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  • 特開-砂乾燥システム及び砂乾燥方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085820
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】砂乾燥システム及び砂乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 17/32 20060101AFI20230614BHJP
   E01C 19/10 20060101ALI20230614BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20230614BHJP
   F26B 23/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
F26B17/32 F
E01C19/10 Z
F26B25/00 F
F26B23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200079
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱 秀人
【テーマコード(参考)】
2D052
3L113
【Fターム(参考)】
2D052AA06
2D052DA22
2D052DA23
3L113AA06
3L113AB03
3L113AC04
3L113AC31
3L113AC68
3L113AC80
3L113AC86
3L113BA02
3L113CA02
3L113CB21
3L113CB22
3L113DA02
3L113DA08
(57)【要約】
【課題】 比較的採用がし易く、かつ効率よく砂の乾燥処理ができる砂乾燥システム及び砂乾燥方法を提供する。
【解決手段】 砕石工場に、木質燃料を自燃させることで熱風を発生させる熱風発生炉2と、湿潤した砂を乾燥処理する第一及び第二の砂ドライヤ3、4とを並設し、前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19一端部には前記熱風発生炉2に備えた熱風導出ダクト21を連結する一方、他端部には第一の排気ダクト25を備える。また、前記第一の排気ダクト25の途中には、前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19から導出する排ガスと、外気供給用の送風機32から供給される外気とを熱交換させ、前記排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮する際の凝縮潜熱を利用して前記外気を加熱する熱交換器5を介在させ、前記熱交換器5にて加熱した外気を前記第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20内へ導入する供給ダクト34を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕石工場に、木質燃料を自燃させることによって熱風を発生させる熱風発生炉と、湿潤した砂を熱風との接触によって乾燥処理する第一及び第二の砂ドライヤとを並設し、前記熱風発生炉は、天然ガスを燃料とする助燃バーナと木質燃料供給手段と木質燃料を自燃させるのに必要な燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給ファンとを有したキルン本体と、該キルン本体内での木質燃料の自燃に伴って生じる揮発分を燃焼分解する二次燃焼室とからなり、前記第一の砂ドライヤの第一のドラム一端部には前記熱風発生炉の二次燃焼室に備えた熱風導出ダクトを連結する一方、他端部には排気ダクトを備え、該排気ダクトの途中には前記第一の砂ドライヤの第一のドラムから導出する排ガスと、外気供給用の送風機から供給される外気とを熱交換させ、前記排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮する際の凝縮潜熱を利用して前記外気を加熱する熱交換器を介在させると共に、該熱交換器にて加熱した外気を前記第二の砂ドライヤの第二のドラム内へ導入する供給ダクトを備えたことを特徴とする砂乾燥システム。
【請求項2】
前記第一の砂ドライヤの第一のドラムから排出される乾燥処理砂の含水比を検出する第一の水分センサを備え、該第一の水分センサにて検出する乾燥処理砂の含水比が所定含水比に維持されるように、前記熱風発生炉の助燃バーナの燃焼量、前記熱風発生炉のキルン本体内へ供給する木質燃料の供給量、前記第一の砂ドライヤの第一のドラム内へ供給する砂の供給量、前記第一の砂ドライヤの第一のドラムの回転速度のうち、少なくとも何れか一つを調整制御する第一の制御器を備えたことを特徴とする請求項1記載の砂乾燥システム。
【請求項3】
前記第二の砂ドライヤの第二のドラムから排出される乾燥処理砂の含水比を検出する第二の水分センサを備え、該第二の水分センサにて検出する乾燥処理砂の含水比が所定含水比に維持されるように、前記送風機からの外気の送風量、前記第二の砂ドライヤの第二のドラム内へ供給する砂の供給量、前記第二の砂ドライヤの第二のドラムの回転速度のうち、少なくとも何れか一つを調整制御する第二の制御器を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の砂乾燥システム。
【請求項4】
前記熱交換器にて加熱した外気の一部を熱交換器下流側の第一の砂ドライヤの排気ダクトに導入する第一の分岐ダクトを備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の砂乾燥システム。
【請求項5】
前記熱交換器にて加熱した外気の一部を前記熱風発生炉の燃焼用空気供給ファンに供給する第二の分岐ダクトを備えたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の砂乾燥システム。
【請求項6】
前記熱風発生炉の近傍には液化天然ガスを低温高圧下で貯蔵する貯蔵タンクと気化器とを備え、前記熱交換機にて第一の砂ドライヤの第一のドラムからの排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮するのに伴って生じる温水を前記気化器に熱源として供給する温水供給配管を備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の砂乾燥システム。
【請求項7】
砕石工場に、木質燃料を自燃させることによって熱風を発生させる熱風発生炉と、湿潤した砂を熱風との接触によって乾燥処理する第一及び第二の砂ドライヤとを並設し、前記第一の砂ドライヤでは、前記熱風発生炉から導出される熱風を第一の砂ドライヤの第一のドラム内に導入して砂を乾燥処理する一方、前記第二の砂ドライヤでは、前記第一の砂ドライヤの第一のドラムから導出する排ガスと外気とを熱交換させ、前記排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮する際の凝縮潜熱を利用して前記外気を加熱し、この加熱した外気を前記第二の砂ドライヤの第二のドラム内へ導入して砂を乾燥処理することを特徴とする砂乾燥方法。
【請求項8】
前記第一及び第二の砂ドライヤでは、砂を所定含水比に維持するように乾燥処理することを特徴とする請求項7記載の砂乾燥方法。
【請求項9】
前記熱交換時に第一の砂ドライヤの第一のドラムからの排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮するのに伴って生じる温水と、生コンクリートのスラッジ水とを混合し、前記温水中に含まれる炭酸と前記スラッジ水中に含まれるカルシウムイオンとを反応させて炭酸カルシウムとして回収することを特徴とする請求項7または8記載の砂乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂、特にアスファルト混合物の素材として使用される砂を乾燥処理する乾燥システム及び乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路舗装材であるアスファルト混合物を製造するアスファルト混合物製造工場のアスファルトプラントにあっては、アスファルト混合物の素材である砂利や砂等の骨材を、例えば170℃程度に加熱した上で、石粉や溶融アスファルト等と所定量ずつ混合して所望のアスファルト混合物を製造している。
【0003】
ところで、前記骨材を170℃程度に加熱する際には、先ず、骨材に含まれている水分を乾燥させるために多くの燃料(例えば、全使用燃料のうち約半分程度)を消費する。特に、比表面積の大きい砂は比較的高含水比(例えば、約15%前後)の状態でプラントに供給されることも多いため、その乾燥処理の方に非常に多くの燃料が費やされることになる。したがって、アスファルトプラントにて使用される骨材のうち、特に砂の含水比を予め低減することができれば効果的に省エネを図ることができると共に、COの排出量の削減も期待できるものとなる。
【0004】
なお、上記課題に対し、本出願人は特許文献1(特開2004-36330号公報)、特許文献2(特開2011-226109号公報)に示されるように、アスファルト混合物製造工場の施設内(アスファルトプラントの近傍)に、高含水比の湿潤した砂を予め乾燥処理する専用のドライヤ(ロータリーキルン)である砂ドライヤを別途備えると共に、その熱源として、例えば工場施設内に既設の脱臭炉から排気される高温の熱風(廃熱)を有効利用するようにしたものを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-36330号公報
【特許文献2】特開2011-226109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようにアスファルト混合物製造工場の施設内に砂ドライヤを別途設置するとなるとそれなりの費用を要し、工場の規模等によっては採用が難しい場合もあり得る。また、例え工場施設内に砂ドライヤを設置した場合でも、間欠運転を余儀なくされるアスファルトプラントにあっては、少なくともプラント(脱臭炉)を運転していない間は熱源を確保できないことから砂ドライヤの運転も行えず、砂の乾燥処理を効率よく行う上で改善の余地があるものと考えられる。
【0007】
本発明は上記の点に鑑み、比較的採用がし易く、かつ効率よく砂の乾燥処理ができる砂乾燥システム及び砂乾燥方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、湿潤した砂を予め乾燥処理する砂ドライヤを、従来のようにアスファルト混合物製造工場側に設置するのではなく、砂を含めた各種骨材を複数のアスファルト混合物製造工場へ供給する砕石工場側に設置するようにすれば、個々のアスファルト混合物製造工場に砂ドライヤを設置する必要がなくなり、比較的採用のし易いものになるのではないかと考えた。なお、その場合、砕石工場側のコスト負担、及びCO排出量の増加は否めないものの、砕石工場では複数のアスファルト混合物製造工場向けに供給する多量の砂を一括して(連続的に)乾燥処理できることから効率化も期待でき、また予め乾燥処理した砂を各アスファルト混合物製造工場向けに供給可能とすることで付加価値も高められて十分に投資に見合う可能性もある上、砂の供給先である各アスファルト混合物製造工場の排出分も含めたトータル的なCO排出量で考えれば削減として見なすことができると考え、本発明を成すに至ったものである。
【0009】
即ち、本発明に係る請求項1記載の砂乾燥システムでは、砕石工場に、木質燃料を自燃させることによって熱風を発生させる熱風発生炉と、湿潤した砂を熱風との接触によって乾燥処理する第一及び第二の砂ドライヤとを並設し、前記熱風発生炉は、天然ガスを燃料とする助燃バーナと木質燃料供給手段と木質燃料を自燃させるのに必要な燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給ファンとを有したキルン本体と、該キルン本体内での木質燃料の自燃に伴って生じる揮発分を燃焼分解する二次燃焼室とからなり、前記第一の砂ドライヤの第一のドラム一端部には前記熱風発生炉の二次燃焼室に備えた熱風導出ダクトを連結する一方、他端部には排気ダクトを備え、該排気ダクトの途中には前記第一の砂ドライヤの第一のドラムから導出する排ガスと、外気供給用の送風機から供給される外気とを熱交換させ、前記排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮する際の凝縮潜熱を利用して前記外気を加熱する熱交換器を介在させると共に、該熱交換器にて加熱した外気を前記第二の砂ドライヤの第二のドラム内へ導入する供給ダクトを備えたことを特徴としている。
【0010】
また、請求項2記載の砂乾燥システムでは、前記第一の砂ドライヤの第一のドラムから排出される乾燥処理砂の含水比を検出する第一の水分センサを備え、該第一の水分センサにて検出する乾燥処理砂の含水比が所定含水比に維持されるように、前記熱風発生炉の助燃バーナの燃焼量、前記熱風発生炉のキルン本体内へ供給する木質燃料の供給量、前記第一の砂ドライヤの第一のドラム内へ供給する砂の供給量、前記第一の砂ドライヤの第一のドラムの回転速度のうち、少なくとも何れか一つを調整制御する第一の制御器を備えたことを特徴としている。
【0011】
また、請求項3記載の砂乾燥システムでは、前記第二の砂ドライヤの第二のドラムから排出される乾燥処理砂の含水比を検出する第二の水分センサを備え、該第二の水分センサにて検出する乾燥処理砂の含水比が所定含水比に維持されるように、前記送風機からの外気の送風量、前記第二の砂ドライヤの第二のドラム内へ供給する砂の供給量、前記第二の砂ドライヤの第二のドラムの回転速度のうち、少なくとも何れか一つを調整制御する第二の制御器を備えたことを特徴としている。
【0012】
また、請求項4記載の砂乾燥システムでは、前記熱交換器にて加熱した外気の一部を熱交換器下流側の第一の砂ドライヤの排気ダクトに導入する第一の分岐ダクトを備えたことを特徴としている。
【0013】
また、請求項5記載の砂乾燥システムでは、前記熱交換器にて加熱した外気の一部を前記熱風発生炉の燃焼用空気供給ファンに供給する第二の分岐ダクトを備えたことを特徴としている。
【0014】
また、請求項6記載の砂乾燥システムでは、前記熱風発生炉の近傍には液化天然ガスを低温高圧下で貯蔵する貯蔵タンクと気化器とを備え、前記熱交換機にて第一の砂ドライヤの第一のドラムからの排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮するのに伴って生じる温水を前記気化器に熱源として供給する温水供給配管を備えたことを特徴としている。
【0015】
また、請求項7記載の砂乾燥方法では、砕石工場に、木質燃料を自燃させることによって熱風を発生させる熱風発生炉と、湿潤した砂を熱風との接触によって乾燥処理する第一及び第二の砂ドライヤとを並設し、前記第一の砂ドライヤでは、前記熱風発生炉から導出される熱風を第一の砂ドライヤの第一のドラム内に導入して砂を乾燥処理する一方、前記第二の砂ドライヤでは、前記第一の砂ドライヤの第一のドラムから導出する排ガスと外気とを熱交換させ、前記排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮する際の凝縮潜熱を利用して前記外気を加熱し、この加熱した外気を前記第二の砂ドライヤの第二のドラム内へ導入して砂を乾燥処理することを特徴としている。
【0016】
また、請求項8記載の砂乾燥方法では、前記第一及び第二の砂ドライヤでは、砂を所定含水比に維持するように乾燥処理することを特徴としている。
【0017】
また、請求項9記載の砂乾燥方法では、前記熱交換時に第一の砂ドライヤの第一のドラムからの排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮するのに伴って生じる温水と、生コンクリートのスラッジ水とを混合し、前記温水中に含まれる炭酸と前記スラッジ水中に含まれるカルシウムイオンとを反応させて炭酸カルシウムとして回収することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る請求項1記載の砂乾燥システムによれば、砕石工場側に砂ドライヤを設置するようにしたので、砂の供給先側であるアスファルト混合物製造工場等での負担はなく、また砕石工場側にあっても、敷地内に設置する一対の砂ドライヤのうち、一方のドライヤには木質燃料の自燃によって発生させた熱風を導入し、他方のドライヤには排ガス中の水蒸気が凝縮する際の凝縮潜熱を利用して加熱した外気を供給するようにしたため、省エネ並びにCO削減を図りつつも砕石工場にて生産される多量の砂を効率よく乾燥処理でき、比較的採用のし易い砂乾燥システムを構築することが可能となる。
【0019】
また、請求項2記載の砂乾燥システムによれば、第一の砂ドライヤから排出される乾燥処理砂を敢えて絶乾とせずに、所定含水比に維持されるように調整することにより、排出後の砂の残留水分の一部は砂の顕熱を利用して蒸発させることができ、乾燥処理砂からの単なる放熱によるエネルギーロスを軽減できて一層効率よく砂の乾燥処理を行うことができるものとなる。
【0020】
また、請求項3記載の砂乾燥システムによれば、第二の砂ドライヤから排出される乾燥処理砂を敢えて絶乾とせずに、所定含水比に維持されるように調整することにより、排出後の砂の残留水分の一部は砂の顕熱を利用して蒸発させることができ、乾燥処理砂からの単なる放熱によるエネルギーロスを軽減できて一層効率よく砂の乾燥処理を行うことができるものとなる。
【0021】
また、請求項4記載の砂乾燥システムによれば、簡単な構成ながらも熱交換後の排ガス温度を露点以上に高められ、排気ダクト内で結露等の不具合が発生するのを効果的に抑制できる。
【0022】
また、請求項5記載の砂乾燥システムによれば、熱風発生炉内へ供給する燃焼用空気を予熱できて木質燃料の燃焼効率を高められる結果、助燃バーナの燃費を抑えられて一層の省エネ並びにCO削減効果が期待できるものとなる。
【0023】
また、請求項6記載の砂乾燥システムによれば、気化処理用のボイラー等の熱源を別途用意せずとも助燃バーナの燃料である液化天然ガスを気化処理でき、一層採用のし易いものとなる。
【0024】
また、請求項7記載の砂乾燥方法によれば、砕石工場側に砂ドライヤを設置するようにしたので、砂の供給先側であるアスファルト混合物製造工場等での負担はなく、また砕石工場側にあっても、敷地内に設置する一対の砂ドライヤのうち、一方のドライヤには木質燃料の自燃によって発生させた熱風を導入し、他方のドライヤには排ガス中の水蒸気が凝縮する際の凝縮潜熱を利用して加熱した外気を供給するようにしたため、省エネ並びにCO削減を図りつつも砕石工場にて生産される多量の砂を効率よく乾燥処理でき、比較的採用のし易い砂乾燥システムを構築することが可能となる。
【0025】
また、請求項8記載の砂乾燥方法によれば、第一及び第二の砂ドライヤから排出される乾燥処理砂を敢えて絶乾とせずに、所定含水比に維持されるように調整することにより、排出後の砂の残留水分の一部は砂の顕熱を利用して蒸発させることができ、乾燥処理砂からの単なる放熱によるエネルギーロスを軽減できて一層効率よく砂の乾燥処理を行うことができるものとなる。
【0026】
また、請求項9記載の砂乾燥方法によれば、排ガス中に含まれるCOを、例えばアスファルト混合物の素材としても利用可能な有用物の炭酸カルシウムとして回収できると共に、産業廃棄物であるスラッジ水の減容処理も同時に行うことができて好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る砂乾燥システム及び砂乾燥方法の一実施例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の砂乾燥システム及び砂乾燥方法にあっては、例えば、アスファルト混合物製造工場等に向けてアスファルト混合物の素材である各種骨材を生産・供給する砕石工場の施設内に、木質燃料を自燃させることによって熱風を発生させる熱風発生炉と、前記砕石工場にて生産される高含水比の湿潤した砂を、熱風との接触によって乾燥処理する第一及び第二の砂ドライヤとを並設する。
【0029】
前記熱風発生炉は、天然ガスを燃料とする助燃バーナと木質チップ等の木質燃料を供給する木質燃料供給手段と木質燃料を自燃させるのに必要な燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給ファンとを有し、かつ回転自在に傾斜支持した円筒状のキルン本体と、該キルン本体内での木質燃料の自燃に伴って生じる揮発分(木質ガス)を完全に燃焼分解する二次燃焼室とからなる。
【0030】
一方、前記第一及び第二の砂ドライヤには、内周面に複数の掻き上げ羽根を周設した円筒状のドラムを回転自在に傾斜支持し、該ドラム内に熱風と共に高含水比の湿潤した砂を供給し、この砂を前記掻き上げ羽根にて繰り返し掻き上げながら熱風と直接接触させることによって加熱・乾燥処理する、ロータリーキルン構造のものを採用する。
【0031】
前記第一の砂ドライヤの第一のドラム一端部には、前記熱風発生炉の二次燃焼室に備えた熱風導出ダクトを連結する一方、他端部には排気ダクトを備え、該排気ダクトの途中には、前記第一の砂ドライヤの第一のドラムから導出する高温かつ高湿の排ガスと、外気供給用の送風機から供給される常温の外気とを熱交換させ、この熱交換に伴って前記排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮する際の凝縮潜熱を利用して前記外気を加熱する熱交換器を介在させる。また、前記熱交換器にて加熱した外気(温風)を前記第二の砂ドライヤの第二のドラム内へと供給して導入する供給ダクトを備える。
【0032】
前記第一の砂ドライヤの第一のドラムから導出する排ガスは、砂の乾燥処理に用いられたことに伴う幾分かの温度低下はあるものの、それなりに高温であると共に、高含水比の湿潤した砂から蒸発した多量の水蒸気を含んで高湿の状態にあり、前記熱交換器での外気との熱交換を契機に前記排ガス中に含まれる水蒸気は容易に凝縮し、その際に発生する凝縮潜熱でもって常温の外気を効率よく加熱可能としている。
【0033】
ここで、前記熱交換器を経て加熱された外気の温度は、前記熱風発生炉の二次燃焼室から導出される熱風ほどの高温にはないものの、昇温に伴って相対湿度は大幅に低下するため、これが供給される第二の砂ドライヤでは十分に砂の乾燥処理を行うことが可能となる。
【0034】
また、前記第一の砂ドライヤに熱風を供給する熱風発生炉では、カーボンニュートラルの観点からCO排出量をゼロと見なせる木質チップ等の木質燃料を自燃させ、かつ前記木質燃料の自燃を補助する助燃バーナの燃料にもCO排出係数の小さい天然ガスを採用することで、例えば、前記第一の砂ドライヤにA重油等を燃料とするバーナを直接備える場合と比較してCOの排出量の低減を可能としている。
【0035】
さらに、前記熱風発生炉の前段のキルン本体にて木質燃料を自燃させることに伴って生じた揮発分(木質ガス)は、後段の二次燃焼室にて完全に燃焼分解させた上で熱風として前記第一の砂ドライヤへと供給されると共に、助燃バーナの燃料である天然ガスは硫黄や塩素等の酸性ガス生成要因物質を元々含まないことから、前記第一の砂ドライヤから排出される排ガス中の水蒸気を前記熱交換器にて凝縮させた際に生じる多量の凝縮水は酸性を呈することもなく、特段中和処理等を施さずともそのまま放流できると共に、熱交換器や排気ダクト等への酸腐食の影響を抑制できるものとなる。
【0036】
また、好ましくは、前記第一の砂ドライヤの第一のドラムから排出される、乾燥処理を経た乾燥処理砂の含水比を検出する第一の水分センサを備え、該第一の水分センサにて検出する前記乾燥処理砂の含水比が、絶乾を除く、若干の水分を残した所定含水比に維持されるように、前記熱風発生炉の助燃バーナの燃焼量、前記熱風発生炉のキルン本体内へ供給する木質燃料の供給量、前記第一の砂ドライヤの第一のドラム内へ供給する砂の供給量、前記第一の砂ドライヤの第一のドラムの回転速度のうち、少なくとも何れか一つを調整制御する第一の制御器を備えるとよい。
【0037】
前記第一の砂ドライヤの第一のドラムから排出される乾燥処理砂を、アスファルト混合物の素材として使用する上で好適な、例えば絶乾となるまで加熱乾燥しようとすると砂の温度は必然的に高温とせざるを得ないが、この高温の砂を、砕石工場から遠隔地のアスファルト混合物製造工場等に搬送するとなるとその間に熱放散して温度低下を来し、これは単純にエネルギーロスとなる。
【0038】
一方、上記のように、砂に敢えて若干の水分を残した状態で前記第一のドラムから排出することにより、前記砂の貯蔵中や搬送中等に顕熱を利用して残留水分の一部を徐々に蒸発させるといったことができ(熱エネルギーの有効活用が可能となり)、単なる熱放散によるエネルギーロスを軽減することが可能となる。また、砂を絶乾まで乾燥処理する必要がないことから、砂の乾燥処理に使用される燃料消費量も抑えられると共に、COの排出量の削減効果も期待できるものとなる。
【0039】
また、好ましくは、前記第二の砂ドライヤの第二のドラムから排出される乾燥処理砂の含水比を検出する第二の水分センサを備え、該第二の水分センサにて検出する前記乾燥処理砂の含水比が、絶乾を除く、若干の水分を残した所定含水比に維持されるように、前記送風機からの外気の送風量、前記第二の砂ドライヤの第二のドラム内へ供給する砂の供給量、前記第二の砂ドライヤの第二のドラムの回転速度のうち、少なくとも何れか一つを調整制御する第二の制御器を備えるとよい。
【0040】
前記第二の砂ドライヤについても、前記第一の砂ドライヤと同様に、第二のドラムから排出される乾燥処理砂を敢えて若干の水分を残した状態に維持することにより、前記砂の貯蔵中や搬送中等に顕熱を利用して残留水分の一部を徐々に蒸発させるといったことができ(熱エネルギーの有効活用が可能となり)、単なる熱放散によるエネルギーロスを軽減することが可能となる。
【0041】
更に、好ましくは、前記熱交換器にて加熱した外気(温風)の一部を、熱交換器下流側の第一の砂ドライヤの排気ダクトに導入する第一の分岐ダクトを備えるとよい。熱交換後の排ガス温度は、場合によっては露点温度を下回り、排気ダクト内で結露を生じたり、排気ダクト終端部の煙突から白煙を生じる等の不具合が発生する可能性があるものの、前記第一の分岐ダクトを備えることにより、熱交換で加熱・昇温されて相対湿度の低下した外気(温風)の一部を前記排気ダクト内の排ガス中に混入させることができる結果、排ガス温度を露点以上に高められ、簡単な構成ながらも上記不具合を効果的に抑制することができるものとなる。
【0042】
また更に、好ましくは、前記熱交換器にて加熱した外気(温風)の一部を、前記熱風発生炉の燃焼用空気供給ファンに供給する第二の分岐ダクトを備えるとよい。前記第二の分岐ダクトを備えることにより、熱風発生炉内へ供給する燃焼用空気を予熱でき(予熱した空気を燃焼用空気として供給でき)、自燃させる木質燃料の燃焼効率を高められる結果、助燃バーナの燃費を抑えられて一層の省エネ並びにCO削減効果が期待できるものとなる。
【0043】
また更に、好ましくは、前記熱風発生炉の近傍に、液化天然ガスを低温高圧下で貯蔵する貯蔵タンクと気化器とを備え、前記熱交換器にて第一の砂ドライヤの第一のドラムからの排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮するのに伴って生じる凝縮水(温水)を前記気化器に熱源として供給する温水供給配管を備えるとよい。これにより、気化処理用のボイラー等の熱源を別途用意せずとも助燃バーナの燃料である液化天然ガスを気化処理でき、コスト面やメンテナンス面等の観点からも採用のし易いものとなる。
【0044】
そして、上記砂乾燥システムにて砂の乾燥処理を行う場合には、砕石工場にて生産される高含水比の湿潤した砂を、そのまま出荷せずに、一旦、砕石工場施設内に設置した第一及び第二の砂ドライヤの第一及び第二の各ドラム内に供給する。第一の砂ドライヤでは、上流側に位置する熱風発生炉にて木質燃料を自燃させることによって発生させた熱風を第一のドラム内に導入して前記砂を乾燥処理する一方、第二の砂ドライヤでは、前記第一の砂ドライヤから導出する高温かつ高湿の排ガスと、送風機から供給される常温の外気とを熱交換させ、排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮する際の凝縮潜熱を利用して前記外気を加熱し、この加熱した外気(温風)を第二のドラム内に導入して、第一の砂ドライヤと同様に、前記砂を乾燥処理する。
【0045】
そして、前記第一及び第二の砂ドライヤの第一及び第二の各ドラムより排出される乾燥処理砂は、その供給先である、例えばアスファルト混合物製造工場等へと適宜搬送され、該アスファルト混合物製造工場のアスファルトプラントのドライヤでは、前記砂の乾燥処理に熱エネルギー(燃料)をあまり費やすことなく(CO排出量を抑えながら)所定温度まで加熱処理し、他の各種材料と共に混合して所望のアスファルト混合物を製造する。
【0046】
このように、上記砂乾燥システム及び砂乾燥方法によれば、砂ドライヤを砕石工場側に設置することにより、砂の供給先である各アスファルト混合物製造工場毎に設置する場合と比較してコスト面や管理面での負担を抑えることができる。また、砕石工場側にあっても、敷地内に設置する一対の砂ドライヤのうち、一方のドライヤには木質燃料の自燃によって発生させた熱風を供給し、他方のドライヤには排ガス中の水蒸気が凝縮する際の凝縮潜熱を利用して加熱した外気を供給するようにしたため、各アスファルト混合物製造工場向けに生産される多量の砂を、省エネ並びにCO削減を図りつつも効率よく乾燥処理でき、比較的採用のし易い砂乾燥システムを構築することが可能となる。
【0047】
ここで、上記砂乾燥システム及び砂乾燥方法を採用した場合、砕石工場側のコスト負担、及びCO排出量の増加は否めないものの、従来砕石工場から各アスファルト混合物製造工場等へ高含水比の状態で供給していた砂を予め乾燥処理することで付加価値を高められると共に、重量も軽減できて輸送効率を高められるといった効果も期待でき、十分に投資に見合う可能性が見込める上、砂の供給先である各アスファルト混合物製造工場の排出分も含めたトータル的なCO排出量で考えれば削減として見なすことができ、好適に本システムを採用することができると考えられる。
【0048】
なお、前記熱交換時に第一の砂ドライヤの第一のドラムからの排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮するのに伴って生じる温水と、生コンクリート製造工場においてミキサ洗浄時等に多量に発生する生コンクリートのスラッジ水とを混合し、前記温水中に含まれる炭酸と前記スラッジ水中に含まれるカルシウムイオンとを反応させて炭酸カルシウムとして回収するようにしてもよい。
【0049】
これにより、排ガス中に含まれるCOを、例えばアスファルト混合物の素材としても利用可能な有用物の炭酸カルシウムとして回収できると共に、産業廃棄物として処理する必要のあるスラッジ水の減容処理も同時に行え、環境面において特に好適なものとなる。
【実施例0050】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0051】
図中の1は本発明に係る砂乾燥システムであって、例えば、アスファルト混合物製造工場等に向けてアスファルト混合物の素材である各種骨材を生産・供給する砕石工場の施設内に設置している。前記砂乾燥システム1は、木質燃料を自燃させることによって熱風を発生させる熱風発生炉2と、前記砕石工場にて生産される高含水比の湿潤した砂を熱風との接触によって乾燥処理する第一の砂ドライヤ3及び第二の砂ドライヤ4と、前記第一の砂ドライヤ3から導出する排ガスと外気とを熱交換して前記外気を加熱する熱交換器5とを主体に構成している。
【0052】
前記熱風発生炉2は、内周面に蓄熱用のキャスタブル(図示せず)を周設した円筒状のキルン本体6を回転自在に傾斜支持し、該キルン本体6の一端部(熱風及び木質燃料の流下方向から見て上流端部)には、天然ガスを燃料とする助燃バーナ7と、木質チップ等の木質燃料を投入する投入ホッパ8と、該投入ホッパ8下端より排出される木質燃料を前記キルン本体6内へ順次供給するスクリューフィーダ9(木質燃料供給手段)と、木質燃料を自燃させるのに必要な燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給ファン10とを備えている。図中の11は、前記燃焼用空気供給ファン10の外気吸入口であって、該外気吸入口11には開閉ダンパー12を具備している。
【0053】
前記キルン本体6の他端部(熱風及び木質燃料の流下方向から見て下流端部)には、木質燃料の自燃に伴って生じる揮発分(木質ガス)を完全に燃焼分解する二次燃焼室13を備えており、該二次燃焼室13には前記揮発分の完全燃焼を補助する、天然ガスを燃料とする小型の補助バーナ14を備えていると共に、前記二次燃焼室13の下部には、木質燃料の焼却灰を排出する排出ホッパ15を備えている。
【0054】
また、前記熱風発生炉2の近傍には、液化天然ガス(LNG)を低温高圧下で貯蔵する貯蔵タンク16と、該貯蔵タンク16内の液化天然ガスを気化処理して前記助燃バーナ7及び補助バーナ14の燃料である天然ガスを生産可能とする気化器17と、該気化器17にて気化処理して生産した天然ガスを一時的に貯蔵するバッファタンク18とを備えている。
【0055】
一方、前記第一及び第二の砂ドライヤ3、4は、専ら高含水比の湿潤した砂を乾燥処理するものであって、内周面に複数の掻き上げ羽根(図示せず)を周設した円筒状の第一のドラム19及び第二のドラム20をそれぞれ回転自在に傾斜支持し、これら第一のドラム19及び第二のドラム20内に熱風と共に高含水比の砂を供給すると、この高含水比の砂は前記掻き上げ羽根にて繰り返し掻き上げられながら熱風と直接接触することによって加熱・乾燥処理される、ロータリーキルン構造のものを採用している。なお、本実施例では、熱風と砂の流下方向が同一方向となる並流加熱方式のドライヤを採用している。
【0056】
前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19一端部(熱風及び砂の流下方向から見て上流端部)には、前記熱風発生炉2の二次燃焼室13上部に備えた熱風導出ダクト21を連結していると共に、前記砕石工場にて生産される高含水比(例えば、約15%程度)の湿潤した砂を投入する投入ホッパ22と、該投入ホッパ22下端より排出される高含水比の砂を前記第一のドラム19内へ順次供給するスクリューフィーダ23とを備えている。
【0057】
前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19他端部(熱風及び砂の流下方向から見て下流端部)には排気室24を備え、該排気室24の上部には排ガス導出用の第一の排気ダクト25を連結している一方、下部には乾燥処理を経た砂である、乾燥処理砂を排出する排出ホッパ26を備えている。図中の27は、前記排出ホッパ26から排出される乾燥処理砂の含水比を連続的に検出する第一の水分センサである。
【0058】
前記第一の排気ダクト25の途中には、排ガスの流下方向から見て上流側から順に、バグフィルタ等の集塵機28と、前記熱交換器5と、排風量調整用のメインダンパー29と、排風機30とを介在させていると共に、第一の排気ダクト25の終端部には煙突31を備えている。図中の32は、外気吸入口33より吸入される外気を前記熱交換器5に供給する送風機であって、送風量を調整可能なようにインバータを具備している。また、前記送風機32から供給した外気は前記熱交換器5にて加熱した後、下流側に位置する供給ダクト34を介して前記第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20内へと導入するようにしている。
【0059】
前記熱交換器5は、前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19から導出する高温(例えば、約120℃)かつ高湿(例えば、約50%)の排ガスと、外気供給用の送風機32から供給する常温(例えば、約15℃)の外気とを間接的に熱交換させ、この熱交換に伴って前記排ガス中に含まれる多量の水蒸気が凝縮する際の凝縮潜熱を利用して前記外気を効率よく加熱可能な構成としている。水蒸気の凝縮潜熱は、水の顕熱の5倍以上の熱エネルギーを有するため、前記のような凝縮を伴う熱交換は非常に高効率のものとなる。
【0060】
なお、本発明者の試算によれば、前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19から導出する排ガス量に対して、前記送風機32から供給する外気量を約10倍程度に調整した場合、前記熱交換器5での熱交換を経て供給ダクト34へと導出される外気は約70℃程度まで加熱・昇温することができると予想されるものの、前記熱風発生炉2から供給される熱風温度が約850℃程度であるのと比較すると一見相当に低いようにも考えられる。ただし、約50~60℃程度の昇温ではあっても、それに伴って相対湿度は大幅に低下するため(例えば、常温の外気の湿度が約50%程度であれば、それが約70℃程度に加熱されるのに伴い、相対湿度は約3%程度にまで低下することになる。)、これが多量に(約10倍程度)供給される第二の砂ドライヤ4では十分に砂の乾燥処理を行うことが可能となる。
【0061】
なお、前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19から導出される排ガスの温度や量は、前記第一のドラム19内に供給される砂の含水比や供給量等に応じて変動するため、前記第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20に供給する外気の温度を一定(例えば、約70℃)に維持しようとすると、前記熱交換器5に供給する外気温度を考慮しつつ、外気供給量を適宜調整する必要がある。本実施例では、前記供給ダクト34に温度センサ35を備え、該温度センサ35にて検出される加熱後の外気温度が所定温度(例えば、約70℃)に維持されるように前記送風機32からの送風量を調整制御(フィードバック制御)するようにしている。
【0062】
また、前記第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20には、上記のように、多量の温風の導入(受け入れ)が可能なように、例えば、第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19よりも容量の大きいものを採用したり、複数のドラムでもって(並設するなどして)第二のドラム20を構成するようにしてもよい。
【0063】
ところで、前記熱交換器5では、上記のように、第一の砂ドライヤ3での砂の乾燥処理を経て導出される排ガス中の多量の水蒸気を敢えて(意図的に)凝縮させることでもって、その際に発生する凝縮潜熱を有効に利用して外気を効率よく加熱するように図っているため、前記排ガス中に硫黄や塩素等の酸性ガス生成要因物質が多く含まれていると、多量に発生する酸性の凝縮水の中和処理にコストを要するばかりか、熱交換器5や第一の排気ダクト25、排風機30等の酸腐食への対策が必須となる。
【0064】
そこで、本発明にあっては、前記第一の砂ドライヤ3上流の熱風発生炉2では、木質燃料を自燃させ、この自燃に伴って生じた揮発分(木質ガス)を二次燃焼室13にて完全に燃焼分解させた上で熱風として前記第一の砂ドライヤ3へと供給するようにしていると共に、前記木質燃料の自燃を補助する助燃バーナ7及び揮発分(木質ガス)の完全燃焼を補助する補助バーナ14にも、天然ガス(主成分としてメタン)を燃料とするガスバーナを採用している。
【0065】
前記木質ガスの中には、酸性を呈する成分も幾分か含まれているものの、前記二次燃焼室13にて、約850℃程度の雰囲気下でかつ約1~2秒程度かけて流下させる間に完全に燃焼分解可能としていると共に、天然ガスの燃料中には、硫黄や塩素等の酸性ガス生成要因物質が元々含まれていないため、これらの排ガスを凝縮させた場合でも上記のような不具合の発生を抑制することができる。また、木質チップ等の木質燃料はカーボンニュートラルの観点からCO排出量をゼロと見なせる上、助燃バーナ7や補助バーナ14で使用される天然ガスは化石燃料の中で最もCO排出係数が小さく、例えばA重油を燃料とするバーナと比較するとCOの排出量を約25%程度も低減でき、本システムに好適に適用することができる。
【0066】
また、図中の36は、前記供給ダクト34と前記第一の排気ダクト25とを連結する第一の分岐ダクトであって、前記熱交換器5にて加熱した外気(温風)の一部を、前記第一の分岐ダクト36途中に介在させた開閉ダンパー37の開閉操作に応じて、前記熱交換器5下流側の第一の排気ダクト25内に導入可能としている。
【0067】
熱交換後の排ガス温度は場合によっては露点温度を下回り、熱交換器5下流側の第一の排気ダクト25内や排風機30にて結露を生じたり、第一の排気ダクト25終端部の煙突31から白煙(排ガス中の水蒸気が凝縮してエアーゾル化したもの)を生じる等の不具合が発生する可能性があるものの、前記第一の分岐ダクト36を備えることにより、熱交換で加熱・昇温されて相対湿度の低下した外気(温風)の一部を前記第一の排気ダクト25内の排ガス中に混入させることができる結果、排ガス温度を露点以上に高められ、簡単な構成ながらも上記不具合を抑制可能なように図っている。
【0068】
なお、前記開閉ダンパー37の開閉操作は、例えば、前記熱交換器5下流側の第一の排気ダクト25に別途温度センサを備えるなどして、該温度センサが所定温度(例えば、露点温度)以下となれば、前記開閉ダンパー37を開放して加熱した外気(温風)の一部を混入させるようにするとよいが、場合によっては、システム稼働中は常時一定量を混入させるようにしてもよい。
【0069】
また、図中の38は、前記供給ダクト34と前記熱風発生炉2の燃焼用空気供給ファン10とを連結する第二の分岐ダクトであって、前記熱交換器5にて加熱した外気(温風)の一部を、前記第二の分岐ダクト38途中に介在させた開閉ダンパー39の開閉操作に応じて、燃焼用空気供給ファン10に供給可能としている。
【0070】
前記第二の分岐ダクト38を備えることにより、熱風発生炉2内へ供給する燃焼用空気を予熱でき(予熱した外気を燃焼用空気として供給でき)、自燃させる木質燃料の燃焼効率を高められる結果、助燃バーナ7の燃費を抑えられて一層の省エネ並びにCO削減効果が期待できるものとなる。なお、前記熱風発生炉2の立ち上げ時(運転開始時)等、前記熱交換器5から予熱した外気を十分に供給できない間は、前記燃焼用空気供給ファン10の外気吸入口11に備えた開閉ダンパー12を開放し、前記外気吸入口11より吸入される常温の外気を熱風発生炉2内へ供給するようにするとよい。
【0071】
また、前記供給ダクト34を連結した、前記第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20一端部(外気(温風)及び砂の流下方向から見て上流端部)には、前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19と同様に、前記砕石工場にて生産される高含水比(例えば、約15%程度)の湿潤した砂を投入する投入ホッパ40と、該投入ホッパ40下端より排出される高含水比の砂を前記第二のドラム20内へ順次供給するスクリューフィーダ41とを備えている。
【0072】
また、前記第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20他端部(外気(温風)及び砂の流下方向から見て下流端部)には排気室42を備え、該排気室42の上部には排ガス導出用の第二の排気ダクト43を連結している一方、下部には乾燥処理砂を排出する排出ホッパ44を備えている。図中の45は、前記排出ホッパ44から排出される乾燥処理砂の含水比を連続的に検出する第二の水分センサである。
【0073】
前記第二の排気ダクト43の途中にも、前記第一の砂ドライヤ3の場合と同様に、排ガスの流下方向から見て上流側から順に、バグフィルタ等の集塵機46と、排風量調整用のメインダンパー47と、排風機48とを介在させていると共に、第二の排気ダクト43の終端部には煙突49を備えている。
【0074】
図中の50は、前記熱交換器5にて第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19からの排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮するのに伴って生じる凝縮水(温水)を、液化天然ガス気化処理用の前記気化器17に熱源として供給する温水供給配管であって、その途中には供給ポンプ51を介在させている。前記凝縮水は、本発明者の試算によれば、約40℃程度の温水として回収できるため、それであれば、気化処理用のボイラー等の熱源を別途用意せずとも前記気化器17での熱源として十分に利用でき、コスト面やメンテナンス面で有利なものとなる。なお、前記気化器17にて熱源として利用した後の温度低下した凝縮水は、前記したように酸性の状態にはないため、特段中和処理等の必要もなく、排水配管52よりそのまま外部へ排水可能としている。
【0075】
図中の53は、前記第一の水分センサ27にて検出される、前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19から排出される乾燥処理砂の含水比が、絶乾を除く、所定含水比に維持されるように、前記熱風発生炉2の助燃バーナ7の燃焼量、前記熱風発生炉2のキルン本体6内へ供給する木質燃料の供給量(例えば、スクリューフィーダ9の供給速度)、前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19内へ供給する砂の供給量(例えば、スクリューフィーダ23の供給速度)、前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19の回転速度のうち、少なくとも何れか一つを調整制御する第一の制御器である。
【0076】
例えば、乾燥処理砂の含水比が所定含水比(例えば、約5%程度)よりも高い場合には、前記助燃バーナ7の燃焼量を増やすか、前記キルン本体6内へ供給する木質燃料の供給量を増やすか(前記スクリューフィーダ9の供給速度を上げるか)、前記第一のドラム19内への砂の供給量を減らすか(前記スクリューフィーダ23の供給速度を落とすか)、前記第一のドラム19の回転速度を速めるか、或いはそれらを複合的に実行するように調整制御する。なお、前記第一のドラム19の回転速度を速めると、第一のドラム19内の砂の単位時間当たりの掻き上げ量を増やせる結果、前記熱風発生炉2からの熱風との接触機会を高められて砂の含水比を低減させることが可能となる。
【0077】
前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19から排出される乾燥処理砂を、アスファルト混合物の素材として使用する上で好適な、例えば絶乾となるまで加熱乾燥しようとすると、砂の温度は必然的に高温とせざるを得ないが、この高温の砂を、砕石工場から遠隔地のアスファルト混合物製造工場等に搬送するとなるとその間に熱放散して温度低下を来たし、これは単純にエネルギーロスに繋がる。
【0078】
一方、上記のように、砂に敢えて(意図的に)若干の水分を残した状態で第一のドラム19から排出するようにしたことにより、前記砂の貯蔵中や搬送中等に顕熱を利用して残留水分の一部を徐々に蒸発させるといったことができ(熱エネルギーの有効活用が可能となり)、単なる熱放散によるエネルギーロスを軽減することが可能となる。また、砂を絶乾まで乾燥処理する必要がないことから、熱風発生炉2での燃料消費量も抑えられると共に、COの排出量の削減効果も期待できるものとなる。
【0079】
なお、上記方法によれば、最終的に(顕熱を利用した乾燥後も)僅かに水分が残った常温の砂が回収されると予想される(例えば、本発明者の試算によれば、第一のドラム19から温度約70℃、含水比約5%程度で排出された砂は、顕熱による蒸発はあるものの、常温である約15℃となったときでも含水比約3%程度の水分が残る。)。
【0080】
ただし、アスファルト混合物製造工場のアスファルトプラント等では、アスファルト混合物を製造する際、砕石工場から供給された砂をドライヤにて170℃程度まで加熱するため、その際に絶乾まで乾燥処理されることから特段支障はない。また、砂の水分量は通常(乾燥処理前)と比べると大幅に低減されているため(例えば、含水比約15%から約3%程度に低下)、省エネ並びにCOの削減効果は十分に期待できるものとなる。更に、砂に幾らかでも水分が残留していることで防塵効果も期待できると共に、常温であることから貯蔵中や搬送中における保温対策等も特段講じる必要がなく、取り扱いが容易となる。
【0081】
また、図中の54は、前記第二の水分センサ45にて検出される、前記第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20から排出される乾燥処理砂の含水比が、絶乾を除く、所定含水比に維持されるように、前記送風機32からの外気の送風量、前記第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20内へ供給する砂の供給量(例えば、スクリューフィーダ41の供給速度)、前記第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20の回転速度のうち、少なくとも何れか一つを調整制御する第二の制御器である。
【0082】
例えば、乾燥処理砂の含水比が所定含水比(例えば、約5%程度)よりも高い場合には、前記送風機32からの外気の送風量を増やすか、前記第二のドラム20内への砂の供給量を減らすか(前記スクリューフィーダ41の供給速度を落とすか)、前記第二のドラム20の回転速度を速めるか、或いはそれらを複合的に実行するように調整制御する。なお、前記送風機32からの外気の送風量を増やすと、第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20内へ導入される低湿の(相対湿度の低下した)温風量が増えることとなる結果、乾燥効率が向上して砂の含水比を低減させることが可能となる。
【0083】
前記第二の砂ドライヤ4についても、前記第一の砂ドライヤ3と同様に、砂に敢えて(意図的に)若干の水分を残した状態で第二のドラム20から排出するようにしたことにより、前記砂の貯蔵中や搬送中等に顕熱を利用して残留水分の一部を徐々に蒸発させるといったことができ(熱エネルギーの有効活用が可能となり)、単なる熱放散によるエネルギーロスを軽減することが可能となる。
【0084】
そして、上記砂乾燥システム1にて砂の乾燥処理を行うときには、砕石工場にて生産される高含水比の湿潤した砂を、一旦、砕石工場施設内に設置した前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19、及び第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20内に供給する。前記第一の砂ドライヤ3では、上流側に位置する前記熱風発生炉2にて木質燃料を自燃させることによって発生させた熱風を第一のドラム19内に導入して砂を乾燥処理する一方、前記第二の砂ドライヤ4では、前記第一の砂ドライヤ3から導出する高温かつ高湿の排ガスと、送風機32から供給される常温の外気とを前記熱交換器5にて熱交換させ、排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮する際の凝縮潜熱を利用して前記外気を加熱し、この加熱した外気(温風)を第二のドラム20内に導入して砂を乾燥処理する。
【0085】
このとき、前記第一の砂ドライヤ3では、前記第一の水分センサ27にて検出される乾燥処理砂の含水比が、絶乾を除く所定含水比に維持されるように、前記第一の制御器53にて、前記熱風発生炉2の助燃バーナ7の燃焼量、前記熱風発生炉2のキルン本体6内への木質燃料の供給量、前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19内への砂の供給量、前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19の回転速度のうち、少なくとも何れか一つを調整制御しながら砂の乾燥処理を行う。
【0086】
一方、前記第二の砂ドライヤ4では、前記第二の水分センサ45にて検出される乾燥処理砂の含水比が、絶乾を除く所定含水比に維持されるように、前記第二の制御器54にて、前記送風機32からの外気の送風量、前記第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20内への砂の供給量、前記第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20の回転速度のうち、少なくとも何れか一つを調整制御しながら砂の乾燥処理を行う。
【0087】
そして、前記第一の砂ドライヤ3の第一のドラム19、及び第二の砂ドライヤ4の第二のドラム20より所定含水比に維持された状態で排出される乾燥処理砂は、その供給先である、例えばアスファルト混合物製造工場等へと適宜搬送されることになるが、その搬送中、或いは貯蔵中等に、乾燥処理砂の顕熱でもって砂に残留する水分の多くは徐々に蒸発していくことになる。
【0088】
そして、前記乾燥処理砂は、アスファルト混合物製造工場のアスファルトプラントにてアスファルト混合物の素材として実際に使用される段階では僅かに水分が残留した(湿った)程度の状態になっており、アスファルトプラントのドライヤでは、砂の乾燥処理に燃料(熱エネルギー)をあまり費やすこともなく、比較的少ない燃料でもって(CO排出量を抑えながら)所定温度(約170℃)まで加熱処理し、他の各種材料と共に混合して所望のアスファルト混合物を製造することができる。
【0089】
このように、上記砂乾燥システム1によれば、一基の砂ドライヤで砂の乾燥処理をするのに必要とされる分の燃料(熱エネルギー)でもって、二基(或いはそれ以上)の砂ドライヤ分の砂を乾燥処理することができ、本発明者の行ったシミュレーション上の試算によれば、1時間当たり、含水比15%の砂30tを含水比5%に乾燥させるのに必要な燃料で、砂50tを乾燥することが可能となるなど、約65%程度の省エネ効果が期待できるものとなる。
【0090】
また、上記装置構成に加えて、前記第一の砂ドライヤ3に熱風を供給する熱風発生炉2の燃料として、カーボンニュートラルの観点からCO排出量をゼロと見なせる木質チップ等の木質燃料を自燃させ、かつ前記木質燃料の自燃を補助する助燃バーナ7の燃料にもCO排出係数の小さい天然ガスを採用したことにより、前記シミュレーション上の試算によれば、約75%程度のCO削減効果が期待できるものとなる。
【0091】
なお、前記シミュレーションは、湿潤した多量の砂を連続的に乾燥処理することが前提で成り立つものであるが、複数のアスファルト混合物製造工場等に向けて多量の砂(骨材)を生産・出荷する砕石工場にあっては、上記前提条件を十分に満たすものと考えられる。
【0092】
また、図示はしないが、生コンクリート製造工場等において、コンクリートミキサやアジテータ車の洗浄時等に多量に発生する生コンクリートのスラッジ水を、前記砂乾燥システム1を設置した砕石工場の施設内に適宜運び込み、前記熱交換器5にて生じる温水(凝縮水)と混合させ、前記温水中に含まれる炭酸(天然ガスの燃焼に伴って発生した多くのCOが炭酸(HCO)として溶解している。)と前記スラッジ水中に含まれるカルシウムイオン(Ca2+)とを反応させて炭酸カルシウム(CaCO)として回収するようにしてもよい。また、前記熱交換器5下流側の第一の排気ダクト25内を流下する排ガスに対し、前記スラッジ水を直接シャワーリング(噴霧)し、排ガス中のCOを炭酸カルシウムとして回収するようにしてもよい。
【0093】
上記何れの場合でも、排ガス中に含まれるCOを、例えばアスファルト混合物の素材(石粉、フィラー)としても利用可能な炭酸カルシウムとして回収できると共に、スラッジ水の減容処理も同時に行えて環境面でより一層好適なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、砕石工場にて生産される高含水比の湿潤した砂を乾燥処理する場合に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1…砂乾燥システム 2…熱風発生炉
3…第一の砂ドライヤ 4…第二の砂ドライヤ
5…熱交換器 6…キルン本体
7…助燃バーナ
9…スクリューフィーダ(木質燃料供給手段)
10…燃焼用空気供給ファン 13…二次燃焼室
16…貯蔵タンク(液化天然ガス) 17…気化器
19…第一のドラム 20…第二のドラム
21…熱風導出ダクト 25…第一の排気ダクト
27…第一の水分センサ 32…送風機
34…供給ダクト 36…第一の分岐ダクト
38…第二の分岐ダクト 43…第二の排気ダクト
45…第二の水分センサ 50…温水供給配管
53…第一の制御器 54…第二の制御器
図1