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  • 特開-無線通信装置、及び無線通信システム 図1
  • 特開-無線通信装置、及び無線通信システム 図2
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  • 特開-無線通信装置、及び無線通信システム 図4
  • 特開-無線通信装置、及び無線通信システム 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085777
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】無線通信装置、及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
H04L27/26 114
H04L27/26 410
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199993
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】江島 暁
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 海斗
(72)【発明者】
【氏名】中村 学
(57)【要約】
【課題】パイロットキャリアの配置数を減らして、通信の効率を向上する。
【解決手段】パイロットキャリアとデータキャリアが所定のパターンに従って配置された複数の無線リソースを用いて通信する無線通信装置であって、受信信号からパイロットキャリアを抽出するパイロットキャリア抽出部と、あらかじめ送信側で削減されたパイロットキャリアを復元するパイロットキャリア復元部と、伝搬路の特性に基づいて生成されたモデルを用いて、削減されたパイロットキャリアを復元して、伝搬路特性を推定する伝搬路特性推定部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイロットキャリアとデータキャリアが所定のパターンに従って配置された複数の無線リソースを用いて通信する無線通信装置であって、
受信信号からパイロットキャリアを抽出するパイロットキャリア抽出部と、
あらかじめ送信側で削減されたパイロットキャリアを復元するパイロットキャリア復元部と、
伝搬路の特性に基づいて生成されたモデルを用いて、削減されたパイロットキャリアを復元して、伝搬路特性を推定する伝搬路特性推定部とを備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
削減されていないパイロットキャリアの受信結果と、パイロットキャリアの配置パターンを学習して、前記モデルを生成する伝搬路特性学習部を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
削減されていないパイロットキャリアの受信結果と、その結果に基づいて得られる伝搬路特性推定結果を学習して、前記モデルを生成する伝搬路特性学習部を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の無線通信装置であって、
伝搬路特性の推定結果から、削減可能なパイロットキャリアの位置を検出する削減可能位置検出部を備え、
前記削減可能位置検出部は、前記モデルを用いたパイロットキャリアの復元度によって削減可能なパイロットキャリアの位置を決定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
無線通信システムであって、
パイロットキャリアとデータキャリアが特定のパターンに従って配置された複数の無線リソースを用いて通信する送信機と受信機とを備え、
前記受信機は、
受信信号からパイロットキャリアを抽出するパイロットキャリア抽出部と、
あらかじめ送信機で削減されたパイロットキャリアを復元するパイロットキャリア復元部と、
伝搬路の特性に基づいて生成されたモデルを用いて、削減されたパイロットキャリアを復元して、伝搬路特性を推定する伝搬路特性推定部と、
前記伝搬路特性の推定結果から、削減可能なパイロットキャリアの位置を検出する削減可能位置検出部とを有し、
前記送信機は、前記受信機が検出した位置のパイロットキャリアを削減してデータを送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信システムであって、
前記送信機は、削減されたパイロットキャリアの位置に新たな冗長データを配置してデータを送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の無線通信システムであって、
前記受信機は、削減されていないパイロットキャリアの受信結果と、パイロットキャリアの配置パターンを学習して、前記モデルを生成する伝搬路特性学習部を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の無線通信システムであって、
前記受信機は、削減されていないパイロットキャリアの受信結果と、その結果に基づいて得られる伝搬路特性推定結果を学習して、前記モデルを生成する伝搬路特性学習部を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか一つに記載の無線通信システムであって、
前記削減可能位置検出部は、前記モデルを用いたパイロットキャリアの復元度によって削減可能なパイロットキャリアの位置を決定することを特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル無線通信に関し、特に、通信効率を向上させた通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パイロット信号を用いて通信する無線通信システムがある。本技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(特開2012-85084号公報)には、リソースブロック当たりのパイロット・シンボルの数は同数で、パイロット・シンボルを配置する周波数間隔が伝送路の遅延スプレッドに応じて異なる複数のマッピングパターンを備え、パイロット挿入パターン制御回路6が、遅延スプレッドの値とマッピングパターンとを対応付けて記憶しておき、入力された伝送路の遅延スプレッドに対応するマッピングパターンを選択して、当該マッピングパターンをマッピング回路とパイロット挿入回路に指示し、当該マッピングパターンに従って、マッピング回路がデータをリソースブロックに割り振り、パイロット挿入回路がパイロット・シンボルを挿入するOFDM信号送信装置が記載されている。
【0003】
また、特許文献2(特開2013-165351号公報)には、基地局(BS)と端末局(CPE)とを備え、CPEのチャネル推定部が、DS受信信号のプリアンブルに基づいて伝搬路の推定値を求め、それを周波数軸方向に補間してサブキャリア毎の伝搬路推定結果を算出し、伝搬路推定結果を時間軸方向に数フレーム分移動平均して伝搬路特性値(h)を算出して、伝搬路特性値に基づいて受信サブキャリアを等化すると共に、CPE送信処理部のプレチャネル推定部に伝搬路特性値を出力し、プレチャネル推定部が、US送信信号用のサブキャリアに伝搬路特性値の逆数(1/h)を乗算して伝搬路の特性を予め補償する無線通信システム及び無線通信方法が記載されている。
【0004】
図4図5を参照して背景技術を説明する。図4は背景技術におけるOFDM送受信機の構成を示すブロック図であり、図5は、背景技術におけるパイロットキャリアの配置例を示す図である。
【0005】
図4に示すOFDM送受信機は、符号化部401、既知信号生成部402、サブキャリアマッピング部403、IFFT部404、D/A変換部405、送信無線部406、送信アンテナ407、受信アンテナ408、受信無線部409、A/D変換部410、FFT部411、パイロットキャリア抽出部412、伝搬路特性推定部413、等化・復調部414、及び復号部415を有する。図5に示す従来のキャリアの配置例では、時間方向に連続的かつ周波数方向に離散的にパイロットキャリア501が配置されており、パイロットキャリア501の間にデータキャリア502が配置されている。
【0006】
送信側において、音声データや画像データなどの本線データが符号化部401に入力され、受信側での誤り訂正を行うための符号化の後、サブキャリアマッピング部403に入力される。また、既知信号生成部402は、予めフォーマットなどが取り決められた送受信間で共通の既知信号を生成し、サブキャリアマッピング部403に入力する。サブキャリアマッピング部403は、符号化された本線データをデータキャリアとして、既知信号をパイロットキャリアとしてサブキャリアに割り当てる。ここで、サブキャリアの割り当て方法は、規格によって異なるが、例えば、図5のような配置となる。
【0007】
サブキャリアに割り当てられた信号はIFFT部404において周波数領域の信号から時間領域の信号に変換され、D/A変換部405においてアナログ信号に変換され、送信無線部406に入力される。送信無線部406は、D/A変換部405から入力されるベースバンド信号を無線周波数に周波数変換し、送信アンテナ407から周波数変換された無線信号が送信される。
【0008】
受信側において、受信アンテナ408で信号を受信し、受信無線部409で無線信号をベースバンド信号に周波数変換する。そして、A/D変換部410でベースバンド信号をデジタル信号に変換し、FFT部411で時間領域の信号から周波数領域の信号に変換して、パイロットキャリア抽出部412及び等化・復調部414に入力する。
【0009】
パイロットキャリア抽出部412は、送信側で挿入されたパイロットキャリアを受信信号から抽出し、伝搬路特性推定部413に入力する。伝搬路特性推定部413は、パイロットキャリアに基づいて周波数方向に伝搬路特性を推定する。例えば、0次補間(ホールド)、1次補間(直線内挿)、フィルタを用いた内挿など様々な推定方法を採用できる。これらの推定方法により得られた伝搬路特性の推定結果は等化・復調部414に入力される。等化・復調部414は、前述したFFT部411からの出力及び伝搬路特性推定部413からの出力に等化及び復調処理を実行する。その後、復号部415が誤り訂正処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012-85084号公報
【特許文献2】特開2013-165351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
受信側で等化及び復調するためには、送信側から送信された既知のパイロットキャリアを用いて、伝搬路特性の推定が必要となる。パイロットキャリアは、本来伝送しようとするユーザデータではないため、配置数を少なくして伝送効率の低下を抑制したい。一方、サンプリング定理を考慮すると、通信品質を確保するためには伝搬路特性の時間方向又は周波数方向の変動周期の2倍より密なパイロットキャリアの配置が望ましく、特に変動周期が短い環境では、パイロットキャリアの配置間隔が密になり、伝送効率が低下する。
【0012】
このため、パイロットキャリアを粗に配置して、伝送効率を向上する無線通信システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、パイロットキャリアとデータキャリアが所定のパターンに従って配置された複数の無線リソースを用いて通信する無線通信装置であって、受信信号からパイロットキャリアを抽出するパイロットキャリア抽出部と、あらかじめ送信側で削減されたパイロットキャリアを復元するパイロットキャリア復元部と、伝搬路の特性に基づいて生成されたモデルを用いて、削減されたパイロットキャリアを復元して、伝搬路特性を推定する伝搬路特性推定部とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一例の無線通信装置は、削減されていないパイロットキャリアの受信結果と、パイロットキャリアの配置パターンを学習して、前記モデルを生成する伝搬路特性学習部を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一例の無線通信装置は、削減されていないパイロットキャリアの受信結果と、その結果に基づいて得られる伝搬路特性推定結果を学習して、前記モデルを生成する伝搬路特性学習部を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一例の無線通信装置は、伝搬路特性の推定結果から、削減可能なパイロットキャリアの位置を検出する削減可能位置検出部を備え、前記削減可能位置検出部は、前記モデルを用いたパイロットキャリアの復元度によって削減可能なパイロットキャリアの位置を決定することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一例の無線通信装置と通信する送信機は、削減されたパイロットキャリアの位置に新たな冗長データを配置してデータを送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、パイロットキャリアの配置数を減らすことで、通信の効率を向上できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施例のOFDM送受信機の構成を示すブロック図である。
図2】本実施例のパイロットキャリアの配置例を示す図である。
図3】削減されたパイロットキャリアを復元する処理を示す図である。
図4】背景技術におけるOFDM送受信機の構成を示すブロック図である。
図5】背景技術におけるパイロットキャリアの配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施例の無線通信システムでは、まず、送信機及び受信機の設置時に、所定のパイロットキャリアの位置の全てにパイロットキャリアが配置された従来通りの方法による無線通信を行い、受信側では、受信したパイロットキャリアと正しいパイロットキャリア(又は伝搬路特性)を学習してモデルを作成する。学習が終了し、モデルを用いた推論可能になると、送信側ではパイロットキャリアの配置を減らして無線通信を行う。このように学習されたモデルを用いた推論によって、削減されたパイロットキャリアを復元でき、伝搬路特性を正確に推定できる。
【0021】
図1図2及び図3を参照して、本発明の実施例を説明する。図1は、本実施例のOFDM送受信機の構成を示すブロック図である。図2は、本実施例のパイロットキャリアの配置例を示す図である。図3は、削減されたパイロットキャリアを復元する処理を示す図である。図2に示すように、本実施例では、前述した従来技術より、あらかじめ送信側でパイロットキャリアが削減され、粗に配置される。
【0022】
本実施例のOFDM送受信機は、図1に示すように、符号化部101、既知信号生成部102、パイロットキャリア挿入制御部103、サブキャリアマッピング部104、IFFT部105、D/A変換部106、送信無線部107、送信アンテナ108、受信アンテナ109、受信無線部110、A/D変換部111、FFT部112、パイロットキャリア抽出部113、パイロットキャリア復元部114、伝搬路特性学習部115、経路切替部116、伝搬路特性推定部117、パイロットキャリア削減可能位置検出部118、等化・復調部119、及び復号部120を有する。
【0023】
送信側において、音声データや画像データなどの本線データが符号化部101に入力され、受信側での誤り訂正を行うための符号化の後、サブキャリアマッピング部104に入力される。また、既知信号生成部102は、予めフォーマットなどが取り決められた送受信間で共通の既知信号を生成し、サブキャリアマッピング部104に入力する。サブキャリアマッピング部104は、符号化された本線データをデータキャリアとして、既知信号をパイロットキャリアとしてサブキャリアに割り当てる。ここで、サブキャリアの割り当て方法は、規格によって異なるが、例えば、図2のような配置となる。
【0024】
図2に示す本実施例のキャリアの配置例では、時間方向及び周波数方向に区分された無線リソース内で、時間方向に連続的かつ周波数方向に離散的にパイロットキャリア201が配置されており、パイロットキャリア201の間にデータキャリア202が配置されている。本実施例のキャリアの配置例では、図5に示す従来の配置例より周波数方向の離散度が高くなっている。
【0025】
パイロットキャリア挿入制御部103は、受信側のパイロットキャリア削減可能位置検出部118で検出された削減可能なパイロットキャリアの位置の通知を受け、挿入すべきパイロットキャリアの位置を既知信号生成部102及びサブキャリアマッピング部104に通知する。
【0026】
サブキャリアに割り当てられた信号はIFFT部105において周波数領域の信号から時間領域の信号に変換され、D/A変換部106においてアナログ信号に変換され、送信無線部107に入力される。送信無線部107は、D/A変換部106から入力されるベースバンド信号を無線周波数に周波数変換し、送信アンテナ108から周波数変換された無線信号が送信される。
【0027】
受信側において、受信アンテナ109で信号を受信し、受信無線部110で無線信号をベースバンド信号に周波数変換する。そして、A/D変換部111でベースバンド信号をデジタル信号に変換し、FFT部112で時間領域の信号から周波数領域の信号に変換して、パイロットキャリア抽出部113及び等化・復調部119に入力する。
【0028】
パイロットキャリア抽出部113は、送信側で挿入されたパイロットキャリアを受信信号から抽出し、スイッチ116を介して伝搬路特性推定部117に入力する。伝搬路特性推定部117は、抽出されたパイロットキャリア間を補間して周波数方向に伝搬路特性を推定する。例えば、0次補間(ホールド)、1次補間(直線内挿)、フィルタを用いた内挿など様々な推定方法を採用できる。これらの推定方法により得られた伝搬路特性の推定結果は等化・復調部119に入力される。等化・復調部119は、前述したFFT部112からの出力及び伝搬路特性推定部117からの出力に等化及び復調処理を実行する。その後、復号部120が誤り訂正処理を実行する。
【0029】
パイロットキャリア復元部114は、伝搬路特性学習部115で学習した学習モデルを用いて、パイロットキャリア抽出部113で抽出されたパイロットキャリアに基づいて削減されたパイロットキャリアを復元する。伝搬路特性学習部115は、入力されるパイロットキャリアが示すデータ列を学習し、モデルを生成する。また、伝搬路特性学習部115は、削減されていないパイロットキャリアの受信結果と、その結果に基づいて得られる伝搬路特性推定結果を学習して、モデルを生成してもよい。生成されるモデルは、AI技術を適用したニューラルネットワークを用いるとよく、数理モデルで構築してもよい。このように生成された学習モデルによると、学習済みの画像やデータ列に対して欠損部分を補完や復元するAIによる修復技術と同様に、削減によって欠損したパイロットキャリアを復元できる。パイロットキャリア削減可能位置検出部118は、伝搬路特性の推定結果から削減可能なパイロットキャリアの位置を検出する。
【0030】
次に、本実施例における、AI技術を用いて伝搬路特性を学習する処理と、パイロットキャリアを推論する処理について、図3を参照して説明する。
【0031】
学習時の送信側の動作は従来技術と同様であり、受信側についてもパイロットキャリア抽出部113にて受信信号からパイロットキャリアを抽出するまでの処理は同じである。パイロットキャリア抽出部113は、抽出されたパイロットキャリアを伝搬路特性学習部115及び経路切替部116に出力する。伝搬路特性学習部115は、順次入力されるパイロットキャリアが示すデータ列を学習し、学習されたモデルをパイロットキャリア復元部114に出力する。学習結果の入力後のパイロットキャリア復元部114の動作は後述する。
【0032】
経路切替部116がb側を選択すると、パイロットキャリア抽出部113から出力されるパイロットキャリアは伝搬路特性推定部117に入力される。伝搬路特性推定部117は、抽出されたパイロットキャリア間を補間して伝搬路特性を推定する。以降は従来技術と同様に、等化・復調部119が等化及び復調処理を実行し、復号部120が復号処理を実行する。また、伝搬路特性推定部117は、伝搬路特性推定結果をパイロットキャリア削減可能位置検出部118に入力する。パイロットキャリア削減可能位置検出部118は、伝搬路特性の推定結果から削減可能なパイロットキャリアの位置を検出し、検出された削減可能位置をパイロットキャリア挿入制御部103及びパイロットキャリア抽出部113に通知する。パイロットキャリア削減可能位置検出部118は、パイロットキャリア削減による性能劣化の抑制を指標として削減可能率又は削減可能数を決定し、決定された削減可能率又は削減可能数によって、パイロットキャリアを削減する位置を決定するとよい。例えば、狭帯域干渉や伝搬路特性の落ち込み(ディップ)の影響で伝搬路特性の変化量が大きい位置はパイロットキャリアを削減しないなどを考慮するとよい。また、パイロットキャリア削減可能位置検出部118は、学習モデルを用いた復元度の評価結果、周波数伝搬特性、復調結果(例えば誤り率)によって削減可能位置を検出してもよい。パイロットキャリア削減可能位置検出部118は、パイロットキャリア挿入制御部103へオフラインで削減可能位置を通知してもよく、双方向通信が可能であれば、受信側から送信側へのフィードバックする情報を格納するデータフィールドを設け、所定のタイミングで(例えば定期的に)受信側から送信側に無線を介して削減可能位置を通知してもよく、様々な方法で採用できる。伝搬路特性学習部115が学習モデルを生成するまで、以上の処理を繰り返す。
【0033】
次に、学習されたモデルを用いた推論処理について説明する。送信側において、パイロットキャリア挿入制御部103は、前述のパイロットキャリア削減可能位置検出部118が検出した削減可能位置に応じて、既知信号生成部102及びサブキャリアマッピング部104を制御して、図2に示すように一部が削減されたパイロットキャリアを挿入する。以降は従来技術と同様の処理によってアンテナ108から信号を出力する。受信側において、パイロットキャリア抽出部113は、パイロットキャリア削減可能位置検出部118から通知されるパイロットキャリア位置情報に基づいてパイロットキャリアを抽出し、抽出結果をパイロットキャリア復元部114に出力する。
【0034】
パイロットキャリア復元部114は、伝搬路特性学習部115が生成した学習モデルを用いて、パイロットキャリア抽出部113が抽出したパイロットキャリアに基づいて削減されたパイロットキャリアを復元する。
【0035】
本実施例では、図3に示すように、学習モデルが生成されるまではパイロットキャリアを削減せずに、従来通りの無線通信を行うため、その間、受信側で抽出したパイロットキャリアを図3の学習データ301として取り扱い、伝搬路特性学習部115でモデルを生成し、生成したモデルをパイロットキャリア復元部114に出力する。
【0036】
学習モデルが生成され、パイロットキャリア削減可能位置が通知された後は、送信側では、パイロットキャリアを一部削減して送信出力するため、パイロットキャリア抽出部113からは、削減された受信パイロットキャリア302が出力される。パイロットキャリア復元部114は、学習モデルを用いて推論を行い、復元されたパイロットキャリア303を生成する。パイロットキャリア復元部114は、復元したパイロットキャリアを、a側に選択された経路切替部116を介して、伝搬路特性推定部117に入力する。以降は従来技術と同様に、等化・復調部119が等化及び復調処理を実行し、復号部120が復号処理を実行する。
【0037】
例えば、無線送信機及び無線受信機が設置された後の試験運用において、経路切替部116をb側に切り替えて学習モデルを生成し、その後の本運用において、経路切替部116をa側に切り替えて、削減されたパイロットキャリア302から復元されたパイロットキャリア303を生成してもよい。
【0038】
また、全てのパイロットキャリアを挿入して通信を開始し、学習モデルを生成した後、パイロットキャリアを削減した信号を補助的に送信して、生成された学習モデルを追加学習してもよい。
【0039】
また、削減されたパイロットキャリア302の位置は、データキャリア202として利用されるが、新たなデータキャリアは、ユーザデータとして使用してデータ通信速度を向上しても、冗長データとして使用して、誤り耐性を向上してもよい。
【0040】
以上の学習処理及び推論処理によって、削減されたパイロットキャリアが受信側で復元でき、復元されたパイロットキャリアを伝搬路特性推定部117に入力することで、パイロットキャリアが削減された状態でも、従来技術と同様の品質で復号が可能となる。パイロットキャリアの削減によって通信環境の変動への追従性は低下するものの、通信環境の変動が小さい固定環境においては通信効率を向上でき有効である。また、送信側で伝搬路の変化周期に対してサンプリング定理を満足しないようなパイロットキャリア配置としても無線通信が可能である。
【0041】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0042】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0043】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0044】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0045】
101、401:符号化部
102、402:既知信号生成部
103:パイロットキャリア挿入制御部
104、403:サブキャリアマッピング部
105、404:IFFT部
106、405:D/A変換部
107、406:送信無線部
108、407:送信アンテナ
109、408:受信アンテナ
110、409:受信無線部
111、410:A/D変換部
112、411:FFT部
113、412:パイロットキャリア抽出部
114:パイロットキャリア復元部
115:伝搬路特性学習部
116:経路切替部
117、413:伝搬路特性推定部
118:パイロットキャリア削減可能位置検出部
119、414:等化・復調部
120、415:復号部
201、501:パイロットキャリア
202、502:データキャリア
301:学習データ
302:削減された受信パイロットキャリア
303:復元されたパイロットキャリア
図1
図2
図3
図4
図5