(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085858
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】廃タイヤの処理方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/04 20060101AFI20230614BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20230614BHJP
B29D 30/00 20060101ALI20230614BHJP
B02C 18/00 20060101ALN20230614BHJP
【FI】
B29B17/04 ZAB
B60C19/00 L
B29D30/00
B02C18/00 106B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200143
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(72)【発明者】
【氏名】助川 新
(72)【発明者】
【氏名】星野 裕紀
【テーマコード(参考)】
3D131
4D065
4F215
4F401
【Fターム(参考)】
3D131BC09
3D131LA26
4D065CA12
4D065CC01
4D065CC10
4D065DD08
4D065EA05
4D065EB02
4D065EB14
4D065EE04
4D065EE15
4F215AH20
4F215VA18
4F401AA03
4F401AC02
4F401BA13
4F401CA13
4F401CA14
4F401CA19
(57)【要約】
【課題】廃タイヤの粉砕効率を向上することができる、廃タイヤの処理方法を、提供する。
【解決手段】本発明の廃タイヤの処理方法は、廃タイヤをリサイクルするための、廃タイヤの処理方法であって、廃タイヤに凹孔21又は貫通孔22である孔20をあける、穿孔工程と、前記穿孔工程の後に行われ、刃30aを有する粉砕装置30の当該刃30aを用いて廃タイヤを粉砕する、粉砕工程と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃タイヤをリサイクルするために用いることができる、廃タイヤの処理方法であって、
前記廃タイヤに凹孔又は貫通孔である孔をあける、穿孔工程と、
前記穿孔工程の後に行われ、刃を有する粉砕装置の当該刃を用いて前記廃タイヤを粉砕する、粉砕工程と、
を含むことを特徴とする、廃タイヤの処理方法。
【請求項2】
前記粉砕工程の前に行われ、前記廃タイヤを切断して2以上の部分に分ける、切断工程を、さらに含む、請求項1に記載の廃タイヤの処理方法。
【請求項3】
前記切断工程は、前記穿孔工程の後に行われる、請求項2に記載の廃タイヤの処理方法。
【請求項4】
前記穿孔工程において、前記孔は、前記廃タイヤのサイド部にあけられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の廃タイヤの処理方法。
【請求項5】
前記孔は、前記廃タイヤの表面における開口面積が、200mm2以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の廃タイヤの処理方法。
【請求項6】
前記孔は、凹孔であり、容積が2000mm3以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の廃タイヤの処理方法。
【請求項7】
前記穿孔工程において、前記孔は、前記廃タイヤに総計で複数個あけられる、請求項1~6のいずれか1項に記載の廃タイヤの処理方法。
【請求項8】
前記穿孔工程において、前記孔は、前記廃タイヤのタイヤ幅方向両側のサイド部にあけられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の廃タイヤの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃タイヤの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、廃タイヤをリサイクルするための、廃タイヤの処理方法が知られている。廃タイヤをリサイクルするためには、廃タイヤを粉砕する必要がある。例えば、特許文献1には、回転刃を有する破砕装置によって、廃タイヤを破砕することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術のように、刃を有する粉砕装置の当該刃によって廃タイヤを粉砕する場合、当該刃が廃タイヤに引掛かりにくく、粉砕工程の効率が十分上がらない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、廃タイヤの粉砕効率を向上することができる、廃タイヤの処理方法を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の廃タイヤの処理方法は、
廃タイヤをリサイクルするために用いることができる、廃タイヤの処理方法であって、
廃タイヤに凹孔又は貫通孔である孔をあける、穿孔工程と、
前記穿孔工程の後に行われ、刃を有する粉砕装置の当該刃を用いて前記廃タイヤを粉砕する、粉砕工程と、
を含むことを特徴とする。
本発明の廃タイヤの処理方法によれば、廃タイヤの粉砕効率を向上することができる。
【0007】
本発明の廃タイヤの処理方法において、
前記粉砕工程の前に行われ、廃タイヤを切断して2以上の部分に分ける、切断工程を、さらに含むことが、好ましい。
この場合、廃タイヤの粉砕効率が、より向上する。
【0008】
本発明の廃タイヤの処理方法において、
前記切断工程は、前記穿孔工程の後に行われることが、好ましい。
この場合、穿孔工程の効率が向上する。
【0009】
本発明の廃タイヤの処理方法において、
前記穿孔工程において、前記孔は、前記廃タイヤのサイド部にあけられることが、好ましい。
この場合、廃タイヤの粉砕効率が、より向上する。
【0010】
本発明の廃タイヤの処理方法において、
前記孔は、前記廃タイヤの表面における開口面積が、200mm2以上であることが、好ましい。
この場合、廃タイヤの粉砕効率が、より向上する。
【0011】
本発明の廃タイヤの処理方法において、
前記孔は、凹孔であり、容積が2000mm3以上であることが、好ましい。
この場合、廃タイヤの粉砕効率が、より向上する。
【0012】
本発明の廃タイヤの処理方法において、
前記穿孔工程において、前記孔は、前記廃タイヤに総計で複数個あけられることが、好ましい。
この場合、廃タイヤの粉砕効率が、より向上する。
【0013】
本発明の廃タイヤの処理方法において、
前記穿孔工程において、前記孔は、前記廃タイヤのタイヤ幅方向両側のサイド部にあけられることが、好ましい。
この場合、廃タイヤの粉砕効率が、さらに向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、廃タイヤの粉砕効率を向上することができる、廃タイヤの処理方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る廃タイヤの処理方法において、処理の対象とすることができる廃タイヤとしてのタイヤの一例を示す、タイヤ幅方向断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る廃タイヤの処理方法を説明するための、フローチャートである。
【
図3】穿孔工程を行った後の廃タイヤのサイドウォール部の状態の一例を説明するための、概略一部断面図である。
【
図4】粉砕工程で用いることのできる粉砕装置の一例を説明するための、一部断面側面図である。
【
図5】
図4の粉砕装置におけるカッターの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る廃タイヤの処理方法は、任意の種類のタイヤ、例えば、乗用車用空気入りタイヤ、トラック・バス用空気入りタイヤ、建設・鉱山車両用空気入りタイヤ等についての、廃タイヤのリサイクルに好適に利用できる。
【0017】
以下、本発明に係る廃タイヤの処理方法の実施形態について、図面を参照しつつ例示説明する。
各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。一部の図面では、タイヤ径方向を符号「RD」で示し、タイヤ幅方向を符号「WD」で示し、タイヤ幅方向内側(タイヤ幅方向において、タイヤ内腔に近い側)を符号「WDI」で示し、タイヤ幅方向外側(タイヤ幅方向において、タイヤ内腔から遠い側)を符号「WDO」で示している。
【0018】
まず、本発明に係る廃タイヤの処理方法において、処理の対象とすることができる廃タイヤについて、説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る廃タイヤの処理方法において、処理の対象とすることができる廃タイヤとしてのタイヤの一例を示す、タイヤ幅方向断面図である。なお、説明の便宜上、当該廃タイヤの構成は、当該タイヤの新品時の状態として説明する。また、当該廃タイヤは、任意の種類のタイヤであってよい。なお、本明細書において、「廃タイヤ」とは、使用済みのタイヤだけでなく、他の理由で不要となったタイヤも含む。
【0019】
図1の説明における各要素の位置関係等は、タイヤが、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態にあるものとして説明する。
ここで、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指すが、これらの産業規格に記載のないサイズの場合は、空気入りタイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に前述の産業規格に記載されるサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられ得る。
また、「規定内圧」とは、前述したJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、前述した産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
【0020】
図1に示すように、廃タイヤとしてのタイヤ1は、トレッド部11と、このトレッド部11のタイヤ幅方向の両端部からタイヤ径方向内側に延びる1対のサイドウォール部12と、各サイドウォール部12のタイヤ径方向内側の端部に設けられた1対のビード部13と、を備えている。トレッド部11は、タイヤ1のうち、1対の接地端どうしの間のタイヤ幅方向部分である。ビード部13は、タイヤ1をリムに装着したときに、タイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向外側においてリムに接するように構成されている部分である。
タイヤ1は、トレッド部11のタイヤ幅方向の両端部からタイヤ径方向内側に延びる1対のサイド部16を有する。サイド部16は、サイドウォール部12及びビード部13からなる。
また、タイヤ1は、ビード部13に設けられた1対のビードコア13a及び1対のビードフィラー13bと、1対のビード部13間に延在している(より具体的に、1対のビード部13におけるビードコア13a間に跨って、1対のサイドウォール部12及びトレッド部11を通って、トロイダル状に延在している)カーカス14と、カーカス14のクラウン部に対してタイヤ径方向外側に配置されているベルト15と、を備えている。上記サイドウォール部12は、少なくともベルト15よりタイヤ径方向内側の部分であって、ビード部13よりタイヤ径方向外側の部分を指す。タイヤ1は、トレッド部11に、例えばタイヤ周方向及び/又はタイヤ幅方向に延びる溝11aを有している。また、タイヤ1は、タイヤ内腔に面する内表面にインナーライナーを有していてもよい。
【0021】
各ビードコア13aは、周囲をゴムにより被覆された1本又は複数本のビードワイヤを備えている。ビードワイヤは、例えば金属(例えばスチール)製のモノフィラメント又は撚り線からなるものとすることができる。各ビードフィラー13bは、それぞれ、対応するビードコア13aに対してタイヤ径方向外側に位置している。ビードフィラー13bは、例えばゴム製である。ビードフィラー13bは、複数(例えば、2つ)のビードフィラー部から構成されていてもよい。
カーカス14は、少なくとも1枚(
図1の例では、1枚)のカーカスプライから構成されている。各カーカスプライは、1本又は複数本のカーカスコードと、カーカスコードを被覆する被覆ゴムと、を含んでいる。カーカスコードは、例えば、モノフィラメント又は撚り線で形成されていてよい。カーカスコードは、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されていてもよいし、金属(例えばスチール)から構成されていてもよい。
ベルト15は、少なくとも1層(
図1の例では、2層)のベルト層から構成されている。各ベルト層は、1本又は複数本のベルトコードと、ベルトコードを被覆する被覆ゴムと、を含んでいる。ベルトコードは、例えば、モノフィラメント又は撚り線で形成されていてよい。ベルトコードは、金属(例えばスチール)から構成されていてもよいし、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されていてもよい。
【0022】
図1の例のタイヤ1は、タイヤ赤道面CLに対して対称であり、換言すれば、当該タイヤ1の構成は、タイヤ赤道面CLに対するタイヤ幅方向一方側の部分の構成とタイヤ幅方向他方側の部分の構成とは、同等である。但し、タイヤ1の構成は、タイヤ赤道面CLに対して非対称であってもよい。
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る廃タイヤの処理方法について、
図2~
図5を参照しつつ説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る廃タイヤの処理方法を説明するための、フローチャートである。
図3は、穿孔工程を行った後の廃タイヤのサイドウォール部の状態の一例を説明するための、概略一部断面図である。
図4は、粉砕工程で用いることのできる粉砕装置の一例を説明するための、一部断面側面図であり、
図5は、
図4の粉砕装置におけるカッターの上面図である。
【0024】
図2に示すように、本実施形態の廃タイヤの処理方法は、穿孔工程(ステップS101)と、切断工程(ステップS102)と、粉砕工程(ステップS103)と、をこの順に含んでいる。
本実施形態に係る廃タイヤの処理方法は、廃タイヤをリサイクルするために利用することができる。換言すれば、本実施形態に係る廃タイヤの処理方法は、廃タイヤを例えば粉砕等することにより、廃タイヤを構成する各材料を例えば分別して取得し再生利用するために用いることができる。
【0025】
(穿孔工程)
本実施形態において、まず、穿孔工程では、廃タイヤに凹孔又は貫通孔である孔をあける(ステップS101)。
上述の通り、本実施形態の廃タイヤの処理方法で処理される廃タイヤ、即ち、穿孔工程を行うために準備する廃タイヤは、使用済みのタイヤであっても、その他の理由(例えば、製造品の検査過程で不良品とされた、等の理由)で不要になったタイヤであってもよい。
図3に例示するように、本実施形態において、廃タイヤにあける孔20は、凹孔21であってもよいし、貫通孔22であってもよい。ここで、本明細書において、「貫通孔」とは、廃タイヤのいずれかの部位を貫通する孔を指し、「凹孔」とは、廃タイヤを貫通しない孔、換言すれば、非貫通の有底の凹部(くぼみ)を指す。また、本明細書において、「孔」とは、凹孔又は貫通孔を指し、換言すれば、凹孔及び貫通孔の双方を含む。また、本明細書において、「穿孔」とは、上記の孔をあける(設ける)こと、ひいては、上記の凹孔又は貫通孔をあける(設ける)ことを指す。即ち、「穿孔」とは、凹孔をあける(設ける)ことと、貫通孔をあける(設ける)ことと、の双方を含む。
なお、
図3は、本実施形態における穿孔工程において、廃タイヤとしてのタイヤ1のサイドウォール部12(ひいては、サイド部16)に、略半球状の凹孔21と円柱状の貫通孔22との双方の孔20を近接してあけた例を示している。但し、穿孔工程においてあける孔20の、形状、配置位置、数、種類等については、後述する好適例はあるが、特に制限されない。
【0026】
廃タイヤをリサイクルするためには、当該廃タイヤを粉砕する必要がある。廃タイヤを粉砕するために、例えば後述する例のような粉砕装置30の刃30a(
図4~
図5参照)を用いて粉砕することが行われるが、その場合、当該粉砕工程において、当該刃30aが廃タイヤの表面に容易に引掛からず、ひいては、粉砕工程における生産効率(粉砕効率)が十分に上がらない又は低下するおそれがある。
そこで、本実施形態のように、いわば本処理である粉砕工程の前処理として、廃タイヤに孔20をあける穿孔工程を行うことにより、当該孔20(ひいては、廃タイヤ)に粉砕装置30の刃30aが引掛かり易くなり、その引掛かった箇所が基点となって刃30aが食い込み、粉砕が開始されかつ促進される。即ち、本実施形態の廃タイヤの処理方法によれば、後述する粉砕工程の前に、廃タイヤとしてのタイヤ1に孔20をあける穿孔工程を含んでいるので、廃タイヤの粉砕効率を向上することができる。
【0027】
穿孔工程における、穿孔の手段・方法については、特に制限されない。
例えば、凹孔21をあける(設ける)ためには、例えばスクーパー等を用いることができる。また、貫通孔22をあける(設ける)ためには、例えば有底円筒状の治具の底部を手前にして押し込んでいってもよいし、無底円筒状の治具(中空ロッド)を用いて、廃タイヤを貫通する円筒状の切れ込みを入れた後、当該切れ込み内のゴム等を押し出してもよい。また、穿孔は、公知又は市販の、手段、方法及び/又は治具(道具)等を用いて行うことができる。穿孔は、手作業で行ってもよいし、専用の機械等により行ってもよい。
【0028】
なお、廃タイヤとしてのタイヤ1(
図1、
図3参照)の内部又は表面(外部に面するタイヤ外表面及び/又はタイヤ内腔に面するタイヤ内表面)に、例えば、ICチップとアンテナとからなるRFタグ(一般に、RFID(Radio Frequency Identification)タグとも呼ばれる)等の通信装置、又は、それも含むその他の電子デバイス(電子部品を備える装置)が、設けられている場合がある(図示せず)。その場合、上記穿孔工程において、廃タイヤに穿孔する(即ち、孔をあける)際に、穿孔と同時に、穿孔によって除去される廃タイヤの部分とともに当該通信装置又は電子デバイスの全体が除去されることが好ましい。これにより、廃タイヤを構成する材料とは異なる予期せぬ材料の混入により、後の粉砕工程で得られる材料の品質が悪化するおそれを少なくすることができるとともに、当該通信装置又は電子デバイスを傷つけずに除去することが可能となるので、当該通信装置若しくは電子デバイス自体をリユース(再使用)し、又は、当該通信装置若しくは電子デバイスに記憶された情報を支障なく読み出すこと等が、可能となり得る。
【0029】
図3に例示したように、穿孔工程において、孔20は、廃タイヤとしてのタイヤ1(
図1参照)のサイド部16にあけられることが、好ましい。また、その場合、孔20は、廃タイヤとしてのタイヤ1のタイヤ幅方向両側のサイド部16(1対のサイド部16)にあけられることが、より好ましい。
タイヤ1の中でも、相対的にゲージが薄く柔軟で、かつ、大きな局所的な凹凸のあることも少ないサイド部16は、相対的にゲージが厚く、かつ、一般に大きな溝11a等の凹凸が設けられているトレッド部11に比べ、例えば上述の例の粉砕装置30の刃30aが引掛かりにくい。そこで、穿孔工程において、孔20が、廃タイヤのサイド部にあけられることにより、当該サイド部にも刃30aが引掛かり易くなるため、より廃タイヤの粉砕が促進され易くなり、ひいては、廃タイヤの粉砕効率が、より向上する。また、孔20が、廃タイヤのタイヤ幅方向両側のサイド部にあけられる場合、刃30aがより多くの箇所で引掛かり易くなるため、廃タイヤの粉砕効率が、さらに向上する。
なお、上述のとおり、孔20は、タイヤ1の中でもより柔軟な部分にあけられるのが、廃タイヤの粉砕効率の向上により効果的である、との観点から、穿孔工程において、孔20は、廃タイヤとしてのタイヤ1(
図1参照)のサイド部16の中でも、ビード部13におけるビードコア13aよりタイヤ径方向外側の位置にあけられることが、より好ましく、タイヤ幅方向両側の当該位置にあけられることが、さらに好ましい。
また、同様の観点から、孔20は、ビードコア13a及びビードフィラー13bを含むビード部13よりタイヤ径方向外側の位置、即ち、サイドウォール部12にあけられることが、より好ましく、タイヤ幅方向両側のサイドウォール部12にあけられることが、さらに好ましい。
但し、穿孔工程において、孔20は、上述の部分にあけられなくてもよい。
【0030】
穿孔工程においてあけられる、孔20(凹孔21又は貫通孔22)は、廃タイヤの表面における開口面積が、200mm2以上であることが、好ましい。孔20の当該開口面積が、200mm2以上であることにより、粉砕装置の刃が十分引掛かり易くなり、廃タイヤの粉砕効率がより向上する。
但し、孔20は、当該開口面積が、200mm2未満であってもよい。
【0031】
また、穿孔工程においてあけられる、孔20は、凹孔21であり、容積が2000mm3以上であることが、好ましい。孔20が凹孔21である場合、その容積が2000mm3以上であることにより、粉砕装置の刃が十分引掛かり易くなり、廃タイヤの粉砕効率がより向上する。
但し、孔20は、凹孔21であるが、その容積が2000mm3未満であってもよい。
【0032】
さらに、穿孔工程において、孔20(凹孔21又は貫通孔22)は、廃タイヤに総計で複数個あけられることが、好ましい。穿孔工程において、孔20が、廃タイヤにおいて総計で複数個あけられることにより、粉砕装置の刃が引掛かり易くなる箇所が多くなり、廃タイヤの粉砕効率がより向上する。
但し、穿孔工程において、孔20は、廃タイヤに1個だけあけられてもよい。
【0033】
穿孔工程においてあけられる、孔20の形状(換言すれば、孔20によって除去される廃タイヤの部分の形状)は、特に制限されない。
図3に示した例では、廃タイヤとしてのタイヤ1に、略半球(即ち、球の一部)状の凹孔21と円柱状の貫通孔22があけられているが、凹孔21及び貫通孔22は、当該形状でなくてもよい。凹孔21の形状は、例えば、回転楕円体の一部、立方体や直方体等の多面体の一部、又は、その他の形状であってもよい。また、貫通孔22の形状は、楕円柱、四角柱等の角柱、又は、その他の形状であってもよい。
また、穿孔工程においてあけられる、孔20の種類は、特に制限されない。穿孔工程において、1つの廃タイヤに、1個又は複数個の凹孔21だけがあけられてもよいし、1個又は複数個の貫通孔22だけがあけられてもよいし、
図3に例示するように、1つの廃タイヤに、1個又は複数個の凹孔21と1個又は複数個の貫通孔22との双方があけられてもよい。
【0034】
穿孔工程においてあけられる、孔20が、凹孔21である場合、当該凹孔21は、
図3の例に示すように、廃タイヤの表面のうち、タイヤ内腔に面するタイヤ幅方向内側WDIのタイヤ内表面ではなく、外部に面するタイヤ幅方向外側WDOのタイヤ外表面にあけられることが好ましい。後述する粉砕工程において、廃タイヤのタイヤ内腔側には粉砕装置の刃が入りにくいので、凹孔21が廃タイヤのタイヤ外表面にあけられることにより、凹孔21が廃タイヤのタイヤ内表面にあけられる場合に比べて、粉砕効率がより向上する。
【0035】
(切断工程)
本実施形態において、次に、切断工程では、廃タイヤを切断して2以上の部分に分ける(ステップS102)。切断工程(ステップS102)は、後述する粉砕工程(ステップS103)の前に行われる。
本実施形態における廃タイヤの処理方法が、粉砕工程の前に行われ、廃タイヤを切断して2以上の部分に分ける、切断工程を含むことにより、例えば後述する例の粉砕装置30に投入される粉砕対象物(より具体的に、廃タイヤ又はその一部)の大きさが小さくなるため、粉砕に要するエネルギーも小さくなり、ひいては、粉砕効率がより向上する。
本実施形態において処理する廃タイヤが、トラック・バス用タイヤ等以上、特には、建設・鉱山車両用タイヤのような、大型又は超大型のタイヤである場合に、粉砕工程の前に行われ、廃タイヤを切断して2以上の部分に分ける、切断工程を含むこと(即ち、粉砕工程の前に切断工程を行うこと)が、粉砕効率の向上に特に有効である。
【0036】
切断工程における、切断の手段・方法については、特に制限されない。例えば、廃タイヤを、公知又は市販のカッターにより切断することができる。
切断工程において、廃タイヤの切断のし方については、特に制限されないが、切断のし易さひいては切断効率の向上を図る等の観点からは、廃タイヤを、少なくともタイヤ幅方向に切断してタイヤ周方向に2以上の部分に分けることが好ましい。
切断工程において、廃タイヤを切断して分ける部分の数は、2以上(即ち、2以上に分ける)であれば特に制限されないが、切断効率の向上を図る等の観点からは、2~16であることが好ましく、4~16であることがより好ましく、4~8であることがさらに好ましい。特に、廃タイヤが建設・鉱山車両用タイヤ等の超大型のタイヤである場合、当該数は、8~32であることが好ましく、16~32であることがより好ましい。
【0037】
本実施形態において、
図2に示すように、切断工程は、穿孔工程の後に行われる。即ち、本実施形態において、切断工程は、粉砕工程の前であって、穿孔工程の後に行われる。
廃タイヤが2以上の部分に分けられる切断工程が穿孔工程の後に行われることにより、切断工程が穿孔工程の前に行われる場合に比べて、穿孔工程での作業がより行いやすくなり、ひいては、穿孔工程の効率が向上する。
但し、切断工程は、穿孔工程の前に行われてもよい。特に、廃タイヤが建設・鉱山車両用タイヤ等の超大型のタイヤである場合、切断工程が穿孔工程の前に行われる方が、穿孔工程の効率が向上し易い場合がある。
【0038】
(粉砕工程)
本実施形態において、次に、粉砕工程では、刃を有する粉砕装置の当該刃を用いて廃タイヤを粉砕する(ステップS103)。粉砕工程(ステップ103)は、上述した穿孔工程(ステップS101)の後に行われる。より具体的に、本実施形態では、粉砕工程(ステップ103)は、上述した穿孔工程(ステップS101)及び切断工程(ステップS102)の後に行われる。
本実施形態の廃タイヤの処理方法によれば、穿孔工程の後に行われ、刃を有する粉砕装置の当該刃を用いて廃タイヤを粉砕する、粉砕工程を含んでいるので、廃タイヤの粉砕を効果的に行うことができるとともに、最終的に廃タイヤが細かく粉砕され得るので、廃タイヤを構成していた各材料・成分を再度利用し易くなり、ひいては、廃タイヤをリサイクル(再生利用)することが可能となり得る。
【0039】
図4~
図5に、本実施形態における粉砕工程で用いることのできる、公知の粉砕装置の一例を示す。但し、粉砕工程で用いることのできる粉砕装置は、以下に例示した粉砕装置でなくてもよい。粉砕装置は、廃タイヤの粉砕に用いる(より具体的に、廃タイヤを細断・粉砕できる)刃を有する限り、任意の構成の粉砕装置であってよい。
図4に示すように、本例の粉砕装置30は、相互に対向して回転する、本例では4列の回転カッター31~34を有している。
図4~
図5に示すように、各回転カッター31~34はそれぞれ、当該各カッター間で回転軸線が互いに平行とされた、回転軸体311、321、331、341と、当該それぞれの回転軸体の周囲に設けられ回転軸体の回転軸線方向に沿って複数個配列された、回転刃部312、322、332、342と、を有している。各回転刃部はそれぞれ、上記回転軸線方向から視た軸線方向視で当該回転刃部の外側かつ回転方向前方側に向けて先端が突出する、本例ではそれぞれ6個の、刃312a、322a、332a、342a(本明細書において、総称して「刃30a」ともいう。)を有している。
図5に示すように、各回転刃部、例えば、回転刃部312(ひいては、刃312a)と回転刃部322(ひいては、刃322a)とは、それぞれの側面同士が互いに所定のわずかな間隔35をあけるように、互いに挟み込まれるように、配列されている。
本例の粉砕装置30に投入された廃タイヤは、上記の刃30a(312a、322a、332a、342a)を用いて(より具体的に、当該刃によって)細断され粉砕される。
【0040】
本実施形態において、粉砕工程における粉砕は、何段階かに分けて行われてもよい。換言すれば、粉砕工程は、複数の粉砕工程、例えば、順次より細かい砕片に粉砕するように、1次粉砕工程(破砕工程)、2次粉砕工程(本粉砕工程)等を含んでいてもよい。
また、本実施形態において、粉砕工程の後に、他の工程、例えば、粉砕後の細片をゴムと金属とに分別する分別工程等を含んでいてもよい。
【0041】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る廃タイヤの処理方法は、任意の種類のタイヤ、例えば、乗用車用空気入りタイヤ、トラック・バス用空気入りタイヤ、建設・鉱山車両用空気入りタイヤ等についての、廃タイヤのリサイクルに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1:タイヤ、
11:トレッド部、 11a:溝、 12:サイドウォール部、 13:ビード部、 13a:ビードコア、 13b:ビードフィラー、 14:カーカス、 15:ベルト、 16:サイド部、
20:孔、 21:凹孔、 22:貫通孔、
30:粉砕装置、 31、32、33、34:回転カッター、 311、321、331、341:回転軸体、 312、322、332、342:回転刃部、 30a、312a、322a、332a、342a:刃、 35:間隔
CL:タイヤ赤道面、 RD:タイヤ径方向、 WD:タイヤ幅方向、 WDI:タイヤ幅方向内側、 WDO:タイヤ幅方向外側