(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085829
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】鳥害防止具
(51)【国際特許分類】
H02G 7/00 20060101AFI20230614BHJP
A01M 29/32 20110101ALI20230614BHJP
【FI】
H02G7/00
A01M29/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200099
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 隆生
【テーマコード(参考)】
2B121
5G367
【Fターム(参考)】
2B121AA07
2B121BB27
2B121EA21
2B121FA12
5G367BB11
(57)【要約】
【課題】作業の負担を軽減できる新たな鳥害防止具を提供する。
【解決手段】少なくともいずれか1つがケーブルに対して移動可能に取り付けられる2つの端部材と、前記2つの端部材の間に架設される線と、前記線に支持され、前記ケーブルを包囲する第1中間部材と、を備える、鳥害防止具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともいずれか1つがケーブルに対して移動可能に取り付けられる、2つの端部材と、
前記2つの端部材の間に架設される線と、
前記線に支持され、前記ケーブルを包囲する第1中間部材と、
を備える、鳥害防止具。
【請求項2】
前記第1中間部材は、
前記ケーブルを包囲する第1包囲部と、
前記第1包囲部に取り外し可能に装着され、前記線が接続される第1接続部と、を有する、
請求項1に記載の鳥害防止具。
【請求項3】
前記第1包囲部は環状または多角形状に形成され、
前記第1接続部は前記第1包囲部への装着時において前記第1包囲部の径方向に延びる、
請求項2に記載の鳥害防止具。
【請求項4】
前記第1包囲部には、前記第1接続部の装着を可能とする複数の取付部が前記第1包囲部の周方向に並ぶように形成される、
請求項2または3に記載の鳥害防止具。
【請求項5】
前記ケーブルを包囲する第2包囲部、及び、前記第2包囲部に取り外し可能に装着され、前記線が接続される第2接続部を有する第2中間部材をさらに備え、
前記第1接続部には複数の第1接続孔が形成され、
前記第2接続部には複数の第2接続孔が形成され、
前記線は、前記複数の第1接続孔のいずれか、及び、前記複数の第2接続孔のいずれかに挿入されることにより前記第1接続部及び前記第2接続部のそれぞれと接続される、
請求項2から4のいずれか1項に記載の鳥害防止具。
【請求項6】
前記線は、複数の部分線によって構成され、
前記複数の部分線の少なくとも1つは、前記複数の第1接続孔のそれぞれに挿入可能な一端部と、前記複数の第2接続孔のそれぞれに挿入可能な他端部とを有する、
請求項5に記載の鳥害防止具。
【請求項7】
前記複数の第1接続孔及び前記複数の第2接続孔の少なくとも1つは、
前記ケーブルの勾配と一致する勾配を持つ、請求項5または6に記載の鳥害防止具。
【請求項8】
前記2つの端部材のうち、少なくとも1つは、
前記ケーブルを摺動可能に把持する把持部材と、
前記把持部材に支持されるとともに、前記ケーブルを包囲する端部包囲部と、
前記端部包囲部に取り外し可能に装着され、前記線の端部が接続される端部接続部と、を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の鳥害防止具。
【請求項9】
前記線は長方形の断面を持つ、請求項1から8のいずれか1項に記載の鳥害防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥害防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
電線などのケーブルに対する鳥害を防止するための器具が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の器具では、ケーブルまたはケーブル周辺の作業を行う際に多くの手間をかけて器具を撤去する必要があり、作業者に対する負担となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の課題を考慮し、本発明は一態様として、少なくともいずれか1つがケーブルに対して移動可能に取り付けられる2つの端部材と、前記2つの端部材の間に架設される線と、前記線に支持され、前記ケーブルを包囲する第1中間部材と、を備える、鳥害防止具を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、作業の負担を軽減できる新たな鳥害防止具が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る鳥害防止具の斜視図であり、(a)伸ばして電線に設置した状態、及び(b)縮めて電線に設置した状態を示す。
【
図2】実施形態に係る鳥害防止具の一部を拡大した斜視図である。
【
図3】実施形態に係る(a)中継部材、及び(b)包囲部の正面図である。
【
図4】実施形態に係る(a)包囲部の開閉動作を示す正面図、及び(b)開放形状における包囲部の斜視図である。
【
図5】実施形態に係る接続部の(a)正面図、及び、(b)図面(a)の5b方向による矢視図である。
【
図6】中継部材における接続部の配置位置のバリエーションを(a)~(f)に示した正面図である。
【
図7】実施形態に係るロープの(a)全体図、(b)接続部への接続状態を示す図、(c)図面(b)の7c方向による矢視図、及び、(d)図面(a)の7d方向による矢視図である。
【
図8】(a)接続部の取付箇所を番号で示した包囲部正面図、(b)ロープと取付箇所との関係を示す図、及び(c)電線とロープ長さとの関係を示す図である。
【
図9】実施形態に係る把持部材を電線に対して設置した状態を示す正面図であり、外径の違う電線に取り付けた様子を(a)、(b)各図面に示す。
【
図11】実施形態に係る把持部材の(a)斜視図、(b)図面(a)の11b方向による矢視図、及び(c)図面(a)の11c方向による矢視図である。
【
図12】実施形態に係る把持部材の分解図であり、(a)把持部の正面図及びa1~a3各方向による矢視図、回転部及びネジを示す図、(b)円柱部の正面図及び側面図、ならびに(c)固定具の正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態>
(概要)
図1~
図12を参照しつつ、本発明の1つの実施形態である、鳥害防止具1について説明する。
【0009】
鳥害防止具1は、鳥が留まることを防止する器具であり、本実施形態では、
図1に示すように、ケーブルの一例である電線200に設置される。
【0010】
なお、以下の説明においては、
図1及び
図2などに示すように、電線200の架渡される方向と略一致する水平方向を軸方向とし、この軸方向を基準として各方向を定める。詳細には、軸方向に対して直交する方向について、鉛直に延びる上下方向と、水平に延びる左右方向として定義している。
【0011】
また、鳥害防止具1を構成する各部品については、鳥害防止具1を電線200に設置した状態(
図1(a)の状態、以下「設置状態」とする)を基準として、各部品の方向を説明する。また、軸方向に視た場合の図を正面図とし、左右方向に視た場合の図を側面図とする場合がある。
【0012】
鳥害防止具1は、2つの把持部材2、複数の中継部材3、及び、ロープ4を備える。特に、把持部材2と、把持部材2に固定される中継部材3とは、端部材10を構成する(
図1)。ロープ4は、両端部を端部材10によって支持されて張力が加えられ、電線200と略平行に延びるように架設される。ロープ4は、中間部において中継部材3を支持する。各図では、4本のロープ4が、電線200の上方下方、及び左方右方の各1カ所ずつに設置された状態が示される。
【0013】
(中継部材)
中継部材3は、
図3から
図9に示すように、軸方向視で略円環状に形成された包囲部31と、包囲部31に取り外し可能に固定される接続部32と、固定具33とを備える。中継部材3は、接続部32に接続されたロープ4に支持され、電線200を包囲するように設置される。
【0014】
包囲部31は、いずれも中心角180度の円弧形状を有する半円部311、312と、留め金313と、ヒンジ314とを主に備える。設置状態において、電線200は包囲部31の略中心部を通過する。
【0015】
半円部311と半円部312は、ほぼ同形状に形成されているが、半円部311の一端部には、略軸方向に延びる突起311Aが形成される。半円部311、312は、いずれもC型またはコの字型の断面形状を有する(
図4(b))。
【0016】
また、半円部311、312には、略軸方向に延びる複数の貫通孔31Aが形成される。貫通孔31Aは、半円部311、312の周方向に等間隔に並ぶように、複数箇所に形成される。貫通孔31Aは、後述する接続部32、及び把持部材2の取付け部位として機能する。
【0017】
半円部311、312はいずれも、留め金313が装着される一端部と、一端部の反対側にあってヒンジ314に接続される他端部とを備える。半円部311、312の一端部同士は、留め金313によって固定可能であり、他端部同士は、ヒンジ314によって互いに搖動可能に接続される。
【0018】
半円部311、312がヒンジ314を中心に揺動するため、包囲部31は閉鎖形状(
図3)と開放形状(
図4)との2つの形状の間で開閉することが可能である。すなわち、包囲部31は、閉じられた円環形状(
図3、閉鎖形状)だけでなく、一部が離隔し開放された形状(
図4、開放形状)をとることができる。
【0019】
留め金313は、半円部312に対して揺動可能に接続されており、さらに、突起311Aを引っ掛けることが可能な鉤型の端部を有する。留め金313は、半円部312に対して揺動することにより、突起311Aに対して接続または離隔することができる。
【0020】
突起311Aが留め金313に掛かることにより、半円部311、312は互いに固定され、包囲部31は閉鎖形状を維持することができる。反対に、留め金313が突起311Aから離れることで、包囲部31は開放形状をとることができる。
【0021】
接続部32は、
図5に示すように、略立方体形状の部材であり、設置状態で軸方向に正対する前面321と、前面321に対して直交する2つの側面322とを有する。また、接続部32には、設置状態において包囲部31の径方向に並ぶ3つの貫通孔32Aと、貫通孔32Aと平行に並ぶ3つの貫通孔32Bと、接続部32の端部に形成された貫通孔32Cと、が形成される。貫通孔32Cは、前面321に対して直交するように延びる。
【0022】
貫通孔32Aは、接続部32の前面321に対して直交するように延びるのではなく、前面321の直交方向に対して角度-α(反時計回りをプラスとする)を形成するように延びる(
図5、
図7(b))。
【0023】
一方、貫通孔32Bは、前面321の直交方向に対して角度+αを形成するように延びる(
図7(b))。このように、貫通孔32Bの勾配は、貫通孔32Aとは逆向きとなっている。
【0024】
詳細に述べると、貫通孔32A及び貫通孔32Bの角度±αは、
図8(c)に示すように、電線200の勾配に合わせて設定されている。αの具体的な数値は、電線200の支点間距離や重量を考慮し、実際の形状に合わせて適宜設定される。
【0025】
貫通孔32A及び貫通孔32Bは、設置状態で包囲部31の周方向にも延びており、側面322において、軸方向に延びるスリット322Aを形成する(
図5(b))。
【0026】
接続部32は、固定具33によって包囲部31に固定される。詳細に述べると、固定具33は磁気を帯びたボルト331とナット332とを有している。ボルト331は、貫通孔32Cと貫通孔31Aの両方に挿入されており、ナット332はボルト331に締めつけられる。このようにして、接続部32は、
図6等に示すように、包囲部31から、包囲部31の径方向外方に突出するように固定される。また、固定具33による締結を解除することによって、接続部32は、包囲部31から取外される。また、ボルト331とナット332は、少なくとも1つが磁気を帯びているため、固定具33による締結及び締結解除の作業が容易であり、さらに部品の落下が防止される。
【0027】
包囲部31に対する接続部32の配置位置に関しては、ロープ4の数や位置に応じて多様なバリエーションが用意される。一例として
図6(a)から(f)のような配置が考えられるが、この限りではない。例として、包囲部31に対して接続部32を1つだけ接続させることも可能である。接続部32の配置位置を決める際には、鳥の種類や大きさ、中継部材3の設置間隔、ロープ4の振動のしやすさなど、様々な要因が考慮される。
【0028】
(ロープ)
ロープ4は、
図7などに示すように、同じ長さの複数のロープ41によって構成される。複数のロープ41は、接続部32に接続され、それぞれが電線200に沿って延びるように配置される(
図2)。ロープ41は、接続部32を介して中継部材3を支持する。
【0029】
ロープ41は、塩化ビニールなど樹脂やガラス繊維などで構成され、両端部を除いて扁平に形成される。ロープ41は、長方形の断面を備える。また、ロープ41は、両端部に円柱部411と、係止部412とを備える。円柱部411は略円柱形に形成されており、その径は、スリット322Aの幅よりも小さい。
【0030】
係止部412は、円柱部411の端部に固定された略半球状の部材である。係止部412の外径は、貫通孔31A及び貫通孔32Bのいずれの径よりも大きい。
【0031】
ロープ41が接続部32に接続される際、円柱部411は、スリット322Aを介して、貫通孔32A及び貫通孔32Bのいずれかに挿入される。ロープ41に張力が加わっても係止部412が前面321と接触するため、ロープ41が接続部32から脱落することが防止される。また、前面321に係止部412が接触することにより、ロープ41に対する接続部32の略軸方向への移動が拘束される。
【0032】
接続部32に対してどのようにロープ41が接続されるかは、
図8に示すように、接続部32の配置位置に応じて決定される。なお、理解を容易にするため、
図8では半円部311及び半円部312が、それぞれ包囲部31の下部及び上部に配置された状態を示している。また、貫通孔31Aそれぞれに対し(1)~(14)の位置番号を付している。
【0033】
接続部32が接続される貫通孔31Aの位置が(1)~(4)、(12)~(14)のいずれかであるとき、ロープ41の一端部が貫通孔32Aに挿入され、他端部が貫通孔32Bに挿入される(
図8(b)上図)。一方、接続部32が接続される貫通孔31Aの位置が(5)~(11)のいずれかであるとき、ロープ41は、貫通孔32Aに両端部ともに挿入されるか、貫通孔32Bに両端部ともに挿入される(
図8(b)下図)。
【0034】
換言すれば、
図8(a)、(b)に示すように、包囲部31の上部に固定された接続部32にロープ41が接続される場合には、ロープ41の一端部が貫通孔32Aに挿入され、他端部が貫通孔32Bに挿入される。これに対して、包囲部31の下部に固定された接続部32にロープ41が接続される場合には、ロープ41は、両端部ともに貫通孔32Aに挿入されるか、両端部ともに貫通孔32Bに挿入される。
【0035】
このような接続方式を採ることにより、
図8(c)に示すように、ロープ41がつなぐ2つの接続部32の距離を、電線200の上方において下方よりも短くすることができる。電線200の上方と下方とにおいて接続部32間の距離を変えることにより、電線200の形状に追従し、ロープ41はそれぞれ撓むことなく設置される。これに伴い、包囲部31は、電線200に対して直交方向に延びるように設置される。このように、鳥害防止具1全体が電線200のたわみ形状に追従するように設置される。
【0036】
また、貫通孔32A及び貫通孔32Bのどちらを用いてロープ41を接続するかについては、接続部32に対するロープ41の勾配に応じて選択される(
図7(b))。上述の通り、貫通孔32A及び貫通孔32Bには異なる勾配がつけられている。電線200と略平行に架設されるロープ41の勾配に適合する貫通孔32A、32Bが選択されることで、円柱部411に大きな曲げ荷重が掛かったり、係止部412に掛かる荷重が偏ったりすることが防がれる。
【0037】
(把持部材及び端部材)
把持部材2は、鳥害防止具1の両端部に設置される部材であり、電線200を把持するとともに、中継部材3を支持する機能を有する(
図9)。
【0038】
把持部材2は、
図9から
図12に示すように、電線200を挟み掴む把持部21、22と、ネジ23と、回転部24と、ボルト及びナットを備える接合具25と、固定具26と、ボルト及びナットを備える接合具27と、を主に備える。
【0039】
把持部21、22は、互いに対向する部材であり、把持部21、22の間に、様々な径の電線200を挟んで把持することできる(
図9、
図10)。
【0040】
把持部21には円柱部材211が取付けられ、把持部22には、円柱部材221が取付けられる。円柱部材211、221は、
図12(b)に示すように円柱形状の部材であり、同じ形状を有する。円柱部材211、221は、それぞれ把持部21、22に対して回転可能(
図11(c)に矢印で示す)に埋め込まれる。円柱部材211、221には、円柱部材211、221を径方向に貫通するように雌ネジ211A、221Bが形成されており、ネジ23と接合可能である。
【0041】
把持部21、22の各端部には接合部212、222がそれぞれ形成される。接合部212、222のいずれにも、接合具25が挿入される貫通孔が形成される(
図12)。
【0042】
接合具25は、略円柱形状の部材であり、接合部212、222を互いに揺動可能に接合する(
図9、
図11)。
【0043】
ネジ23は、略円柱形状の部材であり、外周部にはネジ山が切られている。ネジ23は、把持部21、22を貫通するように設置される。ネジ23は、雌ネジ211A、221B双方に対して接合する。ネジ23が回転すると、円柱部材211、221はネジの螺旋形状に従って移動し、互いに離隔または近接する。これに伴って把持部21、22は、開状態(
図11(d))と閉状態(
図11(c))との2つの状態の間で開閉することができる。
【0044】
回転部24は、ネジ23の端部に固定される略円柱形状の部材である。作業者は、不図示の工具等を用いて回転部24を保持し回転させることができる。回転部24の回転に伴ってネジ23が回転し、把持部21、22が開閉する。
【0045】
固定具26は、断面視でコの字型またはC字型の部材であり、2つの開口26aと、開口26bとが形成される(
図12(b))。開口26aは、貫通孔31Aと略同径に形成される。固定具26は、開口26bに挿入された接合具25によって、把持部21、22に固定される(
図9)。
【0046】
接合具27は、略円柱形状の部材であり、固定具26と包囲部31とを接合する機能を有する。詳細に述べると、接合具27は、開口26aと貫通孔31Aとに挿入されることにより、固定具26と包囲部31とを接合する。
【0047】
上述のとおり、把持部材2と、把持部材2に固定される中継部材3は、端部材10を構成する。把持部材2が電線200を把持することにより、中継部材3を介してロープ4を保持し、さらに張力を加えることができる。
【0048】
(設置作業など)
鳥害防止具1を設置する際の手順について説明する。まず作業者は、留め金313を操作して包囲部31を開閉し、電線200を包囲するように中継部材3を設置する。
【0049】
中継部材3の設置の前後において、作業者はロープ41を接続部32の間に架設する。ロープ41の架設は、上述の通り、スリット322Aに円柱部411を通すことによって実施される。
【0050】
作業者が両端部にある把持部材2(端部材10)を電線200に沿って摺動(スライド)させ、または電線200から離して移動させることによって、鳥害防止具1は軸方向に拡がり、さらにロープ41それぞれに張力がかかった状態となる。作業者は、工具等を用いて回転部24を回転させて把持部21、22を閉じ、把持部材2が電線200を把持した状態とする(
図9)。このような簡単な作業によって、鳥害防止具1は電線200に設置される(
図1(a))。
【0051】
維持管理など、電線200に対する何らかの工事が必要となる場合、鳥害防止具1に対して以下のような操作が実施される。
【0052】
まず作業者は、どちらか1つの把持部材2において回転部24を回して把持部21、22を開き、把持部材2が電線200を把持する力を緩め、または把持した状態を解除する。次に、把持部材2(端部材10)を電線200に沿って移動させて鳥害防止具1の全長を縮め、
図1(b)の状態とする。
【0053】
鳥害防止具1にまたは包囲されていた箇所が露出した状態となるため、作業者は、建設用防護管を電線200に取り付けるなど、電線200に対して必要な工事を実施することが可能となる。工事完了後、作業者は、再び把持部材2(端部材10)を移動させて鳥害防止具1を伸ばし、
図1(a)の状態に戻す。
【0054】
<変形例>
上記実施形態において包囲部31は、円環形状に形成されるが、その他の形状に形成されてもよい。例えば、包囲部31は、多角形状や、オーバル状などに形成することが可能である。オーバル状とは、正円、楕円、長円、たまご型を包含する概念であり、外方へ凸となる滑らかな連続曲線で形成される図形であるという特徴を持つ。また、包囲部31は、対称形や滑らかな形状を持つ必要は必ずしもない。また、包囲部31は、必ずしも環状となる必要は無く、例えばC字型など、一部が開いた形状をとり得る。
【0055】
貫通孔32A、32Bへのロープ41(ロープ4)の挿入方法については、上記実施形態のように同じ高さに通す方法に限られない。例えば、
図5の(ア)~(ウ)、(あ)~(う)のいずれの位置に対しても、ロープ41を挿入することができる。ロープ41が挿入される箇所は、上述の通り、電線200の形状、接続部32間の距離などを考慮して適宜選択される。したがって、ロープ41の一端部を位置(ア)に接続し、他端部を位置(う)に接続することも可能である。
【0056】
ロープ4は、必ずしも複数のロープ41を備える構成とする必要はない。ロープ4を連続した1本の線としてもよい。その際、ロープ4を接続部32に結びつけたり、別途固定部材を用いたりするなどの方法で、接続部32をロープ4に対して接続することができる。
【0057】
鳥害防止具1が備える把持部材2の数を1つとすることも可能である。このような構成としても、把持部材2を電線200に対して移動させ、鳥害防止具1の伸縮を実行できる。
【0058】
端部材10は、中継部材3を備えていなくともよい。例えば、把持部材2にロープ4の端部を支持させる構成とすることも可能である。
【0059】
<効果>
上記実施形態及び変形例の鳥害防止具1は、電線200(ケーブルに相当)に対して移動可能に取り付けられる2つの端部材10と、端部材10の間に架設されるロープ4(線に相当)と、ロープ4に支持され、電線200を包囲する中継部材3(中間部材に相当)とを備える。
【0060】
上記構成では、端部材10が電線200に対して移動可能であるため、鳥害防止具1を電線200に沿って自在に伸縮させることができる。そのため、鳥害防止具1を伸縮して電線200を容易に露出させ、電線200に対して各種作業を実施することができる。また、端部材10以外の箇所において中継部材3は電線200には直接支持されていないため、中継部材3及びロープ4は振動することができる。鳥がロープ4または中継部材3に留まろうとした場合、鳥の動きや重さによって中継部材3及びロープ4が上下左右に振動し、または電線200を中心に回転するように振動して鳥の静止を妨げ、効果的に鳥を追い払うことができる。
【0061】
実施形態において、中継部材3は、電線200を包囲する包囲部31と、包囲部31に取り外し可能に装着され、ロープ4が接続される接続部32と、を有する。
【0062】
上記構成では、接続部32が取り外し可能であるため、鳥の種類や設置条件に応じて、接続部32の配置位置を変更することができる(
図6)。そのため、効果的に鳥害を防止できる。
【0063】
包囲部31は環状または多角形状に形成され、接続部32は包囲部31への装着時において包囲部31の径方向に延びる。
【0064】
上記構成では、接続部32が包囲部31の径方向に延びているため、中継部材3及びロープ4が軽い荷重で揺動することができる。そのため、効果的に鳥害を防止できる。
【0065】
包囲部31には、接続部32の装着を可能とする貫通孔31A(取付部)が、包囲部31の周方向に並ぶように形成される。
【0066】
上記構成とすることにより、接続部32を包囲部31に対して簡単に着脱することができる。
【0067】
接続部32には、複数の貫通孔32A、32B(接続孔に相当)が形成され、ロープ4は、貫通孔32A、32Bのいずれかに挿入されることにより、接続部32と接続される。
【0068】
上記構成において、ロープ4が挿入される貫通孔を適切に選択することによって、接続部32間の距離を適切に調整することができる(
図8)。電線200の形状に追従させて接続部32及びロープ4を設置できる。
【0069】
ロープ4は、複数のロープ41(部分線に相当)によって構成される。ロープ41の両端部には、貫通孔32A、32Bに挿入される円柱部411が形成され、接続部32に接続される。
【0070】
ロープ41が接続部32の両端部と接続されることにより、接続部32は、ロープ41の長さにしたがって等間隔に配置される。間隔の調整を行うことなく中継部材3を設置できるため、鳥害防止具1の設置作業が簡易なものとなる。
【0071】
貫通孔32A、32Bは、ロープ4または電線200の勾配と一致するように延びる。
【0072】
電線200と略平行なロープ4の勾配に適合する貫通孔32A、32Bが選択できるため、円柱部411が必要以上に曲げられたり、係止部412に掛かる荷重が偏ったりすることが防がれる。そのため、ロープ4の切断や、早期に劣化してしまう事態が防止される。
【0073】
端部材10は、電線200を摺動可能に把持する把持部材2と、把持部材2に支持されるとともに電線200を包囲する包囲部31(端部包囲部に相当)と、包囲部31に取り外し可能に装着され、ロープ4の端部が接続される接続部32(端部接続部に相当)と、を備える。
【0074】
上記構成とすることにより、中継部材3をそのままロープ4の端部を支持し、張力をかける部材として機能させることができる。把持部材2を簡単な構成とするとともに、鳥害防止具1全体の部品の種類、点数を減らすことができるため、組立及び設置の作業が容易であり、製造にかかる費用も低減できる。
【0075】
ロープ4、及びロープ41は、扁平な断面または長方形の断面を持つ。鳥の留まりやすい断面形状とすることで、電線200の代わりに鳥をおびき寄せ、振動を与えて追い払うことができる。そのため、電線200に対する鳥害を防止できる。
【符号の説明】
【0076】
鳥害防止具1
把持部材2
中継部材3
ロープ4
端部材10