(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085779
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】断熱材、断熱材を備える車両又は屋外型制御盤キャビネット、及び断熱材の設置方法
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20230614BHJP
F16L 59/06 20060101ALI20230614BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
B62D25/06 A
F16L59/06
H05K7/20 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199996
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】518088211
【氏名又は名称】積水ソフランウイズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬柳 博
(72)【発明者】
【氏名】下西 弘二
(72)【発明者】
【氏名】神野 昌洋
【テーマコード(参考)】
3D203
3H036
5E322
【Fターム(参考)】
3D203BB59
3D203CA07
3D203CB07
3D203CB25
3D203CB40
3D203DA64
3D203DB10
3H036AA09
3H036AB32
3H036AB42
3H036AC03
3H036AE13
5E322AA03
5E322AB06
5E322CA04
5E322EA10
5E322FA02
5E322FA04
(57)【要約】
【課題】制御用機器類を搭載する屋外型機器を構成する外装材の直下に設置することが可能な断熱材、この断熱材を備える車両又は屋外型制御盤キャビネット、及びこの断熱材の設置方法を提供する。
【解決手段】本発明の断熱材10は、制御用機器類を搭載する屋外型機器(車両30)を構成する外装材(ルーフパネル32、ドアパネル33A~33D)の直下に設置される断熱材10であって、中空部を有し、中空部の圧力が大気圧未満である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御用機器類を搭載する屋外型機器を構成する外装材の直下に設置される断熱材であって、
中空部を有し、該中空部の圧力が大気圧未満である、断熱材。
【請求項2】
前記屋外型機器が、車両又は屋外型制御盤キャビネットである、請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
上部シート及び下部シートから構成され、前記上部シート及び前記下部シートの間に前記中空部を有する、請求項1又は2に記載の断熱材。
【請求項4】
前記上部シートと下部シートとの間に支柱が設けられている、請求項3に記載の断熱材。
【請求項5】
前記上部シート及び下部シートが樹脂製である、請求項3又は4に記載の断熱材。
【請求項6】
厚さが2.0mm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の断熱材。
【請求項7】
熱抵抗値が0.5m2・K/W以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の断熱材。
【請求項8】
UL94規格でV-0を満たす材料により構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の断熱材。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の断熱材を備える、車両。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の断熱材を備える、屋外型制御盤キャビネット。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の断熱材を用意する工程と、
車両又は屋外型制御盤キャビネットを構成する外装材の直下に前記断熱材を設置する工程とを含む、断熱材の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外型機器を構成する外装材の直下に設置することが可能な断熱材、この断熱材を備える車両又は屋外型制御盤キャビネット、及びこの断熱材の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、電子制御化に伴い制御用機器類の搭載量及び搭載数が増加の一途である。車両用の制御用機器類は、電子又は電気機器類であるため基本的に熱に弱く、比較的冷所を選択し搭載されているが、前述の通り年々増す電子制御化による搭載量及び搭載数の増加により搭載場所が無くなりつつある。車両用の制御用機器類は、車体構造を見渡すと屋根及びドア等には、幾分空間があることが見受けられるが、屋外で使用する自動車等の車両は、太陽光による日射により車体表面は高温となるため屋根及びドア等の空間は表面温度の上昇と共に空間温度も上昇し、制御ユニット等の制御用機器類の搭載場所として不適であった。
【0003】
一方、屋外に設置され使用される屋外型制御盤は、鋼製の屋外型制御盤キャビネット内に制御用機器類が多数組み込まれ搭載されている。屋外型制御盤キャビネットは、雨水、砂塵及び昆虫類等の侵入懸念があり、基本的に密閉である。屋外型制御盤に搭載される制御用機器類は、車両用の制御用機器類と同様に、基本的に熱に弱いため、換気や冷却装置により屋外型制御盤キャビネットの内部温度上昇を抑制しているが、屋外設置であるため太陽光による日射により屋外型制御盤キャビネット表面は高温となり内部温度の上昇を助長している。このため屋外に設置され使用される従来の屋外型制御盤キャビネットには、遮熱板と呼ばれる鋼製の中空状部材を最外装に取り付け断熱を施しているが、断熱効果としては少なく、遮熱板は、最外装に取り付けるため外寸法が大きくなり、鋼製であることから重量も増す現状がある。
【0004】
車両又は屋外型制御盤キャビネットに搭載される制御用機器類は、基本的に熱に弱いことから、太陽光による日射により上昇した車両又は屋外型制御盤キャビネットを構成する外装材から伝導する熱を、断熱材を用いることで遮断することが有効である。しかし、車両又は屋外型制御盤キャビネットにおいては、断熱材の搭載場所が無くなりつつあることから、特許文献1、2で開示されているような真空断熱材は、厚さが過剰であるため採用することはできない。また、制御用機器類は、精密な電子機器等であるため、特許文献1、2で開示されているようなグラスウール等の繊維質材を用いる断熱材は、破損した際に塵および埃等を出す虞があるため採用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-200106号公報
【特許文献2】特開平9-138058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、制御用機器類を搭載する屋外型機器を構成する外装材の直下に設置することが可能な断熱材、この断熱材を備える車両又は屋外型制御盤キャビネット、及びこの断熱材の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]制御用機器類を搭載する屋外型機器を構成する外装材の直下に設置される断熱材であって、中空部を有し、該中空部の圧力が大気圧未満である、断熱材。
[2]前記屋外型機器が、車両又は屋外型制御盤キャビネットである、[1]に記載の断熱材。
[3]上部シート及び下部シートから構成され、前記上部シート及び前記下部シートの間に前記中空部を有する、[1]又は[2]に記載の断熱材。
[4]前記上部シートと下部シートとの間に支柱が設けられている、[3]に記載の断熱材。
[5]前記上部シート及び下部シートが樹脂製である、[3]又は[4]に記載の断熱材。
[6]厚さが2.0mm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の断熱材。
[7]熱抵抗値が0.5m2・K/W以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の断熱材。
[8]UL94規格でV-0を満たす材料により構成される、[1]~[7]のいずれかに記載の断熱材。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の断熱材を備える、車両。
[10][1]~[8]のいずれかに記載の断熱材を備える、屋外型制御盤キャビネット。
[11][1]~[8]のいずれかに記載の断熱材を用意する工程と、車両又は屋外型制御盤キャビネットを構成する外装材の直下に前記断熱材を設置する工程とを含む、断熱材の設置方法。
【発明の効果】
【0008】
制御用機器類を搭載する屋外型機器を構成する外装材の直下に設置することが可能な断熱材、この断熱材を備える車両又は屋外型制御盤キャビネット、及びこの断熱材の設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る断熱材が車両を構成する外装材に設置されることを示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る断熱材の断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る断熱材が車両を構成する外装材であるルーフパネルに設置されることを示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る断熱材が車両を構成する外装材であるドアパネルに設置されることを示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る断熱材を製造するための断熱材形成用成形体の概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る断熱材の中空部の圧力を調整する方法を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る断熱材が屋外型制御盤キャビネットを構成する外装材に設置されることを示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る断熱材が屋外型制御盤キャビネットを構成する外装材である外装パネルに設置されることを示す模式図(その1)である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る断熱材が屋外型制御盤キャビネットを構成する外装材である外装パネルに設置されることを示す模式図(その2)である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る屋外型制御盤キャビネットの外装パネルに遮光板が設置されることを示す斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る断熱材の実施例として、車両又は屋外型制御盤キャビネットに搭載される制御用機器類の使用状態を指標としての試験モデルの斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る断熱材の実施例として、車両又は屋外型制御盤キャビネットに搭載される制御用機器類の使用状態を指標としての試験モデルの断面図である。
【
図13】本発明の実施例で作製した断熱材形成用成形体の概略図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る断熱材の比較例として、車両又は屋外型制御盤キャビネットに搭載される制御用機器類の使用状態を指標としての試験モデルの断面図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る断熱材の実施例および比較例の結果を示すグラフ(その1)である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る断熱材の実施例および比較例の結果を示すグラフ(その2)である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る断熱材の実施例および比較例の結果を示すグラフ(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本発明実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分は同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
[断熱材]
本発明の断熱材は、制御用機器類を搭載する屋外型機器を構成する外装材の直下に設置される断熱材である。
屋外型機器は、屋外で使用され、制御用機器類を搭載する機器であれば限定されないが、各種車両、船舶、飛行機などの輸送機器、屋外型制御盤キャビネットなどが挙げられ、好ましくは、車両又は屋外型制御盤キャビネットである。
以下、屋外型機器が車両及び屋外型制御盤キャビネットである場合についてそれぞれ第1及び第2の実施形態として詳細に説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る断熱材10は、
図1に示すように、制御用機器類を搭載する車両30を構成する外装材(ルーフパネル32、ドアパネル33A~33D)の直下に設置される。断熱材10は、
図2に示すように、中空部12を有し、中空部12の圧力が大気圧未満である。
なお、本実施形態では、車両が自動車である例を用いて具体的に説明する。
【0013】
本発明の断熱材10を、図面を用いて説明する。
図2は、本発明の断熱材10の一実施形態の断面図を示している。
図2(b)は断熱材10の正面の断面図を表し、
図2(a)は、
図2(b)の矢視A-Aからみた上面断面図を表す。
断熱材10は、上部シート11a及び下部シート11bから構成された平板状の断熱材である。上部シート11a及び下部シート11bは、それぞれの周縁が溶接又は接着などの手段で密着し、これにより断熱材10の内部は密閉され、中空部12が形成されている。
中空部12の圧力は大気圧未満である。中空部12が大気圧未満の圧力であるため、断熱材10の厚み方向の熱伝導率が低くなり、これにより断熱性能が向上する。断熱材10の厚み方向の熱伝導率をより低くし、より断熱性能を向上させる観点から、中空部12の圧力は、好ましくは1,300Pa以下、より好ましくは500Pa以下、さらに好ましくは100Pa以下、よりさらに好ましくは10Pa以下、特に好ましくは5Pa以下である。
【0014】
断熱材10は、上記したとおり、中空部12を有している。より具体的には、断熱材10の内部全体が中空部12である。そして、後述する支柱13などの上部シート11a及び下部シート11bを支持することが可能な支持部材が設けられていない場合は、上部シート11aと下部シート11bの間に何も存在せず、上記支持部材が設けられている場合は、上部シート11aと下部シート11bとの間に上記支持部材以外は何も存在しない。
したがって、断熱材10は、その内部にグラスウールなどの芯材を有していない。すなわち、断熱材10は、発塵及び材料離脱しない材料で構成される。そのため、断熱材10は、仮に破損したり、経年劣化などにより圧力が開放されたりした場合であっても、内部が中空であり、芯材を有していないため、断熱材10を構成する材料から塵および埃等を出すことがなく、安全性にも優れる。また、断熱材10は、その内部に芯材を有していないため、仮に破損した場合であっても、芯材の膨張及び変化が生じることがないので、断熱材10の形状を保持できるため、2次災害を防ぐことができる。
【0015】
上部シート11aと下部シート11bの間には、これらを連結する支柱13が設けられている。上部シート11a及び下部シート11bが、曲げ弾性率が低く柔らかい材料により構成されている場合は、断熱材10の製造時に、減圧又は真空にすることにより、両シートが内向きに撓み、接触して断熱性能を悪化させることが懸念される。これに対して、本発明のように、支柱13を設けることで、上部シート11a及び下部シート11bが柔らかい材料で構成されている場合であっても、両者が撓んで接触することを防ぎ断熱性能の悪化を防止することができる。
なお、
図2では上部シート11aと下部シート11bとの間に支柱13を設ける態様を示したが、本発明はこれに限定されず、上部シート11aと下部シート11bとを支持することが可能な支持部材が設けられていればよい。
支持部材としては、上記した支柱以外にも、板状部材、球状部材、バネ状部材などが挙げられるが、断熱材の断熱性を良好にする観点から、支柱が好ましい。
【0016】
支柱13の形状は、円柱、角柱など特に制限はないが、円柱が好ましい。
また、支柱13は、複数設けられることが好ましい。該複数の支柱13は、断熱材10の強度等の物性のバラつきを小さくする観点から、規則的に配列されていることが好ましい。
複数の支柱13の配列は、特に限定されないが、断熱材を上部方向から見た場合に、支柱の端面が、正多角形を形成するように配列されることが好ましく、中でもハニカム構造を形成するように配列されることがより好ましい。ハニカム構造とは、
図2(a)の破線で示すような正六角形が隙間なく並べられた構造である。なお、
図2(a)の破線は説明のために付した線であり、支柱同士が連結されているなどのことを表しているものではない。
支柱13は、その数が多いほど、上部シート11a及び下部シート11bの撓みを抑制しやすいものの、支柱13が熱橋となり、断熱材10の断熱性が低下することが懸念される。したがって、支柱13の数を少なくしたうえで、上部シート11a及び下部シート11bの撓みを効果的に抑制して両シートの接触を防止することが好ましく、そのような観点から、支柱13は、上記したように、その端面がハニカム構造を形成するように配置されることが好ましい。
【0017】
支柱13がその端面がハニカム構造を形成されるように配置されている場合は、該ハニカム構造(正六角形)の半径は、5~20mmが好ましく、8~15mmがより好ましく、10~12mmがさらに好ましい。半径がこのような範囲であると、熱橋による断熱性の低下を抑えつつ、上部シート11a及び下部シート11bの撓みを抑制して両シートの接触を防止することができる。
支柱13の数は、熱橋による断熱性の低下を抑えつつ、両シートの撓みを抑制して接触を防止する観点から、シート面積100cm2あたり、10~200個が好ましく、20~80個がより好ましく、30~70個がさらに好ましい。
支柱13の直径は、特に制限されないが、熱橋による断熱性の低下を抑えつつ、上部シート11a及び下部シート11bの撓みを抑制して両シートの接触を防止する観点から、0.2~10mmが好ましく、0.5~5mmがより好ましく、0.7~2mmがさらに好ましい。
【0018】
上部シート11a及び下部シート11bの曲げ弾性率は、それぞれ1,350MPa以上が好ましく、3,000MPa以上がより好ましい。上部シート及び下部シートの曲げ弾性率が上記下限値以上であると、シートの撓みが抑制され、これに基づく断熱性低下を防止し易くなる。なお、上記シートの曲げ弾性率は、大きければ大きい値であるほど、撓みが抑制され両シートの接触を防止しやすいが、断熱材の常温付近での加工性などを考慮すると、3,500MPa以下であることが好ましい。
【0019】
なお、
図2には、断熱材10が、複数の支柱13を備える実施態様を示しているが、支柱13は、必ずしも設けなくてもよい。すなわち、断熱材10が上部シート11a及び下部シート11bのみから構成されていてもよい。この場合、断熱材10の製造時に、内部を減圧又は真空にする際に、上部シート11a及び下部シート11bが撓みにくい材料を選択することが好ましい。
【0020】
断熱材10の大きさは、特に限定されないが、縦方向及び横方向の長さがそれぞれ、好ましくは10~500mmであり、より好ましくは50~333mmである。
また、断熱材10を複数連結してよりサイズの大きな断熱材を製造してもよい。断熱材10を連結する手段としては、例えば、接着剤による接着、粘着剤による粘着、高周波ウェルダー、超音波ウェルダー等による溶着や溶接などが挙げられる。また、テープ類を用いて断熱材10を連結して、面積を拡大させてもよい。
【0021】
断熱材10の厚さは、車両に搭載する制御用機器類のスペースを確保する観点から、薄いものであることであることが好ましく、具体的には、2.0mm以下であることが好ましく、1.8mm以下であることがより好ましく、1.6mm以下であることがさらに好ましい。
断熱層10の厚さを薄くするためには、上部シート11a及び下部シート11bを薄くしたり、該シート間の距離を短くしたりすることが考えられる。しかし、シートを薄くし過ぎると、シートが撓みやすくなり、またシート間の距離を短くすると、シート同士が接触しやすくなり、断熱性能の低下が懸念される。これらを勘案し、検討した結果、上部シート11aと下部シート11bの厚さと、シート間距離(クリアランス)との合計値、すなわち言い換えれば、断熱材10の厚さ(上部シート11a及び下部シート11bの厚みとクリアランスの合計値)は、少なくとも1.1mmであるとよい。。特に、支柱の端面がハニカム構造を形成するように配置されている場合、断熱材10の厚さを1.1mm以上とすることが好ましい。よって、このような知見に基づけば、後述するシートの樹脂の種類に応じて、厚さを極力薄くしつつ、断熱性を良好に保つことができる断熱材の厚さ範囲を設定できる。断熱材10の厚さは好ましくは1.1mm以上、より好ましくは1.2mm以上であり、さらに好ましくは1.3mm以上である。
【0022】
上部シート11a及び下部シート11bの厚さは、それぞれ好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上であり、そして好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。
【0023】
上部シート11a、下部シート11b及び支柱13は、金属製であっても樹脂製であってもよいが、断熱材の加工性を良好にする観点から、樹脂製であることが好ましい。なお、上部シート11a、下部シート11b及び支柱13は同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよいが、製造の容易性の観点から、同一の材料で形成されていることが好ましい。
【0024】
上部シート11a、下部シート11b及び支柱13などの断熱材10を構成する材料は、UL94規格でV-0の難燃性を満たすことが好ましく、5VBの難燃性を満たすことがより好ましく、5VAの難燃性を満たすことがさらに好ましい。断熱材10が高い難燃性を満たす材料によって構成されることによって、仮に車両30に搭載される制御用機器類50において短絡及び爆発等により燃焼が生じたとしても、燃焼の広がりを抑制することができる。
【0025】
断熱材10を構成する材料として使用される金属としては、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、チタン、非鉄金属類などが挙げられる。
【0026】
断熱材10を構成する材料として使用される樹脂としては、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもよく、樹脂の種類は、例えば、汎用プラスチック、汎用エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。
汎用プラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・スチレン(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
汎用エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などが挙げられる。
スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、四フッ化エチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。
また、上部シート11a、下部シート11b及び支柱13などの断熱材を構成する樹脂には、難燃剤を適宜含有させてもよい。
【0027】
上記の中でも、UL94規格でV-0の難燃性を満たしやすい樹脂を使用することが好ましく、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、四フッ化エチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、ポリフッ化ビニリデンなどが好適な材料として挙げられる。
【0028】
上部シート11a及び下部シート11bは、それぞれ単層であってもよいし、多層であってもよい。例えば、上部シート11a及び下部シート11bはそれぞれ、表面層に熱伝導率が比較的高いポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド系ナイロン類などからなる樹脂層を備えた多層構造であってもよい。
このように、表面に熱伝導率の高い樹脂層を設けることで、断熱材10の平面方向に放熱しやすくなり、かつ断熱材10の厚み方向の熱伝導率は低いため、断熱材10の断熱性をより向上させることが可能となる。
【0029】
上部シート11a及び下部シート11bには、その表面に金属層を形成されていることが好ましく、例えば、樹脂製の上部シート11a及び下部シート11bの少なくとも一方の表面に金属層を形成することがより好ましい。金属層が形成されることで、大気や水蒸気などがシートを透過するのを抑制し、断熱材10の断熱性が低下するのを防止できる。さらに、熱伝導性の高い金属よりなる金属層を用いた場合には、熱を平面方向に放熱し、これにより断熱材10の断熱性をより向上させることが可能となる。
金属層の厚みは、好ましくは0.001μm~20μmであり、より好ましくは10μm~16μmである。
金属層を形成する金属の種類としては、アルミニウム、銀、金、チタン、ニッケル、銅、クロムなどが挙げられ、熱伝導性が高く、熱を平面方向に放散させやすいため、一般的にアルミニウムが好ましい。また、金属層は、金属を蒸着することにより形成されていることが好ましく、中でもアルミニウム蒸着膜であることが好ましい。
【0030】
断熱材10の中空部12は、互いに連通しない複数のブロックに分割されてもよい。中空部12が互いに連通しない複数のブロックに分割されていることで、経年劣化や外部衝撃等により一部のブロックが破損した場合であっても、残りのブロックは減圧又は真空の状態を維持しているため、断熱材10全体としての断熱性は保たれる。さらに、断熱材10の一部を切断などし、所望の形状に加工して使用することも可能となる。
ブロックは、例えば、
図2で示す断熱材10を形成させた後、断熱材10を複数箇所で溶接することにより形成される。より詳細には、ブロックは、上部シート11aと下部シート11bが溶接された細長状の溶接部を周囲に有しており、溶接部が形成されていることにより、隣接するブロックとは連通せず、独立した空間を有するブロックとなっている。
【0031】
断熱材10の熱抵抗値は、0.5m2・K/W以上であることが好ましく、1.0m2・K/W以上であることがより好ましく、1.5m2・K/W以上であることがさらに好ましい。断熱材10の熱抵抗値が上記下限値以上であることで、熱を通しにくくなり、サーバーラックに縦積み格納される機器類間での熱の伝導を防ぐことができる。
ここで、熱抵抗値[m2・K/W]とは、断熱材10の厚さ[m]を断熱材10の熱伝導率[W/m・K]で除した値をいい、値が大きいほど熱が通りにくいことを示す。なお、断熱材10の熱伝導率は、断熱材10の厚み方向に関するものであり、熱伝導率測定装置(例えば、英弘精機株式会社製「HC-10」)を用いて、24℃における断熱材10の厚み方向の熱伝導率を測定し、10回の測定を行って算出した平均値を採用する。
【0032】
図3は、断熱材10が車両30のルーフに設けられる場合の詳細を示す。ルーフおいて、断熱材10は、
図3(a)及び(b)に示すように、車両30を構成する外装材であるルーフパネル32の直下に設置される。
図3(a)は車両30の斜視図を表し、
図3(b)は、
図3(a)の矢視B-Bからみた断面図を表す。
図4は、断熱材10が車両のサイドに設けられる場合の詳細を示す。車両のサイドにおいて、断熱材10は、
図4(a)及び(b)に示すように、車両30を構成する外装材であるドアパネル33A~33Dの直下に設置される。
図4(a)は車両30の斜視図を表し、
図4(b)は、
図4(a)の矢視C-Cからみた断面図を表す。断熱材10は、車両30を構成する外装材の直下に設置されることで、太陽光による日射により上昇した外装材表面温度の熱伝導を緩和し、断熱材10を設置した空間の温度上昇を抑制することができる。
【0033】
車両30を構成する外装材であるルーフパネル32及びドアパネル33A~33Dの直下に、断熱材10を設置する形態としては、ルーフパネル32及びドアパネル33A~33Dの直下に断熱材10を設置すれば特に限定されず、断熱材10をルーフパネル32及びドアパネル33A~33Dに取り付けてもよい。断熱材10は、例えば、ルーフパネル32及びドアパネル33A~33Dの内面に両面テープ等により接着して取り付けることができる。
また、断熱材10は、上昇した外装材表面温度の熱伝導を有効に緩和し、断熱材10を設置した空間の温度上昇を抑制する観点から、車両30を構成する外装材であるルーフパネル32及びドアパネル33A~33Dに両面テープなどの他の部材を介して、又は直接に接して設置することが好ましい。
さらに、断熱材10は、例えば、ルーフパネル32及びドアパネル33A~33Dに近接する限り離れた位置に配置してもよく、例えば、車両フレーム31に取り付けられてもよい。断熱材10は、ルーフパネル32及びドアパネル33A~33Dなどの外装材に直接に接せず、離れた位置に配置される場合には、外装材と制御用機器類50との間の領域に配置された形態であればよい。
【0034】
車両30を構成する外装材であるルーフパネル32及びドアパネル33A~33Dの直下に設置した断熱材10は、太陽光による日射により上昇した外装材表面温度の熱伝導を緩和し、断熱材10を設置した空間の温度上昇を抑制することで、外装材の内側に熱に弱い制御用機器類50の設置を可能とする。
制御用機器類50は、例えば、エレクトロニックコントロールユニット(ECU)、通信機器、その他の電気又は電子機器等である。制御用機器類50は、断熱材10が直下に設置された外装材10の内側に配置されるとよく、すなわち、外装材及び断熱材10の両方の内側に配置されるとよい。
なお、制御用機器類50は、断熱材10がルーフに設置される場合には、制御用機器類50もルーフに設置され、断熱材10がサイドに設置される場合には、制御用機器類50もサイドに設置されるとよい。また、断熱材10がドアに設置される場合には、制御用機器類50もドアに設置されるとよい
【0035】
制御用機器類50は、例えば、ビスなどの固定部材により車両フレーム31及び内装材34のいずれかに固定されるとよい。例えば、ルーフでは、
図3に示す通り、断熱材10が設けられたルーフパネル32から一定の距離をおいて内装材34としての車内天井部が設けられるが、車内天井部の上面に取り付けられるとよい。また、
図4に示すとおり、サイドでは、断熱材10が設けられたドアパネル33Aの内側には、車両フレーム31が設けられるが、制御用機器類50は、車両フレーム31に固定されるとよい。
【0036】
以上の構成によれば、車両30を構成するルーフパネル32及びドアパネル33A~33Dなどの外装材の直下に設置された断熱材10が、仮に破損したり、経年劣化などにより圧力が開放されたりした場合であっても、断熱材10の内部が中空であり、芯材を有していないため、断熱材10を構成する材料から塵および埃等を出すことがなく、制御用機器類50の動作を阻害することないので、制御用機器類50の動作の安全性を担保することができる。また、車両30を構成するルーフパネル32及びドアパネル33A~33Dなどの外装材の直下に設置された断熱材10は、その内部に芯材を有していないため、仮に破損した場合であっても、芯材の膨張及び変化が生じることがないので、断熱材10の形状を保持できるため、断熱材10の変化に伴う制御用機器類50の変化等の不良を防ぐことができる。
また、薄型であっても、高い断熱性を確保する断熱材10は、制御用機器類50の搭載場所として不適であった車両30を構成するルーフパネル32及びドアパネル33A~33Dなどの外装材の近傍であっても制御用機器類50を搭載することを可能とし、従来使用されていなかった空間の有効利用を可能とする。
なお、断熱材10は、車両30のサイド又はルーフを構成する外装材の直下に設置される態様を示したが、サイド又はルーフに限定されず、車両30のリア、フロントなどの外装材の直下に設置されてもよく、それに伴い制御用機器類50も車両30のリア、フロントなどに設置してもよい。また、断熱材10は、ドアやルーフに限らず、ボンネットやピラーなどに設けられ、制御用機器類50もそれに合わせてボンネットやピラーなどに設けられてもよい。
【0037】
[断熱材の製造方法]
本発明の断熱材の製造方法は、特に限定されないが、例えば、真空ポンプなどの各種機器に接続可能な連結部材を備える断熱材形成用成形体を準備し、内部を真空にした後、連結部材を溶接する方法が挙げられる。
【0038】
例えば、以下の方法が挙げられる。まず、
図2に示した断熱材10と形状が同じ成形体の両端に、連結部材14及び15を備えた断熱材形成用成形体20(
図5参照)を形成する。連結部材14及び15は、上部シート及び下部シートの間に形成された成形体内部と、成形体外部とを連通させており、そのため、断熱材形成用成形体20は、大気圧となっている。連結部材14及び15は、樹脂又は金属で形成させることができ、これらの種類は、例えば上述したものが挙げられる。上部シート、下部シート、支柱、及び連結部材は、それぞれ異なる材料で形成させてもよいが、同種の材料で形成させることが好ましい。
【0039】
連結部材14及び15に、断熱材形成用成形体20の内部を減圧又は真空にするための各種機器を接続して、内部の圧力を調整することができる。
例えば、
図6に示すように、圧力調整ユニット17を介して連結部材15に真空ポンプ16を接続し、その逆側において、圧力調整ユニット18を備えた圧力ゲージ19を連結部材14に接続する。そして、真空ポンプ16を稼働させ、成形体20の内部圧力を圧力ゲージ19で確認しつつ、必要に応じて、圧力調整ユニット17及び18により圧力を調整する。このようにして、中空部の圧力を所望の値に調節できる。所望の圧力に調整した後は、連結部材14とシートとが接続されている連結端部14aと、連結部材15とシートとが接続されている連結端部15aとをそれぞれ溶接することにより、
図2に示した断熱材10を得ることができる。溶接は、公知の手段で行うことができ、例えば熱板方式、ヒートシール方式、レーザー溶接などが挙げられる。
【0040】
図2では、連結部材14及び連結部材15の両方を備える態様を示したが、連結部材はどちらか一方でよく、例えば連結部材15のみでもよい。この場合、連結部材15に真空ポンプを接続して、中空部を減圧又は真空にし、その後、連結端部15aを溶接して、断熱材を作製することができる。
さらに、連結部材15の形状は、図面の内容に限定されず、断熱材と真空ポンプを連結できる形状であれば如何なる形状であってもよい。
【0041】
断熱材形成用成形体は、例えば、連結部材を設けた上部シートと、下部シートを公知の手段で別々に成形して、上部シート成形体と下部シート成形体を準備し、両者を貼り合せる方法が挙げられる。断熱材に支柱を設ける場合は、上部シート成形体及び下部シート成形体の少なくともいずれか一方に支柱を有するように成形し、両者を貼り合せればよい。
別の方法としては、断熱材形成用成形体は、例えば3Dプリンターを用いて一体的に成形することもできる。3Dプリンターを用いる成形方式としては、特に限定されないが、気密性を重視すると、光造形(SLA、DLP、CLIP)方式が好ましい。
【0042】
断熱材10の中空部12が、互いに連通しない複数のブロックに分割されている場合、得られた断熱材10を更に複数箇所で溶接してブロックに分割することで得られる。
【0043】
自動車等の車両30の外形は、流線型を有していることが多く、それに合わせてルーフパネル32、ドアパネル33A~33Dなどの外装材も曲面状に形成されることが多い。
本発明の断熱材10は、平面状であってもよいが、ルーフパネル32、ドアパネル33A~33Dなどの外装材の曲面に合わせて、少なくとも一部を曲面状にしてもよい。断熱材10は、曲面状にする場合、予め曲面状に成形した上部シート11aと、下部シート11bを用意してもよいが、断熱材10に成形した後に熱加工などすることで曲面状としてもよい。
本発明の断熱材10は、上部シート11a及び下部シート11bを樹脂製とすると、容易に曲面状に成形できる。
【0044】
[車両]
本発明の車両は、外装材の直下に上述の断熱材10が設置されたものである。外装材の直下に上述の断熱材10が設置された車両であることで、制御用機器類50の搭載場所として不適であった車両30を構成する外装材であるルーフパネル32及びドアパネル33A~33Dの近傍であっても制御用機器類50を搭載することを可能とし、従来使用されていなかった空間の有効利用を可能とする。
【0045】
[断熱材の設置方法]
本発明の断熱材の設置方法は、上述の断熱材を用意する工程と、車両を構成する外装材の直下に断熱材を設置する工程とを含む。
断熱材を設置する工程において、断熱材の設置位置は、車両を構成する外装材の直下であればよく、車両を構成する外装材の内面に接して設置されることが好ましい。
本発明の断熱材の設置方法によれば、車両を構成する外装材の直下に断熱材を設置することができ、制御用機器類の搭載場所として不適であった車両を構成する外装材の近傍であっても制御用機器類を搭載することを可能とし、従来使用されていなかった空間の有効利用を可能とする。
【0046】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と相違する点は、
図7に示すように、断熱材10が制御用機器類を搭載する屋外型制御盤キャビネット40を構成する外装材(外装パネル42A~42E)の直下に設置される点である。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。また、説明を省略する部分は、第1の実施形態と同様である。また、以下の説明では、上記第1の実施形態と同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
【0047】
屋外型制御盤キャビネット40は、
図7に示すように、断熱材10が設置された外装パネル42A~42Eが、ビスなどの固定部材によりキャビネットフレーム41に固定されている。屋外型制御盤キャビネット40の上部には、雨水、砂塵及び昆虫類等の侵入を抑制する屋根部43が設けられている。また、屋外型制御盤キャビネット40の下部には、下部からの水分、砂塵及び昆虫類等の侵入を抑制する床部44が設けられている。
【0048】
[断熱材]
断熱材10の厚さは、屋外型制御盤キャビネット40の省スペース化及び軽量化に寄与する観点から、薄いものであることであることが好ましく、具体的には、2.0mm以下であることが好ましく、1.8mm以下であることがより好ましく、1.6mm以下であることがさらに好ましい。
【0049】
断熱材10は、
図8(a)~(c)及び
図9(a)~(c)に示すように、屋外型制御盤キャビネット40を構成する外装材である外装パネル42A~42Eの直下に設置される。
図8(a)は屋外型制御盤キャビネット40の斜視図を表し、
図8(b)は、
図8(a)の矢視D-Dからみた断面図を表し、
図8(c)は、
図8(b)の点線で囲われた箇所の拡大図を表す。また、
図9(a)は屋外型制御盤キャビネット40の斜視図を表し、
図9(b)は、
図9(a)の矢視E-Eからみた断面図を表し、
図9(c)は、
図9(b)の点線で囲われた箇所の拡大図を表す。断熱材10は、屋外型制御盤キャビネット40を構成する外装材の直下に設置されることで、太陽光による日射により上昇した外装材表面温度の熱伝導を緩和することができる。
屋外型制御盤キャビネット40を構成する外装材である外装パネル42A~42Eの直下に、断熱材10を設置する形態としては、外装パネル42A~42Eの直下に断熱材10を設置すればよく、例えば、外装パネル42A~42Eの内面に両面テープ等により接着して設置することができるが、外装パネル42A~42Eの直下に設置される限り、第1の実施形態で説明したとおり他の態様によって設置されてもよい。
【0050】
屋外型制御盤キャビネット40を構成する外装材である外装パネル42A~42Eの直下に設置した断熱材10は、太陽光による日射により上昇した外装材表面温度の熱伝導を緩和し、断熱材10を設置した空間の温度上昇を抑制することで、外装材の内側に熱に弱い制御用機器類51の設置を可能とする。
制御用機器類51は、例えば、電気制御機器、通信機器、その他の電気又は電子機器等である。制御用機器類51は、ビスなどの固定部材により、屋外型制御盤キャビネット40の内部に設置されたラックフレーム45に固定される。
【0051】
図8(c)及び
図9(c)に示すように、制御用機器類51と、屋外型制御盤キャビネット40の外装パネル42Dとの距離Lは、太陽光の日射による温度上昇の影響を制御用機器類51に及ばせないために、50mm以上であることが好ましく、75mm以上であることがより好ましく、100mm以上であることがさらに好ましい。また、制御用機器類51と、屋外型制御盤キャビネット40の外装パネル42Dとの距離Lは、省スペースに寄与する観点から、400mm以下であることが好ましく、300mm以下であることがより好ましく、200mm以下であることがさらに好ましい。
【0052】
以上の構成によれば、屋外型制御盤キャビネット40を構成する外装材である外装パネル42A~42Eの直下に設置された断熱材10が、仮に破損したり、経年劣化などにより圧力が開放されたりした場合であっても、断熱材10の内部が中空であり、芯材を有していないため、断熱材10を構成する材料から塵および埃等を出すことがなく、制御用機器類51の動作を阻害することないので、制御用機器類51の動作の安全性を担保することができる。また、屋外型制御盤キャビネット40を構成する外装材である外装パネル42A~42Eの直下に設置された断熱材10は、その内部に芯材を有していないため、仮に破損した場合であっても、芯材の膨張及び変化が生じることがないので、断熱材10の形状を保持できるため、断熱材10の変化に伴う制御用機器類51の変化等の不良を防ぐことができる。
また、薄型であっても、高い断熱性を確保する断熱材10は、従来の屋外型制御盤キャビネットのような外付け遮熱板がなくても、制御用機器類51の機能を確保しつつ搭載することを可能となるので、軽量で省スペースである屋外型制御盤キャビネットとすることができる。
なお、第2の実施形態として、自立型の屋外型制御盤キャビネットの例を示したが、自立型に限定されず、壁面に取り付けられる壁面取付タイプであってもよい。
【0053】
[屋外型制御盤キャビネット]
本発明の屋外型制御盤キャビネットは、外装材の直下に上述の断熱材10が設置されたものである。外装材の直下に上述の断熱材10が設置された屋外型制御盤キャビネットであることで、従来の屋外型制御盤キャビネットのような外付け遮熱板を必要とせずに、制御用機器類51の機能を確保しつつ搭載することを可能となるので、軽量で省スペースとすることができる。
【0054】
また、本発明の屋外型制御盤キャビネット40Aは、
図10(a)及び(b)に示すように、外装材である外装パネル42A~42Dのそれぞれに、遮光板45A~45Dを取り付ける構成とすることができる。
図10(a)は屋外型制御盤キャビネット40Aの斜視図を表し、
図10(b)は、外装パネル42A~42Dのそれぞれに遮光板45A~45Dが取り付けられている構成であることを示す斜視図を表す。遮光板45A~45Dは、ビスなどの固定部材により、外装パネル42A~42Dのそれぞれの外面側に固定される。遮光板45A~45Dとしては、太陽光による日射を遮ることが可能な材料であれば特に限定はなく、例えば、汎用鋼板、ステンレス板及びアルミ板等の軽金属板を使用することができる。屋外型制御盤キャビネット40Aは、遮光板45A~45Dによって太陽光による日射を遮ることで、屋外型制御盤キャビネット50Aの表面が高温となることを防ぐことができ、それにより屋外型制御盤キャビネット50Aの内部温度の上昇を抑制することができる。
【0055】
[断熱材の設置方法]
本発明の断熱材の設置方法は、上述の断熱材を用意する工程と、屋外型制御盤キャビネットを構成する外装材の直下に断熱材を設置する工程とを含む。
断熱材を設置する工程において、断熱材の設置位置は、屋外型制御盤キャビネットを構成する外装材の直下であればよく、屋外型制御盤キャビネットを構成する外装材の内面に接して設置されることが好ましい。
本発明の断熱材の設置方法によれば、屋外型制御盤キャビネットを構成する外装材の直下に断熱材を設置することができ、従来の屋外型制御盤キャビネットのような外付け遮熱板を必要とせずに、制御用機器類51の機能を確保しつつ搭載することを可能となるので、軽量で省スペースとすることができる。
【実施例0056】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0057】
〔試験モデルの作製〕
車両又は屋外型制御盤キャビネットに搭載される制御用機器類の使用状態を指標として、
図11に示すような試験モデル60の天面部以外をポリスチレンフォームで作製し、開放した試験モデル60の天面部を車両又は屋外型制御盤キャビネットの外装材に見立てたアルミ板61(厚さ1.8mm:0.6mm板厚の3枚重ね)で覆った。試験モデル60の内部は、
図11の矢視F-Fからみた断面図である
図12に示す。試験モデル60の天面上部が、車両又は屋外型制御盤キャビネットにおける屋外を想定し、試験モデル60の内部が、車両又は屋外型制御盤キャビネットにおける制御用機器類を搭載する設置位置を想定する。
アルミ板61上には、発熱モジュール66を設置し、発熱モジュール66は、外装材に見立てたアルミ板61を加熱することで、太陽光の日射での外装材表面温度上昇を再現した。また、アルミ板61の直下には、下記で作製した断熱材10(厚さ1.5mm)を設置した。
試験モデル60は、試験中の発熱モジュール66の温度を測定する第1温度センサー62と、アルミ板61から5mm位置に設置された第2温度センサー63と、アルミ板61から100mm位置に設置された第3温度センサー64と、アルミ板61から200mm位置に設置された第4温度センサー65とをさらに備える。なお、第2温度センサー63は、車両における制御用機器類を搭載する設置位置の温度を測定することを想定し、第3温度センサー64及び第4温度センサー65は、屋外型制御盤キャビネットにおける制御用機器類を搭載する設置位置の温度を測定することを想定する。
【0058】
〔断熱材の作製〕
原料として硬質塩化ビニル樹脂板を用いて、多軸切削加工機により加工後、上下加工物を貼り合わせ、
図13に示す形状の断熱材形成用成形体20を得た。次いで、得られた断熱材形成用成形体20に設けられた連結部材15に真空ポンプを接続し、真空ポンプを稼働させることで、中空部の圧力が5Pa以下の平板状の断熱材(縦200mm×横200mm)を得た。中空部の圧力の調整は、圧力ゲージで圧力を確認しつつ行った。得られた断熱材は、上部シート及び下部シートの厚みがそれぞれ0.5mmであり、シート間の距離(クリアランス)が0.5mmであり、断熱材の厚み(総厚み)が1.5mmであった。また該断熱材には上部シートと下部シートを連結する複数の支柱13が設けられており、その支柱はその端面がハニカム構造を形成するように配置されていた。支柱13は直径が1.0mmの円柱状であり、上記ハニカム構造(正六角形)の半径は11.0mmであった。支柱13の数は、シート面積400cm
2あたり、210個であった。
断熱材の熱抵抗値は、0.56m
2・K/Wであった。
【0059】
(実施例1)
発熱モジュール66の温度は70℃に固定して、試験を開始した。
JIS Z 8703:1983に準拠し、測定環境をJIS標準状態として、第2温度センサー63にて、試験開始から2時間までのアルミ板61から5mm位置の温度を測定し、車両における制御用機器類を搭載する設置位置の想定温度を測定した。結果を
図15のグラフに示す。
【0060】
(比較例1)
試験モデルとして、
図14に示すように、アルミ板61の直下には断熱材10を設置せずに、アルミ板61(厚さ1.8mm)のみを設置した以外は、実施例1と同様とした。
JIS Z 8703:1983に準拠し、測定環境をJIS標準状態として、第2温度センサー63にて、試験開始から2時間までのアルミ板61から5mm位置の温度を測定し、車両における制御用機器類を搭載する設置位置の想定温度を測定した。結果を
図15のグラフに示す。
【0061】
図15のグラフの結果より、アルミ板61の直下に断熱材10を設置することで温度上昇を9.58℃緩和し、制御用機器類が熱による寿命低下を助長する温度及び故障頻度が増す温度領域である45℃以上への到達も約17分間遅延可能となった。
よって、本発明の断熱材10を使用することで、車両における屋根及びドアの空間を制御用機器類の搭載場所として活用することが可能となった。
【0062】
(実施例2)
発熱モジュール66の温度は70℃に固定して、試験を開始した。
JIS Z 8703:1983に準拠し、測定環境をJIS標準状態として、第3温度センサー64にて、試験開始から2時間までのアルミ板61から100mm位置の温度を測定し、屋外型制御盤キャビネットにおける制御用機器類を搭載する設置位置の想定温度を測定した。結果を
図16のグラフに示す。
【0063】
(比較例2)
試験モデルとして、
図14に示すように、アルミ板61の直下には断熱材10を設置せずに、アルミ板61(厚さ1.8mm)のみを設置した以外は、実施例2と同様とした。
JIS Z 8703:1983に準拠し、測定環境をJIS標準状態として、第3温度センサー64にて、試験開始から2時間までのアルミ板61から100mm位置の温度を測定し、屋外型制御盤キャビネットにおける制御用機器類を搭載する設置位置の想定温度を測定した。結果を
図16のグラフに示す。
【0064】
図16のグラフの結果より、アルミ板61の直下に断熱材10を設置することで温度上昇を7.37℃緩和した。
従来の屋外型制御盤キャビネットのような外付け遮熱板を使用した場合の緩和効果は2~4℃であることから、本発明の断熱材10を使用すれば、断熱として約2倍の緩和効果をもたらし、他の熱対策として使用される換気装置及び冷却装置の能力仕様低減等による経済効果も同時にもたらすことも期待できる。
【0065】
(実施例3)
発熱モジュール66の温度は70℃に固定して、試験を開始した。
JIS Z 8703:1983に準拠し、測定環境をJIS標準状態として、第4温度センサー65にて、試験開始から2時間までのアルミ板61から200mm位置の温度を測定し、屋外型制御盤キャビネットにおける制御用機器類を搭載する設置位置の想定温度を測定した。結果を
図17のグラフに示す。
【0066】
(比較例3)
試験モデルとして、
図14に示すように、アルミ板61の直下には断熱材10を設置せずに、アルミ板61(厚さ1.8mm)のみを設置した以外は、実施例3と同様とした。
JIS Z 8703:1983に準拠し、測定環境をJIS標準状態として、第4温度センサー65にて、試験開始から2時間までのアルミ板61から200mm位置の温度を測定し、屋外型制御盤キャビネットにおける制御用機器類を搭載する設置位置の想定温度を測定した。結果を
図17のグラフに示す。
【0067】
図17のグラフの結果より、アルミ板61の直下に断熱材10を設置することで温度上昇を5.70℃緩和した。
相対的に測定雰囲気温度に近郊したため、結果として緩和効果が減少しているが、本発明の断熱材10を使用することで空間内部温度の上昇が抑制されていることが分かる。