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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085775
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】フラックス及び接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20230614BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20230614BHJP
   C22C 12/00 20060101ALN20230614BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/26 310C
C22C12/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199990
(22)【出願日】2021-12-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】須川 靖久
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕之
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 陽也
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 正人
(57)【要約】
【課題】はんだ付けにおいて、基板の表面にドロスが付着することを抑制できるフラックス及び接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】ロジン(P)と、化合物(SA)と、活性剤(ただし、化合物(SA)に該当するものを除く)と、溶剤(ただし、化合物(SA)に該当するものを除く)と、を含有するフラックスを採用する。化合物(SA)は、一般式(sa)で表される化合物である。式(sa)中、R11は、ヒドロキシ基を有してもよい炭化水素基を表す。R12及びR13は、それぞれ、置換基を有してもよい炭素数5以下の炭化水素基、ヒドロキシ基又は水素原子である。mは、正の整数を表す。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン(P)と、
下記一般式(sa)で表される化合物(SA)と、
活性剤(ただし、前記化合物(SA)に該当するものを除く)と、
溶剤(ただし、前記化合物(SA)に該当するものを除く)と、
を含有する、フラックス。
【化1】
[式(sa)中、R11は、ヒドロキシ基を有してもよい炭化水素基を表す。R12及びR13は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数5以下の炭化水素基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。mは、正の整数を表す。]
【請求項2】
前記ロジン(P)は、軟化点が100℃超であるロジン(PA)と、軟化点が100℃以下であるロジン(PB)と、を含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記ロジン(PA)と前記ロジン(PB)との混合比率は、(PA)/(PB)で表される質量比として、(PA)/(PB)=5/5~9/1である、請求項2に記載のフラックス。
【請求項4】
前記ロジン(PA)は、アクリル酸変性水添ロジン及び重合ロジンからなる群より選択される少なくとも一種のロジン(P1)を含み、
前記ロジン(PB)は、水添ロジンを含む、請求項2又は3に記載のフラックス。
【請求項5】
前記化合物(SA)の含有量は、前記ロジン(P)100質量部に対して1~60質量部である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項6】
前記活性剤は、下記一般式(a1)で表される化合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のフラックス。
【化2】
[式(a1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子又は水素原子を表す。]
【請求項7】
前記活性剤は、アルカノールアミンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項8】
前記溶剤は、エタノール及び2-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項9】
固形分濃度は、20質量%以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のフラックスで処理された基板の表面に、はんだ合金をはんだ付けすることにより、接合体を得る工程を含む、接合体の製造方法。
【請求項11】
前記はんだ合金は、SnとBiとを含むはんだ合金からなる、請求項10に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス及び接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対する部品の固定、及び、基板に対する部品の電気的な接続は、一般に、はんだ付けにより行われる。はんだ付けにおいては、フラックス、はんだ、並びに、フラックス及びはんだを混合したソルダペーストが用いられる。
フラックスは、はんだ付けの対象となる接合対象物の金属表面及びはんだに存在する金属酸化物を化学的に除去し、両者の境界で金属元素の移動を可能にする効能を持つ。このため、フラックスを使用してはんだ付けを行うことで、両者の間に金属間化合物が形成されるようになり、強固な接合が得られる。
【0003】
はんだ付けにおいては、接合対象物のサイズ等に応じて、フローはんだ付け、リフローはんだ付け等の方法が採用されている。
フローはんだ付けにおいては、まず、部品を搭載した基板にフラックスが塗布される。次いで、部品が搭載された基板を搬送しつつ、下方から噴流させた溶融はんだをはんだ付け面に接触させることにより、はんだ付けを行う。
リフローはんだ付けにおいては、まず、基板にソルダペーストが印刷される。次いで、部品が搭載され、リフロー炉と称される加熱炉で、部品が搭載された基板を加熱することにより、はんだ付けを行う。
【0004】
はんだ付けに用いられるフラックスには、一般に、樹脂成分、溶剤、活性剤、チキソ剤等が含まれる。例えば、特許文献1の実施例には、樹脂成分としてロジンと、活性剤として有機酸、有機ハロゲン化合物、又はアミンハロゲン化水素酸塩とを含有する、フローはんだ付けに用いられるフラックスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6617848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、環境への悪影響を考慮して、鉛フリーはんだが用いられている。鉛フリーはんだは、融点が高いため、はんだ付けの際に、より高温まで加熱して溶融させる必要がある。溶融したはんだは、高温であるほど、より多くの酸化物(これをドロスという)を生じやすい。
【0007】
特に、Sn及びBiを含有するはんだは、Biが酸化されやすいため、溶融した状態でドロスを発生する場合がある。加えて、Sn及びBiを含有するはんだを用いた場合、発生したドロスは基板に付着しやすい。基板に付着したドロスは、ショート及び絶縁性低下等を引き起こすおそれがある。
【0008】
特許文献1に記載のフラックスでは、基板の表面にドロスが付着しやすい場合がある。そこで、本発明は、はんだ付けにおいて、基板の表面にドロスが付着することを抑制できるフラックス及び接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、ロジン(P)と、下記一般式(sa)で表される化合物(SA)と、活性剤(ただし、前記化合物(SA)に該当するものを除く)と、溶剤(ただし、前記化合物(SA)に該当するものを除く)と、を含有する、フラックスである。
【0010】
【化1】
[式(sa)中、R11は、ヒドロキシ基を有してもよい炭化水素基を表す。R12及びR13は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数5以下の炭化水素基、ヒドロキシ基又は水素原子である。mは、正の整数を表す。]
【0011】
第1の態様にかかるフラックスにおいて、前記ロジン(P)は、軟化点が100℃超であるロジン(PA)と、軟化点が100℃以下であるロジン(PB)と、を含むことが好ましい。
【0012】
第1の態様にかかるフラックスにおいて、前記ロジン(PA)と前記ロジン(PB)との混合比率は、(PA)/(PB)で表される質量比として、(PA)/(PB)=5/5~9/1であることが好ましい。
【0013】
第1の態様にかかるフラックスにおいて、前記ロジン(PA)は、アクリル酸変性水添ロジン及び重合ロジンからなる群より選択される少なくとも一種のロジン(P1)を含み、前記ロジン(PB)は、水添ロジンと、を含むことが好ましい。
【0014】
第1の態様にかかるフラックスにおいて、前記化合物(SA)の含有量は、前記ロジン(P)100質量部に対して1~60質量部であることが好ましい。
【0015】
第1の態様にかかるフラックスにおいて、前記活性剤は、下記一般式(a1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0016】
【化2】
[式(a1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子又は水素原子を表す。]
【0017】
第1の態様にかかるフラックスにおいて、前記活性剤は、アルカノールアミンを含むことが好ましい。
【0018】
第1の態様にかかるフラックスにおいて、前記溶剤は、エタノール及び2-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0019】
第1の態様にかかるフラックスにおいて、固形分濃度は、20質量%以下であることが好ましい。
【0020】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様にかかるフラックスで処理された基板の表面に、はんだ合金をはんだ付けすることにより、接合体を得る工程を含む、接合体の製造方法である。
【0021】
第2の態様にかかる接合体の接合方法において、前記はんだ合金は、SnとBiとを含むはんだ合金からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、はんだ付けにおいて、基板の表面にドロスが付着することを抑制できるフラックス及び接合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(フラックス)
第1の態様にかかるフラックスは、フローはんだ付け及びリフローはんだ付けのいずれにも用いることができるが、フローはんだ付けに好適に用いられる。
【0024】
以下、第1の態様にかかるフラックスをフローはんだ付け用フラックスに適用した場合の一実施形態について説明する。
前記の一実施形態のフラックスは、ロジン(P)と、化合物(SA)と、活性剤(ただし、前記化合物(SA)に該当するものを除く)と、溶剤(ただし、前記化合物(SA)に該当するものを除く)と、を含有する。化合物(SA)については、後述する。
【0025】
本明細書において、フラックスの固形分とは、フラックスから溶剤のみを除いた残りの全ての成分を意味する。
【0026】
<ロジン>
本実施形態のフラックスは、ロジン(P)を含有する。
本発明において「ロジン」とは、アビエチン酸を主成分とする、アビエチン酸とこの異性体との混合物を含む天然樹脂、及び天然樹脂を化学修飾したもの(ロジン誘導体と呼ぶ場合がある)を包含する。
【0027】
天然樹脂中のアビエチン酸含有量は、一例として、天然樹脂に対して、40質量%以上80質量%以下である。
本明細書において「主成分」とは、化合物を構成する成分のうち、その化合物中の含有量が40質量%以上の成分をいう。
【0028】
アビエチン酸の異性体の代表的なものとしては、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマル酸等が挙げられる。アビエチン酸の構造を以下に示す。
【0029】
【化3】
【0030】
前記「天然樹脂」としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等が挙げられる。
【0031】
本発明において「天然樹脂を化学修飾したもの(ロジン誘導体)」とは、前記「天然樹脂」に対して水素化、脱水素化、中和、アルキレンオキシド付加、アミド化、二量化及び多量化、エステル化並びにDiels-Alder環化付加からなる群より選択される1つ以上の処理を施したものを包含する。
【0032】
ロジン誘導体としては、例えば、精製ロジン、変性ロジン等が挙げられる。
変性ロジンとしては、水添ロジン、重合ロジン、重合水添ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン、ロジンエステル、酸変性水添ロジン、無水酸変性水添ロジン、酸変性不均化ロジン、無水酸変性不均化ロジン、フェノール変性ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物、ロジンアルコール、ロジンアミン、水添ロジンアルコール、ロジンエステル、水添ロジンエステル、ロジン石鹸、水添ロジン石鹸、酸変性ロジン石鹸等が挙げられる。
【0033】
ロジンアミンとしては、例えば、デヒドロアビエチルアミン、ジヒドロアビエチルアミン等が挙げられる。
ロジンアミンは、いわゆる不均化ロジンアミンを意味する。
デヒドロアビエチルアミン、ジヒドロアビエチルアミンの各構造を以下に示す。
【0034】
【化4】
【0035】
前記ロジン(P)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記ロジン(P)は、ロジン誘導体を含むことが好ましく、酸変性ロジン、重合ロジン、水添ロジン、酸変性水添ロジン、及びロジンエステルからなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましく、酸変性水添ロジン、重合ロジン、水添ロジン、及びロジンエステルからなる群より選択される1種以上を含むことが更に好ましく、酸変性水添ロジン及び水添ロジンからなる群より選択される1種以上を含むことが特に好ましい。
酸変性水添ロジンとしては、アクリル酸変性水添ロジンが好ましい。
【0036】
前記ロジン(P)は、軟化点が100℃超であるロジン(PA)と、軟化点が100℃以下であるロジン(PB)と、を含むことが好ましい。
【0037】
ロジンの軟化点は、環球法により測定することができる。環球法としては、例えば、JIS K 5902に記載の方法が挙げられる。
【0038】
前記ロジン(P)が前記ロジン(PA)を含有することにより、フラックス残渣のべたつきをより低減しやすくなる。
【0039】
前記ロジン(PA)の軟化点は、110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましく、125℃以上であることが特に好ましく、130℃以上であることが最も好ましい。
前記ロジン(PA)の軟化点が前記下限値以上であることにより、フラックス残渣のべたつきをより低減しやすくなる。
【0040】
前記ロジン(PA)の軟化点は、170℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることが更に好ましい。
【0041】
前記ロジン(PA)の軟化点は、100℃超170℃以下であってもよく、110℃以上160℃以下であることが好ましく、115℃以上160℃以下であることがより好ましく、120℃以上160℃以下であることが更に好ましく、125℃以上160℃以下が特に好ましく、130℃以上160℃以下であることが最も好ましい。
あるいは、前記ロジン(PA)の軟化点は、110℃以上150℃以下であることが好ましく、115℃以上150℃以下であることがより好ましく、120℃以上150℃以下であることが更に好ましく、125℃以上150℃以下が特に好ましく、130℃以上150℃以下であることが最も好ましい。
前記ロジン(PA)の軟化点が上記範囲内であることにより、フラックス残渣のべたつきをより低減しやすくなる。
【0042】
前記ロジン(P)が前記ロジン(PB)を含有することにより、フラックスの流動性をより高めやすくなる。これにより、はんだ付け不良をより抑制しやすくなる。
【0043】
前記ロジン(PB)の軟化点は、96℃以下であることが好ましく、93℃以下であることがより好ましい。
前記ロジン(PB)の軟化点が前記上限値以下であることにより、フラックスの流動性をより高めやすくなる。これにより、はんだ付け不良をより抑制しやすくなる。
【0044】
前記ロジン(PB)の軟化点は、60℃以上であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが更に好ましい。
【0045】
前記ロジン(PB)の軟化点は、60℃以上100℃以下であってもよく、60℃以上96℃以下であることが好ましく、65℃以上96℃以下であることがより好ましく、70℃以上96℃以下であることが更に好ましい。
あるいは、前記ロジン(PB)の軟化点は、60℃以上93℃以下であることが好ましく、65℃以上93℃以下であることがより好ましく、70℃以上93℃以下であることが更に好ましい。
前記ロジン(PB)の軟化点が上記範囲内であることにより、フラックスの流動性をより高めやすくなる。これにより、はんだ付け不良をより抑制しやすくなる。
【0046】
前記ロジン(PA)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記ロジン(PA)は、酸変性水添ロジン及び重合ロジンからなる群より選択される少なくとも1種のロジン(P1)を含むことが好ましく、前記ロジン(P1)からなるものであってもよい。
【0047】
前記ロジン(PB)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記ロジン(PB)としては、例えば、水添ロジン、ロジンエステル等が挙げられる。
フラックスの流動性を高める観点から、前記ロジン(PB)は、水添ロジンを含むことが好ましく、水添ロジンからなるものであってもよい。
フラックスの耐熱性を高める観点から、前記ロジン(PB)は、ロジンエステルを含むことが好ましい。
【0048】
前記フラックス中の、前記ロジン(P)の含有量は、前記フラックスの総量(100質量%)に対して、2質量%以上30質量%以下であることが好ましく、4質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、6質量%以上15質量%以下であることが更に好ましい。
【0049】
前記フラックスの固形分において、前記ロジン(P)の含有量は、前記固形分の総量(100質量%)に対して、15質量%以上95質量%以下であることが好ましく、30質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、45質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。
【0050】
前記ロジン(P)が、前記ロジン(PA)と、前記ロジン(PB)と、を含む場合、前記ロジン(PA)と前記ロジン(PB)との混合比率は、(PA)/(PB)で表される質量比として、4/6~9/1が好ましく、5/5~9/1がより好ましく、6/4~9/1が更に好ましい。
前記質量比が前記の好ましい範囲内であることにより、フラックス残渣のべたつきをより低減しやすくなる。
【0051】
<化合物(SA)>
本実施形態のフラックスは、下記一般式(sa)で表される化合物(SA)を含有する。
【0052】
【化5】
[式(sa)中、R11は、ヒドロキシ基を有してもよい炭化水素基を表す。R12及びR13は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数5以下の炭化水素基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。mは、正の整数を表す。]
【0053】
11における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。前記脂肪族炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、通常は飽和であることが好ましい。
前記脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
前記直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。
【0054】
11における直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられ、エチレン基[-(CH-]が好ましい。
11における分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基等のアルキルアルキレン基等が挙げられ、-CH-CH(CH)-が好ましい。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。前記直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、前記直鎖状の脂肪族炭化水素基又は前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0055】
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。前記モノシクロアルカンとしては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、前記ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~12のものが好ましく、具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0056】
11における2価の炭化水素基としての芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。
前記芳香族炭化水素基は、炭素数が3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20がさらに好ましく、6~15が特に好ましく、6~10が最も好ましい。ただし、前記炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基が有する芳香環として、具体的には、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環;芳香族炭化水素環と芳香族複素環が縮合した縮合環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基として、具体的には、前記芳香族炭化水素環から水素原子を2個除いた基(アリーレン基);前記芳香族炭化水素環から水素原子を1個除いた基(アリール基)の水素原子の1個がアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1個除いた基)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0057】
11は、上述の炭化水素基において、水素原子がヒドロキシ基に置換したものであってもよい。R11は、ヒドロキシ基以外の置換基を有してもよい。前記ヒドロキシ基以外の置換基としては、カルボニル基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
ヒドロキシ基を有するR11としては、-CH-CH(OH)-CH-が好ましい。
【0058】
化合物(SA)において、複数存在するR11は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0059】
前記一般式(sa)中、R12は、R12が置換基を有してもよい炭素数5以下の炭化水素基である場合、R12は、R121O-であることが好ましい。R121は、置換基を有してもよい炭素数5以下の炭化水素基を表す。
121における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよい。前記脂肪族炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、通常は飽和であることが好ましい。
前記脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
121における炭化水素基は、炭素数が1~3であることが好ましく、1~2がより好ましく、1が最も好ましい。
これらの中でも、R12は、ヒドロキシ基であることが好ましい。
【0060】
前記一般式(sa)中、R13は、R13が置換基を有してもよい炭素数5以下の炭化水素基である場合、R13は、-C(=O)-R131であることが好ましい。R131は、置換基を有してもよい炭素数5以下の炭化水素基を表す。
131における炭化水素基としては、R121における炭化水素基と同様のものが挙げられる。
131における炭化水素基は、炭素数が1~3であることが好ましく、1~2がより好ましく、1が最も好ましい。
これらの中でも、R13は、水素原子であることが好ましい。
【0061】
上記一般式(sa)において、mは、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、1~300であってもよく、1~200が好ましく、2~100がより好ましく、2~70が更に好ましく、2~40が特に好ましく、2~20が最も好ましい。
【0062】
上記一般式(sa)において、R11がエチレン基である場合、mは、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、2~100が好ましく、2~70がより好ましく、2~40が更に好ましく、2~20が特に好ましい。
【0063】
上記一般式(sa)において、R11が-CH-CH(CH)-である場合、mは、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、2~100が好ましく、2~70がより好ましく、2~40が更に好ましく、2~20が特に好ましい。
【0064】
上記一般式(sa)において、R11が-CH-CH(OH)-CH-である場合、mは、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、1~15が好ましく、1~7がより好ましく、1~3が更に好ましい。
【0065】
本実施形態にかかるフラックスは、単一の化合物(SA)を含んでもよいし、mが異なる2種以上の化合物(SA)を含んでもよい。本実施形態にかかるフラックスが2種以上の化合物(SA)を含む場合、化合物(SA)の平均分子量は、以下のようなものであってもよい。
【0066】
本明細書において、「平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって得られた、重量平均分子量を意味する。本明細書において、「平均分子量」は、PEG換算分子量である。
この方法により測定される平均分子量は、フラックスに含まれる全ての化合物(SA)に基づいて算出された重量平均分子量である。
【0067】
化合物(SA)の平均分子量としては、100~4000が好ましく、100~3600がより好ましく、100~1600が更に好ましく、100~800が特に好ましい。
【0068】
11がエチレン基である場合、R11がエチレン基である化合物(SA)の平均分子量としては、100~4000が好ましく、100~2000がより好ましく、100~1000が更に好ましく、100~800が特に好ましい。
前記平均分子量が上記範囲内であることにより、基板の表面にドロスが付着することをより抑制しやすくなるとともに、フラックス残渣のべたつきをより低減しやすくなる。
【0069】
11が-CH-CH(CH)-である場合、R11が-CH-CH(CH)-である化合物(SA)の平均分子量としては、100~4000が好ましく、300~4000がより好ましい。
【0070】
11が-CH-CH(OH)-CH-である場合、R11が-CH-CH(OH)-CH-である化合物(SA)の平均分子量としては、100~1000が好ましく、200~600がより好ましく、200~350が更に好ましい。
【0071】
化合物(SA)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体、エチレンオキサイド-レゾルシン共重合体等が挙げられる。前記共重合体としては、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれでもよい。
【0072】
化合物(SA)がポリエチレングリコールである場合、化合物(SA)の凝固点は、-100℃以上60℃以下であることが好ましく、-70℃以上60℃以下であることがより好ましく、-70℃以上48℃以下であることが更に好ましく、-70℃以上30℃以下であることが特に好ましく、-70℃以上25℃以下であることが最も好ましい。
【0073】
化合物(SA)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
化合物(SA)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリグリセリンからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールからなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましい。
化合物(SA)がポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールからなる群より選択される1種以上を含むことにより、基板の表面にドロスが付着することをより抑制しやすくなるとともに、フラックス残渣のべたつきをより低減しやすくなる。
【0074】
前記フラックス中の、化合物(SA)の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましい。
前記フラックスの固形分において、化合物(SA)の含有量は、前記固形分の総量(100質量%)に対して、0.7質量%以上であることが好ましく、3.4質量%以上であることがより好ましく、6.7質量%以上であることが更に好ましい。
化合物(SA)の含有量が前記下限値以上であることにより、はんだ付けにおいて、基板の表面にドロスが付着することをより抑制しやすくなる。
【0075】
前記フラックス中の、化合物(SA)の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、6質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、4質量%以下であることが更に好ましく、3質量%以下であることが特に好ましく、2質量%以下であることが最も好ましく、1.5質量%以下であってもよい。
前記フラックス中の、化合物(SA)の含有量は、前記固形分の総量(100質量%)に対して、30質量%以下であることが好ましく、26質量%以下であることがより好ましく、22質量%以下であることが更に好ましく、17質量%以下であることが特に好ましく、12質量%以下であることが最も好ましく、9.7質量%以下であってもよい。
化合物(SA)の含有量が前記上限値以下であることにより、フラックス残渣のべたつきをより低減しやすくなる。
【0076】
前記フラックス中の、化合物(SA)の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上6質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上3質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以上2質量%以下であることが特に好ましく、1質量%以上1.5質量%以下であることが最も好ましい。
前記フラックス中の、化合物(SA)の含有量は、前記固形分の総量(100質量%)に対して、0.7質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3.4質量%以上22質量%以下であることがより好ましく、6.7質量%以上22質量%以下であることが更に好ましく、6.7質量%以上17質量%以下であることが特に好ましく、6.7質量%以上9.7質量%以下であることが最も好ましい。
化合物(SA)の含有量が前記の好ましい範囲の下限値以上であることにより、基板の表面にドロスが付着することをより抑制しやすくなり、前記の好ましい範囲の上限値以下であることにより、フラックス残渣のべたつきをより低減しやすくなる。
【0077】
前記フラックス中の、化合物(SA)の含有量は、ロジン(P)100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが更に好ましい。化合物(SA)の含有量が前記下限値以上であることにより、はんだ付けにおいて、基板の表面にドロスが付着することをより抑制しやすくなる。
【0078】
前記フラックス中の、化合物(SA)の含有量は、ロジン(P)100質量部に対して、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることが更に好ましく、30質量部以下であることが特に好ましく、20質量部以下であることが最も好ましく、15質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよく、5質量部以下であってもよく、1質量部以下であってもよい。化合物(SA)の含有量が前記上限値以下であることにより、フラックス残渣のべたつきをより低減しやすくなる。
【0079】
前記フラックス中の、化合物(SA)の含有量は、ロジン(P)100質量部に対して
1質量部以上60質量部以下が好ましく、5質量部以上40質量部以下がより好ましく、10質量部以上30質量部以下が更に好ましく、10質量部以上20質量部以下が特に好ましく、10質量部以上15質量部以下が最も好ましい。
化合物(SA)の含有量が前記の好ましい範囲の下限値以上であることにより、はんだ付けにおいて、基板の表面にドロスが付着することをより抑制しやすくなり、前記の好ましい範囲の上限値以下であることにより、フラックス残渣のべたつきをより低減しやすくなる。
【0080】
<活性剤>
本実施形態にかかるフラックスは、活性剤(ただし、前記化合物(SA)に該当するものを除く)を含有する。
活性剤としては、有機酸、アミン、ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0081】
≪有機酸≫
有機酸としては、例えば、カルボン酸、有機スルホン酸等が挙げられる。カルボン酸としては、例えば、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、イソペラルゴン酸、カプリン酸、カプロレイン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、ウンデカン酸、リンデル酸、トリデカン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ヒラゴン酸、ヒドノカーピン酸、マーガリン酸、イソステアリン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、モロクチン酸、エレオステアリン酸、タリリン酸、バクセン酸、リミノレイン酸、ベルノリン酸、ステルクリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、酒石酸等が挙げられる。
芳香族カルボン酸としては、例えば、サリチル酸、ジブチルアニリンジグリコール酸、テレフタル酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、フェニルコハク酸、フタル酸、安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジエチルグルタル酸、2-キノリンカルボン酸、3-ヒドロキシ安息香酸、p-アニス酸等が挙げられる。
また、カルボン酸としては、イソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0082】
また、カルボン酸としては、ダイマー酸、トリマー酸、ダイマー酸に水素を添加した水添物である水添ダイマー酸、トリマー酸に水素を添加した水添物である水添トリマー酸等が挙げられる。
ダイマー酸、トリマー酸としては、例えば、オレイン酸とリノール酸との反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸との反応物であるトリマー酸、アクリル酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とメタクリル酸との反応物であるダイマー酸、アクリル酸とメタクリル酸との反応物であるトリマー酸、オレイン酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸の反応物であるトリマー酸、リノール酸の反応物であるダイマー酸、リノール酸の反応物であるトリマー酸、リノレン酸の反応物であるダイマー酸、リノレン酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とオレイン酸との反応物であるダイマー酸、アクリル酸とオレイン酸との反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノール酸との反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノール酸との反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノレン酸との反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノレン酸との反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とオレイン酸との反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とオレイン酸との反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノール酸との反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノール酸との反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノレン酸との反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノレン酸との反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノレン酸との反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノレン酸との反応物であるトリマー酸、リノール酸とリノレン酸との反応物であるダイマー酸、リノール酸とリノレン酸との反応物であるトリマー酸、上述した各ダイマー酸の水添物である水添ダイマー酸、上述した各トリマー酸の水添物である水添トリマー酸等が挙げられる。
例えば、オレイン酸とリノール酸との反応物であるダイマー酸は、炭素数が36の2量体である。また、オレイン酸とリノール酸との反応物であるトリマー酸は、炭素数が54の3量体である。
【0083】
また、カルボン酸としては、下記一般式(a1)で表される化合物が挙げられる。
【0084】
【化6】
[式(a1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子又は水素原子を表す。]
【0085】
、R、R及びRにおける炭化水素基としては、置換基を有してもよい炭素数1~20の鎖状炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~20の脂環式炭化水素基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。
前記鎖状炭化水素基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。前記鎖状炭化水素基は、飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基であり、飽和炭化水素基であることが好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
、R、R及びRにおける炭化水素基が有し得る置換基としては、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アシル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0086】
前記炭化水素基としては、置換基を有してもよい炭素数1~5の鎖状炭化水素基又はカルボキシ基であることが好ましい。前記鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。前記炭化水素基としては、カルボキシ基が好ましい。
上記一般式(a1)で表される化合物としては、例えば、ピコリン酸、ジピコリン酸、3-ヒドロキシピコリン酸等が挙げられる。
【0087】
上記一般式(a1)で表される化合物は、ピコリン酸であることが好ましい。ピコリン酸は、上記一般式(a1)において、R、R、R及びRが水素原子である化合物である。
【0088】
あるいは、上記一般式(a1)で表される化合物は、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基であることが好ましく、3-ヒドロキシピコリン酸であることがより好ましい。
3-ヒドロキシピコリン酸は、上記一般式(a1)において、Rがヒドロキシ基であり、かつ、R、R及びRが水素原子である化合物である。
【0089】
有機スルホン酸としては、例えば、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸等が挙げられる。脂肪族スルホン酸としては、例えば、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸等が挙げられる。
【0090】
アルカンスルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1-プロパンスルホン酸、2-プロパンスルホン酸、1-ブタンスルホン酸、2-ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等が挙げられる。
アルカノールスルホン酸としては、例えば、2-ヒドロキシエタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシペンタン-1-スルホン酸、1-ヒドロキシプロパン-2-スルホン酸、3-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸、4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシヘキサン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシデカン-1-スルホン酸および2-ヒドロキシドデカン-1-スルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸としては、例えば、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸およびジフェニルアミン-4-スルホン酸等が挙げられる。
【0091】
有機酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機酸は、脂肪族カルボン酸及び上記一般式(a1)で表される化合物からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
脂肪族カルボン酸は、脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
上記一般式(a1)で表される化合物としては、ピコリン酸及びジピコリン酸からなる群より選択される1種以上が好ましく、ピコリン酸がより好ましい。
【0092】
前記フラックス中の、有機酸の合計の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上6質量%以下であることが更に好ましい。
【0093】
前記フラックスの固形分において、有機酸の含有量は、前記固形分の総量(100質量%)に対して、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上35質量%以下であることが更に好ましい。
【0094】
前記フラックス中の、上記一般式(a1)で表される化合物の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.05質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上0.3質量%以下であることが更に好ましい。
【0095】
前記フラックスの固形分において、上記一般式(a1)で表される化合物の含有量は、前記固形分の総量(100質量%)に対して、0.3質量%以上7質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることが更に好ましい。
【0096】
≪アミン≫
アミンとしては、例えば、ロジンアミン、アゾール類、グアニジン類、アルキルアミン化合物、アミノアルコール化合物等が挙げられる。ロジンアミンとしては、<ロジン>において例示したものが挙げられる。
【0097】
アゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-s-トリアジン、エポキシ-イミダゾールアダクト、2-メチルベンゾイミダゾール、2-オクチルベンゾイミダゾール、2-ペンチルベンゾイミダゾール、2-(1-エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2-ノニルベンゾイミダゾール、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、1,2,4-トリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6’-tert-ブチル-4’-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1-(1’,2’-ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2,3-ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-[(2-エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6-ビス[(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]-4-メチルフェノール、5-メチルベンゾトリアゾール、5-フェニルテトラゾール等が挙げられる。
【0098】
グアニジン類としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。
【0099】
アルキルアミン化合物としては、例えば、エチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、シクロヘキシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン等が挙げられる。
【0100】
アミノアルコール化合物としては、例えば、1-アミノ-2-プロパノール、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等のアルカノールアミンが挙げられる。
【0101】
アミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アミンとしては、アミノアルコール化合物が好ましく、アルカノールアミンがより好ましく1-アミノ-2-プロパノールが更に好ましい。
【0102】
前記フラックス中の、アミンの含有量は、前記フラックスの総量(100質量%)に対して、0.05質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
前記フラックスの固形分において、アミンの含有量は、前記固形分の総量(100質量%)に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0103】
≪ハロゲン化合物≫
ハロゲン化合物としては、例えば、アミンハロゲン化水素酸塩、アミンハロゲン化水素酸塩以外の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0104】
アミンハロゲン化水素酸塩は、アミンとハロゲン化水素とを反応させた化合物である。
ここでのアミンとしては、脂肪族アミン、アゾール類、グアニジン類等が挙げられる。ハロゲン化水素としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素の水素化物が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等が挙げられる。
グアニジン類及びアゾール類としては、≪アミン≫において上述したものが挙げられる。
【0105】
より具体的には、アミンハロゲン化水素酸塩としては、例えば、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ヘキサデシルアミン臭化水素酸塩、ステアリルアミン臭化水素酸塩、エチルアミン臭化水素酸塩、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、エチルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、ジエチルアニリン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、2-エチルヘキシルアミン臭化水素酸塩、ピリジン臭化水素酸塩、イソプロピルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン臭化水素酸塩、ジメチルアミン臭化水素酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、ロジンアミン臭化水素酸塩、2-エチルヘキシルアミン塩酸塩、イソプロピルアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、2-ピペコリン臭化水素酸塩、1,3-ジフェニルグアニジン塩酸塩、ジメチルベンジルアミン塩酸塩、ヒドラジンヒドラート臭化水素酸塩、ジメチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、トリノニルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアニリン臭化水素酸塩、2-ジエチルアミノエタノール臭化水素酸塩、2-ジエチルアミノエタノール塩酸塩、塩化アンモニウム、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン臭化水素酸塩、トリエチルアミン塩酸塩、ヒドラジン一塩酸塩、ヒドラジン二塩酸塩、ヒドラジン一臭化水素酸塩、ヒドラジン二臭化水素酸塩、ピリジン塩酸塩、アニリン臭化水素酸塩、ブチルアミン塩酸塩、へキシルアミン塩酸塩、n-オクチルアミン塩酸塩、ドデシルアミン塩酸塩、ジメチルシクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、エチレンジアミン二臭化水素酸塩、ロジンアミン臭化水素酸塩、2-フェニルイミダゾール臭化水素酸塩、4-ベンジルピリジン臭化水素酸塩、L-グルタミン酸塩酸塩、N-メチルモルホリン塩酸塩、ベタイン塩酸塩、2-ピペコリンヨウ化水素酸塩、シクロヘキシルアミンヨウ化水素酸塩、1,3-ジフェニルグアニジンフッ化水素酸塩、ジエチルアミンフッ化水素酸塩、2-エチルヘキシルアミンフッ化水素酸塩、シクロヘキシルアミンフッ化水素酸塩、エチルアミンフッ化水素酸塩、ロジンアミンフッ化水素酸塩、シクロヘキシルアミンテトラフルオロホウ酸塩、及びジシクロヘキシルアミンテトラフルオロホウ酸塩等が挙げられる。
【0106】
また、ハロゲン化合物としては、例えば、アミンとテトラフルオロホウ酸(HBF)とを反応させた塩、アミンと三フッ化ホウ素(BF)とを反応させた錯体も用いることができる。
前記錯体としては、例えば、三フッ化ホウ素ピぺリジン等が挙げられる。
【0107】
アミンハロゲン化水素酸塩以外の有機ハロゲン化合物としては、例えば、ハロゲン化脂肪族化合物が挙げられる。ハロゲン化脂肪族炭化水素基は、脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたものをいう。
ハロゲン化脂肪族化合物としては、ハロゲン化脂肪族アルコール、ハロゲン化複素環式化合物が挙げられる。
【0108】
ハロゲン化脂肪族アルコールとしては、例えば、1-ブロモ-2-プロパノール、3-ブロモ-1-プロパノール、3-ブロモ-1,2-プロパンジオール、1-ブロモ-2-ブタノール、1,3-ジブロモ-2-プロパノール、2,3-ジブロモ-1-プロパノール、1,4-ジブロモ-2-ブタノール、trans-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール等が挙げられる。
【0109】
ハロゲン化複素環式化合物としては、例えば、下記一般式(1H)で表される化合物が挙げられる。
【0110】
61-(R62 (1H)
[式中、R61は、n価の複素環式基を表す。R62は、ハロゲン化脂肪族炭化水素基を表す。]
【0111】
61における、n価の複素環式基の複素環としては、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された環構造が挙げられる。この複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。この複素環は、3~10員環であることが好ましく、5~7員環であることがより好ましい。この複素環としては、例えば、イソシアヌレート環などが挙げられる。
62における、ハロゲン化脂肪族炭化水素基は、炭素数1~10が好ましく、炭素数2~6がより好ましく、炭素数3~5がさらに好ましい。また、R62は、臭素化脂肪族炭化水素基、塩素化脂肪族炭化水素基が好ましく、臭素化脂肪族炭化水素基がより好ましく、臭素化飽和脂肪族炭化水素基がさらに好ましい。
ハロゲン化複素環式化合物としては、例えば、トリス-(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0112】
また、アミンハロゲン化水素酸塩以外の有機ハロゲン化合物としては、例えば、2-ヨード安息香酸、3-ヨード安息香酸、2-ヨードプロピオン酸、5-ヨードサリチル酸、5-ヨードアントラニル酸等のヨウ化カルボキシル化合物;2-クロロ安息香酸、3-クロロプロピオン酸等の塩化カルボキシル化合物;2,3-ジブロモプロピオン酸、2,3-ジブロモコハク酸、2-ブロモ安息香酸等の臭素化カルボキシル化合物等のハロゲン化カルボキシル化合物が挙げられる。
ハロゲン系活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0113】
<溶剤>
本実施形態にかかるフラックスに含まれる溶剤は、前記化合物(SA)に該当しないものである。溶剤としては、例えば、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1,2-ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,2′-オキシビス(メチレン)ビス(2-エチル-1,3-プロパンジオール)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、1,2,6-トリヒドロキシヘキサン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルプロピレントリグルコール、ブチルプロピレントリグルコール、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0114】
溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記溶剤は、予備加熱での揮発性を高める観点から、沸点が100℃以下の溶剤を含むことが好ましい。前記沸点が100℃以下の溶剤の沸点は、50℃以上であってもよいし、60℃以上であってもよいし、70℃以上であってもよい。前記沸点が100℃以下の溶剤は、特定活性剤の溶解性の観点から、アルコール系溶剤であることが好ましい。
前記アルコール系溶剤は、エタノール及び2-プロパノールからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0115】
前記フラックス中の、前記溶剤の含有量は、前記フラックスの総量(100質量%)に対して、60質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上95質量%以下であることが更に好ましい。
【0116】
<その他成分>
本実施形態におけるフラックスは、ロジン、活性剤及び溶剤以外に、必要に応じてその他成分を含んでもよい。
その他成分としては、チキソ剤、ロジン以外の樹脂成分、金属不活性化剤、界面活性剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、着色剤等が挙げられる。
【0117】
≪ロジン以外の樹脂成分≫
ロジン系樹脂以外の樹脂成分としては、例えば、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、変性キシレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル-ポリエチレン共重合樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
変性テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂等が挙げられる。変性テルペンフェノール樹脂としては、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。変性スチレン樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等が挙げられる。変性キシレン樹脂としては、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、ポリオキシエチレン付加キシレン樹脂等が挙げられる。
【0118】
≪金属不活性化剤≫
金属不活性化剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、窒素化合物等が挙げられる。
ここでいう「金属不活性化剤」とは、ある種の化合物との接触により金属が劣化することを防止する性能を有する化合物をいう。
【0119】
ヒンダードフェノール系化合物とは、フェノールのオルト位の少なくとも一方に嵩高い置換基(例えばt-ブチル基等の分岐状又は環状アルキル基)を有するフェノール系化合物をいう。
ヒンダードフェノール系化合物としては、特に限定されず、例えば、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,2’-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-エチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N’-ビス[2-[2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)エチルカルボニルオキシ]エチル]オキサミド、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、下記化学式で表される化合物等が挙げられる。
【0120】
【化7】
(式中、Zは、置換されてもよいアルキレン基である。R81及びR82は、それぞれ独立して、置換されてもよい、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基である。R83及びR84は、それぞれ独立して、置換されてもよいアルキル基である。)
【0121】
金属不活性化剤における窒素化合物としては、例えば、ヒドラジド系窒素化合物、アミド系窒素化合物、トリアゾール系窒素化合物、メラミン系窒素化合物等が挙げられる。
【0122】
ヒドラジド系窒素化合物としては、ヒドラジド骨格を有する窒素化合物であればよく、ドデカン二酸ビス[N2-(2ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、デカンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド、N-サリチリデン-N’-サリチルヒドラジド、m-ニトロベンズヒドラジド、3-アミノフタルヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド、オキザロビス(2-ヒドロキシ-5-オクチルベンジリデンヒドラジド)、N’-ベンゾイルピロリドンカルボン酸ヒドラジド、N,N’-ビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン等が挙げられる。
【0123】
アミド系窒素化合物としては、アミド骨格を有する窒素化合物であればよく、N,N’-ビス{2-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシル]エチル}オキサミド等が挙げられる。
【0124】
トリアゾール系窒素化合物としては、トリアゾール骨格を有する窒素化合物であればよく、N-(2H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)サリチルアミド、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール等が挙げられる。
【0125】
メラミン系窒素化合物としては、メラミン骨格を有する窒素化合物であればよく、メラミン、メラミン誘導体等が挙げられる。より具体的には、例えば、トリスアミノトリアジン、アルキル化トリスアミノトリアジン、アルコキシアルキル化トリスアミノトリアジン、メラミン、アルキル化メラミン、アルコキシアルキル化メラミン、N2-ブチルメラミン、N2,N2-ジエチルメラミン、N,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン等が挙げられる。
金属不活性化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0126】
≪界面活性剤≫
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪族アルコールポリオキシエチレン付加体、芳香族アルコールポリオキシエチレン付加体、多価アルコールポリオキシエチレン付加体、脂肪族アルコールポリオキシプロピレン付加体、芳香族アルコールポリオキシプロピレン付加体、多価アルコールポリオキシプロピレン付加体等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、末端ジアミンポリエチレングリコール、末端ジアミンポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体、脂肪族アミンポリオキシエチレン付加体、芳香族アミンポリオキシエチレン付加体、多価アミンポリオキシエチレン付加体、多価アミンポリオキシプロピレン付加体等が挙げられる。
【0127】
上記以外の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアセチレングリコール類、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンエステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミド等が挙げられる。
界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0128】
前記フラックス中の、固形分の含有量は、前記フラックスの総量(100質量%)に対して、20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
固形分の含有量が上記範囲内であることにより、フラックスは、フローはんだ付けにより用いやすくなる。
【0129】
以上説明した一実施形態にかかるフラックスは、ロジンと、化合物(SA)と、活性剤と、溶剤とを含有し、フローはんだ付けに好適なものである。
フローはんだ付けにおいては、溶融したはんだは酸化物(ドロス)を生じやすい。基板に対して溶融はんだを接触させると、このドロスが基板に付着する場合がある。本実施形態にかかるフラックスは、フローはんだ付けにおいて、はんだ付け後の基板の表面にドロスが付着することを抑制できる。
【0130】
特に、SnとBiとを含有するはんだを用いた場合、Biは酸化しやすいため、その溶融はんだの表面にドロスが形成されやすくなる。本実施形態にかかるフラックスは、Biを含有するはんだを用いた場合であっても、はんだ付け後の基板の表面にドロスが付着することを抑制できる。加えて、本実施形態にかかるフラックスを用いてはんだ付けを行うことにより、絶縁信頼性が良好な接合体を得ることができる。
【0131】
上記実施形態にかかるフラックスは、化合物(SA)及びロジンを組み合わせて含有することにより、はんだ付け後の基板の表面にドロスが付着することを抑制できるとともに、フラックス残渣のべたつきを低減することができる。
【0132】
(接合体の製造方法)
第2の態様にかかる接合体の製造方法は、上記の第1の態様にかかるフラックスで処理された基板の表面に、はんだ合金をはんだ付けすることにより、接合体を得る工程を含む。
以下、第2の態様にかかる接合体の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態にかかる接合体の製造方法は、部品取付け工程、フラックス塗布工程、予備加熱工程及びはんだ付け工程を、この順に有する方法である。
【0133】
部品取付け工程においては、部品を基板に取り付ける。
基板としては、例えば、プリント配線基板などが挙げられる。
部品としては、例えば、集積回路、トランジスタ、ダイオード、抵抗器、及びコンデンサ等が挙げられる。
【0134】
フラックス塗布工程においては、部品を搭載した基板のはんだ付け面に、上記実施形態のフラックスを塗布する。
フラックスの塗布装置としては、スプレーフラクサー、および発泡式フラクサー等が挙げられる。これらの中でも、塗布量の安定性の観点から、スプレーフラクサーが好ましい。
フラックスの塗布量は、はんだ付け性の観点から、30~180mL/mであることが好ましく、40~150mL/mであることがより好ましく、50~120mL/mであることが特に好ましい。
【0135】
予備加熱工程においては、部品を搭載した基板を予め加熱する。予備加熱工程における、基板を加熱する温度としては、80~130℃であることが好ましく、90~120℃であることがより好ましい。
【0136】
はんだ付け工程においては、部品を搭載した基板のはんだ付け面を、はんだ合金を溶融させた溶融はんだに接触させる。
はんだ付け面に溶融はんだを接触させる方法としては、溶融はんだを基板に接触できる方法であればよく、特に限定されない。このような方法としては、例えば、噴流方式、浸漬方式等が挙げられる。
噴流方式は、噴流する溶融はんだに、部品を搭載した基板のはんだ付け面を接触させる方法である。浸漬方式は、静止した溶融はんだの液面に、部品を搭載した基板のはんだ付け面を接触させる方法である。
【0137】
はんだ合金としては、公知の組成のはんだ合金を使用することができる。
はんだ合金は、Sn単体のはんだ、又は、Sn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Bi系、Sn-In系等、あるいは、これらの合金にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだ合金であってもよい。
はんだ合金は、Sn-Pb系、あるいは、Sn-Pb系にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだ合金であってもよい。
はんだ合金は、Pbを含まないはんだ合金が好ましく、SnとBiとを含むはんだ合金であることがより好ましい。
【0138】
はんだ付け工程における、はんだ付けの条件は、はんだの融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、Sn-Ag-Cu系のはんだ合金を用いる場合には、溶融はんだの温度は、230~280℃であることが好ましく、250~270℃であることがより好ましい。あるいは、Sn-Bi系のはんだ合金(SnとBiとを含むはんだ合金)を用いる場合には、溶融はんだの温度は、170~220℃であることが好ましく、180~200℃であることがより好ましい。
【0139】
以上説明した本実施形態にかかる接合体の製造方法によれば、はんだ付け後の基板の表面にドロスが付着することを抑制できる。本実施形態にかかる接合体の製造方法によれば、SnとBiとを含むはんだ合金を用いる場合であっても、基板の表面にドロスが付着することを抑制できる。このため、接合強度が高められた接合体を製造することができる。加えて、ショート及び絶縁性低下を起こしにくい接合体を製造することができる。
【実施例0140】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0141】
<フラックスの調製>
(実施例1~27、比較例1~6)
表2~7に示す組成で実施例及び比較例の各フラックスを調合した。
使用した原料を以下に示した。
【0142】
用いたロジンの種類、及び軟化点は以下の通りである。
ロジン(P):
アクリル酸変性水添ロジン(軟化点130℃)
重合ロジン(軟化点139℃)
水添ロジン(軟化点74℃)
ロジンエステル(軟化点90℃)
【0143】
上記のロジンの軟化点は、JIS K 5902の記載の環球法により測定した。軟化点が80℃以下のロジンは、水浴で測定した。また、軟化点が80℃を超えるロジンは、グリセリン浴で測定した。各ロジンについて、測定は2回行った。上記の軟化点は、2回の測定値の平均値である。
【0144】
化合物(SA):ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリグリセリンを用いた。
PEGは、一般式(sa)において、R11Oが、-(CH-O-である。
PPGは、一般式(sa)において、R11Oが、-CH-CH(CH)-O-である。
ポリグリセリンは、一般式(sa)において、R11Oが、-CH-CH(OH)-CH-O-である。
PEG、PPG及びポリグリセリンにおいて、R12はヒドロキシ基であり、R13は水素原子である。
【0145】
具体的には、以下のものを用いた。
PEGとしては、PEG200(三洋化成工業社製)、PEG400(三洋化成工業社製)、PEG600(三洋化成工業社製)、PEG1500(三洋化成工業社製)、PEG1540(三洋化成工業社製)、PEG4000S(三洋化成工業社製)を用いた。
PPGとしては、PPG400(和光純薬製)、PPG1000(和光純薬製)、PPG3000(和光純薬製)を用いた。
ポリグリセリンとしては、3~6量体の混合物を用いた。
【0146】
比較化合物:ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ステアリン酸ポリエチレングリコール、ジグリセリンモノエステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート
各比較化合物の化学式は、それぞれ、以下の通りであり、一般式(sa)に該当しない。
【0147】
ポリオキシエチレンベヘニルエーテルは、下記式(1)で表される化合物である。
【0148】
【化8】
[式(1)中、n1は、25~35である。]
【0149】
ステアリン酸ポリエチレングリコールは、下記式(2)で表される化合物である。
【0150】
【化9】
[式(2)中、n2は、100~150である。
【0151】
ジグリセリンモノエステルは、下記式(3)で表される化合物である。
【0152】
【化10】
【0153】
ソルビタンモノラウレートは、下記式(4)で表される化合物である。
【0154】
【化11】
【0155】
ソルビタンモノステアレートは、下記式(5)で表される化合物である。
【0156】
【化12】
【0157】
活性剤:ピコリン酸、1-アミノ-2-プロパノール、アジピン酸
【0158】
溶剤:2-プロパノール、エタノール
【0159】
上記の化合物(SA)及び比較化合物について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、平均分子量を測定した。平均分子量は、PEG換算分子量である。GPC測定において用いた機器、測定の条件は、以下の通りであった。測定結果を表1に示す。表1中、Mwは重量平均分子量をを表す。また、各PEGの凝固点を合わせて示す。
【0160】
分析装置:東ソー製、EcoSEC HLC-8320GPC
移動相:テトラヒドロフラン
カラム:東ソー製TSKguardcolumn HXL、東ソー製TSKgelG2000HXL、東ソー製TSKgel G1000HXL
カラム温度:40℃
流速:1.0(mL/min)、リファレンス1/3
検出器:RI、Pol(+)、Res(0.5s)
注入量:50μl
【0161】
【表1】
【0162】
<溶融はんだの調製>
母合金として、Biが58質量%、残部がSnの合金からなるインゴットを用意した。このインゴットを溶解して、溶融はんだを調製した。
【0163】
下記の<評価>に記載した評価方法にしたがって、≪ドロス付着の抑制能の評価≫、≪フラックス残渣のべたつきの評価≫を行った。これらの評価結果を表2~7に示した。
【0164】
<評価>
≪ドロス付着の抑制能の評価≫
(1)評価方法
各例のフラックス0.15mLを、ガラス基板(50mm×50mm、厚さ0.7mm)に塗布した。得られた基板を、100℃で5分間、加熱して乾燥させて、前処理した基板を得た。
次いで、前処理した基板を、大気雰囲気で、小型噴流はんだ槽の溶融はんだに5秒間浸漬した。
基板におけるドロスの有無を目視で確認し、以下の判定基準に基づいて評価を行った。
【0165】
(2)判定基準
A:ドロスが確認されなかった。
B:わずかにドロスが確認された。
C:少量のドロスが確認された。
D:大量のドロスが確認された。
評価結果においては、AからDの順に、基板に付着したドロスの量が増加する。評価結果が、A~Cであったフラックスは合格であり、Dであったフラックスは不合格であるとした。
【0166】
≪フラックス残渣のべたつきの評価≫
評価方法
ガラスエポキシ基板(50mm×50mm、厚さ1mm)に、各例のフラックス0.15mLを塗布した後、加熱乾燥させて、前処理した基板を得た。前処理した各基板について、フラックス残渣のべたつきを、次の手順に従って計測した。
【0167】
前処理した基板を、60℃に加熱した台座の上に、3分間静置した後、べたつきを測定した。べたつきの測定は、以下の装置を用いて、以下の条件により行った。表2~7において、べたつきの測定値の単位は、gfである。ここで、1[gf]=9.8×10-3[N]である。
装置:タッキネステスター(Malcom、型番:TK-1)
新入方式:定圧侵入方式
プレスタイム:0.2sec
プレス圧:50gf
侵入速度:2.0mm/sec
引離速度:10mm/sec
【0168】
【表2】
【0169】
【表3】
【0170】
【表4】
【0171】
【表5】
【0172】
【表6】
【0173】
【表7】
【0174】
ロジンと、化合物(SA)と、活性剤と、溶剤とを含有する実施例1~27のフラックスは、化合物(SA)を含有しない比較例1~6のフラックスと比べて、ドロス付着の抑制能を高いことを確認した。
【0175】
かかる効果が得られる理由は定かではないが、以下のように推測される。
化合物(SA)は、R12及びR13が、いずれも、炭素数5以下の炭化水素基、ヒドロキシ基又は水素原子であり、疎水性が低く、ロジンとの相溶性が低い。そのため、ロジンと化合物(SA)とが分離して、ロジンの層の上に、化合物(SA)の層が形成されやすくなる。これにより、溶融はんだの表面に存在するドロスは、化合物(SA)の層とともに、はんだ槽へ流出しやすくなる。
一方、比較化合物は、炭素数6以上のアルキル基を有し、疎水性が高く、ロジンとの相溶性が高い。そのため、ロジンと化合物(SA)とが相溶して、比較化合物の層が形成されにくい。これにより、溶融はんだの表面に存在するドロスは、基板に塗布されたフラックスに付着したまま残りやすくなる。
【0176】
実施例1、2、4、5、27の結果から、ロジン(P)としてロジン(PB)とロジン(PA)とを併用する場合、軟化点が100℃超であるロジン(PA)と軟化点が100℃以下であるロジン(PB)との混合比率は、(PA)/(PB)で表される質量比として、(PA)/(PB)は、4/6以上である場合にフラックス残渣のべたつきはより低減され、5/5以上である場合にフラックス残渣のべたつきは更に低減され、8/2以上である場合にフラックス残渣のべたつきは特に低減されることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明によれば、はんだ付けにおいて、基板の表面にドロスが付着することを抑制できるフラックス及び接合体の製造方法を提供することができる。このフラックスは、フローはんだ付けに好適である。また、鉛フリーはんだを用いたフローはんだ付けにも好適である。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン(P)と、
下記一般式(sa)で表される化合物(SA)と、
活性剤(ただし、前記化合物(SA)に該当するものを除く)と、
溶剤(ただし、前記化合物(SA)に該当するものを除く)と、
を含有し、
前記ロジン(P)は、軟化点が100℃超であるロジン(PA)と、軟化点が100℃以下であるロジン(PB)と、を含み、
前記ロジン(PA)と前記ロジン(PB)との混合比率は、(PA)/(PB)で表される質量比として、(PA)/(PB)=5/5~9/1であり、
前記化合物(SA)の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上6質量%以下である、フラックス。
【化1】
[式(sa)中、R11は、ヒドロキシ基を有してもよい炭化水素基を表す。R12及びR13は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数5以下の炭化水素基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。mは、正の整数を表す。]
【請求項2】
前記ロジン(PA)は、アクリル酸変性水添ロジン及び重合ロジンからなる群より選択される少なくとも一種のロジン(P1)を含み、
前記ロジン(PB)は、水添ロジンを含む、請求項に記載のフラックス。
【請求項3】
前記化合物(SA)の含有量は、前記ロジン(P)100質量部に対して1~60質量部である、請求項1又は2に記載のフラックス。
【請求項4】
前記活性剤は、下記一般式(a1)で表される化合物を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のフラックス。
【化2】
[式(a1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子又は水素原子を表す。]
【請求項5】
前記活性剤は、アルカノールアミンを含む、請求項1~のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項6】
前記溶剤は、エタノール及び2-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項7】
固形分濃度は、20質量%以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のフラックスで処理された基板の表面に、はんだ合金をはんだ付けすることにより、接合体を得る工程を含む、接合体の製造方法。
【請求項9】
前記はんだ合金は、SnとBiとを含むはんだ合金からなる、請求項に記載の接合体の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0141
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0141】
<フラックスの調製>
(実施例1~27、比較例1~6)
表2~7に示す組成で実施例及び比較例の各フラックスを調合した。ただし、実施例4、実施例17、実施例27については参考例扱いとする。
使用した原料を以下に示した。