IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社明電舎の特許一覧

<>
  • 特開-電気機器収納盤 図1
  • 特開-電気機器収納盤 図2
  • 特開-電気機器収納盤 図3
  • 特開-電気機器収納盤 図4
  • 特開-電気機器収納盤 図5
  • 特開-電気機器収納盤 図6
  • 特開-電気機器収納盤 図7
  • 特開-電気機器収納盤 図8
  • 特開-電気機器収納盤 図9
  • 特開-電気機器収納盤 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085705
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】電気機器収納盤
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20230614BHJP
   H02B 1/56 20060101ALI20230614BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230614BHJP
   H01F 27/08 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H01F30/10 G
H02B1/56 A
H05K7/20 H
H05K7/20 G
H05K7/20 K
H01F30/10 S
H01F27/08 153
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199892
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 広
【テーマコード(参考)】
5E050
5E322
5G016
【Fターム(参考)】
5E050BA05
5E322AA03
5E322AA11
5E322BA01
5E322BA03
5E322BB03
5E322BC02
5G016AA07
5G016CG03
5G016CG13
(57)【要約】
【課題】列盤の冷却効率の向上に貢献可能な電気機器収納盤を提供する。
【解決手段】盤1,2を水平方向に配列した列盤Aにおいて、盤1および盤2の両者間に介在して当該両者を仕切っている盤隔壁部3と、盤1の内部空間10を上段空間部10aと下段空間部10bとに仕切っている空間部仕切壁16と、を備える。盤隔壁部3における下段空間部10b側に、下段空間部10bと盤2の内部空間20との両者間を連通する盤間下段側連通口31を設け、空間部仕切壁16には、上段空間部10aと下段空間部10bとの両者間を連通する上下段連通口16aを設ける。盤1においては、変圧器4を、上下段連通口16aに挿通した姿勢で、内部空間10に収容する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ箱状の周壁を有して成り水平方向に配列される第1盤および第2盤と、
前記第1盤および第2盤の両者間に介在し、当該両者を仕切っている盤隔壁部と、
前記第1盤の内部空間を上段空間部と下段空間部とに仕切っている空間部仕切壁と、
前記盤隔壁部における前記下段空間部側に設けられ、前記下段空間部と前記第2盤の内部空間との両者間を連通している盤間下段側連通口と、
を備え、
前記空間部仕切壁は、前記上段空間部と前記下段空間部との両者間を連通している上下段連通口が設けられており、
前記第1盤は、
前記第1盤の前記水平方向のうち、前記配列方向に交差する交差方向の一方側である第1盤正面部に、前記下段空間部と連通している第1盤吸気口が設けられており、
前記第1盤における天地方向上方側である第1盤天井部に、前記上段空間部の気体を吸気して当該第1盤の外周側に排気可能な第1盤通風機が、設けられており、
前記第2盤は、当該第2盤の前記水平方向のうち、前記交差方向の一方側である第2盤正面部に、当該第2盤の内部空間と連通している第2盤吸気口が設けられており、
変圧器を、前記上下段連通口に挿通した姿勢で、前記第1盤の内部空間に収容可能であることを特徴とする電気機器収納盤。
【請求項2】
前記下段空間部における前記盤間下段側連通口側に、当該盤間下段側連通口側から前記交差方向の他方側に向かって延在している第1盤ダクトが、設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気機器収納盤。
【請求項3】
前記盤間下段側連通口は、前記盤隔壁部における前記交差方向の一方側に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の電気機器収納盤。
【請求項4】
前記盤隔壁部における上段空間部側に、前記第2盤の内部空間と前記上段空間部との両者間を連通している盤間上段側連通口が設けられており、
前記第2盤は、当該第2盤における天地方向上方側である第2盤天井部に、当該第2盤の内部空間の気体を当該第2盤の外周側に排気可能な第2盤通風機が、設けられていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の電気機器収納盤。
【請求項5】
前記第2盤は、当該第2盤の内部空間における前記交差方向の他方側に、当該第2盤の天地方向に延在する第2盤ダクトが、設けられており、
前記盤間上段側連通口は、前記盤隔壁部における前記交差方向の他方側に設けられ、前記第2盤ダクトと連通していることを特徴とする請求項4記載の電気機器収納盤。
【請求項6】
前記第2盤は、発熱性の電子部品を具備した電気機器を、当該第2盤の内部空間に収容可能なことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の電気機器収納盤。
【請求項7】
前記第1盤吸気口および前記第2盤吸気口に、それぞれ吸気フィルタが設けられていることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の電気機器収納盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば種々の電力設備,電気設備等に適用されている電気機器収納盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力設備,電気設備等で適用されている電気機器収納盤においては、例えば変圧器盤,電力変換器盤,制御盤,補機盤のように、種々の電気機器や装置等を収納し、当該盤の内部空間(以下、単に内部空間と適宜称する)を適宜冷却して温度上昇を抑制できるようにした構成が知られている。
【0003】
例えば特許文献1では、複数個の盤を水平方向に配列し当該各盤に種々の電気機器や装置等を収納できるようにしたもの(以下、単に列盤と適宜称する)が開示されている。この特許文献1の列盤では、通風機(例えば軸流ファンや遠心ファン)を利用して、当該列盤の一方側の盤(特許文献1では符号121の吸気口)から外気を取り込み、その取り込んだ外気(以下、取込外気と適宜称する)を当該列盤の他方側の盤に移動させて排気(特許文献1では符号52の排気口から排気)できる構成となっている。
【0004】
また、特許文献2では、列盤において、隣接する2つの盤の一方(特許文献2では符号5の電力変換器盤)の吸気口(特許文献2では符号15a~15d)から取り込んだ取込外気を、他方(特許文献2では符号3の変圧器盤)の内部空間に移動できるようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4839149号公報
【特許文献2】特許第5720184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2のような列盤では、各盤の圧力損失については特に考慮されておらず、各盤に収納される電気機器の種類等によっては、以下に示すように列盤の冷却効率が低下し易いおそれがあった。
【0007】
例えば、変圧器盤の内部空間容量あたりの必要換気量は、収納する変圧器の種類等(大きさ,稼動効率等)によって異なるが、当該変圧器盤以外の盤(例えば発熱性の電子部品を具備する電気機器用の盤。以下、単に非変圧器盤と適宜称する)の必要換気量と比較して、大きくなり易い傾向がある。
【0008】
このため、列盤の各盤のうちの一つが変圧器盤である場合には、例えば通風機の動作圧力(動圧等)を大きくし(例えば大型あるいは高価な通風機を適用し)、当該変圧器盤に対する取込外気の吸気速度を上げることにより、変圧器を十分冷却できるようにすることが考えられていた。
【0009】
しかしながら、単に通風機の動作圧力を大きくすると、当該変圧器盤の圧力損失も大きくなったり、各盤における取込外気の吸気速度が不均一になり易く、その結果、列盤の冷却効率が低下し易くなるおそれがあった。
【0010】
前記のように冷却効率が低下し易くなる傾向は、例えば列盤の小型化により吸気口の吸気面積を縮小化した場合や、当該吸気口に吸気フィルタを設けた場合等に、顕著となるおそれがあった。
【0011】
本発明は、前述のような技術的課題に鑑みてなされたものであって、列盤の冷却効率の向上に貢献可能な電気機器収納盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る電気機器収納盤は、前記の課題を解決できる創作であり、その一態様は、それぞれ箱状の周壁を有して成り水平方向に配列される第1盤および第2盤と、前記第1盤および第2盤の両者間に介在し、当該両者を仕切っている盤隔壁部と、前記第1盤の内部空間を上段空間部と下段空間部とに仕切っている空間部仕切壁と、前記盤隔壁部における前記下段空間部側に設けられ、前記下段空間部と前記第2盤の内部空間との両者間を連通している盤間下段側連通口と、を備えたものである。
【0013】
前記空間部仕切壁は、前記上段空間部と前記下段空間部との両者間を連通している上下段連通口が設けられており、前記第1盤は、前記第1盤の前記水平方向のうち、前記配列方向に交差する交差方向の一方側である第1盤正面部に、前記下段空間部と連通している第1盤吸気口が設けられており、前記第1盤における天地方向上方側である第1盤天井部に、前記上段空間部の気体を吸気して当該第1盤の外周側に排気可能な第1盤通風機が、設けられており、前記第2盤は、当該第2盤の前記水平方向のうち、前記交差方向の一方側である第2盤正面部に、当該第2盤の内部空間と連通している第2盤吸気口が設けられているものである。
【0014】
そして、変圧器を、前記上下段連通口に挿通した姿勢で、前記第1盤の内部空間に収容可能であることを特徴とする。
【0015】
前記一態様においては、前記下段空間部における前記盤間下段側連通口側に、当該盤間下段側連通口側から前記交差方向の他方側に向かって延在している第1盤ダクトが、設けられていることを特徴としても良い。
【0016】
また、前記盤間下段側連通口は、前記盤隔壁部における前記交差方向の一方側に設けられていることを特徴としても良い。
【0017】
また、前記盤隔壁部における上段空間部側に、前記第2盤の内部空間と前記上段空間部との両者間を連通している盤間上段側連通口が設けられており、前記第2盤は、当該第2盤における天地方向上方側である第2盤天井部に、当該第2盤の内部空間の気体を当該第2盤の外周側に排気可能な第2盤通風機が、設けられていることを特徴としても良い。
【0018】
また、前記第2盤は、当該第2盤の内部空間における前記交差方向の他方側に、当該第2盤の天地方向に延在する第2盤ダクトが、設けられており、前記盤間上段側連通口は、前記盤隔壁部における前記交差方向の他方側に設けられ、前記第2盤ダクトと連通していることを特徴としても良い。
【0019】
また、前記第2盤は、発熱性の電子部品を具備した電気機器を、当該第2盤の内部空間に収容可能なことを特徴としても良い。
【0020】
また、前記第1盤吸気口および前記第2盤吸気口に、それぞれ吸気フィルタが設けられていることを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0021】
以上示したように本発明によれば、盤の冷却効率の向上に貢献可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】列盤A(および列盤B,C)を説明するための概略概観図(盤正面部11,21側から臨んだ外観図)。
図2】盤正面部11,21を取り除いた状態において列盤A内を臨んだ概略構成図(盤正面部11,21側から臨んだ図)。
図3】盤天井部14,24を取り除いた状態において列盤A内を臨んだ概構成略図(盤天井部14,24側から臨んだ図)。
図4】盤隔壁部3の概略断面図(盤1側から臨んだ図)。
図5】盤正面部11,21を取り除いた状態において列盤B内を臨んだ概略構成図(盤正面部11,21側から臨んだ図)。
図6】盤天井部14,24および空間部仕切壁16を取り除いた状態において列盤B内を臨んだ概構成略図(盤天井部14,24側から臨んだ図)。
図7】列盤Bにおける盤隔壁部3の概略断面図(盤1側から臨んだ図)。
図8】盤正面部11,21を取り除いた状態において列盤C内を臨んだ概略構成図(盤正面部11,21側から臨んだ図)。
図9】盤天井部14,24を取り除いた状態において列盤C内を臨んだ概構成略図(盤天井部14,24側から臨んだ図)。
図10】列盤Cにおける盤隔壁部3の概略断面図(盤1側から臨んだ図)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態の列盤(電気機器収納盤)は、特許文献1,2に示すような構成の列盤(以下、単に従来盤と適宜称する)とは、全く異なるものである。
【0024】
すなわち、本実施形態の列盤は、水平方向に配列される第1盤および第2盤を備えたものであって、第1盤および第2盤の両者間に介在して当該両者を仕切っている盤隔壁部と、当該第1盤の内部空間を上段空間部と下段空間部とに仕切っている空間部仕切壁と、を備えたものである。また、前記盤隔壁部における前記下段空間部側に、前記下段空間部と第2盤の内部空間との両者間を連通する盤間下段側連通口を設け、前記空間部仕切壁には、前記上段空間部と前記下段空間部との両者間を連通する上下段連通口を設けたものである。
【0025】
また、第1盤においては、盤正面部(第1盤および第2盤の配列方向に交差する交差方向の一方側)に、前記下段空間部と連通している吸気口が設けられており、盤天井部に、前記上段空間部の気体を吸気して当該第1盤の外周側に排気可能な通風機が、設けられているものとする。また、第2盤においては、盤正面部に、当該第2盤の内部空間と連通している吸気口が設けられているものとする。そして、変圧器を、前記上下段連通口に挿通した姿勢で、前記第1盤の内部空間に収容できるようにしたものである。
【0026】
このような本実施形態の列盤によれば、通風機を適宜稼動することにより、第1盤および第2盤の各吸気口から外気が取り込むことができる。また、第1盤および第2盤が盤間下段側連通口を介して連通しているため、第1盤および第2盤の各吸気口から吸気される取込外気の吸気速度が、均等化し易くなる。
【0027】
また、第1盤の下段空間部に吸気された取込外気においては、当該下段空間部から上段空間部への移動経路が、上下段連通口を通過するように収束され、当該上下段連通口付近での取込外気の流速が、速くなる(すなわち、当該取込外気の流量が大きくなる)。これにより、例えば従来盤のように単に通風機の動作圧力を大きくしなくても、当該上下段連通口に挿通した姿勢で収納された変圧器を、十分冷却し易くなる。
【0028】
したがって、本実施形態の列盤によれば、従来盤と比較して、第1盤(変圧器盤)の圧力損失を抑制し易く、当該第1盤に収納した変圧器を冷却し易くなる。このため、例えば、列盤の小型化により吸気口の吸気面積を縮小化した場合や、当該吸気口に吸気フィルタを設けた場合であっても、当該列盤の冷却効率の向上に十分貢献可能であることが判る。
【0029】
なお、従来盤においても、例えば変圧器盤を下記(1)(2)のように構成することにより、当該変圧器盤の圧力損失を抑制したり、当該変圧器盤に収納した変圧器を冷却し易くなる可能性はある。
【0030】
(1)盤正面部の吸気口の吸気面積を拡大(例えば盤間下段側連通口と同程度に拡大)した構成
(2)盤正面部に吸気口を形成する他に、盤側面部や盤背面部にも吸気口を形成した構成
しかしながら、前記(1)の従来盤は、変圧器盤の機械的強度の低下を招いてしまうおそれがある。
【0031】
また、前記(2)の従来盤は、所望の環境(例えば建屋)に設置する場合、盤正面部,盤側面部,盤背面の各吸気口が、例えば周囲の構造物(例えば建屋の壁面等)によって遮られないように、設置する必要がある。特に、各吸気口に吸気フィルタが設けられている場合には、当該吸気フィルタをメンテナンスできるように、設置する必要がある。このため、前記(2)の従来盤の設置環境や設置姿勢等が制限されてしまうおそれがある。
【0032】
一方、本実施形態の列盤は、前記(1)(2)のように構成する必要がないため、例えば従来盤と比較すると、当該列盤の機械的強度を向上し易く、当該列盤を設置環境や設置姿勢等の自由度を向上し易くなる可能性がある。また、列盤の小型化や低コスト化等が容易になる可能性もある。
【0033】
本実施形態の列盤は、前述のように第1盤および第2盤の両者間が盤間下段側連通口を介して連通している構成であって、変圧器を、第1盤における空間仕切壁の上下段連通口に挿通した姿勢で収容できる構成であれば良く、多様な設計変更が可能である。すなわち、種々の分野(例えば電力設備,電気設備等で利用されている盤の分野)の技術常識を適宜適用し、必要に応じて先行技術文献等を適宜参照して設計変形することが可能である。
【0034】
なお、以下の実施例1~3では、例えば互いに同様の内容について同一符号を引用する等により、詳細な説明を適宜省略しているものとする。
【0035】
≪実施例1による列盤A≫
<列盤Aの主な構成>
図1図4は、実施例1による列盤Aを説明するための概略構成図である。この列盤Aにおいては、主に、変圧器盤として利用可能な盤(第1盤)1と、非変圧器盤として利用可能な盤(第2盤)2と、を水平方向に配列し、当該盤1および盤2の両者間を盤隔壁部3で仕切った構成となっている。
【0036】
まず、盤1においては、それぞれパネル状や柱状の複数個の盤枠を略箱状に組み付けた周壁1aを有してなり、内部空間10が、それぞれ平板状の盤正面部11,盤背面部12,盤側面部13,盤天井部14,盤底部15,盤隔壁部3によって囲繞された構成となっている。
【0037】
内部空間10は、当該内部空間10の中央部にて盤1の水平方向に延在している平板状の空間部仕切壁16により、上段空間部10aと下段空間部10bとに仕切られている。
【0038】
また、空間部仕切壁16は、当該空間部仕切壁16の中央部に、列盤Aの天地方向(以下、単に天地方向と適宜称する)に貫通した形状の上下段連通口16aが、設けられている。この上下段連通口16aにより、上段空間部10aと下段空間部10bとの両者間が連通した構成であって、後述の変圧器4を内部空間10に収納する場合に、当該上下段連通口16aに当該変圧器4を挿通した姿勢にできる構成となっている。
【0039】
盤正面部11は、当該盤正面部11における下段空間部10b側に、当該盤正面部11の肉厚方向に貫通した吸気口17(図中では3個の吸気口17)が設けられ、下段空間部10bに外気を取り込めるように構成されている。
【0040】
盤天井部14は、当該盤天井部14の肉厚方向に貫通した排気口14a(図中では4個の排気口14a)が設けられている。また、盤天井部14における排気口14a側には、当該排気口14aを覆うように通風機14bが設けられ、上段空間部10a内の気体(内部空間10に取り込まれた取込外気)を吸気して盤1の外周側に排気できるように構成されている。
【0041】
盤2も、盤1と同様に、それぞれパネル状や柱状の複数個の盤枠を略箱状に組み付けた周壁2aを有してなり、内部空間20が、それぞれ平板状の盤正面部21,盤背面部22,盤側面部23,盤天井部24,盤底部25,盤隔壁部3によって囲繞された構成となっている。
【0042】
盤正面部21は、当該盤正面部21の肉厚方向に貫通した吸気口27(図中では4個の吸気口27)が設けられ、内部空間20に外気を取り込めるように構成されている。
【0043】
盤天井部24は、当該盤天井部24の肉厚方向に貫通した排気口24a(図中では2個の排気口24a)が設けられている。また、盤天井部24における排気口24a側には、当該排気口24aを覆うように通風機24bが設けられ、内部空間20内の気体(内部空間20に取り込まれた取込外気)を吸気して盤2の外周側に排気できるように構成されている。
【0044】
盤隔壁部3は、当該盤隔壁部3における下段空間部10b側に、当該盤隔壁部3の肉厚方向に貫通した形状の盤間下段側連通口31が設けられ、当該下段空間部10bと盤2の内部空間20との両者間を連通した構成となっている。図中の盤間下段側連通口31の場合、盤隔壁部3における盤正面部11側(すなわち、盤1,2の配列方向(以下、単に配列方向と適宜称する)に交差する交差方向の一方側)に設けられている。なお、図4(および後述の図7図10)中の点線部で示す位置は、空間部仕切壁16の天地方向の位置を示すものである。
【0045】
<列盤Aの収納構成例>
列盤Aの盤1,2においては、それぞれ種々の電気機器や電気部品を収納することが可能であるが、当該盤1に収納する変圧器4の一例としては、図2図3に示すような態様が挙げられる。図2図3の変圧器4の場合、鉄心41に巻線42が巻回された3相3脚構造(図中では3つの鉄心脚が水平方向に配列された構造)となっており、上下段連通口16aに挿通した姿勢(各鉄心脚が水平方向に配列された姿勢)で収納されている。
【0046】
盤2においては、例えば発熱性の電子部品(その他、必要に応じて電気回路等)を具備した電気機器5を収納することが挙げられる。電気機器5の具体例としては、パワー半導体等(IGBT等)のような発熱性の電子部品や制御回路等を具備した電力変換器が挙げられる。また、例えば図2図3に示すように、ユニット形状の複数個の電気機器5を、天地方向および配列方向に所定間隔を隔てて配列(図2図3では天地方向8段,配列方向2列で配列)するように収納することが挙げられる。
【0047】
<列盤Aの通気構成例>
列盤Aにおいて、通風機14b,24bを適宜稼動し、上段空間部10a内,内部空間20それぞれの気体(取込外気)を吸気して排気すると、内部空間10,20が、列盤Aの外周側よりも負圧となる。これにより、それぞれ吸気口17,27から下段空間部10b,内部空間20に対して外気が取り込まれる。
【0048】
まず、内部空間20に取り込まれた取込外気の一部は、当該内部空間20を移動し排気口24aおよび通風機24bを介して列盤Aの外周側(盤2の外周側)に排気され、当該取込外気の残部は、盤間下段側連通口31を介して内部空間20から下段空間部10bに移動する。
【0049】
下段空間部10bに取り込まれた取込外気(および内部空間20から移動した取込外気)は、上下段連通口16aを介して当該下段空間部10bから上段空間部10aに移動してから、排気口14aおよび通風機14bを介して列盤Aの外周側(盤1の外周側)に排気される。
【0050】
以上のように下段空間部10b,内部空間20に取り込まれた取込外気を排気することにより、内部空間10,20がそれぞれ冷却され、温度上昇が抑制されることとなる。特に、上下段連通口16aを介して移動する取込外気は、移動経路が上下段連通口16aにて収束されるため、当該上下段連通口16a付近での流速が速くなり易い(すなわち、当該取込外気の流量が大きくなる)。これにより、上下段連通口16aに挿通した姿勢で収納されている変圧器4は、冷却され易くなる。
【0051】
<その他>
吸気口17,27、排気口14a,24a、盤間下段側連通口31、後述の盤間上段側連通口32の形状等は、適宜設定することが可能であり、特に限定されるものではない。その一例としては、スリット状,円形状,矩形状等の孔が1つ以上穿設されて成る態様が挙げられる。
【0052】
また、吸気口17,27や排気口14a,24aには、図外のフィルタ等を設けることにより、内部空間10,20に対して異物等が混入しないように防止(あるいは内部空間10,20から異物が排出しないように防止)することも挙げられる。具体的に、吸気口17,27の場合、吸気フィルタを設けることが挙げられる。
【0053】
吸気口17,27に設けた吸気フィルタの圧力損失は、それぞれ風速の2乗に比例するものと考えられているが、列盤Aのように盤間下段側連通口31を有した構成によれば、当該吸気フィルタの圧力損失が均等化され易く、また抑制され易くなる。
【0054】
例えば、図1に示す列盤Aのように、盤1,2それぞれに通風機14b,24bを設けた構成の場合、当該通風機14b,24bの圧力損失が不均一なること(例えば通風機24bの圧力損失のほうが大きくなること)も考えられるが、前記のように吸気口17,27に設けた吸気フィルタの圧力損失が均等化されていれば、列盤A全体として圧力損失は十分抑制されたものとなる。
【0055】
また、吸気口17,27においては、例えば図1に示すように、それぞれ通気孔17b,27bを有した平板メッシュ状の保護カバー17a,27aを設けておくことが挙げられる。これにより、吸気口17,27による吸気を妨げないように、盤1,2に収納した変圧器4,電気機器5を遮蔽して保護し易くなる。
【0056】
また、盤1,2に収納した変圧器4,電気機器5の収納性やメンテナンス性等を考慮して、盤正面部11,21において図外のヒンジ等を介して開閉可能な扉構造(観音扉構造,片開き扉構造等)にしたり、空間部仕切壁16等を着脱自在(例えば変圧器4を収納,メンテナンス等する際に着脱自在)な構成にすることが挙げられる。
【0057】
通風機14b,24bにおいては、特に限定されるものではないが、例えば軸流ファンや遠心ファン等を適用することが挙げられる。また、盤1の必要換気量が盤2の必要換気量よりも大きくなり易いため、通風機14bには、動作圧力の大きい態様(通風機24bよりも大きい態様)を適用することが挙げられる。通風機14b,24bの動作圧力が同様の場合には、例えば図1図2に示すように、通風機14bの設置数を通風機24bの設置数よりも多くすることが挙げられる。
【0058】
盤2において、当該盤2の内部空間20における盤背面部22側に、当該盤2の天地方向に延在して排気口24aと連通する図外のダクト(例えば後述の実施例3のようなダクト28)を、設けても良い。この場合、内部空間20に取り込まれた取込外気のうち一部は、前記ダクトに収集された後に、排気口24aおよび通風機24bを介して列盤Aの外周側に排気され易くなる。これにより、内部空間20内の取込外気の排気効率や、盤2に収納されている電気機器5の冷却効率等の向上に貢献し易くなる。
【0059】
なお、図1図3に描写する列盤Aにおいては、盤2の盤天井部24に排気口24aや通風機24bを有した構成となっているが、たとえ当該排気口24aや通風機24bを省略した構成にしても、本実施例1と同様の作用効果を奏することは十分可能である。
【0060】
この場合、吸気口27から内部空間20に対して取り込まれた取込外気は、盤間下段側連通口31を介して内部空間20から下段空間部10bに移動し、さらに上下段連通口16aを介して当該下段空間部10bから上段空間部10aに移動してから、排気口14aおよび通風機14bを介して列盤Aの外周側(盤1の外周側)に排気されることとなる。
【0061】
≪実施例2による列盤B≫
盤1に収納される変圧器4においては、下段空間部10b側に位置する部位のうち盤背面部12側(以下、反対側部位と適宜称する)が、当該変圧器4を挟んで吸気口17の反対側に位置することとなる。このような反対側部位においては、十分な冷却ができない場合も考えられる。
【0062】
そこで、本実施例2では、図5図7に示すような列盤Bを構成することにより、反対側部位を冷却し易くした。
【0063】
<列盤Bの主な構成>
図5図7は、実施例2による列盤Bを説明するための概略構成図である。この列盤Bにおいては、主に、実施例1の列盤Aと同様の構成であって、下段空間部10bにおける盤間下段側連通口31側に、ダクト18を設けた構成となっている。このダクト18は、下段空間部10bにおける盤間下段側連通口31側から盤背面部12側(すなわち、配列方向に交差する交差方向のうち盤正面部11の反対側)に向かって延在した構成となっている。
【0064】
このようなダクト18により、列盤Bにおいては、盤間下段側連通口31を介して内部空間20から下段空間部10bに移動する取込外気を、盤背面部12側方向に整流し易くなっている。
【0065】
ダクト18は、種々の態様を適用することが可能であり、特に限定されるものではないが、例えば図5図7に示すように、平板状で天地方向に立設する整流板18aを有した構成が挙げられる。図5図7に示す整流板18aの場合、盤隔壁部3における盤正面部11側の位置から下段空間部10b側に延出した形状であって、延出方向の先端に近づくに連れて盤背面部12側に近接するように、傾斜した姿勢で設けられている。
【0066】
<列盤Bの通気構成例>
列盤Bにおいて、通風機14b,24bを適宜稼動すると、列盤Aと同様に、吸気口17,27から下段空間部10b,内部空間20に対して外気が取り込まれ、通風機14b,24b等を介して列盤Bの外周側に排気されることとなる。
【0067】
内部空間20に取り込まれた取込外気のうち、盤間下段側連通口31を介して内部空間20から下段空間部10bに移動する取込外気においては、ダクト18により、例えば図6中の点線矢印で示すように、盤背面部12側方向に整流され易くなる。
【0068】
以上示した実施例2の列盤Bによれば、実施例1と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、盤間下段側連通口31を介して内部空間20から下段空間部10bに移動する取込外気を、ダクト18により盤背面部12側方向に整流し易くなる。これにより、例えば盤背面部12に図外の吸気口を設けなくても、変圧器4の反対側部位を十分冷却することが可能となる。
【0069】
≪実施例3による列盤C≫
<列盤Cの主な構成>
図8図10は、実施例3による列盤Cを説明するための概略構成図である。この列盤Cにおいては、主に、実施例1の列盤Aと同様の構成であって、盤隔壁部3および盤2を改良した構成となっている。
【0070】
まず、列盤Cの盤2においては、当該盤2の内部空間20における盤背面部22側に、当該盤2の天地方向に延在して排気口24aと連通するダクト28が設けられ、当該内部空間20における盤正面部21側に、電気機器5を収納できる構成となっている。
【0071】
ダクト28は、種々の態様を適用することが可能であるが、内部空間20における盤正面部21側にも連通しているものとする。これにより、当該盤正面部21側の取込外気を収集し、その収集した取込外気を、排気口24aおよび通風機24bを介して列盤Aの外周側に排気できることとなる。
【0072】
列盤Cの盤隔壁部3においては、当該盤隔壁部3おける上段空間部10a側に、当該盤隔壁部3の肉厚方向に貫通した形状の盤間上段側連通口32が設けられ、当該上段空間部10aと盤2の内部空間20(ダクト28)との両者間を連通した構成となっている。図中の盤間上段側連通口32の場合、盤隔壁部3における盤背面部12側(すなわち、配列方向に交差する交差方向のうち盤正面部11の反対側)に設けられている。
【0073】
<列盤Cの通気構成例>
列盤Cにおいて、通風機14b,24bを適宜稼動すると、列盤Aと同様に、吸気口17,27から下段空間部10b,内部空間20に対して外気が取り込まれ、通風機14b,24b等を介して列盤Bの外周側に排気されることとなる。
【0074】
上段空間部10aの取込外気の一部は、排気口14aおよび通風機14bを介して列盤Aの外周側(盤1の外周側)に排気され、当該取込外気の残部は、盤間上段側連通口32を介して上段空間部10aから内部空間20(ダクト28)に移動してから、排気口24aおよび通風機24bを介して列盤Aの外周側(盤2の外周側)に排気される。
【0075】
以上示した実施例3の列盤Cによれば、実施例1と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、盤1の必要換気量(変圧器4の必要換気量)に対する通風機14bの負担を軽減することができるため、当該通風機14bの動作圧力を低減(例えば小型あるいは低価格な通風機を適用)したり、通風機14b,24bの各動作圧力の均等化を図ることが可能となる。例えば、小型の通風機14bを適用した場合には、盤天井部14の縮小化(通風機14bの設置面積の縮小化)や列盤Cの小型化を図ることも可能となる。
【0076】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0077】
例えば、列盤A~Cに用いられる盤枠や、内部空間に設けられる空間部仕切壁16,盤隔壁部3等においては、種々の材料を用いてなるものを適用することができ、その一例として金属材料,樹脂材料等を適宜選択して成るものが挙げられる。
【0078】
また、実施例1~3は、適宜組み合わせても良く、具体例として、列盤A,Cに列盤Bのダクト18を設けこと等が挙げられる。
【符号の説明】
【0079】
A,B,C…列盤
1,2…盤
10,20…内部空間
10a…上段空間部
10b…下段空間部
11,12,13,14,15,21,22,23,24,25…盤枠(盤正面部,盤背面部,盤側面部,盤天井部、盤底部)
17,27…吸気口
14a,24a…排気口
14b,24b…通風機
16…空間部仕切壁
16a…上下段連通口
18,28…ダクト
3…盤隔壁部
31…盤間下段側連通口
32…盤間上段側連通口
4…変圧器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10