(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085809
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】相識別可能なクランプカバー
(51)【国際特許分類】
H02G 7/05 20060101AFI20230614BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H02G7/05
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200062
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健太
(72)【発明者】
【氏名】森山 修吉
【テーマコード(参考)】
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
5G352AC03
5G367EF05
(57)【要約】
【課題】クランプカバーの外観を目視により確認するだけで、その装着対象である引留めクランプで保持される電線に流れる電流の相を識別することができる相識別可能なクランプカバーを提供する。
【解決手段】電線24a~24cの端部を保持する引留めクランプ22に装着され、絶縁性を有する合成樹脂からなり、その中空部内に引留めクランプ22を収容するクランプカバーであって、このクランプカバーは、合成樹脂の成型体であるカバー本体2p~2rと、このカバー本体2p~2rの外側から目視により視認でき、かつこのカバー本体2p~2rの装着対象である引留めクランプ22で保持される電線24a~24cに流れる電流の相に対応する識別子と、を備えてなり、この識別子が合成樹脂の色である相識別可能なクランプカバー1Aによる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部を保持する引留めクランプに装着され、絶縁性を有する合成樹脂からなり、その中空部内に前記引留めクランプを収容するクランプカバーであって、
前記クランプカバーは、
前記合成樹脂の成型体であるカバー本体と、
前記カバー本体の外側から目視により視認でき、かつ前記カバー本体の装着対象である前記引留めクランプで保持される前記電線に流れる電流の相に対応する識別子と、を備えていることを特徴とする相識別可能なクランプカバー。
【請求項2】
前記識別子は、前記合成樹脂の色であることを特徴とする請求項1に記載の相識別可能なクランプカバー。
【請求項3】
前記合成樹脂の色は黒色であり、
前記識別子は、前記カバー本体の外側面に陽刻又は陰刻される文字又は記号又は図形又は模様であることを特徴とする請求項1に記載の相識別可能なクランプカバー。
【請求項4】
前記合成樹脂の色は黒色であり、
前記識別子は、前記カバー本体の縁部に突設される突起の外形であることを特徴とする請求項1に記載の相識別可能なクランプカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空配電線を引留めておく引留めクランプに装着されるクランプカバーに関する。
【0002】
電柱間に架設される架空配電線(以下、単に「電線」という)は、電柱に耐張碍子を介して取設される引留めクランプによって保持されている。そして、この引留めクランプには、鳥獣害等による電線の故障が生じるのを防止するため、充電部が露出しないようにクランプカバーで被覆されている。
一般に、商用電力は三相交流の状態で需要家に提供されるため、それぞれの相の電流を流すのに各1条ずつ合計3条の電線を並設する必要がある。つまり、商用電力の送電設備では、3条の電線が1セットではじめて機能する。
一般に、任意の電線に流れている電流の相は、その電線自体やその付属品(例えば碍子等)を一見しただけで判断できるようにはなっていない。
他方、所望の電線に対して修理やメンテナンス、あるいは送電事故後の巡視等を行う場合に、その電線に流れている電流の相を識別する必要がある場合がある。
【0003】
また、通常それぞれの電力会社では、電線を配設する際のルールが定められており、このルールに則ってその電線に流れる電流の相を識別することができる。
あるいは、電線の近辺に相識別のための表示物(相表示板)が設置されている場合や、電線自体に相識別用の目印が付されている場合があり、その場合は表示物や、電線に付されている目印を確認することでその電線を流れる電流の相を識別することができる。
その一方で、やむを得ない事情により上記ルールに則って電線を配設できない場合や、何らかの理由で相識別のための表示物や目印が遺失してしまっている場合がある。
このような場合は、その電線の相識別を容易に行えないという不具合が生じていた。
そして、このようなケースでは、その電線を管轄する電力会社の事務所で保管されている相識別図面(相関係図)を見てその電線に流れる電流の相を確認する必要があり、この作業は作業者にとって極めて煩雑であった。
より具体的には、作業者が現場で電線やその周辺設備等の不具合に気が付いた場合で、かつその電線に流れる電流の相を識別できない場合に、作業者はその不具合箇所の改善作業に直ちに着手することができず、一旦事務所に戻って相識別図面(相関係図)を見てその電線に流れる電流の相を識別する作業を行う必要があり、作業性を向上し難いという課題があった。
本発明と同じ解決すべき課題を有する先願は現時点では発見されていないが、関連する技術分野の先願としては以下に示すようなものが知られている。
【0004】
特許文献1には「電力用線クランプカバー」という名称で、電力用線のクランプカバーに関する考案が開示されている。
特許文献1に開示される考案である電力用線クランプカバーでは、カバー本体は電力用線のクランプ形状に即応するように前面部カバーと、後面部カバーとからなり、その各々のカバーのいずれか一方を透明体とし、他方を不透明体の電気的絶縁材にて形成する共に各々のカバーは重合せしめて一体に形成したことを特徴とするものである。
上述のような特許文献1に開示される考案では、電力用線クランプカバーを透明体又は半透明体で形成することで、カバー本体の内部に熱がこもり小鳥類の巣作りあるいは、この小鳥類を狙う蛇類のカバー本体内への侵入を阻止できる。この結果、特許文献1に開示される考案によれば、鳥や蛇による閃絡事故の発生を低減させることができる。さらに、特許文献1に開示される考案によれば、他の事情で閃絡事故が発生した場合も、外部からカバー本体内部の様子を確認できるので、迅速に電力用線クランプの修理を行うことができる。
【0005】
特許文献2にも「電力用線クランプカバー」という名称で、電力用線のクランプカバーに関する考案が開示されている。
特許文献2に開示される考案である電力用線クランプカバーでは、カバー本体は電力用線のクランプ形状に即応するように前面部カバー及び後面部カバーとからなり、その各々のカバーは透明体の電気的絶縁材にて形成すると共に上記各々のカバーを重合せしめて一体に形成したことを特徴とするものである。
上記構成の特許文献2に開示される考案も、上述の特許文献1に開示される考案と同様の作用・効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実全昭54-52098号公報
【特許文献2】実全昭54-52097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1,2に開示されるそれぞれの考案によれば、クランプカバーの内部の様子を目視により確認できるので、クランプカバー内の営巣の有無や、蛇等のクランプカバー内への侵入の有無、あるいはクランプカバー内における閃絡事故の発生の有無を監視して必要時に迅速に対処することができるものの、特許文献1,2に開示される電力用線クランプカバーを目視により確認しただけでその電線を流れる電流の相を識別することはできなかった。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、クランプカバーの外観を目視により確認するだけで、その装着対象である引留めクランプで保持される電線に流れる電流の相を識別することができる相識別可能なクランプカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の発明である相識別可能なクランプカバーは、電線の端部を保持する引留めクランプに装着され、絶縁性を有する合成樹脂からなり、その中空部内に上記引留めクランプを収容するクランプカバーであって、このクランプカバーは、合成樹脂の成型体であるカバー本体と、このカバー本体の外側から目視により視認でき、かつこのカバー本体の装着対象である上記引留めクランプで保持される電線に流れる電流の相に対応する識別子と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第1の発明においてカバー本体は、引留めクランプの外回りを被覆して引留めクランプを保護するという作用を有する。また、第1の発明において識別子は、カバー本体の装着対象である引留めクランプで保持される電線に流れる電流の相を、カバー本体をその外側から目視しただけで特定可能にするという作用を有する。
【0010】
第2の発明である相識別可能なクランプカバーは、上述の第1の発明であって、識別子は、合成樹脂の色であることを特徴とするものである。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第2の発明によれば、カバー本体を外側から見た際に、その色に基づいて容易にそのカバー本体の装着対象である引留めクランプで保持される電線に流れる電流の相を識別することが可能になる。
また、第2の発明において識別子を合成樹脂の色にすることで、第2の発明を製造する際に、既存のクランプカバーを製造するための設備を何ら改変することなくそのまま使用することができる。
【0011】
第3の発明である相識別可能なクランプカバーは、上述の第1の発明であって、合成樹脂の色は黒色であり、識別子は、カバー本体の外側面に陽刻又は陰刻される文字又は記号又は図形又は模様であることを特徴とするものである。
上記構成の第3の発明は、上述の第1の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第3の発明によれば、カバー本体を外側から見た際に、その外側面に陽刻又は陰刻される文字又は記号又は図形又は模様の違いによって容易に、そのカバー本体の装着対象である引留めクランプで保持される電線に流れる電流の相を識別することが可能になる。
また、第3の発明において識別子をカバー本体の外側面に陽刻又は陰刻される文字又は記号又は図形又は模様にすることで、第3の発明を製造する際に、既存のクランプカバーの製造に用いる金型以外の設備、及び原材料である合成樹脂(黒色)をそのまま使用できる。
さらに、第3の発明によれば、カバー本体の外観の色が、従来の相識別できないクランプカバーと同じであるため、従来技術と同様に周辺環境に配慮したクランプカバーを提供することができる。
【0012】
第4の発明である相識別可能なクランプカバーは、上述の第1の発明であって、合成樹脂の色は黒色であり、識別子は、カバー本体の縁部に突設される突起の外形であることを特徴とするものである。
上記構成の第4の発明は、上述の第1の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第4の発明によれば、カバー本体を外側から見た際に、その縁部に突設される突起の外形の違いにより容易に、その装着対象である引留めクランプで保持される電線に流れる電流の相を識別することができる。
また、第4の発明において識別子をカバー本体の縁部に突設される突起の外形にすることで、第4の発明を製造する際に、既存のクランプカバーの製造に用いる金型以外の設備、及び原材料である合成樹脂(黒色)、をそのまま使用できる。
さらに、第4の発明によれば、カバー本体の外観の色が、従来の相識別できないクランプカバーと同じであるため、従来技術と同様に周辺環境に配慮したクランプカバーを提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
上述のような第1の発明によれば、引留めクランプに装着されたクランプカバーの外観を目視により確認するだけで、その装着対象である引留めクランプで保持される電線に流れる電流の相を識別することができる。
この場合、所望の電線やその関連設備等に対してメンテナンスや修理、あるいは事故後の監視等を行う際に、その電線を管轄する電力会社の事務所で保管されている相識別図面(相関係図)を見てその電線に流れる電流の相を確認する必要がなくなる。
この結果、電線やその関連設備等に対する修理や保守点検等の作業を、効率的にかつ迅速に行うことができる。
【0014】
第2の発明は、上述の第1の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第2の発明によれば、識別子を、カバー本体を構成する合成樹脂の色にすることで、既存のクランプカバーの製造設備(特に金型)を何ら改変することなくそのまま使用して第2の発明である相識別可能なクランプカバーを製造することができる。
よって、第2の発明を製造する場合に、カバー本体を構成する色の異なる合成樹脂を選定する作業以外は、従来の相識別できないクランプカバーの製造工程と同じ設備及び工程により製造できるので、第2の発明の製造コストを廉価にできる。
さらに、第2の発明によれば、相識別可能なクランプカバーの使用方法は、既存のクランプカバーの使用方法と同じである。このため、既存の相識別できないクランプカバーを第2の発明に係る相識別可能なクランプカバーに置き換えることによる作業者側の負担の増加も特にない。
【0015】
第3の発明は、上述の第1の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第3の発明によれば、識別子としてカバー本体の外側面に陽刻又は陰刻される文字又は記号又は図形又は模様を採用することで、カバー本体を構成する合成樹脂として、従来と同様の耐候性を有する黒色の合成樹脂を使用することができる。
この場合、先の第2の発明の場合のように、カバー本体を構成する合成樹脂の色として黒色以外を用いる場合に比べて、耐候性及び耐久性がより優れたクランプカバーを提供することができる。
また、第3の発明によれば、カバー本体の色が従来品と同様の黒色であるため、従来品と同様に周辺環境に配慮した色にすることができる。
【0016】
第4の発明は、上述の第1の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第4の発明によれば、識別子をカバー本体の縁部に突設される突起の外形にすることで、カバー本体を構成する合成樹脂として、従来と同様の耐候性を有する黒色の合成樹脂を使用することができる。
この場合、先の第2の発明の場合のように、カバー本体を構成する合成樹脂の色として黒色以外を用いる場合に比べて、耐候性及び耐久性がより優れたクランプカバーを提供することができる。
また、第4の発明によれば、カバー本体の色が従来品と同様の黒色であるため、従来品と同様に周辺環境に配慮した色にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1に係る相識別可能なクランプカバーの使用状態を示す斜視図である。
【
図2】(a)~(c)はいずれも各相に対応する本発明の実施例2に係る相識別可能なクランプカバーの側面図である。
【
図3】本発明の実施例3に係る相識別可能なクランプカバーの使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る相識別可能なクランプカバーについて実施例1乃至実施例3を参照しながら詳細に説明する。
【実施例0019】
本発明の実施例1に係る相識別可能なクランプカバーについて
図1を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施例1に係る相識別可能なクランプカバーの使用状態を示す斜視図である。
実施例1に係る相識別可能なクランプカバー1Aは、例えば
図1に示すように、相の異なる電流が流れる3条の電線24a~24cのそれぞれの端部を保持する引留めクランプ22の外回りを被覆しながら装着され、かつ絶縁性を有する合成樹脂の成型体であるカバー本体2p~2rからなり、さらにカバー本体2p~2rがそれぞれ色の異なる合成樹脂からなるものである。
つまり、実施例1に係るクランプカバー1Aにおいて、引留めクランプ22で保持されるそれぞれの電線24a~24cに流れる電流の相を識別するための識別子は、カバー本体2p~2rを構成する合成樹脂の色である。
【0020】
より具体的には、第1の相~第3の相の電流が組み合わされてなる三相交流の商用電力において、例えば第1の相の目印が赤色に、第2の相の目印が白色に、第3の相の目印が青色にそれぞれ設定されている場合、実施例1に係るクランプカバー1Aでは、カバー本体2pを構成する合成樹脂の色を赤色に、カバー本体2qを構成する合成樹脂の色を白色に、カバー本体2rを構成する合成樹脂の色を青色にしておくことで、作業者はカバー本体2p~2rの外観(色)を目視で確認するだけで、その装着対象である22で保持される電線24a~24cに流れる電流の相(第1の相~第3の相)を識別することができる。
【0021】
なお、
図1に示すように、電線24a~24cを保持する図示されない引留めクランプ22は、例えば耐張碍子等からなる碍子23を介して支持構造21aや、支持構造21bに支持されている。さらに、支持構造21aや、支持構造21bは、コンクリート製の電柱20に固設されている。
また、電柱20を挟んで、直列状に配される電線24a同士又は電線24b同士又は電線24c同士は、それぞれジャンパー線25a~25cにより電気的に接続されている。
加えて、実施例1に係る相識別可能なクランプカバー1Aのカバー本体2p~2r、及び後段において説明する
図2及び
図3に示すカバー本体2は、その着脱作業を行う際に、間接活線工具である例えば絶縁ヤットコで把持するための把持部3を必要に応じて備えている。
【0022】
そして、実施例1に係る相識別可能なクランプカバー1Aによれば、上述のように作業者は、カバー本体2p~2rの外観(色)を目視で確認するだけで、その装着対象である22で保持される電線24a~24cに流れる電流の相(第1の相~第3の相)を識別することができる。
この場合、電線24a~24cやその関連設備に対する工事やメンテナンス、あるいは事故後の巡視を行う際に、電線24a~24cに流れる電流の相を確認する必要がある場合に、電線24a~24cを管轄する電力会社の事務所で保管されている相識別図面(相関係図)を見て逐一確認する必要がなく便利である。
この場合、電線24a~24cやその関連設備に対する修理や保守点検等の作業を、効率的かつ迅速に行うことができる。
【0023】
また、実施例1に係る相識別可能なクランプカバー1Aによれば、電線24a~24cに流れる電流の相を識別するための識別子が、カバー本体2p~2rを構成する合成樹脂の色であることで、実施例1に係る相識別可能なクランプカバー1Aを製造する際に、既存の相識別できないクランプカバーを製造するための設備を何ら改変することなくそのまま使用することができる。
このことは、実施例1に係る相識別可能なクランプカバー1Aは、カバー本体2p~2rを成型するのに用いる色の異なる合成樹脂を選定する作業以外は、従来の相識別ができないクランプカバーを製造する場合と同様の設備及び工程により製造できることを意味している。
この結果、実施例1に係る相識別可能なクランプカバー1Aによれば、その製造コストを廉価にできる。
さらに、実施例1に係る相識別可能なクランプカバー1Aの使用方法(着脱方法)は、既存の相識別できないクランプカバーの使用方法(着脱方法)と同じである。このため、既存の相識別できないクランプカバーを実施例1に係る相識別可能なクランプカバー1Aに置き換えることによる作業者側の負担増加も特にない。
より具体的には、第1の相~第3の相の電流が組み合わされてなる三相交流の商用電力において、例えば第1の相の目印が文字の「R」に、第2の相の目印が文字の「S」に、第3の相の目印が文字の「T」にそれぞれ設定されている場合、実施例2に係るクランプカバー1Bは、カバー本体2の外側面2a(例えば側面)に、それぞれの相の目印である「R」,「S」,「T」の文字を陽刻してなるものを識別子4a~4cとして備えている。
また、このような実施例2に係る相識別可能なクランプカバー1Bは、カバー本体2を成型する金型において、カバー本体2の成型時にその外側面(例えば側面)となる位置に「R」,「S」,「T」のいずれかの文字が陽刻されるようにその基となる凹形状を金型に形成しておき、このような金型を用いてカバー本体2を成型することで、カバー本体2と識別子4a~4cのいずれかを同時に成型することができる。
この場合、実施例2に係る相識別可能なクランプカバー1Bを引留めクランプ22に装着した状態で、その外観を目視で、あるいは必要に応じて双眼鏡等を用いて確認した際に、カバー本体2の外側面2a(例えば側面)に陽刻される文字が「R」,「S」,「T」のいずれかであるかを判別することにより、そのカバー本体2の装着対象である22で保持される電線24a~24cに流れる電流の相(第1の相~第3の相)を識別することができる。
この場合も、先の実施例1に係る相識別可能なクランプカバー1Aの場合と同様に、電柱20上に架設される電線24a~24cやその関連設備に対して工事やメンテナンス、あるいは事故後の巡視を行う際に、電線24a~24cに流れる電流の相を確認するために、電線24a~24cを管轄する電力会社の事務所で保管されている相識別図面(相関係図)を見て確認する必要がなくなるので便利である。
この場合、電線24a~24cやその関連設備に対して行う修理や保守点検等のための作業を、効率的かつ迅速に行うことができる。
さらに、実施例2に係る相識別可能なクランプカバー1Bによれば、識別子4a~4cを、カバー本体2の外側面2a(例えば側面)に陽刻又は陰刻される文字又は記号又は図形又は模様とすることで、この相識別可能なクランプカバー1Bを製造する際に、既存の相識別できないクランプカバーの製造に用いられる金型以外の設備、及び原材料である黒色の合成樹脂、をそのまま使用することができる。
なお、先の実施例1に係る相識別可能なクランプカバー1Aでは、カバー本体2p~2rを構成する合成樹脂として、黒色以外の色の合成樹脂を用いる必要がある。この場合、カバー本体2p~2rを構成する合成樹脂として従来の黒色を用いる場合に比べて、退色や劣化が起こり易くなるという懸念がある。
これに対して、実施例2に係る相識別可能なクランプカバー1Bでは、耐候性に優れた黒色の合成樹脂を使用することができるので、従来の相識別できないクランプカバーと同程度の耐候性を有するクランプカバーを提供することができる。
加えて、実施例2に係る相識別可能なクランプカバー1Bによれば、識別子4a~4cを備えたカバー本体2の外観の色を、従来の相識別できないクランプカバーと同じ黒色にできるので、従来品と同様に周辺環境に配慮したクランプカバーにすることができる。