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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085817
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/02 20060101AFI20230614BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
B60C9/02 B
B60C9/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200071
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】富▲高▼ 祐
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA34
3D131AA39
3D131BA01
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC05
3D131BC11
3D131BC13
3D131BC31
3D131BC42
3D131BC44
3D131DA09
3D131DA16
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA54
3D131DA56
3D131HA33
3D131HA35
3D131HA54
(57)【要約】
【課題】中抜き構造のカーカスプライによる軽量化を実現しつつ、横剛性の向上に伴う操縦安定性の向上を図ることができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】カーカスプライ50は、トレッド30から一対のビード10のそれぞれのタイヤ幅方向内側に延在するとともに、ビードコア11で折り返されてタイヤ径方向外側に延在する折り返し部51eを有する第1のカーカスプライ51と、第1のカーカスプライ51のタイヤ外面側に配置され、トレッド30からビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に延在する第2のカーカスプライ52と、を有し、第1のカーカスプライ51及び第2のカーカスプライ52の少なくとも一方は、タイヤ幅方向に分割された一対のプライ片51Aを含む分割カーカスプライであり、一対のプライ片51Aのそれぞれは、トレッド30に配置され、タイヤ幅方向で互いに離間して対向する内端51aを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコア及び当該ビードコアからタイヤ径方向外側に延びるビードフィラーを有する一対のビードと、
前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、
前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、
前記トレッドに配置されたベルトと、
前記トレッドから前記一対のビードにわたるカーカスプライと、を備える空気入りタイヤであって、
前記カーカスプライは、少なくとも、
前記トレッドから前記ビードフィラーのタイヤ幅方向内側に延在するとともに、前記ビードコアで折り返されてタイヤ径方向外側に延在する折り返し部を有する第1のカーカスプライと、
前記第1のカーカスプライのタイヤ外面側に配置され、前記トレッドから前記ビードフィラーのタイヤ幅方向外側に延在する第2のカーカスプライと、を有し、
前記第1のカーカスプライ及び前記第2のカーカスプライの少なくとも一方は、タイヤ幅方向に分割された一対のプライ片を含む分割カーカスプライであり、
前記一対のプライ片のそれぞれは、前記トレッドに配置され、タイヤ幅方向で互いに離間して対向する内端を有する、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1のカーカスプライ及び前記第2のカーカスプライのいずれもが、前記分割カーカスプライであり、
前記第1のカーカスプライは、前記プライ片として第1のプライ片を有するとともに、前記内端として第1の内端を有し、
前記第2のカーカスプライは、前記プライ片として第2のプライ片を有するとともに、前記内端として第2の内端を有する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1の内端を含む前記第1のプライ片のタイヤ幅方向内側の第1の内側端部と、前記ベルトのタイヤ幅方向外側の外側端部とが、タイヤ径方向に重なり合っている、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1の内端と、当該第1の内端よりもタイヤ幅方向外側に配置される前記ベルトのタイヤ幅方向外側の外端と、の間のタイヤ幅方向の距離が、20mm以上である、請求項2または3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第2の内端を含む前記第2のプライ片のタイヤ幅方向内側の第2の内側端部と、前記ベルトのタイヤ幅方向外側の外側端部とが、タイヤ径方向に重なり合っている、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第2の内端と、当該第2の内端よりもタイヤ幅方向外側に配置される前記ベルトのタイヤ幅方向外側の外端と、の間のタイヤ幅方向の距離が、10mm以上である、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記第2の内端は、前記第1の内端よりもタイヤ幅方向外側に配置されている、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
タイヤ径方向において、前記ベルトと前記第1のプライ片との間に、前記第2の内側端部が配置されている、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記第2のカーカスプライは、前記ビードのタイヤ幅方向外側から前記ビードコアのタイヤ径方向内側に回り込む回り込み部を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記第1のカーカスプライの前記折り返し部と、前記第2のカーカスプライとが、タイヤ幅方向に重なり合っている、請求項1~9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の空気入りタイヤにおいては、一対のビードの間に、タイヤの骨格を形成するカーカスプライが架け渡された内部構造が知られている。特許文献1には、このようなカーカスプライに関して、タイヤのトレッドの幅方向中央部において不連続となる中抜き部を設けることにより、軽量化、及び軽量化に伴う転がり抵抗の低減が図られるとされた空気入りタイヤが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されるカーカスプライは、トレッドから一対のビードのそれぞれのタイヤ幅方向内側に延在してからビードコアで折り返されてタイヤ径方向外側に延在し、折り返し端はサイドウォールの途中に配置されている。このような構造は、タイヤが横力を受けた場合、カーカスプライが撓んで圧縮し、その際の抵抗力で横剛性が発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-152380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
横剛性の向上は、操縦安定性の向上に寄与する。カーカスプライの圧縮抵抗による横剛性をさらに向上させるには、カーカスプライの数を増やすことが考えられるが、重量の増加を招くことになる。
【0006】
そこで本発明は、中抜き構造のカーカスプライによる軽量化を実現しつつ、横剛性の向上に伴う操縦安定性の向上を図ることができる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の空気入りタイヤは、ビードコア及び当該ビードコアからタイヤ径方向外側に延びるビードフィラーを有する一対のビードと、前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、前記トレッドに配置されたベルトと、前記トレッドから前記一対のビードにわたるカーカスプライと、を備える空気入りタイヤであって、前記カーカスプライは、少なくとも、前記トレッドから前記一対のビードのそれぞれのタイヤ幅方向内側に延在するとともに、前記ビードコアで折り返されてタイヤ径方向外側に延在する折り返し部を有する第1のカーカスプライと、前記第1のカーカスプライのタイヤ外面側に配置され、前記トレッドから前記ビードフィラーのタイヤ幅方向外側に延在する第2のカーカスプライと、を有し、前記第1のカーカスプライ及び前記第2のカーカスプライの少なくとも一方は、タイヤ幅方向に分割された一対のプライ片を含む分割カーカスプライであり、前記一対のプライ片のそれぞれは、前記トレッドに配置され、タイヤ幅方向で互いに離間して対向する内端を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、中抜き構造のカーカスプライによる軽量化を実現しつつ、横剛性の向上に伴う操縦安定性の向上を図ることができる空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ幅方向半断面図である。
図2図1の一部拡大図である。
図3】実施例で行った評価対象としての比較例1のタイヤの構成を示すタイヤ幅方向半断面図である。
図4】実施例で行った評価対象としての比較例2のタイヤの構成を示すタイヤ幅方向半断面図である。
図5】実施例で行った評価対象としての比較例3のタイヤの構成を示すタイヤ幅方向半断面図である。
図6】実施例で行った評価対象としての比較例4のタイヤの構成を示すタイヤ幅方向半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示している。図2は、図1の一部を拡大した図であって、後述するトレッド30からビード10にわたる部分を示す断面図である。
【0011】
実施形態に係るタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤである。なお、実施形態に係るタイヤ1は、乗用車の他に、ライトトラック、トラック、バス等の各種車両用として採用することができる。
【0012】
タイヤ1の構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっている。図1は、タイヤ1の右半分の断面を示しており、不図示の左半分も同じ構造である。図1において、符号S1はタイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつ、タイヤ幅方向中心に位置する面である。
【0013】
なお、図1の断面図は、タイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態を示している。なお、規定リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められた標準となるリムを指す。また、規定内圧とは、例えばタイヤ1が乗用車用である場合には180kPaである。
【0014】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示している。タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては紙面右側である。
【0015】
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示している。タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては紙面下側である。なお、図2及び後述する図3図6についても同様である。
【0016】
図1に示すように、タイヤ1は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、トレッド30に配置されたベルト40と、トレッド30から一対のビード10にわたるカーカスプライ50と、カーカスプライ50のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー60と、を備えている。
【0017】
ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11からタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、リムストリップゴム13と、を備える。
【0018】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤがタイヤ周方向に複数回巻かれた環状の部材である。ビードコア11は、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。
【0019】
ビードフィラー12は、タイヤ径方向外側の外端12aを有する。ビードフィラー12は、タイヤ径方向内側から外端12aに延びるにつれて先細り形状となっている。
【0020】
ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性及び安定性を確保するために設けられる。ビードフィラー12は、例えば、周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。
【0021】
リムストリップゴム13は、ビードコア11及びビードフィラー12を囲んで設けられるカーカスプライ50の外側をさらに囲んでおり、ビード10の外面のほとんどを構成している。リムストリップゴム13は、タイヤ1が装着されるリムの内側部分と接触する。リムストリップゴム13のタイヤ幅方向外側の外表面には、タイヤ周方向に沿った頂部13aが形成されている。頂部13aを含むリムストリップゴム13のタイヤ幅方向外側の部分は、外傷からリムを保護するリムプロテクタ14を構成する。リムプロテクタ14は、タイヤ周方向に環状に連続している。
【0022】
サイドウォール20は、カーカスプライ50のタイヤ幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム21を含む。サイドウォールゴム21は、タイヤ1の外壁面を構成する。サイドウォールゴム21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。サイドウォールゴム21のタイヤ径方向内側の端部は、リムストリップゴム13のタイヤ径方向外側の端部を覆っている。
【0023】
トレッド30は、トレッドゴム31を備える。トレッド30には、無端状のベルト40及びキャッププライ45が配置されている。ベルト40は、インナーライナー60のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ45は、ベルト40のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム31は、キャッププライ45のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0024】
ベルト40は、トレッド30を補強する部材である。実施形態のベルト40は、インナーライナー60のタイヤ径方向外側に配置された内側ベルト41と、内側ベルト41のタイヤ径方向外側に配置された外側ベルト42と、を備えた2層構造である。内側ベルト41及び外側ベルト42は、いずれも複数のスチールコード等のコードがゴムで覆われた構造を有する。ベルト40は、タイヤ幅方向外側に、内側ベルト41と外側ベルト42とが重なった外側端部40Bを有する。
【0025】
ベルト40は、内側ベルト41が外側ベルト42よりも幅広である。したがって、内側ベルト41のタイヤ幅方向外側の外端41Aは、外側ベルト42のタイヤ幅方向外側の外端42Aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。ベルト40を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、路面に対するトレッド30の接地性が向上する。なお、ベルト40は2層構造に限らず、1層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0026】
キャッププライ45は、ベルト40とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ45は、例えば、ポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有している。キャッププライ45のタイヤ幅方向外側の外側端部45Bは、タイヤ径方向外側から内側に折り畳まれて2重になっている。キャッププライ45のタイヤ幅方向外側の外端45Aは、内側ベルト41の外端41Aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。キャッププライ45の外側端部45Bは、内側ベルト41のタイヤ幅方向外側の外側端部41Bを覆って密着している。
【0027】
実施形態のキャッププライ45は1層であるが、2層以上の構造であってもよい。キャッププライ45を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0028】
トレッドゴム31は、キャッププライ45のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム31は、走行時に路面と接地する踏面31aを構成する部材である。トレッドゴム31の踏面31aには、例えば複数の溝で構成されるトレッドパターン32が設けられる。トレッドゴム31のタイヤ幅方向外側の外側端部31Bは、キャッププライ45のタイヤ幅方向外側の外端45Aを越えてタイヤ径方向内側に屈曲し、カーカスプライ50に接触している。この外側端部31Bは、サイドウォールゴム21のタイヤ径方向外側の端部で覆われている。
【0029】
カーカスプライ50は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。実施形態のカーカスプライ50は、第1のカーカスプライ51と、第2のカーカスプライ52と、を含んでいる。第1のカーカスプライ51はインナーライナー60のタイヤ外面側に配置され、第2のカーカスプライ52は、第1のカーカスプライ51のタイヤ外面側に配置されている。第1のカーカスプライ51及び第2のカーカスプライ52は、いずれも、トレッド30のタイヤ幅方向中央部において不連続となる中抜き部を有し、この中抜き部を間に挟んでタイヤ幅方向の両側に分割された構成を有する。
【0030】
第1のカーカスプライ51は、トレッド30から一対のビード10のそれぞれのタイヤ幅方向内側に延在するとともに、ビードコア11で折り返されてタイヤ径方向外側に延在する折り返し部51eを有する。
【0031】
第1のカーカスプライ51は、タイヤ幅方向に分割された一対の第1のプライ片51Aを含んでいる。すなわち第1のカーカスプライ51は、タイヤ幅方向に分割された一対の第1のプライ片51Aを含む分割カーカスプライである。第1のカーカスプライ51は、トレッド30のタイヤ幅方向中央部において不連続となる中抜き部51Hを有する。一対の第1のプライ片51Aは、中抜き部51Hを間に挟んでタイヤ幅方向の両側に配置される態様で、タイヤ1内に埋設されている。
【0032】
図2に示すように、第1のプライ片51Aは、中抜き部51H側の端であって、タイヤ幅方向で互いに離間する第1の内端51aを有する。第1の内端51aは、トレッド30のタイヤ幅方向外側の端部に配置されている。第1のプライ片51Aは、タイヤ幅方向内側に、第1の内端51aを含む第1の内側端部51bを有する。
【0033】
図2に示すように、第1のプライ片51Aは、第1の内端51aから、サイドウォール20に延在し、さらにビードコア11まで延びる第1のプライ本体部51cと、第1のプライ本体部51cからビードコア11に巻き付いて屈曲する屈曲部51dと、屈曲部51dからタイヤ径方向外側に折り返される折り返し部51eと、折り返し部51eのタイヤ径方向外端である折り返し端51fと、を有する。
【0034】
第1のプライ本体部51c、屈曲部51d及び折り返し部51eは連続している。第1のプライ本体部51cのタイヤ径方向内側の端部は、ビードコア11及びビードフィラー12のタイヤ幅方向内側に配置されている。折り返し部51eは、ビードコア11及びビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置されている。屈曲部51dは、ビードコア11のタイヤ径方向内側に配置され、第1のカーカスプライ51においてタイヤ径方向の最も内側の部分を構成する。折り返し部51eは、ビードフィラー12の途中まで延びている。折り返し端51fはビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置されている。
【0035】
第1のカーカスプライ51においては、一対の第1のプライ片51Aのタイヤ幅方向で対向する各第1の内端51aの間に、中抜き部51Hが形成されている。
【0036】
図1に示すように、第2のカーカスプライ52は、トレッド30から一対のビード10のそれぞれのタイヤ幅方向外側に延在している。
【0037】
第2のカーカスプライ52は、タイヤ幅方向に分割された一対の第2のプライ片52Aを含んでいる。すなわち第2のカーカスプライ52は、タイヤ幅方向に分割された一対の第2のプライ片52Aを含む分割カーカスプライである。第2のカーカスプライ52は、トレッド30のタイヤ幅方向中央部において不連続となる中抜き部52Hを有する。一対の第2のプライ片52Aは、中抜き部52Hを間に挟んでタイヤ幅方向の両側に配置される態様で、タイヤ1内に埋設されている。
【0038】
図2に示すように、第2のプライ片52Aは、中抜き部52H側の端であって、タイヤ幅方向で互いに離間する第2の内端52aを有する。第2の内端52aは、トレッド30のタイヤ幅方向外側の端部に配置されている。第2のプライ片52Aは、タイヤ幅方向内側に、第2の内端52aを含む第2の内側端部52bを有する。この第2の内側端部52bは、タイヤ径方向において、ベルト40の外側端部40Bと第1のプライ片51Aとの間に挟み込まれた状態で配置されている。
【0039】
第2のプライ片52Aの第2の内端52aは、第1のプライ片51Aの第1の内端51aよりもタイヤ幅方向外側に配置されている。図2に示すように、第2の内端52aと第1の内端51aとの間のタイヤ幅方向の距離L1は、10mm以上であることが好ましい。
【0040】
図2に示すように、第2のプライ片52Aは、第2の内端52aから、サイドウォール20に延在し、さらにビードフィラー12の外端12aを経てビード10のタイヤ幅方向外側まで延びる第2のプライ本体部52cと、第2のプライ本体部52cからビードコア11のタイヤ径方向内側に回り込む回り込み部52dと、を有する。第2のプライ本体部52cと回り込み部52dとは連続している。
【0041】
タイヤ径方向において、ベルト40と第1のプライ片51Aとの間に、第2のプライ片52Aの第2の内側端部52bが挟み込まれた状態で配置されている。
【0042】
第2のプライ本体部52cの、第2の内端52aからビードフィラー12の外端12aまでの部分は、第1のプライ片51Aの第1のプライ本体部51cの外面に密着している。第2のプライ本体部52cのタイヤ径方向内側の端部であってビードフィラー12の外端12aからタイヤ径方向内側の部分は、第1のプライ片51Aから離れ、ビードフィラー12及びビードコア11のタイヤ幅方向外側に配置されている。この第2のプライ本体部52cのタイヤ径方向内側の端部においては、タイヤ径方向外側の部分がビードフィラー12の外面に密着し、タイヤ径方向内側の部分が第1のプライ片51Aの折り返し部51eの外面に密着している。すなわち、第1のプライ片51Aの折り返し部51eと、第2のカーカスプライ52とは、タイヤ幅方向に重なり合っている。
【0043】
第2のプライ片52Aの回り込み部52dは、第1のプライ片51Aの屈曲部51dのタイヤ径方向内側に配置されている。この回り込み部52dは、第2のプライ本体部52c側の少なくとも一部が屈曲部51dに密着している。
【0044】
上述したビード10のリムストリップゴム13は、第2のプライ本体部52cにおけるビードコア11及びビードフィラー12のタイヤ幅方向外側の部分と、回り込み部52dを覆っている。また、リムストリップゴム13は、第1のプライ本体部51cのタイヤ径方向内側の端部を覆っている。回り込み部52dは、第2のカーカスプライ52において、タイヤ径方向の最も内側の部分を構成している。
【0045】
第2のカーカスプライ52においては、一対の第2のプライ片52Aのタイヤ幅方向で対向する各第2の内端52aの間に、中抜き部52Hが形成されている。
【0046】
第1のプライ片51A及び第2のプライ片52Aは、いずれもタイヤ1の骨格となる複数の図示せぬカーカスコードを含んでいる。複数のカーカスコードは、例えばタイヤ幅方向に沿った面内に沿って延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。このカーカスコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。第1のプライ片51A及び第2のプライ片52Aは、複数のカーカスコードがゴムにより被覆されて構成する。
【0047】
インナーライナー60は、一対のビード10の間のタイヤ内面を覆っている。したがってインナーライナー60は、タイヤ1の内壁面を構成する。インナーライナー60は、トレッド30の領域では、ベルト40及び第1のプライ片51Aの内面を覆っている。また、インナーライナー60は、サイドウォール20の領域では、第1のプライ片51Aの内面を覆っている。さらに、インナーライナー60は、ビード10のタイヤ径方向外側の領域では、第1のプライ片51Aの内面を覆い、ビード10のタイヤ径方向内側の領域では、第1のプライ片51Aとリムストリップゴム13との間に挟み込まれている。
【0048】
インナーライナー60は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0049】
ここで、ビードフィラー12に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム21及びインナーライナー60よりも硬度が高いゴムが用いられる。ゴムの硬度は、JIS K6253に準拠して、23℃雰囲気において、タイプAデュロメータで測定される値(デュロメータ硬さ)である。
【0050】
例えば、サイドウォールゴム21の硬度を基準としたとき、ビードフィラー12の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1.2倍~2.3倍程度の硬度のゴムを用いることが好ましい。リムストリップゴム13の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1倍~1.6倍程度の硬度のゴムを用いることがより好ましい。このような硬度とすることで、タイヤとしての柔軟性とビード10付近の剛性のバランスを確保することができる。
【0051】
以上が実施形態のタイヤ1の全体構成である。次いで、図2を参照しつつ、タイヤ1における第1のプライ片51A及び第2のプライ片52Aと、ベルト40との配置関係について説明する。
【0052】
第1のプライ片51Aの第1の内側端部51bと、ベルト40のタイヤ幅方向外側の外側端部40Bとが、タイヤ径方向に重なり合っている。
【0053】
第1のプライ片51Aの第1の内側端部51bと、ベルト40のタイヤ幅方向外側の外側端部40Bとのタイヤ径方向に重なり合っている部分のタイヤ幅方向長さを、図2において距離L2で示している。この距離L2は、第1のプライ片51Aの第1の内端51aと、この第1の内端51aよりもタイヤ幅方向外側に配置されるベルト40のタイヤ幅方向外側の外端、すなわち内側ベルト41の外端41Aとの間のタイヤ幅方向の距離である。実施形態において、この距離L2は20mm以上であることが好ましい。
【0054】
第2の内端52aを含む第2のプライ片52Aのタイヤ幅方向内側の第2の内側端部52bと、ベルト40のタイヤ幅方向外側の外側端部40Bとが、タイヤ径方向に重なり合っている。
【0055】
第2のプライ片52Aの第2の内側端部52bと、ベルト40のタイヤ幅方向外側の外側端部40Bとのタイヤ径方向に重なり合っている部分のタイヤ幅方向長さを、図2において距離L3で示している。この距離L3は、第2のプライ片52Aの第2の内端52aと、この第2の内端52aよりもタイヤ幅方向外側に配置される内側ベルト41のタイヤ幅方向外側の外端41Aとの間のタイヤ幅方向の距離である。実施形態において、この距離L3は10mm以上であることが好ましい。
【0056】
以上詳述した実施形態のタイヤ1が備えるカーカスプライ50は、第1のカーカスプライ51及び第2のカーカスプライ52を含む。そしてこれら第1のカーカスプライ51及び第2のカーカスプライ52は、中抜き部51H及び中抜き部52Hをそれぞれ有する中抜き構造を有する。したがって実施形態のタイヤ1は、2つのカーカスプライを備えながら軽量化が図られる。
【0057】
実施形態のタイヤ1は、第1のカーカスプライ51及び第2のカーカスプライ52の2つのカーカスプライにより、走行時においてタイヤ1が受ける荷重や衝撃、あるいは充填空気圧等に耐える剛性が発揮されるとともに、適切な路面接地性や乗り心地性等が得られる。
【0058】
タイヤ1がコーナリングするなどして横力を受けた場合、サイドウォール20が撓み、第1のカーカスプライ51にはタイヤ径方向に縮小する圧縮が生じる。一方、第2のカーカスプライ52は、トレッド30からビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に延在するため、横力を受けた場合、タイヤ径方向に延びるように張力が生じる。第2のカーカスプライ52に張力が生じることにより、サイドウォール20の剛性が増加し、横力に耐える横剛性が向上する。その結果、操縦安定性が向上する。
【0059】
以上説明した実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0060】
(1)実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア11及びビードコア11からタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12を有する一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、トレッド30に配置されたベルト40と、トレッド30から一対のビード10にわたるカーカスプライ50と、を備え、カーカスプライ50は、少なくとも、トレッド30から一対のビード10のそれぞれのタイヤ幅方向内側に延在するとともに、ビードコア11で折り返されてタイヤ径方向外側に延在する折り返し部51eを有する第1のカーカスプライ51と、第1のカーカスプライ51のタイヤ外面側に配置され、トレッド30からビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に延在する第2のカーカスプライ52と、を有し、第1のカーカスプライ51及び第2のカーカスプライ52の少なくとも一方であって実施形態においては第1のカーカスプライ51が、タイヤ幅方向に分割された一対のプライ片としての第1のプライ片51Aを含む分割カーカスプライであり、一対の第1のプライ片51Aのそれぞれは、トレッド30に配置され、タイヤ幅方向で互いに離間して対向する内端として第1の内端51aを有する。
【0061】
これにより、中抜き構造を有するカーカスプライ50によって軽量化を実現しつつ、第2のカーカスプライ52によって横剛性の向上に伴う操縦安定性の向上を図ることができる。
【0062】
(2)実施形態に係るタイヤ1においては、第1のカーカスプライ51及び第2のカーカスプライ52のいずれもが、タイヤ幅方向に分割された分割カーカスプライであり、第1のカーカスプライ51は、プライ片として第1のプライ片51Aを有するとともに、内端として第1の内端51aを有し、第2のカーカスプライ52は、プライ片として第2のプライ片52Aを有するとともに、内端として第2の内端52aを有する。
【0063】
これにより、第1のカーカスプライ51及び第2のカーカスプライ52のいずれもが中抜き構造を有するため、より軽量化がなされ、軽量化に伴う転がり抵抗の低減が図られる。
【0064】
(3)実施形態に係るタイヤ1においては、第1の内端51aを含む第1のプライ片51Aのタイヤ幅方向内側の第1の内側端部51bと、ベルト40のタイヤ幅方向外側の外側端部40Bとが、タイヤ径方向に重なり合っている。
【0065】
これにより、ベルト40と第1のプライ片51Aとが、タイヤ幅方向からタイヤ径方向にわたって切れ目なく連続する構造になるため、応力が分散して耐久性の向上が図られる。
【0066】
(4)実施形態に係るタイヤ1においては、第1のプライ片51Aの第1の内端51aと、第1の内端51aよりもタイヤ幅方向外側に配置されるベルト40のタイヤ幅方向外側の外端41Aと、の間のタイヤ幅方向の距離L2が、20mm以上であることが好ましい。
【0067】
これにより、第1のプライ片51Aの第1の内側端部51bと、ベルト40のタイヤ幅方向外側の外側端部40Bとの重なり合っている部分の長さが20mm以上に確保される。このため、ベルト40と第1のプライ片51Aとの連続性が確実に保持され、応力分散による耐久性の向上がより一層図られる。
【0068】
(5)実施形態に係るタイヤ1においては、第2の内端52aを含む第2のプライ片52Aのタイヤ幅方向内側の第2の内側端部52bと、ベルト40のタイヤ幅方向外側の外側端部40Bとが、タイヤ径方向に重なり合っている。
【0069】
これにより、ベルト40と第2のプライ片52Aとが、タイヤ幅方向からタイヤ径方向にわたって切れ目なく連続してつながる構造になるため、応力が分散してタイヤとしての耐久性の向上が図られる。
【0070】
(6)実施形態に係るタイヤ1においては、第2のプライ片52Aの第2の内端52aと、第2の内端52aよりもタイヤ幅方向外側に配置されるベルト40のタイヤ幅方向外側の外端41Aと、の間のタイヤ幅方向の距離が、10mm以上であることが好ましい。
【0071】
これにより、第2のプライ片52Aの第2の内側端部52bと、ベルト40のタイヤ幅方向外側の外側端部40Bとの重なり合っている部分の長さが10mm以上に確保される。このため、ベルト40と第2のプライ片52Aとの連続性が確実に保持され、応力分散による耐久性の向上がより一層図られる。
【0072】
(7)実施形態に係るタイヤ1においては、第2のプライ片52Aの第2の内端52aは、第1の内端51aよりもタイヤ幅方向外側に配置されていることが好ましい。
【0073】
これにより、第1の内端51aと第2の内端52aとがタイヤ幅方向にずれるため、カーカスプライ50のタイヤ幅方向内側の端部の厚みは段階的に変位する。このため、応力の集中が抑制され、タイヤとしての耐久性の向上が図られる。実施形態では、図2に示したように、第2の内端52aと第1の内端51aとの間のタイヤ幅方向の距離L1は、10mm以上であることが好ましい。距離L1が10mm以上確保されることにより、応力集中の抑制効果をより一層得ることができる。
【0074】
(8)実施形態に係るタイヤ1は、タイヤ径方向において、ベルト40と第1のプライ片51Aとの間に、第2のプライ片52Aの第2の内側端部52bが配置されていることが好ましい。
【0075】
これにより、第2のプライ片52Aが、ベルト40と第1のプライ片51Aとにより保持されて拘束力が高まる。その結果、横力を受けた際の第2のプライ片52Aすなわち第2のカーカスプライ52の張力を大きく保持することができ、横剛性がより向上する。
【0076】
(9)実施形態に係るタイヤ1において、第2のカーカスプライ52は、ビード10のタイヤ幅方向外側からビードコア11のタイヤ径方向内側に回り込む回り込み部52dを有することが好ましい。
【0077】
これにより、回り込み部52dがビードコア11に係合する状態となる。このため、横力を受けた際の第2のカーカスプライ52の張力を大きく保持することができ、横剛性がより向上する。
【0078】
(10)実施形態に係るタイヤ1においては、第1のカーカスプライ51の折り返し部51eと、第2のカーカスプライ52とが、タイヤ幅方向に重なり合っていることが好ましい。
【0079】
これにより、第1のカーカスプライ51の折り返し部51eと第2のカーカスプライ52とがタイヤ径方向に切れ目なく連続する構造になるため、応力が分散して耐久性の向上が図られる。
【0080】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【0081】
例えば、上記実施形態では、第2のカーカスプライ52も第1のカーカスプライ51と同様に中抜き部52Hを有する中抜きプライであるが、第2のカーカスプライ52は中抜きプライではなく、一対のビード10の間に連続するプライであってよい。また、これとは逆に、第2のカーカスプライ52が中抜きプライであり、第1のカーカスプライ51が一対のビード10の間に連続するプライであってもよい。
【0082】
カーカスプライ50は、3つ以上のカーカスプライを備え、そのうちの少なくとも1つが中抜き部を有する態様であってよい。また、3つ以上のカーカスプライのうちの少なくとも1つのカーカスプライが、第1のカーカスプライ51のように折り返し部51eを有し、これ以外の少なくとも1つのカーカスプライが、第2のカーカスプライ52のようにトレッド30からビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に延在する態様であってよい。
【実施例0083】
タイヤサイズが「225/55R19」のタイヤの解析モデルとして、上記実施形態と同様の構造を備える実施例の解析モデルと、上記実施形の構成を備えない比較例1~4の解析モデルを作製し、それら解析モデルの剛性についてシミュレーションにより算出して評価した。
【0084】
比較例1~4のタイヤを、図3図6にそれぞれ示す。比較例1~4のタイヤは、カーカスプライ50以外の基本構成を上記実施形態と同じとしている。したがって図3図6においては、上記実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付している。なお、符号は主な構成要素に付している。以下に比較例1~4の構成を簡単に説明する。
【0085】
(比較例1:図3)2プライ
カーカスプライ100は、一対のビード10の間に架け渡された中抜き部を有さない構成である。カーカスプライ100は、タイヤ内腔側の第1のカーカスプライ110とタイヤ外面側の第2のカーカスプライ120とを有する2層構造(2プライ)であり、タイヤ径方向内側の端部は、タイヤ幅方向内側からビードコア11周りに折り返されている。
【0086】
(比較例2:図4)2プライ、外側プライ中抜き
カーカスプライ200は、ビード10の間に架け渡された中抜き部を有さない内側の第1のカーカスプライ210と、第1のカーカスプライ210の外側に配置され、中抜き部220Hを有する第2のカーカスプライ220との2層構造(2プライ)である。第2のカーカスプライ220は、中抜き部220Hのタイヤ幅方向両側に分割された一対のプライ片220Aを含む。カーカスプライ200のタイヤ径方向内側の端部は、タイヤ幅方向内側からビードコア11周りに折り返されている。
【0087】
(比較例3:図5)1プライ、プライ中抜き
カーカスプライ300は、中抜き部300Hを有する1層構造(1プライ)である。カーカスプライ300は、中抜き部300Hのタイヤ幅方向両側に分割された一対のプライ片300Aを含む。カーカスプライ300のタイヤ径方向内側の端部は、タイヤ幅方向内側からビードコア11周りに折り返されている。
【0088】
(比較例4:図6)1プライ、プライ中抜き、補強層有り
図5に示したタイヤに、補強層410を追加している。補強層410は、ビードコア11及びビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置されている。補強層410は、ビードコア11及びビードフィラー12と、リムストリップゴム13との間に挟み込まれている。補強層410のタイヤ径方向外側の端部は、カーカスプライ400の内腔側部分と折り返し部分との間に挟まれている。なお、補強層410は、例えばスチールコードをゴムで被覆した構造を有する。
【0089】
シミュレーションにより算出した剛性は、横方向からの荷重に抗する「横剛性」と、上方から下方に向けてかかる縦荷重に抗する「縦剛性」である。シミュレーションでは、タイヤを規定リムに装着し、規定内圧(180kPa)にした状態で上記剛性を算出した。また、中抜き部による軽量化を検証するため、タイヤの重量を算出した。以上の結果を表1に示す。なお、表1では、比較例1の各剛性値を指数100とし、他のタイヤを指数評価している。
【0090】
【表1】
【0091】
表1によれば、本発明の構成を備えた実施例のタイヤは、比較例1~4のタイヤに比べて横剛性及び縦剛性のいずれも高くなっている。したがって実施形態のように第2のカーカスプライがトレッドからビードフィラーのタイヤ幅方向外側に延在する構成は、横剛性及び縦剛性の向上が図られ、特に横剛性の向上に寄与することが認められた。また、実施例のタイヤは、同じ2プライ構造の比較例1よりも軽量であり、中抜き部による軽量化が実証された。これらの結果、実施例のタイヤは、中抜き構造のカーカスプライによる軽量化を実現しつつ、横剛性の向上に伴う操縦安定性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 タイヤ(空気入りタイヤ)
10 ビード
11 ビードコア
12 ビードフィラー
20 サイドウォール
30 トレッド
40 ベルト
40B ベルトのタイヤ幅方向外側の外側端部
41A ベルトのタイヤ幅方向外側の外端
50 カーカスプライ
51 第1のカーカスプライ
51A 第1のプライ片
51a 第1の内端(内端)
51b 第1の内側端部
51e 折り返し部
52 第2のカーカスプライ
52A 第2のプライ片
52a 第2の内端(内端)
52b 第2の内側端部
52d 回り込み部
図1
図2
図3
図4
図5
図6