(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085802
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】床版の架設構造及び床版の架設方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20230614BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200044
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】山中 宏之
(72)【発明者】
【氏名】一宮 利通
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 一弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 克哉
(72)【発明者】
【氏名】永井 勇輔
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG39
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】床版間の連結の品質を向上させる。
【解決手段】第1床版110の第1側面113と第2床版120の第2側面123とを間隙ghを隔てて互いに対向させつつ、第1床版110と第2床版120とを連結する床版の架設構造1において、第1床版110の第1上面111と第2床版120の第2上面121とに当接する上側当接部材11と、第1床版110の第1下面112と第2床版120の第2下面122とに当接する下側当接部材12とが、間隙ghに配置され上下方向に延在する管部材13の内側において上側当接部材11と下側当接部材12とに跨って延在する締結部材14により締結され、第1床版110及び第2床版120が動かないように固定され、間詰固化体15は管部材13の外側に充填されるため、車両の通行等の振動による間隙ghの間詰固化体15の打設及び養生への影響が低減され、床版間の連結の品質を向上できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1床版の第1側面と第2床版の第2側面とを間隙を隔てて互いに対向させつつ、前記第1床版と前記第2床版とを連結する床版の架設構造であって、
前記第1床版の第1上面と、前記第2床版の第2上面とに当接する上側当接部材と、
前記第1床版の第1下面と、前記第2床版の第2下面とに当接する下側当接部材と、
前記間隙に配置され上下方向に延在する管部材と、
前記管部材の内側において前記上側当接部材と前記下側当接部材とに跨って延在し、前記上側当接部材と前記下側当接部材とを締結する締結部材と、
前記間隙において前記管部材の外側に充填された間詰固化体と、
を備えた床版の架設構造。
【請求項2】
第1床版の第1側面と第2床版の第2側面とを間隙を隔てて互いに対向させつつ、前記第1床版と前記第2床版とを連結する床版の架設方法であって、
前記第1床版を設置する第1床版設置工程と、
前記第1床版設置工程で設置された前記第1床版の前記第1側面と、前記第2床版の前記第2側面とを前記間隙を隔てて互いに対向させつつ、前記第2床版を設置する第2床版設置工程と、
前記第1床版設置工程で設置された前記第1床版の第1上面と、前記第2床版設置工程で設置された前記第2床版の第2上面とに跨って上側当接部材を当接させる上側当接工程と、
前記第1床版設置工程で設置された前記第1床版の第1下面と、前記第2床版設置工程で設置された前記第2床版の第2下面とに跨って下側当接部材を当接させる下側当接工程と、
前記間隙で上下方向に延在する管部材の内側において前記上側当接工程で前記第1上面と前記第2上面とに当接させられた前記上側当接部材と前記下側当接工程で前記第1下面と前記第2下面とに当接させられた前記下側当接部材とに跨って延在する締結部材により、前記上側当接部材と前記下側当接部材とを締結する締結する締結工程と、
前記間隙において前記管部材の外側に間詰固化材を充填し間詰固化体を生成する間詰工程と、
を備えた床版の架設方法。
【請求項3】
前記間詰工程の後に前記締結部材を撤去する撤去工程と、
前記撤去工程の後に前記管部材により前記間詰固化体に形成された孔部に充填材を充填する孔部充填工程と、
を備えた、請求項2に記載の床版の架設方法。
【請求項4】
前記撤去工程では、間詰工程の後に前記管部材を撤去し、
前記孔部充填工程では、前記撤去工程で前記管部材が撤去された後に前記孔部に充填材を充填する、請求項3に記載の床版の架設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版の架設構造及び床版の架設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
拡幅工事及び補修工事等において、複数の床版を設置し、設置された複数の床版同士を連結する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、2枚の床版のそれぞれの間隙に、2枚の床版の上面に沿った仮覆工板3と2枚の床版の下面に沿った補強梁材4と、仮覆工板3と補強梁材4とを締結する連結ボルト5が取り付けられ、中空の継手部2が形成される技術が開示されている。連結ボルト5及び補強梁材4が撤去され、仮覆工板3のみが置かれた状態で、2枚の床版の下面に型枠8が設置され、間詰コンクリートが打設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような技術では、設置された複数の床版のいずれか、又は設置された複数の床版に隣接した区域は、車両の通行のための道路として供用されることがある。このような場合、車両の通行による振動により設置された床版が動き、設置された床版間の間詰コンクリートの打設及び養生に不具合が生じる可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、床版間の連結の品質を向上できる床版の架設構造及び床版の架設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1床版の第1側面と第2床版の第2側面とを間隙を隔てて互いに対向させつつ、第1床版と第2床版とを連結する床版の架設構造であって、第1床版の第1上面と、第2床版の第2上面とに当接する上側当接部材と、第1床版の第1下面と、第2床版の第2下面とに当接する下側当接部材と、間隙に配置され上下方向に延在する管部材と、管部材の内側において上側当接部材と下側当接部材とに跨って延在し、上側当接部材と下側当接部材とを締結する締結部材と、間隙において管部材の外側に充填された間詰固化体とを備えた床版の架設構造である。
【0007】
この構成によれば、第1床版の第1側面と第2床版の第2側面とを間隙を隔てて互いに対向させつつ、第1床版と第2床版とを連結する床版の架設構造において、第1床版の第1上面と第2床版の第2上面とに当接する上側当接部材と、第1床版の第1下面と第2床版の第2下面とに当接する下側当接部材とが、間隙に配置され上下方向に延在する管部材の内側において上側当接部材と下側当接部材とに跨って延在する締結部材により締結され、第1床版及び第2床版が動かないように固定され、間詰固化体は管部材の外側に充填されるため、車両の通行等の振動による間隙の間詰固化体の打設及び養生への影響が低減され、床版間の連結の品質を向上できる。
【0008】
また、本発明は、第1床版の第1側面と第2床版の第2側面とを間隙を隔てて互いに対向させつつ、第1床版と第2床版とを連結する床版の架設方法であって、第1床版を設置する第1床版設置工程と、第1床版設置工程で設置された第1床版の第1側面と、第2床版の第2側面とを間隙を隔てて互いに対向させつつ、第2床版を設置する第2床版設置工程と、第1床版設置工程で設置された第1床版の第1上面と、第2床版設置工程で設置された第2床版の第2上面とに跨って上側当接部材を当接させる上側当接工程と、第1床版設置工程で設置された第1床版の第1下面と、第2床版設置工程で設置された第2床版の第2下面とに跨って下側当接部材を当接させる下側当接工程と、間隙で上下方向に延在する管部材の内側において上側当接工程で第1上面と第2上面とに当接させられた上側当接部材と下側当接工程で第1下面と第2下面とに当接させられた下側当接部材とに跨って延在する締結部材により、上側当接部材と下側当接部材とを締結する締結する締結工程と、間隙において管部材の外側に間詰固化材を充填し間詰固化体を生成する間詰工程とを備えた床版の架設方法である。
【0009】
この場合、間詰工程の後に締結部材を撤去する撤去工程と、撤去工程の後に管部材により間詰固化体に形成された孔部に充填材を充填する孔部充填工程とを備えることが好適である。
【0010】
この構成によれば、撤去工程で間詰工程の後に、管部材の内側において上側当接部材と下側当接部材とに跨って延在していた締結部材が撤去されるため、間詰工程で管部材の外側に充填された間詰固化体が障害となることなく締結部材を撤去でき、締結部材の撤去が容易である。孔部充填工程で撤去工程の後に管部材により間詰固化体に形成された孔部に充填材が充填されるため、撤去工程及び孔部充填工程の後に、間隙の部位を車両の通行のために供用できる。
【0011】
この場合、撤去工程では、間詰工程の後に管部材を撤去し、孔部充填工程では、撤去工程で管部材が撤去された後に孔部に充填材を充填することが好適である。
【0012】
この構成によれば、撤去工程では間詰工程の後に管部材が撤去され、孔部充填工程では、撤去工程で管部材が撤去された後に孔部に充填材が充填されるため、孔部に管部材を残置することなく孔部を充填材で充填できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の床版の架設構造及び床版の架設方法によれば、床版間の連結の品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法の対象となる道路橋の平面図であり、(B)は(A)のα線による縦断面図であり、(C)は第1車線の既設床版を撤去する工程を示す平面図であり、(D)は(C)のβ線による縦断面図であり、(E)は第1車線における第1床版設置工程及び第2床版設置工程を示す平面図であり、(F)は(E)のγ線による縦断面図であり、(G)は第1車線の間隙における孔部充填工程を示す平面図であり、(H)は(G)のδ線による縦断面図であり、(I)は第1車線に本舗装工程を行った後に第2車線の既設床版を撤去する工程を示す平面図であり、(J)は(I)のε線による縦断面図であり、(K)は第2車線における第2床版設置工程を示す平面図であり、(L)は(K)のζ線による縦断面図である。
【
図2】(A)は第1車線と第2車線との間隙における孔部充填工程及び第1車線の第1床版と第2車線の第2床版との間にポストテンションを付与する工程を示す平面図であり、(B)は(A)のη線による縦断面図であり、(C)は第2車線の間隙における孔部充填工程を示す平面図であり、(D)は(C)のθ線による縦断面図であり、(E)は第2車線に本舗装工程を行って第1車線及び第2車線を供用する工程を示す平面図であり、(F)は(E)のι線による縦断面図である。
【
図3】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法での第1車線における第1床版設置工程、第2床版設置工程及び第1車線の間隙における上側当接工程を示す平面図であり、(B)は(A)のκ線による縦断面図である。
【
図4】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法での第1車線の間隙における下側当接工程及び締結工程を示す平面図であり、(B)は(A)のλ線による縦断面図である。
【
図5】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法での第1車線の間隙における間詰工程及び床版の架設構造を示す平面図であり、(B)(A)のμ線による縦断面図である。
【
図6】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法での第1車線の間隙における撤去工程を示す平面図であり、(B)(A)のν線による縦断面図である。
【
図7】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法での第1車線の間隙における孔部充填工程を示す平面図であり、(B)(A)のξ線による縦断面図である。
【
図8】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法での第1車線と第2車線との間隙における床版の架設構造を示す平面図であり、(B)(A)のο線による縦断面図である。
【
図9】(A)は第2実施形態に係る床版の架設方法での第1車線における第2床版設置工程を示す平面図であり、(B)は(A)のπ線による縦断面図である。
【
図10】(A)は第2実施形態に係る床版の架設方法での第1車線における上側当接工程、下側当接工程及び締結工程を示す平面図であり、(B)は(A)のρ線による縦断面図である。
【
図11】(A)は第3実施形態に係る床版の架設方法での第1車線における第2床版設置工程を示す平面図であり、(B)は(A)のσ線による縦断面図である。
【
図12】(A)は第3実施形態に係る床版の架設方法での第1車線における上側当接工程、下側当接工程及び締結工程を示す平面図であり、(B)は(A)のτ線による縦断面図である。
【
図13】(A)は第4実施形態に係る床版の架設方法での第1車線の既設床版の一部を撤去する工程を示す平面図であり、(B)は(A)のυ線による縦断面図であり、(C)は第1車線における第1床版設置工程及び第2床版設置工程を示す平面図であり、(D)は(C)のφ線による縦断面図であり、(E)は第1車線に上側当接部材を残置して仮舗装をした仮舗装工程を示す平面図であり、(F)は(E)のχ線による縦断面図であり、(G)は第1車線の既設床版の全部の取り換え、本舗装工程及び第2車線の既設床版の一部の撤去後の第2車線における第2床版設置工程を示す平面図であり、(H)は(G)のψ線による縦断面図であり、(I)は第2車線に上側当接部材を残置して仮舗装をした仮舗装工程及び第1車線の第1床版と第2車線の第2床版との間にポストテンションを付与する工程を示す平面図であり、(J)は(I)のω線による縦断面図であり、(K)は第2車線の既設床版の全部の取り換えの終了後に第2車線に本舗装工程を行なって第1車線及び第2車線を供用する工程を示す平面図であり、(L)は(K)のΑ線による縦断面図である。
【
図14】(A)は第4実施形態に係る床版の架設方法での第1車線に上側当接部材を残置して仮舗装をした仮舗装工程を示す平面図であり、(B)は(A)のΒ線による縦断面図である。
【
図15】(A)は第5実施形態に係る床版の架設方法での第1車線の既設床版の一部を撤去する工程を示す平面図であり、(B)は(A)のΓ線による縦断面図であり、(C)は第1車線における第1床版設置工程及び第2床版設置工程を示す平面図であり、(D)は(C)のΔ線による縦断面図であり、(E)は第1車線に上側当接部材を残置して仮舗装をした仮舗装工程を示す平面図であり、(F)は(E)のΕ線による縦断面図であり、(G)は第1車線の既設床版の全部の取り換え、第1車線に上側当接部材を残置して本舗装をした本舗装工程及び第2車線の既設床版の一部の撤去後の第2車線における第2床版設置工程を示す平面図であり、(H)は(G)のΖ線による縦断面図であり、(I)は第2車線に上側当接部材を残置して仮舗装を施した仮舗装工程及び第1車線の第1床版と第2車線の第2床版との間にポストテンションを付与する工程を示す平面図であり、(J)は(I)のΗ線による縦断面図であり、(K)は第2車線の既設床版の全部の取り換えの終了後に第2車線に上側当接部材を残置して本舗装を施す本舗装工程を行なって第1車線及び第2車線を供用する工程を示す平面図であり、(L)は(K)のΘ線による縦断面図である。
【
図16】(A)は第5実施形態に係る床版の架設方法での第1車線の間隙における間詰工程及び床版の架設構造を示す平面図であり、(B)(A)のΙ線による縦断面図である。
【
図17】(A)は第5実施形態に係る床版の架設方法での第1車線に上側当接部材を残置して仮舗装を施した仮舗装工程を示す平面図であり、(B)は(A)のΚ線による縦断面図である。
【
図18】(A)は第5実施形態に係る床版の架設方法での第1車線に上側当接部材を残置して本舗装を施した本舗装工程を示す平面図であり、(B)は(A)のΛ線による縦断面図である。
【
図19】(A)は第6実施形態に係る床版の架設方法の対象となる道路橋の平面図であり、(B)は第1車線の既設床版を撤去する工程を示す平面図であり、(C)は第1車線における第1床版設置工程及び第2床版設置工程を示す平面図であり、(D)は第1車線における間詰工程を示す平面図であり、(E)は第1車線に本舗装工程を行った後に第2車線の既設床版を撤去する工程を示す平面図であり、(F)は第2車線及び第1車線と第2車線との間における間詰工程を示す平面図であり、(G)は第1車線の第1床版と第2車線の第2床版との間にポストテンションを付与する工程及び第2車線に本舗装工程を行った後に第3車線の既設床版を撤去する工程を示す平面図であり、(H)は第3車線及び第2車線と第3車線との間における間詰工程並びに第1車線の第1床版と第2車線の第2床版と第3車線の第3床版との間にポストテンションを付与する工程を示す平面図であり、(I)は第3車線に本舗装工程を行って第1車線、第2車線及び第3車線を供用する工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る床版の架設構造及び床版の架設方法について詳細に説明する。本発明の第1実施形態に係る床版の架設構造及び床版の架設方法は、
図1(A)及び
図1(B)に示されるように、例えば、橋桁の上に設置された既設床版50を取り換える際に、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に新たに設置された複数の床版の側面同士を間隙を隔てて互いに対向させつつ、床版同士を連結するためのものである。既設床版50の橋軸直角方向D2の両端部上には、壁高欄130,230がそれぞれ設置されている。
図1(A)及び
図1(B)の例では、既設床版50上が第1車線100及び第2車線200を有する片側二車線の道路として供用されている。
【0016】
図1(C)及び
図1(D)に示されるように、既設床版50は、第1車線100及び第2車線200の区画に沿って橋軸直角方向D2に二分割される。第1車線100の既設床版50及び壁高欄130が撤去され、第2車線200の既設床版50が残置される。第2車線200に残置された既設床版50の壁高欄230とは反対側の端部上には、仮設防護柵301が設置される。第2車線200に残置された既設床版50上は片側一車線の道路として供用される。第1車線100上は通行止めとなる。
【0017】
図1(E)、
図1(F)、
図3(A)及び
図3(B)に示されるように、第2車線200に残置された既設床版50上が片側一車線の道路として供用されつつ、第1車線100に第1床版110を設置する第1床版設置工程が行われる。第1床版設置工程で設置された第1床版110の第1側面113と、第2床版120の第2側面123とを橋軸直角方向D2に延在する間隙(横目地)ghを隔てて互いに対向させつつ、第1車線100に第2床版120を設置する第2床版設置工程が行われる。
図3(B)に示されるように、間隙(横目地)ghにおいて、第1側面113は凹部110Cを含み、第2側面123は凹部120Cを含む。第1床版110及び第2床版120のそれぞれの凹部110C,120Cから、第1床版110及び第2床版120のそれぞれに基部が埋設され、先端部に定着体を含む鉄筋114,124が突出していて、鉄筋114、124は橋軸方向D1に互い重なり配置される。鉄筋114,124には、橋軸直角方向D2に沿って鉄筋114,124に直交するように配力筋140が配置される。なお、第1床版110は第1上面111及び第1下面112を有し、第2床版120は第2上面121及び第2下面122を有する。
【0018】
図3(A)及び
図3(B)に示されるように、第1床版設置工程で設置された第1床版110の第1上面111と、第2床版設置工程で設置された第2床版120の第2上面121とに跨って上側当接部材11を当接させる上側当接工程が行われる。上側当接部材11は、平面視で長方形のSM490等の鋼板から形成された部材である。
図2(B)に示されるように、上側当接部材11は、第1上面111及び第2上面121に対向する面に、第1床版110と第2床版120とに跨って凹んだ凹部11cを有する。
図3(A)及び
図3(B)に示されるように、上側当接部材11は、凹部11cに開口した孔部11hを有する。孔部11hは凹部11cとは反対側の面まで貫通していてもよいが、本実施形態では孔部11hは凹部11cとは反対側の面まで貫通していない有底のボルト用の孔部である。
【0019】
本実施形態では、例えば、第1床版設置工程及び第2床版設置工程の後に、上側当接部材11の凹部11c及び孔部11hを間隙ghに合わせるように上側当接部材11を第1床版110の第1上面111及び第2床版120の第2上面121に配置することにより、上側当接工程が行われる。
【0020】
図4(A)及び
図4(B)に示されるように、第1床版設置工程で設置された第1床版110の第1下面112と、第2床版設置工程で設置された第2床版120の第2下面122とに跨って下側当接部材12を当接させる下側当接工程が行われる。下側当接部材12は、長方形のSM490等の鋼板から形成された部材である。
図4(B)に示されるように、下側当接部材12は、第1下面112及び第2下面122に対向する面に、第1床版110と第2床版120とに跨って凹んだ凹部12cを有する。
図4(A)及び
図4(B)に示されるように、下側当接部材12は、凹部12cに開口した孔部12hを有する。本実施形態では、孔部12hは凹部12cとは反対側の面まで貫通している貫通孔であるボルト用の孔部である。
【0021】
間隙ghで上下方向に延在する管部材13の内側において上側当接工程で第1上面111と第2上面121とに当接させられた上側当接部材11と下側当接工程で第1下面112と第2下面122とに当接させられた下側当接部材12とに跨って延在する鋼棒又はPC鋼線である締結部材14により、上側当接部材11と下側当接部材12とを締結する締結する締結工程が行われる。
【0022】
締結部材14は、間隙ghに配置されたシース管等の管部材13の内側に配置され、上側当接部材11と下側当接部材12とに跨って延在している。締結部材14は、ボルト14b及び2つのナット14nを含む。ボルト14bは、両端にネジ溝が設けられている。ボルト14bは、例えば、両端にネジ溝を設けられたPC鋼棒でもよい。ボルト14bの上端は、上側当接部材11の孔部11hに螺合される。ボルト14bの下端は、下側当接部材12の孔部12hに挿通され、2つのナット14nがそれぞれ螺合されている。
【0023】
本実施形態では、例えば、上側当接工程の後に、上側当接部材11の孔部11hに締結部材14のボルト14bの上端が螺合される。管部材13の内側にボルト14bが配置されるように管部材13が間隙ghに配置される。下側当接部材12の孔部12hに締結部材14のボルト14bの下端を挿通させつつ、第1床版設置工程で設置された第1床版110の第1下面112と、第2床版設置工程で設置された第2床版120の第2下面122とに跨って下側当接部材12を当接させる下側当接工程が行われる。
【0024】
ボルト14bの下端に2つのナット14nがそれぞれ螺合されることにより、間隙ghで上下方向に延在する管部材13の内側において上側当接部材11と下側当接部材12とに跨って延在する締結部材14により、上側当接部材11と下側当接部材12とを締結する締結する締結工程が行われる。以上の上側当接工程、下側当接工程及び締結工程のほとんどは、第1床版110の第1下面112と第2床版120の第2下面122とから行うことができる。なお、締結工程の前に、配力筋140が管部材13を間隙ghに配置する障害にならないように、配力筋140は第1床版110の第1側面113及び第2床版120の第2側面123のいずれかの側に寄せて配置される。
【0025】
(横目地)
図5(A)及び
図5(B)に示されるように、間隙ghにおいて管部材13の外側に間詰固化材を充填し、間詰固化材を経時的に固化させて間詰固化体15を生成する間詰工程が行われる。間詰工程では、間隙ghに突出した鉄筋114,124が間詰固化体15により埋設される。間詰工程後に、本実施形態の床版の架設構造1が形成される。本実施形態の架設構造1は、第1床版110の第1側面113と第2床版120の第2側面123とを間隙(横目地)ghを隔てて互いに対向させつつ、第1床版110と第2床版120とを連結する。架設構造1は、架設治具10から形成される。架設治具10は、上側当接部材11、下側当接部材12、管部材13及び締結部材14を含む。
【0026】
架設構造1は、第1床版110の第1上面111と第2床版120の第2上面121とに当接する上側当接部材11と、第1床版110の第1下面112と第2床版120の第2下面122とに当接する下側当接部材12と、間隙ghに配置され上下方向に延在する管部材13と、管部材13の内側において上側当接部材11と下側当接部材12とに跨って延在し、上側当接部材11と下側当接部材12とを締結する締結部材14と、間隙ghにおいて管部材13の外側に充填された間詰固化体15とを備える。なお、間隙(横目地)ghにおいては、鉄筋コンクリート構造であるため、互いに対向する第1側面113の凹部110C及び第2側面123の凹部120Cは、必ずしも存在する必要は無い。凹部110C及び凹部120Cは、間隙(横目地)ghにおいて、上側当接部材11が第1床版110の第1上面111と第2床版120の第2上面121とに跨って当接する長さと、下側当接部材12が第1床版110の第1下面112と第2床版120の第2下面122とに跨って当接する長さとを確保するために設けられる。
【0027】
図6(A)及び
図6(B)に示されるように、間詰工程の後に締結部材14を撤去する撤去工程が行われる。本実施形態においては、撤去工程では、間詰工程の後に上側当接部材11及び下側当接部材12も撤去される。また、撤去工程では、間詰工程の後に管部材13も撤去される。管部材の撤去後には、管部材13により間詰固化体に孔部16が形成される。
【0028】
図7(A)及び
図7(B)に示されるように、撤去工程の後に管部材13によって間詰固化体15により形成された孔部16に充填材17を充填する孔部充填工程が行われる。孔部充填工程では、撤去工程で管部材13が撤去された後に孔部16に充填材17が充填される。以上のようにして、橋軸直角方向D2に延在する間隙(横目地)ghを隔てて互いに対向する第1床版110と第2床版120との連結が完了する。
【0029】
図1(G)及び
図1(H)に示されるように、第1床版110及び第2床版120が設置された第1車線100には壁高欄130及び仮設防護柵301が設置される。
図1(I)及び
図1(J)に示されるように、第1車線100において、第1床版110の第1上面111及び第2床版120の第2上面121等の全ての床版の上面に本舗装60を施す本舗装工程が行われる。第1車線100に設置された第1床版110及び第2床版120の上は片側一車線の道路として供用される。一方、第2車線200に残置された既設床版50、壁高欄230及び仮設防護柵301は撤去される。第2車線200上は通行止めとなる。
【0030】
(縦目地)
図1(K)、
図1(L)、
図8(A)及び
図8(B)に示されるように、第1床版設置工程で第1車線100に設置された第1床版110の第1側面113と、第2床版220の第2側面223とを橋軸方向D1に延在する間隙(縦目地)gvを隔てて互いに対向させつつ、第2車線200に第2床版220を設置する第2床版設置工程が行われる。
図8(B)に示されるように、間隙(縦目地)gvにおいて、第1側面113は凹部110cを含み、第2側面223は凹部220cを含む。また、第2床版120は第2上面221及び第2下面222を有する。
【0031】
上記と同様に、第1床版110の第1上面111と第2床版220の第2上面221とに跨って上側当接部材11を当接させる上側当接工程、第1床版110の第1下面112と第2床版220の第2下面222とに跨って下側当接部材12を当接させる下側当接工程、上側当接部材11と下側当接部材12とを締結する締結工程、及び間隙gvにおいて管部材13の外側に間詰固化材を充填し、間詰固化体15を生成する間詰工程が行われる。
【0032】
図8(A)及び
図8(B)に示されるように、本実施形態の架設構造1は、第1床版110の第1側面113と第2床版220の第2側面223とを間隙(縦目地)gvを隔てて互いに対向させつつ、第1床版110と第2床版220とを連結する。架設構造1は、第1床版110の第1上面111と第2床版220の第2上面221とに当接する上側当接部材11と、第1床版110の第1下面112と第2床版220の第2下面222とに当接する下側当接部材12と、間隙gvに配置され上下方向に延在する管部材13と、管部材13の内側において上側当接部材11と下側当接部材12とに跨って延在し、上側当接部材11と下側当接部材12とを締結する締結部材14と、間隙gvにおいて管部材13の外側に充填された間詰固化体15とを備える。
【0033】
図8(B)に示されるように、本実施形態の第1床版110及び第2床版220は、橋軸直角方向D2に延在する緊張材挿通孔部110h,220hをそれぞれ有している。
図2(A)及び
図2(B)に示されるように、緊張材挿通孔部110h,220hに緊張材400が挿通され、第1床版110と第2床版220との間にポストテンションが付与される。上記と同様に、撤去工程及び孔部充填工程が行われる。以上のようにして、橋軸方向D1に延在する間隙(縦目地)gvを隔てて互いに対向する第1床版110と第2床版220との連結が完了する。間隙(縦目地)gvにおいては、互いに対向する第1側面113の凹部110cと第2側面223の凹部220cとの間には間詰固化体15が充填され、第1床版110と第2床版220とを上下方向にせん断する力に対するせん断キーとして機能する。
【0034】
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)及び
図2(D)に示されるように、第2車線200における間隙ghでの第2床版220の連結は、上記の第1車線100と同様に行われる。
図2(E)及び
図2(F)に示されるように、第2車線200において、第2床版220の第2上面221等の全ての床版の上面に本舗装60を施す本舗装工程が行われる。第1車線100に設置されていた仮設防護柵301が撤去され、第2車線200に壁高欄203が設置される。第1床版110及び第2床版220の上が第1車線100及び第2車線200を有する片側二車線の道路として再び供用される。以上のようにして、既設床版50の取り換えが完了する。
【0035】
本実施形態によれば、第1床版110の第1側面113と第2床版120の第2側面123とを間隙ghを隔てて互いに対向させつつ、第1床版110と第2床版120とを連結する床版の架設構造1において、第1床版110の第1上面111と第2床版120の第2上面121とに当接する上側当接部材11と、第1床版110の第1下面112と第2床版120の第2下面122とに当接する下側当接部材12とが、間隙ghに配置され上下方向に延在する管部材13の内側において上側当接部材11と下側当接部材12とに跨って延在する締結部材14により締結され、第1床版110及び第2床版120が動かないように固定され、間詰固化体15は管部材13の外側に充填されるため、車両の通行等の振動による間隙ghの間詰固化体15の打設及び養生への影響が低減され、床版間の連結の品質を向上できる。
【0036】
また、本実施形態では、上記のように上側当接工程、下側当接工程及び締結工程が行われることにより、ほとんどの作業を第1床版110の第1下面112及び第2床版120の第2下面122の側から行うことができ、床版の取り換えの利便性を向上できる。
【0037】
また、本実施形態によれば、上側当接部材11及び下側当接部材12は、第1床版110と第2床版120とに跨って凹んだ凹部11c,12cを有しているため、振動及び施工誤差等による第1床版110と第2床版120との間の角度の変動に対応し易い。
【0038】
また、本実施形態によれば、撤去工程で間詰工程の後に、管部材13の内側において上側当接部材11と下側当接部材12とに跨って延在していた締結部材14が撤去されるため、間詰工程で管部材13の外側に充填された間詰固化体15が障害となることなく締結部材14を撤去でき、締結部材14の撤去が容易である。また、孔部充填工程で撤去工程の後に管部材13により間詰固化体15に形成された孔部16に充填材17が充填されるため、撤去工程及び孔部充填工程の後に、間隙ghの部位を車両の通行のために供用できる。
【0039】
また、本実施形態によれば、撤去工程では間詰工程の後に管部材13が撤去され、孔部充填工程では、撤去工程で管部材13が撤去された後に孔部16に充填材17が充填されるため、孔部16に管部材13を残置することなく孔部16を充填材17で充填できる。
【0040】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。間隙(横目地)ghでの例として、
図9(A)及び
図9(B)に示されるように、本実施形態の床版の架設方法の第2床版設置工程では、第2床版120に架設治具10の上側当接部材11、下側当接部材12、管部材13及び締結部材14が取り付けられた状態で第2床版120の移動及び設置が行われる。
【0041】
図9(A)及び
図9(B)の例では、長方形状の上側当接部材11及び下側当接部材12の長辺が間隙(横目地)ghが延在する方向である橋軸直角方向D2と平行な状態で、上側当接部材11は第2床版120の第2側面123近傍の第2上面121に当接させられ、下側当接部材12は第2床版120の第2側面123近傍の第2下面122に当接させられている。上側当接部材11と下側当接部材12とは、第2床版120の第2側面123近傍で上下方向に延在する管部材13の内側において上側当接部材11と下側当接部材12とに跨って延在する締結部材14により締結されている。締結部材14のナット14nを占める強度を適宜調整することにより、第2床版120に架設治具10が固定される。なお、第2床版設置工程の前に、配力筋140が管部材13を間隙ghに配置する障害にならないように、例えば、配力筋140は第1床版110の第1側面113の凹部110Cの側に大きく寄せて配置される。
【0042】
図10(A)及び
図10(B)に示されるように、本実施形態の上側当接工程では、締結部材14のナット14nを緩め、第2床版120の第2側面123近傍の第2上面121に当接させられた上側当接部材11を移動させることにより、第1床版110の第1上面111と第2床版120の第2上面121とに跨って上側当接部材11を当接させる。また、本実施形態の下側当接工程では、締結部材14のナット14nを緩め、第2床版120の第2側面123近傍の第2下面122に当接させられた下側当接部材12を移動させることにより、第1床版110の第1下面112と第2床版120の第2下面122とに跨って下側当接部材12を当接させる。
【0043】
本実施形態の締結工程では、上側当接工程及び下側当接工程で緩めた締結部材14のナット14nを再び締めることにより、上側当接部材11と下側当接部材12とを締結する。なお、第2床版設置工程、上側当接工程、下側当接工程及び締結工程のいずれかの終了後には、例えば、配力筋140が管部材13に当接する程度まで、配力筋140は第2床版120の第2側面123の側に可能な限り寄せて再配置されてもよい。間隙(縦目地)gvにおいて、第1床版110及び第2床版220についての第2床版設置工程、上側当接工程、下側当接工程及び締結工程についても、上記と同様に行われる。
【0044】
本実施形態では、第2床版設置工程では、第2床版120に架設治具10の上側当接部材11、下側当接部材12、管部材13及び締結部材14が取り付けられた状態で第2床版120の移動及び設置が行われ、上側当接工程及び下側当接工程は、締結部材14のナット14nを緩めて上側当接部材11及び下側当接部材12を移動させることにより行われ、締結工程は、締結部材14のナット14nを再び締めることにより行われるため、各工程の作業の効率が向上する。
【0045】
以下、本発明の第3実施形態について説明する。間隙(横目地)ghでの例として、
図11(A)及び
図11(B)に示されるように、本実施形態の床版の架設方法の第2床版設置工程では、第2床版120に架設治具10の上側当接部材11、管部材13及び締結部材14のボルト14bが取り付けられた状態で第2床版120の移動及び設置が行われる。
【0046】
図11(A)及び
図11(B)の例では、長方形状の上側当接部材11の長辺が間隙(横目地)ghが延在する方向である橋軸直角方向D2と平行な状態で、上側当接部材11は第2床版120の第2側面123近傍の第2上面121に当接させられている。上側当接部材11の孔部11hに締結部材14のボルト14bの上端が螺合されている。管部材13の内側にボルト14bが配置されるように、管部材13が第2床版120の第2側面123近傍に配置される。なお、上側当接部材11、管部材13及び締結部材14のボルト14bの第2床版120への固定は、上側当接部材11の重量による上側当接部材11と第2床版120の第2上面121との間の摩擦力による他に、接着剤等によってもよい。配力筋140の配置については、上記第2実施形態と同様である。
【0047】
図12(A)及び
図12(B)に示されるように、本実施形態の上側当接工程では、第2床版120の第2側面123近傍の第2上面121に当接させられた上側当接部材11を移動させることにより、第1床版110の第1上面111と第2床版120の第2上面121とに跨って上側当接部材11を当接させる。本実施形態の下側当接工程では、上記第1実施形態と同様に、下側当接部材12の孔部12hに締結部材14のボルト14bの下端を挿通させつつ、第1床版110の第1下面112と、第2床版120の第2下面122とに跨って下側当接部材12を当接させる。
【0048】
本実施形態の締結工程では、上記第1実施形態と同様に、ボルト14bの下端に2つのナット14nをそれぞれ螺合することにより、上側当接部材11と下側当接部材12とを締結する。配力筋140の再配置については、上記第2実施形態と同様である。間隙(縦目地)gvにおいて、第1床版110及び第2床版220についての第2床版設置工程、上側当接工程、下側当接工程及び締結工程についても、上記と同様に行われる。
【0049】
本実施形態では、第2床版設置工程では、第2床版120に架設治具10の上側当接部材11、管部材13及び締結部材14のボルト14bが取り付けられた状態で第2床版120の移動及び設置が行われ、上側当接工程は、上側当接部材11を移動させることにより行われるため、各工程の作業の効率が向上する。
【0050】
以下、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態の床版の架設方法は、例えば、一日の大部分の時間に車両を通行させつつ一日の深夜等の短時間に床版の取り換えの施工が行われることが複数日に亘って繰り返される場合に適用される。つまり、本実施形態は、例えば、各車線の通行止めを伴う床版の取り換えの施工時間が夜間の数時間に制限されており、夜間の数時間の施工時間に各車線において一部の数枚の床版を取り換え、日中を含む施工時間外には当該車線を供用することを繰り返す場合に適用される。
【0051】
図13(A)及び
図13(B)に示されるように、上記第1実施形態と同様の既設床版50上が第1車線100及び第2車線200を有する片側二車線の道路として供用されている場合に、例えば、夜間の数時間の施工時間において、第1車線100は通行止めとなり、第1車線100の既設床版50の一部が撤去される。
図13(C)及び
図13(D)に示されるように、上記第1実施形態と同様に第1車線100において、第1床版設置工程及び第2床版設置工程が行われる。
【0052】
図13(E)、
図13(F)、
図14(A)及び
図14(B)に示されるように、本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、上側当接工程、下側当接工程、締結工程及び間詰工程が行われ、撤去工程では、下側当接部材12、管部材13及び締結部材14が撤去され、上記第1実施形態と同様に孔部充填工程が行われるが、撤去工程において、上側当接部材11は、第1床版110の第1上面111及び第2床版120の第2上面121に残置される。
【0053】
上側当接部材11が第1床版110の第1上面111及び第2床版120の第2上面121に残置された状態で、第1車線100において、第1床版110の第1上面111及び第2床版120の第2上面121に仮舗装61を施す仮舗装工程が行われる。仮舗装61が施された後の日中を含む施工時間外には、第1車線100及び第2車線200は片側二車線の道路として供用される。第1車線100の既設床版50の取り換えが終了するまで、上記と同様に、夜間の数時間の施工時間に第1車線100において一部の数枚の既設床版50を取り換え、日中を含む施工時間外には第1車線100を供用することが繰り返される。
【0054】
図13(G)及び
図13(H)に示されるように、第1車線100の既設床版50の全部の取り換えの終了後に、第1車線100の仮舗装61及び上側当接部材11が撤去される。第1車線100において、第1床版110の第1上面111及び第2床版120の第2上面121等の全ての床版の上面に本舗装60を施す本舗装工程が行われる。第1車線100での本舗装工程の終了後に、第1車線100に設置された第1床版110及び第2床版120の上は片側一車線の道路として供用される。
【0055】
一方、第2車線200においては、上記の第1車線100と同様に、例えば、夜間の数時間の施工時間において、第2車線200は通行止めとなり、第2車線200の既設床版50の一部が撤去される。上記第1実施形態と同様に第2車線200において、第2床版設置工程が行われる。
【0056】
図13(I)及び
図13(J)に示されるように、間隙(縦目地)gvにおいて、上記第1実施形態と同様に、上側当接工程、下側当接工程、締結工程及び間詰工程が行われ、撤去工程では、下側当接部材12、管部材13及び締結部材14が撤去され、上記第1実施形態と同様に孔部充填工程が行われるが、撤去工程において、上側当接部材11は、第1床版110の第1上面111及び第2床版220の第2上面221に残置される。
【0057】
また、上記第1実施形態と同様に、緊張材400により第1床版110と第2床版220との間にポストテンションが付与される。また、第2車線200における間隙(横目地)ghにおける上側当接工程、下側当接工程、締結工程、間詰工程、撤去工程及び孔部充填工程は、第1車線100における間隙(横目地)ghと同様に行われる。
【0058】
上側当接部材11が第1床版110の第1上面111及び第2床版220の第2上面221に残置された状態で、第2車線200において、第2床版220の第2上面221に仮舗装61を施す仮舗装工程が行われる。仮舗装61が施された後の日中を含む施工時間外には、第1車線100及び第2車線200は片側二車線の道路として供用される。第2車線200の既設床版50の取り換えが終了するまで、上記と同様に、夜間の数時間の施工時間に第2車線200において一部の数枚の既設床版50を取り換え、日中を含む施工時間外には第2車線200を供用することが繰り返される。
【0059】
図13(K)及び
図13(L)に示されるように、第2車線200の既設床版50の全部の取り換えの終了後に、第2車線200の仮舗装61及び上側当接部材11が撤去される。第2車線200において、第2床版220の第2上面221等の全ての床版の上面に本舗装60を施す本舗装工程が行われる。第2車線200での本舗装工程の終了後に、第1床版110及び第2床版220の上が第1車線100及び第2車線200を有する片側二車線の道路として再び供用される。なお、本実施形態において、上記の第2実施形態及び第3実施形態における第2床版設置工程、上側当接工程、下側当接工程及び締結工程が適用されてもよい。
【0060】
本実施形態では、各車線の通行止めを伴う床版の取り換えの施工時間が短時間に制限されている場合に、各車線が供用可能となる仮舗装工程の前の撤去工程では上側当接部材11を残置したままにできるため、床版の取り換えの施工時間が短時間に制限されている場合の床版の取り換えがより容易になる。
【0061】
以下、本発明の第5実施形態について説明する。上記第4実施形態と同様に、本実施形態の床版の架設方法は、各車線の通行止めを伴う床版の取り換えの施工時間が短時間に制限されている場合に適用される。
図15(A)及び
図15(B)に示されるように、上記第4実施形態と同様に第1車線100の既設床版50の一部が撤去される。
図15(C)及び
図15(D)に示されるように、上記第4実施形態と同様に第1車線100において、第1床版設置工程及び第2床版設置工程が行われる。
【0062】
図15(E)、
図15(F)、
図16(A)及び
図16(B)に示されるように、本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、上側当接工程、下側当接工程、締結工程及び間詰工程が行われるが、上側当接部材11´は、高強度コンクリートプレキャスト部材等のコンクリート及び炭素繊維から形成されている。また、上側当接工程では、上側当接部材11´は、第1床版110の第1上面111に設けられた凹部111c及び第2床版120の第2上面121に設けられた凹部121cの中に収容される。
【0063】
上記第4実施形態と同様に、撤去工程において、上側当接部材11´は、第1床版110の第1上面111の凹部111c及び第2床版120の第2上面121の凹部121cの中に残置される。
図17(B)に示されるように、孔部充填工程では、孔部16に加えて、上側当接部材11´の凹部11c及び孔部11hにも充填材17が充填される。
図15(E)、
図15(F)、
図17(A)及び
図17(B)に示されるように、上記第4実施形態と同様に、第1床版110の第1上面111及び第2床版120の第2上面121に仮舗装61を施す仮舗装工程が行われる。上記第4実施形態と同様に、第1車線100の既設床版50の取り換えが終了するまで、夜間の数時間の施工時間に第1車線100において一部の数枚の既設床版50を取り換え、日中を含む施工時間外には第1車線100を供用することが繰り返される。
【0064】
図15(G)、
図15(H)、
図18(A)及び
図18(B)に示されるように、第1車線100の既設床版50の全部の取り換えの終了後に、第1車線100の仮舗装61が撤去されるが、上側当接部材11´は第1床版110の第1上面111の凹部111c及び第2床版120の第2上面121の凹部121cの中に残置される。第1車線100において、第1床版110の第1上面111及び第2床版120の第2上面121等の全ての床版の上面に本舗装60を施す本舗装工程が行われる。第1車線100での本舗装工程の終了後に、第1車線100に設置された第1床版110及び第2床版120の上は片側一車線の道路として供用される。
【0065】
一方、第2車線200においては、上記の第1車線100と同様に、例えば、夜間の数時間の施工時間において、第2車線200は通行止めとなり、第2車線200の既設床版50の一部が撤去される。上記第1実施形態と同様に第2車線200において、第2床版設置工程が行われる。
【0066】
図15(I)及び
図15(J)に示されるように、間隙(縦目地)gvにおいて、上記の第1車線100における間隙(横目地)ghと同様に、上側当接工程、下側当接工程、締結工程、間詰工程、撤去工程及び孔部充填工程が行われ、上側当接部材11´は、第1床版110の第1上面111の凹部111c及び第2床版220の第2上面221の不図示の凹部の中に残置される。
【0067】
また、上記第4実施形態と同様に、緊張材400により第1床版110と第2床版220との間にポストテンションが付与される。また、第2車線200における間隙(横目地)ghにおける上側当接工程、下側当接工程、締結工程、間詰工程、撤去工程及び孔部充填工程は、第1車線100における間隙(横目地)ghと同様に行われる。
【0068】
上側当接部材11´が第1床版110の第1上面111及び第2床版220の第2上面221に残置された状態で、第2車線200において、第2床版220の第2上面221に仮舗装61を施す仮舗装工程が行われる。第2車線200の既設床版50の取り換えが終了するまで、上記と同様に、夜間の数時間の施工時間に第2車線200において一部の数枚の既設床版50を取り換え、日中を含む施工時間外には第2車線200を供用することが繰り返される。
【0069】
図15(K)及び
図15(L)に示されるように、第2車線200の既設床版50の全部の取り換えの終了後に、第2車線200の仮舗装61が撤去されるが、上側当接部材11´は第2床版220の第2上面121の不図示の凹部の中に残置される。第2車線200において、第2床版220の第2上面221等の全ての床版の上面に本舗装60を施す本舗装工程が行われる。第2車線200での本舗装工程の終了後に、第1床版110及び第2床版220の上が第1車線100及び第2車線200を有する片側二車線の道路として再び供用される。なお、本実施形態において、上記の第2実施形態及び第3実施形態における第2床版設置工程、上側当接工程、下側当接工程及び締結工程が適用されてもよい。
【0070】
本実施形態では、各車線の通行止めを伴う床版の取り換えの施工時間が短時間に制限されている場合に、各車線が供用可能となる仮舗装工程の前の撤去工程では上側当接部材11´を残置したままにでき、さらに最終的な本舗装工程の前にも上側当接部材´を残置したままにできるため、床版の取り換えの施工時間が短時間に制限されている場合の床版の取り換えがより容易になる。
【0071】
以下、本発明の第6実施形態について説明する。
図19(A)に示されるように、本実施形態では、既設床版50上が第1車線100、第2車線200及び第3車線300に区分されている。なお、本実施形態では、第1車線100、第2車線200及び第3車線300のそれぞれは、必ずしも現実に片側三車線の道路として供用されている必要はなく、単に既設床版50の取り換えの施工における施工範囲の区分を表す。
【0072】
図19(B)に示されるように、第2車線200及び第3車線300が供用され、第1車線100の既設床版50が撤去される。
図19(C)に示されるように、上記第1実施形態と同様に、第1車線100における第1床版設置工程及び第2床版設置工程が行われる。
図19(D)に示されるように、上記第1実施形態と同様に、第1車線100における上側当接工程、下側当接工程、締結工程及び間詰工程が行われる。
図19(E)に示されるように、第1車線100に撤去工程、孔部充填工程及び本舗装工程が行われた後に、第1車線100及び第3車線300が供用され、第2車線200の既設床版50が撤去される。
【0073】
図19(F)に示されるように、上記第1実施形態と同様に、第2車線200及び第1車線100と第2車線200との間における上側当接工程、下側当接工程、締結工程及び間詰工程が行われる。
図19(G)に示されるように、第1車線100の第1床版110と第2車線200の第2床版220との間に緊張材400によりポストテンションが付与され、撤去工程及び孔部充填工程の終了後に第2車線200に本舗装工程が行われた後に、第1車線100及び第2車線が供用され、第3車線300の既設床版50が撤去される。
【0074】
図19(H)に示されるように、上記第1実施形態と同様に、第3車線300に第3床版330が設置され、第3車線300及び第2車線200と第3車線300との間における上側当接工程、下側当接工程、締結工程及び間詰工程が行われる。緊張材400により、第1車線100の第1床版110と第2車線200の第2床版220と第3車線300の第3床版330との間にポストテンションが付与される。
【0075】
なお、第1床版110と第2床版220と第3床版330との間のポストテンションの付与は、既に第1床版110と第2床版220との間のポストテンションの付与に用いられた緊張材400に第3床版330の端部まで達する新たな緊張材400を連結し、新たな緊張材400に張力を付与することにより行われてもよい。
【0076】
また、第1床版110と第2床版220と第3床版330との間のポストテンションの付与は、既に第1床版110と第2床版220との間のポストテンションの付与に用いられた緊張材400とは別に、第2床版220の端部から第3床版330の端部まで達する新たな緊張材400を配置し、新たな緊張材400に張力を付与することにより行われてもよい。
【0077】
また、第1床版110と第2床版220と第3床版330との間のポストテンションの付与は、既に第1床版110と第2床版220との間のポストテンションの付与に用いられた緊張材400を抜去し、第1床版110の端部から第3床版330の端部まで達する新たな緊張材400を配置し、新たな緊張材400に張力を付与することにより行われてもよい。
【0078】
図19(I)に示されるように、第3車線300において、撤去工程及び孔部充填工程の終了後に第3床版330の上面等の全ての床版の上面に本舗装60を施す本舗装工程が行われる。第1床版110、第2床版220及び第3床版330の上が再び供用される。なお、本実施形態では、上記と同様にして4以上の車線において既設床版50の取り換えの施工が行われてもよい。また、本実施形態において、上記の第2実施形態及び第3実施形態における第2床版設置工程、上側当接工程、下側当接工程及び締結工程が適用されてもよい。また、本実施形態において、上記の第4実施形態及び第5実施形態における撤去工程、仮舗装工程及び本舗装工程が適用されてもよい。
【0079】
本実施形態では、既設床版50上が3以上の車線に区分されて既設床版50の取り換えの施工が行われるため、既設床版50の取り換えが行われるために通行止めの必要がある区域を小さくできる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、上記実施形態における、橋桁は鈑桁、トラス桁等の種類であってよい。第1床版110の第1側面113及び第2床版120,220の第2側面123,223は、間隙gh,gvに突出する他の種類の継手鉄筋が備えられていてもよい。第1床版110の第1側面113及び第2床版120,220の第2側面123,223は、互いに嵌合するせん断キー又は互いに接触しないせん断キーが備えられていてもよい。また、上側当接部材11及び下側当接部材12は、鋼材、鋳物及びステンレス鋼等の鉄の他、高強度コンクリートプレキャスト部材等のコンクリート及び炭素繊維から形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…架設構造、10…架設治具、11,11´…上側当接部材、11h…孔部、11c…凹部、12…下側当接部材、12h…孔部、12c…凹部、13…管部材、14…締結部材、14b…ボルト、14n…ナット、15…間詰固化体、16…孔部、17…充填材、50…既設床版、60…本舗装、61…仮舗装、100…第1車線、110…第1床版、111…第1上面、111c…凹部、112…第1下面、113…第1側面、114…鉄筋、110C…凹部、110h…緊張材挿通孔部、120…第2床版、121…第2上面、121c…凹部、122…第2下面、123…第2側面、124…鉄筋、120C…凹部、130…壁高欄、140…配力筋、200…第2車線、220…第2床版、221…第2上面、222…第2下面、223…第2側面、220c…凹部、220h…緊張材挿通孔部、230…壁高欄、300…第3車線、301…仮設防護柵、330…第3床版、400…緊張材、gh…間隙(横目地)、gv…間隙(縦目地)、D1…橋軸方向、D2…橋軸直角方向。