(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085725
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】信号源特定装置、方法、プログラム、記録媒体
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20230614BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
G01B7/00 103M
G01R33/02 Z
G01R33/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199915
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100113354
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 総
(72)【発明者】
【氏名】柳田 朋則
(72)【発明者】
【氏名】緒方 祐史
【テーマコード(参考)】
2F063
2G017
【Fターム(参考)】
2F063AA04
2F063GA52
2F063LA18
2G017AA03
(57)【要約】
【課題】磁場などの信号の測定精度を向上する。
【解決手段】信号源特定装置1は、複数の信号源S1、S2から所定の方向を有するベクトルaにより表される信号を受け、互いに直交する3軸X、Y、Zの成分を測定する複数のセンサMS1~MS64の測定結果を受けて、信号源S1、S2の位置およびベクトルaを特定する。信号源特定装置1が、軸ごとにセンサの個数分まとめられた測定結果と、ベクトルとの関係を表す関係行列(リードフィールド行列)を記録する関係行列記録部13と、測定結果bと関係行列Hとに基づき、コスト関数を最小とするような、信号源S1、S2の位置およびベクトルaを導出する位置・ベクトル導出部15とを備える。ベクトルaにおいては、その成分がX、Y、Z軸ごとに信号源の位置する空間の格子点Vの個数分まとめられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する信号源特定装置であって、
前記軸ごとに前記センサの個数分まとめられた前記測定結果と、前記ベクトルとの関係を表す関係行列を記録する関係行列記録部と、
前記測定結果と前記関係行列とに基づき、コスト関数を最小とするような、前記信号源の位置および前記ベクトルを導出する位置・ベクトル導出部と、
を備え、
前記ベクトルにおいては、その成分が前記軸ごとに前記信号源の位置する空間の格子点の個数分まとめられており、
前記コスト関数が、誤差関数と正則化項とを合計したものであり、
前記誤差関数が、前記信号源の位置および前記ベクトルの真の値と前記真の値の候補値との誤差を表すものであり、
前記正則化項が、正則化パラメータと、前記ベクトルのL1ノルムとの関数であり、
前記位置・ベクトル導出部の導出結果に基づき、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する、
信号源特定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の信号源特定装置であって、
前記位置・ベクトル導出部の導出結果を、前記信号源の位置および前記ベクトルであると特定する、
信号源特定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の信号源特定装置であって、
前記位置・ベクトル導出部により導出された前記信号源の位置を、前記信号源の個数のクラスタに分類するクラスタリング部と、
前記クラスタごとに、前記信号源の重心を導出する重心導出部と、
前記クラスタごとに、前記位置・ベクトル導出部により導出された前記ベクトルを、前記信号源と前記重心との距離に反比例させて平均する加重平均部と、
を備え、
前記信号源の位置を、前記重心であると特定し、
前記ベクトルを、前記加重平均部の導出結果であると特定する、
信号源特定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の信号源特定装置であって、
前記クラスタへの分類が、K-means法に則して行われる、
信号源特定装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の信号源特定装置であって、
前記測定結果が、前記関係行列と前記ベクトルとの積である、
信号源特定装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の信号源特定装置であって、
前記測定結果のκ乗が、前記関係行列のκ乗と前記ベクトルとの積である(ただし、κ>1)、
信号源特定装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の信号源特定装置であって、
前記関係行列が、リードフィールド行列である、
信号源特定装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の信号源特定装置であって、
前記軸ごとに前記センサの個数分まとめられた前記測定結果が、1列の行列である、
信号源特定装置。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の信号源特定装置であって、
前記ベクトルが、1列の行列である、
信号源特定装置。
【請求項10】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の信号源特定装置であって、
前記誤差関数が、前記測定結果、前記関係行列および前記候補値の関数である、
信号源特定装置。
【請求項11】
請求項10に記載の信号源特定装置であって、
前記誤差関数が、前記測定結果をb、前記関係行列をH、前記候補値をaとしたときに、
(1/2)(b-Ha)T(b-Ha)
である信号源特定装置。
【請求項12】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の信号源特定装置であって、
前記正則化項が、前記正則化パラメータと、前記ベクトルのL1ノルムとの積である信号源特定装置。
【請求項13】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の信号源特定装置であって、
前記ベクトルが、磁気双極子モーメントまたは電気双極子モーメントである、
信号源特定装置。
【請求項14】
複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する信号源特定方法であって、
前記軸ごとに前記センサの個数分まとめられた前記測定結果と、前記ベクトルとの関係を表す関係行列を記録する関係行列記録工程と、
前記測定結果と前記関係行列とに基づき、コスト関数を最小とするような、前記信号源の位置および前記ベクトルを導出する位置・ベクトル導出工程と、
を備え、
前記ベクトルにおいては、その成分が前記軸ごとに前記信号源の位置する空間の格子点の個数分まとめられており、
前記コスト関数が、誤差関数と正則化項とを合計したものであり、
前記誤差関数が、前記信号源の位置および前記ベクトルの真の値と前記真の値の候補値との誤差を表すものであり、
前記正則化項が、正則化パラメータと、前記ベクトルのL1ノルムとの関数であり、
前記位置・ベクトル導出工程の導出結果に基づき、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する、
信号源特定方法。
【請求項15】
複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する信号源特定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記信号源特定処理が、
前記軸ごとに前記センサの個数分まとめられた前記測定結果と、前記ベクトルとの関係を表す関係行列を記録する関係行列記録工程と、
前記測定結果と前記関係行列とに基づき、コスト関数を最小とするような、前記信号源の位置および前記ベクトルを導出する位置・ベクトル導出工程と、
を備え、
前記ベクトルにおいては、その成分が前記軸ごとに前記信号源の位置する空間の格子点の個数分まとめられており、
前記コスト関数が、誤差関数と正則化項とを合計したものであり、
前記誤差関数が、前記信号源の位置および前記ベクトルの真の値と前記真の値の候補値との誤差を表すものであり、
前記正則化項が、正則化パラメータと、前記ベクトルのL1ノルムとの関数であり、
前記位置・ベクトル導出工程の導出結果に基づき、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する、
プログラム。
【請求項16】
複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する信号源特定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、
前記信号源特定処理が、
前記軸ごとに前記センサの個数分まとめられた前記測定結果と、前記ベクトルとの関係を表す関係行列を記録する関係行列記録工程と、
前記測定結果と前記関係行列とに基づき、コスト関数を最小とするような、前記信号源の位置および前記ベクトルを導出する位置・ベクトル導出工程と、
を備え、
前記ベクトルにおいては、その成分が前記軸ごとに前記信号源の位置する空間の格子点の個数分まとめられており、
前記コスト関数が、誤差関数と正則化項とを合計したものであり、
前記誤差関数が、前記信号源の位置および前記ベクトルの真の値と前記真の値の候補値との誤差を表すものであり、
前記正則化項が、正則化パラメータと、前記ベクトルのL1ノルムとの関数であり、
前記位置・ベクトル導出工程の導出結果に基づき、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する、
記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場などの信号の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁場の測定結果から信号源の位置を推定する方法(例えば、LORETA法、MUSIC法(特許文献3を参照)、Lasso法など)が知られている(特許文献1、2および3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-080427号公報
【特許文献2】特開平7-148131号公報
【特許文献3】特開2009-534103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、LORETA法は、ラプラシアンフィルタを施した電流源分布を最小化するため、深い位置までの推定が可能だが、信号源分布がぼやけて推定されてしまう。これにより、LORETA法によれば、複数の信号源の位置推定が困難なものとなる。
【0005】
また、MUSIC法は、複数の信号源の位置推定が可能なものの、同一周波数かつ同一位相の信号(またはDC(直流)信号)を出力する複数の信号源(以下、「コヒーレント信号源」という)の位置を推定することが困難である。
【0006】
さらに、Lasso法は、SQUIDなど単軸磁気センサを使用したものが知られているに過ぎず、複数の信号源(コヒーレント信号源を含む)の位置推定の精度が低い。
【0007】
そこで、本発明は、複数の信号源の位置推定精度の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる信号源特定装置は、複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定するものであって、前記軸ごとに前記センサの個数分まとめられた前記測定結果と、前記ベクトルとの関係を表す関係行列を記録する関係行列記録部と、前記測定結果と前記関係行列とに基づき、コスト関数を最小とするような、前記信号源の位置および前記ベクトルを導出する位置・ベクトル導出部とを備え、前記ベクトルにおいては、その成分が前記軸ごとに前記信号源の位置する空間の格子点の個数分まとめられており、前記コスト関数が、誤差関数と正則化項とを合計したものであり、前記誤差関数が、前記信号源の位置および前記ベクトルの真の値と前記真の値の候補値との誤差を表すものであり、前記正則化項が、正則化パラメータと、前記ベクトルのL1ノルムとの関数であり、前記位置・ベクトル導出部の導出結果に基づき、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定するように構成される。
【0009】
上記のように構成された信号源特定装置は、複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する。関係行列記録部が、前記軸ごとに前記センサの個数分まとめられた前記測定結果と、前記ベクトルとの関係を表す関係行列を記録する。位置・ベクトル導出部が、前記測定結果と前記関係行列とに基づき、コスト関数を最小とするような、前記信号源の位置および前記ベクトルを導出する。前記ベクトルにおいては、その成分が前記軸ごとに前記信号源の位置する空間の格子点の個数分まとめられている。前記コスト関数が、誤差関数と正則化項とを合計したものである。前記誤差関数が、前記信号源の位置および前記ベクトルの真の値と前記真の値の候補値との誤差を表すものである。前記正則化項が、正則化パラメータと、前記ベクトルのL1ノルムとの関数である。前記位置・ベクトル導出部の導出結果に基づき、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する。
【0010】
なお、本発明にかかる信号源特定装置は、前記位置・ベクトル導出部の導出結果を、前記信号源の位置および前記ベクトルであると特定するようにしてもよい。
【0011】
なお、本発明にかかる信号源特定装置は、前記位置・ベクトル導出部により導出された前記信号源の位置を、前記信号源の個数のクラスタに分類するクラスタリング部と、前記クラスタごとに、前記信号源の重心を導出する重心導出部と、前記クラスタごとに、前記位置・ベクトル導出部により導出された前記ベクトルを、前記信号源と前記重心との距離に反比例させて平均する加重平均部とを備え、前記信号源の位置を、前記重心であると特定し、前記ベクトルを、前記加重平均部の導出結果であると特定するようにしてもよい。
【0012】
なお、本発明にかかる信号源特定装置は、前記クラスタへの分類が、K-means法に則して行われるようにしてもよい。
【0013】
なお、本発明にかかる信号源特定装置は、前記測定結果が、前記関係行列と前記ベクトルとの積であるようにしてもよい。
【0014】
なお、本発明にかかる信号源特定装置は、前記測定結果のκ乗が、前記関係行列のκ乗と前記ベクトルとの積である(ただし、κ>1)ようにしてもよい。
【0015】
なお、本発明にかかる信号源特定装置は、前記関係行列が、リードフィールド行列であるようにしてもよい。
【0016】
なお、本発明にかかる信号源特定装置は、前記軸ごとに前記センサの個数分まとめられた前記測定結果が、1列の行列であるようにしてもよい。
【0017】
なお、本発明にかかる信号源特定装置は、前記ベクトルが、1列の行列であるようにしてもよい。
【0018】
なお、本発明にかかる信号源特定装置は、前記誤差関数が、前記測定結果、前記関係行列および前記候補値の関数であるようにしてもよい。
【0019】
なお、本発明にかかる信号源特定装置は、前記誤差関数が、前記測定結果をb、前記関係行列をH、前記候補値をaとしたときに、(1/2)(b-Ha)T(b-Ha)であるようにしてもよい。
【0020】
なお、本発明にかかる信号源特定装置は、前記正則化項が、前記正則化パラメータと、前記ベクトルのL1ノルムとの積であるようにしてもよい。
【0021】
なお、本発明にかかる信号源特定装置は、前記ベクトルが、磁気双極子モーメントまたは電気双極子モーメントであるようにしてもよい。
【0022】
本発明は、複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する信号源特定方法であって、前記軸ごとに前記センサの個数分まとめられた前記測定結果と、前記ベクトルとの関係を表す関係行列を記録する関係行列記録工程と、前記測定結果と前記関係行列とに基づき、コスト関数を最小とするような、前記信号源の位置および前記ベクトルを導出する位置・ベクトル導出工程とを備え、前記ベクトルにおいては、その成分が前記軸ごとに前記信号源の位置する空間の格子点の個数分まとめられており、前記コスト関数が、誤差関数と正則化項とを合計したものであり、前記誤差関数が、前記信号源の位置および前記ベクトルの真の値と前記真の値の候補値との誤差を表すものであり、前記正則化項が、正則化パラメータと、前記ベクトルのL1ノルムとの関数であり、前記位置・ベクトル導出工程の導出結果に基づき、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する信号源特定方法である。
【0023】
本発明は、複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する信号源特定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記信号源特定処理が、前記軸ごとに前記センサの個数分まとめられた前記測定結果と、前記ベクトルとの関係を表す関係行列を記録する関係行列記録工程と、前記測定結果と前記関係行列とに基づき、コスト関数を最小とするような、前記信号源の位置および前記ベクトルを導出する位置・ベクトル導出工程とを備え、前記ベクトルにおいては、その成分が前記軸ごとに前記信号源の位置する空間の格子点の個数分まとめられており、前記コスト関数が、誤差関数と正則化項とを合計したものであり、前記誤差関数が、前記信号源の位置および前記ベクトルの真の値と前記真の値の候補値との誤差を表すものであり、前記正則化項が、正則化パラメータと、前記ベクトルのL1ノルムとの関数であり、前記位置・ベクトル導出工程の導出結果に基づき、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定するプログラムである。
【0024】
本発明は、複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する信号源特定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、前記信号源特定処理が、前記軸ごとに前記センサの個数分まとめられた前記測定結果と、前記ベクトルとの関係を表す関係行列を記録する関係行列記録工程と、前記測定結果と前記関係行列とに基づき、コスト関数を最小とするような、前記信号源の位置および前記ベクトルを導出する位置・ベクトル導出工程とを備え、前記ベクトルにおいては、その成分が前記軸ごとに前記信号源の位置する空間の格子点の個数分まとめられており、前記コスト関数が、誤差関数と正則化項とを合計したものであり、前記誤差関数が、前記信号源の位置および前記ベクトルの真の値と前記真の値の候補値との誤差を表すものであり、前記正則化項が、正則化パラメータと、前記ベクトルのL1ノルムとの関数であり、前記位置・ベクトル導出工程の導出結果に基づき、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第一の実施形態にかかるボクセルVおよび磁気センサMSの斜視図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態にかかる信号源特定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】本発明の第二の実施形態にかかる信号源特定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】クラスタリング部18aによる信号源S1~S4の位置のクラスタリング(
図4(a))、重心導出部18bによるクラスタの重心の導出(
図4(b))、加重平均部18cによるベクトルの加重平均の導出(
図4(c))を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0027】
第一の実施形態
図1は、本発明の第一の実施形態にかかるボクセルVおよび磁気センサMSの斜視図である。
図2は、本発明の第一の実施形態にかかる信号源特定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【0028】
図1を参照して、信号源S1および信号源S2が信号を出力する。信号は、所定の方向を有するベクトルaにより表される。ベクトルaは、例えば、磁気双極子モーメントである。なお、信号源の個数は、例えば2個であるが、磁気センサMSの個数未満であれば3個以上であってもよい。なお、各信号源の出力する信号は、互いに周波数または位相が異なっていてもよいが、そうでなくてもよい。すなわち、各信号源の出力する信号が同一周波数かつ同一位相であってもよい。さらに、各信号源の出力する信号がDC(直流)信号であってもよい。
【0029】
また、信号源S1および信号源S2が存在する空間内の位置は、ボクセルV(例えば、10×10×10=1000個のボクセル)により表される。信号源S1および信号源S2は、それぞれ異なるボクセルVに位置している。なお、1000個のボクセルVの各々を、V1~V1000と表記する。
【0030】
複数(例えば、8行8列の64個)の磁気センサMSは、信号(例えば、磁気双極子モーメント)を受け、互いに直交する3軸X、Y、Zの成分bx、by、bzを測定する。なお、64個の磁気センサMSの各々を、MS1~MS64と表記する。また、信号は、所定の方向を有するベクトルaにより表される。複数の磁気センサMSは、複数の信号源S1、S2から信号を受ける。
【0031】
ここで、ベクトルrを、信号源(磁気双極子)から磁気センサMSまでの方向ベクトルとすると、磁気センサMSにより測定される磁束密度B(ベクトルrの関数)は、ビオサバールの法則により、式(1)のように表される。ただし、μ0は、磁気定数である。また、ベクトルrは、ボクセルVの各々(V1~V1000)と、磁気センサMSの各々MS1~MS64との間の位置関係といえる。
【0032】
【数1】
式(1)より、bxは、以下の式(2)のように表される。ただし、rx、ry、rzは、それぞれ、ベクトルrのX成分、Y成分、Z成分である。また、ax、ay、azは、それぞれ、ベクトルaのX成分、Y成分、Z成分である。
【0033】
【数2】
ここで、式(2)のaxの係数をhxx、ayの係数をhxy、azの係数をhxzとすると(引数はベクトルr)、式(2)は、式(2’)のように表される。
【0034】
式(1)より、byは、以下の式(3)のように表される。
【0035】
【数3】
ここで、式(3)のaxの係数をhyx、ayの係数をhyy、azの係数をhyzとすると(引数はベクトルr)、式(3)は、式(3’)のように表される。
【0036】
式(1)より、bzは、以下の式(4)のように表される。
【0037】
【数4】
ここで、式(4)のaxの係数をhzx、ayの係数をhzy、azの係数をhzzとすると(引数はベクトルr)、式(4)は、式(4’)のように表される。
【0038】
ここで、bx、by、bzは、以下の式(5)のように表される。
【0039】
【数5】
すなわち、bxは、磁気センサMS1~MS64の測定結果のX成分をまとめた1列の行列である。byは、磁気センサMS1~MS64の測定結果のY成分をまとめた1列の行列である。bzは、磁気センサMS1~MS64の測定結果のZ成分をまとめた1列の行列である。例えば、bx1、by1、bz1は、磁気センサMS1の測定結果のX、Y、Z成分であり、bx64、by64、bz64は、磁気センサMS64の測定結果のX、Y、Z成分である。
【0040】
ここで、X、Y、Z軸ごとに、磁気センサMSの個数(64個)分まとめられた測定結果bは、bx、by、bzからなる1列の行列である。(式(8)の左辺および式(8’)の左辺を参照)。
【0041】
また、ax、ay、azは、以下の式(6)のように表される。
【0042】
【数6】
すなわち、ベクトルaの成分ax、ay、azは、信号源S1、S2の位置する空間の格子点(ボクセル)の個数(1000個)の成分を有する1列の行列である。例えば、ax1、ay1、az1は、ボクセルV1におけるベクトルaのX、Y、Z成分であり、ax1000、ay1000、az1000は、ボクセルV1000におけるベクトルaのX、Y、Z成分である。
【0043】
ここで、ベクトルaは1列の行列である。しかも、ベクトルaにおいては、その成分ax、ay、azが、X、Y、Z軸ごとに信号源の位置する空間の格子点の個数(1000個)分まとめられている(式(8)および式(8’)における右辺の右側の行列を参照)。
【0044】
図2を参照して、第一の実施形態にかかる信号源特定装置1は、相対位置記録部11、リードフィールド行列導出部12、リードフィールド行列記録部13、位置・ベクトル導出部15を備える。
【0045】
信号源特定装置1は、複数のセンサMS1~MS64の測定結果を受けて、信号源S1、S2の位置およびベクトルaを特定する。
【0046】
相対位置記録部11は、ボクセルVの各々1000個と、磁気センサMSの各々MS1MS64との間の相対位置であるベクトルrを記録する。
【0047】
リードフィールド行列導出部12は、相対位置記録部11からベクトルrを読み出し、hxx、hxy、hxz、hyx、hyy、hyz、hzx、hzy、hzz(引数はベクトルr)(後述する関係行列H(例えば、リードフィールド行列)の成分)を求める(式(2)~(4)および式(2’)~(4’)を参照)。
【0048】
例えば、hxxは、以下の式(7)のように表される。
【0049】
【数7】
ベクトルrは、ボクセルVの位置と磁気センサMSの位置とによって定まるので、1000×64通りの値をとる。よって、第一係数vx1も、1000×64通りの値をとる。式(7)においては、1行目に磁気センサMS1に関するhxx、2行目に磁気センサMS2に関するhxx、…、64行目に磁気センサMS64に関するhxxを表記している。さらに、式(7)においては、1列目にボクセルV1に関するvx1、2列目にボクセルV2に関するvx1、…、1000列目にボクセルV1000に関するhxxを表記している。例えば、式(7)の1行1000列目の要素hxx(1,1000)は、磁気センサMS1およびボクセルV1000に関するhxxを意味する。すなわち、ベクトルrを、ボクセルV1000から磁気センサMS1までの方向ベクトルとして、式(2)のaxの係数に代入すると、hxx(1,1000)を求めることができる。
【0050】
hxy、hxz、hyx、hyy、hyz、hzx、hzy、hzzも同様に、1000×64通りの値をとる。
【0051】
ここで、式(2’)~(4’)は、以下の式(8)のように表すことができる。
【0052】
【数8】
また、式(8)における左辺をb(すなわち、X、Y、Z軸ごとに磁気センサの個数(64個)分まとめられた測定結果)とする。測定結果bは、1列の行列である。
【0053】
さらに、式(8)における右辺の右側の行列をベクトルa(ベクトルaにおいては、その成分ax、ay、azが、X、Y、Z軸ごとに信号源S1、S2の位置する空間の格子点の個数(1000個)分まとめられている)とする。ベクトルaは、1列の行列である。
【0054】
また、式(8)における右辺の左側の行列をHとする。Hは、測定結果bと、ベクトルaとの関係を表す関係行列(例えば、リードフィールド行列)である。
【0055】
すると、式(8)は式(8’)のように表すことができる。すなわち、測定結果bが、関係行列Hとベクトルaとの積である。
【0056】
リードフィールド行列導出部12は、先に説明したように、関係行列Hの成分を求め、さらに関係行列(リードフィールド行列)Hを導出する。
【0057】
リードフィールド行列記録部13は、リードフィールド行列導出部12から関係行列(リードフィールド行列)Hを受けて、記録する。
【0058】
位置・ベクトル導出部15は、測定結果bと関係行列Hとに基づき、コスト関数を最小とするような、信号源S1、S2の位置およびベクトルaを導出する。
【0059】
すなわち、位置・ベクトル導出部15は、以下の式(9)を満たすようなベクトルaを導出する。
【0060】
【数9】
コスト関数は、誤差関数と正則化項とを合計したものである。
【0061】
誤差関数は、信号源S1、S2の位置およびベクトルaの真の値と真の値の候補値との誤差を表すものである。誤差関数は、測定結果b、関係行列Hおよび(ベクトルの真の値の)候補値aの関数である。誤差関数は、例えば(1/2)(b-Ha)T(b-Ha)である。
【0062】
正則化項は、正則化パラメータλと、ベクトルaのL1ノルムとの関数である。例えば、正則化項は、正則化パラメータλと、ベクトルaのL1ノルムとの積である。
【0063】
位置・ベクトル導出部15の導出結果aに基づき、信号源S1、S2の位置およびベクトルaを特定する。例えば、位置・ベクトル導出部15の導出結果aを、信号源の位置およびベクトルであると特定する。例えば、信号源S1がボクセルV500に位置し、信号源S2がボクセルV600に位置している場合、導出結果aにおける(ax500、ay500、az500)が信号源S1の出力する信号のベクトルであり、(ax600、ay600、az600)が信号源S2の出力する信号のベクトルである。
【0064】
次に、第一の実施形態の動作を説明する。
【0065】
リードフィールド行列導出部12により、相対位置記録部11からベクトルrが読み出され、関係行列(リードフィールド行列)Hの成分hxx、hxy、hxz、hyx、hyy、hyz、hzx、hzy、hzzが導出される(式(2)~(4)および式(2’)~(4’)を参照)。
【0066】
リードフィールド行列記録部13は、リードフィールド行列導出部12から関係行列Hを受けて記録する。
【0067】
位置・ベクトル導出部15は、測定結果bと関係行列Hとに基づき、コスト関数を最小とするような、信号源S1、S2の位置およびベクトルaを導出する(式(9)参照)。
【0068】
第一の実施形態によれば、複数の信号源(コヒーレント信号源を含む)の位置推定精度が向上する。すなわち、第一の実施形態はLasso法に則したものなので、コヒーレント信号源であっても、位置推定が可能である。しかも、第一の実施形態によれば、測定結果bおよびベクトルaが、X、Y、Z軸ごとにまとめられており(式(8)および式(8’)を参照)、3軸の測定結果を利用できるため、複数の信号源の位置推定精度が向上する。
【0069】
第二の実施形態
第二の実施形態にかかる信号源特定装置1は、クラスタリング部18a、重心導出部18b、加重平均部18cを備える点が、第一の実施形態にかかる信号源特定装置1と異なる。
【0070】
図3は、本発明の第二の実施形態にかかる信号源特定装置1の構成を示す機能ブロック図である。第二の実施形態にかかる信号源特定装置1は、相対位置記録部11、リードフィールド行列導出部12、リードフィールド行列記録部13、位置・ベクトル導出部15、クラスタリング部18a、重心導出部18b、加重平均部18cを備える。
【0071】
相対位置記録部11、リードフィールド行列導出部12、リードフィールド行列記録部13および位置・ベクトル導出部15は、第一の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0072】
図4は、クラスタリング部18aによる信号源S1~S4の位置のクラスタリング(
図4(a))、重心導出部18bによるクラスタの重心の導出(
図4(b))、加重平均部18cによるベクトルの加重平均の導出(
図4(c))を示す図である。ただし、
図4(b)および
図4(c)においては、信号源S1、S2を図示省略する。
【0073】
図4(c)を参照して、位置G1が信号源の真の位置であり、信号のベクトルがag1である。しかし、位置G1が、ボクセルに合致していない場合、信号源の位置がS1およびS2であると導出してしまう。さらに、信号のベクトルも、A1およびA2と導出してしまう。
【0074】
さらに、位置G2が信号源の真の位置であり、信号のベクトルがag2である。しかし、位置G2が、ボクセルに合致していない場合、信号源の位置がS3およびS4であると導出してしまう。さらに、信号のベクトルも、A3およびA4と導出してしまう。
【0075】
このような位置・ベクトル導出部15の導出結果(S1~S4およびA1~A4)から、真の信号源の位置G1、G2および真の信号のベクトルag1、ag2を求める。
【0076】
まず、
図4(a)を参照して、クラスタリング部18aは、位置・ベクトル導出部15により導出された信号源の位置S1~S4を、信号源の個数(2個)のクラスタに分類する。
図4(a)の例では、信号源の位置S1およびS2をクラスタC1に、信号源の位置S3およびS4をクラスタC2に分類する。なお、信号源の位置S1とS2との距離をD1、信号源の位置S3とS4との距離をD2とする。
【0077】
次に、
図4(b)を参照して、重心導出部18bは、クラスタごとに、信号源の重心を導出する。クラスタC1における信号源の重心G1は、信号源の位置S1およびS2を結ぶ線分上にある。なお、S1G1/S2G1=A2の大きさ/A1の大きさ、である。クラスタC2における信号源の重心G2は、信号源の位置S3およびS4を結ぶ線分上にある。なお、S3G2/S4G2=A4の大きさ/A3の大きさ、である。
【0078】
なお、クラスタへの分類が、K-means法に則して行われるようにしてもよい。この場合、まず、2個の重心をランダムに配置してから、重心と信号源の位置S1~S4との距離の近さに応じて、信号源の位置S1~S4をクラスタに分類する。
【0079】
さらに、クラスタごとに信号源の重心を導出してから、導出した重心と信号源の位置S1~S4との距離の近さに応じて、信号源の位置S1~S4をクラスタに分類する。この重心の導出およびクラスタへの分類を、導出した重心が導出直前の重心と同じ位置になるまで、繰り返す。
【0080】
信号源の位置を、このようにして導出された重心G1、G2であると特定する。
【0081】
さらに、
図4(c)を参照して、加重平均部18cが、クラスタごとに、位置・ベクトル導出部15により導出されたベクトルaを、信号源と重心との距離に反比例させて平均する。
【0082】
クラスタC2を例にとって説明すると、ベクトルA3を(P, Q, 0)とし、およびベクトルA4を(R, S, 0)とすると、真の信号のベクトルag2を((P*D22+R*D21)/D2, (Q*D22+S*D21)/D2, 0)とする。なお、クラスタC1については同様であるので、説明を省略する。
【0083】
信号のベクトルを、このようにして導出された加重平均((P*D22+R*D21)/D2, (Q*D22+S*D21)/D2, 0)であると特定する。
【0084】
次に、第二の実施形態の動作を説明する。
【0085】
まず、相対位置記録部11、リードフィールド行列導出部12、リードフィールド行列記録部13および位置・ベクトル導出部15の動作は、第一の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0086】
位置・ベクトル導出部15の出力は、クラスタリング部18aに与えられ、信号源S1~S4の位置のクラスタリングが行われる(
図4(a)参照)。次に、重心導出部18bによるクラスタC1、C2の重心の導出が行われる(
図4(b)参照)。この重心G1、G2が、真の信号源の位置である。最後に、加重平均部18cによるベクトルの加重平均が導出される(
図4(c)参照)。加重平均ag1、ag2が、真の信号のベクトルである。
【0087】
第二の実施形態によれば、信号源の位置がボクセルに合致していない場合であっても、信号源の位置および信号のベクトルを求めることができる。
【0088】
なお、上述の実施形態においては、信号が磁気双極子モーメントであったが、電気双極子モーメントであってもよい。
【0089】
また、上述の実施形態においては、測定結果bが、関係行列Hとベクトルaとの積であったが、測定結果bのκ乗が、関係行列Hのκ乗とベクトルaとの積であるようにしてもよい(ただし、κ>1)(以下の式(10)参照)。
【0090】
【数10】
上述の実施形態においては、ベクトルaが、測定結果bおよび関係行列Hの関数となるが(例えば、a=f(b,H))、測定結果bのκ乗が、関係行列Hのκ乗とベクトルaとの積である場合は、a=f(b,H)のb、Hにbのκ乗、Hのκ乗を代入することにより、ベクトルaを導出できる。
【0091】
また、上記の実施形態は、以下のようにして実現できる。CPU、ハードディスク、メディア(USBメモリ、CD-ROMなど)読み取り装置を備えたコンピュータに、上記の各部分、例えば相対位置記録部11、リードフィールド行列導出部12、リードフィールド行列記録部13、位置・ベクトル導出部15、クラスタリング部18a、重心導出部18bおよび加重平均部18cを実現するプログラムを記録したメディアを読み取らせて、ハードディスクにインストールする。このような方法でも、上記の機能を実現できる。
【符号の説明】
【0092】
1 信号ベクトル導出装置
11 相対位置記録部
12 リードフィールド行列導出部
13 リードフィールド行列記録部
15 位置・ベクトル導出部
18a クラスタリング部
18b 重心導出部
18c 加重平均部
MS 磁気センサ
V ボクセル
B 磁束密度
H 関係行列(リードフィールド行列)
S1、S2 信号源
a ベクトル(磁気双極子モーメント)