(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085656
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】ロックボルト用荷重センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
G01L5/00 103D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199804
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】509294922
【氏名又は名称】ムネカタインダストリアルマシナリー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303006606
【氏名又は名称】寿建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【弁理士】
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】海野 雄士
(72)【発明者】
【氏名】桑田 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】郡司 資孝
(72)【発明者】
【氏名】森崎 達之助
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA06
2F051AB09
(57)【要約】
【課題】ロックボルト用荷重センサを構成する部品数の低減を図り、現場における設置作業の負担を軽減する。
【解決手段】ロックボルト用荷重センサは、一体形成された部材によって構成された本体部8と、歪みゲージ6とを有する。本体部8は、ナット部8aと、起歪部8bと、貫通孔とを有する。ナット部8aは、多角形状の外形を有する。起歪部8bは、ナット部8aの軸方向に配置され、ロックボルトを介して伝達された外力によって歪み変形する。貫通孔は、ナット部8aおよび起歪部8bを軸方向に貫通しており、ロックボルトと係合するネジ部が部分的に形成されている。歪みゲージ6は、起歪部8bに取り付けられており、起歪部8bの歪み量に基づいて荷重値を特定するために設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックボルト用荷重センサにおいて、
一体形成された部材によって構成されており、多角形状の外形を有するナット部と、前記ナット部の軸方向に配置され、かつ、ロックボルトを介して入力された外力によって歪み変形する起歪部と、前記ナット部および前記起歪部を軸方向に貫通し、かつ、前記ロックボルトと係合するネジ部が部分的に形成された貫通孔と、を有する本体部と、
前記起歪部に取り付けられ、前記起歪部の歪み量に基づいて荷重値を特定するための歪みゲージと
を有することを特徴とするロックボルト用荷重センサ。
【請求項2】
前記歪みゲージは、前記起歪部の外面に接合されており、前記起歪部の歪み量に基づいて抵抗体の抵抗値が変化することを特徴とする請求項1に記載されたロックボルト用荷重センサ。
【請求項3】
前記起歪部の周囲に配置され、前記歪みゲージを覆い隠すカバー部をさらに有することを特徴とする請求項2に記載されたロックボルト用荷重センサ。
【請求項4】
前記本体部は、前記ナット部と前記起歪部との間に介在し、かつ、前記ナット部および前記起歪部よりも大きな外径を有するフランジ部を有することを特徴とする請求項3に記載されたロックボルト用荷重センサ。
【請求項5】
前記ナット部は、前記起歪部よりも大きな外形を有することを特徴とする請求項3に記載されたロックボルト用荷重センサ。
【請求項6】
前記歪みゲージによって特定された荷重値を温度センサによって検知された温度で補正するデータ処理部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載されたロックボルト用荷重センサ。
【請求項7】
前記歪みゲージによって特定された前記荷重値を外部システムに無線で送信する無線通信部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載されたロックボルト用荷重センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックボルト用荷重センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山岳トンネルや斜面切土などを掘削する際、モルタルやコンクリートが吹き付けられた地山を安定化するためにロックボルト(鉄筋等)を打ち込み、このロックボルトの荷重を測定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、本出願の
図8に示すように、テンドン20(ボルト部材)に取り付けられた状態であってもセンサ24を交換可能なアンカー軸力計21が開示されている。このアンカー軸力計21は、軸方向の下方から順に、軸力計受板26、起歪体25、支持体23および定着具22(ナット)を有している。また、起歪体25の上下の端部は、径方向外側に突出したフランジ部が設けられており、これらのフランジ部によって、起歪体25の歪みを計測するセンサ24が機械的に着脱自在に挟持・固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
しかしながら、ロックボルト用荷重センサにおいて、これを構成する部品数が多いと、施工現場において設置作業に時間が掛かり、作業負担が大きいといった問題が生じる。例えば、上述した特許文献1の場合、定着具22によるボルト締めに先立ち、軸力計受板26、起歪体25および支持体23をボルト部材に順次挿入する必要がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ロックボルト用荷重センサを構成する部品数の低減を図り、現場における設置作業の負担を軽減することである。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる課題を解決すべく、本発明は、一体形成された部材によって構成された本体部と、歪みゲージとを有するロックボルト用荷重センサを提供する。本体部は、ナット部と、起歪部と、貫通孔とを有する。ナット部は、多角形状の外形を有する。起歪部は、ナット部の軸方向に配置され、ロックボルトを介して入力された外力によって歪み変形する。貫通孔は、ナット部および起歪部を軸方向に貫通しており、ロックボルトと係合するネジ部が部分的に形成されている。歪みゲージは、起歪部の歪み量に基づいて荷重値を特定するために設けられている。
【0007】
ここで、本発明において、上記歪みゲージは、起歪部の外面に接合されており、起歪部の歪み量に基づいて抵抗体の抵抗値が変化することが好ましい。この場合、起歪部の周囲に配置され、歪みゲージを覆い隠すカバー部を設けてもよい。この場合、本体部は、ナット部と起歪部との間に介在しており、ナット部および起歪部よりも大きな外径を有するフランジ部を有していてもよいし、ナット部は、起歪部よりも大きな外形を有していてもよい。
【0008】
本発明において、歪みゲージによって検知された荷重値を温度センサによって検知された温度で補正するデータ処理部とを設けてもよい。また、歪みゲージによって特定された荷重値(データ処理部によって補正された荷重値を含む。)外部システムに無線で送信する無線通信部を設けてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本体部として、ナット部および起歪部を一体化することにより、部品数を低減できるので、現場におけるロックボルト用荷重センサの設置作業の負担を軽減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係るロックボルト用荷重センサの全体図である。この荷重センサ1は、センサ部2と、測定ユニット3とを主体に構成されている。センサ部2は、地山に打ち込まれたロックボルト4の露出端において、角ワッシャ5を介して取り付けられており、ロックボルト4を介して伝達された外力によって生じた自己の歪み変形に基づいて、荷重値を特定するために用いられる。また、センサ部2には、歪みゲージ6および温度センサ7が取り付けられている。歪みゲージ6は、センサ部2における特定部位(後述する起歪部8b)の歪み量を検知し、温度センサ7は、当該部位の温度を検知する。
【0012】
ここで、荷重センサ1の測定対象であるロックボルト4は、一般に、山岳トンネルや斜面切土などを掘削する際、モルタルやコンクリートが吹き付けられた地山を安定化するために用いられる部材を指すが、本明細書では、構造用部材や設備機器などをコンクリートに固定するために用いられるアンカーボルト等も包含する広い概念として用いる。
【0013】
測定ユニット3は、センサ部2に接続されており、データ処理部3aと、無線通信部3bとを主体に構成されている。また、測定ユニット3の駆動に必要な電力は、内蔵されたバッテリー3c(乾電池やボタン電池などを含む。)によって賄われる。データ処理部3aは、歪みゲージ6によって検知された歪み量に基づいて荷重値を特定する。外力の作用によって生じた部材の歪み量は荷重値と一対一の関係にあることから、歪み量から荷重値を一義的に特定することができる。本実施形態では、荷重値の温度補償を行うべく、温度センサ7によって検知された温度も考慮している。なお、温度センサ7は、センサ部2側に設けてもよいが、測定ユニット3側に設けてもよい。
【0014】
荷重値の特定手法としては、以下に例示する手法を任意に採用することができる。第1の手法は、予め設定された関数を用いる手法である。具体的には、まず、歪み量を入力として基本荷重値を出力する第1の関数を用いて、歪みゲージ6によって検知された歪み量から基本荷重値が算出される。つぎに、基本荷重値および温度を入力として補正荷重値を出力とする第2の関数を用いて、基本荷重値と、温度センサ7によって検知された温度とから補正荷重値が算出され、これがセンサ出力(荷重値)とされる。また、これに代えて、第1および第2の関数を一つに統合して、単一の演算で補正荷重値を算出してもよい。
【0015】
第2の手法は、予め用意されたテーブルを参照する手法である。具体的には、まず、歪み量と基本荷重値との関係が記述された第1のテーブルを参照して、歪みゲージ6によって検知された歪み量から基本荷重値が特定される。つぎに、基本荷重値、温度および補正荷重値の関係が記述された第2のテーブルを参照して、基本荷重値と、温度センサ7によって検知された温度とから、補正荷重値が特定され、これがセンサ出力(荷重値)とされる。また、これに代えて、第1および第2のテーブルを一つに統合して、単一のテーブル参照で補正荷重値を特定してもよい。さらに、以上のような第1および第2の手法を併用してもよい。
【0016】
無線通信部3bは、データ処理部3aによって特定された荷重値(温度補償された荷重値を含む。)を外部システムに無線で送信する。これにより、インターネット等にネットワーク接続されたPCやクラウドが備える記憶装置に荷重値が時系列的なデータとして保存される。記憶装置に蓄積されたデータは、ビックデータ解析(異常警報や傾向把握など)のために用いられる。
【0017】
図2は、センサ部2の上斜視図であり、
図3は、その下斜視図である。このセンサ部2は、本体部8と、カバー部9とを主体に構成されている。本体部8は、ステンレスや鉄といった金属で一体形成されている。カバー部9は、リング状または円筒状の形状を有し、ステンレスや鉄といった金属または樹脂材などで一体形成されている。カバー部9は、複数のボルト10によって本体部8の軸方向(同軸上)に固定されている。カバー部9は、センサ部2内に搭載された複数の歪みゲージ6を覆い隠して、歪みゲージ6を保護する役割を担っている。それぞれの歪みゲージ6の出力信号は、リード線11を介して外部に引き出され、測定ユニット3に入力される。
【0018】
図4は、本体部8の側面図である。この本体部8は、一体形成された部材によって構成されており、ナット部8aと、起歪部8bと、フランジ部8cとを有する。ナット部8aは、多角形状、具体的には六角形状の外形を有しており、ロックボルト4に本体部8を装着する際、スパナ等の工具と係合する。起歪部8bは、ナット部8aの軸方向に配置されており、内部が中空である円筒状の形状を有する。起歪部8bは、ロックボルト4を介して入力された外力によって歪み変形する。フランジ部8cは、本体部8の一部としてナット部8aと起歪部8bとの間に介在しており、側方に向かって円板状に突出している。これにより、フランジ部8cは、ナット部8aおよび起歪部8bよりも大きな外径を有する。フランジ部8cを設ける理由は、起歪部8bの周囲に配置されたカバー部9の軸方向の変位を規制するためである。
【0019】
また、起歪部8bの外面(外周面)には、少なくとも一つ、例えば90度の間隔で4つの歪みゲージ6が取り付けられている。本実施形態では、歪みゲージ6として、自己に加わる外力に応じて伸縮することによって、抵抗体の電気的特性が変化するシート状のものを用いており、起歪部8bの外側面に接合(面状に接している状態)されている。外力によって歪みゲージ6が縮むと、抵抗体の抵抗値が小さくなる。この抵抗値の変化(印加電圧の電圧変化)をモニタリングすることで、測定箇所における歪みの程度が検知される。歪みゲージ6を構成する材料としては、例えば、電気抵抗が比較的大きいカーボン材などを用いることができる。
【0020】
図5は、本体部8の断面図である。本体部8の中心には、本体部8の上下を軸方向に貫通、すなわち、ナット部8aの上面から起歪部8bの下面に至るまで貫通する貫通孔8dが設けられている。この貫通孔8dは、ロックボルト4と係合するネジ部が部分的に形成されている。具体的には、このネジ部は、少なくともナット部8aと位置的に対応する上側の部位のみに設けられている。そして、起歪部8bと位置的に対応する下側の部位にはネジ部は設けられておらず、上側の部位よりも若干広い径になっている。これにより、ロックボルト4に本体部8が螺合している状態では、起歪部8bを中心に外力による歪み変形が生じ、ナット部8aにおける歪み変形はロックボルト4との螺合によって規制されることになる。
【0021】
センサ部2の形状は、上述した形状以外に以下に例示するような形状であってもよい。
図6は、第1の変形例に係るセンサ部2の側面図である。このセンサ部2は、上述したフランジ部8cを有しておらず、ナット部8aおよび起歪部8bのみによって本体部8が構成されている。ただし、フランジ部8cをなくした代わりに、ナット部8aは、起歪部8bよりも大きな外形に形成されている。これにより、カバー部9は、その上面が大径なナット部8aの下面と当接して、ナット部8aによって軸方向の変位が規制される。
【0022】
図7は、第2の変形例に係るセンサ部2の上斜視図である。このセンサ部2では、カバー部9の上部に形成された開口部にフランジ部8cを挿入して、両者を係合・固定する。これにより、カバー部9は、フランジ部8cと当接して、フランジ部8cによって軸方向の変位が規制される。
【0023】
このように、本実施形態によれば、ナット部8aおよび起歪部8bを一体化することにより、ロックボルト用荷重センサ1を構成する部品数を低減できる。荷重センサ4の取り付けに際しては、ロックボルト4に角ワッシャ5を挿入した上で、センサ部2をロックボルト4に螺合させればよい。これにより、現場におけるロックボルト用荷重センサ1の設置作業の負担を軽減することが可能になる。
【0024】
また、本実施形態によれば、起歪部8bの外面に歪みゲージ6を接合することで、起歪部8bの歪みが抵抗値にダイレクトに反映されるので、歪み量の検知精度の向上を図ることが可能になる。
【0025】
さらに、本実施形態によれば、起歪部8bの外面に設けられた歪みゲージ6をカバー部9で覆い隠すことで、歪みゲージ6を有効に保護できる。
【符号の説明】
【0026】
1 ロックボルト用荷重センサ
2 センサ部
3 測定ユニット
3a データ処理部
3b 無線通信部
3c バッテリー
4 ロックボルト
5 角ワッシャ
6 歪みゲージ
7 温度センサ
8 本体部
8a ナット部
8b 起歪部
8c フランジ部
8d 貫通孔
9 カバー部
10 ボルト
11 リード線