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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085681
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】フィラメントランプ、光加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H01K 1/58 20060101AFI20230614BHJP
   H01K 1/32 20060101ALI20230614BHJP
   H01K 1/14 20060101ALI20230614BHJP
   H01K 1/16 20060101ALI20230614BHJP
   H01L 21/26 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H01K1/58
H01K1/32 A
H01K1/32 Z
H01K1/14
H01K1/16
H01L21/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199852
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真司
(72)【発明者】
【氏名】古江 悟
(57)【要約】
【課題】排熱特性が向上された、ワークを効率よく加熱処理できるフィラメントランプ及び光加熱装置を提供する。
【解決手段】光に対して透過性を示す筒状の発光管と、発光管内において、発光管の管軸に沿って延伸するフィラメントと、発光管の管軸に沿って延伸し、かつ、発光管の管軸から見て一方向側の外壁面上の一部に設けられた放熱部材とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光に対して透過性を示す長尺な発光管と、
前記発光管内において、前記発光管の管軸に沿って延伸するフィラメントと、
前記発光管の管軸に沿って延伸し、かつ、前記発光管の管軸から見て一方向側の外壁面上の一部に設けられた放熱部材とを備えることを特徴とするフィラメントランプ。
【請求項2】
前記発光管及び前記放熱部材の材料がガラスであり、前記発光管と前記放熱部材とが一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィラメントランプ。
【請求項3】
前記放熱部材の外壁面上に前記フィラメントから出射された光の少なくとも一部を、前記フィラメント側に向かって反射する反射部材を備えることを特徴とする請求項2に記載のフィラメントランプ。
【請求項4】
前記放熱部材の内部に前記フィラメントから出射された光の少なくとも一部を、前記フィラメント側に向かって反射する反射部材を備えることを特徴とする請求項2に記載のフィラメントランプ。
【請求項5】
前記放熱部材は、気密封止された空間が形成されており、前記空間の内壁面に前記フィラメントから出射された光の少なくとも一部を、前記フィラメント側に向かって反射する反射部材を備えることを特徴とする請求項2に記載のフィラメントランプ。
【請求項6】
前記反射部材は、金属薄膜、金属板、又は無機粒子膜からなることを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載のフィラメントランプ。
【請求項7】
処理対象物であるワークが収容されるチャンバと、
前記チャンバ内で、前記ワークを支持する支持部材と、
前記チャンバ内に配置されて、前記支持部材によって支持された前記ワークの主面に向かって光を出射する、複数の請求項1~5のいずれか一項に記載のフィラメントランプとを備えることを特徴とする光加熱装置。
【請求項8】
前記フィラメントランプと前記支持部材とが対向する方向に関し、前記支持部材から見て、前記放熱部材が前記発光管よりも遠い位置に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の光加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントランプ及び光加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造プロセスにおいて加熱対象物(以下、「ワーク」と称する。)の熱処理を行う装置の一つとして、発光管内にフィラメントを有するフィラメントランプを用いた加熱装置が知られている。フィラメントランプを用いた加熱処理装置は、光を照射することでワークを非接触で加熱する方式であるため、半導体ウエハやディスプレイパネル用の基板の処理のような、クリーンな環境下での加熱処理が要求される工程において特に採用されている。
【0003】
ワークの熱処理は、ワークが処理空間内に存在する酸素によって酸化してしまうことを回避するために、真空中で実施される場合があり、真空チャンバを備えた加熱装置も開発されている。例えば、下記特許文献1では、真空チャンバを搭載した装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-263189号公報
【特許文献2】特開2009-038230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
真空中でワークを処理する加熱処理装置は、フィラメントランプから出射された光が減衰することなくワークに到達するように、真空チャンバのワークが配置される処理室内にフィラメントランプが搭載される場合が多い。このような構成の場合、処理室内には、フィラメントランプを冷却するための冷却風を導入することができず、また、冷却水を通流させるような複雑な構造を必要とする冷却機構を採用することが難しい。
【0006】
このため、従来の真空チャンバを備える加熱処理装置では、冷却機構を設けず、フィラメントランプを点灯させたときに発光管の温度が耐熱温度を超えない電力を供給して加熱処理が実行されることが多かった。このような対策が採用される場合、発光管の耐熱温度によっては、フィラメントランプには所望の電力が投入できず、期待する光出力でワークを加熱処理できないという事態が発生していた。
【0007】
ところで、加熱処理装置には、処理対象となるワークが配置される処理室とは分離された空間内にフィラメントランプを配置する構成が採用される場合がある。例えば、上記特許文献2には、ワークが配置される加熱処理空間とは分離されたランプユニット収容空間にフィラメントランプが配置された加熱処理装置が開示されている。
【0008】
しかしながら、当該構成の加熱処理装置では、ランプユニット収容空間と加熱処理空間とを区画する窓部材によって、少なからずフィラメントランプから出射された光が吸収及び反射されてしまう。このため、所望の温度でワークを加熱処理するためには、窓部材で吸収及び反射される光の量を考慮して、フィラメントランプに対しては所定の電力よりも多くの電力を供給する必要があった。
【0009】
つまり、従来の加熱処理装置では、ワークに照射する光の強度不足等により、処理可能なワークの種類が制限されることや、期待する時間内に加熱処理を完了できないといった課題が生じていた。さらには、窓部材等で加熱処理室とランプユニット収容室が分離されているような構成の場合は、所望の温度での加熱処理を実現するために想定よりも高い電力を供給する必要があり、効率よくワークを加熱処理できていなかった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、排熱特性が向上された、ワークを効率よく加熱処理できるフィラメントランプ及び光加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るフィラメントランプは、
光に対して透過性を示す長尺な発光管と、
前記発光管内において、前記発光管の管軸に沿って延伸するフィラメントと、
前記発光管の管軸に沿って延伸し、かつ、前記発光管の管軸から見て一方向側の外壁面上の一部に設けられた放熱部材とを備えることを特徴とする。
【0012】
ここでの「光に対して透過性を示す」とは、ワークの加熱処理に利用される光に対する透過率が50%以上を示すことをいう。なお、ワークの加熱処理に利用される光とは、加熱処理対象となるワークの種類に応じて予め決定される波長範囲の光である。
【0013】
また、本明細書における「放熱部材」とは、熱伝導率が0.5W/mK以上である部材であり、具体的な材料としては、ガラス、銅、アルミニウム、ステンレス等である。
【0014】
真空中に配置されるフィラメントランプは、上述したように、冷却風や冷却媒体の導入によって冷却することが難しい。このため、所定の電力が供給された時のフィラメントランプの到達温度は、点灯時にフィラメントランプ内で発生する熱量と、発光管の外壁面から放出される熱量との差によって決まる。
【0015】
発光管の外壁面から放出される熱量は、発光管の外壁面の表面積の大きさに比例する。そこで、発光管から放出される熱量を増加させるために、単純に発光管の外径を大きくする方法が考えられる。しかしながら、このような方法では、発光管から放出される熱量が増加することにはなるが、発光管の外径が大きくなるため、処理室内に配置できるフィラメントランプの数が少なくなってしまい、ワークに照射される光量がかえって低下してしまう。
【0016】
そこで、上記構成とすることで、フィラメントランプは、発光管の表面積が大きくなるため、放出される熱量がより大きくなり、所定の電力が供給されている場合に到達する温度が低くなる。このため、フィラメントランプは、より大きい電力を投入することができるため、より高い強度の光を出射することができる。
【0017】
そして、上記構成のフィラメントランプは、発光管の外壁面の一部に放熱部材が設けられる。これにより、発光管は、放熱部材が取り付けられた方向にのみ大きくなる。したがって、上記構成のフィラメントランプであれば、放熱部材が取り付けられた方向を揃えるように配置することで、発光管の外径を大きくした場合と比較して、処理室内により多く配置することができる。
【0018】
上記フィラメントランプは、
前記発光管及び前記放熱部材の材料がガラスであり、前記発光管と前記放熱部材とが一体的に形成されていても構わない。
【0019】
放熱部材は、発光管と一体的に作製されていてもよく、発光管とは別に、ガラスで作製されて、発光管の外壁面に溶接等によって接合されていても構わない。
【0020】
上記構成とすることで、フィラメントランプは、加熱処理中に放熱部材を構成する部材が発光管から脱落することがないため、より安全性と信頼性が向上される。
【0021】
上記フィラメントランプは、
前記放熱部材の外壁面上に前記フィラメントから出射された光の少なくとも一部を、前記フィラメント側に向かって反射する反射部材を備えていても構わない。
【0022】
また、上記フィラメントランプは、
前記放熱部材の内部に前記フィラメントから出射された光の少なくとも一部を、前記フィラメント側に向かって反射する反射部材を備えていても構わない。
【0023】
また、上記フィラメントランプは、
前記放熱部材は、気密封止された空間が形成されており、前記空間の内壁面に前記フィラメントから出射された光の少なくとも一部を、前記フィラメント側に向かって反射する反射部材を備えていても構わない。
【0024】
上記構成とすることで、フィラメントランプから出射される光の少なくとも一部を所定の方向に反射することができる。つまり、フィラメントランプがチャンバ内に設置された際に、当該所定の方向にワークが支持されるように加熱装置を設計することで、ワークに対してより高い強度の光を照射することができる。
【0025】
なお、フィラメントランプが備える反射部材が、放熱部材の内部、又は気密封止された空間内に形成されている場合には、反射部材、又は反射部材の一部が、加熱処理中にワーク上に落下することを回避できる。
【0026】
上記フィラメントランプにおいて、
前記反射部材は、金属薄膜、金属板、又は無機粒子膜であっても構わない。
【0027】
反射部材を構成する無機粒子膜とは、例えば、SiO2(シリカ)、Al23(アルミナ)、ZrO2(ジルコニア)、BN(ボロンナイトライド)、を主たる材料とする焼結体で構成された膜である。なお、本明細書において「主たる材料」とは、含まれる各材料のうちの、最も含有率が高い材料を指す。
【0028】
本発明の光加熱装置は、
処理対象物であるワークが収容されるチャンバと、
前記チャンバ内で、前記ワークを支持する支持部材と、
前記チャンバ内に配置されて、前記支持部材によって支持された前記ワークの主面に向かって光を出射する、複数の上記フィラメントランプとを備えることを特徴とする。
【0029】
上記光加熱装置は、
前記フィラメントランプと前記支持部材とが対向する方向に関し、前記支持部材から見て、前記放熱部材が前記発光管よりも遠い位置に配置されていても構わない。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、排熱特性が向上された、ワークを効率よく加熱処理できるフィラメントランプ及び光加熱装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】光加熱装置をY方向に見たときの一実施形態の構成を模式的に示す図面である。
図2図1の光加熱装置をX方向に見たときの図面である。
図3図1の光加熱装置に搭載されているフィラメントランプの図面である。
図4図3のフィラメントランプをX方向に見たときの図面である。
図5】フィラメントランプの発光管表面の昇温変化を示すグラフである。
図6】フィラメントランプの一構成例を示す図面である。
図7】フィラメントランプの一構成例を示す図面である。
図8】フィラメントランプの一構成例を示す図面である。
図9】フィラメントランプの一構成例を示す図面である。
図10図9のフィラメントランプをX方向に見たときの図面である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るフィラメントランプ及び光加熱装置の各実施形態について、適宜図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、実際の寸法比と図面上の寸法比とは必ずしも一致していない。
【0033】
[光加熱装置1]
図1は、光加熱装置1をY方向に見たときの一実施形態の構成を模式的に示す図面であり、図2は、図1の光加熱装置1をX方向に見たときの図面である。図1及び図2に示すように、光加熱装置1は、チャンバ10と、処理対象物であるワークWを支持する支持部材11と、複数のフィラメントランプ20とを備える。ただし、上述したように図1は光加熱装置1をY方向に見た図であり、この場合には複数のフィラメントランプ20が重なって見えるため、図面上には単一のフィラメントランプ20のみが図示されている。なお、ワークWは、半導体ウエハやディスプレイパネル、ガラス基板等が想定される。
【0034】
以下の説明においては、図1及び図2に示すように、フィラメントランプ20の発光管21の管軸T1方向をX方向、フィラメントランプ20が配列されている方向をY方向とし、フィラメントランプ20と支持部材11に支持されたワークWとが対向する方向をZ方向とする。
【0035】
また、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0036】
チャンバ10は、内側に処理対象であるワークWを支持する支持部材11を備える処理室A1が形成されている。本実施形態の光加熱装置1は、処理室A1内を真空状態にしてワークWの加熱処理を実施するが、真空ではない状態でワークWの加熱処理を実施しても構わない。
【0037】
支持部材11は、図1及び図2に示すように、複数の突起11aが設けられており、ワークWは、それぞれの突起11aの先端に載置されて支持される。なお、支持部材11の構成は、複数の突起11aによる支持の構成に限られず、ワークWの両端を把持して支持する構成や、ワークWの周端部だけを支持する構成等であっても構わない。
【0038】
[フィラメントランプ20]
図3は、図1の光加熱装置1に搭載されているフィラメントランプ20の図面であり、図4は、図3のフィラメントランプ20をX方向に見たときの図面である。フィラメントランプ20は、図3に示すように、発光管21と、フィラメント22と、発光管21の両端部に設けられた一対のピンチシール部(23,23)とを備える。
【0039】
本実施形態における発光管21は、図4に示すように、X方向に延伸する長尺な部材であって、管軸T1から見て+Z側の外壁面21p上の一部に放熱部材である管体21aが設けられている。
【0040】
なお、本実施形態の発光管21と管体21aとは、いずれも加熱用の光L1に対して透過性を示すガラスを材料としており、溶接されて一体的に構成されている。このため、図3及び図4では、管体21aを溶接する前の発光管21の外縁の一部が、破線で図示されている。
【0041】
図3に示すように、本実施形態における管体21aは、X方向に延伸する部材である。そして、管体21aは、気密封止された空間21cが形成されており、空間21cの内壁面21dに、フィラメント22から+Z側に出射された光L1を、フィラメント22側(-Z側)に向かって反射する反射部材としての反射膜21bが形成されている。
【0042】
なお、本実施形態におけるフィラメントランプ20は、発光管21及び管体21aが、同じ外径の円筒形状のガラス管で構成されているが、それぞれ多角筒形状や楕円筒形状等、円筒形状以外の形状を呈していてもよく、発光管21と管体21aとが異なる形状を呈していても構わない。かかる構成は、チャンバ10内により多く配置するためと、管体21aが光L1の進行を阻害しないための構成である。
【0043】
本実施形態のフィラメントランプ20は、図2に示すように、チャンバ10内において、管体21aが発光管21の+Z側に位置するように配置される。なお、フィラメントランプ20は、Z方向に関して、支持部材11から見て、管体21aが発光管21よりも遠い位置に配置されていることが好ましく、図2に示すように、管軸T1と管軸T2とがZ方向に沿うように配置されることがより好ましい。
【0044】
なお、本実施形態の光加熱装置1においては、フィラメントランプ20の発光管21の配置間隔が15mmであって、発光管21の径は11mmとしている。すなわち、隣り合うフィラメントランプ20の発光管21同士は、4mm離間している。
【0045】
本実施形態の反射膜21bは、主たる材料がシリカ(SiO2)である無機粒子膜であるが、反射膜21bを形成する無機粒子膜の主たる材料としては、上述したように、Al23(アルミナ)、ZrO2(ジルコニア)、BN(ボロンナイトライド)等を採用し得る。
【0046】
また、+Z側に進行する光L1を-Z側に向かうように反射する部材は、金属薄膜や金属板で構成されていても構わない。金属薄膜や金属板の材料は、例えば、金、アルミニウム等である。なお、フィラメントランプ20は、フィラメント22から-Z側に向かって出射された光によって、ワークWを十分に加熱処理できる場合、または、管体21a自体が反射部材としての機能を兼ねる場合等は、反射部材が設けられていなくても構わない。
【0047】
図4に示すように、本実施形態におけるフィラメントランプ20は、反射膜21bが、管体21aの内壁面21d上において、+Z側の面全体にわたって形成されているが、反射膜21bの形状、サイズ等は、光加熱装置1のチャンバ10の形状や用途等に応じて任意に設計される。
【0048】
図3に示すように、フィラメント22は、発光管21内においてX方向に沿って延伸している。また、図3に示すように、発光管21内には、所定の間隔でフィラメント22の配置位置を維持するためのサポーター22aが設けられている。なお、フィラメント22の全長が短く、サポーター22aがなくても配置位置を許容可能な範囲で維持できる場合は、サポーター22aが設けられていなくても構わない。
【0049】
フィラメント22の両端部は、ピンチシール部23に備えられた金属箔を介して、図示しない給電機構と接続されている。
【0050】
[検証実験1]
ここで、本実施形態のフィラメントランプ20を真空中において、所定の電圧を印加して点灯させたときに、従来構成のフィラメントランプと比較して、温度が下がっていることを確認する検証実験を実施したので、当該検証実験の詳細を説明する。
【0051】
(実施例1)
実施例1は、上述したフィラメントランプ20である。
【0052】
(実施例2)
実施例2は、反射膜21bが形成されていない点を除いて、実施例1と同じ構成のフィラメントランプである。
【0053】
(比較例1)
比較例1は、発光管21の外壁面21pに管体21aが設けられていない点を除いて、実施例1と同じ構成のフィラメントランプである。
【0054】
なお、上述したように、発光管21の外径を大きくした場合は、チャンバ10内に配置できるフィラメントランプ20の数が少なくなり、光加熱装置1全体で見たときには、チャンバ10内に配置できるフィラメントランプ20の本数の影響まで考慮しなければならない。そこで、本検証実験では、チャンバ10内で配置できるフィラメントランプ20の数を変更しないことを前提とするために、上記の実施例1、実施例2及び比較例1の構成で比較することとした。
【0055】
(検証方法)
検証方法は、チャンバ内にフィラメントランプを配置し、チャンバ内を真空状態とした上でフィラメントの両端に100Vの電圧を300秒間印加して、各フィラメントランプの発光管の表面温度がどこまで昇温するかを確認した。
【0056】
発光管の表面温度は、発光管のX方向における中央部の外壁面に取り付けた熱電対によって測定した。なお、実施例1及び実施例2のフィラメントランプ20の場合、熱電対は、発光管21の外壁面21p上のうち、X方向における中央部であって、かつ、管体21aとは反対の位置に取り付けた。
【0057】
(結果)
図5は、フィラメントランプの発光管表面の昇温変化を示すグラフである。図5に示すように、比較例1は、発光管の表面温度が500℃付近にまで到達しているのに対して、実施例1及び実施例2は、450℃を下回っている。なお、実施例1の方が実施例2に対して到達温度が僅かに高いのは、反射膜21bで反射された反射光によって発光管の温度がより上昇したことによる。
【0058】
[検証実験2]
次に、上述の実施例2と比較例1のフィラメントランプを対象として、発光管の温度が同じ温度になるように供給する電力を制御したときに、それぞれのフィラメントランプの光出力にどの程度の差が生じるかを確認する検証実験を実施したので、当該検証実験の詳細を説明する。
【0059】
(検証方法)
検証実験1と同様に、実施例2の発光管21及び比較例1の発光管の表面温度は、発光管のX方向における中央部の外壁面上に設けた熱電対によって測定した。
【0060】
実施例2の発光管21の表面温度の測定は、当該フィラメントランプを2000Wの電力を供給して点灯させた後、ランプ温度が安定した(60秒間における温度変動値が±5℃以内に収まる)と思われる、点灯開始から10分経過した時点での発光管の温度と、供給されている電圧値を確認した。
【0061】
比較例1の発光管の表面温度の測定は、当該フィラメントランプの発光管の温度が実施例2で測定された温度で安定するように供給する電力の制御を行い、温度が安定した時点で、比較例1のフィラメントランプに供給されている電力値と電圧値を確認した。
【0062】
(結果)
実施例2のフィラメントランプに関しては、発光管の温度が620℃、フィラメントランプに供給されている電圧値(V1)が197Vであった。
【0063】
比較例1のフィラメントランプに関しては、発光管の温度が620℃で安定した状態において、フィラメントランプに供給されている電圧値(V0)が147V、電力値が1267Wであった。
【0064】
ここで、実施例2のフィラメントランプから出射される全光束をI1とし、比較例1のフィラメントランプから出射される全光束をI0とすると、I1及びI0は、それぞれのフィラメントランプに印加されている電圧値との間で、I1/I0=(V1/V03.19の関係式を満たすことが知られている。当該関係式によれば、実施例2のフィラメントランプの光出力が、比較例1のフィラメントランプの光出力に対して、約2.5倍であることが求められる。
【0065】
なお、検証実験2においては、実施例1のフィラメントランプ20による検証は実施していないが、図5に示す検証実験1の結果から、実施例1のフィラメントランプ20の光出力は、比較例1のフィラメントランプの光出力の約1.9倍になる。そして、実施例1のフィラメントランプ20は、反射膜21bを備えるために、ワークWに対して照射される光L1の量は、比較例1のフィラメントランプと比較すると、2倍以上となる。
【0066】
以上より、本実施形態のフィラメントランプ20は、発光管21の外壁面21pの表面積が大きくなるため、放出される熱量がより大きくなり、所定の電力が供給されている場合に到達する温度が低くなる。このため、フィラメントランプ20は、より大きい電力を投入することができるため、出射する光L1の強度が向上される。つまり、フィラメントランプ20が搭載された光加熱装置1は、ワークWをより高い温度で、効率よく加熱処理することができる。
【0067】
また、フィラメントランプ20は、管体21aが設けられることでY方向には拡大していないため、図2に示すようにチャンバ10内に配置されることで、発光管21の外径を大きくした場合と比較して、光加熱装置1により多く搭載することができる。つまり、光加熱装置1は、ワークWをより高い温度で、効率よく加熱処理することができる。
【0068】
図6図8は、フィラメントランプ20の一構成例を示す図面である。本実施形態のフィラメントランプ20は、放熱部材として、気密封止された空間21cが形成された管体21aが発光管21の外壁面21pに溶接された構成である。図6に示すように、放熱部材は、空間21cのX方向における端部が開口21hを有している管体60であっても構わない。開口21hは、管体60のX方向の両端部に設けられている。
【0069】
また、図7及び図8に示すように、放熱部材は、空間21cが形成されていないX方向に延伸する棒材70であってもよい。図7及び図8では、空間21c(図3参照)が形成されていない(内部が充填されている)ことを示す目的で、棒材70の外縁の内側にハッチングが施されている。なお、当該構成のフィラメントランプ20の場合、反射部材は、図7に示すように、棒材70の内部に埋め込まれるように構成されていてもよく、図8に示すように、棒材70の外表面70a上に設けられていても構わない。なお、棒材70は、主たる材料がガラスであって、光L1に対して透過性を示す部材である。
【0070】
図9は、図6図8とは別のフィラメントランプ20の一構成例を示す図面であり、図10は、図10に示すフィラメントランプ20をX方向に見たときの図面である。フィラメントランプ20は、図9に示すように、発光管21の外壁面21p上に係合部91が設けられ、放熱部材である棒材90が係合するように一点鎖線矢印で示すように装着されていても構わない。
【0071】
図10に示すように、発光管21は、管軸T1から見て+Z方向側の外壁面21p上に棒材90が装着されている。なお、棒材90の材料は、ガラスであっても構わないが、例えば、銅やアルミニウム等の金属からなる部材であっても構わない。
【0072】
上述した実施形態では、説明を簡単にするためにX方向に延伸する直管状の発光管21と、X方向に延伸する放熱部材である管体21aとを備えるフィラメントランプ20の構成で説明したが、本発明のフィラメントランプ20が備える発光管及び放熱部材の形状は、これらの形状に限られない。例えば、フィラメントランプ20は、長尺であって、湾曲した形状の発光管と、当該発光管の管軸に沿って延伸し、かつ、管軸から見て一方向側の外壁面上の一部に設けられた放熱部材とを備えた構成であっても構わない。具体例としては、フィラメントランプ20は、円環形状を呈するように湾曲した発光管と放熱部材とを備えた構成等をも採用し得る。
【0073】
なお、上述した光加熱装置1及びフィラメントランプ20が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0074】
1 : 光加熱装置
10 : チャンバ
11 : 支持部材
11a : 突起
20 : フィラメントランプ
21 : 発光管
21a : 管体
21b : 反射膜
21c : 空間
21d : 内壁面
21h : 開口
21p : 外壁面
22 : フィラメント
22a : サポーター
23 : ピンチシール部
60 : 管体
70 : 棒材
70a : 外表面
90 : 棒材
91 : 係合部
A1 : 処理室
L1 : 光
W : ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10