(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085772
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】通信制御システム、及び通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 48/20 20090101AFI20230614BHJP
H04W 48/16 20090101ALI20230614BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20230614BHJP
【FI】
H04W48/20
H04W48/16 132
H04W16/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199987
(22)【出願日】2021-12-09
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 悠一
(72)【発明者】
【氏名】石野 正典
(72)【発明者】
【氏名】藤原 亮介
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067AA33
5K067BB41
5K067HH22
5K067HH23
5K067KK02
(57)【要約】
【課題】離発着ポートへの離着陸時に、無線通信を途絶せずに、安全に離発着可能とする。
【解決手段】離発着する飛行体の通信を制御する通信制御システムであって、所定の処理を実行する演算装置、及び前記演算装置に接続される記憶装置を有する管制システムと、前記管制システムと基地局を介して通信する飛行体を備え、前記管制システムは、前記飛行体の位置、飛行高度、及び基地局ごとの電波品質を表す電波マップを格納し、複数の高度の電波マップを参照して、離発着ポートにおける離発着経路において無線品質が良好な基地局を選択することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離発着する飛行体の通信を制御する通信制御システムであって、
所定の処理を実行する演算装置、及び前記演算装置に接続される記憶装置を有する管制システムと、
前記管制システムと基地局を介して通信する飛行体を備え、
前記管制システムは、前記飛行体の位置、飛行高度、及び基地局ごとの電波品質を表す電波マップを格納し、
複数の高度の電波マップを参照して、離発着ポートにおける離発着経路において無線品質が良好な基地局を選択することを特徴とする通信制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通信制御システムであって、
前記飛行体は、
前記基地局と通信するためのアンテナの指向性を調整する機能を有し、
前記複数の高度の電波マップに基づいて、通信相手となる基地局の方向に指向性を制御して、前記選択した基地局との接続を維持することを特徴とする通信制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の通信制御システムであって、
前記飛行体は、
機体の向きを制御して、前記基地局と通信するためのアンテナの指向性を調整する機能を有し、
前記複数の高度の電波マップに基づいて、通信相手となる基地局の方向に指向性を制御して、前記選択した基地局との接続を維持することを特徴とする通信制御システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の通信制御システムであって、
前記電波マップで電波品質を管理するエリアサイズは、高度によって異なることを特徴とする通信制御システム。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一つに記載の通信制御システムであって、
前記管制システムは、前記複数の高度の電波マップに基づいて判定される無線品質に応じて、前記飛行体と前記管制システムの間のデータの再送回数及び連送回数の少なくとも一つを決定して、前記飛行体と前記管制システムの間の通信品質、及び通信信頼性を確保することを特徴とする通信制御システム。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一つに記載の通信制御システムであって、
前記管制システムは、
特定の基地局の指定が可能かを判定し、特定の基地局の指定が可能であれば、当該特定の基地局へ継続的に接続するように制御し、
前記飛行体が有するアンテナの指向性の調整が可能かを判定し、アンテナの指向性が調整可能であれば、アンテナの指向性が特定の基地局へ向くように制御し、
前記飛行体の機体制御によってアンテナの指向性の調整が可能かを判定し、アンテナの指向性が調整可能であれば、アンテナの指向性が特定の基地局へ向くように機体を制御することを特徴とする通信制御システム。
【請求項7】
離発着する飛行体の通信を管制システムが制御する通信制御方法であって、
前記管制システムは、所定の処理を実行する演算装置、及び前記演算装置に接続される記憶装置を有し、基地局を介して前記飛行体と通信し、
前記管制システムは、前記飛行体の位置、飛行高度、及び基地局ごとの電波品質を表す電波マップを格納し、
前記通信制御方法は、
前記管制システムが、前記取得した複数の高度の電波マップを参照して、離発着ポートにおける離発着経路において無線品質が良好な基地局を選択し、
前記飛行体が、離発着ポートにおける離発着時において、前記選択された基地局との接続を維持することを特徴とする通信制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の通信制御方法であって、
前記飛行体は、前記基地局と通信するためのアンテナの指向性を調整する機能を有し、
前記通信制御方法は、
前記飛行体が、前記合成された電波マップに基づいて、通信相手となる基地局の方向に指向性を制御して、前記選択した基地局との接続を維持することを特徴とする通信制御方法。
【請求項9】
請求項7に記載の通信制御方法であって、
前記飛行体は、機体の向きを制御して、前記基地局と通信するためのアンテナの指向性を調整する機能を有し、
前記通信制御方法は、
前記飛行体が、前記合成された電波マップに基づいて、通信相手となる基地局の方向に指向性を制御して、前記選択した基地局との接続を維持することを特徴とする通信制御方法。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一つに記載の通信制御方法であって、
前記電波マップで電波品質を管理するエリアサイズは、高度によって異なることを特徴とする通信制御方法。
【請求項11】
請求項7から9のいずれか一つに記載の通信制御方法であって、
前記管制システムは、前記複数の高度の電波マップに基づいて判定される無線品質に応じて、前記飛行体と前記管制システムの間のデータの再送回数、及び連送回数の少なくとも一つを決定して、前記飛行体と前記管制システムの間の通信品質、及び通信信頼性を確保することを特徴とする通信制御方法。
【請求項12】
請求項7から9のいずれか一つに記載の通信制御方法であって、
前記管制システムは、
特定の基地局の指定が可能かを判定し、特定の基地局の指定が可能であれば、当該特定の基地局へ継続的に接続するように制御し、
前記飛行体が有するアンテナの指向性の調整が可能かを判定し、アンテナの指向性が調整可能であれば、アンテナの指向性が特定の基地局へ向くように制御し、
前記飛行体の機体制御によってアンテナの指向性の調整が可能かを判定し、アンテナの指向性が調整可能であれば、アンテナの指向性が特定の基地局へ向くように機体を制御することを特徴とする通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体と管制システムの間の通信を制御する通信制御システムに関し、特に離着時の通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、着陸面に対して垂直方向に離着陸するドローンと呼ばれる飛行体を利用して荷物を搬送するシステムが提案されている。ドローンによる搬送システムは、ドローンの水平面の飛行計画経路を表わすデータを入力し、飛行計画経路上の複数の位置の各々の下にある地表面の標高を表す高さ基準値を取得し、当該位置の高さ基準値に飛行高度を加算した値を飛行計画経路の高度のデータとして使用することで、障害物に衝突しないで飛行計画経路を飛行できるようにしている。
【0003】
このようなドローンによる搬送システムにおいて、多くのドローンが効率よく目的地に到着して離着陸できることが重要であり、飛行機の様に管制システムが必要である。ドローンのような飛行体と管制システムの間は、無線によって通信し、飛行計画経路に沿った移動であることを確認し、経路変更など移動の調整を行っている。
【0004】
技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(国際公開2016/190793号)、特許文献2(国際公開2018/159794号)がある。特許文献1には、ユーザ装置が接続している自セルを含む複数セルにおける干渉レベル、または複数セルにおける当該ユーザ装置での受信通信品質の少なくとも何れかを取得する受信状態取得部と、受信状態取得部によって取得された複数セルにおける干渉レベルまたは受信通信品質が所定範囲内である場合、送信電力を制限する電力制御部とを備える無線基地局が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、ワイヤレス通信ネットワーク経由のルートに沿った計画に従って移動し、同時にワイヤレス通信ネットワークにサービス要件を有するアプリケーションのために通信しているワイヤレス送受信機の移動を調整し、ワイヤレス通信ネットワークは、セルを備え、移動調整デバイスは、ワイヤレス送受信機が位置する現在のセル、およびワイヤレス送受信機が移動し得る複数の隣接セル、を備えるセルのグループに関する無線ネットワーク条件データを取得し、アプリケーションのサービス要件を達成することに関して無線ネットワーク条件データを分析し、分析が、この調整はサービス要件の達成を改善するであろうと示す場合、計画的移動の調整を行うように動作可能である移動調整デバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2016/190793号
【特許文献2】国際公開2018/159794号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した、特許文献1には、飛行体は無線通信ネットワーク経由のルートに沿った計画に従って移動し、現在地と次に移動する経路上の無線通信エリアにおいて、無線通信の条件を分析し、飛行体に搭載されているアプリケーションが要求する無線品質を満足するように、移動経路を調整しながら飛行することが記載されているが、複数のセルから最適なセルを選択するため、離発着時のように、同一セル内での高さ方向の移動時には適していない。同一セル内で通信環境が悪化した場合、接続可能な基地局が複数発見できた場合、最適な基地局へ接続切替えるハンドオーバ処理が発生する。ハンドオーバ処理時は、通信が途絶するため、離発着時に通信できない課題がある。
【0008】
また、特許文献2には、高度別に電波受信レベルや干渉レベルを管理し、ある高度において最適な基地局と送信電力の制御することが記載されているが、高さ方向に移動する際は、降下を開始する着陸開始場所から着陸場所である離発着ポートまで、又は、離陸の際、離発着ポートから横方向への飛行を開始する高度までのトータルの無線通信の品質を考慮していない。そのため、最適な基地局への切り替えであるハンドオーバ処理が発生し、通信が途絶する課題がある。
【0009】
また、飛行体上空からの電波干渉が一切考慮されていないため、ある飛行体が下降中、その上空に待機する複数の飛行体の影響による無線環境の変化が生じ得る。着陸のために下降を始めた後、想定した無線環境が悪化すると、最適な基地局への切り替えであるハンドオーバ処理が発生し、通信が途絶される課題がある。
【0010】
本発明の目的は、このような課題に鑑み、上空から離発着ポートへの着陸時、離発着ポートから上空への離陸時に、無線通信を途絶せずに、安全に離発着可能となるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、離発着する飛行体の通信を制御する通信制御システムであって、所定の処理を実行する演算装置、及び前記演算装置に接続される記憶装置を有する管制システムと、前記管制システムと基地局を介して通信する飛行体を備え、前記管制システムは、前記飛行体の位置、飛行高度、及び基地局ごとの電波品質を表す電波マップを格納し、複数の高度の電波マップを参照して、離発着ポートにおける離発着経路において無線品質が良好な基地局を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、飛行体の離発着ポートへの離着陸の際に、無線通信を途絶せずに安全に飛行できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1のシステムの概略構成を示す図である。
【
図2】実施例1の飛行体及び管制システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】実施例1の電波マップ管理画面の一例を示す図である。
【
図4】
図3で管理する電波マップ管理テーブルの構成例を示す図である。
【
図5】実施例1の電波マップのテーブル構成の一例を示す図である。
【
図6】実施例1の離発着ポートへ着陸する経路と電波マップの一例を示す図である。
【
図7】実施例1の離発着ポートへ着陸する経路と電波マップの一例を示す図である。
【
図8】管制システムが、ある飛行体の電波マップを生成し、飛行体と管制システムが通信する制御フローを示すシーケンス図である。
【
図9】飛行体との無線制御の必要性を判断する無線制御判断処理のフローチャートである。
【
図10】電波マップ生成処理のフローチャートである。
【
図11】実施例2の飛行体の構成を示すブロック図である。
【
図12】実施例3の飛行体の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例は、飛行体101と管制システム103を備える離発着システムにおいて、管制システム103は、飛行体101の飛行計画、位置、高度、及び無線品質状況を管理しており、飛行体101の現在の高度から離発着ポート102までの飛行経路情報と高度毎の無線品質に基づいて電波マップを生成し、生成された電波マップに基づいて最適な基地局を選択し、飛行体101へ指示する。また、管制システム103は、電波マップに基づいて判定した無線品質に応じて、同一内容を含む無線データ(無線パケット)の再送制御や、同一パケットを複数回の連続的に送信する連送制御を飛行体101と管制システム103の間の通信に適用し、無線通信の信頼性を向上する。さらに、飛行体101は、離発着ポートへの離発着時の最適な基地局との接続を維持するための、アンテナ指向性の調整機能、アンテナ指向性を調整するための機体制御機能、及び特定の基地局に固定的に接続可能にする機能を有する。
【0015】
<実施例1>
以下、本発明の実施例1について
図1から
図7を用いて構成を説明し、
図8、
図9を用いて本実施例の処理を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の中で、変形例や応用例は本発明の範囲に含まれる。
【0016】
図1は、本発明の実施例1のシステムの概略構成を示す図である。
【0017】
実施例1のシステムは、飛行体101、離発着ポート102、管制システム103及び基地局104、105を含む。
【0018】
飛行体101は、ドローンのような垂直方向に飛行可能な飛行体であり、例えば、ドローンやeVTOLなどの垂直に離発着可能な飛行体である。なお、本発明は無人飛行のドローンに限らず、垂直方向に離発着可能な他の形態の飛行体、例えば、有人の飛行体にも適用でき、飛行体の形状や、有人/無人、自動飛行/パイロットによる飛行などの形態に制限されない。
【0019】
離発着ポート102は、飛行体が離陸及び着陸する離発着場所106及び離発着する飛行体101の飛行を制御する管制システム103から構成される。離発着ポート102の近傍には、離発着場所106及び離発着する飛行体101と通信するための基地局A104及び基地局B105が設けられる。
【0020】
図1において、離発着ポート102は、一つの離発着場所106を含むが、複数の離発着場所106を含んでもよい。
【0021】
管制システム103は、離発着場所106を含む離発着ポート102、基地局A104、基地局B105と接続されており、複数の飛行体101の離発着の順序や離発着のタイミングを管理する。また、管制システム103は、飛行体101と管制システム103との間で安定して通信するため、通信の確立先となる基地局の選定や飛行体101と離発着場所106間の移動中の通信品質を管理する。
【0022】
基地局A104は、飛行体101と管制システム103が通信するための無線設備であり、LTEや5Gなどの無線通信インフラを提供する通信キャリアの基地局、又は、無線LAN、プライベートLTE、ローカル5Gなどの自営で構築される無線ネットワークの通信基地局である。なお、基地局A104の無線方式は制限されず、管制システム103側と飛行体101との間の無線通信を実現可能な無線設備や装置でよい。以上、基地局A104について説明したが、基地局B105も同様の構成を有する。
【0023】
図2は、実施例1の飛行体101及び管制システム103の構成を示すブロック図である。
【0024】
図2は、飛行体101の代表的な構成を示す。
図2には図示を省略するが、飛行体101が複数ある場合、各飛行体101は同様の構成を有する。
【0025】
飛行体101は、CPU201、飛行制御装置202、測位装置203、指向性調整無線通信装置A204-a1、アンテナ204-a2、指向性調整無線通信装置B204-b1、アンテナ204-b2、無線情報記憶装置205及び通信制御装置206を有する。
【0026】
CPU201は、飛行体を制御するための全ての機能の実行を制御する演算装置である。
【0027】
飛行制御装置202は、CPU201で実行される飛行制御プログラムによって、機体の向き、及び飛行速度等を制御する装置である。
【0028】
測位装置203は、飛行体101が飛行する現在の位置情報を測定する装置であり、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)などの測位システム利用できる。測位装置203は、飛行体101の位置情報を高精度で取得可能なものであれば、他の形態や方式でもよい。測位装置203がGNSSである場合、測位装置203は正確な時刻情報を提供できる。
【0029】
指向性調整無線通信装置A204-a1は、接続されるアンテナ204-a2の指向性を調整する機能を有する無線装置である。アンテナ204-a2は、360度の空間に均一の強度で電波を送受信できる無指向特性と、特定の方向に電波を送受信できる指向性特性の両方を有する。例えば、指向性アンテナの方向を機械的に変化させる、電気的に指向性が変更可能なアダプティブアレイアンテナ、無指向性アンテナと指向性アンテナの二つを実装する等で実現できる。また、指向性調整無線通信装置A204-a1は、携帯網として利用されるLTE、5G、自営無線として利用されるWiFiなどの無線通信方式に応じた送受信機能を有する無線装置である。
【0030】
指向性調整無線通信装置B204-b1は、指向性調整無線通信装置A204-a1と同様に、無線方式に応じた送受信機能とアンテナ204-b2の指向性を調整する機能を有する。指向性調整無線通信装置A204-a1と指向性調整無線通信装置B204-b1は、同一の無線方式でも異なる無線方式でもよい。同一の無線方式でも、例えば、異なる通信キャリアが提供する携帯網への接続サービスでもよい。
指向性調整無線通信装置A204-a1の通信方式と指向性調整無線通信装置B204-b1の通信方式は様々な組み合わせを採用できる。
【0031】
無線情報記憶装置205は、測位装置203から提供される位置情報や時刻情報と共に、無線情報を記憶する。無線情報記憶装置205に記憶される無線情報は、飛行体101が基地局104、105から受信した電波の強度、干渉情報、通信速度、パケットエラーレート等の無線通信のKPI(Key Performance Indicator)である。
【0032】
通信制御装置206は、通信品質計測部207、再送・連送制御部208、経路制御部209及びアンテナ指向性調整部210から構成され、通信を制御する装置である。
【0033】
通信品質計測部207は、飛行体101が基地局104、105から受信した電波の強度や、基地局104、105との送信時の通信成功確率などを計測する。
【0034】
再送・連送制御部208は、飛行体101が送信する無線データ(無線パケット)を基地局104、105が受信に失敗した場合、到達しなかったデータを再度送信して通信成功確率を向上させる再送機能や、同一のデータを複数回送信して、少なくとも一つのデータを基地局が受信することで通信成功確率を向上させる連送機能などの通信信頼性向上機能を提供する。また、基地局104、105が有する再送機能や連送機能により、基地局104、105から同一データを受信した場合、一つ以外を破棄する等の機能を有する。再送機能や連送機能を実現するために、例えば、固有のシーケンス番号が付加されたデータ構造にするとよいが、本実施例においては、同一のデータが判定できればよく、様々な構成や実現手段を採用できる。
【0035】
経路制御部209は、飛行体101が送信したデータを、飛行体101が有する複数の無線通信装置204-a1及び204-b1のいずれか一方又は双方から送信するように通信経路を決定する。例えば、信頼性が高い一つの通信方法の選択、又は多重化によって、通信の信頼性を向上可能な経路を決定する。経路制御部209は、再送・連送制御部208と同様に、様々な通信経路の決定方法を採用できる。
【0036】
アンテナ指向性調整部210は、アンテナ204-a2の向きを調整する制御指令を指向性調整無線通信装置A204-a1に送信し、アンテナ204-b2の向きを調整する制御指令を指向性調整無線通信装置B204-b1に送信する。アンテナの向きの調整は、モータなどの機械的な機構による方法、又は、複数の指向性アンテナから適する方向の一つを選択する方法や、アダプティブアレイアンテナを使用する方法などがあり、様々な指向性の調整方法を採用できる。
【0037】
管制システム103は、経路計画装置211、無線情報管理装置212、通信装置213、無線情報DB214及び基地局A104を有する。
【0038】
経路計画装置211は、飛行体101の離発着ポート102までの飛行経路を計画する。
【0039】
無線情報管理装置212は、無線情報登録部215、無線情報更新部216、無線情報取得部217及び電波マップ生成部218を有する。無線情報登録部215は、飛行体のある位置、高度及び無線情報を無線情報DB214に登録するユーザインターフェース(
図3参照)を提供する。無線情報更新部216は、既に登録済みの無線情報を最新の無線情報に更新又は追加する。位置及び高度ごとに一つの無線情報を記録し管理する場合には無線情報を更新するとよく、同一の位置及び高度ごとに時系列データに複数のデータを記録し管理する場合には無線情報を追加登録するとよい。無線情報取得部217は、無線情報DB214に記録された情報を取得する。電波マップ生成部218は、位置及び高度、又は位置、高度及び時刻に応じて、基地局毎に管理される無線情報から、経路計画装置211が生成し管理する飛行経路、飛行体の位置、接続する基地局、及び位置・高度において、無線情報取得部217が無線情報DB214から取得した無線情報から、電波マップに登録される一つの値を算出する。例えば、飛行経路に従って、高度毎に管理された複数の無線情報を加算する等の処理によって、電波マップに登録される値を算出できる。
【0040】
通信装置213は、飛行体101が有する無線方式に対応する方式の通信が可能であり、例えば、携帯網であるLTE、5G、自営無線であるWiFiなどに対応し、基地局A104を通じて、飛行体101と通信する。ここで、対応する無線方式は、飛行体101と同様に様々な通信方式が採用できる。また、基地局A104は、通信装置213に対応する基地局である。本図においては、基地局が一つ接続されているが、複数の基地局が接続されていてもよい。
【0041】
無線情報DB214は、飛行体101が取得した無線情報、及び、管制システム103の通信装置213が取得した無線情報を記憶するデータベースである。無線情報は、電波マップ管理テーブル400(
図4参照)に記載の通り、エリアサイズごとに管理されるため、飛行体101が計測した無線情報の位置及び高度からエリアを算出し、対応するエリアのテーブルに無線情報を格納し、記憶する。本実施例では、データベースの種類は様々なものが採用できる。
【0042】
図3は、実施例1の電波マップ管理画面300の一例を示す図である。
【0043】
電波マップ管理画面300は、管理済み情報表示部301及び電波マップ登録部306を含む。
【0044】
管理済み情報表示部301は、離発着場所付近の基地局表示領域302と、基地局選択領域303、選択電波マップ表示領域304及び位置・高度選択領域305を含むユーザインターフェースである。
【0045】
離発着場所付近の基地局表示領域302は、基地局選択領域303で選択された離発着ポート付近に存在する基地局を表示する。例えば、図示した離発着場所付近の基地局表示領域302では、地図上に離発着ポート102及び基地局307~309がプロットされている。
【0046】
選択電波マップ表示領域304は、基地局選択領域303で選択された基地局について、位置・高度選択領域305で選択された位置及び高度における電波マップを表示する。基地局選択領域303で基地局を選択し、位置・高度選択領域305で選択ボタン314を操作後、表示ボタン311の操作によって電波マップが表示される。ただし、表示ボタン311は必須ではなく、基地局、位置、及び高さを選択した後、自動的に該当する電波マップが表示されてもよく、様々な実装形態を採用できる。
【0047】
電波マップ登録部306は、電波マップを新規登録、追加登録、又は更新するときに利用されるユーザインターフェースである。飛行体101の、位置314、高度315、登録する電波マップのエリアサイズ316及び無線情報を表現する電波マップファイル317を指定し、登録ボタン318の操作によって、電波マップを登録する。電波マップファイルの形式は、CSV(Comma Separated Values)形式、JSON(JavaScript Object Notation)形式などの定められた形式であれば、様々な形式でよい。
【0048】
図4は、
図3で管理する電波マップ管理テーブル400の構成例を示す図である。
【0049】
電波マップ管理テーブル400は、飛行体位置401、エリアサイズ402、基地局ID403、電波マップID404を列として管理する。飛行体位置401の位置(X,Y)は、例えば緯度経度情報で記述し、高度(Z)は地表からの高度で記述する。また、エリアサイズ402は、電波マップのメッシュサイズを指定する。電波マップは、飛行体位置401の高度(Z)毎に、位置(X,Y)が電波マップの中心となるように管理される。従って、ある位置(X,Y)で取得した無線情報は、位置(X,Y)からエリアサイズ402を2で除した離れた位置までの値とする。
【0050】
電波マップ管理テーブル400に記録されるエリアサイズ402は、高さによって変更しても、又は、高さによらず同一としてもよい。高度に応じてエリアサイズを変更して管理することで、高度ごとの通信距離特性の違いに対応できる。例えば、高い高度では、低い高度より障害物が少ない又は全く無いため、見通し通信として扱ってもよく、すなわち、通信距離による電波減衰が地上より小さくなるため、無線情報としては大きなエリアで管理してもよく、データベースの記憶領域を低減し、通信距離特性に応じた判断ができる効果がある。一方、
図7に示すように、高度によらず同じエリアサイズで管理することで、電波マップの管理が容易になる。
【0051】
電波マップID404は、登録された電波マップを一意に識別できる識別情報や名称である。
【0052】
図5は、電波マップのテーブル構成の一例を示す図であり、電波マップ405の例を示す。
【0053】
電波マップ405は、縦方向に並んだ(X軸が同じ値)のセル501を列、横方向に並んだ(Y軸が同じ値)のセル502を行として、行及び列で区分されたセルの値503で構成される。本実施例では、強、中、弱のレベルを値503として記載しているが、無線情報としての計測結果そのもの、例えば、電波強度、パケットエラーレート、遅延などの無線品質を表す数値であればよく、様々な値を採用さきる。
【0054】
図6は、ある高度から離発着ポートへ着陸する経路と電波マップの一例を示す図であり、飛行体101の位置602から離発着ポート102の発着場所601へ着陸する際の飛行経路に応じた電波マップの値の選択を示す。
【0055】
図6に示す例では、離発着ポート102の付近の電波マップとして、高度20mの電波マップ405、高度50mの電波マップ406、及び高度100mの電波マップ407が管理されている。電波マップのエリアサイズが、
図4に示す電波マップ管理テーブル400のように、それぞれ10m、20m、40mである。この時、通過する経路に応じて、電波マップ405において16分割されたメッシュの一つのセル値、電波マップ406において4分割されたメッシュの一つのセル値、電波マップ407において分割されていないセル値の三つから、着陸時の無線品質である無線情報を算出する。このように、高度に応じてエリアサイズを変化させて管理できる。
【0056】
図7は、ある高度から離発着ポートへ着陸する経路と電波マップの一例を示す図であり、飛行体101の位置702から離発着ポート102の発着場所701へ着陸する際の飛行経路に応じた電波マップの値の選択を示す。
【0057】
図7に示す例では、離発着ポート102の付近の電波マップとして、高度20mの電波マップ405、高度50mの電波マップ703、高度100mの電波マップ704が管理されている。全ての電波マップのエリアサイズは10mである。この時も
図6と同様に、通過する経路に応じて、電波マップ405において16分割されたメッシュの一つのセル値、電波マップ703において16分割されたメッシュの一つのセル値、電波マップ704において16分割されたメッシュの一つのセル値の三つから、着陸時の無線品質である無線情報を算出する。このように、高度に関係なく均一なエリアサイズで電波マップを管理できる。
【0058】
次に、
図8から
図10を参照して、電波マップに基づいて、飛行体101の離発着時の無線通信制御の流れと、制御情報を決定する動作フローを説明する。
【0059】
図8は、管制システム103が、ある飛行体の電波マップを生成し、飛行体101と管制システム103が通信する制御フローを示すシーケンス図である。
【0060】
無線情報登録部215は、電波マップ管理画面300の電波マップ登録部306から電波マップの新規登録要求を受け付け(800)、無線情報取得部217に既存の電波マップの存在有無を確認する(801)。無線情報取得部217は、既存データ確認要求を受けると、要求された電波マップの無線情報DB214からの取得を試みる。要求された電波マップを取得できた場合、既存電波マップは存在し、要求された電波マップを取得できない場合、既存電波マップは存在しない。無線情報取得部217は、既存データ確認要求に対する確認結果803を無線情報取得部217から無線情報登録部215に返信する。無線情報登録部215は、返信された確認結果803に従って、電波マップの登録・更新・追加処理を実行する(804)。
【0061】
次に、飛行体101の通信情報計測部207が通信開始要求805を受信すると、管制システム103に接続される基地局104と飛行体101との間の通信品質について確認する処理が実行される。まず、飛行体101の通信情報計測部207が、管制システム103の通信装置213に、飛行体101の位置、高さ、及び、取得した無線情報を送信する(806)。通信装置213は、受信した位置、高さ及び無線情報を無線情報取得部217に送信し(807)、位置及び高さに基づいて、関連する無線電波マップを取得する(810)。また、飛行体101から新たに受信した無線情報を無線情報更新部216に送信し(808)、無線情報を更新する(809)。
【0062】
電波マップ生成部218は、無線情報取得部217から取得した無線情報から飛行体101と離発着ポート間の電波マップを生成する(811)。この電波マップ生成処理811の詳細は
図10を参照して後述する。電波マップ生成部218は、生成された電波マップを通信装置213に送信する(812)。通信装置213は、無線通信にて飛行体101へ送信する(813)。ここで、通信装置213は、生成された電波マップに基づいて、無線信頼度を決定する(815)。信頼度決定処理815では、通信の信頼性を向上するために、通信装置213の再送・連送制御部や経路制御部の動作パラメータを決定し、決定された通信方法で当該飛行体101と通信する。管制システム内の通信装置213の再送・連送制御部においても、前記再送・連送制御部208や経路制御部209と同様の判断を行い、通信の信頼性を向上させる。
【0063】
通信情報計測部207は、電波マップを受信すると、管制システム103内の通信装置213同様に、無線制御の必要性を判断し(814)、連送・再送回数、送信経路を決定する。無線制御判断処理814の詳細は、
図9を参照して後述する。
【0064】
図9は、飛行体との無線制御の必要性を判断する無線制御判断処理814のフローチャートである。なお、
図9のフローチャートは実施例1と後述する実施例2及び3の全ての機能を実装した場合の制御し示し、各実施例の機能で実装されないものは、対応するステップをスキップする。すなわち、実施例1はステップS704~S705に対応し、実施例2はステップS706~S707に対応し、実施例3はステップS703に対応する。
【0065】
無線制御判断処理814では、まず、ステップS901で、通信情報計測部207は、電波マップ生成部218から電波マップを受信し。ステップS902で、受信した複数の電波マップした後、接続先の基地局候補を指定する。電波マップは基地局毎に管理されるため、接続候補は一つ又は複数存在する可能性がある。ステップS902においては、それら候補毎に、ステップS903からステップS910の処理を実行する、接続先として適する通信信頼性を確保するための基地局候補を指定し、ステップS903に進む。
【0066】
ステップS903では、該当する基地局が指定可能か否かを判定する。特定の基地局の指定が可能な場合、機体の制御やアンテナ指向性の調整せずに、指定された基地局への継続的な接続が可能なので、ステップS908に進む。一方、特定の基地局の指定が不可能な場合はステップS904に進む。
【0067】
ステップS904では、飛行体101が有するアンテナ指向性の調整が可能か否かを判定する。アンテナ指向性を調整可能な機構を有し、所望の指向性が得られる場合はステップS905に進み、アンテナ指向性の調整が不可能な場合はステップS906に進む。
【0068】
ステップS905では、基地局との通信を継続するように、当該基地局への指向性を強める方向にアンテナ指向性を調整する。調整パラメータを決定すると、ステップS908に進む。
【0069】
ステップS906では、飛行体の機体制御によってアンテナの指向性の調整が可能か判定する。機体を水平方向に回転して当該基地局に対して、指向性を調整可能な場合、ステップ907(S907)に進み、指向性を調整不可能な場合はステップS908に進む。
【0070】
ステップS908では、当該基地局との通信信頼性を向上するための、再送・連送回数を決定する。本ステップで決定した回数だけ同一無線パケットが再送される、かつ、同一アプリケーションデータの連続送信される(例えば、再送回数を2回、連送回数を3回と設定する)場合、再送回数なし、連送回数なしの設定と比較して、同一のアプリケーションデータに対して最大9回(連送回数×再送回数+1)の無線送信機会を得ることできる。そのため、最大9個の無線パケットの内、一つでも宛先である基地局に到達すれば、無線通信が成功するため信頼性が向上する。このように、本ステップでは、無線通信の信頼性を向上するためのパラメータを決定する。本実施例において、再送回数や連送回数以外にも通信信頼性の向上が可能な機能は、本ステップに追加能であり、様々な信頼性向上の機能を採用できる。
【0071】
ステップS909では、未確認の基地局の有無を確認する。未確認の基地局がある場合、ステップS902に戻り、次の基地局候補についての処理を行う。一方、全ての基地局候補に対する処理が実行された場合、ステップS910に進む。
【0072】
ステップS910では、基地局候補から、電波マップ及び通信信頼性を考慮して最適な基地局を選定する。例えば、基地局からの電波強度を基準にする場合、高度毎に管理される複数の電波マップから算出された、現在の飛行体の位置から着陸するまでの経路において、最も強い電波強度の基地局を選択する。基地局を選択した後、ステップS911に進む。
【0073】
ステップS911では、未設定の通信装置の有無を確認する。飛行体101は、一つ又は複数の無線通信装置を有するため、未設定の通信装置が存在する場合、ステップS902に進み、全て設定完了済みの場合はステップS912に進み、次の通信装置の処理を実行する。一方、全ての通信装置に対する処理が実行された場合、処理を終了する。
【0074】
図10は、電波マップ生成処理811のフローチャートである。
【0075】
電波マップ生成処理811では、まず、ステップS1101において、位置・高さに対応する電波マップが既に存在するか否かを判定する。電波マップが存在する場合はステップS1002に進み、電波マップが存在しない場合は、次の位置・高さに対する電波マップを検索する。
【0076】
ステップS1102では、無線情報DB204から該当する電波マップを取得し、取得後はステップS1003に進む。
【0077】
ステップS1003では、飛行体101の着陸開始位置から離発着ポート102までの区間、又は、離発着ポート102から離陸後の飛行高度までの区間で、全ての高度における電波マップが取得済みか否かを判定する。全ての高度における電波マップが取得済みの場合はステップS1004に進み、未取得の電波マップがある場合は、ステップS1001に戻る。
【0078】
ステップS1004では、飛行体101の飛行経路上の位置に対する無線情報を取得するため、位置情報とセルサイズから、電波マップごとに該当するセルを抽出し、抽出したセルの無線情報の値を記憶する。全ての電波マップからセルの値を抽出して記憶し、ステップS1005に進む。
【0079】
ステップS1005では、ステップS1004で記憶したすべての電波マップの該当セルの値を用いて、マップ合成処理を行う。マップ合成処理は、例えば全てのセル値を加算するものでよい。マップ合成処理において、高度毎の重み付けを変えて加算するなど、様々なバリエーションを採用してもよい。マップ合成処理を終えると、ステップS1006にて本処理を終了する。
【0080】
以上に説明したように、実施例1によると、飛行体101の離発着時のハンドオーバ処理による無線通信断絶を抑制し、更に、経路に応じた無線通信の信頼性を向上できる。
【0081】
<実施例2>
実施例1では、離発着時のハンドオーバを抑制するため、ある基地局との接続を維持するためのアンテナ指向性を調整可能な機械的な機構がアンテナ204-a2又はアンテナ204-b2に必要なため、機体重量が増加する。実施例2では、この課題に対して、機械的な調整機能の機構を必要せず、機体そのものの向きを変更することで実現する例を示す。実施例2では、
図11に示す飛行体の構成が実施例1と異なり、
図9のフローチャートのステップS706~S707に対応する。なお、実施例2では、実施例1と異なる構成を主に説明し、実施例1と同じ構成及び処理には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0082】
図11は、実施例2の飛行体1101の構成を示すブロック図である。
【0083】
飛行体1101は、CPU201、飛行制御装置202、測位装置203、無線通信装置A1104-a1、アンテナ204-a2、無線通信装置B1104-b1、アンテナ204-b2、無線情報記憶装置205及び通信制御装置1106を有する。
【0084】
CPU201、飛行制御装置202、測位装置203、アンテナ204-a2、アンテナ204-b2及び無線情報記憶装置205は実施例1と同じである。
【0085】
無線通信装置A1104-a1及び無線通信装置B1104-b1は、携帯網として利用されるLTE、5G、自営無線として利用されるWiFiなどの無線通信方式に応じた送受信機能を有する無線装置である。無線通信装置A1104-a1と無線通信装置B1104-b1は、同一の無線方式、又は異なる無線方式でもよい。
【0086】
通信制御装置1106は、実施例1と同様に、通信品質計測部207、再送・連送制御部208、経路制御部209及び指向性調整部1110から構成され、通信を制御する装置である。
【0087】
指向性調整部1110は、接続したい基地局に対し、基地局との良好な通信品質を維持する機体の方向を、飛行体101の飛行制御装置202に指示する。すなわち、実施例2では、機体に固定的に接地されたアンテナの向きを、飛行体101の向きによって制御する。
【0088】
以上に説明したように、実施例2によると、飛行体101の重量増加の要因となるアンテナ指向性調整機構を搭載せずに、飛行体101の離発着時のハンドオーバ処理による無線通信断絶を抑制し、更に、経路に応じた無線通信の信頼性を向上できる。
【0089】
<実施例3>
実施例2では、離発着時のハンドオーバを抑制するため、ある基地局との接続を維持するために飛行体101の機体の向きの制御が必要なため、機体の動作に制限が発生する。実施例3では、この課題に対して、機械的な制御機能を利用しないで実施する例を示す。実施例3では、
図12に示す飛行体の構成が実施例1、2と異なり、
図9のフローチャートのステップS703に対応する。なお、実施例3では、実施例1、2と異なる構成を主に説明し、実施例1、2と同じ構成及び処理には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0090】
図12は、実施例3の飛行体1201の構成を示すブロック図である。
【0091】
飛行体1201は、CPU201、飛行制御装置202、測位装置203、無線通信装置1204-a1、アンテナ1204-a2、無線情報記憶装置205及び通信制御装置1206を有する。
【0092】
CPU201、飛行制御装置202、測位装置203、無線情報記憶装置205は、実施例1及び実施例2と同じである。
【0093】
無線通信装置1204-a1は、携帯網として利用されるLTE、5G、自営無線として利用されるWiFiなどの無線通信方式に応じた送受信機能を有する無線装置であり、指定された基地局に接続できる機能を有する。例えば、無線LANのアクセスポイントを識別するSSIDや、携帯網の基地局ID等によって接続先の指定が可能である。これらを指定できる場合、他の基地局への意図しない切り替えを抑制でき、実施例1のアンテナ指向性調整機構や、実施例2の機体制御処理は不要である。
【0094】
通信制御装置1206は、実施例1と同様に、通信品質計測部207、再送・連送制御部208及び経路制御部209から構成されており、実施例1のアンテナ指向性調整部210や、実施例2の指向性調整部1110は不要である。
【0095】
以上に説明したように、実施例3によると、飛行体101の飛行に制約を設けることなく、飛行体101の離発着時のハンドオーバ処理による無線通信断絶を抑制し、更に、経路に応じた無線通信の信頼性を向上できる。
【0096】
以上に説明した実施例では、飛行高度と飛行経路を考慮した無線情報を把握でき、飛行体101の離発着時の無線情報の管理と通信制御によって、無線局との不要なハンドオーバによる通信断絶を抑制できる。
【0097】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0098】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0099】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0100】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0101】
101、1101、1201…飛行体、102…離発着ポート、103…管制システム、104、105…基地局、106…離発着場所、201…CPU、202…飛行制御装置、203…測位装置、204-a1、204-b1…無線通信装置、204-a2、204-b2…アンテナ、205…無線情報記憶装置、206、1106…通信制御装置、207…通信品質計測部、208…連送制御部、209…経路制御部、210…アンテナ指向性調整部、211…経路計画装置、212…無線情報管理装置、213…通信装置、215…無線情報登録部、216…無線情報更新部、217…無線情報取得部、218…電波マップ生成部、300…電波マップ管理画面、400…電波マップ管理テーブル