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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085673
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】連結ピンの抜け止め構造
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
E02F9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199838
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 洋
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015AA01
(57)【要約】
【課題】簡単な構造でありながら、狭小部における組立性の向上を図ることが可能な連結ピンの抜け止め構造を提供する。
【解決手段】建設機械のピン結合部に施され、連結ピン23と、ピン挿通孔を有する連結部材21,22とを挿脱可能に嵌合した状態で、連結ピンの抜け止めを行う抜け止め構造において、連結ピンは、軸方向に延びるピン本体24と、該ピン本体の軸方向一端外周部に設けられたフランジ25とを有し、ピン本体を軸方向に貫くボルト貫通孔24aが設けられることで、軸方向他端に配されるキャップ26を軸方向一端側から挿入したボルト27でピン本体に締結可能に構成してなり、フランジは、連結ピンの回転を規制する工具係合部25aを有し、キャップは、ピン本体よりも大径の円板状に形成され、ボルトの仮締め状態で、ピン本体との相対回転を規制する回転規制部を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のピン結合部に施され、連結ピンと、ピン挿通孔を有する連結部材とを挿脱可能に嵌合した状態で、前記連結ピンの抜け止めを行う抜け止め構造において、
前記連結ピンは、軸方向に延びるピン本体と、該ピン本体の軸方向一端外周部に設けられたフランジとを有し、前記ピン本体を軸方向に貫くボルト貫通孔が設けられることで、軸方向他端に配されるキャップを軸方向一端側から挿入したボルトで前記ピン本体に締結可能に構成してなり、
前記フランジは、前記連結ピンの回転を規制する工具係合部を有し、
前記キャップは、前記ピン本体よりも大径の円板状に形成され、前記ボルトの仮締め状態で、前記ピン本体との相対回転を規制する回転規制部を有していることを特徴とする連結ピンの抜け止め構造。
【請求項2】
前記回転規制部は、前記ピン本体の先端部に設けられた凹凸形状に係合可能な形状を有していることを特徴とする請求項1記載の連結ピンの抜け止め構造。
【請求項3】
前記ボルトは、六角穴付ボルトであり、
前記ピン本体の一端側には、前記六角穴付ボルトの頭部を収納する座繰りが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の連結ピンの抜け止め構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結ピンの抜け止め構造に関し、詳しくは、建設機械の連結部に使用される連結ピンの抜け止め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械では、連結ピンと、ピン孔を有する連結部材とを挿脱可能に嵌合した状態で、連結ピンがピン孔から抜け出さないように止める手段として、割りピンを用いた抜け止め構造が知られている。図8に示すように、割りピン100は、連結部材101,102同士の重合部に連結ピン103を挿通した状態で、ピン孔から突き出した部分に平ワッシャー104と共に組み付けられ、先端部を開いて曲げるだけの作業で割りピン自体も固定できることから、簡便な抜け止め構造として従来から広く用いられている。また、損傷を受けやすい露出部には、割りピンに替えて、ボルト止めされる抜け止め板を用いた構成も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-158401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の抜け止め構造は、連結ピンの先端側に割りピンや抜け止め板を取り付けるための作業スペースが作られることで、特段不自由なく抜け止めを施すことができる。しかしながら、ピン結合部が機体フレームなどの構造物内にある場合、その作業スペースは狭く限定されてしまい、組立や分解時の作業性を大きく低下させる要因となる。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構造でありながら、狭小部における組立性の向上を図ることが可能な連結ピンの抜け止め構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の連結ピンの抜け止め構造は、建設機械のピン結合部に施され、連結ピンと、ピン挿通孔を有する連結部材とを挿脱可能に嵌合した状態で、前記連結ピンの抜け止めを行う抜け止め構造において、前記連結ピンは、軸方向に延びるピン本体と、該ピン本体の軸方向一端外周部に設けられたフランジとを有し、前記ピン本体を軸方向に貫くボルト貫通孔が設けられることで、軸方向他端に配されるキャップを軸方向一端側から挿入したボルトで前記ピン本体に締結可能に構成してなり、前記フランジは、前記連結ピンの回転を規制する工具係合部を有し、前記キャップは、前記ピン本体よりも大径の円板状に形成され、前記ボルトの仮締め状態で、前記ピン本体との相対回転を規制する回転規制部を有していることを特徴としている。
【0007】
また、前記回転規制部は、前記ピン本体の先端部に設けられた凹凸形状に係合可能な形状を有していることを特徴としている。さらに、前記ボルトは、六角穴付ボルトであり、前記ピン本体の一端側には、前記六角穴付ボルトの頭部を収納する座繰りが設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の連結ピンの抜け止め構造によれば、連結ピンに軸方向のボルト貫通孔を設け、軸方向他端に配されるキャップを軸方向一端側から挿入したボルトにて締結する構成としたので、連結ピンの先端(他端側)が構造物の奥まった箇所に位置しても、キャップを配置する段取りさえ行えば、手前からボルトを挿入して、回転規制部を機能させた仮締め段階まで作業を進めることが可能となる。そして、片方の手でフランジの工具係合部に工具を係合させ、連結ピンの回転を規制した状態で、もう片方の手に持った工具でボルトを締め込んでいくと、キャップの連れ回りを生じることなく回転規制がなされ、必要なボルトの軸力を得ることができる。こうした簡単な作業によって、フランジとキャップとの間を適正な距離に保ちつつ、両者で連結ピンの軸方向の移動を規制できることから、狭小部において連結ピンの抜け止めを施す際の作業性向上に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一形態例を示す連結ピンの抜け止め構造の斜視図である。
図2】同じく要部斜視図である。
図3】同じく連結ピンの先端側から見た斜視図である。
図4】同じく連結ピンの変形例において先端側から見た斜視図である。
図5】同じく連結ピンのフランジ側から見た斜視図である。
図6】同じく連結ピンの変形例においてフランジ側から見た斜視図である。
図7】本発明の適用可能な建設機械の一例を示す杭打機の側面図である。
図8】従来の連結ピンの抜け止め構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図7は、本発明の連結ピンの抜け止め構造の一形態例(変形例を含む)を示すものである。図7は、本発明の適用可能な建設機械の一例を示す杭打機を示している。杭打機11は、自走式の下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設されたリーダ15と、該リーダ15を後方から支持する起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の右側部には運転室17が、左側部にはエンジンや油圧ユニットを収納した機器室18がそれぞれ設けられている。
【0011】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を互いに連結したもので、前面にはリーダ15に沿って昇降可能な回転駆動装置(図示せず)が装着されている。また、リーダ15の上端部には、トップシーブブロック19が設けられ、上部旋回体13の中央部に搭載したウインチドラム(図示せず)からのロープが巻掛けられることで、施工部材(例えば鋼管杭)の吊り込み作業が可能である。
【0012】
ウインチドラムは、これと一体で回転するブレーキドラムを適宜制動し、ロープの繰り出し量を調整するブレーキ装置を備えている。ブレーキ装置は、油圧でリンク機構を作動させ、ブレーキドラムの外周に巻き付けたブレーキバンドを締め付ける。リンク機構は、ブレーキバンドの締め付け反力を得るために、例えば、図1に簡略化して示すように、箱型あるいは舟型の機体フレーム20の底板20aに機体幅方向一対のブラケット21,21を設け、該ブラケット21,21に対し、フレーム内に引き込んだ2本のロッド部材22,22をそれぞれピン結合している。なお、図1では、理解を容易とするため、機体フレーム20の一部を切り欠いて図示してある。
【0013】
連結部材となるブラケット21及びロッド部材22は、一方側の端部が他方側を受け入れる形状(二股部22a)を有し、互いに重合して得られるピン挿通孔(図示せず)の軸Cを機体幅方向に延ばした状態で、機体フレーム20の側壁20bの近傍に位置される。また、図2にも示すように、ピン挿通孔に連結ピン23を挿通嵌合させる場合、連結ピン23を機体フレーム20の内側から外側に向かって差し込むことにより、作業者にとって無理のない姿勢で作業が行える。もっとも、こうした作業は、ブラケット21と側壁20bとの間の距離が更に近くなるような条件では、つまり、ブラケット21と側壁20bとの間の空間が狭小になる壁際作業では、連結ピン23を差し込む方向は、その構造上、一方向(内側から外側)のみに限定される。
【0014】
このような、狭く限定された作業スペースは、特に、連結ピン23を挿通した後、ピンの軸方向の移動を規制する措置(抜け止め)を施すのが難儀となる。そこで杭打機11のピン結合部には、狭小部における組立性の向上を図ることが可能な連結ピン23の抜け止め構造が備わっている。
【0015】
連結ピン23の抜け止め構造は、図2に示すように、連結ピン23と、ピン挿通孔を有するブラケット21及びロッド部材22とを挿脱可能に嵌合した状態で、連結ピン23の抜け止めを行う構造であって、連結ピン23は、軸方向に延びるピン本体24と、該ピン本体24の軸方向一端外周部に設けられたフランジ25とを有しており、ピン本体24の中心を軸方向に貫くボルト貫通孔24aが設けられることで、連結部材21,22を挟み軸方向他端(側壁20b寄り)に配されるキャップ26を軸方向一端側(側壁20bから離れた側)から挿入したボルト27でピン本体24に締結可能に構成されている。
【0016】
ピン本体24は、ピン結合のための設計条件を考慮し、例えば、直径50mm、長さ80mmに形成されており、図3にも示すように、ピン先端部には、ボルト貫通孔24aを通る径方向の平面切削が施されることで軸Cと直交する方向であって径方向に連続した溝部が形成され、軸方向に段差を付した凹形状28が設けられている。
【0017】
フランジ25は、連結ピン23の回転を規制するための工具係合部25aを有している。工具係合部25aは、ボルト貫通孔24aを挟んで対向する位置に形成された平行な二つの平面からなり、その二面幅に対応するスパナを係合させて保持することにより、連結ピン23の回転を規制(ロック)することが可能である。
【0018】
キャップ26は、ピン本体24よりも大径の円板状に形成され、中央部にはボルト27と螺合するねじ孔26aが設けられている。キャップ26の内面側には、ボルト27の仮締め状態で、ピン本体24の凹形状28に係合可能な回転規制部として、凸形状29が設けられている。これにより、連結ピン23をロックした状態では、ボルト27の回転(ねじ締め)が作用しても、凹凸形状28,29の回転方向の当接面28a,29a同士、すなわち、ピン挿通孔の軸Cと平行な2つの平面同士が互いに接して回転を受け止め、ボルト27の締め込みによる回転に伴って連れ回りしようとするキャップ26のピン本体24に対する相対回転が規制される。
【0019】
ここで、回転規制部は、変形例として図4に示すように、ピン本体24側を凸形状30とし、キャップ26の内面側において、この凸形状30に係合可能な凹形状31を設けることができる。このような構成でも同様に、凹凸形状30,31の回転方向の当接面30a,31a同士が接して回転を受け止め、ピン本体24との間でキャップ26の相対回転が規制される。
【0020】
また、図5に示すように、ボルト27は、首下寸法の十分に長い六角ボルトが使用されることで、振動などの回転弛みに対する効果も得られるが、変形例として図6に示すように、ボルト32の頭部32aに六角の穴が形成された六角穴付ボルト(キャップスクリュー)を使用することができる。この場合、ピン本体24に対し、ボルト32の頭部32aのサイズに応じた座繰り33を設け、ボルト締めした頭部32aを座繰り33の中に収納することができる。
【0021】
このように形成した抜け止め構造によって、連結ピン23の抜け止めを施すには、図2に示すように、連結部材21,22の重合部においてピン挿通孔の軸Cを一致させた状態で、該ピン挿通孔に連結ピン23を挿通して組み付けた後、連結ピン23のボルト貫通孔24aにボルト27挿入し、そのまま連結部材21,22の反対側に抜けるまで挿し通す。
【0022】
ここで、用意したキャップ26を手にして、反対側からボルト27の先端(ねじ部)に当てがい保持した後、キャップ26のねじ孔26aに対し、ボルト27をもう片方の手で回して締め込んでいく。このとき、ピン本体24の凹形状28とキャップ26の凸形状29とを位置合わせし、両者24,26を互いに相対回転不能に係合させることで、ボルト27の仮締めを行う。
【0023】
こうした仮締め状態では、ピン本体24とキャップ26との間に軸方向の押圧力(ねじ締結力)が発生し、作業中にキャップ26が脱落する心配はない。したがって、以降の作業は、一方側(側壁20bから離れた側)で、つまり、作業者の目線に合わせた側で行うことができる。まず、フランジ25の工具係合部25aにスパナを係合させて保持し、連結ピン23の回転を規制する。そして、連結ピン23をロックした状態のままで、別のスパナを使用してボルト27を締め込んでいく。こうして、設定トルクにてボルト締めを行うことで、フランジ25とキャップ26とによって連結ピン23の軸方向の移動を規制した抜け止めが施される。
【0024】
このように、本発明の連結ピンの抜け止め構造によれば、連結ピン23に軸方向のボルト貫通孔24aを設け、軸方向他端に配されるキャップ26を軸方向一端側から挿入したボルト27にて締結する構成としたので、連結ピン23の先端(他端側)が構造物の奥まった箇所に位置しても、キャップ26を配置する段取りさえ行えば、手前からボルト27を挿入して、回転規制部(例えば凸形状29)を機能させた仮締め段階まで作業を進めることが可能となる。そして、片方の手でフランジ25の工具係合部25aに工具を係合させ、連結ピン23の回転を規制した状態で、もう片方の手に持った工具でボルト27を締め込んでいくと、キャップ26の連れ回りを生じることなく回転規制がなされ、必要なボルト27の軸力を得ることができる。こうした簡単な作業によって、フランジ25とキャップ26との間を適正な距離に保ちつつ、両者で連結ピン23の軸方向の移動を規制できることから、狭小部において連結ピン23の抜け止めを施す際の作業性向上に寄与するものである。
【0025】
また、キャップ26の回転規制部となる凹凸形状29,31がピン本体24の先端部に設けられた凹凸形状28,30に係合可能な形状を有しているので、回転軸を挟む対称形状(凹凸)がピン材から容易に得られ、回転を受ける軸部に適した係合が可能になる。さらに、ピン本体24aの一端側に六角穴付ボルト32の頭部32aを収納する座繰り33を設けているので、作業性の向上が図れるだけでなく、頭部32aの突出もなくせることから、安全性の高い連結ピン23の抜け止め構造が得られる。
【0026】
なお、本発明は、建設機械として杭打機を例示したが、これに限られず、アースドリルやクレーンなど、掘削装置や荷役装置を備えた各種建設機械における様々な部位の連結ピンの抜け止め構造に適用することができる。この場合、省スペースで施すことが可能な抜け止め構造により、機器などの配置を含めた設計の自由度が広がり、モデルチェンジや新型開発を円滑に進めることが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…起伏シリンダ、17…運転室、18…機器室、19…トップシーブブロック、20…機体フレーム、20a…底板、20b…側壁、21…ブラケット、22…ロッド部材、22a…二股部、23…連結ピン、24…ピン本体、24a…ボルト貫通孔、25…フランジ、25a…工具係合部、26…キャップ、26a…ねじ孔、27…ボルト、28…凹形状、28a…当接面、29…凸形状、29a…当接面、30…凸形状、30a…当接面、31…凹形状、31a…当接面、32…ボルト、32a…頭部、33…座繰り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8