(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085814
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】床版の架設構造及び床版の架設方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20230614BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200068
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】山中 宏之
(72)【発明者】
【氏名】一宮 利通
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
(72)【発明者】
【氏名】永井 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 諒介
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG39
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】床版間の連結の品質を向上させる。
【解決手段】第1床版110の側面113と第2床版120の側面123とを間隙ghを隔てて互いに対向させつつ、第1床版110と第2床版120とを連結する床版の架設構造1において、第1床版110の上面111と第2床版120の上面121とに跨って第1床版110及び第2床版120を支持する上側支持部材11と、第1床版110の下面112と第2床版120の下面122とに跨って第1床版110及び第2床版120を支持する下側支持部材12とが、締結部材14により締結され、第1床版110及び第2床版120が動かないように固定されるため、床版間の連結の品質を向上できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1床版の側面と第2床版の側面とを間隙を隔てて互いに対向させつつ、前記第1床版と前記第2床版とを連結する床版の架設構造であって、
前記第1床版の上面と前記第2床版の上面とに跨って前記第1床版及び前記第2床版を支持する上側支持部材と、
前記第1床版の下面と前記第2床版の下面とに跨って前記第1床版及び前記第2床版を支持する下側支持部材と、
前記上側支持部材と前記下側支持部材とを締結する締結部材と、
を備え、
前記上側支持部材は、前記第1床版の上面に当接する第1上側当接部と、前記第2床版の上面に当接する第2上側当接部と、前記第1上側当接部と前記第2上側当接部とに跨って前記第1床版と前記第2床版とを支持する上側架橋部とを有し、
前記下側支持部材は、前記第1床版の下面に当接する第1下側当接部と、前記第2床版の下面に当接する第2下側当接部と、前記第1下側当接部と前記第2下側当接部とに跨って前記第1床版と前記第2床版とを支持する下側架橋部とを有する、
床版の架設構造。
【請求項2】
前記間隙に配置され上下方向に延在する管部材と、
前記間隙において前記管部材の外側に充填された間詰固化体と、
をさらに備え、
前記締結部材は、前記管部材の内側において前記上側架橋部と前記下側架橋部とに跨って延在している、請求項1に記載の床版の架設構造。
【請求項3】
前記第1上側当接部及び前記第2上側当接部のいずれか一方は、前記上側架橋部とは分離した部材による構成される、請求項1又は2に記載の床版の架設構造。
【請求項4】
前記第1下側当接部及び前記第2下側当接部のいずれか一方は、前記下側架橋部とは分離した部材による構成される、請求項1又は2に記載の床版の架設構造。
【請求項5】
第1床版の側面と第2床版の側面とを間隙を隔てて互いに対向させつつ、前記第1床版と前記第2床版とを連結する床版の架設方法であって、
前記第1床版を設置する第1床版設置工程と、
前記第1床版設置工程で設置された前記第1床版の側面と、前記第2床版の側面とを前記間隙を隔てて互いに対向させつつ、前記第2床版を設置する第2床版設置工程と、
前記第1床版設置工程で設置された前記第1床版の上面と前記第2床版設置工程で設置された前記第2床版の上面とに跨って前記第1床版及び前記第2床版を支持する上側支持部材を配置する上側支持部材配置工程と、
前記第1床版設置工程で設置された前記第1床版の下面と前記第2床版設置工程で設置された前記第2床版の下面とに跨って前記第1床版及び前記第2床版を支持する下側支持部材を配置する下側支持部材配置工程と、
前記上側支持部材配置工程で配置された前記上側支持部材と前記下側支持部材配置工程で配置された前記下側支持部材とを締結部材により締結する締結工程と、
を備え、
前記上側支持部材配置工程では、前記第1床版の上面に当接する第1上側当接部と、前記第2床版の上面に当接する第2上側当接部と、前記第1上側当接部と前記第2上側当接部とに跨って前記第1床版と前記第2床版を支持する上側架橋部とを有する前記上側支持部材を配置し、
前記下側支持部材配置工程では、前記第1床版の下面に当接する第1下側当接部と、前記第2床版の下面に当接する第2下側当接部と、前記第1下側当接部と前記第2下側当接部とに跨って前記第1床版と前記第2床版を支持する下側架橋部とを有する前記下側支持部材を配置する、床版の架設方法。
【請求項6】
前記締結工程では、前記間隙で上下方向に延在する管部材の内側において前記上側架橋部と前記下側架橋部とに跨って延在する締結部材により、前記上側架橋部と前記下側架橋部とを締結し、
前記締結工程の後に前記間隙において前記管部材の外側に間詰固化材を充填し間詰固化体を生成する間詰工程をさらに備えた、請求項5に記載の床版の架設方法。
【請求項7】
前記間詰工程の後に前記締結部材を撤去する撤去工程と、
前記撤去工程の後に前記管部材により前記間詰固化体に形成された孔部に充填材を充填する孔部充填工程と、
をさらに備えた、請求項6に記載の床版の架設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版の架設構造及び床版の架設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
拡幅工事及び補修工事等において、複数の床版を設置し、設置された複数の床版同士を連結する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、2枚の床版のそれぞれの間隙に、2枚の床版の上面に沿った仮覆工板3と2枚の床版の下面に沿った補強梁材4と、仮覆工板3と補強梁材4とを締結する連結ボルト5が取り付けられ、中空の継手部2が形成される技術が開示されている。連結ボルト5及び補強梁材4が撤去され、仮覆工板3のみが置かれた状態で、2枚の床版の下面に型枠8が設置され、間詰コンクリートが打設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような技術では、設置された複数の床版のいずれか、又は設置された複数の床版に隣接した区域は、車両の通行のための道路として供用されることがある。このような場合、車両の通行による振動により設置された床版が動く可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、床版間の連結の品質を向上できる床版の架設構造及び床版の架設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1床版の側面と第2床版の側面とを間隙を隔てて互いに対向させつつ、第1床版と第2床版とを連結する床版の架設構造であって、第1床版の上面と第2床版の上面とに跨って第1床版及び第2床版を支持する上側支持部材と、第1床版の下面と第2床版の下面とに跨って第1床版及び第2床版を支持する下側支持部材と、上側支持部材と下側支持部材とを締結する締結部材とを備え、上側支持部材は、第1床版の上面に当接する第1上側当接部と、第2床版の上面に当接する第2上側当接部と、第1上側当接部と第2上側当接部とに跨って第1床版と第2床版とを支持する上側架橋部とを有し、下側支持部材は、第1床版の下面に当接する第1下側当接部と、第2床版の下面に当接する第2下側当接部と、第1下側当接部と第2下側当接部とに跨って第1床版と第2床版とを支持する下側架橋部とを有する床版の架設構造である。
【0007】
この構成によれば、第1床版の側面と第2床版の側面とを間隙を隔てて互いに対向させつつ、第1床版と第2床版とを連結する床版の架設構造において、第1床版の上面と第2床版の上面とに跨って第1床版及び第2床版を支持する上側支持部材と、第1床版の下面と第2床版の下面とに跨って第1床版及び第2床版を支持する下側支持部材とが、締結部材により締結され、第1床版及び第2床版が動かないように固定されるため、床版間の連結の品質を向上できる。
【0008】
この場合、間隙に配置され上下方向に延在する管部材と、間隙において管部材の外側に充填された間詰固化体とをさらに備え、締結部材は、管部材の内側において上側架橋部と下側架橋部とに跨って延在していることが好適である。
【0009】
この構成によれば、上側支持部材及び下側支持部材により第1床版及び第2床版が動かないように固定された状態で、間詰固化体は管部材の外側に充填され、締結部材は管部材の内側で間詰固化体とは分離されるため、車両の通行等の振動による間隙の間詰固化体の打設及び養生への影響が低減され、床版間の連結の品質を向上できる。
【0010】
また、第1上側当接部及び第2上側当接部のいずれか一方は、上側架橋部とは分離した部材による構成されることが好適である。
【0011】
この構成によれば、第1上側当接部及び第2上側当接部のいずれか一方は、上側架橋部とは分離した部材による構成されるため、振動及び施工誤差等による第1床版と第2床版との間の角度の変動に対応し易い。
【0012】
また、第1下側当接部及び第2下側当接部のいずれか一方は、下側架橋部とは分離した部材による構成されることが好適である。
【0013】
この構成によれば、第1下側当接部及び第2下側当接部のいずれか一方は、下側架橋部とは分離した部材による構成されるため、振動及び施工誤差等による第1床版と第2床版との間の角度の変動に対応し易い。
【0014】
また、本発明は、第1床版の側面と第2床版の側面とを間隙を隔てて互いに対向させつつ、第1床版と第2床版とを連結する床版の架設方法であって、第1床版を設置する第1床版設置工程と、第1床版設置工程で設置された第1床版の側面と、第2床版の側面とを間隙を隔てて互いに対向させつつ、第2床版を設置する第2床版設置工程と、第1床版設置工程で設置された第1床版の上面と第2床版設置工程で設置された第2床版の上面とに跨って第1床版及び第2床版を支持する上側支持部材を配置する上側支持部材配置工程と、第1床版設置工程で設置された第1床版の下面と第2床版設置工程で設置された第2床版の下面とに跨って第1床版及び第2床版を支持する下側支持部材を配置する下側支持部材配置工程と、上側支持部材配置工程で配置された上側支持部材と下側支持部材配置工程で配置された下側支持部材とを締結部材により締結する締結工程とを備え、上側支持部材配置工程では、第1床版の上面に当接する第1上側当接部と、第2床版の上面に当接する第2上側当接部と、第1上側当接部と第2上側当接部とに跨って第1床版と第2床版を支持する上側架橋部とを有する上側支持部材を配置し、下側支持部材配置工程では、第1床版の下面に当接する第1下側当接部と、第2床版の下面に当接する第2下側当接部と、第1下側当接部と第2下側当接部とに跨って第1床版と第2床版を支持する下側架橋部とを有する下側支持部材を配置する床版の架設方法である。
【0015】
この場合、締結工程では、間隙で上下方向に延在する管部材の内側において上側架橋部と下側架橋部とに跨って延在する締結部材により、上側架橋部と下側架橋部とを締結し、締結工程の後に間隙において管部材の外側に間詰固化材を充填し間詰固化体を生成する間詰工程をさらに備えることが好適である。
【0016】
この場合、間詰工程の後に締結部材を撤去する撤去工程と、撤去工程の後に管部材により間詰固化体に形成された孔部に充填材を充填する孔部充填工程とをさらに備えることが好適である。
【0017】
この構成によれば、撤去工程で間詰工程の後に、管部材の内側において上側支持部材と下側支持部材とに跨って延在していた締結部材が撤去されるため、間詰工程で管部材の外側に充填された間詰固化体が障害となることなく締結部材を撤去でき、締結部材の撤去が容易である。孔部充填工程で撤去工程の後に管部材により間詰固化体に形成された孔部に充填材が充填されるため、撤去工程及び孔部充填工程の後に、間隙の部位を車両の通行のために供用できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の床版の架設構造及び床版の架設方法によれば、床版間の連結の品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(A)は実施形態に係る床版の架設方法の対象となる道路橋の平面図であり、(B)は(A)のα線による縦断面図であり、(C)は第1車線の既設床版を撤去する工程を示す平面図であり、(D)は(C)のβ線による縦断面図であり、(E)は第1車線における第1床版設置工程及び第2床版設置工程を示す平面図であり、(F)は(E)のγ線による縦断面図であり、(G)は第1車線の間隙における孔部充填工程を示す平面図であり、(H)は(G)のδ線による縦断面図であり、(I)は第1車線に本舗装工程を行った後に第2車線の既設床版を撤去する工程を示す平面図であり、(J)は(I)のε線による縦断面図であり、(K)は第2車線における第2床版設置工程を示す平面図であり、(L)は(K)のζ線による縦断面図である。
【
図2】(A)は第1車線と第2車線との間隙における孔部充填工程及び第1車線の第1床版と第2車線の第2床版との間にポストテンションを付与する工程を示す平面図であり、(B)は(A)のη線による縦断面図であり、(C)は第2車線の間隙における孔部充填工程を示す平面図であり、(D)は(C)のθ線による縦断面図であり、(E)は第2車線に本舗装工程を行って第1車線及び第2車線を供用する工程を示す平面図であり、(F)は(E)のι線による縦断面図である。
【
図3】(A)は実施形態に係る床版の架設方法での第1車線における第1床版設置工程、第2床版設置工程及び第1車線の間隙における上側支持部材配置工程を示す平面図であり、(B)は(A)のκ線による縦断面図であり、(C)は(A)のλ線による縦断面図である。
【
図4】(A)は実施形態に係る床版の架設方法での第1車線の間隙における下側支持部材配置工程及び締結工程並びに床版の架設構造を示す平面図であり、(B)は(A)のμ線による縦断面図であり、(C)は(A)のν線による縦断面図である。
【
図5】(A)は実施形態に係る床版の架設方法での第1車線の間隙における間詰工程及び床版の架設構造を示す平面図であり、(B)(A)のξ線による縦断面図であり、(C)は(A)のο線による縦断面図である。
【
図6】(A)は実施形態に係る床版の架設方法での第1車線の間隙における撤去工程を示す平面図であり、(B)(A)のπ線による縦断面図であり、(C)は(A)のρ線による縦断面図である。
【
図7】(A)は実施形態に係る床版の架設方法での第1車線の間隙における孔部充填工程を示す平面図であり、(B)(A)のσ線による縦断面図であり、(C)は(A)のτ線による縦断面図である。
【
図8】(A)は実施形態に係る床版の架設方法での第1車線と第2車線との間隙における床版の架設構造を示す平面図であり、(B)(A)のυ線による縦断面図であり、(C)は(A)のφ線による縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る床版の架設構造及び床版の架設方法について詳細に説明する。本発明の第1実施形態に係る床版の架設構造及び床版の架設方法は、
図1(A)及び
図1(B)に示されるように、例えば、橋桁の上に設置された既設床版50を取り換える際に、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に新たに設置された複数の床版の側面同士を間隙を隔てて互いに対向させつつ、床版同士を連結するためのものである。既設床版50の橋軸直角方向D2の両端部上には、壁高欄130,230がそれぞれ設置されている。
図1(A)及び
図1(B)の例では、既設床版50上が第1車線100及び第2車線200を有する片側二車線の道路として供用されている。
【0021】
図1(C)及び
図1(D)に示されるように、既設床版50は、第1車線100及び第2車線200の区画に沿って橋軸直角方向D2に二分割される。第1車線100の既設床版50及び壁高欄130が撤去され、第2車線200の既設床版50が残置される。第2車線200に残置された既設床版50の壁高欄230とは反対側の端部上には、仮設防護柵301が設置される。第2車線200に残置された既設床版50上は片側一車線の道路として供用される。第1車線100上は通行止めとなる。
【0022】
図1(E)、
図1(F)、
図3(A)、
図3(B)及び
図3(C)に示されるように、第2車線200に残置された既設床版50上が片側一車線の道路として供用されつつ、第1車線100に第1床版110を設置する第1床版設置工程が行われる。第1床版設置工程で設置された第1床版110の側面113と、第2床版120の側面123とを橋軸直角方向D2に延在する間隙(横目地)ghを隔てて互いに対向させつつ、第1車線100に第2床版120を設置する第2床版設置工程が行われる。
【0023】
図3(B)に示されるように、間隙(横目地)ghにおいて、側面113は凹部110Cを含み、側面123は凹部120Cを含む。第1床版110及び第2床版120のそれぞれの凹部110C,120Cから、第1床版110及び第2床版120のそれぞれに基部が埋設され、先端部に定着体を含む鉄筋114,124が突出していて、鉄筋114、124は橋軸方向D1に互い重なり配置される。鉄筋114,124には、橋軸直角方向D2に沿って鉄筋114,124に直交するように配力筋140が配置される。なお、第1床版110は上面111及び下面112を有し、第2床版120は上面121及び下面122を有する。
【0024】
図3(A)、
図3(B)及び
図3(C)に示されるように、第1床版設置工程で設置された第1床版110の上面111と、第2床版設置工程で設置された第2床版120の上面121とに跨って第1床版110及び第2床版120を支持する上側支持部材11を配置する上側支持部材配置工程が行われる。上側支持部材配置工程では、第1床版110の上面111に当接する第1上側当接部11uと、第2床版120の上面121に当接する第2上側当接部11vと、第1上側当接部11uと第2上側当接部11vとに跨って第1床版110と第2床版120とを支持する上側架橋部11wとを有する上側支持部材11が配置される。
【0025】
第1上側当接部11u及び第2上側当接部11vは、上側架橋部11wとは分離した部材により構成される。第1上側当接部11u及び第2上側当接部11vは、平面視で長方形のSM490等の鋼板から形成された部材である。第1上側当接部11u及び第2上側当接部11vは、互いに間隙ghを挟んで上面111及び上面121にそれぞれ配置される。上側架橋部11wは、互いに間隙ghを挟んで上面111及び上面121にそれぞれ配置された第1上側当接部11uと第2上側当接部11vとに上方から跨る長さを有するSM490等の鋼材から形成された部材である。
【0026】
上側架橋部11wは、その下面の中央に突出し、間隙ghに対向する凸部11bを含む。凸部11bの突出長は、第1上側当接部11u及び第2上側当接部11vの厚さ以下である。上側架橋部11wは、互いに間隙ghを挟んで上面111及び上面121にそれぞれ配置された第1上側当接部11uと第2上側当接部11vとに上方から跨って当接する。凸部11bは、第1上側当接部11uと第2上側当接部11vとの間に入り、間隙ghと対向する。上側架橋部11wは凸部11bに開口した孔部11hを有する。孔部11hは凸部11bとは反対側の面まで貫通していてもよいが、本実施形態では孔部11hは凸部11bとは反対側の面まで貫通していない有底のボルト用の孔部である。
【0027】
上側架橋部11wが第1上側当接部11uと第2上側当接部11vとに跨って第1床版110と第2床版120を支持した状態では、互いに間隙ghを挟んで上面111及び上面121にそれぞれ配置された第1上側当接部11u及び第2上側当接部11vと、間隙ghに対向する上側架橋部11wの凸部11bとにより、間隙ghに対向して窪んだ凹部11Cが形成される。つまり、上側支持部材11は、全体として間隙ghに対向して窪んだ凹部11Cを有する。
【0028】
本実施形態では、例えば、第1床版設置工程及び第2床版設置工程の後に、互いに間隙ghを挟んで第1上側当接部11u及び第2上側当接部11vを上面111及び上面121にそれぞれ配置し、凸部11bが第1上側当接部11uと第2上側当接部11vとの間に入り、間隙ghと対向するように上側架橋部11wを第1上側当接部11uと第2上側当接部11vとに跨って配置することにより、上側支持部材配置工程が行われる。
【0029】
図4(A)、
図4(B)及び
図4(C)に示されるように、第1床版設置工程で設置された第1床版110の下面112と第2床版設置工程で設置された第2床版120の下面122とに跨って第1床版110及び第2床版120を支持する下側支持部材12を配置する下側支持部材配置工程が行われる。下側支持部材配置工程では、第1床版110の下面112に当接する第1下側当接部12uと、第2床版120の下面122に当接する第2下側当接部12vと、第1下側当接部12uと第2下側当接部12vとに跨って第1床版110と第2床版120とを支持する下側架橋部12wとを有する下側支持部材12が配置される。
【0030】
第1下側当接部12u及び第2下側当接部12vは、下側架橋部12wとは分離した部材により構成される。第1下側当接部12u及び第2下側当接部12vは、底面視で長方形のSM490等の鋼板から形成された部材である。第1下側当接部12u及び第2下側当接部12vは、互いに間隙ghを挟んで下面112及び下面122にそれぞれ配置される。下側架橋部12wは、互いに間隙ghを挟んで下面112及び下面122にそれぞれ配置された第1下側当接部12uと第2下側当接部12vとに下方から跨る長さを有するSM490等の鋼材から形成された部材である。
【0031】
下側架橋部12wは、その上面の中央に突出し、間隙ghに対向する凸部12bを含む。凸部12bの突出長は、第1下側当接部12u及び第2下側当接部12vの厚さ以下である。下側架橋部12wは、互いに間隙ghを挟んで下面112及び下面122にそれぞれ配置された第1下側当接部12uと第2下側当接部12vとに下方から跨って当接する。凸部12bは、第1下側当接部12uと第2下側当接部12vとの間に入り、間隙ghと対向する。下側架橋部12wは凸部12bに開口した孔部12hを有する。本実施形態では、孔部12hは凸部12bとは反対側の面まで貫通している貫通孔であるボルト用の孔部である。
【0032】
下側架橋部12wが第1下側当接部12uと第2下側当接部12vとに跨って第1床版110と第2床版120を支持した状態では、互いに間隙ghを挟んで下面112及び下面122にそれぞれ配置された第1下側当接部12u及び第2下側当接部12vと、間隙ghに対向する下側架橋部12wの凸部12bとにより、間隙ghに対向して窪んだ凹部12Cが形成される。つまり、下側支持部材12は、全体として間隙ghに対向して窪んだ凹部12Cを有する。
【0033】
上側支持部材配置工程で配置された上側支持部材11と下側支持部材配置工程で配置された下側支持部材12とを締結部材14により締結する締結工程が行われる。締結工程では、間隙ghで上下方向に延在する管部材13の内側において上側支持部材11の上側架橋部11wと下側支持部材12の下側架橋部12wとに跨って延在する締結部材14により、上側架橋部11wと下側架橋部12wとが締結される。
【0034】
締結部材14は、間隙ghに配置されたシース管等の管部材13の内側に配置され、上側架橋部11wと下側架橋部12wとに跨って延在している。締結部材14は、ボルト14b及び2つのナット14nを含む。ボルト14bは、両端にネジ溝が設けられている。ボルト14bは、例えば、両端にネジ溝を設けられたPC鋼棒でもよい。ボルト14bの上端は、上側架橋部11wの孔部11hに螺合される。ボルト14bの下端は、下側支持部材12の孔部12hに挿通され、2つのナット14nがそれぞれ螺合されている。
【0035】
本実施形態では、例えば、上側支持部材配置工程の後に、上側支持部材11の上側架橋部11wの孔部11hに締結部材14のボルト14bの上端が螺合される。管部材13の内側にボルト14bが配置されるように管部材13が間隙ghに配置される。互いに間隙ghを挟んで下側支持部材12の第1下側当接部12u及び第2下側当接部12vが下面112及び下面122にそれぞれ配置される。下側支持部材12の下側架橋部12wの孔部12hに締結部材14のボルト14bの下端を挿通させつつ、ボルト14bの下端に2つのナット14nがそれぞれ螺合されることにより、下側支持部材配置工程及び締結工程が行われる。
【0036】
以上の上側支持部材配置工程、下側支持部材配置工程及び締結工程のほとんどは、第1床版110の下面112と第2床版120の下面122とから行うことができる。なお、締結工程の前に、配力筋140が管部材13を間隙ghに配置する障害にならないように、配力筋140は第1床版110の側面113及び第2床版120の側面123のいずれかの側に寄せて配置される。
【0037】
締結工程後に、本実施形態の床版の架設構造1が形成される。本実施形態の架設構造1は、第1床版110の側面113と第2床版120の側面123とを間隙(横目地)ghを隔てて互いに対向させつつ、第1床版110と第2床版120とを連結する。架設構造1は、架設治具10から形成される。架設治具10は、上側支持部材11、下側支持部材12、管部材13及び締結部材14を含む。
【0038】
架設構造1は、第1床版110の上面111と第2床版120の上面121とに跨って第1床版110及び第2床版120を支持する上側支持部材11と、第1床版110の下面112と第2床版120の下面122とに跨って第1床版110及び第2床版120を支持する下側支持部材12と、上側支持部材11と下側支持部材12とを締結する締結部材14とを備える。
【0039】
上記のように、上側支持部材11は、第1床版110の上面111に当接する第1上側当接部11uと、第2床版120の上面121に当接する第2上側当接部11vと、第1上側当接部11uと第2上側当接部11vとに跨って第1床版110と第2床版120とを支持する上側架橋部11wとを有する。また、下側支持部材12は、第1床版110の下面112に当接する第1下側当接部12uと、第2床版120の下面122に当接する第2下側当接部12vと、第1下側当接部12uと第2下側当接部12vとに跨って第1床版110と第2床版120とを支持する下側架橋部12wとを有する。
【0040】
第1上側当接部11u及び第2上側当接部11vは、上側架橋部11wとは分離した部材による構成される。また、第1下側当接部12u及び第2下側当接部12vは、下側架橋部12wとは分離した部材による構成される。なお、第1上側当接部11u及び第2上側当接部11vのいずれか一方のみが上側架橋部11wとは分離した部材による構成されていてもよい。また、第1下側当接部12u及び第2下側当接部12vのいずれか一方のみが下側架橋部12wとは分離した部材による構成されていてもよい。また、上側支持部材11及び下側支持部材12のいずれか一方のみが上側架橋部11w及び下側架橋部12wのそれぞれから分離した部材により構成されていてもよい。また、上側支持部材11及び下側支持部材12は、一体化した部材により構成されていてもよい。
【0041】
(横目地)
図5(A)、
図5(B)及び
図5(C)に示されるように、締結工程の後に間隙ghにおいて管部材13の外側に間詰固化材を充填し、間詰固化材を経時的に固化させて間詰固化体15を生成する間詰工程が行われる。間詰工程では、間隙ghに突出した鉄筋114,124が間詰固化体15により埋設される。間詰工程後の架設構造1は、間隙ghに配置され上下方向に延在する管部材13と、間隙ghにおいて管部材13の外側に充填された間詰固化体15とをさらに備え、締結部材14は、管部材13の内側において上側架橋部11wと下側架橋部12wとに跨って延在している。
【0042】
なお、間隙(横目地)ghにおいては、鉄筋コンクリート構造であるため、互いに対向する側面113の凹部110C及び側面123の凹部120Cは、必ずしも存在する必要は無い。凹部110C及び凹部120Cは、間隙(横目地)ghにおいて、上側支持部材11が第1床版110の上面111と第2床版120の上面121とに跨って当接する長さと、下側支持部材12が第1床版110の下面112と第2床版120の下面122とに跨って当接する長さとを確保するために設けられる。
【0043】
図6(A)、
図6(B)及び
図6(C)に示されるように、間詰工程の後に締結部材14を撤去する撤去工程が行われる。本実施形態においては、撤去工程では、間詰工程の後に上側支持部材11及び下側支持部材12も撤去される。また、撤去工程では、間詰工程の後に管部材13も撤去される。管部材の撤去後には、管部材13により間詰固化体に孔部16が形成される。
【0044】
図7(A)、
図7(B)及び
図7(C)に示されるように、撤去工程の後に管部材13によって間詰固化体15により形成された孔部16に充填材17を充填する孔部充填工程が行われる。孔部充填工程では、撤去工程で管部材13が撤去された後に孔部16に充填材17が充填される。以上のようにして、橋軸直角方向D2に延在する間隙(横目地)ghを隔てて互いに対向する第1床版110と第2床版120との連結が完了する。
【0045】
図1(G)及び
図1(H)に示されるように、第1床版110及び第2床版120が設置された第1車線100には壁高欄130及び仮設防護柵301が設置される。
図1(I)及び
図1(J)に示されるように、第1車線100において、第1床版110の上面111及び第2床版120の上面121等の全ての床版の上面に本舗装60を施す本舗装工程が行われる。第1車線100に設置された第1床版110及び第2床版120の上は片側一車線の道路として供用される。一方、第2車線200に残置された既設床版50、壁高欄230及び仮設防護柵301は撤去される。第2車線200上は通行止めとなる。
【0046】
(縦目地)
図1(K)、
図1(L)、
図8(A)、
図8(B)及び
図8(C)に示されるように、第1床版設置工程で第1車線100に設置された第1床版110の側面113と、第2床版220の側面223とを橋軸方向D1に延在する間隙(縦目地)gvを隔てて互いに対向させつつ、第2車線200に第2床版220を設置する第2床版設置工程が行われる。
図8(B)に示されるように、間隙(縦目地)gvにおいて、側面113は凹部110cを含み、側面223は凹部220cを含む。また、第2床版120は上面221及び下面222を有する。
【0047】
上記と同様に、第1床版設置工程で設置された第1床版110の上面111と第2床版設置工程で設置された第2床版220の上面221とに跨って第1床版110及び第2床版220を支持する上側支持部材11を配置する上側支持部材配置工程、第1床版設置工程で設置された第1床版110の下面112と第2床版設置工程で設置された第2床版220の下面222とに跨って第1床版110及び第2床版220を支持する下側支持部材12を配置する下側支持部材配置工程、上側支持部材配置工程で配置された上側支持部材11と下側支持部材配置工程で配置された下側支持部材12とを締結部材14により締結する締結工程、及び締結工程の後に間隙gvにおいて管部材13の外側に間詰固化材を充填し、間詰固化体15を生成する間詰工程が行われる。
【0048】
図8(A)、
図8(B)及び
図8(C)に示されるように、本実施形態の架設構造1は、第1床版110の側面113と第2床版220の側面223とを間隙(縦目地)gvを隔てて互いに対向させつつ、第1床版110と第2床版220とを連結する。架設構造1は、第1床版110の上面111と第2床版220の上面221とに跨って第1床版110及び第2床版220を支持する上側支持部材11と、第1床版110の下面112と第2床版220の下面222とに跨って第1床版110及び第2床版220を支持する下側支持部材12と、上側支持部材11と下側支持部材12とを締結する締結部材14とを備える。
【0049】
上側支持部材11の第1上側当接部11u、第2上側当接部11v及び上側架橋部11w並びに下側支持部材12の第1下側当接部12u、第2下側当接部12v及び下側架橋部12wの構成は、上記の間隙(横目地)ghにおける架設構造1と同様である。また、管部材13、締結部材14及び間詰固化体15の構成は、上記の間隙(横目地)ghにおける架設構造1と同様である。
【0050】
図8(B)に示されるように、本実施形態の第1床版110及び第2床版220は、橋軸直角方向D2に延在する緊張材挿通孔部110h,220hをそれぞれ有している。
図2(A)及び
図2(B)に示されるように、緊張材挿通孔部110h,220hに緊張材400が挿通され、第1床版110と第2床版220との間にポストテンションが付与される。上記と同様に、撤去工程及び孔部充填工程が行われる。
【0051】
以上のようにして、橋軸方向D1に延在する間隙(縦目地)gvを隔てて互いに対向する第1床版110と第2床版220との連結が完了する。間隙(縦目地)gvにおいては、互いに対向する側面113の凹部110cと側面223の凹部220cとの間には間詰固化体15が充填され、第1床版110と第2床版220とを上下方向にせん断する力に対するせん断キーとして機能する。
【0052】
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)及び
図2(D)に示されるように、第2車線200における間隙ghでの第2床版220の連結は、上記の第1車線100と同様に行われる。
図2(E)及び
図2(F)に示されるように、第2車線200において、第2床版220の上面221等の全ての床版の上面に本舗装60を施す本舗装工程が行われる。第1車線100に設置されていた仮設防護柵301が撤去され、第2車線200に壁高欄203が設置される。第1床版110及び第2床版220の上が第1車線100及び第2車線200を有する片側二車線の道路として再び供用される。以上のようにして、既設床版50の取り換えが完了する。
【0053】
本実施形態によれば、第1床版110の側面113と第2床版120の側面123とを間隙ghを隔てて互いに対向させつつ、第1床版110と第2床版120とを連結する床版の架設構造1において、第1床版110の上面111と第2床版120の上面121とに跨って第1床版110及び第2床版120を支持する上側支持部材11と、第1床版110の下面112と第2床版120の下面122とに跨って第1床版110及び第2床版120を支持する下側支持部材12とが、締結部材14により締結され、第1床版110及び第2床版120が動かないように固定されるため、床版間の連結の品質を向上できる。
【0054】
また、本実施形態では、上側支持部材11及び下側支持部材12により第1床版110及び第2床版120が動かないように固定された状態で、間詰固化体15は管部材13の外側に充填され、締結部材14は管部材13の内側で間詰固化体15とは分離されるため、車両の通行等の振動による間隙の間詰固化体15の打設及び養生への影響が低減され、床版間の連結の品質を向上できる。
【0055】
また、本実施形態では、第1上側当接部11u及び第2上側当接部11vのいずれか一方は、上側架橋部11wとは分離した部材による構成されるため、振動及び施工誤差等による第1床版110と第2床版120との間の角度の変動に対応し易い。また、本実施形態では、第1下側当接部12u及び第2下側当接部12vのいずれか一方は、下側架橋部12wとは分離した部材による構成されるため、振動及び施工誤差等による第1床版110と第2床版120との間の角度の変動に対応し易い。また、本実施形態によれば、上側支持部材11及び下側支持部材12は、間隙ghに対向して窪んだ凹部11C,12Cを有しているため、振動及び施工誤差等による第1床版110と第2床版120との間の角度の変動に対応し易い。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように上側支持部材配置工程、下側支持部材配置工程及び締結工程が行われることにより、ほとんどの作業を第1床版110の下面112及び第2床版120の下面122の側から行うことができ、床版の取り換えの利便性を向上できる。
【0057】
また、本実施形態によれば、撤去工程で間詰工程の後に、管部材13の内側において上側支持部材11と下側支持部材12とに跨って延在していた締結部材14が撤去されるため、間詰工程で管部材13の外側に充填された間詰固化体15が障害となることなく締結部材14を撤去でき、締結部材14の撤去が容易である。また、孔部充填工程で撤去工程の後に管部材13により間詰固化体15に形成された孔部16に充填材17が充填されるため、撤去工程及び孔部充填工程の後に、間隙ghの部位を車両の通行のために供用できる。
【0058】
また、本実施形態によれば、撤去工程では間詰工程の後に管部材13が撤去され、孔部充填工程では、撤去工程で管部材13が撤去された後に孔部16に充填材17が充填されるため、孔部16に管部材13を残置することなく孔部16を充填材17で充填できる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、上記実施形態における、橋桁は鈑桁、トラス桁等の種類であってよい。第1床版110の側面113及び第2床版120,220の側面123,223は、間隙gh,gvに突出する他の種類の継手鉄筋が備えられていてもよい。第1床版110の側面113及び第2床版120,220の側面123,223は、互いに嵌合するせん断キー又は互いに接触しないせん断キーが備えられていてもよい。また、上側支持部材11及び下側支持部材12は、鋼材、鋳物及びステンレス鋼等の鉄の他、高強度コンクリートプレキャスト部材等のコンクリート及び炭素繊維から形成されていてもよい。
【0060】
また、例えば、第2床版設置工程では、第2床版120に架設治具10の上側支持部材11、下側支持部材12、管部材13及び締結部材14が取り付けられた状態で第2床版120の移動及び設置が行われてもよい。例えば、上側支持部材11は第2床版120の側面123近傍の上面121に当接させられ、下側支持部材12は第2床版120の側面123近傍の下面122に当接させられ、上側支持部材11と下側支持部材12とは、第2床版120の側面123近傍で上下方向に延在する管部材13の内側において上側支持部材11と下側支持部材12とに跨って延在する締結部材14により締結されている状態で、第2床版120の移動及び設置が行われてもよい。締結部材14のナット14nを占める強度を適宜調整することにより、第2床版120に架設治具10が固定される。
【0061】
上側支持部材配置工程では、締結部材14のナット14nを緩め、第2床版120の側面123近傍の上面121に当接させられた上側支持部材11を移動させることにより、第1床版110の上面111と第2床版120の上面121とに跨って上側支持部材11を配置する。また、下側支持部材配置工程では、締結部材14のナット14nを緩め、第2床版120の側面123近傍の下面122に当接させられた下側支持部材12を移動させることにより、第1床版110の下面112と第2床版120の下面122とに跨って下側支持部材12を配置する。締結工程では、上側支持部材配置工程及び下側支持部材配置工程で緩めた締結部材14のナット14nを再び締めることにより、上側支持部材11と下側支持部材12とを締結する。これにより、各工程の作業の効率が向上する。
【0062】
また、例えば、第2床版設置工程では、第2床版120に架設治具10の上側支持部材11、管部材13及び締結部材14のボルト14bが取り付けられた状態で第2床版120の移動及び設置が行われてもよい。例えば、上側支持部材11は第2床版120の側面123近傍の上面121に当接させられ、上側支持部材11の孔部11hに締結部材14のボルト14bの上端が螺合され、管部材13の内側にボルト14bが配置されるように管部材13が第2床版120の側面123近傍に配置されている状態で、第2床版120の移動及び設置が行われてもよい。上側支持部材11、管部材13及び締結部材14のボルト14bの第2床版120への固定は、上側支持部材11の重量による上側支持部材11と第2床版120の上面121との間の摩擦力による他に、接着剤等によってもよい。
【0063】
上側支持部材配置工程では、第2床版120の側面123近傍の上面121に当接させられた上側支持部材11を移動させることにより、第1床版110の上面111と第2床版120の上面121とに跨って上側支持部材11を配置する。下側支持部材配置工程では、上記実施形態と同様に、下側支持部材12の孔部12hに締結部材14のボルト14bの下端を挿通させつつ、第1床版110の下面112と、第2床版120の下面122とに跨って下側支持部材12を配置する。締結工程では、上記実施形態と同様に、ボルト14bの下端に2つのナット14nをそれぞれ螺合することにより、上側支持部材11と下側支持部材12とを締結する。これにより、各工程の作業の効率が向上する。
【0064】
また、例えば、各車線の通行止めを伴う床版の取り換えの施工時間が夜間の数時間に制限されており、夜間の数時間の施工時間に各車線において一部の数枚の床版を取り換え、日中を含む施工時間外には当該車線を供用することを繰り返す場合には、撤去工程において、上側支持部材11は、第1床版110の上面111及び第2床版120の上面121に残置されてもよい。
【0065】
例えば、上側支持部材11が第1床版110の上面111及び第2床版120の上面121に残置された状態で、第1車線100において、第1床版110の上面111及び第2床版120の上面121に仮舗装を施す仮舗装工程が行われてもよい。仮舗装が施された後の日中を含む施工時間外には、第1車線100及び第2車線200は片側二車線の道路として供用される。第1車線100の既設床版50の取り換えが終了するまで、上記と同様に、夜間の数時間の施工時間に第1車線100において一部の数枚の既設床版50を取り換え、日中を含む施工時間外には第1車線100を供用することが繰り返されてもよい。
【0066】
第1車線100の既設床版50の全部の取り換えの終了後に、第1車線100の仮舗装及び上側支持部材11が撤去される。第1車線100において、第1床版110の上面111及び第2床版120の上面121等の全ての床版の上面に本舗装60を施す本舗装工程が行われる。第1車線100での本舗装工程の終了後に、第1車線100に設置された第1床版110及び第2床版120の上は片側一車線の道路として供用される。第2車線200においても、第1車線100と同様である。
【0067】
この態様では、各車線の通行止めを伴う床版の取り換えの施工時間が短時間に制限されている場合に、各車線が供用可能となる仮舗装工程の前の撤去工程では上側支持部材11を残置したままにできるため、床版の取り換えの施工時間が短時間に制限されている場合の床版の取り換えがより容易になる。
【0068】
また、上記と同様に各車線の通行止めを伴う床版の取り換えの施工時間が短時間に制限されている場合には、上側支持部材配置工程では、高強度コンクリートプレキャスト部材等のコンクリート及び炭素繊維から形成されている上側支持部材11が配置され、撤去工程では、上側支持部材11は撤去されず、上側支持部材11が埋設された状態で第1床版110及び第2床版120の上面111,121に仮舗装及び本舗装60が施されてもよい。上側支持部材11は、第1床版110及び第2床版120の上面111,121に形成された凹部の中に残置されてもよい。
【0069】
この態様では、各車線の通行止めを伴う床版の取り換えの施工時間が短時間に制限されている場合に、各車線が供用可能となる仮舗装工程の前の撤去工程では上側支持部材11を残置したままにでき、さらに最終的な本舗装工程の前にも上側支持部材を残置したままにできるため、床版の取り換えの施工時間が短時間に制限されている場合の床版の取り換えがより容易になる。
【符号の説明】
【0070】
1…架設構造、10…架設治具、11…上側支持部材、11u…第1上側当接部、11v…第2上側当接部、11w…上側架橋部、11b…凸部、11h…孔部、11C…凹部、12…下側支持部材、12u…第1下側当接部、12v…第2下側当接部、12w…下側架橋部、12b…凸部、12h…孔部、12C…凹部、13…管部材、14…締結部材、14b…ボルト、14n…ナット、15…間詰固化体、16…孔部、17…充填材、50…既設床版、60…本舗装、100…第1車線、110…第1床版、110C…凹部、110h…緊張材挿通孔部、111…上面、112…下面、113…側面、114…鉄筋、120…第2床版、121…上面、122…下面、123…側面、124…鉄筋、120C…凹部、130…壁高欄、140…配力筋、200…第2車線、220…第2床版、220c…凹部、220h…緊張材挿通孔部、221…上面、222…下面、223…側面、230…壁高欄、400…緊張材、gh…間隙(横目地)、gv…間隙(縦目地)、D1…橋軸方向、D2…橋軸直角方向。