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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085736
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】ホースの巻取り装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 55/04 20060101AFI20230614BHJP
   B65H 55/02 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
B65H55/04
B65H55/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199934
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中澤 智貴
【テーマコード(参考)】
3F115
【Fターム(参考)】
3F115AA12
3F115BA06
(57)【要約】
【課題】ドラム体に対するホースの巻取りを効率的に実施でき、ドラム体に巻き取ったホースの巻き崩れをより確実に抑制するホースの巻取り装置および方法を提供する。
【解決手段】ターレット式のホース巻取り装置1のアーム2の長手方向両端部に取付けられたドラム体4A、4Bのそれぞれの専用の回転駆動モータ6a、6bをアーム2に取付けて、旋回駆動モータ3を用いて旋回軸2aを中心にしてアーム2を上下方向に旋回させて、ホースHが巻き取られたドラム体4Aを巻取り位置P1から取外し位置P2まで移動させる間に、回転軸5aを中心としたドラム体4Aの相対的な回転を無くするように回転駆動モータ6aを制御部9により制御することで、ドラム体4Aに巻き取ったホースHの終端部Heのドラム周方向位置を所定の位置に維持してホースHの巻き崩れを抑制する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回軸を中心にして旋回可能に軸支されたアームと、前記旋回軸を中心にして前記アームを旋回させる旋回駆動モータと、前記アームの長手方向両端部で回転軸を中心にして回転可能に軸支されるドラム体とを有し、前記アームを旋回させることでそれぞれの前記ドラム体を巻取り位置と取外し位置との間で移動させ、前記巻取り位置では空の状態の前記ドラム体に対して所定長さのホースを巻取る巻取り工程が行われ、前記取外し位置では前記ドラムに巻き取られた前記ホースが結束線で結束される結束工程と、巻き取られた状態で前記結束線により結束された前記ホースが前記ドラム体から取外される取外し工程が行われるターレット式のホースの巻取り装置において、
それぞれの前記ドラム体には専用の回転駆動モータが備わり、それぞれの前記ドラム体とそれぞれの専用の前記回転駆動モータとが前記アームに取り付けられていて、前記旋回駆動モータとそれぞれの前記回転駆動モータとを制御する制御部を有し、前記アームを旋回させて前記巻取り位置から前記取外し位置まで移動している前記ドラム体のその回転軸を中心にした相対的な回転が無いようにこのドラム体の専用の前記回転駆動モータが制御されることを特徴とするホースの巻取り装置。
【請求項2】
前記アームを旋回させて前記取外し位置から前記巻取り位置まで移動する空の状態の前記ドラム体をその回転軸を中心にして回転させて、この空の状態の前記ドラム体に備わるホース始端保持部を、所定のホース保持位置に位置決めするようにこの空の状態のドラム体の専用の前記回転駆動モータが制御される請求項1に記載のホースの巻取り装置。
【請求項3】
前記旋回軸を中心にして前記アームを時計回りに180°および反時計回りに180°に交互に旋回させる動作を繰り返すことで、それぞれの前記ドラム体を前記巻取り位置と前記取外し位置との間で移動させる請求項1または2に記載のホースの巻取り装置。
【請求項4】
旋回軸を中心にして旋回可能に軸支されたアームの長手方向両端部にドラム体を回転軸により回転可能に軸支して、前記アームを旋回させてそれぞれの前記ドラム体を巻取り位置と取外し位置との間で移動させて、前記巻取り位置では空の状態の前記ドラム体に対して所定長さのホースを巻取る巻取り工程を行い、前記取外し位置では前記ドラムに巻き取られた前記ホースが結束線で結束される結束工程と、巻き取られた状態で前記結束線により結束された前記ホースを前記ドラム体から取外す取外し工程を行うターレット式のホースの巻取り装置を用いたホースの巻取り方法において、
それぞれの前記ドラム体に専用の回転駆動モータを備えて、それぞれの前記ドラム体とそれぞれの専用の前記回転駆動モータとを前記アームに取り付けて、前記アームを旋回させて前記巻取り位置から前記取外し位置まで移動させている前記ドラム体のその回転軸を中心にした相対的な回転を無くすようにこのドラム体の専用の前記回転駆動モータを制御部により制御することを特徴とするホースの巻取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースの巻取り装置および方法に関し、さらに詳しくは、ドラム体に対するホースの巻取りを効率的に行うことができるとともに、ドラム体に巻き取ったホースの巻き崩れをより確実に抑制できるホースの巻取り装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムホースなどのホースの製造ラインでは、一時保管や輸送のために、ホースは所定長さでドラム体に巻き取られる(例えば、特許文献1参照)。ホースの巻取り装置には種々のタイプがあり、ホースの巻取り工程を効率化するために、ターレット式の巻取り装置が使用されている。
【0003】
ターレット式の巻取り装置では、アームの両端にドラム体が回転軸を中心にして回転可能に軸支されている。アーム一方端部のドラム体に対するホースの巻取り工程が完了すると旋回軸を中心にしてアームを旋回させて、このドラム体を巻取り位置からドラム体の取外し位置に移動させるとともに、取外し位置に待機していた空の状態のドラム体を巻取り位置に移動させる。巻取り位置では空の状態のドラム体に対して巻取り工程が行われる。取外し位置では、ドラム体に巻き取られたホースが結束線によって結束する結束工程と、その後に、巻き取られた状態で結束線によって結束されたホースをドラム体から取り外す取外し工程が行われる。ドラム体から取り外されたホースは、保管庫等に移送される。
【0004】
このようにターレット式の巻取り装置では、一方のドラム体を用いて巻取り工程を行っている間に、他方のドラム体では結束工程および取外し工程を行う。それぞれのドラム体で別の工程を並行して行うことで、ドラム体に対するホースの巻取り開始から巻き取ったホースを結束線で結束した状態で後工程に移送するまでの一連の工程を効率的に行えるメリットがある。
【0005】
しかしながら、巻取り工程から結束工程に移動するまでの間は、ドラム体に巻き取られたホースは結束体によって結束されていない不安定な状態である。この状態でアームを旋回させると、ドラム体が回転軸を中心に回転して巻き取られたホースの巻き崩れが発生し易くなる。そこで、アームが上下方向に旋回する巻取り装置において、ドラム体の回転軸を中心にした回転をロックした状態でアームを旋回させると、ドラム体に巻き取られたホースの終端部のドラム周方向位置が、アームが旋回するに連れて変化するのでアームの旋回中にホースの巻き崩れが発生することがある。それ故、ドラム体に対するホースの巻取りを効率的に行うことができるとともに、ドラム体に巻き取ったホースの巻き崩れをより確実に抑制するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60-120040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ドラム体に対するホースの巻取りを効率的に行うことができるとともに、ドラム体に巻き取ったホースの巻き崩れをより確実に抑制できるホースの巻取り装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のホースの巻取り装置は、旋回軸を中心にして旋回可能に軸支されたアームと、前記旋回軸を中心にして前記アームを旋回させる旋回駆動モータと、前記アームの長手方向両端部で回転軸を中心にして回転可能に軸支されるドラム体とを有し、前記アームを旋回させることでそれぞれの前記ドラム体を巻取り位置と取外し位置との間で移動させ、前記巻取り位置では空の状態の前記ドラム体に対して所定長さのホースを巻取る巻取り工程が行われ、前記取外し位置では前記ドラムに巻き取られた前記ホースが結束線で結束される結束工程と、巻き取られた状態で前記結束線により結束された前記ホースが前記ドラム体から取外される取外し工程が行われるターレット式のホースの巻取り装置において、それぞれの前記ドラム体には専用の回転駆動モータが備わり、それぞれの前記ドラム体とそれぞれの専用の前記回転駆動モータとが前記アームに取り付けられていて、前記旋回駆動モータとそれぞれの前記回転駆動モータとを制御する制御部を有し、前記アームを旋回させて前記巻取り位置から前記取外し位置まで移動している前記ドラム体のその回転軸を中心にした相対的な回転が無いようにこのドラム体の専用の前記回転駆動モータが制御されることを特徴とする。
【0009】
本発明のホースの巻取り方法は、旋回軸を中心にして旋回可能に軸支されたアームの長手方向両端部にドラム体を回転軸により回転可能に軸支して、前記アームを旋回させてそれぞれの前記ドラム体を巻取り位置と取外し位置との間で移動させて、前記巻取り位置では空の状態の前記ドラム体に対して所定長さのホースを巻取る巻取り工程を行い、前記取外し位置では前記ドラムに巻き取られた前記ホースが結束線で結束される結束工程と、巻き取られた状態で前記結束線により結束された前記ホースを前記ドラム体から取外す取外し工程を行うターレット式のホースの巻取り装置を用いたホースの巻取り方法において、それぞれの前記ドラム体に専用の回転駆動モータを備えて、それぞれの前記ドラム体とそれぞれの専用の前記回転駆動モータとを前記アームに取り付けて、前記アームを旋回させて前記巻取り位置から前記取外し位置まで移動させている前記ドラム体のその回転軸を中心にした相対的な回転を無くすようにこのドラム体の専用の前記回転駆動モータを制御部により制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ターレット式のホースの巻取り装置を用いるので、ドラム体に対するホースの巻取りを効率的に行うことができる。さらに、それぞれの前記ドラム体に対する専用の前記回転駆動モータがそれぞれの前記ドラム体とともに前記アームに取り付けられている。そのため、前記アームを旋回させて前記巻取り位置から前記取外し位置まで移動させている前記ドラム体の回転軸を中心にした相対的な回転を無くすようにこのドラム体の専用の前記回転駆動モータを制御できる。この制御によって、前記巻取り位置で巻き取られた前記ホースの終端部のドラム周方向位置を所定の位置に維持できるのでホースの巻き崩れを抑制するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のホースの巻取り装置の実施形態を側面視で例示する説明図である。
図2図1のA-A矢視で巻取り装置を例示する説明図である。
図3図1の巻取り位置にあるドラム体の拡大図である。
図4図1の取外し位置での結束工程が終了した状態を例示する説明図である。
図5図4の取外し位置にあるドラム体を平面視で例示する説明図である。
図6図4の取外し位置での取外し工程および巻取り位置での巻取り工程が終了した状態を例示する説明図である。
図7図6のアームを上下方向に旋回させてそれぞれのドラム体を巻取り位置と取外し位置との間で移動させている状態を例示する説明図である。
図8図7の一方のドラム体が取外し位置に移動し、他方のドラム体が巻取り位置に移動した状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のホースの巻取り装置および方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1図3に例示するホースの巻取り装置1の実施形態はターレット式であり、旋回軸2aに軸支されたアーム2と、アーム2を旋回させる旋回駆動モータ3と、アーム2の長手方向両端部で回転軸5a、5bに回転可能に軸支されたドラム体4A、4Bと、制御部9とを有している。ホースHの製造ラインでは、巻取り装置1の上流側にはホース供給部10が配置されていて、下流側には結束機11が配置されている。
【0014】
図1のホース供給部10側に配置されているドラム体4Aの位置が、後述する巻取り位置P1になる。結束機11側に配置されているドラム体4Bの位置が、後述する取外し位置P2になる。
【0015】
この巻取り装置1では、アーム2を上下方向に旋回させることにより、それぞれのドラム体4A、4Bを巻取り位置P1と取外し位置P2との間で移動させる。巻取り位置P1では空の状態のドラム体4Aに対して所定長さのホースを巻取る巻取り工程が行われる。取外し位置P2ではドラム4Bに巻き取られたホースHが結束線12で結束される結束工程と、巻き取られた状態で結束線12により結束されたホースHがドラム体4Bから取外される取外し工程が行われる。
【0016】
巻取り装置1によって巻き取られるホースHは、ゴムホース、樹脂ホースなど種々のタイプである。例えば、金属製や樹脂製の補強コードがスパイラル状に巻き付けられて構成した補強層やこれら補強コードが編組されて構成した補強層が埋設されているホースHなどが巻取り装置1によって巻き取られる。ホースHの外径は例えば10mm~40mm程度である。
【0017】
アーム2は旋回軸2aに接続されていて、旋回軸2aを中心にして上下方向に旋回する。旋回軸2aは旋回駆動モータ3により回転駆動される。旋回駆動モータ3には種々のモータを用いることができ、例えばサーボモータが用いられる。この実施形態ではベースに立設された支持ポストに旋回駆動モータ3が取付けられている。
【0018】
それぞれのドラム体4A、4Bは、基本的に同様の構造である。それぞれのドラム体4A、4Bは、それぞれの回転軸5a、5bを中心にして回転する。それぞれの回転軸5a、5bは回転駆動モータ6a、6bにより回転駆動される。したがって、それぞれのドラム体4A、4Bは、専用の回転駆動モータ6a、6bによって独立別個に回転可能になっている。それぞれの回転駆動モータ6a、6bにはサーボモータが用いられる。
【0019】
それぞれのドラム体4A、4Bは、回転軸5a、5bとともに回転する基部4cに接続された複数のセグメント4sと複数のフランジ部4fとを有している。それぞれのドラム体4A、4Bは同様の構造なので、以下、ドラム体4Aについて説明する。
【0020】
ドラム体4Aを構成するセグメント4sは例えば3個または4個であり、それぞれのセグメント4sは円筒体を周方向に等分割した形状になっている。周方向に隣り合うセグメント4sどうしの間には、ドラム軸方向に延在するすき間が形成されている。それぞれのセグメント4sの外周面は、ホースHが巻き取られるドラム外周面になる。ドラム外周面の外径は例えば30cm~60cmである。
【0021】
ドラム体4Aのドラム軸方向両端部にフランジ部4fが配置されている。詳述すると、それぞれのセグメント4s毎にドラム軸方向両端部にフランジ部4fが配置されている。この実施形態ではドラム体4Aは4個のセグメント4sを有していて、それぞれのセグメント4sのドラム軸方向両端部に略四角形の板状のフランジ部4fが配置されている。
【0022】
ドラム体4Aは回転軸5aに片持ち支持されていて、ドラム体4Aのドラム軸方向一方側(回転駆動モータ6aが配置されている側)に回転軸5aが接続されている。したがって、ドラム体4Aのドラム軸方向他方側は自由端である。そして、ドラム体4Aのドラム軸方向一方側に配置されているそれぞれのフランジ部4fは、ドラム半径方向外側に向かって延在している。そして、これらフランジ部4fは、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面よりも外周側に常に突出した状態で固定されている。
【0023】
ドラム体4Aのドラム軸方向他方側(自由端側)に配置されているそれぞれのフランジ部4fは、ドラム半径方向外側に向かって延在する状態と、ドラム軸方向に向かって延在する状態とに切り換え可能になっている。ドラム半径方向外側に向かって延在する状態のフランジ部4fは、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面よりも外周側に突出し、ドラム軸方向に向かって延在する状態のフランジ部4fは、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面よりも外周側に突出しない。例えば、それぞれのセグメント4sに囲まれた内周側の空間に配置された流体シリンダの進退と、この流体シリンダに接続されたリンク機構とによって、それぞれのフランジ部4fは、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面よりも外周側に突出する状態と突出しない状態とに切り換わる。
【0024】
また、ドラム体4Aには、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面に対して近接および離反移動するホース始端保持部7が備わっている。流体シリンダなどによって作動するホース始端保持部7は、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面に対して近接移動すると、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面との間にホースHの始端部Htを挟んで保持する。
【0025】
この実施形態では、それぞれの回転駆動モータ6a、6b、フランジ部4f、ホース始端保持部7の動作のために電気を供給するケーブル類が、配線保護移動ガイド8によって保持されている。即ち、電源からそれぞれの機器に延在するケーブル類が、ケーブルベア(登録商標)のような配線保護移動ガイド8に保持されている。アーム2の旋回とともに、配線保護移動ガイド8に保持されているケーブル類が配線保護移動ガイド8とともに所定長さのストロークを移動する。配線保護移動ガイド8は図1では上下方向にストローク移動する。
【0026】
制御部9は、旋回駆動モータ3および回転駆動モータ6a、6bの動きを制御する。制御部9としては公知のコンピュータが用いられる。制御部9は、上述したフランジ部4fをドラム体4Aの外周面よりも外周側に突出する状態と突出しない状態とに切り換える動き、ホース始端保持部7の動きも制御する。
【0027】
ホース供給部10は、搬送機構10aとカッタ10bとを有している。搬送機構10aとしては公知のベルトコンベヤやこれに類する機器が用いられる。製造されたホースHは搬送機構10aに載置されて移動して巻取り装置1に供給される。供給されるホースHは、カッタ10bによって所定長さに切断される。
【0028】
結束機11は、巻取り装置1によってドラム体4A、4Bに巻き取られたホースHを巻取り状態で結束線12によって結束する。結束機11としては公知の種々のタイプを用いることができる。結束機11の結束ガイド11a、11bによって導出された結束線12が、周方向に隣り合うセグメント4sどうしの間に形成されているドラム軸方向に延在するすき間の位置でホースHを結束する。
【0029】
以下、この巻取り装置1を用いてホースHを巻き取る手順の一例を説明する。
【0030】
図1、2に例示するように、一方のドラム体4Aを巻取り位置P1に配置し、他方のドラム体4Bを取外し位置P2に配置する。巻取り位置P1では空の状態のドラム体4Aに対して所定長さのホースHを巻取る巻取り工程が行われ、取外し位置P2ではドラム4Bに巻き取られたホースHが結束線11で結束される結束工程と、巻き取られた状態で結束線11により結束されたホースHがドラム体4Bから取外される取外し工程が行われる。巻取り工程と、結束工程および取外し工程とは、並行して行われる。
【0031】
巻取り工程では、ホース供給部10から供給されたホースHの始端部Htが、ドラム体4Aの外周面との間にホース始端保持部7との間に挿入され、ホース始端保持部7がドラム体4Aの外周面に対して近接移動する。これにより、始端部Htは、ホース始端保持部7とドラム体4Aの外周面との間に挟まれて保持される。巻取り工程では、ドラム体4Aのドラム軸方向両端部のフランジ部4fは、ドラム外周面から外周側に突出した状態になっている。
【0032】
次いで、回転駆動モータ6aを作動させて、図3に例示するように回転軸5aを中心にしてドラム体4Aを回転させることにより、ホースHをドラム体4Aに巻き取る。適宜のタイミングでカッタ10bによって所定長さに切断されたホースHは、ドラム体4Aのドラム軸方向に離間して配置されているフランジ部4fの間で渦巻き状にドラム体4Aの外周面上に巻き取られる。
【0033】
結束工程では、ドラム体4Bの周方向に隣り合うセグメント4sどうしの間に形成されているドラム軸方向に延在するすき間で、結束ガイド11a、11bから導出された結束線11を、ドラム体4Bに巻き取られているホースHを横断させて繰り返し巻き回す。これにより、ドラム体4Bに渦巻き状に巻き取られているホースHが、結束線11によって結束される。回転軸5bを中心にしてドラム体4Bを順次90°回転させて、周方向に隣り合うセグメント4sどうしのすき間のすべての箇所(この実施形態では4箇所)で同様に結束線11によってホースHを結束する。
【0034】
結束工程では、ドラム体4Bのドラム軸方向両端部のフランジ部4fは、ドラム外周面から外周側に突出した状態になっている。尚、ホース始端保持部7は適宜のタイミングでドラム体4Bの外周面から離反移動させて、ホース始端保持部7による始端部Htに対する保持を解除する。
【0035】
結束工程が終了した後の取外しで工程では、図4図5に例示するようにドラム体4Bのドラム軸方向自由端側のフランジ部4fを、ドラム半径方向外側に向かって延在する状態からドラム軸方向に向かって延在する状態に切り換える。これにより、このフランジ部4fは、ドラム外周面から外周側に突出しない状態になる。
【0036】
次いで、ドラム体4Bに渦巻き状に巻き取られた状態で結束線11により結束されたホースHを、公知の移送装置を用いてドラム体4Bのドラム軸方向自由端側に移動させてドラム体4Bから取外す。そして、ドラム体4Bから取外したホースHをこの移送装置により保管庫等に移送する。
【0037】
巻取り工程と取外し工程とが終了すると、図6に例示するように、巻取り位置P1にあるドラム体4Aには所定長さのホースHが巻き取られた状態になる。取外し位置P2にあるドラム4BはホースHが巻き取られていない空の状態になる。
【0038】
次いで、図7に例示するように旋回軸2aを中心にしてアーム2を反時計回りに180°旋回させる。即ち、旋回軸2aを中心にしてそれぞれのドラム体4A、4Bを上下方向に旋回させて、図8に例示するようにホースHが巻き取られたドラム体4Aを巻取り位置P1から取外し位置P2へ移動させるとともに、空の状態のドラム体4Bを取外し位置P2から巻取り位置P1へ移動させる。
【0039】
アーム2を旋回させる際には、ドラム体4Aは、巻き取られたホースHが巻き崩れないように(巻き解けが生じないように)、回転軸5aを中心にした回転が制御される。即ち、ドラム体4Aに巻き取られたホースHが巻き崩れないように(巻き解けが生じないように)、ホースHの終端部Heが例えばドラム体4Aの外周面の下半分側の所定位置に維持されるように回転軸5aを中心にしたドラム体4Aの回転が制御される。
【0040】
そこで、図7に例示するように、ドラム体4Aを巻取り位置P1から取外し位置P2まで移動させている間に、制御部9は旋回駆動モータ3と回転駆動モータ6aとを連動させて制御する。制御部9は、巻取り位置P1から取外し位置P2まで移動させているドラム体4Aを、回転軸5aを中心にした相対的な回転を無くすように回転駆動モータ6aを制御する。
【0041】
具体的には図6に例示するように、巻取り位置P1においてドラム体4Aの外周面右斜め下に位置していたホースHの終端部Heが、ドラム体4Aが巻取り位置P1から取外し位置P2に移動する間、常に、ドラム体4Aの外周面右斜め下に位置するように、回転駆動モータ6aを制御して回転軸5aを中心にしてドラム体4Aを回転させる。仮に、ドラム体4Aが巻取り位置P1から取外し位置P2に移動する間、回転軸5aを中心にしたドラム体4Aの回転をロックすると、ドラム体4Aが旋回軸2aを中心にして旋回するに連れて、ドラム体4Aにおける終端部Heの周方向位置が変化する。巻取り位置P1ではドラム体4Aの外周面右斜め下に位置していた終端部Heは、取外し位置P2にドラム体4Aが移動する過程で、ドラム体4Aの外周面周上端の位置を超えるようにドラム周方向で位置が変化する。このように終端部Heの周方向位置が変化すると、ホースHは終端部Heから巻き解けて巻き崩れが生じ易くなる。
【0042】
一方、この実施形態では、ドラム体4Aの外周面右斜め下に位置していた終端部Heは、取外し位置P2にドラム体4Aが移動する過程で、ドラム体4Aの外周面右斜め下の位置に維持される。即ち、図6図7図8では、ホースHの終端部Heがドラム4Aの外周面の右斜め下の位置に維持されている。このように、終端部Heは巻き解け(巻き崩れ)が生じ難いドラム体4Aの外周面右斜め下の位置に維持されつつ、ドラム体4Aは巻取り位置P1から取外し位置P2に旋回移動する。尚、ドラム体4Aが巻取り位置P1から取外し位置P2に旋回移動する過程で終端部Heが維持される位置は、ドラム体4Aの外周面右斜め下の位置に限らず、ホースHの巻き解け(巻き崩れ)が生じ難い位置であればよい。例えば、終端部Heはドラム体4Aの外周面左斜め下の位置や外周面下端の位置などに維持されてもよい。
【0043】
巻取り位置P1から取外し位置P2に移動したドラム体4Aに対しては、上述のドラム体4Bに対して行った結束工程および取外し工程を行う。取外し位置P2から巻取り位置P1に移動したドラム体4Bに対しては、上述のドラム体4Aに対して行った巻取り工程を行う。巻取り工程と取外し工程とが終了した後は、旋回軸2aを中心にしてアーム2を時計回りに旋回させて、ドラム体4Bを巻取り位置P1から取外し位置P2に移動させるとともに、ドラム体4Aを取外し位置P2から巻取り位置P1に移動させる。
【0044】
以後同様にアーム2を旋回させて、それぞれのドラム体4A、4Bを巻取り位置P1と取外し位置P2との間で移動させて、巻取り位置P1での巻取り工程と、取外し位置P2での結束工程および取外し工程とを、並行して繰り返し行う。そのため、ドラム体4A、4Bに対するホースHの巻取りを効率的に行うには有利になる。
【0045】
それぞれのドラム体4A、4Bに対する専用の回転駆動モータ6a、6bがそれぞれのドラム体4A、4Bとともにアーム2に取り付けられている。そのため、アーム2を旋回させて巻取り位置P1から取外し位置P2まで移動させているドラム体4A、4Bの回転軸5a、5bを中心にした相対的な回転を無くすように回転駆動モータ6a、6bを容易に制御できる。その結果、上述したように巻取り位置P1で巻き取られたホースHの終端部Heのドラム周方向位置を、ホースHの巻き崩れが生じ難い所定位置に維持できるのでホースHの巻き崩れをより確実に抑制するには有利になる。
【0046】
空の状態のドラム体4Bを取外し位置P2から巻取り位置P1まで移動させている間に、制御部9により旋回駆動モータ3と回転駆動モータ6bとを連動させて制御することもできる。即ち、取外し位置P2から巻取り位置P1まで移動させているドラム体4Bを回転軸5bを中心にして回転させて、ドラム体4Bに備わるホース始端保持部7を所定のホース保持位置に位置決めする。
【0047】
空の状態のドラム体4Bが巻取り位置P1に配置された時に、ホース供給部10から供給されるホースHの始端部Htを、ホース始端保持部7が保持し易い位置が、この所定のホース保持位置として設定される。図8では、ホース始端保持部7がドラム体4Bの外周面の上端の位置に位置決めされていて、この位置が所定のホース保持位置に設定されている。
【0048】
このようにホース始端保持部7を位置決めすると、空の状態のドラム体4Bが巻取り位置P1に移動すると、ホース供給部10から供給されたホースHの始端部Htを迅速にホース始端保持部7によって保持できる。そのため、巻き取り工程を即座に開始できるので、ドラム体4Bに対してホースHの巻取りを効率的に行うには益々有利になる。
【0049】
この実施形態では、旋回軸2aを中心にしてアーム2を時計回りに180°および反時計回りに180°に交互に旋回させる動作を繰り返すことで、それぞれのドラム体4A、4Bを巻取り位置P1と取外し位置P2との間で移動させる。そのため、それぞれの回転駆動モータ6a、6b、フランジ部4f、ホース始端保持部7の動作のために電気を供給するケーブル類を、スリップリングを介してそれぞれの機器に接続しなくても済む。そこで、この実施形態では、これらケーブル類を配線保護移動ガイド8によって保持し、アーム2の旋回に伴って配線保護移動ガイド8とともにストローク移動させて保護している。スリップリングを使用する場合は、ケーブル類(電気系統)のメンテナンスが煩雑になるので、この実施形態であればメンテナンス性が向上する。
【0050】
それぞれのドラム体4A、4Bを巻取り位置P1と取外し位置P2との間で移動させために、旋回軸2aを中心にしてアーム2を360°回転させる仕様にすることもできる。即ち、旋回軸2aを中心にしてアーム2を、時計回りまたは反時計回りのいずれか一方向のみに回転可能にした仕様にしてもよい。この仕様にした場合は、それぞれの回転駆動モータ6a、6b、フランジ部4f、ホース始端保持部7の動作のために電気を供給するケーブル類は、スリップリングを介してそれぞれの機器に接続される。
【0051】
上述した実施形態では、旋回軸2aが水平方向に延在していてアーム2が上下方向に旋回する場合を例示しているが、アーム2の旋回方向は上下方向に限定されない。例えば、旋回軸2aが上下に延在していてアーム2が水平方向に旋回する巻取り装置1についても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 巻取り装置
2 アーム
2a 旋回軸
3 旋回駆動モータ
4A、4B ドラム体
4c 基部
4s セグメント
4f フランジ部
5a、5b 回転軸
6a、6b 回転駆動モータ
7 ホース始端保持部
8 配線保護移動ガイド
9 制御部
10 ホース供給部
10a 搬送機構
10b カッタ
11 結束機
11a、11b 結束ガイド
12 結束線
H ホース
Ht 始端部
He 終端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8