信号の電波又はマイクロ波の等位相面はパイロット信号の到来方向を向く。このため、パイロット信号の周波数が2fであり、n番目の受信用アンテナ素子22で取得されたパイロット信号の位相が2(ωt-θ)である場合、送電信号の周波数がfであり、n番目の送電用アンテナ素子23に入力される送電信号の位相がωt+α+θであれば、パイロット信号の到来方向を向く送電ビームが形成される。
【0028】
図5は位相共役回路40のブロック図である。位相共役回路40は、それぞれ、入力端と出力端との間に直列又は縦続接続された、ハイパスフィルタ41、低雑音増幅器42、ミキサー43、分周器44、ローパスフィルタ45、及び電力増幅器46を有する。ハイパスフィルタ41は本発明の「第2フィルタ」の一例である。ローパスフィルタ45は本発明の「第1フィルタ」の一例である。
【0029】
ハイパスフィルタ41は、ミキサー43の入力側に接続され、位相共役回路40に入力されたパイロット信号を通過させ、受信用アンテナ素子22で阻止されずに位相共役回路40に入力された送電信号を遮断する。これにより、受信と送電の分離が高まり、パイロット信号と送電信号の干渉がさらに抑制される。
【0030】
ミキサー43は、低雑音増幅器42で増幅されたパイロット信号と、局部発振器24が発生させた基準信号をミキシングする。基準信号は、パイロット信号の周波数の2倍の周波数を有し、それぞれの位相共役回路40で同位相を有する。即ち、基準信号は周波数4f及び位相2(2ωt+θLO)を有する。ここで、2θLOは時間t=0における基準信号の位相である。ミキサー43は、周波数6f及び位相2(3ωt+θLO-θn)を有する信号と、周波数2f及び位相2(ωt+θLO+θn)を有する信号を出力する。
【0031】
分周器44は、ミキサー43から出力されて伝送された信号の周波数を1/2に分周する。このため、分周器44は、周波数2f及び位相2(ωt+θLO+θn)を有する信号を入力されると、周波数f及び位相ωt+θLO+θnを有する信号を出力する。
【0032】
なお、分周器44は、周波数6fの入力信号に対して動作してもよいが、周波数6fの入力信号に対して動作しないことが好ましい。
【0033】
ローパスフィルタ45は、ミキサー43から出力されて伝送された2つの異なる周波数を有する信号のうち、より低い周波数を有する信号を通過させる。即ち、ローパスフィルタ45は、ミキサー43から出力されて分周器44を通って伝送された周波数fの信号を通過させる。また、分周器44が周波数6fの入力信号に対して動作する場合、又は分周器44が周波数6fの入力信号に対して予期せず動作した場合、ローパスフィルタ45は、ミキサー43から出力されて分周器44を通って伝送された周波数3fの信号を遮断する。
【0034】
電力増幅器46は、周波数fを含む周波数範囲で所定の利得を有し、ローパスフィルタ45を通過した信号を増幅して送電用アンテナ素子23に供給する。
【0035】
従って、n番目の位相共役回路40は、周波数2f及び位相2(ωt-θ)を有するパイロット信号を入力されると、周波数f及び位相ωt+θLO+θnを有する送電信号を出力する。
【0036】
なお、位相共役回路40は、ハイパスフィルタ41に代えてバンドパスフィルタを有してもよく、ローパスフィルタ45に代えてバンドパスフィルタを有してもよい。
【0037】
また、位相共役回路40は、ローパスフィルタ45に代えて、又はローパスフィルタ45と共に、ミキサー43と分周器44の間に接続され、周波数2fの信号を通過させて周波数6fの信号を遮断するローパスフィルタを有してもよい。
【0038】
また、位相共役回路40は、ミキシングを行った後に分周を行うが、分周を行った後にミキシングを行ってもよい。
【0039】
また、それぞれの位相共役回路40は、局部発振器24が発生させた基準信号に代えて、任意の1つの受信用アンテナ素子22で受信されたパイロット信号を2逓倍して生成された基準信号を用いてもよい。
【0040】
また、位相共役回路40はハイパスフィルタ41及び低雑音増幅器42を必須としない。
【0041】
本実施形態によれば、送電装置20は位相共役回路40でパイロット信号の周波数を変換して送電信号を生成し、受電装置30は送電信号の一部を2次高調波として反射することでパイロット信号を発生させる。これにより、周波数の異なるパイロット信号と送電信号を利用できる。このため、パイロット信号と送電信号の干渉を抑制し、受電装置30の方向推定の精度を高めることができる。無線送電では、送電信号の強度がパイロット信号の強度よりはるかに強いため、パイロット信号と送電信号の干渉が特に問題になる。また、無線送電では、送電ビームが高い方向精度を有する必要がある。このため、上記の本実施形態の効果は特に顕著である。
【0042】
また、送電システム10はハードウェア・レトロディレクティブ方式の送電システムであり、位相共役回路40はアナログ回路で構成される。このため、送電システム10では、ソフトウェア・レトロディレクティブ方式の送電システムと比較して、受電装置30の方向検出からビームの送電までの応答時間が短い。それ故、高速な自動追尾が可能であり、スマートフォン、ドローン、EV等の移動体への給電が容易になる。
【0043】
また、位相共役回路40は、ソフトウェア・レトロディレクティブ方式の位相共役回路より非常に簡素な構成を有し、一般的なハードウェア・レトロディレクティブ方式の位相共役回路と比較してもほぼ同じ程度の簡素な構成を有する。さらに、ソフトウェア・レトロディレクティブ方式の位相共役回路は、位相共役をとるために、高価な移相器を必要とする。これに対して、位相共役回路40は、ハードウェア・レトロディレクティブ方式の位相共役回路であり、移相器を有しない。このため、送電システム10は、低コストで作製でき、実用化に有利である。
【0044】
また、一般的なレトロディレクティブ方式の送電システムでは、受電装置が、受電装置に設けられた電池を用いてパイロット信号を放射する。このため、受電装置は、パイロット信号を放射するための電源を必要とする。また、受電装置の電池が送電開始前に切れていると、送電装置は送電を開始することができない。本実施形態によれば、送電装置20は、最初に送電信号を広角に放射すると共に、パイロット信号を受信すれば送電ビームを形成する。受電装置30は、送電信号の一部を2次高調波として反射することでパイロット信号を発生させる。このため、受電装置30は、パイロット信号を放射するための電源を必要としない。また、受電装置30の電池が送電開始前に切れていても、送電装置20は送電を開始することができる。それ故、送電システム10は、受電装置30の電池残量に依存しないシステムであり、広い応用範囲を有する。
【0045】
また、複数の受電装置30が送電装置20の送電可能な周囲内にあれば、送電装置20はその複数の受電装置30に同時に送電することができる。
【0046】
このように、送電システム10は、簡素に作製できるにもかかわらず、多くの利点を有する。
【0047】
送電システム10は、例えば、スマートフォン、IоTデバイス等への無線充電、ドローン等の飛行体への無線充電、工場内で稼働するAGV、EV等への無線充電に利用することができる。
【0048】
なお、本発明の別の実施形態に係る受電装置は、送電信号を反射することでパイロット信号を生成する代わりに、受電装置に設けられた電源を用いてパイロット信号を生成してもよい。
【0049】
また、本発明のさらに別の実施形態に係る送信システムは、ここまでに説明されたような位相共役回路を備えたレトロディレクティブ方式の通信システムでもよい。この通信システムの送信装置は、目標から放射された周波数2fのパイロット信号を受信すると、パイロット信号の到来方向を向く周波数fの通信ビームを形成する。
【0050】
この通信システムの位相共役回路は、電力増幅器を有してもよいが、電力増幅器を必須としない。
【0051】
最後に、上記の実施形態の説明は、すべての点で例示であり、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上記の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10…送電システム
20…送電装置
21…アレイアンテナ
22…受信用アンテナ素子
23…送電用アンテナ素子
24…局部発振器
30…受電装置
31…レクテナ
32…アンテナ
33…整流回路
40…位相共役回路
41…ハイパスフィルタ
42…低雑音増幅器
43…ミキサー
44…分周器
45…ローパスフィルタ
46…電力増幅器
図1
図2
図3
図4
図5