(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085671
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】ろう付構造体のかしめ構造およびその構造を用いた熱交換器
(51)【国際特許分類】
B21D 39/03 20060101AFI20230614BHJP
B21D 53/04 20060101ALI20230614BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
B21D39/03 B
B21D53/04 Z
B23K1/00 330K
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199835
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(72)【発明者】
【氏名】三宅 利明
(72)【発明者】
【氏名】洲脇 隆志
(57)【要約】
【課題】 熱交換器をはじめとする、複数部品を1回のかしめ、により仮固定するためのろう付構造体のかしめ構造を提供すること。
【解決手段】 かしめ部3が、第1部品2aの板状部1に形成された貫通孔4または半抜き構造5と、第2部品2bの板状部1に形成された半抜き凸部5aおよび、その裏面側に半抜き凸部5aと一体の半抜き凹部5bと、第3部品2cの板状部1に形成された半抜き凸部5aおよび、その裏面側に半抜き凸部5aと一体の半抜き凹部5bと、を具備し、前記第2部品2bおよび第3部品2cの半抜き凸部5aが、かしめにより、それらの半抜き凸部5aが挿入された貫通孔4または半抜き凹部5bと係合しており、それらの部品2a、2b、2cが板状部1でそれらの厚み方向に積層された状態で接合されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ板状部(1)を有する第1部品(2a)と第2部品(2b)と第3部品(2c)を有し、
前記板状部(1)でそれらの厚み方向に積層された各部品(2a、2b、2c)間が、かしめ部(3)で互いに固定されるろう付構造体のかしめ構造において、
前記かしめ部(3)は、
前記第1部品(2a)の板状部(1)に形成された貫通孔(4)または半抜き構造(5)と、
前記第2部品(2b)の板状部(1)に形成された半抜き凸部(5a)および、その裏面側に半抜き凸部(5a)と一体の半抜き凹部(5b)と、
前記第3部品(2c)の板状部(1)に形成された半抜き凸部(5a)および、その裏面側に半抜き凸部(5a)と一体の半抜き凹部(5b)と、を具備し、
前記第2部品(2b)および第3部品(2c)の半抜き凸部(5a)が、かしめにより、それらの半抜き凸部(5a)が挿入された貫通孔(4)または半抜き凹部(5b)と係合しており、
前記第1部品(2a)と第2部品(2b)と第3部品(2c)が接合されていることを特徴とするろう付構造体のかしめ構造。
【請求項2】
請求項1に記載のろう付構造体のかしめ構造を有する熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱交換器をはじめとする、ろう付構造体のかしめ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器等の板材が互いにろう付固定される製品において、そのろう付前に、部品を重ねて、かしめることにより、仮固定する場合がある。
図5(A)は従来のかしめを用いたろう付構造体の一例(この例では、熱交換器)を示す底面図であり、(B)はそのB-B断面図であり、(C)はそのC-C断面図である。
この従来例では、第1部品22a(熱交換器の下端の出口側マニホールド部28)と、その下面に接する第2部品22b(第1ブラケット29)、および第3部品22c(第2ブラケット30)が積層されている。
このかしめ工程は、先ず、B-B断面のかしめ部の位置で、第1部品22aの貫通孔24に第2部品22bの半抜き凸部25aが挿入され、第2部品22bの半抜き凸部25aが、かしめられて固定される。次に、第2部品22bと第3部品22cとの間は、C-C断面のかしめ部の位置(B-B断面と異なる位置)で、同様に、第3部品22cの半抜き凸部25aと第2部品22bの貫通孔24とで、かしめられて固定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ろう付構造体のかしめ構造においては、2つの部品の接合面同士の傾きや、接合面の隙間発生はろう付不良につながるため、かしめ構造が複数配置される。
この場合、3つ以上の部品を重ねるとさらに、かしめ構造を増加させる必要がある。また、かしめ治具の径により、かしめ構造間の距離が制限され、設計の自由度が低下する。
さらに、第1部品22aと第2部品22bのかしめ部をかしめる前に第3部品22cを重ねると、
図5(B)に示す如く、それらを支える図示しない受け治具の配置が難しい場合がある。
半抜き凸部25aより、それの挿入される半抜き凹部25bまたは貫通孔24がわずかに大きく、この寸法の差により、かしめ前は半抜き凸部を半抜き凹部または貫通孔24に挿入しても、部品が動く範囲が存在する。
第1部品22aを基準に第2部品22bをかしめ、第3部品22cを基準に第1部品22a、第2部品22bの組み合わせ部品とをかしめるように、3部品22a、22b、22cを2回のかしめで固定する場合、固定基準が統一できず、それぞれの部品22a、22b、22cの半抜き凸部25aと半抜き凹部25bまたは貫通孔24の軸がずれる。
【0004】
このかしめ構造を、
図5(A)のような熱交換器に適用する場合でも、かしめ構造の配置は制限され、設計の自由度が低下する。
例えば、積層する各ブラケット29、30の曲げ部がかしめ構造の位置に近いと、各ブラケット29、30の曲げ部にかしめ治具が干渉する。また、別の例として、ラジエータのコアサポートへかしめ構造により付くブラケットの場合、ブラケットだけでなく、コアサポートのフランジ形状にもかしめ治具が干渉する可能性がある。
なお、3部品をまとめてかしめると、かしめ時の部品固定の基準を一度に統一でき、(第1部品を基準に第2、3部品をかしめる)寸法精度が向上する。
しかしながら、3つ以上の部品をまとめてかしめる具体的な構造は、現在、提案されていない。
【0005】
本発明は、3つ以上の部品をまとめてかしめる具体的な構造を提供することを課題とする。また、かしめ工数の低減することにより、設計の自由度を向上させることが可能なかしめ構造の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、それぞれ板状部1を有する第1部品2aと第2部品2bと第3部品2cを有し、
前記板状部1でそれらの厚み方向に積層された各部品2a、2b、2c間が、かしめ部3で互いに固定されるろう付構造体のかしめ構造において、
前記かしめ部3は、
前記第1部品2aの板状部1に形成された貫通孔4または半抜き構造5と、
前記第2部品2bの板状部1に形成された半抜き凸部5aおよび、その裏面側に半抜き凸部5aと一体の半抜き凹部5bと、
前記第3部品2cの板状部1に形成された半抜き凸部5aおよび、その裏面側に半抜き凸部5aと一体の半抜き凹部5bと、を具備し、
前記第2部品2bおよび第3部品2cの半抜き凸部5aが、かしめにより、それらの半抜き凸部5aが挿入された貫通孔4または半抜き凹部5bと係合しており、
前記第1部品2aと第2部品2bと第3部品2cが接合されていることを特徴とするろう付構造体のかしめ構造である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のろう付構造体のかしめ構造を有する熱交換器である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、かしめ部3が、前記第1部品2aの板状部1に形成された貫通孔4または半抜き構造5と、前記第2部品2bの板状部1に形成された半抜き凸部5aおよび、その裏面側に半抜き凸部5aと一体の半抜き凹部5bと、前記第3部品2cの板状部1に形成された半抜き凸部5aおよび、その裏面側に半抜き凸部5aと一体の半抜き凹部5bと、を具備し、前記第2部品2bおよび第3部品2cの半抜き凸部5aが、かしめにより、それらの半抜き凸部5aが挿入された貫通孔4または半抜き凹部5bと係合しており、前記第1部品2aと第2部品2bと第3部品2cが接合されていることを特徴とするろう付構造体のかしめ構造である。
そのため、各部品2a、2b、2cのかしめ部3が厚み方向に重なり、かしめ部位が厚み方向に一つになるため、設計の単純化を図ることができる。また、かしめ部3が重なり、1度にまとめて3部品間をかしめられて、かしめ工数を減らすことができる。そして各部品2a、2b、2cの寸法精度を向上できる。
【0009】
請求項2に記載の本発明のように、請求項1に記載のろう付構造体のかしめ構造を有する熱交換器である場合は、熱交換器を組み立てる工数を削減し、熱交換器において寸法精度を向上することができる。また、半抜き構造5の数が削減できることにより、設計の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のかしめ構造を有する熱交換器の正面図。
【
図2】同熱交換器の底面図であり、同図(A)は熱交換器、第1ブラケット9、および第2ブラケット10の締結状態を示す底面図、同図(B)は、
図2(A)のB部拡大図。
【
図4】本発明のかしめ構造を成形する工程を示す説明図。
【
図5】従来のかしめ構造を有するろう付構造体を示し、同図(A)は、そのろう付構造体の底面図であり、同図(B)は
図5(A)のB-B矢視断面図、同図(C)は
図5(A)のC-C矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のかしめ構造を有する熱交換器であり、
図2(A)はその熱交換器および、その第1ブラケット9、第2ブラケット10の締結状態を示す底面図であり、同図(B)は、
図2(A)のB部拡大図である。
図3は、
図2(B)のIII-III矢視断面図である。
一例として、熱交換器とそれに接続される複数のブラケットのかしめ構造(仮固定の構造)について説明するが、ブラケットの代わりにパッチプレートをはじめとする、板状部を持つ部品であってもよい。また、他の構造物の仮固定の構造としても適用することもできる。
【0012】
本発明のかしめ構造が適用される一例を示す熱交換器は、
図1に示す如く、一対の対向するカッププレート6の積層体により、内部流体が流通する流路が形成されている。その熱交換器の最下段に位置するカッププレート6には、内部流体の出口側のマニホールド部8が形成されている。
【0013】
この例では、
図2に示すように、熱交換器の出口側のマニホールド部8(第1部品2aに相当)に、第1ブラケット9(第2部品2bに相当)、第2ブラケット10(第3部品2cに相当)が積層されている。
各部品8、9、10の積層される部位は、板状部1で構成され、各部品8、9、10の板状部21に、かしめ部3が形成されている。
かしめ部3は、
図3に示す如く、貫通孔4と半抜き構造5からなる。
半抜き構造5は、部品2の一方の面に半抜き凸部5aが、その半抜き凸部5aの位置の反対の面に半抜き凹部5bが形成されている。
【0014】
本発明の特徴は、複数の部品を積層して取付ける際のかしめ部3に特徴がある。
図3に示す如く、出口側のマニホールド部8の板状部1には、貫通孔4(半抜き構造5でも可)が形成されている。第1ブラケット9および第2ブラケット10の板状部1には、半抜き構造5が形成されている。
そして、出口側のマニホールド部8の貫通孔4に、第1ブラケット9の半抜き凸部5aが挿入され、第1ブラケット9の半抜き凹部5bに、第2ブラケット10の半抜き凸部5aが挿入されて積層されている。
【0015】
各部品2の半抜き凸部5aは、そのかしめ後の状態で、
図3に示す如く、出口側のマニホールド部8の貫通孔4の内周と第1ブラケット9の半抜き凸部5aの外周とが接合され、第1ブラケット9の半抜き凹部5bの内周と第2ブラケット10の半抜き凸部5aの外周とが接合されている。
このように、各部品2a、2b、2cの板状部1の厚み方向に複数のかしめ構造を形成することにより、各部品2a、2b、2cのかしめ部3が重なり、かしめ部位の数を減らすことができる。また、かしめ部位が減るため、構造体の設計自由度が向上する。そして、かしめ部3が重なるので、1度にまとめてかしめ、かしめ工数を減らすことができる。それとともに、各部品2a、2b、2cが単純化され、寸法精度を向上できる。
上記のようにかしめられた熱交換器の各部品は、板状部1でろう付により接合されている。
【0016】
図4は、本発明のかしめ構造を形成する、かしめ工程の説明図である。
先ず、出口側のマニホールド部8(第1部品2a)が形成されたカッププレート6の貫通孔4に、第1ブラケット9(第2部品2b)の半抜き凸部5aを挿入する。この半抜き凸部5aの外直径は、貫通孔4の内直径より僅かに小に形成するとよい。
また、第1ブラケット9の半抜き凹部5bに、第2ブラケット10(第3部品2c)の半抜き凸部5aを挿入する。第2ブラケット10の半抜き凸部5aの外直径も、第1ブラケット9の内直径より僅かに小に形成するとよい。
次に、図面の右側に配置した受け治具14の凸部先端を、第2ブラケット10の半抜き凹部5bに挿入し、左側のかしめ治具13の凸部を貫通孔4側から、右方に押圧する。すると、半抜き凸部5aが圧縮されて塑性変形し、各ブラケット9、10の半抜き凸部5aの外直径が拡大し、各部品が一体的にかしめられる。
【0017】
なお、積層方向の中間層に位置する第2部品2bの他にも部品が積層される場合は、第2部品2bに隣接する部品の板状部1にも半抜き構造5が形成され、その各半抜き凸部が第2部品2bの半抜き凹部に挿入されて、各部品が一体的にかしめられる。
【0018】
従来の
図5の例では、第2ブラケット30に受け治具設定用の半抜き凹部が形成されていないため、第1ブラケット29の半抜き凸部25aは、主として押圧される方向(
図5(B)において右方向)への変形が生じ、半抜き凸部25aの直径が拡大し難い。そのため、本発明のような、かしめの効果は期待できない。
【0019】
本発明の
図1~
図3における実施例では、出口側のマニホールド部8の位置で、第1ブラケット9および第2ブラケット10を積層してかしめ構造を形成している。本発明のかしめ構造を形成する位置は、この例に限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
熱交換器などのろう付構造体の仮固定の構造として利用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 板状部
2 部品
2a 第1部品
2b 第2部品
2c 第3部品
3 かしめ部
4 貫通孔
5 半抜き構造
5a 半抜き凸部
5b 半抜き凹部
【0022】
6 カッププレート
8 マニホールド部
9 第1ブラケット
10 第2ブラケット
13 かしめ治具
14 受け治具
【0023】
21 板状部
22a 第1部品
22b 第2部品
22c 第3部品
24 貫通孔
25 半抜き構造
25a 半抜き凸部
25b 半抜き凹部
28 マニホールド部
29 第1ブラケット
30 第2ブラケット