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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085683
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】監視方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20230614BHJP
   E01D 24/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199858
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000112196
【氏名又は名称】株式会社ピーエス三菱
(71)【出願人】
【識別番号】509042518
【氏名又は名称】エコモット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】前田 文男
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 文宣
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA11
2D059AA14
2D059GG39
(57)【要約】
【課題】橋梁等の構造物において床版の下にある桁を切断せずに床版を切断する作業の環境を改善できるようにする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る監視方法は、水平方向に延在する桁と、桁の上に敷設された板状体と、を含む構造物の状況を監視するための監視方法であって、板状体において桁が延在する領域と重ならない位置に、板状体を板状体の上面に対して垂直方向に貫通する孔を形成するステップS11と、棒状の本体上に設けられた撮像部を有する撮像装置を、撮像部の撮像範囲が桁と板状体との接点を含むように、板状体の上方から孔に挿入するステップS12と、撮像部が撮像をすることによって生成された撮像画像を、板状体の上方に配置された表示装置に表示させるステップS13と、を有する。
【選択図】図10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延在する桁と、前記桁の上に敷設された板状体と、を含む構造物の状況を監視するための監視方法であって、
前記板状体において前記桁が延在する領域と重ならない位置に、前記板状体を前記板状体の上面に対して垂直方向に貫通する孔を形成するステップと、
棒状の本体上に設けられた撮像部を有する撮像装置を、前記撮像部の撮像範囲が前記桁と前記板状体との接点を含むように、前記板状体の上方から前記孔に挿入するステップと、
前記撮像部が撮像をすることによって生成された撮像画像を、前記板状体の上方に配置された表示装置に表示させるステップと、
を有する、監視方法。
【請求項2】
前記構造物は、橋梁であり、
前記板状体は、前記橋梁の床版である、
請求項1に記載の監視方法。
【請求項3】
前記板状体の上方から切断装置を用いて前記板状体を切断するステップをさらに有し、
前記表示させるステップでは、前記板状体の切断中又は切断前に、前記撮像画像を前記表示装置に表示させる、
請求項1又は2に記載の監視方法。
【請求項4】
前記撮像部は、前記桁が延在する領域と、前記板状体が前記切断装置により切断される予定の線と、が交わる部分を含む前記撮像範囲を撮像する、
請求項3に記載の監視方法。
【請求項5】
前記孔にワイヤを挿入することによって、前記切断装置により切断された後の前記板状体を吊り上げるステップをさらに有する、
請求項3又は4に記載の監視方法。
【請求項6】
前記撮像装置は、前記撮像装置を前記板状体の上面に対して垂直方向下向きに前記孔に挿入したときに前記撮像装置の落下を防止するための落下防止部をさらに有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の監視方法。
【請求項7】
前記表示させるステップでは、前記孔に挿入された前記撮像装置が前記落下防止部によって支持されている状態で、前記撮像画像を前記表示装置に表示させる、
請求項6に記載の監視方法。
【請求項8】
前記撮像装置は、前記撮像装置の周囲に光を照射する照明部をさらに有し、
前記表示させるステップでは、前記照明部が前記桁と前記板状体との接点に前記光を照射している状態で、前記撮像画像を前記表示装置に表示させる、
請求項1から7のいずれか一項に記載の監視方法。
【請求項9】
前記撮像装置は、通信端末である前記表示装置に前記撮像画像を送信する無線通信部をさらに有し、
前記表示させるステップでは、前記表示装置に無線通信を介して前記撮像画像を表示させる、
請求項1から8のいずれか一項に記載の監視方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等の構造物の状況を監視するための監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンクリートの床版の上からカッターを用いて床版を切断し、切断された床版を取り外す方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-158124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
橋梁等の構造物に対する工事において、床版の下にある桁を切断せずに床版だけを切断する作業がある。このような作業において、従来、床版の下側に配置された作業者が、桁が切断されないように構造物の状況を監視していた。しかしながら、床版の下側の空間は、床版の切断時に発生する粉塵、騒音等により作業者にとって劣悪な環境であり、また床版の切断時に劣化部分のコンクリート片等の剥落が発生する可能性があるという問題があった。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、橋梁等の構造物において床版の下にある桁を切断せずに床版を切断する作業の環境を改善できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る監視方法は、水平方向に延在する桁と、前記桁の上に敷設された板状体と、を含む構造物の状況を監視するための監視方法であって、前記板状体において前記桁が延在する領域と重ならない位置に、前記板状体を前記板状体の上面に対して垂直方向に貫通する孔を形成するステップと、棒状の本体上に設けられた撮像部を有する撮像装置を、前記撮像部の撮像範囲が前記桁と前記板状体との接点を含むように、前記板状体の上方から前記孔に挿入するステップと、前記撮像部が撮像をすることによって生成された撮像画像を、前記板状体の上方に配置された表示装置に表示させるステップと、を有する。
【0007】
前記構造物は、橋梁であり、前記板状体は、前記橋梁の床版であってもよい。
【0008】
前記監視方法は、前記板状体の上方から切断装置を用いて前記板状体を切断するステップをさらに有し、前記表示させるステップでは、前記板状体の切断中又は切断前に、前記撮像画像を前記表示装置に表示させてもよい。
【0009】
前記撮像部は、前記桁が延在する領域と、前記板状体が前記切断装置により切断される予定の線と、が交わる部分を含む前記撮像範囲を撮像してもよい。
【0010】
前記監視方法は、前記孔にワイヤを挿入することによって、前記切断装置により切断された後の前記板状体を吊り上げるステップをさらに有してもよい。
【0011】
前記撮像装置は、前記撮像装置を前記板状体の上面に対して垂直方向下向きに前記孔に挿入したときに前記撮像装置の落下を防止するための落下防止部をさらに有してもよい。
【0012】
前記表示させるステップでは、前記孔に挿入された前記撮像装置が前記落下防止部によって支持されている状態で、前記撮像画像を前記表示装置に表示させてもよい。
【0013】
前記撮像装置は、前記撮像装置の周囲に光を照射する照明部をさらに有し、前記表示させるステップでは、前記照明部が前記桁と前記板状体との接点に前記光を照射している状態で、前記撮像画像を前記表示装置に表示させてもよい。
【0014】
前記撮像装置は、通信端末である前記表示装置に前記撮像画像を送信する無線通信部をさらに有し、前記表示させるステップでは、前記表示装置に無線通信を介して前記撮像画像を表示させてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、橋梁等の構造物において床版の下にある桁を切断せずに床版を切断する作業の環境を改善できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る監視システムの模式図である。
図2】実施形態に係る撮像装置全体の構成を説明するための模式図である。
図3】撮像部の構成を説明するための模式図である。
図4】照明部の構成を説明するための模式図である。
図5】保護部材の構成を説明するための模式図である。
図6】落下防止部の構成を説明するための模式図である。
図7】床版に孔を形成する方法を説明するための模式図である。
図8】撮像装置を孔に挿入する方法を説明するための模式図である。
図9】撮像画像を通信端末に表示させる方法を説明するための模式図である。
図10】実施形態に係る監視方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[監視システムの概要]
図1は、本実施形態に係る監視システムの模式図である。監視システムは、水平方向に延在する桁Gと、桁Gの上に敷設された床版Sと、を含む橋梁等の構造物の状況を監視するシステムである。監視システムは、撮像装置1と、通信端末2と、を含む。監視システムは、複数の撮像装置1及び複数の通信端末2を含んでもよい。
【0018】
床版Sは、橋梁等の構造物を構成する板状体である。床版Sは、例えば、コンクリート製の床版である。床版Sは、床版Sの上面に対して垂直方向に貫通する孔S1を有する。孔S1は、例えば、コアドリルによって形成される。
【0019】
床版Sは、水平方向に延在する桁Gの上に敷設されている。桁Gが水平方向に延在していることは、地面に対して水平又は略水平であることであり、地面に対して所定の角度(例えば、0度以上10度以下の角度)の勾配を持って配置されていることを含む。構造物が橋梁である場合には、桁Gは、橋梁が構成する道路の延長方向に延在する。桁Gは、例えば、鋼桁である。桁Gの断面は、例えば、I型形状を有し、上下にフランジが設けられている。また、桁Gの断面は、箱型形状(矩形状)やT型形状等、その他の形状であってもよい。
【0020】
作業者は、切断装置Cを用いて、床版Sの下にある桁Gを切断せずに床版Sを切断する作業を行う。切断装置Cは、例えば、コンクリートカッターである。作業者は、例えば、床版Sの上において切断装置Cを水平方向に移動させることによって、床版Sを切断する。
【0021】
撮像装置1は、切断装置Cによって切断中又は切断前の床版Sを撮像する装置である。撮像装置1は、孔S1に挿入された状態で、桁Gと床版Sとの接点を含む撮像範囲を撮像する。また、撮像装置1は、後述の落下防止部を有することにより、作業者によって支持されなくとも、孔S1に挿入された状態で落下しないように構成されている。撮像装置1は、無線通信によって、撮像画像を通信端末2に送信する。
【0022】
通信端末2は、床版Sの上方において、ユーザが利用するコンピュータである。通信端末2は、撮像装置1が撮像をすることによって生成された撮像画像を表示するための液晶ディスプレイ等の表示部を有する表示装置である。通信端末2は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等である。通信端末2のユーザは、例えば、床版Sを切断する作業を行う作業者である。また、通信端末2のユーザは、作業を管理する管理者等、作業者とは異なる人間であってもよい。
【0023】
本実施形態に係る監視システムにおいて構造物の状況を監視する方法の概要を以下に説明する。作業者は、床版Sにおいて桁Gが延在する領域と重ならない位置に、床版Sを床版Sの上面に対して垂直方向に貫通する孔S1を形成する。作業者は、例えば、コアドリルを用いて床版Sを床版Sの上面に対して垂直方向に削孔することによって孔S1を形成する。
【0024】
作業者は、撮像装置1を、撮像装置1の撮像範囲が桁Gと床版Sとの接点を含むように、床版Sの上方から孔S1に挿入する。撮像装置1は、桁Gと床版Sとの接点を含む撮像範囲を撮像することによって生成された撮像画像を、床版Sの上方に配置された通信端末2に表示させる。作業者は、通信端末2において撮像画像を参照しながら、切断装置Cを用いて床版Sの切断を行う。
【0025】
このような構成を有する監視システムによれば、作業者は、床版Sの下側において桁Gが切断されないように監視をする必要がないため、床版Sの切断時に発生する粉塵、騒音等を受けづらくなる。そのため、監視システムは、床版Sの下にある桁Gを切断せずに床版Sを切断する作業の環境を改善できる。
【0026】
[撮像装置1の構成]
図2は、本実施形態に係る撮像装置1全体の構成を説明するための模式図である。撮像装置1は、本体11と、撮像部12と、照明部13と、落下防止部14と、制御部15と、を有する。
【0027】
本体11は、作業対象の床版Sの厚さよりも長い棒状の構造である。本体11は、所定の長手方向Dに沿って延在する形状である。長手方向Dに沿った本体11の少なくとも一部は、中空の筒状になっている。図2には、視認性のために、本体11の長手方向Dと、長手方向Dに対して垂直な平面Pと、が表されている。
【0028】
撮像部12は、本体11上に設けられた、本体11の周囲を撮像する装置である。撮像部12は、例えば、所定の撮像範囲を撮像することによって撮像画像を生成するデジタルカメラ等の撮像装置である。撮像部12の詳細な構成については、図3を用いて後述する。
【0029】
照明部13は、本体11上に設けられた、撮像部12の撮像範囲に光を照射する装置である。照明部13は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の光源を有する。照明部13の詳細な構成については、図4を用いて後述する。
【0030】
本体11は、例えば、筒状の支持体の一端に、照明部13及び撮像部12が接続されることによって、構成されてもよい。また、本体11は、例えば、筒状の支持体の内部に、照明部13及び撮像部12が取り付けられることによって、構成されてもよい。また、本体11は、例えば、照明部13及び撮像部12が一体化された装置であってもよい。
【0031】
本体11の長手方向Dに垂直な向きに沿った照明部13の高さは、本体11の長手方向Dに垂直な向きに沿った撮像部12の高さ以下である。すなわち、照明部13は、本体11の長手方向Dに垂直な向きに、撮像部12よりも突出しないように構成されている。このような構成により、撮像装置1は、作業者が撮像部12を床版Sの孔S1に挿入する際に、照明部13が孔S1の壁面に衝突する事態を抑制できる。
【0032】
落下防止部14は、床版Sの孔S1に挿入された状態の撮像装置1の落下を防止するための止め具である。落下防止部14は、撮像部12及び照明部13よりも本体11の一端側に設けられており、本体11の他端側が床版Sの上面に対して垂直方向下向きとなるように本体11を孔S1に挿入したときに撮像装置1の落下を防止する。落下防止部14の詳細な構成については、図6を用いて後述する。
【0033】
本実施形態において、本体11上には、本体11の一端側から順に撮像部12、照明部13及び落下防止部14が設けられている。また、本体11上には、本体11の一端側から順に照明部13、撮像部12及び落下防止部14が設けられてもよい。撮像部12及び照明部13と、落下防止部14と、の間の距離は、作業対象の床版Sの厚さ以上である。これにより、撮像装置1が孔S1に挿入された状態において、撮像部12は桁Gと床版Sとの接点を撮像できるとともに、照明部13は撮像部12の撮像範囲に光を照射できる。
【0034】
このような構成により、撮像装置1は、床版Sの上から孔S1に挿入されることにより、桁Gと床版Sとの接点の撮像画像を通信端末2に表示させることができる。これにより、作業者は、床版Sの下側において桁Gが切断されないように監視をする必要がないため、床版Sの切断時に発生する粉塵、騒音等を受けづらくなる。
【0035】
制御部15は、撮像部12が生成した撮像画像を通信端末2に無線通信により送信する無線通信部151と、撮像部12及び照明部13に電力を供給する電池152と、を含む。さらに制御部15は、撮像部12の制御回路、照明部13の制御回路等、その他の構成を含んでもよい。
【0036】
無線通信部151は、少なくとも一部が本体11の内部を通るケーブル16を介して撮像部12に接続される。また、電池152は、少なくとも一部が本体11の内部を通るケーブル16を介して撮像部12及び照明部13に接続される。このような構成により、撮像装置1は、撮像部12及び照明部13が浸水するおそれを低減できる。
【0037】
制御部15は、例えば、箱状の筐体に収容され、床版Sの上方の壁面や床面に設置される。制御部15が床版Sの下方にあると、無線通信部151と通信端末2との間の無線通信が床版Sに遮蔽され、例えば通信端末2がリアルタイムに撮像画像を表示できなくなる場合がある。これに対して、制御部15は、通信端末2と同じく床版Sの上方に設置されることにより、無線通信が床版Sに遮蔽されることがなくなるため、無線通信部151と通信端末2との間の通信状況を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態において制御部15は本体11とは独立した部材として構成されているが、本体11と一体化されてもよい。この場合に、制御部15は、本体11において、撮像部12及び照明部13が設けられている一端側と反対の他端側に設けられることが望ましい。すなわち、本体11において、落下防止部14を挟んで撮像部12及び照明部13と反対側に制御部15が設けられることが望ましい。これにより、撮像装置1が孔S1に挿入された状態において、制御部15は床版Sの上方に位置するようになるため、無線通信部151と通信端末2との間の通信状況を向上させることができる。
【0039】
本体11は、撮像部12及び照明部13を覆う、光を透過する保護部材17をさらに有する。保護部材17は、撮像部12及び照明部13に本体11の外部の水を接触させないための防水性を備えている。保護部材17の詳細な構成については、図5を用いて後述する。
【0040】
本体11には、本体11の内部空間と外部空間との間で空気を移動させるための通気部18が設けられている。通気部18は、例えば、ルーバである。通気部18は、本体11の防水性を保てるように、空気を通過させる一方で、水を通過させない構造を有することが望ましい。通気部18は、本体11の内部空間と外部空間との間で通気を行うことによって、本体11の内部空間に蓄積された熱により撮像部12及び照明部13が異常動作又は破損をするおそれを低減できる。
【0041】
図3は、撮像部12の構成を説明するための模式図である。図3は、例示的な撮像部12の側面及び正面を表している。撮像部12は、所定の撮像範囲を撮像するための撮像素子121と、撮像素子121を支持する筐体122と、を有する。
【0042】
撮像部12は、本体11の長手方向Dに対して垂直な平面Pにおける180度以上の範囲、望ましくは360度の範囲を撮像する撮像素子121を有する。撮像素子121は、例えば、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサである。
【0043】
撮像部12は、例えば、180度以上の範囲の撮像を可能とする複数の撮像素子121を備えてもよい。また、撮像部12は、例えば、撮像素子121に180度以上の範囲の光を入射させる広角レンズを備えてもよい。このような構成により、撮像装置1が床版Sの孔S1に挿入されており、作業者から撮像部12の向きと桁Gと床版Sとの接点との関係が見えない状態であっても、作業者は撮像部12の撮像範囲に桁Gと床版Sとの接点を容易に含めることができる。
【0044】
筐体122は、本体11の長手方向Dと一致した長手方向を有する直方体状(細長形状)である。このような構成により、作業者は、撮像装置1を床版Sの孔S1に容易に挿入することができる。
【0045】
図4は、照明部13の構成を説明するための模式図である。図4は、例示的な照明部13の正面を表している。照明部13は、光を発する光源131と、光源131を支持する支持体132と、を有する。
【0046】
照明部13は、本体11の長手方向Dに対して垂直な平面Pにおける180度以上の範囲、望ましくは360度の範囲に光を照射する光源131を有する。光源131は、例えば、LEDである。照明部13は、例えば、180度以上の範囲への光の照射を可能とする複数(例えば、4個)の光源131を備えてもよい。また、照明部13は、例えば、光源131が発した光を180度以上の範囲に導く導光板を備えてもよい。このような構成により、撮像装置1が床版Sの孔S1に挿入されており、作業者から照明部13の向きと桁Gと床版Sとの接点との関係が見えない状態であっても、作業者は桁Gと床版Sとの接点に対して照明部13の光を容易に照射することができる。
【0047】
支持体132は、光源131を所定の角度に支持する。また、支持体132は、光源131が光を照射する向きを変更するためのねじ等の角度調整部を有してもよい。このような構成により、作業者は、光源131が撮像部12の撮像範囲に光を照射するように、光源131の角度を調整できる。
【0048】
図5は、保護部材17の構成を説明するための模式図である。図5は、撮像部12及び照明部13を覆っている例示的な保護部材17の正面を表している。保護部材17は、撮像部12及び照明部13に本体11の外部の水を接触させないように、撮像部12及び照明部13を覆っている。保護部材17は、光を透過する部材であり、例えば、アクリルで構成される。
【0049】
保護部材17において、照明部13を覆う第2部分172の光の透過度は、撮像部12を覆う第1部分171の光の透過度よりも小さい。第2部分172は、例えば、半透明の塗料が塗布されることにより、光の透過度が低下させられている。このような構成により、照明部13が発する光は保護部材17を通過する際に拡散するため、照明部13はより広い範囲に光を照射することができる。
【0050】
図5には、撮像部12が撮像する向きD1と、照明部13が光を照射する向きD2とが模式的に表されている。照明部13は、照明部13が光を照射する向きD2が、撮像部12が撮像する向きD1に近付く角度となるように、本体11に取り付けられている。照明部13が光を照射する向きD2の角度は、例えば、本体11の長手方向Dに対して垂直な平面Pに対して、撮像部12側(鉛直方向の上側)に5度~10度である。このような構成により、照明部13は、撮像部12の撮像範囲に向けて光を照射することができる。
【0051】
また、撮像部12と照明部13との間の距離及び照明部13の角度は、照明部13が発した光が撮像部12の撮像素子121に直接入射しないように設定されることが望ましい。これにより、照明部13が発した光が直接撮像素子121に入ることにより、撮像画像において白飛び等の問題が発生することを抑制できる。
【0052】
図6は、落下防止部14の構成を説明するための模式図である。落下防止部14は、本体11の側面から突出する突出部141と、本体11が挿入される開口部142と、本体11上の落下防止部14の位置を調整するための位置調整部143と、を有する。
【0053】
突出部141は、本体11の側面から本体11の長手方向Dに垂直な少なくとも2つの向きに突出する部材である。突出部141は、例えば、本体11の長手方向Dに対して垂直な平面Pにおける360度の範囲で本体11の側面から突出することが望ましい。そして突出部141は、床版Sの孔S1を形成する壁面に接触することによって、床版Sの孔S1に挿入された状態の撮像装置1の落下を防止する。
【0054】
突出部141は、例えば、孔S1を形成する上側の壁面(すなわち、孔S1周辺の床版Sの上面)に載置されることによって、撮像装置1が孔S1から落下しないように撮像装置1を支持する。
【0055】
また、突出部141は、例えば、孔S1を形成する内側の壁面(すなわち、孔S1の内壁面)に内接することによって、撮像装置1が孔S1から落下しないように撮像装置1を支持してもよい。この場合に、突出部141は、例えば、ばねやゴム等の弾性部材を備え、孔S1を形成する内側の壁面に力を加えることによって、撮像装置1を孔S1に固定する。
【0056】
このような構成により、撮像装置1は、桁Gと床版Sとの接点を含む撮像範囲を撮像する際に、作業者が撮像装置1を孔S1から落下しないように持ち続ける必要がないため、作業者の負担を削減することができる。
【0057】
本実施形態において突出部141は本体11から取り外し可能な部材として構成されているが、本体11と一体化されていてもよい。すなわち、本体11の側面の一部が突出部141として構成されていてもよい。また、突出部141は、本体11の側面から突出している突出状態と、本体11の側面から突出していない非突出状態と、の間で切り替え可能であってもよい。この場合に、突出部141は、例えば、非突出状態においては本体11の内部に格納されており、作業者が撮像装置1に対して所定の操作を行ったことに応じて本体11の側面から突出して突出状態になる。
【0058】
位置調整部143は、本体11の長手方向Dに沿った落下防止部14の位置を変更するための部材である。位置調整部143は、例えば、ねじを含む。作業者は、開口部142に本体11が挿入された状態で落下防止部14を所望の位置に動かし、位置調整部143のねじを締める。突出部141はねじの締結力によって開口部142の内径が小さくなるように変形するため、開口部142の内壁面が本体11の側面に接触し、落下防止部14の位置が固定される。このような構成により、撮像装置1は、落下防止部14の位置を、様々な厚さの床版Sに適した位置に調整することを可能にできる。
【0059】
位置調整部143は、ここに示した具体的な構成に限られず、その他の方法で落下防止部14の位置を変更可能にしてもよい。位置調整部143は、例えば、本体11の側面に設けられた複数の係合部それぞれに係合可能に構成され、当該複数の係合部のいずれかに係合することによって落下防止部14の位置を変更してもよい。あるいは、本体11を雄ネジ、落下防止部14を雌ネジとし、本体11の表面と開口部142の表面とにねじ溝を設けることで落下防止部14の位置を変更するようにしてもよい。
【0060】
[監視方法の説明]
上述の撮像装置1を用いて橋梁等の構造物の状況を監視するための監視方法を以下に説明する。まず作業者は、床版Sにおいて、撮像装置1を挿入するための孔S1を形成する。作業者は、例えば、コアドリルを用いて床版Sを床版Sの上面に対して垂直方向に削孔することによって孔S1を形成する。
【0061】
図7は、床版Sに孔S1を形成する方法を説明するための模式図である。図7は、床版Sの一部と、床版S上に形成される複数の孔S1と、を表している。床版S上には、切断装置Cにより切断される予定の仮想的な線である切断予定線S2が表されている。また、床版S上には、床版Sの下方において桁Gが延在する領域が破線で表されている。桁Gが延在する領域は、桁Gと床版Sとの接点を含む。
【0062】
作業者は、床版Sにおいて桁Gが延在する領域と重ならない位置に、床版Sを床版Sの上面に対して垂直方向に貫通する孔S1を形成する。すなわち、孔S1は、桁Gと床版Sとの接点とは異なる位置に形成される。これにより、撮像装置1は、孔S1に挿入された状態で、桁Gと床版Sとの接点を含む撮像範囲を撮像できる。
【0063】
作業者は、切断予定線S2を含む直線(すなわち、切断予定線S2を延長した直線)上にない位置に、孔S1を形成することが望ましい。これにより、撮像装置1は、切断予定線S2に対して斜め方向から撮像をすることができるため、床版Sを切断している切断装置C自体に桁Gと床版Sとの接点が隠れてしまう事態を抑制できる。
【0064】
作業者は、互いに並行して延在する2つの桁Gの間に、孔S1を形成することが望ましい。これにより、撮像装置1は、1つの孔S1に挿入された状態で2つの桁Gと床版Sとの接点を撮像することができるため、撮像装置1を用いて構造物の状況を監視するために掛かる手間を削減できる。
【0065】
作業者は、撮像装置1を挿入するための孔S1を含む複数の孔を形成することが望ましい。これにより、作業者は、後述のように孔S1を含む複数の孔にワイヤを挿入することによって、切断後の床版Sを吊り上げることができる。
【0066】
次に作業者は、撮像装置1を孔S1に挿入する。図8は、撮像装置1を孔S1に挿入する方法を説明するための模式図である。作業者は、撮像装置1を、撮像部12の撮像範囲が桁Gと床版Sとの接点を含むように、床版Sの上方から孔S1に挿入する。撮像部12は、桁Gが延在する領域と、切断予定線S2と、が交わる部分Aを含む撮像範囲を撮像する。また、照明部13は、撮像装置1の周囲に光を照射することにより、床版Sの下方における撮像部12の撮像範囲に十分な光量を与える。これにより、撮像装置1は、切断装置Cによって床版Sの下にある桁Gが切断されないことを確認するための撮像画像を、作業者に提供できる。
【0067】
撮像装置1が床版Sの上面に対して垂直方向下向きに孔S1に挿入されると、落下防止部14は、孔S1を形成する壁面に接触することによって、孔S1に挿入された撮像装置1を支持する。これにより、撮像装置1は、孔S1から落下しないように作業者によって持ち続けられる必要がないため、作業者の負担を削減することができる。
【0068】
孔S1に挿入された撮像装置1が落下防止部14によって支持されている状態で、作業者は、床版Sの上方から切断装置Cを用いて床版Sを切断予定線S2に沿って切断する作業を開始する。また、撮像装置1は、床版Sの切断中又は切断前に、桁Gと床版Sとの接点の撮像画像を通信端末2(表示装置)に表示させる。ここで撮像装置1は、孔S1に挿入された撮像装置1が落下防止部14によって支持されている状態であって、かつ照明部13が桁Gと床版Sとの接点に光を照射している状態で撮像された撮像画像を、通信端末2に表示させる。
【0069】
図9は、撮像画像を通信端末2に表示させる方法を説明するための模式図である。撮像装置1は、撮像部12が撮像をすることによって生成された撮像画像を、無線通信部151による無線通信を介して、床版Sの上方に配置された通信端末2に送信する。撮像装置1は、静止画像を撮像画像として所定の時間間隔で逐次送信してもよく、動画像を撮像画像として常時送信してもよい。
【0070】
通信端末2は、撮像装置1が送信した撮像画像21を、表示部上に表示する。図9に例示したように、撮像画像21には、桁G、床版S及び切断装置Cの刃の位置関係が写っている。通信端末2は、床版Sの上方において、切断装置Cを操作する作業者によって保持されている。これにより、作業者は、切断装置Cを操作しながら、切断装置Cによって床版Sの下にある桁Gが切断されないことを確認することができるため、床版Sを切断する作業を効率的に進めることができる。
【0071】
作業者は、切断装置Cを用いて床版Sの切断を完了した後に、孔S1を利用して、切断された後の床版Sを吊り上げてもよい。作業者は、例えば、図7に例示した孔S1を含む複数の孔に、ワイヤを挿入する。そして作業者は、クレーン等を用いてワイヤを引き上げることによって、切断された後の床版Sを吊り上げて移動させる。これにより、撮像装置1を挿入するための孔S1を、床版Sを吊り上げるために再利用できるため、床版Sを切断して撤去するための手間を削減できる。
【0072】
[監視方法のフロー]
図10は、本実施形態に係る監視方法のフローチャートを示す図である。まず作業者は、床版Sにおいて桁Gが延在する領域と重ならない位置に、床版Sを床版Sの上面に対して垂直方向に貫通する孔S1を形成する(S11)。
【0073】
作業者は、撮像装置1を、撮像部12の撮像範囲が桁Gと床版Sとの接点を含むように、床版Sの上方から孔S1に挿入する(S12)。撮像装置1が床版Sの上面に対して垂直方向下向きに孔S1に挿入されると、落下防止部14は、孔S1を形成する壁面に接触することによって、孔S1に挿入された撮像装置1を支持する。
【0074】
撮像装置1は、撮像部12が撮像をすることによって生成された撮像画像を、無線通信部151による無線通信を介して、床版Sの上方に配置された通信端末2に送信することにより、通信端末2における撮像画像の表示を開始する(S13)。
【0075】
孔S1に挿入された撮像装置1が落下防止部14によって支持されている状態で、作業者は、床版Sの上方から切断装置Cを用いて床版Sを切断予定線S2に沿って切断する(S14)。作業者は、切断装置Cを用いて床版Sの切断を完了した後に、撮像装置1を孔S1から撤去し、通信端末2における撮像画像の表示を終了させる(S15)。
【0076】
作業者は、孔S1を含む複数の孔に、ワイヤを挿入する。そして作業者は、クレーン等を用いてワイヤを引き上げることによって、切断された後の床版Sを吊り上げて移動させる(S16)。
【0077】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る撮像装置1は、床版Sの上から孔S1に挿入されることにより、桁Gと床版Sとの接点の撮像画像を通信端末2に表示させることができる。作業者は、床版Sの下側において桁Gが切断されないように監視をする必要がないため、床版Sの切断時に発生する粉塵、騒音等を受けづらくなる。これにより、監視システムは、床版Sの下にある桁Gを切断せずに床版Sを切断する作業の環境を改善できる。
【0078】
また、撮像装置1は、撮像装置1の落下を防止するための落下防止部14を有することにより、桁Gと床版Sとの接点を含む撮像範囲を撮像する際に、作業者が撮像装置1を孔S1から落下しないように持ち続ける必要がないため、作業者の負担を削減することができる。作業者は、撮像装置1が撮像した撮像画像を通信端末2において参照しながら、切断装置Cを用いて床版Sを切断することができるため、床版Sの下にある桁Gを切断せずに床版Sを切断する作業を効率的に進めることができる。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0080】
1 撮像装置
11 本体
12 撮像部
121 撮像素子
122 筐体
13 照明部
131 光源
132 支持体
14 落下防止部
141 突出部
142 開口部
143 位置調整部
15 制御部
151 無線通信部
152 電池
16 ケーブル
17 保護部材
18 通気部
2 通信端末

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10