(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008586
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】遠隔制御システム、遠隔制御方法、遠隔制御プログラム、走行制御装置および移動体
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230112BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20230112BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20230112BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20230112BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20230112BHJP
G16Y 40/30 20200101ALI20230112BHJP
【FI】
G08G1/09 V
H04W4/44
H04W64/00 140
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112263
(22)【出願日】2021-07-06
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SWIFT
(71)【出願人】
【識別番号】306020818
【氏名又は名称】トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 弘之
(72)【発明者】
【氏名】西岡 孝司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 幸泰
【テーマコード(参考)】
5H181
5K067
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA25
5H181AA26
5H181BB04
5H181BB13
5H181BB15
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL09
5H181MB02
5H181MC27
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE16
5K067HH22
5K067JJ51
(57)【要約】
【課題】移動体の走行を遠隔制御する制御装置と移動体との間に通信の遅延時間の増減が発生した場合にも、移動体を高精度で遠隔制御することができる。
【解決手段】所定の経路を走行する自動運転機能を備えた移動体と、移動体とネットワークを介して接続された走行制御装置とを備えた遠隔制御システムであって、走行制御装置は、移動体から、移動体情報とタイムスタンプを受信する移動体情報受信部と、移動体情報の受信時刻とタイムスタンプが示す移動体情報の送信時刻の差分から、通信の遅延時間を算出する遅延時間算出部と、通信の遅延時間に基づいて、到達予測時刻を複数算出し、算出した複数の到達予測時刻それぞれにおける移動体への走行制御命令を移動体情報に基づいて算出する走行制御命令算出部と、少なくとも二つ以上の走行制御命令を移動体に送信する走行制御命令送信部と、を備えた。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の経路を走行する自動運転機能を備えた移動体と、前記移動体とネットワークを介して接続された前記移動体の走行を制御する走行制御装置とを備えた遠隔制御システムであって、
前記走行制御装置は、
前記移動体から、前記移動体の位置情報および速度情報を含む移動体情報と前記移動体情報の送信時刻を示すタイムスタンプを受信する移動体情報受信部と、
前記移動体情報の受信時刻と前記タイムスタンプが示す前記移動体情報の送信時刻の差分から、前記走行制御装置と前記移動体との通信の遅延時間を算出する遅延時間算出部と、
前記遅延時間算出部により算出された複数の通信の遅延時間に基づいて、前記移動体に制御信号が到達する時刻として予測される到達予測時刻を複数算出し、算出した複数の到達予測時刻それぞれにおける前記移動体への走行制御命令を前記移動体情報に基づいて算出する走行制御命令算出部と、
前記走行制御命令算出部により算出された少なくとも二つ以上の走行制御命令を前記移動体に送信する走行制御命令送信部と、
を備え、
前記移動体は、
前記移動体情報を前記タイムスタンプとともに前記走行制御装置に送信する移動体情報送信部と、
前記走行制御装置から少なくとも二つ以上の走行制御命令を受信する走行制御命令受信部と、
前記走行制御命令の受信時刻および前記到達予測時刻に基づいて、受信した走行制御命令のうち最適な走行制御命令を選択する走行制御命令選択部と、
を備えたことを特徴とする遠隔制御システム。
【請求項2】
前記走行制御装置は、
前記移動体情報の受信時刻と前記タイムスタンプが示す前記移動体情報の送信時刻の差分から、前記走行制御装置と前記移動体との通信の遅延時間を算出する遅延時間分布算出部、
をさらに備え、
前記走行制御命令算出部は、前記遅延時間分布算出部により算出された遅延時間の分布に基づいて前記到達予測時刻を複数算出し、算出した到達予測時刻にそれぞれ対応する走行制御命令を算出し、
前記走行制御命令送信部は、前記走行制御命令算出部により算出された走行制御命令を到達予測時刻に対応付けて前記移動体に送信し、
前記走行制御命令選択部は、前記到達予測時刻に対応付けられた走行制御命令のうち、前記走行制御命令の受信時刻に最も近い到達予測時刻が対応付けられた走行制御命令を選択すること、
を特徴とする請求項1に記載の遠隔制御システム。
【請求項3】
前記走行制御装置は、
前記移動体情報の受信時刻と前記タイムスタンプが示す前記移動体情報の送信時刻の差分から、前記走行制御装置と前記移動体との通信の遅延時間を算出する遅延時間分布算出部、
をさらに備え、
前記走行制御命令算出部は、前記遅延時間分布算出部により算出された遅延時間の分布および前記移動体情報に基づいて、前記到達予測時刻を複数算出し、算出した到達予測時刻において前記移動体が到達すると予測された位置である到達予測位置にそれぞれ対応する走行制御命令を算出し、
前記走行制御命令送信部は、前記走行制御命令算出部により算出された走行制御命令を前記到達予測位置に対応付けて前記移動体に送信し、
前記走行制御命令選択部は、前記到達予測位置に対応付けられた走行制御命令のうち、前記走行制御命令の受信時刻における前記移動体の位置と最も近い到達予測位置が対応付けられた走行制御命令を選択すること、
を特徴とする請求項1に記載の遠隔制御システム。
【請求項4】
前記遅延時間分布算出部は、前記遅延時間算出部により算出された複数の通信の遅延時間から通信の遅延時間の分布を算出し、算出した通信の遅延時間の分布が示す値の全体幅から複数の所定値を算出し、
前記走行制御命令算出部は、前記遅延時間分布算出部により算出された所定値ごとに前記到達予測時刻を算出し、算出した到達予測時刻それぞれにおける前記移動体への走行制御命令を前記移動体情報に基づいて算出すること、
を特徴とする請求項2または3に記載の遠隔制御システム。
【請求項5】
前記遅延時間分布算出部は、前記遅延時間算出部により算出された複数の通信の遅延時間から通信の遅延時間の分布を算出し、算出した通信の遅延時間の分布が示す値の全体幅から、通信の遅延時間の最小値を示す第1の所定値、通信の遅延時間の平均値を示す第2の所定値、最大値または前記第2の所定値よりも大きな値を示す第3の所定値を算出し、
前記走行制御命令算出部は、前記遅延時間分布算出部により算出された第1の所定値~第3の所定値それぞれに基づいて前記到達予測時刻を算出し、算出した到達予測時刻それぞれにおける前記移動体への走行制御命令を前記移動体情報に基づいて算出すること、
を特徴とする請求項4に記載の遠隔制御システム。
【請求項6】
前記遠隔制御システムは、前記移動体と前記走行制御装置を接続するネットワークを複数有し、
前記遅延時間分布算出部により算出された通信の遅延時間の分布のうち所定値を超える通信の遅延時間を検出する検出部、
をさらに備え、
走行制御命令送信部は、前記検出部により所定値を超える遅延時間が検出された場合は、前記移動体情報受信部により前記移動体情報を受信した際に用いたネットワークと異なるネットワークを介して、前記走行制御命令算出部により算出された少なくとも二つ以上の走行制御命令を前記移動体に送信すること、
を特徴とする請求項2~5のいずれか一つに記載の遠隔制御システム。
【請求項7】
所定の経路を走行する自動運転機能を備えた移動体と、前記移動体とネットワークを介して接続された前記移動体の走行を制御する走行制御装置とを備えた遠隔制御システムにおいて実行される遠隔制御方法であって、
前記走行制御装置は、
前記移動体から、移動体の位置情報および速度情報を含む移動体情報と前記移動体情報の送信時刻を示すタイムスタンプを受信する移動体情報受信ステップと、
前記移動体情報の受信時刻と前記タイムスタンプが示す前記移動体情報の送信時刻の差分から、前記走行制御装置と前記移動体との通信の遅延時間を算出する遅延時間算出ステップと、
前記遅延時間算出ステップにより算出された複数の通信の遅延時間に基づいて、前記移動体に制御信号が到達する時刻として予測される到達予測時刻を複数算出し、算出した複数の到達予測時刻それぞれにおける前記移動体への走行制御命令を前記移動体情報に基づいて算出する走行制御命令算出ステップと、
前記走行制御命令算出ステップにより算出された少なくとも二つ以上の走行制御命令を前記移動体に送信する走行制御命令送信ステップと、
を実行し、
前記移動体は、
前記移動体情報を前記タイムスタンプとともに前記走行制御装置に送信する移動体情報送信ステップと、
前記走行制御装置から少なくとも二つ以上の走行制御命令を受信する走行制御命令受信ステップと、
前記走行制御命令の受信時刻および前記到達予測時刻に基づいて、受信した走行制御命令のうち最適な走行制御命令を選択する走行制御命令選択ステップと、
を実行することを特徴とする遠隔制御方法。
【請求項8】
所定の経路を走行する自動運転機能を備えた移動体と、前記移動体とネットワークを介して接続された前記移動体の走行を制御する走行制御装置とを備えた遠隔制御システムにおける前記走行制御装置および前記移動体において実行される遠隔制御プログラムであって、
前記走行制御装置に、
前記移動体から、前記移動体の位置情報および速度情報を含む移動体情報と前記移動体情報の送信時刻を示すタイムスタンプを受信する移動体情報受信機能と、
前記移動体情報の受信時刻と前記タイムスタンプが示す前記移動体情報の送信時刻の差分から、前記走行制御装置と前記移動体との通信の遅延時間を算出する遅延時間算出機能と、
前記遅延時間算出機能により算出された複数の通信の遅延時間に基づいて、前記移動体に制御信号が到達する時刻として予測される到達予測時刻を複数算出し、算出した複数の到達予測時刻それぞれにおける前記移動体への走行制御命令を前記移動体情報に基づいて算出する走行制御命令算出機能と、
前記走行制御命令算出機能により算出された少なくとも二つ以上の走行制御命令を前記移動体に送信する走行制御命令送信機能と、
を実現させ、
前記移動体に、
前記移動体情報を前記タイムスタンプとともに前記走行制御装置に送信する移動体情報送信機能と、
前記走行制御装置から少なくとも二つ以上の走行制御命令を受信する走行制御命令受信機能と、
走行制御命令の受信時刻に基づいて、前記走行制御命令受信機能により受信した走行制御命令のうち最適な走行制御命令を選択する走行制御命令選択機能と、
前記走行制御命令算出機能により算出された少なくとも二つ以上の走行制御命令を前記移動体に送信する走行制御命令送信機能と、
を実現させることを特徴とする遠隔制御プログラム。
【請求項9】
所定の経路を走行する自動運転機能を備えた移動体とネットワークを介して接続された前記移動体の走行を制御する走行制御装置であって、
前記走行制御装置は、
前記移動体から、前記移動体の位置情報および速度情報を含む移動体情報と前記移動体情報の送信時刻を示すタイムスタンプを受信する移動体情報受信部と、
前記移動体情報の受信時刻と前記タイムスタンプが示す前記移動体情報の送信時刻の差分から、前記走行制御装置と前記移動体との通信の遅延時間を算出する遅延時間算出部と、
前記遅延時間算出部により算出された複数の通信の遅延時間に基づいて、前記移動体に制御信号が到達する時刻として予測される到達予測時刻を複数算出し、算出した複数の到達予測時刻それぞれにおける前記移動体への走行制御命令を前記移動体情報に基づいて算出する走行制御命令算出部と、
前記走行制御命令算出部により算出された少なくとも二つ以上の走行制御命令を前記移動体に送信する走行制御命令送信部と、
を備えたことを特徴とする走行制御装置。
【請求項10】
所定の経路を走行する移動体の走行を制御する走行制御装置とネットワークを介して接続された移動体であって、
前記移動体は、
前記移動体の位置情報および速度情報を含む移動体情報を前記移動体情報の送信時刻を示すタイムスタンプとともに前記走行制御装置に送信する移動体情報送信部と、
前記走行制御装置から少なくとも二つ以上の走行制御命令を受信する走行制御命令受信部と、
前記走行制御命令の受信時刻および前記移動体に制御信号が到達する時刻として予測される到達予測時刻に基づいて、受信した走行制御命令のうち最適な走行制御命令を選択する走行制御命令選択部と、
前記走行制御命令選択部により選択された走行制御命令に従って前記移動体を走行制御する走行制御部と、
を備えたことを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠隔制御システム、遠隔制御方法、遠隔制御プログラム、走行制御装置および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動運転機能を備えた車両などの移動体の自動操縦技術が開発され、制御対象となる移動体に制御指令用の制御装置を搭載し、搭載した制御装置により移動体を自動操縦する方法が実施されてきた。
【0003】
また、車載システムの低コスト化、制御装置のトラブルによる緊急事態対応の容易化や省人化、複数の移動体を制御する際の効率化、安全性向上などの観点から、移動体には制御装置を搭載せず、移動体と遠隔に設置された制御装置からの制御指令を無線通信により移動体に送信する技術も実現されている。
【0004】
無線通信を用いて遠隔に制御信号を送信する場合、有線通信を用いた場合と比較して送信側でデータが送信されてから受信側で受信するまでに大きな通信の遅延時間が発生するという問題がある。
【0005】
通信の遅延を考慮してデータを処理する方法として、自動車のなどの車両の状態に関する情報に時間情報を付す方法や(例えば、特許文献1)、GPS衛星から原子時計に基づく正確な時刻(協定世界時)を取得し、通信の管轄地域におけるローカル時間に合わせられた内部時計を補正する方法(例えば、特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2014-017454号公報
【特許文献2】特開2009-264951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、送信対象となるデータに時間情報を付したり、特許文献2のように、協定世界時を用いてデータの送信側において正確な送信時刻を補正したりして、送信側の送信時刻を明示したり正確性を調整するだけでは、通信の送信側と受信側で行われるデータ送受信のタイミングを調整することはできない。通信の送信側と受信側において時間およびデータの同期処理ができなければ、とりわけ、走行中の移動体をフィードバック制御する際に、走行制御に支障をきたすこととなってしまう。具体的には、通信遅延により、予測された到達時間よりも後に制御信号が移動体に到達することで制御命令が実際の車両状態に間に合わずアクチュエータの動作遅れなどが発生したりする事態が生じる。
【0008】
また、通信の遅延時間が大きく変動すると、制御指令を受信した制御対象の状態と、受信前に生成された制御指令に大きな乖離が生じ、制御が破綻する可能性が高くなるので、事前に通信の遅延時間を正確に予測することができればこの事態を回避しやすくなる。しかし、通信の遅延には、高遅延状態と定常遅延状態の2種類に大別され、特に、高遅延状態では大きなばらつきが発生するので通信の遅延時間を正確に予測することも困難である。
【0009】
このように、遠隔から無線通信を用いて移動体を正確にフィードバック制御するには、予測できない通信の遅延時間を考慮した上で受信側と送信側の時間およびデータを同期することが課題となっている。
【0010】
そこで、本発明は、移動体の走行を遠隔制御する制御装置と移動体との間に通信の遅延時間の増減が発生した場合にも、移動体を高精度で遠隔制御することが可能な遠隔制御システム、無線通信方法、無線通信プログラム、走行制御装置および移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る遠隔制御システムは、所定の経路を走行する自動運転機能を備えた移動体と、移動体とネットワークを介して接続された移動体の走行を制御する走行制御装置とを備えた遠隔制御システムであって、走行制御装置は、移動体から、移動体の位置情報および速度情報を含む移動体情報と移動体情報の送信時刻を示すタイムスタンプを受信する移動体情報受信部と、移動体情報の受信時刻とタイムスタンプが示す移動体情報の送信時刻の差分から、走行制御装置と移動体との通信の遅延時間を算出する遅延時間算出部と、遅延時間算出部により算出された通信の遅延時間に基づいて、移動体に制御信号が到達する時刻として予測される到達予測時刻を複数算出し、算出した複数の到達予測時刻それぞれにおける移動体への走行制御命令を移動体情報に基づいて算出する走行制御命令算出部と、走行制御命令算出部により算出された少なくとも二つ以上の走行制御命令を移動体に送信する走行制御命令送信部と、を備え、移動体は、移動体情報をタイムスタンプとともに走行制御装置に送信する移動体情報送信部と、走行制御装置から少なくとも二つ以上の走行制御命令を受信する走行制御命令受信部と、走行制御命令の受信時刻および到達予測時刻に基づいて、受信した走行制御命令のうち最適な走行制御命令を選択する走行制御命令選択部と、を備えた。
【0012】
また、本発明に係る遠隔制御方法は、所定の経路を走行する自動運転機能を備えた移動体と、移動体とネットワークを介して接続された移動体の走行を制御する走行制御装置とを備えた遠隔制御システムにおいて実行される遠隔制御方法であって、走行制御装置は、移動体から、移動体の位置情報および速度情報を含む移動体情報と移動体情報の送信時刻を示すタイムスタンプを受信する移動体情報受信ステップと、移動体情報の受信時刻とタイムスタンプが示す移動体情報の送信時刻の差分から、走行制御装置と移動体との通信の遅延時間を算出する遅延時間算出ステップと、遅延時間算出ステップにより算出された通信の遅延時間に基づいて、移動体に制御信号が到達する時刻として予測される到達予測時刻を複数算出し、算出した複数の到達予測時刻それぞれにおける移動体への走行制御命令を移動体情報に基づいて算出する走行制御命令算出ステップと、走行制御命令算出ステップにより算出された少なくとも二つ以上の走行制御命令を移動体に送信する走行制御命令送信ステップと、を実行し、移動体は、移動体情報をタイムスタンプとともに走行制御装置に送信する移動体情報送信ステップと、走行制御装置から少なくとも二つ以上の走行制御命令を受信する走行制御命令受信ステップと、走行制御命令の受信時刻および到達予測時刻に基づいて、受信した走行制御命令のうち最適な走行制御命令を選択する走行制御命令選択ステップと、を実行する。
【0013】
また、本発明にかかる遠隔制御プログラムは、所定の経路を走行する自動運転機能を備えた移動体と、移動体とネットワークを介して接続された移動体の走行を制御する走行制御装置とを備えた遠隔制御システムにおける走行制御装置および移動体において実行される遠隔制御プログラムであって、走行制御装置に、移動体から、移動体の位置情報および速度情報を含む移動体情報と移動体情報の送信時刻を示すタイムスタンプを受信する移動体情報受信機能と、移動体情報の受信時刻とタイムスタンプが示す移動体情報の送信時刻の差分から、走行制御装置と移動体との通信の遅延時間を算出する遅延時間算出機能と、遅延時間算出機能により算出された通信の遅延時間に基づいて、移動体に制御信号が到達する時刻として予測される到達予測時刻を複数算出し、算出した複数の到達予測時刻それぞれにおける移動体への走行制御命令を移動体情報に基づいて算出する走行制御命令算出機能と、走行制御命令算出機能により算出された少なくとも二つ以上の走行制御命令を移動体に送信する走行制御命令送信機能と、を実現させ、移動体に、移動体情報をタイムスタンプとともに走行制御装置に送信する移動体情報送信機能と、走行制御装置から少なくとも二つ以上の走行制御命令を受信する走行制御命令受信機能と、走行制御命令の受信時刻に基づいて、走行制御命令受信機能により受信した走行制御命令のうち最適な走行制御命令を選択する走行制御命令選択機能と、走行制御命令算出機能により算出された少なくとも二つ以上の走行制御命令を移動体に送信する走行制御命令送信機能と、を実現させる。
【0014】
また、本発明にかかる走行制御装置は、所定の経路を走行する自動運転機能を備えた移動体とネットワークを介して接続された移動体の走行を制御する走行制御装置であって、走行制御装置は、移動体から、移動体の位置情報および速度情報を含む移動体情報と移動体情報の送信時刻を示すタイムスタンプを受信する移動体情報受信部と、移動体情報の受信時刻とタイムスタンプが示す移動体情報の送信時刻の差分から、走行制御装置と移動体との通信の遅延時間を算出する遅延時間算出部と、遅延時間算出部により算出された通信の遅延時間に基づいて、移動体に制御信号が到達する時刻として予測される到達予測時刻を複数算出し、算出した複数の到達予測時刻それぞれにおける移動体への走行制御命令を移動体情報に基づいて算出する走行制御命令算出部と、走行制御命令算出部により算出された少なくとも二つ以上の走行制御命令を移動体に送信する走行制御命令送信部と、を備えた。
【0015】
また、本発明にかかる移動体は、所定の経路を走行する移動体の走行を制御する走行制御装置とネットワークを介して接続された移動体であって、移動体は、移動体の位置情報および速度情報を含む移動体情報を移動体情報の送信時刻を示すタイムスタンプとともに走行制御装置に送信する移動体情報送信部と、走行制御装置から少なくとも二つ以上の走行制御命令を受信する走行制御命令受信部と、走行制御命令の受信時刻および移動体に制御信号が到達する時刻として予測される到達予測時刻に基づいて、受信した走行制御命令のうち最適な走行制御命令を選択する走行制御命令選択部と、走行制御命令選択部により選択された走行制御命令に従って移動体を走行制御する走行制御部と、を備えた。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、移動体の走行を遠隔制御する制御装置と移動体との間に通信の遅延時間の増減が発生した場合にも、移動体を高精度で遠隔制御することが可能な遠隔制御システム、遠隔制御方法、遠隔制御プログラム、走行制御装置および移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る遠隔制御システムの構成を示すシステム図である。
【
図2】走行制御装置により車両を遠隔制御する一態様を示す図である。
【
図3】本実施形態における走行制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4(a)は、車両から受信した車両情報の一例を示す図であり、
図4(b)は、車両から受信した車両情報に走行制御装置による車両情報の受信時刻が付されたデータ例である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、通信の遅延時間の分布の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態における走行制御装置による走行制御命令の送信処理を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態における車両の機能構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8(a)本実施形態における車両による車両情報の送信処理の流れを示すフローチャートであり、
図8(b)は、本実施形態における車両による走行制御命令の設定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】車両と走行制御装置による車両の走行制御の処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図10】発明の実施の形態に係る室内管理装置を実現可能なコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る遠隔制御システムの構成を示すシステム図である。
図1に示すように、遠隔制御システム1は、走行制御装置100と、車両200a、車両200b~車両200x(以下、特に明示する場合を除き、車両200と総称する。)、船舶300を含み、これらはネットワーク10を介して接続されている。
図1に図示する車両200および船舶300は移動体の一例であり、これらのほかであっても移動体であればよく、飛行機や小型二輪車などであってもよい。また、
図1では、複数の移動体として、車両200と船舶300を図示するが、移動体の数は一台であっても複数台であってもよい。また、ネットワーク10は、モバイル通信網、WiFi(Wireless Fidelity)通信網、衛星通信網等の無線通信回線である。
図1においては、ネットワーク10の一回線を図示するが、走行制御装置100と車両200などの移動体は複数のネットワークで接続されていてもよい。なお、本実施形態では、本発明における移動体の一例として車両200を用いて説明するが、移動体は上記のとおり車両に限定されない。
【0019】
図2は、走行制御装置100により車両200を遠隔制御する一態様を示す図である。
図2におけるテストコース400は、車両200の走行をテストするために走行試験場などにおいて設置された走行テスト用の車道であり、追従経路500は、車両200がテストコース400において走行を追従する経路として設定された所定の経路を示す。車両200は、遠隔の走行制御装置100からネットワーク10を介して走行制御命令を受信し、受信した走行制御命令に従って追従経路500を走行する。ここで、走行制御命令とは、走行制御装置100により生成される車両200の走行を制御するための命令であり、走行制御に用いられる各種アクチュエータの動作制御を指令する信号である。
【0020】
図3は、本実施形態における走行制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、走行制御装置100は、制御部110と、記憶部121と、時計部122と、通信制御部123とを備える。
【0021】
制御部110は、遅延時間算出部111と、遅延時間分布算出部112と、走行制御命令算出部113と、検出部114と、送受信部115とを備える。ここで、送受信部115は、本発明における移動体情報受信部と、走行制御命令送信部に相当する。
【0022】
送受信部115は、通信制御部123を介して外部車両や外部装置とデータを送受信する。例えば、送受信部115は、車両200から車両200の車両情報と車両情報に付されたタイムスタンプを受信する。ここで、車両情報とは、車両200の走行状態に関する情報であり、車両情報には車両200の位置、速度、加速度、ヨーレートなどの情報が含まれる。なお、車両情報は、本発明における移動体情報の一例であり、移動体情報は、制御対象となる移動体の走行位置や走行速度を含む移動体の走行状態に関する情報であればよい。また、タイムスタンプは、車両200による車両情報の送信時刻を示すスタンプである。また、送受信部115は、走行制御命令算出部113により算出された少なくとも二つ以上の走行制御命令を車両200に送信する。
【0023】
図4(a)は、車両200から受信した車両情報の一例を示す図である。
図4(a)に示す車両情報は、計測値1~計測値xを含み、タイムスタンプと、Table IDとが対応付けられている。計測値1~計測値xは、車両200の走行状態を示す値をそれぞれ示し、例えば、計測値1は速度、計測値2は加速度、計測値3は舵角などの各値を示す。また、Table IDは、車両200から車両情報を受信するごとに車両情報の送信時刻(タイムスタンプ)が対応付けられた車両情報に付される識別情報である。また、例えば、Table ID「1」は、車両情報が含む計測値1「a1」・・・計測値x「A1」に、当該車両情報の送信時刻「10:00:33.444」を示すタイムスタンプが対応付けられている。
【0024】
遅延時間算出部111は、走行制御装置100と車両200との通信の遅延時間を算出する。具体的には、遅延時間算出部111は、送受信部115により車両200から送信された車両情報を受信した場合、送受信部115による車両情報の受信時刻を時計部122から取得し、取得した受信時刻を車両情報に付して記憶部121に保存する。遅延時間算出部111は、送受信部115により車両情報を受信した受信時刻と、当該車両情報に付されたタイムスタンプが示す車両情報の送信時刻の差分を計算することにより通信の遅延時間を求める。また、他の例として、遅延時間算出部111は、走行制御装置100が車両200に情報を送信した送信時刻と、車両200でそれを受信した受信時刻の差分を計算することとしてもよい。この場合には、走行制御装置100は、車両200から、車両200が情報を受信した受信時刻の情報を取得した上で計算することとなる。
図4(b)は、遅延時間算出部111により受信時刻が付された車両情報のデータ例を示す図である。
図4(b)に示す車両情報は、計測値1~計測値xを含み、タイムスタンプと、受信時刻と、Table IDとが対応付けられている。
図4(b)においては、Table IDは、車両200から車両情報を受信するごとに車両情報の送信時刻(タイムスタンプ)と受信時刻が対応付けられた車両情報に付される識別情報である。例えば、Table ID「11」は、車両情報が含む計測値1「a1」・・・計測値x「A1」に、当該車両情報の送信時刻(タイムスタンプ)「10:00:33.444」と、走行制御装置100による車両情報の受信時刻「10:0033.483」とが対応付けられている。遅延時間算出部111は、Table ID「11」が示す通信について、車両情報の受信時刻「10:0033.484」と車両情報の送信時刻「10:00:33.444」から、差分値「40msec」を求める。
【0025】
遅延時間分布算出部112は、遅延時間算出部111により算出された複数の通信の遅延時間の値から、走行制御装置100と車両200との間の通信の遅延時間の統計量を取得し、分布を算出する。また、遅延時間分布算出部112は、算出した分布が示す最小値から最大値までの時間幅(全体幅)を特定し、特定した時間幅に対して制御値を算出するタイミングを示す所定値を複数算出してもよい。例えば、遅延時間分布算出部112は、通信の遅延時間の分布が示す値の全体幅から、通信の遅延時間の最小値を示す第1の所定値、通信の遅延時間の平均値を示す第2の所定値、最大値または第2の所定値よりも大きな値を示す第3の所定値を算出する。
【0026】
図5(a)および
図5(b)は、走行制御装置100と車両200との通信の遅延時間の分布図の一例である。
図5(a)および
図5(b)がそれぞれ示す分布図において、縦軸は通信の遅延時間の値を単位msec(milli second)で示し、横軸は通信の経過時間の値を単位msecで示している。
図5(a)の分布図では、最小値は約40msec、最大値は約200msec以上であることを示す。また、
図5(b)では、
図5(a)の通信の遅延時間の分布図の全体幅において、3つの所定値に応じて設定されたライン(1)~(3)が図示されている。
図5(b)において、ライン(1)は、通信の遅延時間の最小値として40msecが、ライン(2)は、通信の遅延時間の平均値として60msecが、ライン(3)は、所定頻度以上で発生する平均値よりも大きな通信の遅延時間の値として200msecが設定されている。
【0027】
走行制御命令算出部113は、遅延時間分布算出部112により算出された通信の遅延時間の分布に基づいて、到達予測時刻を複数算出し、算出した複数の到達予測時刻それぞれにおける車両200への走行制御命令を車両情報に基づいて算出する。ここで、到達予測時刻とは、遅延時間分布算出部112により算出された分布に基づいて、車両200に制御信号が到達する時刻として予測される時刻である。具体的には、走行制御命令算出部113は、車両200から受信した車両情報に含まれる位置情報、速度情報、加速度情報などから、算出したそれぞれの到達予測時刻における車両の走行状態を予測し、予測した走行状態とテストコース400上の追従経路500の経路に応じた走行制御命令を算出する。
【0028】
また、走行制御命令算出部113は、遅延時間分布算出部112により算出された遅延時間の分布に基づいて、到達予測時刻を複数算出する。例えば、走行制御命令算出部113は、遅延時間分布算出部112により
図5(a)に示したような遅延時間の分布が算出され、
図5(b)に示すような、通信の遅延時間の最小値、通信の遅延時間の平均値、通信の遅延時間の最大値がそれぞれ算出された場合、各数値に応じた到達予測時刻を算出する。具体的には、走行制御命令算出部113は、走行制御命令を送信する予定の送信時刻と通信の遅延時間の最小値を足した時間、または走行制御命令を送信する予定の送信時刻と通信の遅延時間の平均値を足した時間、または走行制御命令を送信する予定の送信時刻と所定頻度以上で発生する平均値よりも大きな通信の遅延時間の値を足した時間のそれぞれに応じた3つの到達予測時刻を算出する。
【0029】
また、走行制御命令算出部113は、車両情報に基づいて、算出した到達予測時刻における車両200の到達予測位置を複数算出し、算出した到達予測位置に対応付けた走行制御命令を複数算出する。ここで、到達予測位置とは、車両200が到達予測時刻に追従経路500において到達すると予測される位置のことである。例えば、走行制御命令算出部113は、車両情報に含まれる速度情報、加速度情報、舵角情報などと、追従経路500の経路情報から、到達予測時刻における車両200の到達予測位置を複数算出する。ここで、追従経路500の経路情報とは、追従経路500の距離、起伏、GPS位置情報、湿度情報など経路の場所や状態を示す情報である。
図5(a)に示したような通信の遅延時間の分布が算出され、
図5(b)に示すような、通信の遅延時間の最小値、通信の遅延時間の平均値、通信の遅延時間の最大値をそれぞれ算出されたような場合、走行制御命令算出部113は、各数値に応じた到達予測時刻を算出し、算出した到達予測時刻に対応する到達予測位置を算出する。
【0030】
検出部114は、遅延時間分布算出部112により算出された通信の遅延時間の分布のうち所定値を超える遅延時間を検出する。例えば、
図5(a)に示す通信の遅延時間の分布において、200msecを所定値とする場合、検出部114は、200msecを超える遅延時間を検出する。検出部114により、所定値を超える遅延時間が検出された場合は、送受信部115は、車両情報を受信した際に用いたネットワークと異なるネットワークを介して、走行制御命令算出部113により算出された複数の走行制御命令を車両200に送信する。
【0031】
記憶部121は、メモリ、ハードディスクなどの記憶装置や記憶媒体などであり、種々のデータや種々のプログラムなどを記憶する。また、記憶部121は、送受信部115により受信した車両情報や、車両情報の受信時刻、追従経路500の経路情報などを記憶する。時計部122は、時刻を計時し、位置情報信号に基づいてその時刻が修正される。
【0032】
通信制御部123は、通信回線に接続されるアンテナやルータ等の通信装置(図示せず)に接続されるインターフェースである。すなわち、通信制御部123は、車両200等のような外部の移動体や外部装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有している。
【0033】
図6は、本実施形態における走行制御装置100による走行制御命令の送信処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、送受信部115は、車両200から車両情報とタイムスタンプを受信する(ステップS1)。ここで、タイムスタンプは、車両情報が車両200により送信された時刻である送信時刻を示し、車両情報に付されている。遅延時間算出部111は、走行制御装置100と車両200との通信の遅延時間を算出する(ステップS2)。具体的には、遅延時間算出部111は、走行制御装置100と車両200が通信されるごとに、ステップS1において車両情報を受信した受信時刻と、受信した車両情報に付されたタイムスタンプが示す送信時刻の差分を求める。また、遅延時間算出部111は、通信の遅延時間を算出するごとに通信の遅延時間を記憶部121に保存する。遅延時間分布算出部112は、走行制御装置100と車両200の通信の遅延時間の分布を算出する(ステップS3)。例えば、遅延時間分布算出部112は、記憶部121を参照し、ステップS2において算出された複数の通信の遅延時間の統計を求め、求めた統計から分布を算出する。また、遅延時間分布算出部112は、算出した分布から、通信の遅延時間の最小値を含む所定範囲を最小値領域として、通信の遅延時間の平均値を含む所定範囲を平均値領域として、所定頻度で発生する通信の遅延時間の平均値よりも大きな値を含む所定範囲を最大値領域として3領域に設定してもよい。
【0034】
走行制御命令算出部113は、ステップS3において算出された通信の遅延時間の分布から、走行制御命令を算出する(ステップS4)。例えば、走行制御命令算出部113は、ステップS3において算出された通信の遅延時間の分布に対して上記のような3領域が設定された場合、3領域が示す通信の遅延時間それぞれに対応する到達予測時刻を算出する。走行制御命令算出部113は、算出した到達予測時刻における車両200の車両状態を、ステップS1において受信した車両情報が示す位置情報と速度情報から、到達予測時刻におけるテストコース400の追従経路500における車両200の到達予測位置および到達予測速度などの車両情報を算出する。そして、走行制御命令算出部113は、算出した到達予測時刻における車両情報に対する走行制御命令を算出する。送受信部115はステップS4において算出された走行制御命令を車両200に送信する(ステップS5)。
【0035】
図7は、本実施形態における車両200の機能構成を示すブロック図である。
図7に示すように、車両200は、制御部210と、記憶部221と、時計部222と、GPSアンテナ223と、センサ224と、アクチュエータ225と、通信制御部226とを備える。
【0036】
制御部210は、車両情報取得部211と、走行制御命令選択部212と、走行制御部213と、送受信部214を備える。ここで、送受信部214は、本発明における移動体情報送信部と、走行制御命令受信部に相当する。
【0037】
記憶部221は、車両200を制御するための車両制御シナリオが記憶される。記憶部221は、例えば、種々のデータ及び種々のプログラムを記憶することが可能なメモリ、ハードディスク等の記憶媒体である。車両制御シナリオは、例えば、車両200が追従経路500を走行するための条件やルールを定めたものであり、車両200の走行位置及び車両200の走行速度や、追従経路500の周回数などを記録したものである。
【0038】
時計部222は、現在時刻を計時し、位置情報信号に基づいてその時刻が修正される。なお、時計部222は、現在時刻として協定世界時(UTC:Coordinated Universal Time)を取得することとしてもよい。GPSアンテナ223は、位置情報信号を受信する。センサ224は、車両200に関する種々の計測を行うセンサであり、一例として車両200の走行速度を計測する車速センサを備える。アクチュエータ225は、例えば、車両200のハンドル及び車両200のペダル(アクセル、ブレーキ、操舵)等の車両200の走行に関する装置に接続される。アクチュエータ225の動作に基づいて、エンジン、ハンドル、ペダル、ステアリングなどが動作する。
【0039】
通信制御部226は、通信回線に接続されるアンテナやルータ等の通信装置(図示せず)に接続されるインターフェースである。すなわち、通信制御部226は、走行制御装置100等のような外部装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有している。
【0040】
車両情報取得部211は、GPSアンテナ223、センサ224、アクチュエータ225から、それぞれ、車両200の位置情報、速度情報、舵角情報などの車両情報を取得する。例えば、車両情報取得部211は、所定の時間間隔、または、所定の走行距離ごとに車両情報を取得することとしてもよい。
【0041】
走行制御命令選択部212は、走行制御命令の受信時刻および到達予測時刻に基づいて、受信した走行制御命令のうち最適な走行制御命令を選択する。例えば、走行制御命令選択部212は、到達予測位置に対応付けられた走行制御命令のうち、送受信部214による走行制御命令の受信時刻と最も近い到達予測時刻が対応付けられた走行制御命令を選択する。また、走行制御命令選択部212は、到達予測位置に対応付けられた走行制御命令のうち、走行制御命令の受信時刻における追従経路500における車両200の位置と最も近い到達予測位置が対応付けられた走行制御命令を選択する。
【0042】
送受信部214は、走行制御装置100などの外部装置や、他の車両などとの間で通信制御部226を介して各種データを送受信する。例えば、送受信部214は、車両200の車両情報をタイムスタンプとともに走行制御装置100に送信する。また、送受信部214は、走行制御装置100から少なくとも二つ以上の走行制御命令を受信する。
【0043】
図8(a)本実施形態における車両200による車両情報の送信処理の流れを示すフローチャートである。車両情報取得部211は、車両情報を取得する(ステップS11)。車両情報取得部211は、時計部222から現在時刻を取得し、取得した現在時刻を示すタイムスタンプを車両情報に付与する(ステップS12)。送受信部214は、ステップS12においてタイムスタンプが付与された同時刻にステップS11において取得された車両情報を走行制御装置100に送信する(ステップS13)。
【0044】
走行制御部213は、走行制御命令選択部212により選択された走行制御命令に従って車両200を走行制御する。
図8(b)は、本実施形態における車両200による走行制御命令の設定処理の流れを示すフローチャートである。
【0045】
送受信部214は、走行制御装置100から走行制御命令を受信する(ステップS21)。具体的には、送受信部214は、走行制御装置100から二つ以上の走行制御命令を受信する。走行制御命令選択部212は、ステップS21において受信した二つ以上の走行制御命令のうち最適な走行制御命令を選択する(ステップS22)。具体的には、走行制御命令選択部212は、ステップS21において走行制御命令を受信した受信時刻を、走行制御命令に対応付けられた到達予測時刻と比較し、受信時刻と最も近い到達予測時刻が対応付けられた走行制御命令を選択する。なお、走行制御命令選択部212は、ステップS21において走行制御命令を受信した時刻における位置と最も近い到達予測位置が対応付けられた走行制御命令を選択してもよい。走行制御部213は、ステップS22において選択された走行制御命令に従って車両200の走行を制御する(ステップS23)。
【0046】
図9は、車両200と走行制御装置100による車両200の走行制御の処理の流れを示すシーケンス図である。
図9に示すように、車両200は、車両200の車両情報を取得する(ステップS31)。車両200は、タイムスタンプが付された車両情報を走行制御装置100に送信する(ステップS32)。走行制御装置100は、ステップS32において受信した車両情報に付されたタイムスタンプが示す車両情報の送信時刻と、ステップS32において走行制御装置100が車両情報を受信した受信時刻とを比較して、車両200と走行制御装置100との通信の遅延時間を算出する(ステップS33)。走行制御装置100は、ステップS33において算出した通信の遅延時間の分布を算出する(ステップS34)。走行制御装置100は、ステップS34において算出した通信の遅延時間の分布から、走行制御命令を算出する(ステップS35)。具体的には、走行制御装置100は、ステップS34において算出した通信の遅延時間の分布から複数の通信の遅延時間を基準に、複数の到達予測時刻を算出し、算出した到達予測時刻に応じた走行制御命令を複数算出する。走行制御装置100は、ステップS35において算出した複数の走行制御命令を車両200に送信する(ステップS36)。車両200は、ステップS36において受信した走行制御命令の中から最適な走行制御命令を選択する(ステップS37)。車両200は、ステップS37において選択した走行制御命令に従って車両200の走行を制御する(ステップS38)。
【0047】
このように、走行制御装置100が、通信の遅延時間から到達予測時間を複数算出し、到達予測時間に応じた制御命令を複数車両へ送信し、車両200は、受信した複数の制御命令から受信時刻と到達予測時間が最も近いまたは車両の位置と到達予測位置が最も近い制御命令を走行制御命令に採用することで、実際の車両状況と走行制御の乖離を低減することができる。
【0048】
図10は、本実施形態における遠隔制御システム1を実現可能なコンピュータ20の一例を示すハードウェア構成図である。
図10に示すように、コンピュータ20は、CPU(Central Processing Unit)21、RAM(Random Access Memory)22、ROM(Read Only Memory)23、HDD(Hard Disk Drive)24、通信インターフェース(I/F)25、入出力インターフェース(I/F)26、およびメディアインターフェース(I/F)27を備える。
【0049】
CPU21は、ROM23またはHDD24に格納されたプログラムにより動作し、各部の制御を行う。ROM23は、コンピュータ20の起動時にCPU21によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ20のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0050】
HDD24は、CPU21によって実行されるプログラムおよび当該プログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インターフェース25は、通信回線を介して外部機器から受信したデータをCPU21に送り、CPU21が生成したデータを、通信回線を介して外部機器に送信する。
【0051】
CPU21は、入出力インターフェース26を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、および、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU21は、入出力インターフェース26を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU21は、生成したデータを、入出力インターフェース26を介して出力装置へ出力する。
【0052】
メディアインターフェース27は、記憶媒体28に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAM22を介してCPU21に提供する。CPU21は、当該プログラムを、メディアインターフェース27を介して記憶媒体28からRAM22上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記憶媒体28は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)等の光学記憶媒体、磁気記憶媒体、または半導体メモリ等である。
【0053】
コンピュータ20が本実施形態における走行制御装置100として機能する場合、コンピュータ20のCPU21は、RAM22上にロードされたプログラムを実行することにより、遅延時間算出部111、遅延時間分布算出部112、走行制御命令算出部113、検出部114、送受信部115の各機能を実現する。また、HDD24には、車両情報や通信の遅延時間などのデータが格納される。また、コンピュータ20が本実施形態における車両200として機能する場合、コンピュータ20のCPU21は、RAM22上にロードされたプログラムを実行することにより、車両情報取得部211、走行制御命令選択部212、走行制御部213、送受信部214の各機能を実現する。また、HDD24には、車両情報や通信の遅延時間などのデータが格納される。
【0054】
遠隔制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供される。コンピュータ20のCPU21は、これらのプログラムを、メディアインターフェース27を介して上記の記憶媒体から読み取って実行するが、他の例として、外部装置から、通信回線を介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0055】
なお、管理プログラムは、例えば、ActionScript、JavaScript(登録商標)、Python、Rubyなどのスクリプト言語、C言語、C++、C#、Objective-C、Swift、Java(登録商標)などのコンパイラ言語などを用いて実装できる。
【0056】
このように、本実施形態における遠隔制御システム1によれば、移動体の走行を遠隔制御する制御装置と移動体との間に通信の遅延時間の増減が発生した場合にも、移動体を高精度で遠隔制御することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 遠隔制御システム
10 ネットワーク
100 走行制御装置
110 制御部
111 遅延時間算出部
112 遅延時間分布算出部
113 走行制御命令算出部
114 検出部
121 記憶部
122 時計部
123 通信制御部
118 送受信部
200 車両
210 制御部
211 車両情報取得部
212 走行制御命令選択部
213 走行制御部
214 送受信部
221 記憶部
222 時計部
223 GPSアンテナ
224 センサ
225 アクチュエータ
226 通信制御部
300 テストコース
400 追従経路